(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174930
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポリエステル系樹脂粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20241210BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20241210BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241210BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241210BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20241210BHJP
C08J 3/05 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C08J3/16
A61K8/85
A61Q1/00
A61Q19/00
C08G63/00
C08J3/05 CFD
C08J3/16 CFD
C08J3/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151949
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2023169272の分割
【原出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022159204
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳村 幸子
(57)【要約】
【課題】 本発明は、すべり性に優れ、ソフトな触感を有するポリエステル系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリエステル系樹脂を含み、体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~100μmであり、融解エンタルピーが20~140J/gであり、安息角が20~65度である、ポリエステル系樹脂粒子。最大融解ピーク温度が50~250℃であると好ましい。オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであると好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含み、
体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~100μmであり、融解エンタルピーが20~140J/gであり、安息角が20~65度である、
ポリエステル系樹脂粒子。
【請求項2】
最大融解ピーク温度が50~250℃である、請求項1に記載のポリエステル系樹脂粒子。
【請求項3】
オレイン酸吸油量が30~150mL/100gである、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂粒子。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂粒子を含む、化粧料。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂粒子を含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系樹脂粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子は、化粧品、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ多く使用されている。粒子に求められる機能としては、光拡散性、隠蔽性、塗布性、感触付与などがあり、粒子に求められる特性として、屈折率、分散性、すべり性、柔軟性などが挙げられる。例えば、化粧品や塗料などにおいては、感触付与などの点でソフトな感触を有する粒子が好まれる。また、近年では、環境への関心が高まる中で、環境への負荷の少ない粒子が求められており、特に生分解性を有する粒子が注目されている。
特許文献1には、環境負荷低減の粒子として、非石油原料由来のポリ乳酸からなるポリ乳酸系樹脂微粒子の製造方法およびポリ乳酸系樹脂微粒子が記載されている。また特許文献2には、生分解性を有するポリエステル系熱可塑性樹脂からなる多孔質樹脂微粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/105140号
【特許文献2】国際公開第2017/056908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの粒子は感触において満足できるものではなかった。
そこで、本発明は、すべり性に優れ、ソフトな触感を有するポリエステル系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の性質を示すポリエステル系樹脂粒子であると、すべり性に優れ、ソフトな触感を有するポリエステル系樹脂粒子が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のポリエステル系樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂を含み、体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~100μmであり、融解エンタルピーが20~140J/gであり、安息角が20~65度である。
【0006】
本発明のポリエステル系樹脂粒子は、以下の1)~3)のうちの少なくとも1つを満たすと好ましい。
1)最大融解ピーク温度が50~250℃である。
2)オレイン酸吸油量が30~150mL/100gである。
3)前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0007】
本発明の化粧料は、上記ポリエステル系樹脂粒子を含む。
本発明のコーティング組成物は、上記ポリエステル系樹脂粒子を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル系樹脂粒子は、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する。
