(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174826
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ガラスクロス、表面処理ガラスクロス、プレプレグ及びプリント基板
(51)【国際特許分類】
D03D 15/267 20210101AFI20241210BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20241210BHJP
D06M 13/513 20060101ALI20241210BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20241210BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
D03D15/267
D03D1/00 A
D06M13/513
C08J5/04 CEY
C08J5/04 CFC
H05K1/03 610T
H05K1/03 610H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024085949
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】112120908
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520409925
【氏名又は名称】富喬工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】張 國興
(72)【発明者】
【氏名】鄭 名峯
(72)【発明者】
【氏名】陳 壁程
(72)【発明者】
【氏名】何 冠志
(72)【発明者】
【氏名】張 智惟
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲ゆん▼喬
【テーマコード(参考)】
4F072
4L033
4L048
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB09
4F072AB15
4F072AB28
4F072AB30
4F072AC06
4F072AD11
4F072AD42
4F072AF24
4F072AG03
4F072AG17
4F072AG19
4F072AH02
4F072AH21
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK05
4F072AK14
4F072AL13
4L033AA09
4L033AB05
4L033AC15
4L033BA96
4L048AA03
4L048AA34
4L048AB07
4L048AB11
4L048CA15
4L048DA43
4L048EB00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備えるガラスクロスの提供。
【解決手段】ガラス繊維糸である複数の経糸とガラス繊維糸である複数の緯糸とによる織物であるガラスクロスであり、ガラスクロスは、平均単位面積開繊係数SDが0.35~0.75の範囲内、平均単位面積均一係数RAが0.10~0.40の範囲内、且つ、RA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にあり、SD及びRAは、以下の式1及び式2により決められており、
式中、Wは、前記複数の経糸の平均幅であり、Fは、前記複数の緯糸の平均幅であり、D
wは、前記複数の経糸の平均織密度であり、D
fは、前記複数の緯糸の平均織密度であり、R
wは、前記複数の経糸の幅のレンジであり、R
fは、前記複数の緯糸の幅のレンジである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維糸である複数の経糸とガラス繊維糸である複数の緯糸とによる織物であるガラスクロスであり、
前記ガラスクロスは、平均単位面積開繊係数SDが0.35~0.75の範囲内にあり、平均単位面積均一係数RAが0.10~0.40の範囲内にあり、且つ、RA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にあり、
前記SD及び前記RAは、以下の式1及び式2により決められており、
【数1】
式中、Wは、前記複数の経糸の平均幅であり、
Fは、前記複数の緯糸の平均幅であり、
D
wは、前記複数の経糸の平均織密度であり、
D
fは、前記複数の緯糸の平均織密度であり、
R
wは、前記複数の経糸の幅のレンジであり、
R
fは、前記複数の緯糸の幅のレンジである、ことを特徴とするガラスクロス。
【請求項2】
前記RA/SDの値は、0.20~1.00の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載のガラスクロス。
【請求項3】
