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特開2024-174969ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する方法及び薬剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174969
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する方法及び薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20241210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241210BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241210BHJP
   C07K 14/745 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P43/00 111
A61P25/28 ZNA
A61P25/16
A61P25/02
A61P25/28
C07K14/745
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154130
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2022557661の分割
【原出願日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】202010212897.X
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 季男
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被験者に治療有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分を投与することを含む、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する医薬組成物を提供する。
【解決手段】ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進するための、プラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、前記プラスミノーゲンが特定の配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、かつ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質分解活性を有する、医薬組成物による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進するための、プラスミノーゲンを含む医薬組成物であって、前記プラスミノーゲンが配列番号2に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、かつ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質分解活性を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記プラスミノーゲンが、ヒトアミロイドAβ40、ヒトアミロイドAβ42、α-シヌクレイン、Tauタンパク質、SOD-1タンパク質、ポリグルタミン、ニューロセリンプロテアーゼ阻害剤(NSP)、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子、α1-アンチトリプシン、パーキンタンパク質、クリスタリン、トランスサイレチン、短鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ変異体、低密度リポタンパク質受容体、ハンチンチン、ニューロフィラメントタンパク質、末梢タンパク質、α-インターネキシン、膵島アミロイドポリペプチド、β2-ミクログロブリン、血清アミロイドAタンパク質、免疫グロブリン軽鎖、ヒトリゾチーム、α-ラクトアルブミン、プロサイモシンα、アポリポプロテインE、及びアポリポプロテインJから選択される1つまたは複数のミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記プラスミノーゲンが成熟BDNFへのPro-BDNFの切断を促進するか、または成熟NGFへのPro-NGFの切断を促進する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進し、ミスフォールドタンパク質および/またはその凝集体によって引き起こされる疾患を予防及び治療するために、被験者に有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分または関連化合物、例えば、プラスミノーゲン、を投与することを含む、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のミスフォールディングまたはその重合体によって引き起こされる疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病、およびプリオン様疾患[クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob Disease,CJD)、ゲルストマン症候群(Gerstmann syndrome、GSS)、びまん性または家族性致死性不眠症(Fatal sporadic or familial isomnia)およびクール(Kuru)]などを含む。病因は異なるが、それぞれに選択的な病変部位があり、疾患遺伝子の位置も異なるが、共通の病理学的特徴を有し、すなわち、特定の領域におけるニューロンの変性、死、および変異タンパク質の凝集によって形成されるニューロン内封入体、例えば、アルツハイマー病患者の脳における老人斑や神経もつれ、パーキンソン病患者のドーパミン作動性ニューロンに残る好酸球性レビー(Lewy)小体、筋萎縮性側索硬化症の患者の脊髄および脳幹ニューロンのブニナ(Bunina)小体など、ポリグルタミン病患者の関与するニューロンの核内封入体などを有する。現在の研究では、これらのニューロンの変性、死、および封入体形成が、ミスフォールドタンパク質によって形成された凝集体と密接に関連していることを示唆していると考えられている。
【0003】
近年、研究により、細胞内でミスフォールドされたタンパク質は、熱ショックタンパク質などの分子シャペロンによってリフォールディングされる可能性があり、ユビキチン-プロテアソームシステム(Rubinsztein DC.The roles of intracellular protein-degradation pathways in neurodegen-eration,Nature,2006,443(7113):780-786)によっても分解される可能性があることが確認されている。ミスフォールドタンパク質が分解能力を超えて過剰生産されるか、またはプロテアソーム機能自体が損なわれると、ミスフォールドタンパク質とその凝集体は、選択的に媒介され主にK-63様式で結合したポリユビキチン鎖によってユビキチン化し、ユビキチン化タンパク質およびそれらの凝集体はヒストンデアセチラーゼ6(histone deacetylase 6,HDAC6)(微小管関連α-チューブリンデアセチラーゼ)と相互作用し、微小管に沿ってHDAC6によって媒介されるダイニンモーターの逆行性輸送が、微小管組織の中心付近にある封入タンパク質凝集体に到達し、このプロセスはタンパク質凝集体経路と呼ばれる。研究によると、タンパク質凝集体の形成は、対応する疾患に対する保護メカニズムである可能性があり、その役割は、潜在的に細胞毒性のあるミスフォールドタンパク質とその凝集体を動員してタンパク質凝集体を形成し、細胞毒性効果を軽減することである可能性がある。
【0004】
アルツハイマー病とタンパク質凝集体 アルツハイマー病は、広範な細胞外Aβプラークと細胞内ニューロン線維もつれの形成によって特徴付けられる(Braak H、Braak E.Evolution of neuronal changes in the course of Alzheimer’s disease、Neural Transm Suppl、1998、53:127-140)。多くの研究結果は、アルツハイマー病と凝集体経路との間に一定の関連性があることを示している。
【0005】
パーキンソン病は、ドーパミン作動性ニューロンの選択的喪失とレビー小体の出現を主な特徴とする一般的な神経変性疾患である(Spillantini MG,Schmidt ML,Lee VM,et al.Alpha-synuclein in Lewy body,Nature,1997,388(6645):839-840)。この疾患は、封入体の形成に関連している。散発性パーキンソン病のレビー小体の主要なタンパク質成分はα-シヌクレインである。
【0006】
ポリグルタミン病は、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調症3型、歯状核赤核球淡蒼球ルイ体萎縮症など、グルタミンをコードするCAG配列の異常な反復によって引き起こされる遅発性の進行性の神経変性疾患である。ハンチントン病では、ハンチントンタンパク質のエクソン1のポリグルタミン分岐が37個の中断されていないグルタミンを超えると疾患を引き起こす。
【0007】
筋萎縮性側索硬化症患者の主な病理学的特徴は、ブニナ小体、skein様封入体、レビー小体様封入体の形成であり(Mizuno Y,Fujita Y,Takatama M,et al.sclerosis,J Neurol Sci,2011,302(1/2):14-18)、その具体的な形成メカニズムはまだ不明である。
【0008】
さらに、以下の疾患は、以下のミスフォールド/ミスコンフォメーション/異常に凝集したタンパク質に関連していることが文献で報告されている:嚢胞性線維症と嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR, cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)、肺気腫脹および肝障害とα1-アンチトリプシン(α1-antitryspin)、パーキンソン病とパーキンタンパク質、白内障とクリスタリン(Crystallin)、家族性アミロイドーシスとトランスサイレチン(Transthyretin)、短鎖アシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ(SCAD)欠損症と短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼバリアント(SCAD variant)、家族性高コレステロール血症と低密度リポタンパク質受容体(Low density lipoprotein receptor)、ハンチントンとハンチンチン(huntingtin)、筋萎縮性側索硬化症とニューロフィラメントタンパク質(Neurofilament protein)、筋萎縮性側索硬化症と末梢タンパク質(ペリフェリン,Peripherin)、運動ニューロン疾患とα-インターネキシン(α-Internexin)、糖尿病と膵島アミロイドポリペプチド(Islet Amyloid Polypeptide)、透析関連アミロイドーシスとβ2-ミクログロブリン(β2-microglobulin)、アミロイドーシスと血清アミロイドAタンパク質(Serum amyloid A Protein)、アミロイドーシスと免疫グロブリン軽鎖(Immunoglobulin light Chains)、アミロイドーシス関連ヒト疾患とヒトリゾチーム(Human Lysozyme)、アミロイドーシスとα-ラクトアルブミン(α-Lactalbumin)、アミロイドーシスとアポリポプロテインE(Apolipoprotein E)、アミロイドーシスとアポリポプロテインJ(Apolipoprotein J)。
【0009】
現在、ミスフォールドタンパク質のリフォールディングまたはプロテアソーム分解を促進することは、依然として神経変性疾患の治療に適した方法であり、神経変性疾患の臨床治療に効果的な方法を提供する関連薬を見つける必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明は研究によって、プラスミノーゲンがアルツハイマー病患者の記憶機能の回復を促進し、認知能力を改善し、アルツハイマー病の様々な臨床症状及び徴候を有意に軽減及び緩和し、アルツハイマー病を予防及び治療できることを発見した。
【0011】
具体的には、本発明は下記のことに係る。
【0012】
1、一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤Fibrinolytic inhibitor)の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物を被験者に投与することを含む、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する方法に関する。
【0013】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物の、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する薬剤の調製における使用に関する。
【0014】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物を含む、ミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する薬剤または医薬組成物に関する。
【0015】
2、前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0016】
3、前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0017】
4、前記化合物が、ヒトアミロイドAβ40、ヒトアミロイドAβ42、α-シヌクレイン、Tauタンパク質、SOD-1タンパク質、ポリグルタミン、ニューロセリンプロテアーゼ阻害剤(Neuroserpin,NSP)、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR,cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)、α1-アンチトリプシン(α1-antitryspin)、パーキンタンパク質、クリスタリン(Crystallin)、トランスサイレチン(Transthyretin)、短鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ変異体(SCAD variant)、低密度リポタンパク質受容体(Low density lipoprotein receptor)、ハンチンチン(huntingtin)、ニューロフィラメントタンパク質(Neurofilament protein)、末梢タンパク質(Peripherin)、α-インターネキシン(α-Internexin)、膵島アミロイドポリペプチド(Islet Amyloid Polypeptide)、β2-ミクログロブリン(β2-microglobulin)、血清アミロイドAタンパク質(Serum amyloid A Protein)、免疫グロブリン軽鎖(Immunoglobulin light Chains)、ヒトリゾチーム(Human Lysozyme)、α-ラクトアルブミン(α-Lactalbumin)、プロサイモシンα(Prothymosin α)、アポリポプロテインE(Apolipoprotein E)、及びアポリポプロテインJ(Apolipoprotein J)から選択される1つまたは複数のミスフォールドタンパク質およびその凝集体の分解を促進する、項1~3のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0018】
一部の実施形態では、前記化合物は、脳組織中の、ヒトアミロイドAβ40、ヒトアミロイドAβ42、α-シヌクレイン、Tauタンパク質、SOD-1タンパク質およびポリグルタミンからなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質の分解を促進する。
【0019】
5、前記化合物が成熟BDNFへのPro-BDNFの切断を促進するか、または成熟NGFへのPro-NGFの切断を促進する、項1~3のいずれか一項記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。一部の実施形態では、前記化合物は成熟BDNFへの脳組織のPro-BDNFの切断を促進するか、または成熟NGFへの脳組織のPro-NGFの切断を促進する。
【0020】
6、前記化合物がプラスミノーゲンである、項1~5のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0021】
7、前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0022】
8、前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0023】
9、前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0024】
