(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174828
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリング
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20241210BHJP
B60G 13/10 20060101ALI20241210BHJP
F16F 9/04 20060101ALI20241210BHJP
F16F 9/05 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16F9/32 V
B60G13/10
F16F9/04
F16F9/05
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024086308
(22)【出願日】2024-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0072341
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0131038
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517378083
【氏名又は名称】イルジン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】ジョン セウン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム サンウ
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA82
3D301AA87
3D301DA14
3D301DA33
3D301DB15
3D301DB49
3J069AA22
3J069AA28
3J069DD39
3J069DD47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複雑な強化繊維工程なしにスプリング特性および剛性が向上した車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングを提供する。
【解決手段】本発明の一実施例に係る車両用エアスプリングのためのスリーブは、少なくとも上部スリーブと下部スリーブを含み、前記上部スリーブの上端円周部分はトップマウント部に結合され、前記下部スリーブの下端円周部分はピストン部に結合され、前記上部スリーブと前記下部スリーブのうち一つは長手方向に沿って区間別に互いに異なる厚さを有するように形成され得る。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エアスプリングのためのスリーブ(500)であり、
前記スリーブは少なくとも上部スリーブ(520)と下部スリーブ(540、640)を含み、
前記上部スリーブ(520)の上端円周部分(522)がトップマウント部に結合され、
前記下部スリーブ(540、640)の下端円周部分(544、644)がピストン部に結合され、
前記上部スリーブ(520)と前記下部スリーブ(540、640)のうち一つは長手方向に沿って区間別に互いに異なる厚さを有するように形成される、車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項2】
ピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さがピストン部が最大に下降する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きい、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項3】
ピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さが車両が走行可能状態であり車両が停止している時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きい、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項4】
前記上部スリーブ(520)の下端円周部分(524)と前記下部スリーブ(540)の上端円周部分(542)が互いに重なるように配置され、
重なる領域で前記上部スリーブ(520)の厚さと前記下部スリーブ(540)の厚さが実質的に同一であるかまたは重なるスリーブのうち内側に配置されるスリーブが外側に配置されるスリーブよりさらに厚い、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項5】
前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブは長手方向に内径が同一の区間と長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する区間を少なくとも含むように構成される、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項6】
長手方向に内径が同一の区間と長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する区間の間には両区間を連結する内径変移区間が形成される、請求項5に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項7】
ピストン部が最大に上昇する時にローリングローブが形成される領域で最大厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成される、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項8】
