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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174802
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】アンカーボルト支持装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
E02D27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030278
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023092169
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591142149
【氏名又は名称】松澤 庄次
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 庄次
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA03
(57)【要約】
【課題】基礎コンクリートの配筋を阻害せず、比較的大きな高さ調整を容易に行える高さ調整機能を備えたアンカーボルト支持装置を提供する。
【解決手段】アンカーボルト支持装置1は、アンカーボルト4を支持する支柱部5を備える。支柱部5は、上下方向に延在する第1アングル材10と、下端部において第1アングル材10の上端部に重ねられて上下方向に延在する第2アングル材11とを含む。第2アングル材11には、互いに交差する第1平板部11a及び第2平板部11bと、第1平板部11aを貫通して互いに上下方向に整列する複数の第1高さ調整孔23と、第2平板部11bを貫通して互いに上下方向に整列する複数の第2高さ調整孔24とを含む。第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24は、互いの上端が上下方向にずれて交互に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトを所定位置に配置するべく、基礎面上に立設されて前記アンカーボルトを支持するアンカーボルト支持装置であって、
前記基礎面に固定されたベース部と、
前記ベース部に立設されて、上端部において前記アンカーボルトを支持する支柱部とを備え、
前記支柱部は、上下方向に延在する第1アングル材と、下端部にて前記第1アングル材の上端部に重なり、前記上下方向に延在する第2アングル材とを含み、
前記第1アングル材の前記上端部及び前記第2アングル材の前記下端部の一方は、前記上下方向に延在する長孔を有し、前記第1アングル材の前記上端部及び前記第2アングル材の前記下端部の他方は、前記長孔に整合する貫通孔を有し、前記第1アングル材及び前記第2アングル材は、前記長孔及び前記貫通孔に挿通された締結具によって互いに固定され、
前記第2アングル材は、前記上下方向に延在して平面視でL字形状をなすように互いに交差する第1平板部及び第2平板部と、前記第1平板部を貫通して互いに前記上下方向に整列する複数の第1高さ調整孔と、前記第2平板部を貫通して互いに前記上下方向に整列する複数の第2高さ調整孔とを含み、前記第1高さ調整孔及び前記第2高さ調整孔は、互いの上端が前記上下方向にずれて交互に配置された、アンカーボルト支持装置。
【請求項2】
前記第1高さ調整孔及び前記第2高さ調整孔の上部は、上方に向かうにつれて先細となる形状をなす、請求項1に記載のアンカーボルト支持装置。
【請求項3】
前記第1高さ調整孔及び前記第2高さ調整孔の各々は、対角線の一方が前記上下方向に延在する菱形をなす、請求項2に記載のアンカーボルト支持装置。
【請求項4】
前記第1高さ調整孔及び前記第2高さ調整孔の各々は、互いに同一の形状をなし、互いに一定の間隔で配置された、請求項1に記載のアンカーボルト支持装置。
【請求項5】
前記第2アングル材の前記下端部は、内面にて、前記第1アングル材の前記上端部の外面に重なる、請求項1に記載のアンカーボルト支持装置。
【請求項6】
前記第1高さ調整孔は、前記第1平板部に設けられた前記長孔又は前記貫通孔よりも前記第2平板部側に配置され、前記第2高さ調整孔は、前記第2平板部に設けられた前記長孔又は前記貫通孔よりも前記第1平板部側に配置された、請求項5に記載のアンカーボルト支持装置。
【請求項7】
