(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017496
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】スピロ誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 513/04 20060101AFI20240201BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240201BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240201BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240201BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240201BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240201BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240201BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240201BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/429 20060101ALI20240201BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/438 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240201BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C07D513/04 301
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/00
A61P25/24
A61P35/00
A61P19/10
A61P19/08
A61P9/10
A61P7/06
A61P13/12
A61P43/00 111
A61K31/429
C07D519/00 CSP
A61K31/438
C07D519/00 301
A61K31/4745
A61K31/5383
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120166
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】503286424
【氏名又は名称】カルナバイオサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】川畑 亘
(72)【発明者】
【氏名】澤 匡明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】永尾 春菜
(72)【発明者】
【氏名】中山 啓江
(72)【発明者】
【氏名】澤 綾子
(72)【発明者】
【氏名】長尾 里奈
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072AA07
4C072BB02
4C072CC01
4C072CC12
4C072CC16
4C072EE13
4C072FF16
4C072GG01
4C072HH07
4C072JJ02
4C072MM10
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB27
4C086CB31
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA36
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】新規なスピロ誘導体の提供。
【解決手段】式(I):
(式中、L、Q、A
1およびA
2は明細書参照)
で示されるスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I):
【化1】
(式中、A
1は酸素原子または窒素原子(=N-)を表し、
A
2はCR
B、CR
CR
D、酸素原子またはNR
Aを表し、
Lは、炭素原子にメチル基が置換されてもよい炭素数1から2、もしくはNのリンカーを表し、
ここにおいて、A
1とA
2はそれぞれ結合する芳香環およびリンカーLと一緒になって、飽和もしくは不飽和の三環性縮合環を形成し、
R
A、R
B、R
CおよびR
Dは、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表し、
スピロ環Qは
1)置換基を有することのある、3員から6員の飽和炭素環、または
2)酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を一個だけ含む飽和ヘテロ環であって、
2-1)置換基を有することのある、5員または6員の含酸素飽和ヘテロ環、
2-2)置換基を有することのある、5員または6員の含硫黄飽和ヘテロ環、若しくは
2-3)任意の置換基を有するアルキル基、任意の置換基を有するアシル基または任意の置換基を有するアルキルスルホニル基で置換されてもよい、4員から6員の含窒素飽和ヘテロ環を表す。)
で表されるスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
下式(Ia):
【化2】
(式中、A
11は酸素原子、L
1はメチレンまたはエチレンを表し、A
21はCR
CR
D、酸素原子またはNR
Aを表し、R
A、R
CおよびR
Dは、請求項1に同じである。)
で表される、請求項1に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記式(Ia)において、L1がメチレンであり、A21が酸素原子である、請求項2に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
下式(Ib):
【化3】
(式中、A
12は窒素原子(=N-)を表し、L
2はメチン、エタンジイリデンまたは窒素原子(=N-)を表し、A
22はCR
BまたはNR
Aを表し、R
AおよびR
Bは、請求項1に同じである。)
で表される、請求項1に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【請求項6】
請求項1-4のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1-4のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項8】
DYRKが関与する疾患が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患である、請求項7に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特にDYRK阻害作用を有する新規なスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
DYRK(Dual-specificity tYrosine-phosphorylation Regulated protein Kinase)は、チロシンおよびセリン、スレオニンをリン酸化する二重特異性プロテインキナーゼの一種である。DYRKは、自己リン酸化の場合のみ、チロシンリン酸化酵素として機能し、外因性基質に対しては、セリンまたはスレオニン残基のリン酸化を触媒する。DYRKファミリーのメンバーとして、ヒトでは、DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3およびDYRK4の5つが知られている(非特許文献1)。
