(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174878
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】3つの開始剤を含む液体組成物、その重合プロセス、使用、及び組成物の重合後に得られる材料又は組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20241210BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20241210BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20241210BHJP
C08F 4/32 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F265/06
C08F20/10
C08F4/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135854
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2020570507の分割
【原出願日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】1855539
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾラー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】エスカーレ, ピエール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】迅速にかつ良好な変換性で重合することができる開始剤を含む液体組成物を提供する。
【解決手段】液体組成物であって、a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及びc)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を含み、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有している、液体組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物であって、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含み、
25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有している、
液体組成物。
【請求項2】
組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量が、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して0.1phrから15phrの間であることを特徴とする、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量が、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して1phrから5phrの間であることを特徴とする、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)が、所与の温度T1で異なる半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
第3の開始剤(Ini3)が、所与の温度T1において、該T1における第2の開始剤(Ini2)の半減期t1/2よりも重要であるか、又はそれよりも大きい半減期t1/2を有し、第2の開始剤(Ini2)が、所与の温度T1において、該T1における第1の開始剤(Ini1)の半減期t1/2よりも重要であるか、又はそれよりも大きい半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
第2の開始剤(Ini2)は、所与の温度T1において、第1の開始剤(Ini1)の半減期t1/2の少なくとも2倍の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
第3の開始剤(Ini3)が、所与の温度T1において、第2の開始剤(Ini2)の半減期t1/2の少なくとも2倍の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項8】
温度T1が、40℃から160℃の間、さらに好ましくは40℃から140℃の間、有利には50℃から130℃の間であることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項9】
第1の開始剤(Ini1)が、40℃から90℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項10】
第1の開始剤(Ini1)が、50℃から75℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項11】
第2の開始剤(Ini2)が、70℃から100℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項12】
第2の開始剤(Ini2)が、75℃から85℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項13】
第3の開始剤(Ini3)が、75℃から160℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項14】
第3の開始剤(Ini3)が、85℃から130℃の間の温度で1時間の半減期t1/2を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項15】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)の間の所与の半減期での温度差が少なくとも5Kであることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項16】
開始剤(Ini3)と(Ini1)の間の所与の半減期での温度差が最大で50Kであることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項17】
開始剤(Ini3)と(Ini1)の間の所与の半減期での温度差が10Kから50Kの間であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項18】
開始剤(Ini3)と(Ini1)の間の所与の半減期での温度差が20Kから40Kの間であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項19】
開始剤(Ini2)と(Ini1)の間の所与の半減期での温度差が、6Kから40Kの間、さらになお好ましくは7Kから30Kの間であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項20】
開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)が、ペルオキシ基含有化合物又はアゾ基含有化合物から、好ましくはペルオキシ基含有化合物から選択することができることを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項21】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)が、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾジ-(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾジ(ヘキサヒドロベンゾニトリル)、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸(cyanopentanoic))から選択されることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項22】
開始剤(Ini1)が、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、又は1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートから選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項23】
開始剤(Ini2)が、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、又は3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンから選択されることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項24】
開始剤(Ini3)が、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、又は3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンから選択されることを特徴とする、請求項1から23のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項25】
開始剤(Ini1)が、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、及びジミリスチルペルオキシジカーボネートから選択され、開始剤(Ini2)が、過酸化ベンゾイル、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、及びジデカノイルペルオキシドから選択され、開始剤(Ini3)が、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項26】
