(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175011
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】放射線撮像システム、撮像制御装置、放射線撮像システムの制御方法、撮像制御装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/00 520M
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158479
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2020086046の分割
【原出願日】2020-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 敏和
(57)【要約】
【課題】 放射線照射の閾値として設定した線量目標値と実際に撮影した際の線量指標値との偏差を小さくでき、適切な線量管理を行うこと。
【解決手段】放射線撮像システムは、放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する。撮像制御装置は、放射線撮像前に、放射線画像の線量指標値を算出するための関心領域における線量検出画素の位置を特定し、線量検出画素の位置に応じた閾値を決定し、放射線撮像装置に、線量検出画素の位置と閾値とを送信する。放射線撮像装置は、撮像制御装置から送信された関心領域における線量検出画素の位置と閾値とを設定し、設定に基づいて撮像を行う。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御装置は、放射線撮像前に、
放射線画像の線量指標値を算出するための関心領域における前記線量検出画素の位置を特定し、前記線量検出画素の位置に応じた閾値を決定し、前記放射線撮像装置に、前記線量検出画素の位置と前記閾値とを送信し、
前記放射線撮像装置は、
前記撮像制御装置から送信された前記関心領域における前記線量検出画素の位置と前記閾値とを設定し、前記設定に基づいて撮像を行う
ことを特徴とする放射線撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像システム、撮像制御装置、放射線撮像装置、放射線撮像方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線等の放射線による医療画像診断や非破壊検査に用いる放射線撮像装置は、TFT(薄膜トランジスタ)等のスイッチと光電変換素子等の変換素子とを組み合わせた画素アレイを有するマトリクス基板を有する。
【0003】
この放射線撮像装置は、放射線の線量に対して極めて広いダイナミックレンジを有しており、また画像処理による自動濃度補正によって、従来のアナログの放射線撮像に比べ線量不足や線量過多の状態でも安定した濃度の出力が得られるというメリットがある。その一方で、撮影技師が不適切な線量で撮影した場合も、撮影技師はそのことに気づきにくく、特に、線量過多の場合では、患者への被曝量が増加してしまうという課題がある。
【0004】
そこで、この課題を解決するためにデジタル放射線画像の撮影線量の目安となる値(以下、線量指標値と呼ぶ)を撮影画像とともに表示することが一般的に行われている。また、線量指標値の算出方法についても様々な方法が提案されている。近年では、IEC(国際電気標準会議)により国際規格IEC62494-1が発行され、標準化された線量指標値としてEI(Exposure Index)が定義された。また、この国際規格では、目標とすべき線量の値(以下、線量目標値と呼ぶ)として、EIt(Target Exposure Index)を定め、線量指標値EIと線量目標値EItとのずれ量を表す偏差DI(Deviation Index)を用いた線量管理の運用方法も与えられている。
【0005】
特許文献1では、X線照射を目標線量で停止させるAEC機能を有し、線量を検出する検出画素の領域である採光野を、検出画素の画素値に基づきX線の照射中に自動的に設定し、採光野の画素値から抽出した代表値Vに基づき線量指標値EIを算出する装置が記載されている。
【0006】
特許文献2では、放射線画像を複数の解剖学的領域に分割し、複数の解剖学的領域のうちの少なくとも一つの領域を抽出し、抽出された領域における画素値に基づいて、抽出された領域に対する放射線撮像の線量指標値EIを算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-158580号公報
【特許文献2】特開2020-25730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
放射線撮像における線量管理では、線量指標値EIと線量目標値EItとのずれ量が小さいことが求められている。
【0009】
そこで、本発明は、放射線照射の閾値として設定した線量目標値と実際に撮影した際の線量指標値との偏差を小さくでき、適切な線量管理を行うことが可能な放射線撮像技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による放射線撮像システムは、放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御装置は、放射線撮像前に、
