(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174780
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】滑空船の高速航行時の安定性維持装置
(51)【国際特許分類】
B63B 1/18 20060101AFI20241210BHJP
B63B 43/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B63B1/18 Z
B63B43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023101217
(22)【出願日】2023-06-05
(71)【出願人】
【識別番号】505073118
【氏名又は名称】株式会社未来予測研究所
(72)【発明者】
【氏名】米田 庄司
(57)【要約】
【課題】海面を高速で滑空する高速船の左右の揺れや急激な船首の仰角の上昇を抑えること。
【解決手段】 滑空船が高波などで急激に上向いたときに一定以上仰角の上昇を抑える手段、装置として、船体後方に突き出したフレ-ム10とその先端に取り付けてあるプレ-ト11があり、フレ-ム10は甲板に水平に船体の全長の半分程度の長さで張り出してあり、プレ-ト11は船体が海面にほぼ水平に航行している状態では海面に触れないが、急激に船体が急激に上向いたときプレ-ト11は海面に接触するようにしてあり、それは滑空船が時速100km以上の高速ではプレ-ト11は非常に強い上向きの力で、つまり船首の跳ね上がりを抑える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長に対し幅がその30~50%、厚さは5~10%、全長は数メ-トルから数十メ-トルのフロ-トの上に船室、操縦室、プロペラやジェットエンジンを搭載した最高時速が200~300kmの滑空船の船首に、あたかも航空機の主翼の後ろの上に取り付ける形の、高速時に船体全体の進行方向に対し仰角が上昇した場合に船首部分が海面から浮き上がらないように空気抵抗で下向きの力を得るためのスポイラ-を取りつけた、
ことを特徴とする滑空船
【請求項2】
前記滑空船のフロ-トの船首と後方内部に水タンクを設け、
内部の水は片方を満水させる量とし、
両方の水タンクはポンプ等で移し替えることが出来るようにし、
その水を出航時は後方に移し、高速航行時には前方に移して船体を空気抵抗や波浪による仰角の跳ね上がりを抑えて水平に維持出来るようにした、
ことを特徴とする請求項1に記載の滑空船
【請求項3】
前記滑空船のフロ-トの船首の左右から、それぞれ両サイドの外に円弧状の断面が円に近いア-ムを、
凡そ船体の半分程度となるように油圧装置等でフロ-トの甲板部分と同じ高さを維持するように、つまり水平に張り出し、船体が左右に傾いた時にア-ムの先端部分が海面に触れ強い反発力を得て傾きを押し戻し、
かつ岸壁に接岸した時にはア-ムが障害にならないようにそれぞれフロ-トにたたむように操作できる、
ことを特徴とする請求項1~2に記載の滑空船
【請求項4】
前記滑空船のフロ-トの船尾から長さが全長の半分程度数本のパイプまたはフレ-ムを水平に突き出し、
その先に幅がフロ-トの半分程度、長さがその半分程度のプレ-トを取り付け、船体が上向いたときにそれが海面に触れて押し返す力を得て仰角がそれ以上跳ね上がらないようにした、
ことを特徴とする請求項1~3に記載の滑空船
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海面を時速200~300kmの速度で滑走する滑空船の航行時の安定性に関する。
【背景技術】
【0002】
海上を高速で航行するものは従来型の高速船の他に、水中翼船やホバ-クラフトタイプのものなどいくつかあるが、いずれも海面下に何らかの推進に必要な機材、装置があり、時速が100~150kmに達するとそれが抵抗となり、それ以上の速度では燃費などの面で実用は難しい。これに対し炭素繊維などで軽く薄く強度のあるフロ-トを製作し、その上にプロペラやジュットエンジンの推進装置を取り付けそれで推力を得て航行する方式の船、滑空船は時速が60~70km以上では船底が完全に海面から浮き上がり海水との抵抗が限りなく小さくなり、例えば時速200~300kmも可能となる。この場合、カジに代わる方向変換は船尾の上に取りつけた航空機と同じ垂直尾翼による。