前記RA/SDの値は、0.20~0.90の範囲内にある、ことを特徴とする請求項2に記載のガラスクロス。
【請求項4】
各前記経糸は、複数のフィラメントにより構成されており、
各前記緯糸は、複数のフィラメントにより構成されており、
各前記経糸は、平均フィラメント直径が3.0μm~5.0μmの範囲内にあり、且つ、平均フィラメント本数が30本~200本の範囲内にあり、
各前記緯糸は、平均フィラメント直径が3.0μm~5.0μmの範囲内にあり、且つ、平均フィラメント本数が30本~200本の範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載のガラスクロス。
【請求項5】
前記ガラスクロスの平均厚さは、10.0μm~50.0μmの範囲内にあり、
前記ガラスクロスの平均坪量は、10.0g/m2~50.0g/m2の範囲内にあり、
前記ガラスクロスの平均面積を計算基準として、前記複数の経糸の平均織密度は、50本/25.4mm~100本/25.4mmの範囲内にあり、前記複数の緯糸の平均織密度は、50本/25.4mm~100本/25.4mmの範囲内にある、ことを特徴とする請求項1に記載のガラスクロス。
【請求項6】
処理液による請求項1に記載のガラスクロスの表面処理物である表面処理ガラスクロスであり、
前記処理液は、アミノシランカップリング剤、アルケニルシランカップリング剤、アクリロイルオキシシランカップリング剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された処理剤を含むものによりなったものである、ことを特徴とする表面処理ガラスクロス。
【請求項7】
部分的に固化された樹脂と請求項6に記載の表面処理ガラスクロスとを含む、ことを特徴とするプレプレグ。
【請求項8】
前記樹脂は、熱硬化性樹脂である、ことを特徴とする請求項7に記載のプレプレグ。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂及びビスマレイミドトリアジン樹脂からなる群より選択されたものである、ことを特徴とする請求項8に記載のプレプレグ。
【請求項10】
請求項7~請求項9のいずれかの一項に記載のプレプレグによりなったものである、ことを特徴とするプリント基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維布に関し、特にガラスクロス(glass cloth)及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品がより多機能、高速伝送、軽量及び小型化などの方向へ進むに伴い、プリント基板(printed circuit board、略称PCB)の製造に使用するガラスクロスは、厚さがより薄くなるように開発されている。
【0003】
ガラスクロスの厚さをより薄くするために、平均フィラメント(filament)直径が短いガラス繊維糸を経糸(warp)及び緯糸(weft)として使用して織ってガラスクロスを製造することが一般的であるが、そのためガラスクロスの中の糸ウィンドウ(即ちガラスクロス中の経糸と緯糸との間の隙間)面積が占める割合が高くなる。
【0004】
糸ウィンドウ面積が占める割合が高くなると、信号がこのようなガラスクロスで製造したプリント基板を通過する際、繊維織込み効果(fiber weave effect)が生じやすく、信号の伝送速度に悪影響がある。
【0005】
上記の問題点を解消するために、ガラスクロスの開繊(fiber openingまたはfiber splitting)程度を増加することが一般的である。開繊は、ガラス繊維糸を構成する複数のフィラメントを扁平状になるように均一に分散することにより、ガラス繊維糸の表面積を上げて糸ウィンドウを縮小する技術である。
【0006】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、特定の開繊程度を有するガラスクロスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許第I720996号公報
【特許文献2】台湾特許第I723117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ガラスクロスが特定の開繊程度に合うだけで開繊均一性が悪いと、即ちガラスクロスの中の各糸ウィンドウのサイズの差が大きすぎると、そのガラスクロスを使用して製造されたプレプレグ(prepreg)には、マイクロボイド(microvoids)が存在して、プリント基板を製造する過程でプレプレグの体積の膨張や縮小の変化が大きすぎる問題点があって、製造されたプリント基板に反りが生じて、プリント基板の歩留まり率が悪くなる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備えるガラスクロスと、表面処理ガラスクロスと、プレプレグと、プリント基板とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明は、ガラス繊維糸である複数の経糸とガラス繊維糸である複数の緯糸とによる織物であるガラスクロスであり、
