(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174760
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】被転写体の幅方向において少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システム
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20241210BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241210BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241210BHJP
D06P 1/44 20060101ALI20241210BHJP
D06P 5/24 20060101ALI20241210BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20241210BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20241210BHJP
B44C 1/17 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 101
B41J2/01 125
B41J2/01 501
C09D11/322
D06P1/44 E
D06P5/24 Z
D06P5/30
B41M5/52 100
B44C1/17 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092772
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 宜康
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 直志
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 友彦
(72)【発明者】
【氏名】林 宏和
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
3B005
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056FB03
2C056FC02
2C056FD13
2C056HA46
2C056HA47
2C056HA60
2H186AB12
2H186AB17
2H186DA17
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB54
2H186FB56
3B005FA06
3B005FB22
3B005FB37
3B005FE00
3B005GA02
3B005GB01
4H157AA02
4H157BA15
4H157CB08
4H157DA01
4H157GA06
4J039BE01
4J039CA06
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】幅が大きい布に画像を効率的に付与する画像付与システムを提供する。
【解決手段】500mm以上の幅を有する被転写体20の幅方向において少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システム100は、基層と基層の一面上に形成された転写層とを含む転写体10において転写層10にインクジェット方式で画像を印刷する印刷装置110と、転写体を被転写体と重ね合わせて熱及び圧力を掛けることで転写層に印刷された画像を被転写体20に熱転写する転写装置120と、を備える。転写層は、ガラス転移温度又は融点に達すると軟化する熱可塑性樹脂を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500mm以上の幅を有する被転写体の幅方向において前記被転写体の少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システムであって、
基層と前記基層の一面上に形成された転写層とを含む転写体において前記転写層に色材を含有するインクによってインクジェット方式で前記画像を印刷する印刷装置と、
前記転写体を前記被転写体と重ね合わせて熱及び圧力を掛けることで前記転写層に印刷された前記画像を前記被転写体に転写する転写装置と、
を備え、
前記転写層は、ガラス転移温度又は融点に達すると軟化する熱可塑性樹脂を含む、
画像付与システム。
【請求項2】
前記インクは、溶媒をさらに含み、
前記印刷装置は、前記溶媒を蒸発させることで前記画像が印刷された前記転写体を乾燥させる乾燥機構をさらに備える、
請求項1に記載の画像付与システム。
【請求項3】
前記乾燥機構は、前記画像の印刷中、前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域を前記転写体の下面から接触することで加熱する加熱ヒーター部、又は前記転写体の少なくとも一部領域を前記転写体の上面から風を吹き付けることで乾燥させる送風乾燥部を含む
請求項2に記載の画像付与システム。
【請求項4】
前記乾燥機構は、前記印刷装置が前記画像を前記転写体に印刷してから前記転写体が他の表面と接触するまでの間に該表面に前記画像を構成するインクが付着しない程度に前記画像を乾燥させる、
請求項2に記載の画像付与システム。