開始剤(Ini1)が、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートから選択され、開始剤(Ini2)が、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択され、この第1のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini3)が、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項27】
開始剤(Ini1)が、ジセチルペルオキシジカーボネートから選択され、開始剤(Ini2)が、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択され、開始剤(Ini3)が、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項28】
開始剤(Ini1)が、ジミリスチルペルオキシジカーボネートから選択され、この第3のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini2)が、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択され、開始剤(Ini3)が、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択されることを特徴とする、請求項1から21のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項29】
(メタ)アクリルポリマー(P1)が、少なくとも50重量%のメタクリル酸メチル(MMA)を含むことを特徴とする、請求項1から28のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項30】
(メタ)アクリルモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、及びメタクリル酸イソボルニル、並びにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から29のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項31】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤中の(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)が、(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の40重量%から90重量%の間の割合で存在することを特徴とする、請求項1から30のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項32】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤中の(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)が、(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の45重量%から85重量%の間の割合で存在することを特徴とする、請求項1から30のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物を調製するためのプロセスであって、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
を含む、プロセス。
【請求項34】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)が、50℃未満の温度Taddで加えられることを特徴とする、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)が、25℃未満の温度Taddで加えられることを特徴とする、請求項33に記載のプロセス。
【請求項36】
熱可塑性部品を製造するため又は複合部品を製造するための、請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物、又は請求項33から35のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された液体組成物の使用。
【請求項37】
繊維又は繊維質基体を含浸するための、請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物、又は請求項33から35のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された液体組成物の使用であって、前記繊維又は繊維質基体が長繊維からなる、使用。
【請求項38】
長繊維が連続繊維であるか、若しくは繊維が少なくとも1000のアスペクト比を有することを特徴とする、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
繊維質基体を含浸するための含浸プロセスであって、前記繊維質基体が長繊維からなり、前記プロセスが、前記繊維質基体を請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物で含浸するステップを含む、含浸プロセス。
【請求項40】
長繊維が連続繊維であるか、又は繊維が少なくとも1000のアスペクト比を有することを特徴とする、請求項39に記載の含浸プロセス。
【請求項41】
熱可塑性部品を製造するためのプロセスであって、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との液体混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
iii)i)及びii)で調製された液体組成物を重合のための手段に入れるステップであって、前記組成物が、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が、請求項1から13のいずれか一項に記載される、25℃における10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する
ことを特徴とする、ステップ
iv)重合するステップ
を含むプロセスによる、熱可塑性部品を製造するためのプロセス。
【請求項42】
複合部品を製造するためのプロセスであって、
iii)繊維又は繊維質基体を請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物で含浸するステップ、
iv)重合するステップ
を含むプロセスによる、複合部品を製造するためのプロセス。
【請求項43】
複合部品を製造するためのプロセスであって、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
iii)繊維又は繊維質基体をi)及びii)で調製された液体組成物で含浸するステップであって、前記組成物が、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する
ことを特徴とする、ステップ、
iv)重合するステップ
を含むプロセスによる、複合部品を製造するためのプロセス。
【請求項44】
真空補助樹脂注入(VARI)、引抜成形、真空バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)及びそのバリエーション(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びその変形、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM)又はシート成形コンパウンド(SMC)又はバルク成形コンパウンド(BMC)によって行われる、請求項42又は43に記載のプロセス。
【請求項45】
繊維性基材を型で含浸することによって液体組成物が繊維質基体へと移されることを特徴とする、請求項42又は43に記載のプロセス。
【請求項46】
引抜成形によって行われる、請求項42又は43に記載のプロセス。
【請求項47】
真空補助樹脂注入(VARI)によって行われる、請求項42又は43に記載のプロセス。
【請求項48】
樹脂トランスファ成形(RTM)及びそのバリエーション(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)によって行われる、請求項42又は43に記載のプロセス。
【請求項49】
重合ステップが、80℃から140℃の間、好ましくは90℃から130℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項41から48のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項50】
重合ステップが、100℃から125℃の間の温度で行われることを特徴とする、請求項41から48のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項51】
本発明のすべての実施形態における重合ステップが等温式であることを特徴とする、請求項41から48のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項52】
重合中の温度が、重合温度の20KのΔTの間隔に保たれることを特徴とする、請求項49又は50に記載のプロセス。
【請求項53】
重合中の温度が、重合温度の10KのΔTの間隔に保たれることを特徴とする、請求項49又は50に記載のプロセス。
【請求項54】
