(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174894
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】皮下投与のための医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/661 20060101AFI20241210BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K31/661
A61P25/16
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024140691
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2021526553の分割
【原出願日】2019-11-15
(31)【優先権主張番号】62/767,546
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/843,945
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,093
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,101
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/863,113
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/898,214
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーサ,エハブ
(72)【発明者】
【氏名】ローズブロー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ジャミール,フェロズ
(72)【発明者】
【氏名】セバー,ナンシー
(72)【発明者】
【氏名】ファケリス,マウリツィオ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ロビーソン,ワイニング・ゼット
(72)【発明者】
【氏名】ロック,チャールズ・エス
(72)【発明者】
【氏名】シュトットマン,スベン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パーキンソン病の治療に適した、脳内における望ましいドーパミンレベルを一貫して維持するための組成物を提供する。
【解決手段】約20:1の重量比を有するレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる安定な液体水性医薬組成物とし、該組成物を皮下投与することによってパーキンソン病及び関連する状態を治療する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
で表される化合物と、
式:
【化2】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)対化合物(B-1)の重量比が、約20:1であり、、
皮下投与に適している、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【請求項2】
化合物(A-1)の濃度が、約216mg/mL~約264mg/mLである、請求項1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項3】
化合物(B-1)の濃度が、9.6mg/mL~13.2mg/mLである、請求項1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項4】
化合物(A-1)の濃度が、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約12mg/mLである、請求項1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項5】
約6.5~約9.0のpHを有している、請求項4に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項6】
化合物(A-1)の濃度が、324mg/mL~396mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、16.2mg/mL~19.8mg/mLである、請求項1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項7】
化合物(A-1)の濃度が、約360mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約18mg/mLである、請求項6に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項8】
約6.5~約9.0のpHを有している、請求項7に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項9】
ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された6.57~8.03のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項10】
ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、請求項9に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項11】
ヒト成人の集団に前記医薬組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~16時間にわたって約0.3以下の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が達成され、変動度が、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項12】
ヒト成人の集団に前記組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~72時間にわたって約0.40の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が達成され、変動度が、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項13】
約5.5%以下の酸素を含むガスヘッドスペースを有するバイアルの中にある、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項14】
約6.8~約7.8のpHを有する、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項15】
酸化防止剤を実質的に含まない、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項16】
アルギニンを実質的に含まない、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項17】
25℃で5日間、続いて、5℃で30日間後に、pH6.5~9.0で、約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項18】
アスコルビン酸又はアスコルビン酸の薬学的に許容される塩を実質的に含まない、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項19】
L-システイン若しくはその薬学的に許容される塩、N-アセチルシステイン(NAC)若しくはその薬学的に許容される塩、グルタチオン若しくはその薬学的に許容される塩、ジアセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩、及び亜硫酸水素ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを実質的に含まない、請求項5に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項20】
pH中性条件下で、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間保存した後に、約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを含む、請求項5に記載の安定な液体医薬組成物。
【請求項21】
式:
【化3】
で表される化合物と、
式:
【化4】
で表される化合物と、
水と、を含む安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度が、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
ヒト成人に投与された場合、AUC
(0-t)対AUC
(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【請求項22】
2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項21に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項23】
約6.5~約9.0のpHを有する、請求項22に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項24】
約6.8~約7.8のpHを有する、請求項23に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項25】
前記バイアルが、約5.5%未満の酸素を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
式:
【化5】
で表される化合物と、
式:
【化6】
で表される化合物と、
水と、を含む安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度が、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
酸化防止剤を実質的に含まない、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【請求項27】
ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、請求項26に記載の安定な医薬組成物。
【請求項28】
2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項27に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項29】
約6.5~約9.0のpHを有する、請求項28に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項30】
約6.8~約7.8のpHを有する、請求項29に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項31】
前記バイアルが、約5.5%未満の酸素を有する、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
式:
【化7】
で表される化合物と、
式:
【化8】
で表される化合物と、
水と、を含む安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度が、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
25℃で5日間、続いて、5℃で30日間後に、pH6.5~9.0で、約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【請求項33】
2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項32に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項34】
約6.5~約9.0のpHを有する、請求項33に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項35】
約6.8~約7.8のpHを有する、請求項34に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【請求項36】
前記バイアルが、約5.5%未満の酸素を有する、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、請求項36に記載の安定な医薬組成物。
【請求項38】
対象におけるパーキンソン病を治療する方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に請求項32に記載の医薬組成物を皮下投与して、ヒト成人に投与された場合にAUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供することを含む、前記方法。
【請求項39】
対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間をベースラインスコアから改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に、パーキンソン病症状をベースラインから少なくとも46%低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
ベースライン運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)(MDS-UPDRS)スコアを有する対象におけるMDS-UPDRS合計スコアを改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインMDS-UPDRS合計スコアを少なくとも9単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
ベースラインパーキンソン病質問票39項目(PDQ-39)サマリーインデックススコアを有する対象における生活の質を改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDQ-39スコアを少なくとも6.9単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
ベースラインパーキンソン病睡眠尺度-2(PDSS-2)合計スコアを有する対象における睡眠を改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDSS-2合計スコアを少なくとも2単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記対象が、皮膚結節発生の発生率なしに少なくとも10日間治療される、請求項38~42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
レボドパ及びカルビドパを含む錠剤の経口投与を受けている対象と比較して、対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間の発生率を低減させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間の発生率が低減され、問題のあるジスキネジアを伴うことなく「オン」時間が増加する、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、皮下投与のためのレボドパプロドラッグ及びカルビドパプロドラッグの安定な医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、神経伝達物質ドーパミン(すなわち、3,4-ジヒドロキシフェネチルアミン)の脳内レベルの低下を特徴とする慢性かつ進行性の神経変性状態である。
【0003】
レボドパ(すなわち、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)の投与は、現在、パーキンソン病患者を治療するための最も効果的な治療法である。カルビドパをレボドパと同時投与すると、レボドパのドーパミンへの末梢代謝が阻害され、それによって、治療上有効な臨床反応に必要なレボドパの投与量が大幅に低減され、関連する副作用が低減される。
【0004】
レボドパとカルビドパを含有する錠剤(特に、レボドパとカルビドパの重量(w/w)比が4:1である製品)の経口投与は、パーキンソン病の治療に長い間使用されてきた。例えば、Sinemet(登録商標)は、レボドパとカルビドパの重量(w/w)比が4:1である、「Merck Sharp and Dohme Corp., USA」製のレボドパ及びカルビドパの調製物の登録商標である。しかしながら、たとえカルビドパと同時投与した場合でも、レボドパの半減期が短いため、これらの経口錠剤を用いて脳内における望ましいドーパミンレベルを一貫して維持することは困難である。
【0005】
