(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174810
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241210BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241210BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241210BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20241210BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241210BHJP
C09J 7/38 20180101ALN20241210BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/165 303
B41J2/01 401
B41J2/17
C09D11/322
C09J7/38
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071535
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2023092622
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】永井 荘一
(72)【発明者】
【氏名】西脇 裕子
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 敦仁
(72)【発明者】
【氏名】吉野 絵里子
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J004
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056EC07
2C056EC19
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2C056KC10
2C056KC11
2C056KC21
2H186BA10
2H186BA11
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2H186FB58
4J004AA11
4J004AB01
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4J039AD10
4J039BE01
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4J039BE28
4J039BE30
4J039CA03
4J039EA36
4J039EA38
(57)【要約】
【課題】初期使用の開始直後における吐出よれの発生を抑制しつつ、耐水性及び耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、水性インクを収容するインク収容部と、インク収容部から供給される水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、吐出口から吐出した水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法である。記録ヘッドの吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、前記インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、前記吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、
前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドの前記吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、
前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項2】
前記樹脂が、水溶性樹脂である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記水性インク中の前記有機顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記水性インク中の前記樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記水性インク中の、前記樹脂の含有量(質量%)が、前記有機顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上0.6倍以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記水性インクが、さらに、環状アミド構造を有する化合物、アルカンジオール、及びアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記水性インクが、さらに、環状アミド構造を有する化合物、アルカンジオール、及びアミン化合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性有機溶剤を含有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記粘着剤が、シリコーン系粘着剤である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向と、前記吐出口面において複数の前記複数の吐出口で構成される吐出口列の配列方向とが、略平行である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記ワイピング手段が、ブレード状のワイパである請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記ワイパの構成材料が、ウレタン樹脂で形成されるゴム材料である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記ワイパの厚さが、0.4mm以上1.1mm以下である請求項11に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記ワイピング手段により前記吐出口面をワイピングする際の前記ワイピング手段の移動速度が、15mm/s以上130mm/s以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記記録ヘッドが、前記記録ヘッド内の前記水性インクを加温する加温手段を有し、
前記水性インクが、さらに、界面活性剤を含有し、
