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特開2024-174988車両制御装置、車両制御方法およびタイヤ試験システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024174988
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法およびタイヤ試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20241210BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241210BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241210BHJP
   B60W 50/00 20060101ALI20241210BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241210BHJP
   B62D 121/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
B62D6/00
B60W50/00
B60W60/00
B62D121:00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157285
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2020219337の分割
【原出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】森 亮介
(57)【要約】
【課題】タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制し、タイヤの試験の効率化を図る。
【解決手段】本発明に係る車両制御装置100は、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかが入力され、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、入力された情報に基づき制御する制御部10を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを装着し、前記タイヤの試験のために、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御装置であって、
前記タイヤの試験の前に予め測定された前記タイヤのCP(Cornering Power)が入力され、目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角を、前記CPに基づき制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記CPが所定の閾値よりも小さい場合の前記車両の操舵角を、前記CPが前記所定の閾値以上である場合の前記車両の操舵角より小さくする、車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御部は、前記車両の操舵角が目標となる前記車両の走行経路に応じた操舵角を超えないように、前記車両の操舵角を制御する、車両制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両制御装置において、
前記コースは、カーブ形状を有し、路面がカーブの内周から外周に向かって傾斜したバンク区間を含み、
前記制御部は、前記バンク区間では、目標となる前記車両の走行速度を一定とする、車両制御装置。
【請求項4】
タイヤを装着し、前記タイヤの試験のために、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御方法であって、
前記タイヤの試験の前に予め測定された前記タイヤのCP(Cornering Power)の入力を受け付け、
目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角を、前記入力されたCPに基づき制御し、
前記CPが所定の閾値よりも小さい場合の加速度を、前記CPが前記所定の閾値以上である場合の前記車両の操舵角より小さくする、車両制御方法。
【請求項5】
タイヤを装着し、前記タイヤの試験のために、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御装置と、前記タイヤの試験の前に予め測定された前記タイヤのCP(Cornering Power)を前記車両制御装置に入力する情報入力装置と、を備え、
前記車両制御装置は、