車両が走行可能状態であり車両が停止している時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成される、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項9】
ピストン部が最大に下降する時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成される、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項10】
前記最大厚は3.0~7.0mmの範囲内である、請求項7に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項11】
前記最小厚は1.0~4.0mmの範囲内である、請求項8に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項12】
前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブは前記下部スリーブ(540、640)である、請求項1に記載の車両用エアスプリングのためのスリーブ。
【請求項13】
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載された車両用エアスプリングのためのスリーブ(500、600)と、
前記上部スリーブ(520、620)の前記上端円周部分(522、622)が装着されるトップマウント部と、
前記下部スリーブ(540、640)の前記下端円周部分(544、644)が装着されるピストン部を含む、車両用エアスプリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングに関し、より具体的には、複雑な強化繊維工程なしにスプリング特性および剛性が向上した、車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンションは車体とホイールの間に存在し、車体とホイール、この二つの剛体を一つあるいは多数のリンクを利用して連結する装置であって、上下方向にはスプリングとショックアブソーバー(Shock Absorber)等によって支持され、その他の方向には高い剛性と柔軟性を適切に調和させることによって、車体とホイールの間の相対運動を機械的に適切に調和させる機能を遂行することになる。
【0003】
このようなサスペンションは車両の走行中に発生する路面の不規則な入力を効果的に遮断して搭乗者に安楽な乗車感を提供しなければならず、運転者の運転行為および路面の屈曲によって発生した車体の揺れを適切に制御して運転便宜性を提供しなければならず、不規則な路面を走行する際にタイヤの接地面での垂直荷重を適切な水準で維持して旋回、制動駆動時に車両の操縦性および安定性を確保しなければならないという基本条件を満足させなければならない。
【0004】
このような条件を満足させるために、多様な種類のサスペンションが開発されて車両に適用されている。最近では、高級化された乗用車にはエアスプリングを形成するスリーブの体積を変化させてエアスプリング定数を変化させることによって乗車感を向上させ、エアの量を変化させることによって自動で車高を維持させるエアサスペンションが多く適用されている。
【0005】
このようなスリーブは反復的に変形するので優秀な耐久性が必要であるが、従来のスリーブはこれを満足させることが難しかった。例えば、耐久性向上のために、従来のゴムスリーブは剛性を補強する目的で複雑な強化繊維工程が適用されたが、このため、スリーブの製作効率が大きく落ちる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2,090,801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述した問題点を解決するためのものであり、複雑な強化繊維工程なしにスプリング特性および剛性が向上した車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングを提供しようとする。
【0008】
また、本発明はスリーブの膨脹率の管理を通じて素材の応力管理が容易な車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングを提供しようとする。
【0009】
また、本発明は設計自由度の改善により製品の性能が向上し得る車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングを提供しようとする。
【0010】
また、本発明はスリーブが複数個に分割されてそれぞれが射出成形で製作されることによって、それぞれのスリーブ射出成形時に射出成形の流れ性が改善されスリーブの品質が向上した車両用エアスプリングのためのスリーブおよびこれを含む車両用エアスプリングを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例に係る車両用エアスプリングのためのスリーブ500は、少なくとも上部スリーブ520と下部スリーブ540、640を含み、前記上部スリーブ520の上端円周部分522はトップマウント部に結合され、前記下部スリーブ540、640の下端円周部分544、644はピストン部に結合され、前記上部スリーブ520と前記下部スリーブ540、640のうち一つは長手方向に沿って区間別に互いに異なる厚さを有するように形成され得る。
【0012】
一例として、ピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さが、ピストン部が最大に下降する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きくてもよい。
【0013】
