(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174812
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】PFCネットワーク回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H02M7/12 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075665
(22)【出願日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】504159
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】522500170
【氏名又は名称】アーツェーデー・アントリープステヒニク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】アーロン フェセラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】下流の昇圧回路又は降圧回路を備えないネットワーク回路と、整流電圧をより低い中間回路直流電圧とより高い中間回路直流電圧の両方に直接変換する方法を提供する。
【解決手段】PFCネットワーク回路は、3つの相と、3つの入力部を有する整流器と、制御ユニットによって制御される第1及び第2のトランジスタと、第1及び第2のトランジスタ間に配置された中間点と、3つのスターコンデンサを有するスター点と、中間点と基準電位に接続されたコンデンサとを備え、基準電位はネットワーク回路のゼロ電位又はスターコンデンサのスター点のいずれかであり得る。制御ユニットは、ストリング電圧の極性に応じてAC電源電圧が昇圧又は降圧されたDC出力電圧に変換されるように第1トランジスタ及び第2トランジスタを制御するように構成される。第1及び第2のトランジスタの制御は、制御ユニットにより正制御及び負制御によって行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFC規格に準拠したAC電源電圧をより低いDC出力電圧及びより高いDC出力電圧の両方に変換するハーフブリッジを備えたPFCネットワーク回路であって、
3つの相と、
3つの入力部を有する整流器と、
制御ユニットによって制御される第1及び第2のトランジスタと、
前記第1及び第2のトランジスタ間に配置された中間点と、
3つのスターコンデンサを有するスター点と、
前記中間点と、ネットワーク回路のゼロ電位又は前記スターコンデンサの前記スター点のいずれかであり得る基準電位とに接続されたコンデンサと、
ネットワーク回路の出力領域に設けられた出力コンデンサ、出力コイル、ダイオード、及びストリングコンデンサと、
前記3つの相のうちの1つと、前記整流器の前記3つの入力部のうちの1つとにそれぞれ接続された3つの蓄積チョークと、を備えており、
前記コンデンサは、前記第1及び第2のトランジスタを制御することによって選択的に充電および放電することによって調整可能な電圧源として機能し、PFC規格を満たすために前記3つの蓄積チョーク間の電圧差を調整するように構成され、
前記制御ユニットは、ストリング電圧の極性に応じてAC電源電圧を昇圧又は降圧されたDC出力電圧に変換されるように前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタを制御するように構成され、
前記第1及び第2のトランジスタの制御は、前記制御ユニットにより正制御及び負制御によって行われることを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項2】
請求項1に記載のPFCネットワーク回路において、
前記ダイオードは、正経路内の正ダイオード、負経路内の負ダイオード、又は正経路内の正ダイオードと負ダイオード、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のPFCネットワーク回路において、
前記ストリングコンデンサは、正ストリング内の正ストランドコンデンサ、負ストリング内の負ストランドコンデンサ、又は正ストリング内の正ストランドコンデンサと負ストリング内の負ストランドコンデンサ、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項4】
請求項3に記載のPFCネットワーク回路において、
前記出力コイルは、正経路内の正出力コイル、負経路内の負出力コイル、又は正経路内の正出力コイルと負出力コイル、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項5】
請求項4に記載のPFCネットワーク回路において、
正経路のネットワーク回路内の出力領域に設けられた正デカップリングダイオードと、負経路内のネットワーク回路の出力領域に設けられた負デカップリングダイオードと、を更に備えたことを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項6】
請求項1に記載のPFCネットワーク回路において、
ネットワーク回路はマルチチャネルとして形成されていることを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項7】
請求項6に記載のPFCネットワーク回路において、
マルチチャネルのネットワーク回路の各チャネルは、インターリーブ原理に従って同期又はオフセットして動作し得ることを特徴とするPFCネットワーク回路。
【請求項8】
ネットワーク回路上でPFC規格に準拠しながら、AC電源電圧をより低いDC出力電圧とより高いDC出力電圧の両方に変換する方法であって、
第1及び第2のトランジスタを制御すること、
前記制御に応じてコンデンサを充電及び放電すること、
前記コンデンサ内にコンデンサ電圧を生成すること、
前記コンデンサのコンデンサ電圧によって3つの蓄積チョークに電圧差に影響を与えること、
PFC規格の高調波電流の制限値に準拠して、電源ネットワークから正弦波相電流を抽出すること、を含み、
前記制御は、正制御及び負制御を含み、ストリング電圧の極性を考慮するものであり、
前記蓄積チョークのコイル電圧は、充電及び放電の結果として生じるコンデンサ電圧とそれぞれのAC電源電圧との間の電圧差に相当し、
DC出力電圧は、前記制御に応じてAC電源電圧に対して昇圧又は降圧されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタは、DC出力電圧が負荷に応じて所望の値に調整されるように制御され、前記第1及び第2のトランジスタのスイッチオン期間、短絡期間、及びスイッチオフ期間、のうちの少なくとも1つが自由度として機能することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の方法において、
前記制御は、PFC規格の高調波電流の制限値に遵守されるように実行されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2023年5月8日に出願されたルクセンブルク特許出願LU504159に対する優先権を主張する。ルクセンブルク特許出願LU504159の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、3相電源ネットワークからのストリング電圧を変調するために、3相電源ネットワークから電気負荷に直流を供給するためのネットワーク回路及び方法に関し、整流された電圧は昇圧及び降圧の両方が可能である。ネットワーク回路は、整流器の入力における相電流が、負荷に関係なく、ほぼ正弦波であることを保証する。したがって、制御要素の目標制御を通じて、PFC規格に準拠してAC電源電圧を高低設定できるネットワーク回路が提供される。
【背景技術】
【0003】
ネットワーク回路は従来技術から知られている。ネットワーク回路は、入力に印加されたAC電源電圧を整流し、連動するAC電源電圧の振幅よりも大きな値まで増加させるか(昇圧(step-up)コンバータ又は昇圧(boost)コンバータ)、連動するAC電源電圧の振幅よりも小さな値まで減少させる(降圧(step-down)コンバータ又は降圧(buck)コンバータ)というタスクを有する。
【0004】
図1に示すように、AC電源電圧と中間回路電圧との間には、一定の物理的関係があることが知られている。昇圧コンバータ及び降圧コンバータの形式の電子コンバータシステムは、AC電源電圧をより高い又はより低い中間回路電圧UZK又はDC出力電圧に変換することを可能にする。既知の電子コンバータシステムは、正弦波相電流を達成しようとする。これらは、力率補正(PFC)のためのPFCを備えたPFC昇圧コンバータ又はPFC降圧コンバータと呼ばれる。
【0005】
公共電源ネットワークに接続された多くの負荷は、単純なブリッジ整流器を通じてパルス状のネットワーク電流を抽出することが知られており、これは大きな高調波電流を伴うため、無効電力消費が大きくなる。これらのパルス電流を利用するには、公共電源ネットワークを大規模にする必要がある。更に、短期的な電圧の低下(ディップ)と電圧のピークがあり、高感度な負荷では問題の増加につながる。このため、対応する(PFC)規格があり(例えば、DIN EN IEC 61000-3-2(VDE 0838-2),2019年12月及びDIN EN 61000-3-12(VDE 0838-12),2012年6月を参照))、一定の電力レベル以上では、いわゆる力率補正(PFC)の使用が必要となる。パッシブシステムのコンポーネントは大きい設置スペースを必要とし、正弦波から外れた形状の電流を供給するため、結果として、アクティブ回路ソリューションの使用が必要となる。
【0006】
例えば、EP3068024A1には、スイッチオフ可能な高電力密度のパワー半導体に対する逆電圧ストレスが比較的低く、システムフィードバックが低い、3相パルス整流器システムが開示されている。このような3相3点パルス整流器は、いわゆるウィーン整流器とも呼ばれ、3相電流の整流に使用される従来の6パルスブリッジ回路と比較して、AC電圧側の高調波含有率が著しく低いという特徴があることが知られている。
【0007】
US2013/0194838A1には、中性点に関して3相入力電圧を受け取る入力段と、少なくとも1つの負荷に結合するのに適した出力段とを備える、入力電流及び高調波が少ない3相昇圧整流器が開示されている。
【0008】
US5933336Aには、第1、第2及び第3の相入力及び出力を備える昇圧コンバータが開示されている。昇圧コンバータは、出力の対応するライン間に接続された第1及び第2のスイッチ又はトランジスタを更に備える。昇圧コンバータは、それぞれ第1のインダクタとともに第1、第2及び第3のL-C直列経路を形成する第1、第2及び第3のコンデンサも備える。第1、第2及び第3のL-C直列経路は、それぞれ、第1、第2及び第3の相入力と、第1及び第2のスイッチ間のノードとの間に結合される。第1及び第2のスイッチは、第1のインダクタを流れる電流を放電し、それによって3相入力全てにおける入力電流の全高調波歪み(THD)を低減するように、ライン間の電圧から第1、第2及び第3のコンデンサ間の電圧を差し引いたものを使用して段階的に協働する。
【0009】
