(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174764
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】スペースデブリ除去システム、スペースデブリ除去方法、スペースデブリ除去装置、及び射出物
(51)【国際特許分類】
B64G 1/64 20060101AFI20241210BHJP
B64G 1/68 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B64G1/64 600
B64G1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092778
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】523111957
【氏名又は名称】株式会社オン
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】弁理士法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 訓範
(72)【発明者】
【氏名】古藤 芳久
(57)【要約】
【課題】
新規なスペースデブリ除去システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置と、射出物とを備えるスペースデブリ除去システムであって、スペースデブリ除去装置が、射出物を射出する射出部を備え、射出部が、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、スペースデブリ除去システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置と、射出物とを備えるスペースデブリ除去システムであって、
スペースデブリ除去装置が、
射出物を射出する射出部
を備え、
射出部が、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、
スペースデブリ除去システム。
【請求項2】
スペースデブリ除去装置を複数備える、
請求項1に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項3】
射出物が、粘着性を有する粘着部を備える、
請求項1又は2に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項4】
射出物が、面状に展開することが可能な面状部を備える、
請求項1又は2に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項5】
コイルへの電圧の印加を制御する電圧印加制御手段と、
射出物が射出されたことを検知する射出検知手段と
を備え、
電圧印加制御手段が、射出検知手段により射出物が射出されたことが検知された場合に、電圧の印加を停止するよう制御する、
請求項1又は2に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項6】
宇宙空間を撮像した画像を取得する画像取得手段と、
レーザー光を利用することで、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離を特定する距離特定手段と、
画像取得手段により取得された宇宙空間の画像、及び、距離特定手段により特定されたスペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離により、スペースデブリの位置に関する情報を特定する位置特定手段と
を備える、
請求項1又は2に記載のスペースデブリ除去システム。
【請求項7】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去方法であって、
射出物を射出する射出ステップ
を有し、
射出ステップが、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、
スペースデブリ除去方法。
【請求項8】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置であって、
射出物を射出する射出部
を備え、
射出部が、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、
スペースデブリ除去装置。
【請求項9】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置に用いられる射出物であって、
粘着性を有する粘着部
を備える、
射出物。
【請求項10】
射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置に用いられる射出物であって、
面状に展開することが可能な面状部
を備える、
射出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペースデブリ除去システム、スペースデブリ除去方法、スペースデブリ除去装置、及び射出物に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙開発の発展に伴い、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の量は年々増加している。
【0003】
スペースデブリが、活動中の人工衛星、有人宇宙船、国際宇宙ステーション(ISS)などに衝突した場合、設備が破壊されたり、乗員の生命に危険が及ぶ可能性がある。
【0004】
そのため、スペースデブリを除去する必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の少なくとも1つの目的は、新規なスペースデブリ除去システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、
[1]射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置と、射出物とを備えるスペースデブリ除去システムであって、スペースデブリ除去装置が、射出物を射出する射出部を備え、射出部が、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、スペースデブリ除去システム;
[2]スペースデブリ除去装置を複数備える、前記[1]に記載のスペースデブリ除去システム;
[3]射出物が、粘着性を有する粘着部を備える、前記[1]又は[2]に記載のスペースデブリ除去システム;