10、前記プラスミノーゲンがGlu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲンまたはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択されるものである、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0025】
11、前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0026】
12、前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用される、項1~11のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0027】
13、前記他の治療方法が、細胞療法(幹細胞療法を含む)、支持療法、及び物理的療法を含む、項12に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0028】
14、前記1つまたは複数の他の薬剤が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、またはパーキンソン病の治療のための薬剤である、項12に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0029】
15、前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、及び筋肉内に投与される、項1~14のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0030】
また、本発明は下記のことに係る。
1、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物を被験者に投与することを含む、ミスフォールドタンパク質によって引き起こされる疾患(まとめてミスフォールドタンパク質疾患とも呼ばれる)を予防または治療する方法。
2、前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、項1に記載の方法。
3、前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、項1に記載の方法。
4、前記ミスフォールドタンパク質によって引き起こされる疾患(まとめてミスフォールドタンパク質疾患とも呼ばれる)が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症およびポリグルタミン病、ゲルストマン症候群、びまん性または致命的な家族性不眠症、クールー病、嚢胞性線維症、肝障害、白内障、家族性アミロイドーシス、短鎖アシル-CoA脱水素酵素(SCAD)欠損症、家族性高コレステロール血症、運動ニューロン疾患、糖尿病、透析関連アミロイドーシス、およびアミロイドーシス関連のヒト疾患を含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
5、前記ポリグルタミン病が、ハンチントン病、3型脊髄小脳失調症、及び歯状赤血球症レビー小体萎縮症を含む、項1~3のいずれか一項記載の方法。
6、前記化合物がプラスミノーゲンである、項1~5のいずれか一項に記載の方法。
7、前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8、前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
9、前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
10、前記プラスミノーゲンがGlu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲンまたはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択されるものである、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
11、前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、項1~6のいずれか一項に記載の方法。
12、前記化合物が、1つまたは複数の他の治療方法または薬剤と組み合わせて使用される、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
13、前記他の治療方法が、細胞療法(幹細胞療法を含む)、支持療法、及び物理的療法を含む、項12に記載の方法。
14、前記他の薬剤が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、またはハンチントン病の治療のためのその他の薬剤である、項12に記載の方法。
15、前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、及び筋肉内に投与される、項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
本願の上記いずれか1つの実施形態において、前記プラスミノゲンが配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有し得る。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換され、かつ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。
【0032】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲンフラグメントを含み、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンである。
【0033】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、前述の方法で使用するプラスミノーゲンとを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、(i)前述の方法で使用するプラスミノーゲン、及び(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための部材(means)を含む、予防または治療キットであり得る。いくつかの実施形態では、前記部材は注射器またはバイアルである。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するためのラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記製品は、ラベルを含む容器と、(i)前述の方法で使用するためのプラスミノーゲンまたはプラスミノーゲンを含む医薬組成物とを含み、前記ラベルは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記キットまたは製品は、他の薬剤を含む1つまたは複数の追加の部材または容器をさらに含む。
【0037】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所にて投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下投与によってプラスミノーゲンを投与することで治療する。前記方法のいくつかの実施形態では、前記プラスミノーゲンは、適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重1キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm、0.001~800mg/cm、0.01~600mg/cm、0.1~400mg/cm、1~200mg/cm、1~100mg/cm、10~100mg/cm(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは一回以上繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0038】
本発明は、本発明の実施形態に属する技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、これらの組み合わせ後の技術構成は、上記の技術構成が別個に明確に開示されたのと同様に、本出願において明確に開示された。さらに、本発明はまた、各実施形態とそれらの要素との間の組み合わせを明確にカバーし、組み合わせ後の技術構成は、本明細書に明確に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1A~Dは、マウスの脳ホモジネートにおける組み換えヒトα-シヌクレイン(α-synuclein)に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-SDS-PAGE電気泳動図、B、C、Dはそれぞれα-シヌクレイン、重合体a、重合体bのバンドスキャンの定量分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a、bの量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(**はP<0.01、***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a及びbの量は溶媒対照群よりも有意に低かった(*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、組み換えヒトα-シヌクレイン及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
図2図2A~Cは、マウスの脳ホモジネート中の組換えヒトα-シヌクレインに対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。Aはウェスタンブロット図、B及びCはそれぞれα-シヌクレイン及び重合体のバンドスキャンの定量分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量は溶媒対照群よりも有意に低かった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、組み換えヒトα-シヌクレイン及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
図3図3A~Dは、プラスミノーゲン投与14日後のパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレイン(α-synuclein)の免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群、Bは溶媒群、Cはプラスミノーゲン投与群、Dは平均光学密度の定量解析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの黒質には少量のα-シヌクレインしかなく、溶媒群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群のマウスよりも有意に高かく(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は溶媒群よりも有意に低く、その差は統計学的に有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレインの発現を低下させ、神経損傷変性を改善できることを示している。
図4図4A~Bは、PBS緩衝系において、ヒトアミロイドAβ40に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-SDS-PAGE電気泳動図であり、BはインビトロでのAβ40溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、溶媒対照群のAβ40量を100%として定義し、変化がなく、プラスミノーゲン投与群では、プラスミノーゲンのみを添加した場合にAβ40が部分的に分解され、プラスミノーゲン+tPA群では、すなわちプラスミノーゲンとtPAを同時に添加した場合、Aβ40のインビトロ分解は明らかであり、溶媒対照群と比較して有意な差があった(**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンがPBS緩衝系でヒトアミロイドAβ40の分解を促進できることを示している。
図5図5A~Bは、ウサギ脳脊髄液中のヒトアミロイドAβ40に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-SDS-PAGE電気泳動の図であり、BはAβ40溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、溶媒対照群のAβ40の量を100%と定義し、変化がなく、プラスミノーゲン投与群では、プラスミノーゲンのみを添加した場合にAβ40が部分的に分解され、74.81%に分解された。これは、プラスミノーゲンがウサギの脳脊髄液中のヒトアミロイドAβ40の分解を促進できることを示している。
図6図6A~Bは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおけるヒトアミロイドAβ40に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-SDS-PAGE電気泳動の図であり、BはインビトロでのAβ40溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のアミロイドAβ40の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を示す);正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のヒトアミロイドAβ40の量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(P=0.001)。これは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲンがヒトアミロイドAβ40の分解を効果的に促進できることを示している。
図7図7A~Bは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおけるヒトアミロイドAβ42に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。AはTricine-SDS-PAGEであり、BはインビトロでのAβ42及びその重合体の溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のヒトアミロイドAβ42の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その重合体a、b、及びcの量はいずれも溶媒群より有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.05;***はP<0.001を表す);正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のアミロイドAβ42の量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、その重合体a、b、及びcの量はいずれも溶媒群より低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲンがヒトアミロイドAβ42及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
図8図8A~Bは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおけるヒトアミロイドAβ42に対するプラスミノーゲンの効果の結果を示す図である。Aはウェスタンブロット図であり、BはインビトロでのAβ42及びその重合体の溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のヒトアミロイドAβ42の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その重合体の量はいずれも溶媒群より有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.05を表す);正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のアミロイドAβ42の量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、その重合体の量はいずれも溶媒群より低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲンがヒトアミロイドAβ42及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
図9図9A~Bは、正常なマウスの脳ホモジネートにおけるTauタンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウエスタンブロット画像であり、BはTauタンパク質バンドの光学密度の定量分析結果である。その結果、正常なマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のTauタンパク質の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(*はP<005を表し、**はP<0.01を表し、***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおけるTauタンパク質の分解を促進できることを示唆している。
