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  • 特開-固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175005
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20241210BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20241210BHJP
   C09B 23/01 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G02B5/22
C08F220/26
C09B23/01
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158216
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2020115794の分割
【原出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】永井 友梨
(72)【発明者】
【氏名】田上 英恵
(72)【発明者】
【氏名】古川 茂樹
(57)【要約】
【課題】耐熱性および剥離液に対する耐性を向上可能とした赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】固体撮像素子10は、ポリメチン、および、ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、共重合体と、を含む赤外光カットフィルター13と、光電変換素子11とを備える。共重合体は、下記式(1)によって表され、かつ、環状エーテル基を含むアクリルモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーに由来する第2繰り返し単位とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、
下記式(1)によって表され、かつ、環状エーテル基を含むアクリルモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、前記環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーに由来する第2繰り返し単位とを含む共重合体と、を含む赤外光カットフィルターと、
光電変換素子と、を備える
固体撮像素子。
【化1】

ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は、酸素原子および2つ以上の炭素原子を含む環状エーテル基である。
【請求項2】
前記環状エーテル基を含むモノマーは、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも一方を含む
請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーは、酸性を示す
請求項1または2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記環状エーテル基と反応する官能基は、フェノール性水酸基である
請求項1から3のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記共重合体は、下記式(2)によって表される芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【化2】

ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基であり、R5は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R6は水素原子または所定の置換基である。式(2)において、R6が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
【請求項6】
前記共重合体は、下記式(3)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【化3】

ただし、式(3)において、R7は水素原子またはメチル基であり、R8は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。式(3)において、R9は炭素数3以上の脂環式構造である。
【請求項7】
前記共重合体は、7.5重量%以上17.5重量%以下の前記第1繰り返し単位を含み、かつ、
前記第1繰り返し単位の重量に対する前記第2繰り返し単位の重量の比が1.0以上3.0以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記共重合体は、65重量%以上の前記第3繰り返し単位を含む
請求項5または6に記載の固体撮像素子。
【請求項9】
前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層を備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項10】
可視光用フィルターと、
赤外光パスフィルターと、を備える
請求項1から9のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
前記赤外光カットフィルターに対して入射面の側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atm以下である
請求項1から10のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するバンドパスフィルターを備える
請求項1から11のいずれか一項に記載の固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の一例は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の他の例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
固体撮像素子は、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備える。赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-060176号公報
【特許文献2】特開2018-060910号公報
【特許文献3】特開2007-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、赤外光カットフィルターを備える固体撮像素子が実装基板に実装されるときには、リフロー方式によるはんだ付けによって、固体撮像素子が実装基板に実装される。この際に、固体撮像素子が備える赤外光カットフィルターがはんだを溶融させる温度にまで加熱される。赤外光カットフィルターの加熱は、シアニン色素を変性させ、結果として、加熱後の赤外光カットフィルターが有する赤外光の透過率が、加熱前の赤外光カットフィルターが有する赤外光の透過率から変化することがある。
【0006】
一方で、赤外光カットフィルターのパターニングには、ドライエッチングが用いられることがある。この場合には、まず、赤外光カットフィルター上にレジストパターンを形成する。次いで、レジストパターンを用いて赤外光カットフィルターをエッチングし、その後に、レジストパターンを赤外光カットフィルターから剥離する。赤外光カットフィルターからレジストパターンを剥離するために用いられる剥離液は、赤外光カットフィルターに接触することによって、赤外光カットフィルターが含むシアニン色素の一部を赤外光カットフィルターの外部に溶出する。これによって、赤外光カットフィルターにおいて期待される赤外光の吸収量が低減される。
【0007】
本発明は、耐熱性および剥離液に対する耐性を向上可能とした固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための固体撮像素子は、ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、下記式(1)によって表され、かつ、環状エーテル基を含むアクリルモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、前記環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含む赤外光カットフィルターと、光電変換素子と、を備える。
【0009】
【化1】
【0010】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は、酸素原子および2つ以上の炭素原子を含む環状エーテル基である。
【0011】
上記構成によれば、第1繰り返し単位が有する環状エーテル基が、第2繰り返し単位が有する環状エーテル基と反応する官能基と架橋することによって、架橋構造が形成される。これによって、加熱により赤外光カットフィルターの透過率が変化することが抑えられ、かつ、ドライエッチング時に用いられる剥離液に対して赤外光吸収色素が溶出することが抑えられる。結果として、赤外光カットフィルターにおける耐熱性及び剥離液に対する耐性を高めることが可能である。
【0012】
上記固体撮像素子において、前記環状エーテル基を含むモノマーは、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも一方を含んでもよい。この構成は、第2繰り返し単位が有する環状エーテル基と反応する官能基と、環状エーテル基との反応性の観点において好ましい。
【0013】
上記固体撮像素子において、前記環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーは、酸性を示してもよい。この構成によれば、樹脂の重合過程において常温にて架橋反応が即座に進行することを抑制することができる。
【0014】
上記固体撮像素子において、前記環状エーテル基と反応する官能基は、フェノール性水酸基であってもよい。この構成によれば、フェノール性水酸基が弱酸性を示すことから、環状エーテル基との架橋反応が、樹脂の重合過程では生じにくく、塗膜の作成時における加熱工程において生じやすい。そのため、フェノール性水酸基は、塗布性の観点において有利である。
【0015】
上記固体撮像素子において、前記共重合体は、下記式(2)によって表される芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位を含んでもよい。
【0016】
【化2】