[4]射出物が、面状に展開することが可能な面状部を備える、前記[1]~[3]のいずれかに記載のスペースデブリ除去システム;
[5]コイルへの電圧の印加を制御する電圧印加制御手段と、射出物が射出されたことを検知する射出検知手段とを備え、電圧印加制御手段が、射出検知手段により射出物が射出されたことが検知された場合に、電圧の印加を停止するよう制御する、前記[1]~[4]のいずれかに記載のスペースデブリ除去システム;
[6]宇宙空間を撮像した画像を取得する画像取得手段と、レーザー光を利用することで、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離を特定する距離特定手段と、画像取得手段により取得された宇宙空間の画像、及び、距離特定手段により特定されたスペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離により、スペースデブリの位置に関する情報を特定する位置特定手段とを備える、前記[1]~[5]のいずれかに記載のスペースデブリ除去システム;
[7]射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去方法であって、射出物を射出する射出ステップを有し、射出ステップが、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、スペースデブリ除去方法;
[8]射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置であって、射出物を射出する射出部を備え、射出部が、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出する、スペースデブリ除去装置;
[9]射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置に用いられる射出物であって、粘着性を有する粘着部を備える、射出物;
[10]射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置に用いられる射出物であって、面状に展開することが可能な面状部を備える、射出物;
により、達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規なスペースデブリ除去システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去システムの構成を説明するための概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去装置の連結の態様を説明するための概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去装置と電源装置との接続状況を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る、射出物の例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る、射出物の例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る、位置特定処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態に係る、射出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明をするが、本発明の趣旨に反しない限り、本発明は、以下の実施の形態に限定されない。以下で説明するフローチャートを構成する各処理の順序は、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で順不同であり、また、処理内容に矛盾や不整合が生じない範囲で、フローチャートを構成する各処理の一部を省略することや、フローチャートを構成する各処理に新たな処理を追加することも可能である。また、フローチャートを構成する各処理を実行する主体となる装置は、本発明の趣旨に反しない限り、他の装置へ変更することが可能である。その際、処理内容に矛盾や不整合が生じないように、処理内容を変更することが可能である。
【0010】
本発明のスペースデブリ除去システムは、射出物を射出することによりスペースデブリを除去するスペースデブリ除去装置と、射出物とを備える。「スペースデブリの除去」には、スペースデブリの移動、スペースデブリの軌道変更、スペースデブリの回収などが含まれる。
【0011】
スペースデブリ除去装置は、人工衛星に搭載して宇宙空間へ打ち上げることが可能である。スペースデブリ除去装置は、例えば、人工衛星の外装に備えることができる。スペースデブリ除去装置は、人工衛星に搭載した状態で、宇宙空間に存在するスペースデブリに対して射出物を射出し、スペースデブリを除去することが可能である。人工衛星は、スペースデブリを除去するために打ち上げられるものでもよく、他の目的のために打ち上げられるものでもよい。スペースデブリ除去装置を搭載する人工衛星が備える制御システムを構成する装置には、本発明のスペースデブリ除去システムを利用するためのアプリケーションがインストールされてもよい。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去システムの構成を説明するための概略図である。
図1に示すスペースデブリ除去システム1は、スペースデブリ除去装置11、射出物12、電源装置13、及び制御装置14を備えている。また、
図1に示すスペースデブリ除去装置11は、射出部111、スイッチ回路112、センサ113、及び筐体114を備えている。射出部111とスイッチ回路112、電源装置13とスイッチ回路112、制御装置14とスイッチ回路112、制御装置14とセンサ113、及び、スイッチ回路112とセンサ113は、それぞれ、通信により接続されていてもよく、導線などにより電気的に接続されていてもよい。
【0013】
射出部111は、射出物12を射出するものである。射出部111は、少なくとも1のコイルを備えている。コイルは、空芯のソレノイドコイルであってもよい。例えば、射出部111として、筒状体の外側にコイルが巻回されたものを用いてもよい。筒状体は、円筒体でもよく、角筒体でもよい。つまり、筒状体の筒の長さ方向に垂直な方向における断面の形状は、特に限定されない。コイルに電圧を印加し、電流を流すことで、磁界を発生させることができる。
【0014】
射出物12は、射出部111の内部に配置することができる。以下、射出物12を射出部111の内部に配置することを、射出物12を射出部111又はスペースデブリ除去装置11に装填するという。また、射出部111の内部において射出物12が配置された位置を、射出物12の装填位置という。