図10図10A~Bは、アルツハイマー病マウスの脳ホモジネートにおけるTauタンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウエスタンブロット画像であり、BはTauタンパク質バンドの光学密度の定量分析結果である。その結果、アルツハイマーマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のTauタンパク質の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その差は統計的に有意であった(*はP<005、**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病マウスの脳ホモジネートのTauタンパク質の分解を促進できることを示唆している。
図11図11は、プラスミノーゲンを28日間投与したアルツハイマー病マウスの脳組織における異なる分子量のTauタンパク質のウエスタンブロット検出結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスの脳ホモジネートに一定のレベルの異なる分子量のTauタンパク質があり、投与群のマウスの脳組織における各分子量のTauタンパク質及び総Tauタンパク質のレベルは溶媒群のマウスよりも有意に低く、2つの群の35kd、35~40kd、40kd、54kdの分子量Tauタンパク質レベル及び総Tauタンパク質レベルの統計分析P値は、0.174、0.0406、0.052、0.067、及び0.055であった。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマーモデルマウスの脳組織においてTauタンパク質の分解を促進できることを示している。
図12図12A~Bは、正常マウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGEの画像であり、BはSDS-PAGEにおけるバンドの定量解析結果である。その結果、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
図13図13A~Bは、正常マウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図であり、Aはウエスタンブロットの画像であり、BはウエスタンブロットにおけるPro-BDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(**はP<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
図14図14A~Bは、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネート中の組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGEの画像、BはSDS-PAGEバンドの定量分析の結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて組換えヒトPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
図15図15A~Cは、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウエスタンブロットの画像であり、BはウエスタンブロットにおけるPro-BDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果であり、CはウェスタンブロットにおけるBDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差が有意であり(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
図16図16A~Bは、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGEの画像であり、BはSDS-PAGEにおけるPro-BDNFバンドの定量解析結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて組換えヒトPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
図17図17A~Cは、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-BDNFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図であり、Aはウエスタンブロットの画像であり、BはウエスタンブロットにおけるPro-BDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果であり、CはウェスタンブロットにおけるBDNFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(**はP<0.01、***P<0.001を表す);プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
図18図18A~Dは、プラスミノーゲンを35日間投与した統合失調症モデルマウスの海馬におけるBDNFの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬が一定レベルのBDNFを発現し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの海馬におけるBDNFのレベルが向上し、プラスミノーゲン投与群のマウスの海馬におけるBDNFの発現レベルは溶媒群よりも有意に高く、統計的差は有意に近かった(P=0.095)。これは、プラスミノーゲンが統合失調症モデルマウスの海馬でBDNFの発現レベルを向上させることができることを示唆している。
図19図19A~Dは、プラスミノーゲンを28日間投与したアルツハイマー病モデルマウスの海馬におけるBDNFの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒群であり、Cは投与群であり、Dは平均光学密度の定量分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬が一定レベルのBDNFを発現し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの海馬におけるBDNFの発現は、ブランク対照群よりも有意に低く、投与群のマウスの海馬におけるBDNFの発現は溶媒群よりも有意に高く、統計的差は有意であった(*はP<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデルマウスの海馬でBDNFの発現を促進できることを示している。
図20図20A~Bは、プラスミノーゲン投与後のSMAマウスの代表的な脳組織ウエスタンブロット検出結果及びNGF/Pro-NGFの光学密度(OD)比の定量分析の結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスの脳組織には一定のNGF/ProNGF比があり、投与群のマウスの脳組織のNGF/ProNGF比は溶媒群マウスより有意に高く、統計学的差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、SMAモデルマウスの脳組織においてProNGFからNGFへの変換を促進し、成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
図21図21A~Cは、正常マウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-NGFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウェスタンブロットの画像であり、BはウェスタンブロットにおけるPro-NGFバンドの光学密度(OD)値の分析結果であり、CはウエスタンブロットにおけるNGFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、正常マウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のPro-NGF量が有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.05を表し、***はP<0.001を表す);プラスミノーゲン投与群のNGF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は有意であった。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-NGFの切断及び成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
図22図22A~Cは、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトPro-NGFに対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウェスタンブロットの画像であり、BはウェスタンブロットにおけるPro-NGFバンドの光学密度(OD)値の分析結果であり、CはウエスタンブロットにおけるNGFバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のPro-NGF量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す);プラスミノーゲン投与群のNGF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は有意であった。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、組換えヒトPro-NGFの切断及び成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
図23図23A~Bは、正常マウスの脳ホモジネートにおける組換えSOD-1タンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGE電気泳動図であり、BはインビトロでのSOD-1タンパク質溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、正常マウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1量が低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
図24図24A~Bは、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートにおける組換えSOD-1タンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。AはSDS-PAGE電気泳動図であり、BはインビトロでのSOD-1タンパク質溶解の定量的スキャン分析の結果である。その結果、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、ALSモデルマウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
図25図25A~Bは、正常マウスの脳ホモジネートにおける組換えSOD-1タンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。Aはウェスタンブロットの画像であり、BはウェスタンブロットにおけるSOD-1タンパク質のバンドの光学密度(OD)値の分析結果である。その結果、正常マウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
図26図26A~Bは、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートにおける組換えSOD-1タンパク質に対するプラスミノーゲンの効果を示す図である。その結果、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)。これは、プラスミノーゲンが、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
【発明の詳細な説明】
【0040】
「タンパク質フォールディング」とは、リボソーム上での合成と同時にまたは合成後に、熱力学および速度論の原理に従って、または分子シャペロンの補助で、ポリペプチド鎖がコイル状に巻かれ、特定の機能的な三次元構造または立体配座を形成するプロセスである。正しくフォールディングされたタンパク質は正常に機能するが、ミスフォールディングされたタンパク質は疾患を引き起こす可能性がある。
【0041】
線維素溶解系(Fibrinolytic system)は、線溶系とも呼ばれ、線維素溶解(線溶)の過程に関与する一連の化学物質からなる系であり、主にプラスミノーゲン(PLG)、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、及び線維素溶解阻害剤を含む。プラスミノーゲン活性化因子には、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)が含まれる。t-PAはセリンプロテアーゼであり、血管内皮細胞によって合成される。t-PAはプラスミノーゲンを活性化し、このプロセスは主にフィブリンで行われる。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)は、尿細管上皮細胞と血管内皮細胞によって産生され、補因子としてフィブリンを必要とすることなくプラスミノーゲンを直接活性化することができる。プラスミノーゲン(PLG)は肝臓で合成される。血液が凝固すると、PLGはフィブリンネットに大量に吸着され、t-PAまたはu-PAの作用によりプラスミンに活性化されて線維素溶解を促進する。プラスミナーゼ(PL)はセリンプロテアーゼであり、フィブリンとフィブリノーゲンを分解し、様々な凝固因子V、VIII、X、VII、XI、IIなどを加水分解し、プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、補体を加水分解するなどの作用がある。線維素溶解阻害剤には、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)、及びα2-抗チプラスミン(α2-AP)が含まれる。PAIには主にPAI-1とPAI-2の2つの形態があり、t-PAに1:1の比率で特異的に結合することによってt-PAを不活性化すると同時にPLGを活性化することができる。α2-APは肝臓で合成され、PLと1:1の比率で結合して複合体を形成し、それによってPL活性を阻害する。FXIIIはα2-APをフィブリンと共有結合させ、それによってPLに対するフィブリンの感受性を弱める。インビボでの線維素溶解系の活性を阻害する物質としては、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される「プラスミノーゲン活性化経路の成分」という用語は、
1、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、delta-プラスミノーゲン、それらの変異体または類縁体;
2、プラスミン及びそれらの変異体または類縁体;及び
3、プラスミノーゲン活性化剤、例えば、tPA及びuPA、ならびにtPAまたはuPAの1つ以上のドメイン(1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメインなど)を含むtPAまたはuPA変異体及び類縁体をカバーする。
【0043】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換されてかつ依然としてプラスミノーゲン活性、プラスミン活性、tPAまたはuPA活性を有するタンパク質を含む。例えば、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」は、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個の保存的アミノ酸によって置換されて得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0044】
本発明の「プラスミノゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質をカバーする。例えば、本発明の「プラスミノーゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質であり得る。具体的には、本発明のプラスミノーゲン変異体は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を保存的置換によって得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0045】
