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  • 特開-表皮材 図1
  • 特開-表皮材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174768
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】表皮材
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20241210BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20241210BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
D06N3/14 102
B32B27/12
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092784
(22)【出願日】2023-06-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケブラー
(71)【出願人】
【識別番号】390028532
【氏名又は名称】共和ライフテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高月 久徳
(72)【発明者】
【氏名】張 章仁
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA12
4F055EA02
4F055EA03
4F055EA04
4F055EA22
4F055FA20
4F055FA39
4F055GA02
4F055GA11
4F055GA32
4F100AJ02B
4F100AJ05A
4F100AJ10
4F100AK01A
4F100AK41A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100AK51E
4F100AT00D
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA02C
4F100CA13B
4F100CA13E
4F100CB00C
4F100DE01B
4F100DG01A
4F100DG11A
4F100DG12A
4F100EH46
4F100EJ86
4F100HB00B
4F100HB00E
4F100JC00B
4F100JL10B
4F100JL10E
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】バイオマス粉体を含み、優れた意匠性及び耐剥離性を有する表皮材を提供する。
【解決手段】基布と、中引層と、接着層と、表皮層とをこの順に有し、中引層がバイオマス粉体を含有する表皮材である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、中引層と、接着層と、表皮層とをこの順に有し、前記中引層がバイオマス粉体を含有する表皮材。
【請求項2】
前記バイオマス粉体の含有量が、表皮材の全量に対して、8質量%以上である請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
前記バイオマス粉体の平均粒子径が、60μm以下である請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記バイオマス粉体が、りんご粉体、竹粉体、及びヒノキ粉体の群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項5】
前記基布が、合成繊維、及び再生繊維の少なくとも一方を含む請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項6】
前記表皮材のバイオマス比率が、20質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項7】
前記表皮層と前記接着層との間に、さらに中間層を有する請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
合成皮革等の表皮材は、耐久性に優れるため、インストルメントパネル、ドアトリム、座席、天井などの自動車内装部品、トリム、座席、天井などの鉄道車輌及び航空機内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、壁装材等に多く用いられている。
【0003】
一方で、合成皮革等の表皮材の原料は、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリウレタン樹脂等のプラスチック素材であり、脱炭素化社会やカーボンニュートラルの実現に向け使用量を抑制する必要がある。そこで近年、バイオマス由来のプラスチック及びバイオマスをプラスチック素材に混合したものを用いる取組みが積極的に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸繊維を主体とする繊度が1~30dtex、目付が50~1000g/mである表皮材と、天然繊維にバインダとしてポリ乳酸系樹脂が混在した見かけ密度が0.4~1.5g/cmである基材と、ポリ乳酸繊維を主体とする目付150~1500g/mの範囲である吸音材とを積層した三層構造を少なくとも有することを特徴とする自動車内装用部材が記載されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、木粉と塩基性物質とを混合させる混合工程と、木粉と塩基性物質との混合物と、樹脂とを混練機に投入し、樹脂が熱溶融した状態で混練を行なう混練工程と、混練工程により得られた植物繊維強化樹脂を使用して内装品を成形する成形工程と、を有する内装品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-264436号公報
【特許文献2】特開2018-95708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の自動車用部材には、植物から抽出したデンプンを原料としたポリ乳酸繊維が用いられているが、バイオマスを粉体にしたもの(以下、「バイオマス粉体」という。)を表皮材に用いることについて、何ら検討されていない。
【0008】
また、特許文献2に記載の内装品の製造方法では、バイオマス粉体として木粉が用いられているが、バイオマス粉体を用い製造された内装品の耐久性及び意匠性について、何ら検討されていない。
【0009】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、バイオマス粉体を含み、優れた意匠性及び耐剥離性を有する表皮材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の態様が含まれる。
<1> 基布と、中引層と、接着層と、表皮層とをこの順に有し、中引層がバイオマス粉体を含有する表皮材である。
<2> バイオマス粉体の含有量が、表皮材の全量に対して、8質量%以上である<1>に記載の表皮材である。
<3> バイオマス粉体の平均粒子径が、60μm以下である<1>又は<2>に記載の表皮材である。
<4> バイオマス粉体が、りんご粉体、竹粉体、及びヒノキ粉体の群から選ばれる少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の表皮材である。
<5> 基布が、合成繊維、及び再生繊維の少なくとも一方を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の表皮材である。
