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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174796
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20241210BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241210BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20241210BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20241210BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B32B15/08 H
E04F13/08 E
E04F13/08 A
C23C28/00 A
B05D5/06 104D
B05D7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206301
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2023092281
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】松沢 孝教
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 典聖
【テーマコード(参考)】
2E110
4D075
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB12
2E110AB22
2E110BA05
2E110BA12
2E110BB02
2E110BB04
2E110BB22
2E110EA09
2E110GA05W
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2E110GB02W
2E110GB44W
2E110GB49W
2E110GB52W
2E110GB52X
2E110GB54W
2E110GB54X
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4D075BB87X
4D075CB02
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4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13B
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4K044BB06
4K044BC02
4K044BC09
4K044CA11
4K044CA16
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】優れた手触り感を有する化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】化粧鋼板10は、めっき鋼板層1と、前記めっき鋼板層1の上側UPに設けられたベースコート層4と、前記ベースコート層4の前記上側UPに設けられた絵柄層5と、厚みが5μm以上であり、前記絵柄層5の前記上側UPに設けられた表面保護層6と、を備え、前記表面保護層6は、突出山部高さRpkが3.5μm以上の凹凸形状を前記上側の面に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき鋼板層と、
前記めっき鋼板層の上側に設けられたベースコート層と、
前記ベースコート層の前記上側に設けられた絵柄層と、
厚みが5μm以上であり、前記絵柄層の前記上側に設けられた表面保護層と、
を備え、
前記表面保護層は、突出山部高さRpkが3.5μm以上の凹凸形状を前記上側の面に有する、
化粧鋼板。
【請求項2】
前記めっき鋼板層は、鋼板層と、前記鋼板層の前記上側に設けられた化成処理層とを有する、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項3】
前記めっき鋼板層の前記上側に設けられたプライマ層をさらに備える、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項4】
前記表面保護層の前記厚みは、8μm以上である、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項5】
前記表面保護層は、
前記厚みが15μm以下であり、
前記凹凸形状の前記突出山部高さRpkが25μm以下である、
請求項4に記載の化粧鋼板。
【請求項6】
前記表面保護層は、前記凹凸形状における粗さ曲線要素の平均長さRSmが150μm以上である、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項7】
前記表面保護層は、前記凹凸形状における前記平均長さRSmが800μm以下である、
請求項6に記載の化粧鋼板。
【請求項8】
前記表面保護層は、60度反射光沢が10.0以下である、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項9】
