(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174767
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用乗員拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2334 20110101AFI20241210BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/207
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092783
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 珠美
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA23
3D054CC04
3D054CC06
3D054CC10
3D054EE20
3D054EE26
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】車両用シートの前後位置によらず、膨張展開したセンターエアバッグで乗員を効果的に拘束できる車両用乗員拘束装置を得る。
【解決手段】車両用シート12に設けられ、作動することによりガスを噴出するインフレータ22と、車両用シート12におけるシートバック16の車幅方向内側の側部に設けられ、ガスが内部に供給されることにより、車両用シート12に着座した乗員の車幅方向内側へ膨張展開するメインチャンバ26と、メインチャンバ26に設けられ、シートバック16の後面に接触するように膨張展開するサブチャンバ28と、を有するセンターエアバッグ24と、を備えた車両用乗員拘束装置10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに設けられ、作動することによりガスを噴出するインフレータと、
前記車両用シートにおけるシートバックの車幅方向内側の側部に設けられ、前記ガスが内部に供給されることにより、前記車両用シートに着座した乗員の車幅方向内側へ膨張展開するメインチャンバと、該メインチャンバに設けられ、前記シートバックの後面に接触するように膨張展開するサブチャンバと、を有するセンターエアバッグと、
を備えた車両用乗員拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーサイドエアバッグ(センターエアバッグ)の下端部を乗員の腰部とコンソールボックスとの間に展開させ、乗員の車幅方向内側への移動を抑制するようにした車両用乗員拘束システムは、従来から知られている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-081958号公報
【特許文献2】特開2014-108740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、膨張展開したセンターエアバッグの下端部が、コンソールボックスと側面視で充分にオーバーラップしていない場合、換言すれば、小柄な乗員の場合など、シートバックの側部における前端面が、コンソールボックスの前面よりも前方側に位置する前側位置を車両用シートが採る場合、膨張展開されたセンターエアバッグによる乗員拘束時において、そのセンターエアバッグは、コンソールボックスから充分な反力を得難い。
【0005】
そのため、車両の側面衝突による慣性力で車幅方向内側へ移動する乗員は、平面視で、センターエアバッグのインフレータが接続されている部位を中心として、そのセンターエアバッグと共に車幅方向内側へ回動する(倒れ込む)可能性がある。すなわち、膨張展開したセンターエアバッグで乗員を効果的に拘束することが困難になるおそれがある。このように、車両用シートの前後位置によらず(車両用シートが前側位置を採ったときでも)、膨張展開したセンターエアバッグで乗員を効果的に拘束できるようにする構成には、未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、車両用シートの前後位置によらず、膨張展開したセンターエアバッグで乗員を効果的に拘束できる車両用乗員拘束装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用乗員拘束装置は、車両用シートに設けられ、作動することによりガスを噴出するインフレータと、前記車両用シートにおけるシートバックの車幅方向内側の側部に設けられ、前記ガスが内部に供給されることにより、前記車両用シートに着座した乗員の車幅方向内側へ膨張展開するメインチャンバと、該メインチャンバに設けられ、前記シートバックの後面に接触するように膨張展開するサブチャンバと、を有するセンターエアバッグと、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車両の側面衝突時に、インフレータが作動し、そのインフレータから噴出されたガスが、車両用シートにおけるシートバックの車幅方向内側の側部に設けられたセンターエアバッグ(メインチャンバ及びサブチャンバ)の内部に供給される。これにより、センターエアバッグの少なくともメインチャンバが、車両用シートに着座した乗員の車幅方向内側へ膨張展開する。なお、「車両の側面衝突時」とは、車両の側面衝突を検知したときだけではなく、車両の側面衝突を予知したときも含む。
【0009】
ここで、例えば車両用シートに着座する乗員が小柄な乗員であると、側面視で、シートバックの側部における前端面がコンソールボックスの前面よりも車両前方側に位置する前側位置を、車両用シートが採ることがある。この場合、膨張展開したセンターエアバッグは、コンソールボックスから反力を得難い。
【0010】
