(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174962
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】IL-4R阻害剤を投与することによって重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241210BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241210BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241210BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20241210BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61K45/06
A61K39/395 N
A61P37/08
A61P37/00
A61P17/04
A61P17/16
A61P17/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C07K16/28
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024153668
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2022128592の分割
【原出願日】2017-09-21
(31)【優先権主張番号】62/397,988
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/442,083
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/443,819
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/445,774
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/519,896
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17306081.5
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ラディン
(72)【発明者】
【氏名】ニール・グラハム
(72)【発明者】
【氏名】ボランル・アキンレイド
(72)【発明者】
【氏名】ジャンルカ・ピロッツィ
(72)【発明者】
【氏名】シン・サン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハルシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド・エス・シュメル
(72)【発明者】
【氏名】アシッシュ・バンサル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置するための方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤、例えば抗IL-4R抗体の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、疾患が全身療法(例えば、シクロスポリンA)で制御されない、またはこのような療法が得策ではない患者における重度のADを処置するために使用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そう痒を低減する、またはアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法であって、
(a)中程度から重度のADを有する患者を選択する工程であって、該患者は、全身性免疫抑制剤への不十分な応答または不耐性の病歴を有するか、および/または全身性免疫抑制剤での療法が得策ではない、工程;および
(b)治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
患者は:
(i)患者が、4のベースラインにおける医師による包括的評価(IGA)スコアを有すること;
(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;
(iii)患者が、全身療法の候補であること;
(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;
(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;
(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線(UV)光療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに
(vii)患者が、IL-4R阻害剤の投与の前またはその時に、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される疾患もしくは障害を有するかまたはそれを有すると診断されていること
からなる群から選択される1つまたはそれ以上の特徴を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者は、以前にCSAに曝露されておらず、医療上の禁忌、CSAまたは賦形剤に対する過敏症、CSAとの併用が禁止された付随的な薬物療法の使用、CSAによって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、CSAによって誘発された肝臓傷害に対する感受性の増加、および重篤な感染症のリスクの増加からなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
患者は、以前にCSAに曝露されており、不耐性、許容できない毒性、不十分な応答、患者の体重1kg当たり5mg/日より高い用量でCSAが必要なこと、および1年を超える持続時間にわたりCSA投与が必要なことからなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
IL-4R阻害剤は、IL-4Rと特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメ
ントである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
IL-4R阻害剤は、約50~約600mgの用量で投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
IL-4R阻害剤は、約300mgの用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
IL-4R阻害剤は、初回用量で、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与され、各二次用量は、直前の用量の1から4週間後に投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
初回用量は、約50~約600mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
各二次用量は、約25~約400mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
初回用量は、約600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、約300mgのIL-4R阻害剤を含む、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
IL-4R阻害剤の投与は:
(a)湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアにおけるベースラインからの少なくとも75%の減少;
(b)そう痒数値評価スケール(NRS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも45%の減少;
(c)アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD)スコアにおけるベースラインからの少なくとも50%の減少;
(d)医師による包括的評価(IGA)スコアにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;および
(e)NRSスコアのベースラインからの3ポイント以上の減少
からなる群から選択されるAD関連パラメーターの改善をもたらす、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(GISS)、患者向け湿疹尺度(POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(HADS)、および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
IL-4R阻害剤の投与は、患者における再燃または増悪の回数を減少させる、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
IL-4R阻害剤は、皮下投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
IL-4R阻害剤は、第2の治療剤または療法と組み合わせて投与され、該第2の治療剤または療法は、外用コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、およびエモリエント剤からなる群から選択される、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
外用コルチコステロイド(TCS)は、低い効力のTCS、中程度の効力のTCS、および高い効力のTCSからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
患者に投与されるTCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、徐々に低減される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
患者に投与されるTCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、4週間で、少なくとも約20%低減される、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
患者に投与されるTCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、4週間で、約50%低減される、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
IL-4R阻害剤は、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と、1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-4およびIL-13と、1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を予防する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項7、25、および26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、該HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;該HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;該HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;該LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;該LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;該LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項7、25、および26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものである、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
IL-4R阻害剤は、AMG317またはMEDI9314である、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、
(a)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、該患者は:
(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;
(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;
(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;
(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;
(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;
(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線(UV)光療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに
(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有すること
からなる群から選択される特性を有する、工程;および
(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程
を含む、前記方法。
【請求項34】
患者は、重度のADを有し、6歳から11歳の間であり、4のベースラインにおけるIGAスコアを有し、外用AD療法で制御不能な疾患を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
IL-4R阻害剤は、IL-4Rと特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
IL-4R阻害剤の各用量は、患者の体重1kg当たり1、2、3、4、または5mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
各用量は、約20~約600mgのIL-4R阻害剤を含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
IL-4R阻害剤の投与は、(i)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから30%より多くの低減;(ii)そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;および(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の12週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAスコアにおけるベースラインからの低減からなる群から選択される作用をもたらす、請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
IL-4R阻害剤は、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、抗細菌性の治療剤、および閉塞性気道疾患のための治療剤からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される、請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
IL-4R阻害剤は、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と、
1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-4およびIL-13と、1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を予防する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、請求項35~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、該HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;該HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;該HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;該LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;該LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;該LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項35~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項35~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものである、請求項33~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
IL-4R阻害剤は、AMG317またはMEDI9314である、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒の低減、またはアトピー性皮膚炎(AD)の処置または少なくとも1つのAD関連パラメーターの改善におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用であって、該患者は、全身性免疫抑制剤への不十分な応答または不耐性の病歴を有するか、および/または全身性免疫抑制剤での療法が得策ではない、前記使用。