前記表面保護層の前記凹凸形状は、畝状に隆起して幅方向に隣り合う複数の畝状部を有し、
前記幅方向に隣り合う複数の畝状部は、上下方向と平行な断面において正弦波形状を有する、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項10】
前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂を含む、
請求項1に記載の化粧鋼板。
【請求項11】
前記めっき鋼板層は、亜鉛めっき鋼板またはアルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板を含む、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の化粧鋼板。
【請求項12】
めっき鋼板層の上側に、厚みが5μm以上の表面保護層を形成する保護層塗布工程と、
前記表面保護層の突出山部高さRpkが3.5μm以上になるように前記表面保護層の表面へ波長200nm以下の光を照射して凹凸形状を形成する第1照射工程と、
を備える、
化粧鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物の内装材や外壁、造作材、建具等の建築資材等の表面化粧に用いられる化粧材がある。このような化粧材には、めっき鋼板等の鋼板を使用した化粧鋼板や、チタン紙等の紙質基材を使用した化粧紙などがある。
【0003】
化粧鋼板や化粧紙等の化粧材は、長期間に亘って使用しても表面の美観を損なわないように耐久性を求められる。特に、戸建てやマンション、アパート等の玄関用のドアの表面化粧や、建築物の外壁の表面化粧に用いられる化粧鋼板は、耐食性等の耐候性が求められる。
【0004】
また、化粧鋼板において、表面に所望の手触り感を付与する方法として、エンボス版によってエンボス賦形することで表面に凹凸形状を形成する方法や、化粧材を形成する所定の層(例えば、ベースコート層)に添加した骨材によって表面に凹凸形状を形成する方法等がある。
【0005】
骨材が添加されたベースコート層を備える化粧鋼板として、特許文献1に記載のあるプリント鋼板がある。特許文献1に記載のあるプリント鋼板は、化成処理が施されためっき鋼板の一方の面上に、プライマ層と、ベースコート層と、柄印刷層と、トップコート層とをこの順に有し、ベースコート層は、骨材を有する。
【0006】
また、艶消し感を付与するため、表面に設けられた保護層へシリカ又はタルク等の艶消し剤を添加した化粧鋼板がある。艶消し剤として不規則な角部や稜部を有する不定形状の粒子を使用し、この粒子の一部を保護層の平均表面から突出させて微細な凹凸形状を形成させることで艶消し感を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-11052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ベースコート層に骨材を添加し、その上側に絵柄を印刷する場合、骨材による凹凸形状を有する面にグラビア印刷やオフセット印刷等の手法で印刷するため、印刷再現性が劣る虞がある。また、エンボス版によって凹凸形状を形成する場合、エンボス賦形のための工程が必要になり、生産するのに時間がかかり生産性が劣る虞がある。さらに、エンボス版を作成する製版工程も必要になる。
【0009】
また、エンボス版で形成した凹凸形状で所望の質感や繊細な手触り感を実現する場合、数種類のエンボス版を作成し、各エンボス版で化粧鋼板の表面に凹凸形状を形成した後、各化粧鋼板の手触り感を評価し、所望の質感や手触り感を決定する作業を複数回繰り返す必要があるため、手間がかかる虞がある。
【0010】
また、化粧鋼板の表面を形成する保護層に艶消し剤を添加し、所望の低艶(低光沢)を実現する場合、一般的には、保護層に多量の艶消し剤を添加する必要がある。その場合、化粧鋼板の表面に物品等が接触したとき、物品等の接触によって艶消し剤として添加されている粒子が脱落する虞がある。さらには、脱落した粒子が保護層の表面を擦ることによって、化粧鋼板の表面に傷が付いて保護層の表面形状が変化し、化粧鋼板の表面の艶の変化や美観の低下が生じ、意匠性が劣る虞がある。また、艶消し剤の添加量が多いと保護層が白濁し、保護層の下側に設けられた絵柄が見えにくくなる虞がある。
【0011】
上記事情を踏まえ、本発明は、優れた手触り感を有する化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の化粧鋼板は、めっき鋼板層と、前記めっき鋼板層の上側に設けられたベースコート層と、前記ベースコート層の前記上側に設けられた絵柄層と、厚みが5μm以上であり、前記絵柄層の前記上側に設けられた表面保護層と、を備え、前記表面保護層は、突出山部高さRpkが3.5μm以上の凹凸形状を前記上側の面に有する。
【0013】
上記の化粧鋼板では、前記めっき鋼板層は、鋼板層と、前記鋼板層の前記上側に設けられた化成処理層とを有していてもよい。
【0014】
上記の化粧鋼板では、前記めっき鋼板層の前記上側に設けられたプライマ層をさらに備えていてもよい。
【0015】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層の前記厚みは、8μm以上であってもよい。