<6> 表皮材のバイオマス比率が、20質量%以上である<1>~<5>のいずれか1つに記載の表皮材である。
<7> 表皮層と、接着層との間に、さらに中間層を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の表皮材である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、バイオマス粉体を用い、優れた意匠性及び耐剥離性を有する表皮材を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の表皮材の一態様を示す概略断面図である。
図2】本開示の表皮材の別の態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の表皮材について詳細に説明する。
本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
【0014】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。 また、本開示中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、所期の目的が達成される場合には他の工程と明確に区別できない工程も包含する。
【0017】
本開示における「固形分」とは、例えば、組成物に含まれる全成分のうち、溶媒を除いた成分の量を示す。
【0018】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
【0019】
本開示において、「バイオマス比率」とは、下記式に基づいて算出される値(%)である。
バイオマス比率=(表皮材中のバイオマス成分の合計質量/表皮材の質量)×100
【0020】
<表皮材>
本開示の表皮材は、基布と、中引層と、接着層と、表皮層とをこの順に有し、中引層がバイオマス粉体を含有する表皮材である。本開示の表皮材は、中引層、接着層、及び表皮層以外のその他層を有していてもよい。
【0021】
近年、環境保全及び資源の有効活用等の観点から、従来廃棄されてきた食品及び間伐材等のバイオマスを用い、エネルギー、生分解性プラスチック及び工業原料等の生産が行われている。
本開示においては、環境配慮及び資源の有効活用の観点から、従来廃棄されてきた、りんご、竹、及びヒノキを粉体にしたものをバイオマスとして用いている。
本開示の表皮材では、特に表皮材構成中の中引層にバイオマス粉体を含有させることで、バイオマス比率を高めることを可能とすると共に、意匠性及び耐剥離性に優れたものとなる。
さらに、中引層以外の層にも、バイオマス粉体を含有させることにより、バイオマス比率を高めることができる。
しかし、意匠性の観点から、本開示の表皮材では、表皮層はバイオマス粉体を実質的に含まないことが好ましい。
また、耐剥離性の観点から、本開示の表皮材では、接着層はバイオマス粉体を実質的に含まないことが好ましい。
さらに、中引層、接着層、及び表皮層以外の層を設けた場合、意匠性及び耐剥離性の観点から、他の層はバイオマス粉体を実質的に含まないことが好ましい。すなわち、本開示の表皮材では、意匠性及び耐剥離性の観点から、中引層が選択的にバイオマス粉体を含む態様が特に好ましい。
【0022】
「バイオマス粉体を実質的に含まない」とは、バイオマス粉体の含有量が、層の全量に対して1質量%以下であるか、又は、バイオマス粉体を含まないことを意味する。
【0023】
また、本開示の表皮材では、バイオマス比率及び物性の観点から、基布として、合成繊維及び再生繊維の少なくとも一方を含む基布を用いることが好ましい。
【0024】
表皮材のバイオマス比率としては、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。特に、基布が合成繊維と再生繊維とから構成される場合、表皮材のバイオマス比率は、20質量%~50質量%であることが好ましい。また、基布が天然繊維から構成される場合、表皮材のバイオマス比率は、50質量%~70質量%であることが好ましい。
【0025】
本開示の表皮材の好ましい態様は、以下の通りである。
バイオマス粉体の平均粒子径は、60μm以下であり、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して50質量%以下であり、バイオマス粉体は、りんご粉体、竹粉体、及びヒノキ粉体の群から選ばれる少なくとも1種を含むものであり、基布は、再生繊維、及び天然繊維の少なくとも一方を含み、表皮材のバイオマス比率は、20質量%以上である。
【0026】
本開示の表皮材のより好ましい態様は、下記の通りである。
バイオマス粉体の平均粒子径は、30μm以下であり、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して45質量%以下であり、バイオマス粉体は、りんご粉体、竹粉体、及びヒノキ粉体の群から選ばれる少なくとも1種を含むものであり、基布は、再生繊維を含み、表皮材のバイオマス比率は、25質量%以上である。
【0027】
[表皮材の層構成]
以下、本開示の表皮材の層構成について説明する。
なお、各図面における寸法は、必ずしも実際の寸法を示すものではない。
【0028】
図1は、本開示の表皮材の層構成の一態様を示す概略断面図である。
図1に示す表皮材1は、基布2と、中引層3と、接着層4と、表皮層5とを、この順に備えるものである。
【0029】
図2は、本開示の表皮材の別の態様を示す概略断面図である。
図2に示す表皮材10は、基布12と、中引層13と、接着層14と、中間層16と、表皮層15とを、この順に備えるものである。
【0030】
以下、本開示の表皮材の各構成について詳細に説明する。
【0031】
<基布>
本開示の表皮材は、基布を含む。
本開示に用いられる基布としては、特に限定されないが、必要な強度と柔軟性とを有していることが好ましい。
【0032】
基布を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維;綿、麻等の天然繊維;及びレーヨン等の再生繊維;等が挙げられる。
【0033】
基布を構成する繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
例えば、基布を構成する繊維として、ポリウレタンを用いることで基布の伸縮性がより向上する。また、ポリアミドの高強度繊維であるケブラー繊維を用いることで、基布の強度がより向上する。
【0034】
これらのうち、表皮材のバイオマス比率及び物性の観点から、基布は、合成繊維、及び再生繊維の少なくとも一方を含むことが好ましく、合成繊維と再生繊維とを共に含むことがより好ましい。
【0035】
本開示の基布としては、織布、編布、及び不織布のいずれであってもよい。これらのうち、表皮材の幅方向に一定の伸び特性を持たせ易いという観点から、織布であることが好ましい。
【0036】
織布としては、平織、綾織、及び朱子織等が挙げられる。これらのうち、物性の観点から、綾織であることがより好ましい。
【0037】
基布の目付は、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、30g/m~700g/mが好ましく、100g/m~500g/mがより好ましい。
基布の目付は、例えば、織布の場合、織布の組織、織成に用いる繊維の太さ、組織、繊維の密度等により調整することができる。
【0038】
表皮材に用いられる基布の厚さは、特に限定されないが、表皮材の強度と耐剥離性の観点から、300μm~1200μmが好ましく、500μm~1000μmがより好ましい。
【0039】
<中引層>
本開示の表皮材は、中引層を含む。本開示の中引層を含むことにより、表皮材にクッション性及びボリューム感を付与することができる。中引層は1層のみ設けられてもよいが、2層以上設けられてもよい。