レボドパ錠剤の経口摂取は、血漿レボドパへの変動する曝露に関連している。レボドパとカルビドパの錠剤を経口投与とした場合と比較して、ドーパミンレベルの変動を低減させるのに効果的であった1つのアプローチは、レボドパ/カルビドパゲルの連続的な腸内送達である。欧州ではDuodopa(登録商標)という商品名で知られ、米国ではDuopa(登録商標)という商品名で知られている「AbbVie Inc., USA」製の製品は、水性ゲル(カルボキシメチルセルロースナトリウム)中のレボドパ/カルビドパ一水和物(4:1(w/w)の比のレボドパとカルビドパ一水和物)の懸濁液である。当該ゲルは、外科的に埋め込まれた経皮内視鏡的胃瘻造設孔(percutaneous endoscopic gastrostomy port)を通して挿入された空腸管を通して、近位小腸に送達される。外科的インプラントを使用することなく、レボドパを連続的に送達して脳内に治療効果のあるドーパミンレベルを提供することは、有益であり得る。
【0006】
レボドパ及びカルビドパは、それぞれ、中性pHでの水溶解度が低い。レボドパ及びカルビドパは比較的不溶性であるので、レボドパ(又は、インビボでレボドパに生物変換できる化合物)を含む安定でより溶解性の高い製剤を実現することは困難である。レボドパを皮下に送達するためのこれまでのプロドラッグアプローチは、いくつかの理由を挙げると、例えば、不充分な化学的安定性、不充分な溶解性、インビボでの生物変換の問題及び毒性など、さまざまな技術的課題のために失敗した。皮下投与されるレボドパ製品は市販されておらず、そして、レボドパの皮下投与は、カルビドパの有無にかかわらず、まだ商業化に成功していない。
【0007】
皮下投与に適したレボドパ及びカルビドパの特定のプロドラッグは、WO2016/065019A1に記載されており、その投与、製造方法、及び使用は、参照により組み込まれる。しかしながら、そのようなプロドラッグを投与するための安全で安定な組成物を提供することは有益であろう。
【0008】
レボドパのプロドラッグを製剤するための1つのアプローチが、WO2018/154447A1に記載されている。このアプローチでは、1種類又は2種類以上の酸化防止剤を使用する必要があり、それによって、製品の品質の維持における複雑さが増大する。記載されている組成物は、1.36%のカルビドパリン酸エステル(CD-p)及び5.64%のレボドパリン酸エステル(LD-p)を含む。
【0009】
レボドパを皮下送達するための別のアプローチが、WO2015/136538A1に記載されている。このアプローチは、レボドパと組み合わされたカルビドパアルギニン複合体を必要とするドーパデカルボキシラーゼ阻害剤組成物について記載している。しかしながら、そこに記載されている組成物を皮下送達したという証拠は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2016/065019号
【特許文献2】国際公開第2018/154447号
【特許文献3】国際公開第2015/136538号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
今日まで、パーキンソン病の治療のためのレボドパとカルビドパプロドラッグの皮下送達に適した、商業的に実行可能な医薬組成物が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、約20:1の比率のレボドパリン酸プロドラッグとカルビドパリン酸プロドラッグを含む、皮下投与に適した安全で安定な水性医薬組成物に関する。該組成物は、皮下投与に適した安定な液体を提供する。特定の実施形態において、そのような組成物は、ヒト対象に投与された場合、Sinemet(登録商標)製品に匹敵する経口レボドパ/カルビドパ療法と同様のレボドパの薬物動態学的血漿曝露を達成する。そのような薬物動態学的血漿暴露は、長期にわたって維持される。さらに、そのような組成物は、安全であり、かつ、ヒト対象において充分に許容される。この側面から見て、本開示は、本明細書中に記載されているレボドパリン酸プロドラッグ及びカルビドパリン酸プロドラッグ、並びに、少なくとも1種類の薬学的に許容される担体を含む、皮下投与に適した医薬組成物を提供し、レボドパリン酸プロドラッグ対カルビドパリン酸プロドラッグの重量比は約20:1であり、ヒト対象に投与することができる。一部の実施形態では、該組成物は、約6.5~約9.0のpHを有する水性液体組成物である。
【0013】
したがって、本開示は、
式:
【0014】
【0015】
【化2】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物に関し、
化合物(A-1)対化合物(B-1)の重量比は、約20:1であり、
皮下投与に適している。
【0016】
別の態様において、本開示は、
式:
【0017】
【0018】
【化4】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物に関し、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり;
該医薬組成物は、皮下投与に適しており、
該医薬組成物は、ヒト成人に投与された場合、AUC
(0-t)対AUC
(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する。
【0019】
別の態様において、本開示は、
式:
【0020】
【0021】
【化6】
で表される化合物と、
水を含んでいる安定な液体医薬組成物に関し、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり、
該医薬組成物は、皮下投与に適しており、
該組成物は、酸化防止剤を実質的に含まない。
【0022】
別の態様において、本開示は、
式:
【0023】
【0024】
【化8】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物に関し、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり、
該医薬組成物は、皮下投与に適しており、
該組成物は、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間後に、pH6.5~9.0で約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む。
【0025】
本明細書中に開示されているように、本開示は、以下の実施形態に関する。
【0026】
実施形態1. 式:
【0027】
【0028】
【化10】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)対化合物(B-1)の重量比は、約20:1であり、
皮下投与に適している、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【0029】
実施形態2. 化合物(A-1)の濃度が、約216mg/mL~約264mg/mLである、実施形態1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0030】
実施形態3. 化合物(B-1)の濃度が、9.6mg/mL~13.2mg/mLである、実施形態1又は2に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0031】
実施形態4. 化合物(A-1)の濃度が、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約12mg/mLである、実施形態1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0032】
実施形態5. 約6.5~約9.0のpHを有している、実施形態1~4のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0033】
実施形態6. 化合物(A-1)の濃度が、324mg/mL~396mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、16.2mg/mL~19.8mg/mLである、実施形態1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0034】
実施形態7. 化合物(A-1)の濃度が、約360mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度が、約18mg/mLである、実施形態6に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0035】
実施形態8. 約6.5~約9.0のpHを有している、実施形態6又は7に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0036】
実施形態9. 前記医薬組成物が、ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された6.57~8.03のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、実施形態1~5のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0037】
実施形態10. 前記医薬組成物が、ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、実施形態9に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0038】
実施形態11. ヒト成人の集団に前記医薬組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~16時間にわたって約0.3以下の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が、達成され、該変動度は、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される、実施形態1~5のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0039】
実施形態12. ヒト成人の集団に前記組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~72時間にわたって約0.40の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が達成され、該変動度は、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される、実施形態1~5のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0040】
実施形態13. 前記医薬組成物が、約5.5%以下の酸素を含むガスヘッドスペースを有するバイアルの中にある、実施形態1~5のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0041】
実施形態14. 前記医薬組成物が、約6.8~約7.8のpHを有する、実施形態13に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0042】
実施形態15. 前記医薬組成物が、酸化防止剤を実質的に含まない、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0043】
実施形態16. 前記医薬組成物が、アルギニンを実質的に含まない、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0044】
実施形態17. 前記組成物が、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間後に、pH6.5~9.0で、カルビドパ4’一リン酸に対して約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0045】
実施形態18. 前記医薬組成物が、アスコルビン酸又はアスコルビン酸の薬学的に許容される塩を実質的に含まない、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0046】
実施形態19. 前記医薬組成物が、L-システイン若しくはその薬学的に許容される塩、N-アセチルシステイン(NAC)若しくはその薬学的に許容される塩、グルタチオン若しくはその薬学的に許容される塩、ジアセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩、及び亜硫酸水素ナトリウム、又は、それらの任意の組み合わせを実質的に含まない、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0047】
実施形態20. 前記組成物が、酸化防止剤を実質的に含んでおらず、及び、前記組成物が、pH中性条件下で、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間保存した後に、約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを含む、先行する実施形態のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0048】
実施形態21.
式:
【0049】
【0050】
【化12】
で表される化合物と、
水と、を含む安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
ヒト成人に投与された場合、AUC
(0-t)対AUC
(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【0051】
実施形態22. 2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、実施形態21に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0052】
実施形態23. 約6.5~約9.0のpHを有する、実施形態22に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0053】
実施形態24. 約6.8~約7.8のpHを有する、実施形態23に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0054】
実施形態25. 前記バイアルが、そのバイアルヘッドスペース内に約5.5%未満の酸素を有する、実施形態22~24のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0055】
実施形態26.
式:
【0056】
【0057】
【化14】
で表される化合物と、
水と、を含む安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
酸化防止剤を実質的に含まない、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【0058】
実施形態27. 、ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、実施形態26に記載の安定な医薬組成物。
【0059】
実施形態28. 2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、実施形態27に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0060】
実施形態29. 約6.5~約9.0のpHを有する、実施形態26~28のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0061】
実施形態30. 約6.8~約7.8のpHを有する、実施形態29に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0062】
実施形態31. 前記バイアルが、約5.5%未満の酸素を有する、実施形態28~30のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0063】
実施形態32.
式:
【0064】
【0065】
【化16】
で表される化合物を含んでいる安定な液体水性医薬組成物であって、
化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLであり、
皮下投与に適しており、
25℃で5日間、続いて、5℃で30日間後に、pH6.5~9.0で、約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む、
前記安定な液体水性医薬組成物。
【0066】
実施形態33. 2℃~8℃の温度で、1気圧で、約9体積%未満の酸素を有する10ccバイアルの中で少なくとも3ヶ月間安定である、実施形態32に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0067】
実施形態34. 約6.5~約9.0のpHを有する、実施形態32又は33に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0068】
実施形態35. 約6.8~約7.8のpHを有する、実施形態34に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0069】
実施形態36. 前記バイアルが、約5.5%未満の酸素を有する、実施形態33~35のいずれか1に記載の安定な液体水性医薬組成物。
【0070】