【0016】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層は、前記厚みが15μm以下であり、前記凹凸形状の前記突出山部高さRpkが25μm以下であってもよい。
【0017】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層は、前記凹凸形状における粗さ曲線要素の平均長さRSmが150μm以上であってもよい。
【0018】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層は、前記凹凸形状における前記平均長さRSmが800μm以下であってもよい。
【0019】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層は、60度反射光沢が10.0以下であってもよい。
【0020】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層の前記凹凸形状は、畝状に隆起して幅方向に隣り合う複数の畝状部を有し、前記幅方向に隣り合う複数の畝状部は、上下方向と平行な断面において正弦波形状を有していてもよい。
【0021】
上記の化粧鋼板では、前記表面保護層は、電離放射線硬化性樹脂を含んでいてもよい。
【0022】
上記の化粧鋼板では、前記めっき鋼板層は、亜鉛めっき鋼板またはアルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板を含んでいてもよい。
【0023】
本発明の化粧鋼板の製造方法は、めっき鋼板層の上側に、厚みが5μm以上の表面保護層を形成する保護層塗布工程と、前記表面保護層の突出山部高さRpkが3.5μm以上になるように前記表面保護層の表面へ波長200nm以下の光を照射して凹凸形状を形成する第1照射工程と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明の化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法によれば、優れた手触り感を有する化粧鋼板および化粧鋼板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る化粧鋼板を模式的に示す断面図である。
図2】同化粧鋼板の凹凸形状の例を示す写真である。
図3】同化粧鋼板の表面保護層を模式的に示す断面図である。
図4】同化粧鋼板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る化粧鋼板10を模式的に示す断面図である。
本実施形態では、図1に示すように、化粧鋼板10の厚み方向を「上下方向V」、化粧鋼板10の表面保護層6が設けられた向きを上下方向Vにおける「上側UP」、反対向きを上下方向Vにおける「下側LO」と定義する。
【0028】
化粧鋼板10は、めっき鋼板層1と、裏面コート層2と、プライマ層3と、ベースコート層4と、絵柄層5と、表面保護層6と、を備える。
【0029】
めっき鋼板層1は、裏面コート層2の上側UPに設けられた層である。めっき鋼板層1は、鋼板層1aと、鋼板層1aの上側UPに設けられた第一化成処理層1bと、鋼板層1aの下側LOに設けられた第二化成処理層1cと、を有する。
【0030】
鋼板層1aには、亜鉛めっき鋼板やアルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板等の公知の鋼板を採用できる。めっき鋼板層1は、例えば、溶融亜鉛めっき等により鋼板の表面に亜鉛めっき(金属被膜)が形成された亜鉛めっき鋼板に、クロメートフリー処理等によって化成処理を施して形成されている。
【0031】
第一化成処理層1bおよび第二化成処理層1cは、この化成処理によって形成された層であり、化成処理によって生成される鉄亜鉛系の金属間化合物を有する。以下、第一化成処理層1bおよび第二化成処理層1cを、単に化成処理層と称することがある。
【0032】
裏面コート層2は、化粧鋼板10の下側LOに設けられた層である。裏面コート層2として、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂を主成分とした樹脂塗料等を採用できる。裏面コート層2には、耐食性を向上させるため、防錆剤を添加してもよい。
【0033】
裏面コート層2は、例えば、裏面コート層2を形成する樹脂塗料をグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法や、公知のコーティング装置等を用いて塗布した後に、加熱焼付けをして形成されている。
【0034】
プライマ層3は、めっき鋼板層1の上側UPに設けられた層である。プライマ層3には、公知のプライマ用の樹脂塗料を採用できる。プライマ層3に採用する樹脂塗料として、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を含む公知の硬化性塗料を挙げることができる。
【0035】
プライマ層3を形成する樹脂塗料は、ポリエステル系樹脂、有機添加剤および顔料を主に含んでいてもよい。この場合、プライマ層3を形成する樹脂塗料の主原料の構成比率は、この樹脂塗料を100質量部としたとき、ポリエステル系樹脂を約57質量部、有機添加剤を約1質量部、顔料を約42質量部としてもよい。
また、プライマ層3を形成する樹脂塗料には、耐食性を向上させるため、防錆顔料を配合してもよい。
【0036】