【0040】
本開示の中引層には、少なくとも樹脂及びバイオマス粉体が含まれることが好ましい。
【0041】
[樹脂]
本開示の中引層に含まれる樹脂としては、特に限定されず、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂、及びアクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
これらのうち、耐剥離性の観点から、ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0042】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、及びこれらの変性物が挙げられる。
表皮材に長期耐剥離性が求められる場合、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0043】
[バイオマス粉体]
本開示の中引層に含まれるバイオマス粉体は、生物由来の有機物を粉砕して得られる粉末のことを指す。バイオマス粉体としては、特に限定されず、木質材料、果物、野菜、イネ科植物、茶、海藻類及び菌類等の粉体が挙げられる。
【0044】
木質材料としては、ヒノキ、ケヤキ、スギ、マツ、及びクスノキ等が挙げられる。
果物としては、柑橘類、りんご、梨、柿、びわ、桃、ぶどう、キウイフルーツ、バナナ、及びウメ等が挙げられる。
野菜としては、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、レタス、ネギ、コマツナ、チンゲンサイ、ミツバ、ミズナ、ニラ等の葉菜類、ダイコン、ニンジン、カブ、ゴボウ、レンコン等の根菜類;タマネギ、アスパラガス、ウド等の茎菜類;カリフラワー、ブロッコリー、ミョウガ等の花菜類;モヤシ、カイワレダイコン、トウミョウ等の発芽野菜類;ナス、キュウリ、トマト、ピーマン、パプリカ、カボチャ、イチゴ、メロン、スイカ等の果菜類;などが挙げられる。
イネ科植物としては、小麦、デュラム小麦、ライ麦、ライ小麦、大麦、オーツ麦、はと麦、トウモロコシ、イネ、ヒエ、アワ、キビ、竹、及びクマザサ等が挙げられる。
茶としては、茶の生茶葉、茶の実、茶の木部、不発酵茶葉、半発酵茶葉、及び発酵茶葉等が挙げられる。
海藻類としては、ワカメ、コンブ、モズク、ツルモ、スジメ、カジメ、クロメ、アラメ、及びノリ等が挙げられる。
菌類としては、きのこ類等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、繊維が豊富に含まれる観点から、木質材料、果物、及びイネ科植物であることが好ましい。中でも、入手し易さの観点から、ヒノキ、竹、及びりんごの粉末であることが好ましい。ヒノキ、竹、りんごの粉末とは、材料を乾燥させて粉砕したものが挙げられる。ヒノキは、例えば、根、幹、枝、又は樹被を用いることができる。竹は、例えば、根、地下茎、竹稈、枝又は竹皮を用いることができる。りんごは、例えば、果肉の部分、表皮の部分、又は樹皮を用いることができ、りんごの絞りカスを用いてもよい。
【0046】
バイオマス原料からバイオマス粉体を得る際の粉砕方法は、特に限定されず、通常の粉砕装置を用いることができる。粉砕装置としては、例えば、スクリーンミル、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、カッターミル、振動ミル、ローラーミル、ラインミル、スタンプミル、ディスクミル、ピンミル、グラインディングミル、ローターミル、サイクロンミル、ロッドミル、パワーミル、ポットミル、ジョークラッシャー、ジャイレトリクラッシャー、インパクトクラッシャー、ロールクラッシャー、及びエッジランナー等が挙げられる。
【0047】
バイオマス粉体の平均粒子径は、中引層を構成する他の成分との分散性、及び中引層の加工性の観点から、60μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、20μm以下が特に好ましい。平均粒子径の下限値は特に限定されず、例えば、5μmである。
【0048】
バイオマス粉体の平均粒子径は、数平均粒子径であり、以下の方法で測定される。
表皮材を、厚さ方向に沿って切断する。その切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。任意の30個のバイオマス粉体を選択し、直径を測定する。測定した直径の平均値を平均粒子径とする。なお、バイオマス粉体が円形ではない場合には、最大径を直径とする。
【0049】
バイオマス粉体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
バイオマス粉体の含有量は、中引層を構成する他の成分との分散性、及び中引層の加工性の観点から、中引層の固形分濃度に対して50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
バイオマス粉体の含有量は、中引層形成用組成物に対して、1質量%~30質量%であ
ることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0050】
バイオマス粉体の含有量は、樹脂100質量部に対して、90質量部~130質量部であることが好ましく、95質量部~120質量部であることがより好ましい。
【0051】
[その他成分]
本開示の中引層には、上記した樹脂及びバイオマス粉体以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、加工助剤、可塑剤、及び充填剤等が挙げられる。
【0052】
本開示の中引層には、着色剤を含むことが好ましい。着色剤を含むことで、後述する表皮層と色相を合わせことができる。これにより、本開示の表皮材を断面が視認される製品に用いた場合でも美観が損なわれない。着色剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併せて用いてもよい。
【0053】
本開示の着色剤としては、特に限定されず、染料であってもよく、顔料であってもよい。
着色剤としては、チタン白(二酸化チタン)、亜鉛華、群青、コバルトブルー、弁柄、朱、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、キナクリドン、パーマネントレッド4R、イソインドリノン、ハンザイエローA、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料又は染料、アルミニウム及び真鍮等金属の箔粉からなる群より選択される金属顔料、二酸化チタン被覆雲母及び塩基性炭酸鉛の箔粉からなる群より選択される真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
これらのうち、耐剥離性の観点からは、着色剤としては顔料が好ましい。
【0054】
着色剤の種類及び含有量は、表皮材において目的とする色相等に応じて、適宜選択すればよい。
【0055】
中引層に着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、隠蔽性の観点から、中引層形成用組成物に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0056】
また、着色剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、1質量部~15質量部であることが好ましく、5質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0057】