【0003】
DYRK1Aは、精神神経疾患との関連性が多く報告されている。例えば、アルツハイマー病患者では、βアミロイドの発現とDYRK1Aの発現とが有意に一致しており(非特許文献2)、さらにアルツハイマー病発症の一因とされるタウ・タンパク質(Tau)の異常リン酸化に、DYRK1Aが関与すると推測されている(非特許文献3)。
【0004】
また、パーキンソン病は、運動機能に重要なドーパミン神経が変性することによって引き起こされる神経変性疾患であるが、その原因の一つとして、ミトコンドリアの機能異常が考えられている(非特許文献4)。パーキンと呼ばれるタンパク質分解に関わる酵素は、異常ミトコンドリアを代謝し異常蓄積を抑える機能をもつことが知られているが、DYRK1Aは、このパーキンタンパク質の活性を抑えることが報告されている(非特許文献5)。
【0005】
DYRK1Aの遺伝子は、ダウン症クリティカル領域に位置しており、DYRK1Aの過剰発現したマウスでは、精神神経機能に異常をきたしダウン症様を示すことが報告されている(非特許文献6)。また、ダウン症患者およびダウン症様モデルマウスの脳内では、DYRK1A発現が上昇していることが報告されている(非特許文献7)。これらのことは、ダウン症患者の神経症状の発症に、DYRK1Aが関わっていることを示唆している(非特許文献8)。
【0006】
また、ダウン症患者では、若年性アルツハイマー病が多発することが報告されていることからも、DYRK1Aがアルツハイマー病に密接に関係していることがわかる(非特許文献8)。
【0007】
したがって、DYRK1Aを阻害する化合物は、アルツハイマー病、ダウン症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失およびパーキンソン病等の精神神経疾患の治療に有用であると考えられる。
【0008】
最近になって、DYRK1Aがグリオブラストーマなどの脳腫瘍において高発現しており、DYRK1AがEGFRの発現を調節していることが報告されている(非特許文献9)。したがってDYRK1Aを阻害する化合物は、上皮成長因子受容体(EGFR)依存的な脳腫瘍や腫瘍などにおいて、がん細胞の増殖を抑制し、EGFR依存的ながんの治療に有用であると考えられる。
【0009】
また、ファミリー酵素である、DYRK1B、DYRK2およびDYRK3を阻害する化合物に関しても、様々な医薬用途が考えられる。例えば、DYRK1Bは、休止期(G0期)のがん細胞において高発現し、各種の化学療法剤に対する抵抗性に寄与していることが報告されている(非特許文献10)。DYRK1Bを阻害すると、G0期からの離脱を促進し、化学療法剤に対する感受性を向上させることも報告されている(非特許文献11)。したがって、DYRK1Bを阻害する化合物は、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がんや肺がんの治療に有用であると考えられる(非特許文献11、12、13、14、15)。
【0010】
DYRK2については、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することが示唆されている(非特許文献16)。さらに、DYRK3を阻害する化合物は、鎌状赤血球貧血および慢性腎疾患の治療に有用であることが報告されている(非特許文献17)。
【0011】
DYRKを阻害する化合物として特許文献1の他、DYRK1A、DYRK1B阻害剤として特許文献2が報告されている。しかし、本発明のスピロ誘導体については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2010/10797号公報
【特許文献2】WO2013/26806号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Becker W. et al.,J.Biol.Chem., 1998,273,25893-25902
【非特許文献2】Kimura R. et al.,Hum.Mol.Genet.,2007,16,15-23
【非特許文献3】Ryoo SR. et al.,J.Biol.Chem.,2007,282,34850-34857
【非特許文献4】Narendra D. et al.,J.Cell.Biol.,2008,183,795-803
【非特許文献5】Im E.,J.Neurochem.,2015,134,756-768
【非特許文献6】Branchi I. et al.,J.Neuropathol.Exp.Neurol.,2004,63,429-440
【非特許文献7】Dowjat WK. et al.,Neurosci.Lett.,2007,413,77-81
【非特許文献8】Wegiel J. et al.,FEBS J.,2011,278,236-245
【0014】
【非特許文献9】Pozo N. et al.,J.Clin.Invest.,2013,123,2475-2487.
【非特許文献10】Deng X. et al.,Cancer Res.,2006,66,4149-4158.
【非特許文献11】Ewton DZ. et al.,Mol.Cancer Ther.,2011,10,2104-2114.
【非特許文献12】Deng X. et al.,Genes Cancer.,2014,5,201-211
【非特許文献13】Yang C. et al.,Carcinogenesis.,2010,31,552-558
【非特許文献14】Jin K. et al.,J.Biol.Chem.,2009,284,22916-22925
【非特許文献15】Gao J et al.,Cancer Cell Int.2013,13,2
【非特許文献16】Taira N. et al.,Mol.Cell.,2007,25,725-738
【非特許文献17】Bogacheva O. et al.,J.Biol.Chem.,2008,283,36665-36675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、医薬、特にDYRK阻害作用を有する新規なスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は以下の(1)~(13)によって達成される。
(1)下式(I):
【化1】
(式中、A
1は酸素原子または窒素原子(=N-)を表し、
A
2はCR
B、CR
CR
D、酸素原子またはNR
Aを表し、
Lは、炭素原子にメチル基が置換されてもよい炭素数1から2、もしくはNのリンカーを表し、
ここにおいて、A
1とA
2はそれぞれ結合する芳香環およびリンカーLと一緒になって、飽和もしくは不飽和の三環性縮合環を形成し、
R
A、R
B、R
CおよびR
Dは、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表し、
スピロ環Qは
1)置換基を有することのある、3員から6員の飽和炭素環、または
2)酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を一個だけ含む飽和ヘテロ環であって、
2-1)置換基を有することのある、5員または6員の含酸素飽和ヘテロ環、
2-2)置換基を有することのある、5員または6員の含硫黄飽和ヘテロ環、若しくは
2-3)任意の置換基を有するアルキル基、任意の置換基を有するアシル基または任意の置換基を有するアルキルスルホニル基で置換されてもよい、4員から6員の含窒素飽和ヘテロ環を表す。)
で表されるスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(2)下式(Ia):
【化2】
(式中、A