【請求項49】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒を低減する、またはアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善するための医薬の製造における、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用であって、該患者は、全身性免疫抑制剤への不十分な応答または不耐性の病歴を有するか、および/または全身性免疫抑制剤での療法が得策ではない、前記使用。
【請求項50】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒を低減する、またはアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善するための医薬組成物であって、該患者は、全身性免疫抑制剤への不十分な応答または不耐性の病歴を有するか、および/または全身性免疫抑制剤での療法が得策ではなく、該組成物は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む、前記医薬組成物。
【請求項51】
中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)の処置または中程度から重度または重度のADを有する患者におけるAD関連パラメーターの改善における、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用。
【請求項52】
中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、または中程度から重度または重度のADを有する患者におけるAD関連パラメーターを改善するための医薬の製造における、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用。
【請求項53】
中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、または中程度から重度または重度のADを有する患者におけるAD関連パラメーターを改善するための医薬組成物であって、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む、前記医薬組成物。
【請求項54】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒の低減、または少なくとも1つのアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターの改善におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用であって、該患者は、全身療法の候補である、前記使用。
【請求項55】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒を低減する、または少なくとも1つのアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターを改善するための医薬の製造におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の使用であって、該患者は、全身療法の候補である、前記使用。
【請求項56】
中程度から重度のADを有する患者における、そう痒を低減する、または少なくとも1つのアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターを改善するための医薬組成物であって、該患者は、全身療法の候補であり、該組成物は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列の記述
本出願は、配列表を含有し、配列表は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。前記ASCIIコピーは、2017年9月11日に作成され、SequenceList_29.TXTと名付けられ、10.9キロバイトのサイズを有する。
【0002】
本発明は、アトピー性皮膚炎を処置するための方法に関する。より具体的に、本発明は、それを必要とする対象におけるインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤の投与に関する。
【背景技術】
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、強烈なそう痒(すなわち、痒み)、乾燥症(皮膚の乾燥)、および湿疹病変を特徴とする慢性/再発性の炎症性皮膚疾患であり、その特徴としては、紅斑、浸潤/丘疹形成、痂皮形成を伴う毛細血管出血、表皮剥離、および苔癬化が挙げられる。これはしばしば、他のアトピー性障害、例えばアレルギー性鼻炎および喘息と関連する。重度の疾患は、数々の要因:高い社会経済的なコストにつながる主要な心理的問題、顕著な睡眠不足、および生活の質(QOL)の悪化によって深刻な問題となる可能性がある。推測で成人の2%から10%が、ADに罹っている(非特許文献1)。
【0004】
ADの病態生理は、炎症、環境因子、遺伝学および皮膚バリアの機能不全の間の複雑な相互作用の影響を受ける。
【0005】
ADは、幼児期において最も一般的な炎症性皮膚疾患である(非特許文献2)。この疾患は通常、早期乳児期や幼児期中に存在するが、成人期まで持続したり、または成人期に始まったりすることもある(非特許文献3)。先進工業国では、この疾患は、子供の15から30%、および成人の2から10%に影響を与える(非特許文献1)。幼児期における喘息およびアレルギーの国際研究(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)のフェーズ1は、オーストラリア、英国、および北欧で20%もの1年間の罹患率を示した(非特許文献4)。しばしばADは、アトピーマーチ(あるアトピー性疾患から別のアトピー性疾患への進行)の第1段階を構成する。およそ60%までのAD患者が、喘息またはアレルギー性鼻炎または食物アレルギーを併発している(非特許文献5)。
【0006】
外用コルチコステロイド(TCS)は、圧倒的に最も高頻度でAD患者に処方される薬物クラスである。しかしながら、TCSの長期適用は、皮膚萎縮、色素沈着異常、ざ瘡様発疹のリスク、および全身吸収に関連するリスク(例えば、視床下部下垂体軸の作用、クッシング病など)のために推奨されない。外用カルシニューリン阻害剤(TCI)は、短期間の処置として一般的に有効かつ安全であるが、皮膚の悪性腫瘍およびリンパ腫のリスク増加の懸念のために、規制当局は、その処方情報において外用タクロリムスおよびピメクロリムスの長期安全性に関する警告の必要性を促してきた。いずれかの外用療法の長い期間にわたる、または大きい表面積への繰り返しの適用も、患者のコンプライアンス低下を引き起こす。第1世代の抗ヒスタミン剤は、そう痒の急性の対症処置のために広く処方されているが、その有効性は限定的であり、その原因の大部分はその鎮痛作用にある。経口免疫抑制剤(非特許文献6)およびグルココルチコイドは効果的であるが、時には重度の毒性および副作用を伴うことから、その使用は短期および/または間欠的療法に限定さ
れる。子供のAD処置において、全身性薬剤は承認されていない。全ての全身性薬剤は、適用外使用であり(シクロスポリン、メトトレキセート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、全身性コルチコステロイド)、使用の証拠的根拠はない。これらの薬剤は全て、長期間使用される場合、患者を重篤な感染症に罹りやすくする広範な免疫抑制作用を有し、悪性腫瘍の高いリスクを有する。他の報告されたこれらの薬剤による顕著な副作用としては、胃炎、発育阻害、糖尿病、体重の増加、高血圧、骨粗しょう症および副腎抑制(コルチコステロイド)、腎毒性、高血圧、振戦、多毛症、頭痛、歯肉増殖症(シクロスポリン)、胃腸障害、潰瘍性口内炎、骨髄抑制、肝毒性および肺線維症(メトトレキセート)、超過敏反応、肝臓酵素の上昇および白血球減少症(アザチオプリン)が挙げられる。さらに、最初のうちは疾患が全身性薬剤で制御される患者のうちの大多数が、療法が中止されたら再発を起こす(非特許文献7;非特許文献8)。
【0007】
シクロスポリンA(CSA)は、体液性および細胞性免疫応答の両方に影響を及ぼす効能のある免疫抑制剤であり、一部の地域では最新の重度ADのための療法である。これは、感染に対する感受性を増加させ、がんの免疫監視を減少させる。他の一般的に認められた毒性としては、高血圧ならびに腎臓および肝臓の機能不全が挙げられる。加えて、CSAは、他の一般的に使用される薬と相互作用することにより、その代謝および作用に影響を及ぼす可能性がある。患者の疾患は、特に全身性グルココルチコイドの投与後に処置が中止された場合、ぶり返すことが多い(非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11)。腫瘍壊死因子α(TNF)阻害剤(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、IL-5阻害剤(例えば、メポリズマブ)、およびCD11a阻害剤(例えば、エファリズマブ)などの生物学的薬剤は、臨床試験において全体的に効果がなかった。それゆえに、ADの代替処置に関する、具体的には、全身療法の候補である患者における重度のADの代替処置に関する重要な未だ満たされていない医療上の必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Bieber 2008、N.Engl.J.Med.358:1483~94
【非特許文献2】Illiら、2004、J.Allergy Clin.Immunol.113:925~31
【非特許文献3】Kayら、1994、J.Am.Acad.Dermatol.30:35~9
【非特許文献4】Williamsら、1999、J.Allergy Clin.Immunol.103:125~38
【非特許文献5】Hongら、2012、Envt.Health Toxicol.27:e2012006
【非特許文献6】Schmittら、2007、JEADV21:606~619
【非特許文献7】Granlundら、1995、Br.J.Dermatol.132:106~112
【非特許文献8】Schmittら、2009、Br.J.Dermatol.162:661~8
【非特許文献9】Schmittら、2009、Brit J Dermatol journal compilation:1~8
【非特許文献10】Schram 2012、Allergy 67:99~106
【非特許文献11】Akhavan 2008、Semin Cutan Med Surg 2008;27:151~155
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特定の態様によれば、中程度から重度のADおよび重度のADを包含するアトピー性皮膚炎(AD)を処置、予防および/またはその症状の重症度を低減するための方法が提供される。本発明の特定の実施態様は、全身療法(全身性免疫抑制剤を包含する)による処置への耐性を有するかまたは全身療法により十分に制御されない重度のADを有する患者を処置するための方法に関する。一部の実施態様において、本発明は、全身性治療剤での処置にもかかわらず制御不能な重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。一部の実施態様において、本発明は、全身性治療剤(例えば、全身性免疫抑制剤)での処置が医学上得策ではない重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本発明の方法は、治療有効量のインターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む医薬組成物の1つまたはそれ以上の用量を対象またはそれを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。
【0010】
特定の実施態様において、全身性治療剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、経口コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される免疫抑制剤である。
【0011】
特定の実施態様において、本発明は、重度のADを処置する、または患者における少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法であって、治療有効量のIL-4Rに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を投与すること、およびAD関連パラメーターにおける改善を決定することを含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、医師による包括的評価(Investigators Global Assessment:IGA);アトピー性皮膚炎の病変体表面積(Body Surface Area Involvement of Atopic Dermatitis:BSA);湿疹面積および重症度指標(Eczema Area and Severity Index:EASI);アトピー性皮膚炎評価スコア(Scoring atopic dermatitis:SCORAD);5-Dそう痒スケール;およびそう痒数値評価スケール(Pruritus Numeric
Rating Scale:NRS)からなる群から選択される1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターにおける改善をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(Global Individual Signs Score:GISS)、患者向け湿疹尺度(Patient Oriented Eczema Measure:POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(Dermatology Life Quality Index :DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす。
【0012】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者を処置するための、またはADを有する患者における少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善するための方法であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、全身療法の候補であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線
(UV)光療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特質を有するか、またはそのような特質に基づき選択される、方法を提供する。本方法は、この態様によれば、治療有効量のIL-4R阻害剤を含む医薬組成物をそれを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施態様において、投与は、以下の作用:(a)EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減;(b)第1の用量の投与後の2週目からの、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;(c)第1の用量の投与後の2週目もの早期における、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減;(d)患者が0または1のIGAを達成し(「解消」または「ほぼ解消」)、0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上低減していること;(e)患者の生活の質における改善の1つまたはそれ以上をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。
【0013】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者におけるそう痒を処置または低減するための方法であって、患者は、全身療法の候補である、方法を提供する。本方法は、これらの態様によれば、重度のADと診断された患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程;およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量それを必要とする患者に投与する工程を含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、単独療法として投与される。他の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用療法(例えば外用コルチコステロイドまたは外用カルシニューリン阻害剤)と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減、および/または0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上の低減をもたらす。
【0014】
特定の態様によれば、本発明は、重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。本方法は、これらの態様によれば、重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者はこれまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、工程;およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む。
【0015】
特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における外用コルチコステロイド(TCS)への依存性を低減するための方法であって、それを必要とする対象に、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含む、方法を包含する。特定のさらなる実施態様において、中程度の効力のまたは高い効力のTCSは、IL-4R阻害剤と同時に投与される。1つのさらなる実施態様において、TCSの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与の際に、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%徐々に低減される。
【0016】