熱可塑性(メタ)アクリルマトリクスと、補強材として用いられる繊維質基体とを含むポリマー複合材料であって、繊維質基体が長繊維からなり、前記複合材料が、熱可塑性(メタ)アクリルマトリクスが液体組成物の重合後に得られ、前記繊維質基体が請求項1から32のいずれか一項に記載の液体組成物に予め含浸されることを特徴とする、ポリマー複合材料。
【請求項55】
請求項54に記載される、又は請求項42から53のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる複合材料で作られた機械部品又は構造要素。
【請求項56】
前記部品が、自動車部品、ボート部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機又はヘリコプタ部品、宇宙船又はロケット部品、光起電モジュール部品、建設又は建築用の材料(例えば、土木及び高層建築用の複合鉄筋、ダボ、及びスターラップ)、風力タービン部品(例えば、風力タービンブレードのガーダのスパーキャップ)、家具部品、建設又は建築部品、電話又は携帯電話部品、コンピュータ又はテレビ部品、プリンタ又は複写機部品である、請求項55に記載の部品。
【請求項57】
前記部品が、例えば、土木及び高層建築用の複合鉄筋、ダボ、及びスターラップなどの建設又は建築用の材料である、請求項55に記載の部品。
【請求項58】
前記部品が、例えば、風力タービンブレードのガーダのスパーキャップなどの風力タービン部品である、請求項55に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び少なくとも3つの開始剤を含む液体組成物に関する。
【0002】
特に、本発明は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び異なる半減期を有する少なくとも3つの開始剤を含む液体組成物に関する。該液体組成物は、シロップ剤として、とりわけ繊維又は繊維状材料の含浸用のシロップ剤として使用することができる。液体組成物の重合後に得られる熱可塑性材料にも関する。本発明はまた、このような液体組成物を製造するためのプロセスにも関する。本発明はまた、長繊維の繊維質基体を前記液体組成物で含浸するプロセスにも関する。本発明はまた、複合部品の製造に有用な前記液体組成物で含浸した繊維質基体にも関する。
【0003】
本発明はまた、複合材料で作られた機械部品又は構造要素を製造するためのプロセス、並びにこのような液体組成物を使用するプロセスによって得られる複合材料で作られた機械部品又は構造要素にも関する。
【背景技術】
【0004】
熱可塑性ポリマーは、例えば、建設、航空、自動車、又は鉄道分野など、幾つかの分野及び用途で広く用いられている材料であり、機械部品の一部である。
【0005】
使用中に高い応力に耐える必要があるこれらの機械部品は、複合材料から広く製造されている。複合材料は、2つ以上の非混和性の材料の巨視的な組合せである。複合材料は、マトリクスを形成する少なくとも1つの材料、すなわち構造の結合を確実にする連続相と、補強材料とからなる。
【0006】
複合材料の使用目的は、別々に使用した場合に、その構成要素のそれぞれからは得られない性能品質を取得することである。その結果、複合材料は、とりわけ、均質な材料と比較して、良好な機械的性能(より高い引張強度、より高い引張弾性率、より高い破壊靭性)と低い密度のために、例えば、建築、自動車、航空宇宙、輸送、レジャー、電子機器、スポーツなど、幾つかの産業分野で広く用いられている。
【0007】
熱成形及び再生利用を可能にするためには、複合材料にも熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。
【0008】
熱可塑性ポリマーは、通常は架橋されていない、線状又は分岐ポリマーで構成される。熱可塑性ポリマーは、複合材料の製造に必要な構成成分を混合するために加熱され、最終的な形状を硬化させるために冷却される。これらの溶融熱可塑性ポリマーの問題は、それらの粘度が非常に高いことである。熱可塑性ポリマーに基づくポリマー複合材料を調製するために、一般に「シロップ剤」として知られる熱可塑性ポリマー樹脂を使用して、例えば繊維質基体などの強化材料を含浸させる。ひとたび重合されると、熱可塑性ポリマーのシロップ剤は複合材料のマトリクスを構成する。
【0009】
含浸時、ポリマー複合材料を調製するときに、含浸シロップ剤の粘度は、繊維質基体の各繊維を正しく含浸させるために、流動性又は粘性が高すぎないように制御及び適合されなければならない。シロップ剤の流動性が高すぎるか、又は粘性が高すぎるかどうかに応じて、濡れが部分的である場合、「裸」のゾーン、すなわち非含浸ゾーンと、気泡の生成の原因であるポリマーの液滴が繊維上に形成されるゾーンとが、それぞれ現れる。これらの「裸」のゾーン及びこれらの気泡は、最終的な複合材料に欠陥の出現を生じさせ、これらの欠陥は、とりわけ、最終的な複合材料の機械的強度の損失の原因となる。
【0010】
また、含浸せずに使用する場合にも、生産性を高めるために、良好な変換性で迅速に重合する液体組成物を得ることが望まれる。
【0011】
(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルポリマーを含む液体組成物又はシロップ剤は、国際公開第2013/056845号及び同第2014/013028号に記載されている。両方の文献における(一又は複数の)モノマーの重合は、(一又は複数の)ラジカル生成開始剤、若しくは(一又は複数の)ラジカル生成開始剤システムを含む開始システムを用いて達成される。どちらの文献も、実施例では過酸化ベンゾイルを使用している。
【0012】
国際公開第2014/174098号の文献には、液体(メタ)アクリルシロップ剤が開示されている。該シロップ剤は、促進剤、有機アルデヒド、1つの過酸、及び1つの液体ペルオキシ化合物を含む開始システムを含む。この文献の実施例における重合時間は、数時間又は数十分である。
【0013】
国際公開第2015/110534号の文献には、繊維質基体のための含浸プロセス、含浸プロセスのための液体モノマーのシロップ剤、その重合方法、及びそれらから得られる構造物品が開示されている。文献には、開始剤のリストが一般的な形式で開示されており、それらのうちの2つの組合せを使用することができることが開示されているだけである。
【0014】
国際公開第2013/056845号の文献には、熱可塑性(メタ)アクリル樹脂のその場重合による複合材料が開示されている。文献には、開始剤のリストが一般的な形式で開示されており、それらのうちの2つの組合せを使用することができることが開示されているだけである。
【0015】
米国特許第4,328,329号明細書には、二重開始剤システムを使用してメタクリル酸メチルシロップ剤を重合するプロセスが開示されている。このプロセスは、重合中に温度プロファイルが80℃から135℃になる、数十分のサイクル時間でのキャストシートプロセスに関係する。用いられる開始剤のうちの一方は、常に、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0016】
米国特許第4,605,717号明細書には、三元過酸化物開始剤システムを使用するアクリルポリマーシートの調製が開示されている。このプロセスでは、最初の2つの開始剤での45℃から90℃までと、第3の開始剤による最終硬化での110℃から140℃までの2つの温度範囲を使用する。
【0017】
欧州特許出願公開第0189930号明細書には、二重過酸化物開始剤システムを使用してアクリルポリマーを調製するためのプロセスが開示されている。このプロセスでは、第1の開始剤での10から100分間で45℃から90℃までと、第2の開始剤での最終硬化の5から60分間で110℃から140℃までの2つの温度範囲を使用する。
【0018】
米国特許第5,151,482号明細書には、メタクリル樹脂シートの製造プロセスが開示されている。このプロセスでは、2つの開始剤が用いられている。このプロセスには、加熱及び冷却ランプ、並びに最後の高温硬化など、異なる温度ランプも含まれる。
【0019】
米国特許第4,211,742号明細書には、液体重合性組成物の連続鋳造のためのプロセスが開示されている。シートの厚さが3mmでさえ、重合時間は少なくとも15分である。このプロセスには、異なる温度ランプ及び最後の高温硬化も含まれる。
【0020】
仏国の特許出願である、仏国特許第1663063号明細書には、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び少なくとも2つの開始剤を含む液体組成物が開示されており、該2つの開始剤は異なる半減期を有する。
【0021】
韓国特許出願公開第2004/0014252号明細書には、耐衝撃性のメタクリル成形品及びその製造方法が開示されている。このプロセスは、三元過酸化物開始剤システムと、46℃から120℃までの広い温度範囲とを数時間使用する。
【0022】
これらの文献のいずれにおいても、液体組成物に3つの開始剤を組み込むことにより、とりわけ15分未満の短いサイクル時間で、かつ残留モノマー含有量が少ない場合に、とりわけ単純な温度プロファイルを用いるプロセスで、迅速かつ完全な重合が可能になることは示唆されていない。
【発明の概要】
【0023】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを改善することである。
【0024】
本発明の目的は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び迅速にかつ良好な変換性で重合することができる組成物を有するための開始剤を含む液体組成物を得ることである。良好な変換性とは、少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%のモノマーが重合されているものと理解される。迅速であるとは、重合が15分未満、好ましくは10分未満、さらになお好ましくは5分未満、有利には3分未満で行われるものと理解される。
【0025】
