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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174880
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】核酸分析用の多価性結合組成物
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C12M1/34 B
G01N33/53 M
G01N33/536 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024137063
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2021561845の分割
【原出願日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/852,876
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/897,172
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/579,794
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521204909
【氏名又は名称】エレメント バイオサイエンシーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルスラーン,シナン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,モリー
(72)【発明者】
【氏名】ケリンジャー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィユ,ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】プレヴァイト,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジュンホア
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,スー
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,タイラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンパク質間相互作用、タンパク質核酸間相互作用、核酸ハイブリッド形成等の検出に応用できる、粒子に付着したヌクレオチドの複数のコピーを有する粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む多価性結合組成物を含むシステムを提供する。
【解決手段】ポリマーコアおよびそれに付着した複数のヌクレオチド部分を含むヌクレオチドコンジュゲートの組成物と、それに付着した複数のプライミングされた核酸配列を含む表面を有する固体支持体であって、ここで、前記複数のヌクレオチド部分と共に前記複数のプライミングされた核酸配列の複数のプライマー核酸配列が、プライマーの伸長反応において伸長されず、前記複数のヌクレオチド部分の少なくとも2つ以上のヌクレオチド部分が前記複数のプライミングされた核酸配列の少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合される、固体支持体と、を含む、システムとする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する方法であって、該方法は、
a.組成物であって、
i.前記標的核酸配列の2つ以上のコピー、
ii.前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的である2つ以上のプライマー核酸分子、および
iii.2つ以上のポリメラーゼ分子、を含む組成物、
を提供する工程と、
b.ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと(a)の前記組成物における前記標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で前記組成物を前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ヌクレオチド部分の2つ以上のコピー、および随意に1つ以上の検出可能な標識を含む、工程と、
c.前記多価性結合複合体を検出する工程であって、それによって前記標的核酸配列において前記ヌクレオチドの同一性を判定する、工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記標的核酸配列はDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多価性結合複合体の検出は、非結合のまたは溶液媒介性のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートが存在しない状態で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的核酸配列は、複製され、または増幅され、または複製あるいは増幅によって産生されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の検出可能な標識は、蛍光標識である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記多価性複合体の検出する工程は蛍光測定を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記接触させる工程は、1種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記接触させる工程は2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接触させる工程は、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含み、および3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-O-メチルヌクレオチド、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンヌクレオチドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触させる工程は、前記多価性結合複合体を安定化させるイオンの存在下で行われる、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記接触させる工程は、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、またはその任意の組み合わせの存在下で行われる、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリメラーゼ分子は触媒的に不活性である、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記ポリメラーゼ分子は、突然変異または化学修飾によって触媒的に不活性状態にされている、請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記ポリメラーゼ分子は、必要なイオンまたは補助因子の非存在によって触媒的に不活性状態にされている、請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記ポリメラーゼ分子は、触媒的に活性である、請求項1~17のいずれか1に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含まない、請求項1~18のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記多価性結合複合体の持続時間は2秒を超える、請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記方法は、25℃~62℃の範囲内の温度で実行することができる、請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含み、および前記標的核酸配列の2つ以上のコピーは、表面に堆積し、表面に付着し、または表面にハイブリダイズされ、ここで、表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、前記検出する工程においてコントラストノイズ比が20を超える、請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記(a)の組成物は、極性非プロトン性溶媒を取り込む緩衝液を使用して、表面に堆積する、請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記接触させる工程は、前記ヌクレオチド部分が前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的である時に前記多価性結合複合体を安定化させ、前記ヌクレオチド部分が前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的ではない時に前記多価性結合複合体を不安定にする条件下で実施される、請求項1~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、複数の分枝を有するポリマーを含み、かつ前記2つ以上のヌクレオチド部分は、前記分枝に付着している、請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーの構成は、星型、くし型、交差型、ボトルブラシ型、またはデンドリマー型である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合基を含む、請求項1~26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
前記(a)の組成物とポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートとの間に形成された前記多価性結合複合体を不安定にする解離工程をさらに含み、前記解離工程は、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの除去を可能にする、請求項1~27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的なヌクレオチドを、前記2つ以上のプライマー核酸分子へと組み込むための伸長工程をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記伸長工程は、前記解離工程と同時に、またはその工程の後に行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する方法であって、該方法は、
a.組成物であって、
i.前記標的核酸配列の2つ以上のコピー、
ii.前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的である2つ以上のプライマー核酸分子、および
iii.2つ以上のポリメラーゼ分子、を含む組成物、
を提供する工程と、
b.ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと(a)の前記組成物における前記標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で、前記組成物を前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、可逆的に終止されるヌクレオチド部分の2つ以上のコピー、および随意に1つ以上の切断可能で検出可能な標識を含む、工程と、
c.前記多価性結合複合体を検出する工程であって、それによって前記標的核酸配列において前記ヌクレオチドの同一性を判定する、工程と、を含む方法。
【請求項32】
前記標的核酸配列はDNAである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記多価性結合複合体の検出後、前記(a)の組成物を、可逆的に終止されたヌクレオチド、または可逆的に終止されたヌクレオチドの2つ以上のコピーを含むポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程をさらに含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記標的核酸配列は、複製され、または増幅され、または複製あるいは増幅によって産生されている、請求項31~33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上の検出可能な標識は、蛍光標識である、請求項31~34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
前記多価性複合体を検出する工程は蛍光測定を含む、請求項31~35のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記接触させる工程は、1種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む、請求項31~36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記接触させる工程は、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む、請求項31~37のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記接触させる工程は、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含み、および3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む、請求項31~40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチル、3’-O-メチル、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記接触させる工程は、前記多価性結合複合体を安定化させるイオンの存在下で行われる、請求項31~42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記ポリメラーゼ分子は触媒的に不活性である、請求項31~43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記ポリメラーゼ分子は、突然変異または化学修飾によって触媒的に不活性状態にされている、請求項31~44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記ポリメラーゼ分子は、触媒的に活性である、請求項31~45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含まない、請求項31~46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記方法は、25℃~80℃の範囲内の温度で実行することができる、請求項31~47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含み、および前記標的核酸配列の2つ以上のコピーは、表面に堆積し、表面に付着し、または表面にハイブリダイズされ、ここで、表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、前記検出する工程においてコントラストノイズ比が20を超える、請求項31~48のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
システムであって、該システムは、
a)方法を実行するために個々にまたは総体的にプログラムされた1つ以上のコンピュータープロセッサーを含み、該方法は、
i)プライミングされた標的核酸配列を形成するために、その表面に繋留された標的核酸配列の複数のコピーを含む基板を、ポリメラーゼ、および前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的な1つ以上のプライマー核酸配列を含む試薬と接触させる工程と、
ii)ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと前記プライミングされた標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で、前記基板表面を、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含む試薬と接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、既知のヌクレオチド部分の2つ以上のコピーおよび検出可能な標識を含む、工程と、
iii)前記多価性結合複合体を検出するために前記基板表面の画像を取得および処理する工程であって、それによって前記標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する、工程と、を含む、システム。
【請求項51】
一連の試薬を、規定順序および規定時間間隔で前記基板表面に送達するように構成された流体モジュールをさらに含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記基板表面の画像を取得するように構成された撮像モジュールをさらに含む、請求項50または51に記載のシステム。
【請求項53】
前記(ii)と前記(iii)は、2回以上繰り返され、それによって標的核酸配列において一連の2つ以上のヌクレオチドの同一性を判定する、請求項50~52のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項54】
一連の工程は、前記多価性結合複合体を不安定にする解離工程をさらに含み、前記解離工程は前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの除去を可能にする、請求項50~53のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項55】
前記一連の工程は、前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的なヌクレオチドを、前記2つ以上のプライマー核酸分子へと組み込むための伸長工程をさらに含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記伸長工程は、前記解離工程と同時に、またはその工程の後に行われる、請求項55に記載のシステム。
【請求項57】
前記検出可能な標識はフルオロフォアを含み、および前記画像は蛍光画像を含む、請求項50~56のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項58】
フルオロフォアがシアニン染料3(Cy3)であり、20X対物レンズ、NA=0.75、532nm光に最適化されたダイクロイックミラー、シアニン染料-3放射のために最適化されたバンドパスフィルタ、およびカメラを装備した倒立蛍光顕微鏡を使用して、非シグナル飽和条件下で画像が取得され、その一方で前記表面が25mMのACES、pH7.4緩衝液に浸されている時に、前記基板表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、コントラストノイズ比が20を超える、請求項57に記載のシステム、
【請求項59】
前記一連の工程は、60分未満で完了する、請求項50~58のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項60】
前記一連の工程は、30分未満で完了する、請求項50~59のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項61】
前記一連の工程は、10分未満で完了する、請求項50~60のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項62】
ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して25を超えるQスコアを特徴とする、請求項50~61のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項63】
ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して30を超えるQスコアを特徴とする、請求項50~62のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項64】
ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して40を超えるQスコアを特徴とする、請求項50~63のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項65】
組成物であって、前記組成物は、
a)ポリマーコアと、
b)前記ポリマーコアに付着した2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分と、を含み、
ここで、リンカーの長さは、前記ポリマーコアに付着しているヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分に依存する、組成物。
【請求項66】
組成物であって、前記組成物は、
a)ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの混合物を含み、該ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各々は、
i)ポリマーコアと、
ii)前記ポリマーコアに付着した2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分と、を含み、ここで、リンカーの長さは、前記ポリマーコアに付着しているヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分に依存し、
および前記混合物は、少なくとも異なる2種の付着したヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分を有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含む、組成物。
【請求項67】
前記ポリマーコアは、複数の分枝を有するポリマーを含み、および2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分は、前記分枝に付着している、請求項65または66に記載の組成物。
【請求項68】
前記ポリマーの構成は、星型、くし型、交差型、ボトルブラシ型、またはデンドリマー型である、請求項67に記載の組成物。
【請求項69】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合基を含む、請求項65~68のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項70】
前記ポリマーコアはポリエチレングリコール(PEG)分枝分子を含む、請求項65~69のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項71】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む、請求項65~70のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項72】
前記ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-O-メチルヌクレオチド、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンヌクレオチドである、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含む、請求項65~72のいずれか1つに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2019年9月23日に出願された米国特許出願第16/579,794号の一部継続出願であり、かつ2019年9月6日に出願された米国仮出願第62/897,172号および2019年5月24日に出願された米国仮出願第62/852,876号の利益を主張し、それらの文献の各々は、その全体として本明細書に取り込まれている。
【0002】
本開示は、全体的に多価性結合組成物および核酸分子の分析におけるそれらの使用に関する。特に、発明概念は、粒子またはポリマーコアに付着したヌクレオチドの複数のコピーを有し、それによってヌクレオチドの局所濃度を有効に増大させて、結合シグナルを増強する、多価性結合組成物に関する。多価性結合組成物は、例えば、配列決定およびバイオセンサのマイクロアレイの分野において適用され得る。
【背景技術】
【0003】
核酸配列決定は、診断、予後、生物工学および法生物学を含む、多種多様の生物医学的な情況において情報を取得するために使用され得る。様々な配列決定法は、マキサム-ギルバート法および連鎖終止反応法、ショットガンシーケンシング法およびブリッジPCRを含むデノボ配列決定方法、あるいはポロニー配列決定、454のパイロシークエンシング、Illuminaシーケンシング、SOLiDシーケンシング、Ion Torrent半導体シーケンシング、HeliScope単一分子配列決定、SMRT(登録商標)配列決定等を含む次世代方法を含んで開発されている。DNA配列決定における進歩にもかかわらず、費用対効果の高いハイスループット配列決定に対する多くの課題が未解決のままである。本開示は、既存の技術の欠点の多くを解決する新規なソリューションおよびアプローチを提供する。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示されるのは、標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する方法であって、該方法は、a.組成物であって、i.前記標的核酸配列の2つ以上のコピー、ii.前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的である2つ以上のプライマー核酸分子、およびiii.2つ以上のポリメラーゼ分子、を含む組成物を提供する工程と、b.ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと(a)の前記組成物における前記標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で前記組成物を前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ヌクレオチド部分の2つ以上のコピー、および随意に1つ以上の検出可能な標識を含む、工程と、c.前記多価性結合複合体を検出する工程であって、それによって前記標的核酸配列において前記ヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列はDNAである。いくつかの実施形態では、多価性結合組成物を検出する工程は、非結合または溶液由来のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの非存在下で実施される。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、複製され、または増幅され、または複製あるいは増幅によって産生されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出可能な標識は蛍光標識である。いくつかの実施形態では、多価性複合体を検出する工程は、蛍光測定を含む。いくつかの実施形態では、接触は、1種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む。いくつかの実施形態では、接触は、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む。いくつかの実施形態では、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、接触は、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用は含み、およびここで、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-O-メチルヌクレオチド、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、前記接触が、前記多価性結合組成物を安定化させるイオンの存在下で行われる。いくつかの実施形態では、接触は、ストロンチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、またはそれらの任意の組み合わせの存在下で行われる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は触媒的に不活性である。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は突然変異または化学修飾によって触媒的に不活性にされている。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は、必要なイオンまたは補助因子の非存在によって触媒的に不活性にされている。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は触媒的に活性である。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートはブロックされたヌクレオチド部分を含まない。いくつかの実施形態では、多価性結合組成物の持続時間は、2秒より大きい。いくつかの実施形態では、方法は、25℃~62℃の範囲内の温度で実行することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含み、および標的核酸配列の2つ以上のコピーは、表面に堆積し、表面に付着し、または表面にハイブリダイズされ、ここで、表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、検出工程においてコントラストノイズ比が20を超える。いくつかの実施形態では、(a)の組成物は、極性非プロトン性溶媒を組み込む緩衝液を使用して、表面に堆積する。いくつかの実施形態では、接触させる工程は、前記ヌクレオチド部分が前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的である時に前記多価性結合複合体を安定化させ、前記ヌクレオチド部分が前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的ではない時に前記多価性結合複合体を不安定にする条件下で実施される。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、複数の分枝を有するポリマーを含み、かつ前記2つ以上のヌクレオチド部分は、前記分枝に付着している。いくつかの実施形態では、前記ポリマーの構成は、星型、くし型、交差型、ボトルブラシ型、またはデンドリマー型である。いくつかの実施形態では、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートが、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合基を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、(a)の組成物とポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートとの間に形成された前記多価性結合複合体を不安定にする解離工程をさらに含み、前記解離工程は前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを除去することを可能にする。いくつかの実施形態では、本方法は、標的核酸配列の次の塩基に対して相補的なヌクレオチドを、前記2つ以上のプライマー核酸分子へと組み込むための伸長工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長工程は、前記解離工程と同時に、またはその工程の後に行われる。
【0005】