本発明のプラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体、例えば、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲン、例えば、配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンであり得る。
【0046】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「類縁体」はそれぞれ、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果を与える化合物を含む。
【0047】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。例えば、プラスミノーゲンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミノーゲンドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン変異体及び類縁体、例えば、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)をカバーする。プラスミンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミンドメイン(例えば、1つまたは複数のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むミニプラスミン(mini-plasmin)やδ-プラスミン(delta-plasmin)などのプラスミンの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。
【0048】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」または「類縁体」がそれぞれプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの活性を有するかどうか、またはそれらがプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果をそれぞれ与えるかどうかは、当技術分野で知られている方法、例えば、ザイモグラフィー(enzymography)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)及びFACS(蛍光活性化細胞ソーティング法)を使用して、活性化されたプラスミン活性のレベルによって測定できる。例えば、次の文献に記載されている方法を参照して測定することができる。Ny,A.,Leonardsson,G.,Hagglund,A.C,Hagglof,P.,Ploplis,V.A.,Carmeliet,P. and Ny,T. (1999). Ovulation inplasminogen-deficient mice. Endocrinology 140,5030-5035;Silverstein RL, Leung LL, Harpel PC, Nachman RL (November 1984). “Complex formation of platelet thrombospondin with plasminogen. Modulation of activation by tissue activator”. J. Clin. Invest. 74 (5): 1625-33;Gravanis I, Tsirka SE (February 2008). “Tissue-type plasminogen activator as a therapeutic target in stroke”. Expert Opinion on Therapeutic Targets. 12 (2): 159-70;Geiger M, Huber K, Wojta J, Stingl L, Espana F, Griffin JH, Binder BR (Aug 1989). “Complex formation between urokinase and plasma protein C inhibitor in vitro and in vivo”. Blood. 74 (2): 722-8。
【0049】
本発明の一部の実施形態において、本発明の「プラスミノーゲン活性化経路の成分」はプラスミノーゲンである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト全長プラスミノーゲン、またはそのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるようなアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲンの保存的置換変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。
【0050】
「プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる化合物」とは、プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる任意の化合物を指し、例えば、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、及びスタフィロキナーゼが挙げられる。
【0051】
本発明の「線維素溶解阻害剤の拮抗薬」は、線維素溶解阻害剤の作用に拮抗し、その作用を弱め、遮断し、阻止する化合物である。前記線維素溶解阻害剤は、例えば、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンである。前記拮抗剤は、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの抗体、または、例えばPAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの発現を遮断またはダウンレギュレートするアンチセンスRNAもしくはミニRNA、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの結合部位を占めるが、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの機能を持たない化合物、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの結合ドメイン及び/または活性ドメインをブロックする化合物である。
【0052】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMPs)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPAs:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PAs系成分の合成は異なる要素によって厳格な調節を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある。
【0053】
プラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAsによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって連結された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたプラスミノゲンは38kDaのフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンギオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0054】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらの成分はラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している。間接的に、プラスミンはさらにMMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含むいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解する。そのため、プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子であることを提唱することがある。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する。インビトロで、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0055】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0056】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含む天然ヒト由来プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)として計算すれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0057】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのヒトプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。生体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの76-77番目のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Delta-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有しない(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)。δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許出願において、マイクロプラスミノーゲンの配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0058】
全長プラスミノーゲンの構造は、Aisinaらの論文にも記載されている(Aisina R B,Mukhametova L I.Structure and function of plasminogen/plasmin system[J].Russian Journal of Bioorganic Chemistry,2014,40(6):590-605)。Aisinaらの前記文章によれば、プラスミノーゲンにはKringle 1、2、3、4、5ドメインとセリンプロテアーゼドメイン(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)が含まれ、Kringlesは、プラスミノーゲンが低分子量及び高分子量のリガンドに結合する役割(すなわち、リジン結合活性)を担っており、その結果、プラスミノーゲンがよりオープンな構成に変換され、より活性化しやすくなり、プロテアーゼドメイン(PD)は、残基Val562-Asn791であり、tPAとUPAはプラスミノーゲンのArg561-Val562位活性化結合を特異的に切断し、それによってプラスミノーゲンがプラスミンを形成できる。したがって、プロテアーゼドメイン(PD)は、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を付与する領域である。
【0059】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0060】
本願において、前記プラスミノーゲンの「不足」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。前記プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0061】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションをとるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションに維持する重要なエピトープを含み、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などを含む。
【0062】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とは、基質のターゲット配列中のリジンに結合する活性(リジン結合活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解機能を発揮する活性(タンパク質加水分解活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解活性とリジン結合活性との両方を有するフラグメントを指す。本発明のプラスミノーゲンに関する技術構成は、プラスミノーゲンをプラスミノーゲン活性フラグメントに置き換える技術構成を包含する。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、プラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むか、またはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインからなる。いくつかの実施形態では、、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、配列14を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、Kringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインもしくはその保存的置換変異体を含むか、またはKringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインまたはその保存的置換変異体からなる。いくつかの実施形態では、本発明のプラスミノーゲンは、上記のプラスミノーゲンの活性フラグメントを含むタンパク質を含む。
【0063】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は組織プラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合物に対する測定(PAP)を含む。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0064】
「オーソログまたはオルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含み、直系遺伝子ともいう。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンのオーソログまたはオルソログを含む。
【0065】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの所定のアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸で親タンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然または親タンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0066】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になるまで精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造され、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0067】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するあるいは有しない)を含む融合物;等々である。
【0068】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的としたアライメントは本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータが比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0069】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのある%のアミノ酸配列同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0070】
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0071】
本文において使用されているように、用語の「治療」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状の発生、発症を完全または一部予防すること、あるいは疾患及び/またはその症状を一部または完全軽減すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状の減退または消失を引き起こすこと。