前記情報入力装置から、前記CPが入力され、目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角を、前記入力されたCPに基づき制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記CPが所定の閾値よりも小さい場合の前記車両の操舵角を、前記CPが前記所定の閾値以上である場合の前記車両の操舵角より小さくする、タイヤ試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法およびタイヤ試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの試験方法として、台上試験方法と、実車試験方法とが知られている。台上試験方法としては、例えば、ドラムの疑似面をタイヤに接触させ、ドラムを回転させているときに、タイヤが発する騒音を測定する方法がある(特許文献1参照)。一方、実車試験方法では、試験専用の周回コースに沿って車両を実際に走行させながら、各種の試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-134213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述したタイヤの実車試験において、自動運転機能を備えた車両にタイヤを装着し、試験のためのコースを周回走行させ、試験データを取得することが行われている。タイヤの試験においては、タイヤの性能評価に影響を与えるような摩耗がタイヤに生じると、適切な試験を行うことができないため、摩耗したタイヤの交換などの作業が必要となる。このような作業は、タイヤの試験の効率の低下を招いてしまう。したがって、上述した自動運転機能を備えた車両を用いた実車試験においては、タイヤの負荷を軽減し、タイヤの試験の効率化を図ることができる車両の制御が求められている。
【0005】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制し、タイヤの試験の効率化を図ることができる、車両制御装置、車両制御方法およびタイヤ試験システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、タイヤを装着し、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御装置であって、前記タイヤに関する情報、前記コースの路面に関する情報および前記車両のアライメント情報の少なくともいずれかが入力され、目標となる前記車両の走行速度に応じた前記車両の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、前記入力された情報に基づき制御する制御部を備える。
上記構成を有することにより、タイヤの性能、コースの路面の状況および車両のアライメント情報の少なくともいずれかに応じた車両の走行の制御が可能となるので、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤの摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤの試験の効率化を図ることができる。
【0007】
本発明の一態様に係る車両制御装置において、前記制御部は、前記車両の速度が目標となる前記車両の走行速度を超えないように、前記第1制御値を制御し、および/または、前記車両の操舵角が目標となる前記車両の走行経路に応じた操舵角を超えないように、前記第2制御値を制御してよい。
上記構成を有することにより、目標となる走行速度に対する車両の速度の変動および目標となる走行経路に応じた操舵角に対する車両の操舵角の変動を抑制することができるので、タイヤへの負荷の増大を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る車両制御装置において、前記タイヤに関する情報は、前記タイヤのRRC(Rolling Resistance Coefficient)値、ユニフォミティ、前記タイヤの外径、前記タイヤのトレッドゴムのtanδ、前記タイヤの幅、前記タイヤの縦ばね係数、前記タイヤのコーナリングパワー値およびWGI(Wet Grip Index)の少なくとも1つを含み、前記コースの路面に関する情報は、前記コースの路面粗さ、進行方向勾配、横方向勾配および水深の少なくとも1つを含んでよい。
上記構成を有することにより、タイヤの性能およびコースの路面の状況をより明確に把握して車両の走行を制御することができるので、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制し、タイヤの試験の効率化を図ることができる。
【0009】
本発明の一態様に係る車両制御装置において、前記コースは、カーブ形状を有し、路面がカーブの内周から外周に向かって傾斜したバンク区間を含み、前記制御部は、前記バンク区間では、目標となる前記車両の走行速度を一定としてよい。
上記構成を有することにより、バンク区間における車両の速度が一定に保たれるので、タイヤへの負荷を一定に保つことができる。
【0010】