実施形態37. ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する、実施形態32~36のいずれか1に記載の安定な医薬組成物。
【0071】
実施形態38. 対象におけるパーキンソン病を治療する方法であって、その治療を必要とする患者に実施形態1~37のいずれか1に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0072】
実施形態39. 対象におけるパーキンソン病を治療する方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に実施形態32に記載の医薬組成物を皮下投与して、ヒト成人に投与された場合にAUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供することを含む、前記方法。
【0073】
実施形態40. 対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間をベースラインスコアから改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に、パーキンソン病症状をベースラインから少なくとも46%低減させるのに有効な量の実施形態1~37のいずれか1に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0074】
実施形態41. ベースライン運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)(MDS-UPDRS)スコアを有する対象におけるMDS-UPDRS合計スコアを改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインMDS-UPDRS合計スコアを少なくとも9単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0075】
実施形態42. ベースラインパーキンソン病質問票39項目(PDQ-39)サマリーインデックススコアを有する対象における生活の質を改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDQ-39スコアを少なくとも6.9単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0076】
実施形態43. ベースラインパーキンソン病睡眠尺度-2(PDSS-2)合計スコアを有する対象における睡眠を改善させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDSS-2合計スコアを少なくとも2単位低減させるのに有効な量の請求項21に記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0077】
実施形態44. 前記対象が、皮膚結節発生なしに少なくとも10日間治療される、実施形態38~43のいずれか1に記載の方法。
【0078】
実施形態44. レボドパ及びカルビドパを含む錠剤の経口投与を受けている対象と比較して、対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間の発生率を低減させる方法であって、パーキンソン病の治療を必要とする患者に実施形態1~21のいずれかに記載の医薬組成物を皮下投与することを含む、前記方法。
【0079】
実施形態45. 対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間の発生率が低減され、問題のあるジスキネジアを伴うことなく「オン」時間が増加する、実施形態44に記載の方法。
【0080】
本開示のさらなる利点は、本特許出願を読むことで当業者には明らかである。以下の段落に記載されている本開示の実施形態は、本発明を例証することを意図しており、本発明の範囲を狭めるものと見為されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】4:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物を皮下投与された後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパレベル及びカルビドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図2】10:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物を皮下投与された後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパレベル及びカルビドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図3】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物を皮下投与された後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパレベル及びカルビドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図4】4:1の比率のレボドパとカルビドパからなる医薬組成物を経口投与された後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパレベル及びカルビドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図5】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物のボーラス用量を皮下投与され、続いて、その医薬組成物の連続皮下注入を72時間投与されている際の、健康なヒトボランティアにおけるレボドパ血漿レベル(±標準偏差)の血漿時間濃度プロフィールである。
【
図6】レボドパとカルビドパの比率が4:1であるDuodopa(登録商標)を腸内投与された後のヒト患者におけるレボドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図7】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸及びカルビドパ4’-一リン酸を皮下投与された健康なヒトボランティアと4:1の比率のレボドパ及びカルビドパを経口投与された健康なヒトボランティアにおけるレボドパレベルの血漿時間濃度プロフィールの比較である。経口レボドパの血漿中濃度は、2倍に増大された。
【
図8】25℃で5日間さらに、5℃で30日間後の、カルビドパ4’-一リン酸濃度に対するDHPPA-Pレベル(%w/w)のpHに基づくグラフ表示であり、%w/wは、カルビドパ4’-一リン酸の量の100倍に対するDHPPA-Pの量である。
【
図9】25℃で5日間続いて、5℃で65日間後の、カルビドパ4’-一リン酸濃度に対するDHPPA-Pレベル(%w/w)のpHに基づくグラフ表示であり、%w/wは、カルビドパ4’-一リン酸の量の100倍あたりのヒドラジンの量である。
【
図10】25℃で5日間続いて、5℃で30日間後の、カルビドパ4’-一リン酸濃度に対するヒドラジンレベル(%w/w)のpHに基づくグラフ表示である。
【
図11】25℃で5日間続いて、5℃で65日間後の、カルビドパ4’-一リン酸濃度に対するヒドラジンレベル(%w/w)のpHに基づくグラフ表示である。
【
図12】医薬組成物(20:1の比率におけるレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸)及びプラセボについて、10日間のいずれかで受けた注入部位評価数値尺度(Infusion Site Evaluation Numeric Scale)に基づく最高グレードによる対象のパーセンテージのグラフ表示である。
【
図13】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物及びプラセボについて、10日間のいずれかで受けた注入部位評価レターグレード尺度(Infusion Site Evaluation Letter Grade Scale)に基づく最高グレードによる対象のパーセンテージのグラフ表示である。
【
図14A】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物の患者における4週間の連続皮下注入の安全性及び耐容性を評価するための臨床試験Aに関する試験デザインのグラフ表示である。
【
図14B】患者における数値尺度を用いた注入部位等級付けの臨床試験Aに関する結果を示すグラフである。
【
図14C】患者における文字尺度を用いた注入部位等級分けの臨床試験Aに関する結果を示すグラフである。
【
図14D】患者における臨床試験Aに関するMDS-UPDRS合計スコアにおけるベースラインからの平均(SD)変化を示すグラフである。
【
図14E】患者における臨床試験Aに関する定期的に予定された来院(Regularly Scheduled Visits)での「オフ」時間におけるベースラインからの平均(SD)変化を示すグラフである。
【
図15】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物のボーラス用量を皮下投与され、続いて、その医薬組成物を24時間連続皮下投与された後の、健康なヒトボランティアにおけるレボドパ血漿レベル(±標準偏差)の血漿時間濃度プロフィールである(臨床試験B)。
【
図16A】20:1のレボドパ4’一リン酸対カルビドパ4’一リン酸の比率を有する医薬組成物を、最初のボーラス用量を皮下投与され、続いて、さまざまな用量で72時間にわたって連続皮下投与された後の、パーキンソン病患者におけるレボドパ血漿レベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図16B】20:1のレボドパ4’一リン酸対カルビドパ4’一リン酸の比率を有する医薬組成物を、最初のボーラス用量を皮下投与され、続いて、さまざまな用量で72時間にわたって連続皮下投与された後の、パーキンソン病患者におけるカルビドパ血漿レベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図17】20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物のボーラス用量を皮下投与され、続いて、その医薬組成物を24時間連続皮下投与された後の、健康なヒトボランティアにおけるカルビドパ血漿レベル(±標準偏差)の血漿時間濃度プロフィールである(臨床試験B)。
【
図18】レボドパとカルビドパの比率が4:1であるDuodopa(登録商標)を24時間にわたって腸内投与された後のヒト患者におけるカルビドパレベルの血漿時間濃度プロフィールである。
【
図19】健康なヒトボランティアにおける腹部、腕及び大腿部への皮下注入(臨床試験B)の後の平均レボドパ薬物動態学的プロフィールを比較するグラフである。
【
図20】健康なヒトボランティアにおける腹部、腕及び大腿部への皮下注入(臨床試験B)の後の平均カルビドパ薬物動態学的プロフィールを比較するグラフである。
【
図21】経口Sinemet(登録商標)を投与された患者と比較して、前記医薬組成物を投与された1日中に「オフ」時間を経験した患者のパーセントを示している(臨床試験B)。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本開示は、約20:1w/wのレボドパリン酸プロドラッグ対カルビドパリン酸プロドラッグの用量比を有する医薬組成物のヒトへの皮下投与が、有効なレベルのレボドパ対カルビドパ曝露を提供するという予想外の発見について説明する。そのような組成物は、予想よりも驚くほど少ないが、依然として治療上適切な量のカルビドパを組み込んでいる。当該組成物中のカルビドパ薬物の装入量の減少は、カルビドパ分解に関連する副生成物を減少させ、したがって、当該組成物の安定性の増大及び安全性プロフィールの改善をもたらすという点で、患者にとって有益である。したがって、本開示は、皮下投与のためのレボドパ及びカルビドパリン酸プロドラッグの安定な水性医薬製剤を提供する。
【0083】
前述のように、皮下注入に関して生理学的に許容されるpHでのレボドパの本質的に低い水溶解度は、改善された医薬組成物及び治療方法の開発に対する重要な技術的課題を提示する。そのような課題には、例えば、必要とされるpHの制限内における適切な投与量及び製剤安定性を達成することの困難などが包含される。これらの課題は、医薬組成物及び治療方法が、患者の脳内のドーパミンレベルの薬物動態学的に適切でかつ薬物動態学的に一貫した制御を提供するという要件によって、さらに複雑になる。
【0084】
本開示の医薬組成物は、カルビドパと一緒に又はカルビドパなしでレボドパを投与するための以前のアプローチの課題を克服した。そのような医薬組成物は、パーキンソン病及び関連する状態を患っている患者に投与することができる。
【0085】
本開示の様々な実施形態において、該医薬組成物は、インビボでレボドパ及びカルビドパに変換するレボドパプロドラッグ及びカルビドパプロドラッグを含む。本開示の医薬組成物は、連続皮下投与による送達を可能にする。そのような皮下投与は、Duodopa(登録商標)/Duopa(登録商標)の商品名で現在販売されているレボドパとカルビドパの比が4:1である市販の腸ゲル製剤と同様の持続的なレボドパ定常状態血漿濃度を維持することができる。さらに、この連続投与は、Sinemet(登録商標)として販売されているレボドパとカルビドパの比率が4:1の経口錠剤を投与した場合のレボドパの定常状態の血漿中薬物濃度(CSS)における有意な変動を本質的に排除するという利点を提供する。本医薬製剤は、さらにまた、十二指腸内に投与されたゲル及び経口療法と比較して、カルビドパの相対濃度が低下している。本開示の医薬組成物及び方法は、パーキンソン病及び他の関連する状態の治療における進歩を表す。
【0086】
本開示の医薬組成物は、経口療法で見られるレボドパ定常状態濃度(CSS)の有意な変動を伴うことなく、現在市販されている十二指腸内ゲル療法と同様の持続的なレボドパCSSを達成する。さらに、そのような持続的なレボドパ定常状態血漿濃度は、十二指腸内投与に必要な経皮内視鏡的胃瘻造設孔(percutaneous endoscopic gastrostomy port)を外科的に埋め込む必要なく、本開示の医薬組成物を用いて達成される。さらに、本開示の医薬組成物は、酸化防止剤を実質的に含むことなく、ほぼ中性のpHレベルで低レベルのヒドラジン及びDHPPA-P分解物を達成する。例えば、該医薬組成物は、25℃で約5日間、及び、5℃で約30日間保存した後に、約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを放出する。そのような医薬組成物は、WO2018/15447に記載されているような、酸化防止剤を使用しかつpHレベルが9.1を超える組成物よりも有利である。
【0087】
レボドパリン酸プロドラッグは、
【0088】
【化17】
である。化合物(A-1)は、化学名レボドパ-4’-一リン酸を有しており、CAS登録番号97321-87-4が割り当てられている。レボドパ-4’-一リン酸に関する国際一般名は、フォスレボドパ(foslevodopa)である。
【0089】
カルビドパリン酸プロドラッグは、
【0090】
【化18】
である。化合物(B-1)は、化学名カルビドパ-4’-一リン酸を有しており、CAS登録番号28860-95-9が割り当てられている。カルビドパ-4’-一リン酸の国際一般名は、フォスカルビドパ(foscarbidopa)である。
【0091】
本明細書中で使用される場合、特定の用語が本開示内で使用され得る。
【0092】
数値範囲が本明細書中に記載されている場合、その範囲内の各数値は、同じ程度の精度で明示的に意図されている。例えば、6~9の範囲の場合、6と9に加えて数値7及び8が意図されており、6.0~7.0の範囲では、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0が明示的に意図されている。
【0093】
単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈が明らか異なるように指示していない限り、複数の指示対象も包含する。
【0094】
本明細書中で「A及び/又はB」などの句において使用されている用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」又は「B」を意味することが意図されている。
【0095】
「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と同等と見なすであろう(すなわち、同じ機能又は結果を有する)数値の範囲を示している。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数値が包含され得る。場合によっては、「約」という用語は、記載された値の±20%の範囲内の値、例えば、記載された値の±15%、±10%、±7.5%、±5%、±4%、±3%、±2%又は±1%の範囲内の値を示すために、使用することができる。
【0096】
「実質的に含まない」という用語は、賦形剤として添加されていないことを意味する。
【0097】
「pH中性条件」という用語は、約pH6.8~約7.8を意味する。
【0098】