【0015】
図1において、射出物12は、射出部111の端部に装填されている。射出物12は、射出部111の内部を通って、
図1において射出物12が装填されている端部と反対の端部から射出される。射出部111及び筐体114において、射出物12が射出される箇所は、開口していることが好ましい。スペースデブリ除去装置11において射出物12が射出される開口部を、射出口ともいう。以下、スペースデブリ除去装置11において、射出口が備えられている側を前方、射出口が備えられている側と反対側を後方とする。射出物12の装填位置は、射出部111の内部の後方側であってもよい。
【0016】
射出物12は、射出物12を構成する素材の少なくとも一部に、磁性体を有する素材を用いる。射出物12に磁性体を有する素材を用いることで、コイルに電流を流すことにより発生する磁界中に存在する射出物12に磁力が作用し、射出物12が、射出部111の後方から前方へ移動する。結果として、射出部111は、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して、射出物12を射出することができる。射出物12が射出される速度は、射出物12に用いる素材、コイルの構成、コイルに印加する電圧などにより、適宜設計可能である。
【0017】
磁性体を有する素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。磁性体を有する素材として、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性を有する素材、アルミニウム、チタン、ジルコニウムなどの常磁性を有する素材などを用いることができる。
【0018】
射出部111の形状は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、射出部111は、筒状の形状を有していてもよい。筒状の形状とは、円筒の形状でもよく、角筒の形状でもよい。射出部111の前後方向に垂直な方向における断面の面積(以下、射出部111の断面積ともいう)は、均一でもよく、不均一でもよい。例えば、射出部111の断面積は、後方から前方となるにつれて、大きくなるように構成されていてもよい。射出部111の断面積が、後方から前方となるにつれて大きくなるように構成されることで、面状に展開することが可能な面状部を備える射出物12が射出される場合に、射出物12が面状に展開しやすくなる。
【0019】
射出部111が備えるコイルの数は、特に限定されず、適宜設計可能である。射出部111が備えるコイルの数は、1つでも、3つでも、5つでもよい。射出部111が複数のコイルを備える場合には、複数のコイルの中心軸が同一線上に位置するよう、複数のコイルを前後に並べて配置することができる。
【0020】
コイルの構成は、特に限定されず、適宜設計可能である。コイルの構成は、射出物12の大きさなどに応じて、設計してもよい。コイルの構成には、例えば、前後方向の長さ、巻き数、単位長さあたりの巻き数、コイルの前後方向に垂直な方向における断面の形状、該断面の面積、コイルを構成する導線の径、該導線の素材などが含まれる。射出部111が複数のコイルを備える場合には、それぞれのコイルの構成は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
また、射出部111が複数のコイルを備える場合には、それぞれのコイルに流れる電流の大きさを変えることも可能である。コイルに流れる電流が大きくなるほど、発生する磁界が強くなる。そのため、例えば、後方のコイルに流れる電流よりも、前方のコイルに流れる電流を大きくすることで、より前方側の磁界を強くし、射出物12が前方へ移動するにしたがって加速していくようにすることができる。
【0022】
電源装置13は、コイルに電圧を印加するための電力を蓄積するものである。電源装置13は、蓄積した電力を、コイルに印加するために適した電力に変換してもよい。例えば、電源装置13は、蓄積した電力の電圧、周波数、波形などを変換することで、射出物12を射出するために適した電力を生成してもよい。
【0023】
また、電源装置13は、スペースデブリ除去装置11を搭載している人工衛星が備える電源システムと接続されていてもよい。人工衛星が備える電源システムは、ソーラー発電により電力を得ることが可能であってもよい。電源装置13及び人工衛星が備える電源システムは、通信により接続されていてもよく、導線などにより電気的に接続されていてもよい。電源装置13は、人工衛星が備える電源システムから電力の供給を受けることが可能であってもよい。
【0024】
電源装置13は、スイッチ回路112を介して、コイルに接続されていてもよい。スイッチ回路112は、コイルへの電圧の印加のオン/オフを切り替えるものである。
【0025】
スイッチ回路112におけるコイルへの電圧の印加のオン/オフの切り替えは、制御装置14により制御されてもよい。制御装置14は、スペースデブリ除去装置11による射出物12の射出を制御するものである。
【0026】
例えば、
図1において、制御装置14がスイッチ回路112におけるコイルへの電圧の印加をオンに切り替えるよう制御した場合、射出部111が備えるコイルへの電圧の印加が開始され、コイルの前方から後方に向かって電流が流れる。そして、制御装置14がスイッチ回路112におけるコイルへの電圧の印加をオフに切り替えるよう制御した場合、射出部111が備えるコイルへの電圧の印加は停止される。
【0027】
なお、スペースデブリ除去装置11がスイッチ回路112を備えない場合には、制御装置14は、スイッチ回路112を介さずに、射出部111が備えるコイルへの電圧の印加の開始及び停止を制御してもよい。
【0028】
制御装置14は、スペースデブリ除去装置11を搭載している人工衛星が備える制御システムと接続されていてもよい。制御装置14及び人工衛星が備える制御システムは、通信により接続されていてもよく、導線などにより電気的に接続されていてもよい。制御装置14は、人工衛星が備える制御システムからの制御にしたがって、スペースデブリ除去装置11による射出物12の射出を制御してもよい。
【0029】
センサ113は、射出物12が射出されたことを検知するものである。「射出物12が射出された」とは、射出物12が装填位置から移動したことを指す。例えば、「射出物12が射出された」とは、射出物12が装填位置になくなったこと、射出物12が射出部111内の所定の位置に到達したこと、射出物12が射出口から射出されたことなどを指してよい。
【0030】