11は酸素原子、L
1はメチレンまたはエチレンを表し、A
21はCR
CR
D、酸素原子またはNR
Aを表し、R
A、R
CおよびR
Dは、前記に同じである。)
で表される、(1)に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(3)前記式(Ia)において、L
1がメチレンであり、A
21が酸素原子である、(2)に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(4)下式(Ib):
【化3】
(式中、A
12は窒素原子(=N-)を表し、L
2はメチン、エタンジイリデンまたは窒素原子(=N-)を表し、A
22はCR
BまたはNR
Aを表し、R
AおよびR
Bは、前記に同じである。)
で表される、(1)に記載のスピロ誘導体またはその薬学的に許容される塩。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
(6)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
(7)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体またはその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。
(8)DYRKが関与する疾患が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患である、上記(7)に記載の治療剤及び/又は予防剤。
(9)治療が必要な患者に、治療上の有効量の上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体、又はその製薬学的に許容される塩を投与することを含む、DYRKが関与する疾患を治療及び/又は予防するための方法。
(10)DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤を製造するための、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体、又はその製薬学的に許容される塩の使用。
(11)DYRKが関与する疾患の治療及び/又は予防に使用するための、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のスピロ誘導体、又はその製薬学的に許容される塩。
(12)上記(5)に記載の医薬と、抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
(13)抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤と併用して前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う合併症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患を治療するための、上記(5)に記載の医薬。
【発明の効果】
【0017】
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、前記式(I)で示される新規スピロ誘導体およびその薬学的に許容される塩が、優れたDYRK阻害作用を有することを見出し、本発明を完成させた。本発明により提供される化合物は、DYRK1Aを介した異常な細胞応答に関連していることが知られている疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病のような精神・神経疾患、ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状進行の治療薬又は認知症発症の予防薬、さらに脳腫瘍などの腫瘍に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。本発明により提供される化合物は、DYRK1Bの阻害剤として、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がんなどの腫瘍に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。さらに本発明により提供される化合物は、DYRK2について、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することから、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。また本発明により提供される化合物は、DYRK3の阻害剤として、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。また、DYRKを阻害する化合物として、上記の疾患に関する病態イメージングの試薬や基礎実験用、研究用の試薬に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の新規なスピロ誘導体は、下式(I):
【化4】
(式中、A
1は酸素原子または窒素原子(=N-)を表し、
A
2はCR
B、CR
CR
D、酸素原子またはNR
Aを表し、
Lは、炭素原子にメチル基が置換されてもよい炭素数1から2、もしくはNのリンカーを表し、
ここにおいて、A
1とA
2はそれぞれ結合する芳香環およびリンカーLと一緒になって、飽和もしくは不飽和の三環性縮合環を形成し、
R
A、R
B、R
CおよびR
Dは、それぞれ独立して、水素原子またはC
1-6アルキル基を表し、
スピロ環Qは
1)置換基を有することのある、3員から6員の飽和炭素環、または
2)酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を一個だけ含む飽和ヘテロ環であって、
2-1)置換基を有することのある、5員または6員の含酸素飽和ヘテロ環、
2-2)置換基を有することのある、5員または6員の含硫黄飽和ヘテロ環、若しくは
2-3)任意の置換基を有するアルキル基、任意の置換基を有するアシル基または任意の置換基を有するアルキルスルホニル基で置換されてもよい、4員から6員の含窒素飽和ヘテロ環を表す。)
で示される化合物である。
【0020】
前記式(I)において、A1とA2およびリンカーLを含んで構成される環部分としては、窒素原子および酸素原子から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含み、置換基を有していてもよい飽和または不飽和のヘテロ5員環またはヘテロ6員環が例示される。そして、Lは、炭素原子にメチル基が置換されてもよい炭素数1から2、もしくはNのリンカーであって、窒素原子の他、メチン、メチレン、エチレン、ビニレン、エタンジイリデン等が例示される。当該Lの一態様としては、炭素数1または2のリンカーであって、メチン、メチレン、エチレン、ビニレン、エタンジイリデン等が例示される。
A1が酸素原子の場合、リンカーLがメチレンでA2が酸素原子またはCRCRDが好ましく、特にRC、RDは水素原子が好ましい。
また、A1が酸素原子の場合、リンカーLがエチレンでA2がNRAも好ましく、特にRAはC1-6アルキル、中でもメチルが好ましい。
A1が窒素原子の場合、リンカーLが窒素原子またはメチンであってA2はNRAが好ましく、この場合RAはメチルが好ましい。
また、A1が窒素原子の場合、リンカーLがエタンジイリデンであってA2がCRBも好ましく、この場合RBは水素原子が好ましい。
当該A1とA2およびリンカーLを含んで構成される環部分としては、ベンゾチアゾール環と縮合して、例えばジヒドロベンゾフロチアゾール、ジオキソロベンゾチアゾール、キノリノチアゾール、イミダゾベンゾチアゾール、トリアゾベンゾチアゾールなどの三環性縮合環を形成する。
【0021】