前記ガラスクロスは、平均単位面積開繊係数SDが0.35~0.75の範囲内にあり、平均単位面積均一係数RAが0.10~0.40の範囲内にあり、且つ、RA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にあり、
前記SD及び前記RAは、以下の式1及び式2により決められており、
【0011】
【数1】
式中、Wは、前記複数の経糸の平均幅であり、
Fは、前記複数の緯糸の平均幅であり、
D
wは、前記複数の経糸の平均織密度であり、
D
fは、前記複数の緯糸の平均織密度であり、
R
wは、前記複数の経糸の幅のレンジであり、
R
fは、前記複数の緯糸の幅のレンジである、ことを特徴とするガラスクロスを提供する。
【0012】
また、本発明は、処理液による上記のガラスクロスの表面処理物である表面処理ガラスクロスであり、
前記処理液は、アミノシランカップリング剤、アルケニルシランカップリング剤、アクリロイルオキシシランカップリング剤及びそれらの組み合わせからなる群より選択された処理剤を含むものによりなったものである、ことを特徴とする表面処理ガラスクロスを提供する。
【0013】
また、本発明は、部分的に固化された樹脂と上記の表面処理ガラスクロスとを含む、ことを特徴とするプレプレグを提供する。
【0014】
また、本発明は、上記のプレプレグによりなったものである、ことを特徴とするプリント基板を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガラスクロスは、発明者により複数の経糸及び複数の緯糸の平均幅、平均織密度、幅のレンジを考慮してSD及びRAを設計し、且つ、SDが0.35~0.75の範囲内にあり、RAが0.10~0.40の範囲内にあり且つRA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にあることに限定することにより、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備えて、本発明のガラスクロスによる本発明の表面処理ガラスクロスにも良好な開繊程度及び良好な開繊均一性が備わり、それにより、本発明の表面処理ガラスクロスによる本発明のプレプレグは外見が良好でマイクロボイドが存在せず、そして、本発明のプレプレグによる本発明のプリント基板は、歩留まり率が高く且つ信号の伝送速度が速いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のガラスクロスの一実施形態の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の目的、技術手段、及び利点をより明確に説明するために、以下、本発明の実施形態の添付図面を組み合わせて、本発明の実施形態における技術手段に対して明確且つ完全に説明する。説明する実施形態は、本発明の一部の実施形態であり、すべての実施形態ではないことが明らかであろう。通常、添付図面に描きまた示す本発明の実施形態の部品は各種異なる配置で布置及び設計することができる。従って、以下、添付図面中に提供した本発明の実施形態の詳細説明は、本発明の保護範囲に対していかなる制限も構成せず、単に本発明の選択された実施形態を示すのみである。
【0018】
本発明の説明において、「上」、「下」、「内」、「外」、「左」、「右」、「前」、「後」などの方位や位置関係を示す用語は、より簡単且つ明瞭に説明するために、図面に示される方位や位置関係、または本発明の製品を使用する際に習慣的に置かされる方位や位置関係に基づくものであり、対応する装置やデバイスが特定の方位、特定の方位における構造や操作などを有することを教示または示唆することではなく、本発明に対する限定ではない。
【0019】
<ガラスクロス>
本発明のガラスクロスは、ガラス繊維糸である複数の経糸とガラス繊維糸である複数の緯糸とによる織物であるガラスクロスである。即ち、本発明のガラスクロスは、ガラス繊維糸である複数の経糸と前記ガラス繊維糸である複数の緯糸とを使用して織ることにより製造されたガラスクロスである。
【0020】
この実施形態において、経糸及び緯糸に使用するガラス繊維糸は、同じ種類のガラス繊維糸である。
【0021】
該ガラスクロスは、平均単位面積開繊係数SDが0.35~0.75の範囲内にあり、平均単位面積均一係数RAが0.10~0.40の範囲内にあり、且つ、RA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にある。
【0022】
SD及びRAは、以下の式1及び式2により決められている。
【0023】
【数2】
式中、Wは、前記複数の経糸の平均幅であり、
Fは、前記複数の緯糸の平均幅であり、
D
wは、前記複数の経糸の平均織密度であり、
D
fは、前記複数の緯糸の平均織密度であり、
