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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174786
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】壁紙
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20241210BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E04F13/07 B
E04F13/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148674
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2023092528
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 武司
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AA58
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA04
2E110BB02
2E110BB04
2E110BB32
2E110BB40
2E110CA03
2E110CA04
2E110DC21
2E110EA09
2E110FA06
2E110GA32W
2E110GB44W
2E110GB46W
(57)【要約】
【課題】位置合わせを容易に行うことの可能な壁紙を提供する。
【解決手段】所定の図柄を単位柄Pとしてこの単位柄Pが長手方向に複数単位繰り返して形成された幅方向寸法一定の帯状の壁紙10であって、壁紙10は、幅方向両端まで図柄2が形成された施行可能な領域であり、図柄2が形成された表面側の幅方向両端部のそれぞれに、単位柄Pの特定部分の位置を示し且つ単位柄Pの一部を構成しない図柄合わせ用マーク3を、単位柄P毎に少なくとも一つ有し、図柄合わせ用マーク3は、除去可能な材料を用いて形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、
少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、
表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、
当該位置合わせ用マークは、除去可能な材料を用いて形成されていることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記除去可能な材料は、水溶性材料であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項3】
前記除去可能な材料は、剥離可能な粘着性部材であることを特徴とする請求項1に記載の壁紙。
【請求項4】
幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、
少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、
表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、
当該位置合わせ用マークは、発光剤を含む材料を用いて形成されていることを特徴とする壁紙。
【請求項5】
前記発光剤は、紫外線の照射を受けて発光することを特徴とする請求項4に記載の壁紙。
【請求項6】
幅方向の両端側はそれぞれその端部まで施工可能な領域であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の壁紙。
【請求項7】
前記位置合わせ用マークは、
前記表面側の、前記施工可能な領域の幅方向両端部のそれぞれに形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の壁紙。
【請求項8】
所定の図柄を一単位として当該図柄が長手方向に複数単位繰り返して形成された壁紙であり、
前記位置合わせ用マークは、前記図柄の特定部分の位置を示し且つ前記図柄の一部を構成しないマークであって、前記一単位毎に少なくとも一つ設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の壁紙。
【請求項9】
無地調の壁紙であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれ一項に記載の壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内の壁面等への壁紙の施工方法として、重ね貼り施工法が知られている。この重ね貼り施工法は、隣り合う壁紙の耳部分を数cm重ねた後に、両方の壁紙が重なる部分をカッター等の刃物で切断し、両方の壁紙の不要な部分を取り除いた後、ジョイントローラー等で、壁面等に貼り付ける施行法である(例えば、特許文献1参照。)。また、壁面に貼着した壁紙に別の壁紙を貼着する際に、壁紙を重ねずに、隣接する壁紙同士の小口面を突き合わせて納める突き合わせ工法等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-106500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、重ね貼り施行法、突き合わせ施工法等、いずれの施行法においても、隣接する壁紙どうしを隙間なく平行に張り付ける必要がある。特に柄物の壁紙である場合には、柄合わせを行う必要がある。そのため、位置合わせを容易に行うことの可能な壁紙が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、位置合わせを容易に行うことの可能な壁紙を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、当該位置合わせ用マークは、除去可能な材料を用いて形成されている壁紙が提供される。