本発明の目的はまた、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び良好な変換性及び容易な離型のための開始剤を含む液体組成物を迅速に重合するためのプロセスを得ることである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、モノマー、(メタ)アクリルポリマー、並びに、最初に用いられたモノマー量に基づいて1%未満の残留モノマーを有する、迅速な重合及び良好な変換性を得るための開始剤を含む液体組成物を使用することである。
【0027】
本発明はまた、含浸中に繊維質基体を完全に、正確に、かつ均一に湿らせることを対象とする。例えば、気泡及びボイドによる繊維の濡れの欠陥は、製造された機械的な又は構造化された部品又は物品、若しくは最終的な複合部品の機械的性能を低下させる。
【0028】
本発明の別の目的は、低コストで行うことができ、かつ熱可塑性ポリマー又は熱可塑性複合材料で作られた機械部品又は構造要素の工業規模の製造を可能にするプロセスを提案することである。加えて、このプロセスは、市販の化合物を使用して実行するのが容易かつ単純である必要がある。複合部品の製造はまた、再現性があり、迅速である必要があり、これは、15分未満、好ましくは10分未満、さらになお好ましくは5分未満、有利には3分未満の短いサイクル時間を意味する。
【0029】
驚くべきことに、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する、液体組成物が、前記(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合後に熱可塑性ポリマー組成物を生成し、前記熱可塑性ポリマー組成物が、ただ1つの開始剤(Ini1)又は(Ini2)、若しくは(Ini1)と(Ini2)の混合物を含む組成物と比較して、速い速度論及び(メタ)アクリルモノマー(M1)の高い変換性を有していることが見出された。
【0030】
液体組成物であって、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)(Ini2)及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する、液体組成物を使用して、前記(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合後に熱可塑性ポリマー組成物を生成することができ、前記熱可塑性ポリマー組成物が、ただ1つの開始剤(Ini1)又は(Ini2)、若しくは(Ini1)と(Ini2)の混合物を含む組成物と比較して、残留モノマーの含有量が低いことも見出された。
【0031】
液体組成物であって、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)(Ini2)及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する、液体組成物を使用して、前記(メタ)アクリルモノマー(M1)の重合後に熱可塑性ポリマー組成物をはるかに速く生成することができ、該熱可塑性ポリマー組成物が、ただ1つの開始剤(Ini1)又は(Ini2)、若しくは(Ini1)と(Ini2)の混合物を含む組成物と比較して、残留モノマーの含有量が低いことも見出された。
【0032】
繊維質基体を含浸させるための液体(メタ)アクリル組成物であって、前記繊維質基体が長繊維からなり、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)(Ini2)及び(Ini3)
を含み、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有することを特徴とする、組成物が、
繊維質基体の完全かつ正確な含浸を与えることもまた見出された。
【0033】
本出願人はまた、驚くべきことに、繊維質基体を含浸するための含浸プロセスであって、前記繊維質基体が長繊維からなり、前記繊維質基体を前記液体組成物又は液体(メタ)アクリル含浸シロップ剤で含浸するステップを含むプロセスが、開始剤(Ini1)又は(Ini2)のみ、若しくは(Ini1)と(Ini2)の混合物を含む組成物と比較して、繊維質基体の完全かつ正確な含浸を与え、良好な変換性への迅速かつ完全な重合を可能にすることも見出した。
【0034】
驚くべきことに、複合部品を製造するためのプロセスであって、
i)繊維質基体を、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含む、このような液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤で含浸するステップ
ii)前記繊維質基体に含浸させた液体(メタ)アクリルシロップ剤を重合するステップ
を含むプロセスによって、生産性が大幅に向上した熱可塑性複合部品を得ることができることも見出された。
【0035】
さらには、製造プロセスによって得られた複合部品が、モノマーのより良好な変換性に起因して、残留モノマー含有量が大幅に改善されていることも見出された。残留モノマー含有量は、使用したモノマーの量に対して5%未満である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
第1の態様によれば、本発明は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含む液体組成物に関し、
前記液体組成物は、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有している。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、繊維質基体を含浸させるための液体組成物に関し、前記繊維質基体は長繊維からなり、前記液体組成物は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤は、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する。
【0038】
第3の態様によれば、本発明は、液体組成物を調製するためのプロセスに関し、前記液体組成物は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤は、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との液体混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
を含むプロセスによって、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する。
【0039】
第4の態様によれば、本発明は、繊維質基体を含浸させるための液体組成物の使用に関し、前記繊維質基体は長繊維からなり、前記液体組成物は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤は、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する。
【0040】
第5の態様によれば、本発明は、熱可塑性部品を製造するため又は複合部品を製造するための液体組成物の使用に関し、前記液体組成物は、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤は、25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する。
【0041】
第6の態様によれば、本発明は、熱可塑性部品を製造するためのプロセスであって、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との液体混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
iii)重合のための手段にi)及びii)で調製された液体(メタ)アクリル組成物を入れるステップであって、前記組成物が、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する、ステップ
iv)重合するステップ
を含むプロセスによる、熱可塑性部品を製造するためのプロセスに関する。
【0042】
第7の態様によれば、本発明は、複合部品を製造するためのプロセスであって、
i)(メタ)アクリルポリマー(P1)と(メタ)アクリルモノマー(M1)との混合物を調製するステップ
ii)前のステップで調製された混合物に開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を一緒に又は順次加えるステップ
iii)繊維又は繊維質基体をi)及びii)で調製された液体(メタ)アクリル組成物で含浸するステップであって、前記組成物が、
a)(メタ)アクリルポリマー(P1)、
b)(メタ)アクリルモノマー(M1)、及び
c)3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)
を含むことを特徴とし、
前記液体(メタ)アクリルシロップ剤が25℃で10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を有する、ステップ
iv)重合するステップ
を含むプロセスによる、複合部品を製造するためのプロセスに関する。
【0043】
用いられる「繊維質基体」という用語は、ストリップ、ラップ、ブレード、ロック、又はピースの形態でありうる、幾つかの繊維、一方向ロービング、又は連続フィラメントのマット、織布、フェルト、又は不織布を指す。
【0044】
用いられる「(メタ)アクリル」という用語は、任意のタイプのアクリル又はメタクリルモノマーを指す。
【0045】
用いられる「PMMA」という用語は、メタクリル酸メチル(MMA)のホモポリマー及びコポリマーを指し、PMMA中のMMAの重量比は、MMAコポリマーについて少なくとも70重量%である。
【0046】
用いられる「モノマー」という用語は、重合を被ることができる分子を指す。
【0047】
用いられる「重合」という用語は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーへと変換するプロセスを指す。
