(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174959
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】階段構造光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024153647
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2023002173の分割
【原出願日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】16/179,480
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ディー フック
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン サックス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光の複数の波長を検知する場合、光の複数の波長の、光の各波長が異なるセンサに向けられることを確実にする、フィルタが提供され得る。
【解決手段】マルチスペクトルフィルタ100は基板110を含んでもよい。マルチスペクトルフィルタは、基板上に配置された階段状の媒体120を含んでもよい。マルチスペクトルフィルタは、階段状の媒体上に配置された第1のミラー130-1を含んでもよい。第1のミラーは、階段状のミラー表面を形成してもよい。階段状のミラー表面の各段は、フィルタのチャネルのセットに対応してもよい。フィルタは、階段状のミラー表面に配置されたスペーサ140を含んでもよい。フィルタは、スペーサの別の表面に配置された第2のミラー130-2を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタであって、
基板と、
前記基板上に配置された階段状媒体と、
前記階段状媒体上に配置された第1のミラーであって、
該第1のミラーは階段状ミラー表面を形成し、
前記階段状ミラー表面の各段は、前記フィルタのチャネルのセットの一つのチャネル
に対応する、前記第1のミラーと、
前記階段状ミラー表面に配置されたスペーサと、
前記スペーサの別の表面に配置された第2のミラーと、を備えるフィルタ。
【請求項2】
前記階段状媒体が一次元で階段状である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記階段状媒体が二次元で階段状である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記フィルタの前記チャネルのセットの波長範囲は、約380ナノメートル(nm)か
ら780nmの間である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタの前記チャネルのセットの波長範囲は、約750ナノメートル(nm)か
ら1100nmの間である、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記階段状媒体は、前記フィルタの波長範囲で70%を超える透過率と関連し、
酸化物ベースの媒体、
半導体ベースの媒体、
誘電体ベースの媒体、
ポリマーベースの媒体、
窒化物ベースの媒体、
リン化物ベースの媒体、または
炭化物ベースの媒体のうちの1つである、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記スペーサは、1.7を超える屈折率と関連し、
水素化シリコンベースのスペーサ、
酸化物ベースのスペーサ、
ゲルマニウムベースのスペーサ、または
シリコンゲルマニウムベースのスペーサのうちの1つである、請求項1に記載のフィル
タ。
【請求項8】
前記スペーサは、
気体状スペーサ、
ポリマースペーサ、または
液体スペーサのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記階段状媒体が柱セットを形成し、
前記柱のセットのうちの少なくとも1つの柱は、非アクティブなチャネルを形成する、請
求項1に記載のフィルタ。
【請求項10】
複数のチャネルに関連付けられた複数のセンサ素子を備えるセンサ素子アレイと、
可変スペーサフィルタと、を備えるシステムであって、
前記可変スペーサフィルタは、
第1の基板と、
前記第1の基板上に配置された階段状媒体と、
前記階段状媒体上に配置された第1のミラーであって、
前記第1のミラーは階段状ミラー表面を形成し、
前記階段状ミラー表面の各段は、前記フィルタのチャネルのセットの一つのチャネ
ルに対応する、前記第1のミラーと、
第2の基板上に配置され、前記第1のミラーに位置合わせ可能な第2のミラーであっ
て、
空洞が前記第1のミラーと前記第2のミラーを分離し、
前記第2のミラーは、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間の間隔が可変で
あるように、第1のミラーに対して平行移動可能である、前記第2のミラーと、を備える
システム。
【請求項11】
前記空洞がスペーサで満たされており、
前記スペーサは、気体スペーサ材料または液体スペーサ材料であり、
前記スペーサは、前記第2のミラーが前記第1のミラーに対して平行移動したときに前
記スペーサが前記空洞を満たすように制約されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記チャネルのセットのうちの1つ以上のチャネルは、前記第1のミラーに対して平行
移動する前記第2のミラーに基づいて調整可能である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記空洞が、第1のスペーサ材料によって少なくとも部分的に充填され、第2のスペー
サ材料によって少なくとも部分的に充填され、
前記第1のスペーサ材料と前記第2のスペーサ材料は、
2つの固体スペーサ材料、
固体スペーサ材料と液体スペーサ材料、
固体スペーサ材料と気体スペーサ材料、または
液体スペーサ材料と気体スペーサ材料、のうちの一つである、
請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のミラーに対して前記第2のミラーを平行移動させる平行移動デバイスをさら
に含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のミラーに対して前記第2のミラーを角度付ける複数の平行移動デバイスをさ
らに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
マルチチャネルフィルタであって、
階段状構造を形成する媒体と、
階段状構造上に配置され、階段状ミラー構造を形成する、第1のミラーであって、
前記階段状ミラー構造の各段は、前記マルチチャネルフィルタの波長チャネルを形成
する前記第1のミラーと、
前記第1のミラー上に配置されたスペーサであって、
前記スペーサの第1の表面は、前記第1のミラーに対して配置され、階段状表面を形
成し、前記スペーサの第2の表面は第1のミラーの反対側に位置し、平坦な表面を形成す
る前記スペーサと、
