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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017476
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】信号システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/18 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B61L5/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120129
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】内田 景太朗
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161TT14
5H161TT32
(57)【要約】
【課題】外乱光の影響を抑えて種々の信号を的確に識別することを可能にする信号システムを提供すること。
【解決手段】信号システム100は、可視光を除く光波長帯域の光である可視光外波長帯域光ELの点滅周期が異なる複数種の信号情報を生成する信号生成装置30と、複数種の信号情報を切替えて発信する発信装置20と、信号情報を受信して識別する受信装置10とを有する。信号システム100では、可視光外波長帯域光ELを利用して、外乱光の影響を抑えつつ、点滅周期に差異を生じさせることを利用して、種々の信号の識別を可能にし、例えば自動運転化に寄与できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を除く光波長帯域の光の点滅周期が異なる複数種の信号情報を生成する信号生成装置と、
前記複数種の信号情報を切替えて発信する発信装置と、
前記信号情報を受信して識別する受信装置と
を有する信号システム。
【請求項2】
前記発信装置は、前記可視光を除く光波長帯域の光として、単一波長帯域の光により発信する、請求項1に記載の信号システム。
【請求項3】
前記受信装置は、前記可視光を除く光波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルターを有する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の信号システム。
【請求項4】
前記受信装置は、連続画像を撮像する撮像部を備え、
前記信号生成装置は、前記撮像部のフレームレートに応じた前記複数種の信号情報を生成する、請求項1に記載の信号システム。
【請求項5】
前記撮像部は、前記可視光を除く光波長帯域に加え、可視光波長帯域の光を受光する、請求項4に記載の信号システム。
【請求項6】
前記発信装置は、鉄道信号機に取り付けられる赤外線発光器を有し、
前記受信装置は、列車に取り付けられ、前記信号情報から、列車の進行に関する情報について識別する、請求項1に記載の信号システム。
【請求項7】
前記発信装置は、前記鉄道信号機における信号現示を、発信する光の点滅周期に変換する周波数制御部を含み、
前記受信装置は、受信した光の点滅周期を、信号現示に逆変換する信号処理部を含む、請求項6に記載の信号システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の信号情報の発信及び受信を行って、信号識別を行う信号システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特殊信号発光機の検出に際して、周期点滅を検出するものが知られている(特許文献1、2参照)。また、列車等の移動体に受光装置を設置するものが知られている(特許文献3参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1、2では、検出の対象が特殊信号発光機からの光に限定されている。また、上記特許文献3では、送光側においては、可視光領域をカットしているものの、例えば受光側において受光装置として使用するカメラが可視光域に感度を持つものである場合、外乱光の影響を受けてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-104667号公報
【特許文献2】特開2020-059340号公報
【特許文献3】特開平11-154909号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、外乱光の影響を抑えて種々の信号を的確に識別することを可能にする信号システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための信号システムは、可視光を除く光波長帯域の光の点滅周期が異なる複数種の信号情報を生成する信号生成装置と、複数種の信号情報を切替えて発信する発信装置と、信号情報を受信して識別する受信装置とを有する。