【0007】
また、本願発明の他の態様によれば、幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、当該位置合わせ用マークは、発光剤を含む材料を用いて形成されている壁紙が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、位置合わせを容易に行うことの可能な壁紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る壁紙の一例を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る壁紙の製造方法を説明するための説明図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る壁紙の施工方法を説明するための説明図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る壁紙の他の例を模式的に示す平面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る壁紙の一例を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る壁紙の製造方法を説明するための説明図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る壁紙の施工方法を説明するための説明図である。
図8】従来の壁紙の施工方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
【0012】
<壁紙の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る壁紙10の構成を模式的に示す平面図である。
図1において、1は壁紙本体、2は壁紙本体が表す図柄、3は図柄合わせ用マークである。壁紙10には、図柄2を有する壁紙本体1の、図柄2側の最表層に図柄合わせ用マーク(位置合わせ用マーク)3が形成されている。
壁紙10は、幅が一定であり、壁紙10の幅は、壁紙10の施工可能な有効幅L1と同一である。つまり壁紙10は、耳を持たず、壁紙10の幅方向端部まで図柄が形成されている。壁紙10の幅は、JIS A 6921で規定される壁紙の有効幅に準じて例えば920mmである。なお、壁紙10の有効幅L1(壁紙10の幅)は920mmに限るものではなく、300mm、600mm、1000mm等、任意幅であってよい。
【0013】
(壁紙本体)
壁紙本体1は、幅方向寸法が一定であり帯状を有し、いわゆる壁紙として使用することができればどのような構成であってもよい。
壁紙本体1の最表層、つまり、図柄合わせ用マーク3が形成される層は、塩化ビニル樹脂、非塩化ビニル樹脂、紙等、図柄合わせ用マーク3を印刷することの可能な材料で形成され、且つ、図柄合わせ用マーク3を消去することの可能な材料で形成される。
【0014】
(図柄)
図柄2は、壁紙本体1が表す図柄意匠であって、所定の図柄を一単位とし、この図柄が壁紙本体1の長手方向に複数単位繰り返して描かれている。図1では、「左上に星を備えた木」を部分絵柄fとし、左半分が記載されていない部分絵柄f1と、この部分絵柄f1から、壁紙10の幅方向に離れた位置に配置された部分絵柄f2と、部分絵柄f1及びf2の間の、これら部分絵柄f1及びf2よりも下方に形成された部分絵柄f3と、この部分絵柄f3から幅方向に離れた位置に配置され右半分が記載されていない部分絵柄f4とを一つの単位柄Pとして、この単位柄Pが、壁紙本体1の長手方向に複数繰り返し描かれている。
【0015】
また、図柄2は、2枚の壁紙10を、端部同士を突き合わせ並べて配置したときに、長手方向の位置を調整することによって、左半分が記載されていない部分絵柄f1と右半分が記載されていない部分絵柄f4とが連続し、部分絵柄f2、f3と同等の形状の部分絵柄となるように形成される。
図柄2は、どのような材料を用いて描かれていてもよいが、後述する水拭きを行った際に、図柄が消去されない材料で形成されていることが望ましい。
【0016】
(図柄合わせ用マーク)
図柄合わせ用マーク3は、図柄2の特定部分を示す位置に形成され、水溶性材料を用いて形成される。具体的には、図柄合わせ用マーク3は、水溶性材料で形成される。水溶性材料として、特にポリビニルアルコールを主成分とする着色剤が好ましい。ここで、水溶性とは水に可溶であることをいう。図柄合わせ用マーク3は、濃色でも問題ないが、除去作業が容易にできるように白、グレー、ベージュ等淡い色で形成されることが好ましい。
【0017】
図柄合わせ用マーク3は、例えば、インクジェット印刷、スタンプ印刷等の印刷手法を用いて形成される。