前記スペーサの前記第2の表面上に配置され、マルチチャネルフィルタ用の平面ミラー
を形成する、第2のミラーと、を備える、マルチチャネルフィルタ。
【請求項17】
前記媒体は、フォトリソグラフィ手順を使用して形成される、請求項16に記載のマル
チチャネルフィルタ。
【請求項18】
前記スペーサは、単一の配置手順で配置される、請求項16に記載のマルチチャネルフ
ィルタ。
【請求項19】
前記第1のミラーまたは前記媒体は、前記スペーサの一部を除去するためのエッチスト
ップである、請求項16に記載のマルチチャネルフィルタ。
【請求項20】
前記媒体の前記階段状構造は、
リフトオフ手順、
エッチング手順
モールディング手順、
キャスト手順、
マシニング手順、
スタンピング手順、または
スクレイピング手順のうちの少なくとも1つによって形成される、請求項16に記載の
マルチチャネルフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光送信機は、対象物に向けて発光し得る。例えば、ジェスチャ認識システムでは、光送
信機は近赤外線をユーザーに向けて送信してよく、近赤外線はユーザーから光受信機に向
けて反射されてよい。この場合、光受信機は、近赤外線に関する情報を取得してもよく、
その情報は、ユーザーによって実行されているジェスチャを識別するために使用されても
よい。別の例では、可視光の異なる波長に関する情報などの可視光に関する情報を取得し
て、対象物を撮像し得る。
【0002】
しかし、関心波長の光が対象に向かって伝播する間および/または対象からの光が光受
信機に向かって反射する間に、関心波長と共に環境光が導入され得る。例えば、光受信機
が対象から反射された近赤外線を受信する場合、光受信機は(例えば、電球や太陽などの
別の光源から)可視光をも受信し得る。したがって、光受信機は、環境光をフィルタリン
グし、光の1つ以上の波長が光受信機に向かって通過することを可能にするために、バン
ドパスフィルタなどの光学フィルタに光学的に結合され得る。追加としてまたは代替とし
て、光の複数の波長を検知する場合、光の複数の波長の、光の各波長が異なるセンサに向
けられることを確実にするために、フィルタが提供され得る。
【0003】
マルチスペクトルセンサデバイスは、光受信機であり得、光の複数の波長に関する情報
を取得するために利用され得る。マルチスペクトルセンサデバイスは、情報を取得し、マ
ルチスペクトルフィルタに結合されるセンサ素子のセット(例えば、光学センサ、スペク
トルセンサ、および/またはイメージセンサ)を含み得る。たとえば、センサ素子のアレ
イを使用して、複数の周波数に関連する情報を取得してもよく、マルチスペクトルフィル
タは、各センサ素子に、異なる周波数に対応する光を向けてよい。場合によっては、セン
サ素子アレイの各センサ素子をカバーするために単一のバイナリマルチスペクトルフィル
タを配置してもよく、センサ素子アレイ用のチャネルセットを形成してもよい。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの可能な実施形態によれば、フィルタは基板を含んでもよい。フィルタは、基
板上に配置された階段状の媒体を含んでもよい。フィルタは、階段状の媒体上に配置され
た第1のミラーを含んでもよい。第1のミラーは、階段状のミラー表面を形成してもよい
。階段状ミラー表面の各段は、フィルタにおける、チャネル、チャネルのセットに対応し
てもよい。フィルタは、階段状ミラー表面に配置されたスペーサを含んでもよい。フィル
タは、スペーサの別の表面に配置された第2のミラーを含んでもよい。
【0005】
いくつかの可能な実施形態によれば、システムは、複数のチャネルに関連した複数のセ
ンサ素子を備えるセンサ素子アレイを含んでもよい。システムは可変スペーサフィルタを
含んでもよい。可変スペーサフィルタは、第1の基板を含んでもよい。可変スペーサフィ
ルタは、第1の基板上に配置された階段状媒体を含んでもよい。可変スペーサフィルタは
、階段状媒体上に配置された第1のミラーを含んでもよい。第1のミラーは、階段状ミラ
ー表面を形成してもよい。階段状ミラー表面の各段は、フィルタのチャネル、チャネルの
セットに対応してもよい。可変スペーサフィルタは、第2の基板上に配置され、第1のミ
ラーに位置合わせ可能な第2のミラーを含んでもよい。空洞は、第1のミラーと第2のミ
ラーを分離してもよい。第2のミラーは、第1のミラーと第2のミラーとの間の間隔が可
変となるように、第1のミラーに対して平行移動可能であってもよい。
【0006】
いくつかの可能な実施形態によれば、マルチチャネルフィルタは、階段状構造を形成す
るための媒体を含んでもよい。マルチチャネルフィルタは、階段状構造上に配置され、階
段状ミラー構造を形成する第1のミラーを含んでもよい。階段状ミラー構造の各段は、マ
ルチチャネルフィルタの波長チャネルを形成してもよい。マルチチャネルフィルタは、第
1のミラー上に配置されたスペーサを含んでもよい。スペーサの第1の表面は、第1のミ
ラーに対して配置され、階段状の表面を形成し、スペーサの第2の表面は、第1のミラー
の反対側にあり、平坦な表面を形成する。マルチチャネルフィルタは、スペーサの第2の
表面上に配置されマルチチャネルフィルタ用の平坦なミラーを形成する、第2のミラーを
含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図2】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタのフィルタチャネルの応答バランシングの例示的な実施形態の図である。
【
図3A】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図3B】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図3C】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図3D】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図4】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタを製造するための例示的なプロセスの図である。
【
図5A】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5B】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5C】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5D】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5E】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5F】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5G】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5H】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5I】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5J】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図5K】