また、本開示の中引層は、セル調整剤を用いて形成されたものであることが好ましい。セル調整剤を用いることで、層内に孔(空隙)を形成することができ、形成される孔の層中における比率(空隙率)を調整することができる。セルとは、中引層に形成される孔(空隙)のことを指す。
セル調整剤の詳細については後述する。
【0058】
中引層の空隙率は、表皮材の強度を保つ観点から、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。下限としては、15%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。
【0059】
空隙率は、下記の方法で測定される。
中引層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、観察される中引層の断面におけるSEM写真から画像処理にて中引層の空隙部分を判定し、空隙部分が占める面積を中引層の面積から除くことで求めることができる。
【0060】
中引層の厚さは、耐剥離性の観点から、50μm~1000μmであることが好ましく、100μm~500μmであることがより好ましい。
【0061】
中引層は、樹脂、バイオマス粉体及び溶剤、並びに、必要に応じてその他成分を含有する中引層形成用組成物を調製し、基布上に付与(例えば塗布)することにより形成することができる。樹脂、バイオマス粉体、及びその他成分の詳細については既述のとおりである。
【0062】
中引層形成用組成物は、その他成分としてセル調整剤を含有することが好ましい。セル調整剤を含むことで、層内に孔(空隙)を形成することができ、形成される孔の層中における比率(空隙率)を調整することができる。セルとは、中引層に形成される孔(空隙)のことを指す。セル調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併せて用いてもよい。
【0063】
セル調整剤としては、特に限定されず、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、及びアニオン系界面活性剤等が挙げられる。セル調整剤としては、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、及びアニオン系界面活性剤の混合物を用いることが好ましい。
【0064】
中引層形成用組成物がセル調整剤を含む場合、セル調整剤の含有量は、中引層の強度、及び空隙率の観点から、中引層形成用組成物に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0065】
また、セル調整剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部~10質量部であることが好ましく、0.1質量部~5質量部であることがより好ましい。
【0066】
<接着層>
本開示の表皮材は、接着層を含む。表皮材が接着層を有することで、隣接する層を接着することができる。接着層は、1層のみ設けられてもよく、2層以上設けられてもよい。
【0067】
接着層は、接着成分として、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂、及びアクリル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併せて用いてもよい。
これらのうち、接着性の観点から、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、及びポリスチレン樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0068】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリエステル系ポリウレタン樹脂、並びに、これらの変性物が挙げられる。これらのうち、耐加水分解性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含むことがより好ましい。
【0069】
ポリウレタン樹脂は、接着性の観点から、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及びオキサゾリン系架橋剤が挙げられる。これらのうち、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0070】
ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、及び、塩化ビニルと酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル等との共重合体などが挙げられる。
【0071】
ポリ塩化ビニルリデン樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデンの単独重合体、及び、塩化ビニルと塩化ビニル、アクリロニトリル、メチルアクリレート、エチルアクリレート等との共重合体が挙げられる。
【0072】
ポリスチレン樹脂としては、例えば、スチレンの単独重合体、及び、塩化ビニルとアクリロニトリル、メチルメタアクリレート等との共重合体等が挙げられる。
【0073】
接着層に含まれる樹脂は、上記中引層及び後述する表皮層に含まれる樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
[その他成分]
本開示の接着層には、上記した樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、促進剤が挙げられる。
【0075】
促進剤は、架橋促進する観点から含有されることが好ましい。促進剤としては、例えば、アミン系、及び有機金属系が挙げられる。
【0076】
接着層の厚さは、隣接する層との接着性、及び表皮材の風合いの観点から、20μm~300μmの範囲であることが好ましく、20μm~200μmであることがより好ましく、20μm~100μmであることが特に好ましい。
【0077】
接着層は、樹脂、溶剤、及び必要に応じてその他成分を含有する接着層形成用組成物を調製し、例えば後述する表皮層又は中間層の上に付与(例えば塗布)することにより形成することができる。
【0078】
<表皮層>
本開示の表皮材は、表皮層を有する。表皮層を有することで意匠性が高められる。
【0079】
本開示の表皮層には、耐剥離性の観点から、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリスチレン系エラストマー樹脂等が挙げられる。これらのうち、表皮材に求められる各種性能を得やすいという観点から、表皮層は、ポリウレタン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0080】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリエステル系ポリウレタン樹脂、並びに、これらの変性物が挙げられる。中でも、長期耐剥離性の観点から、表皮層は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含むことがより好ましい。
【0081】
また、ポリウレタン樹脂は、20℃の条件下で測定した100%モジュラス値が2MPa(2×10N/m)~40MPaであることが好ましい。ポリウレタン樹脂の100%モジュラス値が上記範囲内にあると、表皮材の伸縮特性に優れる。
【0082】
100%モジュラス値とは、JIS K 6251(2017年)に準じて、20℃にて測定した硬さを示す値である。
【0083】