【0017】
ただし、式(2)において、R4は水素原子またはメチル基であり、R5は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R6は水素原子または所定の置換基である。式(2)において、R6が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
【0018】
上記固体撮像素子において、前記共重合体は、下記式(3)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位を含んでもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
ただし、式(3)において、R7は水素原子またはメチル基であり、R8は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。式(3)において、R9は炭素数3以上の脂環式構造である。
【0021】
上記構成によれば、第3繰り返し単位が有する芳香環基または脂環式構造がシアニン色素の近傍に位置する他のシアニン色素との間に位置することによって、シアニン色素の会合を抑える程度の距離をシアニン色素間に形成することが可能である。これにより、シアニン色素での吸収が期待される波長での分光特性の劣化が抑えられる。
【0022】
上記固体撮像素子において、前記共重合体は、前記第1繰り返し単位を7.5重量%以上17.5重量%以下の割合で含み、かつ、前記第1繰り返し単位の重量に対する前記第2繰り返し単位の重量の比が1.0以上3.0以下であってもよい。
【0023】
上記構成によれば、共重合体が第1繰り返し単位と第2繰り返し単位とを上述した範囲で含むことによって、加熱処理後および剥離液処理後において、赤外光カットフィルターにおける赤外光の吸光度が低下することが抑えられる。これによって、赤外光カットフィルターの耐熱性と剥離液に対する耐性との両方を高めることができる。
【0024】
上記固体撮像素子において、前記共重合体は、前記第3繰り返し単位を65重量%以上の割合で含んでもよい。この構成によれば、共重合体が第3繰り返し単位を上述した範囲で含むことによって、赤外光カットフィルターにおいて、シアニン色素による吸収が期待される波長での分光特性の劣化が抑えられる。
上記固体撮像素子は、前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層を備えてもよい。
上記固体撮像素子は、可視光用フィルターと、赤外光パスフィルターと、を備えてもよい。
上記固体撮像素子において、前記赤外光カットフィルターに対して入射面の側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。
上記固体撮像素子は、可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するバンドパスフィルターを備えてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、赤外光カットフィルターにおいて、耐熱性および剥離液に対する耐性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態の固体撮像素子における構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子における一実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、実施例を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0028】
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0029】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。各色用の光電変換素子11R,11G,11Bは、その光電変換素子11R,11G,11Bに対応付けられた特定の波長を有する可視光の強度を測定する。各赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。
【0030】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0031】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、赤外光カットフィルター13、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ15Pを備える。
【0032】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0033】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0034】
赤外光カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター13は、貫通孔13Hを備える。赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0035】
赤外光カットフィルター13は、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む。シアニン色素は、近赤外光に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸収率における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。赤外光カットフィルター13は、例えば、300nm以上3μm以下の厚さを有することが可能である。
【0036】
バリア層14は、赤外光カットフィルター13の酸化源の透過を抑制する。酸化源は、酸素および水などである。バリア層14が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m/day/atm以下であることが好ましい。酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠した値である。酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下に定められるから、バリア層14によって赤外光カットフィルター13に酸化源が到達することが抑制されるため、赤外光カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外光カットフィルター13の耐光性が向上可能である。
【0037】
バリア層14を形成する材料は、無機化合物である。バリア層14を形成する材料は、珪素化合物であることが好ましい。バリア層14を形成する材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、および、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
【0038】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、青色用マイクロレンズ15B、および、赤外光用マイクロレンズ15Pから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ15Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0039】
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、外表面である入射面15Sを備える。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、入射面15Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む。
【0040】
[赤外光カットフィルター]
以下、赤外光カットフィルター13についてより詳細に説明する。
赤外光カットフィルター13は、シアニン色素と共重合体とを含む。シアニン色素は、ポリメチン、および、ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、アニオンであるトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸(FAP)とを含む。共重合体は、下記式(1)によって表され、環状エーテル基を含むアクリルモノマーに由来する第1繰り返し単位と、環状エーテルと反応する官能基を含むモノマーに由来する第2繰り返し単位とを含んでいる。
【0041】
【化1】
【0042】
ただし、式(1)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は、酸素原子および2つ以上の炭素原子を含む環状エーテル基である。
【0043】
シアニン色素は、下記式(4)に示される構造を有してもよい。
【0044】
【化4】
【0045】
上記式(4)において、Xは、1つのメチン、または、ポリメチンである。メチンが含む炭素原子に結合された水素原子は、ハロゲン原子、または、有機基に置換されてもよい。ポリメチンは、ポリメチンを形成する炭素を含む環状構造を有してもよい。環状構造は、ポリメチンを形成する複数の炭素において、連続する3つの炭素を含むことができる。ポリメチンが環状構造を有する場合には、ポリメチンの炭素数は5以上であってよい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
【0046】
また、シアニン色素は、下記式(5)に示される構造を有してもよい。
【0047】
【化5】
【0048】
上記式(5)において、nは1以上の整数である。nは、ポリメチン鎖に含まれる繰り返し単位の数を示している。R10およびR11は水素原子、または、有機基である。R12およびR13は、水素原子または有機基である。R12およびR13は、炭素数1以上の直鎖状アルキル基、または、分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
【0049】
なお、式(4)において、ポリメチンが環状構造を含む場合には、環状構造は、例えば、環状構造がエチレン性二重結合などの不飽和結合を少なくとも一つ有し、かつ、当該不飽和結合がポリメチン鎖の一部として電子共鳴する環状構造であってよい。こうした環状構造は、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、および、ベンゼン環などであってよい。これらの環状構造は、いずれも置換基を有してもよい。