しかしながら、センターエアバッグは、メインチャンバに設けられたサブチャンバを有しており、そのサブチャンバは、シートバックの後面に接触するように膨張展開する。そのため、車両の側面衝突による慣性力で乗員が車幅方向内側へ移動し、センターエアバッグのメインチャンバを車幅方向内側へ押圧しても、そのメインチャンバは、サブチャンバを介して、シートバックから反力を得ることができる。
【0011】
つまり、センターエアバッグのメインチャンバは、平面視で、インフレータが接続されている部位を中心として車幅方向内側へ回動する(倒れ込む)ことが、サブチャンバによって抑制される。したがって、乗員は、車両用シートの前後位置によらず、膨張展開したセンターエアバッグ(少なくともメインチャンバ)によって効果的に拘束される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、車両用シートの前後位置によらず、膨張展開したセンターエアバッグで乗員を効果的に拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係るセンターエアバッグの膨張展開状態を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るセンターエアバッグの膨張展開状態を示す概略側面図である。
【
図3】(A)
図2におけるX-X線矢視概略断面図である。(B)本実施形態に係るセンターエアバッグの内部構造を示す概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両及び車両用シートの上方向、矢印FRを車両及び車両用シートの前方向、矢印RHを車両及び車両用シートの右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両及び車両用シートにおける上下、前後、左右を示すものとする。また、左右方向は、車幅方向及びシート幅方向と同義である。
【0015】
図1、
図2、
図3(A)に示されるように、本実施形態に係る車両用乗員拘束装置10を構成する車両用シート12は、乗員Pが着座する(乗員Pの臀部及び大腿部を支持する)シートクッション14と、乗員Pの背部を支持するシートバック16と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト18と、を有している。乗員Pは、この車両用シート12に、シートベルト装置(図示省略)によって拘束されるようになっている。
【0016】
なお、「乗員P」とは、一例として、WorldSID(国際統一側面衝突ダミー: World Side Impact Dummy)のAF05(米国人成人女性の5パーセンタイル)に相当する小柄な乗員である。また、車両用シート12は、一例として、公知の電動機構によって前後方向に移動可能に構成された右側のフロントシートであり、この車両用シート12を車室に備えた車両は、一例として、右ハンドルの車両とする。つまり、この車両用シート12は、運転席である。
【0017】
車室のフロア(図示省略)における車両用シート12よりも車幅方向内側(車幅方向中央部)には、コンソールボックス(図示省略)が設けられている。コンソールボックスは、平面視で、前後方向を長手方向とする矩形状の中空箱であり、その上部は、開口されて、蓋部によって開閉可能に構成されている。
【0018】
なお、側面視で、シートバック16の側部(サイドサポート部)における最前側に位置する前端面16A(
図2参照)が、コンソールボックスの平坦な前壁よりも前方側に位置する車両用シート12の位置を、最前方側位置(フロントモースト)とする。本実施形態では、小柄な乗員Pの場合に、車両用シート12が最前方側位置を採るものとする。
【0019】
図1~
図3に示されるように、車両用シート12のシートバック16の車幅方向内側の側部である左側の側部(以下「左側部」という)には、車両用シート12に着座した乗員Pの車幅方向内側へ展開するセンターエアバッグ装置20が設けられている。センターエアバッグ装置20は、シートバック16の左側部に埋設されたインフレータ22と、インフレータ22から噴出されたガスが整流布23を介して内部に供給されるセンターエアバッグ24と、を含んで構成されている。
【0020】
インフレータ22は、略円筒形状に形成されたシリンダー型のガス発生装置であり、その軸方向が、シートバック16の左右両側部の骨格を構成するサイドフレーム(図示省略)に沿った方向(略上下方向)とされている。インフレータ22は、車両の側面衝突が検知又は予知されたとき(以下「側面衝突時」という)に作動して、整流布23を介して、センターエアバッグ24の内部へ瞬時にガスを供給可能になっている。
【0021】
センターエアバッグ24は、インフレータ22から噴出されたガスが整流布23を介して内部に供給されることによって膨張展開し、側面視で、車両用シート12に着座した乗員Pの少なくとも臀部から頭部までを覆うメインチャンバ26と、メインチャンバ26の上下方向略中央部よりも若干下側から、その一部(後部)がシートバック16の後面に接触するように膨張展開する平面視略「L」字状のサブチャンバ28と、を有している。
【0022】
メインチャンバ26は、側面視で、その上壁が上方側へ略円弧状に膨出された形状に形成されており、乗員Pの少なくとも臀部、腹部、胸部、肩部、頭部の車幅方向内側である左側面を拘束可能な大きさに構成されている。なお、このメインチャンバ26は、2枚の基布の外周縁部を互いに縫製することで単一の袋状に形成されている。
【0023】
整流布23は、メインチャンバ26の内部に設けられており、インフレータ22から噴出されたガスを上方側及び下方側へ分配するようになっている。具体的に説明すると、整流布23の前部側は、略上下方向が軸方向とされ、かつ上端部が閉塞された略筒状に形成されており、その内部にインフレータ22の少なくとも噴出口側が下方側から挿入されて設けられている。
【0024】
整流布23の後部側は、略上下方向が軸方向とされた筒状に形成されており、上部開口23A及び下部開口23Bを有している。したがって、整流布23は、メインチャンバ26の内部において、インフレータ22から噴出されたガスを上方側及び下方側へ吹き出すことが可能になっている(