センサ113は、射出部111内を射出物12が通過したことを検知するものであってもよい。センサ113の種類は特に限定されず、適宜設計可能である。センサ113としては、例えば、光電センサ、レーザーセンサなどを採用することができる。センサ113の構成は、例えば、アンプ分離型、アンプ内蔵型、ファイバ型、電池内蔵型などであってよい。また、センサ113による検知方法の種類は、例えば、透過形、拡散反射形、回帰反射形などであってよい。
【0031】
スペースデブリ除去装置11においてセンサ113が備えられる位置は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、センサ113は、装填された射出物12の前端の近傍に備えられてもよく、射出部111の前後方向における略中間の位置に備えられてもよく、射出口の近傍に備えられてもよい。
【0032】
センサ113が、射出物12が射出されたことを検知した場合、射出物12が射出されたことを検知した信号(以下、射出検知信号という)が、制御装置14に送信されてもよい。制御装置14は、射出検知信号を受信した場合、射出された射出物12に対応するコイルへの電圧の印加を停止するように制御してもよい。例えば、制御装置14は、射出検知信号を受信した場合、スイッチ回路112におけるコイルへの電圧の印加をオフに切り替えるように制御してもよい。
【0033】
あるいは、射出検知信号は、スイッチ回路112に送信されてもよい。また、スイッチ回路112は、射出検知信号を受信した場合、コイルへの電圧の印加をオフに切り替えてもよい。その場合、スイッチ回路112にマイコンなどの制御部が備えられていてもよい。そして、スイッチ回路112に備えられた制御部が、射出検知信号を受信してもよい。また、スイッチ回路112に備えられた制御部が、コイルへの電圧の印加をオフに切り替えるように制御してもよい。
【0034】
また、射出検知信号は、人工衛星が備える制御システムへ送信されてもよい。この場合、射出検知信号は、制御装置14を介して制御システムへ送信されてもよく、センサ113から直接制御システムへ送信されてもよい。そして、制御システムは、射出検知信号を受信した場合、スイッチ回路112におけるコイルへの電圧の印加をオフに切り替えるように制御してもよい。
【0035】
図1において、射出部111、スイッチ回路112、及びセンサ113は、筐体114の内部に備えられている。図示しないが、筐体114は、射出部111の前方に、射出口となる開口部を備えていてもよい。筐体114は、筐体114の内部に、少なくとも1つの射出部111を備えていればよい。
【0036】
図示しないが、例えば、1つの筐体114の内部に、2つ以上の射出部111が備えられていてもよい。また、例えば、1つの筐体114の内部に、2つ以上のスイッチ回路112、及び/又は、2つ以上のセンサ113が備えられていてもよい。あるいは、例えば、筐体114の内部に、制御装置14、及び/又は電源装置13が備えられていてもよい。また、例えば、スイッチ回路112、及び/又はセンサ113は、筐体114の外部に備えられてもよい。
【0037】
筐体114の大きさ、素材、形状などは、適宜設計可能である。
【0038】
筐体114は、他の筐体114と連結するための連結部を備えていてもよい。連結部の形状、及び、筐体114同士を連結する方法は、特に限定されず、適宜設計可能である。
【0039】
筐体114を複数連結することが容易であるという観点からは、筐体114の形状は、略直方体の形状であることが好ましい。スペースデブリ除去装置11は、複数の筐体114を連結した状態で、人工衛星に搭載することが可能であってもよい。
【0040】
複数の筐体114を連結する場合、複数の筐体114の大きさ、素材、形状などは、同じであっても、一部又は全部が異なっていてもよい。筐体114を複数連結することが容易であるという観点からは、複数の筐体114の大きさと形状は、同じであることが好ましい。
【0041】
図2は、本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去装置の連結の態様を説明するための概略図である。
【0042】
図2において、スペースデブリ除去装置11は、1つの筐体114と、1つの射出部111とを備えている。そして、複数の筐体114が連結されることで、複数のスペースデブリ除去装置11が連結されている。
図2においては、スペースデブリ除去装置11の射出口が正面から視認されていることとする。なお、
図2(A)~(C)においては、各図、1つの射出部111、筐体114、及びスペースデブリ除去装置11を除き、符号の記載を省略している。
【0043】
図2(A)は、複数のスペースデブリ除去装置11を、横に一列に連結した態様を示す図である。
図2(A)では、4つのスペースデブリ除去装置11が、横に一列に連結されている。
【0044】
図2(B)は、複数のスペースデブリ除去装置11を、縦に一列に連結した態様を示す図である。
図2(B)では、4つのスペースデブリ除去装置11が、縦に一列に連結されている。
【0045】
図2(C)は、複数のスペースデブリ除去装置11を、縦及び横に連結した態様を示す図である。
図2(C)では、縦に4列、かつ、横に4列のスペースデブリ除去装置11が、連結されている。連結されているスペースデブリ除去装置11の数は、合計で16個である。
【0046】
なお、上記における「縦」及び「横」は、スペースデブリ除去装置11の「縦」及び「横」のことを指してもよく、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星の「縦」及び「横」のことを指してもよい。例えば、スペースデブリ除去装置11に上下左右の方向の定義がある場合には、スペースデブリ除去装置11を上下方向に連結することを「縦に連結する」こととし、スペースデブリ除去装置11を左右方向に連結することを「横に連結する」こととしてもよい。あるいは、例えば、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星に上下左右の方向の定義がある場合には、人工衛星に搭載した際に人工衛星の上下方向にスペースデブリ除去装置11を連結した状態となることを「縦に連結する」こととし、人工衛星に搭載した際に人工衛星の左右方向にスペースデブリ除去装置11を連結した状態となることを「横に連結する」こととしてもよい。
【0047】
また、スペースデブリ除去装置11の連結の態様は、上記の記載に限定されず、適宜設計可能である。例えば、スペースデブリ除去装置11は、列を形成しない態様で連結されてもよく、「縦」又は「横」に並ばない態様で連結されてもよい。スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合には、複数のスペースデブリ除去装置11の一部又は全部を、任意の態様で連結することができる。複数のスペースデブリ除去装置11は、それぞれ、電源装置13及び制御装置14と接続されていればよい。