本明細書に開示されるのは、標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する方法であり、該方法は、a.組成物であって、i.前記標的核酸配列の2つ以上のコピー、ii.前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的である2つ以上のプライマー核酸分子、およびiii.2つ以上のポリメラーゼ分子、を含む組成物を提供する工程と、b.ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと(a)の前記組成物における前記標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で、前記組成物を前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、可逆的に終止されるヌクレオチド部分の2つ以上のコピー、および随意に1つ以上の切断可能で検出可能な標識を含む、工程と、c.前記多価性結合複合体を検出する工程であって、それによって前記標的核酸配列において前記ヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列はDNAである。いくつかの実施形態では、本方法は、前記多価性結合複合体の検出後、前記(a)の組成物を、可逆的に終止されたヌクレオチド、または可逆的に終止されたヌクレオチドの2つ以上のコピーを含むポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、複製され、または増幅され、または複製あるいは増幅によって産生されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の検出可能な標識は蛍光標識である。いくつかの実施形態では、多価性複合体を検出する工程は、蛍光測定を含む。いくつかの実施形態では、接触は、1種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む。いくつかの実施形態では、接触は、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含む。いくつかの実施形態では、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、接触は、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を含み、およびここで、3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は、異なる種のヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチル、3’-O-メチル、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンである。いくつかの実施形態では、前記接触が、前記多価性結合組成物を安定化させるイオンの存在下で行われる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は触媒的に不活性である。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は突然変異または化学修飾によって触媒的に不活性にされている。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子は触媒的に活性である。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートはブロックされたヌクレオチド部分を含まない。いくつかの実施形態では、方法は、25℃~80℃の範囲内の温度で実行することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含み、および標的核酸配列の2つ以上のコピーは、表面に堆積し、表面に付着し、または表面にハイブリダイズされ、ここで、表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、検出工程においてコントラストノイズ比が20を超える。
【0006】
さらに、本明細書に開示されるのはシステムであり、該システムは、a)方法を実行するために個々にまたは総体的にプログラムされた1つ以上のコンピュータープロセッサーを含み、該方法は、i)プライミングされた標的核酸配列を形成するために、その表面に繋留された標的核酸配列の複数のコピーを含む基板を、ポリメラーゼ、および前記標的核酸配列の1つ以上の領域に対して相補的な1つ以上のプライマー核酸配列を含む試薬と接触させる工程と、ii)ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと前記プライミングされた標的核酸配列の2つ以上のコピーとの間に多価性結合複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下で、前記基板表面を、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含む試薬と接触させる工程であって、ここで、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、既知のヌクレオチド部分の2つ以上のコピーおよび検出可能な標識を含む、工程と、iii)前記多価性結合複合体を検出するために前記基板表面の画像を取得および処理する工程であって、それによって前記標的核酸配列においてヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む。いくつかの実施形態では、システムは、一連の試薬を、規定順序で、および規定時間間隔で基板表面に送達するように構成された流体モジュールをさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、基板表面の画像を取得するように構成された画像化モジュールをさらに含む。いくつかの実施形態では、(ii)と(iii)は、2回以上繰り返され、それによって標的核酸配列において一連の2つ以上のヌクレオチドの同一性を判定する。いくつかの実施形態では、一連の工程は、前記多価性結合複合体を不安定にする解離工程をさらに含み、前記解離工程は前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを除去することを可能にする。いくつかの実施形態では、一連の工程は、前記標的核酸配列の次の塩基に対して相補的なヌクレオチドを、前記2つ以上のプライマー核酸分子へと組み込むための伸長工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、伸長工程は、前記解離工程と同時に、またはその工程の後に行われる。いくつかの実施形態では、検出可能な標識はフルオロフォアを含み、および画像は蛍光画像を含む。いくつかの実施形態では、フルオロフォアがシアニン染料3(Cy3)であり、20X対物レンズ、NA=0.75、532nm光に最適化されたダイクロイックミラー、シアニン染料-3放射のために最適化されたバンドパスフィルター、およびカメラを装備した倒立蛍光顕微鏡を使用して、非シグナル飽和条件下で画像が取得され、その一方で前記表面が25mMのACES、pH7.4緩衝液に浸されている時に、前記表面上の多価性結合複合体の蛍光画像は、検出工程においてコントラストノイズ比が20を超える。いくつかの実施形態では、一連の工程は、60分未満で完了する。いくつかの実施形態では、一連の工程は、30分未満で完了する。いくつかの実施形態では、一連の工程は、10分未満で完了する。いくつかの実施形態では、ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して25を超えるQスコアを特徴とする。いくつかの実施形態では、ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して30を超えるQスコアを特徴とする。いくつかの実施形態では、ベースコールの精度は、判定されたヌクレオチド同一性の少なくとも80%に対して40を超えるQスコアを特徴とする。
【0007】
本明細書に開示されるのは、組成物であり、該組成物は、a)ポリマーコアと、b)前記ポリマーコアに付着した2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分と、を含み、ここで、リンカーの長さは、前記ポリマーコアに付着しているヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分に依存する。さらに、本明細書に開示されるのは、組成物であり、該組成物は、a)ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの混合物を含み、該ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各々は、i)ポリマーコアと、ii)前記ポリマーコアに付着した2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分と、を含み、ここで、リンカーの長さは、前記ポリマーコアに付着しているヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分に依存し、および前記混合物は、少なくとも異なる2種の付着したヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分を有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーコアは、複数の分枝を有するポリマーを含み、および2つ以上のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ部分は、前記分枝に付着している。いくつかの実施形態では、ポリマーの構成は、星型、くし型、交差型、ボトルブラシ型、またはデンドリマー型である。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合基を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーコアは、分枝ポリエチレングリコール(PEG)分子を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ブロックされたヌクレオチド部分を含む。いくつかの実施形態では、ブロックされたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-O-メチルヌクレオチド、または3’-O-アルキルヒドロキシルアミンヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の蛍光標識をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、標的核酸においてヌクレオチドの同一性を判定する方法を提供し、該方法は、順序に関係なく、1)組成物であって、同一の配列の2つ以上の反復を含む標的核酸と、前記標的核酸の1つ以上の領域に対して相補的である2つ以上のプライマー核酸と、2つ以上のポリメラーゼ分子と、を含む組成物を提供する工程と、2)前記組成物を、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと(a)工程の組成物との間に結合複合体または組み込み複合体が形成されることを可能にするのに十分な条件下でポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含む多価性結合組成物または組み込み組成物と接触させる工程であって、ここで、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、ヌクレオチドの2つ以上のコピー、および随意に1つ以上の検出可能な標識を含む、工程と、3)前記結合複合体または組み込み複合体を検出し、それによって標的核酸ポリマーにおいて前記ヌクレオチドの同一性を確立する工程と、を含む。いくつかのさらなる実施形態では、本開示は前記方法を提供しており、ここで、標的核酸は、DNAであり、および/または標的核酸は、ローリングサークル増幅、ブリッジ増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、等温ブリッジ増幅、ローリングサークル多置換増幅(RCA/MDA)および/またはレコンビナーゼベースの複製または増幅方法などのDNA複製または増幅の任意の一般的に実行される方法などによって複製される。いくつかのさらなる実施形態では、本開示は、検出可能な標識が蛍光標識であり、および/または、複合体の検出が蛍光測定を含む、前記方法を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、本開示は、多価性結合組成物が1つの型のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含み、多価性結合組成物が、2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含み、および/または2種以上のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種は異なる種のヌクレオチドを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、結合複合体または取り込まれた複合体がブロック化されたヌクレオチドをさらに含み、特に、ブロック化されたヌクレオチドは、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-Oアルキルヒドロキシルアミノヌクレオチド、または3’-O-メチルヌクレオチドである、前記方法を提供する。いくつかのさらなる実施形態では、本開示は、接触がストロンチウムイオン、バリウム、マグネシウムイオン、および/またはカルシウムイオンの存在下で行われる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ポリメラーゼ分子が、突然変異、化学修飾、あるいは必要なイオンまたは補助因子の非存在によって触媒的に不活性状態にされるなど、ポリメラーゼ分子が、触媒的に不活性である、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ポリメラーゼ分子が触媒的に活性であり、および/または結合複合体はブロックされたヌクレオチドを含まない、前記方法も提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、結合複合体が2秒を超える持続時間を有する前記方法、および/または、前記方法が、15℃以上、20℃以上、25℃以上、35℃以上、37℃以上、42℃以上、55℃以上、60℃以上、72℃以上の温度で実施され、または、前記のいずれかで定義される範囲内で実施され得る前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、結合組成物が、検出工程においてコントラストノイズ比が20を超える表面に堆積、付着、またはハイブリダイズされる、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組成物が極性非プロトン性溶媒を取り込む緩衝液条件下で堆積する、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、接触が、前記ヌクレオチドが前記標的核酸の次の塩基へ相補的な時、結合組成物を安定化させ、前記ヌクレオチドが前記標的核酸の前記次の塩基へ相補的でない時、結合組成物を不安定にする条件下で実施される、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートが、複数の分枝を有するポリマーを含み、および前記第1のヌクレオチドの前記複数のコピーが、前記分枝に付着しており、特に、前記、第1のポリマーが、星型、櫛型、架橋型、ボトルブラシ型、またはデンドリマー型の構成を有する、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートが、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合群を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、(a)の組成物とポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートとの間に形成された前記結合複合体を不安定にして、前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを除去するための解離工程をさらに含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、標的核酸の前記次の塩基に相補的なヌクレオチドを前記プライマー核酸に組み込む伸長工程をさらに含み、および任意に、伸長工程が前記解離工程と同時に、または前記解離工程の後に行われる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、2つ以上の分枝を有する分枝ポリマーとヌクレオチドの2つ以上のコピーとを含む組成物であって、前記ヌクレオチドが第1の複数の前記分枝またはアームに付着しており、および随意に、1つ以上の相互作用部分が第2の複数の前記分枝またはアームに付着している、組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記組成物は、ポリマー上に1つ以上の標識を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオシドが1ポリマー当たり少なくとも4つのヌクレオチドの面密度を有する、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に取り込まれるのを防ぐように修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む、または組み込んだ前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記組成物は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に取り込まれるのを防ぐように可逆的に修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含んでもよく、または組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の標識が、蛍光標識、FRET供与体、および/または、FRET受容体を含む、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、前記組成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16以上の分枝またはアーム、あるいは2、4、8、16、32、または64以上の分枝またはアームを含む場合がある。いくつかの実施形態では、分枝またはアームは中心部分から放射状に広がる場合がある。いくつかの実施形態では、前記組成物は1つ以上の相互作用部分を含んでもよく、その相互作用部分は、アビジンまたはストレプトアビジン、ビオチン部分、アフィニティータグ、酵素、抗体、ミニボディ、受容体、または他のタンパク質、非タンパクのタグ、金属アフィニティータグ、あるいはその任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、またはポリグリコール酸を含む、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが分枝またはアームにリンカーによって付着し、および特に、リンカーがPEGを含み、PEGリンカー部分が、約1K Da、約2K Da、約3K Da、約4K Da、約5K Da、約10K Da、約15K Da、約20K Da、約50K Da、約100K Da、約150K Da、または約200K Da以上の平均分子量を有する、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、リンカーがPEGを含み、PEGリンカー部分が、約5K Da~約20K Daの平均分子量を有する、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログが、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、またはリボヌクレオシドを含み、および/またはヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、リンカーにヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの5’末端を介してコンジュゲートされる、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログのうちの1つが、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジン、アデノシン、グアノシン、5-メチル-ウリジン、および/またはシチジンを含み、および、リンカーの長さは1nmと1,000nmとの間である、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記組成物を提供しており、ここで、少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが、例えば、3’ヒドロキシル基が不在のヌクレオチド、3’位置にブロッキング基を含むように修飾されたヌクレオチド、および/または3’-O-アジド基、3’-O-アジドメチル基、3’-O-アルキルヒドロキシルアミノ基、3’-ホスホロチオエート基、3’-O-マロニル基、または3-O-ベンジル基で修飾されたヌクレオチドであるなどの、少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが、ポリメラーゼ反応または配列決定反応中の伸長を阻害するように修飾されたヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが3’位置で修飾されていないヌクレオチドである、前記組成物を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、特定の順序に関係なく、1)鋳型鎖および鋳型鎖に少なくとも部分的に相補的である相補鎖を含む核酸分子を提供する工程と、2)核酸分子を、本明細書に開示される実施形態のいずれかに係る1つ以上の核酸結合組成物と接触させる工程と、3)核酸結合組成物が核酸分子への結合を検出する工程と、4)前記核酸分子の前記相補鎖へ組み込まれる末端ヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む核酸分子の配列を判定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、特定の順序に関係なく、1)鋳型鎖および鋳型鎖に少なくとも部分的に相補的である相補鎖を含む核酸分子を提供する工程と、2)核酸分子を、本明細書に開示される実施形態のいずれかに係る1つ以上の核酸結合組成物と接触させる工程と、3)核酸結合組成物が核酸分子に完全にまたは部分的に組み込むことを検出する工程と、4)本明細書に記載される実施形態の完全または部分的な組み込みの前記核酸分子の前記相補鎖へ組み込まれる末端ヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む核酸分子の配列を判定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記末端ヌクレオチドを前記相補鎖に組み込む工程、および前記接触、検出、および組み込みの工程を1つ以上の追加の反復のために繰り返す工程であって、それによって前記核酸分子の前記鋳型鎖の配列を判定する、工程をさらに含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記核酸分子が固体支持体に繋留されており、特に、固体支持体が、ガラスまたはポリマー基板、少なくとも1つの親水性ポリマーコーティング層、および少なくとも1つの親水性ポリマーコーティング層に付着した複数のオリゴヌクレオチド分子を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つの親水性ポリマーコーティング層がPEGを含む実施形態をさらに含み、および/または少なくとも1つの親水性ポリマー層が、少なくとも8つの分枝を有する分枝親水性ポリマーを含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、複数のオリゴヌクレオチド分子が、少なくとも500分子/mm、少なくとも1,000分子/mm、少なくとも5,000分子/mm、少なくとも10,000分子/mm、少なくとも20,000分子/mm、少なくとも50,000分子/mm、少なくとも100,000分子/mm、または少なくとも500,000分子/mmの表面密度で存在する、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記核酸分子が固体支持体上でクローン的に増幅される前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、クローン増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムSDA、ブリッジ増幅、等温ブリッジ増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、サークル間増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、リコンビナーゼ依存性増幅、一本鎖結合(SSB)タンパク質依存性増幅、またはそれらの任意の組み合わせの使用を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の核酸結合組成物がフルオロフォアで標識され、検出工程が蛍光撮像の使用を含み、特に、蛍光撮像が2波長励起/4波長発光蛍光撮像を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む4つの異なる核酸結合組成物が、末端ヌクレオチドの同一性を判定するために使用され、4つの異なる核酸結合組成物が別個のそれぞれのフルオロフォアで標識され、および検出工程は、4つのフルオロフォアすべてを励起するのに十分な波長での同時励起と、それぞれのフルオロフォアを検出するのに十分な波長での蛍光発光撮像を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む4つの異なる核酸結合組成物が、末端ヌクレオチドの同一性を決定するために使用され、4つの異なる核酸結合組成物がシアニン染料3(Cy3)、シアニン染料3.5(Cy3.5)、シアニン染料5(Cy5)、およびシアニン染料5.5(Cy5.5)それぞれで標識される、および検出工程は、532nm、568nm、および633nmのいずれか2つでの同時励起、および約570nm、592nm、670nm、および702nmそれぞれでの蛍光発光撮像を含む、および/または蛍光撮像が、二波長励起/二波長発光蛍光撮像を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む4つの異なる核酸結合組成物が、末端ヌクレオチドの同一性を決定するために使用され、1つ、2つ、3つ、または4つの異なる核酸酸結合組成物はそれぞれ、別個のフルオロフォアまたはフルオロフォアのセットで標識され、および検出工程は、1つ、2つ、3つ、または4つのフルオロフォアまたはフルオロフォアのセットを励起するのに十分な波長での同時励起、およびそれぞれのフルオロフォアを検出するのに十分な波長での蛍光発光撮像を含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む3つの異なる核酸結合組成物または組み込み組成物が末端ヌクレオチドの同一性を判定するために使用され、1つ、2つ、または3つの異なるヌクレオチド酸結合または組み込み組成物はそれぞれ、別個のフルオロフォアまたはフルオロフォアのセット組成物で標識され、および検出工程は、1つ、2つ、または3つのフルオロフォアまたはフルオロフォアのセットを励起するのに十分な波長での同時励起、およびそれぞれのフルオロフォアを検出するのに十分な波長での蛍光発光撮像を含み、および第4のヌクレオチドの検出は、「ダーク」または非標識のスポットまたは標的ヌクレオチドの位置を参照して決定されるまたは決定可能である、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、多価性結合組成物または組み込み組成物が3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを含み得、および3種のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの各種が異なる種のヌクレオチドを含む、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、結合複合体または組み込み複合体を検出する工程が、非結合または溶液由来のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの非存在下で行われる、前記方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む4つの異なる核酸結合組成物、または3つの異なる核酸結合組成物または組み込み組成物が、末端ヌクレオチドの同一性を判定するために使用され、4つまたは3つの異なるヌクレオチド結合組成物または組み込み組成物のうちの1つは、第1のフルオロフォアで標識され、1つは第2のフルオロフォアで標識され、1つは第1および第2のフルオロフォアの両方で標識され、および1つは標識されていないか、または存在せず、および検出工程は、第1の励起波長および第2の励起波長での同時励起を含み、および画像は、第1の蛍光発光波長および第2の蛍光発光波長で取得される、前記方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、第1のフルオロフォアがCy3であり、第2のフルオロフォアがCy5であり、第1の励起波長が532nmまたは568nmであり、第2の励起波長が633nmであり、第1の蛍光発光波長が約570nmであり、第2の蛍光発光波長は約670nmである、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、検出標識が、単一の励起および撮像工程の下で複数の分類が実行され得るように、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)対の1つ以上の部分を含み得る前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、接触、検出、および組み込み/伸長の工程を含む配列決定反応サイクルが、30分未満、20分未満、または10分未満で実行される前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列決定実行にわたるベースコール精度の平均Qスコアが30以上、および/または40以上である前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、同定された末端ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が30を超える、および/または40以上であるQスコアを有する前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、同定された末端のヌクレオチドの少なくとも95%が30を超えるQスコアを有する前記方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される1つ以上の核酸結合組成物および緩衝液を含む試薬を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は試薬を提供しており、前記試薬が1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含み、核酸結合組成物または組み込み組成物の各々は、単一種のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、本開示の試薬は、1、2、3、4、またはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含み、各々の核酸結合組成物または組み込み組成物は、単一種のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含み、前記ヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログは、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、およびデオキシアデノシン一リン酸(dAMP)からなる群からの1つ以上;チミジン三リン酸(TTP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン一リン酸(TMP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、ウリジン三リン酸(UTP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン一リン酸(UMP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、およびデオキシウリジン一リン酸(dUMP)からなる群からの1つ以上;シチジン三リン酸(CTP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン一リン酸(CMP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、およびデオキシシチジン一リン酸(dCMP)からなるグループからの1つ以上;およびグアノシン三リン酸(GTP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン一リン酸(GMP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、およびデオキシグアノシン一リン酸(dGMP)からなる群からの1つ以上、それぞれに対応し得る。いくつかの他の例またはさらなる例では、本開示は、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含む、またはさらに含む試薬を提供し、核酸結合組成物または組み込み組成物の各々は、単一種のヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログを含み、およびヌクレオチド、ヌクレオチドアナログは、ATP、ADP、AMP、dATP、dADP、dAMP、TTP、TDP、TMP、dTTP、dTDP、dTMP、UTP、UDP、UMP、dUTP、dUDP、dUMP、CTP、CDP、CMP、dCTP、dCDP、dCMP、GTP、GDP、GMP、dGTP、dGDP、およびdGMPからなる群からの1つ以上のそれぞれに対応し得る。