【0007】
上記信号システムでは、可視光外波長帯域の光を利用して、外乱光の影響を抑えつつ、点滅周期に差異を生じさせることを利用して、種々の信号の識別を可能にし、例えば自動運転化に寄与できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、発信装置は、可視光を除く光波長帯域の光として、単一波長帯域の光により発信する。この場合、単一波長帯域に絞ることで、外乱光の影響をより抑えられる。
【0009】
本発明の別の側面では、受信装置は、可視光を除く光波長帯域の光を透過させるバンドパスフィルターを有する。この場合、バンドパスフィルターにより、受信装置で受信する光波長帯域を特定の範囲に絞ることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、受信装置は、連続画像を撮像する撮像部を備え、信号生成装置は、撮像部のフレームレートに応じた複数種の信号情報を生成する。この場合、受信側における複数種の信号情報の識別を的確に維持できる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、撮像部は、可視光を除く光波長帯域に加え、可視光波長帯域の光を受光する。この場合、可視光を除く光波長帯域の光の点滅周期に基づく信号情報に加え、可視光波長帯域の光に基づく情報収集が可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、発信装置は、鉄道信号機に取り付けられる赤外線発光器を有し、受信装置は、列車に取り付けられ、信号情報から、列車の進行に関する情報について識別する。この場合、鉄道信号における種々の信号確認が可能となる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、発信装置は、鉄道信号機における信号現示を、発信する光の点滅周期に変換する周波数制御部を含み、受信装置は、受信した光の点滅周期を、信号現示に逆変換する信号処理部を含む。この場合、変換処理及び逆変換処理により、確実な信号の受け渡しがなされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の信号システムについて説明するための概要図である。
図2】信号システムの一構成例について説明するための概念図である。
図3】使用する光波長帯域について説明するためのグラフである。
図4】信号システムの動作内容について一例を説明するための概念図である。
図5】(A)~(D)は、信号機の点滅動作とカメラのフレームレートとの関係について説明するための概念図である。
図6】(A)及び(B)は、信号機から異なる態様の点滅動作がなされた時のカメラ側での捉え方について、一例を説明する図である。
図7】信号システムの一変形例について説明するための概念図である。
図8】第2実施形態の信号システムの一構成例について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本実施形態の信号システムについて、一例を説明する。図1は、本実施形態の信号システム100について説明するための概要図であり、図1では、列車TRの自動運転に際して行われる車上側と地上側との間での信号通信処理に適用される場合の信号システム100を例示している。すなわち、信号システム100が、鉄道信号のためのシステムとして、鉄道信号機RSにおける信号現示となる複数種の信号情報の発信及び受信を行って信号識別をすべく導入された場合の一例を示している。ここで、列車TRの自動運転については、種々の態様が想定され、運転士等が存在しない完全な無人運転による自動運転のようなものから運転士が運転操作を行いその一部を自動運転で補助するようなものまで、広く含まれるものとする。
【0016】
図示のように、信号システム100は、受信装置10と、発信装置20と、信号生成装置30とで構成されており、受信装置10は、地上側からの信号を受ける車上側装置として機能すべく、列車TRに搭載されている。一方、発信装置20及び信号生成装置30は、地上側装置として機能すべく、線路RLの周辺に設置される鉄道信号機RSに取り込まれている、あるいは鉄道信号機RSの一部として機能している。
【0017】
受信装置10は、発信装置20から発信される信号情報としての光を受信するための装置であり、カメラ(イメージセンサー)等で構成されている。ここでは、さらに、受信装置10は、受信した信号情報を、鉄道信号機RSにおける信号現示として識別するものとなっている。
【0018】
発信装置20及び信号生成装置30は、列車TRの進行に関する情報を伝える地上側装置として、列車TRに対して各種指令を出力する。すなわち、発信装置20及び信号生成装置30は、鉄道信号機RSあるいはその一部として機能する。このため、例えば、発信装置20は、可視光による表示灯として、赤色光波長帯域の光を発する赤色信号灯器20rと、黄色光波長帯域の光を発する黄色信号灯器20yと、青色光波長帯域の光を発する青色信号灯器20gとを有している。すなわち、赤色信号灯器20r等は、鉄道信号機RSとして、可視光を検知可能な人やセンサー等に対して列車TRの進行に関する情報を伝える。