図3(B)参照)。なお、整流布23の下部開口23Bは、サブチャンバ28と連通接続されており、その下部開口23Bから噴出されたガスは、サブチャンバ28の内部へ供給されるようになっている。
【0025】
サブチャンバ28は、上下方向に沿った断面視で略円形状に形成されており、前後方向に延在する前後延在部28Aがメインチャンバ26の内部に設けられている。この前後延在部28Aの前側の上壁には、平面視略円形状のベントホール28Hが形成されており、整流布23の下部開口23Bからサブチャンバ28の内部へ供給されたガスは、そのベントホール28Hからメインチャンバ26の内部へ供給されるようになっている(
図3(B)参照)。したがって、サブチャンバ28は、メインチャンバ26よりも若干早く膨張展開が完了する(形状剛性が確保される)ようになっている。
【0026】
また、サブチャンバ28の前後延在部28Aの後端部から連続してシート幅方向内側へ延在する幅延在部28Bは、メインチャンバ26のシート幅方向内側に位置する内壁26A(
図3(A)参照)からシート幅方向内側へ所定長さ(例えば平面視でシートバック16のシート幅方向における略半分の長さまで)突出されており、その幅延在部28Bの側面視略円弧状となる前壁28Fがシートバック16の後面(背面)16Bに接触(当接)するようになっている。
【0027】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用乗員拘束装置10において、次にその作用について説明する。
【0028】
車両の側面衝突時には、インフレータ22が作動し、そのインフレータ22から噴出されたガスが、整流布23を介して、センターエアバッグ24(メインチャンバ26及びサブチャンバ28)の内部へ瞬時に供給される。すると、そのガスの供給によって膨張し始めたセンターエアバッグ24の内圧(膨張圧)によって、車両用シート12のシートバック16における左側部の下部から上部に至る表皮が破断される。
【0029】
すなわち、センターエアバッグ24が膨張展開し、そのメインチャンバ26が、乗員Pの少なくとも臀部、腹部、胸部、肩部、頭部の左側面(車幅方向内側)へ向けて膨張展開する。これにより、側面視で、乗員Pの少なくとも臀部から頭部までの左側面が、メインチャンバ26によって左側方から覆われる。したがって、車両の側面衝突時に、乗員Pの少なくとも臀部から頭部までの左側面をメインチャンバ26によって拘束することができる。
【0030】
ここで、例えば車両用シート12に着座している乗員Pが小柄な乗員の場合には、車両用シート12が最前方側位置を採る。そのため、膨張展開されたセンターエアバッグ24のメインチャンバ26による乗員拘束時において、そのメインチャンバ26は、コンソールボックスから充分な反力を得難い。
【0031】
しかしながら、センターエアバッグ24は、メインチャンバ26の膨張展開完了よりも若干早く平面視略「L」字状に膨張展開完了し、シート幅方向内側へ延在する幅延在部28Bにおける前壁28Fがシートバック16の後面16Bに接触(当接)するサブチャンバ28を有している。そのため、センターエアバッグ24のメインチャンバ26は、形状剛性が確保されているサブチャンバ28を介して、シートバック16から反力を得ることができる。
【0032】
具体的に説明すると、車両の側面衝突時には、慣性力により、乗員Pが車幅方向内側へ移動し、センターエアバッグ24のメインチャンバ26を車幅方向内側へ向けて押圧する。すると、センターエアバッグ24のメインチャンバ26は、平面視で、インフレータ22が接続されている部位(整流布23の前部側)を中心として車幅方向内側へ回動しようとする。
【0033】
しかしながら、センターエアバッグ24のメインチャンバ26を車幅方向内側へ向けて押圧すると、センターエアバッグ24のサブチャンバ28における幅延在部28Bが、シートバック16の後面16Bを前方側へ押圧することになるため(回転止めになるため)、メインチャンバ26は、そのサブチャンバ28を介して、シートバック16から効果的に反力を得ることができる。よって、センターエアバッグ24のメインチャンバ26は、平面視で、インフレータ22が接続されている部位を中心とした車幅方向内側への回動(倒れ込み)が抑制される。
【0034】
また、側面視で、センターエアバッグ24のメインチャンバ26が、インフレータ22が接続されている部位を中心として後方側へ回動しようとしても、同様にサブチャンバ28における幅延在部28Bが、シートバック16の後面16Bを前方側へ押圧することになるため(回転止めになるため)、メインチャンバ26は、そのサブチャンバ28を介して、シートバック16から効果的に反力を得ることができる。よって、センターエアバッグ24のメインチャンバ26は、側面視で、インフレータ22が接続されている部位を中心とした後方側への回動も抑制される。
【0035】
このように、本実施形態に係る車両用乗員拘束装置10によれば、車両用シート12が最前方側位置を採っていても(車両用シート12の前後位置によらず)、膨張展開したセンターエアバッグ24(メインチャンバ26及びサブチャンバ28の前後延在部28A)によって乗員Pを効果的に拘束することができる(乗員Pに対する拘束性能を充分に確保することができる)。
【0036】
以上、本実施形態に係る車両用乗員拘束装置10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用乗員拘束装置10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、本実施形態が適用される車両は、車室にコンソールボックスが設けられていない車両であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用乗員拘束装置
12 車両用シート
16 シートバック
22 インフレータ
24 センターエアバッグ
26 メインチャンバ
28 サブチャンバ
P 乗員