また、一例として、ピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さが、車両が走行可能状態であり車両が停止している時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きくてもよい。
【0014】
本発明の一実施例によると、前記上部スリーブ520の下端円周部分524と前記下部スリーブ540の上端円周部分542は互いに重なるように配置され、重なる領域で上部スリーブ520の厚さと下部スリーブ540の厚さは実質的に同一であるかまたは重なるスリーブのうち内側に配置されるスリーブが外側に配置されるスリーブよりさらに厚くてもよい。
【0015】
また、前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブは長手方向に内径が同一の区間と長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する区間を少なくとも含むように構成され得る。長手方向に内径が同一の区間と長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する区間の間には両区間を連結する内径変移区間が形成され得る。
【0016】
本発明の一実施例によると、ピストン部が最大に上昇する時にローリングローブが形成される領域で最大厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成され得る。
【0017】
また、車両が走行可能状態であり車両が停止している時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成され得る。
【0018】
また、ピストン部が最大に下降する時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブが形成され得る。
【0019】
前記最大厚は3.0~7.0mmの範囲内であり得る。前記最小厚は1.0~4.0mmの範囲内であり得る。
【0020】
本発明の一実施例によると、前記互いに異なる厚さを有するように形成されるスリーブは下部スリーブ540、640であり得る。
【0021】
本発明の一実施例に係る、車両用エアスプリングは前述した構造の車両用エアスプリングのためのスリーブ500、600と、前記上部スリーブ520、620の上端円周部分522、622が結合されるトップマウント部と、前記下部スリーブ540、640の下端円周部分544、644が結合されるピストン部を含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施例によると、車両用エアスプリングのためのスリーブは長手方向に区間別に互いに異なる厚さを有することによって、複雑な強化繊維工程なしにスプリング特性および剛性が同時に向上し得る。
【0023】
また、複数個に分割されてそれぞれが射出成形で製作されることによって、それぞれのスリーブ射出成形時に射出成形の流れ性が改善されスリーブの品質が向上し、設計自由度が改善されて製品の性能が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例に係るスリーブの斜視図である。
【
図2】
図1に図示されたスリーブの分解斜視図である。
【
図4】本発明のさらに他の実施例に係るスリーブの斜視図である。
【
図5】
図4に図示されたスリーブの分解斜視図である。
【
図7】下部スリーブの長手方向による厚さ変化を説明する下部スリーブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は多様な変更を加えることができ、種々の実施例を有することができるところ、特定の実施例について図面を参照して詳細に説明することにする。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。各図面を説明するにおいて、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使った。第1、第2、A、Bなどの用語は多様な構成要素の説明に使われ得るが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく第1構成要素は第2構成要素と命名され得、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名され得る。「および/または」という用語は複数の関連した記載項目の組み合わせまたは複数の関連した記載項目のいずれかの項目を含む。或る構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか「接続されて」いると言及される時には、その他の構成要素に直接的に連結されていたりまたは接続されていてもよいが、中間に他の構成要素が存在してもよいと理解されるべきである。反面、或る構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるとか「直接接続されて」いると言及された時には、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されるべきである。本出願で使った用語は単に特定の実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。また、「第1」および「第2」という用語は本明細書で区別の目的でのみ使われ、いかなる方式によっても序列または優先順位を示したり予想することを意味しないものと理解されるべきである。異なって定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使われるすべての用語は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。また、「約」という用語は本明細書でこの発明が属する技術分野の製造公差の範囲を含むものと理解されるべきである。
【0026】