R
wは、前記複数の経糸の幅のレンジであり、即ち前記複数の経糸の最大幅と最小幅との差の値であり、
R
fは、前記複数の緯糸の幅のレンジであり、即ち前記複数の緯糸の最大幅と最小幅との差の値である。
【0024】
平均単位面積開繊係数SDは、ガラスクロスの「開繊程度」を表す。
【0025】
また、W×Fは、複数の経糸と複数の緯糸とが重なっている部分の平均面積を表す。
【0026】
25400は、織密度の単位(本/25.4mm=本/25400μm)によるものであり、各経糸及び各緯糸に割り当てられる最大幅を表す。したがって、
【0027】
【数3】
は、各経糸及び各緯糸に割り当てられる最大面積を表す。
【0028】
最大面積は、各経糸と各緯糸とが重なっている部分の面積(即ち
図1に示されるAエリアの面積)と、各経糸の各緯糸と重なっていない部分の面積(即ち
図1に示されるBエリアの面積)と、各緯糸の各経糸と重なっていない部分の面積(即ち
図1に示されるCエリアの面積)と、各糸ウィンドウの面積(即ち
図1に示されるDエリアの面積)とを含む。
【0029】
平均単位面積均一係数RAは、ガラスクロスの「開繊均一性」を表す。
【0030】
【数4】
は、複数の経糸のレンジ係数(即ち、複数の経糸の幅のレンジと複数の経糸の平均幅との比)であり、
【0031】
【数5】
は、複数の緯糸のレンジ係数(即ち、複数の緯糸の幅のレンジと複数の緯糸の平均幅との比)であるので、
【0032】
【数6】
は、複数の経糸のレンジ係数と複数の緯糸のレンジ係数との幾何平均であって、ガラスクロス中の複数の経糸と複数の緯糸との分布状況を表し、即ち、ガラスクロス中の複数の経糸と複数の緯糸とのサイズの差異の程度を表し、これはガラスクロスの中の各糸ウィンドウのサイズの差異の程度に対応する。
【0033】
SD、RA及びRA/SDの値を上記の範囲内にあるように制御することにより、ガラスクロスは、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備え、即ち糸ウィンドウ面積が占める割合が低く、且つガラスクロスの中の各糸ウィンドウのサイズの差が小さく、それにより、該ガラスクロス(即ち本発明のガラスクロス)を使用して製造された本発明の表面処理ガラスクロスにも良好な開繊程度及び良好な開繊均一性が備わり、それにより、本発明の表面処理ガラスクロスを使用して製造された本発明のプレプレグは外見が良好でマイクロボイドが存在せず、そして、本発明のプレプレグを使用して製造された本発明のプリント基板は、歩留まり率が高く且つ信号の伝送速度が速いという利点を有する。
【0034】
SDが0.35未満になると、ガラスクロスの開繊程度が低くなり、即ち糸ウィンドウ面積が占める割合が高くなり、信号がこのようなガラスクロスを使用して製造したプリント基板を通過する際、繊維織込み効果が生じやすく、信号の伝送速度に悪影響がある。
【0035】
一般的にガラスクロスの開繊程度を向上させるために、対応してガラスクロスを製造する時の開繊に使用する水圧を上げることがあり、SDが0.75を超えると、ガラスクロスの開繊程度が高くなるが、ガラスクロス中の複数の経糸と複数の緯糸とは、開繊に使用する水圧が高すぎてフィラメントが断裂する可能性があるので、製造されたガラスクロスの面には、毛羽(fuzz)を有するという欠点があり、このようなガラスクロスを使用して製造したプレプレグには、コロイド粒子(colloidal particles)を有するという欠点があり、このようなプレプレグを使用して製造したプリント基板には、突起を有するという欠点がある。
【0036】
RAが0.40を超えると、ガラスクロスの開繊均一性が悪く、即ちガラスクロスの中の各糸ウィンドウのサイズの差が大きいので、このようなガラスクロスを使用して製造したプレプレグには、マイクロボイドが存在して、プリント基板を製造する過程でプレプレグの体積の膨張や縮小の変化が大きすぎる問題点があって、製造されたプリント基板に反りが生じて、プリント基板の歩留まり率が悪くなる。
【0037】
RA/SDの値が1.10を超えると、例えSDが0.35~0.75の範囲内にあり且つRAが0.10~0.40の範囲内にあっても、このようなガラスクロスを使用して製造したプレプレグは、外見が悪く且つマイクロボイドが存在し、このようなプレプレグを使用して製造したプリント基板には、歩留まり率が悪い問題点が生じる。
【0038】
プレプレグにより優れた外見を持たせるために、一部の実施形態において、RA/SDの値は、0.20~1.00の範囲内にあり、一部の実施形態において、RA/SDの値は、0.20~0.90の範囲内にある。
【0039】
一部の実施形態において、各経糸は、複数のフィラメントにより構成されており、各緯糸は、複数のフィラメントにより構成されており、各経糸は、平均フィラメント直径が3.0μm~5.0μmの範囲内にあり且つ平均フィラメント本数が30本~200本の範囲内にあり、各緯糸は、平均フィラメント直径が3.0μm~5.0μmの範囲内にあり且つ平均フィラメント本数が30本~200本の範囲内にある。