プライマ層3は、例えば、プライマ層3を形成する樹脂塗料をグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法や、公知のコーティング装置等を用いて塗布した後に、加熱焼付けをして形成されている。プライマ層3の厚みは、0.5μm以上10.0μm以下が好ましい。
【0037】
ベースコート層4は、プライマ層3の上側UPに設けられた層である。ベースコート層4は、化粧鋼板10における全体の色調のベースとなる単色のコート層である。ベースコート層4には、公知のベースコート用のバインダ樹脂を含む塗料を採用できる。
【0038】
ベースコート層4は、例えば、ベースコート層4を形成する樹脂塗料をグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法や、公知のコーティング装置等を用いて塗布した後に、加熱焼付けをして形成されている。
【0039】
ベースコート層4を形成するバインダ樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を採用することができる。ベースコート層4を形成するバインダ樹脂には、加工性の観点から、主樹脂としてポリエステル系樹脂を採用するのが好ましい。また、ベースコート層4を形成する樹脂塗料には、例えば、単色の色調を実現するために顔料が添加されている。
【0040】
ベースコート層4を形成する樹脂塗料は、主原料として、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂および顔料を含んでいてもよい。この場合、ベースコート層4を形成する樹脂塗料の主原料の構成比率は、ベースコート層4を形成する樹脂塗料を100質量部としたとき、ポリエステル系樹脂を約45質量部、メラミン系樹脂を約15質量部、顔料を約40質量部としてもよい。
【0041】
ベースコート層4を形成する樹脂塗料は、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候剤を含んでいてもよい。また、耐食性を向上させるため、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、防錆剤を含んでいてもよい。
【0042】
また、ベースコート層4は、骨材を含んでいてもよく、骨材として、アクリル系樹脂、尿素樹脂、ナイロン樹脂、ガラスビーズ樹脂等を採用できる。なお、後述する絵柄層5が有する絵柄の印刷再現性や耐久性(耐食性等)の観点から、ベースコート層4は、骨材を含まないのが好ましい。ベースコート層4の厚みは、加工性、不燃性、隠蔽性、耐食性等の観点から、20μm以下が好ましい。
【0043】
絵柄層5は、ベースコート層4の上側UPに設けられた層である。絵柄層5は、例えば、木目、石目又は砂目等の絵柄の印刷を施すことで形成された層である。絵柄層5を印刷する印刷方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。
【0044】
また、絵柄層5には、採用する印刷方法に適した公知の印刷インキを採用できる。絵柄層5は、例えば、公知のバインダ樹脂および公知の顔料を含む。絵柄層5に使用するバインダ樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂を採用するのが好ましい。また、絵柄層5に使用する顔料として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛(亜鉛華)、カーボンブラック、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料、パール顔料等が挙げられる。
【0045】
表面保護層6は、絵柄層5の上側UPに設けられた層である。表面保護層6は、上側UPの面に凹凸形状を有する。
図2は、表面保護層6において、上側UPからの平面視における凹凸形状の例を示す写真である。
【0046】
図3は、表面保護層6を模式的に示す断面図であり、上下方向Vと平行な断面を示す断面図である。
表面保護層6は、コア部6aと、コア部6aの上側UPの面から畝状に隆起した複数の畝状部6bとを有している。これにより、表面保護層6の上側UPの面には凹凸形状が形成されている。
【0047】
畝状部6bは、表面保護層6の上側UPの面に対して後述する特定波長の光を照射し、表面保護層6を形成する樹脂(例えば、電離放射線硬化性樹脂)の表面を収縮させることにより形成される。
【0048】
ここで、「畝状」とは、上側UPに細長く盛り上がり、上側UPからの平面視において線状に連なった形状を示す。畝状に隆起した畝状部6bは、平面視での形状が曲線状であっても直線状であってもよいが、化粧鋼板10の耐指紋性の観点から曲線状であることが好ましい。畝状部6bにおける各々の線状の形状は、平面視で分岐していてもよく、分岐していなくてもよい。
【0049】
畝状部6bは、表面保護層6の上側UPの面に設けられた凹凸形状において、上下方向Vにおける最も低い部分から最も高い部分までの部分である。
コア部6aは、表面保護層6における畝状部6b以外の部分である。
【0050】
畝状部6bは、例えば、図2に示すように、複数の畝状部6bの各々が湾曲しており、少なくとも一部は幅方向へ隣り合っている。ここで、幅方向とは、化粧鋼板10において、上下方向Vと略垂直な板面方向である。畝状部6bの少なくとも一部が幅方向へ隣り合った位置において、この幅方向および表面保護層6の厚み方向(上下方向V)に平行な表面保護層6の断面は、図3に示すように、凹凸形状が設けられた部分が正弦波形状などの波形状を有している。