EP0973245A2には、インダクタが3相入力に結合される回路が開示されている。2つのスイッチが出力端子間に接続される。3つのコンデンサがスター型構成で3相入力に接続され、スター点がスイッチ間のノードに接続される。ダイオードを備えた整流器がインダクタとスイッチの間に挿入される。出力は、出力コンデンサを介してスイッチに接続される。相入力は電磁干渉抑制フィルターを介して供給される。インダクタはギャップモード(不連続電流モデムDCM)で動作する。制御ループはスイッチを制御する。スイッチは、インダクタを流れる電流を放電し、全ての相入力での全入力電流歪みを低減するように、コンデンサ間の電圧よりも低い出力部間の電圧を使用して段階的に動作する。
【0010】
WO93/12576A1によれば、交流から直流、又はその逆に変換するシステムの全高調波歪みを低減するために、電源システムの周波数の高調波であり、選択された振幅及び位相を有する電流を生成する回路が知られている。DC信号がサンプリングされ、スイッチを制御することによって、所望の高調波を含む正弦波電流が生成され、この電流を電力供給装置の多相ACシステムに供給するインピーダンスネットワークに供給される。インピーダンスネットワークは、電源の各相に直列に接続された単一のインダクタとコンデンサを備え、供給信号に大きな歪みを引き起こす高調波を実質的に除去するように選択された振幅を有する電流信号が含まれる。
【0011】
CN102130572Aには、3相整流器ブリッジDC側並列回路型の能動電力フィルタが開示されている。能動電力フィルタは、低周波双方向電力スイッチである3相整流器ブリッジのAC側に結合要素を備え、結合要素はインピーダンスである。能動電力フィルタは、2つの昇圧型双方向電力コンバータで使用される2つのコンデンサと4つの高周波電力スイッチング管を相互に直列に接続した従来技術を改良し、1つのコンデンサと3つの高周波電力だけで済むようにしたものである。したがって、従来技術と比較して、能動電力フィルタは、2つの元のコンデンサ間の電圧を等しくする必要がないため、より優れた高調波抑制を提示する。
【0012】
したがって、AC電源電圧を整流された中間回路電圧に変換できるネットワーク回路は、従来技術から知られている。しかしながら、AC電源電圧を昇圧及び降圧ともに可能にするために、公知のネットワーク回路は通常、PFC昇圧コンバータとして設定され、別個の下流降圧コンバータ回路を備える。変圧器を備えたコンバータシステムも、この目的で使用される。
【0013】
このようなネットワーク回路は、例えば、ウィーン整流器の場合のように、AC電源電圧を昇圧又は増加させるために多数のコンポーネントを必要とするため、非常に高価になり、非常に複雑な制御も必要となる。以前に増加した電圧からより低い中間回路電圧を得るには、この回路に加えて降圧コンバータ回路を下流に接続する必要があり、これにも追加のコンポーネントが必要となる。コストの増加に加えて、2つのコンバータシステムを直列に接続すると(個々のコンバータシステムの効率を乗算することにより)効率も大幅に低下する。効率の低下は、降圧コンバータ回路を下流に接続する必要がある全てのPFC昇圧コンバータトポロジに一般化することができる。
【0014】
下流コンバータ回路を備えないPFC昇圧コンバータトポロジの例は、例えば、WO2021/260222A1から知られている。
図2に示すように、これには、3相電源ネットワークVNからの出力OUTにおいて中間回路直流電圧UZK及び負荷依存の中間回路電流IZKを供給するためのネットワーク回路Nが開示されている。ネットワーク回路Nは、整流器GR上のエネルギー蓄積体としての蓄積チョークLL1、LL2、LL3を介して電圧差を設定するための調整可能な電圧源として機能する中間点ネットワーク内のコンデンサCSを備える。制御素子STを選択的に制御することにより、PFC規格に準拠しながらAC電源電圧を高めることができる。ただし、このネットワーク回路の欠点は、昇圧が1回しかできないことである。
【0015】
PFC降圧コンバータ(降圧コンバータ)を考慮すると、下流の昇圧コンバータ回路を備えた様々な周知の降圧コンバータトポロジも存在する。また、コンポーネントの数が多いと、このタイプの回路の効率が著しく低下する。また、複雑な制御も必要となる。
【0016】
PFC回路における下流コンバータの他の例は、CUK又はSEPICコンバータとして知られている。ただし、CUK又はSEPICコンバータは制御法則により一定の入力電圧でのみ機能するため、CUK又はSEPICコンバータを組み合わせたネットワーク回路は、非常に複雑で、追加のコンポーネントが必要となる。また、コンポーネントの数が多いと、このタイプの回路の効率は著しく低下する。
【0017】
したがって、本出願の目的は、下流の昇圧回路又は降圧回路を備えないネットワーク回路と、PFC規格に準拠しながらAC電源電圧及びその結果得られる整流電圧をより低い中間回路直流電圧とより高い中間回路直流電圧の両方に直接変換する方法を提供し、それによって、公知のネットワーク回路の前述した欠点が克服することである。
【発明の概要】
【0018】
この目的は、ハーフブリッジを備えたPFCネットワーク回路と、PFC規格に準拠しながら、AC電源電圧をより低いDC出力電圧及びより高いDC出力電圧の両方に変換する方法とによって解決される。
【0019】
PFCネットワーク回路は、3つの相と、3つの入力部を有する整流器と、制御ユニットによって制御される第1及び第2のトランジスタ又はスイッチと、第1及び第2のトランジスタ間に配置された中間点と、3つのスターコンデンサを有するスター点と、中間点と基準電位に接続されたコンデンサとを備え、基準電位はネットワーク回路のゼロ電位又はスターコンデンサのスター点のいずれかであり得る。ネットワーク回路は、出力コンデンサ、出力コイル、ダイオード、及びストリングコンデンサを更に備え、出力コンデンサ、出力コイル、ダイオード、及びストリングコンデンサはネットワーク回路の出力領域に設けられる。ネットワーク回路は、3つの蓄積チョークも備えており、それぞれが3つの相のうちの1つと整流器の3つの入力部のうちの1つとに接続されている。コンデンサは、第1及び第2のトランジスタを制御することで選択的に充電及び放電することにより調整可能な電圧源として機能し、PFC規格を満たすために3つの蓄積チョーク間の電圧差を調整するように構成される。制御ユニットは、ストリング電圧の極性に応じてAC電源電圧が昇圧又は降圧されたDC出力電圧に変換されるように第1トランジスタ及び第2トランジスタを制御するように構成される。第1及び第2のトランジスタの制御は、制御ユニットにより正制御及び負制御によって行われる。
【0020】
このようにして、第1及び第2のトランジスタのみを制御することで、PFC規格に準拠しながら、AC電源電圧をより低い及びより高いDC出力電圧に変換することを可能にするネットワーク回路が提供される。したがって、同じ制御要素で、PFC規格を満たすために、制御に従って電源ネットワークから正弦波電流が得られる。ネットワーク回路は、不必要な下流トポロジにより有効性及びエネルギー効率を向上させ、コンポーネントの数を減らしてコストを削減する。
【0021】
一態様によれば、ダイオードは、正経路内の正ダイオード、負経路内の負ダイオード、又は正経路内の正ダイオードと負ダイオード、のうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
ダイオードは、ネットワーク回路の出力をネットワーク回路の残りの部分から完全に電気的に切り離すことを可能にする。更に、ネットワーク回路は接地対称となり、EMC(電磁両立性)や漏れ電流の面で更なる利点が得られる。これにより、ネットワーク回路の個々のコンポーネントの電気的負荷が軽減される。
【0023】
更なる態様によれば、ストリングコンデンサは、正ストリング内の正ストランドコンデンサ、負ストリング内の負ストランドコンデンサ、又は正ストリング内の正ストランドコンデンサと負ストリング内の負ストランドコンデンサ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
ストリングコンデンサが正ストリングコンデンサのみ又は負ストリングコンデンサのみを含む場合、設置スペースの容積を低減することができる。ストリングコンデンサが正ストリングコンデンサと負ストリングコンデンサを含む場合、ネットワーク回路の出力をネットワーク回路の残りの部分から容量的に完全に切り離すことができる。更に、ネットワーク回路は接地バランスがとられ、EMC(電磁両立性)や漏れ電流の面で更なる利点が得られる。これにより、ネットワーク回路の個々のコンポーネントの電気的負荷が軽減される。ネットワーク回路内のコンポーネントに障害が発生した場合でも、出力での入力電圧のブレークダウンは発生しない。
【0025】
更なる態様によれば、出力コイルは、正経路内の正出力コイル、負経路内の負出力コイル、又は正経路内の正出力コイルと負出力コイル、のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
出力コイルが正出力コイルと負出力コイルを含む場合、ネットワーク回路の出力をネットワーク回路の残りの部分から誘導的に完全に切り離すことができる。更に、ネットワーク回路は接地対称となり、EMC(電磁両立性)や漏れ電流の面で更なる利点が得られる。これにより、ネットワーク回路の個々のコンポーネントの電気的負荷が軽減される。
【0027】
更なる態様によれば、ネットワーク回路は、正経路のネットワーク回路の出力領域に設けられた正デカップリングダイオードと、負経路のネットワーク回路の出力領域に設けられた負デカップリングダイオードを更に備える。
【0028】
正デカップリングダイオードと負デカップリングダイオードは、ネットワーク回路の出力の誘導性デカップリングを改善し、一方向の電流フローを許可することができる。更に、ネットワーク回路は接地対称となり、EMC(電磁両立性)や漏れ電流の面で更なる利点が得られる。これにより、ネットワーク回路の個々のコンポーネントの電気的負荷が軽減される。
【0029】
更なる態様によれば、ネットワーク回路はマルチチャネルである。
【0030】
マルチチャネル設計のおかげで、ネットワーク回路はより広い電力範囲で使用することができる。
【0031】
更なる態様によれば、マルチチャネルのネットワーク回路の各チャネルは、インターリーブ原理に従って同期又はオフセットして動作する。
【0032】
インターリーブ原理を使用して、ネットワーク回路のコンポーネントへのエネルギー供給を分割し、コンポーネントの負荷を軽減することができる。更に、出力電圧のリップルを低減できるため、出力コンデンサの静電容量をより低く選択できる(平滑容量)。
【0033】
この目的は、ネットワーク回路上でPFC規格に準拠しながら、AC電源電圧をより低い又はより高いDC出力電圧に変換する方法によって更に解決される。この方法は、第1及び第2のトランジスタを制御すること、制御に応じてコンデンサを充電及び放電すること、コンデンサ内にコンデンサ電圧を生成すること、コンデンサのコンデンサ電圧によって3つの蓄積チョークに電圧差に影響を与えること、PFC規格の高調波電流の制限値に準拠して、電源ネットワークから正弦波相電流を抽出することを含む。制御は、正制御及び負制御を含み、ストリング電圧の極性を考慮する。蓄積チョークのコイル電圧は、充電及び放電の結果として生じるコンデンサ電圧とAC電源電圧との間の電圧差に相当する。DC出力電圧は、制御に応じてAC電源電圧に対して昇圧又は降圧される。
【0034】
ネットワーク回路の第1及び第2のトランジスタのみを制御することで、PFC規格に準拠しながらDC出力電圧を上下させることができる。これにより、有効性及びエネルギー効率が向上し、コンポーネントの数を減らしてコストが削減される。
