(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174852
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】搬送用ベルト
(51)【国際特許分類】
B65G 15/32 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B65G15/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024090830
(22)【出願日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2023092787
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優太
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024AA06
3F024AA14
3F024AA15
3F024BA04
3F024CA04
3F024CB02
3F024CB07
(57)【要約】
【課題】従来よりも環境負荷を低減し得る搬送用ベルトを提供する。
【解決手段】搬送用ベルト10は、樹脂組成物で形成されたベルト本体12と、ベルト本体12の搬送面12aと反対の面12bに設けられた導電性樹脂層14と、を有し、樹脂組成物が、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。搬送用ベルト10は、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有させることで、石化由来成分の使用を抑制できることから、その分、従来よりも環境負荷を低減し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物で形成されたベルト本体と、
前記ベルト本体の搬送面と反対の面に設けられた導電性樹脂層と、
を有する搬送用ベルトであって、
前記樹脂組成物は、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる、搬送用ベルト。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、エステル系である、
請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂は、前記バイオマス由来成分のポリオール成分より成るソフトセグメントと、石化由来成分のイソシアネート成分より成るハードセグメントと、を有する、
請求項2に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記ベルト本体は、バイオマス度が10[wt%]以上95[wt%]以下である、
請求項2に記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記搬送用ベルトの伸張率が10[%]のときの前記搬送用ベルトの幅1[mm]当たりの荷重が1.5[N/mm]以下である、
請求項2に記載の搬送用ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
各種物品又は物品を収容した段ボールなどの搬送物には、搬送用ベルトが用いられている。搬送用ベルトは、例えば、ローラーコンベアに設けた複数のローラーに掛けられて張設され、少なくとも一方向に走行することによって、搬送物を移動させる。このような搬送用ベルトとしては、従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂により形成されたベルト本体を用いた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、石化由来成分(化石燃料由来成分)で構成されているため、枯渇資源である石油の使用量低減の意識の高まりにより、将来的に使用が懸念されるおそれもある。また、石化由来の樹脂製品は、焼却廃棄時に多量の二酸化炭素を排出するため、地球環境への負荷も懸念されている。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、従来よりも環境負荷を低減し得る搬送用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送用ベルトは、樹脂組成物で形成されたベルト本体と、前記ベルト本体の搬送面と反対の面に設けられた導電性樹脂層と、を有する搬送用ベルトであって、前記樹脂組成物は、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、石化由来成分の使用を抑制できることから、その分、従来よりも環境負荷を低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る搬送用ベルトの構成を示す断面図である。
【
図2】引張り試験から得られた荷重と伸張率との関係を示すグラフである。
【
図3】ベルト本体にバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルトと石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルトとについての引張り試験から得られた荷重と伸張率との関係を示すグラフである。
【
図5】バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートと石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートとについての引張り試験から得られた荷重と伸張率との関係を示すグラフである。
【
図7】バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートとバイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートとについての引張り試験から得られた荷重と伸張率との関係を示すグラフである。
【
図9】バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート、及び石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの硬度(JIS-A)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前後における変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面について本発明の一実施形態を詳述する。
【0010】
(1)<搬送用ベルトの構成>
図1に示すように、本実施形態に係る搬送用ベルト10は、ベルト本体12と導電性樹脂層14とが重ね合わされた構成を有する。この場合、搬送用ベルト10は、ベルト本体12の搬送面12aと反対の面12bに導電性樹脂層14が積層形成されている。搬送用ベルト10は、両端が接合されて無端状のベルトとされ、例えば、ローラーコンベアに設けた複数のローラーに掛けられて張設され、ローラーの回転により一方向に走行する。搬送用ベルト10をローラーに掛けて使用する場合、当該搬送用ベルト10に必要とされる伸張域は1~5[%]程度となり、この伸張域での張力が重要となる。このようにローラーコンベアに使用する搬送用ベルト10にはある程度の伸びが必要となるため、搬送用ベルト10が樹脂のみで構成されることが望ましい。