前記支柱部が、前記第2アングル材の上端に固定されて前記アンカーボルトの下端部が螺合するアンカーボルト緊結ナットを更に含む、請求項1に記載のアンカーボルト支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトを所定位置に配置するために、基礎面上に立設されて前記アンカーボルトを支持するアンカーボルト支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、アンカーボルトの上端に設けられたねじ部を突出する態様で建物の基礎コンクリート中に埋設されるアンカーボルトを、基礎コンクリートが打設される前の状態において支持し、高さ調整機能を備えたアンカーボルト支持装置が記載されている。基礎コンクリートの打設後においては、アンカーボルトは基礎コンクリートに固定されるため、基礎コンクリートに埋設されたこのようなアンカーボルト支持装置は、アンカーボルトの固定に寄与していなくても良い。
【0003】
特許文献1に記載のアンカーボルト支持装置は、上下方向に延在するアングル材(支柱部材)と、下端部にてアングル材の上端部の内面に当接したスタッドボルト(連結支持部)と、スタッドボルトの下端部に螺合してアングル材の上端面に載置された高さ調整ナットと、L字状に屈曲して、アングル材の上端部の内面にスタッドボルトの下端部を押し付ける屈曲ボルトと、屈曲ボルトの両端部に螺合してアングル材の上端部の外面に当接するナットとを備える。作業員が、屈曲ボルトに対するナットの締め付けを緩めた状態で高さ調整ナットを回転させることにより、スタッドボルトが上下に変位する。これにより、支柱の長さが変動し、支柱の上端部に固定されたアンカーボルトの高さを調整できる。
【0004】
特許文献2に記載のアンカーボルト支持装置は、上下方向に延在するアングル材(第1アングル材)と、上下方向を向くねじ穴が設けられてアングル材の内面に固定された板状の部材(調節ナット)と、ねじ先がアンカーボルトの下端に当接するようにナットに螺合した高さ調整ボルト(調節ボルト)と、アングル材の上端部の内面にアンカーの下端部を押し付ける屈曲ボルト(Lボルト)と、屈曲ボルトの両端部に螺合してアングル材の上端部の外面に当接するナットとを備える。作業員が、屈曲ボルトに対するナットの締め付けを緩めた状態で、高さ調整ボルトをねじ穴に対して螺進又は螺退させることにより、アンカーボルトの高さが調整される。
【0005】
また、基礎コンクリートは鉄筋を含み、この鉄筋は、アンカーボルト支持装置の周囲にも配置される。特許文献1及び2に記載の高さ調整構造は、アングル材や、スタッドボルト又はアンカーボルトに対して水平方向にほとんど膨出しない構成であることにより、配筋を阻害しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-161304号公報
【特許文献2】特開2020-105881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の従来技術では、高さ調整用のナット又はボルトを回転させることにより高さを調整するため、作業量に比べてアンカーボルトの高さの変位が小さかった。このため、数ミリメートルの高さ調整には便利であるが、数センチメートルの高さ調整には作業量が多くなり、作業効率が悪かった。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑み、基礎コンクリートの配筋を阻害せず、比較的大きな高さ調整を容易に行える高さ調整機能を備えたアンカーボルト支持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、アンカーボルト(4)を所定位置に配置するべく、基礎面(2)上に立設されて前記アンカーボルトを支持するアンカーボルト支持装置(1,31,41,51,61,71)であって、前記基礎面に固定されたベース部(3)と、前記ベース部に立設されて、上端部において前記アンカーボルトを支持する支柱部(5,32,42,52,62,72)とを備え、前記支柱部は、上下方向に延在する第1アングル材(10)と、下端部にて前記第1アングル材の上端部に重なり、前記上下方向に延在する第2アングル材(11,43,53,63)とを含み、前記第1アングル材の前記上端部及び前記第2アングル材の前記下端部の一方は、前記上下方向に延在する長孔(22)を有し、前記第1アングル材の前記上端部及び前記第2アングル材の前記下端部の他方は、前記長孔に整合する貫通孔(25)を有し、前記第1アングル材及び前記第2アングル材は、前記長孔及び前記貫通孔に挿通された締結具(26)によって互いに固定され、前記第2アングル材は、前記上下方向に延在して平面視でL字形状をなすように互いに交差する第1平板部(11a,43a,53a,63a)及び第2平板部(11b,43b,53b,63b)と、前記第1平板部を貫通して互いに前記上下方向に整列する複数の第1高さ調整孔(23,54,64)と、前記第2平板部を貫通して互いに前記上下方向に整列する複数の第2高さ調整孔(24,55,65)とを含み、前記第1高さ調整孔及び前記第2高さ調整孔は、互いの上端が前記上下方向にずれて交互に配置される。