放射線画像の線量指標値を算出するための関心領域における前記線量検出画素の位置を特定し、前記線量検出画素の位置に応じた閾値を決定し、前記放射線撮像装置に、前記線量検出画素の位置と前記閾値とを送信し、
前記放射線撮像装置は、
前記撮像制御装置から送信された前記関心領域における前記線量検出画素の位置と前記閾値とを設定し、前記設定に基づいて撮像を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線照射の閾値として設定した線量目標値と実際に撮影した際の線量指標値との偏差を小さくでき、適切な線量管理を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図1】放射線撮像装置を含む放射線撮像システムの構成例を示す図。
【
図2】放射線撮像システムのデータ通信例を示す図。
【
図4】実施形態における放射線撮像システムの機能構成を説明する図。
【
図5】デジタル信号に基づく放射線撮像システムの動作例を示す図
【
図6A】実施形態に係る放射線撮像装置の内部構成を例示する図。
【
図6B】実施形態に係る放射線撮像装置の内部構成を例示する図。
【
図6C】実施形態に係る放射線撮像装置の内部構成を例示する図。
【
図7】実施形態の放射線撮像装置の内部動作を示すタイミングチャート。
【
図8】線量指標値を算出する処理の流れを説明する図。
【
図9】線量指標値の算出方法の照射前調整を説明する図。
【
図10】線量指標値の算出方法の照射中調整を説明する図。
【
図11】事前に定めた採光野と実際に照射される放射線のエリアがずれていた場合の処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。以下の実施形態及び特許請求の範囲において、放射線は、X線の他、α線、β線、γ線、及び各種粒子線なども含む。
【0014】
<放射線撮像システムの構成>
以下、
図1を用いて本実施形態の放射線撮像システム1000の構成及び処理を説明する。
図1は、本実施形態の放射線撮像装置を含む放射線撮像システムの構成例を示すブロック図である。放射線撮像システム1000は、例えば、病院内での放射線画像の撮影時において使用され、システム構成として、放射線撮像装置1001、撮像制御装置1002、放射線源1003、高電圧発生装置1004、LAN1005(院内LAN)及び表示部1006を含む。
【0015】
放射線撮像装置1001は、操作者の操作スイッチ46の操作により、図示しない被写体を透過した放射線を検出し画像を形成する。撮像制御装置1002は、放射線撮像装置1001に対して、例えば、撮像条件の設定、動作制御の設定などを行い、放射線撮像装置1001は、撮像制御装置1002との間で、例えば、画像転送、到達線量の送信、放射線源1003の照射を制御する自動露出制御信号などの通信を行う。
【0016】
撮像制御装置1002は、撮影条件の設定、動作設定、画像情報などの情報の入力を可能とするための入力デバイスとして、例えば、マウス、キーボードを保持し、出力を可能とするための出力デバイスとして、ディスプレイなどを保持する。また、撮像制御装置1002は、高電圧発生装置1004に対して放射線の照射制御などを行う。撮像制御装置1002は機能構成として、通信を行い媒介する通信制御部1021と、動作設定、線量情報通知などを行う制御部1022とを有し、放射線撮像装置1001と高電圧発生装置1004の状態を監視し、放射線の照射、撮像を制御する。撮像制御装置1002の別ユニットとして、通信制御部1021を配置して、通信制御部1021が撮像制御装置1002の通信を媒介するための回路として動作することも可能である。
【0017】
放射線源1003は、例えば放射線を発生させるために電子を高電圧で加速し、陽極に衝突させるX線管とロータを保持している。放射線源1003より照射された放射線は被写体に照射され、放射線撮像装置1001は、被写体を透過した放射線を検出し画像を形成する。
図1では便宜上、撮像制御装置1002、高電圧発生装置1004と、を別々の場所に配置した状態を示しているが、撮像制御装置1002及び高電圧発生装置1004を同じユニット内に配置してもよい。また、撮像機能以外の各機能は放射線撮像装置1001以外のどの部分に配置されていてもよい。
【0018】
図2は放射線撮像システムのデータ通信例を示す図である。
図2では、撮像制御装置1002、放射線撮像装置1001、高電圧発生装置1004間のデータ通信の例を示している。撮像制御装置1002と放射線撮像装置1001との間の通信では撮像条件の設定、動作制御の設定、画像転送、AEC閾値、到達線量、自動露出制御信号及び自動露出時情報などの情報が送受信される。放射線撮像装置1001は、無線通信部、有線通信部の2つの通信部を有しており、放射線撮像装置1001は、2つの通信部を使用して撮像制御装置1002の通信制御部1021と接続可能である。
【0019】
また、撮像制御装置1002と高電圧発生装置1004との間の通信には、線量情報、照射制御信号、放射線照射予定エリアに関連する可視光や赤外光による光学画像情報などの情報が送受信される。この光学画像情報は、撮像制御装置1002と高電圧発生装置1004との間で、光学的に放射線と同じ焦点や絞りに関する情報を共有することが可能な情報である。
【0020】