【0019】
これらに加え、特に本実施形態の発信装置20は、可視光を除く光波長帯域の光として、赤外線波長帯域の光を発する赤外線発光器20iを有している。以下、可視光を除く光波長帯域の光を、可視光外波長帯域光ELとする。なお、ここでの一例では、可視光外波長帯域光ELは、赤外線波長帯域の光となっているが、例えば紫外線波長帯域の光とすることも考えられる。赤外線発光器20iは、可視光外波長帯域光ELとして、単一波長帯域の光により発信する構成とする、すなわち単一波長帯域に絞ることで、外乱光の影響をより抑えること(耐外乱光性の向上)が可能になる。
【0020】
また、以下において、赤外線発光器20iが発する可視光外波長帯域光ELに対して、各色信号灯器20r,20y,20gが発する可視光波長帯域の光を、可視光波長帯域光VLとする。
【0021】
赤外線発光器20iは、点滅周期が異なる複数種の信号情報を切替えて、可視光外波長帯域光ELを発信することが可能となっている。この場合、可視光外波長帯域光ELを、点滅周期に差異を生じさせた状態で発信することを利用して、受信側すなわち受信装置10側において、種々の信号の識別をさせることが可能となる。
【0022】
信号生成装置30は、発信装置20から発信させる信号としての上記各波長帯域光EL,VLについての信号生成を行うための装置であり、特に、ここでは、可視光外波長帯域光ELについて、発信装置20から上記のような態様での発信を可能とするための前提として、光の点滅周期が異なる複数種の信号情報を生成するものとなっており、点滅周期が異なる複数種の信号情報と、鉄道信号機RSにおける信号現示である各色信号灯器20r,20y,20gの灯色による信号情報との対応付けがなされている。つまり、可視光外波長帯域光ELの点滅周期が異なる複数種の信号情報を解析することで、各色信号灯器20r,20y,20gの灯色による信号情報と等価の情報を得ることができるものとなっている。
【0023】
なお、ここでの一例では、発信装置20及び信号生成装置30は、通常の鉄道信号機RSの一部としても機能すべく、各色信号灯器20r,20y,20gに対しても、点灯・消灯に関する指令信号を出力しているものとする。
【0024】
一方、受信装置10は、これらの地上側からの信号情報を受信するとともに、点滅周期が異なる複数種の信号情報について処理を行って識別することで、地上側から出力された各種指令の内容を把握可能としている。以上のように、受信装置10は、列車TRに取り付けられ、受け付けた信号情報から、列車TRの進行に関する情報について識別するものとなっている。見方を変えると、車上側において、人間が各色信号灯器20r,20y,20gを目視することによって得る列車TRの進行に関する情報を、受信装置10は、赤外線発光器20iから発せられた点滅周期が異なる可視光外波長帯域光ELを受信することで得ることができる。
【0025】
以下、図2を参照して、上記のような態様となる信号システム100についてのより詳細な一構成例について説明する。
【0026】
図2において、受信装置10は、各種カメラ等で構成され連続画像を撮像する撮像部11と、処理部12とを有し、撮像部11で各種データを信号情報として受信(取得)し、受信した信号情報について、処理部12において各種処理を施すことで、信号情報の内容を識別する。
【0027】
撮像部11は、CMOS等で構成される受光部としてのイメージセンサー11rのほか、レンズ(図示略)で構成される。つまり、イメージセンサー11rは、レンズ(図示略)を経て入射した成分を受光するものとなっている。撮像部11は、例えば60fpsのフレームレートで、連続撮像を行う。言い換えると、60Hzの頻度でシャッターの開閉動作をする。
【0028】
処理部12は、回路基板等で構成され、イメージセンサー11rで受光した各成分に基づく情報を取得すべく、種々の処理を行う。特に、ここでは、処理部12は、イメージセンサー11rで受信した光のうち、可視光外波長帯域光ELの点滅周期を、鉄道信号機RSにおける信号現示に逆変換する信号処理部12rを含んでいる。
【0029】
発信装置20は、既述のように、各色信号灯器20r,20y,20gに加え、赤外線発光器20iを有し、さらに、赤外線発光器20iにおける点滅周期を制御する周波数制御部FCを有する。
【0030】
周波数制御部FCは、回路基板等で構成され、鉄道信号機RSとしての発信装置20における信号現示に相当する信号情報を、発信する光の点滅周期に変換する変換処理部TTである。
【0031】
なお、既述のように、鉄道信号機RSにおける信号現示の情報については、予め赤外線発光器20iにおける点滅周期と対応付けられており、信号生成装置30において、一の信号現示について、複数種の信号情報のうちから対応する一の情報が生成される。
【0032】