本発明の一態様に係る車両制御方法は、タイヤを装着し、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御方法であって、前記タイヤに関する情報、前記コースの路面に関する情報および前記車両のアライメント情報の少なくともいずれかの入力を受け付け、目標となる前記車両の走行速度に応じた前記車両の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、前記入力された情報に基づき制御する。
上記構成を有することにより、タイヤの性能、コースの路面の状況および車両のアライメント情報の少なくとも一方に応じた車両の走行の制御が可能となるので、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤの摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤの試験の効率化を図ることができる。
【0011】
本発明の一態様に係るタイヤ試験システムは、タイヤを装着し、コースを自動運転で走行する車両を制御する車両制御装置と、前記タイヤに関する情報、前記コースの路面に関する情報および前記車両のアライメント情報の少なくともいずれかを前記車両制御装置に入力する情報入力装置と、を備え、前記車両制御装置は、前記情報入力装置から、前記タイヤに関する情報、前記コースの路面に関する情報および前記車両のアライメント情報の少なくともいずれかが入力され、目標となる前記車両の走行速度に応じた前記車両の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる前記車両の走行経路に応じた前記車両の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、前記入力された情報に基づき制御する制御部を備える。
上記構成を有することにより、タイヤの性能、コースの路面の状況および車両のアライメント情報の少なくとも一方に応じた車両の走行の制御が可能となるので、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤの摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤの試験の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤの試験におけるタイヤへの負荷の増大を抑制し、タイヤの試験の効率化を図ることができる、車両制御装置、車両制御方法およびタイヤ試験システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置を備える車両の構成例を示すブロック図である。
図2図1に示す車両が走行するコースの一例を示す平面図である。
図3図1に示す車両制御装置の動作の一例を示すフローチャートである
図4図1に示す車両に装着されたタイヤの試験データを取得するタイヤ試験システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して例示説明する。なお、各図中、同一符号は、同一または同等の構成要素を示している。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置100を備える車両1の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る車両制御装置100は、タイヤ7を装着し、自動運転機能を備える車両1を制御し、図2に示す、タイヤ7の試験を行うためのコース200を自動運転で走行させるものである。コース200の詳細は後述する。
【0016】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、動力伝達装置3と、操舵装置4と、制動装置5と、タイヤ7と、通信装置8と、車載センサ9と、制御部10と、第1バッテリ11と、第2バッテリ12とを備える。制御部10は、本実施形態に係る車両制御装置100を構成する。通信装置8、車載センサ9および制御部10(車両制御装置100)は、車両1が備える自動運転機能を提供する自動運転処理部13を構成する。自動運転処理部13の構成は、図1に示す構成に限られるものではなく、車両1の自動運転機能を提供するための種々の構成が含まれてよい。
【0017】
エンジン2は、車両1を走行させる動力源である。エンジン2は、第1バッテリ11から供給される電力により駆動する。車両1は、動力源として、エンジン2の代わりに、モータを備えてよい。また、車両1は、動力源として、エンジン2とモータとを備えてよい。
【0018】
動力伝達装置3は、エンジン2から発生した動力をタイヤ7に伝達する。動力伝達装置3は、トランスミッションなどを含む。
【0019】
操舵装置4は、タイヤ7の操舵角を制御する。操舵装置4は、ステアリングなどを含む。
【0020】
制動装置5は、タイヤ7を制動する。制動装置5は、ブレーキなどを含む。
【0021】