【0035】
一態様によれば、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、DC出力電圧が負荷に応じて所望の値に調整されるように制御され、第1及び第2のトランジスタのスイッチオン期間、短絡期間、及びスイッチオフ期間、のうちの少なくとも1つが自由度として機能する。
【0036】
更なる態様によれば、制御は、PFC規格の高調波電流の制限値に準拠するように実行される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
次に、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。図面には以下が示される。
【0038】
図1は、AC電源電圧と中間回路電圧との間における公知の一定の物理的関係を示す。
【0039】
図2は、下流コンバータ回路を備えない公知のPFC昇圧コンバータトポロジを示す。
【0040】
図3は、第1の実施形態例によるネットワーク回路を示す。
【0041】
【0042】
図5は、第2の実施形態例に係るネットワーク回路を示す。
【0043】
図6は、ネットワーク回路の出力領域の第1の変形例を示す。
【0044】
図7A及び
図7Bは、ネットワーク回路の出力領域の第2の変形例を示す。
【0045】
図8は、ネットワーク回路の出力領域の第3の変形例を示す。
【0046】
図9は、ネットワーク回路の出力領域の第4の変形例を示す。
【0047】
図10及び
図11は、ネットワーク回路の多チャンネル構成を示す。
【0048】
【0049】
【0050】
図14は、
図3のネットワーク回路の昇圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す。
【0051】
図15は、
図3のネットワーク回路の昇圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す。
【0052】
図16は、
図3のネットワーク回路の降圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す。
【0053】
図17は、
図3のネットワーク回路の降圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す。
【0054】
図18は、
図5のネットワーク回路の昇圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す。
【0055】
図19は、
図5のネットワーク回路の昇圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す。
【0056】
図20は、
図5のネットワーク回路の降圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す。
【0057】
図21は、
図5のネットワーク回路の降圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す。
【0058】
図22A及び
図22Bは、ネットワーク回路の正制御及び負制御のための方法ステップを示す。
【0059】
図24A~
図25Cは、
図3のネットワーク回路の昇圧動作及び降圧動作におけるネットワーク変数の推移を示す。
【0060】
図26A~
図27Cは、
図5のネットワーク回路の昇圧動作及び降圧動作におけるネットワーク変数の推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
[本発明の具体的態様の説明]
【0062】
図3は、三相電源ネットワークVNからのAC電源電圧uN(u1,u2,u3)からネットワーク回路100の出力において昇圧又は降圧されたDC出力電圧UAを供給するための第1の実施形態例による単一チャネルネットワーク回路100の一般的な構造を示している。
【0063】
ネットワーク回路100は、相互に接続された複数のコンポーネントを備える。入力領域B1において、ネットワーク回路100は、入力部INと、EMIフィルタ又は電磁干渉用フィルタと、ネットワーク検出部NEと、出力検出部AEをオプションで備える制御ユニットSEと、結合回路KSと、整流器GRと、少なくとも1つの制御素子ST又は第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2と、第1のトランジスタT1と第2のトランジスタT2との間に配置された中間点Mと、コンデンサCSとを備え、出力領域B2において、出力コンデンサCAと、出力コイルLAと、ダイオードDと、ストリングコンデンサCと、出力部OUTとを備える。
【0064】
第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2は、それぞれ、制御入力部ANと、トランジスタT1,T2と並列に接続されたボディダイオード(図示せず)又はフリーホイールダイオード(図示せず)とを備えるトランジスタである。制御入力部ANは制御ユニットSEに接続されており、第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2はそれぞれ制御入力部ANを介して制御ユニットSEを介して制御される。コンデンサCSは、ネットワーク回路100の中間点Mと、ゼロ電位NPとに接続される。第1のトランジスタT1、中間点M、及び第2のトランジスタT2は、ハーフブリッジ又は電子ハーフブリッジ回路を形成する。
【0065】
入力部INでは、ネットワーク回路100は、相L1,L2,L3を介して電源ネットワークVNに接続される。相L1,L2,L3は、ネットワーク変数NGを有する。ネットワーク変数NGは、相位置PLと、ストリング電圧UN(ストリング電圧u1,u2,u3)と、相電流iNL1,iNL2,iNL3とのうちの少なくとも1つを有する。
【0066】
入力部INの後にはEMIフィルタEMIが続いており、これは既知の方法で電磁干渉をフィルタリングするために使用される。このため、また簡潔にするために、EMIフィルタについてはここでは詳しく説明しない。
【0067】
相L1,L2,L3のそれぞれのネットワーク変数NGは、様々な回路経路内のネットワーク検出部NEによって検出され、制御ユニットSEに渡される。ネットワーク検出部NEは、EMIフィルタと結合回路KSの間に配置されている。ここで、回路経路は、正経路pZと、負経路nZとを有する。
【0068】
電源ネットワークVNが中性線を備えた4線式3相システムである場合、電源ネットワークVNに対称中性点が作られる(図示せず)。
【0069】
制御ユニットSEは、異なる位置、特にネットワーク回路100の出力部OUTでの電圧変数と電流変数を検出するために、出力検出部AEを任意に拡張することができる。したがって、出力検出部は、出力部OUTでのDC出力電圧UAと出力電流IAの少なくとも1つを検出する。
【0070】
結合回路KSの後には整流器GRが接続されており、図示の例では3つの入力e1,e2,e3を有し、エネルギー蓄積体としての整流ダイオードD1,D2,D3,D4,D5,D6で構成される。入力e1,e2,e3は、整流器GRを相L1,L2,L3に接続する。結合回路KSと整流器GRの間には、蓄積チョークLL1,LL2,LL3が設けられている。ただし、整流器GRは、この実施形態例に限定されない。整流器GRは、制御可能なコンポーネント、非制御可能なコンポーネント、及び/又はそれらの組み合わせで構成することもできる。したがって、整流器GRは、電源ネットワークVNへのフィードバックオプションを可能にする整流器及びインバータである可能性がある。
【0071】
図4に示すように、整流器GRは、相L1,L2,L3の相電流iNL1,iNL2,iNL3を整流し、整流電流IGを生成する。整流電流IGは、第1のトランジスタT1のクロック状態に応じて、第1の整流電流IG1と第2の整流電流IG2に分割される。第2の整流電流IG2は、第1のトランジスタT1を通過する。第1の整流電流IG1は、正経路pZを介してネットワーク回路100の出力部OUTに供給される。
【0072】
ネットワーク回路100では、第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の制御入力部ANは、制御ユニットSEによって制御される。第2の整流電流IG2は、制御ユニットSEによって制御入力部ANを制御することによって、クロック信号GSに変換される。クロック信号GSは、コンデンサCSを介したコンデンサ電流iCSに対応する。
【0073】
クロック信号GSは、
図3に示すように、第1のトランジスタT1から中間点M及びコンデンサCSを介して相L1,L2,L3に転送される。コンデンサCSは、クロック信号GSによって特に充電される。コンデンサCSが充電される電圧は、コンデンサCSの静電容量値で割った、積分されたコンデンサ電流iCSに相当する。
【0074】
それぞれのストリング電圧と静電容量の電圧値との差によって、蓄積チョークLL1,LL2,LL3を流れる電流が測定され、正弦波変調された相電流iNL1,iNL2,iNL3が保証される。
【0075】
したがって、コンデンサCSは電圧源として機能し、第1のトランジスタT1又は第2トランジスタT2を制御することによって、蓄積チョークLL1,LL2,LL3を介して調整可能な電圧差を提供する。このようにして、ネットワーク回路100は、PFC規格を満たすために、電源ネットワークVNからの正弦波電流抽出を保証する。
【0076】
結合回路KSは、EMIフィルタ又はネットワーク検出部NEと整流器GRの間に設けられ、中間点Mに接続されている。結合回路KSは、トランジスタのクロッキングによって生成される高周波電流成分を相電流から除去する。言い換えれば、結合回路KSは、第1のトランジスタT1及び/又は第2のトランジスタT2のクロッキングによって発生する高周波電流が相電流iNL1,iNL2,iNL3に現れないことを保証する。
【0077】
結合回路KSは、スター点SPを形成する3つのスターコンデンサCYL1,CYL2,CYL3を備えるコンデンサスター回路である。中間点Mは、コンデンサCSを介してコンデンサスター回路のスター点SPに接続されている。相電流iNL1,iNL2,iNL3は、コンデンサスター回路KSを介して、相L1,L2,L3で転送されたクロック信号GSを用いて変調される。したがって、転送されたクロック信号GSは、結合回路KSのスター点SPにフィードバックされる。
【0078】
出力部OUTを入力部INから容量的に分離するために、ネットワーク回路100の第1の実施例では、第1のトランジスタT1の後の正経路pZにストリングコンデンサCが設けられている。出力部OUT方向のストリングコンデンサCの後、正経路pZと負経路nZの間に出力コイルLAが設けられている。出力コイルLAは、回路の機能(昇圧及び降圧)に必要な出力側蓄積チョーク(エネルギー蓄積体)の機能を果たす。出力領域B2をネットワーク回路100から分離して、DC出力電圧UAがクロックに関係なく接地対称電位に維持されるようにするために、ネットワーク回路100の第1の実施例では、ストリングコンデンサC及び出力コイルLAの下流の正経路pZにダイオードが設けられている。最後に、出力OUTの正経路pZと負経路nZの間に出力コンデンサCAが設けられる。出力領域B2における前述のコンポーネントのこの特定の配置により、第1の実施形態例に係るネットワーク回路100は、非反転型3相降圧・昇圧コンバータトポロジに対応する。