本発明の化粧料は前記ポリエステル系樹脂粒子を含むため、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する。
本発明のコーティング組成物は前記ポリエステル系樹脂粒子を含むため、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリエステル系樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ということがある)は、ポリエステル系樹脂を含み、体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~100μmであり、融解エンタルピーが20~140J/gであり、安息角が20~65度であって、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する。
以下に本発明のポリエステル系樹脂粒子について説明する。
【0010】
[ポリエステル系樹脂粒子]
本発明の樹脂粒子は、体積基準の累積50%粒子径(D50)が1~100μmである。該粒子径(D50)が1μm未満であるとすべり性に劣り、100μm超であるとざらつきを感じ、ソフト感に劣る。該粒子径(D50)の下限は、好ましくは1.5μm、より好ましくは2.0μm、さらに好ましくは2.5μmであり、該粒子径(D50)の上限は、好ましくは50μm、より好ましくは40μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは20μmである。さらに、例えば、1~50μmが好ましく、1.5~30μmより好ましく、2~20μmが特に好ましい。
【0011】
本発明の樹脂粒子は、特に限定はないが、その体積基準の累計90%粒子径(D90)を上述の粒子径(D50)で除した値(D90/D50)が1.0~3.5であると好ましい。該数値が3.5以下であると、樹脂粒子を塗布した際に凹凸によるざらつきを抑制し、ソフトな触感が向上する傾向がある。該数値の下限は、より好ましくは1.1、さらに好ましくは1.3、特に好ましくは1.5であり、該数値の上限は、好ましくは3.0、より好ましくは2.8、さらに好ましくは2.5、特に好ましくは2.2である。さらに、例えば、1.1~3.0がより好ましく、1.3~2.8がさらに好ましく、1.3~2.5が特に好ましい。
【0012】
本発明の樹脂粒子は、特に限定はないが、その体積基準の累計10%粒子径(D10)を上述の粒子径(D50)で除した値(D10/D50)が0.1~1.0であると好ましい。該数値が0.1以上であると、すべり性及びソフトな触感が向上する傾向がある。該数値の下限は、より好ましくは0.2、さらに好ましくは0.25、特に好ましくは0.3であり、該数値の上限は、より好ましくは0.9、さらに好ましくは0.8、特に好ましくは0.7である。さらに、例えば、0.1~0.9がより好ましく、0.2~0.8がさらに好ましく、0.3~0.7が特に好ましい。なお、樹脂粒子の粒子径(D50)、粒子径(D90)及び粒子径(D10)は実施例に記載の方法によるものである。
【0013】
本発明の樹脂粒子の融解エンタルピーは20~140J/gである。該融解エンタルピーが上記範囲内であると、ポリマーが結晶性と非晶性部分のバランスに優れ、樹脂粒子が適度な硬さを有し、塗布した際にすべり性に優れる。該融解エンタルピーの下限は、好ましくは25J/g、より好ましくは30J/g、さらに好ましくは33J/g、特に好ましくは35J/gであり、該融解エンタルピーの上限は、好ましくは130J/g、より好ましくは125J/g、さらに好ましくは120J/g、特に好ましくは115J/gである。さらに、例えば、30~130J/gが好ましく、33~120J/gがより好ましく、35~115J/gが特に好ましい。なお、樹脂粒子の融解エンタルピーは、実施例に記載の方法によるものである。
【0014】
本発明の樹脂粒子の最大融解ピーク温度は、特に限定はないが、50~250℃であると好ましい。該融解ピーク温度が上記範囲内であると、ソフトな触感が向上する傾向がある。該融解ピーク温度の下限は、好ましくは55℃、より好ましくは60℃、さらに好ましくは65℃、特に好ましくは70℃であり、該融解ピーク温度の上限は、好ましくは200℃、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは165℃である。さらに、例えば、60~200℃がより好ましく、60~180℃がさらに好ましい。なお、樹脂粒子の最大融解ピーク温度は実施例に記載の方法によるものである。
本発明の樹脂粒子の融解ピークは、1つでもよく、複数であってもよい。さらに、本発明の樹脂粒子の融解ピークは、特に限定はないが、その全てが50~250℃の範囲にあると、本発明の効果を奏する点で好ましい。
【0015】
本発明の樹脂粒子の安息角は20~65度である。該安息角が上記範囲内であると、粉体が適度に堆積しやすく、粉体層が形成されやすいため、塗布した際にすべり性に優れ、ソフトな触感を得ることができる。該安息角の下限は、好ましくは25度、より好ましくは30度、さらに好ましくは33度、特に好ましくは35度であり、該安息角の上限は、好ましくは63度、より好ましくは60度、さらに好ましくは58度、特に好ましくは55度である。さらに、例えば、25~63度がより好ましく、30~63度がさらに好ましく、30~60度が特に好ましい。なお、樹脂粒子の安息角は実施例に記載の方法によるものである。
【0016】
本発明の樹脂粒子は、特に限定はないが、その崩壊角を上述の安息角で除した値(崩壊角/安息角)が0.5~1.0であると、よりソフトな触感が得られる点で好ましい。該数値の下限は、より好ましくは0.55、さらに好ましくは0.60、特に好ましくは0.65であり、該数値の上限は、より好ましくは0.98、さらに好ましくは0.95、特に好ましくは0.92である。さらに、例えば、0.55~0.98がより好ましく、0.60~0.98がさらに好ましく、0.65~0.98が特に好ましい。なお、樹脂粒子の崩壊角は実施例に記載の方法によるものである。
【0017】
本発明の樹脂粒子の真球度は、特に限定はないが、好ましくは0.7~1.0である。該真球度が0.7以上であると、すべり性が向上する傾向がある。該真球度は、より好ましくは0.8~1.0、さらに好ましくは0.85~1.0、特に好ましくは0.9~1.0である。なお、樹脂粒子の真球度は、例えば、画像解析により算出することができ、走査型電子顕微鏡等で撮影した粒子の短径を長径で除して算出することができる。この際、短径と長径の比が1であると、真球度は1となる。