なお、ポリウレタン樹脂の硬さ(100%モジュラス)を調整する方法としては、例えば、ポリウレタン樹脂を合成する際の原料の種類を変更する方法が挙げられる。ポリウレタン樹脂を柔らかくする場合には、ソフトセグメントとなるポリオールの含有量を増加させるか、又はポリオールの分子量を大きくする方法が挙げられる。
一方、ポリウレタン樹脂を硬くする場合には、ハードセグメントとなるウレタン結合又はウレア結合を増加させるか、又は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の架橋剤を添加して、架橋構造を形成する方法が挙げられる。
【0084】
ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、平均重合度650~1800の塩化ビニルホモポリマー、及びエチレン/塩化ビニルコポリマーが挙げられる。
【0085】
表皮層は、樹脂以外のその他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、着色剤、加工助剤、可塑剤、及び充填剤等が挙げられる。表皮層が、その他成分を含む場合、その他の成分の含有量は、耐剥離性を低下させない範囲で調整することが好ましい。
【0086】
表皮層は、他の成分として、着色剤を含むことが好ましい。表皮層に着色剤を含む場合、着色剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併せて用いてもよい。
【0087】
着色剤の種類及び含有量は、表皮材において目的とする色相等に応じて、適宜選択すればよい。
表皮層に着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、意匠性の観点から、表皮層形成用組成物に対して、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0088】
また、着色剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.1質量部~100質量部であることが好ましく、0.1質量部~70質量部であることがより好ましい。
【0089】
表皮層の厚さは、耐剥離性の観点から、10μm~400μmであることが好ましく、15μm~250μmであることがより好ましい。
【0090】
表皮層にポリウレタンを含む場合には、表皮層の厚さは、耐剥離性の観点から、10μm~100μmであることが好ましく、15μm~40μmであることがより好ましい。
【0091】
表皮層にポリ塩化ビニルを含む場合には、表皮層の厚さは、耐剥離性の観点から、50μm~400μmであることが好ましく、150μm~250μmであることがより好ましい。
【0092】
表皮層は、樹脂、溶剤、及び必要に応じてその他成分を含有する表皮層形成用組成物を調製し、離型紙等の基材に付与(例えば塗布)することにより形成することができる。
【0093】
本開示の表皮材には、基布、中引層、接着層、及び表皮層以外にその他層を含んでもいてもよい。その他層としては、例えば、中間層、表面処理層等が挙げられる。
【0094】
<中間層>
本開示の表皮材は、接着層と表皮層との間に中間層を有してもよい。中間層を有することで、表皮材の意匠性及びボリューム感を付与することができる。中間層は、1層のみ設けられてもよいが、2層以上設けられてもよい。
【0095】
中間層は、耐剥離性の観点から、樹脂を含むことが好ましい。
樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びポリスチレン系エラストマー樹脂等が挙げられる。これらのうち、中間層に求められる各種性能を得やすいという観点から、中間層は、ポリウレタン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0096】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリエステル系ポリウレタン樹脂、並びに、これらの変性物が挙げられる。
ポリ塩化ビニル樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、及び塩化ビニルと他の重合体との重合体等が挙げられる。
中でも、長期耐剥離性の観点から、中間層は、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含むことがより好ましい。
【0097】
中間層は、樹脂以外のその他成分を含んでいてもよい。
その他成分としては、例えば、着色剤、加工助剤、可塑剤、及び充填剤等が挙げられる。中間層が、その他成分を含む場合、その他成分の含有量は、耐剥離性を低下させない範囲で調整することが好ましい。
【0098】
中間層は、その他成分として、着色剤を含むことが好ましい。中間層が着色剤を含む場合、着色剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併せて用いてもよい。
【0099】
着色剤の種類及び含有量は、表皮材において目的とする色相等に応じて、適宜選択すればよい。
【0100】
中間層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、隠蔽性の観点から、中間層形成用組成物に対して、5質量%~30質量%であることが好ましく、10質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0101】
また、着色剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10質量部~80質量部あることが好ましく、40質量部~70質量部であることがより好ましい。
【0102】
中間層の厚さは、耐剥離性の観点から、10μm~400μmであることが好ましく、20μm~60μmであることがより好ましい。
【0103】
中間層は、樹脂、溶剤、及び必要に応じてその他成分を含有する中間層形成用組成物を調製し、例えば表皮層上に付与(例えば塗布)することにより形成することができる。
【0104】
<表面処理層>
本開示の表皮材は、表皮層の表面に表面処理層を有してもよい。表面処理層を有することで、耐摩耗性が向上する。
【0105】
表面処理層は、例えば、表皮層の表面にポリウレタン樹脂表面処理剤を塗工して形成することができる。
ポリウレタン樹脂表面処理剤に使用できるポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリエステル系ポリウレタン樹脂、並びに、これらの変性物等が挙げられる。
表皮材に長期耐剥離性が求められる場合、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
ポリウレタン樹脂を含有する表面処理剤には、さらに、架橋剤、滑剤、着色剤を添加してもよい。
【0106】
<表皮材の製造方法>
本開示の表皮材の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本開示の表皮材の製造方法は、例えば、中引層形成用組成物を用いて、基布上に中引層を形成する工程(工程1)と、離型紙等の仮支持体上に、表皮層形成用組成物を用いて、表皮層を形成する工程(工程2)と、表皮層の一方の面上に、接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する工程(工程3)と、中引層と接着層を貼り付ける工程(工程4)と、仮支持体を剥離除去する工程(工程5)と、を含む方法であってもよい。
【0107】
以下、本開示の表皮材の製造方法の一例について詳細に説明する。
【0108】
[工程1]
工程1では、中引層形成用組成物を用いて、基布上に中引層を形成する。