【0079】
図5は、3相電源ネットワークVNからのAC電源電圧uNからネットワーク回路100の出力部OUTに昇圧又は降圧されたDC出力電圧UAを供給する第2の実施形態例に係る単チャネルネットワーク回路100の一般的な構造を示している。
【0080】
第2の実施例に係るネットワーク回路100は、出力領域B2における出力コイルLA及びダイオードDの配置が異なる点で第1の実施例と異なる。入力領域B1内のコンポーネントは第1の実施例と同じであり、同様に配置されている。したがって、簡潔にするために、これらのコンポーネントについては再度詳細に説明しない。
【0081】
第2の実施例に係るネットワーク回路100では、出力OUT方向の正経路pZのストリングコンデンサCの下流側の出力領域B2において、正経路pZと負経路nZの間にダイオードDが設けられている。更に、ストリングコンデンサC及びダイオードの後の正経路pZに出力コイルLAが設けられている。
【0082】
第2の実施形態例に係るネットワーク回路100の出力領域B2における出力コイルLA及びダイオードDの配置が異なるため、DC出力電圧UA及び出力電流IAは、ネットワーク回路100の第1の実施形態例と比較して、相応的に反転される。したがって、第2の実施形態例に係るネットワーク回路100は、反転型3相降圧・昇圧コンバータトポロジに対応する。
【0083】
図6は、第1の変形例に対応する第1の出力例に係るネットワーク回路100の出力領域B2を示している。第1の変形例によれば、ダイオードDは、正経路pZの正ダイオードDpと負経路nZの負ダイオードDnのうちの少なくとも1つを含む。ダイオードDは、正経路pZの正ダイオードDpのみ、負経路nZの負ダイオードDnのみ、又は正ダイオードDpと負ダイオードDnの両方を含むことができる。
【0084】
2つのダイオード、すなわち正経路pZの正ダイオードDpと負経路nZの負ダイオードDnを使用することにより、ネットワーク回路100の出力領域B2を分離して、DC出力電圧UAがクロックに関係なく接地対称電位に維持されるようにすることができる。トランジスタの形態のアクティブダイオードを使用して効率を向上させることもできる。したがって、第1の変形例に係るネットワーク回路100は、正経路pZの正ダイオードDpのみ、負経路nZの負ダイオードDnのみ、又は正ダイオードDpと負ダイオードDnの両方のダイオードを使用して実現することができる。
【0085】
図7A及び
図7Bは、第1の出力例によるネットワーク回路100の出力領域B2(
図7A)と、第2の変形例に対応する第2の実施形態例に係るネットワーク回路100の出力領域B2(
図7B)とを示している。第2の変形例によれば、ストリングコンデンサCは、正経路pZの正ストリングコンデンサCpと負経路nZの負ストリングコンデンサCnのうちの少なくとも1つを含む。ストリングコンデンサCは、正経路pZの正ストランドコンデンサCpのみ、負経路nZの負ストランドコンデンサCnのみ、又は正ストランドコンデンサCpと負ストランドコンデンサCnの両方を含むことができる。
【0086】
ストリングコンデンサCを分割する利点は、出力部OUTがネットワーク回路100の入力部INから容量的に分離されることである。動作中、ストリングコンデンサCには高電圧が発生する。ストリングコンデンサCを正ストリングコンデンサCpと負ストリングコンデンサCnに分割することにより、電圧が半分になるため、より低い誘電強度のコンデンサを使用することができる。正端子コンデンサCpと負端子コンデンサCnは直列接続に対応することに留意すべきである。正ストリングコンデンサCpと負ストリングコンデンサCnで単一のストリングコンデンサCと同じ合計静電容量を得るためには、正ストリングコンデンサCpと負ストリングコンデンサCnをストリングコンデンサCの2倍の大きさにする必要がある。
【0087】
図8は、第3の変形例に対応する第2の出力例に係るネットワーク回路100の出力領域B2を示している。第3の変形例によれば、出力コイルLAは、正経路pZの正出力コイルLApと負経路nZの負出力コイルLAnのうちの少なくとも1つを含む。出力コイルLAは、正経路pZの正出力コイルLApのみ、負経路nZの負出力コイルLAnのみ、又は正出力コイルLApと負出力コイルLAnの両方を含むことができる。
【0088】
図9は、第4の変形例に対応する第2の出力例に係るネットワーク回路100の出力領域B2を示している。第4の変形例は、
図8に係る第3の変形例の更なる変形例とみなすことができる。第4の変形例によれば、
図8に係るネットワーク回路100の出力領域B2は、正デカップリングダイオードEDpと負デカップリングダイオードEDnによって拡張されている。正デカップリングダイオードEDpは、正経路pZの出力OUTへの正出力コイルLApの下流に設けられる。負デカップリングダイオードEDnは、負経路nZの出力OUTへの負の出力コイルLAnの下流に設けられる。
【0089】
図10及び
図11は、より大きな電力範囲で使用するために昇圧又は降圧されたDC出力電圧UAを提供するための、第1の実施形態例に係るネットワーク回路100のマルチチャネル構造(
図10)と、第2の実施形態例に係るネットワーク回路100のマルチチャネル構造(
図11)とを示している。
【0090】
図示のように、結合回路KSと出力コンデンサCAの間のネットワーク回路100の構造は、複数のチャネル又は複数の並列接続で接続されている。
【0091】
図10及び
図11に示すネットワーク回路100のマルチチャネル構造は、同期して動作させることも、周知のインターリーブ原理に従って動作させることもできる。インターリーブ原理では、個々の構造は互いにクロックをオフセットする。例えば、2つの構造又は2チャネル設計では、クロッキングは通常、周期期間の半分だけオフセットされる。例えば、n個の構造では、クロッキングは1周期期間内でnシフトだけオフセットされる。クロッキング又は制御は、制御ユニットSEを介して行われる。
【0092】
3つのスターコンデンサCYL1,CYL2,CYL3で実現されるスター点SPは、複数の構造の全てのコンデンサCSの共通基準点として機能する。4線式3相システムに存在する中性導体も基準点として使用できる。あるいは、各構造は、コンデンサを介して、コンデンサCSに対する独立した中間点M又はスター点SPを提供することができ、つまり、3つの別々のスターコンデンサが、蓄積チョークLL1,LL2,LL3の上流の各構造に対して提供される。
【0093】
中間点MのコンデンサCSは、制御ユニットSEによる第1のトランジスタT1と第2のトランジスタT2のうちの少なくとも1つの制御入力部ANの特別なタイプの制御によって特に充電される。コンデンサCSの充電は、事前充電と、充電と、再充電と、放電とのうちの少なくとも1つに対応する。コンデンサCSの充電のタイプは、ネットワーク検出部NE及び出力検出部AEによって検出されたネットワーク変数に応じて異なる。
【0094】
コンデンサCSのコンデンサ電圧uCSは、コイル電圧uLL1,uLL2,uLL3を変調して、電源ネットワークVNの相L1,L2,L3から正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3が抽出されるようにする。言い換えると、ネットワーク変数に合わせて特別に調整されたコンデンサCSのコンデンサ電圧uCSは、PFC規格に準拠するために、電源ネットワークVNの相L1,L2,L3から正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3が抽出されるように、蓄積チョークLL1,LL2,LL3のコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3の偏差を動的に補償するために使用される。コンデンサ電圧uCSのレベルは、制御ユニットSEによる第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の制御に依存し、その制御は、ネットワーク検出部NE及び出力検出部AEによって検出されたネットワーク変数に依存するので、補償は動的である。
【0095】
したがって、コンデンサ電圧uCSのレベルは、以下に説明するように、パルスデューティ係数又はデューティサイクルTVに依存する。変調により、相電流iNL1,iNL2,iNL3は本質的に正弦波電流になり、又は本質的に正弦波推移を持ち、全ての電力範囲でPFC標準に対応する。変調は、パルス幅変調、パルス周波数変調、又はその他の既知の変調方法に対応する。正弦波電流は、ネットワーク回路100の入力部で電源ネットワークVNから抽出される。
【0096】
特殊な制御タイプに応じてコンデンサCSを充電することにより、コンデンサCSは、蓄積チョークLL1,LL2,LL3間の電圧差を生成するための調整可能な電圧源として機能する。蓄積チョークLL1,LL2,LL3間の電圧差は、
図12~
図26Cに示すように、対応する期間において、コンデンサCSの充電によって影響を受ける可能性があり、電源ネットワークVNによって物理的に提供されるよりも大きなコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3が蓄積チョークLL1,LL2,LL3に印加される。その結果、全ての相L1,L2,L3において、本質的に正弦波の電流が電源ネットワークVNから抽出され、対応する電力クラスにおいてPFC規格の制限値に準拠することができる。
【0097】
この目的のため、第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2は、検出されたネットワーク変数に応じた制御信号ST1,ST2を制御ユニットSEからそれぞれ受信し、これによって第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2がクロッキングされる。制御ユニットSEによるトランジスタT1,T2の制御に起因するクロッキングにより、第1のトランジスタT1のスイッチオン期間TE、第2のトランジスタT2のスイッチオン期間TE、両方のトランジスタT1,T2が同時にスイッチオンまたは導通される短絡範囲を画定する短絡期間TKなどの、異なる時間間隔が決定される。第1のトランジスタT1又は第2のトランジスタT2がスイッチオン又は導通されていない残りの時間は、スイッチオフ期間TAとして画定される。スイッチオン期間TEとスイッチオフ期間TAの合計は、周期期間TSを形成する。時間間隔の順序により、正制御と負制御が区別される。この特別なタイミングについては、
図12及び
図13を参照して以下で詳しく説明する。制御ユニットSEは、時間間隔の長さによって変調を調整する。同時に、時間間隔の長さと短絡期間TKを使用して、DC出力電圧UAのレベルを制御する。コンデンサCSは時間間隔中に充電される。充電は、スター点SPに関連して行われる。
【0098】
一例では、時間間隔の1つ(スイッチオン期間TE、スイッチオフ期間TA)は、時間間隔のもう1つよりも短くすることができる。これにより、ネットワーク回路100を、きれいに調整されたDC出力電圧UA用又はPFC準拠の正弦波電流抽出用に設定することができる。これにより、高調波を低減することでネットワーク電流iNL1,iNL2,iNL3がPFC制限値に十分に準拠する第1のクロック周期TS1を設定したり、高調波を低減したりすることができる。DC出力電圧UAは、その後の第2のクロック周期TS2で安定に保つことができる。更に限定されない例では、第3のクロック周期TS3を追加して更なる改善を達成することもできる。更に、ネットワーク回路100がきれいに調整されたDC出力電圧UA用又はPFC準拠の正弦波電流抽出用のみに設定されるように、全てのクロック周期を設定することができる。