特定の態様によれば、本発明は、再燃またはADの増悪を低減するための方法であって、重度のADを有する患者を選択する工程、およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施
態様において、患者は、難治性ADを有するか、または全身性治療剤(例えば、全身性免疫抑制剤)での療法後に再発を起こしている。
【0017】
特定の態様によれば、本発明は、ADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善する方法であって、中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者はこれまでに、5週間より前、8週間より前、13週間より前、または20週間より前にIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)で処置されたことがある、工程、およびそれを必要とする患者を、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量で再処置する工程であって、再処置は、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減、そう痒NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の低減、および/または0から4のIGAスケールでベースラインから2ポイント以上の低減をもたらす、工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、約50~600mgを含み、直前の用量の1、2、3または4週間後に投与される。
【0018】
特定の態様によれば、本発明は、ADを有する患者におけるADを処置する、または少なくとも1つのAD関連パラメーターを改善する方法であって、(a)ADを有する患者を選択する工程であって、患者は、:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、患者の体重1kg当たり1、2、3、4または5mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される。
【0019】
特定の実施態様によれば、本発明の方法は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量をそれを必要とする対象に投与することを含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、初回用量として約10mgから約600mgのIL-4R阻害剤を投与すること、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量を投与することを含み、各二次用量は、25から400mgのIL-4R阻害剤を含む。特定の実施態様において、初回用量および1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、約10mgから約600mgのIL-4R阻害剤を含む。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、600mgの初回用量、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与され、各二次用量は、300mgを含む。本発明のこの態様によれば、IL-4R阻害剤は、例えば、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回または4週毎に1回の投与頻度で対象に投与してもよい。一実施態様において、各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される。一実施態様において、各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される。特定の実施態様において、本発明の方法は、IL-4R阻害剤をそれを必要とする対象に投与することを含み、IL-4R阻害剤は、対象の体重1kg当たり約1~10mgを含む。特定の実施態様において、それを必要とする対象は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量が投与され、各用量は、対象の
体重1kg当たり1、2、4、5または10mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される。
【0020】
本発明の方法に関して使用できる例示的なIL-4R阻害剤としては、例えば、IL-4Rまたはそのリガンド(IL-4および/またはIL-13)の低分子量の化学的な阻害剤、またはIL-4Rまたはそのリガンドを標的化する生物学的薬剤が挙げられる。特定の実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、IL-4Rのα鎖に結合し、IL-4、IL-13、またはIL-4およびIL-13の両方によるシグナル伝達をブロックする抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)である。一実施態様において、IL-4Rと特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1/2の重鎖可変領域(HCVR)/軽鎖可変領域(LCVR)配列の対中に相補性決定領域(CDR)を含む。特定の実施態様において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR(HCDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を有するHCDR2、配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR3、配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR(LCDR1)、配列番号7のアミノ酸配列を有するLCDR2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するLCDR3を含む。本発明の方法に関して使用できる1つのこのようなタイプの抗原結合タンパク質は、抗IL-4Rα抗体、例えばデュピルマブである。
【0021】
一部の実施態様において、IL-4R阻害剤は、対象に、皮下、静脈内、または腹腔内投与される。
【0022】
特定の実施態様において、本発明は、患者における中程度から重度または重度のADを処置する、またはそう痒を低減するための、医薬品の製造における本発明のIL-4R阻害剤の使用であって、患者は、特定の実施態様において全身療法(例えば、全身性免疫抑制剤)の候補であり、患者は、全身療法に対して耐性であるかまたは不耐性であるか、または患者にとって安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために全身療法が得策ではない、使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における外用コルチコステロイドへの依存性を低減するための、医薬品の製造における本発明のIL-4R阻害剤の使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における重度のADを処置する、またはそう痒を低減するための方法におけるIL-4R阻害剤の使用であって、IL-4R阻害剤がそれを必要とする対象に投与される、使用を提供する。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する対象における外用コルチコステロイドへの依存性を低減するための方法におけるIL-4R阻害剤の使用であって、IL-4R阻害剤がそれを必要とする対象に投与される、使用を提供する。
【0023】
本発明の他の実施態様は、次の詳細な説明の総論から明らかになると予想される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法および実験条件に限定されず、そのような方法および条件は変更が可能であることを理解されたい。また、本明細書において使用される用語は、特定の実施態様のみを説明することを目的としており、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、それにより限定されることを意図しないことも理解されたい。
【0025】
別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が、列挙された値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される
場合、表現「約100」は、99および101ならびにその間にある全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)を包含する。本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置すること」などは、一時的または永続的のいずれかで症状を軽減したり、症状の原因をなくしたりすること、または指定された障害または状態の症状の出現を予防したり、もしくは遅延させたりすることを意味する。
【0026】
本明細書に記載されたものに類似した、またはそれらと同等なあらゆる方法および材料を本発明の実施において使用できるが、好ましい方法および材料をここに記載する。本明細書で述べられた全ての公報は、参照によって本明細書に組み入れ、それら全体が記載されたものとする。
【0027】
重度のアトピー性皮膚炎を処置するための方法
本発明は、IL-4R阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を包含する。本明細書で使用される場合、表現「それを必要とする対象」は、アトピー性皮膚炎の1つまたはそれ以上の症状または徴候を呈示する、および/またはアトピー性皮膚炎と診断されているヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0028】
「アトピー性皮膚炎」(AD)は、本明細書で使用される場合、強烈なそう痒(例えば、重度の痒み)および鱗状の乾燥した湿疹性の病変を特徴とする炎症性皮膚疾患を意味する。用語「アトピー性皮膚炎」としては、これらに限定されないが、表皮バリアの機能不全、アレルギー(例えば、特定の食物、花粉、カビ、チリダニ、動物などに対するアレルギー)、放射線への曝露、および/または喘息によって引き起こされるかまたはそれに関連するADが挙げられる。本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者を処置する方法を包含する。「中程度から重度のAD」は、本明細書で使用される場合、強烈なそう痒を起こす広範にわたる皮膚病変を特徴とし、これは、持続的の細菌、ウイルスまたは真菌感染を合併することが多い。中程度から重度のADはまた、患者における慢性ADも包含する。多くのケースにおいて、慢性病変は、皮膚の肥厚化したプラーク、苔癬化および繊維状の丘疹を包含する。また中程度から重度のADに罹患した患者は、一般的に、体の皮膚の20%より多くが罹患しているか、または目、手および体の折り目も含めた皮膚領域の10%が罹患している。中程度から重度のADはまた、外用コルチコステロイドでの頻繁な処置を必要とする患者に存在するものともみなされる。また患者が、外用コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害剤のいずれかによる処置に対して耐性または難治性である場合、その患者も、中程度から重度のADを有すると称される場合もある。
【0029】
特定の好ましい実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、重度のADを有する患者を指す。「重度のAD」は、本明細書で使用される場合、中程度の効力および高い効力のTCSならびに/または免疫抑制剤療法での処置に対して難治性の慢性的な再発性ADを指す。重度のADは、体表面積の20%より多くが、慢性の強烈なそう痒を起こす病変に罹患していることも特徴とする。特定の実施態様において、この用語は、効能のある外用コルチコステロイド(TCS)での処置を支持するEichenfieldの基準(Eichenfieldら、2014、J.Am.Acad.Dermatol.70:338~351)に従って、慢性ADを指す。特定の実施態様において、この用語は、全身性コルチコステロイドおよび/または非ステロイド系免疫抑制剤での処置への耐性を有する慢性ADを有する患者を包含する。また重度のADを有する患者は、疾患の頻繁な増悪または再燃を示す場合もある。特定の実施態様において、用語「重度のAD」は、医師による包括的評価(IGA)スコアが4の患者を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「再燃」は、「増悪」とも称され、これは、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加を指し、ここで療法の漸増とは、免疫抑制剤療
法(例えば、シクロスポリンA)の用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の経口免疫抑制薬の開始であり得る。特定の実施態様において、本発明は、重度のADを有する患者における再燃または増悪の回数を低減する方法であって、治療有効量のIL-4R阻害剤を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法を包含する。
【0031】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、全身性免疫抑制剤での処置に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する対象を包含する。本発明は、全身性免疫抑制剤での処置に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する対象または患者におけるADを処置する方法を包含する。用語「全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する」は、本明細書で使用される場合、ADを有する対象または患者において、全身性免疫抑制剤で処置したが免疫抑制剤が治療作用を有さないことを指す。一部の実施態様において、この用語は、患者のコンプライアンス低下、ならびに/または毒性作用および副作用、ならびに/または投与された免疫抑制剤によるADの症状を低減する、緩和する、または減少させる効果がないことを指す。一部の実施態様において、この用語は、全身性免疫抑制剤による処置に対して難治性の、中程度から重度のADまたは重度のADに罹っている患者を指す。一部の実施態様において、この用語は、免疫抑制剤での処置にもかかわらず制御不能なADを有する患者を指す。一部の実施態様において、「全身性免疫抑制剤に対して耐性であるか、非応答性であるか、または不十分な応答性を有する」患者は、1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターの改善を示さない場合もある。AD関連パラメーターの例は、本明細書の他所に記載される。例えば、全身性免疫抑制剤での処置は、そう痒または湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアまたは体表面積(BSA)スコアの減少をもたらさない場合もある。一部の実施態様において、この用語は、全身性免疫抑制剤で処置されたが、それ以降に再発したか、および/またはADの増悪または再燃の増加を示す、重度のADを有する患者を指す。特定の実施態様において、この用語は、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために免疫抑制剤療法が得策ではない、重度のADを有する患者を指す。一部の実施態様において、本発明は、初期に全身性免疫抑制剤で1カ月以上で処置されたが、1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターにおける減少を示さない患者における中程度から重度のADまたは重度のADを処置する方法を包含する。例えば、本発明の方法は、全身性免疫抑制剤で処置されており、10%以上の体表面積(BSA)スコアまたは3以上の医師による包括的評価(IGA)スコアを有する、慢性的な再発性ADを有する患者を処置するのに使用することができる。
【0032】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、重度のADを有する患者であって、その疾患がTCSで適切に制御できない患者、経口免疫抑制剤で適切に制御されないか、それに対して不耐性である患者、または免疫抑制剤での処置が、その時点で、以下に従って医師により医学上望ましくないとみなされた場合の患者を包含する:
(A)これまでに、免疫抑制剤に曝露されていないこと(このような患者は、その時点で、以下の理由からこのような処置の候補ではない):
・医療上の禁忌;
・免疫抑制剤の活性物質または賦形剤への過敏症;
・免疫抑制剤に干渉する薬物療法の同時の使用;または
・免疫抑制剤によって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、重篤な感染症のリスクの増加など。
または
(B)これまでに、免疫抑制剤に曝露されており、このような患者は、以下の理由から免疫抑制剤を継続または再開すべきではない場合:
・以前の不耐性および/または許容できない毒性
・不十分な応答、これは、最長6週間の高用量(5mg/kg/日)の後に維持用量(2から3mg/kg/日)に漸減させた免疫抑制剤におけるADの再燃、または維持用量で最短3カ月の後の再燃と定義される。再燃は、療法の漸増を引き起こす徴候および/または症状の増加と定義され、ここで療法の漸増とは、免疫抑制剤用量の増加、より高い効力のTCSクラスへのスイッチ、または別の経口免疫抑制薬の開始であり得る;または
・処方情報で特定されたものを超える用量または持続時間で免疫抑制剤を要すること。