【0048】
用いられる「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱されると液体に変わるか、又はより液体になるか、又はより粘性が低く軟らかくなり、熱及び圧力の印加によって新しい形状をとることができるポリマーを指す。これは、軟化温度を上回って加熱すると熱成形することができる、わずかに架橋した熱可塑性ポリマーにも当てはまる。
【0049】
用いられる「ポリマー複合体」という用語は、幾つかの異なる相ドメインを含む多成分材料を指し、その中で少なくとも1つのタイプの相ドメインは連続相であり、少なくとも1つの成分はポリマーである。
【0050】
用いられる「開始剤」という用語は、一又は複数のモノマーの重合を開始する(start/initiate)ことができる化合物を指す。
【0051】
用いられる「半減期」t1/2という用語は、開始剤の初期量に対して濃度を半分に低下させるために必要な時間を指す。この時間は温度の関数である。
【0052】
略語「phr」は、組成物100部あたりの重量部を意味する。例えば、組成物中の1phrの開始剤とは、1kgの開始剤が100kgの組成物に添加されることを意味する。
【0053】
略語「ppm」は、組成物の百万分率あたりの重量を意味する。例えば、組成物中の1000ppmの化合物とは、0.1kgの化合物が100kgの組成物中に存在することを意味する。
【0054】
本発明においてxからyまでの範囲とは、この範囲の上限及び下限が含まれ、少なくともx、最大でyまでに相当することを意味する。
【0055】
本発明において範囲がxからyの間であるとは、この範囲の上限及び下限が除外されることを意味し、これは、x超かつy未満に相当する。
【0056】
本発明による液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤は、(メタ)アクリルモノマー(M1)又は(メタ)アクリルモノマー(M1)及び(M1+x)、(メタ)アクリルポリマー(P1)、並びに少なくとも3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)の混合物を含む。
【0057】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤の動粘度は、10mPa*sから10000mPa*sまで、好ましくは20mPa*sから7000mPa*sまで、有利には20mPa*sから5000mPa*sまで、有利には20mPa*sから2000mPa*sまで、さらになお有利には20mPa*sから1000mPa*sの間の範囲である。シロップ剤の粘度は、レオメータ又は粘度計で容易に測定することができる。動粘度は25℃で測定される。液体(メタ)アクリルシロップ剤がニュートン挙動を有し、剪断減粘性がない場合、動粘度はレオメータの剪断又は粘度計のモバイルの速度とは無関係である。液体組成物が非ニュートン挙動を有し、剪断減粘性を伴う場合、動的粘度は25℃で1秒-1の剪断速度で測定される。
【0058】
繊維質基体を含浸させるための、本発明による液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤は、とりわけ、(メタ)アクリルモノマー、若しくは、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルポリマー、及び少なくとも3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)の混合物を含む。
【0059】
本発明の液体組成物に関しては、(メタ)アクリルモノマー(M1)、(メタ)アクリルポリマー(P1)、並びに少なくとも3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を含む。ひとたび重合すると、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、(メタ)アクリルモノマー(M1)のモノマー単位を含む(メタ)アクリルポリマー(P2)へと変換される。
【0060】
組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して、少なくとも0.1phrである。好ましくは、組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して、少なくとも0.2phr、さらに好ましくは少なくとも0.5phr、さらになお好ましくは少なくとも0.75phr、有利には少なくとも1phrである。
【0061】
組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計に対して、最大で15phrである。好ましくは、組成物中の2つの開始剤(Ini1)及び(Ini2)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計に対して、最大で12phr、さらに好ましくは最大で10phr、さらになお好ましくは最大で8phr、有利には最大で5phrである。
【0062】
組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して、0.1phrから15phrの間である。好ましくは、組成物中の3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)を合わせた量は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)との合計に対して、0.2phrから12phrの間、さらに好ましくは0.5phrから10phrの間、さらになお好ましくは0.75phrから8phrの間、有利には最大で1phrから5phrの間である。
【0063】
(メタ)アクリルモノマー(M1)に関しては、該モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー、アクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0064】
好ましくは、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー、メタクリル酸ヒドロキシアルキルモノマー、アクリル酸アルキルモノマー、メタクリル酸アルキルモノマー及びそれらの混合物から選択され、アルキル基は、1から22個までの直鎖、分岐、又は環状炭素を含み;アルキル基は、好ましくは、1から12個までの直鎖、分岐、又は環状炭素を含む。
【0065】
有利には、(メタ)アクリルモノマー(M1)は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、及びメタクリル酸ヒドロキシエチル、並びにそれらの混合物から選択される。
【0066】
好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルモノマー(M1)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%は、メタクリル酸メチルである。
【0067】
第1のより好ましい実施形態によれば、モノマー(M1)の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、さらになお有利には90重量%は、メタクリル酸メチルと任意選択的に少なくとも1つの他のモノマーとの混合物である。
【0068】
第2のより好ましい実施形態によれば、液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤は、(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)の合計に対して重量で0.01から10phrの間のモノマー(M2)を含み、前記(メタ)アクリルモノマー(M2)は、少なくとも2つの(メタ)アクリル官能性を含み、有利には、重量で前記(メタ)アクリルモノマー(M2)の0.1から5phrの間である。
【0069】
(メタ)アクリルモノマー(M2)は、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコール(glucol)ジアクリレート、1,3-ブチレングリコール(glucol)メタクリレートから選択されうる。
【0070】
(メタ)アクリルポリマー(P1)に関しては、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートを挙げることができる。好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリルポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。
【0071】
「PMMA」という用語は、メタクリル酸メチル(MMA)のホモポリマー又はコポリマー、若しくはそれらの混合物を意味する。
【0072】
一実施形態によれば、メタクリル酸メチル(MMA)のホモポリマー又はコポリマーは、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利には少なくとも90%、さらに有利には少なくとも95重量%のメタクリル酸メチルを含む。
【0073】
別の実施形態によれば、PMMAは、MMAの少なくとも1つのホモポリマーと少なくとも1つのコポリマーとの混合物、又は異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも2つのホモポリマー又は2つのコポリマーの混合物、又は異なるモノマー組成を有するMMAの少なくとも2つのコポリマーの混合物である。
【0074】
メタクリル酸メチル(MMA)のコポリマーは、70重量%から99.7重量%までのメタクリル酸メチルと、0.3重量%から30重量%までの、メタクリル酸メチルと共重合することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーとを含む。