明細書および請求の範囲全体において、或る部分が何らかの構成要素を含むとする時、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。以下、本発明に係る好ましい実施例を添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
エアスプリングはトップマウント部とピストン部の間に配置されてスプリングとして作動するように具現され得る。例えば、エアスプリングはハウジングおよびスリーブを含むことができる。
【0028】
本発明の一実施例によると、スリーブの一端はトップマウント部に気密に固定され他端はピストン部に気密に固定され得る。スリーブはハウジングによって囲まれ得る。
【0029】
一例として、スリーブはピストン部の上下移動により体積が変わり得る空気袋である。すなわち、内部に一定の圧力を有するスリーブは前記上下移動によりその体積が変わることになり、それに相応して内部圧力が変わりながらスプリングとして作動することになる。
【0030】
本発明の一実施例によると、スリーブの一端はトップマウント部に気密に固定され他端はピストン部の内面に気密に固定され得る。スリーブはハウジングによって囲まれ得る。ピストン部が軸方向に上向きに相対運動をすることになると、スリーブの折り曲げられた部分、すなわちローリングローブが形成される部分がピストン部とともに巻かれて丸く形成され得る。これに伴い、スリーブ内の空気が圧縮されながらエアスプリングはスプリングとして作動することになる。
【0031】
図1は、本発明の一実施例に係るスリーブの斜視図である。
図1に図示されたスリーブはトップマウント部およびピストン部に装着されてローブが形成される前のスリーブである。
図2は、
図1に図示されたスリーブの分解斜視図である。
図3は、
図1に図示されたスリーブの断面図である。
【0032】
図1~
図3に図示された通り、本発明の一実施例に係る車両用エアスプリングのためのスリーブ500は、一例として、全体的にシリンダー状であり得、少なくとも上部スリーブ520と下部スリーブ540を含むことができる。上部スリーブ520の上端円周部分522はトップマウント部に結合され、上部スリーブ520の下端円周部分524は下部スリーブ540の上端円周部分542に結合され得る。下部スリーブ540の下端円周部分544はピストン部に結合される。
【0033】
図1では、上部スリーブ520と下部スリーブ540のうち下部スリーブ540がローリングローブを形成する領域を含むように構成されたが、上部スリーブ520がローリングローブを形成する領域を含むように構成されてもよい。
【0034】
本発明では、スリーブ500がローリングローブを形成する領域を含むスリーブとそのような領域を含まないスリーブに分割されて製作され得る。これに伴い、スリーブ500に要求される高い剛性は満足させながら、同時にスリーブ500の設計自由度が改善されスリーブの製造効率性が改善され得る。
【0035】
例えば、上部スリーブ520と下部スリーブ540は同一素材で製作され得るが、ローリングローブを形成する領域を含まないスリーブが残りのスリーブより剛性がさらに高い素材で製作され得る。剛性が高い素材はローリングローブ形成に適していないこともあるためである。
【0036】
また、上部スリーブ520と下部スリーブ540は熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomer、TPE)素材で射出成形によって製作され得る。
【0037】
熱可塑性エラストマー素材は一般のプラスチック素材のように、射出、押出ブローモールディングなどによる成形が可能であり再使用ができながらも、エラストマーの性質を有する。
【0038】
本発明の一実施例によると、上部スリーブ520と下部スリーブ540が熱可塑性エラストマー素材で射出成形によってそれぞれ独立的に製作されるところ、上部スリーブ520と下部スリーブ540の設計自由度が改善され得る。例えば、ローリングローブが形成される領域を含むスリーブは(後述するように)長手方向に厚さ変化を有するようにすることによって、優秀な剛性およびスプリング特性を有するように設計され得る。
【0039】
それだけでなく、スリーブ500の射出成形の流れ性も改善され得る。本発明の一実施例に係るスリーブ500は長手方向に内径が異なるように設計され得るが、これは一つのスリーブで射出成形することになる場合、射出成形の流れ性が悪くなる原因となり、それによりスリーブの品質管理が困難であり得る。本発明では、スリーブ500が上部スリーブ520と下部スリーブ540に分割製作されるところ、射出成形時の射出成形の流れ性が改善され得る。
【0040】
本発明の一実施例によると、上部スリーブ520の下端円周部分524と下部スリーブ540の上端円周部分542が溶接されることによって、上部スリーブ520の下端円周部分524が下部スリーブ540の上端円周部分542に付着され得る。
【0041】
例えば、上部スリーブ520の下端円周部分524の終端と下部スリーブ540の上端円周部分542の終端が互いに対向するように上部スリーブ520および下部スリーブ540を配置(バットジョイント、butt joint)して互いに対向する部分を溶接することによって、上部スリーブ520の下端円周部分524が下部スリーブ540の上端円周部分542に付着され得る。
【0042】
より好ましくは、本発明の一実施例によると、
図3に図示された通り、上部スリーブ520の下端円周部分524と下部スリーブ540の上端円周部分542は互いに重なるように配置され得る。重なった領域は溶接されることによって、上部スリーブ520の下端円周部分524が下部スリーブ540の上端円周部分542に付着され得る。
【0043】
また、このような溶接のために、上部スリーブ520の下端円周部分524と下部スリーブ540の上端円周部分542のうち一つは残りのスリーブのポジショニングのためのステップ部が円周方向に沿って形成され得る。一例として、
図3では、上部スリーブ520の下端円周部分524に円周方向に沿ってステップ部546が形成されるものが図示された。