「安定な」という用語は、pH中性条件下で、25℃で5日、続いて、5℃で30日間保存した後に、当該医薬組成物が約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを含むことを意味する。
【0099】
「ベースライン」という用語は、試験対象の療法の投与直前における標的変数の最初の測定値を意味する。
【0100】
「容器」という用語は、任意の適切な材料を使用して製造された、コーティングされている又はコーティングされていない任意の適切な容器を意味し、そして、限定するものではないが、バイアル、カートリッジ、シリンジ、ボトル、並びに、ガラス、プラスチック及び/又はそれらの任意の組み合わせなどの材料を包含する。
【0101】
文脈上別段の要求がない限り、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、それらは排他的ではなく包括的に解釈されるべきであるという明確な理解に基づいて使用され、したがって、それらは、列挙された特徴を包含することを示しているが、1以上の別のそのような特徴を排除するものではない。
【0102】
「患者(patient)」、「対象(subject)」、「個体(individual)」などの用語は、ヒトを示している。
【0103】
薬学的賦形剤に関連して使用される「担体」という用語は、薬学的投与に適合する任意の全ての溶媒、分散媒体、保存剤、コーティング、等張剤及び吸収遅延剤などを示している。
【0104】
「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容されかつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する化合物の塩を示している。そのような塩としては、以下のものなどを挙げることができる:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を用いて形成された酸付加塩;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチル-ビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸を用いて形成された酸付加塩;及び、(2)親化合物中に存在している酸性プロトンが金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン又はアルミニウムイオン)によって置き換えられたときに形成される塩;又は、親化合物中に存在している酸性プロトンが有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン)と配位結合するときに形成される塩。そのような塩は、WO2016/065019A1に開示されている。
【0105】
一実施形態では、該医薬組成物は、水性担体中にレボドパリン酸プロドラッグ及びカルビドパリン酸を含んでおち、そして、該医薬組成物は皮下投与に適している。該医薬組成物は、約20対約1のレボドパ4’-一リン酸対カルビドパ4’-一リン酸の比率を含む。一実施形態では、該医薬組成物は、約240mg/mLのレボドパ4’-一リン酸及び約12mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。別の実施形態では、該医薬組成物は、約360mg/mLのレボドパ4’-一リン酸及び約18mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。別の実施形態では、該医薬組成物は、約60mg/mLの4’-一リン酸及び約3mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。
【0106】
一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、216mg/mL~264mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、9.6mg/mL~13.2mg/mLである。別の実施形態では、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、216mg/mL~264mg/mLであり、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、9.6mg/mL~13.2mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLである。したがって、一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、216mg/mL~264mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、9.6mg/mL~13.2mg/mLである。別の実施形態では、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、216mg/mL~264mg/mLであり、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、9.6mg/mL~13.2mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約240mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約12mg/mLである。したがって、一実施形態では、該医薬組成物は、約240mg/mLのレボドパ4’-一リン酸及び約12mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、324mg/mL~396mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約360mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、16.2mg/mL~19.8mg/mLである。別の実施形態では、化合物(B-1)の濃度は、約18mg/mLである。一実施形態では、該組成物中の化合物(A-1)の濃度は、324mg/mL~396mg/mLであり、該組成物中の化合物(B-1)の濃度は、16.2mg/mL~19.8mg/mLである。別の実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約360mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約18mg/mLである。したがって、一実施形態では、該医薬組成物は、約360mg/mLのレボドパ4’-一リン酸及び約18mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。
【0107】
一実施形態では、化合物(A-1)の濃度は、約60mg/mLであり、化合物(B-1)の濃度は、約3mg/mLである。したがって、別の実施形態では、該医薬組成物は、約60mg/mLの4’-一リン酸及び約3mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸を含む。
【0108】
一実施形態では、該医薬組成物は、中和剤を使用して製造される。一実施形態では、該中和剤は、水酸化ナトリウムである。別の実施形態では、該中和剤は、水酸化カリウムである。本明細書中に記載されているように、該医薬組成物は、約6.5~約9.2の最終pHを有することができ、これは、6.5と9.2の間で0.1ずつ増大するpH値を包含する。一実施形態では、該医薬組成物は、約6.8~約7.8の最終pH(例えば、水で再構成した後)を有する。したがって、該医薬組成物は、約6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7又は7.8から選択される最終pHを有し得る。一実施形態では、該医薬組成物は、約7.0~約7.5の最終pHを有する。したがって、該医薬組成物は、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4又は7.5から選択される最終pHを有し得る。
【0109】
レボドパ及びカルビドパリン酸プロドラッグを含む製剤は、酸化及び/又は分解されて、ヒドラジン及び/又は2-メチル-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-プロピオン酸(DHPPA-P)などのさまざまな分解物を放出し得る。例えば、ヒドラジンは、カルビドパ-4’-一リン酸の酸化的分解によって生じ得る。ヒドラジンは不純物と考えられており、該医薬組成物中のヒドラジンの放出は、制御されるべきである。一実施形態では、該医薬組成物は安定であり、室温(例えば、25℃)で約5日間、及び、冷蔵条件(例えば、5℃)で約30日間保存した後に、約0.50mg/mL未満のDHPPA-Pを放出する。
【0110】
別の実施形態では、該医薬組成物は、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間保存した後に、pH6.5~9.0で、約5.4%w/w未満のDHPPA-Pを含む。一実施形態では、該医薬組成物は、室温(例えば、25℃)で約5日間、及び、冷蔵条件(例えば、5℃)で約30日間保存した後に、約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを放出する。したがって、例えば、該医薬組成物は、pH中性条件下で、25℃で5日間、続いて、5℃で30日間保存した後に、約15マイクログラム/mL未満のヒドラジンを含み得る。
【0111】
一部の実施形態では、該組成物は、冷蔵条件下(例えば、2℃~8℃の温度で)、及び、1気圧のヘッドスペース内に約9%未満の酸素を有する10ccバイアル中で確立されるのと同等の条件下(例えば、15cc又は20ccのバイアルを使用)で、少なくとも3ヶ月間安定である(例えば、上記基準のもと)。好ましくは、バイアル(例えば、15cc又は20ccのバイアル)は、1気圧で約5.5%未満の酸素を含む。該組成物を貯蔵するためのバイアル又は別の適切な容器の中の酸素は、窒素又は任意の適切な不活性ガスでパージすることにより、約9%未満の酸素になるまでパージすることができる。
【0112】
本開示の医薬組成物は、ヒト対象に投与された後、望ましい薬物動態を示す。一実施形態では、該医薬組成物は、ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された6.57~8.03のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する。別の実施形態では、該医薬組成物は、ヒト成人に投与された場合、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30のレボドパ対約1のカルビドパのレボドパ対カルビドパの平均血漿曝露比を提供する。特に、本開示の医薬組成物は、レボドパの非常に安定な定常状態血漿レベルを提供することができる(例えば、連続皮下投与後)。したがって、一実施形態では、ヒト成人の集団に該医薬組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~16時間にわたって約0.3以下の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が達成され、該変動度は、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される。別の実施形態では、ヒト成人の集団に該組成物を連続皮下投与することにより、投与後2~72時間にわたって約0.40の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度が達成され、該変動度は、所与の期間に関して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される。
【0113】
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、酸化防止剤を実質的に含まない。別の実施形態では、該組成物は、アルギニンを実質的に含まない。別の実施形態では、該組成物は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸の薬学的に許容される塩を実質的に含まない。別の実施形態では、該組成物は、L-システイン若しくはその薬学的に許容される塩、N-アセチルシステイン(NAC)若しくはその薬学的に許容される塩、グルタチオン若しくはその薬学的に許容される塩、ジアセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩、及び亜硫酸水素ナトリウム、又はそれらの任意の組み合わせを実質的に含まない。
【0114】
本開示は、本医薬組成物が使用される治療方法にも関する。この側面から見て、本開示は、薬剤として使用するための本明細書中に開示されている医薬組成物を提供する。さらにまた、本明細書中に開示されている医薬組成物の治療における使用も提供される。特に、本開示は、本明細書中に開示されている組成物を使用して、レボドパ及びカルビドパに応答する状態(例えば、パーキンソン病)を治療するための方法を提供する。一態様において、本開示は、対象におけるパーキンソン病を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、その治療を必要とする患者に本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。パーキンソン病の治療において使用するための、本明細書中に開示されている医薬組成物も提供される。さらに、パーキンソン病の治療において使用するための本明細書中に開示されている医薬組成物の調製における、式(A-1)で表される化合物及び式(B-1)で表される化合物の使用も提供される。一実施形態では、該治療は、ヒト成人患者に該医薬組成物を投与することを含んでおり、ここで、該投与は、AUC(0-t)対AUC(0-t)によって測定された約7.30対1のレボドパ対カルビドパの血漿曝露比を提供する。別の態様及び実施形態において、本開示は、パーキンソン病の特定の基準が改善される方法を提供する。したがって、本開示は、対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間を改善させる方法を提供し、ここで、該方法は、パーキンソン病の治療を必要とする患者に、パーキンソン病症状をベースラインから少なくとも46%低減させるのに有効な量の本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。本開示は、さらに、対象におけるパーキンソン病の治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ベースライン運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(Movement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)(MDS-UPDRS)合計スコアを有するパーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインMDS-UPDRS合計スコアを少なくとも9単位低減させるのに有効な量の本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。本開示は、さらに、対象におけるパーキンソン病の治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ベースラインパーキンソン病質問票39項目(PDQ-39)サマリーインデックススコアを有するパーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDQ-39スコアを少なくとも6.9単位低減させるのに有効な量の本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。本開示は、さらに、対象におけるパーキンソン病の治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ベースラインパーキンソン病睡眠尺度-2(PDSS-2)合計スコアを有するパーキンソン病の治療を必要とする対象に、ベースラインPDSS-2合計スコアを少なくとも2単位低減させるのに有効な量の本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。実施形態では、本明細書中に開示されている治療は、該対象において皮膚結節が発生することなしに、少なくとも10日間継続することができる。本開示は、さらに、レボドパとカルビドパを含む錠剤の経口投与を受けている対象と比較して、対象におけるパーキンソン病症状の「オフ」時間の発生率を低減させる方法を提供し、ここで、該方法は、パーキンソン病の治療を必要とする患者に本明細書中に開示されている医薬組成物を皮下投与することを含む。
【0115】
本開示は、さらに、液体医薬投与量製剤の収納に適した、即時使用可能な(ready-to-use)バイアル又はカートリッジ又は容器又はエンクロージャーに関する。そのような収納は、レボドパリン酸プロドラッグ及びカルビドパリン酸プロドラッグのうちの1以上を含む液体製剤(例えば、本明細書中に開示されている医薬組成物中に)を保持する機能を果たし得る。該バイアルは、水性ビヒクルで再構成することによって容器に注入するために取り出されたり又はロードされたりする状態となる使用形態の状態にあることができるように、レボドパリン酸プロドラッグ及び/又はカルビドパリン酸プロドラッグの粉末形態用の貯蔵容器としても機能し得る。安定な医薬組成物は、約216mg/mL~約264mg/mLの濃度のレボドパ-4’-一リン酸、約9.6mg/mL~約13.2mg/mLの濃度のカルビドパ-4’-一リン酸を含む。