【0051】
表面保護層6における凹凸形状は、突出山部高さRpkが3.5μm以上である。
ここで、「突出山部高さRpk」は、JIS B 0671-2:2002に規定された表面性状パラメータである。表面保護層6の凹凸形状における突出山部高さRpkは、4.5μm以上であることがより好ましく、7.0μm以上であることが更に好ましい。表面保護層の突出山部高さRpkが小さい化粧鋼板は、ユーザが表面保護層の表面上で肌(例えば指)を滑らせたときに、ユーザへ「ざらざらした触感」を与えない。
【0052】
表面保護層6の凹凸形状における突出山部高さRpkは、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましい。
【0053】
表面保護層6の凹凸形状は、粗さ曲線要素の平均長さRSmが150μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、250μm以上であることが更に好ましい。ここで、「粗さ曲線要素の平均長さRSm」は、JIS B 0601:2013に規定された表面性状パラメータである。表面保護層6の凹凸形状における粗さ曲線要素の平均長さRSmを150μm以上とすることで、ユーザが表面保護層6の表面上で肌(例えば指)を滑らせたときに、化粧鋼板10は、ユーザへ「ざらざらした触感」を与える。
以下、「粗さ曲線要素の平均長さRSm」を単に「平均長さRSm」とも称する。
【0054】
表面保護層6の凹凸形状における粗さ曲線要素の平均長さRSmは、800μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、550μm以下であることが更に好ましい。また、500μm以下であることが更に好ましい。平均長さRSmが大きい化粧鋼板は、ユーザが表面保護層の表面上で肌(例えば指)を滑らせたときに、畝状部による凹凸形状の存在を知覚する頻度が少なくなる可能性がある。
【0055】
表面保護層6の厚みは、5μm以上である。表面保護層6の厚みは、8μm以上であることが好ましい。また、表面保護層6の厚みは、15μm以下であることが好ましい。表面保護層6の厚みを5μm以上とすることで、表面保護層6よりも下側LOに設けられた層を紫外線や酸性雨、塩分等から保護することができ、化粧鋼板10の耐候性を向上できる。
【0056】
また、表面保護層の厚みを小さくすると、突出山部高さRpkおよび平均長さRSmを大きくすることが難しくなる。また、表面保護層の厚みを大きくすると、突出山部高さRpkおよび平均長さRSmが大きくなりやすい。
【0057】
ここで、表面保護層6の厚みは、表面保護層6と見かけ上の面積および体積が等しく、かつ、表面(上側UPの面)が平坦な層の厚さである。表面保護層6の厚みは、例えば、以下の方法により求めることができる。まず、表面保護層6の厚み方向(上下方向V)に平行であり、かつ、畝状部6bの長さ方向に垂直な断面を撮像して断面画像を得る。ここで、畝状部6bの長さ方向とは、畝状部6bにおける畝状形状が延びる方向である。
【0058】
次に、この断面画像から、畝状部6bの幅方向における表面保護層6の寸法と、表面保護層6の断面の面積とを求める。表面保護層6の厚みは、この断面の面積を、前述の寸法で割ることにより得られる値である。なお、表面保護層6を形成する樹脂が溶媒を含んでいない場合、表面保護層6を形成する樹脂からなる塗膜の厚みは、表面保護層6の厚みと等しい。
【0059】
以下、表面保護層6を形成する樹脂を、表面保護層用塗液と称することがある。表面保護層6は、例えば、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性の樹脂を含む表面保護層用塗液を硬化させて形成されている。
【0060】
表面保護層用塗液として、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂又はエポキシ系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を採用できる。表面保護層用塗液に使用する電離放射線硬化性樹脂は、水系樹脂又は非水系(有機溶剤系)樹脂のいずれであってもよい。また、表面保護層6には、絵柄層5の絵柄を透視できる程度に透明又は半透明な材質を採用するのが好ましい。
【0061】
ここで、「電離放射線」は、電子線などの荷電粒子線である。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって硬化する。また、電離放射線硬化性樹脂は、紫外線照射によっても硬化し得る。ここで使用する電離放射線硬化性樹脂は、波長が200nm以下の光を照射することによって硬化する一方で、この光に対する吸収係数が大きい。
【0062】
表面保護層6を形成する表面保護層用塗液は、溶媒、抗菌剤又は防カビ剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、表面保護層用塗液は、紫外線吸収剤又は光安定剤等を含んでいてもよい。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等を使用することができる。光安定剤として、例えば、ヒンダードアミン系等を使用することができる。