このような高速船、海面を滑空するタイプのものは全体の構成が同じ推進力、馬力の航空機の離陸時重量に近いものである。つまり航空機の翼と車輪など離着陸装置、それを支えるフレ-ムの重量が滑空するタイプの滑空船とほぼ等しい。逆に言うと波浪に耐える強度の軽量なフロ-トが炭素繊維で製作することができるので以上のような新しい方式の高速船が可能となる。
【先行技術文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし時速200~300kmで海面を高速で航行する場合、波が高い場合には船体はさまざまな角度での揺れが発生し、それにより安定性は低下する。乗り心地も悪くなり、最悪横転の危険性も出てくる。具体的には左右の大きな揺れ、ロ-リングと前後の揺れ、ピッチングである。航空機でも小型プロペラ機では時速が200km以下も多く、宙返りもでき、滑空船もその速度を越えると普通の船舶では考えられない同じ事象に直面する。
【0005】
特に前方から高い波を受けた場合、船体は進行方向に対し仰角が急激に上昇する。特に滑空船め場合、フロ-トの面積は大でありその船底の受ける空気抵抗はかなり大きく、航空機の垂直尾翼と一体的に取りつけられている水平尾翼のようなものでは到底船体を水平に戻す力は得られない。最悪制御不能になると船体全体が反転する、つまり航空機の宙返りと同じ現象が生じ、これは極めて危険である。
【0006】
同様に横からの高い波に対しても船体全体が軽いために揺れやすく、横転の危険性も通常の船舶以上に高い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明のひとつの特徴に従った滑空船は、全長に対し幅がその30~50%、厚さは5~10%、全長は数メ-トルから数十メ-トルのフロ-トの上に船室、操縦室、プロペラやジェットエンジンを搭載した最高時速が200~300kmの滑空船の船首に、あたかも航空機の主翼の後ろの上に取り付ける形の、高速時に船体全体の進行方向に対し仰角が上昇した場合に船首部分が海面から浮き上がらないように空気抵抗で下向きの力を得るためにスポイラ-を取りつける。
【0008】
本発明の他の特徴に従った滑空船は、船のフロ-トの船首と後方内部に水タンクを設け、内部の水は片方を満水させる量とし、両方の水タンクはポンプ等で移し替えることが出来るようにし、その水を出航時は後方に移し、高速航行時には前方に移して船体を空気抵抗や波浪による仰角の跳ね上がりを抑えて水平に維持出来るようにする。
【0009】
本発明の更に他の特徴に従った滑空船は、フロ-トの船首の左右から、それぞれ両サイドの外に円弧状の断面が円に近いア-ムを、凡そ半分程度となるように油圧装置等でフロ-トの甲板部分と同じ高さを維持するように、つまり水平に張り出し、船体が左右に傾いた時にア-ムの先端部分が海面に触れ強い反発力を得て傾きを押し戻し、かつ岸壁に接岸した時にはア-ムが障害にならないようにそれぞれフロ-トにたたむように操作できるようにする。
【0010】
本発明の更に他の特徴に従った滑空船は、フロ-トの船尾から長さが全長の半分程度数本のパイプまたはフレ-ムを水平に突き出し、その先に幅がフロ-トの半分程度、長さがその半分程度のプレ-トを取り付け船体が上向いたときにそれが海面に触れて押し返す力を得て仰角がそれ以上跳ね上がらないようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、時速が200~300kmという高速で海面を航行する滑空船は先方から波や風で船首部分が上向き仰角が急激に上昇状況する局面でも、横波で左右に大きく傾いた場合でも、船体に取りつけたいくつかの装備により船体を常に水平に維持することができ安定性を保てる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】本発明の一実施例を示す滑空船のフロ-ト内部平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面を参照に本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0014】
図1に、本発明の実施形態に係る滑空船の側面図、
図2に平面図、
図3に正面図、