【0013】
本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される実施形態のいずれかの核酸結合組成物または組み込み組成物、および/または、本明細書に開示される実施形態のいずれかの試薬、および/または1つ以上の緩衝液、およびその使用のための説明書を含むキットである。
【0014】
本明細書に開示されるのは、本明細書に開示されるいずれかの実施形態の方法を実行するためのシステムであり、該システムは、本明細書に開示されるいずれかの実施形態の核酸結合組成物または組み込み組成物、および/または本明細書に開示されるいずれかの実施形態の試薬を含む。いくつかの実施形態では、システムは、繋留されたプライミングされた核酸分子と、前記核酸結合組成物または前記組み込み組成物および/または前記試薬との逐次的な接触を繰り返して行う、および、開示された核酸結合組成物または組み込み組成物の1つ以上のプライミングされた核酸分子への結合または組み込みの検出のために構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、粒子(例えば、ナノ粒子またはポリマーコア)を含む組成物を提供し、前記粒子は、複数の酵素またはタンパク質の結合または組み込み基板を含み、ここで、酵素またはタンパク質の結合または組み込みの基板は、1つまたは複数の酵素またはタンパク質と結合して、1つまたは複数の結合複合体または組み込み複合体(例えば、多価性の結合複合体または組み込み複合体)を形成し、前記結合または組み込みは、1つまたは複数の結合複合体または組み込み複合体の位置、存在、または持続を観察することによって、観察または同定することができる。いくつかの実施形態では、前記粒子はポリマー、分枝状重合体、デンドリマー、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、または量子ドットを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記気質はヌクレオチド、ヌクレオシド、ヌクレオチドアナログ、またはヌクレオシドアナログを含んでもよい。いくつかの実施形態では、酵素またはタンパク質結合、あるいは組み込み基板は、ポリメラーゼと結合し得る薬剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、酵素またはタンパク質はポリメラーゼを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の結合複合体または組み込み複合体の位置、存在あるいは持続の観察は、蛍光検出を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される複数の異なる粒子を含む組成物を提供し、ここで、各粒子が単一の型のヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログを含み、および各ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログが、検出可能なほど異なる発光波長または励起波長の蛍光標識に関連付けられている。いくつかの実施形態では、本開示は、粒子上に1つ以上の標識、例えば、蛍光標識をさらに含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組成物が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、または20より多くの繋留されたヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、または粒子に繋留されたヌクレオシドアナログを含む、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログが、0.001~1,000,000/μm、0.01~1,000,000/μm、0.1~1,000,000/μm、1~1,000,000/μm、10~1,000,000/μm、100~1,000,000/μm、1,000~1,000,000/μm、1,000~100,000/μm、10,000~100,000/μm、または50,000~100,000/μm、または前述の値のうちのいずれか2つによって定義された範囲内の面密度で存在する前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログがヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ内に存在する、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組成物が、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖への組み込みを防止するように修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む、または組み込んでいる、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、組成物が、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖への組み込みを防止するように可逆的に修飾されたヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む、または組み込んでいる、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ以上の標識が、蛍光標識、FRET供与体、および/または、FRET受容体を含む、前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、基板(例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログ)がリンカーによって粒子に付着している前記組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、前記組成物を提供しており、ここで、少なくとも1つのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログが、例えば、3’ヒドロキシル基が不在のヌクレオチド、3’位置にブロッキング基を含むように修飾されたヌクレオチド、3’-O-アジド基、3’-O-アジドメチル基、3’-O-アルキルヒドロキシルアミノ基、3’-ホスホロチオエート基、3’-O-マロニル基、または3’-O-ベンジル基で修飾されたヌクレオチド、および/または3’位置で修飾されていないヌクレオチドなどの、ポリメラーゼ反応または配列決定反応中の伸長を阻害するように修飾されたヌクレオチドである。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、順序に関係なく、1)鋳型鎖および鋳型鎖に少なくとも部分的に相補的である相補鎖を含む核酸分子を提供する工程と、2)核酸分子を、本明細書に開示される実施形態のいずれかに係る1つ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物と接触させる工程と、3)核酸結合組成物または組み込み組成物の核酸分子への結合または組み込みを検出する工程と、4)前記核酸分子の前記相補鎖へ組み込まれる末端ヌクレオチドの同一性を判定する工程と、を含む核酸分子の配列を判定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記末端ヌクレオチドを前記相補鎖に組み込む工程、および前記接触、検出、および組み込みの工程を1つ以上の追加の反復のために繰り返す工程であって、それによって前記核酸分子の前記鋳型鎖の配列を判定する、工程をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、本開示は、前記核酸分子が固体支持体上でクローン的に増幅された前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、クローン増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムのSDA、ブリッジ増幅、等温ブリッジ増幅、ローリングサークル増幅、サークルツーサークル増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、リコンビナーゼ依存性増幅、一本鎖結合(SSB)タンパク質依存性増幅、またはそれらの任意の組み合わせの使用を含む前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、接触、検出、および組み込みの工程を含む配列決定反応サイクルが、30分未満、20分未満、または10分未満で実施される前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、配列決定実行にわたるベースコール精度の平均Qスコアが30以上、または40以上である前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、同定された末端ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%が30を超える、あるいは40を超えるQスコアを有する前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、同定された末端のヌクレオチドの少なくとも95%が30を超えるQスコアを有する前記方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される、1つ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物および緩衝液を含む試薬を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、試薬が1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含み、核酸結合組成物または組み込み組成物の各々は、単一種のヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログを含み、および前記ヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログは、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドアナログを含む、前記試薬を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、試薬が1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含み、核酸結合組成物または組み込み組成物の各々は、単一種のヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログを含み、および前記ヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログは、ATP、ADP、AMP、dATP、dADPおよびdAMPからなる群からの1つ以上、TTP、TDP、TMP、dTTP、dTDP、dTMP、UTP、UDP、UMP、dUTP、dUDP、およびdUMPからなる群からの1つ以上、CTP、CDP、CMP、dCTP、dCDP,およびdCMPからなる群からの1つ以上、またGTP、GDP、GMP、dGTP、dGDP,およびdGMPからなる群の1つ以上それぞれに対応してもよい、前記方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、試薬が1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の核酸結合組成物または組み込み組成物を含み、核酸結合組成物または組み込み組成物の各々は、単一種のヌクレオチド、またはヌクレオチドアナログを含み、および前記ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログは、ATP、ADP、AMP、dATP、dADP、dAMP TTP、TDP、TMP、dTTP、dTDP、dTMP、UTP、UDP、UMP、dUTP、dUDP、dUMP、CTP、CDP、CMP、dCTP、dCDP、dCMP、GTP、GDP、GMP、dGTP、dGDP、aおよびdGMPからなる群からの1つ以上それぞれに対応してもよい、前記方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるいずれかの組成物、および/または本明細書に開示されるいずれかの試薬、1つ以上の緩衝液、およびその使用のための説明書を含むキットを提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される方法のいずれかを実施するためのシステムを提供し、ここで、前記方法は、本明細書に開示されるようないずれかの組成物の使用、および/または、本明細書に開示されるようないずれかの試薬、1つ以上の緩衝液、および随意に固体支持体に繋留または付着した1つ以上の核酸分子を含んでもよく、前記システムは、前記核酸分子と前記組成物および/または前記試薬との逐次的な接触のために、および1つ以上の核酸分子に対する核酸結合組成物または組み込み組成物の結合または組み込みの検出のために繰り返して実施するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合した、または関連付けられた標識核酸複合体のコントラストノイズ比(CNR)を増加させるために使用するための、本明細書に開示されるような組成物を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合した、または関連付けられた標識核酸複合体からのシグナルの持続時間に対する制御を確立または維持する際に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合した、または関連付けられた標識核酸複合体からの蛍光、発光、電気、電気化学、比色、放射性、磁気、または電磁のシグナルの持続時間に対する制御を確立または維持する際に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、核酸配列決定および/または遺伝子型判定アプリケーションの特異性、精度、またはリード長を増加させることで使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、結合または組み込みによる配列決定、合成による配列決定、単一分子配列決定、またはアンサンブル配列決定法において特異性、精度、またはリード長を増加させることで使用するための本明細書に開示される組成物を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合または関連付けられた標識核酸複合体のコントラストノイズ比(CNR)を増加させることに使用するための、本明細書に開示される試薬を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合した、または関連付けられた標識核酸複合体からのシグナルの持続時間に対する制御を確立または維持する際に使用するための、本明細書に開示される試薬を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、表面に結合した、または関連付けられた標識核酸複合体からの蛍光、発光、電気、電気化学、比色、放射性、磁気、または電磁のシグナルの持続時間に対する制御を確立または維持する際に使用するための、本明細書に開示される試薬を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示は、核酸配列決定および/または遺伝子型判定アプリケーションの特異性、精度、またはリード長を増加させる際に使用するための、本明細書に開示される試薬を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示は、結合または組み込みによる配列決定、合成による配列決定、単一分子配列決定、またはアンサンブル配列決定法において特異性、精度、またはリード長を増加させる際に使用するための本明細書に開示される試薬を提供する。
【0030】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての出版物、特許、および、特許出願は、各々の出版物、特許、または、特許出願が、特異的にかつ個別に参照することによって組み込まれると意図されるのと同じ程度まで、全体として参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書の用語と引用される文献の用語との間で矛盾が生じる場合には、本明細書の用語の方が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
特許または出願のファイルは、色つきで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を有するこの特許または特許出願公開のコピーが、必要な料金の請求および支払い後に当該事務局によって提供される。
【0032】
本明細書で開示される発明概念の新規な特徴は添付の請求項で具体的にされる。本発明の組成物、方法、及び系の特徴及び利点のより良い理解は、発明概念の実施形態の原理が利用される、実例となる実施形態を明記する以下の詳細な説明、及び以下の添付図面を参照することによって、得られるであろう。
図1A】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Aは、標的核酸を表面に付着させる非限定的な例4を示している。
図1B】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Bは、増幅された標的核酸分子のクラスターを形成するための標的核酸をクローン的に示す。
図1C】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Cは、プライミングされた標的核酸を生成するために標的核酸をプライミングする非限定的な例を示す。
図1D】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Dは、プライミングされた標的核酸を多価性結合組成物およびポリメラーゼに接触させて結合複合体を形成する非限定的な例を示す。
図1E】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Eは、表面上に捕捉された結合複合体の画像の非限定的な例を示している。
図1F】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Fは、プライマー鎖を1ヌクレオチド延長する非限定的な例を示す。
図1G】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Gは、プライミングされた標的核酸を多価結合組成物およびポリメラーゼに接触させて結合複合体を形成する別のサイクルの非限定的な例を示す。
図1H】標的核酸を配列決定するための多価性結合組成物の非限定的な例を利用する工程を示す。図1Hは、後続の配列決定サイクルにおいて表面上に捕捉された結合複合体の画像の非限定的な例を示す。
図2図2は、標的核酸を配列決定し、1塩基付加によってプライマー鎖を伸長するための工程を概説するフローチャートを示す。
図3図3は、標的核酸を配列決定し、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート上にヌクレオチドを組み込むことによってプライマー鎖を伸長するための工程を概説するフローチャートを示す。
図4A】ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを使用して標的核酸を検出する非限定的な例を示す。図4Aは、ポリメラーゼとポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートをいくつかの核酸分子と接触させる工程を示す。
図4B】ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを使用して標的核酸を検出する非限定的な例を示す。図4Bは、ポリメラーゼ、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと標的核酸分子との間で形成された結合複合体を示す。
図5A】ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの様々な構成の非限定的な例の概略図を示す。図5Aは、様々なマルチアーム構成を有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを示す。
図5B】ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの様々な構成の非限定的な例の概略図を示す。図5Bは、中心から放射状に広がるポリマー分枝を有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを示す。
図5C】ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの様々な構成の非限定的な例の概略図を示す。図5Cは、結合部分ビオチンを有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを示す。
図6図6は、結合、持続、および多価性基板の洗浄および除去中に観察されたシグナル強度の増加の一般化されたグラフ表示を示す。
図7図7のA-図7のJは、多価性PEG基板組成物を使用する配列決定反応の工程の蛍光画像を示す。図7のAは、DNA RCA鋳型(GおよびA第1塩基)を、20nMクレノウポリメラーゼと2.5mMのSr+2を含む曝露緩衝液において500nMの塩基標識ヌクレオチド(A-Cy3およびG-Cy5)にさらした後の赤および緑の蛍光画像である。画像は、曝露緩衝液と同じ組成物を有するが、ヌクレオチドやポリメラーゼを含有しない撮像緩衝液で洗浄した後に収集された。コントラストは、最もかすかなシグナルの視覚化を最大化するためにスケーリングされたが、撮像緩衝液で洗浄した後もシグナルは持続しなかった(図7のA、挿入図)。図7のB―Eは、上記のように、露光緩衝液で混合し、撮像緩衝液で画像化した後、500nMの有効なヌクレオチド濃度を有する多価性PEGヌクレオチド(塩基標識)リガンドPB1(図7のB)、PB2(図7のC)、PB3(図7のD)、PB5(図7のE)を示す蛍光画像である。図7のFは、上記のように、露光緩衝液で混合し、撮像緩衝液で画像化した後、2.5uMの多価性PEG-ヌクレオチド(塩基標識)リガンドPB5を示す蛍光画像である。図7のG-Iは、多価製結合組成物をクレノウポリメラーゼ(図7のG)、D882H(図7のH)、D882E(図7のI)の不活性変異体にさらすことによるさらなる塩基識別を示す蛍光画像である。図7のJは、多価製結合組成物を野生型クレノウ(対照)酵素の不活性変異体にさらすことによるさらなる塩基識別を示す蛍光画像である。
図8A】5つの配列決定サイクルにわたるDNA配列の塩基配列を判定することにおいて多価性レポーター組成物の有効性を示す。図8Aは、各々の配列決定サイクルの後に得られた鋳型の画像および予想される配列を示す。
図8B】5つの配列決定サイクルにわたるDNA配列の塩基配列を判定することにおいて多価性レポーター組成物の有効性を示す。図8Bは、図8Aで撮られた画像を利用して、整列した配列決定結果を示す。
図9図9のA-Jは、20nMのクレノウポリメラーゼと2.5mMのSr+2を含む曝露緩衝液において(第1塩基でGまたはAを含み、ローリングサークル増幅(RCA)を使用して調製された)DNA鋳型を含む支持体表面に接触した後、500nMの有効ヌクレオチド濃度および様々なPEG分枝長を有する多価性ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー-ヌクレオチド(塩基標識)コンジュゲートの蛍光画像を示す。画像は、曝露緩衝液と同じ組成物を有するが、ヌクレオチドやポリメラーゼを欠いた撮像緩衝液で洗浄した後に取得された。パネルは、以下のようにアームの長さを有する多価性PEG-ヌクレオチドリガンドを使用して得られた画像を示す。図9のA:1本KのPEG。図9のB:2本KのPEG。図9のC:3本KのPEG。図9のD:5本KのPEG。図9のE:10本KのPEG。図9のF:20本KのPEG。図9のGは、10KのPEGおよび突然変異D882Hを含む不活性のクレノウポリメラーゼを使用して取得された画像を示す。図7のHは、10KのPEGおよび突然変異D882Eを含む不活性のクレノウポリメラーゼを使用して取得された画像を示す。図7のIは、10KのPEGおよび突然変異D882Aを含む不活性のクレノウポリメラーゼを使用して取得された画像を示す。図7のJは、10KのPEGおよび活性な野生型クレノウポリメラーゼを使用して取得された画像を示す。
図10図10は、図9のA-Fに示される画像における色の値で区切られた蛍光強度の定量的表現を示し、オレンジ色のトレースは赤い標識(Cy3標識;A塩基)に対応し、青いトレースは緑の標識(Cy5標識;G塩基)に対応する。
図11図11は、図7のA-Jで記載されたように、DNAクラスターに結合した多価性基板からの正規化された蛍光を示し、基板複合体は、Triton-X100(0.016%)の存在下(条件B)および非存在下(条件A)で形成される。
図12A】多価性ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートおよび遊離ヌクレオチドに測定された正規化された蛍光強度のプロットを示す。図12Aは、1分の後に標識された遊離ヌクレオチド(条件C)を使用して形成された、結合組成物対DNAクラスタ(条件AおよびB)に結び付けられた多価性のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの2つの複製である。
図12B】多価性ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートおよび遊離ヌクレオチドに測定された正規化された蛍光強度のプロットを示す。図12Bは、多価性ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートおよび遊離ヌクレオチドに測定された正規化された蛍光強度のプロットを示す。図12Bは、60分の間の多価性基板複合体の蛍光の時間的経過である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
I.定義
本明細書で使用されるように、「核酸」(「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「リボ核酸(RNA)」、または「デオキシリボ核酸(DNA)」とも呼ばれる)は、共有結合したヌクレオシド間結合によって連結された2つ以上のヌクレオチド、またはその変異体もしくは機能的断片の直鎖状ポリマーである。核酸の自然発生例では、ヌクレオシド間結合はリン酸ジエステル結合である。しかしながら、他の例は随意に、ホスホロチオレート結合などの他のヌクレオシド間結合を含み、リン酸基を含むこともあれば、含まない場合もある。核酸は、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNA、DNA/RNAハイブリッド、ペプチド-核酸(PNA)、PNAとDNAまたはRNAとのハイブリッドを含み、他のタイプの核酸修飾も含む場合もある。
【0034】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」はヌクレオチド、ヌクレオシド、またはそのアナログを指す。ヌクレオチドは自然発生、および化学上修飾されたヌクレオチドの両方を指し、ヌクレオシド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、タンパク質核酸残基、または誘導体を含み得るがそれらに限定されない。ヌクレオチドの例は、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、グアニン、またはそれらの残基、デオキシアデニン、デオキシチミン、デオキシウラシル、デオキシシトシン、デオキシグアニン、またはそれらの残基、アデニンPNA、チミンPNA、ウラシルPNA、シトシンPNA、グアニンPNA、あるいはそれらの残基または等価物、プリン、またはピリミジン塩基のN-グリコシドあるいはC-グリコシド(例えば、2-デオキシD-リボースを含有するデオキシリボヌクレオシド、あるいはD-リボースを含有するリボヌクレオシド)を含む。
【0035】
本明細書で使用される「相補的」は、リガンド分子およびその受容体の相互作用する表面の位相的適合性または一致することを指す。したがって、受容体とそのリガンドは相補的である、さらに、接触表面特性は互いに相補的であると記載され得る。
【0036】
本明細書で使用される「分枝ポリマー」は、ヌクレオチドなどの生物学的に活性な分子をコンジュゲートすることを支援する複数の官能基を有するポリマーを指し、官能基は、ポリマーの側鎖上に、またはポリマーの中央コアまたは中央主鎖に直接付着し得る。分枝ポリマーは、コンジュゲートのために主鎖から外れる1つまたは複数の官能基を有する線形主鎖を有し得る。分枝ポリマーは、1つ以上の側鎖を有するポリマーでもあり得、ここで、側鎖は、コンジュゲートに適した部位を有する。官能基の例は、ヒドロキシル、エステル、アミン、カーボネート、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、ヒドラジド、チオール、アルカン酸、酸ハロゲン化物、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート、およびトレシレートを含むがそれらに限定される。
【0037】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチド結合部分を含有し、標的核酸と相補的ヌクレオチドとの間の結合複合体の形成を支援する酵素を指す。ポリメラーゼは、塩基類似体検出活性、DNA重合活性、逆転写酵素活性、DNA結合または組み込み、鎖置換活性、およびヌクレオチド結合または組み込みおよび認識を含むがそれらに限定されない1つ以上の活性を有し得る。ポリメラーゼは、触媒的に不活性ポリメラーゼ、触媒的に活性ポリメラーゼ、逆転写酵素、およびヌクレオチド結合または組み込みの部分を含有する他の酵素を含み得る。
【0038】
本明細書で使用される「持続時間」は、標的核酸、ポリメラーゼ、コンジュゲートまたは非コンジュゲート化ヌクレオチドの間で形成される結合複合体が、結合成分が結合複合体から解離することなく安定したままである時間の長さを指す。持続時間は、結合複合体の安定性および結合相互作用の強さを示す。持続時間は、結合複合体の標識成分からのシグナルを観察することなどによって、結合複合体の開始および/または持続時間を観察することによって測定することができる。例えば、標識ヌクレオチドまたは1つ以上のヌクレオチドを含む標識試薬が結合複合体に存在し得、したがって、結合複合体の持続時間中に標識からのシグナルを検出することが可能になる。標識の1つの非限定的な例は蛍光標識である。
【0039】
II.標的核酸を分析する方法