【0072】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0073】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0074】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより小さい不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンとN保護を受けている単一のアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と連結する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、その後それを切除する。
【0075】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に連結させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0076】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において遊離体または宿主染色体DNAの組み込む部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0077】
大腸菌(Escherichia coli)はターゲット抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じてオペレーター遺伝子配列において、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列などを有してもよい。
【0078】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターには特にアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素由来のプロモーターを含む。
【0079】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えばインビトロ細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明の抗-Tau抗体(例えばかかる目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)の発現及び生成に用いることができる。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報サイト、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0080】
一旦(化学または組み換え的に)合成されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、かかる抗体以外の大分子などである。
【0081】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)と必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(約10個より少ない残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましい凍結乾燥された抗VEGF抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。
【0083】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0084】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0085】
本発明のプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)は徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成することであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0086】
投与及び使用量
異なる方式、例えば鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬や点眼薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば、頸動脈を介して)、筋肉内、及び直腸内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0087】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0088】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日0.01~100mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性をリアルタイムに評価する必要がある。
【0089】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)を含む製品または薬物キットに係るものである。前記製品は好ましくひとつの容器、ラベルまたはプロトコールを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)である。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の病症の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これには例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示することを含む。
【実施例0090】
以下の実施例で使用されるヒトプラスミノーゲンは、ヒトドナーの血漿に由来し、以下の文書:KennethC Robbins,Louis Summaria,David Elwyn et al.Further Studies on the Purification and Characterization of Human Plasminogen and Plasmin.Journal of Biological Chemistry,1965,240(1):541-550;Summaria L,Spitz F,Arzadon L et al.Isolation and characterization of the affinity chromatography forms of human Glu- and Lys-plasminogens and plasmins.J Biol Chem.1976 Jun 25;251(12):3693-9;HAGAN JJ,ABLONDI FB,DE RENZO EC.Purification and biochemical properties of human plasminogen.J Biol Chem.1960 Apr;235:1005-10に記載された方法に基づき、プロセスを最適化し、ヒトドナー血漿から精製して得られた。ここでプラスミノーゲン単体は98%を上回った。
【実施例0091】
実施例1は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおける組換えヒトα-シヌクレインの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP(1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine,1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した[1]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清(脳組織ホモジネート)を取り、EPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL α-シヌクレイン溶液(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、custom-expressed human α-synuclein,UniProtKB-P37840,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mL α-シヌクレイン溶液(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、1‰のクーマシーブリリアントブルー染色液(1gのクーマシーブリリアントブルーR250を、エタノール:氷酢酸:精製水の体積比が5:2:13の混合液1000mlに溶解した)に置いて30分間染色した後、脱色液(精製水:氷酢酸:無水エタノール=17:2:1の体積比で混合)を用いてきれいに脱色した。ゲルを生体分子イメージャーで写真を撮って定量的にスキャンした。
パーキンソン病は、現在、中脳黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの欠如及びレビー小体の出現によって引き起こされると考えられている。α-シヌクレインは、140アミノ酸残基から構成されるニューロンタンパク質であり、神経細胞の損傷を引き起こし、中枢神経系の神経変性のプロセスに関与する可能性がある。研究では、神経細胞のレビー小体と神経シナプス内で凝集したα-シヌクレインは、パーキンソン病における脳病変の特徴であることが明らかになった[2]
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(***はP<0.001を表す)、その重合体a、bの量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(**はP<0.01、***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、その重合体a及びbの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(*はP<0.05を表し、**はP<0.01を表す)(図1)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトα-シヌクレイン及びその重合体を効果的に分解できることを示している。
【実施例0092】
実施例2は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおけるα-シヌクレインの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。実施例1に記載されたようにパーキンソン病モデルを構築し[5]、脳組織ホモジネートを調製してEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL α-シヌクレイン溶液(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、custom-expressed human α-synuclein,UniProtKB-P37840,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21.5mL α-シヌクレイン溶液(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトα-シヌクレイン抗体(Proteintech、10842-1-AP)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のα-シヌクレイン量が溶媒対照群に比べて有意に低く(**はP<0.01を表す)、その重合体の量はいずれも溶媒対照群より有意に低く(***はP<0.001を表す)、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のα-シヌクレインの量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であり(**はP<0.01を表す)、その重合体の量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(***はP<0.001を表す)(図2)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウス及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトα-シヌクレイン及びその重合体を効果的に分解できることを示している。
【実施例0093】
実施例3は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質α-シヌクレインの発現を減少させることができることに関するものである。
10~12週齢のC57BL/6Jオスマウス28匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で20匹とした。実施例1に記載されたようにパーキンソン病モデルを構築した[1]。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデル群のマウスを体重に応じてランダムに2群に分け、溶媒群と投与群でそれぞれ10匹とし、投与を開始し、それを1日目として記録した。投与群マウスに1mg/100μl/匹でプラスミノーゲン溶液を尾静脈注射により投与し、溶媒群に100μl/匹で溶媒溶液を注射し、連続して14日間投与し、投与の15日目にマウスを殺処分し、マウスの黒質を採取して4%パラホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された黒質(脳組織)をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の黒質を位置付け、切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和しから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスα-シヌクレイン抗体(α-synuclein)(Proteintech,10842-1-AP)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(図3A)のマウスの黒質には少量のα-シヌクレインしかなく、溶媒群(図3B)のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は、ブランク対照群のマウスよりも有意に高かく(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群(図3C)のマウスの黒質中のα-シヌクレインの量は溶媒群よりも有意に低く、ブランク対照群に近く、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(図3D)。これは、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの黒質におけるα-シヌクレインの発現を低下させ、神経損傷変性を改善できることを示している。
【実施例0094】
実施例4は、プラスミノーゲンがPBS緩衝系中でヒトアミロイド(Aβ40)の分解を促進することができることに関するものである。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群、(4)プラスミノーゲン+tPA群で、各群に4つのチューブを設定した。ブランク対照群には、43.3μLの生理食塩水、16μLのプラスミノーゲン溶液(0.575mg/mL)、10μLの超純水、30.7μLのPBS緩衝液(10mM、pH7.4、Thermo Fisher、10010-031)を添加した;溶媒対照群に43.3μLAβ40(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、04010011521、1.0mg/mL)、16μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、10μL超純水、30.7μLPBS緩衝液を添加した;プラスミノーゲン群に43.3μL Aβ40(1.0mg/mL)、16μLプラスミノーゲン溶液(0.575mg/mL)、10μL超純水、30.7μL PBS緩衝液を添加した;プラスミノーゲン+tPA群に、43.3μL Aβ40(1.0mg/mL)、8μLプラスミノーゲン溶液(1.15mg/mL)、8μL tPA溶液(1.0mg/mL)、10μLリジン溶液(0.1mM)、30.7μL PBS緩衝液を添加した。各サンプルの添加後、37℃で3時間インキュベートした後、100μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、20%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して1分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、1‰のクーマシーブリリアントブルー染色液(1gのクーマシーブリリアントブルーR250を、エタノール:氷酢酸:精製水の体積比が5:2:13の混合液1000mlに溶解した)に置いて30分間染色した後、脱色液(精製水:氷酢酸:無水エタノール=17:2:1の体積比で混合)を用いてきれいに脱色した。ゲルを生体分子イメージャーで撮影し、定量的にスキャンした。