【請求項5】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に着弾されている領域である、
請求項2に記載の画像付与システム。
【請求項6】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に着弾されると同時に乾燥される、
請求項5に記載の画像付与システム。
【請求項7】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に吐出される前の領域である、
請求項2に記載の画像付与システム。
【請求項8】
前記被転写体は、天然繊維又は合成繊維のシートである、
請求項1に記載の画像付与システム。
【請求項9】
前記インクは、水性インクであり、
前記色材は、無機顔料又は有機顔料である、
請求項1に記載の画像付与システム。
【請求項10】
前記転写装置は、前記転写層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度又は融点より高い温度を印加することで転写をする、
請求項1に記載の画像付与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体の幅方向において少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システムに関する。
【背景技術】
【0002】
布に模様などの画像を印刷する従来技術として、昇華転写捺染法、ダイレクト昇華印刷法、DTG(Direct To Garment)、DTF(Direct To Film)印刷法、ラバー転写印刷法がある。
【0003】
昇華転写捺染法では、分散染料を用いて転写紙に反転画像を印刷し、転写紙をポリエステル生地と重ねて熱及び圧力をかけることで、転写紙から布へと画像を転写する。
【0004】
ダイレクト昇華印刷法では、転写紙を用いず、インクにじみ防止のため糊付けのコーティングを施したポリエステル生地に直接に画像を印刷し、その後、ヒーターに掛けて発色させる。
【0005】
DTG印刷法では、ガーメント等の生地に顔料インクを用いて直接画像を印刷し、ヒートプレス機等を用いて発色およびインクの定着が行われる。生地の種類又は色によっては前処理剤を塗布し、ヒートプレス機で定着させた後顔料インクを用いて印刷する。
【0006】
DTF印刷法では、プラスチックフィルムの転写体の上にカラーインクで反転画像を印刷し、画像層上にホワイトインクで隠蔽層を形成し、隠蔽層の上に接着剤としてホットメルト樹脂粉末をまぶしてから、この転写体をTシャツなどのリーフメディアと重ねて熱及び圧力をかけることで、転写体から布へと画像を転写する。その後、転写体を布から剥離する。
【0007】
ラバー転写印刷法では、一面に接着層が施され台紙に貼り付けられているラバーシートの他面に画像を印刷し、台紙ごとラバーシートをその画像よりも少し大きめに切り取ってから、台紙を剥がして、リーフメディアなどの布に接着層が接するようにラバーシートを布と重ねて熱及び少しの圧力をかけることで、ラバーシートを布に接着させる。その後、仕上げプレスを行い、ラバーシートを完全に布に付着させる。
【0008】
また、特許文献1は、昇華転写捺染法及びダイレクト昇華印刷法とは異なり分散染料以外の色材を含有するインクを用いて画像を転写体に印刷でき、且つ、DTF印刷法及びラバー転写印刷法とは異なり布に接着させる面に画像を印刷できる転写シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2022/0169068号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
昇華転写捺染法及びダイレクト昇華印刷法では、色材が分散染料に限られ他の色材を使用できず、画像を付与する布もポリエステル生地に限定されるのみならず、染料の発色や染料の布への定着のために種々の前処理及び後処理が必要となり非効率的である。また、こうした処理は多量の廃液を生じ、環境や人体に悪影響を与えかねない。特に、ダイレクト昇華印刷法の場合、ベルト搬送を用いられる装置では、生地に印刷するとインクが裏抜け(生地の裏側に染み出る)するため、ベルトの洗浄機構が必要となる。また、この場合、ベルト上に生地を密着させるために地張剤と呼ばれる薬品をベルト上に定期的塗布及び洗浄する必要があり、薬品による溶剤臭の発生、洗浄による多量の汚染水の発生は避けられない。
【0011】
DTG印刷法では、生地の種類や色によって前処理剤を塗布する必要があり、生地に前処理剤を均一に塗布できていないと、仕上がりに影響が出る場合もある。また、生地に前処理剤の塗布跡や臭いが残る場合がある。またダイレクト昇華印刷法と同じくインクの裏抜け等によりプラテンを洗浄する必要となり汚染水が発生する。このため、DTG印刷法も非効率的で環境や人体に悪影響を与えかねない。
【0012】
DTF印刷法では、転写体への画像の印刷に加えて、隠蔽層を形成し、接着剤としてホットメルト樹脂粉末を振りかける必要があり、作業工程が煩雑であり非効率的である。さらに、粉末は印刷中の粉塵の発生をもたらす可能性があり、環境や人体に悪影響を与えかねない。
【0013】
ラバー転写印刷法では、ラバーシートへの画像の印刷に加えて、余分なラバーシートを切り取ったり、仕上げプレスを行ったりせねばならず、作業工程が煩雑であり非効率的である。
【0014】
特許文献1に記載の転写シートによれば、昇華転写捺染法及びダイレクト昇華印刷法とは異なり色材として分散染料以外のものを用いることができ、DTF印刷法及びラバー転写印刷法とは異なり簡便に画像を印刷された転写シートを設けることができる。しかし、こうした転写シートを用いて幅が大きい布に画像を効率的に付与する画像付与システムは知られていなかった。