【0011】
ベルト本体12の一方の面は搬送物と接触する搬送面12aになっている。搬送用ベルト10は、例えば、搬送面12aに搬送物を載せた状態で一方向に走行することで、走行方向に搬送物を搬送する。なお、例えば、搬送用ベルト10と平行に走行する他の搬送用ベルトの搬送面との間に搬送物を挟んだ状態で搬送用ベルト10を走行させることで、搬送物を搬送してもよい。
【0012】
本実施形態に係る搬送用ベルト10は、ベルト本体12によって当該搬送用ベルト10に抗張力が与えられている。このため、ベルト本体12の厚みを導電性樹脂層14の厚みよりも大きくしてある。導電性樹脂層14は、ベルト本体12と接する面と反対の表面14aに小さな凹凸が形成され、当該凹凸によってローラーとの摩擦力を高めている。
【0013】
搬送用ベルト10の厚みは、搬送用ベルト10の搬送面12a上に載置された搬送物を安定して搬送する搬送能力を考慮し、0.5[mm]以上3.0[mm]以下とするのが好ましい。導電性樹脂層14は、導電性を有すれば、色や、その厚みは限定されないが、ベルト本体12の厚みよりも小さく形成される。この例では、ベルト本体12の厚みを1.0[mm]とした場合、導電性樹脂層14の厚みは0.05[mm](表面14aの凹凸を含めた場合0.2[mm])程度となる。
【0014】
(2)<ベルト本体>
ベルト本体12は、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂が含まれた樹脂組成物により形成される。バイオマス由来とは、化石資源を除いた、再生可能な生物由来(植物由来又は動物由来)の有機性資源であることを意味している。
【0015】
熱可塑性ポリウレタン樹脂を含む樹脂組成物には、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂の他に、例えば、顔料や、補強剤、充填剤(フィラー)、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、加工助剤、加水分解防止剤などを適宜含めるようにしてもよい。また、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂単体を樹脂組成物としてもよい。
【0016】
バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂は、エーテル系およびエステル系があり、特にエステル系であることが好ましい。バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂は、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂と比して、耐引き裂き性及び耐油性が高い。このため、搬送用ベルト10は、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂をベルト本体12の構成材料として用いることで、耐引き裂き性や、耐油性が求められる環境下でも使用することができる。
【0017】
エステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分及びイソシアネート成分の他、さらに必要に応じて鎖延長剤などの他の成分を反応させることにより得ることができる。エステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂は、バイオマス由来成分のポリオール成分より成るソフトセグメントと、石化由来成分のイソシアネート成分より成るハードセグメントと、を有する。
【0018】
エステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として、バイオマス由来成分のポリオール成分のみが含有されていることが好ましいが、バイオマス由来成分のポリオール成分に加えて石化由来成分のポリオール成分も含有していてもよい。本実施形態に係るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として、バイオマス由来成分のポリエステルポリオールを含有する。バイオマス由来成分のポリエステルポリオールとしては、例えば、ヒマ(トウゴマの種子)などの植物から得られる植物由来の短鎖ジオールやポリオールなどを挙げることができる。
【0019】
エステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂に含有するイソシアネート成分としては、バイオマス由来成分のイソシアネート成分であってもよく、石化由来成分のイソシアネート成分であってもよい。
【0020】
イソシアネート成分としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどを挙げることができる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。また、イソシアネート成分としては、例えば、ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート(カルボジイミド変性ポリイソシアネート)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー(例えば、ポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であってイソシアネート基を分子末端にもつもの)なども用いることができる。これらは、イソシアネート成分として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本実施形態に係るベルト本体12のバイオマス度は、10[wt%]以上95[wt%]以下であることが好ましい。バイオマス度を10[wt%]以上とすることで、石化由来成分を抑制し得、環境負荷を低減することができる。
【0022】
さらには、ベルト本体12のバイオマス度は、硬度(JIS-A)の観点から、50[wt%]以上70[wt%]以下であることがより好ましい。ここで、ベルト本体12は、搬送用ベルト10の搬送面12a上に載置された搬送物を安定して搬送するために、JIS K7311に準拠して求められる硬度が80(JIS-A)以上90(JIS-A)以下であることが望ましい。バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂の硬度が80(JIS-A)でバイオマス度が70[wt%]程度であり、当該硬度が90(JIS-A)でバイオマス度が50[wt%]程度であったことから、硬度(JIS-A)の観点から、バイオマス度は、50[wt%]以上70[wt%]以下であることがより好ましい。
【0023】