以下、信号生成装置30における信号生成から始まる一連の動作について説明する。まず、上記のようにして信号生成装置30において生成された信号情報は、発信装置20の周波数制御部FCに出力され、変換処理部TTである周波数制御部FCにおいて対応する点滅周期に変換され、当該点滅周期の可視光外波長帯域光ELが、赤外線発光器20iから投射される。
【0033】
受信装置10は、赤外線発光器20iからの可視光外波長帯域光ELをイメージセンサー11rで受信し、処理部12の信号処理部12rにおいて、可視光外波長帯域光ELの点滅周期の情報を抽出する。すなわち、信号処理部12rは、イメージセンサー11rで受信した光の点滅周期を、信号現示に逆変換する逆変換処理部ITとして機能する。つまり、変換処理及び逆変換処理により、確実な信号の受け渡しがなされるものとなっている。以上のようにして、受信装置10側においてすなわち車上側において、赤外線発光器20iを利用した鉄道信号機RSにおける信号現示の情報取得がなされる。
【0034】
なお、発信装置20における光源(光源装置)については、必要に足る光量や点滅周期での動作が可能な種々のものを適用することができ、例えばLED光源等を利用することが想定される。
【0035】
ここで、赤外線発光器20iから発する可視光外波長帯域光ELについては、上記のように、赤外光に限らず、紫外光とすること等が可能であるが、例えば、図3に例示するように、太陽光についてのスペクトルには、曲線C1,C2に示すような特性(偏り)があるので、これを想定して可視光外波長帯域光ELの範囲を設定することが考えられる。具体的には、例えば曲線C1に示す地表での太陽光スペクトルについて、可視光線の領域から外れた紫外や赤外など光のエネルギーが弱いところがある。つまり、太陽光スペクトルにあまり含まれていない領域が存在する。そこで、可視光外波長帯域光ELとして利用する単一波長帯域の光として、図示のように、太陽光スペクトルにあまり含まれていない範囲である赤外線波長帯域光X(200nm付近)、あるいは紫外線波長帯域光Y(940nm付近)を採用することで、さらなる耐外乱光性の向上を図ることができる。
【0036】
以下、図4等を参照して、信号情報についての対応付け、すなわち可視光外波長帯域光ELの点滅周期と鉄道信号機RSにおける信号現示との対応付けに関して、具体的な一例で説明する。
【0037】
図4は、信号システム100の動作内容について一例を説明するための概念図であり、特に上記信号情報についての対応付けに基づく動作について示すものとなっている。ここでは、信号生成装置30における信号生成について表30Aとして示すように、信号情報Aが、鉄道信号機RSにおける信号現示としての進行可を示す青点灯(青色信号灯器20gオン、他の色信号灯器20r,20yオフ)を意味し、これに対応する可視光外波長帯域光ELの点滅周期を点滅周期αとする。また、信号情報Bが、進行不可を示す赤点灯(赤色信号灯器20rオン、他の色信号灯器20y,20gオフ)を意味し、これに対応する点滅周期を点滅周期βとする。ただし、α≠βである。なお、信号情報についての対応付けは、2種類に限らず、3種類以上とすることが可能であるが、上記と同様であるので、説明の簡略化のため、省略する。
【0038】
信号生成装置30における信号生成として、複数種の信号情報(信号情報A又はB)のうちから、一の信号現示に対応する一の情報が生成されると、発信装置20の周波数制御部FC(変換処理部TT)において対応する点滅周期(点滅周期α又はβ)に変換され、赤外線発光器20iから該当する点滅周期で可視光外波長帯域光ELが射出される。これを受けた受信装置10は、表10Aとして示すように、受信した可視光外波長帯域光ELの点滅周期(点滅周期α又はβ)を解析して、受信した信号情報が信号情報Aであるのか信号情報Bであるのかを識別する。すなわち、逆変換処理を行う。以上のように、変換処理及び逆変換処理により、車上側と地上側との間における確実な信号の受け渡しがなされる。
【0039】
以上のような動作のうち、受信装置10を構成する撮像部11(図2等参照)において、可視光外波長帯域光ELの点滅周期を捉える際に、フレームレートが影響することが考えられる。ここでは、一例として、既述のように、また、図5(A)~図5(D)のうち、図5(A)に示すように、撮像部11のフレームレートを60fpsとする。その一方で、図5(B)に示すように、可視光外波長帯域光ELの点滅動作は、点灯期間と消灯(滅灯)期間とのデューティー比が50:50であるものとする。なお、ここでは一例として、図5(A)に例示するように、横軸を時間(t)とした場合に、撮像部11のシャッター開のタイミングを破線で示すものとし、ここでは、シャッター開の時間が非常に短くなっているものとする。一方、図5(B)に例示するように、可視光外波長帯域光ELの点滅動作については、点灯期間を黒のマス、消灯(滅灯)期間を白のマスで示すものとし、これらが時間に沿って交互に配置されていることをもって点滅動作を示すものとする。なお、図5(B)の一例では、点滅周期を、60Hzとしている、すなわち撮像部11のフレームレートを60fpsに合わせた場合について例示している。ただし、図6を参照して後述する一例においては、異なる複数種の点滅周期について、(60-n)Hzとする。なお、nは、正の整数であり、この場合、点滅周期は、撮像部11のフレームレートである60以下となる。