【0050】
また、式(5)において、nが1である化合物はシアニンであり、nが2である化合物はカルボシアニンであり、nが3である化合物はジカルボシアニンである。式(5)において、nが4である化合物はトリカルボシアニンである。
【0051】
R10およびR11の有機基は、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および、アルケニル基であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、および、ナフチル基などであってよい。アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などであってよい。アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、および、オクテニル基などであってよい。
【0052】
なお、各有機基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、臭素、および、塩素などであってよい。置換後の有機基は、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、および、シアノエチル基などであってよい。
【0053】
R12またはR13は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。
【0054】
各窒素原子が含まれる複素環は、例えば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、および、ピリジンなどであってよい。
こうしたシアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(6)および下記式(7)によって表される構造であってよい。
【0055】
【化6】
【0056】
【化7】
【0057】
なお、シアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(8)から式(47)に示される構造を有してもよい。すなわち、シアニン色素が含む各窒素原子は、以下に示される環状構造中に含まれてもよい。
【0058】
【化8】
【0059】
【化9】
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
【化12】
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
【化15】
【0066】
【化16】
【0067】
【化17】
【0068】
【化18】
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
【化23】
【0074】
【化24】
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
【化27】
【0078】
【化28】
【0079】
【化29】
【0080】
【化30】
【0081】
【化31】
【0082】
【化32】
【0083】
【化33】
【0084】
【化34】
【0085】
【化35】
【0086】
【化36】
【0087】
【化37】
【0088】
【化38】
【0089】
【化39】
【0090】
【化40】
【0091】
【化41】
【0092】
【化42】
【0093】
【化43】
【0094】
【化44】
【0095】
【化45】
【0096】
【化46】
【0097】
【化47】
【0098】
シアニン色素は、700nm以上1100nm以下に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸光度における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。
【0099】
なお、波長λにおける吸光度Aλは、下記式によって算出される。
Aλ=-log10(%T/100)
透過率Tは、赤外光にシアニン色素を有する赤外光カットフィルター13を透過させたときの、入射光の強度(IL)に対する透過光の強度(TL)の比(TL/IL)によって表される。赤外光カットフィルター13において、入射光の強度を1としたときの透過光の強度が透過率Tであり、透過率Tに100を乗算した値が透過率パーセント%Tである。
【0100】
トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸([(CPF)は、下記式(48)によって示される構造を有する。
【0101】
【化48】
【0102】
固体撮像素子10の製造過程において、赤外光カットフィルター13は、200℃程度に加熱される。上述したシアニン色素は、200℃程度に加熱されることによって、シアニン色素が有する構造が変わることによって、シアニン色素における赤外光に対する透過率が変化することがある。
【0103】
この点で、FAPは、シアニン色素におけるポリメチン鎖の近傍に位置することが可能な分子量および分子構造を有するため、シアニン色素のポリメチン鎖が、シアニン色素の加熱によって切断されることが抑えられる。それゆえに、シアニン色素の加熱に起因してシアニン色素が有する赤外光の透過率が変化することが抑えられ、結果として、赤外光カットフィルター13における赤外光の透過率が変化することが抑制される。
【0104】
上述したように、赤外光カットフィルター13は、共重合体を含んでいる。共重合体は、アクリル酸またはメタクリル酸を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含んでよい。アクリル酸を含むモノマーがアクリレートであり、メタクリル酸を含むモノマーがメタクリレートである。
【0105】
共重合体は、第1繰り返し単位、および、第2繰り返し単位を含む。第1繰り返し単位は、環状エーテル基をもつアクリルモノマーに由来する。第2繰り返し単位は、環状エーテル基と反応する官能基を有するモノマーに由来することが好ましい。
【0106】
上述したように、第1繰り返し単位は、環状エーテル基をもつアクリルモノマーに由来する。第1繰り返し単位において、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R2は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、および、ブチレン基などであってよい。R3は、酸素原子および2つ以上の炭素原子を含む環状エーテル基である。環状エーテル基は、複数の炭素原子を含んで形成される環状内にエーテル結合を有している。
【0107】
環状エーテル基は、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、および、テトラヒドロピラニル基などであってよい。第2繰り返し単位の官能基との反応性の観点において、環状エーテル基は、エポキシ基およびオキセタニル基であることが好ましい。すなわち、環状エーテル基を含むモノマーは、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0108】
環状エーテル基を有するアクリルモノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2‐メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2‐グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3‐グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐メチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐エチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐メチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐エチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、および、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどであってよい。
【0109】
第2繰り返し単位は、環状エーテル基と反応する官能基を有するモノマーに由来する。環状エーテル基と反応する官能基は、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、有機酸、酸無水物、および、アミノ基などである。これらの官能基は、環状エーテル基と反応しやすく、当該官能基が環状エーテル基と架橋構造を形成することによって、赤外光カットフィルターの耐熱性および剥離液に対する耐性が高められる。特に、当該官能基が酸性を示す官能基であることは、環状エーテル基と反応しやすい観点において好ましい。すなわち、環状エーテル基と反応する官能基を含むモノマーは、酸性を示すことが好ましい。
【0110】
環状エーテル基と反応を有する官能基は、酸性を示す官能基の中でも、フェノール性水酸基であることがより好ましい。フェノール性水酸基は弱酸性を示すことによって、環状エーテル基との架橋反応が樹脂の重合過程では生じにくく、塗膜の作製時における加熱工程において生じやすい。そのため、フェノール性水酸基は、塗布性の観点において有利である。
【0111】
フェノール性水酸基を有するモノマーは、例えば、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、3‐(tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4‐(tert‐ブチル)‐2‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド、N‐(3‐ヒドロキシフェニル)マレイミド、p‐ヒドロキシスチレン、および、α‐メチル‐p‐ヒドロキシスチレンなどであってよい。フェノール性水酸基を有したモノマーを用いて生成された重合体は、側鎖にフェノール性水酸基を含む。
【0112】
共重合体はさらに第3繰り返し単位を含んでもよい。第3繰り返し単位は、芳香環を有するアクリルモノマー、または、脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来することが好ましい。芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位は、下記式(2)によって表される。脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第3繰り返し単位は、下記式(3)によって表される。