【0116】
本開示は、さらに、液体医薬投与量製剤の収納に適した、即時使用可能な(ready-to-use)バイアル又はカートリッジ又は容器又はエンクロージャーに関する。そのような収納は、レボドパリン酸プロドラッグ及びカルビドパリン酸プロドラッグのうちの1以上を含む液体製剤を保持する機能を果たし得る。該バイアルは、水性ビヒクルで再構成することによって容器に注入するために取り出されたり又はロードされたりする状態となる使用形態の状態にあることができるように、レボドパリン酸プロドラッグ及び/又はカルビドパリン酸プロドラッグの粉末形態用の貯蔵容器としても機能し得る。
【0117】
上記で記載したように、カルビドパは、レボドパを代謝する芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ(DDC)酵素を阻害することによってレボドパの曝露を改善するために、にはレボドパと一緒に投与される。レボドパとカルビドパを4:1の比率で経口投与することは、DDC酵素を阻害するためにこれまで使用されてきた。皮下投与のためのレボドパリン酸プロドラッグ及びカルビドパリン酸プロドラッグを含む組成物の改善された比率は、ヒトにおいて観察されたレボドパ対カルビドパの血漿曝露比に基づいて、約20:1であることが見いだされた。レボドパリン酸プロドラッグ対カルビドパリン酸プロドラッグを含む20:1の重量比の組成物を使用する利点は、過剰なカルビドパプロドラッグ投与が低減されることである。
【実施例0118】
実施例1A
健康な被験者における安全性、耐容性及び薬物動態
この実施例は、20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物が安全であることを実証し、そして、その薬物動態も評価する。
【0119】
方法
16時間にわたって単一の連続皮下注入(CSCI)として送達されたレボドパ4’-一リン酸及びカルビドパ4’-一リン酸の安全性、耐容性及び薬物動態を評価するために、合計で8人の健康な高齢(45~75歳)のヒト被験者が、単一盲検プラセボ対照3期間クロスオーバーデザイン臨床試験に参加した。各用量のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の組成物又はプラセボが、単一のCSCIとして単一の盲検法で腹部に投与され、移動可能なポンプに連結された注入セットを介して16時間にわたって一定の速度で送達された。レジメンA、B、C及びDは、それぞれ、640/160mgのレボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸、640/64mgのレボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸CSCI、640/32mgのレボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸CSCI又はプラセボCSCIで構成され、16時間にわたって一定の速度で腹部に送達された。薬物動態学的分析のために、血液サンプルを、カテーテルのプライミングの前、注入の前(0時間)、並びに、注入開始後0.5、1、2、4、8、12、16、20、24、26及び28時間に、8人の健康な高齢(45~75歳)のヒト被験者のそれぞれから採取した。
【0120】
集団
資格のある被験者は、年齢が45歳から75歳までの健康な男性及び女性のボランティアであった。女性の場合、被験者は、閉経後少なくとも1年間経過していなければならないか、又は、外科的に不妊でなければならない。除外基準には、重大な皮膚の状態又は障害(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎など)の病歴、又は、最近の日焼け、にきび、瘢痕組織、入れ墨、開いた傷、ブランディング又は着色の証拠が含まれていた。
【0121】
安全性の結果
プラセボを投与された被験者と比較して、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の組成物をCSCI注入又はボーラス注射された後の、治療によって発生した有害事象の性質又は頻度に関するパターンは明白ではなかった。試験された全てのレジメンに対して、被験者は充分な耐容性を示した。有害事象の重大なパターン及び検査所見は、報告されなかった。血圧や脈拍数に関する個々の測定値についても、又は、ECGからの定量的測定値からも、注目すべき所見はなかった。
【0122】
薬物動態学的結果
図1~3に示されているように、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の組成物は、それぞれレボドパ4’-一リン酸対カルビドパ4’-一リン酸の4:1(レジメンA、
図1);10:1(レジメンB、
図2);及び、20:1(レジメンC、
図3)の、様々な重量比で健康なヒトボランティアに皮下送達された。皮下に送達されたレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の該比率のそれぞれに関する時間濃度血漿レベルプロフィール(
図1-3)を、4:1のレボドパ:カルビドパの重量比のレボドパ及びカルビドパの同じヒトへの経口投与から得られたレボドパ及びカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィール(
図4)と比較した。さらに、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を20:1の比率で皮下投与することによって得られたレボドパ血漿レベルの健康なヒトボランティアにおける時間濃度プロフィール(
図5)を、レボドパ対カルビドパの重量比が4:1であるDuodopa(登録商標)を十二指腸内投与することによって得られたレボドパ血漿レベルの患者における時間濃度プロフィール(
図6)と比較した。さらに、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を20:1の重量比で皮下投与することによって得られたレボドパ血漿レベルの健康なヒトボランティアにおける時間濃度プロフィールを、レボドパ対カルビドパの重量比が4:1であるレボドパ及びカルビドパを経口投与することによって得られたレボドパ血漿レベルの患者における時間濃度プロフィール(
図7)と比較した。
【0123】
図1は、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を4:1の重量比で含む組成物(640mgのレボドパ4’-一リン酸/160mgのカルビドパ4’-一リン酸)を皮下投与CSCIされた後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパとカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィールを提供している。健康な高齢のボランティアは、レボドパ4’-一リン酸対カルビドパ4’-一リン酸の比率が4:1で投与された。
図1に示されているように、レボドパAUC(
0-t)/カルビドパAUC(
0-t)の血漿暴露比は、4:1の重量比で経口投与されたレボドパ及びカルビドパの7.39:1(
図4)と比較して、1.79:1であった。
【0124】
図2は、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を10:1の重量比で含んでいる組成物(640mgのレボドパ4’-一リン酸/64mgのカルビドパ4’-一リン酸)を連続皮下注入された後の健康な高齢のヒトボランティアにおけるレボドパとカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィールを提供している。暴露比分析の結果は、レボドパ:カルビドパの血漿暴露比AUC(
0-t)/カルビドパAUC(
0-t)が4:1の重量比で経口投与されたレボドパ及びカルビドパの7.39:1(
図4)と比較して3.94:1であったことを示している。
【0125】
驚くべきことに、20:1の投与比率(640mgのレボドパ4’-一リン酸/32mgのカルビドパ4’-一リン酸)が、皮下投与されたレボドパ4’-一リン酸及びカルビドパ4’-一リン酸に関して、4:1の比率(例えば、Sinemet(登録商標))で投与された経口レボドパ及びカルビドパに類似したレボドパ対カルビドパ曝露比をもたらし得ると言うことが見いだされた。
図3は、ヒトにおいてレボドパ-4’-一リン酸とカルビドパ-4’-一リン酸を含んでいる医薬組成物を連続皮下注入投与された後の健康なヒトボランティアにおけるレボドパ及びカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィールを提供している。
図3に示されているように、該組成物をCSCI投与することによって、20:1の重量比(640mgのレボドパ4’-一リン酸対32mgのカルビドパ4’-一リン酸)が4:1の経口レボドパ対カルビドパの投与(
図4)に匹敵するレボドパ/カルビドパ曝露比をもたらすという予期しない結果が得られた。該暴露比は、レボドパAUC
0-t/カルビドパAUC
0-tとして算出した。該暴露比分析から得られた結果は、意外にも、20:1の重量比で皮下投与されたレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を含んでいる組成物に関してレボドパ:カルビドパの血漿暴露比が7.30:1ng*h/mLであったことを示しており、これは、4:1の重量比(例えば、Sinemet(登録商標))で投与された経口レボドパ及びカルビドパの7.39対1の値の約99%又は0.09(単位)以内である。さらに、該20:1のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の組成物では、該4:1のレボドパ4’-一リン酸対カルビドパ4’-一リン酸の比率と比較して、ヒドラジン暴露の全体的な理論上の減少が約80%となり、これはさらに、有利には、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の固定された体積の組成物において、さらに多くのレボドパ4’-一リン酸を可能にする。
【0126】
図4は、4:1の重量比のレボドパとカルビドパの組み合わせを経口投与された後の健康な高齢のヒトボランティアにおけるレボドパとカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィールを提供している。合計で300/75mgのレボドパ/カルビドパが、オープンラベル試験において、100/25mgのレボドパ/カルビドパの3分割用量として、8人の健康な高齢(45~75歳)のヒト被験者に経口投与された。用量は、0、5及び10時間に投与された。薬物動態学的分析のために、血液サンプルを、第1日の初期投与の、最初の投与(0時間)の前、並びに、0.25時間後、0.5時間後、0.75時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、2回目の投与(5時間)の前、5.25時間後、5.5時間後、5.75時間後、6時間後、6.5時間後、7時間後、8時間後、9時間後、3回目の投与(10時間)の前、10.25時間後、10.5時間後、10.75時間後、11時間後、11.5時間後、12時間後、13時間後、14時間後、15時間後、19時間後及び24時間後に、採取した。
【0127】
結果
図5は、時間濃度プロフィールを提供しており、表1は、20:1の重量比のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物が5分間にわたる初回ボーラス注入として皮下投与され、その後、72時間にわたる連続皮下注入として皮下投与された後の、健康な高齢のヒトボランティアにおけるレボドパ及びカルビドパの血漿レベルの薬物動態パラメータを提供している(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)。
【0128】
【0129】
表2に示されているように、該組成物(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)の72時間にわたる連続皮下注入は、2~16時間にわたって約0.3以下の変動度を有するレボドパの平均血漿濃度を達成し、ここで、変動度は、2時間~72時間の所定の期間に対して([Cmax-Cmin]/Cave)として計算される。Cmaxは、該組成物(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)の連続皮下注入後に達成されたレボドパの最大(又は、ピーク)血漿濃度である。Cminは、該組成物(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)の連続皮下注入中の2時間から72時間までのレボドパの観測された最小血漿濃度である。Caveは、該組成物(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)の連続皮下注入中に観察されたレボドパの平均血漿濃度である。
【0130】
該組成物(960mg/48mg レボドパ4’-一リン酸/カルビドパ4’-一リン酸)の72時間にわたる連続皮下注入は、投与中に2-72時間にわたって約0.4以下の変動度を有するレボドパの安定した血漿濃度を達成し、ここで、変動度は、所定の期間に対して([Cmax-Cmin]/Cave)として定義される。低レボドパ濃度定常状態(Css)暴露変動(ng/mL)は、十二指腸内投与を必要とする現在の標準治療であるDuodopa(登録商標)(4:1の比率のレボドパ対カルビドパ一水和物)で見られるものと同様であった。
【0131】
【0132】
図6は、レボドパ対カルビドパの比率が4:1であるDuodopa(登録商標)の十二指腸内投与により得られた、患者におけるレボドパ血漿レベルの時間-濃度プロフィールを提供している。
図5と
図6の比較は、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を20:1の重量比で含んでいる医薬組成物を皮下投与された後の健康な高齢ヒトボランティアにおけるレボドパとカルビドパの血漿レベルの時間濃度プロフィールがDuodopa(登録商標)と比較して経時的に血漿中のレボドパのより安定した濃度を提供する、ということを示している。
【0133】
図7は、20:1の重量比のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物を連続皮下注入で投与された後と4:1の重量比のレボドパとカルビドパの組み合わせを含んでいる医薬組成物を経口投与された後の健康な高齢ヒトボランティアにおけるレボドパ血漿レベルの時間濃度プロフィールの比較である。経口レボドパ暴露データは、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸の医薬組成物によって達成された平均レボドパ暴露と調和させるために尺度アップ(2倍)させた。
図7に示されているように、皮下投与された20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物(実線)は、定常状態曝露におけるレボドパの血漿濃度を最小限の定常状態変動内に維持し、かつ、レボドパ血漿暴露を24時間維持する能力を示したが、経口レボドパ血漿濃度(点線)は、経時的に変動した。
【0134】
実施例1B
パーキンソン病患者を患っている被験者における72時間皮下注入の安全性、耐容性及び薬物動態
この実施例は、20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物が安全であることを実証し、そして、72時間にわたるその薬物動態も評価する。
【0135】
方法
72時間にわたって単一の連続皮下注入(CSCI)として送達されたレボドパ4’-一リン酸及びカルビドパ4’-一リン酸の安全性、耐容性及び薬物動態を評価するために、パーキンソン病を患っている約16人の被験者において、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物及びプラセボの皮下注入を単一盲検単回用量漸増試験で評価した。
【0136】
各グループに最大4人の被験者を含む4つの治療グループは、20:1の比率(200mg/10mg)のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物のボーラス投与を受け、それに続いて、輸液ポンプによって20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物のCSCIによる72時間投与を受けた。第1の群は、960/48mg、第2群は、2400/120mg、第3群は3600/180mg、及び、第4群は、4800/240mgのレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物が、注入ポンプを介したCSCIによって投与された。
【0137】
集団
資格のある被験者は、レボドパ応答性があり、一般的に良好な健康状態であり、及び、1日当たり少なくとも3回の投与を受ける安定した経口レボドパレジメンに基づいている、特発性パーキンソン病と診断された、年齢45~85歳の成人男性及び女性の被験者であった.