【0048】
スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合、電源装置13とスペースデブリ除去装置11とを接続する態様は、特に限定されず、適宜設計可能である。
【0049】
例えば、スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合、1つの電源装置13に対して、2つ以上のスペースデブリ除去装置11が接続されてもよい。1つの電源装置13に対して、2つ以上のスペースデブリ除去装置11を接続する態様は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、1つの電源装置13に対して、2つ以上のスペースデブリ除去装置11を、並列に接続してもよい。
【0050】
図3は、本発明の実施の形態に係る、スペースデブリ除去装置と電源装置との接続状況の例を示す模式図である。
図3は、
図2(C)のように、縦に4列、かつ、横に4列のスペースデブリ除去装置11が連結された場合の、スペースデブリ除去装置11と電源装置13との接続状況の例を、模式的に示した図である。
【0051】
図3において、16個のスペースデブリ除去装置11(11a、11b、・・・、及び11p)は、1つの電源装置13に対して、並列に接続されている。それぞれのスペースデブリ除去装置11の内部において、電源装置13は、スイッチ回路112を介して射出部111のコイルに接続されていてもよい。
【0052】
あるいは、例えば、スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合、スペースデブリ除去システム1は複数の電源装置13を備え、1つの電源装置13に対して、1つのスペースデブリ除去装置11が接続されてもよい。
【0053】
あるいは、例えば、スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合、複数のスペースデブリ除去装置11のうち、次に射出物12を射出するスペースデブリ除去装置11に対して、順次、電源装置13が接続されるような態様であってもよい。
【0054】
なお、図示しないが、スペースデブリ除去システム1は、2つ以上の電源装置13、及び/又は、2つ以上の制御装置14を備えていてもよい。スペースデブリ除去装置11、電源装置13、及び制御装置14の接続の態様は、特に限定されず、適宜設計可能である。スペースデブリ除去システム1が2つ以上の電源装置13、及び/又は、2つ以上の制御装置14を備える場合、1つ以上の電源装置13、及び/又は、1つ以上の制御装置14が故障した場合にも、スペースデブリ除去装置11を、故障していない電源装置13、及び/又は、制御装置14に接続することで、スペースデブリ除去装置11を稼働することが可能である。
【0055】
次に、スペースデブリ除去装置11に用いられる射出物12について説明する。射出物12の形状は、特に限定されず、適宜設計可能である。射出物12の形状は、例えば、球形状であっても、卵形状であっても、円錐形状であっても、角錐形状であっても、直方体形状であっても、円柱形状であっても、角柱形状であっても、砲弾のような形状であってもよい。また、射出物12がスペースデブリを除去する方法も、特に限定されず、適宜設計可能である。
【0056】
図4は、本発明の実施の形態に係る、射出物の例を示す概略図である。
図4(A)~(C)に示す射出物12は、砲弾のような形状であって、本体部121と頭部122とを備えている。以下、
図4(A)~(C)に示す射出物12において、頭部122の先端(頂点)側を上側とし、本体部121の、頭部122と接触していない側を下側とする。
図4(A)~(C)に示す射出物12は、下側を射出部111の後方に向け、上側を射出部111の前方に向けた状態で、射出部111に装填してもよい。
【0057】
図4(A)に示す射出物12aは、略円柱形の本体部121aの上面と、略円錐形の頭部122aの底面とを組み合わせたような形状を有している。
【0058】
図4(B)に示す射出物12bは、略円柱形の本体部121bの上面と、略円錐形の頭部122bの底面とを組み合わせたような形状を有している。射出物12bの頭部122bは、円錐形の頂点が丸みを帯びた形状を有している。
【0059】
射出物12a及び12bは、スペースデブリ除去装置11から射出され、スペースデブリに衝突することで、スペースデブリの移動、及び/又は、スペースデブリの軌道変更を行うことができる。
【0060】
また、スペースデブリ除去装置11と射出物12a、又は、スペースデブリ除去装置11と射出物12bとを、紐などにより物理的に接続しておくことで、スペースデブリに衝突した後の射出物12a又は12bを回収することも可能である。
【0061】
図4(C)に示す射出物12cは、略円柱形の本体部121cの上面と、略円錐形の頭部122cの底面とを組み合わせたような形状を有している。射出物12cの頭部122cの頂点には、略円形でシート状の粘着部123が備えられている。
【0062】
粘着部123は、粘着性を有するものである。粘着部123の素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。粘着部123として、例えば、粘着性を有するゲルシートなどを用いてもよい。
【0063】
粘着部123の形状は、特に限定されず、適宜設計可能である。粘着部123の形状は、例えば、シート状であってもよく、紐状であってもよく、立体形状であってもよい。また、粘着部123がシート状である場合には、シートの形状は、例えば、円形状であっても、楕円形状であっても、多角形状であっても、他の任意の形状であってもよい。また、粘着部123が立体形状である場合には、立体の形状は、例えば、球形状であっても、卵形状であっても、円錐形状であっても、角錐形状であっても、直方体形状であっても、円柱形状であっても、角柱形状であっても、他の任意の形状であってもよい。
【0064】
射出物12cにおいて粘着部123が備えられる位置は、特に限定されず、適宜設計可能である。粘着部123が備えられる位置は、例えば、射出物12cの先端(射出物12cが射出される際の進行方向における前方側の端部)近傍でもよく、射出物12cの先端近傍以外でもよい。
【0065】
あるいは、例えば、射出物12cの本体部121c及び/又は頭部122cの表面が粘着性を有し、粘着部123として機能してもよい。
【0066】