【0018】
本発明の樹脂粒子の真比重は、特に限定はないが、0.8~1.8g/cm3であると、すべり性が優れる点で好ましい。該真比重の下限は、(1)0.85g/cm3、(2)0.90g/cm3、(3)0.93g/cm3、(4)0.95g/cm3、(5)0.98g/cm3、(6)1.0g/cm3の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該真比重の上限は(1)1.7g/cm3、(2)1.6g/cm3、(3)1.55g/cm3、(4)1.5g/cm3、(5)1.45g/cm3、(6)1.4g/cm3の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば、0.90~1.55g/cm3がより好ましく、1.0~1.4g/cm3がさらに好ましい。
【0019】
本発明の樹脂粒子のオレイン酸吸油量は、特に限定はないが、30~150mL/100gであると、すべり性が優れる点で好ましい。該吸油量の下限は、(1)35mL/100g、(2)40mL/100g、(3)45mL/100g、(4)50mL/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸油量の上限は、(1)130mL/100g、(2)120mL/100g、(3)110mL/100g、(4)100mL/100g、(5)95mL/100g、(6)90mL/100g、(7)85mL/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば、40~120mL/100gがより好ましく、45~100mL/100gがさらに好ましい。なお、樹脂粒子の吸油量は、実施例に記載の方法によるものである。
【0020】
本発明のポリエステル系樹脂粒子の吸水量は、特に限定はないが、20~150mL/100gであると、すべり性が優れる点で、好ましい。該吸水量の下限は、(1)25mL/100g、(2)30mL/100g、(3)35mL/100g、(4)40mL/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該吸水量の上限は(1)140mL/100g、(2)130mL/100g、(3)120mL/100g、(4)110mL/100g、(5)100mL/100g、(6)90mL/100g、(7)85mL/100gの順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば、30~120mL/100gがより好ましく、40~100mL/100gがさらに好ましい。なお、粒子の吸水量は実施例に記載の方法によるものである。
【0021】
本発明の樹脂粒子はポリエステル系樹脂を含み、ポリエステル系樹脂を主成分とする。主成分とは、樹脂粒子中に含まれる成分の中で一番含有量が多いことを示す。
【0022】
ポリエステル系樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸の重縮合物、多価アルコール、多価カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸の重縮合物、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、及びそれらの誘導体の重縮合物が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。具体的には、ポリ乳酸、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートヒドロキシカプロエート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリグリコール酸、乳酸-グリコール酸共重合体、ポリエステルエラストマー等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリエステル系樹脂は、特に限定はないが、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むと、本発明の特定の融解エンタルピーを有する樹脂粒子が得られやすく、すべり性及びソフトな触感がより向上する点で好ましく、さらに生分解性を有することもできるため、好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族多価アルコール及び脂肪族多価カルボン酸を構成成分として含む脂肪族ポリエステル系樹脂や、脂肪族オキシカルボン酸成分を構成成分として含む脂肪族ポリエステル系樹脂が好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル系樹脂の構成成分である前記多価アルコール、多価カルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸がそれぞれ脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸、及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸であれば特に限定はない。
【0024】
脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0025】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンジカルボン酸、これらの無水物等が挙げられ、1種又は2種類以上を併用してもよい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシジメチル酪酸、ヒドロキシメチル酪酸等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0026】
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリカプロラクトンブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネートカーボネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートラクテート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリヒドロキシブチレートバリレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシアシル)、ポリヒドロキシアシル、ポリ乳酸等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエステル系樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0027】