また、スピロ環Qは、例えば3員から6員の飽和炭素環であって、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
該炭素環の置換基としては、1または2個以上の任意の種類の置換基を、化学的に可能な任意の位置に有することが可能であって、置換基が2個以上の場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよく、例えば、ハロゲン原子、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、C
1-4アルコキシカルボニル基、モノC
1-4アルキル置換アミノ基、ジC
1-4アルキル置換アミノ基もしくは非置換アミノ基、カルボキシル基、オキソ、ヒドロキシ基、ニトロ基、C
1-4アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、4-モルホリニルカルボニル基などが挙げられる。中でも好ましいのはオキソ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、特にフッ素原子であり、例えば、以下の態様が例示される。
【化5】
また、スピロ環Qは酸素原子、窒素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を一個だけ含むヘテロ環であってもよい。そして、酸素原子一つまたは硫黄原子一つを含む場合は、5員から6員の飽和ヘテロ環であって、具体的には、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロチオピラニル基などが挙げられる。
そして、当該含酸素飽和ヘテロ環および当該含硫黄飽和ヘテロ環はいずれも、1または2個以上の任意の種類の置換基を、化学的に可能な任意の位置に有してもよく、置換基が2個以上の場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよく、例えば、ハロゲン原子、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、C
1-4アルコキシカルボニル基、モノC
1-4アルキル置換アミノ基、ジC
1-4アルキル置換アミノ基もしくは非置換アミノ基、カルボキシル基、オキソ、ヒドロキシ基、ニトロ基、C
1-4アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、4-モルホリニルカルボニル基などが挙げられる。中でも好ましいのはオキソ基であり、特に、含硫黄ヘテロ環の場合は硫黄原子にオキソが置換した態様も包含される。
【化6】
スピロ環Qはまた、下記に例示
【化7】
されるように、窒素原子一つを含む、4員から6員の含窒素飽和ヘテロ環であってもよく、該含窒素ヘテロ環は任意の置換基を有するアルキル基、任意の置換基を有するアシル基または任意の置換基を有するアルキルスルホニル基で置換されていてもよい。
【0022】
「DYRK」とは、Dual-specificity tYrosine-phosphorylation Regulated protein Kinaseを表し、DYRKファミリー(DYRK1A,DYRK1B、DYRK2、DYRK3、DYRK4)の一または二以上を意味する。
【0023】
任意の置換基を有するアルキル基の「アルキル基」としては、例えば炭素数1から6の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基(C1-6アルキル基)が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
同様に、C1-4アルキル基は、炭素数1から4の直鎖状あるいは分枝状のアルキル基を表す。
任意の置換基を有するアシル基の「アシル基」としては、例えば炭素数1から6の直鎖状あるいは分枝状の脂肪族アシル基(C1-6アシル基)が挙げられ、具体的には、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、カプロイルなどが挙げられる。
任意の置換基を有するアルキルスルホニル基の「アルキル」部分については、上記の定義がそのまま適用される。
【0024】
任意の置換基を有するアルキル基および任意の置換基を有するアシル基の「置換基」としては、特に記載のない限り、1または2個以上の任意の種類の置換基を、化学的に可能な任意の位置に有してもよく、置換基が2個以上の場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよく、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子)、C1-4アルコキシ基、炭素数6から14のアリール基(例えば、フェニル基)、C1-4アルコキシカルボニル基、モノC1-4アルキル置換アミノ基(例えばメチルアミノ基)、ジC1-4アルキル置換アミノ基(例えばジメチルアミノ基)もしくは非置換アミノ基、カルボキシル基、ニトロ基、C1-4アルコキシカルボニルアミノ基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、ベンジルオキシ基、C3-6シクロアルキル基、1または2の窒素原子を含み、C1-4アルキルで置換されてもよい5員環若しくは6員環ヘテロアリール基などが挙げられる。
含窒素飽和ヘテロ環上のアルキル置換基は、窒素原子上に置換したアルキル基が好ましく、該アルキル基としてはハロゲン原子、特にフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。具体的には、2-フルオロエチル、2,2-フルオロエチル等が例示される。その他、窒素原子上の置換基を有するアルキル基としては、N-ベンジルを例示することができる。
含窒素飽和ヘテロ環上のアシル置換基も、窒素原子上に置換したアシル基が好ましい。該アシル基としては、アルキル置換アミノ基が置換したアシル基が好ましく、具体的にはモノメチルアミノアセチル基、ジメチルアミノアセチル基が例示される。
含窒素飽和ヘテロ環上のアルキルスルホニル置換基も、窒素原子上に置換したアルキルスルホニル基が好ましい。当該アルキルスルホニル基上の置換基については、上記の「任意の置換基を有するアルキル基」の置換基の定義がそのまま適用される。アルキルスルホニル基の具体例としては、例えばメタンスルホニル基を例示することができる。
【0025】
また、本発明の式(I)で表される化合物の薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸等との無機酸塩、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との有機酸塩等が挙げられる。また、ナトリウム、カリウム等とのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等とのアルカリ土類金属塩、低級アルキルアミン、低級アルコールアミン等との有機アミン塩、リジン、アルギニン、オルニチン等との塩基性アミノ酸塩の他、アンモニウム塩等も本発明に包含される。
本発明の式(I)で表される化合物は、例えば、置換基の種類によって、異性体が存在する場合がある。本明細書において、それらの異性体の一形態のみの化学構造で記載することがあるが、本発明には、構造上生じ得るすべての異性体(幾何異性体、立体異性体、互変異性体など)も包含され、異性体単体、またはそれらの混合物もすべて包含される。
【0026】