さらに、前記加温手段で前記界面活性剤の曇点以上に前記記録ヘッド内の前記水性インクを加温した後、前記ワイピング手段で前記吐出口面をワイピングする工程を有する請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、前記インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、前記吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの前記吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、
前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法によれば、様々な記録媒体に画像を記録することができる。近年、装置構成の簡略化や小型化、及び初期使用時の記録までの準備の短縮化を目的として、水性インクが収容されたインク収容部に記録ヘッドが組み込まれた構成のインクカートリッジを搭載したインクジェット記録装置が普及している。また、ビジネス分野においては、文章とカラーの図表などを含む文章を普通紙などの記録媒体に記録する際にもインクジェット記録方法が利用されている。このような用途では、吐出よれによる画像の乱れが生じにくいことや、耐水性及び耐擦過性に優れた画像を記録可能なように、樹脂を含有するインクに対するニーズがますます高まっている。
【0003】
画像の乱れが生ずる原因の一つである吐出よれの発生を抑制すべく、洗浄液を用いた洗浄手段を採用する手法が知られている。また、吐出口面に固着したインクを効率的に除去しうる、空隙を有するシート状の払拭部材を備えたインクジェット記録装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、記録ヘッドが組み込まれたインクカートリッジと、この記録ヘッドの吐出口面をワイピングする手段とを備えたインクジェット記録装置を用意した。そして、このインクジェット記録装置の記録ヘッドから有機顔料及び樹脂を含有する水性インクを吐出して画像を記録することについて検討したところ、装置の初期使用の開始直後に吐出よれが発生しやすいことが判明した。従来、吐出よれは、ある程度のインクを吐出した後や、不使用期間があった後に装置を再び使用するような場合に生じていたため、初期使用の開始直後の吐出よれは、従来の吐出よれとは異なる原因で生ずる課題であることになる。また、染料インクや、樹脂を含有しないインクを用いたところ、初期使用の開始直後に吐出よれが発生しないことがわかった。
【0006】
さらに、インク収容部と一体となっていない記録ヘッドから有機顔料及び樹脂を含有する水性インクを吐出したところ、初期使用の開始直後の吐出よれが発生しないことがわかった。すなわち、初期使用の開始直後に発生する吐出よれは、有機顔料及び樹脂を含有する水性インクを記録ヘッドが組み込まれたインクカートリッジの記録ヘッドから吐出して画像を記録する場合に生ずる課題であることが判明した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、初期使用の開始直後における吐出よれの発生を抑制しつつ、耐水性及び耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、前記インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、前記吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、前記記録ヘッドの前記吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、初期使用の開始直後における吐出よれの発生を抑制しつつ、耐水性及び耐擦過性に優れた画像を記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す図面であり、(a)は斜視図、(b)はカバー部材を開いた状態の斜視図である。
【
図2】本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の内部構造を模式的に示す斜視図である。
【
図3】記録ユニットの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】記録ユニットの一例を模式的に示す図面であり、(a)は斜視図、(b)は分解した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。保護テープの剥離方向、吐出口面のワイピング方向、及び吐出口列の配列方向について、これらが互いに「略平行」、「略同方向」、及び「略逆方向」であることを、「略」を省略して「平行」、「同方向」、及び「逆方向」とそれぞれ記載することがある。
【0012】
本発明者らは、インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、インク収容部に記録ヘッドが組み込まれたインクカートリッジを用意した。そして、用意したインクカートリッジ使用し、有機顔料及び樹脂を含有するインクを、保護テープを剥離して開封した直後の記録ヘッドから吐出する際に生ずる吐出よれについて解析した。インク収容部と記録ヘッドが一体に形成されたインクカートリッジは、通常、インクの蒸発を抑制すべく、粘着層を有する保護テープが記録ヘッドの吐出口面に貼着され、吐出口が塞がれた状態で保管される。そして、初回の使用時(初期使用の開始時)には、密閉容器に梱包されたインクカートリッジを開封し、保護テープを剥離してから記録装置に装着し、画像の記録を開始する。しかし、保護テープを剥離した際に、粘着層を形成する粘着剤の一部が吐出口面に付着した状態で残存することがあり、残存した粘着剤によってインクの吐出よれが発生することがわかった。
【0013】
但し、染料インクや、樹脂を含有しない有機顔料インクを用いた場合には、記録ヘッドの吐出口面に粘着剤が付着した状態であっても、吐出よれは発生しないことがわかった。インクの吐出よれが発生した記録ヘッドについて、貼着した保護テープを剥離した吐出口面を観察したところ、粘着剤の付着残りが確認された。また、保護テープの貼着前の吐出口面の各種インクとの接触角、並びに保護テープを貼着及び剥離後の吐出口面の各種インクと接触角を測定した。その結果、樹脂を含有するインクとの接触角が特有に、保護テープの貼着前後で大きく相違することがわかった。すなわち、粘着剤が付着した状態の吐出口面は、樹脂を含有するインクが濡れやすくなり、吐出よれが発生したと考えられる。
【0014】
記録ヘッドを備えるヘッドカートリッジに、インク収容部をセットするタイプの記録ユニットを用いる場合、インク収容部に記録ヘッドが組み込まれたインクカートリッジにおいて必要となる、吐出口からのインクの蒸発を抑制する必要がない。このため、記録ヘッドを備えるヘッドカートリッジに、インク収容部をセットするタイプの記録ユニットを用いる場合、残存した粘着剤に起因するインクの吐出よれは発生しない。
【0015】