通信装置8は、無線通信が可能な通信モジュールを含む。通信装置8は、例えば、4G(4th Generation)および5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信装置8は、通信インタフェースを介して、車両1が走行するコース200の周辺に設けられた定点センサ14と通信する。定点センサ14は主に、コース200に関する情報を検出する。コース200に関する情報は、コース200上の状況(他の車両あるいは障害物などの物体の有無など)に関する情報を含んでよい。定点センサ14は、例えば、赤外線、ミリ波などの電磁波を放射し、その電磁波が周辺物で反射した反射波を検出することで、周辺物および周辺物との距離を三次元的に検出する3D-LiDAR(Light Detection and Ranging)センサを含んでよい。通信装置8は、定点センサ14が検出したコース200に関する情報を受信し、受信したコース200に関する情報を制御部10に出力する。
【0022】
また、通信装置8は、外部の情報入力装置15と有線通信または無線通信が可能な通信モジュールを含む。情報入力装置15は、例えば、ネットワークを介して車両1と接続されたサーバ装置、PC(Personal Computer)、タブレット端末などである。情報入力装置15は、車両1が装着するタイヤ7に関する情報、車両1が走行するコース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかが入力される。タイヤ7に関する情報は、例えば、タイヤ7の単輪試験により得られる情報であり、タイヤ7の性能に関する情報である。また、コース200の路面に関する情報は、例えば、路面の粗さ、路面の濡れ具合など、コース200の路面の状況に関する情報である。また、車両1のアライメント情報は、例えば、車両1へのタイヤ7の取り付け角度に関する情報である。通信装置8は、通信モジュールを介して、車両1が装着するタイヤ7に関する情報および車両1が走行するコース200の路面に関する情報の少なくとも一方を、情報入力装置15から受信する。通信装置8は、情報入力装置15から受信した情報を制御部10に出力する。
【0023】
車載センサ9は主に、車載センサ9が搭載された車両1に関する情報を検出する。車載センサ9が検出する情報には、車両1の位置または速度などの車両1の状況に関する情報を含んでよい。車載センサ9が検出する情報には、車両1の周辺の状況に関する情報を含んでよい。車載センサ9は、車両1に搭載された、速度メータ、タコメータ、燃料メータまたは走行距離メータなどの各種のメータから情報を取得してよい。車載センサ9は、GPS(Global Positioning System)などの測位システムを利用して車両1の位置を検出するGPSセンサを含んでよい。車載センサ9は、GPSを利用して車両1の速度を検出する速度センサを含んでよい。車載センサ9は、モノクロカメラまたはステレオカメラなどの、車両1の周辺を撮像するカメラを含んでよい。車載センサ9は、LiDARセンサを含んでよい。車載センサ9は、検出した車両1に関する情報を制御部10に出力する。
【0024】
制御部10は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサまたは特定の処理に特化した専用プロセッサを使用することができる。制御部10には、1つ以上の専用回路が含まれてよい。また、制御部10において、1つ以上のプロセッサを1つ以上の専用回路に置き換えてもよい。専用回路としては、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)を使用することができる。
【0025】
制御部10は、エンジン2、動力伝達装置3、操舵装置4および制動装置5を制御することで、車両1の挙動を自動運転で制御する。自動運転レベルは、例えば、SAE(Society of Automotive Engineering)によって定義されるレベル3-5であってよい。
【0026】
制御部10は、車載センサ9および定点センサ14の全部または一部から検出結果を取得し、取得した検出結果に基づき、車両1の位置および車両1の周辺の障害物の検出を行う。制御部10は、車両1の位置および車両1の周辺の障害物の検出結果に基づき、車両1の走行を制御する。
【0027】
また、制御部10は、通信装置8から出力された、タイヤ7に関する情報およびコース200の路面に関する情報の少なくとも一方に基づき、車両1の挙動を制御する。制御部10は、タイヤ7に関する情報およびコース200の路面に関する情報の少なくとも一方が、通信装置8を介さずに、情報入力装置15から直接入力されてもよい。制御部10による車両1の挙動の制御の詳細については後述する。
【0028】
第1電源としての第1バッテリ11は、例えば、鉛蓄電池またはリチウムイオン電池などの二次電池である。第1バッテリ11は、車両1のエンジン2(および/またはモータ)に電力を供給して、エンジン2(および/またはモータ)を駆動する。第1バッテリ11は、例えば、後述する通過騒音試験のために車両1を慣性走行させる場合、動作を停止する。第1バッテリ11が動作を停止することで、車両1の動力源は動作を停止し、車両1は、動力源が停止した状態(以下、「イグニッションオフ状態」という)で慣性走行する。第1バッテリ11は、第2バッテリ12が二次電池である場合には、第2バッテリ12を充電してよい。第1バッテリ11は、車両1に搭載された種々の電気機器または電子機器に電力を供給してよい。
