(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174770
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】発酵検査装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20241210BHJP
G01N 33/10 20060101ALI20241210BHJP
A21D 8/04 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
G01N33/10
A21D8/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092788
(22)【出願日】2023-06-05
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000128728
【氏名又は名称】株式会社オシキリ
(74)【代理人】
【識別番号】100140693
【弁理士】
【氏名又は名称】木宮 直樹
(72)【発明者】
【氏名】駒 正幸
(72)【発明者】
【氏名】郭 信
(72)【発明者】
【氏名】井上 光
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祐己
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】服部 朱夏
(72)【発明者】
【氏名】平山 智尋
【テーマコード(参考)】
4B029
4B032
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB07
4B029FA15
4B029GA02
4B032DB01
4B032DP33
(57)【要約】
【課題】対象物の発酵状態を検査でき、簡易な構成の発酵検査装置を提供する。
【解決手段】対象物を収容するための所定の内形寸法を有する筒状部材と、
前記対象物の高さ寸法を測定するための測定手段と、
前記内形寸法と、前記高さ寸法と、に基づき前記対象物の容積を算出する計測手段と、を備える発酵検査装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収容するための所定の内形寸法を有する筒状部材と、
前記対象物の高さ寸法を測定するための測定手段と、
前記内形寸法と、前記高さ寸法と、に基づき前記対象物の容積を算出する計測手段と、を備える発酵検査装置。
【請求項2】
前記筒状部材は複数であり、前記複数の筒状部材の各々に関する容積情報を送信するためのBLE(Bluetooth Low Energy)を有する通信手段を備える請求項1に記載の発酵検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵により膨張する対象物の発酵特性を検査するための発酵検査装置に関し、特に、食パン、菓子パン等に使用する生地の容積を測定できる発酵検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンを製造する工程は、ミキサ等により捏ね上げたパン生地が、所定の温度や湿度に保つことができるホイロ(すなわち、発酵装置)内に所定時間載置される発酵工程を備える。パンを所望の品質のパンを製造するためには、パン生地の発酵を安定させる必要がある。一般的には、パン生地の膨らみを目視で観察し、発酵の程度を判定(以下、目視判定と称す。)することが行われている。
【0003】
また、発酵の完了を自動で報知する装置として、パン生地発酵完了報知装置が提案されている(特許文献1参照。)。パン生地発酵完了装置によれば、パン生地に接する1対の電極間の電気抵抗の変化を検出し発酵の完了を報知する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記目視判定によれば、所定時間ごとに、パン生地を収容する容器に記載されている目盛りを目視で読み取り、記録する必要があり、作業が煩雑であり、手間がかかる。特に、計測するパン生地が複数ある場合、目視で各々の容器を確認することは実務上難しい。さらに、計測者ごとに数値の読み取り方の差異が生じる恐れがある。
【0006】
一方、特許文献1に開示されるパン生地発酵完了報知装置によれば、検査者が測定する必要がないため、パン生地の発酵の程度を識別する精度は向上する。しかしながら、パン生地発酵完了放置装置は、固定された一対の電極を備える構成であるため、パン生地が発酵を完了しているか否かのみしか識別できない。よって、パン生地毎の発酵状態に関する情報を取得することが難しい。
【0007】