図4にフロ-トの内部平面図を示す。全長は小型の滑空船の場合、5~6m、幅はその半分程度、フロ-ト1の厚さは全長の約10%程度、船室2の高さは小型の場合約1.5m程度である。大型の滑空船は全長が20~50mとなる。幅等の比率は小型船にほぼ同じである。滑空船のエンジン3は航空機と同様にさまざまな位置に取りつけることができ、その種類もガソリンエンジンでプロペラによるもの、ジェットエンジンなどが選択でき、ただいずれも船上で推進力を出すものである。この方式の滑空船は全体の重量は同じエンジン出力の航空機に近く、通常の船に比較すると著しく軽い。したがって時速が100kmを越えると船底は完全に海面から浮き上がり滑空状態となりエンジン出力を上げると時速200~300kmも可能となる。
【0015】
その場合には新たな問題に直面する。速度が100kmを越えると正面から高い波を受けるとフロ-ト1は急激に上向き、つまり進行方向に対する仰角は高まる。それは船底全体が上向き反転の危険性が高まることを意味する。これには直ちに仰角を下げる、つまり全体を水平に戻す必要があり、そのひとつの手段が船首の甲板に先端下部を甲板に稼働できるように取り付けたスポ-ラ-4である。出港時には甲板に水平に倒してあるが、船体の仰角が高まると自動的に油圧装置等でスポ-ラ-4が進行方向に対し30~50度の角度で立ち上がり、空気抵抗で下向きの力を得てフロ-ト1を水平に戻すようにする。ただしスポイラ-4が立ち上がった場合、操縦室2前面を覆わない高さであることは言うまでもない。
【0016】
滑空船にはその他にも進行方向に対する安定性を維持する装置があり、
図4に示すフロ-ト1の船首部分と船尾部分に対で取り付けてある水タンク5である。これにはどちらかを満水にするだけの水が入っており、ポンプ6で水を移す。滑空船が出航するときには船首部分は少し上向いているほうが速度を上げるのによく、その場合には船尾部分の水タンク5に水の全量を移しておく。次に速度が上がってくると、船首が浮き上がるのを阻止するために船首の水タンク5に適宜船尾のタンク5の水を移す。水タンク5の容量は以上の効果が期待できる量であると同時に全体の重量が増え過ぎないように設計する。
【0017】
波が高い場合に全体の安定性を維持するために
図4に示したフロ-ト1の内部に海水を入れる方法もとれる。フロ-ト1の内部は構造的には縦方向、横方向に一定間隔で炭素繊維製などの軽くて強い板状の構造材9を格子状に組み、その上部甲板と下部船底にはやはり炭素繊維製などの板をあたかも床を張るように敷きつめ、フロ-ト1全体を構成する。船首などは丸みのある部分は型をとり、組み立て、それらは相互に接着しかつ橋梁を炭素繊維で補強するように被覆して製作する。この方式ではかなり大きなサイズの滑空船のフロ-トが製作可能である。フロ-ト1の内部は上部約半分には浮力材を敷きつめ、下部はいくつかに仕切られたバラストタンクとなっているのが滑空船の特徴で、特別な装置は取りつけなくても、通常の航行時にはバラストタンクの海水は完全に排除するが、波高い場合にはある程度の海水を入れて重心を下げて船体の安定性を増すこともできる。
【0018】
船体が波で横に揺れた場合、傾きが大きく、横転の危険性が出てきた場合に備えて、
図1~3に示すようにフロ-ト1の船首部分から両サイドに張り出すようにパイプ状のア-ム7をフロ-ト1の甲板と同じ高さ、つまり水平に取り付け、かつその両方のア-ム7は油圧装置8で張り出し、またフロ-ト1に格納できるようにする。波が高い場合には当然ア-ム7は油圧装置8で張り出しており、大きく横に傾いた時はア-ム7の先端が海面に接触し強い反発力と浮力でそれ以上の傾きを阻止し、押し戻す。岸壁に接岸するときには障害となるのでア-ム7はフロト1の両弦に格納する。
【0019】
船体が高波などで急激に上向いたときに即座に仰角の上昇を抑える手段、装置として
図1と
図2に示す船体後方に突き出したフレ-ム10とその先端に取り付けてあるプレ-ト11がある。フレ-ム10は甲板に水平に船体の全長の半分程度の長さで、プレ-ト11は船体が海面にほぼ水平に航行している状態では海面に触れることはない。しかし急激に船体が上向いたときプレ-ト11は海面に接触する。滑空船が時速100km以上の高速ではプレ-ト11は非常に強い海面からの反発力を受け、それが船首の跳ね上がりを抑える。プレ-ト11は航空機の尾翼に相当する役割であるが、角度を調整する装置は不要であるが、海面から受ける強い波浪に耐えるかなりの強度を有するものである。また船体を岸壁に引き上げて格納する際に全長が長く不便である場合には、フレ-ム10は船尾の甲板の取り付け部分で垂直に跳ね上げるようにする、あるいは取り外し可能にすることも出来る。
【符号の説明】
【0020】
1 フロ-ト
2 操縦室及び船室
3 エンジン
4 スポイラ-
5 水タンク
6 ポンプ
7 ア-ム
8 油圧装置
9 板状の搆造材
10 フレ-ム
11 プレ-ト