【0044】
また、本発明の一実施例によると、重なった領域で上部スリーブ520および下部スリーブ540はレーザー溶接で接合され得る。すなわち、上部スリーブ520の下端円周部分524と下部スリーブ540の上端円周部分542が円周方向に沿ってレーザー溶接することによって接合され得る。このために、一例として、内側に配置されるスリーブはレーザーエネルギー吸収素材を含み、外側に配置されるスリーブはレーザー透過可能素材を含むことができる。レーザーエネルギー吸収素材の一例として、内側に配置されるスリーブはカーボンブラックを含むことができる。
【0045】
また、本発明の一実施例によると、上部スリーブ520の下端円周部分524および下部スリーブ540の上端円周部分542のそれぞれは外側に延びるフランジを含むように構成されてもよい。
【0046】
フランジは互いに対向して接触するように配置され、フランジが溶接されることによって、上部スリーブ520の下端円周部分524が下部スリーブ540の上端円周部分542に付着され得る。
【0047】
図4は、本発明のさらに他の実施例に係るスリーブの斜視図である。
図5は、
図4に図示されたスリーブの分解斜視図である。
図6は、
図4に図示されたスリーブの断面図である。
【0048】
図4~
図6を参照すると、本発明の一実施例に係るスリーブ600は上部スリーブ620と下部スリーブ640の間に介在される中間スリーブ660をさらに含むことができる。上部スリーブ620の下端円周部分624は中間スリーブ660の上端円周部分662に結合され、中間スリーブ660の下端円周部分664は下部スリーブ640の上端円周部分642に結合され得る。下部スリーブ640の下端円周部分644はピストン部に結合され得る。上部スリーブ620の上端円周部分622はトップマウント部に結合され得る。
【0049】
一例として、上部スリーブ620の下端円周部分624と中間スリーブ660の上端円周部分662が溶接されることによって、上部スリーブ620の下端円周部分624が中間スリーブ660の上端円周部分662に付着され、中間スリーブ660の下端円周部分664と前記下部スリーブ640の上端円周部分642が溶接されることによって、中間スリーブ660の下端円周部分664が下部スリーブ640の上端円周部分642に付着され得る。
【0050】
例えば、上部スリーブ620の下端円周部分624の終端と中間スリーブ660の上端円周部分662の終端が互いに対向するように上部スリーブ620および中間スリーブ660を配置して互いに対向する部分を溶接することによって、上部スリーブ620の下端円周部分624が中間スリーブ660の上端円周部分662に付着され得る。
【0051】
これを通じて、本発明のスリーブ600は設計自由度がさらに改善され得る。例えば、上部スリーブ620と下部スリーブ640は独立的にそれぞれが互いに異なる材料で製作され得るが、上部スリーブ620と下部スリーブ640を互いに接合する構造では接合のために素材選択の自由度が落ち得る。反面、上部スリーブ620と下部スリーブ640の間に中間スリーブ660が介在される場合には、上部スリーブ620と下部スリーブ640が、接合が容易でない素材が選択されても中間スリーブ660を通じて接合の困難が解決され得る。
【0052】
より好ましくは、本発明の一実施例によると、
図6に図示された通り、上部スリーブ620の下端円周部分624と中間スリーブ660の上端円周部分662が互いに重なるように配置され、中間スリーブ660の下端円周部分664と下部スリーブ640の上端円周部分642が互いに重なるように配置され得る。このような場合、追加的に、中間スリーブ660の上端円周部分662と上部スリーブ620の下端円周部分624のうち一つはポジショニングのためのステップ部666が円周方向に沿って形成され、中間スリーブ660の下端円周部分664と下部スリーブ640の上端円周部分642のうち一つはポジショニングのためのステップ部668が円周方向に沿って形成され得る。
図6では、一例として、中間スリーブ660の上端円周部分662と中間スリーブ660の下端円周部分664にステップ部666、668が形成されるものが図示された。
【0053】
上部スリーブ620の下端円周部分624と中間スリーブ660の上端円周部分662は互いに重なるように配置され、重なった領域が溶接されることによって、上部スリーブ620の下端円周部分624が中間スリーブ660の上端円周部分662に付着され得る。同様に、中間スリーブ660の下端円周部分664と下部スリーブ640の上端円周部分642は互いに重なるように配置され、重なった領域が溶接されることによって、中間スリーブ660の下端円周部分664が下部スリーブ640の上端円周部分642に付着され得る。
図6では、一例として、重なった領域で中間スリーブ660が内側に配置され、上部スリーブ620~下部スリーブ640が外側に配置される。このような配置構造では、中間スリーブ660と上部スリーブ620または下部スリーブ640がレーザー溶接される場合、中間スリーブ660はレーザーエネルギー吸収素材(例えば、カーボンブラック)で製作され得、上部スリーブ620および下部スリーブ640はレーザー透過可能素材で製作され得る。
【0054】
また、本発明の一実施例によると、上部スリーブ620の下端円周部分624および中間スリーブ660の上端円周部分662のそれぞれは外側に延びるフランジを含むように構成されてもよい。フランジは互いに対向して接触するように配置され、フランジが溶接されることによって、上部スリーブ620の下端円周部分624が中間スリーブ660の上端円周部分662に付着され得る。
【0055】
同様に、中間スリーブ660の下端円周部分664および下部スリーブ640の上端円周部分642のそれぞれは外側に延びるフランジを含むように構成され得る。フランジは互いに対向して接触するように配置され、フランジが溶接されることによって、中間スリーブ660の下端円周部分664が下部スリーブ640の上端円周部分642に付着され得る。