図柄合わせ用マーク3は、壁紙本体1の幅方向両端部のそれぞれに、単位柄P毎に少なくとも一つ有する。図柄合わせ用マーク3は、図1では、壁紙本体1の左端に描かれた部分絵柄f1の下端近傍(3a)と、壁紙本体1の右端に描かれた部分絵柄f4の下端近傍3bとに形成されている。図柄合わせ用マーク3は、図柄2の一部を構成しない形態で形成され、例えば壁紙本体1の左側の端部又は右側の端部を始点として他方の端部に向けて、壁紙本体1の長手方向に対して垂直となる方向に伸びる線分(破線)である。
【0018】
なお、ここでは、単位柄Pにおいて、図柄合わせ用マーク3を、壁紙本体1の左端側に1つ(3a)、右端側に右端側に1つ(3b)設けているが、これに限るものではない。壁紙本体1の左端側及び右端側それぞれに複数設けてもよく、単位柄Pにおける、長手方向の柄の配置状況等に応じて、左端側及び右端側それぞれに1又は複数設けてよい。要は、壁紙10を隣り合わせで突き付け張りをした場合に、図柄合わせ用マーク3を、隣り合う2枚の壁紙10の図柄2が連続するように張り付ける場合の目印として用いることができればよい。図1に示すように、壁紙本体1の端部を基点とする線分を図柄合わせ用マーク3として用いることによって、2枚の壁紙10同士を突き合わせ、図柄合わせ用マーク3としての線分同士が連続するように位置決めすることによって、より正確に図柄合わせを行うことができる。
【0019】
ここでは、図柄合わせ用マーク3として、壁紙本体1の長手方向に垂直な方向に伸びる線分を用いた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、図柄合わせ用マーク3として三角形を用い、三角形の頂点が壁紙本体1の端部に重なるように形成してもよく、矢印を用い、矢の先が壁紙本体1の端部に重なるように形成してもよい。
【0020】
また、ここでは、図柄合わせ用マーク3を、壁紙本体1の端部と重なるように形成しているが、必ずしも端部と重なっていなくてもよく、要は、2枚の壁紙10同士を突き合わせたときに、図柄合わせ用マーク3を手がかりに、2枚の壁紙10の図柄が連続するように長手方向の位置を調整することができればよく、端部でなくてもよく任意の位置に形成されていてもよく、左右の端部寄りの位置であってよい。
【0021】
また、ここでは、図柄合わせ用マーク3により、壁紙本体1の長手方向の位置を示しているが、これに限るものではない。図1に示す壁紙10の場合、図柄に「木」を含み、「木」は一方向に向いて描かれているため、「木」の向きを見ることで、壁紙10の上下方向を認識できる。そのため、壁紙10では、図柄合わせ用マーク3として、壁紙本体1の上下方向を示すマークは描いていないが、図1に示す壁紙本体1において、図柄合わせ用マーク3として、壁紙本体1の上下方向を表すマークと図柄合わせの手がかりとなるマークとを描くようにしてもよく、これらマークは一つのマークとして描いてもよく、別々のマークとして描いてもよい。例えば、壁紙本体1の上下方向を表すマークとして壁紙本体1の長手方向と平行な線分を形成し、図柄合わせの手がかりとなるマークとして、壁紙本体1の長手方向に対して垂直となる方向に壁紙本体1の端部から伸びる線分を形成してもよく、これらを連結して形成してもよく別々に形成してもよい。
【0022】
<壁紙の製造方法>
壁紙10の有効幅L1を、例えばJIS A 6921に準じて、920mmとする。
壁紙本体1は、例えば、基材と、発泡樹脂層と、図柄印刷層と、表面保護層とがこの順に積層されて形成され、表面保護層の図柄印刷層とは逆側の面に図柄合わせ用マーク3が印刷されている。なお、ここでは、基材と、発泡樹脂層と、図柄印刷層と、表面保護層とがこの順に積層されてなる壁紙本体1に適用する場合について説明するが、壁紙本体1の構成はこれに限るものではなく、壁紙として用いることができればどのような構成であってもよい。また、壁紙本体1の仕様は必要に応じて、基材と、発泡樹脂層と、図柄印刷層とがこの順に積層され、図柄印刷層の発泡樹脂層とは逆側の面に図柄合わせ用マーク3が印刷されている構成であってもよい。
【0023】
まず、図2に示すように、壁紙10として所望とする有効幅L1(920mm)と、余裕代αとを考慮した、例えば930mm程度の幅(以下、基材幅L2という。)を有するシート状の基材を用意する。
基材の一方の面に、発泡樹脂層となる発泡剤含有組成物の層を形成し、シート状態にする。
【0024】
次に、発泡剤含有組成物の層の、基材とは逆側の面に、印刷手法を用いて図柄を印刷し、図柄印刷層を形成する。この図柄印刷層の図柄は、例えば図1に示すように、所定の図柄を単位柄Pとし、この単位柄Pを、基材の長手方向に複数繰り返して配置した図柄である。図柄印刷層は、基材の幅方向中央に位置するように印刷され、有効幅L1と余裕代βとの和に相当する幅(以下、印刷幅L3という。)全体に印刷される。
【0025】
次に、図柄印刷層の上に、例えばアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を塗布し、表面保護層を形成する。
続いて、表面保護層の上に、印刷手法を用いてスリットライン31と図柄合わせ用マーク3とを印刷する。スリットライン31及び図柄合わせ用マーク3は一度の印刷処理工程で印刷してもよく、別々の印刷処理工程で印刷してもよいが、少なくとも図柄合わせ用マーク3及びスリットライン31は水溶性のインクを用いて印刷する。
【0026】
スリットライン31は、基材幅L2を有する基材上に形成された積層体から有効幅L1の壁紙を切り出す際の切断位置を示す線分であって、基材の幅方向中央を起点として、幅方向左右に460mmずつ振り分けた位置に印刷する。このスリットライン31は壁紙を切り出す際に用いる線分であり出荷後は必要としない線分である。