【0010】
この態様によれば、上下方向にずれて交互に配置された第1高さ調整孔及び複数の第2高さ調整孔に、交互に工具を差し込むことにより、数センチメートル以上の比較的長い長さの第2アングル材の高さ調整であっても、短時間で容易に高さ調整を行うことができる。高さ調整のための構成は、ほとんど水平方向に突出していないため、配筋を阻害しない。
【0011】
上記の態様において、前記第1高さ調整孔(23,54,64)及び前記第2高さ調整孔(24,55、65)の上部は、上方に向かうにつれて先細となる形状をなしても良い。
【0012】
この態様によれば、先細の下端部分に対する工具の挿入が容易で、工具が第1高さ調整孔又は第2高さ調整孔の上端に向かってガイドされ、その上端において工具の幅方向へのずれが抑制される。
【0013】
上記の態様において、前記第1高さ調整孔(23)及び前記第2高さ調整孔(24)の各々は、対角線の一方が前記上下方向に延在する菱形をなしても良い。
【0014】
この態様によれば、菱形の中央への工具の挿入が容易で、工具が第1高さ調整孔又は第2高さ調整孔の上端に向かってガイドされ、その上端において工具の幅方向へのずれが抑制される。
【0015】
上記の態様において、前記第1高さ調整孔(23,54,64)及び前記第2高さ調整孔(24,55,65)の各々は、互いに同一の形状をなし、互いに一定の間隔で配置されても良い。
【0016】
この態様によれば、作業員は、どの第1高さ調整孔又は第2高さ調整孔に対しても、同じ操作量で、第2アングル材の高さを同じだけ変更することができる。
【0017】
上記の態様において、支柱部(5,42,52,62,72)における前記第2アングル材(11,43,53,63)の前記下端部は、内面にて、前記第1アングル材(10)の前記上端部の外面に重なると良い。
【0018】
この態様によれば、工具の先端を第2平板部又は第1平板部の上端に当接させることができるため、支点となる工具の先端と、第1高さ調整孔又は第2高さ調整孔の上端に当接して作用点となる工具の中間部との距離を確保できるため、1つの第1高さ調整孔又は第2高さ調整孔を使用して調整できる第2アングル材の上下方向の移動距離を大きくすることができる。
【0019】
上記の態様において、前記第1高さ調整孔(23,54,64)は、前記第1平板部(11a,43a,53a,63a)に設けられた前記長孔(22)又は前記貫通孔(25)よりも前記第2平板部(11b、43b、53b,63b)側に配置され、前記第2高さ調整孔(24,55,65)は、前記第2平板部に設けられた前記長孔又は前記貫通孔よりも前記第1平板部側に配置されると良い。
【0020】
この構成によれば、第1高さ調整孔及び第2高さ調整孔が、長孔又は貫通孔よりも第2アングル材11の隅部側に配置されるため、支点となる工具の先端の位置を調整する際に、工具の第2平板部又は第1平板部に対する角度の変更が小さくなり、工具の先端の位置調整が容易となる。
【0021】
上記の態様において、前記支柱部(72)が、前記第2アングル材(63)の上端に固定されて前記アンカーボルト(4)の下端部が螺合するアンカーボルト緊結ナット(73)を更に含んでも良い。
【0022】
この構成によれば、アンカーボルトと第2アングル材とが互いに重なり合う部分の長さを短くすることができるため、アンカーボルトが第1及び第2高さ調整孔に被って、工具を第1及び第2高さ調整孔に差し込めなくなることが抑制される。
【発明の効果】
【0023】
以上の態様によれば、基礎コンクリートの配筋を阻害せず、比較的大きな高さ調整を容易に行える高さ調整機能を備えたアンカーボルト支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るアンカーボルト支持装置の一部断面(前後方向に直交し、前後方向の中央を通る断面)正面図
図2】第1実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の斜視図
図3】第1実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の斜視図
図4】第1実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の正面図
図5】第2実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の正面図