なお、情報を通信する際の伝達経路として、必ずしも撮像制御装置1002が仲介する必要はなく、放射線撮像装置1001と高電圧発生装置1004と間の通信によりデータを直接的に送受信してもよいし、CAN(Controller Area Network)などのデータ転送の規格に基づいた通信により、撮像制御装置1002、放射線撮像装置1001、高電圧発生装置1004の間で情報を共有するようにしてもよい。
【0021】
「線量情報」は放射線源1003から照射された放射線の照射線量であり、「到達線量」とは、放射線源1003からの照射線量のうち、放射線撮像装置1001へ到達した線量を示す。
【0022】
「AEC閾値」は、線量目標値として設定され、到達線量との比較における基準となる閾値情報である。この「AEC閾値」は単位面積当たりの線量情報に相当する。「AEC閾値」は予め設定された、線量目標値EItを反映して設定される。撮像制御装置1002は、「AEC閾値」と放射線撮像装置1001内部で算出する到達線量とを比較し、このAEC閾値を到達線量が上回るタイミングで高電圧発生装置1004へその旨を通知する。撮像制御装置1002は適切に単位面積当たりの線量情報に変換して、AEC閾値と到達線量との比較処理を行う。
【0023】
「自動露出制御信号」とは、例えば、放射線の照射を停止するための停止信号(照射停止信号)と放射線の照射を開始するため照射開始信号(非照射停止信号)の2つを含む信号である。
【0024】
「自動露出時情報(ROI/算出方法)」とは、撮像制御装置1002から放射線撮像装置1001へ送信される、自動露出制御の為の関心領域ROI(採光野)や算出方法の指示情報であり、放射線撮像装置1001から実際に自動露出を行った際のROI(採光野1012)や算出方法に関する実施時の情報が撮像制御装置1002に送信される。
【0025】
また、撮像制御装置1002は、表示部1006の表示を制御して、撮像時の「線量情報(線量指標値EI/偏差DI)」の表示や、「線量目標値EIt」の設定入力表示、もしくは、放射線撮像において設定されている情報を表示するための表示制御を行う。
【0026】
放射線撮像装置1001が通信媒体として有する有線通信部は、情報伝達のための経路であり、例えば所定の取り決めを持つ通信規格、もしくはRS232CやUSB、イーサネット(登録商標)、などの規格を用いたケーブル接続により、情報の送受信を可能とする。また、放射線撮像装置1001が通信媒体として有する無線通信部は同様に情報伝達のための経路であり、例えば通信用ICなどを備える回路基板を含む。無線通信部は、不図示のアンテナと電気的に接続され、無線電波を送受信する。通信用ICなどを備える回路基板はアンテナを介して無線LANに基づいたプロトコルの通信処理を行うことが可能である。尚、無線通信における無線通信の周波数帯、規格や方式には特に限定無くNFC(Near field radio communication)、Bluetooth(登録商標)などの近接無線やUWB(Ultra Wideband)などの方式を使用してもよい。また、無線通信部は複数の無線通信の方式を有し、適宜選択して通信を行ってもよい。
【0027】
放射線撮像装置1001は、例えば可搬式のカセッテ式のフラットパネルディテクタ(FPD(Flat Panel Detector))として構成することが可能である。
図3は可搬型の放射線撮像装置1001の外観構成を例示的に示す図である。放射線撮像装置1001は電源投入あるいは遮断のための電源ボタン1007、電源供給のためのバッテリ部1008、コネクタ接続部1009を有する。バッテリ部1008は取り外し可能に構成されており、バッテリ部1008のバッテリ本体はバッテリ充電器によって充電可能に構成されている。
【0028】
放射線撮像装置1001は、撮像制御装置1002とセンサケーブル1010を使用して接続可能であり、放射線撮像装置1001はコネクタ接続部1009を介してセンサケーブル1010を接続する。センサケーブル1010にて放射線撮像装置1001と撮像制御装置1002が接続されると、両者の接続は有線通信部を使用した通信に切り替わり、
図2に示した放射線撮像装置1001と撮像制御装置1002との間の情報通信が有線通信によって実行される。また、接続形態によらずに撮像制御装置1002より通信部をユーザからの操作により切り替え可能であってもよい。
【0029】
図4を用いて、本実施形態の放射線撮像システム1000の機能構成を説明する。高電圧発生装置1004の放射線発生制御部1042には、放射線源1003からの信号、および操作信号生成部1041からの信号が入力される。放射線源1003からは陽極回転の安定状態を表す信号や温度状態を表す信号が放射線発生制御部1042に入力される。操作信号生成部1041には操作スイッチ46が接続されており操作者のスイッチ操作の入力信号が放射線発生制御部1042へ入力される。
【0030】
また、放射線発生制御部1042には、信号選択部1043、信号積算判定部1044または信号処理部1045を介して、放射線撮像装置1001および撮像制御装置1002から種々の信号が入力される。放射線撮像装置1001からは撮影準備状態を表す信号が放射線発生制御部1042に入力される。信号選択部1043経由で後述する露光制御に関する信号が放射線発生制御部1042に入力される。信号選択部1043へは、信号積算判定部1044からのアナログ信号経路の放射線1103の停止信号と信号処理部1045からのデジタル通信経路の放射線1103の停止信号とが入力され、いずれか先に入力された信号が放射線発生制御部1042へ伝達される。
【0031】