射出物12cは、スペースデブリ除去装置11から射出され、スペースデブリに衝突し、スペースデブリに付着することができる。その結果、射出物12cは、はじかれることなく、射出物12cの運動エネルギーをスペースデブリに伝え(射出物12cの運動エネルギーの一部が、スペースデブリの運動エネルギーに転換され)、スペースデブリの移動、及び/又は、スペースデブリの軌道変更を行うことができる。射出物12cは、粘着部123を備えるため、スペースデブリと衝突する際の角度、スペースデブリの表面の形状などに左右されずに、射出物12cの運動エネルギーをスペースデブリに伝えることが可能である。
【0067】
また、スペースデブリ除去装置11と射出物12cとを、紐などにより物理的に接続しておくことで、付着したスペースデブリを回収することも可能である。
【0068】
なお、射出物12は、内部に空洞を有していてもよく、内部に空洞を有していなくてもよい。
【0069】
図5は、本発明の実施の形態に係る、射出物の例を示す概略図である。射出物12dは、面状に展開することが可能な面状部124を備えている。
図5において、面状部124は、ネットにより構成されている。また、
図5において、面状部124の端部には、3つの錘125(125a、125b、及び125c)が備えられている。
【0070】
射出物12dがスペースデブリ除去装置11から射出されると、図示するように、錘125が拡散し、面状部124が錘125に引っ張られることで、面状部124が面状に展開していく。なお、「錘125が拡散する」とは、錘125が、射出物12dが射出される方向(以下、射出物12dの射出方向ともいう)に対して垂直な方向に移動することを指すものとする。また、「錘125が、射出物12dの射出方向に対して垂直な方向に移動する」とは、錘125の移動をベクトルで表したときに、該ベクトルが、射出物12dの射出方向に対して垂直な方向のベクトル成分を有することを指すものとする。
【0071】
面状に展開した面状部124は、スペースデブリに到達すると、スペースデブリを包み込む、又は、スペースデブリに絡みつくことが可能である。そして、包み込んだ、又は、絡みついたスペースデブリの、移動、及び/又は、軌道変更を行うことができる。射出物12dは、スペースデブリが複数存在する場合には、複数のスペースデブリを、まとめて、移動、及び/又は、軌道変更することが可能である。
【0072】
また、スペースデブリ除去装置11と射出物12dとを、紐などにより物理的に接続しておくことで、包み込んだ、又は、絡みついたスペースデブリを回収することも可能である。
【0073】
面状部124を構成する素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。面状部124を構成する素材は、例えば、ネットでも、布でも、樹脂製のシートでも、革でも、紙でもよい。
【0074】
錘125の素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、錘125の素材は、磁性体を有していてもよい。
【0075】
錘125の形状は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、錘125の形状は、球形状、卵形状、円錐形状、角錐形状、直方体形状、円柱形状、角柱形状などの立体形状であってもよく、円形状、楕円形状、多角形状などの平面形状であってもよい。
【0076】
面状部124に備えられる錘125の数は、特に限定されず、適宜設計可能である。面状部124に備えられる錘125の数は、例えば、3個でも、5個でも、10個でもよい。面状部124に備えられる錘125の数は、面状部124の大きさなどに応じて設計してもよい。
【0077】
また、面状部124において錘125を備える位置は、特に限定されず、適宜設計可能である。錘125は、例えば、面状部124の端部に備えられてもよく、面状部124の端部付近の外縁部に備えられてもよい。錘125は、面状部124を面上に展開しやすい位置に備えられることが好ましい。
【0078】
また、上記においては、面状部124が錘125を備え、錘125が拡散することにより面状部124が面状に展開する例について説明したが、面状部124が面状に展開する態様は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、面状部124が、傘のように展開することが可能な骨組みを備え、射出物12dが射出された後、骨組みが展開することで、面状部124が面状に展開してもよい。
【0079】
面状部124を備える射出物12dは、面状部124を小さく折りたたんだ状態で、射出部111に装填してもよい。
【0080】
なお、スペースデブリ除去システム1を構成する装置等を構成する素材は、特に限定されず、適宜設計可能である。スペースデブリ除去システム1を構成する装置等を構成する素材は、宇宙空間内での使用、高温下での使用、打ち上げる際の衝撃などに耐え得るものであることが好ましい。
【0081】
本発明のスペースデブリ除去システム1は、スペースデブリの位置、移動方向、移動速度など(以下、スペースデブリの位置に関する情報ともいう)を特定し、該スペースデブリに向かって射出物12を射出することが可能であってもよい。以下、スペースデブリの位置に関する情報を特定する態様について説明する。
【0082】
図6は、本発明の実施の形態に係る、位置特定処理のフローチャートである。
【0083】
スペースデブリ除去システム1は、宇宙空間を撮像した画像を取得する(ステップS101)。次に、スペースデブリ除去システム1は、スペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を特定する(ステップS102)。そして、スペースデブリ除去システム1は、ステップS101において取得された宇宙空間の画像、及び、ステップS102において特定されたスペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離により、スペースデブリの位置に関する情報を特定し(ステップS103)、位置特定処理を終了する。
【0084】
ステップS101~ステップS103の処理は、スペースデブリ除去システム1が備えるいずれの装置、機能部、又はシステムにより実行されてもよい。ステップS101~ステップS103の処理は、例えば、スペースデブリ除去装置11が備える制御装置14により実行されてもよく、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星が備える制御システムにより実行されてもよい。以下、ステップS101~ステップS103の処理が、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星が備える制御システムにより実行される例を中心に説明する。
