(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174820
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法および不定形耐火物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/66 20060101AFI20241210BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024083124
(22)【出願日】2024-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2023092443
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】松永 久宏
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051BE01
(57)【要約】
【課題】カーボンの酸化を防止しつつ、不定形耐火物からのホウ素の溶出を低減する方法を提供する。
【解決手段】不定形耐火物の原料として、カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを使用する。上記ホウケイ酸ガラスのホウ素元素換算の配合量が、上記原料組成物100質量部に対して、外掛けで、0.1~1.0質量部であることが好ましい。上記カーボンの粒径に応じて、上記ホウケイ酸ガラスの配合量を調整することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形耐火物の原料として、カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを使用する、不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
【請求項2】
前記ホウケイ酸ガラスのホウ素元素換算の配合量が、前記原料組成物100質量部に対して、外掛けで、0.1~1.0質量部である、請求項1に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
【請求項3】
前記カーボンの粒径に応じて、前記ホウケイ酸ガラスの配合量を調整する、請求項1または2に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
【請求項4】
前記カーボンが、黒鉛、カーボンブラック、ピッチおよびコークスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
【請求項5】
前記ホウケイ酸ガラスの粒径が、0.1mm以下である、請求項1または2に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
【請求項6】
カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを原料として使用して、不定形耐火物を製造する、不定形耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法および不定形耐火物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンを含有する耐火物は、高温に曝すとカーボンが酸化して特性が低下するため、一般的には、酸化防止剤が配合される。
酸化防止剤としては、特に不定形耐火物においては、炭化ホウ素(B4C)が使用される(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-203953号公報
【特許文献2】特開2014-152092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化防止剤として炭化ホウ素を配合した不定形耐火物を、使用後に解体して粒度調整した後に溶出試験を実施すると、ホウ素が規定量を超えて溶出する場合がある。この場合、使用後の不定形耐火物は、産業廃棄物として処分せざるを得ず、有効利用できない。
そこで、本発明は、カーボンの酸化を防止しつつ、不定形耐火物からのホウ素の溶出を低減する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することに、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]不定形耐火物の原料として、カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを使用する、不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
[2]上記ホウケイ酸ガラスのホウ素元素換算の配合量が、上記原料組成物100質量部に対して、外掛けで、0.1~1.0質量部である、上記[1]に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