【0075】
これらのモノマーはよく知られており、とりわけ、アクリル酸及びメタクリル酸、並びにアルキル基が1から12個までの炭素原子を含むアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。例として、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチル、ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1から4個までの炭素原子を含む、アクリル酸アルキルである。
【0076】
第1の好ましい実施形態によれば、メタクリル酸メチル(MMA)のコポリマーは、80%から99.7%まで、有利には90から99.7%まで、さらに有利には90から99.5重量%までのメタクリル酸メチルと、0.3から20%まで、有利には0.3から10%まで、さらに有利には0.5から10重量%までの、メタクリル酸メチルと共重合することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーとを含む。好ましくは、コモノマーは、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチル、及びそれらの混合物から選択される。
【0077】
(メタ)アクリルポリマー(P1)の重量平均分子量は高くなければならず、これは、50,000g/モルを超え、好ましくは100,000g/モルを超えることを意味する。
【0078】
重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)で測定することができる。
【0079】
(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物に完全に溶解する。それにより、(メタ)アクリルモノマー又は(メタ)アクリルモノマーの混合物の粘度を上昇させことができる。得られる溶液は、一般に「シロップ材」又は「プレポリマー」と呼ばれる。液体(メタ)アクリルシロップ剤の動粘度の値は、10mPa.sから10,000mPa.sの間である。シロップ剤の粘度は、レオメータ又は粘度計で容易に測定することができる。動粘度は25℃で測定される。
【0080】
有利には、液体(メタ)アクリルシロップ剤は、追加の自発的に添加された溶媒を含まない。
【0081】
3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)に関しては、該開始剤は、伝播によってポリマー鎖を形成するために、(一又は複数の)モノマーに該モノマーのラジカル重合の開始を始めさせるラジカルを生成する。
【0082】
好ましくは、開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)は、熱によって活性化される。
【0083】
熱活性化開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)は、好ましくはラジカル開始剤である。
【0084】
ラジカル開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)は、ペルオキシ基含有化合物又はアゾ基含有化合物から、好ましくは、ペルオキシ基含有化合物から選択することができる。
【0085】
好ましくは、ペルオキシ基含有化合物は、2から30個までの炭素原子を含む。
【0086】
好ましくは、ペルオキシ基含有化合物は、過酸化ジアシル類、ペルオキシエステル類、ペルオキシジカーボネート類、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシアセタール類、ヒドロペルオキシド又はペルオキシケタールから選択される。
【0087】
好ましくは、2つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)は、所与の温度T1において、異なる半減期t1/2を有する。
【0088】
さらになお好ましくは、第3の開始剤(Ini3)は、所与の温度T1において、T1における第2の開始剤(Ini2)の半減期t1/2よりも重要な半減期t1/2を有しており、第2の開始剤(Ini2)は、所与の温度T1において、該T1における第1の開始剤(Ini1)の半減期t1/2よりも重要な半減期t1/2を有する。
【0089】
さらになお好ましくは、第2の開始剤(Ini2)は、所与の温度T1において、第1の開始剤(Ini1)の半減期t1/2の少なくとも2倍の半減期t1/2を有する。さらになお好ましくは、第2の開始剤(Ini2)は、所与の温度T1において、第1の開始剤(Ini1)の半減期t1/2の少なくとも3倍の半減期t1/2を有する。
【0090】
さらになお好ましくは、第3の開始剤(Ini3)は、所与の温度T1において、第2の開始剤(Ini2)の半減期t1/2の少なくとも2倍の半減期t1/2を有する。さらになお好ましくは、第3の開始剤(Ini3)は、所与の温度T1において、第2の開始剤(Ini2)の半減期t1/2の少なくとも3倍の半減期t1/2を有する。
【0091】
好ましくは、温度T1は、40℃から160℃の間、さらに好ましくは40℃から140℃の間、有利には50℃から130℃の間である。
【0092】
さらに好ましくは、第1の開始剤(Ini1)は、40℃から90℃の間の温度で、さらになお好ましくは45℃から80℃の間、さらになお好ましくは50℃から75℃の間の温度で、1時間の半減期t1/2を有する。
【0093】
さらに好ましくは、第2の開始剤(Ini2)は、少なくとも70℃、さらになお好ましくは少なくとも75℃の温度で、1時間の半減期t1/2を有する。
【0094】
さらに好ましくは、第2の開始剤(Ini2)は、70℃から100℃の間、さらになお好ましくは70℃から90℃の間、さらになお好ましくは75℃から85℃の間の温度で、1時間の半減期t1/2を有する。
【0095】
さらに好ましくは、第3の開始剤(Ini3)は、少なくとも75℃、さらになお好ましくは少なくとも80℃、さらになお好ましくは少なくとも85℃の温度で、1時間の半減期t1/2を有する。
【0096】
さらに好ましくは、第3の開始剤(Ini3)は、75℃から160℃の間、さらになお好ましくは80℃から140℃の間、さらになお好ましくは85℃から130℃の間の温度で、1時間の半減期t1/2を有する。
【0097】
好ましくは、開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)間の所与の半減期での温度差は、少なくとも5Kである。これは、1時間の半減期(half time)t1/2における(Ini1)の温度が75℃の場合に、1時間の半減期(half time)t1/2における(Ini2)の温度が少なくとも80℃であり、1時間の半減期(half time)t1/2における(Ini3)の温度が少なくとも85℃であることを意味する。
【0098】
好ましくは、開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)間の所与の半減期での温度差は、最大で50Kである。これは、1時間の半減期(half time)t1/2での(Ini1)の温度が50℃の場合に、1時間の半減期(half time)t1/2での(Ini3)の温度が最大で100℃であることを意味する。
【0099】
さらに好ましくは、開始剤(Ini2)と(Ini1)との間の所与の半減期での温度差は、5Kから50Kの間、さらに好ましくは6Kから40Kの間、さらになお好ましくは7Kから30Kの間である。
【0100】
さらに好ましくは、開始剤(Ini3)と(Ini1)との間の所与の半減期での温度差は、10Kから50Kの間、さらに好ましくは15Kから40Kの間、さらになお好ましくは20Kから40Kの間である。
【0101】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)は、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾジ-(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾジ(ヘキサヒドロベンゾニトリル)、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸(cyanopentanoic))から選択され、それぞれ3つの開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)の選択は、3つの開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)について前述した特性を考慮して行われる。
【0102】
好ましくは、開始剤(Ini1)は、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン又は1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートから選択される。
【0103】
好ましくは、開始剤(Ini2)は、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、又は3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンから選択される。
【0104】
好ましくは、開始剤(Ini3)は、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、又は3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンから選択される。
【0105】
3つの開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)のうちの各2つの間の重量比は、1/10から10/1の間、好ましくは1/5から5/1の間、さらに好ましくは1/4から4/1の間である。
【0106】