本発明者らは、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とを、同一方向にして、吐出口面の状態を確認した。その結果、交差する又は逆方向にした場合と異なり、残存した粘着剤の除去が不十分となって、インクの吐出よれの発生を抑制することが困難であることがわかった。さらに、本発明者らは、ワイピング手段の一つであるワイパの材質や、ワイピングに用いる洗浄液の組成について検討した。例えば、空隙を有するシート状の払拭部材を用いたところ、残存した粘着剤の除去効率が向上し、初期使用の開始直後におけるインクの吐出よれの発生を抑制することができた。但し、吐出口面を構成する撥水材が削れやすくなるなど、吐出口面が劣化しやすくなり、長時間の使用によりインクの吐出よれが発生しやすくなることがわかった。また、インクの再溶解性を向上させうる、保湿性が良好な溶剤などの「良溶媒」を多く含有する洗浄液を用いてワイピングしたところ、残存した粘着剤を除去する効果が弱いことがわかった。また、物質の溶解性が良好な溶剤などの「貧溶媒」を多く含有する洗浄液を用いてワイピングしたところ、残存した粘着剤の除去効率は向上したが、インクが凝集しやすくなり、不吐出や吐出よれが発生しやすくなる場合があることがわかった。
【0016】
本発明者らは、吐出口面のワイピング条件及びインクの組成についてさらに検討した。その結果、以下に示す構成とすることで、初期使用の開始直後における吐出よれの発生を抑制しつつ、ビジネス文書などに要求される耐水性及び耐擦過性に優れた画像を記録可能となることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明のインクジェット記録方法では、有機顔料及び樹脂を含有するインクと、インクを収容するインク収容部と、インク収容部に組み込まれた記録ヘッドとを備えるインクジェット記録装置を使用する。記録ヘッドは、インク収容部から供給されるインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する。インクジェット記録装置は、さらに、吐出口面をワイピングするワイピング手段を備える。記録ヘッドの吐出口面には、吐出口からのインクの蒸発を抑制すべく、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、この保護テープは、インクジェット記録装置の初回の使用時に剥離される。そして、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向である。
【0018】
記録ヘッドの吐出口面から保護テープを剥離すると、保護テープの粘着層を形成する粘着剤の一部が、「毛羽立ったような状態」で吐出口面に残存する。そこで、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とを、交差する又は逆方向にすると、毛羽立ったような状態で残存した粘着剤を効率よく除去することができると考えられる。これにより、初期使用の開始直後におけるインクの吐出よれの発生を抑制することができる。
【0019】
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、インクと、インクを収容するインク収容部と、記録ヘッドと、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用する記録方法である。インクは、有機顔料及び樹脂を含有する。記録ヘッドは、インク収容部から供給されるインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、インク収容部に組み込まれた記録ヘッドである。本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドの吐出口から吐出したインクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。記録ヘッドの吐出口面には、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されている。そして、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向である。
【0020】
また、本発明のインクジェット記録装置は、インクと、インクを収容するインク収容部と、記録ヘッドと、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備える。インクは、有機顔料及び樹脂を含有する。記録ヘッドは、インク収容部から供給されるインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、インク収容部に組み込まれた記録ヘッドである。記録ヘッドの吐出口面には、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されている。そして、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向である。
【0021】
(インクジェット記録装置)
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す図面であり、(a)は斜視図、(b)はカバー部材を開いた状態の斜視図である。
図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、外装2と、外装2の上面に設けられたカバー部材3とを有する。カバー部材3は、上下方向に開閉可能な部材であり、上方向に開放することで、インクジェット記録装置1の内部を見ることができる。インクジェット記録装置1の形状は略直方体であり、後方に給紙トレイ4を備える。(b)では、給紙トレイ4を外装2から伸ばした状態を示している。
図1及び2は、簡単のために、1色のインクを搭載する装置について示したが、インク種やインク数は
図1及び2に示したものに限られない。
【0022】
図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態の内部構造を模式的に示す斜視図である。
図2に示す実施形態のインクジェット記録装置1は、外装の後方側に給紙トレイ4を備える。給紙トレイ4には、紙などの記録媒体が配置される。インクジェット記録装置1の内部には、記録ユニット8が配置されている。記録ユニット8の下部には記録ヘッドが設けられている。記録ユニット8は、
図2中のy方向に往復移動しながら、記録ヘッドの吐出口からインクを吐出する。給紙トレイ4に配置された記録媒体は、給紙ローラ5及び搬送ローラ6によって前方のx方向へと送られ、プラテン7に到達して支持される。プラテン7で支持された記録媒体は、記録ヘッドと対向した位置に配置され、この状態で記録ヘッドから記録媒体にインクが吐出される。吐出されたインクは記録媒体に付着し、記録媒体に画像が記録される。インクジェット記録装置1には、さらに、記録ヘッドの吐出口面を含む領域に当接し、吐出口を覆うキャップ9がホームポジションに設けられている。記録ユニット8がホームポジションにある状態で、ワイパ20により記録ヘッド1の吐出口面がワイピングされる。