[3]上記カーボンの粒径に応じて、上記ホウケイ酸ガラスの配合量を調整する、上記[1]または[2]に記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
[4]上記カーボンが、黒鉛、カーボンブラック、ピッチおよびコークスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
[5]上記ホウケイ酸ガラスの粒径が、0.1mm以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法。
[6]カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを原料として使用して、不定形耐火物を製造する、不定形耐火物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カーボンの酸化を防止しつつ、不定形耐火物からのホウ素の溶出を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法]
本実施形態の不定形耐火物からのホウ素溶出低減方法は、不定形耐火物の原料として、カーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを使用する。
以下、本実施形態を、詳細に説明する。
なお、以下の説明は、不定形耐火物の製造方法の説明も兼ねる。
【0008】
〈原料組成物〉
本実施形態において、不定形耐火物の原料として、原料組成物を使用する。
原料組成物は、少なくとも、カーボンを含有する。
【0009】
《カーボン》
カーボンとしては、特に限定されないが、例えば、黒鉛、カーボンブラック、ピッチおよびコークスからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に挙げられる。
ピッチは樹脂状(液状)の原料である。
黒鉛の粒径は、例えば25~500μmである。カーボンブラックの粒径は、例えば3~500nmである。コークスの粒径は、例えば1~50μmである。
カーボン(ピッチを除く)の粒径は、レーザ回折・散乱法によって求める粒度分布における体積基準のメディアン径(積算値50%での粒径)である。
【0010】
原料組成物中のカーボンの含有量は、特に限定されず、不定形耐火物の用途等に応じて、適宜調整される。
例えば、カーボンの含有量は、原料組成物100質量部に対して、内掛けで、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましい。
【0011】
《耐火性原料》
原料組成物は、不定形耐火物の原料として、カーボンのほかに、従来公知の耐火性原料を含有量してもよい。
耐火性原料としては、例えば、ブラウンアルミナ、電融アルミナ、焼結アルミナ、ボーキサイト、ダイアスポア、ばん土頁岩、仮焼アルミナなどのアルミナ質原料;ケイ石、ケイ砂、無定形シリカ(例えば、マイクロシリカ、シリカフラワー、ヒュームドシリカ、ホワイトカーボン)などのシリカ質原料;ろう石、シャモット、粘土、焦宝石、アンダリュサイト、シリマナイト、カイヤナイト、ムライトなどのシリカ・アルミナ質原料;電融スピネル、焼結スピネルなどのスピネル質原料;マグネシアクリンカーなどのマグネシア質原料;ドロマイトクリンカーなどのドロマイト質原料;電融ジルコニアなどのジルコニア質原料;ジルコンサンドなどのジルコン質原料;窒化ケイ素質原料;窒化アルミニウム質原料;SiCなどの炭化ケイ素質原料;等が挙げられる。
【0012】
原料組成物中の耐火性原料の含有量は、特に限定されず、不定形耐火物の用途等に応じて、適宜調整される。
カーボンを除く耐火性原料の含有量は、原料組成物100質量部に対して、内掛けで、75~95質量部が好ましく、80~90質量部がより好ましい。
【0013】
《結合剤》
原料組成物は、更に、結合剤を含有してもよい。
結合剤としては、例えば、アルミナセメント(例えば、ハイアルミナセメント)、水硬性遷移アルミナ、ケイ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0014】
原料組成物中の結合剤の含有量は、特に限定されず、不定形耐火物の用途等に応じて、適宜調整される。
結合剤の含有量は、原料組成物100質量部に対して、内掛けで、1~6質量部が好ましく、2~4質量部がより好ましい。
【0015】
《マグネシア》
上述したように、耐火性原料としてマグネシア質原料を用いてもよい。
もっとも、不定形耐火物の原料としてマグネシアを使用すると、その一部が、不定形耐火物の製造に用いる水と反応して、水酸化マグネシウムが生成し、生成した水酸化マグネシウムは、高温下で分解する。その結果、製造された不定形耐火物が多孔質となり、不定形耐火物中のカーボンが酸化されやすくなる。
このため、カーボンの酸化を防止する効果(詳細は後述する)がより優れるという理由からは、原料組成物におけるマグネシウムの含有量は、少ない方が好ましい。
具体的には、マグネシア(MgO)の含有量は、原料組成物100質量部に対して、内掛けで、50質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が特に好ましく、5質量部以下が最も好ましい。
【0016】
〈酸化防止剤〉
《炭化ホウ素》