図4における例示的プロセスに関連するマルチスペクトルフィルタの例示的な実施形態の図である。
【
図6】本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタを含むセンサシステムの例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施例の詳細な説明は、添付の図面を参照するものである。異なる図面の同じ参
照番号は、同一または類似の要素を特定する場合がある。
【0009】
センサ素子(例えば、光学センサ)は、電磁周波数セットに関する情報(例えば、スペ
クトルデータ)を取得するために、光学センサデバイスに組み込まれてもよい。例えば、
光学センサデバイスは、イメージセンサ、マルチスペクトルセンサ、および/またはその
他の光のセンサ測定を実行し得るものを含んでもよい。
光センサデバイスは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術、電荷結合素子(CCD
)技術および/またはその他の1つ以上のセンサ技術を利用してもよい。光学センサデバ
イスは、それぞれ異なる周波数の光に関する情報を取得するように構成された複数のセン
サ素子(例えば、センサ素子のアレイ)を含んでもよい。
【0010】
センサ素子は、センサ素子への光をフィルタリングするフィルタに関連付けられてもよ
い。例えば、センサ素子は、リニアバリアブルフィルタ(LVF)、サーキュラーバリア
ブルフィルタ(CVF)、ファブリ・ペローフィルタおよび/またはその他と位置合わせ
され、センサ素子に向けられた光の一部がフィルタリングされてもよい。ファブリ・ペロ
ーフィルタなどのバイナリフィルタ構造の場合、バイナリフィルタ構造の反射器(たとえ
ばミラー)の間にスペーサを配置してもよい。反射器の層、スペーサの層および/または
その他における、屈折率、厚さおよび/またはその他の構成により、バイナリフィルタ構
造を構成してチャネルのセットを構成することが可能であり得る。チャネルは、特定の波
長範囲の光をセンサ素子アレイのセンサ素子に向けるフィルタの一部であってもよい。こ
のようにして、センサ素子アレイは、光の複数の異なる波長に関する情報を取得し得る。
【0011】
しかしながら、選択された屈折率、スペーサの厚さおよび/またはその他に、少なくと
も部分的に基づいて構成されたチャネルの固定セットは、センサ素子アレイが波長の固定
セットの測定を行うことを制限する場合がある。したがって、マルチチャネルフィルタと
も呼ばれるバイナリマルチスペクトルフィルタが、対象の波長の光を取得するように構成
されていることを確かなものとするために、バイナリマルチスペクトルフィルタは、閾値
を超える量のチャネルと、センサ素子とで設計されてもよく、それに応じて、センサ素子
アレイは、閾値を超える量のセンサ素子を含んでもよい。これにより、バイナリマルチス
ペクトルフィルタを使用する際の柔軟性を確保するために、サイズおよび/またはコスト
が過剰になる場合がある。
【0012】
さらに、いくつかのバイナリマルチスペクトルフィルタは、異なるスペーサ厚を使用し
て、異なる波長範囲で異なるチャネルを形成する。これらのバイナリマルチスペクトルフ
ィルタでは、基板上に直接配置される第1平坦ミラーの上部にスペーサ材料の複数の層を
配置することにより、異なるスペーサ厚が形成され得る。この場合、スペーサ材料の複数
の層が配置されて、階段状構造のスペーサが形成され、第2のミラーがスペーサの階段状
構造上に配置される。しかし、スペーサ材料の複数の層を配置すると、不完全性が生じる
可能性があり、バイナリマルチスペクトルフィルタの光学性能が低下する可能性がある。
たとえば、スペーサ材料に水素化シリコンが使用される場合、水素化シリコンの各層の表
面は、層の配置間で部分的に二酸化シリコンに酸化され得、透過率の低下、角度シフトの
増加、および/またはその他を引き起こし得る。
【0013】
本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、改善されたスペーサを有するマルチスペ
クトルフィルタアレイを提供する。たとえば、バイナリマルチスペクトルフィルタには、
基板と第1のミラーとの間に配置された階段状媒体が含まれてよく、第1のミラーには階
段状表面と、ミラーの階段状表面に配置されたモノリシックスペーサと、モノリシックス
ペーサの平坦表面に配置された第2のミラーとが設けられる。この場合、複数のスペーサ
層を積み重ねて階段状構造を構築するのではなく、単一の手順でスペーサを形成すること
に基づいて、表面酸化などの欠陥を回避してもよく、それにより光学性能を改善し得る。
例えば、モノリシックスペーサは、透過率の改善、角度シフトの低減および/またはその
他を可能にし得る。
【0014】
さらに、本明細書で説明されるいくつかの実施形態は、第2のミラーがスペーサ上に直
接配置され、固定位置に配置されるのではなく、第2のミラーが第1のミラーに対して移
動可能であってもよい。例えば、第2のミラーは、第1のミラーに対して平行移動可能で
あってもよく(すなわち、第1のミラーまたは第2のミラーのいずれか、もしくは第1の
ミラーと第2のミラーの両方を移動させてもよい)、それにより、スペーサによって形成
される第1のミラーと第2のミラーとの間にギャップを設けることを可能にし、第2のミ
ラーが移動するときに厚さが変化する。このようにして、一連のチャネルの波長範囲を動
的に再構成してもよく、これにより一連のチャネルに合わせたセンサ素子で取得できるス
ペクトル帯域の量を増やすことができる。さらに、このように、特定のスペクトル範囲を
カバーするためのマルチスペクトルフィルタのチャネルの量は、ミラー間のギャップが固
定されたマルチスペクトルフィルタに比べて減少し、それによってサイズの縮小、コスト
の削減および/またはその他が達成される。
【0015】
図1は、本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタ100の例示的な実施形態の
図である。
図1に示されるように、マルチスペクトルフィルタ100(例えば、バイナリ
構造の光学フィルタアレイ)は、基板110、媒体120、第1のミラー130-1、第
2のミラー130-2、およびスペーサ140を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、基板110は、光学センサデバイスに関連付けられ得る。例
えば、基板110は、情報(例えば、スペクトルデータ)を取得するためのセンサ素子の
アレイを含んでもよい。追加としてまたは代替として、基板110はセンサ素子を含まず
、マルチスペクトルフィルタ100は別の基板上に配置されたセンサ素子に位置合わせさ
れてもよい。追加としてまたは代替として、マルチスペクトルフィルタ100は、基板1
10なしで設計されてもよい。例えば、マルチスペクトルフィルタ100は、自由空間に
位置し、マルチスペクトルフィルタ100の一部ではない光学センサデバイスの基板上、