図6】第3実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の斜視図
図7】第4実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の正面図
図8】第5実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の斜視図
図9】第6実施形態に係るアンカーボルト支持装置における支柱部の上部の正面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るアンカーボルト支持装置1の一部断面正面図である。図1に示すように、アンカーボルト支持装置1は、基礎面2に固定されたベース部3と、ベース部3に立設されて、アンカーボルト4を支持する支柱部5とを備える。基礎面2は、基礎地盤の表面であるが、コンクリートの上面であっても良い。アンカーボルト支持装置1は、アンカーボルト4を支持した状態で所定の位置に設置され、その後、基礎コンクリート6を構成する鉄筋(図示せず)を配置し、コンクリートを打設することにより、アンカーボルト支持装置1とアンカーボルト4の下部とは、基礎コンクリート6に埋設される。
【0026】
ベース部3は、平面視で矩形の枠形状をなすように組み合わされた山形鋼等の長尺材7を含む。ベース部3は、基礎面2上に載置され、アンカー部材8によって基礎面2に固定される。
【0027】
支柱部5は、4つ設けられ、平面視で矩形をなすベース部3の4つの隅部の各々に立設されている。4つの支柱部5の各々は、上下方向に延在し、下端部においてボルト及びナット等の締結具9によってベース部3に固定され、上端部においてアンカーボルト4を支持している。支柱部5は、上下方向に延在する第1アングル材10と、第1アングル材10よりも上方に配置されて上下方向に延在する第2アングル材11とを含む。第1アングル材10及び第2アングル材11は、平面視でL字状をなす内面(約90°の角度をなす2つの平面)及び外面(約270°の角度をなす2つの平面)を有し、内面がベース部3の内側を向き、外面がベース部3の外側を向くように配置される。第1アングル材10及び第2アングル材11は、平鋼板に対して折り曲げ及び孔開け等の加工を行うことにより形成しても良く、市販の山形鋼に対して孔開け等の加工を行うことにより形成しても良い。
【0028】
図1図3に示すように、第1アングル材10は、下端部にて、ボルト及びナット等の締結具9によってベース部3の隅部に固定される。第1アングル材10は、平面視でL字形状をなすように互いに交差して上下方向に延在する第1平板部10a及び第2平板部10bを含む。
【0029】
第2アングル材11は、下端部の内面にて第1アングル材10の上端部の外面に当接するように第1アングル材10に重ねられ、締結具26によって第1アングル材10に固定される。第2アングル材11は、平面視でL字形状をなすように互いに交差して上下方向に延在する第1平板部11a及び第2平板部11bを含む。第2アングル材11の第1平板部11aの下部の内面が、第1アングル材10の第1平板部10aの上部の外面に当接し、第2アングル材11の第2平板部11bの下部の内面が、第1アングル材10の第2平板部10bの上部の外面に当接している。第1平板部11a及び第2平板部11bの上部の各々には、互いに同じ高さの位置に水平方向に延在する長孔13が設けられている。長孔13には、平面視でL字状をなす屈曲ボルト14の先端部が内面側から挿通され、屈曲ボルト14の2つの先端部にはナット15が外面側から螺合している。アンカーボルト4の下端部は、ナット15を屈曲ボルト14の先端部に締め付けることにより、第2アングル材11の上部における内面と屈曲ボルト14の中間部とに挟持されて固定される。屈曲ボルト14が挿通される孔が長孔13であることによって、屈曲ボルト14にナット15で締め付ける際に生じる屈曲ボルト14の水平方向の変位が許容される。第2アングル材11は、長孔13を設けることができるように、上部において拡幅されている。
【0030】