【0033】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、全身療法の候補である、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。用語「全身療法」は、本明細書で使用される場合、治療剤(例えば、経口投与されるコルチコステロイド)および他の免疫抑制剤または免疫調節剤が全身投与されることを指す。本発明の文脈において、用語「全身性免疫抑制剤」としては、これらに限定されないが、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性または経口コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマが挙げられる。特定の実施態様において、この用語はまた、免疫生物学的物質、例えば腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)阻害剤(例えば、抗TNFα抗体、例えばインフリキシマブ)、CD11a阻害剤(例えば、抗CD11a抗体、例えばエファリズマブ)、IgE阻害剤(例えば、オマリズマブ)、CD20阻害剤(例えば、リツキシマブ)も包含する。全身性免疫抑制剤などの全身療法は、再燃の短期間の処置のために、または疾患を制御するための一時的な手段として使用することができるが、その使用は、顕著な副作用、例えば、子供の成長遅延、クッシング症候群、高血圧、グルコース不耐性、ミオパチー、骨壊死、緑内障および白内障によって限定される。全身性免疫抑制剤の使用はまた、ぶり返し現象のリスクも有しており、その場合、疾患の症状は、処置の中断後に著しく悪化する可能性がある。特定の実施態様において、用語「全身療法」、「全身性治療剤」および「全身性免疫抑制剤」は、本開示にわたり同義的に使用される。
【0034】
特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、定期的な免疫抑制剤での処置に加えて、6カ月より長く、1年より長く、2年より長く、約5年より長く、約7年より長く、または約10年より長く、1回またはそれ以上のTCSが投与された、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。特定の実施態様において、用語「それを必要とする対象」は、これまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)、抗生物質、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、中程度から重度または重度のADを有する患者を包含する。患者は、TCSおよび/または免疫抑制剤の有害な副作用を最小化するかまたは回避することを希望する場合がある。本発明は、患者における中程度から重度または重度のADを処置する方法であって、TCSと同時に、IL-4R阻害剤を投与することを含み、投薬量は、TCSの有害な副作用が最小化または予防されるように調整される、方法を包含する。特定の実施態様において、本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者におけるTCSへの依存性を低減する方法であって、効能のあるTCSと同時に、治療有効量のIL-4R阻害剤を投与することを含み、患者が使用するTCSの量は、IL-4R阻害剤が投与されない患者と比較して約50%低減される、方法を包含する。特定の実施態様において、本発明は、中程度から重度または重度のADを有する患者におけるTCSへの依存性を低減する方法であって、効能のあるTCSと同時に、治療有効量のIL-4R阻害剤を投与することを含み、患者が使用するTCSの量は、IL-4R阻害剤での処置の前に患者が使用する量と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%低減される、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤およびTCSの投与は、単独療法と比較して、ADの処置
において相加または相乗的な活性をもたらす。
【0035】
用語「TCS」は、本明細書で使用される場合、グループI、グループII、グループIIIおよびグループIVの外用コルチコステロイドを包含する。世界保健機関の解剖治療分類法によれば、コルチコステロイドは、ヒドロコルチゾンと比較したその活性に基づいて、弱い(グループI)、中程度に効能のある(グループII)および効能のある(グループIII)および非常に効能のある(グループIV)と分類される。グループIV TCS(非常に効能のある)は、ヒドロコルチゾンの最大600倍の効能があり、その例としては、プロピオン酸クロベタゾールおよびハルシノニドが挙げられる。グループIII TCS(効能のある)は、ヒドロコルチゾンの50から100倍もの効能があり、その例としては、これらに限定されないが、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチレート、フランカルボン酸モメタゾン、およびアセポン酸メチルプレドニゾロンが挙げられる。グループII TCS(中程度に効能のある)は、ヒドロコルチゾンの2から25倍もの効能があり、その例としては、これらに限定されないが、酪酸クロベタゾン、およびトリアムシノロンアセトニドが挙げられる。グループI TCS(軽度)は、ヒドロコルチゾンを包含する。
【0036】
重度のADを有する患者は、ADを処置するために中程度の効力のまたは高い効力のTCSを処方されることが多い。このような処置は、例えば、2カ月より長い、3カ月より長い、4カ月より長い、5カ月より長い、または6カ月より長い可能性がある。従来技術においてTCSでの処置は有害な副作用を引き起こすことが公知である。特定の態様において、本発明は、重度のADを有する患者における、TCSの使用またはTCSへの依存性を低減する、および/もしくはTCSの有害な副作用を低減する方法であって、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、中程度の効力のまたは高い効力のTCSと組み合わせて投与され、ここで投与されるTCSの量は、患者の重度のADが処置されるように、および/または1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターが顕著に改善されるように、同様に、TCSによる副作用および毒性が最小化されるかもしくは予防されるように、徐々に低減される。特定の実施態様において、本発明は、TCSまたは免疫抑制剤の低減または中止の際のぶり返しのリスクを低減するかまたはなくす方法であって、バックグラウンド療法で制御不能な重度のADを有する患者を選択すること、およびIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量をそれを必要とする患者に投与することを含む方法を包含する。特定のさらなる実施態様において、患者は、初期において、同時に投与されるバックグラウンド療法と組み合わせてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量が投与され;それに続いて徐々にバックグラウンド療法が低減される。特定の実施態様において、バックグラウンド療法は、TCS、カルシニューリン阻害剤、全身性免疫抑制剤およびエモリエント剤からなる群から選択される治療剤を含む。一実施態様において、重度のADを有する患者は、初期において全身性免疫抑制剤で処置され、ここで全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンAである。特定の実施態様において、バックグラウンド療法の量は、IL-4R阻害剤が投与されない患者と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%低減される。
【0037】
本発明は、それを必要とする対象における1つまたはそれ以上のアトピー性皮膚炎(AD)関連パラメーターを改善することによって重度のADを処置するための方法であって、重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程、およびIL-4R阻害剤を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、方法を包含する。一実施態様において、IL-4R阻害剤を含む医薬組成物は、効能のあるTCSと組み合わせて投与される。
【0038】
「AD関連パラメーター」の例としては:(a)医師による包括的評価(IGA);(b)アトピー性皮膚炎の病変体表面積(BSA);(c)湿疹面積および重症度指標(EASI);(d)SCORAD;(e)5-Dそう痒スケール;および(f)そう痒数値評価スケール(NRS)が挙げられる。「AD関連パラメーターにおける改善」は、IGA、BSA、EASI、SCORAD、5-Dそう痒スケール、またはNRSの1つまたはそれ以上のベースラインからの減少を意味する。本明細書で使用される場合、用語「ベースライン」は、AD関連パラメーターに関して、本発明の医薬組成物を投与する前または投与したときの対象に関するAD関連パラメーターの数値を意味する。
【0039】
AD関連パラメーターが「改善された」かどうかを決定するために、パラメーターは、ベースライン時に、および本発明の医薬組成物投与後の1つまたはそれ以上のタイムポイントで定量化される。例えば、AD関連パラメーターは、本発明の医薬組成物での最初の処置後の、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、14日目、15日目、22日目、25日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、85日目に;または1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、もしくはそれより長い期間の最後に測定することができる。処置開始後の特定のタイムポイントにおけるパラメーターの値と、ベースライン時におけるパラメーターの値との差を使用して、AD関連パラメーターが「改善」された(例えば、減少した)かどうかを確認することができる。AD関連パラメーターは、その全体を本明細書に組み入れる米国特許公報第20140072583号に記載されている。本発明の文脈において、「それを必要とする対象」は、例えば、処置前に、例えばIGA、BSA、EASI、SCORAD、5D-そう痒、および/またはNRSスコアなどの1つまたはそれ以上のAD関連パラメーターの上昇を呈示する(または呈示していた)対象を包含していてもよい。例えば、本発明の方法は、3以上または4以上のIGA;または10%より多くのBSAを有する患者に、IL-4R阻害剤を投与することを含む。
【0040】
一態様によれば、本発明は、中程度から重度または重度のADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善する方法であって、(1)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、:(a)患者が、シクロスポリンA(CsA)に対する不十分な応答または不耐性の確認された病歴を有する;(b)患者が、4以上のベースラインにおけるピークのそう痒NRSを有すること;(c)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(d)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;および(e)患者が、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、膨疹、アレルギーおよび環境のアレルゲンからなる群から選択される並行する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(2)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を提供する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は:(i)EASIにおけるベースラインからの70%より多くの減少;(ii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIにおけるベースラインからの約75%の減少;(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、そう痒NRSにおけるベースラインからの50%より多くの減少;(iv)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、ピークのそう痒NRSにおける4ポイント以上の改善;(v)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、IGAスコアにおける2ポイントの改善;(vi)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の16週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAにおけるベースラインからの減少;(vii)再燃または増悪の回数における低減;および(viii)皮膚感染の発生率における低減;および(vi
i)例えば、皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)または他のあらゆる本明細書で開示された患者報告式のアウトカムによって決定されるような、生活の質の改善からなる群から選択される作用をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメント(例えばデュピルマブ)である。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤と組み合わせて投与される。特定の実施態様において、第2の治療剤は、外用コルチコステロイドおよび外用カルシニューリン阻害剤からなる群から選択される。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の各用量は、50~600mgを含み、各用量は、直前の用量の1週間または2週間後に投与される。一実施態様において、抗IL-4R抗体の各用量は、300mgを含み、各用量は、週1回または2週毎に1回投与される。特定の具体的な実施態様において、1つまたはそれ以上の用量は、600mgを含む第1の用量、それに続く1つまたはそれ以上の二次用量を含み、ここで各二次用量は、300mgを含み、各二次用量は、直前の用量の1週間または2週間後に投与される。
【0041】
一態様によれば、本発明は、中程度から重度の、または重度のADを有する患者における、ADを処置する、またはそう痒を低減する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、患者はこれまでに、IL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体、例えばデュピルマブ)で処置されたことがある、方法を包含する。特定の実施態様において、患者はこれまでに、4週間より前に、8週間より前に、12週間より前に、または20週間より前にデュピルマブで処置されたことがある。特定の実施態様において、本発明は、IL-4R阻害剤での先行の処置を、4週間より前に、8週間より前に、または12週間より前に中断している患者における、中程度から重度または重度のADを処置する方法を包含する。本方法は、この態様によれば、それを必要とする患者をIL-4R阻害剤で再処置することを含み、ここで再処置は、患者の疾患が処置されるか、または少なくとも1つのAD関連パラメーターが改善されるようにIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与することを含む。特定の実施態様において、患者の再処置は、IL-4R阻害剤の投与の際に、EASIスコアにおけるベースラインから70%より多くの低減、および/またはそう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減スコアをもたらす。
【0042】
特定の実施態様において、本発明の方法は、1つまたはそれ以上のAD関連バイオマーカー(例えば、IgE)の上昇したレベルを示す患者を処置するのに使用することができる。AD関連バイオマーカーは、その全体を本明細書に組み入れる米国特許公報第20140072583号に記載されている。例えば、本発明の方法は、IgEまたはTARCまたはペリオスチンの上昇したレベルを有する患者に、IL-4R阻害剤を投与することを含む。本発明の文脈において、「それを必要とする患者」は、例えば、処置前に、例えばIgEおよび/またはTARCなどの1つまたはそれ以上のAD関連バイオマーカーの上昇したレベルを呈示する(または呈示していた)対象を包含していてもよい。特定の実施態様において、「それを必要とする対象」は、よりADになりやすいか、またはAD関連バイオマーカーの上昇したレベルを示す可能性がある集団のサブセットを包含していてもよい。
【0043】
一部の実施態様において、本明細書に記載の方法は、1歳以下の子供における重度のADを処置するのに使用することができる。例えば、本発明の方法は、1カ月未満、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月または12カ月未満の乳児を処置するのに使用することができる。他の実施態様において、本発明は、18歳以下の子供および/または青年を処置する方法を包含する。例えば、本発明の方法は、17歳未満、16歳、15歳、14歳、13歳、12歳、11歳、10歳、9歳、8歳、7歳、6歳、5歳、4歳、3歳、または2歳未満の子供または青年を処置するのに使用することができる。
【0044】
特定の態様によれば、本発明は、中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、(a)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;および(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;ならびに(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤の投与は:(i)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから30%より多くの低減;(ii)そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;および(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の12週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAスコアにおけるベースラインからの低減からなる群から選択される治療作用をもたらす。特定の実施態様において、IL-4R阻害剤は、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、抗細菌性の治療剤、ならびに閉塞性気道疾患のための治療剤、肺の障害および/またはアレルギー反応からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される。
【0045】
インターロイキン-4受容体阻害剤