【0040】
ここで、上記のよう場合における車上側のシャッター開のタイミングと、地上側の点灯・消灯(滅灯)期間との対応関係について、図5(C)のうち、状態α1として例示するように、シャッター開のタイミングを示す破線が、点灯期間を示す黒のマスと重畳する場合には、受信装置10(図4等参照)において、点灯と検知されることになる。一方、状態α2として例示するように、シャッター開のタイミングを示す破線が、消灯(滅灯)期間を示す白のマスと重畳する場合には、受信装置10において、消灯(滅灯)と検知されることになる。したがって、上記図5(B)の一例の場合のように、発信装置20(図4等参照)から発せられる可視光外波長帯域光ELの点滅周期を60Hzとした場合、受信装置10(図4等参照)においては、図5(D)の状態β1に示すように、点灯のままとなるか、あるいは、状態β2に示すように、消灯(滅灯)のままとなるように受信されることになる。いずれにしても、この場合、受信装置10側において、点滅動作が生じないことになる。すなわち、点滅動作としては、0回/secとして、検出されることになる。
【0041】
上記を踏まえて、本実施形態では、発信装置20において、異なる複数種の点滅周期を(60-n)Hzとし、nの値を、各信号現示と対応付けて変えることで、可視光外波長帯域光ELの点滅動作の違いを的確にとらえ、上述したような変換及び逆変換による信号の認識処理を可能としている。
【0042】
具体的には、図6(A)に示すように、nの値について、0以外として、例えば、n=4,8,12とした場合、すなわち点滅周期を56,52,48Hzとした場合、60Hz(n=0)の場合と異なり、時間とともに、点灯・消灯(滅灯)の状態が入れ替わり、点滅が検知されるものとなる。図中において、消灯(滅灯)期間を示す白のマスに破線が重畳している期間が、実線PLで囲んで示されている。すなわち、この間において、受信装置10では、消灯(滅灯)として検知される一方、図6(B)において一点鎖線QLで囲んで示された実線PLの範囲外の期間が、点灯として検知されることになる。すなわち、一点鎖線QLで示す期間と実線PLで示す期間とが交互に現れ、受信装置10において、点滅動作として検知される。また、その周期は、図6(B)に示すように、n=4、56Hzであれば、4回(あるいは約4回)/secとなる。同様に、n=8、52Hzであれば、8回(あるいは約8回)/secとなり、n=12、48Hzであれば、12回(あるいは約12回)/secとなる。
【0043】
上記の態様においては、例えば、n=4、56Hzの場合を赤色信号灯器20rの点灯に対応させ、n=8、52Hzの場合を黄色信号灯器20yの点灯に対応させ、n=12、48Hzの場合を青色信号灯器20gの点灯に対応させる、といった態様とすることができる。すなわち、受信装置10において、4回(あるいは約4回)/secの周期で点灯・消灯(滅灯)が検知された場合は、赤色信号灯器20rの点灯に相当する信号情報を受け取ったものとして取り扱い、以下同様に、8回(あるいは約8回)/secの周期であれば、黄色信号灯器20yの点灯に相当、12回(あるいは約12回)/secの周期であれば、青色信号灯器20gの点灯に相当するものとして取り扱うことになる。
【0044】
なお、各回数については、種々の要因(タイミングのずれ具合や、シャッター開の時間、あるいはデューティー比の精度等)によって多少の変動は生じ得るが、上記一例のように、nの値について十分大きな差を設けておくことで、これらが混同することなく、確実に識別することが可能である。また、以上について、見方を変えると、信号生成装置30は、受信装置10を構成する撮像部11のフレームレートに応じた複数種の信号情報を生成している、とも言える。
【0045】
以上のように、本実施形態の信号システム100は、可視光を除く光波長帯域の光である可視光外波長帯域光ELの点滅周期が異なる複数種の信号情報を生成する信号生成装置30と、複数種の信号情報を切替えて発信する発信装置20と、信号情報を受信して識別する受信装置10とを有する。信号システム100では、可視光外波長帯域光ELを利用して、外乱光の影響を抑えつつ、点滅周期に差異を生じさせることを利用して、種々の信号の識別を可能にし、例えば自動運転化に寄与できる。
【0046】
図7は、信号システム100の一変形例について説明するための概念図であり、図2に対応する図である。図示のように、本実施形態の信号システム100では、受信装置10において、撮像部11の前面にバンドパスフィルターFLが設けられている点において、先の一例と異なっている。
【0047】