【0023】
図3は、記録ユニット(インクカートリッジ)の一例を模式的に示す斜視図である。
図3に示すように、記録ユニット8は、熱可塑性樹脂などの材料で形成された筐体であるインク収容部10と、インク収容部10に組み込まれた記録ヘッド11とを有する。つまり、記録ヘッド11はインク収容部10に一体的に形成されている。インク収容部10には、有機顔料及び樹脂を含有するインクが収容されている。記録ヘッド11は、インク収容部10から供給されるインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面30を有する。記録ヘッド11の吐出口面30には、インクカートリッジの初期使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープ50が貼着されている。保護テープ50の剥離方向は、例えば、以下のように規制することができる。剥離方向に沿った剥離テープの端部に、記録ヘッドに接着していない非接着部としてのタブ40を設ける。こうすることで、タブ40から保護テープの長手方向に剥離しやすくなり、剥離方向を規制することができる。より簡易かつ確実に剥離方向を規制するためには、剥離方向と交差する方向には非接着部を設けないことが好ましい。また、保護テープ50の剥離方向は、記録ヘッド11の吐出口列の配列方向と交差する方向であることが好ましい。特に、
図3に示すように、保護テープ50の剥離方向をX-X’とするとともに、記録ヘッド11の吐出口列の配列方向がY-Y’の方向であることがさらに好ましい。保護テープの構成や剥離方向は
図3に示したものに限られない。
【0024】
記録ヘッドのインク吐出方式としては、ピエゾ素子などにより発生させた力学的エネルギーをインクに付与して吐出する方式や、電気熱変換体(ヒーター)などにより発生させた熱エネルギーをインクに付与して吐出する方式などがある。いずれのインク吐出方式を採用してもよい。
【0025】
保護テープは、水などのインク中の蒸発しうる成分が記録ヘッドの吐出口から蒸発するのを抑制するために用いられる部材である。保護テープは、粘着剤で形成された粘着層を有する。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びエチレンビニルアセテート(EVA)などを挙げることができ、アクリル系粘着剤及びシリコーン系粘着剤が好ましく、シリコーン系粘着剤がさらに好ましい。シリコーン系粘着剤を用いると、アクリル系などの他の粘着剤を用いた場合に比して、インクジェット用の水性インクに一般的なpH(アルカリ性)であっても、インクによる粘着剤の劣化が生じにくい。このため、粘着剤の付着残りが生じにくく、吐出よれの発生を抑制しやすい。粘着層は、例えば、シート状又はフィルム状の基材の表面上に形成されている。基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂材料を用いることができる。
【0026】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング手段を備える。そして、前述の通り、保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向である。交差する方向である場合、剥離方向とワイピング方向とのなす角は、0°以外の任意の角度とすることができる。なかでも、剥離方向とワイピング方向とが略直交することが好ましい。なお、逆方向である場合、剥離方向とワイピング方向とのなす角は、実質的に0°である。保護テープの剥離方向と、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向とは、交差する方向であることが特に好ましい。また、ワイピング手段による吐出口面のワイピング方向と吐出口列の配列方向とが略平行であり、かつ、これらの方向が、保護テープの剥離方向と交差することが特に好ましい。ワイピング手段としては、例えば、吐出口面に当接して摺動しうるワイパなどを用いることができる。ワイパの形状は、ブレード状であることが好ましい。ブレード状のワイパを用いることで、吐出口面の払拭性をより高めることができる。ワイパの構成材料としては、ゴム弾性を有するものが好ましい。ワイパの構成材料としては、例えば、ウレタン樹脂で形成されるゴム材料(ウレタンゴム)などを挙げることができる。
【0027】
ワイパの厚さは、0.4mm以上1.1mm以下であることが好ましい。ワイパの厚さが0.4mm未満であると、吐出口面に付着した粘着剤の除去効率がやや低下することがある。一方、ワイパの厚さが1.1mm超であると、記録ヘッドの吐出口面を傷つけやすくなる場合があり、長時間の使用によって吐出よれがやや発生しやすくなることがある。
【0028】
ワイピング時のワイパの移動速度は、15mm/s以上130mm/s以下であることが好ましい。ワイパの移動速度が15mm/s未満であると、記録ヘッドの吐出口面を傷つけやすくなる場合があり、長時間の使用によって吐出よれがやや発生しやすくなることがある。一方、ワイパの移動速度が130mm/s超であると、吐出口面に付着した粘着剤の除去効率がやや低下することがある。
【0029】
図4は、記録ユニットの一例を模式的に示す図面であり、(a)は斜視図、(b)は分解した状態の斜視図である。
図4に示す記録ユニット8は、筐体であるインク収容部10と、記録ヘッド11とを有する。インク収容部10には、他の部材を介在させることなく記録ヘッド11が貼り合わされている。インク収容部10は熱可塑性樹脂などの材料で形成された筐体であるために軽量である。さらに、インク収容部10には、放熱板などの他の部材を介在させることなく記録ヘッド11が貼り合わされているため、記録ユニット8全体が小型化及び軽量化されている。このような記録ユニット8を用いることで、インクジェット記録装置全体を小型化及び軽量化することができる。放熱板としては、アルミナなどの金属酸化物などの材質で形成されているものを挙げることができる。インク収容部10と記録ヘッド11との間には、放熱板などの他の部材を介在させる必要はない。但し、記録ヘッド11をインク収容部10に固定するための、接着剤などで形成される接着層は存在してもよい。
【0030】
記録ヘッド11には、インクを吐出する複数の吐出口や、インクを吐出するための熱エネルギーを発生させるエネルギー発生素子などが設けられている。エネルギー発生素子などは、例えば、電気配線部材14を通じて供給される電力によって駆動させることができる。エネルギー発生素子は熱エネルギーを発生させる素子であり、発生させた熱エネルギーの作用によって吐出口からインクを吐出させることができる。
【0031】
記録ヘッド11は、複数の吐出口で構成される吐出口列が同一の記録素子基板に配列された吐出口面を有する。吐出口列は、記録ユニットの往復移動方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に配列されていることが好ましい。記録素子基板には複数の吐出口列を配列してもよく、この場合、一つの記録ユニットで複数のインクを吐出することが可能であり、インクジェット記録装置の全体を小型化することができる。