【0056】
図7は、下部スリーブの長手方向による厚さ変化を説明する下部スリーブの断面図である。
図7に図示されたような下部スリーブの構成は、
図1の上部スリーブ、下部スリーブで構成されるスリーブと
図4の上部スリーブ、中間スリーブ、下部スリーブで構成されるスリーブの両方に適用され得る。また、以下では下部スリーブを中心に厚さ変化の構成を説明したが、このような厚さ変化の構成は上部スリーブにも適用され得るものと理解されるべきである。
【0057】
本発明に係るスリーブ(特に、下部スリーブ)はピストン部の上下移動により体積が変わり得る空気袋として作動する。すなわち、内部に一定の圧力を有するスリーブはピストン部の上下移動によりその体積が変わることになり、それに相応して内部圧力が変わることになる。
【0058】
例えば、ピストン部が最大に上昇する時(full jounce)、スリーブは最小の体積を有することになり、内部圧力はそれにより上昇することになってローリングローブが形成される領域が受けることになるロードも大きくなることになる。反面、ピストン部が最大に下降する時(full rebound)、スリーブは最大の体積を有することになり、内部圧力はそれにより下降することになってローリングローブが形成される領域が受けることになるロードも減少することになる。
【0059】
一方、スリーブは耐久性のために剛性も要求されるが、同時にスプリング特性も要求される。
【0060】
耐久性およびスプリング特性を同時に満足させるために、本発明の一実施例に係る下部スリーブ540、640は長手方向に沿って区間別に互いに異なる厚さを有するように形成され得る。
【0061】
一例として、ピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さが、ピストン部が最大に下降する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きくてもよい。またはピストン部が最大に上昇する時のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さが、車両が走行可能状態であり車両が停止している時(車両がノマル(normal)ポジションであるとき)のローリングローブが形成される領域でのスリーブの厚さより大きくてもよい。
【0062】
これに伴い、大きなロードが適用される領域のスリーブの厚さを大きくすることによってスリーブの耐久性が向上し得、同時に相対的に小さいロードが適用される領域のスリーブの厚さを小さくすることによってエアスプリングのスプリング特性が保障され得る。
【0063】
本発明の一実施例によると、下部スリーブ540、640はピストン部が最大に上昇する時にローリングローブが形成される領域で最大厚を有するように形成され得る。一例として、最大厚は3.0~7.0mmの範囲内であり得る。
【0064】
また、本発明の一実施例によると、下部スリーブ540、640は車両が走行可能状態であり車両が停止している時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように形成され得る。また、下部スリーブ540、640はピストン部が最大に下降する時にローリングローブが形成される領域で最小厚を有するように形成され得る。追加的に、よりスプリング特性を付与するために、下部スリーブ540、640はピストン部が最大に下降する時にローリングローブが形成される領域および車両が走行可能状態であり車両が停止している時にローリングローブが形成される領域全体に亘って最小厚を有するように形成され得る。一例として、最小厚は1.0~4.0mmの範囲内であり得る。
【0065】
本発明の一実施例によると、(前述した通り)上部スリーブ520の下端円周部分524と前記下部スリーブ540の上端円周部分542は互いに重なるように配置され、重なった領域はレーザー溶接によって付着され得る。
【0066】
このような点を勘案して、本発明では重なる領域で上部スリーブ520の厚さと下部スリーブ540の厚さは長手方向に沿って変わらないように構成され得る。レーザー溶接を適用するにおいて重なった部位には同じエネルギーが伝達されなければならないが、長手方向に沿って厚さが変わる場合、同じエネルギーが伝達され難く、溶接条件が複雑になるためである。一例として、重なる領域は長手方向に5mm以上であり得る。
【0067】
重なる領域で、上部スリーブ520の厚さと下部スリーブ540の厚さは互いに同じであるように構成されるか、重なるスリーブのうち内側に配置されるスリーブが外側に配置されるスリーブよりさらに厚くてもよい。
【0068】
前述した構成を具備する一例として、(
図7に図示された通り)下部スリーブ540、640は長手方向に内径が同一の第1区間と、長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する第2区間と、長手方向に内径が同一の第3区間と、長手方向に下向きに行くほど内径が一定に減少する第4区間と、長手方向に内径が同一の第5区間を、上から下へ、順に含むように構成され得る。また、各区間の間には各区間を連結する内径変移区間が形成され得る。
【0069】
第1区間でスリーブは長手方向に沿って実質的に厚さが同一であり、その厚さは例えば約3mmであり得る。第2区間はピストン部が最大に上昇する時にローリングローブが形成される領域を含むことができ、第2区間の厚さは最大厚であって、例えば約3.5mmであり得る。
【0070】
第3区間、第4区間、第3区間と第4区間を連結する内径変移区間はピストン部が最大に下降する時にローリングローブが形成される領域および車両が走行可能状態であり車両が停止している時にローリングローブが形成される領域を含むことができ、第3区間、第4区間、第3区間と第4区間を連結する内径変移区間の厚さは最小厚であって、例えば約2.5mmであり得る。
【符号の説明】
【0071】
500、600:スリーブ
520:上部スリーブ
540:下部スリーブ
660:中間スリーブ