【0085】
ステップS101において、宇宙空間を撮像した画像を取得する方法は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、スペースデブリ除去システム1がカメラなどの撮像装置を備え、該撮像装置が、宇宙空間を撮像してもよい。また、該撮像装置により撮像された画像が、制御システムへ送信されてもよい。該撮像装置は、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星の外装に搭載してもよい。
【0086】
あるいは、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星がカメラなどの撮像装置を備えている場合には、人工衛星が備える撮像装置により撮像された画像が、制御システムへ送信されてもよい。あるいは、他の人工衛星が備える撮像装置により撮像された画像が、スペースデブリ除去装置11を搭載する人工衛星が備える制御システムへ送信されてもよい。他の人工衛星は、他のスペースデブリ除去装置11を搭載するものでもよく、他のスペースデブリ除去装置11を搭載しないものでもよい。
【0087】
「宇宙空間を撮像した画像」は、宇宙空間の内部を撮像した画像であればよく、特に限定されない。「宇宙空間を撮像した画像」は、動画像であってもよく、静止画像であってもよい。「宇宙空間を撮像した画像」には、宇宙空間内に存在するスペースデブリの一部又は全部が写っていることが好ましい。スペースデブリの存在、及び、スペースデブリが移動している方向を特定することが容易であるという観点からは、「宇宙空間を撮像した画像」は、宇宙空間、及び、該宇宙空間内に存在するスペースデブリの全部(全体像)が写っている動画像であることが好ましい。
【0088】
ステップS102において、スペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を特定する方法は、特に限定されず、適宜設計可能である。例えば、スペースデブリ除去システム1は、レーザー光を利用することで、スペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を特定してもよい。その場合、スペースデブリ除去システム1は、レーザー距離計を備えていてもよい。レーザー距離計は、出力が大きく、消費電力が小さいものであることが好ましい。
【0089】
レーザー距離計は、ステップS101において撮像された画像に写っているスペースデブリに対してレーザー光を照射し、スペースデブリにより反射したレーザー光が受光部に到達するまでの時間を基に、レーザー距離計とスペースデブリとの距離を計測することができる。レーザー距離計は、計測した距離を制御システムへ送信してもよい。
【0090】
制御システムは、レーザー距離計から受信したレーザー距離計とスペースデブリとの距離、人工衛星においてレーザー距離計が備えられている位置、及び、人工衛星においてスペースデブリ除去装置11が備えられている位置を基に、スペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を特定することができる。人工衛星においてレーザー距離計が備えられている位置、及び、人工衛星においてスペースデブリ除去装置11が備えられている位置に関する情報は、予め、制御システムに記憶されていてもよい。スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合には、スペースデブリ除去システム1は、次に射出物12を射出するスペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を特定してもよい。
【0091】
ステップS103における、「スペースデブリの位置に関する情報」には、スペースデブリの位置、スペースデブリの移動方向、スペースデブリの移動速度などが含まれ得る。スペースデブリの位置は、スペースデブリ除去装置11に対するスペースデブリの相対的な位置でもよく、所定の座標系等により表されるスペースデブリの絶対的な位置でもよい。また、スペースデブリの移動方向は、スペースデブリ除去装置11に対するスペースデブリの相対的な移動方向でもよく、所定の座標系等により表されるスペースデブリの絶対的な移動方向でもよい。
【0092】
ステップS103において、スペースデブリの位置に関する情報を特定する方法は、特に限定されず、適宜設計可能である。
【0093】
制御システムは、例えば、ステップS101において取得された宇宙空間の画像を基に、スペースデブリが存在する方向を特定してもよい。そして、スペースデブリが存在する方向、及び、ステップS102において特定されたスペースデブリ除去装置11とスペースデブリとの距離を基に、スペースデブリの位置を特定してもよい。
【0094】
また、制御システムは、例えば、スペースデブリの位置を所定の時間ごとに特定することで、スペースデブリの移動方向、及び/又は、スペースデブリの移動速度を特定してもよい。
【0095】
あるいは、制御システムは、例えば、ステップS101において取得された宇宙空間の画像を基に、スペースデブリの移動方向を特定してもよい。
【0096】
上記のような位置特定処理により特定されたスペースデブリの位置に関する情報を基に、制御システムは、射出物12を射出する方向を特定してもよい。また、制御システムは、スペースデブリの位置に関する情報と併せて、スペースデブリ除去装置11を搭載した人工衛星の移動の状況、スペースデブリ除去装置11の射出物12の射出速度(移動速度)などの情報を利用して、射出物12を射出する方向を特定してもよい。
【0097】
スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合には、制御システムは、いずれのスペースデブリ除去装置11から射出物12を射出するかを特定してもよい。スペースデブリ除去システム1は、特定されたスペースデブリ除去装置11の射出口が、特定された方向を向くように、人工衛星、及び/又は、スペースデブリ除去装置11の向きを変更させることができる。人工衛星、及び/又は、スペースデブリ除去装置11の向きの変更は、制御システムにより制御され、実行されてもよい。特定されたスペースデブリ除去装置11の射出口が、特定された方向を向いた状態で、以下のような射出処理が実行されてもよい。
【0098】
図7は、本発明の実施の形態に係る、射出処理のフローチャートである。
【0099】
スペースデブリ除去システム1は、スペースデブリ除去装置11の射出部111が備えるコイルへの電圧の印加を開始する(ステップS201)。スペースデブリ除去システム1は、射出物12が射出されたことを検知すると(ステップS202)、スペースデブリ除去装置11の射出部111が備えるコイルへの電圧の印加を停止し(ステップS203)、射出処理を終了する。