【0040】
各フィラメントは、ガラス原料を紡糸処理することにより製造されたものであり、ガラス原料は、例えば一般電子部品用ガラス(例えばE-glass)原料、低誘電率(low K)ガラス原料、低熱膨張係数(low CTE)ガラス原料または低誘電率と低熱膨張係数を兼ね備えるガラス原料などが挙げられる。
【0041】
一部の実施形態において、ガラスクロスの平均厚さは、10.0μm~50.0μmの範囲内にあり、ガラスクロスの平均坪量は、10.0g/m2~50.0g/m2の範囲内にある。
【0042】
一部の実施形態において、ガラスクロスの平均面積を計算基準として、複数の経糸の平均織密度は、50本/25.4mm~100本/25.4mmの範囲内にあり、複数の緯糸の平均織密度は、50本/25.4mm~100本/25.4mmの範囲内にある。
【0043】
本発明のガラスクロスは、未開繊ガラスクロス(即ち開繊されていないガラスクロス)を、開繊処理を含むプロセスにより処理して製造される。製造されたガラスクロスが、0.35~0.75の範囲内にあるSDと、0.10~0.40の範囲内にあるRAと、0.10~1.10の範囲内にあるRA/SDの値とを有するのであれば、任意の既有の開繊処理の操作方法及び設備すべてが本発明のガラスクロスの製造に適し、開繊処理の具体的な操作方法及び設備を制限する必要はない。
【0044】
一部の実施形態において、開繊処理は、開繊装置により、高圧水柱流を未開繊ガラスクロスに噴射することに合わせて該未開繊ガラスクロスに対して張力を加えることによって開繊を行う。張力は、例えば50N~300Nの範囲内であるがこれに限らず、高圧水柱流の水圧は、例えば20kg~80kgの範囲内であるがこれに限らない。
【0045】
<表面処理ガラスクロス>
本発明の表面処理ガラスクロスは、処理液による上記本発明のガラスクロスの表面処理物である。即ち、本発明の表面処理ガラスクロスは、上記のガラスクロスを表面処理して製造されたものであり、該表面処理は、ガラスクロスを処理液で反応させることにより、該ガラスクロスの性質を変えて、表面処理ガラスクロスが後のプロセスで樹脂と作用することができるようにすることを含む。
【0046】
本発明のガラスクロスは、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備える利点があるので、本発明の表面処理ガラスクロスも良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備える利点がある。
【0047】
一部の実施形態において、処理液は、アミノシランカップリング剤(aminosilane coupling agent、アミノ基含有シランカップリング剤)、アルケニルシランカップリング剤(alkenylsilane coupling agent、アルケニル基含有シランカップリング剤)、アクリロイルオキシシランカップリング剤(acryloyloxysilane coupling agent、アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤)及びそれらの組み合わせからなる群より選択された処理剤を含むものによりなったものである。即ち、処理液は、処理剤を含むものにより製造されたものである。
【0048】
アミノシランカップリング剤は、例えば3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane)などが挙げられるがこれに限らない。
【0049】
アルケニルシランカップリング剤は、例えばビニルトリメトキシシラン(vinyltrimethoxysilane)などが挙げられるがこれに限らない。
【0050】
アクリロイルオキシシランカップリング剤は、例えばメタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル(3-methacryloxypropyltrimethoxysilane)などが挙げられるがこれに限らない。
【0051】
一部の実施形態において、アミノシランカップリング剤は、3-アミノプロピルトリエトキシシランであり、アルケニルシランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシランであり、アクリロイルオキシシランカップリング剤は、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピルである。
【0052】
<プレプレグ>
本発明のプレプレグは、部分的に固化された樹脂と上記本発明の表面処理ガラスクロスとを含むものである。即ち、本発明のプレプレグは、樹脂と上記本発明の表面処理ガラスクロスとを含む含浸布を、部分的に固化することにより形成されたものである。
【0053】
具体的に、プレプレグの製造は、補強材(reinforcement)及び絶縁材(insulation)を兼任する本発明の表面処理ガラスクロスを樹脂に含浸して含浸布を得た後、該含浸布を部分的に固化することによりBステージ(B-stage)になることを含む。