本発明の方法は、インターロイキン-4受容体(IL-4R)阻害剤を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「IL-4R阻害剤」(本明細書では「IL-4R阻害剤」、「IL-4Rαアンタゴニスト」、「IL-4Rブロッカー」、「IL-4Rαブロッカー」などとも称される)は、IL-4RαまたはIL-4Rリガンドに結合するかまたはそれと相互作用し、1型および/または2型IL-4受容体の正常な生物学的シグナル伝達機能を阻害または減弱するあらゆる薬剤である。ヒトIL-4Rαは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。1型IL-4受容体は、IL-4Rのα鎖およびγc鎖を含む二量体受容体である。2型IL-4受容体は、IL-4Rのα鎖およびIL-13Rのα1鎖を含む二量体受容体である。1型IL-4受容体は、IL-4と相互作用し、それにより刺激されるが、2型IL-4受容体は、IL-4およびIL-13の両方と相互作用し、それらにより刺激される。したがって、本発明の方法で使用できるIL-4R阻害剤は、IL-4媒介シグナル伝達、IL-13媒介シグナル伝達、またはIL-4媒介シグナル伝達とIL-13媒介シグナル伝達の両方をブロックすることによって機能する可能性がある。したがって本発明のIL-4R阻害剤は、IL-4および/またはIL-13と1型または2型受容体との相互作用を防ぐことができる。
【0046】
IL-4R阻害剤のカテゴリーの非限定的な例としては、低分子量のIL-4R阻害剤、抗IL-4Rアプタマー、ペプチドベースのIL-4R阻害剤(例えば、「ペプチボディ」分子)、「レセプターボディ」(例えば、IL-4R要素のリガンド結合ドメインを含む操作された分子)、およびヒトIL-4Rαと特異的に結合する抗体または抗体の抗
原結合フラグメントが挙げられる。本明細書で使用される場合、IL-4R阻害剤としてはさらに、IL-4および/またはIL-13と特異的に結合する抗原結合タンパク質も挙げられる。
【0047】
抗IL-4Rα抗体およびその抗原結合フラグメント
本発明の特定の例示的な実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントである。用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合によって相互連結した、4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、加えてその多量体(例えば、IgM)を包含する。典型的な抗体において、各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、HCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書では、LCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより高度に保存された領域が散在する相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細かく分類できる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本発明の様々な実施態様において、抗IL-4R抗体(またはそれらの抗原結合部位)のFRは、ヒト生殖細胞系配列と同一であってもよいし、または天然にもしくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2またはそれより多くのCDRのサイドバイサイドの分析に基づき定義することができる。
【0048】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用される場合、完全抗体分子の抗原結合フラグメントも包含する。抗体の「抗原結合部位」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を包含する。抗体の抗原結合フラグメントは、あらゆる好適な標準的な技術、例えばタンパク質分解による消化、または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含む組換え遺伝子工学技術を使用して、例えば完全抗体分子から誘導することができる。このようなDNAは、公知であるか、および/または例えば商業的な供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ-抗体ライブラリーなど)から容易に入手することも可能であり、または合成することもできる。DNAは、配列決定して、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって操作することができ、例えば、1つまたはそれ以上の可変および/または定常ドメインを好適な配置に配置すること、またはコドンを導入すること、システイン残基を入れる、アミノ酸を修飾する、付加するまたは欠失させることなどが可能である。
【0049】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;および(vii)抗体の高度可変領域を模擬するアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)、または拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドが挙げられる。他の操作された分子、例えばドメイン特異的な抗体、単一ドメイン抗体、ドメインが欠失した抗体、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば1価ナノボディ、2価ナノボディなど)、小モジュール免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインも、本明細書で使用される場合、表現「抗原結合フラグメント」のなかに包含される。
【0050】
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むと予想される。可変ドメインは、あらゆるサイズまたはアミノ酸組成を有していてもよく、一般的に、1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接するかまたはそれと共にフレーム内にある少なくとも1つのCDRを含むと予想される。VLドメインに付随してVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VHおよびVLドメインは、あらゆる好適な配置で互いに存在していてもよい。例えば、可変領域は、二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有していてもよい。代替として、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含有していてもよい。
【0051】
特定の実施態様において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合で連結された少なくとも1つの可変ドメインを含有していてもよい。本発明の抗体の抗原結合フラグメント中で見出される可能性がある可変および定常ドメインの非限定的な例示的な配置としては:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLが挙げられる。上記で列挙した例示的な配置のいずれかを含む可変および定常ドメインのあらゆる配置において、可変および定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよいし、または完全または部分的なヒンジまたはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子中の隣接する可変および/または定常ドメイン間にフレキシブルなまたはややフレキシブルな連結をもたらす、少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれより多くの)アミノ酸からなっていてもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに、および/または1つまたはそれ以上の単量体のVHまたはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合で会合した、上記で列挙した可変および定常ドメイン配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでいてもよい。
【0052】
用語「抗体」はまた、本明細書で使用される場合、多重特異性を有する(例えば、二重特異性の)抗体も包含する。多重特異性抗体または抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含むと予想され、ここで各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープと特異的に結合することが可能である。あらゆる多重特異性抗体の様式を、当業界において利用可能な慣例的な技術を使用して、本発明の抗体または抗体の抗原結合フラグメントに関する使用に適合させることができる。例えば、本発明は、二重特異性抗体の使用を含む方法であって、免疫グロブリンの1つのアームは、IL-4Rαまたはそのフラグメントに特異的であり、免疫グロブリンの他のアームは、第2の治療標的に特異的であるか、または治療成分にコンジュゲートしている、方法を包含する。本発明に関して使用可能な例示的な二重特異性様式としては、これらに限定されないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディの二重特異性様式、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブ-イントゥー-ホール、共通の軽鎖(例えば、ノブ-イントゥー-ホールを含む共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用性Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性様式が挙げられる(例えば、前述の様式の総論に関して、Kleinら、2012、mAbs 4:6、1~11、およびそこで引用された文献を参照)。二重特異性抗体はまた、例えばペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することもでき、その場合、直交性の化学反応性を有する天然にはないアミノ酸を使用して、部位特異的な抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを生成し、次いでこれを、既定の組成、原子価および幾何学的配置を有する多量体の複合体に自己集合させる。(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:2012年12
月4日を参照])。
【0053】
本発明の方法で使用される抗体は、ヒト抗体であってもよい。用語「ヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を包含することが意図される。本発明のヒト抗体は、それにもかかわらず、例えばCDR中、特定にはCDR3中に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によって、またはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を包含していてもよい。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳類種、例えばマウスの生殖細胞系由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフト化された抗体を包含することは意図されない。
【0054】
本発明の方法で使用される抗体は、組換えヒト抗体であってもよい。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で用いられる場合、組換え手段によって製造、発現、作製または単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞(以下でさらに説明される)にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下でさらに説明される)から単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む他のあらゆる手段によって製造、発現、作製または単離された抗体を包含することが意図される。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。しかしながら、特定の実施態様において、このような組換えヒト抗体は、インビトロでの変異誘発(またはヒトIg配列に関するトランスジェニック動物が使用される場合、インビボでの体細胞変異誘発)に供されることから、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列由来でありそれに関連するが、インビボにおけるヒト抗体の生殖細胞系レパートリー中に天然に存在しない可能性がある配列である。
【0055】
特定の実施態様によれば、本発明の方法で使用される抗体は、IL-4Rαと特異的に結合する。用語「特異的に結合する」などは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、生理学的な条件下で比較的安定な抗原との複合体を形成することを意味する。抗体が抗原と特異的に結合するかどうかを決定するための方法は当業界において周知であり、その例としては、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などが挙げられる。例えば、本発明の文脈で使用される場合、IL-4Rαと「特異的に結合する」抗体は、表面プラズモン共鳴アッセイで測定した場合、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、約0.1nM未満または約0.05nM未満のKDでIL-4Rαまたはその部分と結合する抗体を包含する。しかしながら、ヒトIL-4Rαと特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の(非ヒト)種由来のIL-4Rα分子への交差反応性を有する可能性がある。
【0056】
本発明の特定の例示的な実施態様によれば、IL-4R阻害剤は、米国特許第7,608,693号に記載の抗IL-4R抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む、重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む、抗IL-4Rα抗体、またはその抗原結合フラグメントである。特定の例示的な実施態様において、本発明の方法に関して使用できる抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相
補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む。特定の実施態様によれば、抗IL-4Rα抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、抗IL-4R抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1を含むHCVRおよび配列番号2を含むLCVRを含む。特定の例示的な実施態様によれば、本発明の方法は、配列番号3-配列番号4-配列番号5-配列番号6-配列番号7-配列番号8のHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列を含む抗IL-4R抗体、またはその生物学的に同等なものの使用を含む。特定の実施態様において、本発明の方法は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖を含む抗IL-4R抗体の使用を含む。一部の実施態様において、抗IL-4R抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む例示的な抗体は、「デュピルマブ」と称されそのようなものとして当業界において公知の完全ヒト抗IL-4R抗体である。特定の例示的な実施態様によれば、本発明の方法は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものの使用を含む。用語「生物学的に同等なもの」は、本明細書で使用される場合、類似の実験条件下で、単回用量または複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与される場合、吸収の速度および/または程度がデュピルマブのそれらと有意差を示さない薬学的に等価なものまたは薬学的な代替物である、抗IL-4R抗体もしくはIL-4R結合タンパク質またはそれらのフラグメントを指す。本発明の文脈において、この用語は、それらの安全性、純度および/または効力においてデュピルマブと臨床的に意味のある差を有さない、IL-4Rに結合する抗原結合タンパク質を指す。
【0057】
本発明の方法に関して使用できる他の抗IL-4Rα抗体としては、例えば、AMG317と称されそのようなものとして当業界において公知の抗体(Correnら、2010、Am J Respir Crit Care Med.、181(8):788~796)、またはMEDI9314、または米国特許第7,186,809号、米国特許第7,605,237号、米国特許第7,638,606号、米国特許第8,092,804号、米国特許第8,679,487号、もしくは米国特許第8,877,189号に記載の抗IL-4Rα抗体のいずれかが挙げられる。
【0058】
本発明の方法に関して使用される抗IL-4Rα抗体は、pH依存性の結合特徴を有していてもよい。例えば、本発明の方法で使用するための抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合を呈示してもよい。代替として、本発明の抗IL-4Rα抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでその抗原への強化された結合を呈示してもよい。表現「酸性pH」は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5.9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を包含する。本明細書で使用される場合、表現「中性pH」は、約7.0から約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を包含する。
【0059】
特定の場合において、「中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合」は、中性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値に対する酸性pHでIL-4Rαに結合する抗体のKD値の比率を単位として表される(または逆もまた同様)。例えば
、抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の目的に関して、抗体またはその抗原結合フラグメントが約3.0またはより大きい酸性/中性のKD比率を呈示する場合、「中性pHと比較して、酸性pHで低減したIL-4Rαへの結合」を呈示するとみなすことができる。特定の例示的な実施態様において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの酸性/中性のKD比率は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0であってもよいし、またはそれより大きくてもよい。
【0060】
pH依存性の結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して、酸性pHで低減した(または強化された)特定の抗原への結合に関して抗体の集団をスクリーニングすることによって得ることができる。加えて、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変によって、pH依存性特徴を有する抗体を得ることができる。例えば、抗原結合ドメインの(例えば、CDR内の)1つまたはそれ以上のアミノ酸をヒスチジン残基で置換することによって、中性pHと比べて酸性pHで抗原結合が低減した抗体を得ることができる。本明細書で使用される場合、表現「酸性pH」は、6.0またはそれより低いpHを意味する。
【0061】
医薬組成物
本発明は、IL-4R阻害剤を患者に投与することを含む方法であって、IL-4R阻害剤は、医薬組成物中に含有されている、方法を包含する。本発明の医薬組成物は、好適な担体、賦形剤、および好適な移動、送達、耐性などを提供する他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な製剤が、全ての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、 Easton、PAに見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末剤、ペースト剤、軟膏剤、ゼリー剤、ワックス剤、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)を含有する小胞(例えばLIPOFECTIN(商標))、DNAコンジュゲート、無水の吸収ペースト、水中油型および油中水型乳剤、乳剤、カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powellら「Compendium of
excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311も参照されたい。
【0062】
本発明の方法に従って患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、症状、状態、投与経路などに応じて様々であってもよい。用量は、典型的には体重または体表面積に従って計算される。状態の重症度に応じて、処置の頻度および持続時間を調整することができる。抗IL-4R抗体を含む医薬組成物を投与するための有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定することができる;例えば、患者の進行を定期的な評価によってモニターし、それに応じて用量を調整することができる。さらに、投薬量を種間で概算することは、当業界において周知の方法を使用して実行することができる(例えば、Mordentiら、1991、Pharmaceut.Res.8:1351)。本発明に関して使用できる抗IL4R抗体の特定の例示的な用量およびそれを含む投与レジメンは、本明細書の他所で開示される。
【0063】
IL-4R阻害剤を含む医薬組成物を投与するのに使用できる様々な送達系が公知であり、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、突然変異ウイルスを発現することが可能な組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスが挙げられる(例えば、Wuら、1987、J.Biol.Chem.262:4429~4432を参照)
。投与方法としては、これらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられる。組成物は、あらゆる便利な経路によって、例えば点滴またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚の内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を介した吸収によって投与してもよいし、他の生物活性薬剤と共に投与してもよい。
【0064】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、本発明の医薬組成物を送達することにおいてペン型送達デバイスの適用が容易である。このようなペン型送達デバイスは、再使用できるものであってもよいし、または使い捨てであってもよい。再使用可能なペン型送達デバイスは、一般的に、医薬組成物を含有する入れ替え可能なカートリッジを利用する。カートリッジ中の医薬組成物の全てが投与されカートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に廃棄して、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと入れ替えることができる。次いでペン型送達デバイスを再使用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスでは、入れ替え可能なカートリッジはない。そうではなく、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内のリザーバ中に保持された医薬組成物で充填されている。リザーバ中の医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0065】
多数の再使用可能なペン型および自己注射器送達デバイスが、本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される。例として、いくつか例を挙げれば、これらに限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用される使い捨てのペン型送達デバイスの例として、いくつか例を挙げれば、これらに限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自己注射器(Amgen、Thousand Oaks、CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、およびHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)が挙げられる。
【0066】
特定の状況において、医薬組成物は、制御放出システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを使用することができる(Langer、上記;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施態様において、高分子材料を使用することができる;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(編)、1974、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施態様において、制御放出システムは、組成物の標的の近位に設置することができ、したがって、全身用量の画分のみを必要とする(例えば、Goodson、1984、Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁を参照)。他の制
御放出システムは、Langer、1990、Science 249:1527~1533による総論で論じられている。
【0067】
注射製剤としては、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴などのための剤形を挙げることができる。これらの注射製剤は、公知の方法によって製造することができる。例えば、注射製剤は、例えば、慣習的に注射剤に使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に、上述される抗体またはその塩を溶解させること、懸濁すること、または乳化することによって製造することができる。注射剤のための水性媒体として、例えば、生理的食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張溶液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などと組み合わせて使用することができる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが採用され、これらは、可溶化剤、例えば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと組み合わせて使用することができる。このようにして製造された注射剤は、適切なアンプル中に充填することができる。
【0068】
有利には、上述した経口または非経口の使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合させた単位用量の剤形に製造される。このような単位用量の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが挙げられる。
【0069】
本発明に関して使用することができる抗IL-4R抗体を含む例示的な医薬組成物は、例えば、米国特許第8,945,559号に開示されている。
【0070】
投与レジメン
本発明は、週約4回、週2回、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、5週毎に1回、6週毎に1回、8週毎に1回、12週毎に1回の投与頻度で、または治療応答が達成される限りそれより低い頻度で、IL-4R阻害剤を対象に投与することを含む方法を包含する。抗IL-4R抗体の投与を含む特定の実施態様において、約25mg、50mg、150mg、200mg、または300mgの量での週1回の投与が採用される。抗IL-4R抗体の投与を含む特定の実施態様において、約25mg、50mg、150mg、200mg、または300mgの量での2週毎に1回の投与が採用される。
【0071】
本発明の特定の実施態様によれば、所定の期間にわたりIL-4R阻害剤の複数の用量が対象に投与されてもよい。本発明のこの態様による方法は、IL-4R阻害剤の複数の用量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与すること」は、IL-4R阻害剤の各用量が、異なるタイムポイントで、例えば、予め決定されたインターバル(例えば、数時間、数日、数週または数カ月)で隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、患者に、IL-4R阻害剤の単一の初回用量、それに続いてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の二次用量、場合によりそれに続いてIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の三次用量を逐次的に投与することを含む方法を包含する。
【0072】
用語「初回用量」、「二次用量」、および「三次用量」は、IL-4R阻害剤の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースラインの用量」とも称される)であり;「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次、および三次用量は全て、同じ量のIL-4R阻害剤を含有していてもよいが、一般的に、投与頻度に応じて互いに異なっていてもよい。しかしながら、特定の実施態様において、初回、二次および/または三次用量に含有されるIL-4R阻害剤の量は、処置の経過中
において互いに異なる(例えば、必要に応じて多くまたは少なく調整される)。特定の実施態様において、初回用量は、第1の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。一部の実施態様において、抗体またはそのフラグメントの第1の量は、第2の量の抗体またはその抗原結合フラグメントの1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、または5倍である。特定の実施態様において、1つまたはそれ以上の(例えば、1、2、3、4、または5つの)用量は、「負荷用量」として処置レジメンの開始時に投与され、それに続いてより低い頻度で後続の用量(例えば、「維持用量」)が投与される。例えば、IL-4R阻害剤は、約300mgまたは約600mgの負荷用量で、それに続いて約25mgから約400mgの1つまたはそれ以上の維持用量で、それを必要とする患者に投与されてもよい。一実施態様において、初回用量および1つまたはそれ以上の二次用量はそれぞれ、10mgから600mgのIL-4R阻害剤、例えば、100mgから400mgのIL-4R阻害剤、例えば、10mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgのIL-4R阻害剤を包含する。
【0073】
1つの例示的な本発明の実施態様において、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1から14週(例えば、1週、1週半、2週、2週半、3週、3週半、4週、4週半、5、5週半、6週、6週半、7週、7週半、8週、8週半、9週、9週半、10週、10週半、11週、11週半、12週、12週半、13週、13週半、14週、14週半、またはそれより多くの週)の後に投与される。語句「直前の用量」は、本明細書で使用される場合、一連の複数回投与におけるその次の用量の投与の前に患者に投与されるIL-4R阻害剤の用量であって、その間に介在する用量がないことを意味する。
【0074】
本発明のこの態様による方法は、あらゆる数のIL-4R阻害剤の二次および/または三次用量を患者に投与することを含んでいてもよい。例えば、特定の実施態様において、1つのみの単一の二次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2つまたはそれより多くの(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施態様において、1つのみの単一の三次用量が患者に投与される。他の実施態様において、2つまたはそれより多くの(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、またはそれより多くの)三次用量が患者に投与される。
【0075】
複数の二次用量を含む実施態様において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各二次用量は、直前の用量の1から6週間後に患者に投与されてもよい。同様に、複数の三次用量を含む実施態様において、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与されてもよい。例えば、各三次用量は、直前の用量の2から4週間後に患者に投与されてもよい。代替として、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、レジメンの経過中に変更してもよい。
【0076】
本発明の方法は、特定の実施態様によれば、外用コルチコステロイド(TCS)をIL-4R阻害剤(例えば、抗IL-4R抗体)と組み合わせて対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、表現「と組み合わせて」は、TCSが、IL-4R阻害剤の前に、その後に、またはそれと並行して投与されることを意味する。用語「と組み合わせて」はまた、IL-4R阻害剤およびTCSの逐次投与または同時投与も包含する。
【0077】
例えば、TCSが、IL-4R阻害剤の「前に」投与される場合、IL-4R阻害剤の投与から、72時間より長い期間、約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分前に投与することができる。IL-4R阻害剤の「後に」投与される場合、TCSは、IL-4R阻害剤の投与から、約10分、約15
分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、約72時間、または72時間より長い期間後に投与することができる。IL-4R阻害剤と「並行する」投与は、TCSが、別個の剤形で、IL-4R阻害剤投与から5分未満以内に(IL-4R阻害剤投与の前に、その後に、またはそれと同時に)対象に投与されるか、またはTCSとIL-4R阻害剤の両方を含む単一の組み合わされた投薬製剤として対象に投与されることを意味する。
【0078】
投薬
本発明の方法に従って対象に投与されるIL-4R阻害剤の量(例えば、抗IL-4R抗体)は、一般的に、治療有効量である。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」は、(a)1つまたはそれ以上のAD関連パラメーター(本明細書の他所に記載した通り)における改善;および/または(b)アトピー性皮膚炎の1つまたはそれ以上の症状または徴候における検出可能な改善の1つまたはそれ以上をもたらすIL-4R阻害剤の量を意味する。本発明の文脈において、「治療有効量」は、(a)EASIにおけるベースラインからの少なくとも70%の減少;(b)そう痒における少なくとも30%の低減;(c)IGAにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;(d)NRSにおけるベースラインからの4ポイント以上の減少;(e)スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)の皮膚定着における減少;(f)IgEまたはTARCなどのAD関連バイオマーカーのレベルにおける低減;(g)TCSの使用における少なくとも20%の低減;および/または(h)再燃またはADの増悪の数における低減の1つまたはそれ以上をもたらすIL-4R阻害剤の量を包含する。
【0079】