【0100】
ステップS201における、コイルへの電圧の印加は、スペースデブリ除去装置11が備える制御装置14により制御されてもよい。例えば、制御装置14は、制御システムにより特定されたスペースデブリ除去装置11が備えるスイッチ回路112における、コイルへの電圧の印加をオンに切り替えるように制御してもよい。制御装置14は、制御システムから、射出物12を射出するためのコマンド、又は、射出物12を射出するためのトリガーとなる信号を受信したことに応じて、コイルへの電圧の印加を開始するよう制御してもよい。
【0101】
ステップS201において、コイルへの電圧の印加が開始されると、射出物12は、射出部111を通って、スペースデブリ除去装置11の射出口から射出される。
【0102】
ステップS202における、射出物12の射出の検知は、センサ113により行われてもよい。また、センサ113は、ステップS202において、射出物12の射出を検知した場合、射出検知信号を、制御装置14に送信してもよい。
【0103】
ステップS203において、制御装置14は、射出検知信号を受信したことに応じて、ステップS201において電圧の印加を開始したコイルへの電圧の印加を停止するように制御してもよい。例えば、制御装置14は、射出検知信号を受信した場合、制御システムにより特定されたスペースデブリ除去装置11が備えるスイッチ回路112における、コイルへの電圧の印加をオフに切り替えるように制御してもよい。
【0104】
あるいは、射出検知信号は、射出物12を射出したスペースデブリ除去装置11が備えるスイッチ回路112に送信されてもよい。また、スイッチ回路112は、射出検知信号を受信したことに応じて、ステップS203において、コイルへの電圧の印加をオフに切り替えてもよい。
【0105】
なお、上記においては、射出物12の射出の検知に応じてコイルへの電圧の印加が停止される態様について説明したが、スペースデブリ除去システム1は、射出物12の射出の検知を行わず、他の条件を満たした場合に、コイルへの電圧の印加を停止してもよい。例えば、スペースデブリ除去システム1は、コイルへの電圧の印加を開始してから所定の時間が経過した場合に、コイルへの電圧の印加を停止してもよい。その場合、ステップS202は実行されなくてよい。
【0106】
スペースデブリ除去システム1が複数のスペースデブリ除去装置11を備える場合、スペースデブリ除去システム1は、所定のスペースデブリ除去装置11から射出物12を射出した後、他のスペースデブリ除去装置11から射出物12を射出するように制御を開始してもよい。例えば、制御装置14及び/又は制御システムは、射出検知信号を受信した場合、次に射出物12を射出するスペースデブリ除去装置11を特定し、該スペースデブリ除去装置11のコイルへの電圧の印加を開始するよう制御してもよい。他のスペースデブリ除去装置11から射出物12を射出する態様については、上記の位置特定処理、及び/又は射出処理の記載を必要な範囲で採用できる。
【0107】
このように、スペースデブリ除去装置と射出物とを備えるスペースデブリ除去システムにおいて、スペースデブリ除去装置が射出物を射出する射出部を備え、射出部がコイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出することで、新規なスペースデブリ除去システムを提供することができる。
【0108】
本発明のスペースデブリ除去システムは、人工衛星に搭載され、ロケットによって宇宙空間に運搬される。そのため、スペースデブリ除去システムは、安価で、軽量であることが好ましい。本発明のスペースデブリ除去装置は、コイルに電流を流すことにより発生する磁界を利用して射出物を射出するため、構造が単純で、必要となる部品の点数も少ない。よって、安価で、軽量なスペースデブリ除去システムを提供することが可能である。
【0109】
また、このように、スペースデブリ除去システムが、スペースデブリ除去装置を複数備えることで、1つのスペースデブリ除去システムにより、複数のスペースデブリを除去することが容易となる。
【0110】
さらに、このように、スペースデブリ除去システムが、コイルへの電圧の印加を制御する電圧印加制御手段と、射出物が射出されたことを検知する射出検知手段とを備え、電圧印加制御手段が、射出検知手段により射出物が射出されたことが検知された場合に、電圧の印加を停止するよう制御することで、射出物が射出された際に、コイルへの電圧の印加を停止することができる。
【0111】
また、このように、スペースデブリ除去システムが、宇宙空間を撮像した画像を取得する画像取得手段と、レーザー光を利用することで、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離を特定する距離特定手段と、画像取得手段により取得された宇宙空間の画像、及び、距離特定手段により特定されたスペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離により、スペースデブリの位置に関する情報を特定する位置特定手段とを備えることで、スペースデブリの位置を特定することができる。
【0112】
なお、宇宙空間の画像、及び、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離によりスペースデブリの位置に関する情報を特定するシステムは、射出物を射出せずにスペースデブリを除去するシステムにおいても、利用することができる。つまり、宇宙空間を撮像した画像を取得する画像取得手段と、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離を特定する距離特定手段と、画像取得手段により取得された宇宙空間の画像、及び、距離特定手段により特定されたスペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離により、スペースデブリの位置に関する情報を特定する位置特定手段とを備える、スペースデブリ位置特定システムは、単独で利用することが可能である。また、スペースデブリ除去装置とスペースデブリとの距離は、レーザー光を利用して特定してもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 スペースデブリ除去システム
11 スペースデブリ除去装置
12 射出物
13 電源装置
14 制御装置
111 射出部
112 スイッチ回路
113 センサ
114 筐体
121 本体部
122 頭部
123 粘着部
124 面状部
125 錘