および/または他のものに配置されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、マルチスペクトルフィルタ100は特定のスペクトル範囲に
関連付けられてもよい。例えば、マルチスペクトルフィルタ100は、可視スペクトル範
囲、近赤外(NIR)スペクトル範囲、中赤外(MIR)スペクトル範囲および/または
その他の複数のチャネルに関連付けられてもよい。この場合、マルチスペクトルフィルタ
100は、約300ナノメートル(nm)から2500nm、360ナノメートル(nm
)から2500nm、約600nmから約2000nm、約350nmから約750nm
、380nmから約780nm、約750nmから約1500nm、750nmから約1
100nm、900nmから約2500nm、約900nmから約1700nm、約90
0nmから約1500nm、および/またはその他のスペクトル範囲と関連付けられても
よい。いくつかの実施形態では、マルチスペクトルフィルタ100は、8チャネル以上、
16チャネル以上、32チャネル以上、64チャネル以上、128チャネル以上、256
チャネル以上および/またはその他の、閾量のチャネルを含むことができる。
【0018】
図1にさらに示されるように、媒体120は、マルチスペクトルフィルタ100のため
のチャネルのセットを形成し得る階段状構造に関連付けられ得る。例えば、本明細書でよ
り詳細に説明するように、フォトリソグラフィ手順を使用して階段状構造を形成すること
により、媒体120を形成してもよい。いくつかの実施形態では、図示のように、媒体1
20は単一の軸に沿って階段状になっている(すなわち、一次元で階段状になっている)
場合がある。例えば、媒体120は、単一の軸に沿って延在する8つの異なるチャネルの
セットを形成するために階段状にされてもよい。いくつかの実施形態では、媒体120は
、複数の軸に沿って階段状になっている(すなわち、2次元で階段状になっている)場合
がある。例えば、媒体120は、単一の軸に直交して階段状となり、合計64個の異なる
チャネルを形成し得る。いくつかの実施形態では、媒体120は、1つ以上の繰り返され
るチャネルを含み得る。例えば、図示されるように、媒体120によって形成されるチャ
ネル7は、マルチスペクトルフィルタ100の端部に配置され得、マルチスペクトルフィ
ルタ100の構造的安定性を提供し得る。いくつかの実施形態において、媒体120は1
つ以上のチャネルを非アクティブにし得る。例えば、チャネル7を形成する媒体120の
柱と位置合わせされた第1のミラー130-1および第2のミラー130-2の一部は、ス
ペーサ140の一部を挟まないことがある。これにより、チャネル7が非アクティブにな
る可能性がある(ただし、構造的なサポートのために残る)。追加としてまたは代替とし
て、スペーサ140の一部を第1のミラー130-1および第2のミラー130-2で挟ん
で、チャネル7をアクティブチャネルにしてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、媒体120は特定の材料を使用して形成され得る。例えば、
媒体120は、マルチスペクトルフィルタ100がスペクトルデータを取得する波長範囲
を、透過する材料から形成されてもよい。この場合、材料は、タンタル系媒体材料、ニオ
ブ系媒体材料、二酸化ケイ素系媒体材料、酸化物系媒体材料、III-V族半導体系媒体
材料、リン化ガリウム系媒体材料、ゲルマニウム系媒体材料、ゲルマニウムシリコン系媒
体材料、誘電体系媒体材料、ポリマー系媒体材料、窒化物系媒体材料、リン化物系媒体材
料、炭化物系媒体材料、それらの組み合わせおよび/またはその他を含んでもよい。
【0020】
図1にさらに示すように、第1のミラー130-1および第2のミラー130-2は、ス
ペーサ140を挟んでもよい。言い換えると、スペーサ140は、第1のミラー130-
1および第2のミラー130-2を一組の距離で隔ててもよく、および/または、スペー
サ140の面は、第1のミラー130-1および第2のミラー130-2によって囲まれて
もよい。この場合、一組の距離は、異なるチャネルを形成してもよい。例えば、チャネル
0に位置合わせされた第1のミラー130-1および第2のミラー130-2の第1の部分
は、第1の距離だけ分離されてもよく、光の第1の波長帯域を通過する第1のチャネルを
形成してもよい。同様に、チャネル1に位置合わせされた第1のミラー130-1および
第2のミラー130-2の第2の部分は、説明されるように、第2の距離だけ離間されて
もよく、結果として、媒体120は階段状構造を有し、スペーサ140に階段状構造をも
たらし、本明細書でより詳細に説明されるように、光の第2の波長帯域を通過する第2の
チャネルを形成してもよい。この場合、第1チャネルは第1センサ素子に位置合わせされ
、第1スペクトル範囲に関するスペクトルデータを取得するための第1コンポーネントフ
ィルタを形成してもよく、第2チャネルは第2センサ素子に位置合わせされ、2番目のス
ペクトル範囲に関するスペクトルデータを取得する第2コンポーネントフィルタを形成し
てもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、ミラー130は特定の材料に関連付けられ得る。例えば、ミ
ラー130は、一組の金属ミラー層(例えば、銀)、一組の誘電体ミラー層(例えば、交
互の水素化シリコン層と二酸化ケイ素層)などを含み、および/または光源からマルチス
ペクトルフィルタ100に関連付けられたセンサ素子に向かう光の一部を方向付ける。い
くつかの実施形態では、ミラー130は、マルチスペクトルフィルタ100の各チャネル
に関連付けられたセンサ素子アレイの各センサ素子と位置合わせしてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、スペーサ140は、本明細書でより詳細に説明されるように
、モノリシックに形成されたスペーサであり得る。例えば、スペーサ140は、第1のミ
ラー130-1との界面におけるスペーサ140の第1の表面が階段状表面で、および第
2のミラー130-2との界面におけるスペーサ140の第2の表面が平坦な表面である
ように、第1のミラー130-1の階段状表面に材料を配置することによって形成され得
る。いくつかの実施態様では、スペーサ140は、マルチスペクトルフィルタ100が特
定の波長範囲、透過率(例えば、50%超、70%超、90%超、95%超、99%超、
99.9%超、99.99%超など)、および/またはその他の特性を有するような特定
の材料から形成されてもよい。例えば、スペーサ140は、水素化シリコンベーススペー
サ、酸化物ベーススペーサ、ゲルマニウムベーススペーサ、シリコンゲルマニウムベース
スペーサ、ポリマーベーススペーサ、それらの組み合わせ、および/またはその他とする
ことができる。いくつかの実施形態では、スペーサ140は、1.5より大きい屈折率、
1.7より大きい屈折率、2.5より大きい屈折率、3.0より大きい屈折率、3.5よ
り大きい屈折率および/またはその他の屈折率を有し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、スペーサ140は、非固体スペーサ材料を含んでもよい。例