【0063】
また、表面保護層6の60度反射光沢は、10.0以下であることが好ましい。ここで、本実施形態における反射光沢は、JIS Z 8741にて定義された鏡面光沢度を示す。また、60度反射光沢とは、前述のJIS規格における60度鏡面光沢を示し、図3に示す入射角αの光において、入射角αが60度である光における反射光の光沢を示す。60度反射光沢を10.0以下とすることで、化粧鋼板10は、優れた低光沢な意匠を有することができる。反射光の光沢は、表面光沢度計等の計測器によって測定可能である。
【0064】
表面保護層6を形成する方法として、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷又はインクジェット印刷等の公知の印刷方法を採用できる。また、表面保護層6は、公知のコーティング装置を用いて形成されてもよい。
【0065】
次に、化粧鋼板10の製造方法の一例について説明する。
図4は、化粧鋼板10を化粧鋼板製造システムにより製造する製造方法の一例を示すフローチャートである。ここで、化粧鋼板製造システムとは、本実施形態に係る化粧鋼板10の製造を実行するシステムである。
【0066】
まず、化粧鋼板製造システムは、ステップS1(化成処理工程)を実施する。ステップS1において、鋼板層1aの上側UPおよび下側LOの面に化成処理を施すことで第一化成処理層1bおよび第二化成処理層1cを形成し、めっき鋼板層1を形成する。
【0067】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS2(プライマ層・裏面コート層形成工程)を実施する。ステップS2において、ステップS1で形成しためっき鋼板層1の下側LOの面に、裏面コート層2を形成する樹脂塗料を塗布する。また、めっき鋼板層1の上側UPの面に、プライマ層3を形成する樹脂塗料を塗布する。
【0068】
裏面コート層2を形成する樹脂塗料およびプライマ層3を形成する樹脂塗料を塗布しためっき鋼板層1の上側UPおよび下側LOの面に焼付け乾燥を行い、裏面コート層2およびプライマ層3を形成する。ここで、焼付け乾燥の温度は、例えば、200℃以上である。
【0069】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS3(ベースコート層形成工程)を実施する。ステップS3において、ステップS2で形成したプライマ層3の上側UPの面に、ベースコート層4を形成する樹脂塗料を塗布し、焼付け乾燥を行い、ベースコート層4を形成する。ここで、焼付け乾燥の温度は、例えば、200℃以上である。
【0070】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS4(絵柄印刷工程)を実施する。ステップS4において、ベースコート層4の上側UPの面に任意の絵柄を印刷して絵柄層5を形成する。
【0071】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS5(保護層塗布工程)を実施する。ステップS5において、絵柄層5の上側UPの面に、表面保護層6を形成する樹脂(表面保護層用塗液)を塗布する。ここで、表面保護層用塗液は、電離放射線硬化性樹脂である。
【0072】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS6(第1照射工程)を実施する。ステップS6において、ステップS6で塗布した表面保護層用塗液の上側UPの面(表面)に波長172nmのエキシマVUV光を照射する。波長200nm以下のエキシマVUV光を照射することで電離放射線硬化性樹脂の表面が収縮して、表面保護層6における畝状部6bが形成される。
【0073】
ここで、表面保護層用塗液が含んでいる電離放射線硬化性樹脂は、エキシマVUV光に対する吸光係数が大きい。そのため、表面保護層用塗液の塗膜に入射したエキシマVUV光は、その最表面からの距離が数十~数百nmの位置までしか到達できない。したがって、ステップS6では、表面保護層用塗液における塗膜の表面領域において架橋反応が進行して極めて薄い硬化膜が形成される。一方、他の領域では架橋反応が進行せずに表面保護層用塗液は未硬化のままとなる。
【0074】
次に、化粧鋼板製造システムは、ステップS7(第2照射工程)を実施する。ステップS7において、ステップS6で畝状部6bを形成した表面保護層用塗液の表面に電離放射線を照射する。エキシマVUV光によって畝状部6bが形成された電離放射線硬化性樹脂に電離放射線を照射することで電離放射線硬化性樹脂の全体が硬化して、コア部6aおよび畝状部6bが形成された凹凸形状を有する表面保護層6が形成される。表面保護層6を形成して、化粧鋼板10の製造工程を完了する。
【0075】
本実施形態の化粧鋼板10および化粧鋼板10の製造方法によれば、化粧鋼板10は、上側UPの面に突出山部高さRpkが3.5μm以上の凹凸形状を有し、厚みが5μm以上である表面保護層6を備える。
【0076】
表面保護層6が有する凹凸形状の突出山部高さRpkが3.5μm以上であるため、化粧鋼板10は、ユーザが表面保護層6の表面を肌で押圧しながら表面上で指を滑らせたとき、ユーザへざらざらした触感を与えることができる。すなわち、化粧鋼板10は、大きな凹凸の存在をユーザに感じさせることを可能とし、優れた手触り感を有する。