好ましくは、開始剤(Ini1)は、ペルオキシジカーボネート類から選択される。好ましくは、開始剤(Ini1)は、20℃以下の最高保管温度を有する。
【0107】
さらに好ましくは、開始剤(Ini1)は、次の一般式(1)を有する:
【0108】
式中、R1及びR2は、それぞれ存在し、かつアルキル基であり、該アルキル基は、線状、分枝状、又は環状であるか、若しくは3つの組合せであってよく、少なくとも6個の炭素原子、好ましくは8個の炭素原子、さらに好ましくは少なくとも10個の炭素原子を有する。有利には、R1及びR2基はそれぞれ、10から30個の間の炭素原子、さらに有利には10から20個の間の炭素原子を有する。R1及びR2基は、異なっていても同一であってもよい。
【0109】
さらになお好ましくは、開始剤(Ini1)は、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、及びジミリスチルペルオキシジカーボネートから選択され、開始剤(Ini2)は、過酸化ベンゾイル、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、ジラウロイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、及びジデカノイルペルオキシドから選択され、開始剤(Ini3)は、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択される。
【0110】
第1のさらになお好ましい実施形態では、開始剤(Ini1)は、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートから選択される。
【0111】
この第1のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini2)は、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択される。
【0112】
この第1のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini3)は、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択される。
【0113】
第2のさらになお好ましい実施形態では、開始剤(Ini1)は、ジセチルペルオキシジカーボネートから選択される。
【0114】
この第2のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini2)は、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択される。
【0115】
この第2のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini3)は、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択される。
【0116】
第3のさらになお好ましい実施形態では、開始剤(Ini1)は、ジミリスチルペルオキシジカーボネートから選択される。
【0117】
この第3のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini2)は、ジラウロイルペルオキシド及びジデカノイルペルオキシドから選択される。
【0118】
この第3のさらになお好ましい実施形態における開始剤(Ini3)は、過酸化ベンゾイル又はt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサンから選択される。
【0119】
必要に応じて繊維状基材の良好な含浸を可能にするように、液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤の動粘度を維持するため、また、シロップ剤を事前に含浸させた繊維質基体の重合後に得られるマトリクスの熱可塑性特性を維持するために、シロップ剤の化合物は、次の質量パーセントで組み込まれる:
【0120】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤中の(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)は、(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の40重量%から90重量%の間、好ましくは45重量%から85重量%の間の割合で存在する。
【0121】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤中の(一又は複数の)(メタ)アクリルポリマー(P1)は、(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5%、有利には少なくとも10重量%の割合で存在する。
【0122】
液体(メタ)アクリルシロップ剤中の(一又は複数の)(メタ)アクリルポリマー(P1)は、(一又は複数の)(メタ)アクリルモノマー(M1)と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む組成物の50重量%以下、好ましくは40%以下、有利には30重量%以下の割合で存在する。
【0123】
任意選択的な添加剤及び充填剤はすべて、含浸及び/又は重合の前に、液体(メタ)アクリルシロップ剤に添加される。
【0124】
液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤を製造するためのプロセスに関しては、第1のステップは、(メタ)アクリルモノマー(M1)又は(メタ)アクリルモノマーの混合物と(メタ)アクリルポリマー(P1)とを含む第1のシロップ剤を調製するステップからなる。次に、開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)を上記の比率でシロップ剤に添加して、25℃における10mPa*sから10,000mPa*sの間の動粘度を維持する。
【0125】
好ましくは、(メタ)アクリルポリマー(P1)を(メタ)アクリルモノマーに加え、可溶化する。
【0126】
開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)は、一緒に添加しても、別々に添加してもよい。別々に添加する場合、順序は重要ではない。
【0127】
好ましくは、開始剤(Ini3)、(Ini2)、及び(Ini1)は、50℃未満、さらに好ましくは40℃未満、有利には30℃未満、さらに有利には25℃未満の温度Taddで加えられる。
【0128】
以前の段落で詳述した本発明による液体組成物は、繊維又は繊維質基体を含浸するため、又は熱可塑性部品を製造するため又は複合部品を製造するために使用することができる。
【0129】
繊維又は繊維質基体を含浸するためのプロセスは、繊維質基体を液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤で含浸するステップを含む。
【0130】
この含浸ステップは、型内又は密閉型内又は浴中で行うことができる。
【0131】
所与の温度での液体(メタ)アクリルシロップ剤の粘度が含浸プロセスにとってわずかに高すぎる場合、繊維質基体を十分に濡らし、正確かつ完全に含浸させるために、より液体のシロップ剤を得るように、シロップ剤を加熱することが可能である。
【0132】
繊維質基体に関しては、ストリップ、ラップ、ブレード、ロック、又はピースの形態でありうる、幾つかの繊維、一方向ロービング、又は連続フィラメントのマット、織布、フェルト、又は不織布でできているものが挙げられる。繊維状材料は、一次元、二次元、又は三次元のいずれかのさまざまな形態及び寸法を有することができる。繊維質基体は、1つ以上の繊維の集合体を含む。繊維が連続している場合には、それらの集合体は織布を形成する。
【0133】
一次元の形態は、線形をした長い繊維に対応する。繊維は、不連続であっても連続していてもよい。繊維は、連続フィラメントの形態で、ランダムに又は互いに平行に配置することができる。繊維は、該繊維の長さと直径との比率であるアスペクト比によって規定される。本発明で用いられる繊維は、長繊維又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、さらに好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、さらに有利には少なくとも5000、さらになお有利には少なくとも6000、さら有利には、さらに少なくとも7500、最も有利には少なくとも10,000のアスペクト比を有する。
【0134】
二次元の形態は、不織布又は織布のマット又は補強材又は繊維の束に対応し、これらはまた、編組されていてもよい。二次元形態がある特定の厚さを有し、その結果、原理としては三次元であるとしても、それは、本発明によれば二次元と見なされる。
【0135】
三次元形態は、例えば、不織布のマット若しくは補強材若しくは、三次元における二次元形態の集合体である、積み重ねられた又は折り畳まれた繊維の束若しくはそれらの混合物に対応する。
【0136】
繊維状材料の供給源は、天然又は合成でありうる。天然の材料として、植物繊維、木質繊維、動物繊維、又は鉱物繊維を挙げることができる。
【0137】
天然繊維は、例えば、サイザル麻、ジュート、大麻、亜麻、木綿、ココナツ繊維、及びバナナ繊維である。動物繊維は、例えば、羊毛又は毛髪である。
【0138】
合成材料として、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー、又はそれらの混合物の繊維から選択されるポリマー繊維を挙げることができる。
【0139】
ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン類、ポリウレタン類、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル類、エポキシ樹脂類、及びビニルエステル類で構成されうる。