本実施形態の放射線撮像装置1001は、線量検出画素(検出部)の検出の結果に対する第1の処理(デジタル信号処理)に基づいて取得した線量情報が閾値を超えた場合に停止信号を出力するデジタル処理部401と、デジタル処理部401によって第1の処理(デジタル信号処理)が施された信号に対して第2の処理(アナログ変換処理)を施した信号を出力するアナログ処理部402(変換処理部)と、を有する。
【0032】
デジタル処理部401(第1の処理部)は、第1の処理として、線量検出画素の検出結果にデジタル信号処理を施した信号を生成する。デジタル処理部401(第1の処理部)は、生成した信号を放射線源1003との同期制御信号として出力することが可能である。デジタル処理部401(第1の処理部)は、生成した信号に基づいて、例えば、放射線撮像装置1001に対する放射線の照射を検知したり、放射線の照射線量や積算照射量(積算線量)を演算するように構成されている。デジタル処理部401(第1の処理部)は、線量検出画素121(検出部)による検出の結果に対する第1の処理(デジタル信号処理)に基づいて取得した線量情報が閾値を超えた場合に停止信号(第1停止信号)を出力する。
【0033】
アナログ処理部402(変換処理部)および信号積算判定部1044(積算判定部)は、本実施形態の放射線撮像システム1000において、第2の処理部を構成する。第2の処理部は、デジタル処理部401(第1の処理部)によって第1の処理(デジタル信号処理)が施された信号に対する第2の処理(アナログ変換処理)に基づいて取得した線量情報が閾値を超えた場合に停止信号(第2停止信号)を出力する。
【0034】
ここで、アナログ処理部402(変換処理部)は、デジタル処理部401(第1の処理部)によって第1の処理(デジタル信号処理)が施された信号に対して第2の処理(アナログ変換処理)を施した信号を出力し、信号積算判定部1044は、アナログ処理部402(変換処理部)から出力された信号を積算処理した線量情報が閾値を超えるか否かを判定する。第2の処理部は、信号積算判定部1044(積算判定部)によって線量情報が閾値を超えたと判定された場合に、停止信号(第2停止信号)を出力する。
【0035】
放射線発生制御部1042は、デジタル処理部401(第1の処理部)から出力される第1停止信号、または、アナログ処理部402および信号積算判定部1044(第2の処理部)から出力される第2停止信号に基づいて、放射線源1003を制御する。すなわち、放射線発生制御部1042は、第1停止信号または第2停止信号に基づいて、放射線の照射を停止するように放射線源1003を制御する。
【0036】
信号選択部1043(選択部)へは、信号積算判定部1044(積算判定部)から、アナログ信号経路(第2の信号経路)を介して入力される放射線1103の停止信号(第2停止信号)と、信号処理部1045から、デジタル信号経路(第1の信号経路)を介して入力される放射線1103の停止信号(第1停止信号)とが入力される。いずれか先に入力された停止信号が信号選択部1043(選択部)により選択され、選択された停止信号が放射線発生制御部1042へ伝達される。すなわち、信号選択部1043(選択部)は、入力された第1停止信号または第2停止信号を選択する。このとき、信号選択部1043(選択部)は、第1停止信号および第2停止信号のうち、いずれか先に信号選択部1043(選択部)に入力された信号を選択する。
【0037】
放射線発生制御部1042は、それぞれの入力の状態を確認しながら放射線の発生の制御を行う。放射線発生制御部1042は、入力された露光状態に関する信号に基づいて、放射線源1003から照射する放射線の照射制御を行う。すなわち、放射線発生制御部1042は、信号選択部1043(選択部)により選択された信号に基づいて、放射線の照射を停止するように放射線源1003を制御する。
【0038】
また、放射線撮像装置1001は、撮像制御装置1002の中継器1023、信号発生部1024を介して、高電圧発生装置1004の信号処理部1045との間で通信を行うことが可能である。放射線撮像装置1001からは撮像準備状態を表す信号が、撮像制御装置1002の中継器1023および信号発生部1024を介して、信号処理部1045に入力される。信号処理部1045は、入力された撮像準備状態を表す信号を放射線発生制御部1042に入力する。ここで、放射線撮像装置1001と撮像制御装置1002との間の通信が無線通信の場合、中継器1023はアクセスポイントとして機能し、有線通信の場合、中継器1023はスイッチングハブとして機能する。中継器1023には、更に通信制御部1021が接続されており、通信制御部1021の機能はPC(情報処理装置)などのプラットフォーム上で動作するアプリケーションソフトで実現されている。
【0039】
本実施形態では、アナログ信号およびデジタル信号による2種類の線量制御のための信号経路を有する。一つの信号経路は、線量制御のためのアナログ信号の信号経路(第2の信号経路)であり、放射線撮像装置1001の通信部227から高電圧発生装置1004中の信号積算判定部1044に接続される。このアナログ信号は、線量制御用センサ1011の出力を模擬した出力信号である(線量制御用のアナログ出力信号)。この接続形態は、線量制御用センサ1011のアナログ出力信号を処理するための高電圧発生装置1004の処理回路を使用できるため、高電圧発生装置1004の処理回路を何ら変更する必要がない接続形態である。尚、線量制御用センサ1011とは、イオンチャンバ方式、光ファイバに蛍光体を塗布してイメージインテンシファイアにて検知する方式、薄膜半導体センサを使用する方式などの線量制御用センサである。この信号経路は、後述の通り、線量制御用の回路構成を高電圧発生装置1004に有する構成となっている。尚、線量制御用センサ1011を使用して、放射線撮像装置1001の代わりに、アナログ信号として出力を併用する形態でも線量制御を冗長に構成することは可能である。