アミロイド(Aβ)の蓄積は、アルツハイマー病の形成における重要な要因であり、そのうち40及び42残基を含むAβ40及びAβ42は、老人斑を構成する主な形態であり、すなわち、脳の海馬及び線条体に沈着して老人斑を形成することがアルツハイマー病の主な原因である[3]。脳脊髄液中のAβ40及びAβ42の含量検出は、徐々に臨床的アルツハイマー病の生理学的指標になりつつある。
その結果、溶媒対照群のAβ40量を100%として定義し、変化がなく、プラスミノーゲン群では、プラスミノーゲンのみを添加した場合にAβ40が部分的に分解され、プラスミノーゲン+tPA群では、プラスミノーゲンとtPAを添加した場合、Aβ40のインビトロ分解は明らかであり、溶媒対照群と比較して有意な差があった(**はP<0.01を表す)(図4)。これは、プラスミノーゲンがPBS緩衝系中でヒトアミロイドAβ40の分解を促進できることを示している。
【実施例0095】
実施例5は、プラスミノーゲンがウサギ脳脊髄液中のヒトアミロイド(Aβ40)分解を促進できることに関するものである。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群、(4)プラスミノーゲン+tPA群にそれぞれ設定した。ブランク対照群には、43.3μLの生理食塩水、16μLのプラスミノーゲン溶液(0.575mg/mL)、40.7μLのウサギ(市場から購入)脳脊髄液を添加した;溶媒対照群に43.3μL Aβ40(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、04010011521、1.0mg/mL)、16μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、40.7μLのウサギ脳脊髄液を添加した;プラスミノーゲン群に43.3μL Aβ40(1.0mg/mL)、16μLプラスミノーゲン溶液(0.575mg/mL)、40.7μLのウサギ脳脊髄液を添加した。プラスミノーゲン+tPA群には、43.3μL Aβ40(1.0mg/mL)、8μLプラスミノーゲン溶液(1.15mg/mL)、8μL tPA溶液(1.0mg/mL)、及び40.7μL PBS緩衝液を添加した。添加した後、各サンプルを37℃で3時間インキュベートした後、100μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、20%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
その結果、溶媒対照群のAβ40の量を100%と定義し、変化がなく、プラスミノーゲン群では、プラスミノーゲンのみを添加した場合にAβ40が部分的に分解され、74.81%に分解された(図5)。これは、プラスミノーゲンがウサギの脳脊髄液中のヒトアミロイドAβ40の分解を促進できることを示している。
【実施例0096】
実施例6は、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデル及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトアミロイドAβ40の分解を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon、PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(ストック(在庫)番号:034840)(FADと略称)及びC57BL/6(正常)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートをEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Aβ40(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、04010011521、1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mL Aβ40(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、20%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のヒトアミロイドAβ40量は溶媒対照群に比べて有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す);正常なマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のアミロイドAβ40の量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であった(P=0.001)(図6)。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデル及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトアミロイドAβ40の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0097】
実施例7は、アルツハイマー病モデル及び正常マウス脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲンがヒトアミロイドAβ42の分解を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon、PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)及びC57BL/6(正常)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートをEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Aβ42(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、04010011526、1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mL Aβ42(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、20%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のアミロイドAβ42の量が溶媒対照群よりも低く、重合体a、b、cの量はいずれも溶媒群より有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.05を表し、***はP<0.001を表す);正常なマウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のアミロイドAβ42の量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であり(***は<0.001を表す)、重合体a、b、cの量はいずれも溶媒群より低く、その差は極めて有意であった(***は<0.001を表す(図7)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウス及び正常なマウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトアミロイドAβ42及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0098】
実施例8は、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデル及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトアミロイドAβ42の分解を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon、PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)及びC57BL/6(正常)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートをEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク対照群、(2)溶媒対照群、(3)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Aβ42(上海強耀生物科技有限公司(ChinaPeptides Co., Ltd.,)、04010011526、1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mL Aβ42(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
Tris-Tricine-SDS-PAGEゲル調製キット(Solarbio、P1320)の説明書に従って、20%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、マウス抗ヒトAβ42抗体(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd.,10842-1-AP)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗マウスIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6789)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のヒトアミロイドAβ42量は溶媒対照群に比べて有意に低く、その重合体の量も溶媒群より有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.5を表す);正常なマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のアミロイドAβ42の量は溶媒対照群よりも有意に低く、その差は極めて有意であり(***P<0.001)、その重合体の量も溶媒群より低く、その差は極めて有意であった(***P<0.001)(図8)。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデル及び正常マウスの脳ホモジネートにおいて、ヒトアミロイドAβ42及びその重合体の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0099】
実施例9は、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおいてTauタンパク質の分解を促進することに関するものである。
11~12週齢の18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清の脳ホモジネートをEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(0.5mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Tau(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Tau protein,UniProtKB-P10636-8,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5μLのTau(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(0.5mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、10%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ由来Tauタンパク質抗体(Abcam、ab151559)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
Tauタンパク質は、最も豊富な微小管関連タンパク質である。Tauタンパク質はリン酸基含有タンパク質であり、正常な成熟脳のTauタンパク質分子には2~3個のリン酸基が含まれている。アルツハイマー病(老年性認知症)患者の脳内のTauタンパク質は異常に過剰リン酸化されており、Tauタンパク質の各分子は5~9個のリン酸基を含み得、正常な生物学的機能を失う可能性がある[4]
その結果、正常なマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のTauタンパク質の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その差は有意であった(*はP<005を表し、**はP<0.01を表し、***はP<0.001を表す)(図9)。これは、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおけるTauタンパク質の分解を促進できることを示唆している。
【実施例0100】
実施例10は、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病マウスの脳ホモジネートにおいてTauタンパク質の分解を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清の脳ホモジネートをEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(0.5mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Tau(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Tau protein,UniProtKB-P10636-8,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5μLのTau(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(0.5mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、10%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ由来Tauタンパク質抗体(Abcam、ab151559)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、アルツハイマー病マウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のTauタンパク質の量が溶媒対照群よりも有意に低く、その差は統計的に有意であった(*はP<005、**はP<0.01を表す)(図10)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病マウスの脳ホモジネートのTauタンパク質の分解を促進できることを示唆している。
【実施例0101】
実施例11は、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデルマウスの脳組織のTauタンパク質レベルを低下させることに関するものである。
B6SJL-Tg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjaxマウス(カタログ番号:034840、Jackson Laboratoryから購入)とC57BL/6Jマウスを3回戻し交配させて子孫(B6-F3-FADと呼ぶ)を繁殖させた。20~25週齢のメスB6-F3-FADマウス18匹及び9週齢のC57BL/6Jメスマウス9匹を取った。B6-F3-FADは、体重及びY迷路試験の結果に応じて、溶媒群と投与群の2つの群にランダムに分け、各群9匹とした。9匹のC57BL/6Jをブランク対照群として使用した。群分けが完了した後、ブランク対照群のマウスと溶媒群のマウスに溶媒を尾静脈注射により投与し、各マウスの注射量は5ml/kgであった。投与群のマウスにはプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、各マウスに50mg/kgの用量で28日間連続して注射した。投与後の7日後、各群からマウスをランダムに選んで殺処分し、脳組織を採取し、4℃でホモジナイズし、上清であるホモジネートを取ってBCA法による総タンパク質濃度の検出及びウェスタンブロット検出を行った。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、10%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで1.5時間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗マウスTau抗体(Abcam、ab151559)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、ブランク対照群のマウスの脳ホモジネートに一定のレベルの異なる分子量のTauタンパク質があり、投与群のマウスの脳組織における各分子量のTauタンパク質及び総Tauタンパク質のレベルは媒体群のマウスよりも有意に低く、2つの群の35kd、35~40kd、40kd、54kdの分子量Tauタンパク質レベル及び総Tauタンパク質レベルの統計分析P値はそれぞれ、0.174、0.0406、0.052、0.067、及び0.055であった(図11)。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマーモデルマウスの脳組織においてTauタンパク質の分解を促進できることを示している。