上述したように、従来、カーボンの酸化防止剤としては、炭化ホウ素が使用される。炭化ホウ素(B4C)は、以下の作用によって、カーボンの酸化を防止すると考えられる。
【0017】
まず、不定形耐火物中のカーボンの酸化に先行して、下記式(1)で表される反応が生じることにより、酸化ホウ素(B2O3)が生成する。
次いで、生成した酸化ホウ素(B2O3)が、不定形耐火物中のSiO2と反応して、下記式(2)で表される反応が生じる。これにより、B2O3-SiO2ガラスが生成し、これがカーボンを被覆する。
4B4C+7O2→2B2O3+4CO2・・・(1)
B2O3+SiO2→B2O3-SiO2・・・(2)
【0018】
このとき、全ての酸化ホウ素(B2O3)が、上記式(2)で表される反応によって、B2O3-SiO2ガラスとなるわけではない。すなわち、一部の酸化ホウ素(B2O3)が未反応のまま、不定形耐火物中に残存する。
そして、使用後の不定形耐火物中に酸化ホウ素(B2O3)が残存していると、使用後の不定形耐火物からのホウ素の溶出が多くなると考えられる。
【0019】
炭化ホウ素(B4C)のホウ素元素(B)換算の配合量は、原料組成物100質量部に対して、外掛けで、0.1質量部未満が好ましく、0.01質量部未満がより好ましく、0.001質量部未満が更に好ましく、0質量部が特に好ましい。
【0020】
《ホウケイ酸ガラス》
そこで、本実施形態においては、カーボンの酸化防止剤として、炭化ホウ素(B4C)に代えて、ホウケイ酸ガラス(SiO2-B2O3-Na2O-Al2O3)を使用する。
ホウケイ酸ガラスは、不定形耐火物が高温に曝された際に部分溶融し、これがカーボンを被覆することにより、カーボンの酸化防止剤として作用する。
この場合、酸化ホウ素(B2O3)がほとんど生成しないため、使用後の不定形耐火物からのホウ素の溶出量は、炭化ホウ素(B4C)を使用する場合よりも低減する。
【0021】
すなわち、本実施形態によれば、不定形耐火物中のカーボンの酸化を防止する効果を維持しつつ、使用後の不定形耐火物からのホウ素の溶出を低減できる。
これにより、使用後の不定形耐火物を、道路用路盤材などとして、有効利用できる。
【0022】
なお、ホウ素は低融点である。このため、酸化防止剤としてホウケイ酸ガラスを使用することにより、ホウ素を含有しないガラス材料を酸化防止剤として使用する場合に比べて、酸化防止剤の溶融を促進でき、カーボンの酸化防止効果を高めることができる。
【0023】
一般的に、ホウケイ酸ガラス中、B2O3含有量は約11質量%、B含有量は約3.4質量%である。
【0024】
(配合量)
カーボンの酸化を防止する効果を十分に得る観点から、ホウケイ酸ガラスのB換算の配合量は、原料組成物100質量部に対して、外掛けで、例えば0.01質量部以上であり、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。
【0025】
ところで、カーボンは、粒径が小さいほど、比表面積が大きくなるため、酸化を防止するために必要な被覆量は多くなる。
例えば、粒径が異なる2種類のカーボンaおよびb(粒径:a<b)の配合量が同じであっても、酸化を防止するために必要な被覆量は、粒径が小さいカーボンaの方が、粒径が大きいカーボンbよりも多くなる。
このため、本実施形態においては、カーボンの粒径に応じて、ホウケイ酸ガラスの配合量を調整することが好ましい。すなわち、カーボンの粒径が小さくなるに従い、ホウケイ酸ガラスの配合量を多くすることが好ましい。
【0026】
具体的には、例えば、カーボンとしてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの粒径は、例えば黒鉛と比べて小さいことから、ホウケイ酸ガラスのB換算の配合量は、原料組成物100質量部に対して、外掛けで、0.4質量部以上が更に好ましい。
【0027】
一方、ホウケイ酸ガラスが多すぎると、酸化ホウ素(B2O3)が少なからず生成し、使用後の不定形耐火物からホウ素が溶出しやすくなるおそれがある。
また、ホウケイ酸ガラスが多すぎると、ホウケイ酸ガラス(SiO2-B2O3-Na2O-Al2O3)中のNa2O成分が、不定形耐火物の耐熱温度を下げて、耐溶損性に悪影響を及ぼすおそれもある。
このため、ホウケイ酸ガラスのB換算の配合量は、原料組成物100質量部に対して、外掛けで、1.0質量部以下が好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。
【0028】
(粒径)
ホウケイ酸ガラスは、その粒径を小さくすることによって、不定形耐火物中に分散させやすくなり、カーボンの酸化を防止する効果を高めることができる。
具体的には、ホウケイ酸ガラスの粒径は、0.1mm以下が好ましい。
【0029】
カーボンとしてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの粒径は、例えば黒鉛と比べて小さいため、ホウケイ酸ガラスの粒径をより小さくすることが好ましい。具体的には、ホウケイ酸ガラスの粒径は、0.075mm以下が好ましい。
【0030】
なお、ホウケイ酸ガラスの粒径について、例えば「0.1mm以下」は、JIS Z 8801に準拠した、目開きが0.1mmのふるいを通ることを意味する。