図柄合わせ用マーク3は、図2に示すように線分(破線)であって、一端がスリットライン31と重なり、他端がスリットライン31の長手方向に対して垂直方向に他方のスリットライン31に向けて伸びるように形成する。図柄合わせ用マーク3としての線分が、スリットライン31と重なる位置は、予め図柄印刷層の図柄に応じて設定した上下方向の位置合わせの手がかりとなる位置である。
【0027】
なお、図柄合わせ用マーク3の表示位置から、スリットライン31の位置を規定できる場合には、スリットライン31は必ずしも設けなくてもよい。つまり、図1に示すように図柄合わせ用マーク3は線分であり、一方の端部は壁紙本体1の端部、つまりスリットライン31を始点として形成しているため、図柄合わせ用マーク3としての線分の一端はスリットライン31の位置を示すことになる。したがって、長手方向の同じ側に形成された複数の図柄合わせ用マーク3の基材端部側の一端どうしを結ぶ線分はスリットライン31を表すことになる。したがって、図柄合わせ用マーク3を表す線分の一端はスリットライン31の位置を示すことを、壁紙10の施工業者に伝えれば、スリットライン31は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
続いて、加熱することにより、発泡剤含有組成物の層を発泡させて発泡樹脂層を形成し、続いてエンボスロールによって、表面保護層側からエンボス加工を行ってエンボス模様を形成する。この時点では、壁紙となる積層体は基材幅L2を有する基材に形成された状態であり、有効幅L1よりも幅は広い。
【0029】
続いて、基材幅L2を有する積層体を、そのスリットライン31に沿って切断し、スリットライン31よりも端部側の領域を切り離す。これによって、有効幅L1を有する壁紙10が切り出される。基材の両端をスリットライン31から切り離した後に、スリットライン31が残る場合には、この時点で、水で濡らして適度に絞ったスポンジ等で擦ることで残ったスリットライン31を消去するようにしてもよい。
【0030】
ここで、印刷幅L3は、有効幅L1よりも大きい。そのため切り出された壁紙10は、幅方向両端まで全面に図柄が印刷されており、施工可能な有効幅L1を有する。つまり、幅方向両端まで図柄印刷が行われて全面に図柄意匠を有する図1に示す壁紙10が得られる。
なお、ここでは、表面保護層の上に、スリットライン31及び図柄合わせ用マーク3を印刷しているが、表面保護層を持たない場合には、スリットライン31及び図柄合わせ用マーク3は、最表層となる図柄印刷層の上に形成すればよい。
【0031】
<施工方法>
本実施形態に係る壁紙10は、図3に示すように、幅方向両端まで図柄が描かれている。
壁紙10を施工する際には、図3に示すように、まず1枚目の壁紙10aを、上下を考慮して壁に張り付ける。図1の壁紙10の場合、部分絵柄f1~f4として「木」が描かれているため、「木」の向きから壁紙10aの上下を判断することができる。
【0032】
次に、図3に示すように、2枚目の壁紙10bを、壁紙10aの例えば右側に配置し、壁紙10aの右側の図柄合わせ用マーク3bと壁紙10bの左側の図柄合わせ用マーク3aとが連続するように上下方向の位置を調整し、この位置に壁紙10bを張り付ける。これによって、壁紙10aと10bとの境界で壁紙10aの部分柄f4と壁紙10bの部分柄f1とがずれることなく連続して張り付けられ、部分柄f2、f3と同一形状の部分柄が形成されることになる。
【0033】
同様の手順で他の壁紙10を貼り合わせ、所定数の壁紙10を貼り終えた後、例えば水でぬらして適度に絞ったスポンジ等を用いて、全ての図柄合わせ用マーク3を擦る。図柄合わせ用マーク3は水溶性のインクで描かれているため、スポンジ等で擦ることにより消える。これにより、図柄合わせ用マーク3が描かれていない、壁紙本体1の図柄意匠を有する壁紙10が、施工された状態となる。
【0034】
なお、本実施形態に係る壁紙10は、その幅方向両端のいずれにも耳がないため、壁紙10を張り付けた後、耳を除去する工程が不要である。
【0035】
<効果>
本実施形態に係る壁紙10は、図柄合わせ用マーク3が施工可能な有効幅L1の領域内に描かれている。そのため、図柄合わせ用マーク3を手掛かりとして、位置合わせを容易に行うことができると共に、耳を設ける必要がないため、突き合わせ工法を用いて施工することができる。つまり、図柄が描かれた壁紙の場合、図柄合わせのために図柄合わせ用マーク3を設ける必要があり、従来、図柄合わせ用マーク3は耳部分に設けられているため、突き合わせ工法を採用することは困難であった。また、図柄合わせマークを設けないで柄合わせを行う事も目合わせにより可能であるが、壁紙の施工業者本人の技量に左右される為、施工時間が長くかかる可能性がある。
【0036】
本実施形態に係る壁紙10は、従来の図柄合わせ用マーク3の、壁紙の長手方向における表示位置は替えずに、幅方向における表示位置を変更し、図柄合わせ用マーク3を、施工可能な有効幅L1の領域内に形成しており耳を備えていないため、突き合わせ工法を採用することができる。
また、工場出荷段階で、壁紙10は、施工可能な有効幅L1を有していればよく、耳を設ける必要はない。その結果、耳に相当する分だけ、工場での生産時に必要な材料を削減することができ、その結果、生産に要する手間やエネルギの削減を図ることができる。
【0037】