その結果、優れた手触り感を有する化粧鋼板10および化粧鋼板10の製造方法を提供することができる。
【0077】
また、化粧鋼板10は、骨材やエンボス版を用いずに優れた手触り感を実現することができるため、骨材による絵柄層5の印刷再現性の低下や、エンボス版を使用することによる生産性の低下を抑制できる。また、化粧鋼板10は、表面保護層6の厚みが5μm以上であるため、耐候性に優れる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0079】
(変形例1)
上記実施形態において、化粧鋼板10は、プライマ層3を備えるが、化粧鋼板10の態様はこれに限定されない。化粧鋼板は、プライマ層3を備えなくてもよい。
化粧鋼板10は、プライマ層3を有することで、めっき鋼板層1とベースコート層4との密着性を向上させることができる。めっき鋼板層1とベースコート層4とがプライマ層3によって密着性を向上させなくても十分な密着性を有することができる場合は、化粧鋼板はプライマ層3を備えなくてもよい。
【0080】
以下実施例により、本発明を詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
(化成処理工程S1)
鋼板層1aとしてJIS G 3302に準拠した厚み0.4mmの溶融亜鉛めっき鋼板を準備し、鋼板層1aに化成処理を施し、第一化成処理層1bおよび第二化成処理層1cを形成し、合金化亜鉛めっき鋼板であるめっき鋼板層1を形成した。
【0082】
(プライマ層・裏面コート層形成工程S2)
裏面コート層2を形成する樹脂塗料として、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂を主成分とした樹脂塗料をめっき鋼板層1の下側LOの面に塗布した。
【0083】
また、プライマ層3を形成する樹脂塗料として、主原料としてポリエステル系樹脂を約57質量部、有機添加剤を約1質量部、顔料を約42質量部それぞれ有する樹脂塗料をめっき鋼板層1の上側UPの面に塗布した。なお、プライマ層3を形成する樹脂塗料は、プライマ層3の厚みが1.0μm以上となるように塗布した。
【0084】
裏面コート層2を形成する樹脂塗料と、プライマ層3を形成する樹脂塗料とを塗布した後、200℃以上で焼付け乾燥を行い、裏面コート層2とプライマ層3とを形成した。
【0085】
(ベースコート層形成工程S3)
ベースコート層4を形成する樹脂塗料として、主原料としてポリエステル系樹脂を約45質量部、メラミン系樹脂を約15質量部、顔料を約40質量部それぞれ有する樹脂塗料をプライマ層3の上側UPの面に厚み13μm程度塗布し、200℃以上で焼付け乾燥を行い、ベースコート層4を形成した。なお、ベースコート層4には骨材を添加していない。
【0086】
(絵柄印刷工程S4)
ベースコート層4の上側UPの面に、グラビアオフセット印刷にて数μm程度の柄印刷を行い、絵柄層5を形成した。
【0087】
(保護層塗布工程S5)
絵柄層5の上側UPの面に、表面保護層6を形成する表面保護層用塗液を塗布した。表面保護層用塗液の層厚は10.8μmとした。また、表面保護層用塗液として、下記の電離放射線硬化性樹脂に、下記の粒子および光重合開始剤を配合した塗液を用いた。
・電離放射線硬化性樹脂
種類:トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(EO15モル付加)
品名:SR9035(Sartomer社製)
配合:100質量部
・粒子
品名:サイリシア250N(富士シリシア化学社製)
粒径:5μm
配合:5質量部
・光重合開始剤
品名:Omnirad184(IGM Resins社製)
配合:3質量部
【0088】
(第1照射工程S6)
保護層塗布工程S5で塗布した表面保護層用塗液の上側UPの面に対して、Xeエキシマランプを用いてエキシマVUV光を照射して表面保護層用塗液の表面を収縮させ、皺を生じさせた。このとき、大気圧下、酸素濃度が100ppmの窒素ガス雰囲気中で、波長172nmの紫外線を積算光量が30mJ/cmとなるように照射した。
【0089】
(第2照射工程S7)
第1照射工程S6でエキシマVUV光により収縮させた表面保護層用塗液に対して、高圧水銀灯を用いて200mJ/cmとなるように紫外線を照射し、表面保護層用塗液の全体を硬化させて表面保護層6を形成した。こうして、実施例1の化粧鋼板10を得た。
【0090】
(実施例2)
表面保護層用塗液の厚みを層厚14.0μmとした以外は実施例1と同様の方法により、実施例2の化粧鋼板10を得た。
【0091】
(比較例1)
表面保護層用塗液の厚みを層厚0.8μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例1の化粧鋼板を得た。
【0092】
(比較例2)
表面保護層用塗液の厚みを層厚1.4μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例2の化粧鋼板を得た。
【0093】
(比較例3)
表面保護層用塗液の厚みを層厚2.0μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例3の化粧鋼板を得た。
【0094】
(比較例4)
表面保護層用塗液の厚みを層厚3.0μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例4の化粧鋼板を得た。