【0099】
図12は、時間tにわたる第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の正制御に基づく、第1のトランジスタT1に対する第1の制御信号ST1の推移及び第2のトランジスタT2に対する第2の制御信号ST2の推移を示している。
【0100】
正制御では、第1及び第2のトランジスタT1,T2の制御入力部ANは、第1のトランジスタT1が第1の時点t1と第3の時点t3の間のスイッチオン期間TEにおいて導通し、その後、第2のトランジスタT2が第2の時点t2と第4の時点t4の間のスイッチオン期間TEにおいて導通するように、制御ユニットSEによって制御される。第2の時点t2と第3の時点t3との間の短絡期間TKにおいて、第1及び第2のトランジスタT1,T2は同時に導通する。第1の制御信号ST1がゼロの間、第1のトランジスタT1は非導通である。第1のトランジスタT1は、スイッチオン期間TEとスイッチオフ期間TAの合計からなる現在の周期期間TSの第3の時点t3から次の周期期間の第1の時点t1までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第1のトランジスタT1は制御ユニットSEによって制御されない。第2の制御信号ST2がゼロの間、第2のトランジスタT2は非導通である。第2のトランジスタT2は、現在の周期期間TSの第4の時点t4から次の周期期間の第2の時点t2までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第2のトランジスタT2は制御ユニットSEによって制御されない。
【0101】
周期期間TSの逆数はクロック周波数fS、つまりfS=1/TSとなり、制御ユニットSEによる制御を通じて第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2がクロッキングされます。クロッキングによって発生する高調波をフィルタリングするのに必要な労力を最小限にするために、ネットワーク周波数fNに比べて十分に高いクロック周波数fSでクロッキングを実行する必要があることに留意すべきである。
【0102】
図13は、時間tにわたる第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の負制御に基づく、第1のトランジスタT1に対する第1の制御信号ST1の推移及び第2のトランジスタT2に対する第2の制御信号ST2の推移を示している。
【0103】
負制御では、スイッチオン期間TE、スイッチオフ期間TA、短絡期間TK、及びスイッチング周期TSは、それぞれが異なる時間に開始及び終了するという違いがあるが、正制御のそれらに対応する。つまり、スイッチオン期間TE、スイッチオフ期間TA、短絡期間TK、及びスイッチング周期TSは、正制御のものと同じである。
【0104】
負制御では、第1及び第2のトランジスタT1,T2の制御入力部ANは、第2のトランジスタT2が第1の時点t1と第3の時点t3の間のスイッチオン期間TEにおいて導通し、その後、第1のトランジスタT1が第2の時点t2と第4の時点t4の間のスイッチオン期間TEにおいて導通するように、制御ユニットSEによって制御される。第2の時点t2と第3の時点t3の間の短絡期間TKにおいて、第1及び第2のトランジスタT1,T2は同時に導通する。第1のトランジスタT1は、現在の周期期間TSの第4の時点t4から次の周期期間の第2の時点t2までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第1のトランジスタT1は制御ユニットSEによって制御されない。第2のトランジスタT2は、現在の周期期間TSの第3の時点t3から次の周期期間の第1の時点t1までのスイッチオフ期間TAにおいて非導通であり、その間、第2のトランジスタT2は制御ユニットSEによって制御されない。
【0105】
負制御では、クロック周波数fSがネットワーク周波数fNに比べて十分に高いことを保証することも重要である。
【0106】
DC出力電圧UAは、第1及び第2のトランジスタT1,T2のスイッチオン期間TEからスイッチオフ期間TAまでのデューティサイクルTV又は周期期間TSを介して、また短絡期間TKと組み合わせて、任意に制御することができる。
【0107】
ネットワーク回路100と特別な正制御及び負制御により、AC電源電圧uNから、標準の3相整流よりも低い(降圧)又は高い(昇圧)DC出力電圧UAを生成することができる。これは、昇圧時にはDC出力電圧UAがAC電源電圧uNより高くなり、降圧時にはDC出力電圧UAがAC電源電圧uNより低くなることを意味する。DC出力電圧UAのレベルはクロッキングに依存し、昇圧と降圧の変更は連続的に可能である。クロッキングによってDC出力電圧UAの昇圧と降圧が引き起こされるだけでなく、正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3が結合によって電源ネットワークVNから同時に抽出される。ネットワーク回路100を使用すると、降圧(UA<uN)と昇圧(UA>uN)間の相互のスムーズな遷移が可能になり、PFC規格に準拠しながら、DC出力電圧UAを0ボルトから1000ボルトなどの広い電圧範囲で適切に調整することができる。
【0108】
ネットワーク回路100における昇圧及び降圧は、スイッチオン期間TE又は短絡期間TKの長さによって決まる。
図12及び
図13に示す制御法則におけるネットワーク回路100内の物理的関係により、短絡期間TKが短いとDC出力電圧UAが低くなり、降圧が行われる。更に、短絡期間TKが短いと、相電流iNL1,iNL2,iNL3の正弦波形状が改善され、PFC規格に準拠する。相電流iNL1,iNL2,iNL3の最小の高調波の正弦波の推移は、短絡期間TKがスイッチオン期間TEの0.1未満、つまりTK<0.1×TEの場合にほぼ達成される。同じスイッチオン期間TEで短絡期間TKがわずかに変更すると、DC出力電圧UAに大きな変化が生じるが、同じ割合の短絡期間TKでスイッチオン期間TEを変更することで、DC出力電圧UAを微調整又は調整することができる。
【0109】
昇圧には、より長い短絡期間TKが必要である。短絡期間TKが長くなると、相電流iNL1,iNL2,iNL3は最適な正弦波形状から外れた正弦波形状になる。相電流iNL1,iNL2,iNL3の最小の高調波の正弦波の推移は、短絡期間TKがスイッチオン期間TEの0.2~0.3の場合、つまりTK=0.2・・・0.3×TEの場合にほぼ達成される。短絡期間TKが長いほど、DC出力電圧UAは高くなる。昇圧の場合も、同じスイッチオン期間TEで短絡期間TKがわずかに変化すると、DC出力電圧UAに大きな変化が生じる。更に、同じ割合の短絡期間TKでスイッチオン期間TEを変更することで、DC出力電圧UAを微調整又は調整することができる。
【0110】
出力部OUTに接続された負荷も、スイッチオン期間TE及び短絡期間TKに影響を与えることに留意すべきである。したがって、スイッチオン期間TE及び短絡期間TKは、通常、所望のDC出力電圧UA、AC電源電圧uN、及びネットワーク回路100の関連する寸法に依存する。
【0111】
図14~
図17は、
図3の第1の実施形態例に係る定常状態のネットワーク回路100の第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2を制御するための、
図12及び
図13に係る制御法則に基づく様々な特性曲線を示している。より分かりやすくするために、それぞれの時間間隔の時点を判断できるように、
図12及び
図13の制御信号ST1,ST2の推移も示している。第1の制御信号ST1及び第2の制御信号ST2の推移については、簡潔にするために以下で繰り返すことはしない。
【0112】
更に、出力電流IAの推移、出力コンデンサ電流iCAの推移、正ダイオードDp及び負ダイオードDnのうちの少なくとも1つを含むダイオードDのダイオード電流iDの推移、出力コイル電流iLAの推移、出力コイル電圧uLAの推移、ストリングコンデンサ電流iCの推移、ストリングコンデンサ電圧uCの推移、コイル電流iLL1の推移、コイル電流iLL2とiLL3の合計に対応するコイル電流iLL23の推移、コイル電圧uLL1の推移、重なり合うコイル電圧uLL2とuLL3の推移、コンデンサ電圧uCSの推移、及びコンデンサ電流iCSの推移を、時間tにわたって、
図14~
図17に示している。出力電流IAの推移は、期間TS全体にわたってゼロアンペアより大きい一定値に保たれる。
【0113】
図14及び
図15は、第1の実施形態例に係るネットワーク回路100において、昇圧のための正制御及び負制御に起因する様々な特性曲線を示している。
【0114】
図14は、時間tにわたって昇圧する際のネットワーク回路100の第1及び第2のトランジスタT1,T2のクロッキングの関数として、正制御での基本的な特性曲線を示している。例示的な仮定は、相L2及びL3でのストリング電圧u2及びu3は、量的に等しくて0ボルトより大きいが、相L1でのストリング電圧u1は0ボルトより小さいというものである。したがって、蓄積チョークLL2及びLL3は、整流器GRの正経路pZを介して第1のトランジスタT1に接続される。整流ダイオードD3及びD5は導通している。一方、蓄積チョークLL1は、整流器GRの負経路nZを介して第2のトランジスタT2に接続される。整流ダイオードD2は導通している。これらの仮定は例示であり、2相のAC電源電圧がゼロより大きい、以下で説明する特性曲線に適用される。選択された仮定は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、他の方法で行うことも可能である。
【0115】
更に
図22Aを参照すると、第1の時点t1での周期期間TSのステップS0Aの開始時に、コンデンサCSは負に充電され(uCS<0)、ストリングコンデンサCは正に充電される(uC>0)。第1の時点t1では、ステップS1Aにおいて、第1のトランジスタT1が導通又はオンになる。その結果、各相のAC電源電圧uNとコンデンサ電圧uCSから生じる電圧差が、蓄積チョークLL2及びLL3にコイル電圧uLL2及びuLL3として現れる。コイル電圧uLL2及びuLL3の値は、ゼロ電位に対する相L2及びL3のAC電源電圧uNの値よりも、相応的に量的に大きい。その結果、ステップS2Aにおいて、蓄積チョークLL2及びLL3に電流が蓄積され始め、コイル電流iLL2及びiLL3が正に増加する。正に増加したコンデンサ電流iCSは、コンデンサCSをコンデンサ電圧uCS=0Vまで放電する。蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電iLL2及びiLL3の合計としてのコイル電流iLL23は、第2の時点t2までコンデンサ電流iCSに対応して正に増加する。
【0116】
第2の時点t2では、ステップS3Aにおいて第2のトランジスタT2が導通し、第1のトランジスタT1も導通する。第2のトランジスタT2は、設定された時間が経過したとき、又はコンデンサ電圧uCSがゼロボルトに等しいときに、制御ユニットSEによって導通するようにトリガされる。その結果、整流器GRは、
図12及び