【実施例0102】
実施例12は、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を取り、殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清の脳ホモジネートを新しいEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21μLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor,BDNF)は、分子量12.3kDの塩基性タンパク質であり、119個のアミノ酸残基からなり、3対のジスルフィド結合を含み、生体内で二量体化した形で存在し、BDNF前駆体の形で合成し、BDNF前駆体(Pro-BDNF)は、酵素加水分解によって切断され、成熟したBDNFを形成する。Pro-BDNFは、切断されて形成した成熟BDNFと相反の効果を有することが文献で報告されている。Pro-BDNFはニューロンのアポトーシスを促進し、シナプス可塑性を低下させる[5]。成熟したBDNF及びその受容体は、中枢神経系に広く分布しており、中枢神経系の発達中のニューロンの生存、分化、成長、発達に重要な役割を果たし、ニューロンが損傷を受けて死滅することを防ぎ、ニューロンの病理学的状態を改善し、損傷したニューロンの再生や分化などの生物学的効果を促進することができ、成熟した中枢神経系及び末梢神経系におけるニューロンの生存と正常な生理学的機能に必要である[6]
その結果、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図12)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
【実施例0103】
実施例13は、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を取り、殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清の脳ホモジネートを新しいEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21μLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化されたPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトBDNF抗体(Boster Biological Technology、PB9075)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(**はP<0.01を表す)(図13)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、Pro-BDNFの切断及を促進できることを示唆している。
【実施例0104】
実施例14は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおけるPro-BDNFの分解を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を取った。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した[6]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清、すなわち脳ホモジネートを取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd.,custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μL溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21μL Pro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図14)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
【実施例0105】
実施例15は、プラスミノーゲンがパーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進することに関するものである。
11~12週齢、18~25gのC57BL/6Jオスマウス8匹を取り、モデリングの1日前にすべてのマウスの体重を測定し、体重に応じてランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で4匹、モデル群で4匹とした。モデリング時間は毎日午前9時に設定され、ブランク対照群には生理食塩水200μlを腹腔内注射により投与し、モデル群には5mg/ml MPTP溶液を35mg/kg/匹で腹腔内注射により投与し、5日間連続注射してパーキンソン病モデルを構築した[6]。MPTP溶液の調製:45mg MPTP(Sigma、M0896)を9mlの生理食塩水溶液に溶解して、最終濃度5mg/mlであるように調製した。モデリングが完了した後、すなわち、モデリング後6日目に、モデリングが成功したかを確認するために、すべてのマウスについてオープンフィールド試験を行なった。全てのマウスを殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分間、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清、すなわち脳ホモジネートを取り、新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群に21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%アルギニン塩酸塩、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21μLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化したPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトBDNF抗体(Boster Biological Technology、PB9075)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jで定量的に分析した。
その結果、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量が溶媒対照群に比べて有意に低く、その差が有意であり(*はP<0.05、***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった(図15)。これは、プラスミノーゲンが、パーキンソン病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、Pro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
【実施例0106】
実施例16は、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図16)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断を促進できることを示唆している。
【実施例0107】
実施例17は、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてPro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-BDNF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human Pro-BDNF,UniProtKB-P23560,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5mLのPro-BDNF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトBDNF抗体(Boster Biological Technology、PB9075)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、バンド光学密度をImage Jで定量的に分析した。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、プラスミノーゲン投与群のPro-BDNF量は溶媒対照群より有意に低く、その差は極めて有意であった(**はP<0.01、***P<0.001を表す);プラスミノーゲン投与群のBDNF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は極めて有意であった(図17)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、Pro-BDNFの切断及び成熟BDNFの形成を促進できることを示唆している。
【実施例0108】
実施例18は、プラスミノーゲンが統合失調症モデルマウスの海馬でBDNFのレベルの増加を促進することに関する。
C57メスマウス30匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重によって異常なマウスを除外した後、すべてのマウスを2つの群にランダムに分け、ブランク対照群で8匹、モデル群で22匹とした。群分け終了後、ブランク対照群には維持飼料を、モデル群には0.6%ジシクロヘキサノンオキサリルジヒドラゾン(CPZ)(製造元:上海源業生物科技有限公司、カタログ番号:S30349)を含むモデリング飼料を、連続して42日間与えて統合失調症モデルを誘発した[7,8]。モデリング後、すべてのマウスに対してオープンフィールド試験を行い、試験の結果に応じて、モデル群マウスを2つの群に分け、溶媒群で11匹とし、投与群で11匹とした。群分け終了後、すべてのマウスに投与を開始し、これを1日目とし、ブランク対照群のマウスに0.1ml/匹/日で溶媒(4%アルギニン+2%グリシン溶液)を尾静脈注射により投与し、溶媒群のマウスに0.1ml/匹/日で溶媒を尾静脈注射により投与し、投与群のマウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、35日間連続して投与した。投与期間中にすべてのマウスに正常に維持食を与えた。36日目にマウスを殺処分し、脳組織を採取して10%ホルムアルデヒドで固定し、脱水して包埋した。固定された組織サンプルをアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脳組織の冠状切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和しから1回水で洗った。クエン酸で30分間修復し、室温で10分間冷却した後、水ですすいだ。3%過酸化水素で15分間インキュベートし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗BDNF抗体(BosterBio,PB9075)を加えて4℃で一晩インキューベートし、PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間青色に戻してからPBSで1回洗浄した。勾配で脱水させて透徹にし、封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察して撮影し、撮影した写真をImaging-Proソフトウェアで陽性染色し、光学密度を分析した。
成熟したBDNF及びその受容体は、中枢神経系に広く分布しており、中枢神経系の発達中のニューロンの生存、分化、成長、発達に重要な役割を果たし、ニューロンが損傷を受けて死滅することを防ぎ、ニューロンの病理学的状態を改善し、損傷したニューロンの再生や分化などの生物学的効果を促進することができ、成熟した中枢神経系及び末梢神経系におけるニューロンの生存と正常な生理学的機能に必要である[5]
その結果、ブランク対照群(図18A)のマウスの海馬が一定レベルのBDNFを有し(矢印でマーク)、溶媒群(図18B)のマウスの海馬におけるBDNFのレベルは向上し、投与群(図18C)のマウスの海馬におけるBDNFのレベルは溶媒群よりも有意に高く、統計的差は有意に近かった(P=0.095)(図18D)。これは、プラスミノーゲンが統合失調症モデルマウスの海馬でBDNFのレベルの増加を促進できることを示唆している。
【実施例0109】
実施例19は、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデルマウスの海馬でBDNFの発現を促進することに関する。
24週齢のC57オスマウス23匹を取り、モデリング前に体重を測定し、体重によって異常なマウスを除外した後、すべてのマウスを2つの群にランダムに分け、ブランク対照群で7匹、モデル群で16匹とした。すべてのマウスを麻酔し、マウスの定位アトラスに従って海馬の顆粒球層に位置付けし(前ハロゲンポイントの座標に従って位置付け:AP-2.0mm、ML±1.5mm、DV2.0mm)、各マウスの両側にゆっくりと微量注入し、モデル群のマウスにAβ1-42オリゴマー溶液を注入し、ブランク対照群のマウスに同量のPBS溶液を注入し、注入速度は0.4μL/分、注入量は2μLであった。注射後、注射器を5分間停止し、ゆっくりと引き抜き、アルツハイマーモデル[3]を構築した。Aβ1-42オリゴマー溶液(10μM)の調製:β-アミロイド(1-42)(カタログ番号:D2650、メーカー:Sigma)を取り、冷ヘキサフルオロイソプロパノールを加え、濃度を1mg/mlにし、室温で3日間置いた後、45μL/チューブ、すなわち10nmol/mLに分注し、ドラフト内に一晩置き、25℃の乾燥オーブンに1時間乾燥してから-80℃で保存した。使用時は各チューブにジメチルスルホキシド溶液10μlを加えて溶解し、注入時は滅菌PBS溶液990μLを加え、4℃で24時間静置してから使用した。脳局在注射28日後、すべてのマウスについて体重測定及びY迷路試験を行い、試験の結果によってブランク対照群及びモデル群の異常なマウスを排除し、モデル群マウスを2つの群にランダムに分け、溶媒群で6匹、投与群で7匹とし、ブランク対照群は6匹であった。溶媒群及び投与群のマウスに投与を開始し、これを1日目とし、投与群のマウスに1mg/0.1ml/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒群のマウスに0.1ml/匹/日で溶媒(4%アルギニン+2%グリシン溶液)を尾静脈注射により投与し、28日間連続して投与し、ブランク対照群のマウスには投与しなかった。29日目にマウスを殺処分し、脳を採取して10%ホルムアルデヒドで24~48時間固定した。固定された脳組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。黒質を位置付けし、切片の厚さは4μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和しから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗マウスBDNF抗体(BosterBio,PB9075)を加えて4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(図19A)のマウスの海馬が一定レベルのBDNFを発現し(矢印でマーク)、溶媒群(図19B)のマウスの海馬におけるBDNFの発現は、ブランク対照群よりも有意に低く、投与群(図19C)のマウスの海馬におけるBDNFの発現は溶媒群よりも有意に高く、統計的差は有意であった(*はP<0.05を表す)(図19D)。これは、プラスミノーゲンがアルツハイマー病モデルマウスの海馬でBDNFの発現を促進できることを示している。
【実施例0110】
実施例20は、プラスミノーゲンが、脊髄性筋萎縮症(SMA)モデルマウスの脳組織における成熟NGFの形成を促進することに関する。
FVB.Cg-Grm7Tg(SMN2)89Ahmb Smn1tm1MsdTg(SMN2*delta7)4299Ahmb/J遺伝子変異マウス(以下において、SMNΔ7 SMAマウスと略称する)は、SMN1遺伝子のホモ接合変異を持ち、ヒトSMN2遺伝子を発現し、このマウスの臨床的および病理学的症状は、ヒトSMAに似ている。繁殖マウスは、米国ジャクソン研究所から購入した(血統番号(Pedigree Number ):005025)。
3日齢のSMNΔ7 SMAマウス7匹を取り、溶媒群ではマウスは4匹であり、最初の9日間には、6μlのウシ血清アルブミン溶液(5mg/ml)を毎日の午前と午後にそれぞれ1回腹腔内注射により投与し、その後は6μlのウシ血清アルブミン溶液(10mg/ml)を1日1回腹腔内注射により投与した。投与群ではマウスは3匹であり、最初の9日間には、30μg/6μlのプラスミノーゲンを毎日の午前と午後にそれぞれ1回腹腔内注射により投与し、その後は60μg/6μlのプラスミノーゲンを1日1回腹腔内注射により投与した。4匹の野生型マウスをブランク対照群とし、最初の9日間には、6μlのウシ血清アルブミン溶液(5mg/ml)を毎日の午前と午後にそれぞれ1回腹腔内注射により投与し、10日目から6μlのウシ血清アルブミン溶液(10mg/ml)を1日1回腹腔内注射により投与した。12日目に、マウスを殺処分して後肢の筋肉組織を採取し、NGFタンパク質のウエスタンブロット検出用の組織ホモジネートを調製した。SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで45分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化したPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗マウスNGF抗体(Abcam,ab52918)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、各バンドの光学密度値をImage Jで定量的に分析した。