バンドパスフィルターFLは、特定波長帯域の光の成分を透過させるとともに他の成分をカットするためのフィルターであり、少なくとも可視光外波長帯域光ELを透過させるものとなっている。特に、単一波長帯域の光(例えば赤外線波長帯域光の一例として200nm付近の光)に絞った成分を可視光外波長帯域光ELとして発信する構成とした場合、バンドパスフィルターFLとして当該波長帯域を透過させ他の波長帯域をカットするものを採用することで、外乱光の影響をより抑えること(耐外乱光性の向上)が可能になる。
【0048】
なお、ここでの一例としては、撮像部11において可視光外波長帯域光ELに加え、発信装置20からの各色光に対応する波長帯域の成分を透過させるような構成とすることも想定され、この場合、可視光外波長帯域光ELの波長帯域に加え、発信装置20からの各色光(例えば各色光の光源におけるピーク波長)に対応したフィルターを採用する、といったことが考えられる。なお、上記のほか、例えばバンドパスフィルターFLを着脱式等とすることも考えられる。
【0049】
以上のように、受信装置10が、可視光外波長帯域光ELを透過させるバンドパスフィルターFLを有することで、受信装置10(イメージセンサー11r)で受信する光波長帯域を特定の範囲に絞ることができる。
【0050】
〔第2実施形態〕
以下、図8として示す概念図を参照して、第2実施形態の信号システム100の一構成例について説明する。なお、図8は、図2等に対応する図である。
【0051】
図示のように、本実施形態では、発信装置20が赤外線発光器20iで構成され、可視光を発する各色信号灯器20r,20y,20g(図2等参照)が設けられていない点において、第1実施形態の場合と異なっている。
【0052】
例えば、人間による目視等を要さず、車上側の装置における検知のみとする構成の場合、必ずしも可視光を要さず、可視光外の赤外光や紫外光等のみによって信号通信を行う態様とすることも考えられる。典型的には、完全無人による自動運転の場合には、かかる態様等とすることも想定される。
【0053】
なお、この場合、受信装置10についても、赤外線発光器20iが発する可視光外波長帯域光ELを受信できればよく、より簡易な構成とすることが可能である。また、バンドパスフィルターFLを、可視光外波長帯域光ELに対応したものとすることで、可視光外波長帯域光EL以外の成分が含まれることをより抑制できる。
【0054】
本実施形態においても、可視光外波長帯域光ELを利用して、外乱光の影響を抑えつつ、点滅周期に差異を生じさせることを利用して、種々の信号の識別を可能にし、例えば自動運転化に寄与できる。特に、本実施形態では、簡易な構成で、より的確に信号の識別ができる。
【0055】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0056】
まず、上記のうち、受信装置10について、的確な受光が可能であれば、受光素子は、イメージセンサー11rに限らず、種々のものが採用でき、例えばフォトダイオード等を採用することも考えられる。
【0057】
また、可視光外波長帯域光ELの点滅動作を捉えるための手法としては種々の手法を採用することが考えられ、例えば、可視光外波長帯域光ELの輝度変化を的確に捉えるべく、受光面において、輝度に関するフーリエ変換処理等を施す態様としてもよい。
【0058】
また、上記では、発信装置20において、可視光波長帯域光VLを発する装置とは別個に可視光外波長帯域光ELを発する装置を設けているが、これらが混在した状態で発する装置を利用するものとしてもよい。
【0059】
また、取り扱いの対象となる複数種の信号情報についても、種々のものが想定され、鉄道であれば、上記した例以外にも、例えば分岐器における方向転換の指示等について、信号システム100を適用して、信号の受け渡しを行うようにしてもよい。また、これらの鉄道運行に関する各種信号を、1つの発信装置20において集約した構成とすることもできる。これにより、鉄道における信号システム全体を、コンパクトで簡易な構成とすることが可能となる。
【0060】
また、上記では、専用走行路として線路において、鉄道の列車の運行に際して信号システム100を適用するものとしているが、これに限らず、例えば、専用走行路としての軌道(新設軌道、併用軌道)を走行する路面電車、専用走行路としての専用道路を走行するバスについて、信号システム100を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…受信装置、10A,30A…表、11…撮像部、11r…イメージセンサー、12…処理部、12r…信号処理部、20…発信装置、20g…青色信号灯器、20i…赤外線発光器、20r…赤色信号灯器、20y…黄色信号灯器、30…信号生成装置、100…信号システム、A,B…信号情報、C1,C2…曲線、EL…可視光外波長帯域光、FC…周波数制御部、FL…バンドパスフィルター、IT…逆変換処理部、PL…実線、QL…一点鎖線、RL…線路、RS…鉄道信号機、TR…列車、TT…変換処理部、VL…可視光波長帯域光、X…赤外線波長帯域光、Y…紫外線波長帯域光、α,β…点滅周期、α1,α2,β1,β2…状態
図1
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図8