【0113】
【化2】
【0114】
ただし、上記式(2)において、R4は水素原子またはメチル基であり、R5は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R6は水素原子または所定の置換基である。式(2)において、R6が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。
【0115】
【化3】
【0116】
ただし、上記式(3)において、R7は水素原子またはメチル基であり、R8は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。式(3)において、R9は炭素数3以上の脂環式構造である。
【0117】
芳香環を有するアクリルモノマーは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、エトキシ化オルト‐フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o‐フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、2‐ナフトール(メタ)アクリレート、4‐ビフェニル(メタ)アクリレート、9‐アントリルメチル(メタ)アクリレート、2‐[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐ヒドロキシフェニル]エチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド(EO)変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル、および、ヘキサヒドロフタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルなどであってよい。
【0118】
脂環式構造を有するアクリルモノマーは、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4‐t‐シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、および、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレートなどであってよい。
【0119】
赤外光カットフィルター13を形成する共重合体が第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含んでいる。そのため、第1繰り返し単位が有する環状エーテル基と第2繰り返し単位が有する環状エーテル基と反応する官能基とがフィルター形成時の加熱工程において架橋構造を形成し、これによって、加熱により赤外光カットフィルターの透過率が変化することが抑えられ、かつ、ドライエッチング時に用いられる剥離液に対してシアニン色素が溶出することが抑えられる。結果として、赤外光カットフィルターにおける耐熱性および剥離液に対する耐性を高めることが可能である。
【0120】
また、赤外光カットフィルター13を形成する共重合体がさらに第3繰り返し単位を含んでいる。第3繰り返し単位が有する芳香環または脂環式構造は、シアニン色素の近傍に位置する他のシアニン色素との間に位置することによって、シアニン色素の会合を抑える程度の距離をシアニン色素間に形成することが可能である。これにより、シアニン色素での吸収が期待される波長での分光特性の劣化が抑えられる。
【0121】
共重合体は、第1繰り返し単位を7.5重量%以上17.5重量%以下の割合で含んでいることが好ましく、第1繰り返し単位の重量に対する第2繰り返し単位の重量の比が1.0以上3.0以下であることが好ましい。共重合体が第1繰り返し単位と第2繰り返し単位を上述した範囲で含むことによって、加熱処理後および剥離液処理後において、赤外光カットフィルターにおける赤外光の吸光度が低下することが抑えられる。
【0122】
共重合体は、第3繰り返し単位を65重量%以上の割合で含んでいることが好ましい。共重合体が第3繰り返し単位を上述した範囲で含むことによって、赤外光カットフィルターにおけるシアニン色素の会合が抑制され、シアニン色素での吸収が期待される波長における分光特性の劣化が抑えられる。
【0123】
なお、共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第1繰り返し単位、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートに由来する第2繰り返し単位、および、フェニルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位を含むことが好ましい。この場合には、共重合体は、第3繰り返し単位を65重量%以上70重量%以下の割合で含み、かつ、第1繰り返し単位の重量に対する第2繰り返し単位の重量の比が、1.0以上3.0以下であり好ましい。これにより、第3繰り返し単位が有するフェニル基がシアニン色素の近傍に位置する他のシアニン色素との間に位置することによって、シアニン色素の会合を抑える程度の距離をシアニン色素間に形成することが可能である。そのため、シアニン色素での吸収が期待される波長での分光特性の変化が抑えられる。また、第2繰り返し単位が有するフェノール基が、第1繰り返し単位が有するエポキシ基と架橋することによって、架橋構造が形成される。これによって、加熱により赤外光カットフィルター13の透過率が変化することが抑えられ、かつ、ドライエッチング時に用いられる剥離液に対して赤外光吸収色素が溶出することが抑えられる。結果として、赤外光カットフィルター13における耐熱性および剥離液に対する耐性を高めることが可能である。
【0124】
また、当該共重合体は、第1繰り返し単位を7.5重量%以上17.5重量%以下の割合で含むことが好ましい。共重合体が第1繰り返し単位をこの範囲で含むことによって、加熱処理後および剥離液処理後において、赤外光カットフィルター13における赤外光の吸光度が低下することが抑えられる。
【0125】
さらに、共重合体は、第2繰り返し単位を15重量%以上25重量%以下の割合で含むことが好ましい。共重合体が第2繰り返し単位をこの範囲で含むことによって、加熱処理後および剥離液処理後において、赤外光カットフィルター13における赤外光の吸光度が低下することが抑えられる。
【0126】
なお、共重合体は、上述したアクリルモノマー以外のモノマーを含んでもよい。上述したアクリルモノマー以外のモノマーは、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、および、ジエン系モノマーなどであってよい。スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、および、ベンジルスチレンなどであってよい。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および、2‐エチルヘキシルメタクリレートなどであってよい。ビニルエステル系モノマーは、例えば、酢酸ビニルなどであってよい。ビニルエーテル系モノマーは、例えば、ビニルメチルエーテルなどであってよい。ハロゲン元素含有ビニル系モノマーは、例えば、塩化ビニルなどであってよい。ジエン系モノマーは、例えば、ブタジエン、および、イソブチレンなどであってよい。共重合体は、上述したアクリルモノマー以外のモノマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0127】
また、共重合体は、共重合体が有する極性を調整するためのモノマーを含んでもよい。極性を調整するためのモノマーは、酸基または水酸基を共重合体に付加する。こうしたモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸-2ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸-4‐ヒドロキシフェニルなどであってよい。
【0128】
また、共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれの構造を有していてもよい。共重合体の構造がランダム共重合体であれば、製造工程およびシアニン色素との調製が容易である。そのため、ランダム共重合体は、他の共重合体よりも好ましい。
【0129】
共重合体を得るための重合方法は、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、および、リビングアニオン重合などであってよい。共重合体を得るための重合方法には、工業的に生産が容易なことから、ラジカル重合が選択されることが好ましい。ラジカル重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、および、懸濁重合法などであってよい。ラジカル重合には、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いることによって、共重合体における分子量の制御が容易である。さらに、モノマーの重合後に共重合体を含む溶液を溶液の状態で固体撮像素子用フィルターの製造に使用することができる。
【0130】
ラジカル重合では、上述したモノマーを重合溶剤によって希釈した後に、ラジカル重合開始剤を加えてモノマーの重合を行ってもよい。
重合溶剤は、例えば、エステル系溶剤、アルコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、および、アルコール系溶剤などであってよい。エステル系溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t‐ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、および、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどであってよい。アルコールエーテル系溶剤は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、および、3‐メトキシ‐3-メチル‐1‐ブタノールなどであってよい。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。芳香族系溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶剤は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2‐メチル‐2‐ブタノールなどであってよい。このうち、ケトン系溶剤、および、エステル系溶剤は、固体撮像素子用フィルターの製造に用いることができるため好ましい。なお、上述した重合溶剤において、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0131】