図1に示すように、アンカーボルト支持装置1に支持されたアンカーボルト4は、上下方向に延在し、支柱部5の延長線上に配置される。アンカーボルト4の下端部及び上端部の側周面には、ねじ山が形成されている。アンカーボルト4の下端部おける第2アングル材11の上端よりも上方の部分に、定着板16と、定着板16を上下から挟持する2つのナット17が取り付けられている。定着板16は、平板形状の鋼板であって、アンカーボルト4の下端部を挿通させる貫通孔(図示せず)を有する。2つのナット17はアンカーボルト4の下端部に螺合し、定着板16をアンカーボルト4に固定している。アンカーボルト4における基礎コンクリート6に埋設される部分であって、定着板16及び2つのナット17よりも上方の部分は、アンボンドスリーブ18に挿通されていても良い。4つのアンカーボルト4の上端部には、鋼管又はH形鋼等によって構成される柱部材(図示せず)を固定するための1枚のベースプレート19が取り付けられ、各々のアンカーボルト4には、ベースプレート19を固定するためのナット20が取り付けられている。1枚のベースプレート19が、上下方向に貫通する4つの貫通孔(図示せず)を有し、4つの貫通孔にそれぞれ対応するアンカーボルト4が挿通される。基礎コンクリート6の上面とベースプレート19との間には、モルタル21が注入される。
【0031】
図2図4は、支柱部5の上部を示す。図2は、アンカーボルト支持装置1の外側の斜め上方から見た斜視図であり、図3は、アンカーボルト支持装置1の内側の斜め上方から見た斜視図であり、図4は、正面図である。図2図4を参照して、第1アングル材10及び第2アングル材11における高さ調整機能とその構造を説明する。
【0032】
第2アングル材11には、第1アングル材10に対する第2アングル材11の上下方向位置を調整可能に固定するための長孔22と、第1アングル材10に対する第2アングル材11の上下方向位置を調整するために使用される複数の第1高さ調整孔23及び複数の第2高さ調整孔24とが設けられている。
【0033】
長孔22は、屈曲ボルト14が挿通される長孔13よりも下方に設けられている。長孔22は、第2アングル材11の第1平板部11a及び第2平板部11bにそれぞれ1つずつ設けられ、上下方向に延在している。第1アングル材10の第1平板部10a及び第2平板部10bには、対応する長孔22に整合する位置に貫通孔25が1つずつ設けられている。軸部が長孔22及び貫通孔25に挿通されたボルト26aとボルト26aの軸部に螺合したナット26bとを含む締結具26によって、第2アングル材11は第1アングル材10に固定される。ナット26bのボルト26aの軸部への締め付けを緩めた状態にすると、長孔22内をボルト26aの軸部が移動できるため、第2アングル材11は第1アングル材10に対して上下方向に変位可能となる。
【0034】
複数(図示する例では4つ)の第1高さ調整孔23は、第2アングル材11の第1平板部11aを貫通して互いに上下方向に整列し、第1平板部11aに設けられた長孔22よりも第2平板部11b側に位置するように設けられる。複数(図示する例では3つ)の第2高さ調整孔24は、第2アングル材11の第2平板部11bを貫通して互いに上下方向に整列し、第2平板部11bに設けられた長孔22よりも第1平板部11a側に位置するように設けられる。複数の第1高さ調整孔23及び複数の第2高さ調整孔24は、互いの上端が前記上下方向にずれて交互に配置される。すなわち、上方から下方に向かうにつれて、第1高さ調整孔23と第2高さ調整孔24とが交互に配置され、かつそれらの上端が互いに上下方向にずれている。複数の第1高さ調整孔23及び複数の第2高さ調整孔24は、互いに同一の形状であることが好ましく、本実施形態では、孔の貫通方向から見て対角線の一方が上下方向に延在する菱形の形状を有する。また、複数の第1高さ調整孔23及び複数の第2高さ調整孔24は、互いに一定の間隔で配置されることが好ましい。
【0035】
作業員は、第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24に挿通可能な先端を有する工具27(例えば、シノ)を使って第2アングル材11の高さを調整する。2本の工具27を使うことが好ましい。ナット26bのボルト26aの軸部への締め付けを緩めた状態において、作業員は、一方の工具27を第1高さ調整孔23に外面から挿通し、その先端を第1アングル材10の第2平板部10bの上端に当接させ、工具27の先端を支点として、工具27の後部を上方又は下方に動かす。この時、工具27が挿通された第1高さ調整孔23の上端を工具27の中間部が支持しているため、第2アングル材11が上下に移動する。第2アングル材11を更に上方又は下方に移動させたい時は、作業員は、他方の工具27を第2高さ調整孔24に外面から挿通し、その先端を第1アングル材10の第1平板部10aの上端に当接させ、この工具27の先端を支点として、この工具27の後部を上方又は下方に動かすことにより、第2アングル材11を上方又は下方に移動させる。第2アングル材11を更に上方又は下方に移動させたい時は、作業員は、一方の工具27を挿入させていた第1高さ調整孔23から引き抜き、隣接する他の第1高さ調整孔23に外面から挿入し、同様の方法で第2アングル材11を上方又は下方に移動させる。このように、次々に、作業員が2つの工具27を挿入させる第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24を変更して操作することにより、数ミリメートルの高さ調整(例えば、4つのアンカーボルト4のレベル調整)だけでなく、数センチメートル以上の比較的長い第2アングル材11の高さ調整(例えば、工事現場毎に異なる基礎コンクリート6(図1参照)の高さに応じた高さ調整)を容易に行える。第2アングル材11が所望の高さになれば、ナット26bをボルト26aに締め付けて第2アングル材11を第1アングル材10に固定する。