本明細書に開示されるのは、多価性結合組成物または組み込み組成物、および配列決定または他の生物検定用途に含まれる核酸分子の分析におけるそれらの使用である。ヌクレオチドの酵素(例えば、ポリメラーゼ)または酵素複合体への結合または組み込みの増加は、ヌクレオチドの有効濃度を増加させることによって影響を受ける可能性がある。その増加は、遊離溶液中のヌクレオチドの濃度を増加させることによって、または関連する結合または組み込み部位に近接するヌクレオチドの量を増加させることによって達成され得る。増加はさらに、ヌクレオチド数を限られた容積に物理的に制限することによって達成され得、それは、濃度の局所的な増加をもたらし、したがって、そのような構造は、非コンジュゲート化され、繋留解除され、またはその他の制限されていない個々のヌクレオチドに観察され得るよりも高い見かけの結合力で結合部位または組み込み部位に結合または組み込むことができる。このような制限を行うための非限定的な手段は、複数のヌクレオチドがポリマー、分枝ポリマー、デンドリマー、ミセル、リポソーム、マイクロ粒子、ナノ粒子、量子ドットまたは当技術分野で知られている他の適切な粒子などの粒子に結合した多価性結合組成物または組み込み組成物を提供することによって行われる。
【0040】
本明細書に開示される多価性結合組成物または組み込み組成物は、少なくとも1つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含み得、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、粒子に付着した同じヌクレオチドの複数のコピーを有する。ヌクレオチドが標的核酸に相補的である場合、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、ポリメラーゼおよび標的核酸と結合複合体または組み込み複合体を形成し、結合複合体または組み込み複合体は、単一の非コンジュゲート化または繋留解除されたヌクレオチドを使用して形成された結合複合体または組み込み複合体より高い安定性およびより長い持続時間を示す。多価性結合組成物のヌクレオチド部分の各々は、プライミングされた標的核酸分子の相補的N+1ヌクレオチドに結合し得、それにより、2つ以上の標的核酸分子、2つ以上のポリメラーゼ(または他の酵素)分子を含む多価性結合複合体、および多価性結合組成物(例えば、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート)を形成する。多価性結合組成物のヌクレオチド部分の各々は、プライミングされた標的核酸分子の相補的Nヌクレオチドに結合し得、それにより、2つ以上の標的核酸分子、2つ以上のポリメラーゼ(または他の酵素)分子を含む多価性結合複合体、および多価性結合組成物(例えば、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート)を形成する。この結合した複合体から、ヌクレオチドは、複製鎖を1塩基延長する修飾された可逆的にブロックされたヌクレオチドを組み込む前に、相補的塩基を調べることができる。さらに、可逆的に終結したヌクレオチドで前進し、非ブロック化の前後のその後N+1塩基をプロービングして、結合した複合体によるNヌクレオチドの調査を想像することができる。このように、調査されたものを2回読み取ることによって、エラーチェックを実行し、ベースコールの全体的な精度を向上させ得る。従来の方法との重要な識別因子は、結合が一致した塩基を調べるために使用されるのに対し、ステッピングまたは組み込み工程は、伸長鎖上を前進するためにのみ使用されることである。
【0041】
多価性結合組成物または組み込み組成物は、検出可能なシグナルを、タンパク質-核酸相互作用、核酸ハイブリダイゼーション反応、またはポリメラーゼ反応などの酵素反応の部位などの生化学的相互作用の活性領域に局在化させるために使用され得る。例えば、本明細書に記載される多価性結合組成物または組み込み組成物は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖における塩基組み込みの部位を同定し、配列決定およびアレイベース用途のための塩基識別を提供するために利用され得る。ヌクレオチドが標的核酸に相補的である場合、標的核酸と多価性結合組成物または組み込み組成物中のヌクレオチドとの間の結合または組み込みの増加は、ベースコールの精度を大幅に改善し、撮像時間を短縮する増強されたシグナルを提供する。
【0042】
さらに、多価性結合組成物の使用により、所与の配列からの配列決定シグナルが、標的配列の複数のコピーを含むクラスター領域内で発生することが可能になる。標的配列の複数のコピーを組み込む配列決定方法は、定義された領域内に複数の同時配列決定反応が存在し、それぞれが独自のシグナルを提供するため、シグナルが増幅され得るという利点を有する。定義された領域内に複数のシグナルが存在すると、多数の正しいベースコールからのシグナルが少数のスキップされた、または誤ったベースコールからのシグナルを圧倒する事実のため、単一のスキップされたサイクルの影響も軽減され、したがって、位相エラーを減少するため、および/または配列決定反応のリード長を改善するための方法を提供する。
【0043】
本明細書に開示される多価性結合組成物およびそれらの使用は、以下の1つ以上をもたらす:(i)従来の核酸増幅および配列決定の方法と比較して、よりよいベースコール精度のためのより強いシグナル;(ii)配列特異的なシグナルとバックグラウンドシグナルからのより優れた識別を可能にすること;(iii)必要な出発材料の量の要件の削減、(iv)配列決定速度の上昇および配列決定時間の短縮;(v)位相エラーの削減(vi)配列決定反応中のリード長を改善すること。
【0044】
いくつかの実施形態では、標的核酸は、1つ以上の核酸分子を有する標的核酸サンプルを指し得る。いくつかの実施形態では、標的核酸は複数の核酸分子を含み得る。いくつかの実施形態では、標的核酸は2つ以上の核酸分子を含み得る。いくつかの実施形態では、標的核酸は、同じ配列を有する2つ以上の核酸分子を含み得る。
【0045】
A.標的核酸の配列決定
図1A-1Hは、多価性結合組成物が標的核酸を配列決定するために使用される1つの例示された方法を示す。図1Aに示されるように、標的核酸(102)は固体支持体表面(101)に繋留され得る。標的核酸は、表面へ直接または間接的に付着し得る。図1Aに示されていないが、標的核酸(102)は、共有結合または非共有結合によって表面へ付着しているアダプターにハイブリダイズされ得る。標的核酸を表面に付着させるために1つ以上のアダプターを使用する場合、標的表面は、アダプターに相補的であり、したがってアダプターにハイブリダイズするフラグメントを含み得る。いくつかの例では、1つのアダプター配列は表面に繋留されてもよい。いくつかの例では、複数のアダプター配列は表面に繋留されてもよい。いくつかの例では、標的核酸(102)は、アダプターを使用することなく固体支持体表面に直接に付着し得る。固体支持体は低非特異的結合表面になり得る。
【0046】
図1Bでは、標的核酸を固体支持体表面の表面に付着させる初期工程後(例えば、アダプターへのハイブリダイゼーションを介して)、増幅された核酸のクラスターを形成するために標的核酸はクローン増幅される。標的核酸がアダプターを介して表面に付着している場合、支持体表面上のアダプターにハイブリダイズしたクローン増幅核酸配列の表面密度は、繋留されたアダプター(またはプライマー)の表面密度と同じ範囲に及ぶ可能性がある。クローン増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、多重置換増幅(MDA)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、リアルタイムのSDA、ブリッジ増幅、等温ブリッジ増幅、ローリングサークル増幅、サークルツーサークル増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、リコンビナーゼ依存性増幅、一本鎖結合(SSB)、タンパク質依存性増幅、またはそれらの任意の組み合わせを使用して実施されてもよい。
【0047】
図1Cは、プライミングされた標的核酸(104)を形成するためにプライマー(103)を標的核酸(102)にアニールする非限定的な工程を示す。図1Bは、単にアニールする工程で使用されている1つのプライマーを示すが、標的核酸の種に応じて1つ以上のプライマーを使用することができる。いくつかの例では、標的核酸を表面に付着させるために使用されるアダプターは、プライミングされた標的核酸を調製するために使用されるプライマーと同じ配列を有する。プライマーは、順方向増幅プライマー、逆方向増幅プライマー、配列決定プライマー、および/または分子バーコーディング配列、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、1つのプライマー配列はハイブリダイゼーション工程において使用されてもよい。いくつかの例では、複数の様々なプライマー配列はハイブリダイゼーション工程において使用されてもよい。
【0048】
図1Dに示されるように、プライミングされた標的核酸(104)は、多価性結合組成物または組み込み組成物およびポリメラーゼ(106)と組み合わされて、結合複合体または組み込み複合体を形成する。図1Dの多価性結合組成物または組み込み組成物の非限定的な例は、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲート(105a)、(105b)、(105c)および(105d)を含む。各々の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、粒子に付着したヌクレオチドの複数のコピーを有し、および4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートはそれぞれ、4種のヌクレオチドをカバーする。プライミングされた標的核酸上に次の塩基に相補的なヌクレオチドを有する粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、ポリメラーゼおよび標的核酸との結合複合体または組み込み複合体を形成する。いくつかの例では、多価性結合組成物または組み込み組成物は、1つ、2つ、または3つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含んでもよい。いくつかの実施形態では、各々の異なる種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、別個の標識で標識することができる。いくつかの実施形態では、4種のヌクレオチドコンジュゲートのうち3つは標識され得、4つ目は非標識であるか、または検出不可能な標識にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、1つ、2つ、3つ、または4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、同じ標識で標識され得、またはそのコンジュゲートヌクレオチドの同一性に対応する標識でそれぞれ標識され、または標識されないままである、または検出不可能な標識にコンジュゲートされ得る3、2、1、または0の粒子-ヌクレオチド結合体で、標識され得る。いくつかの実施形態では、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを組み込んだポリメラーゼ複合体の検出は、4色検出を使用して実行することができ、4つのヌクレオチドすべてに対応するコンジュゲートがサンプル中に存在し、各コンジュゲートはそれにコンジュゲートされたヌクレオチドに対応する別個の標識を有する。いくつかの実施形態では、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、同時に標的核酸にさらされ、または標的核酸と接触させられてもよく、他のいくつかの実施形態では、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、個別に、あるいは2つまたは3つのグループで、標的核酸に連続してさらされ、または接触させることができる。いくつかの実施形態では、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを組み込んだポリメラーゼ複合体を検出する工程は、3色検出を使用して実施することができ、4つのヌクレオチドのうちの3つに対応するコンジュゲートがサンプル中に存在し、3つのコンジュゲートがそれにコンジュゲートされたヌクレオチドに対応する別個の標識を有し、および1つのコンジュゲートは標識がないか、または検出不可能な標識にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、4つのヌクレオチドのうちの3つに対応するコンジュゲートがサンプル中に存在し、3つのコンジュゲートそれにコンジュゲートされたヌクレオチドに対応する別個の標識を有し、および1つのコンジュゲートが存在しないように、3種のコンジュゲートのみが提供される。いくつかの実施形態では、標識されていないまたは存在しないヌクレオチドコンジュゲートに対応するヌクレオチドの同一性は、蛍光シグナルを示さない既知の標的核酸の「ダーク」スポットまたは位置の位置および/または同一性に関して決定することができる。いくつかの実施形態では、本開示は、結合複合体または組み込み複合体の検出が、非結合または溶液由来のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの非存在下で行われる、前記方法を提供する。
【0049】
4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートのうちの3つが標識されている、または4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートのうちの3つのみが存在するいくつかの実施形態では、非標識または存在しないコンジュゲートに対応するヌクレオチドの同一性は、シグナルの不在、または、配列決定反応における「ダーク」スポットまたは非標識領域の同定などの非標識複合体の存在のモニタリングによって確立され得る。いくつかの実施形態では、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを組み込んだポリメラーゼ複合体の検出は、2色検出を使用して実施することができ、4つのヌクレオチドのうちの2つに対応するコンジュゲートがサンプル中に存在し、2つのコンジュゲートがそれにコンジュゲートされたヌクレオチドに対応する別個の標識を有し、および2つのコンジュゲートは標識がないか、または検出不可能な標識にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートのうちの2つのみが標識される。4つの粒子-ヌクレオチドのうちの2つが標識されているいくつかの実施形態では、非標識コンジュゲートに対応するヌクレオチドの同一性は、シグナルの不在、または、配列決定反応における「ダーク」スポットまたは非標識領域の同定などの非標識複合体の存在のモニタリングによって確立され得る。4つの粒子-ヌクレオチドのうちの2つが標識されているいくつかの実施形態では、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、個別に、あるいは2つまたは3つのグループで、標的核酸に連続してさらされ、または接触させることができる。いくつかの実施形態では、4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートのうちの2つは、共通の標識を共有し得、そして4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、標的核酸に連続的に、個別に、または2つまたは3つのグループでさらされ、または接触され得、ここで、各接触工程は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のそのような接触工程の後、すべての未知の塩基の同一性が決定されているように、2つ以上の異なる塩基間の区別を示す。
【0050】
図1Eは、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライミングされた標的核酸の次の塩基に対して相補的ヌクレオチドを有する粒子-ヌクレオチドコンジュゲートの間に結合複合体または組み込み複合体が形成された後に表面に撮られた画像を示す。撮られた画像は、表面に形成された4つの結合複合体または組み込み複合体(107a)、(107b)、(107c)、および(107d)を含み、各結合複合体または組み込み複合体は、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート上の標識(たとえば、蛍光発光色)に基づいて区別できる異なるヌクレオチドを有する。粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを使用すると、特定の配列からの結合または組み込みシグナルを、標的配列の複数のコピーを含むクラスター領域内で発生させることができるため、配列決定シグナルが大幅に増強される。図1Eには、それぞれ異なる種のヌクレオチドを有する4つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートが含まれるが、いくつかの方法では、それぞれ異なる種のヌクレオチドおよび標識を有する1つ、2つ、または3つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを使用することができる。いくつかの実施形態では、それぞれの異なる種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、同じ標識、または各々がそのコンジュゲートヌクレオチドの同一性に対応する標識で標識され得る。いくつかの実施形態では、4種のヌクレオチドコンジュゲートのうち3つは標識され得、4つ目は非標識または検出不可能な標識にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、1、2、3、または4の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、個別の標識で標識され得、それぞれ3、2、1、または0粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは標識なしまたは検出不可能な標識にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、検出工程は、最大4つの異なる励起波長の同時および/または連続励起を含むことができ、たとえば、蛍光撮像は、可能な塩基対(A、G、C、またはT)のそれぞれを一意に分類する単一および/または複数の蛍光発光バンドを検出することによって実行される。いくつかの実施形態では、それぞれが異なるヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含む4つの異なる核酸結合組成物または組み込み組成物を使用して、末端ヌクレオチドの同一性を判定することができ、4つの異なる核酸結合組成物または組み込み組成物のうちの1つは第1のフルオロフォアで標識され、1つは第2のフルオロフォアで標識され、1つは第1と第2のフルオロフォアの両方で標識され、1つは標識されず、検出工程は第1の励起波長と第2の励起波長での同時励起を含み、画像は第1の蛍光発光波長と第2の蛍光発光波長で取得される。
【0051】
多価性結合組成物または組み込み組成物を単一の非結合または繋留解除ヌクレオチドの代わりに使用して、ポリメラーゼおよびプライミングされた標的核酸との結合複合体または組み込み複合体を形成する場合、ヌクレオチドの局所濃度は何倍にも増加し、これによってシグナル強度が増強する。形成された結合複合体または組み込み複合体はさらに、より長い持続時間を有し、これは次に、撮像工程を短縮させることに役立つ。高いシグナル強度は、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート(複数のフルオロフォアまたは他の標識を含み得る)の高い結合または組み込み結合力が原因であり、したがって、結合または組み込みおよび撮像工程全体にわたって安定したままである複合体を形成する。ポリメラーゼ、プライミングされた標的鎖、およびポリマー-ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログコンジュゲート間の強い結合または組み込みはさらに、このように形成された多価性結合複合体または組み込み複合体が洗浄工程中に安定したままであり、および他の反応混合物の成分とマッチしなかったヌクレオチドアナログが洗い流された場合にはシグナル強度が高いままであることを意味する。撮像工程の後、結合複合体または組み込み複合体を(例えば、緩衝組成を変更することによって)不安定にすることができ、プライミングされた標的核酸を1塩基分伸長させることができる。
【0052】
配列決定法は、図1Fに示されるように、プライミングされた鎖にN+1または末端ヌクレオチドを組み込む工程をさらに含み得る。図1Fでは、プライミングされた標的核酸(108)のプライマー鎖は、伸長された核酸(109)を形成するために1塩基分伸長され得る。伸長工程は、多価性結合複合体または組み込み複合体の不安定化の後に、あるいはそれと同時に行われる場合がある。プライミングされた標的核酸(108)は、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート中の粒子に結合する相補的ヌクレオチドを使用して、または多価性結合組成物または組み込み組成物が除去された後に提供される非コンジュゲート化または繋留解除された遊離ヌクレオチドを使用して伸長することができる。
【0053】
伸長工程の後、図1Gに示されるような接触工程は、結合複合体または組み込み複合体を形成し、および次の配列決定サイクルを模倣するために再度実行することができる。接触、検出および伸張の工程は、1つ以上のサイクルで繰り返すことができ、それによって標的核酸分子の配列を判定することができる。例えば、図1Hは、複数の配列決定サイクルを実行した後に取得された表面画像を示しており、その後、画像を処理して、標的核酸分子の配列を判定することができる。
【0054】
プライミングされた標的核酸の伸長は、鎖上のブロックされたヌクレオチドまたは触媒的に不活性であるポリメラーゼの使用のために防止または阻害され得る。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート中のヌクレオチドが、核酸の伸長を妨げるブロック基を有する場合、ヌクレオチドの組み込みは、前記ヌクレオチドからのブロック基の除去によって(例えば、そのポリマー、分枝ポリマー、デンドリマー、粒子などからの前記ヌクレオチドの脱離によって)達成され得る。触媒的に不活性のポリメラーゼの使用のためにプライミングされた標的核酸の伸長が阻害される場合、ヌクレオチドの組み込みは、金属イオンなどの補因子または活性化因子の提供によって達成され得る。
【0055】
さらに、本明細書に開示されるのは、開示された核酸配列決定、または核酸分析方法のいずれかを実施するために構成されたシステムである。このシステムは、固体支持体に付着したプライミングされた標的核酸分子を、開示されるポリメラーゼおよび多価性結合組成物または組み込み組成物および/または試薬と連続的かつ反復的に接触させるように構成された流体フローコントローラーおよび/または流体分配システムを含み得る。接触工程は、1つ以上のフローセル内に実施されてもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの固定成分であってもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの取り外し可能および/または使い捨ての成分であってもよい。
【0056】
配列決定システムは、開示される核酸結合組成物または組み込み組成物が、固体支持体またはフローセルの内部に繋留された標的核酸分子に対する開示された核酸結合組成物または組み込み組成物の結合または組み込みを撮像および検出するために、撮像モジュール、すなわち、1つ以上の光源、1つ以上の光学コンポーネント、および1つ以上の画像センサーを含み得る。開示される組成物、試薬および方法は、様々な核酸配列決定および分析用途のいずれかのために使用されてもよい。例は、DNA配列決定、RNA配列決定、全ゲノム配列決定、標的シーケンシング、エクソームシーケンシング、遺伝子型判定などを含むが、それらに限定されない。
【0057】
本配列決定システムは、本開示の方法を実施するためにプログラムされるコンピュータ制御システムを含んでもよい。コンピュータシステムは、核酸配列決定法、核酸配列決定データの解説およびRNA(例えば、mRNA)などの細胞核酸の分析、および配列決定データからの細胞の特徴付けを含む本開示の方法を実施するようにプログラムまたは他の方法で構成される。コンピュータシステムは、ユーザーの電子デバイス、または電子デバイスに対して遠隔に位置するコンピュータシステムであり得る。電子デバイスはモバイル電子デバイスであり得る。
【0058】
図2は、標的核酸の配列決定における工程を概説するフローチャートである。(201)は、標的核酸分子を基板表面上の相補的アダプターにハイブリダイズさせることによって、標的ライブラリー配列を固体支持体表面に付着させる工程を記載している。標的核酸分子は、一本鎖または部分的に二本鎖であり得る。(201)の前に、標的ライブラリーの核酸分子は、ライゲーションまたは他の方法によってアダプター配列に相補的なフラグメントを含むように調製されていた可能性がある。(202)は、表面上に標的核酸分子のクラスターを生成するためのクローン増幅の工程を記載している。(203)は、プライミングされた標的核酸を形成するために、配列決定プライマーを標的核酸上の相補的プライマー結合配列または組み込み配列にハイブリダイズさせる工程を記載している。(204)は、ポリメラーゼ、標識された(例えば、蛍光標識された)粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む多価性結合組成物または組込み組成物、とプライミングされた標的核酸を組み合わせる工程を記載している。(204は、ポリメラーゼおよび粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む非結合試薬を洗浄または除去する工程をさらに含み得る。
【0059】
再び図2を参照すると、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドが、プライミングされた標的核酸の次の塩基に相補的である場合(205)、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート、ポリメラーゼ、およびプライミングされた標的核酸は、三元結合複合体または組み込み複合体を形成し、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートの標識と互換性のある検出方法(例えば、蛍光撮像)によって検出され得る。(205)は、三元結合複合体または組み込み複合体の持続時間を測定する工程をさらに含み得る。(206)では、結合複合体または組み込み複合体は、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートとポリメラーゼの結合または組み込みを除去するために不安定にさせられる。解離は、結合複合体または組み込み複合体を、ポリメラーゼの立体配座を変化させ、結合または組み込みを不安定にする条件(例えば、ストロンチウムイオンの添加)に置くことによって達成され得る。206は、解離された粒子-ヌクレオチドコンジュゲートおよび/またはポリメラーゼを洗浄または除去する工程をさらに含み得る。(207)は、プライミングされた標的核酸のプライミングされた鎖を単一塩基付加反応によって伸長する工程を記載している。単一塩基の伸長後、工程(204)、(205)、(206)および(207)が、標的核酸の配列を判定するために複数のサイクルで繰り返され得る。
【0060】
図3は、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートからヌクレオチドを切断する工程、および切断されたヌクレオチドを組み込む工程を含む、標的核酸を配列決定する工程を概説する別のフローチャートである。(301)は、標的核酸分子を基板表面上の相補的アダプターにハイブリダイズさせることによって、標的ライブラリー配列を固体支持体表面に付着させる工程を記載している。標的核酸分子は、単鎖または部分的に二本鎖であり得る。((301)の前に、標的ライブラリーの核酸分子は、ライゲーションまたは他の方法によってアダプター配列に相補的な断片を含むように調製されていた可能性がある。(302)は、表面上に標的核酸分子のクラスターを生成するためのクローン増幅の工程を記載している。(303)は、プライミングされた標的核酸を形成するために、配列決定プライマーを標的核酸上の相補的プライマー結合または組み込み配列にハイブリダイズさせることを記載している。(304)は、ポリメラーゼ、標識された(例えば、蛍光標識された)粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む多価結合または取り込み組成物と、プライミングされた標的核酸を組み合わせる工程を記載している。粒子-ヌクレオチドコンジュゲートでは、ヌクレオチドは、後で切断され得る化学結合または相互作用を介して粒子に付着する。(404)は、さらにポリメラーゼおよび粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む非結合試薬を洗浄または除去する工程を含み得る。
【0061】
再び図3を参照すると、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドがプライミングされた標的核酸の次の塩基に相補的である場合(305)、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート、ポリメラーゼ、およびプライミングされた標的核酸は、三元結合複合体または組み込み複合体を形成し、粒子-ヌクレオチドコンジュゲートの標識と互換性のある検出方法(例えば、蛍光撮像)によって検出され得る。(305)は、三元結合複合体または組み込み複合体の持続時間を測定することをさらに含み得る。(306)では、ポリメラーゼは、ヌクレオチドを組み込むために触媒的に活性になる条件に置かれる。この条件は、反応溶液中のMgイオンまたはMnイオンにポリメラーゼをさらすことを含み得る。その後、ポリメラーゼおよびプライミングされた標的核酸に結合したヌクレオチドは、粒子から切断され、その後、プライミングされた標的核酸のプライミングされた鎖に組み込まれる。結合複合体または組み込み複合体は不安定になる。(306)は、解離された粒子-ヌクレオチドコンジュゲートおよび/またはポリメラーゼを洗浄または除去する工程をさらに含み得る。伸長の後、工程(304)、(305)および(306)が、標的核酸の配列を判定するために複数のサイクルで繰り返され得る。
【0062】
B.標的核酸分子の検出
図4A~4Bは、多価性結合組成物または組み込み組成物が標的核酸を検出するために使用される1つの例示された方法を示す。図4Aに示されるように、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート(401)は、ポリメラーゼ(406)、第1の核酸分子(404)と第2の核酸分子(405)に接して置かれる。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート(401)は、コアから放射状に広がる複数のポリマー分枝を有し、いくつかの分枝はヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(402)に付着し、いくつかの分枝は標識(403)に付着する。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート(401)上のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(402)が第1の核酸(404)の少なくとも一部に相補的である場合、多価性結合複合体または組み込み複合体が図Bに示されるように形成され、および強力な結合または組み込みシグナルは、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに相補的または部分的に相補的な配列を有する標的核酸を検出するのに役立つ。いくつかの例では、ポリメラーゼ、核酸分子、およびポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの少なくとも1つは、固体支持体に付着している。
【0063】
本明細書に記載される多価性結合組成物または組み込み組成物は、サンプル中の標的核酸を検出する方法において使用され得る。さらに、本明細書に開示されるのは、開示された核酸分析方法のいずれかを実施するために構成されたシステムである。このシステムは、核酸分子を、開示されるポリメラーゼおよび多価性結合組成物または組み込み組成物および/または試薬と連続的かつ反復的に接触させるように構成された流体フローコントローラーおよび/または流体分配システムを含み得る。接触させる工程は、1つ以上のフローセル内で実施されてもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの固定成分であってもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの取り外し可能および/または使い捨ての成分であってもよい。システムはさらに、サンプル採取ユニットおよびアッセイアセンブリを含むカートリッジを含み得、サンプル採取ユニットは、サンプルを採取するように構成され、アッセイアセンブリは、前記分析物と相互作用するように適合された多価性結合組成物または組み込み組成物を含む少なくとも1つの反応部位を含み、それは、サンプルの所定の部分を、アッセイアセンブリ内に含まれるアッセイ試薬と反応させ、サンプル中の分析物の存在を示すシグナルを生成することを可能にし、分析物から生成されたシグナルを検出する。