【0054】
本発明の表面処理ガラスクロスは、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備える利点があり、即ち、該表面処理ガラスクロスの中の糸ウィンドウ面積が占める割合が低く且つ表面処理ガラスクロスの中の各糸ウィンドウのサイズの差が小さいので、該表面処理ガラスクロスの中で樹脂に補填される面積が比較的に少なく、本発明の表面処理ガラスクロスによる本発明のプレプレグの外見が良好でマイクロボイドが存在しない。
【0055】
樹脂は、例えば熱硬化性樹脂(thermosetting resin)または紫外線硬化樹脂(UV curable resin)などが挙げられるがこれらに限らない。
【0056】
一部の実施形態において、樹脂は、熱硬化性樹脂である。
【0057】
熱硬化性樹脂は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂(polyphenylene ether resin)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂(urea
formaldehyde resin)、不飽和ポリエステル系樹脂(unsaturated polyester resin)、メラミン樹脂(melamine resin)、フッ素樹脂(fluororesin)またはビスマレイミドトリアジン樹脂(bismaleimide triazine resin、略称:BT樹脂)などが挙げられるがこれらに限らない。
【0058】
紫外線硬化樹脂は、例えば、紫外線硬化型ポリウレタン(polyurethane)または紫外線硬化型アクリル樹脂(acrylic resin)などが挙げられるがこれらに限らない。
【0059】
一部の実施形態において、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノール樹脂及びビスマレイミドトリアジン樹脂からなる群より選択されたものである。
【0060】
本発明のプレプレグの下流応用の例としては、複数のプレプレグを重ね合わせた後、少なくとも1側に銅箔層を重ねて積層体を製造し、そして、該積層体を熱圧着(thermocompression bonding)して銅張積層板(copper clad laminate、略称:CCL)を製造することが挙げられる。
【0061】
一部の実施形態において、プレプレグの製造は、無機充填材を添加して含浸布を製造することを更に含み、それにより、該含浸布が部分的に固化されて形成されたプレプレグは、無機充填材を更に含む。無機充填材を添加することにより、例えばプレプレグを使用して製造された銅張積層板の熱伝導率(thermal conductivity)、レーザ穴あけ性質(laser drilling property)及び熱膨張性などの特性を調整することができ、したがって、該銅張積層板を使用して製造されたプリント基板は、良好な信頼性を有する。
【0062】
<プリント基板>
本発明のプリント基板は、上記本発明のプレプレグによりなったものである。即ち、本発明のプリント基板は、上記本発明のプレプレグを使用して製造されたものである。
【0063】
具体的に、該プレプレグの下流応用の例としては、銅張積層板に対して穴あけ(drilling)、金また金を含む合金のメッキ(plating)及び回路パターンのエッチング(etching)を行うことにより、プリント基板を製造することが更に挙げられる。
【0064】
本発明のプレプレグは外見が良好でマイクロボイドが存在しないので、本発明のプレプレグを使用して製造された本発明のプリント基板は、歩留まり率が悪い問題が生じない。
【0065】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0066】
<実施例1>
ガラスクロスの製造:
経糸として複数のガラス繊維糸に対して順に整経及び糊付け(warping and sizing)処理とビーミング(beaming)処理とを行うことによりウィバースビーム(weaver‘s beam)を得てから、該ウィバースビームをエアジェット織機(メーカー:豊田自動織機社、型番:JAT710)に設置し、且つ、緯糸として複数のガラス繊維糸と相互に織り込んで未開繊ガラスクロスにし、そして、該未開繊ガラスクロスに対して順に糊抜き(desizing)処理及び開繊処理を行ってガラスクロスを製造した。
【0067】
各経糸及び各緯糸の生糸(gray yarn)規格(即ち平均フィラメント直径及び平均フィラメント本数)、開繊処理において加える張力及び高圧水柱流の水圧は、表1に示される。
【0068】
表面処理ガラスクロスの製造:
該ガラスクロスを処理液に30秒間浸入した後、150℃で乾燥して表面処理ガラスクロスを製造した。
【0069】