【0015】
以上を鑑み、本発明は、幅が大きい布などの被転写体の幅方向において少なくとも一部領域に画像を効率的に付与する画像付与システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の観点に係る被転写体の幅方向において前記被転写体の少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システムは、
500mm以上の幅を有する被転写体の幅方向において少なくとも一部領域に画像を付与する画像付与システムであって、
基層と前記基層の一面上に形成された転写層とを含む転写体において前記転写層に色材を含有するインクによってインクジェット方式で前記画像を印刷する印刷装置と、
前記転写体を前記被転写体と重ね合わせて熱及び圧力を掛けることで前記転写層に印刷された前記画像を前記被転写体に転写する転写装置と、
を備え、
前記転写層は、ガラス転移温度又は融点に達すると軟化する熱可塑性樹脂を含む、
ことを特徴とする。
【0017】
以上の構成によれば、例えば、画像を布などの被転写体に転写する際に従来は必要とされていた煩雑な処理の一部又は全部を省略できるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0018】
前記インクは、溶媒をさらに含み、
前記印刷装置は、前記溶媒を蒸発させることで前記画像が印刷された前記転写体を乾燥させる乾燥機構をさらに備えてもよい。
【0019】
以上の構成によれば、例えば、転写体のインクが着弾した後、インクの溶媒を揮発させることで転写体に印刷された画像におけるインクの滲みを抑制できる。これにより、不良品率が下がるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0020】
前記乾燥機構は、前記画像の印刷中、前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域を前記転写体の下面から接触することで加熱する加熱ヒーター部、又は前記転写体の少なくとも一部領域を前記転写体の上面から風を吹き付けることで乾燥させる送風乾燥部を含んでもよい。
【0021】
以上の構成によれば、例えば、簡潔な構成で効率的に画像を乾燥させることができるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0022】
前記乾燥機構は前記印刷装置が前記画像を前記転写体に印刷してから前記転写体が他の表面と接触するまでの間に該表面に前記画像を構成するインクが付着しない程度に前記画像を乾燥させるのでもよい。
【0023】
以上の構成によれば、例えば、印刷装置による印刷後に転写体をロール状に巻き取る際に又は転写体を転写装置に搬送したりする際に画像が好適に乾燥しているので、転写体のロールでのインクの裏移りや搬送中の転写体から搬送機構への色移りを抑制又は防止できる。また、巻き取りや搬送の前にインクが好適に乾燥していることにより、インクの自然乾燥のための時間を別途設ける必要がないので、時間の節約となり、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0024】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に着弾されている領域であってもよい。
【0025】
以上の構成によれば、例えば、印刷装置による印刷後に転写体をロール状に巻き取る際に又は転写体を転写装置に搬送したりする際に画像が好適に乾燥しているので、転写体のロールでのインクの裏移りや搬送中の転写体から搬送機構への色移りを抑制又は防止できる。また、巻き取りや搬送の前にインクが好適に乾燥していることにより、インクの自然乾燥のための時間を別途設ける必要がないので、時間の節約となり、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0026】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に着弾されると同時に乾燥されてもよい。
【0027】
以上の構成によれば、例えば、転写体に印刷された画像におけるインクの滲みを抑制又は防止できる。これにより、不良品率が下がるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0028】
前記転写体の搬送経路上の少なくとも一部領域は、前記インクが前記転写体の表面に吐出される前の領域であってもよい。
【0029】
以上の構成によれば、例えば、続く転写体の乾燥を促進できるので、乾燥効率が向上するので、時間の節約となり、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0030】
前記被転写体は、天然繊維又は合成繊維のシートであってもよい。
【0031】
以上の構成によれば、例えば、天然繊維又は合成繊維に含まれる反応基と転写層に含まれている反応性ポリマーとが反応することで転写された画像がより強固に被転写体に付着又は接着することとなる。これにより、不良品率が下がるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0032】
前記インクは、水性インクであり、
前記色材は、無機顔料又は有機顔料であってもよい。
【0033】