本発明の式(I)で表される化合物およびその薬学的に許容される塩は、たとえば以下の方法によって製造することができる。なお、以下に示した製造法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するか、または方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で通常用いられる方法、例えば、官能基の保護、脱保護[T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Edition、John Wiley &Sons、lnc.、1999]などの手段を付すことにより容易に製造することができる。また、必要に応じて置換基導入などの反応工程の順序を変えることもできる。
【0027】
以下の説明で使用される略語、記号の意味は次の通りである。
DCM : ジクロロメタン
THF : テトラヒドロフラン
DMF : N,N-ジメチルホルムアミド
TEA : トリエチルアミン
EtOH : エタノール
LAH : 水素化リチウムアルミニウム
DMA : N,N-ジメチルアセトアミド
LDA: リチウムジイソプロピルアミド
【0028】
[本発明の化合物(I)の製法]
【0029】
式(I)で表される本発明の化合物は、例えばA法(スキーム1)によっても製造することができる。
【化8】
(式中、A
1、A
2およびLは前記(1)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
化合物(I)は、例えばイソチオシアネート(II)とアミン(III)を反応させて得られるチオウレア(IV)を溶媒中、臭素と反応させてチアゾール環を形成させ、その後、脱保護、環化させることによって製造することができる。すなわちイソチオシアネート(II)を溶媒中、ナトリウムエトキシドなどの塩基またはヨウ化銅などの触媒存在下、イソチオシアネート(II)に対して、1~1.5モル当量のアミン(III)と反応させることによってチオウレア(IV)を得ることができる。
【0030】
また、チオウレア(IV)をアセトニトリルなどの溶媒中、チオウレア(IV)に対して0.5~1.5当量の臭素を作用させることによって、化合物(V)を得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~数時間で実施することができるが、好ましくは0℃で、30分間反応させることにより合成することができる。
【0031】
また、化合物(I)は、化合物(V)を脱保護後、溶媒中、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)や炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(DSC)などの縮合剤と反応させることによって得ることができる。反応は、例えば、化合物(V)を脱保護後、過剰量の縮合剤と反応させることで得ることができるが、好ましくは1~5モル当量のCDIやDSCと反応させることによって合成することができる。溶媒は反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されるものではないが、例えばTHF、好ましくはDMFを用いることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分から数時間で実施することができるが、好ましくはDMF中で室温下、30分間反応させることにより合成することができる。
【0032】
スキーム1の原料として用いられるイソチオシアネート(II)は、市販品として入手するか、または公知の方法あるいは有機合成化学で通常用いられる方法によって製造することができる。
【0033】
式(I)で表される本発明の化合物は、例えばB法(スキーム2)によっても製造することができる。
【化9】
(式中、A
1、A
2およびLは前記(1)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
化合物(I)は、例えばイソチオシアネート(VI)とアミン(III)を反応させて得られるチオウレア(VII)を溶媒中、ウルマン(Ullman)型縮合によりチアゾール環を形成させ、その後、脱保護、環化することによっても製造することができる。すなわちチオウレア(VII)は溶媒中、ナトリウムエトキシドなどの塩基またはヨウ化銅などの触媒存在下、化合物(VI)に対して、1~1.5モル当量の(III)と反応させることによって得ることができる。
【0034】
また、化合物(V)は、アセトニトリルなどの溶媒中、チオウレア(VII)に対して、炭酸セシウムなどの塩基存在下、触媒として0.1~0.5モル当量のヨウ化銅(I)および0.1~0.5モル当量1,10-フェナントロリンなどの配位子を添加して加熱することによって得ることができる。反応は70℃から還流温度の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは還流温度で、1時間反応させることにより合成することができる。
【0035】
また、化合物(I)は、化合物(V)を前記A法と同様にして、脱保護後、溶媒中、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)や炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(DSC)などの縮合剤と反応させることによって得ることができる。
【0036】
スキーム2の原料として用いられるイソチオシアネート(VI)は、市販品として入手するか、または公知の方法あるいは有機合成化学で通常用いられる方法によって製造することができる。
【0037】
前述の(1)の化合物は、式(I)においてA1、A2がそれらと結合する芳香環およびリンカーLと一緒になって5員環または6員環を形成する化合物であるが、上記の製法(A~B法)のいずれかにより製造できる。
【0038】
[本発明の化合物(I)の用途]
本発明の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、経口投与、非経口投与または局所的投与に適した従来の薬学製剤(医薬組成物)の形態に調製することができる。
【0039】
経口投与のための製剤は、錠剤、顆粒、粉末、カプセルなどの固形剤、およびシロップなどの液体製剤を含む。これらの製剤は従来の方法によって調製することができる。固形剤は、ラクトース、コーンスターチなどのデンプン、微結晶性セルロースなどの結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどのような従来の薬学的担体を用いることによって調製することができる。カプセルは、このように調製した顆粒または粉末をカプセルに包むことによって調製することができる。シロップは、ショ糖、カルボキシメチルセルロースなどを含む水溶液中で、本発明の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩を溶解または懸濁することによって調製することができる。
【0040】
非経口投与のための製剤は、点滴注入などの注入物を含む。注入製剤もまた従来の方法によって調製することができ、等張化剤(例えば、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース)、安定化剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、アルブミン)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、p-オキシ安息香酸メチル)中に適宜組み入れることができる。
【0041】
本発明の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の用量は、疾患の種類、重症度、患者の年齢、性別、および体重、投薬形態などに従って変化させることができるが、通常は成人において1日あたり1mg~1,000mgの範囲であり、それは経口経路または非経口経路によって、1回、または2回もしくは3回に分割して投与することができる。