【0029】
第2電源としての第2バッテリ12は、例えば、鉛蓄電池またはリチウムイオン電池などの二次電池である。第2バッテリ12は、一次電池であってもよい。第2バッテリ12は、自動運転処理部13に電力を供給する。第2バッテリ12は、第1バッテリ11から動力源に電力が供給され、動力源が駆動した状態(以下、「イグニッションオン状態」という)において、自動運転処理部13に電力を供給する。さらに、第2バッテリ12は、イグニッションオフ状態においても、自動運転処理部13に電力を供給する。第2バッテリ12により自動運転処理部13に電力が供給されることで、イグニッションオン状態のみならず、イグニッションオフ状態においても、自動運転処理部13による車両1の自動運転が可能となる。
【0030】
タイヤ7の試験においては、車両1は通常、コース200を周回走行する。そのため、イグニッションオフ状態で所定の測定を行った後、イグニッションオン状態に車両1を遷移させる必要がある。第2バッテリ12は、車両1をイグニッションオフ状態からイグニッションオン状態に遷移させる場合、第1バッテリ11に電力を供給して第1バッテリ11を起動する。第1バッテリ11は、第2バッテリ12により起動されると、車両1の動力源に電力を供給して駆動させ、車両1をイグニッションオン状態に遷移させる。
【0031】
上述したように、車両1は、自動運転機能により、コース200を自動運転で走行する。コース200は、例えば、タイヤ7を試験するためのコースである。図2は、車両1がタイヤ7の試験のために走行するコース200の一例を示す平面図である。
【0032】
図2に示すように、コース200は、互いに平行に延びる2本の直線路200a,200bと、直線路200a,200bの両端に配置され、かつ双方の直線路200a,200bの端部を結ぶように連結された半円状の曲線路200c,200dとからなる、閉じた周回コースである。車両1は、周回コースであるコース200を所定の方向に(図2では、左回りに)周回走行する。
【0033】
コース200は、複数の区間に分けられる。例えば、コース200は、位置P1を始点とし、位置P2を終点とする試験区間210を含む。位置P1および位置P2は、直線路200aに含まれる。したがって、試験区間210は、直線区間である。試験区間210は、タイヤ7の試験に関する種々の測定を行うための区間である。タイヤ7の試験としては、例えば、上述した通過騒音試験がある。通過騒音試験は、タイヤの試験に関する所定の規格(例えば、タイヤ単体騒音規制に係る国際基準であるECE R117-02)に基づいて実施される。試験区間210における路面は、ISO10844の規格に基づく路面であってよい。上述したように、通過騒音試験では、車両1の走行雑音が車両1の動力源の駆動音を含まないように、車両1は、試験区間210の手前で動力源を停止したイグニッションオフ状態となり、試験区間210を慣性走行する。車両1は、試験区間210を通過すると、イグニッションオフ状態からイグニッションオン状態に遷移する。試験区間210の通過は、例えば、車両1の位置情報などから検出することができる。タイヤ7の試験は、通過騒音試験に限られず、他の試験であってもよい。
【0034】
通過騒音試験の場合、試験区間210の路面の幅方向の両側にマイクが配置され、車両1は、試験区間210の路面の中央を、予め定められた速度で走行する。路面の両側に配置されたマイクはそれぞれ、車両1が試験区間210を走行している間に、車両1の走行騒音の騒音レベルを検出し、タイヤ7の試験データとして取得する。
【0035】
コース200はさらに、調整区間220と、バンク区間230と、加速区間240とを含む。
【0036】
調整区間220は、位置P2を始点とし、位置P3を終点とする区間である。位置P3は、直線路200bと曲線路200dとが連結された位置である。調整区間220は、直線路200aのうち、試験区間210以後の区間と、曲線路220cと、直線路200bとを含む区間である。すなわち、調整区間220は、試験区間210の終点と、後述するバンク区間230の始点とに連結された区間である。調整区間220では、車両1による他の車両の追い越しおよび他の車両による車両1の追い越しが許容される。調整区間220において、試験区間210に進入する車両の順番の調整などが行われる。
【0037】
バンク区間230は、位置P3を始点とし、位置P4を終点とする区間である。位置P4は、直線路200aと曲線路200dとが連結された位置である。バンク区間230は、例えば、路面がカーブの内周から外周に向かって高くなるような傾斜が設けられている。すなわち、コース200は、カーブ形状を有し、路面がカーブの内周から外周に向かって高くなるように傾斜しているバンク区間230を含む。この傾斜により、バンク区間230では、車両1は、半円状のコーナーの外側を走行して遠心力を利用することにより、一定速度(例えば、60km/h)を維持して走行する。