【0040】
図4に示すように、線量制御用センサ1011には、5つの採光野1012が設定されている。尚、採光野1012の設定は例示的なものであり、実施形態の趣旨はこの例に限定されるものではない。
図4に示す例では、5つのエリアに応じた採光野1012は放射線撮像装置1001の複数の線量検出画素121のそれぞれに対応している。操作者は、高電圧発生装置1004上の図示しないユーザインターフェース(設定部)上で、決められた照射エリアパターンから採光野1012を選択することが可能である。操作者の操作入力に基づいて、ユーザインターフェース(設定部)は放射線源の照射エリアを設定する。放射線源の照射エリアが設定されると、放射線撮像装置1001の制御回路225(
図6A~
図6C)は、撮像領域100に配列されている複数の線量検出画素121(検出部)の中から、設定された照射エリアに対応する位置に配列されている線量検出画素121(検出部)を特定することが可能である。また、撮像制御装置1002の制御部1022(取得部)は、LAN1005を介して、HIS(Hospital Information System)/RIS(Radiology Information System)などの撮像オーダシステムの情報により被写体の撮像部位の情報を取得することが可能である。制御部1022(取得部)によって、被写体の撮像部位の情報が取得されると、放射線撮像装置1001の制御回路225(特定部)は、撮像領域100に配列されている複数の線量検出画素121(検出部)の中から、被写体の撮像部位に対応する位置に配列されている線量検出画素121(検出部)を特定することが可能である。
【0041】
放射線撮像装置1001のデジタル処理部401(第1の処理部)は、特定された線量検出画素121(検出部)の検出結果に基づいて線量情報を取得する。また、放射線撮像装置1001のアナログ処理部402(変換処理部)は、各採光野に対応した位置において、線量制御用センサの出力を模擬したアナログ出力信号(線量制御用のアナログ出力信号(受光線量に応じた信号))を生成し、出力する。
【0042】
次に、線量制御のためのデジタル信号経路(第1の信号経路)を説明する。この信号伝達経路は、高電圧発生装置1004と放射線撮像装置1001と撮影準備のハンドシェーク信号を伝達する専用デジタル通信経路、もしくは、それ相当の経路を利用する。
【0043】
図4および
図5を用いて放射線撮像時のハンドシェーク動作を説明する。
図5(a)に示す高電圧発生装置1004側で照射時間を決めるシーケンスの場合、操作者による操作スイッチ46の操作により、放射線発生制御部1042は、放射線発生のための準備を行う。放射線源1003の陽極回転速度の安定やその他内部回路の準備が整った時点で、放射線発生制御部1042から入力される信号に基づいて、高電圧発生装置1004の信号処理部1045は、撮影準備の要求信号501を要求レベルの信号として出力する(
図5(a))。
【0044】
高電圧発生装置1004の信号処理部1045から出力された撮像準備の要求信号501(要求レベル)は、撮像制御装置1002の信号発生部1024を経由して、放射線撮像装置1001に伝達される。その後、撮像準備が完了した時点で、放射線撮像装置1001は、撮像準備完了を示す信号を出力し、放射線撮像装置1001から入力される信号に基づいて、撮像制御装置1002の信号発生部1024は、撮像準備の完了信号502を準備完了レベルとした信号を出力する(
図5の(a))。撮像準備の完了信号502(準備完了レベル)は、高電圧発生装置1004の信号処理部1045を介して、放射線発生制御部1042へ入力される。ここで、放射線撮像装置1001から出力される撮像準備完了を示す信号は、放射線の照射を開始するため照射開始信号に対応する。放射線発生制御部1042は、その他の信号状態を監視し、準備状態が整っていることを確認の上、放射線1103を照射する。ここで、放射線発生制御部1042は操作者により設定された放射線照射時間に基づいて放射線照射を停止するように制御することが可能である。放射線1103は、放射線発生制御部1042の制御(照射停止制御)に基づいて、照射状態から非照射状態になる(
図5の(a))。
【0045】
そして、放射線発生制御部1042から入力される信号に基づいて、高電圧発生装置1004の信号処理部1045は、撮像準備の要求信号501を非要求レベルに変更して出力する(非要求出力)。すなわち、放射線発生制御部1042から入力される信号に基づいて、信号処理部1045は、撮像準備の要求信号501を非要求レベルとした信号(撮像準備の要求信号501(非要求レベル))を出力する。高電圧発生装置1004の信号処理部1045から出力された撮像準備の要求信号501(非要求レベル)は、撮像制御装置1002の信号発生部1024を経由して、放射線撮像装置1001に伝達される。放射線撮像装置1001は、撮像準備の要求信号501(非要求レベル)の信号に呼応して、放射線撮像装置1001の状態を撮像準備完了の状態から準備非完了の状態へ遷移させる。
【0046】
次に、