抗IL-4R抗体のケースにおいて、免疫学的に有効な量は、約0.05mgから約600mg、例えば、約0.05mg、約0.1mg、約1.0mg、約1.5mg、約2.0mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mg、約510mg、約520mg、約530mg、約540mg、約550mg、約560mg、約570mg、約580mg、約590mg、または約600mgの抗IL-4R抗体であり得る。特定の実施態様において、10mg、25mg、50mg、75mg、150mg、または300mgの抗IL-4R抗体が対象に投与される。
【0080】
個々の用量中に含有されるIL-4R阻害剤の量は、対象の体重1キログラム当たりの抗体のミリグラムの単位(すなわち、mg/kg)で表すことができる。例えば、IL-4R阻害剤は、対象の体重1kg当たり約0.0001から約100mgの用量で対象に投与されてもよい。
【0081】
選択された実施態様
実施態様1において、本発明は、重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性であり、および/または前記療法が得策ではない、工程;および(b)それを必要とする患者に、インターロイキン4受容体(IL-4R)阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を投与する工程を
含む方法を包含する。
【0082】
実施態様2において、本発明は、療法が、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために得策ではない、実施態様1に記載の方法を包含する。
【0083】
実施態様3において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、実施態様1または2に記載の方法を包含する。
【0084】
実施態様4において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、実施態様3に記載の方法を包含する。
【0085】
実施態様5において、本発明は、患者は、以前にCSAに曝露されておらず、医療上の禁忌、CSAまたは賦形剤に対する過敏症、CSAとの併用が禁止された付随的な薬物療法の使用、CSAによって誘発された腎臓損傷に対する感受性の増加、CSAによって誘発された肝臓傷害に対する感受性の増加、および重篤な感染症のリスクの増加からなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、実施態様4に記載の方法を包含する。
【0086】
実施態様6において、本発明は、患者は、以前にCSAに曝露されており、不耐性、許容できない毒性、不十分な応答、患者の体重1kg当たり5mg/日より高い用量でCSAが必要なこと、および1年を超える持続時間にわたりCSA投与が必要なことからなる群から選択される状態のためにCSA療法が得策ではない、実施態様4に記載の方法を包含する。
【0087】
実施態様7において、本発明は、患者はこれまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療剤で処置されたことがある、実施態様1~3のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0088】
実施態様8において、本発明は、そう痒を処置または低減する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、全身性免疫抑制剤療法に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、工程;および(b)IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0089】
実施態様9において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、全身性コルチコステロイド、およびインターフェロン-ガンマからなる群から選択される、実施態様8に記載の方法を包含する。
【0090】
実施態様10において、本発明は、全身性免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CSA)である、実施態様8または9に記載の方法を包含する。
【0091】
実施態様11において、本発明は、患者は、重度のADを有する、実施態様8~10のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0092】
実施態様12において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、患者のそう痒における
ベースラインからの少なくとも30%の低減をもたらす、実施態様8~11のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0093】
実施態様13において、本発明は、重度のADを処置する方法であって、(a)重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は、これまでに、シクロスポリンA、IgE阻害剤、TNFアルファ阻害剤、CD11a阻害剤、CD20阻害剤、抗生物質、IL-4R阻害剤、デュピルマブ、全身性免疫抑制剤、外用コルチコステロイド、経口コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤および光線療法からなる群から選択される治療で処置されたことがある、工程;および(b)IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0094】
実施態様14において、本発明は、患者は、治療に対して耐性であるか、不十分な応答性を有するか、または不耐性である、実施態様13に記載の方法を包含する。
【0095】
実施態様15において、本発明は、療法は、患者に対する安全性および健康上のリスクに加えて最適下限の効能のために得策ではない、実施態様13または14に記載の方法を包含する。
【0096】
実施態様16において、本発明は、1つまたはそれ以上の用量は、50~600mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0097】
実施態様17において、本発明は、1つまたはそれ以上の用量は、300mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0098】
実施態様18において、本発明は、IL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量は、週1回、2週毎に1回、3週毎に1回、または4週毎に1回投与される、実施態様16または17に記載の方法を包含する。
【0099】
実施態様19において、本発明は、IL-4R阻害剤は、初回用量で、それに続いて1つまたはそれ以上の二次用量で投与される、実施態様1~15のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0100】
実施態様20において、本発明は、初回用量は、50~600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、25~400mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様19に記載の方法を包含する。
【0101】
実施態様21において、本発明は、初回用量は、600mgのIL-4R阻害剤を含み、各二次用量は、300mgのIL-4R阻害剤を含む、実施態様20に記載の方法を包含する。
【0102】
実施態様22において、本発明は、各二次用量は、直前の用量の1週間後に投与される、実施態様19または20に記載の方法を包含する。
【0103】
実施態様23において、本発明は、各二次用量は、直前の用量の2週間後に投与される、実施態様19または20に記載の方法を包含する。
【0104】
実施態様24において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、(a)湿疹面積および重症度指標(EASI)スコアにおけるベースラインからの少なくとも75%の減少;(b)そう痒数値評価スケール(NRS)スコアにおけるベースラインからの少なくとも30%の減少;(c)アトピー性皮膚炎の病変体表面積(BSA)スコアにおけるベースラ
インからの少なくとも25%の減少;(d)医師による包括的評価(IGA)スコアにおけるベースラインからの2ポイント以上の減少;および(e)NRSスコアのベースラインからの3ポイント以上の減少からなる群から選択される少なくとも1つのAD関連パラメーターにおける改善をもたらす、実施態様1~23のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0105】
実施態様25において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、包括的個人徴候スコア(GISS)、患者向け湿疹尺度(POEM)、患者評価式の病院不安およびうつ病スケール(HADS)および患者報告式の皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)からなる群から選択される少なくとも1つの患者関連のアウトカムにおける改善をもたらす、実施態様1~24のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0106】
実施態様26において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、患者における再燃または増悪の回数を減少させる、実施態様1~25のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0107】
実施態様27において、本発明は、IL-4R阻害剤は、皮下投与される、実施態様1~26のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0108】
実施態様28において、本発明は、IL-4R阻害剤は、第2の治療剤と同時に投与される、実施態様1~27のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0109】
実施態様29において、本発明は、第2の治療剤は、外用コルチコステロイド、カルシニューリン阻害剤、およびエモリエント剤からなる群から選択される、実施態様28に記載の方法を包含する。
【0110】
実施態様30において、本発明は、外用コルチコステロイドは、低い効力のTCS、中程度の効力のTCSおよび高い効力のTCSからなる群から選択される、実施態様29に記載の方法を包含する。
【0111】
実施態様31において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後、徐々に低減される、実施態様30に記載の方法を包含する。
【0112】
実施態様32において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後4週間で少なくとも約20%低減される、実施態様31に記載の方法を包含する。
【0113】
実施態様33において、本発明は、患者によって使用される外用コルチコステロイドの量は、IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後4週間で約50%低減される、実施態様31または32に記載の方法を包含する。
【0114】
実施態様34において、本発明は、IL-4R阻害剤は、IL-4Rαに結合し、IL-4および/またはIL-13と、1型または2型IL-4受容体との相互作用を妨げる抗体またはその抗原結合フラグメントである、実施態様1~33のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0115】
実施態様35において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IL-4およびIL-13と、1型および2型IL-4受容体の両方との相互作用を予防する、実施態様34に記載の方法を包含する。
【0116】
実施態様36において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の重鎖相補性決定領域(HCDR)および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)の軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む、実施態様34または35に記載の方法を包含する。
【0117】
実施態様37において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、3つのHCDR(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)および3つのLCDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含み、HCDR1は、配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施態様34または35に記載の方法を包含する。
【0118】
実施態様38において、本発明は、HCVRは、配列番号1のアミノ酸配列を含み、LCVRは、配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施態様37に記載の方法を包含する。
【0119】
実施態様39において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施態様36または37に記載の方法を包含する。
【0120】
実施態様40において、本発明は、IL-4R阻害剤は、デュピルマブまたはその生物学的に同等なものである、実施態様1~38のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0121】
実施態様41において、本発明は、抗体またはその抗原結合フラグメントは、MEDI9314またはAMG317である、実施態様34に記載の方法を包含する。
【0122】
実施態様42において、本発明は、中程度から重度または重度のアトピー性皮膚炎(AD)を処置する、またはAD関連パラメーターを改善するための方法であって、(a)中程度から重度または重度のADを有する患者を選択する工程であって、患者は:(i)患者が、4のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(ii)患者が、3以上のベースラインにおけるIGAスコアを有すること;(iii)患者が、6歳から18歳の間であること;(iv)患者が、外用AD療法で制御不能な疾患を有すること;(v)患者が、外用AD療法への不十分な応答の確認された病歴を有するか、または有害な副作用もしくは安全性のリスクのために、患者にとって外用療法が得策ではないこと;(vi)患者が、これまでに、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、皮膚科学的な治療剤、全身性グルココルチコイド、非ステロイド系全身性免疫抑制剤、シクロスポリンA、アザチオプリン、紫外線療法、および光線療法からなる群から選択される薬物療法または手順で処置されたことがあること;ならびに(vii)患者が、食物アレルギー、喘息、季節性アレルギー、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギー、およびアレルギー性結膜炎からなる群から選択される併存する疾患または障害を有することからなる群から選択される特性を有する、工程;および(b)治療有効量のIL-4R阻害剤の1つまたはそれ以上の用量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法を包含する。
【0123】
実施態様43において、本発明は、患者は、重度のADを有し、6歳から11歳の間であり、4のベースラインにおけるIGAスコアを有し、外用療法で制御不能な疾患を有する、実施態様42に記載の方法を包含する。
【0124】
実施態様44において、本発明は、IL-4R阻害剤は、実施態様34~41のいずれか一項に記載の抗IL-4R抗体である、実施態様42または43に記載の方法を包含す
る。
【0125】
実施態様45において、本発明は、IL-4R阻害剤の各用量は、患者の体重1kg当たり1、2、3、4または5mgを含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、実施態様42~44のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0126】
実施態様46において、本発明は、各用量は、20~600mgのIL-4R阻害剤を含み、各用量は、直前の用量の1~4週間後に投与される、実施態様42~44のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0127】
実施態様47において、本発明は、IL-4R阻害剤の投与は、(i)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の2週目までの、EASIスコアにおけるベースラインから30%より多くの低減;(ii)そう痒NRSにおけるベースラインから50%より多くの低減;および(iii)IL-4R阻害剤の第1の用量の投与後の12週目までの、0または1のIGAスコアが達成されるようなIGAスコアにおけるベースラインからの低減からなる群から選択される作用をもたらす、実施態様42~46のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【0128】
実施態様48において、本発明は、IL-4R阻害剤は、外用コルチコステロイド、外用カルシニューリン阻害剤、抗ヒスタミン、エモリエント剤、抗細菌性の治療剤、および閉塞性気道疾患のための治療剤からなる群から選択される第2の治療剤と組み合わせて投与される、実施態様42~47のいずれか一項に記載の方法を包含する。
【実施例0129】
以下の実施例は、当業者にどのように本発明の方法および組成物を作製および使用するかの十分な開示と説明が提供されるように記載されたものであり、発明者らが発明と考えているものの範囲を限定することは意図されない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証する努力がなされてきたが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮すべきである。別段の指定がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏度であり、圧力は大気圧であるかまたはそれに近い。
シクロスポリンAで適切に制御されないまたはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置が医学上望ましくない場合の重度のアトピー性皮膚炎(AD)を有する成人患者における抗IL-4R抗体の臨床試験