【0042】
また、本発明の化合物(I)またはその薬学的に許容される塩は、DYRK阻害剤として、上記の疾患に関する病態イメージングの試薬や基礎実験用、研究用の試薬として用いることができる。
【実施例0043】
以下に実施例および試験例などを挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
化合物の同定は水素核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)及びマススペクトル(MS)により行った。1H-NMRは、特に指示のないかぎりは400MHzで測定されたものであり、また化合物及び測定条件によっては交換性水素が明瞭に観測されない場合がある。なお、br.は幅広いシグナル(ブロード)を意味する。HPLC分取クロマトグラフィーは、市販のODSカラムを用い、特に記載のない限りは水/メタノール、あるいは水/アセトニトリル(ギ酸を含む)を溶出液としてグラジェントモードにて分取した。
【0044】
実施例1(A法)
1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-8-オキサ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカン-2-オンの製造
【化10】
(第1工程)
【化11】
2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-アミン(1.0g, 7.41mmol)の水溶液(10mL)にチオホスゲン(1.41mL, 18.52mmol)を0℃で加えて、混合物を室温で4時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル)で精製して、4-イソチオシアネート-2,3-ジヒドロベンゾフラン(0.9g)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl
3) δ = 7.07 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 2H), 4.62 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.30 ( t, J = 8.6 Hz, 2H). GC-MS: 177.1 (M
+).
(第2工程)
【化12】
4-イソチオシアネート-2,3-ジヒドロベンゾフラン(0.10g,0.56mmol)をエタノール(5mL)に溶かし、tert-ブチル[(4-アミノテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)メチル]カーバメート(0.18g,0.79mmol)およびナトリウムエトキシド(0.046g,0.68mmol)を加え、室温で1日間攪拌した。反応液を酢酸エチルと水で希釈し、さらに有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、tert-ブチル ({4-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル}メチル)カーバメートを得た(収量0.23g)。
LCMS (m/z): 408.3 [M+H]
+
(第3工程)
【化13】
tert-ブチル ({4-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル}メチル)カーバメート(0.23g,0.56mmol)をアセトニトリル(5mL)に溶解し、氷冷下、臭素(0.032mL,0.62mmol)と酢酸(0.16mL,0.28mmol)の混合物を加えた。室温で30分攪拌後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。
得られた粗生成物をメタノール(8mL)に溶解し、4規定塩化水素ジオキサン溶液(3mL,12mmol)を加えた。室温で1時間攪拌後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にDMF(8mL)、トリエチルアミン(1.2mL,8.4mmol)を加えた。次いでDSC(0.17g,0.67mmol)を0℃で加え、混合物を室温で2時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、表題化合物(0.12g)を得た。
1H NMR (CDCl
3) δ (ppm) 7.49 (dt, J = 8.4, 0.9 Hz, 1H), 6.83 - 6.76 (m, 1H), 5.12 (br. s, 1H), 4.69 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.15 - 4.06 (m, 2H), 3.67 - 3.41 (m, 8H), 1.67 - 1.59 (m, 2H) ; LCMS (m/z): 332.2 [M+H]
+
実施例7(B法)
4-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4,6-ジアザスピロ[2.4]ヘプタン-5-オンの製造
【化14】
(第1工程)
【化15】
5-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-4-アミン(20.0g,93.04mmol)の水溶液(40mL)にチオホスゲン(17.82mL,232.60mmol)を0℃で加えて、混合物を室温で4時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル)で精製して、5-ブロモ-4-イソチオシアナトベンゾ[d][1,3]ジオキソール(10.0g)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 7.18 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 6.91 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.22 (s, 2H). LC-MS: 256.9 (M
+).
(第2工程)
【化16】
1-アミノシクロプロパンカルボニトリル塩酸塩(3.5g,29.66mmol)のDCM溶液(100mL)に-10℃でTEA(8.32mL,59.32mmol)とトリフルオロ酢酸無水物(4.98mL,35.59mmol)を加えて、混合物を室温で2時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮して、N-(1-シアノシクロプロピル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(2.8g)を得た。
1H NMR (500MHz, CDCl3) δ = 3.05 (q, J = 7.3 Hz, 1H), 1.45 - 1.39 (m, 2H), 1.36 - 1.30 (m, 2H). LC-MS: 179.3 (M+H).
(第3工程)
【化17】
N-(1-シアノシクロプロピル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(3.8g,21.35mmol)メタノール溶液(60mL)にラネーニッケル(0.5g)を加え、60psiの水素ガスを負荷し3時間撹拌した。反応完結後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮して、N-(1-(アミノメチル)シクロプロピル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(3.5g)を得た。
LC-MS: 183.0 (M+H).