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂としては、ポリエステル系樹脂の構成成分である前記多価アルコール、多価カルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸がそれぞれ脂肪族多価アルコール、脂肪族多価カルボン酸、及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸を含み、さらに芳香族多価カルボン酸又はその誘導体を含むものであれば特に限定はない。
芳香族多価カルボン酸としては、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂の構成成分に占める芳香族多価カルボン酸由来の構成成分の割合は、生分解性の点で40ユニットmol%以下であると好ましい。これらの芳香族多価カルボン酸は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペートテレフタレート等が挙げられる。これらの脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
ポリエステル系樹脂は、特に限定はないが、重量平均分子量が5×103~1×109であると、すべり性が優れる点で好ましい。該平均分子量の下限は、(1)1×104、(2)2×104、(3)3×104、(4)5×104、(5)1×105、(6)2×105、(7)3×105の順で好ましい。一方、該平均分子量の上限は、(1)5×108(2)3×108、(3)1×108、(4)5×107、(5)3×107、(6)1×107の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば2×104~5×108がより好ましく、3×104~5×108がさらに好ましい。
【0030】
本発明の樹脂粒子に占めるポリエステル系樹脂の重量割合は、特に限定はないが、50~100重量%であると好ましい。該重量割合の下限は、(1)55重量%、(2)60重量%、(3)70重量%、(4)80重量%、(5)90重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該重量割合の上限は、(1)99.999重量%、(2)99.99重量%、(3)99.9重量%、(4)99重量%、(5)98重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば60~100重量%がより好ましく、70~100重量%がさらに好ましく、80~100重量%が特に好ましく、90~100重量%が最も好ましい。また、本発明の樹脂粒子は、本願効果を奏する点で、ポリエステル系樹脂からなるものであると好ましい。
【0031】
ポリエステル系樹脂が脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む場合、ポリエステル系樹脂に占める該ポリエステル系樹脂の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは1~100重量%である。該重量割合の下限は、(1)3重量%、(2)5重量%、(3)10重量%、(4)20重量%、(5)30重量%、(6)40重量%、(7)50重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該重量割合の上限は、99.9重量%がより好ましく、99.5重量%がさらに好ましく、99.0重量%が特に好ましい。さらに、例えば、5~100重量%がより好ましく、20~100重量%がさらに好ましい。
また、ポリエステル系樹脂に占める脂肪族ポリエステル系樹脂の重量割合が50重量%以上であると、ソフトな触感が向上する傾向があり、また生分解性を有するため、特に好ましい。
【0032】
本発明の樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂以外の樹脂(以下、その他の樹脂ということがある。)を含んでもよい。
その他の樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ゴム等の熱硬化性樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の樹脂粒子は、ポリエステル系樹脂以外に、界面活性剤、前述の樹脂以外の有機物、及び無機物から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤及びシリコーン系活性剤が挙げられ、具体的には、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、高級脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、長鎖スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩類等のアニオン界面活性剤;第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩等のカチオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンオキサイド付加アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、PEG-水添ひまし油、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、高級脂肪酸PEGグリセリル類、高級脂肪酸ソルビタン類、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリンエーテル、ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、アルキルポリグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート類等のノニオン界面活性剤;アミノ酸系、ベタイン型、水添レシチン、レシチン等の両性界面活性剤;変性ジメチコン等のシリコーン系界面活性剤等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