これは、32週の二重盲検のランダム化プラセボ対照並行群間比較研究であり、シクロスポリンA(CSA)が、十分な効能を実証されていないこと、許容できない副作用を有していたこと、またはCSAの開始が医学上望ましくないことのいずれかを有する重度のADを有する成人に投与されるデュピルマブの効能、安全性および忍容性を確認するためのものである。
デュピルマブは、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖;配列番号1/2を含むHCVR/LCVRアミノ酸配列の対;ならびに配列番号3~8を含む重鎖および軽鎖CDR配列を含む、完全ヒト抗IL-4R抗体である。
この研究は、2週のスクリーニング期間、2週の中程度の効力のTCSの標準化期間、16週の処置期間、および12週の安全性追跡調査期間を含む。この研究は、これまでにTCSに対する不十分な応答も実証されたこれらの患者におけるデュピルマブ処置を評価するためになされる。全ての患者が、この重度の集団の標準的治療処置を反映するために
、バックグラウンドの同時療法として同時の中程度の効力のTCSを受けた。
研究の第二の目的は、経口CSAで適切に制御されないか、またはそれに対して不耐性であるか、またはこの処置がその時点で医学上望ましくない場合の重度のADを有する成人患者において、TCSと同時に投与されるプラセボと比較した、デュピルマブの2用量レジメンの安全性および忍容性を評価することである。
インフォームドコンセントを提供した後、患者を、スクリーニング来院時の研究の適格性について評価した。患者は、ランダム化の前に、-28日目から-15日目の間にスクリーニングを受けた。この2週のスクリーニング期間中、TCS処置は、医師の裁量でなされた。
-14日目から始めて、全ての患者が標準化したTCS処置レジメンを開始させ、標準化した中程度の効力のレジメンを処置期間の最後(16週目)まで継続した。12週の経過観察期間中、患者は、耐えられないAD疾患活動性のために、医師の裁量でTCSを受け続けることができた。
患者はまた、モイスチャライザーを、ランダム化(ベースライン/1日目)の直前に少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回適用することも必要であり、研究の間中、少なくとも1日2回を継続した。
ベースライン時(1日目)の適格基準を満たし続けている患者は、評価を受け、1:1:1の比率でランダム化されて、週1回(qw)または2週毎に1回(q2w)のいずれかで、デュピルマブ300mgの皮下(SC)注射(1日目の600mgのSC負荷用量の後)、または負荷用量のためのプラセボを含めて適合する注射可能なプラセボを受けた。デュピルマブが投与されない週(q2wレジメンで)の間、患者は、注射可能なプラセボを受けた。盲検化を維持するために、全ての患者は、1日目から16週目(処置期間)の各週に注射(活性またはプラセボ)を受けた。
患者を、1)疾患重症度のベースラインの評価(医師による包括的評価[IGA]3対IGA4)、および2)これまでにCSAに曝露されていないという確認された病歴と、その時点でCSA処置の候補ではないこと、または継続または再開すべきではないこれまでのCSA曝露によって階層化した。
除外基準:以下の基準のいずれかを満たす患者を研究から除外した:(1)先行のデュピルマブ臨床研究への参加;(2)スクリーニング前の8週間以内または5半減期(既知の場合)以内のいずれか長い方における被験薬での処置;(3)コルチコステロイドまたは研究で使用されるTCS製品に含有される他のあらゆる成分に対する過敏症および/または不耐性;(4)スクリーニング前の4週間以内における、全身性CSA、全身性コルチコステロイド、または光線療法、およびスクリーニング前の8週間以内における、アザチオプリン(AZA)、メトトレキセート(MTX)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、またはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤;(5)スクリーニング来院前の1週間以内におけるTCIでの処置;(6)以下のような生物製剤での処置:(a)スクリーニング来院前の6カ月以内、またはリンパ球数が正常に戻るまでのいずれか長い方における、これらに限定されないが、リツキシマブなどのあらゆる細胞枯渇剤;(b)スクリーニング来院前の5半減期(既知の場合)または16週間以内のいずれか長い方における、他の生物製剤;(7)ベースラインの来院時に、総表面病変の30%以上が、中程度の効力のTCSで安全に処置できない薄皮の領域(例えば、顔、頸部、間擦領域、生殖器領域、皮膚萎縮の領域)にあること;(8)スクリーニング期間中の、処方箋が必要なモイスチャライザー、またはセラミド、ヒアルロン酸、尿素、もしくはフィラグリン分解産物などの添加剤を含有するモイスチャライザーでのAD処置の開始(患者は、スクリーニング来院前に開始されている場合、このようなモイスチャライザーの安定な用量の使用を継続することができる);(9)スクリーニング来院の4週間以内における日焼けブース/パーラーの定期的な使用(1週間当たり2回より多くの訪問);(10)研究処置中のあらゆる禁止された薬物療法および手順の計画または予想された使用;(11)スクリーニング来院前の12週間以内における生きた(弱毒化した)ワクチンでの処置;(12)スクリーニング来院前の2週間以内における、全身性抗生物質、抗ウイルス剤、駆虫薬、抗原虫薬、または抗真菌剤での処置を必要とする活動性慢性または急性感染症、またはスクリーニング来院前の1週間以内における表皮の感染症。注釈:患者は、感染症が回復してから2週間後すぐに、スポンサーのメディカルモニターの許可を得て再スクリーニングするこ
とができる;(13)免疫抑制の既知のまたは疑いのある病歴、例えば、感染症が回復したかどうかにかかわらず、医師の判断により、侵襲性日和見感染(例えば、結核[TB]、ヒストプラスマ症、リステリア症、コクシジオイデス症、ニューモシスチス症、アスペルギルス症)の病歴など;または異常に高頻度の、再発性の、または長期の感染;(14)以下のTB基準のいずれか1つの存在:(a)スクリーニング来院時における陽性のツベルクリン皮膚試験;(b)スクリーニング来院時における陽性の血液QuantiFERON(登録商標)-TBまたはT-スポット試験;または(c)先行のTB感染と一致する結果(例えば、これらに限定されないが、根尖瘢痕、根尖の線維症、または複数の石灰化肉芽腫など)を伴う、スクリーニング時またはスクリーニング来院前の3カ月以内における胸部X線(後前面および側面像)(放射線医学的な報告が利用可能でなければならない)。これは、非乾酪性の肉芽腫を包含しない。注釈:これらの3つのTB試験はいずれも、規制当局または倫理委員会によって必要なときのみ地域のガイドラインに従って国別に実行される;(15)スクリーニング時におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の病歴または陽性のHIV血清反応;(16)スクリーニング来院時における陽性のB型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コア抗体(HBcAb)、またはC型肝炎抗体(HCV Ab);(17)ベースライン時における、研究薬物中止の基準として列挙されたいずれかの条件の存在;(18)研究の評価に干渉する可能性がある皮膚特徴の存在;(19)完全に処置された子宮頸の上皮内癌、完全に処置され回復した非転移性扁平上皮または皮膚の基底細胞癌を除いた、スクリーニング来院前の5年以内における悪性腫瘍の病歴;(20)ランダム化の前に臨床的および(必要に応じて)実験的評価によって活動性感染が除外されない限り、活動性内部寄生生物感染の診断;内部寄生生物感染の疑いまたはその高いリスク;(21)スクリーニング来院の2年以内におけるアルコールまたは薬物乱用の病歴;(22)医師の判断において研究への患者の参加に悪影響を与えると予想される重度の併存する疾患。例としては、これらに限定されないが、期待寿命が短い患者、制御不能な糖尿病を有する患者(ヘモグロビンA1c[HbA1c]≧9%)、心臓血管に関する状態を有する患者(例えば、ニューヨーク心臓協会の分類に従ってステージIIIまたはIVの心不全)、重度の腎臓の状態(例えば、透析患者)、肝胆道の状態(例えば、チャイルド-ピューのクラスBまたはC)、神経学的状態(例えば、脱髄疾患)、活動性の主要な自己免疫疾患(例えば、狼瘡、炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎など)、神経炎症性疾患、他の重度の内分泌学的な、胃腸の、代謝の、肺の、またはリンパの疾患が挙げられる。この基準で除外される患者の個別の理由は研究文書に記載される(チャートノート、症例報告書[CRF]など);(23)医師の意見において、新しいおよび/または理解が不十分の疾患を示唆する可能性がある他のあらゆる医学的または精神状態(スクリーニング時の重要な実験値の異常を含む)は、この臨床試験への参加の結果として研究患者に不当なリスクをもたらす可能性があり、患者の参加を信頼できなくする可能性があり、または研究の評価に干渉する可能性がある。この基準で除外される患者の個別の理由は研究文書に記載される(チャートノート、CRFなど);(24)研究への患者の参加中の計画または予想された主要な外科手術;(25)患者が、調査チームのメンバーまたは患者の近親者であること;(26)妊娠したもしくは授乳中の女性、または研究中に妊娠または授乳する予定がある女性;および(27)生殖能があり性的に活発な場合、十分な避妊を使用する意思がない女性。
患者は、中程度の効力の場合、トリアムシノロンアセトニド0.1%クリームまたはフルオシノロンアセトニド0.025%軟膏を使用し、低い効力の場合、ヒドロコルチゾン1%クリームを使用することが推奨される。患者がこれらのステロイドのいずれかとの耐性の問題を有する場合、または一部の国でそれが市販されていない場合、それを研究参照マニュアルに記載される一覧からの同じ効力を有する製品で代用してもよい。TCSで処置された領域に、モイスチャライザーは、TCSが適用されないときに1日1回のみ適用されるべきである(すなわち、1日の間に同じ領域にモイスチャライザーとTCSを同時に使用しない)。例えば、午後にTCSを適用した場合、午後にTCSで処置された領域にモイスチャライザーを使用すべきではないが、午前中にその領域に適用される。モイスチャライザーは、TCSで処置されていない領域に、午前と午後に1日2回適用すべきである。
研究中に使用される外用製品のタイプ、量、頻度、および効力は、自宅で、患者により薬物療法日記に記録される。患者は、16週目までに、各診療施設への来院時にTCSチューブを戻し、これらのチューブの重さを現場スタッフによって量り、使用されたTCSの実際の量を決定する。12週の安全性経過観察期間中、チューブの重さを量ることはもはや必要でなくなる。
16週のプラセボ対照の研究処置期間中、中程度の効力のTCSの投与頻度は、4週毎に1回、以下のプロトコールで特定された漸減アルゴリズムにより、症状に基づき(IGAスコア)調整される:
エモリエント剤:全ての患者は、モイスチャライザー(エモリエント剤)を、ランダム化(ベースライン/1日目)の直前に少なくとも連続7日間、少なくとも1日2回適用し、研究の間中(全32週間)継続することが必要であった。しかしながら、皮膚乾燥の十分な評価を可能にするために、モイスチャライザーは、各診療施設への来院前の少なくとも8時間、このような評価のために指示された非病変皮膚の領域上に適用すべきではない。全てのタイプのモイスチャライザーが許容されるが、患者は、スクリーニング期間中または研究中に、処方箋が必要なモイスチャライザーまたは添加剤を含有するモイスチャライザーでの処置を開始させなくてもよい。患者は、スクリーニング来院前に開始されている場合、安定な用量の処方箋が必要なモイスチャライザーまたは添加剤を含有するモイスチャライザーの使用を継続してもよい。
効能:・以前にCSAを使用していた患者に関して、16週目における75のEASI(ベースラインから75%以上の改善)を有する患者の比率;・16週目における、0または1のIGA(5ポイントのスケールで)およびベースラインからの2ポイント以上の低減を有する患者の比率;・そう痒数値評価スケール(NRS)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・16週目における、そう痒NRSが3以上の改善(低減)を有する患者の比率;・EASIスコアにおけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・体表面積(BSA)パーセントにおけるベースラインから16週目までの変化;・アトピー性皮膚炎評価スコア(SCORAD)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・16週目における50のSCORAD(ベースラインから50%以上の改善)を有する患者の比率;・包括的個人徴候スコア(GISS)(紅斑、浸潤/丘疹形成、表皮剥離、苔癬化)におけるベースラインから16週目までの変化のパーセント;・皮膚疾患の生活の質指標(DLQI)におけるベースラインから16週目までの変化;・患者向け湿疹尺度(POEM)におけるベースラインから16週目までの変化;・病院不安およびうつ病スケール(HADS)におけるベースラインから16週目までの変化;・そう痒NRSにおけるベースラインから2週目までの変化のパーセント;・16週目までのTCSの平均週1回の用量。
安全性および忍容性:・処置中の期間にわたるベースラインからの全身処置を必要とする皮膚感染の処置中に発生した有害事象(TEAE)の発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからの処置中に発生した重篤な有害事象(TESAE)の発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからの処置中止に至るTEAEの発生率;・処置中の期間にわたるベースラインからのTEAEの全体的な発生率。
そう痒NRS、そう痒分類尺度、POEM、HADS、DLQI、欧州生活の質-5項目法(EQ-5D)、疾患の患者全般評価、処置の患者全般評価、IGA、EASI、AD関与のBSA、GISSおよびSCORADは、その全体を本明細書に組み入れる米国公開特許公報第20140072583号に記載されている。
Juniperの喘息管理質問票:JuniperのACQの5項目質問法は、喘息管理を評価するための認可された質問票である。質問票は、喘息の病歴を有し、(参加国で認可された翻訳が利用できるかどうかに基づき)質問票の提示に使用される言語を流暢に話す患者のサブセットにのみ適用される。
副鼻腔アウトカム試験:SNOT-22は、QOLに対する慢性鼻副鼻腔炎の影響を評価するための認可された質問票である。質問票は、鼻粘膜および/または副鼻腔の慢性炎症状態(例えば、慢性鼻炎/鼻副鼻腔炎、鼻ポリープ、アレルギー性鼻炎)を有し、質問票の提示に使用される言語を流暢に話す患者のサブセットにのみ適用される。
包括的個人徴候スコア:ADの病変(紅斑、浸潤/丘疹形成、表皮剥離、および苔癬化)の個人の要素は、EASI重症度格付け基準を使用して4ポイントのスケール(0=なし~3=重度)で包括的に格付けされる(すなわち、それぞれ解剖学的な領域によってではなく全身に関して評価される)。
有害事象(AE)は、医薬品が投与された対象または臨床調査対象におけるあらゆる不都合な医療上の出来事である。それゆえに、AEは、医薬(調査)製品に関連するとみなされるかどうかにかかわらず、あらゆる予後不良のおよび予期せぬ徴候(異常な検査所見を含む)、一時的に医薬品の使用に関連する症状または疾患であり得る。またAEは、一時的に研究薬物の使用に関連する既存の状態のあらゆる悪化(すなわち、頻度および/または強度のあらゆる臨床的に有意な変化);医師が臨床的に有意とみなした異常な検査所見;およびあらゆる不都合な医療上の出来事も包含する。
重篤な有害事象(SAE)は、好ましくないあらゆる医療上の出来事であり、いずれかの用量で死に至るもの;生命を脅かすもの;治療のための入院または入院期間の延長が必要であるもの;永続的なまたは顕著な能力障害/機能不全をもたらすもの;先天異常/先天性欠陥であるもの;または重要な医学的事象であるものである。
プラセボと比較して、両方のデュピルマブ用量レジメン(300mgのqw+TCS;300mgのq2w+TCS)は、AD、そう痒、生活の質および精神的健康の客観的徴候における改善を反映する複数の臨床アウトカムにわたりロバストな効能を実証した。両方のデュピルマブ用量レジメンに関して、16週目における一次エンドポイントが達成さ
れた。プラセボ+TCSと比較して、デュピルマブq2w+TCSは、そう痒数値評価スケール;睡眠不足に関するアトピー性皮膚炎評価スコアの視覚的アナログスケール;患者向け湿疹尺度;および皮膚疾患の生活の質指標によって測定したところ、患者によって報告された痒み、睡眠、皮膚症状、生活の質(QoL)および健康状態を顕著に改善した。表2に、SAPで特定されたエンドポイントの階層におけるエンドポイントに関する一次および二次効能結果を示す。
エンドポイントの順番を、SAPにおける事前に特定された階層試験の順番で追跡した。AE関連のエンドポイントを除き全ての二次エンドポイントが5%の有意水準で統計学的に有意であった。
安全性:デュピルマブに加えて同時のTCSでの処置は、十分な忍容性が認められ、16週の処置期間中に許容できる安全性プロファイルを実証した。表4に、16週の処置期間中の選択されたAEを要約する。
研究中に死亡は起こらなかった。処置中に有害事象(TEAE)が発生した患者のパーセンテージは全ての処置グループにわたり類似していた。重篤な有害事象は、処置グループ間で均一に分布していた(各グループ中2つの事象)。組み合わされたデュピルマブで処置されたグループにおいて、プラセボと比較して重度のTEAEはほとんどなかった。デュピルマブでの処置は、感染率を増加させず、感染および侵襲における有害事象は全ての処置グループにおいて同等の率で生じた。組み合わされたデュピルマブで処置されたグループでは、プラセボと比較して皮膚感染もより少なかった。デュピルマブで処置されたグループにおいて、結膜炎の発生率がより高く、300mgのQWグループより300mgのQ2Wグループで、より多くの事象が起こった。唯一の事象は強度において重度であり、結膜炎のAEのための処置を中止した患者はいなかった。注射部位反応はデュピルマブグループにおいてより多くよく見られ、300mgのq2wグループより300mgのqwグループにおいてより高い率であった;重度のISRは見られなかった。
CsAに対する不耐性または不十分な応答の病歴を有するか、またはCsAでの処置がそれ以外の理由で医学上得策ではない患者において、デュピルマブおよび同時のTCSは、TCS単独と比較して、許容できる安全性プロファイルで、患者報告式の痒み、睡眠、皮膚症状、およびQoLを顕著に改善した。