(第4工程)
【化18】
N-(1-(アミノメチル)シクロプロピル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(3.5g,19.23mmol)およびTEA(2.69mL,19.23mmol)のDCM溶液(50mL)に二炭酸ジ-tert-ブチル(5.03g,23.08mmol)を0℃で加えて、混合物を室温で15時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、DCMで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮して、{[1-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)シクロプロピル]メチル}カルバミン酸 tert-ブチル(4.0g)を得た。
LC-MS: 281.2 (M-H).
(第5工程)
【化19】
{[1-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)シクロプロピル]メチル}カルバミン酸 tert-ブチル(4.5g,15.96mmol)のメタノール溶液(30mL)に炭酸カリウム(4.4g,31.91mmol)を加えて室温で48時間撹拌した。反応完結後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮して、[(1-アミノシクロプロピル)メチル]カルバミン酸 tert-ブチル(4.3g)を得た。
LC-MS: 187.3 (M+H).
(第6工程)
【化20】
[(1-アミノシクロプロピル)メチル]カルバミン酸 tert-ブチル(1.0g,5.38mmol)、5-ブロモ-4-イソチオシアナトベンゾ[d][1,3]ジオキソール(0.69g,2.69mmol)およびヨウ化銅(I)(0.102g,0.54mmol)のアセトニトリル溶液(20mL)を80℃で5時間撹拌した。反応完結後、溶媒を減圧下濃縮し、残渣を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/石油エーテル)で精製して、({1-[3-(5-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)チオウレイド]シクロプロピル}メチル)カルバミン酸 tert-ブチル(0.21g)を得た。
LC-MS: 446.11 (M+2+H, isotopic mass).
(第7工程)
【化21】
({1-[3-(5-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-4-イル)チオウレイド]シクロプロピル}メチル)カルバミン酸 tert-ブチル(0.3g,0.67mmol)、1,10-フェナントロリン(0.024g,0.13mmol)、ヨウ化銅(I)(0.025g,0.13mmol)および炭酸セシウム(0.440g,1.35mmol)のアセトニトリル溶液(20mL)を80℃で5時間撹拌した。反応完結後、反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、メタノール/ジクロロメタン)で精製して、{[1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イルアミノ)シクロプロピル]メチル}カルバミン酸 tert-ブチル(0.25g)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ = 8.08 (br. s, 1H), 7.12 - 7.09 (m, 2H), 6.67 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 5.99 (s, 2H), 3.48 (d, J = 5.2 Hz, 2H), 1.35 (s, 9H), 0.78 - 0.75 (m, 2H), 0.64 - 0.61 (m, 2H). LC-MS: 364.2 (M+H).
(第8工程)
【化22】
{[1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イルアミノ)シクロプロピル]メチル}カルバミン酸 tert-ブチル(0.25g,0.69mmol)に4M塩酸-1,4-ジオキサン溶液(10mL)を加えて、室温で5時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を減圧下濃縮した。残渣を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基性とした後、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮して、N-[1-(アミノメチル)シクロプロピル]-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-アミン(0.15g)を得た。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ = 8.20 (br. s, 1H), 7.12 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.68 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.01 (s, 2H), 3.41 - 3.38 (m, 2H), 0.55 - 0.53 (m, 2H), 0.48 - 0.46 (m, 2H). LC-MS: 264.2 (M+H).
(第9工程)
【化23】
N-[1-(アミノメチル)シクロプロピル]-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-アミン(0.15g,0.57mmol)のDMF溶液(2.5mL)にDSC(0.44g,1.71mmol)を0℃で加え、混合物を室温で15時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下濃縮した。残渣を分取HPLCで精製し、4-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4,6-ジアザスピロ[2.4]ヘプタン-5-オン(0.04g)を得た。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6) δ = 8.05 (s, 1H), 7.36 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.92 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.09 (s, 2H), 4.17 (s, 2H), 0.86 (s, 4H). LC-MS: 290.2 (M+H).
実施例15,16(光学分割)
(R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-7-オキサ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナン-2-オン、および(S)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-7-オキサ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナン-2-オン、
(第1工程)
【化24】
tert-ブチル[(4-アミノテトラヒドロフラン-3-イル)メチル]カーバメートを用い、実施例1の第2工程記載の方法と同様にして、tert-ブチル ({4-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]テトラヒドロフラン-3-イル}メチル)カーバメートを得た。
LC-MS: 394.18 (M+H).
(第2工程)
【化25】
tert-ブチル ({4-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]テトラヒドロフラン-3-イル}メチル)カーバメートを用い、実施例1の第3工程記載の方法と同様にして、ラセミ体の1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-7-オキサ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナン-2-オンを得た。
得られたラセミ体の1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-7-オキサ-1,3-ジアザスピロ[4.4]ノナン-2-オンを超臨界流体クロマトグラフィ(CHIRALPAK AD-Hカラム、二酸化炭素/メタノール)で光学分割し、表題の両異性体を得た。
第1溶出画分
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ = 7.96 (br. s, 1H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.62 (t, J = 8.9 Hz, 2H), 4.26 - 4.17 (m, 2H), 4.01 (dt, J = 3.9, 7.9 Hz, 1H), 3.81 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 3.57 (s, 2H), 3.40 - 3.33 (m, 2H), 3.14 (ddd, J = 3.9, 7.9, 12.4 Hz, 1H), 1.96 (td, J = 7.8, 12.8 Hz, 1H). LC-MS: 318.1(M+H).