中引層を形成する方法としては、例えば、バイオマス粉体を含む中引層形成用組成物を、基布に塗布し、乾燥させる方法(乾式加工法)、又はバイオマス粉体を含む中引層形成用組成物を、基布に塗布し、湿式凝固させる(湿式加工法)方法等が挙げられる。
【0109】
本開示の表皮材の製造には、湿式加工法を用いることが好ましい。湿式加工法を用いることで、中引層形成用組成物に含まれる溶媒が、水で構成される洗浄槽で抜け、中引層が多孔質となる。これにより、表皮材にクッション性及びボリューム感を付与することができる。
【0110】
中引層形成用組成物を、基布上に塗布する場合、中引層形成用組成物の固形分濃度は、10質量%~30質量%であることが好ましい。
【0111】
中引層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法等が挙げられる。
【0112】
中引層形成用組成物への塗布量は、中引層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、600g/m~800g/mである。
【0113】
中引層形成用組成物を塗布した後、湿式凝固槽、洗浄槽を通して乾燥させる。乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、80℃~130℃で、3分~5分としてもよい。
【0114】
また、中引層形成用組成物をシート状に成形する方法としては、例えば、カレンダー法、溶融押出法、及びキャスティング法が挙げられる。
【0115】
[工程2]
工程2では、表皮層形成用組成物を用いて、表皮層を形成する。
表皮層を形成する方法としては、例えば、仮支持体である離型紙上に塗布し、乾燥させる方法、及び、表皮層形成用組成物を、公知の製膜方法を適用してシート状に成形する方法が挙げられる。
【0116】
表皮層形成用組成物を、仮支持体上に塗布する場合、表皮層形成用組成物の固形分濃度は、10質量%~30質量%であることが好ましい。
【0117】
仮支持体は、後の工程で剥離可能な材料であればよく、特に限定されない。仮支持体としては、例えば、離型紙を用いることができる。
【0118】
表皮層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0119】
表皮層形成用組成物への塗布量は、表皮層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、50g/m~150g/mである。
【0120】
表皮層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、90℃~130℃で、2分~4分としてもよい。
【0121】
また、表皮層形成組成物をシート状に成形する方法としては、例えば、カレンダー法、溶融押出法、及びキャスティング法が挙げられる。
【0122】
[工程3]
工程3では、表皮層の一方の面上に、接着層形成用組成物を用いて接着層を形成する。
【0123】
接着層を形成する方法としては、例えば、接着層形成用組成物を、中間層上に塗布し、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0124】
接着層形成用組成物の固形分濃度は、40質量%~60質量%であることが好ましい。
【0125】
接着層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0126】
接着層形成用組成物への塗布量は、接着層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、100g/m~200g/mである。
【0127】
接着層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、90℃~130℃で、2分~4分である。
【0128】
[工程4]
工程4では、中引層と接着層とを貼り付ける。例えば、中引層が設けられた基布と、接着層及び表皮層が設けられた仮支持体と、を中引層と接着層とが互いに接するようにして貼り付ける。これにより、仮支持体/表皮層/接着層/中引層/基布の積層構造を有する積層体が得られる。
中引層と接着層とを貼り付ける方法は、特に限定されず、例えば、ローラーを備えたラミネーターを用いることができる。
【0129】
ラミネート温度は、例えば、80℃~120℃である。
ラミネート時の搬送速度は、例えば、5m/分~10m/分である。
【0130】
[工程5]
工程5では、仮支持体を剥離除去する。剥離しやすいように、あらかじめ剥離前の積層体を熟成させておくことが好ましい。
【0131】
熟成温度は、例えば、40℃~70℃である。
熟成時間は、例えば、12時間~72時間である。
【0132】
工程5は、工程1~工程4のいずれの後に行ってもよいが、工程4の後に行うことが好ましい。
【0133】
本開示の表皮材の製造方法は、上記工程1~工程5以外の他の工程を含んでいてもよい。
例えば、表皮材に任意の層として中間層を設ける場合、上記工程3を行う前に、表皮層の一方の面上に、中間層形成用組成物を用いて、中間層を形成する工程(工程6)を設けることが好ましい。
上記の場合、中間層形成後、上記工程3~工程5を行い、表皮材を製造する。
【0134】
[工程6]
工程6では、表皮層の一方の面に、中間層形成用組成物を用いて、中間層を形成する。
中間層を形成する方法としては、例えば、中間層形成用組成物を、表皮層上に塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
【0135】
中間層形成用組成物の固形分濃度は、10質量%~40質量%であることが好ましい。
【0136】
中間層形成用組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター法、ブレードコーター法、ロールコート法、バーコーター法、カーテンコーター法、及びグラビアコーター法が挙げられる。
【0137】
中間層形成用組成物への塗布量は、接着層の厚さに応じて適宜調整されるが、例えば、100g/m~200g/mである。
【0138】
中間層形成用組成物を塗布した後、乾燥させる方法は、特に限定されない。乾燥装置として、例えば、熱風乾燥機、及び、温風乾燥機を用いることができる。乾燥温度及び乾燥時間は、例えば、90℃~130℃で、2分~4分である。
【0139】
本開示の表皮材は、簡易な方法で製造することができ、意匠性及び耐剥離性に優れる。本開示の表皮材は、自動車用内装外装材、鉄道車輌及び航空機の内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、など種々の分野に好適に使用できる。
【実施例0140】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明する。但し、本開示は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0141】
(実施例1)
[基布の準備]
基布として、厚さ700μm、質量257gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。
【0142】
[中引層の作製]
中引層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約24質量%の中引層形成用組成物を調製した。
【0143】
-中引層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) 150質量部
・セル調整剤(ポリエーテル樹脂) 0.65質量部
・セル調整剤(シリコーン樹脂) 0.30質量部
・セル調整剤(メトキシプロパノール) 0.05質量部
・セル調整剤(アニオン系界面活性剤) 0.5質量部
・着色剤(顔料) 4質量部
・バイオマス粉体(平均粒子径20μmのりんご粉体) 30質量部