図5の(b)を用いて、設定された放射線照射時間の経過前に十分な到達線量が検知された場合の動作シーケンスを説明する。放射線1103を実際に照射するまでは
図5の(a)と同じ動作シーケンスとなる。この後、後述する方法にて放射線撮像装置1001の内部にて十分な到達線量が検知された場合、放射線撮像装置1001から出力された信号に基づいて、信号発生部1024は、撮像準備の要求信号501が要求レベルの状態であっても、撮像準備の完了信号502を、準備完了レベルから準備非完了レベルの状態(非完了レベル)へ遷移させた信号を出力する。ここで、放射線撮像装置1001の内部にて十分な到達線量が検知された場合、放射線撮像装置1001から出力される信号は、第1の処理(デジタル信号処理)に基づいて取得された線量情報が閾値を超えた場合にデジタル処理部401(第1の処理部)から出力される停止信号(第1停止信号)に対応する。
図5の(b)に示す場合では、放射線撮像装置1001の内部にて十分な到達線量が検知された場合、設定された放射線照射時間の経過前に、準備完了レベルから準備非完了レベルの状態(非完了状態)へ遷移する。撮像準備の完了信号502(非完了レベル)が、信号発生部1024から高電圧発生装置1004の信号処理部1045に入力される。撮像準備の要求信号501が要求レベルの状態であり、かつ、撮像準備の完了信号502が非完了レベルの状態である場合、信号処理部1045は、信号発生部1024からから入力された撮像準備の完了信号502(非完了状態)を、デジタル信号経路における放射線1103の停止信号として信号選択部1043へ出力する。すなわち、デジタル処理部401(第1の処理部)から出力される停止信号(第1停止信号)は、撮像制御装置1002の中継器1023および信号発生部1024、高電圧発生装置1004の信号処理部1045を介して、信号選択部1043へ入力される。
【0047】
図5の(b)の場合、例えば、アナログ信号経路(第2の信号経路)を介した停止信号(第2停止信号)よりも先にデジタル処理部401(第1の処理部)から出力された停止信号(第1停止信号)が信号選択部1043に入力された場合、信号選択部1043へ先に入力された停止信号(第1停止信号)に基づいて、放射線発生制御部1042は、撮像準備の完了信号502が準備完了から準備非完了の状態へ遷移したことを検知する。すなわち、放射線発生制御部1042は、線量情報(積算線量)が所定の線量に到達したことを検知し、放射線1103の照射を停止するように放射線源1003を制御する。
【0048】
尚、
図5では回路信号形式にて信号を表現しているが、撮像準備の要求信号501および撮像準備の完了信号502に関して、高電圧発生装置1004と放射線撮像装置1001との間の通信はコマンド通信によって実現することも可能である。本実施形態では、照射時のハンドシェーク動作とともに、放射線の線量制御のために使用するため、信号経路は放射線の照射停止を制御するための信号を、例えば、1ms以下で伝達可能に構成されている。この観点で、信号発生部1024に使用するデバイスは、例えば、フォトカプラ、フォトモスリレーなどを使用することが可能である。また、コマンド通信は、例えば、有線による100BaseTX/1000BaseTなどで通信時間や遅延時間を保証できる通信方式を使用することが可能である。信頼性、応答性を確保することにより無線通信を使用した信号経路を構成することも可能である。
【0049】
一方で、画質改善に寄与しない多すぎる放射線照射に対する線量抑制だけを意図する場合には、例えば、1s程度の長時間照射時など停止機能が発動すれば良いと仕様を規定する場合、例えば、100ms程度の遅延があっても、目的を達成できるので、線量抑制などを意図しない通常の撮影ハンドシェークを行うインターフェースでの機能実現は可能である。
【0050】
次に自動露出機能もしくは線量抑制機能の為の放射線量検出に関する動作を説明する。
図6A~
図6Cは実施形態に係る放射線撮像装置の内部構成を例示する図である。
【0051】
放射線撮像装置1001は、複数の行および複数の列を構成するように撮像領域100に配列された複数の画素を有する。本実施形態では各画素が非晶質シリコンまたは多結晶シリコンの場合の例について説明する。複数の画素は、放射線を検知して検知した放射線に基づいて放射線画像を取得するための複数の撮像画素101と、放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素121(検出部)とを含む。
【0052】
自動露出制御により画像を形成する線量を精度よく制御するためには、撮像画素101と線量検出画素121とは、放射線に対する入出力関係が明確に分かっていることが極めて重要である。被写体を透過して各人体の場所ごとに変化した放射線の線質のスペクトルを正確に把握することは不可能である。よって、画像を形成するための撮像画素101と自動露出制御の為の線量検出画素121とが、放射線の線質によって同一放射線に対する出力がずれている場合、撮像画素101と線量検出画素121との出力のずれを補正できない。よって、正確な自動露出制御ができないことになる。
【0053】