有機物としては、例えば、難水溶性多糖類、水溶性高分子、ワックス、オイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、アミノ酸系化合物等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
難水溶性多糖類としては、25℃における水への溶解度が0.01g/mL以下であれば特に限定はないが、例えば、セルロース、キチン、キトサン、澱粉等が挙げられる。
水溶性高分子としては、25℃における水への溶解度が0.01g/mL超であるものであれば特に限定はないが、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、マンナン、キシラン、キシログルカン、アラビアガム、タマリンドガム、ペクチン、プルラン、カゼイン、キサンタンガム、カラギナン、トラガントガム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0035】
ワックスとしては、例えば、高級アルコール、合成ワックス、パラフィン等が挙げられる。
オイルとしては、例えば、アーモンド油、オリーブ油、コメヌカ油、スクワラン、シリコーンオイル、ミネラルオイル、アルカン、安息香酸アルキル等が挙げられる。
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、セロチン酸等が挙げられる。
【0036】
脂肪酸金属塩としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カリウム、ミスチリン酸亜鉛、ミスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0037】
アミノ酸系化合物としては、例えば、N-ラウロイル-L-アルギニン、N-ラウロイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-オレイルイル-L-リジン、N-パルミトイル-L-リジン、N-ステアノイル-L-リジン、N-ヘキサノイル-L-リジン、N-ミリストノイル-L-リジン、N-カプリロイル-L-リジン、N-デカノイル-L-リジン等が挙げられる。
【0038】
無機物としては、例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、スメクタイト、アルミナシリケート、パイロフィライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、窒化ホウ素、炭化珪素、シケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化チタン、シリカ、アルミナ、雲母、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ハイドロサルタイト、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0039】
本発明の樹脂粒子は、特に限定はないが、界面活性剤及び水溶性高分子から選ばれる少なくとも1種をさらに含有し、樹脂粒子に占める界面活性剤及び水溶性高分子の重量割合の合計が0.001~10重量%であると、本発明の特定の性能を有する樹脂粒子が得られやすく、ソフトな触感が向上する点で好ましい。該合計量の下限は、(1)0.002重量%、(2)0.005重量%、(3)0.01重量%、(4)0.02重量%、(5)0.05重量%、(6)0.1重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。一方、該重量割合の上限は、(1)8重量%、(2)6重量%、(3)5重量%、(4)4重量%、(5)3重量%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい。)。さらに、例えば、0.001~8重量%がより好ましく、0.001~5重量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明の樹脂粒子は、特に限定はないが、JIS K6950:2000に準拠した測定による10日後の生分解率が1%以上であると好ましい。該生分解率の下限は、(1)3%、(2)5%、(3)10%、(4)15%、(5)20%、(6)25%、(7)30%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。
【0041】
本発明の樹脂粒子は、例えば、以下の工程1~3を含む方法(以下、粒子の製法ということがある)で製造することができる。
工程1:ポリエステル系樹脂と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る
工程2:工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る
工程3:工程2で得られた加熱分散液を冷却する
【0042】
本発明の樹脂粒子は、その製造の際に有機溶剤を使用せずに行うと、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する粒子を好適に作製できる点で好ましい。有機溶剤を使用せずに、水を使用して粒子を作成することで、粒子形成時に界面活性剤や水溶性高分子が粒子と水との界面に存在しやすく、粒子の表面性向上に寄与すると推察する。さらに、有機溶剤を使用しないことで粒子形成時に、粒子表面の極性が適度に保たれ、特定の粒子径と安息角を有するようになり、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する粒子となるとも推察する。また、界面活性剤の親油基が樹脂構造に影響を与え、特定の融解エンタルピーを有するようになり、すべり性に優れ、ソフトな触感に優れる樹脂粒子が得られると考えている。また、有機溶剤を使用しないことは、環境に優しく、好ましい。
【0043】
界面活性剤は、特に限定はないが、上述のものを使用することができる。
界面活性剤は、樹脂粒子の形状をより均一にできる点や特定の安息角を有する粒子が得られやすい点で、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を使用すると好ましく、ノニオン界面活性剤を使用するとより好ましい。