えば、スペーサ140は、スペーサ140のサイズ(すなわち、第1のミラー130-1
と第2のミラー130-2との距離)を、本明細書でより詳細に説明するように拡張また
は縮小することを可能にするために、気体材料(例えば、空気または別の気体材料)また
は液体材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、スペーサ140は複数のスペー
サ材料を含んでもよい。例えば、スペーサ140は、スペーサ140の第1の部分を形成
し第1のミラー130-1を覆う固体スペーサと、スペーサ140の第2の部分を形成し
第2のミラー130-2を第1のミラー130-1に対して平行移動させることを可能と
する液体スペーサとを含み得る。同様に、スペーサ140は、第1のミラー130-1を
覆う第1固体スペーサ、第2のミラー130-2を覆う第2固体スペーサ、および第2の
ミラー130-2を第1のミラー130-1に対して平行移動させることを可能にするため
に第1固体スペーサと第2固体スペーサの間に配置される第3液体スペーサを含み得る。
このようにして、階段状構造を有することに基づいて、スペーサ140は、マルチスペク
トルフィルタ100の異なる部分が異なる波長帯域の光を通過させて異なるチャネルを形
成することを可能にする。さらに、材料の複数の層なしで、または材料の層の閾値未満の
量で、形成されることに基づいて、スペーサ140は、スペーサ140内の表面酸化の閾
値未満の量など、欠陥の閾値未満に関連付けられ得、それにより、マルチスペクトルフィ
ルタ100の光学性能を改善する。
【0024】
いくつかの実施形態では、例えば、媒体120、第1のミラー130-1、第2のミラ
ー130-2、スペーサ140および/またはその他を形成する層は、高屈折率材料の層
のセット(H層)を含み得る。例えば、シリコン層、水素化シリコン層、シリコンゲルマ
ニウム(SiGe)層、水素化ゲルマニウム層、水素化シリコンゲルマニウム層および/
またはその他の層などである。いくつかの実施形態では、例えば、媒体120、第1のミ
ラー130-1、第2のミラー130-2、スペーサ140および/またはその他を形成
する層は、低屈折率材料のセット(L層)を含み得る。例えば、二酸化ケイ素層、窒化ケ
イ素層、五酸化タンタル(Ta2O5)層、五酸化ニオブ(Nb2O5)層、二酸化チタ
ン(TiO2)層、酸化アルミニウム(Al2O3)層、酸化ジルコニウム(ZrO2)
層、酸化イットリウム(Y2O3)層、窒化ケイ素(Si3N4)層、それらの組み合わ
せ、および/またはその他である。いくつかの層は、シリコンゲルマニウムなどの特定の
材料として説明されてもよいが、いくつかの層は、(少量の)蛍光体、ホウ素、窒化物お
よび/またはその他を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、例えば、媒体120、第1のミラー130-1、第2のミラ
ー130-2、スペーサ140および/またはその他を形成する層は、2層から200層
の範囲の層における交互の高屈折率および低屈折率層などの、特定の量の層に関連付けら
れ得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の層は、スパッタリング手順、フォトリソグ
ラフィ手順、エッチング手順、リフトオフ手順、スクレイピング手順、アニーリング手順
、成形手順、鋳造手順、機械加工手順、スタンピング手順および/またはその他を用いて
製造されてよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、例えば、媒体120、第1のミラー130-1、第2のミラ
ー130-2、スペーサ140および/またはその他を形成する層の各層は、特定の厚さ
に関連付けられ得る。例えば、各層は、約1nmから約1500nmの間、約10nmか
ら約500nmの間、および/またはその他の厚さに関連付けられてもよい。追加として
または代替として、マルチスペクトルフィルタ100は、約0.1μmから約100μm
、約0.25μmから約100μm、および/またはその他の厚さに関連付けられてもよ
い。
【0027】
このようにして、マルチスペクトルフィルタ100は、スペーサ140に形成される欠
陥の量を減らして複数の波長範囲に関するスペクトルデータを取得するための複数のチャ
ネルを形成し、それによりマルチスペクトルフィルタ100の光学性能を改善する。
【0028】
上記のように、
図1は単なる一例として提供されている。他の例も可能であり、
図1に
関して説明したものとは異なる場合がある。
【0029】
図2は、本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタ200の例示的な実施形態の
図である。
図2に示すように、マルチスペクトルフィルタ200は、第1の基板110-
1、第2の基板110-2、媒体120、第1のミラー130-1、第2のミラー130-
2、およびスペーサ140を含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、第2の基板110-2を第2のミラー130-2上に積み重
ねることができる。例えば、第2のミラー130-2は、スペーサ140上に配置され得
、第2の基板110-2は、第2のミラー130-2上に配置され得る。追加としてまたは
代替として、第2のミラー130-2は、第2の基板110-2上に配置されてもよい。例
えば、媒体120は第1の基板110-1に配置され得、第1のミラー130-1は媒体1
20に配置され得、スペーサ140は第1のミラー130-1に配置され得、第2のミラ
ー130-2は第2の基板110-2に配置され得、ならびに第2のミラー130-2およ
び第2の基板110-2は、第1のミラー130-1および第1の基板110-1に位置合
わせされてもよい。
【0031】
上記のように、
図2は単なる例として提供されている。他の例も可能であり、
図2に関
して説明したものとは異なる場合がある。
【0032】
図3A~
図3Dは、本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタ300の例示的な
実施形態の図である。
図3Aに示すように、マルチスペクトルフィルタ300は、第1の
基板110-1、第2の基板110-2、媒体120、第1のミラー130-1、第2のミ
ラー130-2、およびスペーサ140を含み得る。
図3Aにさらに示されるように、マ
ルチスペクトルフィルタ300は、1つ以上の平行移動デバイス310に取り付けられる
。
【0033】
図3Aにさらに示されるように、マルチスペクトルフィルタ300の第2のミラー130
-2は、第1のミラー130-1に対して可動であり、スペーサ140の厚さを可変にし、
マルチスペクトルフィルタのチャネルの通過する光のスペクトル範囲を変えることができ
る。本明細書で説明されるいくつかの実施は、固定された第1のミラー130-1に対し
て平行移動、傾斜、または移動される第2のミラー130-2に関して説明されるが、第
1のミラー130-1は、第2のミラー130-2に対して移動されてもよく、第1のミラ
ー130-1および第2のミラー130-2の両方は、平行移動デバイス310および/ま
たはその他によって移動されてもよい。