【0095】
(比較例5)
表面保護層用塗液の厚みを層厚5.0μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例5の化粧鋼板を得た。
【0096】
(比較例6)
表面保護層用塗液の厚みを層厚7.1μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例6の化粧鋼板を得た。
【0097】
(比較例7)
表面保護層用塗液の厚みを層厚17.0μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例7の化粧鋼板を得た。
【0098】
(比較例8)
表面保護層用塗液の厚みを層厚21.1μmとした以外は実施例1と同様の方法により、比較例8の化粧鋼板を得た。
【0099】
(比較例9)
表面保護層として、骨材を添加したアクリル系樹脂を使用し、表面保護層の厚みを10μm程度とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例9の化粧鋼板を得た。なお、表面保護層に添加した骨材の配合は、15μmのアクリルビーズを4.4%、5μmの有機樹脂ビーズを6.9%、4μmのシリカを1.9%とした。
【0100】
(比較例10)
表面保護層として、骨材を添加したアクリル系樹脂を使用し、表面保護層の厚みを10μm程度とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例10の化粧鋼板を得た。なお、表面保護層に添加した骨材の配合は、15μmのアクリルビーズを8.8%、5μmの有機樹脂ビーズを14.1%、4μmのシリカを1.6%とした。
【0101】
(比較例11)
表面保護層として、骨材を添加したアクリル系樹脂を使用し、表面保護層の厚みを10μm程度とした以外は実施例1と同様の方法により、比較例11の化粧鋼板を得た。なお、表面保護層に添加した骨材の配合は、5μmの有機樹脂ビーズを7.0%、4μmのシリカを0.5%とした。
【0102】
(実験1)
実施例1-2および比較例1-11の化粧鋼板において、「反射光沢(20度、60度、85度)」、「突出山部高さRpk」、「平均長さRSm」を測定した。ここで、20度反射光沢および85度反射光沢は、60度反射光沢と同様にJIS Z 8741にて定義された鏡面光沢度であり、それぞれ図3に示す入射角αが20度又は85度である光における反射光の光沢を示す。
【0103】
(実験2)
実施例1-2および比較例1-11の化粧鋼板に触感評価試験を実施した。
触感評価試験では、まず、評価者間で評価基準を一致させるための事前準備を行った。事前準備では、表面性状が異なる3個の標準試験片を準備した。次に、目隠しをした状態の5人の評価者が標準試験片の表面を指で押圧しながら滑らせ、その触感を下記の3つの群に分類した。
第1群:押し込み抵抗をほとんど感じなかったが、化粧鋼板の表面が指に吸い付くような触感が得られるとともに、滑りの良い触感が得られ、全体としては、滑りの良い触感の印象が強かった。すなわち、「さらさらした触感」が得られた。
第2群:押し込み抵抗をほとんど感じなかったが、化粧鋼板の表面が指に吸い付くような触感が得られた。ただし、滑りの良い触感の印象はなかった。すなわち、「しっとりした触感」が得られた。
第3群:押し込み抵抗を感じるととともに、凹凸の存在を感じた。すなわち、「ざらざらした触感」が得られた。
【0104】
次に、目隠しをした状態の5人の評価者が、実施例1-2および比較例1-11の化粧鋼板の表面を指で押圧しながら滑らせ、実施例1の化粧鋼板10における手触り感に対する実施例2および比較例1-11の化粧鋼板における手触り感を評価した。
評価基準は3段階とした。
〇:実施例1に近い手触り感である。
△:実施例1と異なる手触り感だが、平滑性が似ている。
×:実施例1と明らかに手触り感が異なる。
【0105】
(実験結果)
実験1および実験2の結果を表1に示す。なお、表1における触感評価結果については、実施例1に対する実施例2および比較例1-11の手触り感の評価結果を示しているため、実施例1に対する結果は示していない。
【0106】
まず、触感評価試験において、標準試験片を用いて分類した実施例1の手触り感は、「第3群:ざらざらした触感」であった。また、表1に示すように、実施例1と同様に、表面保護層6に形成した畝状形状によって凹凸形状を実現し、表面保護層6の厚みが5μm以上であり、突出山部高さRpkが3.5以上である実施例2の化粧鋼板10は、実施例1に近い手触り感であった。また、実施例1の化粧鋼板10と比較して、畝状形状を有さず、突出山部高さRpkが3.5以上である比較例9-10の化粧鋼板は、実施例1に近い手触り感であった。すなわち、実施例1-2、比較例9-10は、「ざらざらした触感」であった。
【0107】
また、表面保護層に形成した畝状形状によって凹凸形状を実現した化粧鋼板であっても、突出山部高さRpkが3.5μm未満である比較例1-6は、実施例1と明らかに手触り感が異なった。
【0108】
【表1】
【符号の説明】
【0109】
10 化粧鋼板
1 めっき鋼板層1
1a 鋼板層
1b 第一化成処理層(化成処理層)
1c 第二化成処理層(化成処理層)
2 裏面コート層
3 プライマ層
4 ベースコート層
5 絵柄層
6 表面保護層
6a コア部
6b 畝状部
V 上下方向
UP 上側
LO 下側
図1
図2
図3
図4