図16A及び
図16Bに示されているように、レボドパ4’一リン酸対カルビドパ4’一リン酸の比が20:1である医薬組成物の様々な用量からのレボドパ及びカルビドパのそれぞれの平均測定濃度は、72時間にわたって一定のままであった。
【0138】
実施例2
安定性
この実施例は、20:1の比率のレボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸からなる医薬組成物が経時的に安定であることを示している。
【0139】
方法
構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグ及び構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグ、水並びに測定された最終pHを得るのに充分な中和剤を含んでいる様々な水性医薬組成物表を表3に示されている様に調製した。表3に示されている処方を有する医薬組成物を調製し、総液量約11mLとするために10ccバイアル(約13.5mL最大充填容量を有する)の中に充填し、そして、バイアル容量の残りを窒素でパージして、約5.5%の酸素ヘッドスペースを残した。
【0140】
【0141】
DHPPA-Pとヒドラジンの量を別々に測定した。ヒドラジンレベルの測定は、ヒドラジンのベンザルアジンへの誘導体化に基づいており、そして、該方法は、ヒドラジンとDHPPA-Pを測定するための紫外線(UV)検出を備えた勾配逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含んでいた。
【0142】
表4~表7は、表3中の製剤1~製剤16に関する、それぞれ、経時的に測定されたDHPPA-P及びヒドラジンの放出を示している。DHPPA-Pは、mg/mL及び%w/wとして測定した。%w/wは、カルビドパ4’-一リン酸の量あたりのDHPPA-Pの量に100を掛けて計算した。ヒドラジンは、マイクログラム/mL及び%w/wとして測定した。%w/wは、カルビドパ4’-一リン酸の量あたりのヒドラジンの量に100を掛けて計算した。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
表4-表7に示されている結果は、
図8-
図11に示されているように等高線プロットとしてプロットした。
図8は、25℃で5日間、さらに、5℃で30日間後の、カルビドパ4’-一リン酸の量に対するDHPPA-Pレベル(%w/w)のグラフ表示である。
【0148】
図9は、25℃で5日間、さらに、5℃で65日間後の、カルビドパ4’-一リン酸の量に対するDHPPA-Pレベル(%w/w)のグラフ表示である。
【0149】
図10は、25℃で5日間、さらに、5℃で30日間後の、カルビドパ4’-一リン酸の量に対するヒドラジンレベル(%w/w)のグラフ表示である。
【0150】
図11は、25℃で5日間、さらに、5℃で65日間後の、カルビドパ4’-一リン酸の量に対するヒドラジンレベル(%w/w)のグラフ表示である。
【0151】
図8及び
図9に示されているように、カルビドパ4’-一リン酸の濃度が高いほど、及び、pHが低いほど、DHPPA-Pレベルは低くなる。
【0152】
図10及び
図11に示されているように、pHが高くなると、ヒドラジンレベルは低くなる。約240mg/mLのレボドパ4’-一リン酸と12mg/mLのカルビドパ4’-一リン酸の濃度を有する製剤(分子量で約170mgレボドパ)は、約6.5~9.0の最終pH値で、低レベルのDHPPA-P及びヒドラジンを示した。
【0153】
実施例3
健康なボランティアにおけるレボドパ及びカルビドパプロドラッグの24時間の連続皮下注入: 1年間の曝露をシミュレートするための10日間にわたる安全性及び耐容性
この試験は、構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグ(プロドラッグの組み合わせ)を含んでいる水性医薬組成物の24時間連続皮下注入の安全性及び局所耐容性を評価するためにデザインされた。この試験では、健康なボランティアの腹部の限られた領域に該医薬組成物を連続して10日間投与することによって、1年間の暴露をシミュレートした。
【0154】
方法
該試験は、健康なボランティアの第1相、無作為化、プラセボ対照試験であり、そのボランティアは、腹部の両側への10日間にわたる同時24時間連続皮下注入よって、600mgのレボドパを提供するのに充分な該医薬組成物及び同体積の生理食塩水を投与された。該試験は、表8に示されているように、3つの期間で構成された。
【0155】
【0156】
表8に示されているように、スクリーニング期間は28日間続いて、患者が適格性及び基準を満たしていることを確認するために、並びに、さらに、病歴及びベースライン臨床評価を収集するために、実施された。次の期間は監禁期間であり、その間、患者は13日間(-1日目から12日目)試験現場に閉じ込められた。その監禁期間中、1日目に注入を開始し、その際、各患者は、該医薬組成物及び同体積のプラセボ(生理食塩水)を同時に投与された。この注入は、腹部の両側の直径5cmの2つの領域に投与された。被験者及び注入部位の評価者は、腹部の両側のそれぞれにどの治療が投与されたかについて知らされなかった。注入セットは毎日交換し、各注入セットのカテーテルは前日に使用した部位の直径5cm以内に留置した。注入は10日間にわたって24時間/日継続し、そこでは、被験者は、約600~約700mg/日に相当する投与量のレボドパを投与された。次に、有害事象のアドホックな報告を可能とするために、28日間のフォローアップ期間を実施した。注入セットを交換し、同じ皮膚表面に毎日再適用した。
【0157】
注入部位のローテーション
良好な臨床実践及び事例に基づくデータによって、感染又は刺激、脂肪組織の蓄積(肥大)及び瘢痕形成(線維症)のリスクを低減させるために、注射部位を定期的にローテーションすること、少なくとも2.5cm離しておくことが推奨された。この試験のために選択された注入セット(Smith Cleo 90)は、セットの無菌性を維持するために3日毎にセットを交換することを推奨していた。臨床実施においては、11箇所の代替的な部位を使用した後、同じ注入部位を使用できるようにローテーションを可能にする時計のようなローテーションスキームを患者が採用することが期待される。個々人は、へそ(中央)の周りの注入部位のローテーションスケジュールを採用する。12時の位置からローテーションが始まり時計回りに進む場合、各注入部位を3日間使用すると仮定すると、患者は約36日後に12時の位置の注入部位に戻る - (12*3=)36日間、平均して同じ注入部位を10回/年で使用する。この試験は、患者が1年間にわたって使用する反復注入部位の数に関して健康なヒトボランティアの局所耐容性を評価するための長期使用の加速シミュレーションを提供した。
【0158】
集団
この試験に関する主要な包含基準は次のとおりである:
・ 45~75歳の成人男性又は女性の健康なヒトボランティア;
・ ボディマス指数(BMI) 18.0kg/m2から32.0kg/m2まで;
・ 病歴、身体検査、及び、臨床的に重要ではない検査値、心電図(ECG)又はバイタルパラメータに基づいて、一般的に良好な健康状態;及び、
・ 試験責任医師が試験評価を妨げる可能性があると特定した重大な皮膚の状態又は障害の病歴がないこと。
【0159】
評価及び分析
全身及び局所の安全性及び耐容性について、毎日評価した。顕著な皮膚反応は、注入セットの使用から予測可能な反応とは通常関連しない事象として事前に定義した(注入部位評価尺度におけるグレード≧D又は≧6)。被験者と評価者の両方は、レボドパ4’-一リン酸とカルビドパ4’-一リン酸を含む水性医薬組成物及びプラセボが注入された腹部の側面を知らなかった。具体的には、10日間の投与期間を完了した33人の健康なヒトボランティアにおいて、腹部への10日間の当該医薬組成物の24時間連続皮下注入の局所皮膚耐容性について評価した。局所皮膚耐容性は、注入部位評価2パート尺度(表9)を使用して、盲検評価者によって評価された。この評価には、数値グレード(0~7)及び文字グレード(A~G)尺度が含まれていた。顕著な皮膚反応は、注入セットの使用から予測可能な反応とは通常関連しない事象として事前に定義した(グレード≧D又は≧6)。主要評価項目は、10日間の注入の2日を超えた時点で、該医薬組成物の注入部位で顕著な皮膚反応を示した健康なヒトボランティアの数であった。10日間の注入の2日を超える時点で顕著な皮膚反応が見られる集団の割合に関する95%信頼上限は、Clopper-Pearson法によって得られた。各注入部位評価尺度に関して、最終評価で医薬組成物とプラセボとの間に差がないという仮説を医薬組成物の方がグレードが高い可能性が高いという対立仮説に対して試験するために、片側符号検定を行った。
【0160】
【0161】
安全性評価には、注入部位の評価に加えて、以下のものが含まれていた:試験治療下で発現したAE及び重篤な有害事象(SAE)を有する被験者のパーセント;臨床検査値、バイタルサイン測定値、心電図(ECG)及び身体検査所見のベースラインから試験終了までの変化。
【0162】
結果
表10に示されているように、安全性データセットには、34人の被験者が含まれていた。
【0163】
【0164】
耐容性
該試験の1日目から10日目までの各健康なヒトボランティア被験者について報告された最高グレード(医薬組成物部位対プラセボ部位)が、
図12及び
図13において、それぞれの注入部位評価尺度についてグラフによって要約されている。10日間の投与を完了した被験者で、顕著な皮膚反応を報告した被験者の割合は、該医薬組成物注入部位で0%(0/33)であり、プラセボ注入部位で3.0%(1/33)であった。注入10日目の皮膚科学的評価に関する該医薬組成物とプラセボの差異は、数値グレード尺度(P=0.828)又は文字グレード尺度(P=0.363)に関して統計的に有意ではなかった。この試験で投与された該医薬組成物の10日間注入の2日以上で顕著な皮膚反応を示す集団の割合に関する95%信頼上限は、0.087(集団の8.7%)である。この試験で投与された10日間のプラセボ注入の2日以上で顕著な皮膚反応を示す集団の割合に関する95%信頼上限は、0.087(集団の8.7%)である。
【0165】
安全性
臨床的に有意な検査値、バイタルサイン又はECG所見はなかった。全体として、被験者の97%が少なくとも1つの有害事象(AE)を報告した。試験完了の4日後に報告された1件の重篤なAEがあったが、これは、試験薬に潜在的に関連していないと考えられた。AEによる中止はなかった(表11)。最も頻繁に報告された有害事象は、注入部位の紅斑(91%)、注入部位の反応(44%)及び注入部位の痛み(32%)であった(表12)。注入部位の全てのAEは、軽度又は中程度の重症度であり、そして、すぐに消散した。
【0166】
【0167】
【0168】
構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグ及び構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグを含む医薬組成物は、運動症状を適切に制御するのに必要とされる広範囲のレボドパ曝露を提供する可能性があり、及び、パーキンソン病患者に対する代替的な治療選択肢となる可能性を有する。この試験は、該医薬組成物が、一般によく耐容されること、及び、腹部の限られた領域に連続する10日間連続して皮下投与された低い(それでも、臨床的に適切な)投与量で顕著な皮膚反応を引き起こさないことを実証した。