【0032】
インク収容部10内には、スポンジ状のインク吸収体12a~12cが収納されている。また、インク収容部10の重力方向下方には、フィルタ13a~13cがそれぞれ配置されている。スポンジ状のインク吸収体12a~12cの毛管力を利用して負圧を発生させることで、吐出口からインクが漏出しないようにすることができる。また、フィルタ13a~13cを配置することで、ごみなどの微細な異物が吐出口に侵入するのを防止することができる。
【0033】
記録ヘッドは、記録ヘッド内のインクを加温する加温手段を有することが好ましい。加温手段は、記録ヘッド内のインクを、インク中の界面活性剤の曇点以上の温度に加温しうる手段であればよい。このような加温手段としては、例えば、記録ヘッドに接触するように配設されるインク温度調整用のヒーターや、インク吐出用のヒーターなどを挙げることができる。インク吐出用のヒーターによってインクを加温するには、例えば、インクが吐出しない程度の電流を繰り返し通電すればよい。記録ヘッド内のインク温度は、40℃以上70℃以下に加温することが好ましい。
【0034】
記録ヘッド11を構成する記録素子基板の吐出口面の材質としては、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂材料を挙げることができる。樹脂材料で形成された吐出口面に、撥水処理がなされた記録ヘッドを用いると、吐出口面に付着したインクによる吐出特性の低下を抑制しやすいために好ましい。特に、保護テープをより剥離しやすくなるとともに、粘着剤が吐出口面にさらに残存しにくくなる。また、吐出口面に残存した粘着剤をワイピングによってより除去しやすくなる。
【0035】
記録ヘッドの吐出口面は、撥水処理されていることが好ましい。吐出口面を撥水処理するための方法としては、撥水性材料をスプレーなどで付与する方法、真空蒸着やプラズマ重合により撥水性材料を付着させる方法、などを挙げることができる。吐出口面の撥水性は、水の接触角を測定することにより評価することができる。水の接触角が70°以上であれば「撥水性」であると判断でき、水の接触角が90°以上であることが好ましい。水との接触角は、純水(イオン交換水)を用い、一般的な接触角計を使用して測定することができる。接触角計としては、例えば、自動接触角測定機(商品名「CA-W」、協和界面科学製)などを挙げることができる。
【0036】
吐出口面を撥水処理するための撥水性材料としては、フッ素系樹脂の化合物などを挙げることができる。撥水面は、これらの材料で形成された一様な樹脂膜として形成されていることが好ましく、この樹脂膜はニッケルなどの金属を含まないことが好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、環状構造を有するフッ素樹脂などを挙げることができる。また、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂、及びこれらの変性樹脂などの、フッ素原子を含有するその他の樹脂などを挙げることができる。また、撥水性材料として、珪素原子を含む化合物やシリコーン系樹脂を用いてもよい。なかでも、高度な撥水性が得られることから、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物、及び、カチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物の縮合物を用いることが好ましい。また、この縮合物を、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化させたシリコーン系樹脂を挙げることができる。加水分解性シラン化合物は、その分子構造中にアルコキシ基などの加水分解性基を有する。また、カチオン重合性基としては、環状エーテル基、環状ビニルエーテル基などを挙げることができる。
【0037】
(水性インク)
本発明のインクジェット記録方法は、有機顔料及び樹脂を含有するインクを使用し、吐出口から吐出したインクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。以下、インクを構成する成分などについて説明する。
【0038】
[色材]
インクの色材としては、有機顔料(以下、単に「顔料」とも記す)を用いる。顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、イミダゾロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、及びペリノン顔料などを挙げることができる。
【0039】
水性インク中の有機顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂(樹脂分散剤)を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。
【0041】
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、後述の樹脂、なかでも水溶性樹脂を用いることができる。水性インク中の樹脂分散剤の含有量(質量%)は、有機顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上0.6倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が0.6倍超であると、画像の耐擦過性が向上する傾向にあるが、初期使用の開始直後に吐出よれが生じやすくなる傾向にある。
【0042】
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
【0043】
[樹脂]
インクは、樹脂を含有する。水性インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。水性インク中の樹脂の含有量(質量%)は、有機顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上1.0倍以下であることが好ましく、0.1倍以上0.6倍以下であることが好ましい。この樹脂の含有量は、顔料を分散するための分散剤を含む値である。
【0044】
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定化させるため、すなわち、樹脂分散剤やその補助としてインクに添加することができる。また、(ii)記録される画像の各種特性を向上させるためにインクに添加することができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、この水溶性樹脂は顔料を分散させるための樹脂分散剤であることが好ましい。
【0045】
樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、多糖類、ポリペプチド類などを挙げることができる。なかでも、記録ヘッドの吐出口からの吐出特性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂としては、アニオン性基を有するユニット及びアニオン性基を有しないユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリレートなどのアクリル系モノマーに由来するユニットを有する樹脂である。アクリル樹脂の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0046】
重合によりアクリル樹脂を構成するユニットとなるモノマーとしては、アニオン性基を有するモノマー及びアニオン性基を有しないモノマーを挙げることができる。通常、アニオン性基を有するモノマーは重合により親水性ユニットとなり、アニオン性基を有しないモノマーは重合により疎水性ユニットとなる。
【0047】
アニオン性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有するモノマー;これらのモノマーの無水物や塩などを挙げることができる。アニオン性基を有するモノマーの塩を構成するカチオンとしては、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、アンモニウムカチオン、及び有機アンモニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0048】
アニオン性基を有しないモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾールなどの芳香族基を有するモノマー;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n-、iso-、t-)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0049】
なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットとを有するアクリル樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方のモノマーに由来する疎水性ユニットとを有するアクリル樹脂が好ましい。これらのアクリル樹脂は、顔料と相互作用しやすいため、水性媒体中に顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適である。
【0050】
ウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得ることができる。また、鎖延長剤をさらに反応させたものであってもよい。オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンなどを挙げることができる。
【0051】
[水性媒体]
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。なお、インクは、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
インクは、環状アミド構造を有する化合物、アルカンジオール、及びアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含有することが好ましく、少なくとも2種の水溶性有機溶剤を含有することがさらに好ましい。これらの水溶性有機溶剤を含有するインクを用いることで、初期使用の開始直後の吐出よれをさらに抑制することができる。環状アミド構造を有する化合物としては、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンなどを挙げることができる。アルカンジオールは炭素数2乃至8程度の飽和炭化水素鎖に2つのヒドロキシ基が置換した化合物であり、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオールなどを挙げることができる。アミン化合物としては、トリエタノールアミンなどを挙げることができる。
【0053】
[界面活性剤]
インクは、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。また、インクは、曇点を有する界面活性剤を含有することが特に好ましい。そして、本発明のインクジェット記録方法は、さらに、加温手段で界面活性剤の曇点以上に記録ヘッド内のインクを加温した後、ワイピング手段で吐出口面をワイピングする工程を有することが好ましい。これにより、いわゆる「曇点洗浄」が可能となり、吐出口面に付着した粘着剤の除去効率をより向上させることが可能となり、初期使用の開始直後の吐出よれをさらに抑制することができる。界面活性剤の曇点は、ノニオン性界面活性剤の水溶液を加熱した際に、溶質(ノニオン性界面活性剤)と水が分離して水溶液が曇り始める温度を指し、JIS K 3211:1990に1047として規定されている。後述する実施例では、界面活性剤の1.0質量%水溶液を加熱した際に曇り始める温度を測定した。
【0054】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。なかでも、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
[その他の成分]
インクには、さらに、必要に応じて、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
【0056】
[インクの物性]
インクは、インクジェット方式に適用する水性インクである。したがって、信頼性の観点から、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.5以下であることが好ましく、8.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。
【実施例0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0058】
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸共重合体(水溶性樹脂)を、その酸価と等モル量の水酸化カリウムで中和した。C.I.ピグメントブルー15:3 10.0部、中和したスチレン-アクリル酸共重合体(固形分)3.0部、及びイオン交換水85.0部を混合して混合物を得た。サンドグラインダーを使用して得られた混合物を1時間分散した後、遠心分離処理して粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過して、C.I.ピグメントブルー15:3が樹脂によって水中に分散された状態の顔料分散液1を得た。顔料分散液1中の顔料の含有量は15.0%、樹脂(樹脂分散剤)の含有量は4.5%であった。
【0059】
(顔料分散液2)