本発明の一の目的は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、対象物の発酵状態を検査でき、簡易な構成の発酵検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発酵検査装置の第1の態様は、対象物を収容するための所定の内形寸法を有する筒状部材と、
前記対象物の高さ寸法を測定するための測定手段と、
前記内形寸法と、前記高さ寸法と、に基づき前記対象物の容積を算出する計測手段と、を備える。
【0009】
本発明に係る発酵検査装置の第2の態様は、第1の態様であって、前記筒状部材は複数であり、前記複数の筒状部材の各々に関する容積情報を送信するためのBLE(Bluetooth Low Energy)を有する通信手段を備える。
【0010】
本明細書において「対象物」は、攪拌・混合される対象物を意味し、例えば、パンや菓子等の発酵性を有する食物の生地や、当該生地に混ぜられる物質や水分等を含む。また、「発酵性」とは、酵母・細菌などがもつ酵素により、対象物に含まれる糖類のような有機化合物が分解され、アルコール、有機酸、または炭酸ガスなどが生じる特性を意味する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発酵検査装置は、測定手段により取得される長さ寸法と、外径寸法と、を計測する、という簡易な構成にも拘わらず、対象物の容積を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る発酵検査装置の要部構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る発酵検査装置の要部構成が発酵室に配置された状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る発酵検査装置の計測ユニットを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。以下、本発明の実施例に係る発酵検査装置について、
図1ないし
図3を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施例に係る発酵検査装置1の要部構成を示す斜視図であり、
図2は、本発明の実施例に係る発酵検査装置1の要部構成が発酵室101に配置された状態を示す斜視図であり、
図3は、本発明の実施例に係る発酵検査装置1の計測ユニット9を示す分解斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、発酵検査装置1は、主として、対象物であるパン生地Bを収容するための所定の内形寸法Rを有する筒状部材である管状のシリンダ11と、パン生地Bの高さ寸法Hを測定するための測定手段である距離センサ3と、内形寸法である内径Rと、高さ寸法Hと、に基づきパン生地Bの容積を演算する計測手段である計測ユニット9と、を備える。具体的には、以下の式により求められる。
V=π(R/2)
2H ・・・ 式(1)
H=l―h ・・・ 式(2)
【0016】
本実施例のシリンダ11は、開口11aする上端と、閉じた底部13を有する。シリンダ11は、所定の高さ寸法Hを有し、高さ方向に関し同一の内径Rを有する円筒状の筒部材である。よって、シリンダ11の底部13から高さ方向上方に向かい、内径が一定である。
【0017】
計測ユニット9は、既知のCPU(Central Processing Unit)7、所定のプログラムを格納する既知の、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種設定値を格納するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等と、通信手段17aと、計測ユニット9に電力を供給するためのバッテリ5と、を備え、CPU7がROM等に記憶されている制御プログラムを実行し、取得された対象物の容積情報を含む電気信号が通信手段17aにより送信される。なお、本実施例の通信手段17aには、BLE(Bluetooth Low Energy)を採択することが好ましい。また、本実施例では、発酵検査装置1が取得する対象物の容積情報を含む電気信号は、発酵検査装置1と別体である汎用のパソコン15(PC)、スマートフォン等の端末デバイス(オブザーバー)が備える通信手段17b又は有線手段を介し受信される。
【0018】
計測ユニット9は、保護上蓋91と、保護上蓋91が装着される基部97と、を備え、平面視において、保護上蓋91は、角の丸い四角形状を呈する。さらに保護上蓋91の4側面には、それぞれロック部材93a、93bが設けられている。ロック部材93a、93bが、基部97に凸部97a~97dに連結されることにより、保護上蓋91が基部97の上面側に固定される。平面視において、基部97のほぼ中央には距離センサ3が装着されている。また、基部97の裏面97eの、距離センサ3が配置される部分は、距離センサ3による照射光が透過できる透光性部材から構成されている。また、基部97が、シリンダ11の開口11aに載置されると、シリンダ11の内部空間は密閉される構成である。なお、基部97には、CPU7及びバッテリ5が載置され、CPU7及びバッテリ5はカバー5で覆われている。