アニオン界面活性剤としては、特に限定はないが、硫酸エステル塩、スルホン酸塩から選ばれる少なくとも1種を使用すると好ましく、スルホン酸塩を使用するとより好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、特に限定はないが、多価アルコールと1価脂肪酸とのエステル化合物を使用すると好ましく、グリセリン脂肪酸エステル及び高級脂肪酸ソルビタン類から選ばれる少なくとも1種を使用するとより好ましい。
界面活性剤としては、特に限定はないが、HLB値が1~13のノニオン界面活性剤を使用すると、特定の融解エンタルピーを有しやすくなり、好ましい。該HLB値はより好ましくは1~11、さらに好ましくは1~10、特に好ましくは1.5~10である。
HLB値は、例えば、下記のグリフィン法による計算式(1)から算出することができる。
HLB=20×(親水基の分子量/全体の分子量) (1)
また、界面活性剤としてはエステル型やエステル塩型のものを使用すると、特定の粒子径や安息角を有する樹脂粒子が得られやすく、ソフト感が優れるため、好ましい。
【0044】
界面活性剤は、最終的に樹脂粒子中に含有していてもよい。界面活性剤が粒子表面付近に存在することで、より表面構造に影響を与えると考えられ、特定の安息角を有する粒子が得られやすくなる。樹脂粒子中に占める界面活性剤の重量割合は、特に限定されないが、0.001~10重量%が好ましく、重量割合の上限は7重量%がより好ましく、5重量%がさらに好ましい。一方、該重量割合の下限は、0.005重量%がより好ましく、0.01重量%がさらに好ましい。さらに、例えば、0.001~7重量%がより好ましく、0.001~5重量%がさらに好ましい。
【0045】
水溶性高分子は上述のものを使用することができ、特定の粒子径を有する樹脂粒子が得られやすい点で、4%水溶液の20℃での粘度が2~200000mPa・sである水溶性高分子であると好ましい。
水溶性高分子は、特定の粒子径を有する樹脂粒子が得られやすく、すべり性をより向上できる点でポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、から選ばれる少なくとも1つであると好ましく、ポリビニルアルコールであるとより好ましい。
【0046】
水溶性高分子は、最終的に樹脂粒子中に含有していてもよい。水溶性高分子が樹脂粒子中に存在することで、よりすべり性に優れると考えられる。樹脂粒子中に占める水溶性高分子の重量割合は、特に限定されないが、0.001~10重量%が好ましく、重量割合の上限は8重量%がより好ましく、5重量%がさらに好ましい。一方、該重量割合の下限は、0.002重量%がより好ましく、0.005重量%がさらに好ましい。さらに、例えば、0.001~8重量%がより好ましく、0.001~5重量%がさらに好ましい。
【0047】
(工程1)
工程1はポリエステル系樹脂と、界面活性剤と、水溶性高分子と水とを混合し、予備混合液を得る工程である。樹脂粒子がポリエステル系樹脂、界面活性剤及び水溶性高分子以外の他の成分を含有する場合には、本工程で他の成分を加えて、混合するとよい。
【0048】
工程1において、ポリエステル系樹脂の混合割合は、特に限定はないが、水100重量部に対して、好ましくは1~200重量部重量部である。該混合割合が上記範囲内であると、より均一な形状であり、特定の粒子径を有する樹脂粒子が得られやすく好ましい。該混合割合の下限は、より好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部、最も好ましくは10重量部である。一方、該混合割合の上限は、より好ましくは180重量部、さらに好ましくは160重量部、最も好ましくは150重量部である。さらに、例えば、5~200重量部がより好ましく、10~180重量部がさらに好ましい。
【0049】
工程1において、界面活性剤の混合割合は、特に限定はないが、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001~10重量部である。該混合割合が上記範囲内であると、本発明の特定の性能を有する樹脂粒子が得られやすく、得られる樹脂粒子のすべり性、ソフトな触感が向上する傾向があり、好ましい。該混合割合の下限は、好ましくは0.01重量部、さらに好ましくは0.05重量部、特に好ましくは0.1重量部である。該混合割合の上限は、より好ましくは7重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは3重量部である。さらに、例えば、0.001~7重量部がより好ましく、0.01~7重量部がさらに好ましい。
【0050】
工程1において、水に対する水溶性高分子の混合割合は、特に限定はないが、水100重量部に対して、好ましくは0.1~100重量部である。該混合割合が上記範囲内であると、特定の粒子径を有する樹脂粒子が得られやすく、さらに得られるポリエステル系樹脂粒子の分散性が向上する傾向がある。該割合の下限は、より好ましくは0.5重量部、さらに好ましくは1重量部、特に好ましくは2重量部である。一方、該割合の上限は、より好ましくは80重量部、さらに好ましくは70重量部、特に好ましくは60重量部である。さらに、例えば、0.5~100重量部がより好ましく、1~100重量部がさらに好ましい。
【0051】
本発明の樹脂粒子は、製造時に界面活性剤及び水溶性高分子を混合すると、水溶性高分子により製造時の液粘度が向上し、界面活性剤により粒子の均一化効率が向上するため、粒度分布の均一化および粒子の表面性に寄与すると考えられ、特定の粒子径や安息角を有する樹脂粒子が得られやすく、すべり性に優れ、ソフトな触感を有する樹脂粒子が得られる点でさらに好ましい。すべり性及びソフトな触感をより向上できる点で、界面活性剤及び水溶性高分子のそれぞれの重量割合が、上述の範囲であるとさらに好ましい。
【0052】
(工程2)
工程2は工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程である。
工程2における加熱攪拌中の圧力は、特に限定はないが、好ましくは0.1~10MPaである。該圧力が上記範囲内であると、特定の粒子径の樹脂粒子が得られる傾向があり好ましい。該圧力は加熱時の温度における水の飽和蒸気圧以上の圧力であると好ましい。