第2溶出画分
1H NMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ = 7.96 (br. s, 1H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.62 (t, J = 8.9 Hz, 2H), 4.28 - 4.17 (m, 2H), 4.01 (dt, J = 3.9, 7.9 Hz, 1H), 3.81 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.57 (s, 2H), 3.37 (dt, J = 2.4, 8.8 Hz, 2H), 3.14 (ddd, J = 3.9, 7.9, 12.4 Hz, 1H), 1.96 (td, J = 7.9, 12.8 Hz, 1H). LC-MS: 318.1(M+H).
【0045】
以下の実施例化合物[表1]は、それぞれ対応する原料(市販品、または市販化合物から公知の方法もしくはそれに準じた方法により誘導体化した化合物)を用い、上述の実施例記載の方法に従い、必要に応じて、有機合成化学で通常用いられる方法を適宜組み合わせて製造した。また、各々の化合物の物理化学データを[表2]に示した。
【0046】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0047】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
試験例1
【0048】
[DYRKファミリー(DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3)に対する活性阻害試験]
(キナーゼ活性の測定方法)
キナーゼ活性の測定は、QuickScout Screening Assist(商標)MSA(カルナバイオサイエンス社製市販キット)を用い、モビリティシフトアッセイ(MSA)法により行った。キナーゼ反応の基質は、キット付属のFITC標識DYRKtideペプチドを用いた。アッセイバッファー[20mM HEPES、0.01%Triton X-100(商標)、2mM dithiothreitol、pH7.5]を用い、基質(4μM)、MgCl2(20mM)およびATP(DYRK1A;100μM、DYRK1B;200μM、DYRK2;40μM、DYRK3;20μM)の基質混合液を作成した。また、キナーゼ(DYRK1A;カルナバイオサイエンス社製、カタログNo.04-130、DYRK1B、同社製、No.04-131、DYRK2;同社製、No.04-132、DYRK3;同社製、No.04-133)をアッセイバッファーで希釈して酵素溶液(DYRK1A;0.2ng/μL、DYRK1B;0.08ng/μL、DYRK2;0.04ng/μL、DYRK3;0.25ng/μL)を調製した。被験化合物の10mM DMSO溶液から、10濃度(0.00003mM、0.0001mM、0.0003mM、0.001mM、0.003mM、0.01mM、0.03mM、0.1mM、0.3mM、1mM)にDMSOでさらに希釈し、それぞれをアッセイバッファーで25倍希釈して、薬物溶液とした(4%DMSO溶液)。薬物溶液もしくはコントロール溶液(4%DMSO-アッセイバッファー)5μL、基質混合液5μL、および酵素溶液10μLをポリプロピレン製384穴プレートのウェル中で混合し、1時間室温で反応させた後、60μLのキット付属のターミネーションバッファーを添加し反応を停止させた。ついで、反応溶液中の、基質(S)およびリン酸化された基質(P)の量をLabChip EZ Reader IIシステム(Caliper Life Sciences社製)を用い、アッセイキットのプロトコールにしたがって測定した。
【0049】
(阻害活性の評価方法)
「基質」および「リン酸化された基質」の各ピークの高さをそれぞれSおよびPとし、またブランクとして酵素溶液の代わりにアッセイバッファーを添加したものを測定した。
【0050】
被験化合物の阻害率(%)は、次の式に従って算出した。
阻害率(%)=(1-(C-A)/(B-A))×100
ただし、A、B、Cは、それぞれブランクウェルのP/(P+S)、コントロール溶液ウェルのP/(P+S)、化合物添加ウェルのP/(P+S)を示す。
【0051】
また、IC
50値は、阻害率と被験化合物濃度(対数)の回帰分析により算出した。
(評価結果)
本発明の代表化合物のDYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3に対する阻害活性を表3に示す。キナーゼ活性阻害作用はIC
50値が、0.01μM未満を***印、0.01μM以上0.1μM未満を**印、0.1μM以上1μM未満を*印、1μM以上を-で示した。
【表3-1】
【表3-2】
この結果は、被験化合物(本発明化合物(I))が、強いDYRK阻害活性を有することを示している。
本発明により提供される化合物は、DYRK1Aを介した異常な細胞応答に関連していることが知られている疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、鬱病のような精神・神経疾患、さらに脳腫瘍などの癌に対する予防または治療剤として有用である。またDYRK1Bの阻害剤として、膵臓がんなどの腫瘍に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。さらに本発明により提供される化合物は、DYRK2については、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することから、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。また本発明により提供される化合物は、DYRK3の阻害剤として、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬品(医薬組成物)として有用である。また、DYRKを阻害する化合物として、上記の疾患に関する病態イメージングの試薬や基礎実験用、研究用の試薬に有用である。