このため正確な自動露出制御の為には、放射線対する入出力関係が明確に分かる必要があり、この為の最も分かりやすい方法は、撮像画素101と線量検出画素121とを全く同じにすることである。CMOSで構成された撮像素子などで非破壊読み出しが実施できる撮像素子の場合には、撮像画素101と線量検出画素121とを全く同じにすることが可能である。すなわち撮像と線量検出の機能が一つの撮像素子で実施可能となっている。本実施形態の非晶質シリコンまたは多結晶シリコンの場合、破壊読出し用の画素の構造であるため、非破壊読み出しは実施できない。次善の対応として、撮像画素101と線量検出画素121とは別画素ではあるが、その構造を同様にしている。このことにより、撮像画素101と線量検出画素121との違いを空間的な場所の軽微な違いのみとして線質依存性などの出力特性を同一に揃えることが可能となる。
【0054】
撮像画素101は、放射線を電気信号に変換する第1変換素子102と、列信号線105と第1変換素子102との間に配置された第1スイッチ103とを含む。線量検出画素121は、放射線を電気信号に変換する第2変換素子122と、検知信号線125と第2変換素子122との間に配置された第2スイッチ123とを含む。
【0055】
第1変換素子102および第2変換素子122は、放射線を光に変換するシンチレータおよび光を電気信号に変換する光電変換素子とで構成される。シンチレータは、一般的には、撮像領域100を覆うようにシート状に形成され、複数の画素によって共有されうる。あるいは、第1変換素子102および第2変換素子122は、放射線を直接に光に変換する変換素子で構成されうる。
【0056】
第1スイッチ103および第2スイッチ123は、例えば、非晶質シリコンまたは多結晶シリコン(好ましくは多結晶シリコン)などの半導体で活性領域が構成された薄膜トランジスタ(TFT)を含みうる。
【0057】
放射線撮像装置1001は、複数の列信号線105および複数の駆動線104を有する。各列信号線105は、撮像領域100における複数の列のうちの1つに対応する。各駆動線104は、撮像領域100における複数の行のうちの1つに対応する。各駆動線104は、駆動回路221(行選択部)によって駆動される。
【0058】
第1変換素子102の第1電極は、第1スイッチ103の第1主電極に接続され、第1変換素子102の第2電極は、バイアス線108に接続される。ここで、1つのバイアス線108は、列方向に延びていて、列方向に配列された複数の第1変換素子102の第2電極に共通に接続される。バイアス線108は、電源回路226からバイアス電圧Vsを受ける。1つの列を構成する複数の撮像画素101の第1スイッチ103の第2主電極は、1つの列信号線105に接続される。1つの行を構成する複数の撮像画素101の第1スイッチ103の制御電極は、1つの駆動線104に接続される。
【0059】
複数の列信号線105は、読出し回路222に接続される。ここで、読出し回路222は、複数の検知部132と、マルチプレクサ134と、アナログデジタル変換器(以下、AD変換器)136とを含みうる。複数の列信号線105のそれぞれは、読出し回路222の複数の検知部132のうち対応する検知部132に接続される。ここで、1つの列信号線105は、1つの検知部132に対応する。検知部132は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ134は、複数の検知部132を所定の順番で選択し、選択した検知部132からの信号をAD変換器136に供給する。AD変換器136は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0060】
第2変換素子122の第1電極は、第2スイッチ123の第1主電極に接続され、第2変換素子122の第2電極は、バイアス線108に接続される。第2スイッチ123の第2主電極は、検知信号線125に電気的に接続される。第2スイッチ123の制御電極は、駆動線124に電気的に接続される。放射線撮像装置1001は、複数の検知信号線125を有しうる。1つの検知信号線125には、1または複数の線量検出画素121が接続されうる。駆動線124は、駆動回路241によって駆動される。1つの駆動線124には、1または複数の線量検出画素121が接続されうる。
【0061】
検知信号線125は、読出し回路242(AECセンサ読出し回路)に接続される。ここで、読出し回路242は、複数の検知部142と、マルチプレクサ144と、AD変換器146とを含みうる。複数の検知信号線125のそれぞれは、読出し回路242の複数の検知部142のうち対応する検知部142に接続されうる。ここで、1つの検知信号線125は、1つの検知部142に対応する。検知部142は、例えば、差動増幅器を含む。マルチプレクサ144は、複数の検知部142を所定の順番で選択し、選択した検知部142からの信号をAD変換器146に供給する。AD変換器146は、供給された信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0062】
読出し回路242のAD変換器146の出力は、信号処理部224に供給され、信号処理部224によって処理される。信号処理部224は、読出し回路242のAD変換器146の出力に基づいて、放射線撮像装置1001に対する放射線の照射を示す情報を出力する。
【0063】
本実施形態の放射線撮像装置1001の信号処理部224は、線量検出画素121(検出部)の検出の結果に対する第1の処理(デジタル信号処理)に基づいて取得した線量情報が閾値を超えた場合に停止信号を出力するデジタル処理部401と、デジタル処理部401によって第1の処理(デジタル信号処理)が施された信号に対して第2の処理(アナログ変換処理)を施した信号を出力するアナログ処理部402(変換処理部)と、を有する。