神経成長因子(Nerve growth factor,NGF)は、神経栄養因子ファミリーの重要なメンバーである。シグナルペプチド、リーダーペプチド、及び成熟ペプチドを含む前駆体の形でインビボで合成される。研究では、神経成長因子NGFの前駆体(Pro-NGF)が、切断されて形成するNGFと相反の役割を果たしていることが報告されている。Pro-NGFはニューロンのアポトーシスを促進することができる。成熟したNGFは、ニューロンの成長、発達、分化、生存、損傷後の修復などのプロセスの調節に関与しており、中枢及び末梢ニューロンの機能発現の調節にも重要な役割を果たしている[7]。NGF/Pro-NGFの比=NGF光学密度(OD)/Pro-NGF光学密度(OD)値である。
その結果、ブランク対照群のマウスの脳組織には一定のNGF/ProNGF比があり、投与群のマウスの脳組織のNGF/ProNGF比は溶媒群マウスより有意に高く、統計学的差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図20)。これは、プラスミノーゲンが、SMAモデルマウスのProNGFからNGFへの変換を促進し、成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
【実施例0111】
実施例21は、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいてPro-NGFの切断及び成熟NGFの形成を促進することに関するものである。
11~12週齢の18~25gのC57BL/6Jオスマウス4匹を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、重量を測ってから1×PBS(Thermo Fisher、pH7.4;10010-031)を150mg組織/mL PBSで加え、4℃でホモジナイズし(1分/回、3~4回)、ホモジナイズ後、4℃(12000rpm、20min)で遠心分離し、上清の脳ホモジネートを新しいEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-NGF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed Pro-NGF,配列はUniProtKB-P01138に由来,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.μLのPro-NGF溶液(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、15%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで30分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトNGF抗体(Abcam,ab52918)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、バンド光学密度をImage Jで定量的に分析した。
NGFは、神経栄養因子ファミリーの重要なメンバーである。シグナルペプチド、リーダーペプチド、及び成熟ペプチドを含む前駆体の形でインビボで合成される。研究では、神経成長因子NGFの前駆体(Pro-NGF)が、切断されて形成するNGFと相反の役割を果たしていることが報告されている。Pro-NGFはニューロンのアポトーシスを促進することができる[8]。成熟したNGFは、ニューロンの成長、発達、分化、生存、損傷後の修復などのプロセスの調節に関与しており、中枢及び末梢ニューロンの機能発現の調節にも重要な役割を果たしている[9]
その結果、正常マウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のPro-NGF量が有意に低く、その差は極めて有意であった(*はP<0.05、***はP<0.001を表す);プラスミノーゲン群のNGF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は有意であった(図21)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、Pro-NGFの切断及び成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
【実施例0112】
実施例22は、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいてNGFの切断及び成熟NGFの形成を促進することに関するものである。
11週齢のB6SJLTg(APPSwFlLon,PSEN1*M146L*L286V)6799Vas/Mmjax(FAD)(在庫番号:034840)(FADと略称)マウス4匹ずつを選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに置いた。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL Pro-NGF(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed Pro-NGF,UniProtKB-P01138,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.μLのPro-NGF(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、15%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLのサンプルを採取しえローディングした。電気泳動条件は、30Vで30分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、PVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトNGF抗体(Abcam,ab52918)を加えて室温で2時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、バンド光学密度をImage Jで定量的に分析した。
その結果、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン群のPro-NGF量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す);プラスミノーゲン投与群のNGF量は溶媒対照群よりも有意に高く、その差は有意であった(図22)。これは、プラスミノーゲンが、アルツハイマー病モデルマウスの脳ホモジネートにおいて、Pro-NGFの切断及び成熟NGFの形成を促進できることを示唆している。
【実施例0113】
実施例23は、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおいてSOD-1タンパク質の分解を促進することに関するものである。
11週齢のC57BL/6(正常)マウス4匹を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL SOD-1タンパク質(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human SOD-1,UniProtKB-P00441,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5μLのSOD-1(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
スーパーオキシドジスムターゼ-1(SOD-1)は、銅イオンと亜鉛イオンに結合する金属タンパク質であり、反応性の高い活性酸素種スーパーオキシドを酸素分子と過酸化水素に変換する際に重要な役割を果たす。神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の一部においてSOD-1遺伝子が変異し、異常な三次元構造を有するミスフォールドされたSOD-1が、脊髄の運動神経に蓄積することが知られている。さらに、SOD-1をコードする遺伝子に変異のない、原因不明の散発性ALS患者の脳脊髄液中に、非常に毒性の高いミスフォールドSOD-1が検出された。つまり、SOD-1の構造異常がALSの病因に関連している可能性がある[10]
その結果、正常なマウスの脳ホモジネートでは、プラスミノーゲン群のSOD-1の量が溶媒対照群よりも低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図23)。これは、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおけるSOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0114】
実施例24は、プラスミノーゲンが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスの脳ホモジネートにおいてSOD-1タンパク質の分解を促進することに関するものである。
8週齢のB6.Cg-Tg(SOD1-G93A)1Gur/Jトランスジェニックオスマウス(SOD1-G93Aトランスジェニックマウスと略称する)を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例6のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)投与群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL SOD-1タンパク質(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human SOD-1,UniProtKB-P00441,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン投与群に21.5μLのSOD-1(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、12%ゲルを調製した。各群のサンプルを実施例1のように電気泳動し、クーマシーブリリアントブルー染色液で染色した後、脱色して定量的にスキャンした。
SOD1-G93Aトランスジェニックマウスは、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophiclateral sclerosis,ALS)の研究に広く使用されているモデルマウスである[11]
その結果、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図24)。これは、プラスミノーゲンが、ALSモデルマウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0115】
実施例25は、プラスミノーゲンが、正常なマウスの脳ホモジネートにおいてSOD-1タンパク質の分解を促進することに関するものである。
11週齢のC57BL/6(正常)マウス4匹を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL SOD-1タンパク質(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human SOD-1,UniProtKB-P00441,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.5μLのSOD-1(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、15%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで30分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化したPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトSOD-1抗体(BOSTER Biological Technology,PB0453)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jでバンド光学密度を定量的に分析した。
その結果、正常マウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン投与群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図25)。これは、プラスミノーゲンが、正常マウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。
【実施例0116】
実施例26は、プラスミノーゲンが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデルマウスの脳ホモジネートにおいてSOD-1タンパク質の分解を促進することに関するものである。
8週齢のB6.Cg-Tg(SOD1-G93A)1Gur/Jトランスジェニックオスマウス(SOD1-G93Aトランスジェニックマウスと略称する)4匹を選択し、殺処分して全脳組織を採取し、実施例1のように上清の脳ホモジネートを調製してEPチューブに移した。
Eppendorf(EP)チューブを取り、(1)ブランク群、(2)ブランク対照群、(3)溶媒対照群、(4)プラスミノーゲン群で、各群に5つの並列を設定した。ブランク群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLの溶媒溶液(10mMクエン酸ナトリウム、2%塩酸アルギニン、3%マンニトール、pH7.4)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;ブランク対照群には、21.5μLの生理食塩水、4.6μLのプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;溶媒対照群に21.5μL SOD-1タンパク質(Nanjing GenScript Biotechnology Co., Ltd., custom-expressed human SOD-1,UniProtKB-P00441,1.0mg/mL)、4.6μLの溶媒溶液、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した;プラスミノーゲン群に21.μLのSOD-1(1.0mg/mL)、4.6μLプラスミノーゲン溶液(2mg/mL)、及び23.9μLのマウス脳ホモジネートを添加した。各群にサンプルを添加した後、37℃で6時間インキュベートした後、50μLの0.1%トリフルオロ酢酸溶液をそれぞれ加えて反応を停止させた。
SDS-PAGEゲル調製キットの説明書に従って、15%ゲルを調製した。各群のサンプルを4×ローディング緩衝液(TaKaRa、e2139)と体積比3:1で均一に混合し、100℃で5分間加熱し、冷却して2分間遠心分離した後、20μLを採取してローディングした。電気泳動条件は、30Vで30分間実行した後、100Vでゲルの底まで実行した。電気泳動後、ゲルをはがし、活性化したPVDFメンブレン(GE、A29433753)に転写し、電気泳動条件は15Vで2.5時間であった。転写したPVDFメンブレンをブロッキング溶液(5%スキムミルク液)に浸し、4℃の冷蔵庫で一晩ブロッキングし、TBST(0.01M Tris-NaCl、pH7.6緩衝液)で4回洗浄した後、ウサギ抗ヒトSOD-1抗体(BOSTER Biological Technology,PB0453)を加えて室温で3時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄し、ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam、ab6721)二次抗体を加え、室温で1時間インキュベートし、TBSTで4回洗浄した後、クリーンなイメージングプレート上にPVDFメンブレンを置き、Immobilon Western HRP Substrate(MILLIPORE、WBKLS0100)を加えて呈色させ、生体分子イメージャーで撮影し、Image Jでバンド光学密度を定量的に分析した。
その結果、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートでは、溶媒対照群に比べてプラスミノーゲン群のSOD-1タンパク質の量が有意に低く、その差は極めて有意であった(***はP<0.001を表す)(図26)。これは、プラスミノーゲンが、SOD1-G93Aトランスジェニックマウスの脳ホモジネートにおいて、SOD-1タンパク質の分解を効果的に促進できることを示している。

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