ベルト本体12のバイオマス度は、樹脂組成物に含有させる成分にそれぞれ規定されるバイオマス度に基づいて当該成分の構成重量比から求めることができる。石化由来成分のみからなる熱可塑性ポリウレタン樹脂のみでベルト本体を製造した場合、ベルト本体内にバイオマス由来成分が含まれていないことから、ベルト本体のバイオマス度は0%となる。なお、ベルト本体12のバイオマス度は、石油などの化石資源には放射性炭素(C14)が含まれないことから、ベルト本体12内における生物由来の放射性炭素の含有量を放射性炭素測定により算出して求めることもできる。
【0024】
ベルト本体12のバイオマス度は、例えば、ベルト本体12を構成する樹脂組成物における、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂の含有量を調整したり、或いは、エステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂の構成成分である、バイオマス由来成分のポリオール成分や、バイオマス由来成分のイソシアネート成分の含有量を調整するなどすることで調整することができる。
【0025】
(3)<導電性樹脂層>
導電性樹脂層14は、導電性を付加した樹脂層であり、搬送用ベルト10に帯電防止効果を付与するために設けられている。導電性樹脂層14は、石化由来成分の樹脂に導電性フィラーを含有することによって形成されている。本実施形態では、熱可塑性ポリウレタン樹脂にカーボンブラックを配合して導電性樹脂層14を形成している。
【0026】
導電性樹脂層14を構成する樹脂としては、耐摩耗性、弾性を有するものであれば特に限定されず、例えば、石化由来成分から成る熱可塑性ポリウレタン樹脂の他に、加硫ゴムや、ポリエステルエラストマーなどを用いることもできる。
【0027】
導電性フィラーとしては、樹脂に配合することで、導電性を持たせることができるものであれば特に限定されず、例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、グラファイトなどのカーボン系のもの、鉄、銅などの酸化物などを用いることができる。特に、カーボン系の導電性フィラーは、導電性が高く好ましい。導電性樹脂層14における表面電気抵抗値は、109[Ω/□]以下が望ましい。
【0028】
(4)<搬送用ベルトの製造方法>
搬送用ベルト10は、ベルト本体12と導電性樹脂層14とが剥離しないような手法であれば、任意の手法で製造することができる。例えば、押出ラミネート法で製造する場合には、溶融した樹脂に導電性フィラーを配合したものを、例えば、表面に剥離処理した布材(あるいは剥離紙など)上に展延して導電性樹脂層14を形成する。この布材上の導電性樹脂層14の表面に、ベルト本体12の原料となる樹脂組成物を溶融して押出機からフィルム状に押し出して供給し、これらを冷却ローラーに送り込んでラミネートする。このようにして一体化させたベルト本体12と導電性樹脂層14とが布材から剥がされて搬送用ベルト10を得ることができる。
【0029】
(5)<作用及び効果>
以上の構成において、搬送用ベルト10は、樹脂組成物で形成されたベルト本体12と、ベルト本体12の搬送面12aと反対の面12bに設けられた導電性樹脂層14と、を有し、樹脂組成物が、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含んでいる。搬送用ベルト10は、バイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有させることで、石化由来成分の使用を抑制できることから、その分、従来よりも環境負荷を低減し得る。
【0030】
また、これに加えて、搬送用ベルト10は、樹脂組成物に含むバイオマス由来成分を含む熱可塑性ポリウレタン樹脂として、耐引き裂き性及び耐油性が高いバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いることにより、エーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いるよりも、耐引き裂き性や、耐油性が求められる環境下でも使用することができる。
【0031】
(6)<引張り試験>
<搬送用ベルト本体の製造>
次に、搬送用ベルト10について引張り試験を行い、荷重と伸張率との関係を調べた。実施例1の搬送用ベルト10は、押出ラミネート法で製造した。具体的には、溶融した石化由来成分で成る熱可塑性ポリウレタン樹脂に導電性フィラーを配合した導電性樹脂組成物を得、得られた導電性樹脂組成物を、表面に剥離処理した布材に展開して、布材に支持されたシート状の導電性樹脂層14を作製した。次いで、バイオマス度が約70[wt%]で、かつ、JIS K7311に準拠して求められる硬度が80(JIS-A)である、バイオマス由来成分を含むポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製)を溶融して、押出機からフィルム状に押し出して供給し、得られたベルト本体12と、布材に支持されたシート状の導電性樹脂層14とを重ねて冷却ローラーに送り込んでラミネートした。次いで、ベルト本体12と導電性樹脂層14とが一体化した積層体を布材から剥がして、剥がした当該積層体を搬送用ベルト10とした。
【0032】
導電性樹脂層14の表面には、剥離された布材の痕による凹凸模様が生じていた。ベルト本体12の厚さは、1.0[mm]であり、導電性樹脂層14の厚さは、表面14aの凹凸を含めて0.2[mm]であり、搬送用ベルト10の厚さは1.2[mm]であった。そして、得られた搬送用ベルト10を切断して、幅10[mm]、長さ400[mm]のダンベル状試験片(バイオマス由来品とも称する)を作製した。
【0033】
<伸張率及び荷重>
株式会社島津製作所製の測定装置(オートグラフAGS-5kNG)を用いて、引張速度50[mm/min]で実施例1のバイオマス由来品について引張り試験を行い、荷重[N/mm]と伸張率[%]とを測定した。その結果、
図2に示すような結果が得られた。
図2から、実施例1は、例えば、伸張率が10[%]のときの搬送用ベルト10の幅1[mm]当たりの荷重が、1.5[N/mm]以下であった。実施例1の搬送用ベルト10は、張力を低く抑えることができると言えるため、当該搬送用ベルト10を巻き掛けるローラーに加わる荷重を低減でき、ローラーの破損を防止することができる。
【0034】
(7)<異なる樹脂を用いた搬送用ベルトの引張り試験>
上記と同様にして、ベルト本体12にバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルト10と、ベルト本体に石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルトとを製造した。ベルト本体に用いた樹脂の種類を除いては、両ベルトは同様とした。
【0035】
上記で得られたベルト本体に異なる樹脂を用いた搬送用ベルトについて、上記と同様にして引張り試験を行い、荷重[N/mm]と伸張率[%]とを測定した。その結果、
図3に示すような結果が得られた。
図3は、ベルト本体12にバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルト10(
図3中「バイオマス由来(エステル系)」と示す)と、ベルト本体に石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂(
図3中「石化由来(エステル系)」と示す)を用いた搬送用ベルトとにおける荷重[N/mm]と伸張率[%]との関係を示す。