【0038】
バンク区間230では、その形状のため、車両1から見た視野が制限されるにも関わらず、比較的高速を維持したまま走行することが求められる。そのため、安全性の観点から、バンク区間230を走行するのは1台だけに限られてよい。したがって、ある車両がバンク区間230を走行している間、他の車両は、バンク区間230の手前の調整区間220において減速・停止するなどして、バンク区間230への進入を待機するように制御されてよい。
【0039】
加速区間240は、位置P4を始点とし、位置P1を終点とする区間である。すなわち、加速区間240は、試験区間210の始点(位置P1)と連結された区間である。加速区間240の距離は、試験区間210におけるタイヤ7の試験に必要な速度、車両1に装着されたタイヤ7の種別、車両1の荷重および車両1の加速性能などに応じて決定される。加速区間240では、制御部10は、試験区間210への進入の際に必要な速度まで、例えば、所定の加速率で車両1を加速する。
【0040】
次に、制御部10による車両1の挙動の制御について説明する。
【0041】
制御部10は、車載センサ9および定点センサ14の検出結果に基づき、車両1の速度および位置を検出する。制御部10は、検出した車両1の速度および位置が、タイヤ7の試験における車両1の走行速度および走行経路を規定した走行シナリオに追従するように、車両1の挙動を制御する。
【0042】
具体的には、制御部10は、車両1の速度が走行シナリオで規定された目標となる走行速度に追従するように、車両1の加減速を制御する制御値(第1制御値)を算出し、算出した第1制御値に従い、車両1の加減速を制御する。すなわち、制御部10は、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値である第1制御値を生成し、生成した第1制御値に基づき、車両1の速度を制御する。
【0043】
また、制御部10は、車両1の走行経路(位置)が走行シナリオで規定された目標となる走行経路に追従するように、車両1の操舵角の制御値(第2制御値)を算出し、算出した第2制御値に従い、車両1の操舵角を制御する。すなわち、制御部10は、目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値である第2制御値を生成し、生成した第2制御値に基づき、車両1の操舵角を制御する。
【0044】
本実施形態においては、制御部10は、情報入力装置15から、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかが入力され、第1制御値および第2制御値の少なくとも一方を、情報入力装置15から入力された情報に基づき制御する。こうすることで、タイヤ7の性能、コース200の路面の状況および車両1のアライメント情報に応じた車両1の走行の制御が可能となるので、タイヤ7の試験におけるタイヤ7への負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤ7の摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤ7の試験の効率化を図ることができる。
【0045】
以下では、制御部10の動作について、具体例を挙げて説明する。
【0046】
制御部10は、例えば、情報入力装置15から入力されたタイヤ7に関する情報に基づき、車両1の速度が目標となる車両1の走行速度を超えないように、第1制御値を制御する。以下では、タイヤ7に関する情報として、タイヤ7の転がり抵抗係数(RRC(Rolling Resistance Coefficient)値)を用い、第1制御値として車両1の加速度を制御する例を説明する。
【0047】
RRC値とは、タイヤ7の比重に対する転がり抵抗(走行中にタイヤ7が損失するエネルギー)の比率である。RRC値が小さいほど、タイヤ7は車両1の進行方向に向かって転がりやすくなり、車両1の加速に対する応答性が高くなる。したがって、タイヤ7のRRC値が小さい場合と、タイヤ7のRRC値が大きい場合とで、同じ第1制御値に基づき車両1を加速しても、タイヤ7のRRC値が小さい場合に、車両1の速度が上がりすぎ、目標となる走行速度を超えてしまう場合がある。車両1の速度が目標となる走行速度を超えると、車両1の速度を落とすような制御が行われる。このような、目標となる走行速度に対する車両1の速度の変動が大きく、車両1の速度の増減を繰り返す制御が行われると、タイヤ7への負荷が大きくなる。
【0048】
そこで、本実施形態においては、制御部10は、車両1の速度が目標となる車両1の走行速度を超えないように、第1制御値を制御する。例えば、制御部10は、車両1の速度を速度Aから速度Bに上げる場合、RRC値が所定の閾値よりも小さい場合の車両1の加速度を、RRC値が所定の閾値以上である場合の車両1の加速度よりも小さくする。こうすることで、RRC値が小さい場合に、車両1の速度が上がりすぎ、目標となる走行速度を超えるといった現象が起こりにくくなる。その結果、目標となる走行速度に対する車両1の変動を抑制し、タイヤ7への負荷の増大を抑制することができる。