また、施工業者においては、耳を切り離す必要がなく、切り離した耳部分を含む施工に伴う廃棄物量を削減することができる。さらに耳部分に塗布する糊が不要となるため、その分糊の使用料を低減することができ、耳の切断に要する手間や、施工に必要な材料の削減を図ることができる。
また、耳を設ける必要がないため、その分出荷時の壁紙10を軽量化及び小型化することができ、運送効率を向上させることができ、また、環境配慮の観点からも有益である。
【0038】
つまり、従来、図柄が描かれた壁紙には、図8に示すように、耳部分に図柄合わせ用マーク12a、12bが印刷されている。施工業者はこの図柄合わせ用マーク12a、12bの上下方向の位置が一致するように、また、幅方向の位置合わせは、目視で柄合わせを行うことで、図柄にずれなどが生じることを回避している。そして、位置決めした後、重なりあった壁紙11a、11bを切断することで耳部分を切り離す。これにより、壁紙11a、11bの耳部分が除去されて、壁紙11a及び11bの幅はそれぞれ有効幅L1となり、壁紙11a及び11bの柄が連続するように突き合わされて貼り合わされた状態となる。
【0039】
このとき、切り離された耳部分は廃棄物となる。例えば、図8において、基材幅L2を980mm程度とし、有効幅L1を920mmとした場合、壁紙11a、11bそれぞれの左右端から幅ΔL(例えば60mm)相当分が廃棄物となり、ロスが生じている。また、そのロス分だけ、壁紙を形成するための基材や、図柄印刷用のインク、紙管、包装剤等の材料費や、エネルギがロス分として生じている。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る壁紙10は、耳部分を作成しなくてよいから、その分、基材幅L2は短くてすみ、壁紙の材料費やエネルギのロスを削減することができる。
また、従来、耳部を切り離すことにより、概ね20~60mm(ロス率3~9%)以下程度の廃棄物が生じ、且つ、その廃棄物には施工糊も塗布されている。つまり廃棄部分に施工糊が塗布されておりその分無駄になる。さらに、重ね貼り施工法を用いる場合、壁紙本体の表面を汚すことなく施工するために、ジョイントカットテープを用いる場合があり、また、壁面等の施工面の上に直接カッターの刃をいれるため、下地を傷付けないようにジョイント下敷きテープと呼ばれるものを用いる場合もある。施工業者はこれら材料費用に加え、これら材料の廃棄費用も負担となる。
【0041】
また、図柄合わせ用マーク3は、壁紙10の製造ライン中の一工程として印刷処理によって形成しているため、生産性及び位置精度を向上させることができる。
【0042】
<変形例>
(1)上記実施形態においては、水溶性インクを用いて図柄合わせ用マーク3を形成し、施工後に図柄合わせ用マーク3を消去するようにしているが、これに限るものではない。
例えば、粘着性シート等の粘着性部材に線分や矢印等の図柄合わせ用マーク3を印刷し、この粘着性部材を、壁紙本体1の絵柄側の最表層に張り付けることで、壁紙本体1に図柄合わせ用マーク3を形成し、施工後この粘着性部材を剥離することで、図柄合わせ用マーク3を消去するように構成してもよい。
また、例えば、図柄合わせ用マーク3を、発光剤を含むインクを用いて形成してもよい。例えば、発光剤として目視では見えない蛍光剤を用い、この蛍光剤を含むインクを用いて所定の位置に図柄合わせ用マーク3を形成し、施工時には、所定の位置にブラックライトにより紫外線照射を行って図柄合わせ用マーク3を可視化するように構成してもよい。この場合、紫外線照射を行わなければ図柄合わせ用マーク3は目視できないため、図柄合わせ用マーク3を消去する必要はない。
【0043】
(2)壁紙10の幅は、必ずしもJIS A 6921に準ずる920mmでなくてもよく、任意幅の壁紙10を製造する場合であって適用することができる。設計上、図柄意匠上の、図柄ジョイント位置に図柄合わせ用マーク3を形成することで、スリット幅、すなわち壁紙10の幅は任意に設定することができる。
【0044】
(3)図柄合わせ用マーク3は、壁紙10の製造ライン中の一工程として印刷処理によって形成しているがこれに限るものではない。例えば、製造ラインとは別に、図柄合わせ用マーク3を印刷するラインを別に設けてもよい。また、壁紙10を切り出した後の、加工工程或いは検査工程等の他の工程で図柄合わせ用マーク3を形成するように構成してもよい。
【0045】
(4)本実施形態に係る壁紙10は、耳を備えていない。そのため、ロール状に巻回された壁紙10の両端に傷がつくことを保護するため、梱包時に厚紙等を耳あてとしてロール状の壁紙10の両端に配置した状態で梱包するようにしてもよい。
【0046】
(5)本実施形態では、壁紙10の左右端両方に耳を有していない場合について説明したが、いずれか一方は耳を有し、他方は耳を持たないという構成であってもよい。この場合、図4(a)に示すように、有効幅L1の領域の左右それぞれの端部となる位置に図柄合わせ用マーク3を形成し、耳を有する側に、必要に応じてスリットライン31を形成してもよい。この場合も、少なくとも壁紙10の両端の少なくとも一方は、耳を持たないため、その分、材料の削減やエネルギロスの削減を図り、運送効率を向上させることができると共に、施工時に生じる廃棄物量を削減することができる。また、ロール状に巻回した場合に、一方の端部は耳であるため、ロール状の壁紙を立てかけて載置する場合には、耳のある側が下となるようにして立てかけることによって、施工可能な部分が変形したり傷がついたりすることを抑制することができる。
【0047】