【0019】
なお、発酵検査装置1は、発酵室101内に配置される構成であるため、多湿環境に耐える構成及び材料から保護上蓋91と基部97が形成されている。
【0020】
さらに、通信手段17aとしては、一方向通信方式のブロードキャストを利用することが、構成要素の省電力化や簡素化の観点から好ましい。特に、オーバーナイト法(低温長時間発酵)において計測ユニット9を利用する場合には、計測時間が相対的に長くなるため、消費電力が小さいブロードキャストが望ましい。さらに、本実施例のように、バッテリにより駆動する構成は、省電力化が必須となる。また、双方向方式のコネクションに比較し、ブロードキャストであれば省電力化を実現できる。
【0021】
なお、通信手段17aにより情報を送信するためアドバタイズの発信周期は適宜設定できることは言うまでもない。また、BLEでは、1台のブロードキャスターに対して接続できるオブザーバーの数は、制限はないが、Bluetooth Classicの場合には、1台のブロードキャスターに対し7台のオブザーバーのみが接続できる。よって、発酵検査装置1を多数用意する必要がある場合であって、BLEが好ましい。
【0022】
さらに、
図1のパソコン15の表示部であるモニタ21には、パン生地B1、B2の発酵状態が表示されている。パン生地B1、B2の容積は、それぞれ1425cc、1265ccが表示されている。もちろん、発酵状態を測定する対象物の数は変更できることは言うまでもない。
図2では、発酵室101内に載置される発酵検査装置1の数は、2つであり、同一の構成であるが、発酵検査装置1の数や寸法は適宜変更できる。
【0023】
上記構成の発酵検査装置1において、検査者が発酵検査装置1を起動し、パン生地B1及びパン生地B2の容積を検査する動作について説明する。まず、
図2に示されるシリンダ11にパン生地B1、B2が投入される前に、計測ユニット9が作動し、高さ寸法Hが0であることを示す0点設定を行う。すなわち、CPU7からの駆動信号により、距離センサ3(本実施例では赤外線センサ)の発光素子から赤外光が底部13に照射される。底部13により反射された反射光が受光素子で受信される。CPU7により、光路の距離に応じて変化する出力電圧の情報に基づき、対象物が無い場合のシリンダ11の底部13までの距離lが算出される。
【0024】
次に、パン生地B1、B2がシリンダ11内に投入された後、各発酵検査装置1は、発酵室101内に載置され、発酵検査装置1が駆動される。
【0025】
距離センサ3によりパン生地B1、B2の上面(平面視において底部13の中央部)距離hに関する情報と、予め設定されている内径Rの情報とに基づき、パン生地B1、B2の容積がCPU7により演算される。さらに、CPU7において、前述の式(1)により、B1、B2の容積Vが算出される。容積Vに関する情報は、CPU7の送信命令により、所定時間ごとに、通信手段17aを介し送信され、通信手段17bを介しパソコン15により受信される。なお、容積Vが取得されると、発酵を開始してからの経過時間と、発酵検査装置1固有の番号、容積V等の情報が、モニタ21にリアルタイムで表示される(
図2参照。)。
【0026】
なお、本実施例は、容積Vがリアルタイムでモニタ21に表示するプログラムを採択する例であるが、本例の代わり、または本例とともに、各発酵検査装置1のシリンダ11における高さHを時系列で示すグラフを表示するプログラムを採択することも可能である。
【0027】
本実施例において、対象物を収容するシリンダは、円筒形状であるが、本発明は本構成に限定されない。たとえば、多角形、楕円形等、適宜変更できる。また、シリンダの内形寸法は、シリンダの高さ方向に関し不変である必要はなく、シリンダの内部空間の容積を算出できる限りにおいて、シリンダの形状を適宜変更できる。
【0028】
なお、本発明は、上述の実施の態様に限定されないことは、本発明の技術思想に基づく限り、本発明の範疇に入ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 発酵検査装置
3 距離センサ(測定手段)
5 バッテリ
7 CPU(計測手段)
9 計測ユニット
11 シリンダ(筒状部材)
11a 開口
13 底部
15 パソコン
17a、17b 通信手段
21 モニタ
55 カバー
91 保護上蓋
93a、93b ロック部材
97e 裏面
97 基部
97a~97d 凸部
101 発酵室
B、B1、B2 パン生地
R 内形(内径)寸法
H 高さ、距離
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】