以上の構成によれば、例えば、昇華型インクなどの従来の捺染用インクを用いる場合に従来は必要とされていた煩雑な処理の一部又は全部を省略できるので、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【0034】
前記転写装置は、前記転写層の熱可塑性樹脂のガラス転移温度又は融点より高い温度を印加することで転写をするのでもよい。
【0035】
以上の構成によれば、例えば、転写を確実に行えるので、不良品率が下がり、被転写体に画像を効率的に付与できる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、布などの被転写体に画像を効率的に付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】転写体及び被転写体の断面模式図。(a)は画像が印刷される前の転写体、(b)は画像が印刷された後の転写体、(c)は熱転写中の転写体及び被転写体、(d)は熱転写完了後に剥離した後の転写体及び被転写体を示す。
【
図2】本実施形態に係る画像付与システムの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の一実施形態に係る画像付与システム100について、図面を参照しつつ説明する。画像付与システム100は、
図1(a)~(d)に示すように転写体10上にインクジェット方式で印刷した反転画像を被転写体20上に熱転写することで被転写体20上の少なくとも一部の領域に画像を付与するためのシステムである。なお、本明細書では、画像は、写真的な又は精緻な図柄に限定されず、単純な図柄、1色による無地柄、及び文字柄などを含む。
【0039】
(転写体10の構成)
転写体10は、シート状の転写用媒体であり、保管や輸送のために、ロール状に巻き取り可能である。なお、本明細書では、シートはフィルムを含む。ロール状に巻き取られたときの転写体10の幅は、ロール状に巻き取られたときの被転写体20の幅以下であることが好ましく、500mm以上、900mm以上、又は、1100mm以上であり、1400mm以上、及び/又は、920mm以下、1200mm以下、又は1800mm以下であることが好ましい。転写体1は、
図1(a)に示すように、基層11と、基層11の一面上に形成された転写層12とを備える。
【0040】
基層11は、任意の材料から構成されるシートである。例えば、基層11の材料としては、紙、布、プラスチックなどが挙げられる。基材11は、特に、転写層12に印刷されたインクの乾燥を助けるために通気性を有することが好ましい。こうした基層11としては、セルロース系紙、不織布製シート、フリース製シート、多孔質フィルムなどが挙げられる。
【0041】
転写層12は、
図1(b)に示すように、インクによりそこに画像を印刷可能であり、且つ、
図1(d)に示すように、当該画像とともに被転写体20上に接着可能な層である。以降、インクを吸収し画像を構成する転写層12の部分を画像層13と呼ぶ。転写層12は、インクジェット印刷用媒体で用いられるインク受理層に被転写体20への接着能力を付与したものともいえる。このため、転写層12は、ガラス転移温度又は融点に達すると軟化する熱可塑性樹脂を含む。こうした熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどが挙げられる。また、転写層12には、好ましくは、布との反応性を有する反応性ポリマー、より好ましくは、架橋性ポリマー、特に、自己架橋性ポリマーが含まれていてもよい。こうした反応性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンアミン、イソシアネート、カルボジイミド、及び炭酸ジルコニウムアンモニウムが挙げられる。
【0042】
天然繊維は、こうした反応性ポリマーと反応する反応基、例えば、水酸基、アンモニウム基などを含んでいる。こうした反応基は、天然繊維に含まれるセルロース、ヘミセルロース、ケラチンなどのタンパク質成分及び/又は多糖類成分に由来すると考えられる。これらの反応基と反応性ポリマーとの反応によりインクに含まれる色材の天然繊維への付着性又は接着性が改善される。特に、綿は、それを構成するセルロースが水酸基を含むため、イソシアネート、カルボジイミド、及び炭酸ジルコニウムアンモニウムといった反応性ポリマーとの反応性がよい。
【0043】
また、転写層12は、さらに、バインダー、レオロジー調整剤、顔料、消泡剤、湿潤剤などを含んでもよい。
【0044】
画像を転写体10から被転写体20に熱転写する場合、まず、
図1(c)に示すように、画像層13が形成された転写層12を被転写体20に接触させた状態で転写体10を加熱しながら圧力を掛けて被転写体20に押し当てる。その後、被転写体20から転写体10を剥がすと、
図1(d)に示すように、被転写体20上に接着された転写層12及び画像層13の一部又は全部が基層11から剥離して被転写体20上に残存して、画像が被転写体20上に転写される。転写層12の厚み又は転写層12がインクに浸透される性能は、転写層12に印刷されたインクが被転写体20上に残存した転写層12の露出面から画像が良好に視認可能なように、特に、当該インクが当該露出面まで又は露出面の直下まで浸透するように設けられる。
【0045】
例えば、転写体10として、TEXCOL(商標)(Neenah Coldenhove社製)を用いてもよい。
【0046】
(画像を印刷するためのインクの組成)