該処理液は、アミノシランカップリング剤と酢酸水溶液とを、pH値が3.5~5.5の範囲内の条件で30分間の加水分解反応させることにより製造された。アミノシランカップリング剤と酢酸水溶液との総量を100wt%として、アミノシランカップリング剤の使用量は0.08wt%である。
【0070】
プレプレグの製造方法:
該表面処理ガラスクロスを樹脂溶液に含浸して含浸布を得てから、該含浸布を210℃で6分間固化して部分的に固化されたプレプレグを製造した。
【0071】
該樹脂溶液は、樹脂(具体的には、ビスマレイミドトリアジン樹脂、メーカー:台湾Prior Company Limited.社、型番:BT-0001)と溶剤(具体的にはメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)である)とを混合することにより得たものである。樹脂溶液の総量を100wt%として、樹脂の使用量は50wt%である。
【0072】
<実施例2~実施例13及び比較例1~比較例7>
実施例2~実施例13及び比較例1~比較例7が実施例1との相違点は、表1~表3に示され、異なる生糸規格を有する経糸及び緯糸が異なる開繊処理条件に合わせて、異なる開繊程度及び異なる開繊均一性を有するガラスクロスを製造した。
【0073】
実施例2~実施例13及び比較例1~比較例7に使用した樹脂溶液において、樹脂がエポキシ樹脂(メーカー:台湾Nan Ya Plastics Corporation社、型番:NPEB475
K70)の場合、それに対応して溶剤は1-メトキシ-2-プロパノール(1-methoxy-2-propanol)であり、且つ、樹脂溶液の総量を100wt%として、樹脂の使用量は60wt%であり、そして、含浸布を190℃で6分間固化した。
【0074】
実施例2~実施例13及び比較例1~比較例7に使用した樹脂溶液において、樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂(メーカー:サウジSABIC社、型番:NORYL SA9000)の場合、それ
対応して溶剤はメチルエチルケトンであり、且つ、樹脂溶液の総量を100wt%として、樹脂の使用量は65wt%であり、そして、含浸布を180℃で4分間固化した。
【0075】
<評価項目>
以下は、実施例1を例として、実施例1~実施例13及び比較例1~比較例7のガラスクロスの規格測定方法、及び、プレプレグの規格測定方法と外見評価方法を説明する。測定結果及び外見評価結果は表1~表3に示される。
【0076】
経糸の平均織密度(Dw)、緯糸の平均織密度(Df)の測定:
デジタル織密度測定機(メーカー:スイスTextest Instruments社、型番:FX3250)を使用して実施例1のガラスクロスの表面を測定して実施例1のガラスクロスの中の複数の経糸の平均織密度及び複数の緯糸の平均織密度を得た。
【0077】
経糸の平均幅(W)、緯糸の平均幅(F)の測定:
長さが30cmの実施例1のガラスクロスを切り取って、幅方向に沿って該切り取ったガラスクロスを均等に5つの測定エリアに分けて、該切り取ったガラスクロスを顕微鏡(メーカー:NIKON社、型番:ME600、倍率:5x)に置いて、各測定エリアを撮影して5つの写真を得てから、画像寸法測定ソフト(TS-Link、TOTAL-SMART
TECHNOLOGY CO., LTD.社製)を使用して各写真の中の各経糸の幅及び各緯糸の幅を測定して、各写真の中の複数の経糸の平均値及び複数の緯糸の平均値を算出し、最後に各測定エリアで測定した幅の平均値データ(即ち5つの経糸の幅の平均値データ及び5つの緯糸の幅の平均値データ)の平均値を算出して、実施例1のガラスクロスの中の複数の経糸の平均幅及び複数の緯糸の平均幅を得た。
【0078】
経糸の幅のレンジ(Rw)、緯糸の幅のレンジ(Rf)の計算方法:
Rw=複数の経糸の中に最大幅と最小幅との差の値である。
Rf=複数の緯糸の中に最大幅と最小幅との差の値である。
【0079】
ガラスクロスの平均厚さの測定:
上記長さが30cm且つ5つの測定エリアに分けた実施例1のガラスクロスを、デジタルマイクロメーター(メーカー:スイスTESA社、型番:MICROMASTER IP54、最小目盛り:0.001mm)に置いて各測定エリアの厚さを測定し、最後に各測定エリアで測定した厚さのデータ(即ち5つの厚さのデータ)の平均値を算出して、実施例1のガラスクロスの平均厚さを得た。
【0080】
ガラスクロスの平均坪量の測定:
実施例1のガラスクロスを3等分に切り分け、各等分のガラスクロスを更にサイズが30cm×30cmのサンプルに切り、そして、電子天びん(メーカー:米OHAUS社、型番:PR224、最小目盛り:0.0001g)を使用して各サンプルの重量を測定して、以下の式3で各サンプルの坪量を算出した。
【0081】
式3:サンプルの坪量 = サンプルの重量/サンプルの面積
最後に各サンプルの坪量(即ち3つの坪量のデータ)の平均値を算出して、実施例1のガラスクロスの平均坪量を得た。
【0082】