【0049】
また、制御部10は、例えば、情報入力装置15から入力されたタイヤ7に関する情報に基づき、車両1の操舵角が目標となる車両1の走行経路に応じた操舵角を超えないように、第2制御値を制御する。以下では、タイヤ7に関する情報として、コーナリングパワー(CP:Cornering Power)を用い、第2制御値として車両1の操舵角を制御する例を説明する。
【0050】
CPとは、操舵角と操舵の際に発生する横力との比率を示す値である。CPが大きいほど、操舵に対する応答性が高くなる。したがって、タイヤ7のCPが小さい場合と、タイヤ7のCPが大きい場合とで、同じ第2制御値に基づき車両1を操舵しても、タイヤ7のCPが小さい場合に、車両1の移動量が大きくなりすぎ、目標となる走行経路に応じた移動量(目標となる走行経路に追従可能な移動量)を超えてしまう場合がある。車両1の移動量が目標となる走行経路に応じた操舵角を超えると、車両1を反対方向に操舵するような制御が行われる。このような、目標となる走行経路に応じた操舵角に対する車両1の操舵角の変動が大きく、車両1の操舵を繰り返す制御が行われると、タイヤ7への負荷が大きくなる。
【0051】
そこで、本実施形態においては、制御部10は、車両1の操舵角が目標となる車両1の走行経路に応じた操舵角を超えないように、第2制御値を制御する。例えば、制御部10は、同じ走行経路を走行する場合であっても、CPが所定の閾値よりも大きい場合の車両1の移動量を、CPが所定の閾値以下である場合の車両1の移動量よりも小さくする。こうすることで、CPが大きい場合に、車両1の操舵角が大きくなりすぎ、目標となる走行経路から外れるといった現象が起こりにくくなる。その結果、目標となる走行経路に応じた操舵角に対する車両1の操舵角の変動を抑制し、タイヤ7への負荷の増大を抑制することができる。
【0052】
上述した車両1の速度の制御には、RRC値のほかに、タイヤ7に関する情報として、ユニフォミティ、外径、tanδ、WGIなどの情報、および、コース200の路面に関する情報として、路面粗さ、進行方向勾配、水深などの情報を用いてもよい。これらの情報は、RRC値と同様に、車両1の進行方向のタイヤ7の性能に関連する情報であり、RRC値を用いて説明した制御と同様の制御により、車両1の速度を制御することができる。また、上述した車両1の操舵角の制御には、CPのほかに、タイヤ7に関する情報として、タイヤ幅、耐縦ばね係数などの情報、コース200の路面に関する情報として、路面粗さ、横方向勾配、水深などの情報、および、車両1に関する情報として、アライメントなどの情報を用いてもよい。これらの情報は、CPと同様に、車両1の進行方向と交差する方向のタイヤ7の性能に関連する情報であり、CPを用いて説明した制御と同様の制御により、車両1の操舵角を制御することができる。すなわち、タイヤ7に関する情報は、タイヤ幅、耐縦ばね係数の少なくとも1つを含んでよい。また、コース200の路面に関する情報は、路面粗さ、横方向勾配、水深の少なくとも1つを含んでよい。
【0053】
なお、上述したように、バンク区間230では、車両1は、一定速度を維持して走行する。したがって、制御部10は、バンク区間230では、目標となる車両1の速度を一定とする。こうすることで、バンク区間230における車両の速度が一定に保たれるので、タイヤ7への負荷を一定に保つことができる。
【0054】
図3は、本実施形態に係る車両制御装置100の動作の一例を示すフローチャートであり、車両制御装置100における車両制御方法を説明するための図である。
【0055】
制御部10は、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかの入力を受け付ける(ステップS101)。具体的には、制御部10は、例えば、情報入力装置15から、通信装置8を介して、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の入力を受け付ける。これらの情報は、情報入力装置15から制御部10に直接入力されてもよい。
【0056】
次に、制御部10は、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値(第1制御値)および目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値(第2制御値)の少なくとも一方を、入力された情報に基づき制御する(ステップS102)。例えば、制御部10は、入力されたタイヤ7に関する情報(例えば、RRC値)に基づき、車両1の速度が目標となる車両1の走行速度を超えないように、第1制御値を制御する。また、制御部10は、入力されたタイヤ7に関する情報(例えば、WGI)に基づき、車両1の操舵角が目標となる車両1の走行経路に応じた操舵角を超えないように、第2制御値を制御する。