図13に示す短絡範囲に対応する短絡期間TKの間、短絡される。ステップS4Aにおいて、この第2の時点t2から、コンデンサCSは放電状態から正に充電され、コンデンサ電流iCSは第2の時点t2から量的に減少する(ゼロに向かう)。一方、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3は、短絡期間TKの間、正に蓄積され続けるか、又は正に増加し続ける。
【0117】
第2トランジスタT2が制御されると、相L1のAC電源電圧uNとコンデンサ電圧uCSの電流値との電圧差がコイル電圧uLL1として蓄積チョークLL1に印加される。コイル電圧uLL1の値は、ゼロ電位に対する相L1のAC電源電圧uNの値よりも、相応的に量的に大きい(負である)。したがって、この時点から蓄積チョークLL1においてコイル電流iLL1の負の電流蓄積が始まる。
【0118】
トランジスタT1,T2による短絡により、出力コイルLAに負の出力コイル電圧uLAが印加される。したがって、短絡期間TK中に出力コイルLAに負の出力コイル電流iLAが蓄積される。出力コイル電流iLAの量的な負の増加により、ストリングコンデンサCへのストリングコンデンサ電流iCの正の流れが発生し、これにより、ストリングコンデンサCは第2の時点t2から放電を開始する。したがって、ストリングコンデンサCのストリングコンデンサ電圧uCは量的に減少する。
【0119】
この期間中、ネットワーク回路100へのエネルギー入力の主要部分が発生する。第2のトランジスタT2は、コンデンサ電圧uCSがゼロボルトになったときに制御されるか、又は代替的に制御される。
【0120】
第3の時点t3では、ステップS5Aにおいて、時点t1で導通している第1のトランジスタT1は、スイッチオン期間TEの後に、制御ユニットSEによって再びオフに切り替えられるか、又は非導通にされる。第2のトランジスタT2は導通されたままである。第3の時点t3から、第1のトランジスタT1のスイッチオン期間TE中に正のコイル電流iLL2,iLL3が蓄積された蓄積チョークLL2及びLL3は、これらのコイル電流iLL2,iLL3を、入力側では整流ダイオードD3,D5、ストリングコンデンサCを介して制御し、出力側では正ダイオードDp及び負ダイオードDnのうちの少なくとも1つを含むダイオードDと負荷経路又は出力部OUTを介して制御する。したがって、ステップS6Aにおいて、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3が再び減少する。この時点でも第2のトランジスタT2は導通しているので、負荷経路を経たiLL2,iLL3のコイル電流の合計は、コイル電流iLL1が蓄積され続ける蓄積チョークLL1とコンデンサCSの間で、第2のトランジスタT2下のノードで一時的に分割される。コンデンサ電流iCSは、時点t3から更に大幅に減少する。
【0121】
第1のトランジスタT1がオフになると、出力コイルLAのそれまで負であった出力コイル電圧uLA(uLA<0V)が正(uLA>0V)に急変動する。したがって、出力コイルLAに蓄積された負の出力コイル電流iLAは、再びゼロアンペアの方向に減少し始める。
【0122】
ストリングコンデンサCのストリングコンデンサ電流iCは、出力コイルLAの出力コイル電流iLAの減少により、ゼロアンペアより大きい値(iC>0)からゼロアンペアより小さい値(iC<0)に急激に変化し、第3の時点t3から時点t3Lまで量的に減少する。したがって、ストリングコンデンサ電圧uCは、第3の時点t3から量的に増加する。
【0123】
コンデンサ電流iCSがゼロアンペア、つまりiCS=0Aになる時点t3’で、最大の正コンデンサ電圧uCSに到達する。この時点t3’から、ステップS7Aにおいて、コンデンサCSを流れるコンデンサ電流iCSの負の流れが確立される。時点t3’から、コンデンサCSは第5の時点t5まで放電され、再び負に充電される。時点t3’から、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2,iLL3の合計の蓄積チョークLL1への流れに負のコンデンサ電流iCSが追加される。
【0124】
出力コンデンサCAは、第1のトランジスタT1が時点t3でオフになった後、蓄積チョークLL1,LL2,LL3に蓄積されたエネルギーが完全に消費される時点t5Lまで、エネルギーで充電される。残りの期間TSの間、出力コンデンサCAに蓄積されたエネルギーは、出力部OUTに接続された負荷に転送される。
【0125】
時点t3LでのステップS8Aにより、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3は完全に消費される。コイル電流iLL2及びiLL3は、時点t3Lでゼロアンペアに対応する。ネットワーク回路100の出力領域B2における出力コイル電流iLAは、時点t3Lから出力コイルLAによって完全に制御され、負の出力コイル電流iLAは量的に減少し続ける。その結果、ネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に電流は流れず、したがって、ストリングコンデンサCにはそれ以上電流が流れない。ストリングコンデンサ電圧uCは、時点t4まで一定値のままである。合計の負のコンデンサ電流iCSは、時点t3Lから蓄積チョークLL1を介して流れ続け、その結果、コイル電流iLL1は量的に負に増加し続ける。
【0126】
第4の時点t4では、依然として導通している第2のトランジスタT2は、スイッチオン期間TEの後にスイッチングユニットSEによって制御され、第2のトランジスタT2は非導通になる。第4の時点t4から、蓄積チョークLL1は、ストリングコンデンサC、正ダイオードDp及び負ダイオードDnのうちの少なくとも1つを含むダイオードD、及びネットワーク回路100の出力部に接続された負荷を介して、コイル電流iLL1を再び制御し、コイル電流iLL1は、減衰を続ける出力コイルLAの出力コイル電流iLAに加算される。第4の時点t4から、コンデンサ電流iCSは、第1のトランジスタT1のボディダイオード(又はこれに並列に接続されたフリーホイールダイオード)の形態で唯一残された電流経路を介して流れ、第4の時点t4から再び量的に減少する。その結果、コンデンサCSのコンデンサ電圧uCSは、第1の時点t1の前と同様に、元の負の値に充電される。同時に、2つの蓄積チョークLL2及びLL3において正のコイル電流iLL2及びiLL3が再び蓄積され始める。
【0127】
出力部OUTを介して蓄積チョークLL1によって制御されるコイル電流iLL1により、ステップS10Aにおいてネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に再び電流が流れ、その結果、ストリングコンデンサCに電流が流れる。ストリングコンデンサ電流iCは、第4の時点t4で0アンペアの値から負の値(iC<0A)に急変動し、第4の時点t4から量的に減少する。したがって、コンデンサ電圧uCは、第4の時点t4から量的に増加する。
【0128】
第5の時点t5では、ステップS11Aにおいて、蓄積チョークLL1のコイル電流iLL1の値は、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3の値の合計に相当する。これにより、コンデンサ電流iCSはゼロアンペア、つまりiCS=0Aになる。その結果、第5の時点t5から、第1のトランジスタT1のフリーホイールダイオードに電流が流れなくなる。この第5の時点t5から、ステップS12Aにおいて、コンデンサCSはコンデンサ電圧uCSの負の初期値まで完全に充電され、次の周期期間TSで再び利用できるようになる。蓄積チョークLL1,LL2,LL3は出力部OUTを介して電流を制御し続け、電流は時点t5’まで出力コイルLAの出力コイル電流iLAに追加される。残りのコイル電流iLL1,iLL2,iLL3は、時点t5Lまで時間とともに直線的に減少する。
【0129】
時点t5Lでは、出力コイルLAの出力コイル電流iLAが完全に消費され、蓄積チョークLL1,LL2,LL3のコイル電流iLL1,iLL2,iLL3も消費される。その結果、ネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に電流が流れなくなるため、ストリングコンデンサCにストリングコンデンサ電流iCが流れなくなる。時点t5Lから、ストリングコンデンサ電圧uCは、次の期間TSで再び使用できる正の値に完全に充電される。
【0130】
時点t5Lでのコイル電流iLL1=iLL2=iLL3=0の値は、不連続導通モードでは周期期間TSの終了前、又は境界導通モードでは周期期間TSの終了時に到達できる。時間t5’での出力コイル電流iLA=0の値も、周期期間TSの終了前、又は周期期間TSの終了時に到達できる。これは、境界導通モード又は不連続導通モードに関して、ネットワーク回路100の動作には影響しない。
【0131】
境界導通モードでは、コイル電流iLL1,iLL2,iLL3のいずれかが、周期TSの終了時にちょうどゼロアンペアになる。不連続導通モードでは、電流の減少と新しい周期期間TSの開始との間に一時停止が挿入される(電流が「中断」するか、不連続になる)。不連続導通モード及び境界導通モードは、昇圧コンバータを使用する場合の標準である。
【0132】
図15は、時間tにわたる昇圧中のネットワーク回路100の第1及び第2トランジスタT1,T2のクロッキングの関数として、負制御の基本的な特性曲線を示している。例示的な仮定は、相L1のストリング電圧u1がゼロボルトより大きく、相L2及びL3のストリング電圧u2及びu3が量的に等しくてゼロボルトより小さいというものである。したがって、蓄積チョークLL1は、整流器GRの正経路pZを介して第1トランジスタT1に接続される。整流ダイオードD1は導通している。一方、蓄積チョークLL2及びLL3は、整流器GRの負経路nZを介して第2のトランジスタT2に接続される。整流ダイオードD4及びD6は導通している。これらの仮定は例示であり、2相のネットワーク電圧がゼロより小さい、以下で説明する特性曲線に適用される。選択された仮定は、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、他の方法で行うことも可能である。
【0133】
更に
図22Bを参照すると、ステップS0Bの開始時に、コンデンサCSは正に充電され(uCS>0)、ストリングコンデンサCも正に充電される(uC>0)。第1の時点t1では、ステップS1Bにおいて、第2のトランジスタT2が導通又はオンになる。その結果、各相のAC電源電圧uNとコンデンサ電圧uCSから生じる電圧差が、コイル電圧uLL2及びuLL3として蓄積チョークLL2及びLL3に印加される。コイル電圧uLL2及びuLL3の値は、ゼロ電位に対する相L2及びL3のAC電源電圧uNの値よりも、相応的に量的に大きい。その結果、ステップS2Bにおいて、蓄積チョークLL2及びLL3に電流が蓄積され始め、コイル電流iLL2及びiLL3が負に増加する。コンデンサCSは、負に増加するコンデンサ電流iCSによってコンデンサ電圧uCS=0Vまで放電される。蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3は、第2の時点t2までコンデンサ電流iCSに対応して負に増加する。
【0134】
第2の時点t2では、ステップS3Bにおいて、第1のトランジスタT1が導通し、第2のトランジスタT2も導通する。その結果、整流器GRは、
図12及び