【0036】
複数の第1高さ調整孔23及び複数の第2高さ調整孔24が、上下方向にずれて交互に配置されているため、比較的長い長さの第2アングル材11の高さ調整であっても、作業員は、2本の工具27を第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24に挿通することにより、短時間で容易に高さ調整を行える。
【0037】
高さ調整機能に関係する構成の中で、第1アングル材10又は第2アングル材11に対して水平方向に突出するものは、締結具26のみである。締結具26の突出幅は、屈曲ボルト14及びナット15、並びに締結具9の突出幅と同等であってわずかであるため、配筋を阻害しない。
【0038】
第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24が、菱形の形状を有するため、その中央部分は幅広となり、その上部が先細になっている。中央部が幅広であるため、第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24への工具27の挿入が容易である。上部が先細になっているため、第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24の上端に工具27の中間部を近づける際に工具27がガイドされ、工具27を上下に動かす時に工具27が水平方向にずれることが抑制される。
【0039】
第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24が、互いに同一の形状をなし、互いに一定の間隔で配置されているため、作業員は、どの第1高さ調整孔23又は第2高さ調整孔24に対しても、同じ操作量で、第2アングル材11の高さを同じだけ変更することができる。
【0040】
工具27の先端を支点、工具27の中間部を作用点、工具27の後部を力点とするてこの原理によって、第2アングル材11が上下に変位するため、作業員が直接手にもって第2アングル材11を上下に動かす場合に比べて小さな力で第2アングル材11の高さを調整することができる。第1高さ調整孔23に挿通された工具27の先端は、第1アングル材10の第2平板部10bの上端に当接し、第2高さ調整孔24に挿通された工具27の先端は、第1アングル材10の第1平板部10aの上端に当接するため、第2平板部10b又は第1平板部10aの上端の長さの分だけ工具27の先端の位置を第1高さ調整孔23又は第2高さ調整孔24から離すことができる。このため、1つの第1高さ調整孔23又は第2高さ調整孔24を使用して調整できる第2アングル材11の上下方向の移動距離を大きくすることができる。
【0041】
第1高さ調整孔23及び第2高さ調整孔24が、長孔22よりも第2アングル材11の隅部側に配置されるため、支点となる工具27の先端の位置を調整する際に、工具27の第2平板部11b又は第1平板部11aに対する角度の変更が小さくなり、工具27の先端の位置調整が容易となる。
【0042】
次に、図5を参照して本発明に係る第2実施形態を説明する。説明に当たって、第1実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図5は、第2実施形態に係るアンカーボルト支持装置31における支柱部32の上部を示す正面図である。
【0043】
第2実施形態に係るアンカーボルト支持装置31の構造は、第2アングル材11の下端部の第1アングル材10の上端部への重なりが、第2アングル材11の外面と第1アングル材10の内面とが互いに当接する態様で行われる点でのみ第1実施形態と相違する。
【0044】
第2実施形態における第2アングル材11の高さ調整は、ナット26bのボルト26aの軸部への締め付けを緩めた状態において、作業員が第1高さ調整孔23又は第2高さ調整孔24に工具27を内面から挿入し、工具27の先端近傍の部分を第1アングル材10の第1平板部10a(第1高さ調整孔23に工具27挿通された場合)又は第2平板部10b(第2高さ調整孔24に工具27挿通された場合)の上端の外面側の辺縁に当接させ、この点を支点として、工具27の後部を上下に動かすことによって行われる。