画像を印刷するためのインクは、後述する印刷装置110によるインクジェット印刷に用いることができる任意のインクジェットインクである。例えば、こうしたインクとして、一般的なインクジェットインク、ラテックスインク、紫外線硬化型インク、昇華型インクなどが挙げられる。インクに含まれる色材は、任意であり、無機顔料又は有機顔料などの顔料でもよいし、染料でもよい。インクは、溶媒が水である水性インク、特に、水性顔料インクでもよい。水性インクは環境や人体への影響がなく安全性が高い。インクは、樹脂を含有してもよい。こうした樹脂としては、水性ウレタン系樹脂、水性アクリル系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、色材、特に、顔料と、転写層12又は被転写体20との付着又は接着を助ける。
【0047】
(被転写体20の構成)
被転写体20は、織物、編物、不織布などの布であり、保管や輸送のために、ロール状に巻き取り可能である。被転写体20の生地としては、綿、絹、麻などの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、ウールなどの合成繊維が挙げられる。ロール状に巻き取られたときの被転写体20の幅は、500mm以上、900mm以上、又は、1100mm以上であり、1400mm以上、及び/又は、920mm以下、1200mm以下、又は1800mm以下であることが好ましい。
【0048】
(画像付与システム100の構成)
画像付与システム100は、
図2に示すように、印刷装置110と転写装置120とを備える。さらに、画像付与システム100は、印刷装置110及び転写装置120を制御する制御部も備える。下記で説明される印刷装置110及び転写装置120の動作は、制御部の制御にもとで行われる。なお、画像付与システム100全体を制御する制御部に代えて又は加えて、印刷装置110及び転写装置120のそれぞれに動作を制御するための制御部を設けてもよい。
【0049】
(印刷装置110の構成)
印刷装置110は、転写体10上に上述のインクで画像をインクジェット方式で印刷するインクジェットプリンタである。印刷装置110は、
図2に示すように、搬送機構30と、印刷部40と、加熱部50とを備える。
【0050】
搬送機構30は、転写体10をロール・ツー・ロール方式で搬送方向(副走査方向)に沿って搬送し印刷部40を通過させる。搬送機構30は、転写体10のロールから転写体10のシートを繰り出す繰り出しローラー31と、繰り出された転写体10を印刷部40内を通して搬送するプラテン32と、プラテン32により搬送された画像層13が形成された転写体10のシートをロール状に巻き取る巻き取りローラー33とを備える。また、搬送機構30は、必要に応じて、転写体10がローラー及びプラテンの1つ以上から浮き上がらないようにするための1つ以上のピンチローラー(図示せず)を備える。
【0051】
印刷部40は、搬送機構30により搬送されている転写体10にインクを吐出して画像を印刷する。印刷部40は、インク貯蔵部(図示せず)と、インク供給機構(図示せず)と、プリントヘッド41と、プリントヘッド41の駆動装置42とを備える。
【0052】
インク貯蔵部は、インクを貯蔵する複数のタンク又はボトルから構成され、インク供給機構を介して、これらのインクをプリントヘッド41に供給する。
【0053】
プリントヘッド41は、インクをインクジェット方式で転写体10に吐出する。プリントヘッド41に採用するインクジェット方式は任意であり、例えば、ピエゾ方式又はサーマル方式である。プリントヘッド41は、通常、インクを吐出するノズルを複数備えるが、各色のインクのそれぞれについて単一のノズルのみを備えていてもよい。また、プリントヘッド41は、単一のプリントヘッドであってもよいし、複数のプリントヘッドから構成されていてもよい。
【0054】
プリントヘッド41の駆動装置42は、プリントヘッド41を転写体10の搬送方向と直行する方向(主走査方向)に移動させる。駆動装置42は、例えば、プリントヘッド41を搭載するキャリッジ42aと、キャリッジ42aを主走査方向に移動可能に支持するガイドレール42bと、ガイドレール42bの各端部に一組配置される、キャリッジ42aを牽引索及び牽引索を巻き取る巻き取り機構とを備える。
【0055】
加熱部50は、印刷部40による転写体10への印刷と並行して転写体10を加熱する。プリントヘッド41が走査されてインクを吐出する領域に対向するプラテン32の部分をプラテン中央部32b、プラテン中央部32bより搬送方向上流にあるプラテン32の部分をプラテン前部32a、プラテン中央部32bより搬送方向下流にあるプラテン32の部分をプラテン後部32cとしたとき、加熱部50は、プラテン前部32aを加熱するプレヒーター51と、プラテン中央部32bを加熱するプリントヒーター52と、プラテン後部32cを加熱するアフターヒーター53とを備える。プレヒーター51、プリントヒーター52、アフターヒーター53は、プラテン32の加熱を介してその表面を滑る転写体10を所定の温度に加熱するプラテンヒーターである。例えば、こうしたプラテンヒーターとして、セラミックやニクロム線を用いた電熱ヒーターなどが挙げられる。
【0056】
プレヒーター51は、例えば、プリントヒーター52及びアフターヒーター53での加熱乾燥に要する時間を短縮するために、転写体10を所定の温度、例えば、40~60℃で加熱する。プレヒーター51は、高湿環境では転写体10の含水量を調整することでインクの定着を助ける。また、プレヒーター51が単独で使用されるより、プリントヒーター52又はアフターヒーター53と組み合わせて使用されることで、インクの滲みをさらに抑制することができる。ただし、転写体10を加熱する所定の温度は、これらの温度に限定されず、目的又はインクの着弾量に応じて適宜設定することができる。