ラジカル重合において、重合溶剤を使用する量は特に限定されないが、モノマーの合計を100重量部に設定する場合に、重合溶剤の使用量は、1重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
【0132】
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物およびアゾ化合物などであってよい。過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、および、ジ‐t‐ブチルパーオキシドなどであってよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)、および、2,2’‐アゾビス[2‐メチル‐N‐(2‐ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などであってよい。
【0133】
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの合計を100重量部に設定した場合に、0.0001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.001重量部以上15重量部以下であることがより好ましく、0.005重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤は、モノマーおよび重合溶剤に対して、重合開始前に添加されてもよいし、重合反応系中に滴下されてもよい。ラジカル重合開始剤をモノマーおよび重合溶剤に対して重合反応系中に滴下することは、重合による発熱を抑制することができる点で好ましい。
【0134】
ラジカル重合の反応温度は、ラジカル重合開始剤および重合溶剤の種類によって適宜選択される。反応温度は、製造上の容易性、および、反応制御性の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0135】
共重合体のガラス転移温度は、75℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が75℃以上であれば、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0136】
共重合体の分子量は、3万以上15万以下であることが好ましく、5万以上15万以下であることがより好ましい。共重合体の分子量がこの範囲に含まれることによって、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0137】
15万を超える分子量を有した共重合体は、重合時の粘度上昇によりシアニン色素とともに塗液化することが困難である。そのため、共重合体の分子量が15万を超える場合には、赤外光カットフィルター13の形成が容易ではない。一方で、共重合体の分子量が15万以下であれば、共重合体とシアニン色素とを含む塗液を形成することが可能であることから、赤外光カットフィルター13の形成がより容易である。なお、共重合体の平均分子量は、重量平均分子量である。共重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法によって測定することが可能である。例えば、ラジカル重合反応において、溶液中のモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更することによって、共重合体の分子量を制御することができる。
【0138】
共重合体の質量と、共重合体を構成するモノマーの質量との和(MS)に対するモノマーの質量(MM)の百分率(MM/MS×100)は、20%以下であることが好ましい。残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、シアニン色素における赤外光の透過率が変化しにくくなる。
【0139】
なお、共重合体の質量と、共重合体を構成するモノマーの質量との和(MS)に対するモノマーの質量(MM)の百分率(MM/MS×100)は、10%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。共重合体の質量、および、モノマーの質量は、共重合体の分析結果に基づき定量することが可能である。共重合体の分析方法は、例えば、ガスクロマトグラフィー量分析法(GC‐MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、および、赤外分光法(IR)などであってよい。
【0140】
共重合体の質量とモノマーの質量との和に対するモノマーの質量の割合を変更する方法は、例えば、重合時間を変更する方法、および、重合温度を変更する方法などであってよい。また、共重合体の質量とモノマーの質量との和に対するモノマーの質量の割合を変更する方法は、重合反応の開始時におけるモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更する方法などであってよい。共重合体の質量とモノマーの質量との和に対するモノマーの質量の割合を変更する方法は、重合反応後の精製条件を変更する方法などであってよい。このうち、重合時間を変更する方法は、モノマーの質量の割合を変更する制御の精度が高いため好ましい。
【0141】
共重合体の重合時に使用するラジカル重合開始剤が、側鎖に芳香環を有する有機過酸化物である場合には、赤外光カットフィルターに含まれる共重合体を100重量部に設定する場合に、赤外光カットフィルターが、0.35重量部未満の有機過酸化物を含むことが好ましい。赤外光カットフィルターが0.35重量部未満の有機過酸化物を含むことで、可視光領域、および、赤外光領域における赤外光カットフィルターの分光特性の劣化が抑えられる。
【0142】
[固体撮像素子用フィルターの製造方法]
固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター13を形成することと、赤外光カットフィルター13をドライエッチングによってパターニングすることとを含む。赤外光カットフィルター13を形成することでは、シアニン色素と、共重合体とを含む赤外光カットフィルター13を形成する。以下、固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法をより詳細に説明する。
【0143】
各色用フィルター12R,12G,12B,12Pは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、赤色用フィルター12Rの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。なお、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pも、赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
【0144】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色組成物に含有される顔料には、有機または無機の顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料であることが好ましく、有機顔料であることが好ましい。有機顔料は、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などであってよい。
【0145】
また、赤外光パスフィルター12Pに含有される着色成分には、黒色色素、あるいは、黒色染料を用いることができる。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物であってよい。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。
【0146】
各色の感光性着色組成物にはさらに、バインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、および、レベリング剤などが含まれる。
赤外光カットフィルター13を形成する際には、上述したシアニン色素、共重合体、および、有機溶剤を含む塗布液を各色用フィルター12R,12G,12B,12P上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜を加熱によって硬化させる。これにより、赤外光カットフィルター13が形成される。
【0147】
赤外光カットフィルター13が備える貫通孔13Hを形成する際には、まず、赤外光カットフィルター13上にフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層をパターニングすることによってレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いたドライエッチングによって、赤外光カットフィルター13をエッチングする。そして、エッチング後の赤外光カットフィルター13に残存するレジストパターンを剥離液によって除去することによって貫通孔13Hが形成される。これにより、赤外光カットフィルターをパターニングすることができる。
【0148】
剥離液には、レジストパターンを溶解することが可能な液体を用いることができる。剥離液は、例えば、N‐メチルピロリドン、または、ジメチルスルホキシドであってよい。赤外光カットフィルター13と剥離液とを接触させる方法は、ディップ法、スプレー法、および、スピン法などいずれの方法であってもよい。
【0149】
バリア層14は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリングによる成膜を経て形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、シランと酸素とを用いたCVDによる成膜を経て形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造であってもよい。
【0150】
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂などである。
【0151】
[製造例]
[製造例1]
表1を参照して、製造例1‐1から製造例1‐6を説明する。なお、以下に説明する製造例1によって製造された共重合体では、生成された共重合体における各繰り返し単位の重量比は、共重合体の生成時における各モノマーの重量比に等しい。