【0045】
次に、図6を参照して本発明に係る第3実施形態を説明する。説明に当たって、第1実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図6は、第3実施形態に係るアンカーボルト支持装置41における支柱部42の上部を示す正面図である。第3実施形態に係るアンカーボルト支持装置41は、アンカーボルト4を第2アングル材43に固定するための構成において第1実施形態と相違する。
【0046】
第2アングル材43は、第1実施形態の第2アングル材11に対して屈曲ボルト14用の長孔13(図3参照)が設けられていない点でのみ相違する。第2アングル材43は、平面視でL字を形成するように上下方向に延在する第1平板部43a及び第2平板部43bを含む。
【0047】
支柱部42は、第2アングル材43の上部に固定されて、第2アングル材11と協働してアンカーボルト4を周方向において囲む鋼板部材44を更に含む。鋼板部材44は、周方向の両端において、第2アングル材43の周方向の両端(第1平板部43aの側縁及び第2平板部43bの側縁)に溶接等により固定され、周方向の中央において、第2アングル材11におけるL字状の隅部を向いたねじ穴45を有する。鋼板部材44は、周方向の両端部の近傍において、平面視において第2アングル材11と協働して囲む領域が拡がるように屈曲している。ねじ穴45には、ねじ先が隅部の内面に当接したアンカーボルト4の下部に当接するようにボルト46が螺合している。ボルト46のねじ先がアンカーボルト4の下部を第2アングル材43の内面に押し付けることにより、アンカーボルト4が第2アングル材43に固定される。
【0048】
次に、図7を参照して本発明に係る第4実施形態を説明する。説明に当たって、第1実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図7は、第4実施形態に係るアンカーボルト支持装置51における支柱部52の上部を示す正面図である。第4実施形態に係るアンカーボルト支持装置51では、第2アングル材53における第1高さ調整孔54及び第2高さ調整孔55の形状のみが、第1実施形態と相違する。第2アングル材53は、平面視でL字を形成するように上下方向に延在する第1平板部53a及び第2平板部53bを含み、第1平板部53aに複数の第1高さ調整孔54が設けられ、第2平板部53bに複数の第2高さ調整孔55が設けられている。
【0049】
第4実施形態に係る第2アングル材53に設けられた第1高さ調整孔54及び第2高さ調整孔55は、第1実施形態のものと同様の位置に配置されるが、その形状は、上下方向に延在する長孔であって、長孔の上端及び下端は半円形状を呈する。第1高さ調整孔54及び第2高さ調整孔55の形状は、菱形や長孔に代えて、円形や三角形のように、工具27(図4参照)が挿入できる形状であれば良く、互いに異なる形状であっても良い。好ましくは、第1高さ調整孔54及び第2高さ調整孔55は、その上部が上方に向かうにつれて先細となる形状を有する。このような先細の形状を有することにより、第1高さ調整孔54又は第2高さ調整孔55の上端に工具27の中間部を当接させる際に工具27がガイドされ、当接後においては、第1高さ調整孔54又は第2高さ調整孔55の幅方向への工具27のずれが抑制される。
【0050】
次に、図8を参照して本発明に係る第5実施形態を説明する。説明に当たって、第1実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図8は、第5実施形態に係るアンカーボルト支持装置61における支柱部62の上部を示す斜視図である。第5実施形態に係るアンカーボルト支持装置61では、第2アングル材53における第1高さ調整孔54及び第2高さ調整孔55の形状及び個数と、支柱部62によるアンカーボルト4の支持構造とが、第1実施形態と相違する。
【0051】
第2アングル材63は、平面視でL字を形成するように上下方向に延在する第1平板部63a及び第2平板部63bを含み、第1平板部53aに複数(図示する例では5つ)の第1高さ調整孔64が設けられ、第2平板部63bに複数(図示する例では4つ)の第2高さ調整孔65が設けられている。第1高さ調整孔64及び第2高さ調整孔65は、陸上競技のトラックの形状を長軸に直交するように半分に切断した形状又は半楕円形状を呈する。第1高さ調整孔64及び第2高さ調整孔65は、半円又は半楕円の湾曲部が上方を向くように形成されるため、上方に向けて先細となっている。第1高さ調整孔64及び第2高さ調整孔65は、上下方向にずれて交互に配置され、互いに一定の間隔で配置される。