【0034】
図3Bに示されるように、第2のミラー130-2は、第1のミラー130-1に対して
平行移動デバイス310によって並進される。例えば、第2の基板110-2および第2
のミラー130-2は、
図3Aに示される位置に対して第1の基板110-1および第1の
ミラー130-1からさらに離れるように移動されてもよい。いくつかの実施形態では、
平行移動デバイス310は、集束素子、ボイスコイルモータ、圧電トランスデューサ、シ
リコン微小電気機械システム(MEMS)デバイス、熱機械デバイス、双安定ビームスイ
ッチおよび/またはその他であり得る。
【0035】
図3Cに示されるように、第2のミラー130-2は、第2のミラー130-2が第1の
ミラー130-1に対して傾斜するように、平行移動デバイス310によって並進され得
る。例えば、第2の基板110-2は、傾斜デバイス、複数の平行移動デバイスおよび/
またはその他に取り付けられてもよい。このように、マルチスペクトルフィルタ300の
チャネルの波長範囲はさらに、チャネルの第1部分について第2のミラー130-2と第
1のミラー130-1との間の距離を小さくする、チャネルの第2の部分について第2の
ミラー130-2と第1のミラー130-1との間の距離を大きくする、第3の部分につ
いて第2のミラー130-2と第1のミラー130-1との間の距離を維持するおよび/ま
たはその他によって、構成されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは、特定のタイミング構成に基づいて、第1の
ミラー130-1に対して第2のミラー130-2を移動させてよい。例えば、マルチス
ペクトルフィルタ300のチャネルに位置合わせされたセンサ素子の読み出し中に、移動
デバイスを作動して第2のミラー130-2を移動させ、いくつかのチャネルを異なる波
長範囲に関連付け、他のチャネルを既定の波長範囲に維持してよい。例として、マルチス
ペクトルフィルタに、共通の波長範囲を有する複数のチャネルが含まれる場合、
図1およ
び2に示されるような複数のチャネル7に関して、移動デバイスは、共通の波長範囲に関
連する第1のチャネルの第1のセンサ素子が第2のミラー130-2の第1の位置で読み
出されるように、および共通の波長範囲に関連する第2のチャネルの第2のセンサ素子が
第2のミラー130-2の第2の位置で読み出されるように、作動されてもよい。
このようにして、マルチスペクトルフィルタ200は、共通チャネルを使用して複数のス
ペクトル範囲を可能にし得る。さらに、移動デバイスは、第1のセンサ素子を第1の位置
および第2の位置で読み出しさせてよく、結果として単一のチャネルを使用して複数のス
ペクトル範囲を取得できる。
【0037】
いくつかの実施形態では、スペーサ140は、第1のミラー130-1に対する第2の
ミラー130-2の平行移動に基づいてスペーサ幅が可変となることを可能にするように
制約されてよい。例えば、スペーサ140は、マルチスペクトルフィルタ300によって
密閉され得る気体スペーサまたは液体スペーサであってよく、第2のミラー130-2が
第1のミラー130-1に対して平行移動するにつれて、気体スペーサまたは液体スペー
サが膨張および/または収縮できる。追加としてまたは代替として、スペーサ140は、
追加の気体スペーサ材料または液体スペーサ材料が第2のミラー130-2と第1のミラ
ー130-1との間のギャップに設けられてもよく、および/またはギャップから除去さ
れてスペーサが厚みを可変にできるように制約されてもよい。
【0038】
図3Dに示すように、第1のスペーサ140-1および第2のスペーサ140-2など
の複数のスペーサ140を、第1のミラー130-1と第2のミラー130-2との間に
配置してもよい。例えば、第1のスペーサ140-1は、第1のミラー130-1を覆う
固体スペーサであってよく、第2のスペーサ140-2は、第1のミラー130-1と第
2のミラー130-2との間の可変分離を可能にする気体(または液体)スペーサであっ
てよい。
【0039】
上記のように、
図3A~3Dは単なる例として提供されている。他の例も可能であり、
図3A~3Dに関して説明したものとは異なる場合がある。
【0040】
図4は、本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタを製造するための例示的なプ
ロセス400のフローチャートである。いくつかの実施形態では、
図4の1つ以上のプロ
セスブロックは、エッチングデバイス、スパッタリングデバイス、フォトリソグラフィデ
バイスおよび/またはその他による製造手順中に、配置デバイスによって実行され得る。
【0041】
図4に示されるように、プロセス400は、基板上に媒体を配置して階段状構造を形成
することを含み得る(ブロック410)。例えば、配置デバイスは、基板上に媒体を配置
して、階段状構造を形成し得る。いくつかの実施形態では、配置デバイスは、媒体の複数
の層を積み重ねて、階段状構造を形成し得る。例えば、フォトリソグラフィ材料の複数の
層が重ねられ得、媒体の複数の層が積み重ねられ、階段状構造を形成し得る。この場合、
フォトリソグラフィ材料の複数の層は、フォトマスクに関して露光され得、フォトリソグ
ラフィ材料を選択的に除去し、媒体の複数の層に階段状構造を形成させる。媒体用の階段
状構造のフォトリソグラフィ形成については、
図5A~5Kについて詳細に説明する。追
加としてまたは代替として、媒体を基板上に配置して、エッチング手順を使用して階段状
構造を形成することができる。例えば、媒体が基板上に配置され、その後、エッチングさ
れて階段状構造を形成してもよい。本明細書で説明するいくつかの実施形態は、フォトリ
ソグラフィ手順またはエッチング手順に関して説明されているが、階段状の媒体構造を形
成するための他の手順も可能である。
【0042】
図4に示されるように、プロセス400は、階段状ミラー構造を形成するためにマルチ
チャネルフィルタ用の第1のミラーを媒体上に配置することを含み得る(ブロック420
)。例えば、配置デバイスは、媒体上に第1のミラーを配置してもよい。この場合、第1
のミラーは、第1のミラーが配置される、階段状構造を有する媒体に基づいて階段状構造
を形成してもよい。
【0043】
図4に示されるように、プロセス400は、マルチチャネルフィルタ用のスペーサを第
1のミラー上に配置することを含み得る(ブロック430)。例えば、配置デバイスは、
第1のミラー上にスペーサを配置し得る。この場合、スペーサは、単一の配置手順を使用
して配置された固体スペーサであり得、これは、複数の配置手順およびエッチング手順を
使用したスペーサの配置と比較して、光学性能に対する表面層酸化に基づく影響を低減し
得る。追加としてまたは代替として、スペーサは、第1のミラーおよび第2のミラーによ
って形成される空洞に挿入され得る液体スペーサまたは気体スペーサであってもよく、こ
れにより、平行移動可能なミラーを有する可変スペーサバイナリマルチスペクトルフィル
タが可能になり得る。いくつかの実施形態では、スペーサは平坦な表面を形成してもよい
。例えば、スペーサは、第1のミラーの階段状ミラー表面と接続する第1表面が階段状に
なり、スペーサの反対側の第2表面が平坦になるように、第1のミラー上に配置され得る