加熱温度は、特に限定はないが、好ましくは80~300℃である。該温度が上記範囲内であると、本発明の特定の性能を有する樹脂粒子が得られやすく、さらに得られる樹脂粒子の形状がより均一になる傾向があり好ましい。該温度はポリエステル系樹脂の軟化点又は融点以上の温度であると好ましく、より好ましくはポリエステル系樹脂の軟化点又は融点より5℃以上高い温度であり、さらに好ましくは10℃以上、特に好ましくは15℃以上高い温度である。軟化点又は融点以上の温度に加熱することで、界面活性剤の親油基がポリエステル系樹脂へ作用して樹脂構造へ影響を与えやすく、また、ポリエステル系樹脂と水との界面に界面活性剤と水溶性高分子が均一に存在することで、特定の粒子径や安息角、特定の融解エンタルピーを有する樹脂粒子が得られやすくなり好ましい。
また、工程2において、ポリエステル系樹脂の軟化点又は融点以上の温度に加熱し、かつ、0.1MPa以上の加圧下で攪拌を行うと、特定の粒子径と融解エンタルピーを有する樹脂粒子が得られやすく好ましい。
【0053】
攪拌方法は特に限定はないが、混合物が混合する程度に攪拌されていればよい。
加熱時間は特に限定はないが、好ましくは1~30時間である。該時間が1時間以上であると、より均一に分散され、特定の粒子径や融解エンタルピーを有する樹脂粒子が得られやすく、好ましい。該時間が30時間以下であると、生産効率が向上する傾向がある。該時間の下限は、より好ましくは2時間、さらに好ましくは3時間、最も好ましくは5時間である。加熱時間の上限は、より好ましくは25時間、さらに好ましくは20時間、最も好ましくは15時間である。さらに、例えば、3~20時間がより好ましく、3~15時間がさらに好ましい。
【0054】
(工程3)
工程3は工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程である。工程2の加熱分散液を冷却することで、樹脂粒子の分散液を得ることができる。
冷却方法は、特に限定されないが、工程2で得られた加熱分散液を5~50℃に冷却すると好ましい。冷却速度は特に限定はないが、急冷してもよく、空気冷却等により自然冷却してもよい。
工程3においては、工程2の攪拌速度で攪拌してもよく、攪拌を停止してもよい。
冷却後の分散液は、樹脂粒子を含む水分散液である。
【0055】
本発明の樹脂粒子の使用形態は、分散液でもよく、湿粉でもよく、乾燥粉体でもよい。
湿粉は、例えば、遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等を用いて、工程3の分散液を脱水処理して得ることができる。
工程3の分散液は、液粘度を下げる措置を実施した後に脱水処理を行ってもよい。液粘度を下げる方法としては、特に限定はないが、例えば、水を追加して希釈する方法、水溶性成分を塩析する方法、水溶性成分を酸化剤や酵素等により分解する方法等が挙げられる。
【0056】
乾燥粉体は、上記湿粉を、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末を得ることができる。また、工程3で得られた分散液を噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉末を得ることもできる。
乾燥粉末は、気流分級、スクリーン分級などで、分級してもよい。
【0057】
[ポリエステル系樹脂粒子の用途]
本発明の樹脂粒子は、化粧料、塗料、光学用途、樹脂、建材などへ使用することが可能である。なかでも、本発明の樹脂粒子は、すべり性に優れることから、化粧料やコーティング組成物へ好適に用いることができる。また、ソフト感を有するため、化粧料に配合した場合に、心地よい感触を与えることができる。
【0058】
化粧料に用いる場合、公知の化粧料成分と組み合わせて使用することができる。化粧料成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、アルコール類、水、保湿剤、ゲル化剤、増粘剤、本発明のポリマー粒子以外の粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、機能性成分等が挙げられる。本発明のポリマー粒子を配合した化粧料の形態としては、粉末状、固形状、クリーム状、ゲル状、液状、ムース状、スプレー状等が挙げられる。
化粧料全体に占めるポリマー粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは0.5~30重量%、さらに好ましくは1~20重量%である。
【0059】
コーティング組成物に用いる場合、公知のコーティング成分と組み合わせて使用することができる。
コーティング組成物全体に占めるポリマー粒子の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【実施例0060】
以下に、本発明のポリエステル系樹脂粒子の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例及び比較例で挙げた樹脂粒子について、次に示す要領で物性を測定し、さらに評価を行った。
【0061】
(ポリエステル系樹脂粒子の粒子径(D10)、粒子径(D50)、粒子径(D90)の測定)
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)、日機装株式会社製)を使用し、湿式測定法により超音波を120秒照射し、測定を実施した。
体積基準の累積粒子径とは、全粒子を体積順に小さい側から積算して累積した分布の所定の比率に対する粒子の直径を意味する。
【0062】
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置は、原理上、体積基準の累積粒子径の分布を測定しており、測定装置のソフトウェアで累積10%粒子径(D10)、体積基準の累積50%粒子径(D50)、体積基準の累積90%粒子径(D90)、の測定値を確認できる。
【0063】
(ポリエステル系樹脂粒子の融解エンタルピー及び最大融解ピーク温度の測定)
測定装置として、示差走査熱量計(Jada DSC LAB SYSTEC、ParkinElmer社製)を使用し、窒素雰囲気下、10℃/分で30℃から250℃まで昇温し、融解ピーク温度および融解エンタルピーを算出した。
吸熱ピークトップ温度を融解ピーク温度とし、複数の吸熱ピークが存在する場合は、最も大きな吸熱ピークとなる温度を樹脂粒子の最大融解ピーク温度とした。
融解エンタルピーは、全ての吸熱ピークのエンタルピーを合計したものを、樹脂粒子の融解エンタルピーとした。
【0064】
(ポリエステル系樹脂粒子の安息角、崩壊角の測定)