【0057】
プリントヒーター52は、転写体10を、目的又はインクの着弾量に応じて、所定の温度で、例えば、40~60℃で加熱する。例えば、インクの滲み防止では40~60℃で、裏抜け防止又は裏移り防止は50~60℃で加熱する。こうして転写体10に印刷されたインクを乾燥させることで、印刷されたインクの滲み及び転写体10がロール状に巻き取られたときに重なっている部分へのインクの移りが抑制又は防止される。ただし、転写体10を加熱する所定の温度は、これらの温度に限定されず、目的又はインクの着弾量に応じて適宜設定することができる。
【0058】
アフターヒーター53は、転写体10を、目的又はインクの着弾量に応じて、所定の温度で、例えば、40~60℃で加熱する。例えば、インクの滲み防止では40~60℃で、裏抜け防止又は裏移り防止は50~60℃で加熱する。こうして転写体10に印刷されたインクを乾燥させることで、印刷されたインクの滲み及び転写体10がロール状に巻き取られたときに重なっている部分へのインクの移りがより一層に抑制又は防止される。ただし、転写体10を加熱する所定の温度は、これらの温度に限定されず、目的又はインクの着弾量に応じて適宜設定することができる。
【0059】
(転写装置120の構成)
転写装置120は、転写体10上の画像を被転写体20に熱転写する熱転写ローラー機である。転写装置120は、
図2に示すように、搬送機構60と、加熱加圧部70とを備える。
【0060】
搬送機構60は、画像層13が形成された転写体10と被転写体20とをロール・ツー・ロール方式で搬送する。この過程で、搬送機構60は、転写体10の転写層12及び画像層13が被転写体20の転写予定面に接するように重なった転写体10及び被転写体20を加熱加圧部70に送り込み、その後、加熱加圧部70から出てきた転写体10及び被転写体20を互いに剥離させる。搬送機構60は、画像層13が形成された転写体10のロールから転写体10のシートを繰り出す繰り出しローラー61と、被転写体20のロールから被転写体20のシートを繰り出す繰り出しローラー62と、こうして繰り出された転写体10及び被転写体20を重なった状態で加熱加圧部70へと搬送する1つ以上のガイドローラー63及びプラテン64と、加熱加圧部70から出てきた転写体及び被転写体20を異なる方向に搬送して剥離させる1つ以上のガイドローラー65と、画像層13が転写された被転写体20のシートをロール状に巻き取る巻き取りローラー66と、使用済みの転写体10をロール状に巻き取る巻き取りローラー67とを備える。また、搬送機構60は、必要に応じて、転写体10及び被転写体20がローラー及びプラテンの1つ以上から浮き上がらないようにするための1つ以上のピンチローラー(図示せず)を備える。
【0061】
加熱加圧部70は、転写体10から被転写体20に画像を熱転写するために、転写体10の転写層12及び画像層13が被転写体20の転写予定面に接するように重なった転写体10及び被転写体20に所定の圧力(例えば、4~8バール)を印加しながら所定の温度(転写体10の転写層12の熱可塑性樹脂が軟化する温度(ガラス転移点又は融点)、被転写体20の耐熱性によっても変わるが、例えば、100~200℃、より好ましくは160~200℃)まで転写体10の転写層12及び画像層13を加熱する。圧力と温度は被転写体20の生地の厚さや耐熱性に応じて調整される。例えば、これにより、無駄なエネルギーが抑えられる。所定の温度は、例えば、転写体10の転写層12の熱可塑性樹脂のガラス転移温度又は融点より高い温度でもよい。加熱加圧部70は、加熱ローラー71と、加圧装置72とを備える。
【0062】
加熱ローラー71は、後述する加熱装置72のベルト72aとの間に転写体10及び被転写体20を挟みながら回転し、その回転の過程で転写層12とは反対側の転写体10の背面から転写層12を加熱する。加熱ローラー71は、例えば、金属ローラーなどの熱伝導性ローラーと、熱伝導性ローラーを加熱することで熱伝導性ローラーに接している転写体10を間接的に加熱する電熱ヒーターとを含む。
【0063】
加圧装置72は、前述の加熱ローラー71との間に転写体10及び被転写体20を挟みながら加熱ローラー71と共動して搬送し、その搬送の過程で被転写体20側から転写体10及び被転写体20に圧力を印加する。加圧装置72は、加熱ローラー71に掛け回されているベルト72aと、加熱ローラー71の回転速度に適合する速度でベルト72aを駆動する駆動ローラー72bと、加熱ローラー71を取り囲むようにベルト72aを支える従動ローラー72cと、ベルト72aが加熱ローラー71並びにその上の転写体10及び被転写体20に印加する圧力を調節する加圧ローラー72dとを備える。加圧ローラー72dは、加圧ローラー72dの位置を遷移させることでベルト72aのたるみを増減させることでベルト72aと加圧ローラー71との間の距離を増減させてベルト72aが加圧ローラー71に印加する圧力を増減させる。
【0064】
転写体10及び被転写体20が加熱加圧部70を出てから互いに剥離されるまでの距離は、転写体10の温度、特に、転写層12及び画像層13の温度が、室温(例えば、25℃)よりも高い温度での剥離(いわゆる、ホットピーリング)に適した温度、例えば、転写体10の転写層12の熱可塑性樹脂が軟化する温度より低くない温度、つまり熱可塑性樹脂が固まらない温度であるうちに転写体10及び被転写体20が剥離されるような長さに設けられている。例えば、当該距離及び転写体10及び被転写体20の搬送速度は、転写体10及び被転写体20が加熱加圧部70を出てからすぐ剥離することが好ましく、少なくとも転写層12の熱可塑性樹脂が固まらない温度であるうちに剥離することが好ましい。