【0169】
実施例4
パーキンソン病患者におけるレボドパ及びカルビドパプロドラッグの4週間の連続皮下注入の安全性及び耐容性を評価する第1b相試験のデザイン
この試験は、構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグを20:1の重量比で含む水性医薬組成物の4週間の連続皮下注入の安全性及び耐容性を評価するために設計された。さらに、該医薬組成物の連続皮下注入によって達成された定常状態血漿レボドパレベルについて評価し、そして、表18Aに記載されているエンドポイントにおけるベースラインからの変化によって探索的有効性を評価した。
【0170】
方法
28日間の24時間連続皮下注入による該医薬組成物の個別化治療用量で治療されたパーキンソン病患者の単群非盲検第1b相試験がデザインされた。患者は、米国の施設から募集された。該試験は、4つの期間で構成され、そして、
図14Aにグラフで表示されている。スクリーニング期間には、適格性を確立し、患者の現在のパーキンソン病治療が30日間安定していることを確認するためのモニタリング期間を含む2回の訪問が含まれていた。スクリーニング期間には、訪問2の直後の7日間のモニタリング期間も含まれていた。患者は、被験者の投薬日記を使用してパーキンソン病の投薬を記録し、ウェアラブルデバイスを使用して運動症状をモニタリングした。
【0171】
滴定期間は登録期間の一部であり、スクリーニング期間に続いた。滴定期間の1日目に、患者は該医薬組成物のボーラス投与を受け、続いて、一定の速度で持続注入を受け、その後、患者の臨床反応に基づいた試験責任医師の裁量で投与量が調節された。治療用量は、「オフ」エピソードの数を最小限に抑え、機能的な「オン」時間を最大化し、同時に、厄介な運動障害を最小限に抑えることにより、運動症状の適切な制御を引き出すことができる用量として定義される。患者は、28日目(治療期間)まで、滴定期間中に確立された該医薬組成物の治療用量を受け続けた。この試験の主要な包含基準は、表13に要約されている。
【0172】
【0173】
全身の安全性と耐容性は、有害事象のモニタリング、検査値、バイタルサイン、心電図及び安全性尺度(これは、Columbia-Suicide Rating Scaleを包含する)によって評価した。注入部位のグレード尺度(表14A)及び有効性探索的評価(表14B)を使用して、試験の結果を評価した。
【0174】
被験者は、パーキンソン病日記内の質問票に基づいてパーキンソン病症状を記録した。各被験者は、自分が「オン」、「オフ」又は「睡眠」のいずれであるか、及び、自分の運動障害の重症度(問題があるかどうか)を記録した。ベースラインからの変化に関する統計的有意性は、正規化された「オフ」時間、運動障害を伴わない正規化された「オン」時間及び厄介な運動障害を伴わない正規化された「オン」時間について、各訪問時に示された。問題のない運動障害を伴う正規化された「オン」時間及び厄介な運動障害を伴う正規化された「オン」時間については、どの訪問に際しても統計的有意性は示されなかった。
【0175】
被験者のMDS-UPDRSの評価は、以下のセクションで構成された:
・パート1:日常生活の経験の非運動的側面(nM-EDL)
・パート2:日常生活の経験の運動的側面(M-EDL)
・パート3:運動検査(Hoehn及びYahrステージを含む)
・パート4:運動合併症。
【0176】
MDS-UPDRS合計スコアは0から176の範囲であり、ここで、176は最悪の(合計)障害を表し、0は障害なしを表す。平均合計ベースラインスコアは、全ての訪問で約45~47の範囲であり、平均訪問合計スコアは、全ての訪問で約34~45の範囲であった。ベースラインからの統計的に有意な変化は、合計スコア、パート1スコア及びパート2スコアについては、7日目、28日目及び最終訪問時に、並びに、パート4スコアについては、28日目及び最終訪問時に、示された。パート3の「オン」スコアでは、どの訪問でも統計的に有意な変化はなかった。
【0177】
PDQ-39は、パーキンソン病を患っている被験者に関連する健康の側面を測定した。各項目は、次の5ポイント尺度で採点された:0=全くない、1=たまにある、2=ときどきある、3=よくある、4=常にある(又は、該当する場合はまったくできない)。スコアが高いほど、震えやこわばりなど、当該病気のより深刻な症状と一貫して関連している。大多数の被験者は、「全くない」又は「ときどきある」と回答したが、7人の被験者は、「常にある」又は「全くできない」と回答した。結果は、サマリーインデックスとして表されている。PDQ-39サマリーインデックスは、0~100の範囲であり、ここで、スコアが低いほど良い健康状態が認識されていることを示している。評価に使用した領域及びインデックスは、以下のとおりである:
サマリーインデックス
運動性領域スコア
日常生活領域の活動
感情的幸福領域スコア
徴候領域スコア
社会的支援領域スコア
認知領域スコア
コミュニケーションド領域スコア
身体的不快領域スコア。
【0178】
ベースラインからの統計的に有意な変化は、サマリーインデックスに関して全ての訪問で示された。
【0179】
PDSS-2尺度は、パーキンソン病を患っている被験者における夜間睡眠障害の様々な側面を特徴づける。PDSS-2は、夜間及び起床時の運動症状及び非運動症状、並びに、3つの領域に分類される睡眠障害(夜間の運動症状、夜間のPD症状、及び、睡眠障害)について評価する15の質問で構成された。スコアは、各領域について、及び、合計スコアについて、計算された。睡眠の問題に関しては、その頻度を、0(全くない)から4(非常に頻繁に)までの範囲の5ポイントのリッカート型尺度に基づいて評価した。大多数の被験者は、「全くない」又は「たまにある」と回答したが、7人の被験者は、「常にある」又は「全くできない」と回答した。
【0180】
KPPSは、パーキンソン病を患っている被験者の痛みを評価した。その尺度は、痛みの7つの領域(筋骨格痛、慢性痛、変動関連痛、夜間痛、口腔顔面痛、局所四肢痛/浮腫/腫脹、及び、神経根痛)の頻度及び重症度を測定した。合計スコアも評価された。ベースラインからの統計的に有意な変化は、合計スコアについては、28日目及び最終訪問時に、並びに、変動関連痛スコアについては、28日目に、示された。
【0181】
PASは、パーキンソン病を患っている被験者における不安の重症度を測定した。持続的な不安、一時的な不安及び回避行動に関するスコア並びに合計スコアが評価された。ベースラインからの統計的に有意な変化は、合計スコア及び回避行動について、28日目及び最終訪問時に示された。
【0182】
全ての被験者は、振戦、運動障害及び可動性の評価のためのデータを継続的に記録するKinesia 360デバイスを着用した。振戦、運動障害及び緩慢さに関して、いずれの訪問時にも、ベースラインからの統計的に有意な変化はなかった。
【0183】
注入部位評価グレード尺度及び探索的有効性評価を実施し、そして、以下の表14A及び表14Bに示されている。
【0184】
【0185】
【0186】
探索的分析を実施して、パーキンソン病症状の「オフ」時間を低減させること並び運動性症状及び非運動性症状に対する当該医薬組成物の有効性を評価した。
【0187】
結果
21人の患者が登録された。試験集団は、主に、男性(61.9%)及び白人(100%)であった:1人(4.8%)の被験者はヒスパニック系又はラテン系であった。平均(SD)年齢は、61.6(10.3)歳であった。診断以降の平均(SD)パーキンソン病持続期間は9.0(4.0)年であり、運動変動の平均(SD)持続期間は6.0(4.1)年であった。ベースラインにおける1日あたりの平均「オフ」時間は6.54時間であり、3.77時間から9.46時間まで変動した。7人の被験者(33%)は、時期尚早に中止された。2人の被験者は、は有害事象に起因して中止された。
【0188】
被験者のベースライン個体群統計及び疾患の特徴が、表15に示されている。
【0189】
【0190】
注入部位グレード化の結果は、
図14B及び
図14C並びに以下の表16に示されている。
【0191】
【0192】
パーキンソン病において、「オフ」時間は、薬物療法がうまく機能せず、それによって、パーキンソン病症状(振戦、こわばり、運動緩慢、及び、非運動症状、例えば、鬱、痛み、不安)が再発又は悪化している1日のうちの期間を示している。対照的に、用語「オン」時間は、症状が適切に制御されている期間を示している。「オフ」時間は、時には、予想どおりかつ徐々に出現することがあり(「ウェアリングオフ(wearing off)」)、又は、それは、突然かつ予期せずに出現する場合がある(「突然のオフ」、「ヨーヨーエピソード」)。ウェアリングオフ期間の頻度及びタイミング、並びに、「オフ」時間の時間数は、パーキンソン病患者の生活の質における悪化と有意に相関している。
【0193】
パーキンソン病における生活の質は、パーキンソン病質問票39項目(PDQ-39)〔機能と幸福の特定のディメンションに対するパーキンソン病の影響を評価する自己報告質問票〕及びPDSS-2〔パーキンソン病における夜間の睡眠の問題のさまざまな側面を特徴付け及び定量化するようにデザインされたパーキンソン病睡眠尺度の改訂版〕などの質問票及びツールを使用して、評価することができる。当該疾患の重症度は、代わりに、統一パーキンソン病評価尺度(Unified Parkinson’s Disease Rating Scale)(UPDRS)又は運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度改訂版(Movement Disorders Society revised version)(MDS-UPDRS)〔病気の長期的評価とフォローアップのための定量化可能なスコアを提供するようにデザインされた評価者ベースのインタビューと臨床評価で構成されるツール〕によって評価した。
【0194】
ベースラインの正規化された「オフ」時間からの患者の変化は、表17及び
図14Eに示されているように測定した。事前に指定された有効性エンドポイントの概要が表18Aに提供されており、及び、有効性評価が表18Bに示されている。
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
有効性データの分析は、20人の患者のうち17人で「オフ」時間が改善されたことを示した。ベースラインから試験終了までの「オフ」時間の平均(SD)減少は、被験者全体で3.24(3.65)時間であった(46.2%の改善)。4人の被験者は、試験の終了時点で、毎日の「オフ」時間の90%を超える減少を報告した。正規化された「オフ」時間、問題のない運動障害を伴う「オン」時間及び厄介な運動障害を伴う「オン」時間が平均して減少し、それによって、3.99(5.37)時間の運動障害を伴わない正規化された「オン」時間の平均(SD)改善があった。