C.I.ピグメントブルー15:3に代えて、C.I.ピグメントレッド122を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料分散液2を得た。顔料分散液2中の顔料の含有量は15.0%、樹脂(樹脂分散剤)の含有量は4.5%であった。
【0060】
(顔料分散液3)
C.I.ピグメントブルー15:3に代えて、C.I.ピグメントイエロー74を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料分散液3を得た。顔料分散液3中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
【0061】
(顔料分散液4)
顔料種が有機顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)である自己分散顔料を含有する市販の顔料分散液(商品名「CAB-O-JET250C」、キャボット製、顔料の含有量15.0%)を顔料分散液4とした。
【0062】
(顔料分散液5)
C.I.ピグメントブルー15:3に代えて、無機顔料(カーボンブラック)を用いたこと以外は、前述の顔料分散液1と同様の手順で、顔料分散液5を得た。顔料分散液5中の顔料の含有量は15.0%、樹脂分散剤の含有量は4.5%であった。
【0063】
(顔料分散液6)
顔料種が無機顔料(カーボンブラック)である自己分散顔料を含有する市販の顔料分散液(商品名「CAB-O-JET300」、キャボット製、顔料の含有量15.0%)を顔料分散液6とした。
【0064】
<染料水溶液の調製>
C.I.ダイレクトブルー199を水に溶解させて、C.I.ダイレクトブルー199の含有量が15.0%である染料水溶液を得た。
【0065】
<アクリル樹脂の調製>
スチレン81.0部及びアクリル酸19.0部を常法にしたがって共重合して、アクリル樹脂(水溶性樹脂)を合成した。アクリル樹脂の酸価と等モル量の水酸化カリウムでアクリル樹脂中のカルボン酸基を中和して樹脂を溶解させた後、適量の純水を添加して、樹脂の含有量が20.0%であるアクリル樹脂の水溶液を得た。アクリル樹脂の酸価は148mgKOH/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したアクリル樹脂の重量平均分子量は10,000であった。
【0066】
<インクの調製>
表1-1及び1-2の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるポリプロピレンフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行って各インクを調製した。表1-1及び1-2中、「サーフィノール465」は、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(Air Products製、エチレンオキサイド基の付加モル数:10)の商品名である。1.0%水溶液について測定した「サーフィノール465」の曇点は55℃であった。
【0067】
【0068】
【0069】
<記録ユニット(インクカートリッジ)の構成>
図3に示すような、熱エネルギーを付与してインクを吐出させる方式の記録ヘッドを、放熱板を介さずにインク収容部10に直接貼り付けた記録ユニット(インクカートリッジ)用意した。記録ヘッドとしては、エポキシ樹脂で形成された吐出口面を撥水剤によって撥水処理したものを用いた。撥水剤は、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物(フルオロメチル基及びメトキシ基を有する化合物)と、カチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物(エポキシ基及びエトキシ基を有する化合物)との縮合物を硬化させた樹脂である。自動接触角測定機(商品名「CA-W」、協和界面科学製)を用いて測定した、撥水処理された吐出口面の水との接触角は、90°以上であった。記録ユニット1~4の記録ヘッドの吐出口面30には、保護テープ50が貼着されている。記録ユニット5の記録ヘッドの吐出口面には保護テープを貼付せず、密閉状態で覆うことのできる保護キャップで吐出口面を覆った。保護テープ50の剥離方向(
図3中、「X→X’」、「Y’→Y」、又は「Y→Y’」)を表2に示す。記録ヘッドを構成する記録素子基板には、384個の吐出口が600dpiの配列密度で配列された吐出口列がY-Y’方向に設けられている。1つの吐出口から吐出されるインク滴の質量は、5.5ngである。
【0070】
【0071】
<評価>
(インクジェット記録装置)
インクジェット記録装置として、商品名「PIXUS TS5130S」(キヤノン製)を用意した。用意したインクジェット記録装置に、吐出口面をワイピングするワイピング手段であるウレタン樹脂製のブレード状のワイパ(厚さ1.0mm)及び表3に示す記録ユニットを組み込んだ。そして、
図3に示すY→Y’方向に20mm/sの速度でワイピングするように制御した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの質量が5.5ngであるインク滴を2滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AAA」、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
【0072】
(吐出よれ)
表3に示す各インクを、表3に示す記録ユニットのインク収容部に充填した。インク収容部を形成する部材を透過してのインクの蒸発を抑制するため、得られた記録ヘッドをポリプロピレン製の容器に入れて、ポリエチレンテレフタラートのフィルムを熱溶着して密閉した。この容器を、温度60℃、相対湿度20%の恒温槽に入れ、1か月保存した。記録ヘッドを保存して用いたのは、より厳しい条件で吐出よれを評価するためである。保存後の記録ヘッドに、ワイピングを含む回復動作を実行した。回復動作の際には、表3に示す温度にインクを加温した。その後、PIXUS TS5130Sのノズルチェックパターンを記録し、インクの吐出よれの発生の有無を確認した。吐出よれが発生した場合、回復動作を実行するとともに、ノズルチェックパターンを再度記録した。すべての吐出口からのインクの吐出状態が正常となるまで回復動作及びノズルチェックパターンの記録を繰り返し実行した。そして、すべての吐出口からのインクの吐出状態が正常となるまでに要した回復動作の回数を測定し、以下に示す評価基準にしたがって初期使用の開始直後の吐出よれを評価した。
AAA:1回の回復動作で吐出よれが発生しなくなり、吐出口面にインクが付着しなかった。
AA:1回の回復動作で吐出よれが発生しなくなったが、吐出口面にインクが付着していた。
A:2回の回復動作で吐出よれが発生しなくなった。
B:3回の回復動作で吐出よれが発生しなくなった。
C:3回の回復動作でも吐出よれが発生していた。
【0073】