。この場合、スペーサをエッチングしてスペーサの一部を除去し、平坦な表面を形成して
もよい。いくつかの実施形態では、第1のミラーまたは媒体は、スペーサをエッチングし
て平坦な表面を形成するためのエッチストップを形成し得る。
【0044】
図4に示されるように、プロセス400は、スペーサの第2の表面上に、第2のミラー
を配置して、マルチチャネルフィルタ用の平坦ミラーを形成することを含み得る(ブロッ
ク440)。例えば、配置デバイスは、ミラーが平坦ミラーであるように、スペーサの第
2の表面上に第2のミラーを配置してもよい。いくつかの実施形態では、第2のミラーは
第1のミラーに位置合わせされてもよい。例えば、第2のミラーを別の基板上に配置して
もよく、第2のミラーと他の基板を第1のミラーに位置合わせして、第2のミラーと他の
基板が第1のミラーに対して平行移動して可変厚スペーサを形成するようにしてもよい。
このようにして、複数のチャネルでマルチスペクトルフィルタを形成してよい。
【0045】
図4はプロセス400の例示的なブロックを示すが、いくつかの実施形態では、プロセ
ス400は、
図4に図示されるものよりも追加のブロック、より少ないブロック、異なる
ブロック、または配置が異なるブロックを含み得る。追加としてまたは代替として、プロ
セス400の2つ以上のブロックは並行して実行されてもよい。
【0046】
図5A~5Kは、プロセス400に関連する例示的な実施形態の図である。
図5A~5
Kは、本明細書で説明されるマルチスペクトルフィルタを製造するための例示的なプロセ
スを示す。
【0047】
図5A中にダイアグラム500により示されるように、フォトレジスト552は基板1
10上に配置され得る。ダイアグラム502により示されるように、フォトマスク554
および556はフォトレジスト552の上部に配置され得る。
【0048】
図5B中にダイアグラム504により示されるように、フォトマスク554および55
6、ならびにフォトレジスト552のフォトマスク554および556によって覆われて
いない部分は、露光され得る。ダイアグラム506に示されるように、露光に基づいて、
フォトレジスト552のフォトマスク554および556によって覆われていない部分は
、基板110上に配置されたままであり得る。
【0049】
図5C中にダイアグラム508により示すように、媒体120の層を基板110および
フォトレジスト552の残りの部分に積み重ねることができる。ダイアグラム510に示
すように、フォトレジスト552の残りの部分を除去する。この場合、基板110上に配
置された媒体120の層の一部が残り、フォトレジスト552の残りの部分が除去された
最初の段を形成することがある。ダイアグラム512に示されるように、別のフォトレジ
スト層552が媒体120および基板110上に配置され得る。
【0050】
図5D中にダイアグラム514により示されるように、別のフォトマスク(図示せず)
の使用および露光に基づいて、フォトレジスト552の他の層の一部のみが残ってもよい
。ダイアグラム516によって示されるように、媒体120の別の層が配置され得る。
【0051】
図5E中にダイアグラム518によって示されるように、フォトレジスト552の他の
層が除去され、媒体120が2つの段を形成する結果となり得る。ダイアグラム520に
よって示されるように、フォトレジスト552の別の層が媒体120および基板110上
に配置され得る。
【0052】
図5F中にダイアグラム522によって示されるように、別のフォトマスク(図示せず
)の使用および露光に基づいて、フォトレジスト552の他の層の一部のみが残ってもよ
い。ダイアグラム524によって示されるように、媒体120の別の層が配置され得る。
【0053】
図5G中にダイアグラム526によって示されるように、フォトレジスト552の他の
層が除去され、媒体120が3つの段を形成する結果となる場合がある。ダイアグラム5
28によって示されるように、フォトレジスト552の別の層が媒体120および基板1
10上に配置され得る。
【0054】
図5H中にダイアグラム530により示されるように、別のフォトマスク554および
556(図示せず)の使用および露光に基づいて、フォトレジスト552の他の層の一部
のみが残ってもよい。ダイアグラム532によって示されるように、媒体120の別の層
が配置され得る。
【0055】
図5I中にダイアグラム534により示されるように、フォトレジスト552の他の層
が除去され、媒体120が4つの段を形成する結果となる場合がある。ダイアグラム53
6に示されるように、さらなるフォトリソグラフィ手順の後、マルチスペクトルフィルタ
の各エッジのチャネルが共通のチャネルである媒体120により、6つの段のセットが形
成され得る。
【0056】
図5J中にダイアグラム538により示されるように、第1のミラー558は、媒体1
20により形成される6段のセット上に配置され得る。ダイアグラム540により示され
るように、スペーサ560は第1のミラー558上に配置され得る。第1のミラー558
との界面におけるスペーサ560の第1の表面は、階段状の表面を有する第1のミラー5
58に基づいて階段状になっている。さらに、スペーサ560の第2の表面は非平坦表面
である。
【0057】
図5K中にダイアグラム542により示すように、エッチング手順は、スペーサ560
の第2の表面の一部を除去して、スペーサ560の第2の表面を平坦な表面にしてもよい
。ダイアグラム544に示すように、第2のミラー562は、スペーサ560の平坦な第
2の表面上に配置される。この場合、階段状の第1の表面および平坦な第2の表面に基づ
いて、スペーサ560は、スペーサ560に複数の層を配置することなく、マルチスペク
トルフィルタ用の複数のチャネルを形成する。
【0058】
上記のように、
図5A~5Kは単なる例として提供されている。他の例も可能であり、
図5A~5Kに関して説明したものとは異なる場合がある。
【0059】
図6は、本明細書で説明される例示的な実施形態600の図である。
図6に示されるよ
うに、実施例600は、センサシステム610を含む。センサシステム610は、光学シ
ステムの一部であり得、センサ測定に対応する電気出力を提供し得る。例えば、センサシ
ステム610は、生体認証システム、セキュリティシステム、ヘルスモニタリングシステ
ム、物体識別システム、分光識別システム、イメージングシステムおよび/またはその他
の一部であってもよい。センサシステム610は、光学フィルタ630を含む光学フィル
タ構造620と、光学センサ640のセット(例えば、センサ素子アレイ)とを含む。例
えば、光学フィルタ構造620は、バンドパスブロッキング機能および/またはその他を
実行する光学フィルタ630を含み得る。いくつかの実施形態では、光学フィルタ630
は、階段状媒体およびモノリシックスペーサを備えたマルチスペクトルフィルタや、可変
厚さスペーサを備えたマルチスペクトルフィルタおよび/またはその他のマルチスペクト
ルフィルタであってもよい。センサシステム610は、光信号をターゲット660(例え
ば、人、物体など)に向けて送信する光送信機650を含む。
【0060】
本明細書で説明される実施形態は、センサシステムの光学フィルタに関して説明され得
るが、本明細書で説明される実施形態は、別のタイプのシステムで使用されてもよく、セ