図13に示す短絡範囲に対応する短絡期間TKの間、短絡される。ステップS4Bにおいて、この第2の時点t2から、コンデンサCSは放電状態から負に充電され、コンデンサ電流iCSは第2の時点t2から(ゼロに向かって)減少する。
【0135】
第1のトランジスタT1を制御することにより、相L1のAC電源電圧uNとコンデンサ電圧uCSの電流値とから生じる電圧差がコイル電圧uLL1として蓄積チョークLL1に印加される。
【0136】
このため、コイル電圧uLL1の値は、ゼロ電位に対する相L1のAC電源電圧uNの値よりも量的に大きく(正に)なる。したがって、この時点かr、蓄積チョークLL1でコイル電流iLL1の正の電流蓄積が始まる。
【0137】
トランジスタT1,T2を介した短絡により、出力コイルLAに負の出力コイル電圧uLAが印加される。したがって、短絡期間TKの間、出力コイルLAに負の出力コイル電流iLAが蓄積される。出力コイル電流iLAの大きさが負に増加するため、ストリングコンデンサCへのストリングコンデンサ電流iCの正の流れが発生し、これにより、ストリングコンデンサCは第2の時点t2から放電を開始する。したがって、ストリングコンデンサCのストリングコンデンサ電圧uCは量的に減少する。
【0138】
この期間中、ネットワーク回路100へのエネルギー入力の主要部分が行われる。第1のトランジスタT1の制御は、任意に制御することができ、あるいはコンデンサ電圧uCSがゼロボルトになったときに行うこともできる。
【0139】
第3の時点t3では、ステップS5Bにおいて、時点t1で導通している第2のトランジスタT2は、スイッチオン期間TEの後に制御ユニットSEによって再びオフに切り替えられる。第1のトランジスタT1は導通したままである。第3の時点t3から、第2のトランジスタT2のスイッチオン期間TE中に負のコイル電流iLL2及びiLL3が蓄積された蓄積チョークLL2及びLL3は、これらのコイル電流iLL2及びiLL3を、整流ダイオードD4,D6とストリングコンデンサCを介して入力側で制御し、正のダイオードDp及び負のダイオードDnのうちの少なくとも1つを含むダイオードDと負荷経路を介して出力側で制御する。したがって、ステップS6Bにおいて、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3が再び減少する。この時点では第1のトランジスタT1は依然として導通しているため、コンデンサCSを通るコンデンサ電流iCSの負の流れにより、第1トランジスタT1の上流にあるノードのiLL2及びiLL3からのコイル電流の合計に正の電流が一時的に追加される。コンデンサ電流iCSは、時点t3から更に急激に増加する。
【0140】
第2のトランジスタT2がオフになると、出力コイルLAのそれまで負であった出力コイル電圧uLA(uLA<0V)が正(uLA>0V)に急変動する。それに応じて、出力コイルLAに蓄積された負の出力コイル電流iLAは、再びゼロアンペアの方向に減少し始める。
【0141】
ストリングコンデンサCのストリングコンデンサ電流iCは、出力コイルLAの出力コイル電流iLAの減少により、ゼロアンペアより大きい値(iC>0)からゼロアンペアより小さい値(iC<0)に急激に変化し、第3の時点t3から時点t3Lまで減少する。したがって、ストリングコンデンサ電圧uCは、第3の時点t3から量的に増加する。
【0142】
最大の正のコンデンサ電圧uCSは、コンデンサ電流iCSがゼロアンペア、つまりiCS=0Aになる時点t3’で到達する。この時点t3’から、ステップS7Bにおいて、コンデンサCSを介して正のコンデンサ電流iCSが確立される。コンデンサCSは再び放電される。コンデンサCSの正のコンデンサ電流iCSは、時点t3’から、蓄積チョークLL1のコイル電流iLL1から減算される。残りの電流は、コイルLL2及びLL3に流れる。
【0143】
時点t3LのステップS8Bにより、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3が完全に減少する。コイル電流iLL23は、時点t3Lでゼロアンペアに相当する。ネットワーク回路100の出力領域B2の出力コイル電流iLAは、時点t3Lから出力コイルLAによって完全に制御され、負の出力コイル電流iLAは、量的に減少し続ける。その結果、ネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に電流は流れず、したがって、ストリングコンデンサCにはそれ以上電流が流れない。ストリングコンデンサ電圧uCは、時点t4まで一定値のままである。合計の正のコンデンサ電流iCSは、時点t3Lから蓄積チョークLL1を介して流れ続け、その結果、コイル電流iLL1は、量的に正に増加し続ける。
【0144】
第4の時点t4では、ステップS9Bにおいて、依然として導通している第1のトランジスタT1がスイッチングユニットSEによって制御され、スイッチオン期間TEの後に第1のトランジスタT1が非導通になる。第4の時点t4から、蓄積チョークLL1は、ストリングコンデンサC、正ダイオードDp及び負ダイオードDnのうちの少なくとも一方を含むダイオードD、及びネットワーク回路100の出力部に接続された負荷を介して、コイル電流iLL1を再び制御し、コイル電流iLL1は、減衰を続ける出力コイルLAの出力コイル電流iLAに加算される。第4の時点t4から、コンデンサ電流iCSは、最初にスイッチオフされる第2のトランジスタT2のボディダイオード(又はこれに並列に接続されたフリーホイールダイオード)の形態で唯一残された電流経路を介して流れ、その値は第4の時点t4から再び量的に減少する。その結果、コンデンサCSのコンデンサ電圧uCSは、第1の時間t1の前と同様に、元の正の値に充電される。同時に、2つの蓄積チョークLL2及びLL3において負のコイル電流iLL2及びiLL3が再び蓄積され始める。
【0145】
出力部OUTを介して蓄積チョークLL1によって制御されるコイル電流iLL1により、ステップS10Bにおいて、ネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に再び電流が流れ、ストリングコンデンサCに電流が流れる。ストリングコンデンサ電流iCは、第4の時点t4で0アンペアの値から負の値(iC<0A)に急変動し、第4の時点t4から量的に減少する。したがって、コンデンサ電圧uCは、第4の時点t4から量的に増加する。
【0146】
第5の時点t5では、ステップS11Bにおいて、蓄積チョークLL1のコイル電流iLL1の量は、蓄積チョークLL2及びLL3のコイル電流iLL2及びiLL3の量の合計に相当する。これにより、コンデンサ電流iCSはゼロアンペア、つまりiCS=0Aになる。その結果、第5の時点t5から、第2のトランジスタT2のフリーホイールダイオードに電流が流れなくなる。この第5の時点t5から、ステップS12Bにおいて、コンデンサCSはコンデンサ電圧uCSの正の初期値まで完全に充電され、次の周期期間TSに再び利用できるようになる。蓄積チョークLL1,LL2,LL3は出力部OUTを介して電流を制御し続け、電流は時点t5’まで出力コイルLAの出力コイル電流iLAに追加される。残りのコイル電流iLL1,iLL2,iLL3は、時点t5Lまで時間とともに直線的に減少する。
【0147】
時点t5Lでは、出力コイルLAの出力コイル電流iLAが完全に消費され、蓄積チョークLL1,LL2,LL3のコイル電流iLL1,iLL2,iLL3も消費される。その結果、ネットワーク回路100の入力部INと出力部OUTの間に電流が流れなくなるため、ストリングコンデンサCにストリングコンデンサ電流iCが流れなくなる。ストリングコンデンサ電圧uCは時点t5Lから正の値に完全に充電され、次の期間TSで再び利用できるようになる。
【0148】
時点t5Lでのコイル電流iLL1=iLL2=iLL3=0の値は、不連続導通モードでは周期期間TSの終了前、又は境界導通モードでは周期期間TSの終了時に到達できる。時点t5’での出力コイル電流iLA=0の値も、周期期間TSの終了前、又は周期期間TSの終了時に到達できる。これは、境界導通モード又は不連続導通モードに関して、ネットワーク回路100の動作には影響しない。
【0149】
図16及び
図17は、第1の実施形態例に係るネットワーク回路100において、降圧のための正制御及び負制御によって得られる異なる特性曲線を示している。
【0150】
図16及び
図17の降圧特性曲線の推移は、
図14及び
図15の昇圧特性曲線の推移とは、短絡期間TKとスイッチオン期間TEの比率が異なるため、個々の時間t1,t2,t3,t3’,t3L,t4,t5,t5’,t5L間の個々の時間間隔の長さが異なるという点のみが異なる。
【0151】
第1の実施形態例に係るネットワーク回路100の第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の正制御及び負制御時の短絡期間TKとスイッチオン期間TEの比率が、昇圧時(TK=0.2・・・0.3×TE)及び降圧時(TK<0.1×TE)で異なるため、ネットワーク回路100では、追加又は下流の回路なしで、AC電源電圧uNからより大きい又はより小さいDC出力電圧UAを生成することができる。
【0152】
図14~
図17に示す第1の実施形態例に係るネットワーク回路100の昇圧及び降圧のための正制御及び負制御は、第2の実施形態例に係るネットワーク回路100の昇圧及び降圧のための正制御及び負制御にも同様に使用することができる。
【0153】
図18~
図21は、
図5の第2の実施形態例に係る定常状態のネットワーク回路100の第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2を制御するための、
図12及び
図13に係る制御法則に基づく異なる特性曲線を示している。より分かりやすくするために、それぞれの時間間隔の時点を判断できるように、
図12及び
図13の制御信号ST1,ST2の推移も示している。
【0154】
更に、出力電流IAの推移、出力コンデンサ電流iCAの推移、正ダイオードDp及び負ダイオードDnのうちの少なくとも1つを含むダイオードDのダイオード電流iDの推移、出力コイル電流iLAの推移、出力コイル電圧uLAの推移、ストリングコンデンサ電流iCの推移、ストリングコンデンサ電圧uCの推移、コイル電流iLL1の推移、コイル電流iLL2,iLL3の推移、コイル電圧uLL1の推移、コイル電圧uLL2,uLL3の推移、コンデンサ電圧uCSの推移、及びコンデンサ電流iCSの推移を、時間tにわたって、
図18~
図21に示している。
【0155】
図18及び
図19は、昇圧のための正制御及び負制御により、第2の実施形態例に係るネットワーク回路100で得られる異なる特性曲線を示している。出力電流IA及び出力コンデンサ電流iCAを除く全ての特性曲線の推移は、
図14及び
図15に示す第1の実施形態例に係るネットワーク回路100の特性曲線の推移と同じであり、簡潔にするために再度繰り返すことはしない
【0156】
出力電流IAは、期間TS全体にわたってゼロアンペアより小さい一定値に保たれる。
【0157】
図20及び
図21は、降圧のための正制御及び負制御により、第2の実施形態例に係るネットワーク回路100で得られる異なる特性曲線を示している。出力電流IA及び出力コンデンサ電流iCAを除く全ての特性曲線の推移は、
図16及び
図17に示す第1の実施形態例に係るネットワーク回路100の特性曲線の推移と同じであり、簡潔にするために再度繰り返すことはしない。
【0158】
図22A及び