【0140】
また、鉱物繊維は、とりわけE、R、又はS2タイプのガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、又はシリカ繊維から選択することができる。
【0141】
本発明の繊維質基体は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維、並びにそれらの混合物から選択される。
【0142】
好ましくは、繊維質基体は鉱物繊維から選択される。
【0143】
繊維質基体の繊維は、0.005μmから100μmの間、好ましくは1μmから50μmの間、さらに好ましくは5μmから30μmの間、有利には10μmから25μmの間の直径を有する。
【0144】
好ましくは、本発明の繊維質基体の繊維は、一次元の形態では連続繊維(長繊維の場合には、アスペクト比は必ずしも当てはまらないことを意味する)から、若しくは、二次元又は三次元の形態の繊維質基体では長繊維又は連続繊維から選択される。
【0145】
別の追加の態様によれば、本発明は、熱可塑性(メタ)アクリルマトリクスと、補強材として用いられる繊維質基体とを含むポリマー複合材料に関し、ここで、繊維質基体は長繊維からなり、前記複合材料は、本発明による前記液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤を予め含浸させた前記繊維質基体の重合後に、熱可塑性(メタ)アクリルマトリクスが得られることを特徴とする。
【0146】
本発明の別の態様は、
i)繊維質基体を本発明による液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤で含浸するステップ、
ii)前記繊維質基体に含浸させた液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤を重合するステップ
を含む、機械的な又は構造化された部品又は製品を製造するためのプロセスである。
【0147】
本発明のすべての実施形態における重合ステップ中の機械的な又は構造化された部品又は製品を製造するためのプロセス中に、繊維質基体に含浸された液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤の重合は、80℃から140℃の間、好ましくは90℃から130℃の間、さらになお好ましくは100℃から125℃の間の温度で行われる。本発明のすべての実施形態における重合ステップは、等温式である。等温式とは、本発明では、重合中の温度が、重合温度の20KのΔTの間隔に保たれ、かつ温度ランプを含まないことを意味し、ここで、温度は、例えば、重合中に低下するか、又は最後に上昇し、重合中の温度の差は20K以上である。重合中の温度は重合温度とも呼ばれる。例えば、含浸された繊維質基体は100℃まで加熱され、端部の温度は125℃、又は好ましくは120℃を超えない。又は、例えば、含浸された繊維質基体は115℃まで加熱され、重合ステップ中の温度は、105℃から125℃の間、又は100℃から120℃の間など、20Kの間隔内にとどまる。
【0148】
有利には、重合温度は、18K、さらに有利には16K、さらになお有利には14K、さらにもっと有利には12K、最も有利には10KのΔTの間隔に保たれる。
【0149】
複合部品だけでなく、機械的な又は構造化された部品又は製品も製造するためのプロセスに関しては、これらの部品を準備するために、さまざまなプロセスを使用することができる。真空補助樹脂注入(VARI)、引抜成形、真空バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファ成形(RTM)及びそのバリエーション(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びその変形、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM)又はシート成形コンパウンド(SMC)又はバルク成形コンパウンド(BMC)を挙げることができる。
【0150】
複合部品を製造するための第1の好ましい製造プロセスは、繊維性基材を型に含浸させることによって液体組成物が繊維質基体へと移されるプロセスである。上記の型を必要とするプロセスは、成形という用語を含む。
【0151】
複合部品を製造するための第2の好ましい製造プロセスは、液体組成物が引抜成形プロセスで使用されるプロセスである。繊維は、本発明による組成物を含む樹脂バッチを通じて導かれる。繊維質基体としての繊維は、例えば、一方向ロービング又は連続フィラメントマットの形態をしている。樹脂浴に含浸させた後、湿った繊維は、加熱したダイを通じて引っ張られ、そこで重合が行われる。
【0152】
第3の好ましい製造プロセスは、真空補助樹脂注入(VARI)である。
【0153】
第4の好ましい製造プロセスは、樹脂トランスファ成形(RTM)及びそのバリエーション(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)、並びにより好ましい圧縮樹脂トランスファ成形(C-RTM)である。
【0154】
複合部品だけでなく、機械的な又は構造化された部品又は製品も製造するためのプロセスは、後成形ステップをさらに含むことができる。後成形には、複合部品の形状を変更する際の曲げが含まれる。
【0155】
複合部品だけでなく、機械的な又は構造化された部品又は製品も製造するためのプロセスは、溶接又は接着又は積層のステップをさらに含むことができる。
【0156】
本発明によるプロセスから得られる熱可塑性複合部品は、本発明の液体組成物の重合後に後成形することができる。成形には、複合体の形状を変更する際の曲げが含まれる。
【0157】
本発明の液体組成物の重合後に得られる、及び/又は本発明によるプロセスから得られる熱可塑性部品又は製造された複合部品は、溶接、接着、又は積層することができる。
【0158】
このように製造された複合材料で作られた機械部品の使用に関しては、自動車用途、バス又はローリーなどの輸送用途、航海用途、鉄道用途、スポーツ、航空及び航空宇宙用途、太陽光発電用途、コンピュータ関連用途、建設及び建築用途、通信用途、及び風力エネルギー用途を挙げることができる。
【0159】
複合材料で作られた機械部品は、とりわけ、自動車部品、ボート部品、バス部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機又はヘリコプタ部品、宇宙船又はロケット部品、光起電モジュール部品、建設又は建築用の材料(例えば、土木及び高層建築用の複合鉄筋、ダボ、及びスターラップ)、風力タービン部品(例えば風力タービンブレードのガーダのスパーキャップ)、家具部品、建設又は建築部品、電話又は携帯電話部品、コンピュータ又はテレビ部品、若しくはプリンタ又は複写機部品である。
【0160】
第1の好ましい実施形態では、複合材料で作られた機械部品は、とりわけ、例えば、土木及び高層建築用の複合鉄筋、ダボ、及びスターラップなどの建設又は建築用の材料である。
【0161】
第2の好ましい実施形態では、複合材料で作られた機械部品は、とりわけ、例えば、風力タービンブレードのガーダのスパーキャップなどの風力タービン部品である。
【実施例0162】
第1のステップ:液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤の調製
【0163】
液体組成物は、(P1)としての20重量%のPMMA(BS520、アクリル酸エチルをコモノマーとして含むMMAのコポリマー)を、(M1)としての80重量%のメタクリル酸メチルに溶解することによって調製し、これを、HQME(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化させる。
【0164】
この液体組成物に、異なる開始剤を、2つ又は3つの異なる開始剤(Ini1)及び(Ini2)又は(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)の混合物として加える。開始剤(Ini1)又は(Ini2)又は(Ini3)として、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(P16-Akzo Nobel社のPerkadox(登録商標)16)、過酸化ベンゾイル(BPO-Akzo Nobel社のPerkadox(登録商標)CH50X)、ジラウロイルペルオキシド(LP-Arkema社のLuperox(登録商標)LP)、及びジデカノイルペルオキシド(DEC- Arkema社のLuperox(登録商標)DEC)、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン(Tx141-Akzo Nobel社のTrigonox(登録商標)141)が用いられる。
【0165】
比較例は、本発明による3つの開始剤(Ini1)、(Ini2)、及び(Ini3)の混合物を有しない。
【0166】
第2のステップ:液体組成物又は(メタ)アクリルシロップ剤の重合
【0167】
それぞれの組成物の重合は、表1に示されるように、100重量部の液体組成物((M1)及び(P1)のみに基づく)に開始剤を加えることによって行われる。液体組成物は、繊維質基体を含浸させるために用いられる。それぞれの組成物は、型としての金属プレスに入れられ、10バールの圧力下で、100℃から115℃までのさまざまな温度に加熱される。
【0168】
熱電対の助けを借りて、組成物内のわずかな温度上昇が、最大ピークまでの時間にわたって測定される。プレスのさまざまな温度におけるそれぞれのサンプルの最大ピークでの時間が測定され、表2に各組成が示されている。
表3の記号は、次を意味する:
+ プレスから問題なく簡単に離型可能
0 離型が難しい、柔らかく、粘着性のサンプル
* 不完全な重合
【0169】
表2は、金型温度の上昇に伴う実施例及び比較例の重合時間の低下を示しており、これは、より良好な動力学、より速い重合を意味し、一方、実施例のみが、より高い温度で容易に離型することができ、これは、良好な変換性を有することを意味する。