また、いずれか一方にのみ耳を設ける場合、図4(b)に示すように、従来の壁紙と同様に、耳部分に、図柄合わせ用マーク3′を形成してもよい。この場合も、有効幅L1の領域の左右それぞれの端部となる位置に図柄合わせ用マーク3を形成する場合と同等の作用効果を得ることができる。図4(b)に示すように、耳部分に図柄合わせ用マーク3′を形成する場合、施工時に耳部分を切り離すことで、図柄合わせ用マーク3′を消去したことと同等となる。そのため耳部分に形成される図柄合わせ用マーク3′は、必ずしも水溶性の消去可能な材料で形成しなくてもよい。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0049】
<壁紙の構成>
図5は、第2実施形態に係る壁紙100の構成を模式的に示す平面図である。
図5において、101は壁紙本体、102は施工補助マーク(位置合わせ用マーク)である。壁紙100には、壁紙本体101の、最表層に施工補助マーク102が形成されている。
壁紙100は、幅が一定であり、壁紙100の幅は、壁紙100の施工可能な有効幅L1と同一である。壁紙10の幅は、JIS A 6921で規定される壁紙の有効幅に準じて例えば920mmである。なお、壁紙100の有効幅L1(壁紙10の幅)は920mmに限るものではなく、300mm、600mm、1000mm等、任意幅であってよい。
【0050】
(壁紙本体)
壁紙本体101は、幅方向寸法が一定であり帯状を有し、いわゆる壁紙として使用することができればどのような構成であってもよい。
壁紙本体101は、無地調の壁紙であり、壁紙本体101の最表層、つまり、施工補助マーク102が形成される層は、塩化ビニル樹脂、非塩化ビニル樹脂、紙等、施工補助マーク102を印刷することの可能な材料で形成され、且つ、施工補助マーク102を消去することの可能な材料で形成される。
ここでいう無地調とは、白色や単色カラーであってもよく、地模様や、織物調、塗り調等であってもよい。
【0051】
(施工補助マーク)
施工補助マーク102は、図柄合わせ用マーク3と同様に、水溶性材料を用いて形成される。水溶性材料として、特にポリビニルアルコールを主成分とする着色剤が好ましい。ここで、水溶性とは水に可溶であることをいう。施工補助マーク102は、濃色でも問題ないが、除去作業が容易にできるように白、グレー、ベージュ等淡い色で形成されることが好ましく、壁紙本体101の色調に対して見えやすい色調であることが好ましい。
施工補助マーク102は、例えば、インクジェット印刷、スタンプ印刷等の印刷手法を用いて形成される。
【0052】
施工補助マーク102は、壁紙本体101の幅方向両端部のそれぞれに少なくとも一つ設けられている。図5では、壁紙本体101の長手方向と直交する線分を基準として、この線分から、左右両端の施工補助マーク102までの距離が同一となるように設けられ、施工補助マーク102はΔpの間隔で繰り返し設けられている。なお、施工補助マーク102は、壁紙本体101の長手方向に、必ずしも一定間隔Δp毎に配置されていなくてもよく、例えば、壁紙本体101の長手方向下端に近づくにつれて間隔Δpが段階的に狭くなるようにしてもよい。
施工補助マーク102は、壁紙100を張り付ける際の仮の位置決めを行う際に用いられるマークである。
【0053】
施工補助マーク102は、例えば壁紙本体101の左側の端部又は右側の端部を始点として他方の端部に向けて、壁紙本体101の長手方向に対して垂直となる方向に伸びる線分(破線)である。施工補助マーク102は、要は壁紙100を突き付け張りする際に、仮の位置決めにおいて注意喚起を行うことができればよく、必ずしも、線分でなくてもよく、例えば、矢印や三角形等の記号や図形等であってもよい。
【0054】
<壁紙の製造方法>
壁紙100の有効幅L1を、例えばJIS A 6921に準じて、920mmとする。
壁紙本体101は、例えば、基材と、発泡樹脂層と、無地調層と、表面保護層とがこの順に積層されて形成され、表面保護層の無地調層とは逆側の面に施工補助マーク102が印刷されている。なお、ここでは、基材と、発泡樹脂層と、無地調層と、表面保護層とがこの順に積層されてなる壁紙本体1に適用する場合について説明するが、壁紙本体101の構成はこれに限るものではなく、壁紙として用いることができればどのような構成であってもよい。また、壁紙本体101の仕様は必要に応じて、基材と、発泡樹脂層と、無地調層とがこの順に積層され、無地調層の発泡樹脂層とは逆側に施工補助マーク102が印刷されている構成であってもよい。
【0055】
まず、壁紙100として所望とする有効幅L1(920mm)と、余裕代αとを考慮した、例えば930mm程度の幅(以下、基材幅L2という。)を有するシート状の基材を用意する。
基材の一方の面に、発泡樹脂層となる発泡剤含有組成物の層を形成し、シート状態にする。
【0056】
次に、発泡剤含有組成物の層の、基材とは逆側の面に、印刷手法を用いて例えば単色を印刷し、無地調層を形成する。無地調層は、基材の幅方向中央に位置するように印刷され、有効幅L1と余裕代との和に相当する印刷幅L3全体に印刷される。
次に、無地調層の上に、例えばアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を塗布し、表面保護層を形成する。
【0057】
続いて、表面保護層の上に、印刷手法を用いてスリットライン31と施工補助マーク102とを印刷する。スリットライン31及び施工補助マーク102は一度の印刷処理工程で印刷してもよく、別々の印刷処理工程で印刷してもよいが、少なくとも施工補助マーク102及びスリットライン31は水溶性のインクを用いて印刷する。