【0064】
III.多価性結合組成物または組み込み組成物
本開示は、粒子(例えば、ポリマー、分枝ポリマー、デンドリマー、または同等構造)にコンジュゲートした複数のヌクレオチドを有する多価性結合組成物または組み込み組成物に関する。多価性結合組成物または組み込み組成物をポリメラーゼおよびプライミングされた標的核酸の複数のコピーと接触させると、検出され得る三元複合体が形成され、これが、今度は標的核酸の塩基のより正確な判定を達成し得る。
【0065】
多価性結合組成物または組み込み組成物を使用して、単一の非コンジュゲート化または繋留解除されたヌクレオチドを置き換えて、ポリメラーゼおよび標的核酸の1つ以上のコピーと複合体を形成する場合、ヌクレオチドの局所濃度および複合体の結合力(2つ以上の標的核酸分子を含む複合体が形成される場合)は何倍にも増加し、それは今度シグナル強度、特に正しいシグナル対ミスマッチを増強させる。本明細書に記載される多価性結合組成物または組み込み組成物は、標的核酸と相互作用するために少なくとも1つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲート(各々の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートが単一のヌクレオチド部分の複数のコピーを含む)を含み得る。多価性組成物は、各々が粒子にコンジュゲートした異なるヌクレオチドを有する、2つ、3つ、または4つの異なる粒子-ヌクレオチドコンジュゲートをさらに含み得る。
【0066】
多価性結合組成物または組み込み組成物は、1、2、3、4、またはそれ以上の種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含み得、ここで、各々の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、異なる種のヌクレオチドを含む。第1種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、ATP、ADP、AMP、dATP、dADP,およびdAMPからなる群から選択されたヌクレオチドを含み得る。第2種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、TTP、TDP、TMP、dTTP、dTDP、dTMP、UTP、UDP、UMP、dUTP、dUDP,およびdUMPからなる群から選択されたヌクレオチドを含み得る。第3種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、CTP、CDP、CMP、dCTP、dCDP、およびdCMPからなる群から選択されたヌクレオチドを含み得る。第4種の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、GTP、GDP、GMP、dGTP、dGDP、およびdGMPからなる群から選択されたヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、各々の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、ATP、ADP、AMP、dATP、dADP、dAMP、TTP、TDP、TMP、dTTP、dTDP、dTMP、UTP、UDP、UMP、dUTP、dUDP、dUMP、CTP、CDP、CMP、dCTP、dCDP、dCMP、GTP、GDP、GMP、dGTP、dGDP,およびdGMPからなる群から選択された1つ以上のヌクレオチドそれぞれに対応する単一種のヌクレオチドを含む。各々の多価性結合組成物または組み込み組成物は、各々のコンジュゲートそれぞれにコンジュゲートされた特定のヌクレオチドに対応する1つ以上の標識をさらに含み得る。標識の非限定的な例は、蛍光標識、比色標識、電気化学的標識(例えば、グルコースまたは他の還元糖、あるいはチオールまたは他のレドックス活性部分など)、発光標識、化学発光標識、スピン標識、放射性標識、立体標識、アフィニティータグなどを含む。
【0067】
A.粒子-ヌクレオチドコンジュゲート
粒子-ヌクレオチドコンジュゲートでは、同じヌクレオチドの複数のコピーが粒子に共有結合または非共有結合している可能性がある。粒子の例は、分枝ポリマー;デンドリマー;アガロース、ポリアクリルアミド、アクリレート、メタクリレート、シアノアクリレート、メタクリル酸メチル粒子などの架橋ポリマー粒子;ガラス粒子;セラミック粒子;金属粒子;量子ドット;リポソーム;エマルション粒子、または当技術分野において既知の他の粒子(例えば、ナノ粒子、微粒子など)を含み得る。好ましい実施形態では、粒子は分枝ポリマーである。
【0068】
いくつかの例では、粒子-ヌクレオチドコンジュゲート(例えば、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート)は、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、または粒子に繋留されたヌクレオシドアナログの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多いコピーを含み得る。
【0069】
ヌクレオチドは、リンカーによって粒子にリンクされ得、およびヌクレオチドは、ポリマーの1つの末端、または位置に付着し得る。ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’末端を介して粒子にコンジュゲートされ得る。いくつかの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートにおいて、1つのヌクレオチドはポリマーの1つの末端または位置に付着する。いくつかの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートにおいて、複数のヌクレオチドはポリマーの1つの末端または位置に付着する。コンジュゲートされたヌクレオチドは、1つ以上のタンパク質、1つ以上の酵素、およびヌクレオチド結合または組み込み部分に立体的にアクセス可能である。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、ポリメラーゼなどのヌクレオチド結合または組み込み部分とは個別に提供され得る。いくつかの実施形態では、リンカーは光放出基または光吸収基を含まない。
【0070】
粒子はさらに結合部分または組み込み部分を有してもよい。いくつかの実施形態では、粒子は別個の相互作用部分を使用せずに自己会合する可能性がある。いくつかの実施形態では、粒子は、例えば、ヒドロキシアパタイト粒子のカルシウム媒介相互作用、ミセルまたはリポソームの脂質またはポリマー媒介相互作用、または金属(鉄または金など)のナノ粒子の塩媒介凝集の場合のように、緩衝条件または塩条件のために自己会合し得る。
【0071】
粒子-ヌクレオチドコンジュゲートは、1つ以上の標識を有し得る。標識の例は、フルオロフォア、スピン標識、金属または金属イオン、比色標識、ナノ粒子、PET標識、放射性標識、またはポリマー、またはマクロ分子または分子相互作用の検出の技術分野で知られているような方法によって前記組成物を検出可能にすることができる他のそのような標識を含むが、これらに限定されない。標識は、(例えば、ヌクレオチドの5’リン酸部分への付着による)ヌクレオチド、粒子自体(例えば、PEGサブユニット)、ポリマーの末端、中央部分、または前記ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート内の他の任意の位置に付着してもよく、前記の他の位置は当技術分野で知られている、または本明細書の他の場所に記載されているような方法によって検出可能な粒子などの前記組成物をレンダリングするのに十分であると当技術分野の当業者によって認識される。いくつかの実施形態では、1つ以上の標識は、特定の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートに対応するように、またはそれを区別するように提供される。
【0072】
いくつかの実施形態では、標識はフルオロフォアである。蛍光性の部分の非限定的な例は、フルオレセインおよびカルボキシフルオレセイン、テトラクロロフルオレセイン、ヘキサクロロフルオレセイン、カルボキシナフトフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、NHS-フルオレセイン、ヨードアセトアミドフルオレセイン、フルオレセインマレイミド、SAMSA-フルオレセイン、フルオレセインチオセミカルバジド、カルボヒドラジノメチルチオアセチル-アミノフルオレセインなどのフルオレセインの誘導体、ローダミンおよびTRITC、TMR、リサミンローダミン、テキサスレッド、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン10、NHS-ローダミン、TMR-ヨードアセトアミド、リサミンローダミンBスルホニルクロリド、リサミンローダミンBスルホニルヒドラジン、テキサスレッドスルホニルクロリド、テキサスレッドヒドラジドなどのローダミンの誘導体、クマリン、およびAMCA、AMCA-NHS、AMCA-スルホ-NHS、AMCA-HPDP、DCIA、AMCEヒドラジドなどのクマリン誘導体、BODIPYおよびBODIPY FL C3-SE、530/550のBODIPY C3、BODIPY 530/550 C3-SE、BODIPY 530/550 C3ヒドラジド、BODIPY 493/503 C3ヒドラジド、BODIPY FL C3ヒドラジド、BODIPY FL IA、BODIPY 530/551 IA、Br-BODIPY 493/503などの誘導体、カスケードブルー(cascade blue)および、カスケードブルー(cascade blue)アセチルアジド、カスケードブルー(cascade blue)カダベリン、カスケードブルー(cascade blue)エチレンジアミン、カスケードブルー(cascade blue)ヒドラジドなどの誘導体、ルシファーイエローおよび、ルシファーイエローヨードアセトアミド、ルシファーイエローCHなどの誘導体、シアニンおよび、インドリウムベースのシアニン染料、ベンゾ-インドリウムベースのシアニン染料、ピリジウムベースのシアニン染料、チオゾリウムベースのシアニン染料、キノリニウムベースのシアニン染料、イミダゾリウムベースのシアニン染料、Cy3、Cy5などの誘導体、ランタニドキレート化合物、およびBCPDA、TBP、TMT、BHHCT、BCOT、ユーロピウムキレート、テルビウムキレート、Alexa Fluor染料、DyLight染料、Atto染料、LightCycler Red染料、CALFluor染料などの誘導体、JOEおよびその誘導体、オレゴングリーン染料、WellRED染料、IRD染料、フィコエリトリンおよびフィコビリン染料、マラカイトグリーン、スチルベン、DEG染料、NR染料、近赤外染料Haugland、Molecular Probes Handbook、(Eugene、Oreg.) 6th Edition;Lakowicz、Principles of Fluorescence Spectroscopy、2nd Ed.,Plenum Press New York(1999)、or Hermanson、Bioconjugate Techniques、2nd Editionに記載されたなどの当技術分野において既知の他のもの、またはその誘導体、あるいはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。シアニン染料は、スルホン化または非スルホン化のいずれかの形態で存在し得、2つの窒素原子間のポリメチンブリッジによって分離された2つのインドレニン、ベンゾ-インドリウム、ピリジウム、チオゾリウム、および/またはキノリニウム基から構成され得る。市販のシアニンフルオロフォアは、例えば、Cy3(それは1-[6-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-6-オキソヘキシル]-2-(3-{1-[6-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-6-オキソヘキシル]-3,3-ジメチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-イリデン}プロプ-1-エン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール、または1-[6-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-6-オキソヘキシル]-2-(3-{1-[6-(2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)-6-オキソヘキシル]-3,3-ジメチル-5-スルホ-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-イリデン}プロップ-1-エン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-5-スルホネートを含んでもよい)、Cy5(それは1-(6-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-6-オキソヘキシル)-2-((1E、3E)-5-((E)-1-(6-((2、5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-インドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム、または1-(6-((2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-6-オキソヘキシル)-2-((1E、3E)-5-((E)-1-(6-((2、5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ)-6-オキソヘキシル)-3,3-ジメチル-5-スルホインドリン-2-イリデン)ペンタ-1,3-ジエン-1-イル)-3,3-ジメチル-3H-インドール-1-イウム-5-スルホネートを含んでもよい)、およびCy7(それは1-(5-カルボキシペンチル)-2-[(1E、3E、5E、7Z)-7-(1-エチル-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-イリデン)ヘプタ-1,3,5-トリエン-1-イル]-3H-インドリウム、または1-(5-カルボキシペンチル)-2-[(1E、3E、5E、7Z)-7-(1-エチル-5-スルホ-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-イリデン)ヘプタ-1,3,5-トリエン-1-イル]-3H-インドリウム-5-スルホネートをふくんでもよい)を含み、ここで、「Cy」は「シアニン」を表し、最初の桁は2つのインドレニン基の間の炭素原子の数を示す。インドレニンというよりオキサゾール誘導体であるCy2、およびベンゾ誘導体化されたCy3.5、Cy5.5、およびCy7.5は、この規則の例外である。
【0073】
いくつかの実施形態では、検出標識はFRET対になり得るため、複数の分類を単一の励起および撮像工程で実行できる。本明細書で使用されるように、FRETは励起交換(Forster)転写、または電子交換(Dexter)転写を含む場合がある。
【0074】
B.ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート
粒子-ヌクレオチドコンジュゲートの1つの例はポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートである。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートのいくつかの非限定的な例は図5A-5Cで示される。例えば、図5Aは、様々な構成、例えば、蛍光標識されたストレプトアビジンコアと、1Kダルトン~10Kダルトンの範囲の分子量のビオチン化された線状PEGリンカーを介してコアに結合した4つのヌクレオチドを含む「スターバースト」構成を有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを示す;図5Bは、例えば、12、24、48、または96アームのデンドリマーコア、および中心から放射状に広がる1Kダルトン~10Kダルトンの範囲の分子量の線状PEGリンカーを有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを示す;および、図5Cは、ビオチンなどの結合部分または組み込み部分を含む分枝PEGリンカーによって一緒に連結された、例えば、ストレプトアビジンコアのネットワークを含むポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの例を示す。
【0075】
適切な線状または分枝状ポリマーの例は、線状または分枝状ポリエチレングリコール(PEG)、線状または分枝状ポリプロピレングリコール、線状または分枝状ポリビニルアルコール、線状または分枝状ポリ乳酸、線状または分枝状ポリグリコール酸、線状または分枝状ポリグリシン、線状または分枝状ポリビニル酢酸塩、デキストラン、または他のそのようなポリマー、または前述のいずれか2つ以上を組み込んだ、あるいは当技術分野で知られている他のポリマーを組み込んだコポリマーを含む。1つの実施形態では、ポリマーはPEGである。別の実施形態では、ポリマーはPEG分枝を有し得る。
【0076】
適切なポリマーは、アミン、ヒドロキシル、カルボニル、またはアリル基などの誘導体化に適した官能基を組み込んだ反復単位を特徴とする場合がある。ポリマーはさらに、他のサブユニットが同じ部位、置換基、または部分を組み込んでいるか否かにかかわらず、1つ以上の特定のサブユニットが誘導体化部位または分枝部位を組み込むように、1つ以上の事前誘導体化された置換基を有することができる。事前に誘導体化された置換基は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ヌクレオチドアナログ、蛍光標識、放射性標識、またはスピン標識などの標識、相互作用部分、追加のポリマー部分等、または前述の任意の組み合わせを含み得、またはさらに含み得る。
【0077】
ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートでは、ポリマーは複数の分枝を有し得る。分枝ポリマーは、星状(「スターバースト」)形態、凝集星状(「ヘルタースケルター」)形態、ボトルブラシ、またはデンドリマーを含むが、これらに限定されない様々な構成を有することができる。分枝ポリマーは、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多くの分枝点などの複数の分枝点を、中央の付着点または中心部分から放射することができ、または、組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ポリマーの各サブユニットは、随意に別個の分枝点を構成してもよい。
【0078】
分枝の長さおよびサイズは、ポリマーの種類によって異なり得る。いくつかの分枝ポリマーでは、分枝の長さは、1~1,000nm、1~100nm、1~200nm、1~300nm、1~400nm、1~500nm、1~600nm、1~700nm、1~800nm、または1~900nm、あるいはそれより長くてもよく、または本明細書に開示される値のいずれかの内または間に入る長さであってもよい。
【0079】
いくつかのポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートでは、ポリマーコアは、1K Da、2K Da、3K Da、4K Da、5K Da、10K Da、15K Da、20K Da、30K Da、50KDa、80K Da、100K Da、または前述のいずれか2つで定義された範囲内の任意の値の見かけの分子量に対応するサイズを有し得る。ポリマーの見かけの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって判定されるように、質量分析によって判定されるように、または当技術分野で知られている他の方法によって判定されるように、代表的な数のサブユニットの既知の分子量から計算され得る。
【0080】
いくつかの分枝ポリマーでは、分枝は、1K Da、2K Da、3K Da、4K Da、5K Da、10K Da、15K Da、20K Da、30K Da、50KDa、80K Da、100K Da、または前述のいずれか2つで定義された範囲内の任意の値の見かけの分子量に対応するサイズを有し得る。ポリマーの見かけの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって判定されるように、質量分析によって判定されるように、または当技術分野で知られている他の方法によって判定されるように、代表的な数のサブユニットの既知の分子量から計算され得る。ポリマーは複数の分枝を有することができる。ポリマーにおける分枝の数は、2、3、4、5、6、7、8、12、16、24、32、64、128またはそれ以上、あるいはこれらの値のうちのいずれかの2つによっても定義された範囲内に及ぶ数であり得る。
【0081】
例えば、4、8、16、32、または64の分枝を含む分枝PEGの分枝ポリマーを含むポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの場合、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、各末端がそれに0、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のヌクレオチドが付着しているようにPEG分枝の末端に付着したヌクレオチドを有することができる。1つの非限定的な例では、3~128のPEGアームの分枝PEGポリマーは、各末端がそれに0、1、2、3、4、5、6またはそれ以上のヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを付着しているように、1つ以上のヌクレオチドをポリマー分枝の末端に付着し得る。いくつかの実施形態では、分枝ポリマーまたはデンドリマーは偶数のアームを有する。いくつかの実施形態では、分枝ポリマーまたはデンドリマーは奇数のアームを有する。
【0082】
いくつかの例では、リンカー(例えば、PEGリンカー)の長さは約1nm~約1,000nmの範囲であり得る。いくつかの例では、リンカーの長さは、少なくとも1nm、少なくとも10nm、少なくとも25nm、少なくとも50nm、少なくとも75nm、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nmあるいは少なくとも1,000nmであってもよい。いくつかの例では、リンカーの長さは、本段落の任意の2つの値の間の範囲に及んでもよい。例えば、いくつかの例では、リンカーの長さは約75nm~約400nmに及んでもよい。当業者は、いくつかの例では、リンカーの長さは、本段落の範囲内に任意の値、例えば、834nmであってもよいことを認識するであろう。
【0083】
いくつかの例では、リンカーの長さは、異なるヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む)、ヌクレオチドアナログ(デオキシリボヌクレオチドアナログおよびリボヌクレオチドアナログを含む)、ヌクレオシド(デオキシリボヌクレオシドまたはリボヌクレオシドを含む)、またはヌクレオシドアナログ(デオキシリボヌクレオシドアナログまたはリボヌクレオシドアナログを含む)によって異なる。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、デオキシアデノシンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、デオキシグアノシンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、チミジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、デオキシウリジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、デオキシシチジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、アデノシンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、グアノシンを含み、およびリンカーの長さは1~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、5-メチルウリジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、ウリジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。いくつかの例では、ヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオシド、またはヌクレオシドアナログのうちの1つは、例えば、シチジンを含み、およびリンカーの長さは1nm~1,000nmの間である。
【0084】
ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートにおいて、ポリマーの各分枝または分枝のサブセットには、ヌクレオチド(例えば、アデニン、チミン、ウラシル、シトシン、またはグアニン残基またはその誘導体または模倣物)を含む部分が付着しており、この部分は、ポリメラーゼ、逆転写酵素、または他のヌクレオチド結合または組み込みドメインへの結合または組み込みが可能である。随意に、この部分は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖への組み込みが可能な場合がある。いくつかの例では、前記部分は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に組み込むことができないようにブロックされ得る。他のいくつかの例では、前記部分は、そのようなブロックが除去されるまで、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に組み込むことができないように可逆的にブロックされ得、その後、前記部分は、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に組み込むことができる。
【0085】
ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’末端を介してポリマー分枝にコンジュゲートされ得る。いくつかの例では、ヌクレオチドは、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖へのヌクレオチドの組み込みを阻害または防止するように修飾され得る。例として、ヌクレオチドは、ポリメラーゼ反応中に伸長する核酸鎖に組み込むことができないように、3’デオキシリボヌクレオチド、3’アジドヌクレオチド、3’-メチルアジドヌクレオチド、または、当技術分野で知られている、または知られている可能性がある別のそのようなヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、3’-O-アジド基、3’-O-アジドメチル基、3’-ホスホロチオエート基、3’-O-マロニル基、3’-O-アルキルヒドロキシルアミノ基、または3’-O-ベンジル基を含み得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは3’ヒドロキシル基を欠いている。
【0086】
ポリマーは、各分枝または分枝のサブセットに結合または組み込み部分をさらに有し得る。結合または組み込み部分のいくつかの例は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンなど、ポリヒスチジンドメイン、相補的対核酸ドメイン、G-カルテット形成核酸ドメイン、カルモジュリン、マルトース結合タンパク質、セルラーゼ、マルトース、スクロース、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、グルタチオン、O-6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、ベンジルグアニンおよびその誘導体、ベンジルシステインおよびその誘導体、抗体、エピトープ、タンパク質A、タンパク質Gを含むが、これらに限定されない。結合または組み込み部分は、タンパク質間、タンパク質とリガンドとの間、タンパク質と核酸との間、核酸間、または小分子相互作用ドメインまたは部分間での結合または相互作用を促進するための当技術分野で知られている任意の相互作用分子またはその断片であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、相補的相互作用部分の1つ以上の要素を含んでもよい。相補的相互作用部分の非限定的な例は、例えば、ビオチンおよびアビジン;SNAP-ベンジルグアノシン;抗体、またはFABおよびエピトープ;IgG FCおよびタンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、またはタンパク質L;マルトース結合タンパク質およびマルトース;レクチンおよび同族の多糖類;イオンキレート部分、相補的核酸、三重らせんまたは三重らせん相互作用を形成可能な核酸;G-カルテットを形成可能な核酸等を含む。当業者は、部分の多くの対が存在し、強くおよび互いに特異的に相互作用するそれらの特性のために一般的に使用される。したがって、そのような相補的な対またはセットは、本開示の組成物を構築または構想する際のこの目的に適していると見なされることが容易に認識されるであろう。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、相補的相互作用部分の1つの要素が1つの分子または多価性リガンドに付着し、相補的相互作用部分の他の要素が別個の分子または多価性リガンドに付着する組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、単一分子または多価性のリガンドに相補的相互作用部分の両方またはすべての要素が付着している組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、相補的相互作用部分の両方またはすべての要素が単一分子または多価性リガンドの別個のアームまたはその上の位置に付着している組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、相補的相互作用部分の両方またはすべての要素が単一分子または多価性リガンドの同じアームまたはその上の位置に付着している組成物を含み得る。いくつかの実施形態では、相補的相互作用部分の1つの要素を含む組成物および相補的相互作用部分の別の要素を含む組成物は、同時にまたは連続して混合され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される分子または粒子間の相互作用は、例えば、検出可能なシグナルが増加するように、複数の分子または粒子の会合または凝集を可能にする。いくつかの実施形態では、蛍光シグナル、比色定量シグナル、または放射性シグナルは増強される。他の実施形態では、本明細書に開示される、または当技術分野で知られている他の相互作用部分が企図される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、例えば、1つ以上のイミダゾールまたはピリジン部分などの第1の相互作用部分を含む1つ以上の分子、および例えば、ヒスチジン残基などの第2の相互作用部分を含む1つ以上の追加分子は、同時にまたは連続して混合されるように提供されてもよい。いくつかの実施形態では、前記組成物は1、2、3、4、5、6、またはそれより多くのイミダゾールまたはピリジン部分を含む。いくつかの実施形態では、前記組成物は1、2、3、4、5、6またはそれより多くのヒスチジン残基を含む。そのような実施形態では、提供される分子または粒子間の相互作用は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどの二価性カチオンの存在によって促進され得る。いくつかの実施形態では、例えば、(His)3基は、ニッケルまたはマンガンイオンの協調を介して、別の分子または粒子上の(His)3基と相互作用し得る。
【0088】