【0057】
こうすることで、タイヤ7の性能、コース200の路面の状況および車両1のアライメント情報に応じた車両1の走行の制御が可能となるので、タイヤ7の試験におけるタイヤ7への負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤ7の摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤ7の試験の効率化を図ることができる。
【0058】
図4は、コース200を走行する車両1に装着されたタイヤ7の試験データを取得するタイヤ試験システム300の構成例を示す図である。
【0059】
図4に示すタイヤ試験システム300は、サーバ装置30と、測定装置31とを備える。サーバ装置30は、情報入力装置15の一例である。
【0060】
サーバ装置30は、車両1に装着されたタイヤ7に関する情報、車両1が走行するコース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかが入力される。これらの情報は、タイヤ7の試験の前に予め測定され、サーバ装置30に入力される。サーバ装置30は、車両1に搭載された通信装置8と通信を行うための通信インタフェースを備える。サーバ装置30は、当該通信インタフェースを介して、入力された車両1に装着されたタイヤ7に関する情報、車両1が走行するコース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかを車両1(車両制御装置100)に送信する。すなわち、情報入力装置15としてのサーバ装置30は、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくともいずれかを車両制御装置100に入力する。サーバ装置30と通信を行う車両1(車両制御装置100)の数は1であってもよいし、2以上であってもよい。
【0061】
測定装置31は、コース200を走行する車両1に装着されたタイヤ7の試験データを取得する。通過騒音試験の場合、測定装置31は、例えば、マイクである。この場合、測定装置31は、試験区間210の路面の幅方向の両端側に設置され、車両1の走行騒音を測定する。測定装置31は、取得した試験データをサーバ装置30に出力してよい。
【0062】
このように本実施形態に係る車両制御装置100は、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくとも一方が入力され、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、入力された情報に基づき制御する制御部10を備える。
【0063】
また、本実施形態に係る車両制御方法は、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくとも一方の入力を受け付け、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、入力された情報に基づき制御する。
【0064】
また、本実施形態に係るタイヤ試験システム300は、タイヤ7を装着し、コース200を自動運転で走行する車両1を制御する車両制御装置100と、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくとも一方を車両制御装置100に入力する情報入力装置15と、を備える。車両制御装置100は、情報入力装置15から、タイヤ7に関する情報、コース200の路面に関する情報および車両1のアライメント情報の少なくとも一方が入力される。車両制御装置100は、目標となる車両1の走行速度に応じた車両1の速度の制御値である第1制御値、および、目標となる車両1の走行経路に応じた車両1の操舵角の制御値である第2制御値の少なくとも一方を、入力された情報に基づき制御する。
【0065】
そのため、タイヤ7の性能、コース200の路面の状況および車両1のアライメント情報に応じた車両1の走行の制御が可能となるので、タイヤ7の試験におけるタイヤ7への負荷の増大を抑制することができる。その結果、タイヤ7の摩耗による交換などの作業の手間を減らし、タイヤ7の試験の効率化を図ることができる。
【0066】
本発明に係る車両制御装置100、車両制御方法およびタイヤ試験システム300は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1:車両、2:エンジン(動力源)、3:動力伝達装置、4:操舵装置、5:制動装置、7:タイヤ、8:通信装置、9:車載センサ、10:制御部、11:第1バッテリ(第1電源)、12:第2バッテリ(第2電源)、13:自動運転処理部、14:定点センサ、15:情報入力装置、30:サーバ装置(情報入力装置)、31:測定装置、100:車両制御装置、200:コース、200a,200b:直線路、200c,200d:曲線路、210:試験区間、220:調整区間、230:バンク区間、240:加速区間、300:タイヤ試験システム
図1
図2
図3
図4