【0144】
調製後、中引層形成用組成物を基布上にウェット塗布量700g/mになるように塗布した。塗布後、湿式凝固を行い、熱風乾燥機を用いて125℃で4分間塗膜を乾燥させ、多孔質(空隙率:40%)である厚さ250μmの中引層を得た。これにより、中引層付き基布を作製した。
バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して44.1質量%である。
【0145】
[表皮層の作製]
表皮層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約19質量%の表皮層形成用組成物を調製した。
【0146】
-表皮層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) 30質量部
・溶剤(イソプロピルアルコール:IPA) 15質量部
・溶剤(トリオール) 15質量部
【0147】
調製後、表皮層形成用組成物を離型紙にウェット塗布量100g/mになるように塗布した。塗膜形成後、熱風乾燥機を用いて100℃で2分間、塗膜を乾燥させ、厚さ18μmの表皮層を得た。
【0148】
[中間層の作製]
中間層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約27質量%の中間層形成用組成物を得た。
【0149】
-中間層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形濃度分30質量%) 100質量部・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 30質量部
・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 30質量部
・着色剤(顔料) 34質量部
【0150】
調製後、中間形成用組成物を表皮層の一方の面上にウェット塗布量160g/mになるように塗布した。塗膜形成後、100℃3分間熱風乾燥機を用い、塗膜を乾燥させ、厚さ28μmの中間層を得た。
【0151】
[接着層の作製]
接着層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約51質量%の接着層形成用組成物を得た。
【0152】
-接着層形成用組成物の組成-
・2液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度72質量%) 100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 27質量部
・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 18質量部
・イソアソシエート系架橋剤 9質量部
・促進剤(アミン系触媒) 1.8質量部
【0153】
調製後、接着層形成用組成物を中間層上にウェット塗布量130g/mになるように塗布した。塗膜形成後、100℃3分間熱風乾燥機を用い、塗膜を乾燥させ、厚さ30μmの接着層を得た。これにより、接着層/中間層/表皮層/離型紙の積層体を作製した。
【0154】
[積層]
上記の中引層付き基布と積層体とを、中引層と接着層を接触させて重ね合わせ、ラミネーターを用い貼り合わせた。ラミネート温度80℃、搬送速度8m/分とした。50℃48時間熟成後、離型紙を剥離し、実施例1の表皮材を得た。
【0155】
(実施例2)
基布を196gのコットンに変更した以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
【0156】
(実施例3)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中引層用組成物のウェット塗布量を変更した。基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。中引層用組成物のウェット塗布量740g/mとし、作製された166.1gの中引層を用いた。上記以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
【0157】
(実施例4)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中間層に用いたバイオマス粉体の種類、及び含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。バイオマス粉体としては、平均粒子径25μmの竹粉体を用いた。また、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して、34.4質量%である。
【0158】
(実施例5)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中間層に用いたバイオマス粉体の種類、及び含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。バイオマス粉体としては、平均粒子径25μmの竹粉体を用いた。また、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して、28.3質量%である。
【0159】
(実施例6)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中間層に用いたバイオマス粉体の種類、及び含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。バイオマス粉体としては、平均粒子径50μmのヒノキ粉体を用いた。また、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して、39.7質量%である。
【0160】
(実施例7)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中間層に用いたバイオマス粉体の種類、及び含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。バイオマス粉体としては、平均粒子径50μmのヒノキ粉体を用いた。また、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して、34.4質量%である。
【0161】
(実施例8)
実施例1で用いた基布の目付及び厚さ、並びに中間層に用いたバイオマス粉体の種類、及び含有量を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で表皮材を作製した。
基布としては、厚さ650μmの質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。バイオマス粉体としては、平均粒子径50μmのヒノキ粉体を用いた。また、バイオマス粉体の含有量は、中引層の固形分濃度に対して、28.3質量%である。
【0162】
(比較例1)
[基布の準備]
基布として、厚さ650μm、質量188gのポリエステル繊維とレーヨン繊維とを含む織布を用いた。
【0163】
[中引層の作製]
中引層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約12質量%の中引層形成用組成物を得た。
【0164】
-中引層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) 150質量部・セル調整剤(ポリエーテル樹脂) 0.65質量部
・セル調整剤(シリコーン樹脂) 0.30質量部
・セル調整剤(メトキシプロパノール) 0.05質量部
・セル調整剤(アニオン系界面活性剤) 0.5質量部
・着色剤(顔料) 4質量部
【0165】