ンサシステムの外部および/またはその他で使用されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、光学フィルタ630および光学センサ640の別の配置を利
用してもよい。例えば、光学フィルタ630は、光信号の第2の部分を入力光信号と同一
直線上に通過させるのではなく、光信号の第2の部分を別の位置にある光学センサ640
へ別の方向に向けることができる。いくつかの実施形態では、光学センサ640は、アバ
ランシェフォトダイオード、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)検出器、赤外線検
出器および/またはその他であり得る。
【0062】
図6および参照番号670によりさらに示されるように、入力光信号は、光学フィルタ
構造620に向けられる。入力光信号は、光送信機650から放射される可視光、近赤外
線、中赤外線および/またはその他、ならびにセンサシステム610が利用されている環
境からの環境光を含み得る。たとえば、光学フィルタ630が複数のチャネルを備えたバ
ンドパスマルチスペクトルフィルタである場合、光送信機650は、分光測定のために近
赤外線の複数の波長範囲を対象に向けてよく、光学センサ640が近赤外線の複数の波長
範囲の測定を実行できるようにするために、近赤外線はターゲット660(例えば、対象
物)で光学センサ640に向けて反射されてよい。この場合、環境光は、1つ以上の周囲
光源(例えば、電球または太陽)から光学センサ640に向けられ得る。
【0063】
別の例では、図示のように、複数の光線をターゲット660に向け、複数の光線のサブ
セットを光学フィルタ構造620に向けて反射させてよく、光学フィルタ構造620は光
学センサ640に対して傾斜角で配置してよい。いくつかの実施形態では、別の傾斜角が
使用されてもよい。いくつかの実施形態では、光学フィルタ構造620は、光学センサ6
40上に直接配置および/または形成され、光学センサ640および/またはその他から
距離を置いて(例えば、自由空間光通信を介して)配置され得る。例えば、光学フィルタ
構造620は、例えばフォトリソグラフィ、スパッタ堆積技術(例えば、スパッタ堆積の
不活性ガス混合物としてアルゴンガスとヘリウムガスを使用)、および/またはその他を
使用して、光学センサ640上にコーティングおよびパターニングされ得る。
【0064】
別の例では、光送信機650は、ジェスチャ認識システムでジェスチャを検出する、車
両に近接する物体を検出する、視覚障害者に近接する物体を検出する、物体への近接を検
出する(例えば、LIDAR技術を使用)および/またはその他のために、近赤外線を別
のタイプのターゲット660に向けてよく、ならびに近赤外線および環境光は、結果とし
て光学センサ640に向けられ得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、光信号の一部は、光学フィルタ630および光学フィルタ構
造620を通過する。例えば、光学フィルタ630の異なるチャネルの異なるスペーサ厚
さにより、光の第1の部分が反射され、光の第2の部分が通過させられ得る。この場合、
光学フィルタ630は、階段状媒体に関連するスペーサによって形成された複数のチャネ
ルを含み得、各チャネルは異なる波長の光を通過させ得る。追加としてまたは代替として
、2つ以上のチャネルが光の共通波長を通過させてもよい。
【0066】
図6および参照番号680によりさらに示されるように、光学センサ640に通過する
光信号の一部に基づいて、光学センサ640は、センサシステム610に、分光測定、ユ
ーザーのジェスチャの認識、オブジェクトの存在の検出および/またはその他のための出
力電気信号を提供し得る。
【0067】
上記のように、
図6は単なる例として提供されている。他の例も可能であり、
図6に関
して説明したものとは異なる場合がある。
【0068】
前述の開示は、例示および説明を提供するが、網羅的であることまたは実施形態を開示
された正確な形式に限定することを意図していない。上記の開示に照らして修正および変
更が可能であり、または修正および変更は実施形態から取得することができる。
【0069】
いくつかの実施形態は、閾値に関連してここで説明される。本明細書で使用するとき、
閾値を満たすとは、閾値より大きい、閾値より多い、閾値より高い、閾値以上、閾値より
小さい、閾値より少ない、閾値より低い、閾値以下、閾値と同じおよび/またはその他の
値を指し得る。
【0070】
特徴の特定の組み合わせが特許請求の範囲に記載され、かつ/または明細書に開示され
ているが、これらの組み合わせは、可能な実施形態の開示を限定することを意図していな
い。実際、これらの特徴の多くは、特許請求の範囲に具体的に記載されていないおよび/
または明細書に開示されていない方法で組み合わせることができる。特許請求の範囲に記
載の各従属項は、1つの請求項のみに直接従属する場合があるが、可能な実施形態の開示
には、請求項一式内の他のすべての請求項と組み合わせた各従属クレームが含まれる。
【0071】
本書で使用されている要素、行為、または指示は、明示的に説明されていない限り、不
可欠または必須と解釈されるべきではない。さらに、「~に基づいて」という語句は、特
に明記しない限り、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【符号の説明】
【0072】
100 マルチスペクトルフィルタ
110 基板
110-1 第1の基板
110-2 第2の基板
120 媒体
130-1 第1のミラー
130-2 第2のミラー
140 スペーサ
140-1 第1のスペーサ
140-2 第2のスペーサ
200 マルチスペクトルフィルタ
300 マルチスペクトルフィルタ
310 平行移動デバイス
400 マルチスペクトルフィルタを製造するための例示的なプロセス
410 基板上に媒体を配置して階段状構造を形成するプロセス
420 階段状ミラー構造を形成するためにマルチチャネルフィルタ用の第1のミラー
を媒体上に配置するプロセス
430 マルチチャネルフィルタ用のスペーサを第1のミラー上に配置するプロセス
440 スペーサの第2の表面上に第2のミラーを配置してマルチチャネルフィルタ用
の平坦ミラーを形成するプロセス
552 フォトレジスト
554 フォトマスク
556 フォトマスク
558 第1のミラー
560 スペーサ
562 第2のミラー
610 センサシステム
620 光学フィルタ構造
630 光学フィルタ
640 光学センサ
650 光送信機
660 ターゲット
670 入力光信号
680 出力電気信号
【手続補正書】
【提出日】2024-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタであって、
基板と、
前記基板上に配置された階段状媒体と、
前記階段状媒体上に配置された第1のミラーであって、
該第1のミラーは階段状ミラー表面を形成し、
前記階段状ミラー表面の各段は、前記フィルタのチャネルのセットの一つのチャネルに対応する、前記第1のミラーと、
前記階段状ミラー表面に配置されたスペーサと、
前記スペーサの別の表面に配置された第2のミラーと、を備えるフィルタ。
【外国語明細書】