プレプレグの中の樹脂の含有量の測定:
IPC-TM-650 2.3.16.1(1994年版)である《Resin Content of Prepreg Material(Treated Weight)》の標準検測方法に基づいて、実施例1のガラスクロス及び実施例1のプレプレグのそれぞれをサイズが20cm×20cmのサンプルに切り、そして、上記の電子天びんを使用して各サンプルの重量を測定して、以下の式4で実施例1のプレプレグの中の樹脂の含有量を算出した。
【0083】
式4:プレプレグの中の樹脂の含有量=(1-ガラスクロスのサンプルの重量/プレプレグのサンプルの重量)×100%
プレプレグの平均厚さの測定:
長さが30cmの実施例1のプレプレグを切り取って、幅方向に沿って該切り取ったプレプレグを均等に5つの測定エリアに分けて、該切り取ったプレプレグを上記のデジタルマイクロメーターに置いて各測定エリアの厚さを測定し、最後に各測定エリアで測定した厚さのデータ(即ち5つの厚さのデータ)の平均値を算出して、実施例1のプレプレグの平均厚さを得た。
【0084】
プレプレグの中のマイクロボイドの数の測定及びプレプレグの外見の評価:
実施例1のプレプレグをサイズが5cm×5cmのサンプルに切り、そして、上記の顕微鏡に置いて観察し、サンプルの表面にピンホール大の穴があればマイクロボイドとみなし、サンプルの表面にあるピンホール状のマイクロボイドの数を計算した。
【0085】
プレプレグのマイクロボイドの数が0である場合、プレプレグの外見を「良好」として評価し、プレプレグのマイクロボイドの数が1~100である場合、プレプレグの外見を「少数のピンホールを有する」として評価し、プレプレグのマイクロボイドの数が101以上である場合、プレプレグの外見を「明らかなピンホールを有する」として評価した。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【表3-2】
表1~表3によれば、実施例1~実施例13のガラスクロスは、0.35~0.75の範囲内にあるSDと、0.10~0.40の範囲内にあるRAと、0.10~1.10の範囲内にあるRA/SDの値との要求をすべて満たし、且つ実施例1~実施例13のプレプレグは表面にマイクロボイドが存在せずに外見が良好である。
【0092】
それに対して、比較例1~比較例7のガラスクロスは、0.35~0.75の範囲内にあるSDと、0.10~0.40の範囲内にあるRAと、0.10~1.10の範囲内にあるRA/SDの値との要求をすべては満たしていなく、且つ比較例1~比較例7のプレプレグは表面にマイクロボイドが存在する。
【0093】
したがって、実施例1~実施例13のガラスクロスは、0.35~0.75の範囲内にあるSDと、0.10~0.40の範囲内にあるRAと、0.10~1.10の範囲内にあるRA/SDの値との要求をすべて満たすことにより、実施例1~実施例13のプレプレグの表面にマイクロボイドが存在しないようにすることが達成されることを証明した。
【0094】
上記の内容によれば、本発明のガラスクロスは、複数の経糸及び複数の緯糸の平均幅、平均織密度、幅のレンジによりSD及びRAを算出し、且つ、SDが0.35~0.75の範囲内にあり、RAが0.10~0.40の範囲内にあり且つRA/SDの値が0.10~1.10の範囲内にあることに限定することにより、良好な開繊程度及び良好な開繊均一性を備えて、本発明のガラスクロスを使用して製造した本発明の表面処理ガラスクロスにも良好な開繊程度及び良好な開繊均一性が備わり、それにより、本発明の表面処理ガラスクロスを使用して製造した本発明のプレプレグは外見が良好でマイクロボイドが存在せず、そして、本発明のプレプレグを使用して製造した本発明のプリント基板は、歩留まり率が高く且つ信号の伝送速度が速いという利点を有する。よって本発明の目的を確実に達成できる。
【0095】
本発明は、例示的な実施形態と考えられるものに関連して説明されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、そのような修正及び同等の配置をすべて包含するように最も広い解釈の精神及び範囲内に含まれる様々な配置を対象とすることが意図されていることが理解される。
【0096】
上記実施形態は例示的に本発明の原理及び効果を説明するものであり、本発明を制限するものではない。本技術を熟知する当業者であれば本発明の精神及び範囲から離れないという前提の下、上記の実施形態に対して若干の変更や修飾が可能である。従って、当業者が本発明の主旨から離れないという前提の下、行った全ての変更や修飾も本発明の保護範囲に含まれるものとされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のガラスクロスは、電子製品に使用することが適する。
【符号の説明】
【0098】
A 各経糸と各緯糸とが重なっている部分の面積
B 各経糸の各緯糸と重なっていない部分の面積
C 各緯糸の各経糸と重なっていない部分の面積
D 各糸ウィンドウの面積