(画像特性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録デューティ100%である2cm×2cmのベタ画像を以下に示す記録媒体1及び2にそれぞれ記録した。記録条件は、温度25℃、相対湿度50%とした。記録したベタ画像を温度25℃、相対湿度50%の環境に1日間置いた後、以下に示す手順にしたがって画像の「耐水性」及び「耐擦過性」をそれぞれ評価するとともに、以下に示す評価基準にしたがって画像特性を評価した。
[記録媒体]
・記録媒体1:普通紙(商品名「CS-680」、キヤノン製)
・記録媒体2:光沢紙(商品名「光沢ゴールド」、キヤノン製)
[画像特性]
A:「耐水性」及び「耐擦過性」のいずれも「a」又は「b」であった。
C:「耐水性」及び「耐擦過性」の少なくとも一方が「c」であった。
【0074】
[耐水性]
ベタ画像を記録した記録媒体1(普通紙)を純水に浸漬した後、ベタ画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐水性を評価した。
a:色材の滲み出しが確認されなかった。
b:色材の滲み出しが確認されたが問題のないレベルであった。
c:問題のあるレベルの色材の滲み出しが確認された。
【0075】
[耐擦過性]
記録媒体2(光沢紙)に記録したベタ画像の上にシルボン紙(3cm×3cm)及び分銅(360g)を載置した。分銅を載せた状態でシルボン紙をベタ画像上で1度移動させてからベタ画像の状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
a:画像に削れが確認されなかった。
b:画像に削れが確認されたが、下地は見えていなかった。
c:画像に削れが確認され、下地が見えていた。
【0076】
【0077】
なお、実施例1及び実施例14の吐出よれの評価結果はいずれもAAAランクであったが、実施例1のほうが実施例14よりも相対的に優れていた。
【0078】
なお、本実施形態の開示は、以下の方法及び構成を含む。
(方法1)有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、前記インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、前記吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置を使用し、
前記吐出口から吐出した前記水性インクを記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
前記記録ヘッドの前記吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、
前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(方法2)前記樹脂が、水溶性樹脂である方法1に記載のインクジェット記録方法。
(方法3)前記水性インク中の前記有機顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下である方法1又は2に記載のインクジェット記録方法。
(方法4)前記水性インク中の前記樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下である方法1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法5)前記水性インク中の、前記樹脂の含有量(質量%)が、前記有機顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上0.6倍以下である方法1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法6)前記水性インクが、さらに、環状アミド構造を有する化合物、アルカンジオール、及びアミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含有する方法1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法7)前記水性インクが、さらに、環状アミド構造を有する化合物、アルカンジオール、及びアミン化合物からなる群より選択される少なくとも2種の水溶性有機溶剤を含有する方法1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法8)前記粘着剤が、シリコーン系粘着剤である方法1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法9)前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する方法1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法10)前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向と、前記吐出口面において複数の前記複数の吐出口で構成される吐出口列の配列方向とが、略平行である方法1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法11)前記ワイピング手段が、ブレード状のワイパである方法1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法12)前記ワイパの構成材料が、ウレタン樹脂で形成されるゴム材料である方法11に記載のインクジェット記録方法。
(方法13)前記ワイパの厚さが、0.4mm以上1.1mm以下である方法11又は12に記載のインクジェット記録方法。
(方法14)前記ワイピング手段により前記吐出口面をワイピングする際の前記ワイピング手段の移動速度が、15mm/s以上130mm/s以下である方法1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法15)前記記録ヘッドが、前記記録ヘッド内の前記水性インクを加温する加温手段を有し、
前記水性インクが、さらに、界面活性剤を含有し、
さらに、前記加温手段で前記界面活性剤の曇点以上に前記記録ヘッド内の前記水性インクを加温した後、前記ワイピング手段で前記吐出口面をワイピングする工程を有する方法1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(構成1)有機顔料及び樹脂を含有する水性インクと、前記水性インクを収容するインク収容部と、前記インク収容部から供給される前記水性インクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する、前記インク収容部に組み込まれた記録ヘッドと、前記吐出口面をワイピングするワイピング手段と、を備えるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの前記吐出口面に、使用時に剥離される、粘着剤で形成された粘着層を有する保護テープが貼着されており、
前記保護テープの剥離方向と、前記ワイピング手段による前記吐出口面のワイピング方向とが、交差する又は逆方向であることを特徴とするインクジェット記録装置。