【0052】
第2アングル材63の上端には、鋼板66が溶接により固定されている。鋼板66は、その主面が支柱部62の延在方向に直交するように配置される。鋼板66には、2つの貫通孔(図示せず)が設けられており、アンカーボルト4の下端部が、鋼板66の貫通孔に挿通される。2つのナット17が、鋼板66を上下から挟持するようにアンカーボルト4の下端部に螺合することにより、アンカーボルト4の下端部が、鋼板66に固定される。1つの支柱部62に対して2本のアンカーボルト4が取り付けられるため、4つの支柱部62を含むアンカーボルト支持装置61は、8本のアンカーボルト4を支持することができる。鋼板66は、アンカーボルト4の定着板としても機能する。
【0053】
各々のアンカーボルト4が、平面視で4つの支柱部62を結ぶ矩形の線上に配置されるように、鋼板66が構成されている。アンカーボルト支持装置61を埋設する基礎コンクリート(図示せず)において、水平方向に延在する鉄筋が互いに直交するに縦横2方向に延在するように配置される場合、このようにアンカーボルト4が配置されることにより、アンカーボルト支持装置61は、これらの鉄筋の配筋を阻害しない。すなわち、互いに隣接する2つの支柱部62を結ぶ線が縦方向又は横方向に平行になるようにアンカーボルト支持装置61を配置すると、支柱部62避けるように縦横2方向の鉄筋を配置すると、その真上に配置される鉄筋は、自然とアンカーボルト4を避けるように配置される。
【0054】
次に、図9を参照して本発明に係る第6実施形態を説明する。説明に当たって、第5実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図9は、第6実施形態に係るアンカーボルト支持装置71における支柱部72の上部を示す正面図である。第6実施形態に係るアンカーボルト支持装置71は、アンカーボルト4の支柱部72への固定手段と固定本数とにおいて第5実施形態と相違する。
【0055】
アンカーボルト支持装置71の支柱部72は、第1アングル材10と、第2アングル材63と、第2アングル材63の上端に溶接によって固定されたアンカーボルト緊結ナット73とを含む。アンカーボルト緊結ナット73には、アンカーボルト4の下端部が螺合している。アンカーボルト4におけるアンカーボルト緊結ナット73よりも下方に位置する部分が第2アングル材63の内面側に配置されるように、アンカーボルト緊結ナット73は、第2アングル材63の上端に固定される。1つの支柱部に対して、1つのアンカーボルト緊結ナット73及び1つのアンカーボルト4が取り付けられる。
【0056】
第2アングル材63の上端に固定されたアンカーボルト緊結ナット73を介してアンカーボルト4を第2アングル材63に取り付けるため、屈曲ボルト14(図3参照)を用いる場合に比べて、アンカーボルト4と第2アングル材63とが互いに重なり合う部分の長さを短くすることができる。このため、アンカーボルト4が第1及び第2高さ調整孔64,65に被って、工具27(図5参照)を第1及び第2高さ調整孔64,65に差し込めなくなることが抑制される。
【0057】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。支柱部は、ベース部と第1アングル材との間や、第2アングル材とアンカーボルトとの間に、上下方向に延在する長尺材等の他の部材を更に含んでも良い。締結具による第2アングル材の第1アングル材への固定のために、第1アングル材に長孔が設けられ、第2アングル材に該長孔に整合する貫通孔が設けられても良い。支柱部の各々が、複数のアンカーボルトを支持できるように、支柱部の各々が長尺材等を介して1つの定着板を支持し、1つの定着板が複数のアンカーボルトに連結されても良い。第3実施形態において、鋼板部材にねじ穴を設けることに代えて、鋼板部材に丸穴を設け、この丸穴に整合するように鋼板部材にナットを溶接等により固定しても良い。第2~第5実施形態が互いに組み合わされても良い。
【符号の説明】
【0058】
1,31,41,51,61,71:アンカーボルト支持装置
2:基礎面
3:ベース部
4:アンカーボルト
5,32,42,52,62,72:支柱部
10:第1アングル材
11,43,53,63:第2アングル材
11a,43a,53a,63a:第1平板部
11b,43b,53b,63b:第2平板部
22:長孔
23,54,64:第1高さ調整孔
24,55,65:第2高さ調整孔
25:貫通孔
26:締結具
73:アンカーボルト緊結ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9