図4は、
図3の伸張率10%以下の範囲を拡大した図である。
【0036】
図3及び
図4に示すように、伸張率10%以下の範囲において、ベルト本体12にバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルト10と、ベルト本体に石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルトとでは、伸張率に対する荷重を比較すると、両者で同程度、もしくはベルト本体12にバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂を用いた搬送用ベルト10の方が低い傾向にある。
【0037】
(8)<異なる樹脂シートの引張り試験1>
バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートと、石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートを準備した。
【0038】
上記の各樹脂シートについて、上記と同様にして引張り試験を行い、荷重[N/mm]と伸張率[%]とを測定した。その結果、
図5に示すような結果が得られた。
図5は、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図5中「バイオマス由来(エステル系)」と示す)と、石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図5中「石化由来(エステル系)」と示す)とにおける荷重[N/mm]と伸張率[%]との関係を示す。
図6は、
図5の伸張率25%以下の範囲を拡大した図である。
【0039】
図5及び
図6に示すように、伸張率25%以下の範囲において、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートと、石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートとでは、伸張率に対する荷重を比較すると、両者で同程度、もしくはバイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの方が低い傾向にある。
【0040】
(9)<異なる樹脂シートの引張り試験2>
バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートと、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートを準備した。
【0041】
上記の各樹脂シートについて、上記と同様にして引張り試験を行い、荷重[N/mm]と伸張率[%]とを測定した。その結果、
図7に示すような結果が得られた。
図7は、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図7中「バイオマス由来(エステル系)」と示す)と、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図7中「バイオマス由来(エーテル系)」と示す)とにおける荷重[N/mm]と伸張率[%]との関係を示す。
図8は、
図7の伸張率25%以下の範囲を拡大した図である。
【0042】
図7及び
図8に示すように、伸張率25%以下の範囲において、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートと、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートとでは、伸張率に対する荷重を比較すると、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの方が低い傾向にある。
【0043】
(10)<次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前後の硬度変化>
上記と同様にして、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート、及び石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートを準備し、以下のようにして、次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前後における硬度(JIS-A)を測定した。
【0044】
まず、各樹脂シートについて、MD-1硬度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHの条件として、各樹脂シート毎に5箇所で硬度(JIS-A)を測定し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前の硬度(JIS-A)を求めた。各樹脂シートの次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前の硬度(JIS-A)は80程度となるように、各樹脂シートを調整した。
【0045】
次に、濃度5000ppm、温度20℃の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に、上記の各樹脂シートを4週間浸漬し、上記と同様にして次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬後の硬度(JIS-A)を求めた。
【0046】
図9は、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図9中「バイオマス由来(エステル系)」と示す)、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図9中「バイオマス由来(エーテル系)」と示す)、及び石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シート(
図9中「石化由来(エステル系)」と示す)の次亜塩素酸ナトリウム水溶液浸漬前後における硬度(JIS-A)の変化を示すグラフであり、
図9中、各樹脂シートについて、浸漬前の硬度を100%として示す。次亜塩素酸ナトリウム水溶液の4週間の浸漬前後での硬度変化(%)は、バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートでは約11%、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートでは約14%、石化由来成分で成るエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートでは約7%であった。バイオマス由来成分を含むエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートの次亜塩素酸ナトリウム水溶液の4週間の浸漬前後での硬度変化(%)は、バイオマス由来成分を含むエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂シートより小さかった。
【符号の説明】
【0047】
10 搬送用ベルト
12 ベルト本体
12a 搬送面
14 導電性樹脂層