【0152】
【表1】
【0153】
[製造例1‐1]
300重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を重合溶剤として準備した。また、15重量部のグリシジルメタクリレート、15重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、70重量部のフェニルメタクリレートをアクリルモノマーとして準備した。
【0154】
さらに、1.5重量部のベンゾイルペルオキシド(BPO)をラジカル重合開始剤として準備した。これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌および還流した。これにより、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0155】
[製造例1‐2]
製造例1‐1において、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをN‐(4‐ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドに変更した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0156】
[製造例1‐3]
製造例1‐1において、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをN‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミドに変更した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、N‐(4‐ヒドロキシフェニル)マレイミド、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0157】
[製造例1‐4]
製造例1‐1において、グリシジルメタクリレートを(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メチルメタクリレートに変更した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、(3‐エチルオキセタン‐3‐イル)メチルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0158】
[製造例1‐5]
製造例1‐1において、フェニルメタクリレートをジシクロペンタニルメタクリレートに変更した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、ジシクロペンタニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0159】
[製造例1‐6]
製造例1‐1において、モノマーとして100重量部のフェニルメタクリレートを準備した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートのみから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0160】
[製造例2]
表2を参照して、製造例2‐1から製造例2‐11を説明する。なお、製造例2では、第1繰り返し単位がグリシジルメタクリレート(GMA)に由来し、第2繰り返し単位が4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート(HPMA)に由来し、かつ、第3繰り返し単位がフェニルメタクリレート(PhMA)に由来する。また、製造例2によって製造された共重合体では、生成された共重合体における各繰り返し単位の重量比は、共重合体の生成時における各モノマーの重量比に等しい。
【0161】
【表2】
【0162】
[製造例2‐1]
製造例1‐1において、グリシジルメタクリレートの量を20重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を10重量部に変更し、かつ、フェニルメタクリレートの量を70重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、0.5に設定した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0163】
[製造例2‐2]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を15重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルの量を15重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、1.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0164】
[製造例2‐3]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を10重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を20重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、2.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0165】
[製造例2‐4]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を7.5重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を22.5重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、3.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0166】
[製造例2‐5]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を6重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を24重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、4.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0167】
[製造例2‐6]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を5重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を25重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、5.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0168】
[製造例2‐7]
製造例2‐1において、グリシジルメタクリレートの量を17.5重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を17.5重量部に変更し、かつ、フェニルメタクリレートの量を65重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、1.0に設定した。それ以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0169】
[製造例2‐8]
製造例2‐7において、グリシジルメタクリレートの量を11.5重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を23.5重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、2.0に設定した。それ以外は、製造例2‐7と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0170】
[製造例2‐9]
製造例2‐7において、グリシジルメタクリレートの量を10重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を25重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、2.5に設定した。それ以外は、製造例2‐7と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0171】
[製造例2‐10]
製造例2‐7において、グリシジルメタクリレートの量を20重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を20重量部に変更し、かつ、フェニルメタクリレートの量を60重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、1.0に設定した。それ以外は、製造例2‐7と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0172】
[製造例2‐11]
製造例2‐7において、グリシジルメタクリレートの量を25重量部に変更し、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの量を25重量部に変更し、かつ、フェニルメタクリレートの量を50重量部に変更した。これにより、グリシジルメタクリレートの重量に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量の比を、1.0に設定した。それ以外は、製造例2‐7と同様の方法によって、グリシジルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、フェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0173】
[試験例]
[試験例1]
試験例1では、製造例1‐1から製造例1‐6の共重合体を以下の方法で用いることによって、6種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、試験前、耐剥離液性試験の後、および、耐熱試験の後における吸光度を以下に説明する方法で算出した。なお、各試験例の赤外光カットフィルターを製造する際には、以下に説明する耐剥離液性試験に用いる赤外光カットフィルターと、耐熱性試験に用いる赤外光カットフィルターとを個別に製造した。