【0031】
〈不定形耐火物〉
上述したカーボンを含有する原料組成物と、酸化防止剤としてのホウケイ酸ガラスとを原料として用いて、不定形耐火物を製造する。
【0032】
ところで、加圧成形により製造する定型耐火物では、酸化防止剤として、金属アルミニウムなどの金属材料を使用できる。
これに対して、流し込み成形により製造する不定形耐火物において、酸化防止剤として金属アルミニウムを使用すると、不定形耐火物の製造に使用される水が金属アルミニウムと反応して、水素ガスが発生する。その結果、不定形耐火物が多孔質となり、不定形耐火物中のカーボンが酸化されやすくなる。
すなわち、不定形耐火物では、酸化防止剤として、金属アルミニウムなどの金属材料を使用することが難しく、不定形耐火物(不定形耐火物の原料)は、金属アルミニウムを含有しないことが好ましい。使用できる酸化防止剤は、炭化ホウ素などに限定されている。
【0033】
不定形耐火物を製造する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。
例えば、不定形耐火物を得るためには、不定形耐火物の原料を混合し、更に、適量の分散剤および水を加えて混錬し、得られた混錬物を型枠に入れ、養生および乾燥する。
このとき、上述した効果を得るためには、不定形耐火物の原料として、原料組成物(カーボン)とホウケイ酸ガラスとを準備し、両者を混合するだけでよい。これにより、ホウケイ酸ガラスが満遍なく分散されるため、特殊の処理等は不要であり、非常に簡便である。
【実施例0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0035】
〈発明例1~13および比較例1~9〉
不定形耐火物の原料として、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、ハイアルミナセメント、マグネシア(MgO)およびカーボンを用いて、下記表1に示す配合量で配合して、原料組成物A~Gを調製した。カーボンとしては、黒鉛(粒径:50μm)、コークス粉(粒径:20μm)、ピッチおよびカーボンブラック(粒径:55nm)の少なくともいずれかを用いた。
【0036】
【0037】
得られた原料組成物A~Gと、酸化防止剤とを用いて、不定形耐火物を製造した。
酸化防止剤としては、炭化ホウ素(B4C)、ホウケイ酸ガラス(粒径:0.075mm以下)または金属アルミニウムを用いた。
【0038】
より詳細には、原料組成物に対する外掛けで、下記表2に示す酸化防止剤を、下記表2に示す配合量(炭化ホウ素(B4C)およびホウケイ酸ガラスは、B換算の配合量)で配合し、更に、適量の分散剤および水を加えて混錬し、混錬物を得た。
得られた混錬物を、直径50mm×厚さ100mmの型枠に流し込み、20℃かつ大気雰囲気下で24時間養生してから型枠を取り外し、その後、110℃で24時間乾燥した。こうして、Al2O3-SiC-C系の不定形耐火物の試験体を得た。
【0039】
〈評価〉
《酸化厚み》
得られた試験体を大気雰囲気下に置き、1200℃で12時間加熱して、脱炭部を形成した。脱炭部は、黒色から灰色に変色することから、脱炭部が形成された試験体を輪切りし、試験体の表面からの変色深さをノギスで測定し、これを酸化厚みとして求めた。酸化厚みが小さいほど、カーボンの酸化を防止する効果に優れると評価できる。
【0040】
《ホウ素溶出量》
使用後の不定形耐火物を模擬するため、得られた試験体をコークスブリーズに入れ、1500℃で3時間加熱した。加熱後の試験体を、2mmの篩を通過するように破砕し、得られた破砕物を用いて、環境庁告示第46号による溶出試験を実施して、ホウ素溶出量(単位:mg/L)を求めた。ホウ素溶出量が少ないほど、不定形耐火物からのホウ素の溶出を低減する効果に優れると評価できる。
【0041】
【0042】
〈評価結果まとめ〉
上記表2を参照されたい。
酸化防止剤を使用しなかった比較例1は、酸化厚みが非常に大きく、試験体の中心部まで酸化しており、カーボン酸化防止効果が不十分であった。
また、酸化防止剤として炭化ホウ素(B4C)を使用した比較例2~8は、ホウ素溶出量が多く、ホウ素溶出低減効果が不十分であった。
更に、酸化防止剤として金属アルミニウムを使用した比較例9は、酸化厚みが大きく、カーボン酸化防止効果が不十分であった。
【0043】
これに対して、酸化防止剤としてホウケイ酸ガラスを使用した発明例1~13は、酸化厚みが小さく、かつ、ホウ素溶出量が少なく、カーボン酸化防止効果とホウ素溶出低減効果とがどちらも良好であった。
【0044】
なお、原料組成物Aを用いた発明例1~6を対比すると、ホウケイ酸ガラスの配合量が多くなるに従い、酸化厚みが小さくなり、カーボン酸化防止効果がより優れる傾向が見られた。
一方で、ホウケイ酸ガラスの配合量が少なくなるに従い、ホウ素溶出量が少なくなり、ホウ素溶出低減効果がより優れる傾向が見られた。
【0045】
また、使用した原料組成物の種類のみが異なる発明例4、7~10および12~13を対比すると、マグネシア(MgO)を含有する原料組成物F~Gを用いた発明例12~13よりも、マグネシア(MgO)を含有しない原料組成物A~Eを用いた発明例4および7~10の方が、カーボン酸化防止効果がより優れる傾向が見られた。