多価性結合組成物または組み込み組成物は、1つ以上の緩衝液、塩、イオン、または添加剤を含み得る。いくつかの実施形態では、代表的な添加剤は、ベタイン、スペルミジン、Triton X-100、Tween 20、SDS、またはNP-40などの界面活性剤、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール、メチルセルロース、ヘパリン、ヘパラン硫酸、グリセロール、スクロース、1,2-プロパンジオール、DMSO、N,N,N-トリメチルグリシン、エタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、Pluronic(登録商標)シリーズポリマーなどのブロックコポリマー、アルギニン、ヒスチジン、イミダゾール、またはその任意の組み合わせ、あるいは、DNA「リラクサー」(鎖内の部位がDNA結合または組み込み部分へのアクセス性が増加するようにDNAの持続長を変更したり、ポリマー内のコンジュゲート部または架橋部の数を変更したり、DNA分子の立体構造動力学を変更したりする効果を有する化合物)として当技術分野で知られる任意の物質を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0089】
多価性結合組成物または組み込み組成物は、添加剤として双性イオン性化合物を含み得る。さらに代表的な添加剤は、Lorenz、T.C. J. Vis.Exp.(63)、e3998、doi:10.3791/3998(2012)にあり、それは、核酸結合または動力学の促進、または核酸の操作、使用、または貯蔵の促進のための添加剤の開示に関して本明細書に参照として引用されている。いくつかの実施形態では、代表的なカチオンは、ナトリウム、マグネシウム、ストロンチウム、カリウム、マンガン、カルシウム、リチウム、ニッケル、コバルト、または自己会合、二次または三次構造形成、塩基対形成、表面会合、ペプチド会合、タンパク質結合などの核酸相互作用を促進するために当技術分野で知られている他のそのようなカチオンを含み得るが、これらに限定されない。
【0090】
IV.標的核酸と多価性結合組成物または組み込み組成物との結合
多価性結合組成物または組み込み組成物が、ポリメラーゼおよび標的核酸の1つ以上のコピーと複合体を形成するために単一の非コンジュゲート化または繋留解除されたヌクレオチドの置き換えに使用される場合、複合体(2つ以上の標的核酸分子を含む複合体が形成される場合)の結合力と同様にヌクレオチドの局所濃度は何倍にも増加し、それによってシグナル強度、特に正しいシグナル対ミスマッチが増強する。本開示は、多価性結合組成物または組み込み組成物をポリメラーゼおよびプライミングされた標的核酸と接触させて、三元結合複合体または組み込み複合体の形成を判定することを企図する。
【0091】
図6は、結合中の増加したシグナル強度、持続性および洗浄/除去工程を達成するために開示されたポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用を示す。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドの局所濃度の増加および/または2つ以上のプライミングされた標的核酸分子との非共有結合の形成のために、ポリメラーゼ、プライミングされた標的鎖、およびポリマーコンジュゲートヌクレオチドの結合は、ヌクレオチドが標的核酸の次の塩基に相補的である場合、より好ましいものになる。形成された結合複合体は、より長い持続時間を有し、それはシグナルを増加させ、撮像工程を短縮するのに役立つ。開示されたポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用から生じる高いシグナル強度は、結合および撮像工程全体にわたって安定したままである。ポリメラーゼ、プライミングされた標的鎖、およびポリマーコンジュゲートヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの間の強い結合はまた、他の反応混合物成分および一致しないヌクレオチドアナログが洗い流されると、このように形成された結合複合体は洗浄工程中に安定したままであることを意味する。撮像工程の後、結合複合体は(例えば、緩衝液組成物の変更によって)不安定になり得、プライミングされた標的核酸は、その後1つの塩基について伸長され得る。伸長の後、結合および撮像工程は、次の塩基の同一性を判定するために、開示されたポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを使用して反復され得る。
【0092】
例として、本明細書に記載される多価性基板の結合、持続、および洗浄/除去中のシグナル強度の増加のグラフ表示が図6に提供され、これは実験的に観察されたシグナル強度の変化を表している。したがって、本開示の組成物および方法は、三元酵素複合体を確立および維持するための頑強で制御可能な手段を提供するとともに、それによって前記複合体の存在を識別および/または測定することができ、かつ前記複合体の持続性を制御することができる大幅に改善された手段を提供する。これは、核酸配列決定適用におけるN+1塩基の同一性の判定などの問題に対する重要な解決策を提供する。
【0093】
特定の理論に縛られることを意図することなく、本明細書に開示される多価性結合組成物は、遊離溶液中のヌクレオチドによって得られることが知られている会合速度よりも実質的に遅いが、時間依存性の速度で三元結合複合体を形成するためにポリメラーゼヌクレオチド複合体と会合することが観察された。したがって、オン速度(on-rate)(Kon)は、単一ヌクレオチド、または多価性リガンド複合体に付着していないヌクレオチドのオン速度よりも実質的かつ驚くほど遅い。しかしながら、重要なことに、多価性リガンド複合体のオフ速度(off rate)(Koff)は、遊離溶液でのヌクレオチドに観察された速度より実質的に遅い。したがって、本開示の多価性リガンド複合体は、三元ポリメラーゼ-ポリヌクレオチド-ヌクレオチド複合体の持続性の驚くべき有益な改善(特に、遊離ヌクレオチドで形成されるそのような複合体に対して)を提供し、例えば、現在利用可能な方法および試薬を上回る核酸配列決定適用の撮像品質より有意な改善を可能にする。重要なことに、本明細書に開示される多価性結合組成物のこの特性は、目に見える三元複合体の形成を制御可能にし、その結果、その後の視覚化、修飾、または処理工程は、本質的に複合体の解離に関係なく実行することができる、すなわち、複合体を形成、撮像、変更、または必要に応じて他の方法で使用することができ、ユーザーが複合体を解離緩衝液にさらすなどの肯定的な解離工程を実行するまで複合体は安定したままである。
【0094】
いくつかの例では、開示される粒子ヌクレオチドまたはポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを使用して形成された、多価性結合複合体の持続時間は、不安定ではない条件下で約0.1秒~約600秒の範囲に及ぶ場合がある。いくつかの例では、持続時間は、少なくとも0.1秒、少なくとも1秒、少なくとも2秒、少なくとも3秒、少なくとも4秒、少なくとも5秒、少なくとも6秒、少なくとも7秒、少なくとも8秒、少なくとも9秒、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも40秒、少なくとも50秒、少なくとも60秒、少なくとも120秒、少なくとも180秒、少なくとも240秒、少なくとも300秒、少なくとも360秒、少なくとも420秒、少なくとも480秒、少なくとも540秒、または少なくとも600秒であってもよい。いくつかの例では、持続時間は、この段落に指定される任意の2つの値の間の範囲に及んでもよい。例えば、いくつかの例では、持続時間は約10秒~約360秒の範囲に及んでもよい。当業者は、いくつかの例では、持続時間が、本段落に指定される範囲内に任意の値、例えば、78秒であってもよいことを認識するであろう。
【0095】
様々な実施形態では、本明細書に記載される結合または組み込み相互作用に適したポリメラーゼは、そのままの任意のポリメラーゼ、または当技術分野で知られている可能性があるものを含み得る。例えば、各々の生物が、そのゲノム内に1つ以上のDNAポリメラーゼをコードすることは知られている。適切なポリメラーゼの例は、クレノウDNAポリメラーゼ(Klenow DNA polymerase)、Thermus aquaticus DNAポリメラーゼI(Taqポリメラーゼ)、KlenTaqポリメラーゼ、およびバクテリオファージT7DNAポリメラーゼ;ヒトアルファ、デルタおよびイプシロンDNAポリメラーゼ;T4、RB69およびphi29のバクテリオファージDNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus DNAポリメラーゼ(Pfuポリメラーゼ)などのバクテリオファージポリメラーゼ;枯草菌DNAポリメラーゼIII、および大腸菌DNAポリメラーゼIIIアルファおよびイプシロン;逆転写酵素、例えば、9度Nポリメラーゼ、HIV型MまたはO逆転写酵素、鳥類骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素、またはモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、またはテロメラーゼを含む場合があるが、それらに限定されない。DNAポリメラーゼのさらなる非限定的な例は、Aeropyrum、Archaeglobus、Desulfurococcus、Pyrobaculum、Pyrococcus、Pyrolobus、Pyrodictium、Staphylothermus、Stetteria、Sulfolobus、Thermococcus、およびVulcanisaetaなどの様々な古細菌属からのもの、またはVent(商標)、Deep Vent(商標)、Pfu、KOD、Pfx、Therminator(商標)、およびTgoポリメラーゼなどの当技術分野で知られているようなポリメラーゼを含むそれらの変異体を含み得る。場合によっては、ポリメラーゼはクレノウポリメラーゼである。
【0096】
三元複合体は、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドが標的核酸に相補的である場合、非相補的ヌクレオチドである場合よりも持続時間が長くなる。三元複合体はさらに、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート上のヌクレオチドが、コンジュゲート化されていないまたは繋留されていない相補的ヌクレオチドよりも標的核酸に相補的である場合、より長い持続時間を有する。例えば、いくつかの実施形態では、前記三元複合体は、1秒未満、1秒超、2秒超、3秒超、5秒超、10秒超、15秒超、20秒超、30秒超、60秒超、120秒超、360秒超、3600秒超、またはそれ以上、またはこれらの値のいずれか2つ以上で定義される範囲内にある時間にわたる持続時間を有し得る。
【0097】
持続時間は、例えば、結合複合体の標識された成分からのシグナルを観察することなどによって、結合複合体の開始および/または持続時間を観察することによって測定することができる。例えば、標識されたヌクレオチドまたは1つ以上のヌクレオチドを含む標識された試薬が結合複合体に存在し得、したがって、結合複合体の持続時間中に標識からのシグナルを検出することが可能になる。
【0098】
異なる塩またはイオンで異なる範囲の持続時間が達成可能であることが観察されており、たとえば、マグネシウムイオン(Mg2+)の存在下で形成された複合体は、他のイオンで形成された複合体よりも速く形成されることを示している。さらに、例えば、ストロンチウムイオン(Sr2+)の存在下で形成された複合体は、イオンの回収時または、例えば、ポリマーおよび/または1つ以上のヌクレオチド、および/または1つ以上の相互作用部分の組成物の1つ以上の成分を欠く緩衝液、または、例えば、試薬を含む多価性複合体からの二価性カチオンの除去を引き起こしまたは加速し得るキレート剤を含む緩衝液などでの洗浄時に、容易に形成し、完全にまたは実質的に完全に解離することが観察された。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組成物はMg2+を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はCa2+を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はSr2+を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はコバルトイオン(Co2+)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はMgClを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はCaClを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はSrClを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物はCoClを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、マグネシウムを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、組成物は、カルシウムを含まないか、または実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、1つ以上の核酸を、カルシウムまたはマグネシウムのいずれか一方を欠くか、またはカルシウムまたはマグネシウムの両方を欠く、本明細書に開示される組成物の1つ以上との接触させる工程を提供する。
【0099】
三元複合体の解離は、緩衝液条件の変更によって制御することができる。撮像工程の後、塩含有量が増加した緩衝液は、標識されたポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを洗い流すことができるように三元複合体の解離を引き起こすために使用され、1つの配列決定サイクルと次のサイクルとの間の遷移などにおいて、シグナルが減衰または終了され得る手段を提供する。いくつかの実施形態では、この解離は、必要な金属または補因子を欠く緩衝液で複合体を洗浄することによって影響を受ける可能性がある。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、pH調節を維持する目的で1つ以上の組成物を含んでもよい。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、ナトリウムなどの1つ以上の一価カチオンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、例えば、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、またはマンガンを含まないか、または実質的に含まない二価カチオンを欠く、あるいは実質的に欠く。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、例えば、EDTA、EGTA、ニトリロ三酢酸、ポリヒスチジン、イミダゾールなどのキレート剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、結合複合体の場合と同じレベルで環境のpHを維持してもよい。いくつかの実施形態では、洗浄緩衝液は、結合複合体で見られるレベルに対して環境のpHを上昇または下降させる場合がある。いくつかの実施形態では、pHは、2~4、2~7、5~8、7~9、7~10からの範囲内、または2未満、または10を超える、または本明細書で提供される値のいずれか2つによって定義される範囲内であり得る。
【0100】
特定のイオンの添加は、プライミングされた標的核酸へのポリメラーゼの結合、三元複合体の形成、三元複合体の解離、またはポリメラーゼ反応などの間の伸長中の核酸への1つ以上のヌクレオチドの組み込みに影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、関連するアニオンは、塩化物、酢酸塩、グルコン酸塩、硫酸塩、リン酸塩などを含んでもよい。いくつかの実施形態では、イオンは、NiCl、CoCl、MgCl、MnCl、SrCl、CaCl、CaSO、SrCO、BaClなどの1つ以上の酸、塩基、または塩を添加することによって、本開示の組成物に組み込まれ得る。代表的な塩、イオン、溶液および条件は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20th.Edition、Gennaro、A.R.,Ed.(2000)にあり、それは、参照によりその全体が、特に第17章および関連する塩、イオン、塩溶液、およびイオン溶液の開示に関して、本明細書に組み込まれる。
【0101】
本開示は、少なくとも1つの粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを含む多価性結合組成物または組み込み組成物を1つ以上のポリメラーゼと接触させる工程を企図する。接触させる工程は、随意に1つ以上の標的核酸の存在下で行うことができる。いくつかの実施形態では、前記標的核酸は一本鎖核酸である。いくつかの実施形態では、前記標的核酸はプライミングされた一本鎖核酸である。いくつかの実施形態では、前記標的核酸は二本鎖核酸である。いくつかの実施形態では、前記接触させる工程は、多価性結合組成物または組み込み組成物を1つのポリメラーゼと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、前記接触させる工程は、1つ以上のヌクレオチドを含む前記組成物を複数のポリメラーゼと接触させることを含む。ポリメラーゼは単一の核酸分子に結合され得る。
【0102】
標的核酸と多価性結合組成物との結合は、触媒的に不活性にされたポリメラーゼの存在下で提供されてもよい。1つの実施形態では、ポリメラーゼは突然変異によって触媒的に不活性にされる場合がある。1つの実施形態では、ポリメラーゼは化学修飾によって触媒的に不活性にされる場合がある。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、必要な基板、イオン、または補助因子の非存在によって触媒的に不活性にされる場合がある。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ酵素は、マグネシウムイオンの非存在によって触媒的に不活性にされる場合がある。
【0103】
標的核酸と多価性結合組成物との結合は、結合溶液、反応溶液、または緩衝液がマグネシウムまたはマンガンを欠く、ポリメラーゼの存在下で行われる。代替的に、標的核酸と多価性結合組成物との結合は、結合溶液、反応溶液、または緩衝液がカルシウムまたはストロンチウムを含む、ポリメラーゼの存在下で行われる。
【0104】
核酸が多価性結合組成物と相互作用するのを支援するために触媒的に不活性なポリメラーゼが使用される場合、前記組成物と前記ポリメラーゼとの間の相互作用は、複合体を蛍光または本明細書に開示される、あるいは当技術で知られる他の方法によって検出可能にするように三元複合体を安定化する。非結合のポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、三元結合複合体の検出前に随意に洗い流すことができる。
【0105】
1つ以上の核酸を本明細書に開示されるポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程は、カルシウムまたはマグネシウムのいずれかを含むか、またはカルシウムとマグネシウムの両方を含む溶液中で行われる。代替的に、1つ以上の核酸を本明細書に開示されるポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートとの接触させる工程は、カルシウムまたはマグネシウムのいずれかを欠く、またはカルシウムまたはマグネシウムの両方を欠く溶液中で行われ、および別の工程において、工程の順序に関係なく、カルシウムまたはマグネシウムのいずれか、またはカルシウムとマグネシウムの両方の溶液に添加することを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の核酸を本明細書に開示されるポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させる工程は、ストロンチウムを欠く溶液中で行われ、および別の工程において、工程の順序に関係なく、溶液にストロンチウムを添加することを含む。
【0106】
V.低非特異的結合表面と組み合わせた多価性結合組成物または組み込み組成物の使用
本明細書に開示されるのは、改善された核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅性能を可能にする低非特異的結合表面組成物を含む固体支持体である。一般的に、開示される支持体は、基板(または支持構造体)、共有結合または非共有結合した低結合性化学修飾層、例えば、シラン層、ポリマーフィルム、および一本鎖標的核酸を支持表面に繋留するために使用され得る1つ以上の共有結合または非共有結合したプライマー配列の1つ以上の層を含んでもよい。いくつかの例では、表面の調合、例えば、1つ以上の層の化学組成、1つ以上の層を支持体表面および/または相互に架橋するために使用されるカップリング化学、および層の総数を変化させることで、タンパク質、核酸分子、およびその他のハイブリダイゼーションならびに増幅反応成分の支持体表面への非特異的結合が、匹敵する単層に比べて最小限に抑えられるか、減らされるようになる。多くの場合、支持体表面での非特異的なハイブリダイゼーションが、匹敵する単層と比較して最小限に抑えられるか、減少するように、表面の調合を変化させてもよい。支持体表面での非特異的な増幅が、匹敵する単層と比較して最小限に抑えられるか、減少するように、表面の調合を変化させてもよい。支持体表面での特異的な増幅率および/または収率が最大になるように、表面の調合を変化させてもよい。検出に適した増幅レベルは、本明細書に開示されている例によっては、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、または30より多くの増幅サイクルで達成される。
【0107】
基板または支持構造体を作製する材料の例としては、限定されないが、ガラス、溶融シリカ、シリコン、ポリマー(例えば、ポリスチレン(PS)、マクロポーラスポリスチレン(MPPS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ガラス基板とプラスチック基板の両方の様々な組成が企図されている。
【0108】
基板または支持構造体は、当業者に知られている様々な幾何学的形状および寸法のいずれかを呈してもよく、当業者に知られている様々な材料のいずれかを含んでもよい。例えば、いくつかの例では、基板または支持構造体は、局所的に平面であってもよい(例えば、顕微鏡スライドまたは顕微鏡スライドの表面を含む)。全体的には、基板または支持構造体は、円筒形(例えば、キャピラリーまたはキャピラリーの内部表面を含む)、球形(例えば、非多孔性ビーズの外部表面を含む)、または不規則(例えば、不規則な形状の非多孔性ビーズまたは粒子の外部表面を含む)であってもよい。いくつかの例では、核酸のハイブリダイゼーションおよび増幅に使用される基板または支持構造体の表面は、固体の非多孔質表面であってもよい。いくつかの例では、核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅に使用される基板または支持構造体の表面は、本明細書に記載されるコーティングが多孔質表面を貫通し、そこで実行される核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅反応が孔内で発生するように、多孔質であってもよい。
【0109】
1つ以上の化学修飾された層、例えば、低非特異性結合ポリマーの層を含む基板または支持構造体は、独立している、あるいは別の構造またはアセンブリに一体化されてもよい。例えば、いくつかの例では、基板または支持構造体は、一体化されたまたは組み立てられたマイクロ流体フローセル内に1つ以上の表面を含んでもよい。基板または支持構造体は、マイクロプレートフォーマット内に1つ以上の表面、例えば、マイクロプレート内にウェルの底面を含んでもよい。上記されるように、いくつかの好ましい実施形態では、基板または支持構造体はキャピラリーの内部表面(管腔表面など)を含む。代替的な好ましい実施形態では、基板または支持構造体は、平面チップにエッチングされたキャピラリーの内部表面(管腔表面など)を含む。
【0110】
上記のように、本開示の非特異的低結合支持体は、タンパク質、核酸、および固相核酸増幅に使用されるハイブリダイゼーションおよび/または増幅製剤の他の成分の非特異的結合の減少を示す。与えられた支持体表面によって示された非特異的結合の程度は、質的にまたは定量的に評価され得る。例えば、いくつかの例では、標準化された条件セット下で蛍光染料(例えば、Cy3、またはCy5などのシアニン染料、フルオレセイン、クマリン、ローダミン等、または本明細書に開示される他の染料)、蛍光で標識されたヌクレオチド、蛍光で標識されたオリゴヌクレオチド、および/または蛍光で標識されたタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)への表面の曝露、その後の指定された洗浄プロトコルおよび蛍光撮像は、様々な表面の製剤を含む支持体での非特異的結合の比較のための定性ツールとして使用されてもよい。いくつかの例では、標準化された条件セット下で蛍光染料、Cy3、Cy5など、蛍光で標識されたヌクレオチド、蛍光で標識されたオリゴヌクレオチド、および/または蛍光で標識されたタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)への表面の曝露、その後の指定された洗浄プロトコルおよび蛍光撮像は、蛍光シグナルが(例えば、フルオロフォアのシグナル飽和および/または自己消光が問題でないとの条件下で)支持体表面上のフルオロフォアの数と直線的に関連する(または予測可能な方法で関連する)、および適切な校正標準が使用されるという条件下で蛍光撮像が実行されるのを確実にするべく注意が払われている場合に、様々な表面の製剤を含む支持体での非特異的結合の比較のための数量化ツールとして使用されてもよい。いくつかの例では、当業者に既知の他の技術、例えば、放射性同位元素標識と計数法は、非特異的結合が本開示の様々な支持体表面製剤によって示される程度の定量の評価に使用されてもよい。
【0111】
本明細書に開示されるいくつかの表面は、Cy3などのフルオロフォアの特異的結合と、非特異的結合との、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100より大きい、あるいは本明細書に及んだ範囲の任意の中間値の比率を示す。本明細書に開示されるいくつかの表面は、Cy3などのフルオロフォアの特異的蛍光と、非特異的蛍光との、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100より大きい、あるいは本明細書中の範囲により定められる任意の中間値の比率を示す。
【0112】
上記のように、いくつかの例では、開示された低結合支持体によって示される非特異的結合の程度は、表面を、インキュベーションおよびすすぎの条件が標準化されたセットの下で、標識されたタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ストレプトアビジン、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ヘリカーゼ、一本鎖の結合タンパク質(SSB)など、またはその任意の組み合わせ)で標識されたヌクレオチド、標識されたオリゴヌクレオチド等と接触させ、その後に表面に残る標識の量の検出およびそこから結果として生じるシグナルの適切な校正標準との比較を行うための標準化されたプロトコルを使用して、評価されてもよい。いくつかの例では、標識は、蛍光標識を含んでもよい。いくつかの例では、標識は、放射性同位元素を含んでもよい。いくつかの例では、標識は、当業者に既知の他の検出可能な標識を含んでもよい。いくつかの例では、所与の支持体表面製剤によって示された非特異的結合の程度は、したがって、1つの単位領域当たり非特異的結合されたタンパク質分子(または他の分子)の数の点から評価されてもよい。いくつかの例では、本開示の低結合支持体は、0.001分子/μm未満、0.01分子/μm未満、0.1分子/μm未満、0.25分子/μm未満、0.5分子/μm未満、1分子/μm未満、10分子/μm未満、100分子/μm未満、または1,000分子/μm未満の非特異的タンパク質結合(または指定された他の分子(例えば、Cy3、またはCy5などのシアニン染料、フルオレセイン、クマリン、ローダミン等、または本明細書に開示される他の染料)の非特異的結合)を示してもよい。当業者は、本開示の所与の支持体表面が、この範囲内の任意の値に当たる、例えば、86分子/μm未満の非特異的結合を示してもよいことを理解されるであろう。例えば、本明細書に開示されるいくつかの修飾された表面は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液におけるCy3標識されたストレプトアビジン(GE Amersham)の1uM溶液との15分間の接触、後に行われた脱イオン水での3回のすすぎの後に0.5分子/um未満のタンパク質の非特異的結合を示す。本明細書に開示されるいくつかの修飾された表面は、0.25分子/um未満のCy3染料分子の非特異的結合を示す。独立した非特異的結合アッセイでは、1μMの標識されたCy3SA(ThermoFisher)、1μMのCy5SA染料(ThermoFisher)、10μMのアミノアリル-dUTP-ATTO-647N(JenaBiosciences)、10μMのアミノアリル-dUTP-ATTO-Rho11(JenaBiosciences)、10μMのアミノアリル-dUTP-ATTO-Rho11(JenaBiosciences)、10μMの7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-dGTP-Cy5(JenaBiosciences)、および10μMの7-プロパルギルアミノ-7-デアザ-dGTP-Cy3(JenaBiosciences)が、384のウェルプレート・フォーマットで低結合基板上で37℃で15分間インキュベートされた。各ウェルは、50ulの脱イオン化したRNase/DNaseを含まない水で2-3回、および25mMのACES緩衝液pH7.4で2-3回すすがれた。384のウェルプレートは、メーカーによって指定されるような800のPMT感度調整および50-100μmの解像度で(実行された染料試験に応じて)Cy3、AF555、またはCy5フィルターセットを使用してGETyphoon機器上で画像化された。より高解像度の撮像のために、画像は、全内部反射蛍光(TIRF)対物レンズ(100X、1.5 NA、Olympus)、CCDカメラ(例えば、Olympus EM-CCDモノクロカメラ、Olympus XM-10モノクロカメラ、またはOlympus DP80カラーおよびモノクロカメラ)、照明源(Olympus 100W Hgランプ、Olympus 75W Xeランプ、Olympus U-HGLGPS蛍光光源など)、および532nmまたは635nmの励起波長を備えたオリンパスIX83顕微鏡(Olympus Corp.,Center Valley、PA)で収集された。ダイクロイックミラーは、Semrock(IDEX Health & Science、LLC、Rochester、New York)から、例えば、405、488、532、または633nmのダイクロイック反射体/ビームスプリッターが購入されており、およびバンドパスフィルターは、適切な励起波長に一致した532LPまたは645LPが選ばれた。本明細書に開示されるいくつかの修飾された表面は、0.25分子/um2未満の染料分子の非特異的結合を示す。
【0113】
いくつかの例では、本明細書に開示される表面は、Cy3などのフルオロフォアの特異的結合と非特異的結合との、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100より大きい、あるいは本明細書中の範囲により定められる中間値の比率を示す。いくつかの例では、本明細書に開示される表面は、Cy3などのフルオロフォアの特異的蛍光シグナルと非特異的蛍光シグナルとの、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、50、75、100、または100より大きい、あるいは本明細書に及んだ範囲の任意の中間値の比率を示す。
【0114】
本明細書の開示と一致する低バックグラウンド表面は、特異的染料付着(例えば、Cy3付着)と非特異的染料吸着(例えば、Cy3染料吸着)との、少なくとも、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、または非特異的吸着された分子当たり50の特異的染料分子よりも多い比率を示してもよい。同様に、励起エネルギーにさらされた時、フルオロフォア、例えばCy3、が付着した、本明細書の開示と一致する低バックグラウンド表面は、(例えば、表面へ付着したCy3で標識されたオリゴヌクレオチドから発生する)特異的蛍光シグナルと、非特異的吸着された染料蛍光シグナルとの、少なくとも、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1、50:1、または50:1より大きい比率を示してもよい。
【0115】