【0174】
0.3gのシアニン色素、12.0gの25%ポリマー溶液、および、10gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む塗液を作製した。この際に、シアニン色素として、上記式(6)によって表される色素を用い、上述した製造例1‐1から製造例1‐6によって得られた共重合体をそれぞれ含む6種のポリマー溶液を用いた。塗液を透明基板上に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、塗膜を230℃で加熱して硬化させることによって、1.0μmの厚さを有する試験例1‐1から試験例1‐6の赤外光カットフィルターを得た。
【0175】
[評価方法]
[分光特性]
分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて350nmから1150nmの各波長を有した光に対する各試験例の赤外光カットフィルターにおける透過率を測定した。そして、透過率の測定結果から、吸光度を算出した。これにより、各赤外光カットフィルターについて、吸光度のスペクトルを得た。なお、上記式(6)によって表されるシアニン色素における吸光度のスペクトルは、950nmにおいてピークを有する。そのため、各赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度が、0.8以上であるか否かを評価した。なお、950nmでの吸光度が0.8以上である赤外光カットフィルターは、固体撮像素子に適用された場合に適した赤外光の吸収能を有する。
【0176】
[耐剥離液性]
各試験例の赤外光カットフィルターにおける透過率の測定後、各試験例の赤外光カットフィルターを1分間にわたって剥離液に浸漬した。浸漬後の各試験例の赤外光カットフィルターについて、浸漬前の各試験例の赤外光カットフィルターに対する方法と同様の方法によって透過率を測定した。そして、透過率の測定結果から、吸光度を算出した。これにより、浸漬後の各試験例の赤外光カットフィルターについて、吸光度のスペクトルを得た。そして、浸漬後の各試験例の赤外光カットフィルターにおいて、950nmでの吸光度が0.7以上であるか否かを評価した。なお、剥離液に浸漬後の赤外光カットフィルターでは、950nmでの吸光度が0.7以上である赤外光カットフィルターが、固体撮像素子に適用された場合に適した赤外光の吸収能を有する。
【0177】
[耐熱性]
各試験例の赤外光カットフィルターにおける透過率の測定後、各試験例の赤外光カットフィルターを250℃で加熱した。加熱後の各試験例の赤外光カットフィルターについて、加熱前の各試験例の赤外光カットフィルターに対する方法と同様の方法によって透過率を測定した。そして、透過率の測定結果から、吸光度を算出した。これにより、加熱後の各試験例の赤外光カットフィルターについて、吸光度のスペクトルを得た。そして、加熱後の各試験例の赤外光カットフィルターにおいて、950nmでの吸光度が0.7以上であるか否かを評価した。なお、250℃で加熱した後の赤外光カットフィルターでは、950nmでの吸光度が0.7以上である赤外光カットフィルターが、固体撮像素子に適用された場合に適した赤外光の吸収能を有する。
【0178】
[評価結果]
試験例1‐1から試験例1‐6の赤外光カットフィルターにおける吸光度を算出したところ、吸光度は、以下の表3に示す通りであった。なお、各試験例において、耐剥離液性の試験用に準備された赤外光カットフィルターにおける試験前の吸光度と、耐熱性の試験用に準備された赤外光カットフィルターにおける試験前の吸光度とは、同一であることが認められた。
【0179】
【表3】
【0180】
表3が示すように、試験例1‐1から試験例1-6における耐性試験前の吸光度が0.96であることが認められた。
【0181】
このように、各赤外光カットフィルターについて、耐性試験前の赤外光カットフィルターの950nmにおける吸光度については、試験例1‐1から試験例1‐6の赤外光カットフィルターにおいて、0.8以上であることが認められた。
【0182】
また、耐剥離液性の試験後において、試験例1‐1の赤外光カットフィルター、試験例1‐2の赤外光カットフィルター、および、試験例1‐3の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.85であることが認められた。試験例1‐4の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.77であり、試験例1‐5の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.74であり、試験例1‐6の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.05であることが認められた。
【0183】
このように、共重合体において、第1繰り返し単位が環状エーテル基を有し、第2繰り返し単位が環状エーテル基と反応する官能基であるフェノール性水酸基を有することによって、赤外光カットフィルターの耐剥離液性を高められることが認められた。
【0184】
また、表3が示すように、耐熱性の試験後において、試験例1‐1の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.80であり、試験例1‐2の赤外光カットフィルター、および、試験例1‐3の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.82であることが認められた。また、試験例1‐4の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.77であり、試験例1‐5の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.72であり、試験例1‐6の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.30であることが認められた。
【0185】
このように、共重合体において、第1繰り返し単位が環状エーテル基を有し、第2繰り返し単位が環状エーテル基と反応する官能基であるフェノール性水酸基を有することによって、赤外光カットフィルターの耐熱性を高められることが認められた。
【0186】
上述した結果から、共重合体において、第1繰り返し単位が環状エーテル基を有し、第2繰り返し単位が環状エーテル基と反応する官能基を有することによって赤外光カットフィルターの耐剥離液性と、耐熱性とが両立されることが認められた。
【0187】
[試験例2]
試験例2では、製造例2‐1から製造例2‐11の共重合体を試験例1と同様の方法で用いることによって、11種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、試験前、耐剥離液性試験の後、および、耐熱試験の後における吸光度を上述した方法で算出した。なお、各試験例の赤外光カットフィルターを製造する際には、以下に説明する耐剥離液性試験に用いる赤外光カットフィルターと、耐熱性試験に用いる赤外光カットフィルターとを個別に製造した。
【0188】
[評価方法]
試験例1と同様の方法を用いて、試験例2‐1から試験例2‐11の赤外光カットフィルターについて吸光度のスペクトルを得た。また、試験例2‐1から試験例2‐11の赤外光カットフィルターに対して、試験例1と同様の方法を用いて耐剥離液性の試験、および、耐熱性の試験を行った。そして、各試験後の赤外光カットフィルターについて、試験例1と同様の方法を用いて、吸光度のスペクトルを得た。
【0189】
[評価結果]
試験例2‐1から試験例2‐11の赤外光カットフィルターにおける吸光度を算出したところ、吸光度は、以下の表4に示す通りであった。なお、各試験例において、耐剥離液性の試験用に準備された赤外光カットフィルターにおける試験前の吸光度と、耐熱性の試験用に準備された赤外光カットフィルターにおける試験前の吸光度とは、同一であることが認められた。
【0190】
【表4】
【0191】
表4が示すように、試験例2‐1から試験例2-9における耐性試験前の吸光度が0.96であることが認められた。これに対して、試験例2‐10における耐性試験前の吸光度が0.68であり、試験例2‐11における耐性試験前の吸光度が0.59であることが認められた。
【0192】
このように、試験前の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2‐1から試験例2‐9において0.8以上であることが認められた。これに対して、試験前の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2-10、および、試験例2-11において0.8未満であることが認められた。
【0193】
すなわち、共重合体における第3繰り返し単位の割合が65重量%以上であることによって、赤外光カットフィルターにおいて、試験前の分光特性が好適に維持されていることが認められた。
【0194】
また、耐剥離液性の試験後において、試験例2‐1の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.02であり、試験例2‐2の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.85であることが認められた。また、試験例2‐3の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.82であり、試験例2‐4の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.72であることが認められた。そして、試験例2‐5の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.30であり、試験例2‐6の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.05であることが認められた。
【0195】
試験例2‐7の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.85であり、試験例2‐8の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.80であり、試験例2‐9の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.72であることが認められた。また、試験例2‐10の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.64であり、試験例2‐11の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.55であることが認められた。