図22Bは、ネットワーク回路100の第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2の正制御の方法(
図22A)及び負制御の方法(
図22B)を示している。これらの方法は上述の制御又はクロッキングに基づいており、それに応じて、第1の実施形態例に係るネットワーク回路100(非反転)及び第1の実施形態例に係るネットワーク回路100(反転)の昇圧及び降圧にそれぞれ同様に適用される。
【0159】
図23は、ストリング電圧u1,u2,u3及び時間間隔A,Bを持つ3相システムとしての電源ネットワークVNを示している。ネットワーク回路100がPFC規格に準拠しながら必要に応じて昇圧機能及び降圧機能を実現できるように、コンデンサCSのコンデンサ電荷の極性及びコンデンサ電圧uCSを考慮する必要がある。
【0160】
3相システムのストリング電圧u1,u2,u3の進行を見ると、2つのストリング電圧がゼロより大きくて1つのストリング電圧がゼロより小さい正の時間間隔Aと、1つのストリング電圧がゼロより大きくて2つのストリング電圧がゼロより小さい負の時間間隔Bがある。ストリング電圧u1,u2,u3のうちの2つがゼロより大きい場合、この正の時間間隔Aでは正制御(
図12を参照)が使用される。ストリング電圧u1,u2,u3のうちの2つがゼロより小さい場合、この負の時間間隔Bでは負制御(
図13を参照)が使用される。時間の経過とともに、時間間隔A,Bによって画定され且つゼロラインの周りを動く、正弦波セグメントの近似三角形の電圧曲線SK(破線)が得られる。
【0161】
時間間隔A,B、つまり正制御又は負制御がアクティブな時間では、ストリング電圧u1,u2,u3は常に同じ状態、つまりゼロより大きい又はゼロより小さい状態になる。したがって、時間間隔A,Bについては、対称的な3相システムに基づいて、時間間隔A=時間間隔Bと定義できる。
【0162】
近似三角形の電圧曲線SKの各ゼロ点では、正制御から負制御へ、又は負制御から正制御へ変化する。近似三角形の電圧曲線SKが負の時間間隔B(つまり、値がゼロより小さい)から正の時間間隔A(つまり、値がゼロより大きい)に動くと、制御は負制御から正制御に変化する。正/負制御から負/正制御への遷移は、例えば、
図22に示すように、突然発生することがある。ただし、遷移が滑らかなこともある(図示せず)。
【0163】
時間間隔A,Bの持続時間は、ネットワーク周波数fNに依存する。ネットワーク周波数fN=50Hzのヨーロッパの電源ネットワークでは、3相システムで3.33ミリ秒毎にゼロポイントが発生する。これは、システムが3.33ミリ秒毎に正制御と負制御を切り替えることを意味する。ただし、ネットワーク回路100は、ヨーロッパの電源ネットワークに限定されない。実際に、ネットワーク回路100は、全ての国際ネットワーク電圧及び周波数で動作させることができる。
【0164】
コンデンサ電圧uCSを充電することにより、蓄積チョークLL1,LL2,LL3でのストリング電圧u1,u2,u3とコンデンサ電圧uCSの間の電圧差が、制御ユニットSEによる第1及び第2のスイッチングトランジスタT1,T2の制御に応じて、電源ネットワークVNから物理的に得られるよりも大きなコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3が蓄積チョークLL1,LL2,LL3に印加されるように影響される可能性がある。言い換えれば、相電流iNL1,iNL2,iNL3は、コンデンサCSに印加される調整可能な電圧によって影響を受けるコイル電圧uLL1,uLL2,uLL3によって変調される。これにより、
図25B及び
図27Bに示すように、対応する電力クラスのPFC規格の制限値を満たすために整流器GRの入力部に供給される正弦波ネットワーク電流iNL1,iNL2,iNL3が生成される。
【0165】
説明した全ての実施形態において、第1のトランジスタT1及び第2のトランジスタT2は、第1及び第2のトランジスタT1,T2のスイッチオン期間TE、短絡期間TK、及びオフ期間TAのうちの少なくとも1つが自由度として機能し、負荷に応じてDC出力電圧UAが所望の値に調整されるように制御される。その結果、制御によってDC出力電圧UAが低下又は上昇されるだけでなく、PFC規格の高調波電流の制限値にも準拠するので、ネットワーク回路の有効性及びエネルギー効率が向上し、部品数が削減されるため、コストが削減される。
【0166】
図24A、
図24B、及び
図24Cは、昇圧中の第1の実施形態例に係るネットワーク回路100のネットワーク変数の測定された推移を示している。
図24AはDC出力電圧UAの推移を示しており、
図24Bは正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3の推移を示しており、
図24Cはストリング電圧u1,u2,u3を含むAC電源電圧uNの推移を示している。正のDC出力電圧UAへの昇圧は、正弦波PFC準拠の電流抽出によって行われる。
【0167】
図25A、
図25B、及び
図25Cは、降圧中の第1の実施形態例に係るネットワーク回路100のネットワーク変数の測定された推移を示している。
図25AはDC出力電圧UAの推移を示しており、
図25Bは正弦波相電流iNL1,iNL2,iNL3の推移を示しており、
図25Cはストリング電圧u1,u2,u3を含むAC電源電圧uNの推移を示している。正のDC出力電圧UAへの降圧は、正弦波PFC準拠の電流抽出によって行われる。
【0168】
図26A~
図27Cは、
図24A~
図25Cのネットワーク変数の推移と同様に、昇圧及び降圧のための第2の実施形態例に係るネットワーク回路100の測定されたネットワーク変数を示している。
図26Aは、正弦波PFC準拠の電流抽出による負のDC出力電圧UAへの昇圧を示している。
図27Aは、正弦波PFC準拠の電流抽出による正のDC出力電圧UAへの降圧を示している。
【符号の説明】
【0169】
100 ネットワーク回路
A,B 時間間隔
AE 出力検出部
ON 制御入力部
C ストリングコンデンサ
CA 出力コンデンサ
CS コンデンサ
CYL1,CYL2,CYL3 スターコンデンサ
D ダイオード
D1-D6 整流ダイオード
Dn 負ダイオード
Dp 正ダイオード
e1,e2,e3 入力
EMI 電磁フィルター(電磁干渉防止フィルター)
fN ネットワーク周波数
GR 整流器
IA 出力電流
iC ストリングコンデンサ電流
iCS コンデンサ電流
iNL1,iNL2,iNL3 相電流
KS 結合回路
KS 結合回路
L1,L2,L3 相
LL1,LL2,LL3 蓄積チョーク
M 中間点
NE ネットワーク検出部
SE 制御ユニット
SK 電圧曲線
SP スター点
T1 第1のトランジスタ
T2 第2のトランジスタ
TE スイッチオン期間
TC 短絡期間
TS 周期期間
u1,u2,u3 ストリング電圧
UA DC出力電圧
uCS コンデンサ電圧
VN 電源ネットワーク
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
【
図1】AC電源電圧と中間回路電圧との間における公知の一定の物理的関係を示す
図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
【
図2】下流コンバータ回路を備えない公知のPFC昇圧コンバータトポロジを示す
図である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
【
図3】第1の実施形態例によるネットワーク回路を示す
図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
【
図4】
図3のネットワーク回路の整流器を示す
図である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
【
図5】第2の実施形態例に係るネットワーク回路を示す
図である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
【
図6】ネットワーク回路の出力領域の第1の変形例を示す
図である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
【
図7A-7B】ネットワーク回路の出力領域の第2の変形例を示す
図である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
【
図8】ネットワーク回路の出力領域の第3の変形例を示す
図である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
【
図9】ネットワーク回路の出力領域の第4の変形例を示す
図である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
【
図10-11】ネットワーク回路の多チャンネル構成を示す
図である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
【
図12】正制御での制御信号の流れを示す
図である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
【
図13】負制御での制御信号の流れを示す
図である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
【
図14】
図3のネットワーク回路の昇圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
【
図15】
図3のネットワーク回路の昇圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
【
図16】
図3のネットワーク回路の降圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
【
図17】
図3のネットワーク回路の降圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
【
図18】
図5のネットワーク回路の昇圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
【
図19】
図5のネットワーク回路の昇圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
【
図20】
図5のネットワーク回路の降圧動作における正制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
【
図21】
図5のネットワーク回路の降圧動作における負制御での異なる特性曲線を示す
図である。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
【
図22A-22B】ネットワーク回路の正制御及び負制御のための方法ステップを示す
図である。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
【
図23-25C】
図3のネットワーク回路の昇圧動作及び降圧動作におけるネットワーク変数の推移を示す
図である。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
【
図26A-27C】
図5のネットワーク回路の昇圧動作及び降圧動作におけるネットワーク変数の推移を示す
図である。
【外国語明細書】