いくつかの例では、開示される支持体表面の親水性(または水溶液による「湿潤性」)の程度は、例えば、小さな水滴が表面上に置かれ、およびその表面との接触角は、例えば、光学張力計を使用して測定される水接触角の測定を通じて評価されてもよい。いくつかの例では、静的な接触角が決定されてもよい。いくつかの例では、進行または後退接触角が決定されてもよい。いくつかの例では、本明細書に開示される親水性で、低結合支持体表面の水接触角は、約0度~約30度の範囲であってもよい。いくつかの例では、本明細書に開示される親水性で、低結合支持体表面の水接触角は、50度、40度、30度、25度、20度、18度、16度、14度、12度、10度、8度、6度、4度、2度、または1度以下であってもよい。多くの例では、接触角は40度以下である。当業者は、本開示の所与の親水性低結合性支持表面が、本範囲内のどこかの値を有する水接触角を示すことがあることを理解するであろう。
【0116】
いくつかの例では、本明細書に開示される親水性表面は、しばしば低結合表面への生体分子の非特異的結合の減少のため、バイオアッセイの洗浄時間の短縮を容易にする。いくつかの例では、適切な洗浄工程は、60、50、40、30、20、15、10未満で、または10秒未満で実施されてもよい。例えば、いくつかの例では、適切な洗浄工程は30秒未満で実施されてもよい。
【0117】
本開示のいくつかの低結合表面は、溶媒および高温への長期曝露、あるいは溶媒曝露または温度変化の反復サイクルに対する安定性または耐久性の有意な改善を示す。例えば、いくつかの例では、開示される表面の安定性は、表面上の官能基、または表面上の繋留された生体分子(例えば、オリゴヌクレオチドプライマー)を蛍光標識し、溶媒および上昇温度への長期曝露の前、最中、および後、または溶媒曝露または温度変化の反復サイクルの蛍光シグナルを監視することによって試験してもよい。いくつかの例では、表面の質を評価するために使用される蛍光の変化の程度は、溶媒および/または上昇温度への曝露の1分、2分、3分、4分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、または100時間にわたって1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、または25%未満(またはこれらの期間にわたって測定されたこれらの割合の任意の組み合わせ)であってもよい。いくつかの例では、表面の質を評価するために使用される蛍光の変化の程度は、溶剤の変化および/または温度の変化への反復暴露の5のサイクル、10のサイクル、20のサイクル、30のサイクル、40のサイクル、50のサイクル、60のサイクル、70のサイクル、80のサイクル、90のサイクル、100のサイクル、200のサイクル、300のサイクル、400のサイクル、500のサイクル、600のサイクル、700のサイクル、800のサイクル、900のサイクル、または1,000のサイクルにわたって1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%あるいは25%未満(またはサイクルのこの範囲にわたり測定されたこれらの割合の任意の組み合わせ)であってもよい。
【0118】
いくつかの例では、本明細書に開示される表面は、非特異的シグナルまたは他のバックグラウンドに対する特異的シグナルの高い比率を示し得る。例えば、核酸増幅に使用される場合、一部の表面は、表面の隣接する未集合の領域のシグナルより、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、または100倍大きい増幅シグナルを示し得る。同様に、一部の表面は、表面の隣接する増加した核酸集団領域のシグナルより、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、または100倍大きい増幅シグナルを示し得る。
【0119】
いくつかの例では、ハイブリダイズまたはクローン増幅された核酸分子(例えば、蛍光染料で直接または間接的に標識されたもの)のクラスターを作成するために、核酸ハイブリダイゼーションまたは増幅用途で使用されるときの開示された低バックグラウンド表面の蛍光画像は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、210、220、230、240、250、または250よりも大きなコントラスト対ノイズ比(CNR)を示す。
【0120】
1種以上のプライマーは、支持体表面に付着し、または繋留されてもよい。いくつかの例では、1種以上のアダプター、またはプライマーは、スペーサー配列、アダプター連結標的ライブラリー核酸配列へのハイブリダイゼーションのためのアダプター配列、順方向増幅プライマー、逆方向増幅プライマー、配列決定プライマー、および/または分子バーコード配列、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの例では、1つのプライマーまたはアダプター配列は、表面の少なくとも1つの層に繋留され得る。いくつかの例では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多い異なるプライマーまたはアダプター配列は、表面の少なくとも1つの層に繋留され得る。
【0121】
いくつかの例では、繋留されたアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、約10のヌクレオチド~約100のヌクレオチドに及ぶ場合がある。いくつかの例では、繋留されたアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、あるいは少なくとも100のヌクレオチドであってもよい。いくつかの例では、繋留されたアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、最大100、最大90、最大80、最大70、最大60、最大50、最大40、最大30、最大20、または最大10のヌクレオチドであってもよい。この段落に記載されている下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、繋留されたアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、約20ヌクレオチド~約80ヌクレオチドの範囲であってもよい。当業者であれば、繋留されたアダプターおよび/またはプライマー配列の長さは、この範囲内の任意の値、例えば、約24ヌクレオチドを有してもよいことを認識するであろう。
【0122】
いくつかの例では、本開示の低結合支持体表面上の結果として生じるプライマーの表面密度は、約100個のプライマー分子/μm~約100,000個のプライマー分子/μmの範囲であり得る。いくつかの例では、本開示の低結合支持体表面上の結果として生じるプライマーの表面密度は、約1000プライマー分子/μm~約1,000,000プライマー分子/μmの範囲であり得る。いくつかの例では、プライマーの面密度は、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、または少なくとも1,000,000分子/μmであり得る。いくつかの例では、プライマーの表面密度は、最大1,000,000、最大100,000、最大10,000、または最大1,000分子/μmであり得る。この段落に記載される下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、プライマーの表面密度は約10,000分子/μm~約100,000分子の範囲であってもよい。当業者であれば、プライマー分子の表面密度は、この範囲内の任意の値、例えば、約455,000分子/μmを有してもよいことを認識するであろう。いくつかの例では、支持体表面上のアダプターまたはプライマー配列に初期にハイブリダイズした標的ライブラリー核酸配列の表面密度は、繋留されたプライマーの表面密度に示されたもの以下であり得る。いくつかの例では、支持体表面上のアダプターまたはプライマー配列にハイブリダイズしたクローン増幅された標的ライブラリー核酸配列の表面密度は、繋留されたプライマーの表面密度に示されたものと同じ範囲におよぶ場合がある。
【0123】
上記の局所的密度は、表面全体の密度の変動を排除するものではなく、その結果、表面は、例えば、500,000/μmのオリゴ密度を有する領域を含み得る一方、実質的に異なる局所的密度を有する少なくとも第2の領域も含み得る。
【0124】
VI.例示的な代替の実施形態
標的核酸の配列を判定する開示された方法は、a)配列決定される鋳型鎖および伸長されるプライマー鎖を含む二本鎖または部分的に二本鎖の標的核酸分子を、1つ以上の開示される核酸結合組成物と接触させる工程と、b)核酸結合組成物の核酸分子への結合を検出し、それにより、前記核酸分子上の前記1つ以上の核酸結合組成物の1つの存在および相補鎖に組み込まれる次のヌクレオチド(すなわち、N+1または末端ヌクレオチド)の同一性を判定する工程とを含む。
【0125】
配列決定法は、N+1または末端ヌクレオチドをプライマー鎖に組み込み、その後、1つ以上の追加の反復のために接触させる、検出する、および組み込む工程を繰り返し、それによって核酸分子の鋳型鎖の配列を判定する工程をさらに含み得る。三元結合複合体を検出する工程の後、プライミングされた標的核酸のプライミングされた鎖は、分析の次のラウンドが実行される前に、1つの塩基に伸長される。プライミングされた標的核酸は、多価性結合組成物中のポリマーに付着しているコンジュゲートヌクレオチドを使用して、または多価性結合組成物が除去された後に提供される非コンジュゲート化または繋留解除された遊離ヌクレオチドを使用して伸長され得る。
【0126】
プライミングされた標的核酸の伸長は、鎖上のブロックされたヌクレオチドまたは触媒的に不活性であるポリメラーゼの使用のため、防止または阻害され得る。ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲート中のヌクレオチドが、核酸の伸長を妨げるブロック基を有する場合、ヌクレオチドの組み込みは、前記ヌクレオチドからのブロック基の除去によって(例えば、そのポリマー、分枝ポリマー、デンドリマー、粒子などからの前記ヌクレオチドの脱離によって)達成され得る。触媒的に不活性であるポリメラーゼの使用のためプライミングされた標的核酸の伸長が阻害される場合、ヌクレオチドの組み込みは、金属イオンなどの補因子または活性化因子の提供によって達成され得る。
【0127】
三元複合体の検出は、ヌクレオチド残基の組み込みの前に、それと同時に、またはその後で達成される。いくつかの実施形態では、プライミングされた標的核酸は、ポリメラーゼおよび/または核酸結合部分の付着のための複数のプライミングされた位置を有する標的核酸を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のポリメラーゼは、標的核酸分子内の複数の部位などの単一の標的核酸分子に付着し得る。いくつかの実施形態では、複数のポリメラーゼは、複数のヌクレオチドを含む本明細書に開示される多価性結合組成物に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、鎖置換合成、ローリングサークル増幅、クエリ配列の複数のコピーの連結または融合、または当技術分野で知られている、または本明細書の他の場所で開示されている同一配列の複数のコピーを含む核酸分子を産生するための他の方法の産物であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、複数のポリメラーゼは、クエリ配列の複数の同一または実質的に同一のコピーを含む標的核酸内の複数の同一または実質的に同一の位置に付着し得る。いくつかの実施形態では、前記複数のポリメラーゼは、その後、1つ以上の多価性結合組成物と相互作用に関与する場合がある。しかしながら、好ましい実施形態では、標的核酸内の結合部位の数は少なくとも2つであり、ポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートなどの粒子-ヌクレオチドコンジュゲート上に存在するヌクレオチドまたは基板部分の数もまた2つ以上である。
【0128】
最適化されたシグナルを提供するために、例えば、核酸配列中の特定の位置にあるヌクレオチドの同定を提供するために、他の要素との組み合わせで多価性結合組成物を提供することが有利になり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、低バックグラウンド結合または低レベルのタンパク質結合を提供する表面、特に親水性またはポリマーコーティングされた表面との組み合わせで提供される。代表的な表面は、例えば、米国特許出願第16/363,842号に見出すことができ、その内容は、その全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
いくつかの例では、核酸分子は、例えば、固体支持体に繋留されているアダプター核酸配列またはプライマー核酸配列への鋳型鎖のハイブリダイゼーションを介して、固体支持体の表面に繋留されている。いくつかの例では、固体支持体は、ガラス、融解石英、ケイ素、またはポリマー基板を含む。いくつかの例では、固体支持体は、1つ以上の親水性ポリマー層(例えば、PEG層)を含む低非特異的結合コーティングを含み、ここで、親水性ポリマー層の少なくとも1つは、分枝ポリマー分子(例えば、4、8、16、または32の枝を含む分枝PEG分子)を含む。
【0130】
固体支持体は、約1,000プライマー分子/μm~約1,000,000プライマー分子/μmの範囲の表面密度で少なくとも1つの親水性ポリマー層に繋留されたオリゴヌクレオチドアダプターまたはプライマーを含む。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度は、少なくとも1,000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、または少なくとも1,000,000分子/μmであってもよい。いくつかの例では、オリゴヌクレオチドプライマーの表面密度は最大1,000,000、最大100,000、最大10,000、または最大1,000の分子/μmであってもよい。この段落に記載される下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、プライマーの面密度は約10,000分子/μm~約100,000分子/μmの範囲であってもよい。当業者であれば、プライマー分子の面密度は、この範囲内の任意の値、例えば、約455,000分子/μmを有してもよいことを認識するであろう。
【0131】
当業者は、一連の反復配列決定反応において、1つ以上の部位が所与のサイクル中にヌクレオチドを組み込むことができず、したがって1つ以上の部位が伸長する核酸鎖の大部分と非同期になることを認識するであろう。配列決定シグナルが標的核酸の単一のコピーで発生する反応に由来する条件下では、これらの組み込みの失敗は、出力配列において個別のエラーをも産出させる。本開示の目的は、配列決定反応におけるこの種のエラーを低減するための方法を説明することである。三元ポリメラーゼ複合体の早期解離時に再結合する確率を高めることにより、伸長鎖に組み込むことができる多価性基板を使用すると、塩基が組み込まれない「スキップされた」サイクルの頻度を減らすことができる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、ヌクレオシド部分が、遊離の、または可逆的に修飾された5’リン酸、二リン酸、または三リン酸部分を有するヌクレオチド内に含まれる、本明細書に開示される多価性基板の使用を企図するものであり、ヌクレオチドが、粒子または本明細書に開示されるポリマーに不安定なまたはリンケージを介して接続されている。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される多価性の基板の使用の結果スキッピングされた組み込みにより固有誤差速度の還元退縮を企図する。本開示は、本明細書に開示される多価性基板の使用の結果としてのスキップされた組み込みによる固有のエラー率の減少を企図している。
【0132】
本開示はさらに、所与の配列に由来する、または所与の配列に関連する配列決定シグナルが、標的配列の複数のコピーを含む定義可能な領域に由来する、またはその領域内で生じる配列決定反応を企図する。標的配列の複数のコピーを組み込む配列決定法は、定義された領域内に複数の同時配列決定反応が存在し、それぞれが独自のシグナルを提供するため、シグナルを増幅できるという利点を有する。定義された領域内に複数のシグナルが存在すると、多数の正しいベースコールからのシグナルが、少数のスキップされたベースコールまたは誤ったベースコールからのシグナルを圧倒する可能性があるため、単一のスキップされたサイクルの影響も軽減される。本開示はさらに、前のサイクルでスキップされたかもしれない部位での取り込みを提供するために、伸長反応中、または伸長サイクルの別個の部分中に、遊離の非標識ヌクレオチドを含めることを企図する。例えば、取り込みサイクル中または取り込みサイクルの後に、非標識ブロックされたヌクレオチドは、それらがスキップされた部位に組み込まれ得るように添加され得る。非標識ブロックされたヌクレオチドは、多価性結合基板、または特定のサイクル中に存在するまたは存在した基板に付着したヌクレオチドと同じ種、または1、2、3、4またはそれ以上の種の非標識ブロックされたヌクレオチドの混合物が含まれてもよい。
【0133】
各配列決定サイクルが完全に進行すると、定義された領域内の各反応は同一のシグナルを提供する。しかしながら、本明細書の他の箇所に記載されているように、一連の反復配列決定反応において、時折1つ以上の部位は、所与のサイクル中にヌクレオチドを組み込むことができず、したがって1つ以上の部位が伸長する核酸鎖の大部分と非同期になる。「フェージング」と呼ばれるこの問題は、シグナルが1つ以上のサイクルをスキップした部位からのスプリアスシグナルで汚染されているため、配列判定シグナルの劣化を引き起こす。これにより、塩基同定におけるエラーが発生する可能性ある。複数のサイクルにわたるスキップされたサイクルの漸進的な蓄積はさらに、各サイクルでの配列判定シグナルの漸進的な劣化のために、有効なリード長を減少させる。本開示のさらなる目的は、フェージングエラーを低減するための方法を提供すること、および/または配列決定反応におけるリード長を改善することである。
【0134】
配列決定法は、標的配列の複数の連結または非連結コピーを含む、標的核酸または複数の標的核酸を、本明細書に記載の多価性結合組成物と接触させることを含み得る。前記標的核酸、または標的配列の複数の連結または非連結コピーを含む複数の標的核酸を、1つ以上の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させることにより、所与の配列決定サイクルにおいて調査される正しいヌクレオチドの実質的に増加した局所濃度を提供し得、それによって不適切な取り込みまたは位相核酸鎖(すなわち、1つ以上のスキップされたサイクルを有する伸長する核酸鎖)からのシグナルが抑制される。
【0135】
核酸配列情報を取得する方法は、標的核酸または複数の標的核酸を粒子-ヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含み得、ここで、前記標的核酸または複数の標的核酸は、標的配列の複数の連結または非連結コピーを含む。この方法では、塩基の誤認、存在しない塩基の報告、または正しい塩基の報告の失敗が減少することで示されるように、配列決定のエラー率が減少する。いくつかの実施形態では、配列決定のエラー率の減少は、遊離ヌクレオチド、標識遊離ヌクレオチド、タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチド、または標識タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチドを含む一価リガンドを使用して観察されたエラー率と比較して5%、10%、15%、20%25%、50%、75%、100%、150%、200%、またはそれ以上の減少を含み得る。
【0136】
核酸配列情報を取得する方法は、標的核酸または複数の標的核酸を、1つ以上の粒子ヌクレオチドコンジュゲートと接触させることを含み得、ここで、前記鋳型核酸または複数の標的核酸は、標的配列の複数の連結または非連結コピーを含む。この方法では、平均リード長は、遊離ヌクレオチド、標識遊離ヌクレオチド、タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチド、あるいは標識タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチドを含む一価性リガンドを使用して観察された平均リード長と比較して5%、10%、15%、20%25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、またはそれ以上増加する。
【0137】
この方法では、平均リード長は、遊離ヌクレオチド、標識遊離ヌクレオチド、タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチド、あるいは標識タンパク質またはペプチド結合ヌクレオチドを含む一価性リガンドを使用して観察された平均リード長と比較して、10ヌクレオチド(NT)、20 NT、25 NT、30 NT、50 NT、75 NT、100 NT、125 NT、150 NT、200 NT、250 NT、300 NT、350 NT、400 NT、500 NT、またはそれ以上増加する。
【0138】
いくつかの例では、開示される組成物および方法は、配列決定適用ための平均リード長が100ヌクレオチド~1,000ヌクレオチドの範囲に及ぶ場合がある。いくつかの例では、平均リード長は、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも225ヌクレオチド、少なくとも250ヌクレオチド、少なくとも275ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも325ヌクレオチド、少なくとも350ヌクレオチド、少なくとも375ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも425ヌクレオチド、少なくとも450ヌクレオチド、少なくとも475ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも525ヌクレオチド、少なくとも550ヌクレオチド、少なくとも575ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも625ヌクレオチド、少なくとも650ヌクレオチド、少なくとも675ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも725ヌクレオチド、少なくとも750ヌクレオチド、少なくとも775ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも825ヌクレオチド、少なくとも850ヌクレオチド、少なくとも875ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも950ヌクレオチド、少なくとも975ヌクレオチド、または少なくとも1,000ヌクレオチドであってもよい。いくつかの例では、平均リード長は、この範囲内の任意の2つの値によって制限される範囲、例えば、375ヌクレオチド~825ヌクレオチドの範囲の平均リード長であってもよい。当業者は、いくつかの例では、平均リード長は、本段落に指定される範囲内に任意の値、例えば、523ヌクレオチドであってもよいことを認識するであろう。
【0139】
配列決定のために多価性結合組成物を使用することは、配列決定時間を有効に短縮させる。接触させる工程、検出する工程および組み込む工程を含む配列決定反応サイクルは、約5分~約60分の範囲の総時間で実施される。いくつかの例では、配列決定反応サイクルは、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも40分、少なくとも50分、または少なくとも60分で実施される。いくつかの例では、配列決定反応サイクルは、最大で60分、最大で50分、最大で40分、最大で30分、最大で20分、最大で10分、または最大で5分で実施される。この段落に記載される下限値と上限値のいずれかを組み合わせて、本開示に含まれる範囲を形成してもよく、例えば、いくつかの例では、配列決定反応サイクルは約10分~約30分の範囲の総時間で実施される。当業者であれば、配列決定サイクル時間は、この範囲内の任意の値、例えば、約16分であってもよいことを認識するであろう。
【0140】
いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、配列決定実行の過程にわたって、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%正確の平均ベースコールの精度を提供するであろう。いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、コーリングされる1,000の塩基毎、10、0000の塩基毎、25,000の塩基毎、50,000の塩基毎、75,000の塩基毎、または100,000の塩基毎に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%正確の平均ベースコールの精度を提供するであろう。
【0141】
配列決定のために多価性結合組成物を使用することは、より正確な塩基読み出し(base readout)を提供する。開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、配列決定実行にわたって塩基呼び出しの精度が約20~約50の範囲の平均Qスコアを提供するであろう。いくつかの例では、平均Qスコアは、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50である。当業者であれば、平均Qスコアは、この範囲内の任意の値、例えば、約32であってもよいことを認識するであろう。
【0142】
いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、同定された末端(またはN+1)ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して30を超えるQスコアを提供する。いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、同定された末端(またはN+1)ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して35を超えるQスコアを提供する。いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、同定された末端(またはN+1)ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して40を超えるQスコアを提供する。いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、同定された末端(またはN+1)ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して45を超えるQスコアを提供する。いくつかの例では、開示される核酸配列決定用の組成物および方法は、同定された末端(またはN+1)ヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%に対して50を超えるQスコアを提供する。
【0143】
開示された非特異的低結合支持体および関連の核酸ハイブリダイゼーションおよび増幅の方法は、当業者に既知の様々な細胞、組織または試料のいずれかに由来した核酸分子の分析に使用されてもよい。例えば、核酸は、(動物、植物、菌類、原生生物などの)真核生物、始原細菌または真正細菌に由来した、細胞、または1つ以の種類の細胞を含む組織試料から抽出されてもよい。場合によっては、核酸は、原核生物あるいは接着性または非接着性真核細胞などの真核細胞から抽出されてもよい。核酸は、例えば、原始のまたは不死化されたげっ歯動物、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、霊長類、あるいはヒト細胞株から多様に抽出される。核酸は、様々な細胞、臓器または組織類(例えば、白血球、赤血球、血小板、上皮細胞、内皮細胞、ニューロン、膠細胞、アストロサイト、線維芽細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、配偶子、または心臓、肺、脳、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、胸腺、膀胱、胃、結腸あるいは小腸の細胞)のいずれかから抽出されてもよい。核酸は、正常または健康な細胞から抽出されてもよい。代替的にまたは組み合わせにおいて、核酸は、癌細胞などの異常細胞、または宿主を感染させる病原性の細胞から抽出される。いくつかの核酸は、例えば、(T細胞、細胞毒性の(キラー)T細胞、ヘルパーT細胞、αβT細胞、γδT細胞、T細胞前駆細胞、B細胞、B細胞前駆細胞、リンパ系幹細胞、骨髄系前駆細胞、リンパ球、顆粒球、ナチュラルキラー細胞、血漿細胞、記憶細胞、好中球、好酸球、好塩基性細胞、マスト細胞、単球、樹状細胞、および/またはマクロファージあるいはその任意の組み合わせなどの)免疫細胞、未分化のヒト幹細胞、分化を誘導されたヒト幹細胞、希少細胞(例えば、循環腫瘍細胞(CTC)、循環上皮細胞、循環内皮細胞、循環子宮内膜細胞、骨髄細胞、前駆細胞、泡沫細胞、間葉系細胞、または栄養芽細胞)の細胞型の明確なサブセットから抽出されてもよい。核酸は、ウイルスサンプルおよびウイロイドおよび感染性RNAなどのサブウイルス病原体に由来する核酸をさらに含み得る。核酸は、唾液、唾液、眼の体液、滑液、血液、糞便、尿、組織浸出液、汗、膿、排水体液等のものなどの臨床またはその他のサンプルに由来し得る。核酸はさらに、葉、カンビウム、根、分裂組織、花粉、卵子、種子、胞子、花序、菌糸体などの植物または真菌のサンプルに由来し得る。核酸も、水、空気、ほこり、食品などの環境または工業サンプルからも由来し得る。他の細胞、組織およびサンプルが企図され、本明細書の開示と一致している。
【0144】
細胞または他の生体試料からの核酸抽出は、当業者に既知の多数の技術のいずれかを使用して実行されてもよい。例えば、DNA抽出手順は、(i)DNAが抽出される細胞試料組織試料の採取、(ii)DNAおよび他の細胞質の成分を放出するための細胞膜の破壊(すなわち、細胞溶解)と、(iii)タンパク質、脂質、およびRNAを沈殿させるための濃縮塩溶液による溶解試料の処理、その後の沈殿されたタンパク質、脂質、およびRNAを分離するための遠心分離と、(iv)細胞膜溶解工程の間に使用した界面活性剤、タンパク質、塩、または他の試薬を除去するためにDNAを上清からの精製を含んでもよい。
【0145】
様々な適切な市販の核酸の抽出および精製のキットは、本明細書の開示と一致する。例として、Qiagen(Germantown、MD)の(ヒト試料からのゲノムDNAの単離のための)QIAampキット、および(動物または植物の試料からのゲノムDNAの単離のための)DNAeasyキット、またはPromega(Madison、WI)のMaxwell(登録商標)およびReliaPrep(商標)のキットのシリーズが挙げられるが、それらに限定されない。
【0146】
VII.システム
システムモジュール:上記のように、本明細書にさらに開示されるのは、開示される核酸配列決定または核酸検出および分析方法のいずれかを実行するために構成されたシステムである。いくつかの例では、開示されるシステムは、本明細書に記載される1つ以上の多価性結合組成物、1つ以上の緩衝液、および/または固体支持体に繋留された1つ以上の核酸分子を含み得る。
【0147】
いくつかの例では、このシステムは、固体支持体に繋留された核酸分子(例えば、アダプターまたはプライマー)にハイブリダイズされた鋳型核酸分子を、開示される多価性結合組成物および/または試薬と連続的かつ反復的に接触させるように構成された流体フローコントローラーおよび/または流体分配システムをさらに含み得る。いくつかの例では、前記接触は、1つ以上のフローセル内で実行されてもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの固定された構成要素であってもよい。いくつかの例では、前記フローセルは、システムの取り外し可能および/または使い捨ての構成要素であってもよい。
【0148】
いくつかの例では、システムは、撮像モジュールをさらに含み得、ここで、撮像モジュールは、開示される多価性結合組成物の固体支持体またはフローセルの内部に繋留された標的(または鋳型)核酸分子への結合の撮像および検出のために、例えば、1つ以上の光源、1つ以上の光学構成要素(例えば、レンズ、ミラー、プリズム、光学フィルター、着色ガラスフィルター、狭帯域干渉フィルター、広帯域干渉フィルター、ダイクロイック反射器、回折格子、開口部、光ファイバー、または光導波路など)、および1つ以上の画像センサー(例えば、電荷結合デバイス(CCD)センサーまたはカメラ、相補金属-酸化物-半導体(CMOS)画像センサーまたはカメラ、または負チャネル金属酸化物半導体(NMOS)画像センサーまたはカメラ)を含む。
【0149】