調製後、中引層形成用組成物を基布上にウェット塗布量740g/mになるように塗布した。塗布後、湿式固定を用い、ポーラスを有する厚さ250μmの中引層を得た。これにより、中引層付き基布を作製した。
【0166】
[表皮層の作製]
表皮層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約27質量%の表皮層形成用組成物を調製した。
【0167】
-表皮層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアミド:DMF) 30質量部
・溶剤(イソプロピルアルコール:IPA) 15質量部
・溶剤(トリオール) 15質量部
・バイオマス粉体(平均粒子径20μmのりんご粉体) 20質量部
【0168】
調製後、表皮形成用組成物を離型紙にウェット塗布量100g/mになるように塗布した。塗膜形成後、100℃3分間熱風乾燥機を用い、塗膜を乾燥させ、厚さ20μmの表皮層を得た。バイオマス粉体の含有量は、表皮層の固形分濃度に対して、40質量%である。
【0169】
[中間層の作製]
中間層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約27質量%の中間層形成用組成物を得た。
【0170】
-中間層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 30質量部
・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 30質量部
・着色剤(顔料) 34質量部
【0171】
調製後、中間形成用組成物を表皮層上にウェット塗布量160g/mになるように塗布した。塗膜形成後、100℃3分間熱風乾燥機を用い、塗膜を乾燥させ、厚さ28μmの中間層を得た。
【0172】
[接着層の作製]
接着層を作製するにあたり、下記成分を混合し、固形分濃度約51質量%の接着層形成用組成物を得た。
【0173】
-接着層形成用組成物の組成-
・2液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度72%) 100質量部
・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 27質量部
・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 18質量部
・イソアソシエート系架橋剤 9質量部
・促進剤(アミン系触媒) 1.8質量部
【0174】
調製後、接着層形成用組成物を中間層上にウェット塗布量130g/mになるように塗布した。塗膜形成後、100℃3分間熱風乾燥機を用い、塗膜を乾燥させ、厚さ30μmの接着層を得た。これにより、接着層/中間層/表皮層/離型紙の積層体を作製した。
【0175】
[積層]
中引層付き基布と積層体とを、中引層と接着層を接触させて重ね合わせ、ラミネーターを用いて貼り合わせた。ラミネート温度を80℃、搬送速度を8m/分とした。50℃48時間熟成後、離型紙を剥離し、比較例1の表皮材を得た。
【0176】
(比較例2)
表皮層形成用組成物、及び接着層組成物の組成を下記に変更した以外は、比較例1と同様の方法で表皮材を作製した。
【0177】
-表皮層形成用組成物の組成-
・1液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度30質量%) 100質量部・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 30質量部・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 15質量部・溶剤(トリオール) 15質量部 上記表皮層形成用組成物の固形分濃度は、約19質量%である。
【0178】
-接着層形成用組成物の組成-
・2液型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(固形分濃度72質量%) 100質量部・溶剤(ジメチルホルムアルデヒド:DMF) 27質量部・溶剤(メチルエチルケトン:MEK) 18質量部・イソシアネート系架橋剤 9質量部・促進剤(アミン系触媒) 1.8質量部
・バイオマス粉体(平均粒子径20μmのりんご粉体) 20質量部 上記接着層形成用組成物の固形分濃度は、約51質量%である。
バイオマス粉体の含有量は、接着層の固形分濃度に対して、20.2質量%である。
【0179】
実施例1~実施例8、及び比較例1~2における各層の質量及びバイオマス粉体の割合等について表1及び表2に示す。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
実施例1~8、及び比較例1~2を用い、意匠性及び耐剥離性について評価を行った。評価方法は下記の通りである。
【0183】
<意匠性>
各表皮材の表皮層表面について、作業者10名が目視及び触診により評価した。
評価基準は、下記通りである。
A:作業者10名が、表皮層の表面にバイオマス粉体の痕跡が目視及び触診で観察されないと判定した。
B:作業者1名以上が、表皮層の表面にバイオマス粉体の痕跡が目視及び触診で観察されると判定した。
【0184】
<耐久性(耐剥離性)>
各表皮材を裁断し、17mm×130mmの試験片を作製した。各試験片を23℃、相対湿度50%の条件下に24時間静置した。静置後、引張試験機(型番:RTG-1225、株式会社エー・アンド・デイ社製)を用い、各試験片の接着層と基布との間の剥離強度を測定した。剥離試験の条件は、試験速度200mm/分、剥離角度180度で行った。評価基準は、下記の通りである。
A:剥離強度0.7kg/cm以上
B:剥離強度0.7kg/cm未満
【0185】
<耐久性(耐加水分解性)>
各表皮材を裁断し、120mm×120mmの試験片を作製した。各試験片を槽内温度70℃、湿度95%の設定したライトスペック恒温高湿機(型番:LH‐114、エスペック株式会社製)に吊り下げ、1週間毎に取り出した。
取り出した各試験片を24時間23℃で静置し、各試験片の接着層と基布との間の剥離強度を引張試験機(型番:RTG-1225、株式会社エー・アンド・デイ社製)を用い測定した。上記剥離強度試験を各試験片について10週間まで行った。
各週の剥離強度と試験開始時の剥離強度と比較し、試験開始時の剥離強度の60%未満となった時点を評価した。
評価するにあたり、「槽内温度70℃、湿度95%に1週間静置した場合」を、「23℃、相対湿度50%に1年間静置した場合」に相当するものと仮定した。例えば、3週目において、試験片の剥離強度が試験開始時の剥離強度の60%未満となった場合は、評価Cとなる。
評価基準は、下記の通りである。なお、B評価以上が実用に耐え得るレベルである。
A:10年以上の耐久性
B:3年以上10年未満の耐久性
C:3年未満の耐久性
【0186】
表3に評価結果を示す。
【0187】
【表3】
【0188】
表3に示すように、中引層にバイオマス粉体を含む実施例1~8では、優れた意匠性及び耐剥離性を有することが示された。
また、中引層には、意匠性及び耐剥離性を低下させることなく、高い割合でバイオマス粉体を含めることができ、それに伴いバイオマス比率も高くなった。
基布に、天然繊維であるコットンを用いることで、更にバイオマス比率を高めることができる。
一方、表皮層にバイオマス粉体を含む比較例1では、意匠性が低下した。また、接着層にバイオマス粉体を含む比較例2では、耐剥離性に劣る結果となった。
この結果より、バイオマス粉体は、中引層に含めることが好ましいことが示された。
【符号の説明】
【0189】
1、10・・・表皮材
2、12・・・基布
3、13・・・中引層
4、14・・・接着層
5、15・・・表皮層
16・・・中間層
図1
図2