施工補助マーク102は、図6に示すように線分(破線)であって、一端がスリットライン31と重なり、他端がスリットライン31の長手方向に対して垂直方向に他方のスリットライン31に向けて伸びるように形成する。施工補助マーク102としての線分が、スリットライン31と重なる位置は、施工補助マーク102を、壁紙の位置決めの目安として利用することのできる位置である。
【0058】
なお、施工補助マーク102の表示位置から、スリットライン31の位置を規定できる場合には、スリットライン31は必ずしも設けなくてもよい。つまり、図6に示すように施工補助マーク102は線分であり、一方の端部は壁紙本体101の端部、つまりスリットライン31を始点として形成しているため、施工補助マーク102としての線分の一端はスリットライン31の位置を示す。したがって、長手方向の同じ側に形成された複数の施工補助マーク102の基材端部側の一端どうしを結ぶ線分はスリットライン31を表すことになる。
【0059】
そして、続いて加熱することにより、発泡剤含有組成物の層を発泡させて発泡樹脂層を形成し、続いてエンボスロールによって、表面保護層側からエンボス加工を行ってエンボス模様を形成する。この時点では、壁紙となる積層体は基材幅L2を有する基材に形成された状態であり、有効幅L1よりも幅は広い。
続いて、基材幅L2を有する積層体を、そのスリットライン31に沿って切断し、スリットライン31よりも端部側の領域を切り離す。これによって、有効幅L1を有する無地調の壁紙100が切り出される。基材の両端をスリットライン31から切り離した後に、スリットライン31が残る場合には、この時点で、水で濡らして適度に絞ったスポンジ等で擦ることで残ったスリットライン31を消去するようにしてもよい。
【0060】
ここで、印刷幅L3は、有効幅L1よりも大きい。そのため切り出された壁紙100は、幅方向両端まで全面に無地調層が形成されており、施工可能な有効幅L1を有する無地調の壁紙100(図5)が得られる。
なお、ここでは、表面保護層の上に、スリットライン31及び施工補助マーク102を印刷しているが、表面保護層を持たない場合には、スリットライン31及び施工補助マーク102は、最表層となる無地調層の上に形成すればよい。
【0061】
<施工方法>
壁紙100を施工する際には、図7に示すように、1枚目の壁紙100aを壁に張り付ける。次に、2枚目の壁紙100bを、壁紙100aの例えば右側に配置し、壁紙100bの左側と壁紙100aの右側とが突き合うように壁紙100bの上端を仮に位置決めする。そして、壁紙100bの左側と壁紙100aの右側とが突き合うように、また、壁紙100aと壁紙100bの施工補助マーク102同士が連続するように、壁紙100bを張り付ける。
【0062】
そして、所定の壁紙100を貼り終えた後、例えば水でぬらして適度に絞ったスポンジ等を用いて、全ての施工補助マーク102を擦る。これにより、水溶性のインクで描かれた施工補助マーク102は消える。その結果、施工補助マーク102が描かれていない、無地調の壁紙100が、複数枚、突き合わせ施工により施工された状態となる。
第2実施形態においても、壁紙100は、その幅方向両端のいずれにも耳がないため、壁紙100を張り付けた後、耳を除去する工程が不要である。
【0063】
<効果>
(1)第2実施形態に係る壁紙100は、その幅方向両端に施工補助マーク102を設けている。そのため、壁紙100を仮に位置決めをする際に、特に施工補助マーク102の位置で、施工者に対し、壁紙どうしに重なりや、隙間、ずれ等が生じていないかを十分に確認するよう注意喚起を行うことができ、重なりや隙間ズレ等が生じていることをより速い段階で認識させ位置調整を行わせることで、仮の位置決めを容易に行うことができ、張り付けに要する所要時間の短縮を図ることができる。
また、施工補助マーク102は、水溶性インクで印刷されているため、施工後は削除することができるため、無地の壁紙100に不要な施工補助マーク102が残ることがなく、実現することができる。
【0064】
(2)壁紙100は、その幅方向両端のいずれにも耳がないため、工場出荷段階で、壁紙100は、施工可能な有効幅L1を有していればよい。その結果、耳に相当する分だけ、工場での生産時に必要な材料を削減することができ、その結果、生産に要する手間やエネルギの削減を図ることができる。また、耳がない分、出荷時の壁紙100を軽量化及び小型化することができ、運送効率を向上させることができ、また、環境配慮の観点からも有益である。
また、施工業者においては、耳を切り離す必要がなく、切り離した耳部分を含む施工に伴う廃棄物量を削減することができる。さらに耳部分に塗布する糊が不要となるため、その分糊の使用料を低減することができ、耳の切断に要する手間や、施工に必要な材料の削減を図ることができる。
【0065】
(3)一般に、柄合わせの必要のない無地調壁紙の場合は、生産時の壁紙の幅は980mm、出荷時の壁紙の幅も980mmであり、施工業者が施工前に有効幅L1、つまり920mmにカットし、その後、糊を付け施工するようにしている。そのため不要な部分に糊を付けることはなく、また、ジョイント下敷きテープも不要であるが、施工業者側で、有効幅920mmにカットしているため、結果的に耳等の不要分は廃棄物となる。
【0066】