図14Dに示されているように、ベースラインからの平均(SD)減少は、運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)合計スコアで9.0(11.87)であり、パーキンソン病質問票39項目(PDQ-39)サマリーインデックスで6.9(8.39)であり、及び、パーキンソン病睡眠尺度-2(PDSS-2)合計スコアで2.0(11.48)であった。該医薬組成物を連続皮下注入した後、以下のものに関して、ベースラインからの統計的に有意な変化が観察された:運動障害に関するパーキンソン病の「オン」時間及び「オフ」時間、MDS-UPDRS合計スコア、日常生活の経験の非運動側面、日常生活の経験の運動側面、及び、運動合併症、及び、PDQ-39サマリーインデックス、並びに、日常生活の活動、感情的幸福、認知、コミュニケーション、移動性、徴候及び身体的不快感の領域。
【0199】
図21及び表18Cは、経口Sinemet(登録商標)を投与されている患者と比較して、該医薬組成物を投与されている「オフ」時間を経験している患者のパーセントを示している。
図21に示されているように、経口Sinemet(登録商標)治療を受けている患者は、該CSCI医薬組成物を投与されている患者と比較して、朝と食事時間の前後の「オフ」時間において望ましくないスパイクを示している。表18Cは、経口Sinemet(登録商標)を投与されている患者のベースラインで、起床時の最初の朝の症状の時間の約86.7%が「オフ」だったことを示している。一方、該CSCI医薬組成物を投与されている患者の28日間の試験の終了時において、最初の朝の症状の時間の約84.2%が運動障害を伴わない「オン」であった。
【0200】
【0201】
実施例5
実施例4に記載されている試験のための最も適切な開始投与量の医師による決定を容易にするために、経口レボドパをカルビドパ4’-一リン酸とレボドパ4’-一リン酸の医薬組成物に変換するアルゴリズムを作成した。このアルゴリズムは、連続的に皮下送達された場合のレボドパ暴露のばらつき及び変動が少ないこと、24時間暴露、該組成物を用いた以前の試験から得られたレボドパの薬物動態プロフィール及び別の臨床的考慮事項を考慮に入れている。
【0202】
投与を完了した患者から得られたデータは、用量の評価に使用した。当該試験を完了した全ての患者(N=14)は、該医薬組成物の開始後3週間以内に望ましい用量範囲を達成した;3人の患者は経口から該医薬組成物への変換後の同じ日に所望の用量範囲を達成し、7人の被験者は1週間を要し、1人の被験者は2週間を要し、残りの3人の患者は3週間を要した。各時点での調整は、-0.04mL/h~+0.08mL/h(-136mgレボドパ/日~273mgレボドパ/日に相当)の範囲であり、1日目から28日目までの注入速度の差異(全ての調整を考慮した)は、-0.06mL/h~+0.08mL/h(-204mgレボドパ/日~+273mgレボドパ/日に相当)の範囲であった。登録時に全ての患者被験者が自身の最良の経口薬剤によって制御が不十分だった運動変動を報告する必要があったことを考慮すると、連続注入速度における変化の大きさは小さいと考えられ(1人の被験者を除く全ての患者で20%以内)かつ望ましい用量範囲が3週間以内に達成されたので、これらのデータは、当該変換アルゴリズムが該医薬組成物の開始用量を導くのに効果的であることを示唆している。
【0203】
試験の開始時及び終了時の患者対象によるレボドパ投与量レベルが表19に示されている。24時間の治療期間中に送達された該医薬組成物の投与量は、1日あたり約28.8/576mg~約240/4800mgの範囲のカルビドパ4’-一リン酸/レボドパ4’-一リン酸(これは、分子量に基づいて、それぞれ、約400mg~3400mgのレボドパに相当する)であった。試験終了時の平均投与量及び中央値の投与量は、約117.5/2350mg及び96/1920mg(分子量に基づいて、それぞれ、1670mg及び1360mgのレボドパに相当する)であった。
【0204】
【0205】
記載されているように、患者が試験参加の前にレボドパ相当投与量2000mgを有する場合、20:1の重量比の構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグからなる医薬組成物の推奨される開始投与量は、24時間かけて送達される4032mgのレボドパ4’-一リン酸である。各患者に対するレボドパ投与量は個別化された患者の滴定によって決定されるので、これらの試験における患者は、構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグからなる医薬組成物のそれらの以前のレジメンに近い曝露をもたらすことが期待される投与量(これは、最適の臨床反応を達成するためのさらなる投与量変更のオプションを有する)で開始する。このようにして、個人化された滴定可能な投薬が、治療上の必要性に対処するための投与量範囲にわたって達成され得る。
【0206】
実施例6
健康なヒトボランティアにおけるパーキンソン病の24時間レボドパ及びカルビドパプロドラッグ連続皮下注入治療の薬物動態
この試験は、腹部に連続皮下注入された後の、構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグの組み合わせ(プロドラッグ組合せ)を含む水性医薬組成物の薬物動態を特徴付けるようにデザインされた。
【0207】
方法
該医薬組成物プロドラッグは、非盲検試験において、8人の健康なボランティア(45~75歳)に24時間皮下投与された。投与は、レボドパリン酸100mgの負荷投与と、それに続く24時間にわたるレボドパリン酸850mgの連続安定注入で構成された。該医薬組成物の全ての注入は、腹部の皮下空間に投与された。該医薬組成物の注入中及び注入後に、レボドパ及びカルビドパについてアッセイするために連続血漿サンプルを収集した。以前のDuopa第1相試験(Nyholm, D., et al. AAPS Journal 2013; 15-2: 316-329)からのレボドパとカルビドパの薬物動態データを使用して、本発明の医薬組成物とDuopaの間の薬物動態データを比較した。皮下注入部位に関連する局所有害事象(AE)を含む安全性と耐容性を、該試験をとおして評価した。該医薬組成物の投与後、最初の16時間にわたるレボドパの平均薬物動態プロフィールは、パーキンソン病患者における以前のDuodopa第1相試験(Nyholm, D., et al. AAPS Journal 2013; 15-2: 316-329)と同様である(
図15及び
図16)。
【0208】
結果
該医薬組成物の投与中及び投与後、健康なヒトボランティアにおける最初の16時間にわたるカルビドパの平均薬物動態プロフィールは、パーキンソン病患者における以前のDuodopa第1相試験(Nyholm, D., et al. AAPS Journal 2013; 15-2: 316-329)よりも変動が少ない薬物動態プロフィールを提供することが分かった(
図17及び
図18)。該医薬組成物の注入後のレボドパ及びカルビドパの薬物動態パラメータが、表20に示されている。
【0209】
【0210】
該医薬組成物の注入後、レボドパ濃度レベルの変動が少ないため、Tmaxの範囲は1~24時間であり、このことは、Cmaxがその注入中のどの時点でも起こり得ることを示している。変動度([Cmax-Cmin]/Cave)は、薬物動態の変動を定量化するためによく使用される。投与後、医薬組成物は、レボドパとカルビドパの両方について、以前に報告されたDuodopaデータ(Nyholm, D., et al. AAPS Journal 2013; 15-2: 316-329)に対して変動度が低いように見えた(表21)。
【0211】
【0212】
該試験の後で、結果を分析した。5人の被験者は、少なくとも1の有害事象を報告した。軽度の注入部位反応及び注射部位刺激が、数人の被験者で観察された。全ての有害事象は一過性であって、試験の中止を引き起こすことはなかった。注入部位で、結節の形成はなかった。
【0213】
該医薬組成物は、皮下送達経路によって、24時間にわたってレボドパ濃度レベルの変動が非常に少ない安定したレボドパ及びカルビドパ曝露を提供することができた。該医薬組成物は、有利な安全性プロフィールを有していた。
【0214】
実施例7
異なる部位に投与された構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグと構造が式(B-1)に対応するカルビドパ4’-一リン酸プロドラッグ(プロドラッグ組合せ)を含む水性医薬組成物の薬物動態並びに安全性及び耐容性を特徴付けるために、該医薬組成物を3つの注入部位(健康なボランティアの腹部、腕、及び、大腿部)に投与した。
【0215】
方法
該医薬組成物を、12人の健康なボランティア(45~75歳)の3つの皮下注入部位(腹部、腕、及び、大腿部)に無作為化クロスオーバーデザインで24時間皮下投与した。投与量は、960mgの構造が式(A-1)に対応するレボドパ4’-一リン酸プロドラッグで構成され、各注入部位で24時間にわたって定常の速度で送達された。該医薬組成物の注入の終了と該医薬組成物の次の注入の開始との間に、24時間の最小ウォッシュアウト期間が組み込まれた。該医薬組成物の注入後、レボドパ及びカルビドパについてアッセイするために連続血漿サンプルを収集した。皮下注入部位に関連する局所的な有害事象を含む安全性と耐容性は、試験をとおして評価された。
【0216】
結果
該医薬組成物の投与中及び投与後、レボドパ及びカルビドパの両方の平均PKプロフィールは、3つの皮下注入部位の間で類似しているように見えた(
図19及び
図20)。異なる皮下注入部位における該医薬組成物の注入後のレボドパ及びカルビドパのPKパラメータが、表22に示されている。
【0217】
【0218】
表22及び
図19に示されている結果は、該医薬組成物の投与後、レボドパの平均PKプロフィールが3つの皮下注入部位(腹部、腕、及び、大腿部)の間で類似していることを示している。さらに、表22及び
図20に示されている結果は、該医薬組成物の投与後、カルビドパの平均PKプロフィールが3つの皮下注入部位(腹部、腕、及び、大腿部)の間で類似していることを示している。該結果は、異なる注入部位に注入した場合、該医薬組成物がレボドパとカルビドパの同程度の曝露を有することを示している。さらに、該医薬組成物の注入は、3つの異なる注入部位にわたって有害事象プロフィールに顕著なパターンがなく、充分に耐用されることが観察された。全ての有害事象は軽度であり、試験の中止を引き起こすことはなかった。これらの結果に基づいて、患者は、該医薬組成物を投与するための代替の皮下注入部位の選択肢を有する。前述の詳細な説明及び付随する実施例は、単に例証的なものであって、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではなく、本発明の範囲は、添付されている特許請求の範囲及びそれらの等価物によってのみ定義される、ということは理解される。
【0219】
開示されている実施形態に対する様々な変更及び修正は、当業者には明白である。そのような変更及び修正、例えば、限定するものではないが、本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤又は使用方法に関する変更及び修正は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。