【0196】
このように、剥離液試験後の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2‐2から試験例2‐4、および、試験例2‐7から試験例2‐9において0.7以上であることが認められた。これに対して、剥離液試験後の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2‐1、試験例2‐5、試験例2‐6、試験例2‐10、および、試験例2‐11において、0.7未満であることが認められた。
【0197】
すなわち、共重合体における第1繰り返し単位の割合が7.5重量%以上17.5重量%以下であり、かつ、第1繰り返し単位の重量に対する第2繰り返し単位の比が、1.0以上3.0以下であることによって、赤外光カットフィルターの耐剥離液性が高められることが認められた。
【0198】
また、表4が示すように、耐熱性の試験後において、試験例2‐1の赤外光カットフィルター、および、試験例2‐2の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.80であり、試験例2‐3の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.82であることが認められた。また、試験例2‐4の赤外光カットフィルター、および、試験例2‐5の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.80であり、試験例2‐6の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.82であることが認められた。そして、試験例2‐7の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.72であり、試験例2‐8の赤外光カットフィルター、および、試験例2‐9の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.80であることが認められた。さらに、試験例2‐10の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.40であり、試験例2‐11の赤外光カットフィルターにおける吸光度は0.21であることが認められた。
【0199】
このように、耐熱試験後の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2‐1から試験例2‐9において0.7以上であることが認められた。これに対し、耐熱試験後の赤外光カットフィルターにおける950nmでの吸光度は、試験例2‐10、および、試験例2‐11において0.7未満であることが認められた。すなわち、第2繰り返し単位の重量に対する第1繰り返し単位の重量の比が0.5以上5.0以下の範囲において、赤外光カットフィルターの耐熱性は保たれ、また、第3繰り返し単位が65重量%以上であることによって、耐熱性が高められることが認められた。
【0200】
以上説明したように、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法における一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0201】
(1)第1繰り返し単位が有する環状エーテル基が、第2繰り返し単位が有する環状エーテル基と反応する官能基と架橋することによって、架橋構造が形成される。これによって、加熱により赤外光カットフィルター13の透過率が変化することが抑えられ、かつ、ドライエッチング時に用いられる剥離液に対して赤外光吸収色素が溶出することが抑えられる。結果として、赤外光カットフィルター13における耐熱性および剥離液に対する耐性を高めることが可能である。
【0202】
(2)環状エーテル基を含むモノマーは、エポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも一方を含むことは、第2繰り返し単位が有する環状エーテル基との反応する官能基と、環状エーテル基との反応性の観点において好ましい。
【0203】
(3)環状エーテル基と反応する官能基が酸性であることによって、樹脂重合過程において常温にて架橋反応が即座に進行することを抑制することができる。
(4)フェノール性水酸基は弱酸性を示すことから、環状エーテル基との架橋反応が、樹脂の重合過程では生じにくく、塗膜の作成時における加熱工程において生じやすい。そのため、フェノール性水酸基は、塗布性の観点において有利である。
【0204】
(5)第3繰り返し単位が有する芳香環基または脂環式基がシアニン色素の近傍に位置する他のシアニン色素との間に位置することによって、シアニン色素の会合を抑える程度の距離をシアニン色素間に形成することが可能である。これにより、シアニン色素での吸収が期待される波長での分光特性の変化が抑えられる。
【0205】
(6)共重合体が第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を上述した範囲で含むことによって、加熱処理後および剥離液処理後において、赤外光カットフィルター13における赤外光の吸光度が低下することが抑えられる。
【0206】
(7)共重合体が第3繰り返し単位を65質量%以上の割合で含むことによって、赤外光カットフィルター13において、シアニン色素による吸収が期待される波長での分光特性の劣化が抑えられる。
【0207】
(8)共重合体のガラス転移温度が75℃以上であれば、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0208】
(9)共重合体の平均分子量が3万以上15万以下であれば、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0209】
(10)残存モノマーが20%以下であることによって、残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルターが加熱された場合に、シアニン色素における赤外光の透過率が変化しにくくなる。
【0210】
(11)バリア層14によって赤外光カットフィルター13に酸化源が到達することが抑えられるため、赤外光カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。
【0211】
[変更例]
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[バリア層]
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13とマイクロレンズ15R、15G,15B,15Pとの間に限らず、各マイクロレンズ15R、15G,15B,15Pの外表面に配置されてもよい。
【0212】
・固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層14とバリア層14の下層との密着性がアンカー層によって高められる。また、固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の上層との密着性をアンカー層によって高められる。アンカー層を形成する材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤などである。
【0213】
・バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
【0214】
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面が形成する段差を埋める平坦化層として機能してもよい。
・固体撮像素子用フィルター10Fはバリア層14を備えていなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0215】
[その他]
・各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、赤外光パスフィルター12Pと相互に等しい大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0216】
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターから構成された三色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。
【0217】
・各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pと互いに等しい厚さを有してもよいし、互いに異なる厚さを有してもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0218】
・赤外光カットフィルター13を形成する材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含むことが可能である。
・固体撮像素子10は、赤外光カットフィルター13に対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atm以下である構成であってもよい。例えば、積層構造は、平坦化層や密着層などの他の機能層であって、各マイクロレンズと共に、その酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。
【0219】
・固体撮像素子10は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側にバンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するフィルターであり、赤外光カットフィルター13と類似の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の検出精度、および、赤外光用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0220】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
13…赤外光カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15B…青色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15P…赤外光用マイクロレンズ
15R…赤色用マイクロレンズ
図1