【0065】
(制御部)
制御部は、印刷装置110及び転写装置120が上記動作を行うよう、各装置を制御する。
【0066】
制御部は、プログラム、各種データを記憶する記憶装置(ハードディスク、フラッシュメモリ等)と、記憶装置に記憶されたプログラムを実行し、各種データを用いることで前記印刷処理を実際に実行するプロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)と、当該プロセッサのメインメモリと、各種インターフェースと、を含んで構成される。制御部は、例えば、パーソナルコンピュータ等の各種のコンピュータにより構成されればよい。
【0067】
(被転写体への画像付与処理)
制御部は、搬送装置30に転写体10を搬送経路に沿って搬送させ、その過程で、印刷部40に転写体10への印刷を行わせる。その後、巻き取りローラー33に巻き取られた転写体10が、例えば使用者により、搬送装置60の繰り出しローラー61に設置される。その後、制御部は、搬送装置60に転写体10及び被転写体20を搬送経路に沿って搬送させ、両者を重ねさせ、加熱加圧部70に送り込ませ、加熱加圧部70から出た転写体10及び被転写体20を剥離させ、最終的に、転写体10を巻き取りローラー67に、被転写体20を巻き取りローラー66に巻き取らせる。制御部は、この過程で、加熱加圧部70に転写体10から被転写体20へと画像を転写させる。
【0068】
(本実施形態の効果)
従来の捺染方法では、昇華捺染の場合は、分散染料の発色及び定着のために種々の処理が必要であり、また、DTF印刷法及びラバー転写印刷法の場合は、画像を印刷された転写体を形成するために種々の処理が必要となり煩雑であった。また、特許文献1に記載の転写シートを用いて幅が大きい布に画像を効率的に付与する画像付与システムは知られていなかった。
【0069】
一方、本実施形態に係る画像付与システム100によれば、色材の性質に依存せずに転写体10の転写層12に含まれる熱可塑性樹脂により色材を布に付着又は接着させることができるので、画像を布に転写する際に従来は必要とされていた煩雑な処理の一部又は全部を省略できる。このため、布に画像を効率的に付与できる。
【0070】
(変形例1)
上述の実施形態では、画像を印刷された転写体10は印刷装置110用の巻き取りローラー33によりロール状に巻き取られてから、転写装置120用の繰り出しローラー61に再び設置されるが、この代わりに、画像を印刷された転写体10が印刷装置110から転写装置120へと直にロール・ツー・ロール方式で供給されてもよい。
【0071】
本変形例に係る印刷装置200について、
図2を参照しつつ、説明する。印刷装置200は、印刷装置210と、転写装置220とを備える。印刷装置210及び転写装置220は、搬送機構30及び搬送機構60の代わりに両機構が一体化した搬送機構80を共有する点を除いては、印刷装置110及び転写装置120と同じである。搬送機構80は、搬送機構30及び搬送機構60を一体化したものであり、巻き取りローラー33及び繰り出しローラー61の代わりに、1つ以上のガイドローラー81を備える。搬送機構80は、転写体10をロール・ツー・ロール方式で搬送し印刷装置210及び転写装置220を通過させる。
【0072】
(変形例2)
上述の実施形態では、転写体10及び被転写体20はそれらのロールから印刷装置110及び転写装置220に供給されるが、この代わりに、転写体10及び被転写体20の一方又は両方がロール以外の形態で供給されてもよい。例えば、被転写体20は、所定寸法にカットされた布地、布製品などの形態で印刷装置110及び転写装置220に供給されてもよい。また、転写体10は、被転写体20の形状に合わせて、当該形状と相似な形状に、又は、当該形状内に収まる長方形若しくは正方形に、カットされた形態で印刷装置110及び転写装置220に供給されてもよい。
【0073】
また、搬送機構30、60、80は、転写体10及び被転写体20を印刷部40及び加熱加圧部70を通過して搬送できるのであれば任意の搬送機構を採用できる。例えば、搬送機構の一部又は全部にベルトコンベアを採用できる。ベルトコンベアは、例えば、所定寸法にカットされた布地、布製品などの被転写体20の搬送に適している。
【0074】
(変形例3)
印刷装置110、210、特に、印刷部40には、転写体10にインクジェット方式で画像を印刷できるのであれば任意のインクジェットプリンタを採用できる。
【0075】
(変形例4)
上述の実施形態では、プレヒーター51、プリントヒーター52、及びアフターヒーター53から構成される加熱部50を用いているが、プリントヒーター52及びアフターヒーター53のいずれか一方があれば十分である。また、画像の過剰な乾燥を防ぎつつ良好な乾燥結果を得るために、プリントヒーター52及びアフターヒーター53のいずれか一方又は両方の加熱温度、特に、プリントヒーター52の加熱温度は、画像を印刷するために吐出されるインクの量に応じて、インクの量が多ければ温度が高くなりインクの量が少なければ温度が低くなるように調節されてもよい。加熱温度は、実際に吐出されたインクの量に基づいて調節されてもよいし、印刷予定の画像のデータから推定されるインクの消費量に基づいて調節されてもよいし、印字濃度及び/又はパス数などから概算されたインクの消費量に基づいて調節されてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、プラテンヒーターから構成される加熱部50を用いているが、この代わりに、画像が印刷された転写体10を乾燥させることができるのであれば任意の乾燥機構を採用できる。