プロセッサーおよびコンピュータシステム:本明細書に開示される核酸配列決定または他の核酸検出および分析方法のためのシステムを実施するために、1つ以上のプロセッサーを使用することができる。1つ以上のプロセッサーは、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、汎用処理装置、またはコンピューティングプラットフォームなどのハードウェアプロセッサーを含んでもよい。1つ以上のプロセッサーは、さまざまな適切な集積回路(例えば、深層学習ネットワークアーキテクチャを実装するために特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、または計算時間を加速するためなど、および/または展開を促進するためのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))、マイクロプロセッサー、出現する次世代マイクロプロセッサー設計(例えば、メモリスタベースのプロセッサー)、論理デバイスなどのいずれかで構成されてもよい。本開示はプロセッサーを参照して説明されているが、他の種類の集積回路および論理デバイスも適用可能であってもよい。プロセッサーは、任意の適切なデータ操作機能を備えていてもよい。例えば、プロセッサーは、512ビット、256ビット、128ビット、64ビット、32ビット、または16ビットのデータ操作を実行してもよい。1つ以上のプロセッサーは、シングルコアまたはマルチコアプロセッサー、あるいは並列処理用に構成された複数のプロセッサーであってもよい。
【0150】
開示される方法を実施するために使用される1つ以上のプロセッサーまたはコンピュータは、より大きなコンピュータシステムの一部であり得、および/またはデータの伝達および共有を促進するために通信インターフェースの援助によってコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)に動作可能に結合され得る。ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、イントラネットおよび/またはエクストラネット、インターネットと通信状態であるイントラネットおよび/またはエクストラネット、あるいはインターネットであり得る。場合によっては、ネットワークは、電気通信および/またはデータのネットワークである。ネットワークは、場合によっては、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にする1つ以上のコンピュータサーバーを含んでもよい。ネットワークは、場合によってはコンピュータシステムの補助により、ピアツーピア・ネットワークを実施してもよく、これは、コンピュータシステムに連結されたデバイスが、クライアントまたはサーバーとして動くことを可能にし得る。
【0151】
コンピュータシステムは、メモリまたは記憶場所(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、フラッシュメモリ、Intel(登録商標)Optane(商標)技術)、電子記憶装置(例えば、ハードディスク)、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェース(例えば、ネットワークアダプタ)、および周辺機器、例えば、キャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置、および/または電子ディスプレイアダプターも含んでもよい。メモリ、記憶装置、インターフェースと周辺機器は、例えばマザーボード上に見られるように、通信バスを介して、1つ以上のプロセッサー、例えば、CPUと通信状態になってもよい。記憶装置は、データを保存するためのデータ記憶装置(またはデータリポジトリ)であってもよい。
【0152】
1つ以上のプロセッサー、例えば、CPUは、プログラム(またはソフトウェア)に組み込まれた一連の機械可読命令を実行する。その命令は記憶場所に保存される。命令は、CPUを対象とし、CPUはその後、本開示の方法を実装するようにCPUをプログラムまたは他の方法で構成する。CPUによって実行された動作の例は、フェッチ、デコード、実行、ライトバックを含む。CPUは、集積回路など回路の一部であってもよい。システムの1つ以上の他のコンポーネントを回路に含まれてもよい。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0153】
記憶装置は、ドライバー、ライブラリー、および保存されたプログラムなどのファイルを記憶する。記憶装置はユーザーデータ、例えば、ユーザー特定の選好、およびユーザー特定のプログラムを保存する。コンピュータシステムは、場合によっては、イントラネットまたはインターネットを通じてコンピュータシステムと通信状態にあるリモートサーバー上に位置付けられるなどした、コンピュータシステムの外側にある1つ以上の追加のデータ記憶装置を含み得る。
【0154】
本明細書にされる方法およびシステムのいくつかの態様は、例えば、メモリまたは電子記憶装置などの、コンピュータシステムの電子記憶場所に保存された機械(例えば、プロセッサー)実行可能コードによって実行されてもよい。機械実行可能または機械可読コードは、ソフトウェアの形で提供されてもよい。使用中に、コードは1つ以上のプロセッサーによって実行される。いくつかの実施形態では、コードは記憶装置から検索され、1つ以上のプロセッサーによってすぐに利用できるようにメモリに保存される。場合によっては、電子記憶装置は除外され、機械可読命令はメモリに保存される。コードは、コードを実行するように適合された1つ以上のプロセッサーを備えたマシンで使用するために事前にコンパイルおよび構成されてもよく、または実行時にコンパイルされてもよい。コードは、あらかじめコンパイルされたまたはアズコンパイルされた(as-compiled)様式でコードが実行を可能にするために選択され得るプログラミング言語で供給されてもよい。
【0155】
技術のさまざまな態様は、多くの場合ある種の機械可読媒体に記憶される機械(またはプロセッサー)実行可能コードおよび/または関連データの形式にある「製品」または「製造品」、たとえば「コンピュータプログラムまたはソフトウェア製品」と考えることができ、ここで、実行可能コードは、本明細書に開示される1つ以上の方法を実行する際にコンピュータまたはコンピュータシステムを制御するための複数の命令を含む。機械実行可能コードは、光ディスク、CD-ROM、DVD、またはブルーレイディスクなどの光学的に読み取り可能な媒体を含む光学記憶装置に保存されてもよい。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)などの電子記憶装置に、またはハードディスク上に保存されてもよい。「記憶」型の媒体は、様々な半導体メモリチップ、オプティカルドライブ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータやプロセッサーの有形メモリ、あるいはその関連するモジュールのいずれかまたは全てを含むことができ、これらは、本明細書に開示される方法およびアルゴリズムをコードするソフトウェアのためにいかなる時も非一時的な記憶を提供し得る。
【0156】
ソフトウェアコードの全てまたは一部は、インターネットまたは様々な他の電気通信ネットワークを介して時々通信される。そのような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサーから別のものへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのローディングを可能にする。ゆえに、ソフトウェアでコードされた命令を伝達するために使用される他のタイプの媒体は、ローカルデバイス間の物理インターフェースで、有線および光地上通信線ネットワークを介して、ならびに、様々な大気リンク(atmospheric links)によって、使用されるものなどの、光波、電波、および電磁波を含む。有線または無線リンク、光リンクなどのそのような波を伴う物理的要素も、本明細書に開示される方法を実行するためのソフトウェアでコードされた命令を伝達する媒体と見なされる。本明細書で使用されるように、非一時的で有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサーに命令を提供することに関与する媒体を指す。
【0157】
コンピュータシステムは、例えば、マシンビジョンシステムによって撮られた画像を提供するための電子ディスプレイを含んでもよく、またはそれと通信状態にあってもよい。多くの場合、ディスプレイはユーザーインターフェース(UI)を提供し得る。UIの例は、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)、Webベースのユーザインターフェースなどが含むが、これらに限定されない。
【0158】
システム制御ソフトウェア:いくつかの例では、開示されるシステムは、コンピュータ(またはプロセッサー)と、ユーザインターフェースに手動、半自動、または完全自動の制御すべてのシステム機能、例えば、流体フローコントローラーおよび/または流体分配システム(またはサブシステム)、温度制御システム(またはサブシステム)、イメージングシステム(またはサブシステム)などの制御を提供するためのコードを含むコンピュータ可読媒体を含んでもよい。いくつかの例では、システムコンピュータまたはプロセッサーは、機器システムの統合されたコンポーネント(例えば、機器内に埋め込まれたマイクロプロセッサーまたはマザーボード)であってもよい。いくつかの例では、システムコンピュータまたはプロセッサーは、スタンドアロンモジュール、例えば、パーソナルコンピュータまたはラップトップコンピュータであってもよい。機器制御ソフトウェアによって提供され得る流体フローコントロール機能の例は、体積流体流量、流体流速、サンプルおよび試薬の添加のタイミングおよび持続時間、すすぎ工程などを含むが、これらに限定されない。機器制御ソフトウェアによって提供され得る温度制御機能の例は、温度設定点の指定、および温度変化のタイミング、持続時間、およびランプ速度の制御を含むが、これらに限定されない。機器制御ソフトウェアによって提供され得る撮像システム制御機能の例は、オートフォーカス機能、照明または励起光の露光時間および強度の制御、画像取得速度の制御、露光時間、データ保存オプション等を含むが、これらに限定されない。
【0159】
画像処理ソフトウェア:開示されたシステムのいくつかの例では、システムは、画像処理および分析機能を提供するためのコードを含むコンピュータ可読媒体をさらに含んでもよい。ソフトウェアによって提供され得る画像処理および分析機能の例は、手動、半自動、または全自動の画像露出調整(例えば、ホワイトバランス、コントラスト調整、信号平均化および他のノイズリダクション機能など)、手動、半自動、または完全自動のエッジ検出および対象識別(例えば、基板表面上の増幅された鋳型核酸分子のクラスターを識別するため)、手動、半自動、または完全自動の1つ以上の検出チャネル(例えば、1つ以上の蛍光発光チャネル)におけるシグナル強度測定および/またはしきい値処理、手動、半自動、または完全自動の統計分析(例えば、シグナル強度をベースコールの目的のために基準値と比較するため)を含むが、これらに限定されない。
【0160】
いくつかの例では、システムソフトウェアは、統合されたリアルタイム画像分析および機器制御を提供し得、その結果、サンプルローディング、試薬添加、すすぎ、および/または撮像/ベースコール工程は、例えば、最適なベースコールの結果が取得されるまで必要に応じて延長、修正、または繰り返され得る。当業者に知られている様々な画像処理および分析アルゴリズムのいずれかを使用して、リアルタイムまたは後処理の画像分析機能を実装してもよい。例は、Cannyエッジ検出方法、Canny-Dericheエッジ検出方法、1次勾配エッジ検出方法(Sobel演算子など)、2次微分エッジ検出方法、位相一致(位相コヒーレンス)エッジ検出方法、他の画像セグメンテーションアルゴリズム(例えば、強度しきい値、強度クラスタリング方法、強度ヒストグラムベースの方法など)、機能およびパターン認識アルゴリズム(例えば、任意の形状を検出するための一般化されたハフ変換、円形ハフ変換など)、および数学的分析アルゴリズム(例えば、フーリエ変換、高速フーリエ変換、ウェーブレット分析、自動相関など)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0161】
いくつかの例では、システム制御および画像処理/分析ソフトウェアは、別個のソフトウェアモジュールとして書かれてもよい。いくつかの例では、システム制御および画像処理/分析ソフトウェアは、統合ソフトウェアパッケージに組み込まれてもよい。
【実施例0162】
VIII.実施例
1.多価性結合組成物の調製
図5Aに示されるように、多アーム基板の1つの種類は、プロパルギルアミンdNTPをビオチン-PEG-NHSと反応させることにより作られた。この水性反応を完了に導き、精製すると、純粋なビオチン-PEG-dNTP種が得られた。別の反応では、いくつかの様々なPEGの長さは、1K Daから20K Daまで変動する平均分子量に対応して使用された。ビオチン-PEG-dNTP種は、3~5:1のDye:SA比を使用して、新たに調整されたか、あるいは市販の色素標識ストレプトアビジン(SA)のいずれかと混合された。ビオチン-PEG-dNTPと色素標識ストレプトアビジンとの混合は、各ストレプトアビジン四量体上のビオチン結合部位の飽和を確かなものにするために、過剰なビオチン-PEG-dNTPの存在下で行われた。完全な複合体は、サイズ排除クロマトグラフィーによって過剰なビオチン-PEG-dNTPから精製された。各ヌクレオチド種は個別に変化し精製され、その後、配列判定のための4塩基混合物を作製するためにともに混合された。
【0163】
図5Aで示されるような多アーム基板の別の種は、多アームPEG NHSを過剰なDye-NH2およびプロパルギルアミンdNTPと反応させることにより、単一のポット中で作られた。様々な多アームPEG NHS変異体は、4~16のアームの範囲で、分子量が5K Daから40K Daの範囲で使用された。反応後に、過剰な小分子色素およびdNTPはサイズ排除クロマトグラフィーによって除去された。各ヌクレオチド種は独立的にコンジュゲートかつ精製され、その後、配列決定のための4塩基混合物を作製するためにともに混合された。
【0164】
図5Bで示されるようなクラスII基板は色素とdNTPを同時にコンジュゲートするために1つのポット反応を使用して作られた。アルキン-PEG-NHSを過剰なプロパルギルアミンdNTPと反応させた。その後、この産物(アルキン-PEGdNTP)はクロマトグラフィーにより精製され均質となった。複数のPEGの長さは、1K Daと20K Daとの間で変動する平均分子量を用いて使用された。アジド共役サイトの可変で分離した数(12、24、48、96)を含有しているデンドリマーコアが使用された。デンドリマーコアへのアルキン色素およびアルキン-PEG-dNTPの共役は、銅に媒介されたクリック化学を介して、過剰な色素およびdNTP種を含有する1つのポット反応で生じた。反応後に、過剰な小分子色素およびdNTPはサイズ排除クロマトグラフィーによって除去された。各ヌクレオチド種は独立的にコンジュゲートかつ精製され、その後、配列決定のための4塩基混合物を作成するためにともに混合された。このスキームがデキストラン、他のポリマー、タンパク質などの代替のコアの即座の置換を可能にすることに留意されたい。
【0165】
図5Cに示されるようなクラスIIIポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、4または8つのアームのPEG NHSをビオチンおよびプロパルギルアミンdNTPの飽和混合物と反応させることにより構築された。その後、この反応はサイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。この反応の結果は、ビオチンおよびヌクレオチドの離散分布を含有している多アームPEGであった。その後、この不均一な集団は色素標識ストレプトアビジンと反応させられ、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製された。各ヌクレオチド種は独立的にコンジュゲートし精製され、その後、配列決定のための4塩基混合物を作成するためにともに混合された。ビオチンの分布はビオチン-NHのプロパルギルアミンdNTPへの入力比によって調整可能であることに留意されたい。
【0166】
2.三元複合体の検出
PEGポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートを有する多価性結合組成物を使用する結合反応は三元結合複合体の可能な形成を検出するために分析され、様々な工程の蛍光画像は図7のA~7Jに図示される。図7のAでは、20nMのクレノウポリメラーゼおよび2.5mMのSr+2を含有する曝露緩衝液中の500nMの塩基の標識ヌクレオチド(A-Cy3およびG-Cy5)へのDNAローリングサークルアプリケーション(RCA)の鋳型(GおよびAの第1の塩基)の曝露後の赤色および緑色の蛍光画像が示される。多価性PEG基板組成物は、4-アームのPEGアミン(4ArmPEG-NH)、ビオチン-PEGアミン(ビオチン-PEG-NH)およびヌクレオチド(Nuc)の変動する比率を、サンプルPB1およびPB5、4ArmPEG-NH:ビオチン-PEG-NH:Nuc=0.25:1:0.5;サンプルPB2、4ArmPEG-NH:ビオチン-PEG-NH:Nuc=0.125:0.5:0.25;サンプルPB3、4ArmPEG-NH:ビオチン-PEG-NH:Nuc=0.25:1:0.5のように使用して調整された。画像は、曝露緩衝液と同じ組成物であるがヌクレオチドまたはポリメラーゼを含まない撮像緩衝液で洗浄した後、収集された。
【0167】
コントラストは、最も暗い信号の視覚化を最大限にするようにスケーリングされたが、撮像緩衝液で洗浄した後、信号は持続しなかった(図7の挿入図)。図7のB~7Eでは、蛍光画像は、上記(図7のB:PB1、図7のC:PB2、図7のD:PB3、図7のE:PB5)のように、曝露緩衝液中で混合および撮像緩衝液中で画像化した後、少なくとも500nMで多価性PEGヌクレオチド(塩基標識された)リガンドを示す。図7のF:蛍光画像は、曝露緩衝液中で混合および撮像緩衝液中で画像化した後、2.5uMで多価性PEGヌクレオチド(塩基標識された)リガンドPB5を示す。図7のG~7Iでは、蛍光画像は、クレノウポリメラーゼの不活性な変異体への多価性リガンドの曝露による塩基弁別をさらに示す(図7のG:D882H、図7のH:D882E、図7のI:D882A、および野生種クレノウ(対照)酵素が図7のJに示される)。
【0168】
多価性リガンド製剤を使用すると、塩基弁別は、結合力が増加したポリメラーゼリガンドの相互作用を提供することによって、可能になる場合がある。さらに、多価性リガンドの増加した濃度はより高い信号を生成することのほか、触媒活性をノックアウトする様々なクレノウ突然変異は結合力をベースとする配列決定のために使用できることも示されている。
【0169】
3.三元複合体を使用する標的核酸分子の配列判定
多価性リガンドレポーターに基づいて配列決定を実証するため、4つの既知の鋳型は低い結合基板上でRCA方法を使用して増幅された。連続サイクルは、20nMのクレノウポリメラーゼおよび2.5mMのSr+2を含有する曝露緩衝液に曝露され、撮像緩衝液で洗浄され、画像化された。撮像後、基板は洗浄緩衝液(EDTAおよび高い塩)で洗浄され、ブロックされたヌクレオチドは次の塩基へ進むために添加された。サイクルは5サイクル繰り返した。スポットは標準撮像処理およびスポット検出を使用して検出され、配列はサイクルされている鋳型を同定するために赤色と緑色の二色のスキーム(G-Cy3およびA-Cy5)を使用してコールされた。図8Aおよび図8Bに示されるように、多価性リガンドは全ての5つの配列決定サイクルを通して塩基弁別を提供することができる。
【0170】
4.三元複合体からのヌクレオチド解離の制御
三元複合体は、実施例2におけるように調製され画像化される。複合体は、三元複合体の持続性を実証するために様々な時間、例えば60秒ほどにわたって画像化される。時間が経つと、複合体はその形成に使用された緩衝液と同一の緩衝液で洗浄され、この緩衝液は、任意の2価性カチオン、例えば、10mM Tris pH8.0、0.5mM EDTA、50mM NaCl、0.016%のTritonX100(SrOAcなし)を欠くだけであり、あるいは複合体は、その形成に使用された緩衝液と同一の緩衝液で洗浄され、この緩衝液はキレート剤を含むが任意の2価性カチオン、例えば、100nm-100mM EDTAを含み、10mM Tris pH 8.0、0.5mM EDTA、50mM NaCl、0.016%TritonX100(SrOAcなし)を欠いている。複合体の蛍光は、三元複合体の解離の観察および定量化を可能にすることが経時的に観察される。この溶解の代表的な時間経過は図6に示される。
【0171】
5.標的核酸の相補的配列の伸長
実施例4におけるように、三元複合体を調整、撮像、および解離した後、デブロッキング溶液は、ブロッキング部分を除去するには十分な、O-アジドメチル基、O-アルキルヒドロキシルアミノ基、またはO-アミノ基などの結合されたDNA分子を含有するチャンバーへと伸長するDNA鎖の3’末端から流し込まれる。これに続いてまたはこれと同時に、伸長溶液は、結合されたDNA分子を含有するチャンバーへと流し込まれる。伸長溶液は緩衝液、ポリメラーゼ活性を支持するのに十分な2価性カチオン、活性ポリメラーゼ、および全ての4つのヌクレオチドの適切な量を含有し、ヌクレオチドは、3’-O-アジドメチル基、3’-O-アルキルヒドロキシルアミノ基、または3’-O-アミノ基の組み込みなどにより、伸長するDNA鎖に単一のヌクレオチドが追加された後でさらなる伸長を支持することができなくなるようにブロックされる。伸長する鎖は、従って、1つおよび僅か1つの塩基によって伸長され、触媒的に不活性なポリメラーゼ、および多価性の結合基板の結合は、サイクルにおいて次の塩基をコールするために使用することができる。
【0172】
あるいは、多価性基板に付着したヌクレオチドは、不安定な結合を通じて付着し得、結果的に緩衝液は、触媒的に活性なポリメラーゼを与えるのに十分な2価性カチオンまたは他の補助因子を含有する結合されたDNA分子を含有するチャンバーへと流れ込むことができる。これの前、後、または同時に、多価性基板が伸長鎖に組み込まれ得るように、多価性基板から塩基を切断するのに十分な条件が提供され得る。この切断および組み込みは結果として、ちょうど1つの塩基によって、伸長するDNA鎖を伸ばす間、多価性基板の標識およびポリマー骨格の解離をもたらす。使用されたポリマー骨格を除去するための洗浄が実行され、新しい多価性基板は結合されたDNA分子を含有するチャンバーへと流れ込み、実施例1のように新しい塩基をコールすることが可能になる。
【0173】
6.様々な長さのPEG分枝を持つポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用
実施例3に記載された様々なPEGアーム長さを有するポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートは、実施例1に記載されるように単一の配列決定サイクルに曝され画像化された。図9のA~Jで示されるように、PEG分枝の長さの増加により、シグナルは5K Daの明白な平均PEG MWに対応する長さにまで増加した(図9のA~D)。これより長いPEGアームの使用は、Cy3-AおよびCy5-Gの両方の蛍光シグナルの減少を引き起こした(図9のE~9G)。シグナル強度の定量的測度は、図10においてグラフ式に示される。
【0174】
7.界面活性剤の添加による多価性基板の結合の増強
界面活性剤が存在する状態と存在しない状態で、多価性基板を調製し、結合複合体へと組み立てた。一方のセットでは10mM Tris pH 8.0、0.5mM EDTA、50mM NaCl、5mM SroAc、0%のTritonX100(条件A)を、もう一方のセットでは10mMのTris pH 8.0、0.5mM EDTA、50mM NaCl、5mM SroAc、0.016%TritonX100を使用した。図11は、DNAクラスターに結合されたこれらの多価性基板の正規化された蛍光を示し、トリトン-X100(0.016%)の存在下(条件B)で形成された基板複合体は増強された蛍光強度を明白に示す。
【0175】
8.多価性基板結合の時間経過の評価
実施例2のように多価性基板を調製し、結合複合体へと組み立てた。遊離標識されたヌクレオチドを使用して、同一の緩衝液条件下で複合体も形成された。複合体は、複合体の持続時間を特徴づけるために、60分の期間にわたって画像化された。図12A図12Bは代表的な結果を示す。多価性結合複合体は、60分より大きい時間尺度にわたり安定している(図12B)一方、標識された遊離ヌクレオチドは、1分未満で解離する(図12A)。
【0176】
VIII.結論
本開示は、DNA配列判定とバイオセンサの用途のための大幅に改善された方法および組成物を提供する。上記の特徴は例証的なものであって、限定的なものではないと意図されていることが理解されるべきである。多くの実施形態が、上記の記載の検討に際して当業者に明白であろう。例として、本発明の概念は主にポリマー-ヌクレオチドコンジュゲートの使用に関して記載されているが、他の種類の粒子-ヌクレオチドコンジュゲートを使用することができることは当業者によって容易に認識されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、量子ドット、リポソーム、またはエマルジョン粒子を含む粒子ヌクレオチドコンジュゲートを使用することが望ましいかもしれない。あるいは、コンジュゲーションは、水素結合などの非共有結合または他の相互作用によって達成され得る。したがって、本発明概念の範囲は、上記の記載に関して判定されるべきではなく、その代わりに、添付の請求項が与えられる等価物の十分な範囲とともに、このような請求項に関して判定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、当該システムは、
ポリマーコアおよびそれに付着した複数のヌクレオチド部分を含むヌクレオチドコンジュゲートの組成物と、
それに付着した複数のプライミングされた核酸配列を含む表面を有する固体支持体であって、
ここで、前記複数のヌクレオチド部分と共に前記複数のプライミングされた核酸配列の複数のプライマー核酸配列が、プライマーの伸長反応において伸長されず、前記複数のヌクレオチド部分の少なくとも2つ以上のヌクレオチド部分が前記複数のプライミングされた核酸配列の少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合される、固体支持体と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記システムは、
流体フローコントローラーと、
流体分配システムと、または、
前記流体フローコントローラーおよび前記流体分配システムの組み合わせであって、
ここで、前記流体フローコントローラーまたは前記流体分配システムが、前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物を前記複数のプライミングされた核酸配列へと誘導するように構成される、流体フローコントローラーおよび流体分配システムの組み合わせと、
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記固体支持体は、フローセルである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記表面は、前記フローセルの1つ以上の内部表面である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列が、前記フローセルの1つ以上の内部表面に結合した少なくとも2つ以上の捕捉された核酸配列の少なくとも一部に結合する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、
前記フローセルに動作可能に結合される画像化モジュールと、
実行するためにプログラムされた1つ以上のコンピュータープロセッサーと、
(a)前記フローセルの前記1つ以上の内部表面に付着する前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合する前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物を誘導する工程と、
(b)前記画像化モジュールによって、前記フローセルの前記1つ以上の内部表面を画像化することで、前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物の1つ以上の検出可能な部分から1つ以上のシグナルを検出する工程と、
(c)前記画像化モジュールによって、前記2つ以上のヌクレオチド部分に結合する前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列の2つ以上のヌクレオチドを判定するために、前記1つ以上のシグナルを検出する工程と、
をさらに含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記フローセルに動作可能に結合される前記画像化モジュールが
光源と、
光学コンポーネントと、
画像センサーと
を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物が、前記ポリマーコアに結合した複数の検出可能な部分を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の検出可能な部分が、複数のフルオロフォアを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数のプライミングされた核酸配列の当該プライミングされた核酸配列は、その3’末端にブロックされたヌクレオチドを含み、ここで、前記ブロックされたヌクレオチドは、ブロッキング基を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記ブロッキング基は、3’-O-アジドメチルヌクレオチド、3’-O-メチルヌクレオチド、3’-O-アルキルヒドロキシルアミノ基、3’-ホスホロチオエート基、3’-O-マロニル基または3’-O-ベンジル基を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列を含む直鎖状多量体をさらに含み、前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列は、同じ配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第2のポリマーコアおよびそれに付着した第2の複数のヌクレオチド部分を含む第2のヌクレオチドコンジュゲートの組成物をさらに含み、ここで、前記第2の複数のヌクレオチド部分は、前記複数のヌクレオチド部分の核酸塩基とは異なる核酸塩基のタイプである核酸塩基を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のヌクレオチド部分は、前記ポリマーコアに共有結合で結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ポリマーコアは分枝ポリマー、デンドリマー、交差型のポリマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物は、前記ポリマーコアを前記複数のヌクレオチド部分に結合するリンカーをさらに含み、ここで、前記リンカーは、約3kDaから約20kDaの分子量を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物は、アビジン、ビオチン、アフィニティータグ、およびその組み合わせからなる群から選択された1つ以上の結合基をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも2つ以上のヌクレオチド部分によって前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合した前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物が、多価性結合複合体を形成し、
ここで、前記多価性結合複合体は、前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に前記2つ以上のヌクレオチド部分を組み込まれないようにした2つ以上のポリメラーゼ分子をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記2つ以上のヌクレオチド部分によって前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合した前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物が、2秒より大きい持続時間を有する多価性結合複合体を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記2つ以上のヌクレオチド部分によって前記少なくとも2つ以上のプライミングされた核酸配列に結合した前記ヌクレオチドコンジュゲートの組成物が、多価性結合複合体を形成し、
ここで、前記表面上の前記多価性結合複合体の蛍光画像が、20を超えるコントラストノイズ比を有する、請求項1に記載のシステム。
【外国語明細書】