測定装置として、多機能型粉体物性測定器(MULTITESTERMT-1001、セイシン企業社製)を使用し、室温25℃、湿度40%にて測定を実施した。
【0065】
(ポリエステル系樹脂粒子の真球度の測定)
走査型電子顕微鏡にて1000倍で粒子を観察し、任意の30個の粒子について短径と長径を測定した。各粒子について短径を長径で除した値を算出し、30個の粒子の算出した値の平均値を真球度とした。例えば、短径と長径の比が1の場合、真球度は1となる。
【0066】
(ポリエステル系樹脂粒子の吸水量、吸油量の測定)
JIS-K5101吸油量の測定法に基づき、吸水量測定はイオン交換水を、吸油量測定はオレイン酸を用いて測定した。
【0067】
(粒子の評価)
10cm×5cmの黒色の人工皮革(商品名サプラーレ イデアテックジャパン社製)の端に粒子を0.05g量り取り、指で一方向に塗り広げ、粒子のすべり性、ソフト感について、以下の基準で評価した。
<すべり性>
◎:なめらかに塗布できる。
〇:やや付着性があるが、なめらかに塗布できる。
△:付着性が強く、すべり性に劣る。
×:塗布できない。
<ソフト感>
◎:塗布する際に柔らかさを感じる。
〇:塗布する際にやや柔らかさを感じる。
△:塗布する際にやや硬さを感じる。
×:塗布する際に硬さを感じる。
【0068】
〔実施例1〕
水300重量部とポリブチレンサクシネート100重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)1重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子1を得た。粒子1に占める界面活性剤の重量割合は0.5重量%、ポリビニルアルコールの重量割合は0.3重量%であった。得られた粒子1の物性を表1に示す。
【0069】
〔実施例2〕
水300重量部と、ポリヒドロキシアルカノエート80重量部とポリブチレンサクシネート20重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)3重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を160℃まで昇温し、圧力1.0MPaにて、毎分400rpmで10時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、多量の水で洗浄後、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子2を得た。粒子2に占める界面活性剤の重量割合は0.8重量%、ポリビニルアルコールの重量割合は0重量%であった。得られた粒子2の物性を表1に示す。
【0070】
〔実施例3〕
水300重量部とポリブチレンサクシネートアジペート100重量部とソルビタンモノステアレート(HLB値;4.7)1重量部とフュームドシリカ1重量部とポリビニルアルコール20重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を120℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで3時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液に酸化剤を添加し、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子3を得た。粒子3に占める界面活性剤の重量割合は0.7重量%、ポリビニルアルコールの重量割合は2.0重量であった。得られた粒子3の物性を表1に示す。
【0071】
〔実施例4〕
水200重量部とポリブチレンサクシネート50重量部とポリブチレンサクシネートアジペート50重量部とソルビタンモノラウレート(HLB値;8.6)0.1重量部とスルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム0.5重量部とポリビニルアルコール30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力1.0MPaにて、毎分200rpmで5時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液を多量の水で洗浄後、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子4を得た。粒子4に占める界面活性剤の重量割合は0重量%、ポリビニルアルコールの重量割合は0.01重量%であった。得られた粒子4の物性を表1に示す。
【0072】
〔実施例5〕
水300重量部と、ポリブチレンアジペートテレフタレート100重量部とソルビタンセスキオレート(HLB値;3.7)2重量部とポリビニルアルコール30重量部とを混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を140℃まで昇温し、圧力1.0MPaにて、毎分400rpmで5時間攪拌した後、50℃まで冷却し、樹脂粒子の水分散液を得た。
水分散液を多量の水で洗浄後、ろ過により脱水し、50℃で乾燥、分級し、粒子5を得た。粒子5に占める界面活性剤の重量割合は0重量%、ポリビニルアルコールの重量割合は0%であった。得られた粒子5の物性を表1に示す。
【0073】
〔比較例1〕
ポリ乳酸粒子(商品名ECOBEADS D-5 大東化成工業製)について同様に測定、評価を行った。物性を表1に示す。
【0074】
〔比較例2〕
水20重量部とポリブチレンサクシネート10重量部と3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール30重量部と第三リン酸カルシウム10%水溶液35重量部とラウリル硫酸ナトリウム0.04重量部を混合し、1Lの耐圧容器に仕込み密閉した。容器内部温度を120℃まで昇温し、圧力0.5MPaにて、毎分400rpmで1時間攪拌した後、30℃まで冷却し、粒子の分散液を得た。分散液に20%塩酸を14重量部加え、20分攪拌後、ろ過により脱水し、多量の水で洗浄後、50℃で乾燥、分級し、粒子を得た。得られた粒子の評価結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
実施例1~5の樹脂粒子は、すべり性に優れ、ソフトな触感を有していた。また、人の皮膚に近い感触の柔らかい素材である人工皮革において、すべり性や塗布性に優れ、ソフトな触感であることが確認できた。
一方、比較例1~2の粒子は融解エンタルピーが範囲内でなく、硬い感触であり、またすべり性に劣っていた。