そのため、無地調壁紙についても、耳を設けずに、有効幅920mmの壁紙として出荷することによって、材料費の抑制及び廃棄費用の抑制を図ることができる。つまり、無地調壁紙であるか、図柄が描かれた壁紙であるかに係わらず、有効幅920mmの幅を有する壁紙として出荷することによって、生産時に生じる不要部分となる幅方向端部のロスを抑制することができ、生産者側及び施工業者側共に、不要部分に伴う負荷や費用の抑制を図ることができる。つまり、生産者側では、材料の削減及びエネルギロスの削減を図ることができる。また、製品1本当たりの大きさや重量を軽減することができ運送効率を向上させることができる。また、環境配慮の観点からも有益である。
【0067】
<変形例>
(1)施工補助マーク102についても、図柄合わせ用マーク3の場合と同様に、粘着性シート等の粘着性部材に線分や矢印等の施工補助マーク102を印刷し、この粘着性部材を、壁紙本体101の最表層に張り付けることで、壁紙本体101に施工補助マーク102を設け、施工後この粘着性部材を剥離することで、施工補助マーク102を消去するように構成してもよい。
また、例えば、施工補助マーク102を、発光剤を含むインクを用いて形成してもよい。
【0068】
(2)壁紙100の幅は、必ずしもJIS A 6921に準ずる920mmでなくてもよく、任意幅の壁紙10を製造する場合であって適用することができる。設計上、図柄意匠上の、図柄ジョイント位置に施工補助マーク102を形成することで、スリット幅、すなわち壁紙10の幅は任意に設定することができる。
【0069】
(3)施工補助マーク102は、壁紙100の製造ライン中の一工程として印刷処理によって形成しているがこれに限るものではない。例えば、製造ラインとは別に、施工補助マーク102を印刷するラインを別に設けてもよい。また、壁紙100を切り出した後の、加工工程或いは検査工程等の他の工程で施工補助マーク102を形成するように構成してもよい。
【0070】
(4)壁紙100は、耳を備えていない。そのため、ロール状に巻回された壁紙100の両端に傷がつくことを保護するため、梱包時に厚紙等を耳あてとしてロール状の壁紙100の両端に配置した状態で梱包するようにしてもよい。
【0071】
(5)本実施形態では、壁紙100の左右端両方に耳を有していない場合について説明したが、第1実施形態における壁紙10と同様に、左右端いずれか一方は耳を有し、他方は耳を持たないという構成であってもよく、この場合も、有効幅L1の領域の左右それぞれの端部となる位置に施工補助マーク102を形成し、耳を有する側に、必要に応じてスリットライン31を形成してもよい。少なくとも壁紙100の両端の少なくとも一方は、耳を持たないため、その分、材料の削減やエネルギロスの削減を図り、運送効率を向上させることができると共に、施工時に生じる廃棄物量を削減することができる。また、ロール状に巻回した場合に、一方の端部は耳であるため、ロール状の壁紙を立てかけて載置する場合には、耳のある側が下となるようにして立てかけることによって、施工可能な部分が変形したり傷がついたりすることを抑制することができる。
また、いずれか一方にのみ耳を設ける場合、従来の壁紙と同様に、耳部分に、施工補助マーク102を形成してもよく、耳部分に形成したと施工補助マーク102は、その後切り離すため、必ずしも水溶性の消去可能な材料で形成しなくてもよい。
【0072】
なお、本発明は、例えば、以下のような構成をとることができる。
(1)
幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、
少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、
表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、
当該位置合わせ用マークは、除去可能な材料を用いて形成されていることを特徴とする壁紙。
(2)
前記除去可能な材料は、水溶性材料であることを特徴とする上記(1)に記載の壁紙。
(3)
前記除去可能な材料は、剥離可能な粘着性部材であることを特徴とする上記(1)に記載の壁紙。
(4)
幅方向寸法一定の帯状の壁紙であって、
少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施行可能な領域であり、
表面側の幅方向両端部のそれぞれに位置合わせ用マークを有し、
当該位置合わせ用マークは、発光剤を含む材料を用いて形成されていることを特徴とする壁紙。
(5)
前記発光剤は、紫外線の照射を受けて発光することを特徴とする上記(4)に記載の壁紙。
(6)
幅方向の両端側はそれぞれその端部まで施工可能な領域であることを特徴とする上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の壁紙。
(7)
前記位置合わせ用マークは、
前記表面側の、前記施工可能な領域の幅方向両端部のそれぞれに形成されていることを特徴とする上記(1)から(6)のいずれか1項に記載の壁紙。
(8)
所定の図柄を一単位として当該図柄が長手方向に複数単位繰り返して形成された壁紙であり、
前記位置合わせ用マークは、前記図柄の特定部分の位置を示し且つ前記図柄の一部を構成しないマークであって、前記一単位毎に少なくとも一つ設けられていることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の壁紙。
(9)
無地調の壁紙であることを特徴とする上記(1)から(7)のいずれ一項に記載の壁紙。
【符号の説明】
【0073】
1、101 壁紙本体
2 図柄
3 図柄合わせ用マーク
10、100 壁紙
102 施工補助マーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8