例えば、こうした乾燥機構として、送風乾燥機などが挙げられる。また、こうした乾燥機構として、印刷装置110による画像の印刷中、転写体10の搬送経路上の少なくとも一部領域を転写体の下面から接触することで加熱する加熱ヒーター部、又は前記転写体の少なくとも一部領域を前記転写体の上面から風を吹き付けることで乾燥させる送風乾燥部が挙げられる。加熱ヒーター部は、例えば、プラテンヒーターを含む。送風乾燥部は、例えば、所定の温度の風を吹き付ける送風乾燥機などを含む。ここで、乾燥対象領域は、インクが転写体10の表面に着弾されている領域(例えば、プラテン中央部32b、プラテン後部32cに相当する領域)、インクが転写体10の表面に着弾されると同時に乾燥される領域(例えば、プラテン中央部32bに相当する領域)、インクが転写体10の表面に吐出される前の領域(例えば、プラテン前部32aに相当する領域)であってもよい。こうした乾燥機構も、上述の加熱部50、特に、プレヒーター51、プリントヒーター52、アフターヒーター53と同様に機能する。
【0077】
画像におけるインクの滲みを抑制又は防止するためには、乾燥機構は印刷装置110による印刷中又は印刷直後に乾燥処理を行えるように搬送経路上又は搬送経路近辺に配置される。
【0078】
インクの移りを抑制又は防止するためには、乾燥機構は、印刷装置110が画像を転写体10に印刷してから転写体10が他の表面と接触するまでの間に該表面に画像を構成するインクが付着しない程度に画像を乾燥させればよい。他の表面としては、印刷後の転写体10が巻き取りローラー33に巻き取られる場合の転写層12が形成されている面とは反対側の転写体10の面や、印刷後の転写体10が搬送機構80により搬送される場合の印刷後の転写体10の転写層12に接触する最初のガイドローラー81の表面が挙げられる。このとき、乾燥機構は印刷装置110による印刷中からこうした他の表面との接触までに乾燥処理を行えるように搬送経路上又は搬送経路近辺に配置される。この変形例によれば、巻き取りや搬送の前にインクが好適に乾燥していることにより、インクの自然乾燥のための時間を別途設ける必要がないので、時間の節約となり、布に画像を効率的に付与できる。
【0079】
(変形例5)
上述の実施形態では、転写装置120、220として、加熱ローラー71及び加圧装置72から構成された熱転写ローラー機を用いているが、転写装置120、220には、転写層10に印刷された画像を被転写体20に転写できるのであれば任意の転写装置を採用できる。
【0080】
例えば、加圧装置72として、加圧ローラーを採用してもよい。
【0081】
また、転写装置120、220として、熱プレス機を採用してもよい。
【0082】
(変形例6)
上述の実施形態では、転写装置120、220において、加熱加圧部70から重なって出てきた転写体10及び被転写体20をガイドローラー65により異なる方向に搬送することで互いに剥がすが、こうした剥離機構の代わりに、転写体10及び被転写体20を互いに剥がす任意の剥離機構を採用できる。
【0083】
こうした剥離機構は、被転写体20が搬送方向に不連続な場合、例えば、被転写体20が所定寸法にカットされた布地、布製品などの場合に、特に適している。
【0084】
(変形例7)
上述の実施形態では、転写層12は基層11上に直に形成されているが、この代わりに、基層11からの転写層12の剥離を容易にするために、剥離層が基層11と転写層12との間に設けられてもよい。例えば、室温(例えば、25℃)より高い温度(例えば、100~160℃)である転写体10を被転写体20から剥がす場合(いわゆる、ホットピーリングの場合)、剥離層の材料としては、上述のように画像を被転写体20に熱転写する際の加熱温度で溶ける材料が挙げられる。例えば、こうした溶ける材料として、例えば、シリコーン、アクリレート、ワックスなどが挙げられ、より好ましくは、ポリプロピレンワックスやポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックスが挙げられる。剥離層は、さらに、追加のポリマー又はシリコーン、レオロジー調整剤、界面活性剤、バインダー、顔料などを含んでもよい。
【0085】
上述の実施形態及び変形例に記載の特徴は、矛盾しない限り、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0086】
100、200 画像付与システム
110、210 印刷装置
120、220 転写装置
10 転写体
11 基層
12 転写層
13 画像層
20 被転写体
30 印刷装置用の搬送機構
31 印刷前の転写体10用の繰り出しローラー
32 プラテン
32a プラテン前部
32b プラテン中央部
32c プラテン後部
33 印刷後の転写体10用の巻き取りローラー
40 印刷部
41 プリントヘッド
42 駆動装置
42a キャリッジ
42b ガイドレール
50 加熱部
51 プレヒーター
52 プリントヒーター
53 アフターヒーター
60 転写装置用の搬送機構
61 転写前の転写体10用の繰り出しローラー
62 転写前の被転写体20用の繰り出しローラー
63 ガイドローラー
64 プラテン
65 ガイドローラー
66 転写後の被転写体20用の巻き取りローラー
67 転写後の転写体10用の巻き取りローラー
70 加熱加圧部
71 加熱ローラー
72 加圧装置
72a ベルト
72b 駆動ローラー
72c 従動ローラー
72d 加圧ローラー
80 印刷装置及び転写装置兼用の搬送機構