【0064】
具体的には、デジタル処理部401は、例えば、放射線撮像装置1001に対する放射線の照射を検知したり、放射線の照射量および/または積算照射量を演算したりする。この用途で使用するため、先の第2変換素子122は本来の撮像素子である第1変換素子102に対して画素数比で1%以下に構成する。これは、画像形成に寄与しない放射量を既存のAEC用センサの吸収量未満に抑制する為である。また、第2変換素子122は多様な計測に対応するために、第2変換素子122の分布は均一もしくは関心領域が集中する中央部、あるいは、照射エリア検知などに使用するために周辺部の密度を上げるなどの分布が有用である。
【0065】
アナログ処理部402は、デジタル処理部401でデジタル信号処理が施された照射線量をアナログ変換して、線量制御用センサ(イオンチャンバ/フォトタイマなど)の出力を模擬したアナログ出力信号を生成する。制御回路225は、信号処理部224からの情報に基づいて、駆動回路221、241および読出し回路222、242を制御する。制御回路225は、信号処理部224からの情報に基づいて、例えば、露出(撮像画素101による照射された放射線に対応する電荷の蓄積)の開始および終了を表しうる信号を生成する。また、放射線撮像装置1001は、撮像制御装置1002との通信を担う通信部227を有する。通信部227は、デジタル信号の信号経路(第1の信号経路)を介して信号を出力するための有線通信部と無線通信部の2つの通信部、および、アナログ信号の信号経路(第2の信号経路)を介して線量制御用センサの出力を模擬したアナログ出力信号(線量制御用のアナログ出力信号)を出力するアナログ出力部を有する。すなわち、通信部227は、デジタル処理部401(第1の処理部)から出力される信号を、デジタル信号経路(第1の信号経路)を介して出力し、アナログ処理部402(変換処理部)から出力される信号を、アナログ信号経路(第2の信号経路)を介して出力する。
【0066】
図6Aでは線量検出画素121を1×1画素単位で配置した例を示しており、
図6B及び
図6Cでは線量検出画素121をm×1などの一行単位で配置した例を示している。m×1などの一行単位で線量検出画素121を配置した場合は、ラインプロファイルをリアルタイムに生成することが可能となり、より高度な画像処理によるリアルタイムの照射線量判定やその判定の為の処理に線量検出画素121の検出情報を使用することが可能となる。
【0067】
また、
図6Aおよび
図6Bでは、撮像画素101と線量検出画素121とを独立の異なる回路構成(読出し回路222、読出し回路242)で読み出す例を示しており、
図6Cでは、撮像画素101と線量検出画素121とを共通の回路構成で読み出す構成を示している。
【0068】
図6Cでは、読出し回路222及び読出し回路242の兼用の読出し回路を「222C」と表記し、駆動回路221及び駆動回路241の兼用の駆動回路を「221C」と表記している。
【0069】
また、
図6Cでは、検知部132及び検知部142の兼用の検出部を「132C」と表記し、マルチプレクサ134及びマルチプレクサ144の兼用のマルチプレクサを「134C」と表記し、AD変換器136及びAD変換器146の兼用のAD変換器を「136C」と表記している。
【0070】
図6Cの回路構成では、兼用の駆動回路221C及び読出し回路222Cにおける制御が若干複雑となるが、線量検出画素121の駆動回路241や読出し回路242などが、撮像画素101の駆動回路221、読出し回路222と共通化されて、回路構成がシンプルとなり部品点数削減により品質面やコスト面で有利である。
【0071】
更に、
図6Cの回路構成では線量検出画素121を使用しないような撮影の場合、線量検出画素121を撮像画素101として使用することも可能である。また、
図6Cには、ハッチングを付して示した補正画素151が設けられている。補正画素151は放射線の照射量を補正するために用いられる1つ以上の画素からなり、放射線に対する補正画素151の感度は、放射線に対する撮像画素101の感度よりも低く設定されている。補正画素151も、線量検出画素121及び撮像画素101と基本的には同じ構造をしているが、外部からの可視光を遮光する膜で第2変換素子122が覆われている点で、線量検出画素121及び撮像画素101と構造が異なる。補正画素151の遮光は、例えば、アルミなどの金属層により第2変換素子122を覆うことで実現される。
【0072】
本実施形態の放射線撮像システム1001は、放射線源1003から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素121を含む放射線撮像装置1001と、放射線撮像装置1001を制御する撮像制御装置1002と、を有する。ここで、撮像制御装置1002は、放射線撮像前に、放射線画像の線量指標値を算出するための関心領域(採光野1012)における線量検出画素の位置を特定し、線量検出画素の位置に応じた閾値を決定し、放射線撮像装置1001に、線量検出画素の位置と閾値とを送信する。放射線撮像装置1001の制御回路225は、撮像制御装置1002から送信された関心領域(採光野1012)における線量検出画素の位置と閾値とを設定し、設定に基づいて撮像を行う。
【0073】
ここで、
図6Cの線量検出画素121の動作例について、
図7のタイミングチャートを参照して説明する。この動作は、駆動回路221C及び読出し回路222Cを制御する制御回路225と、信号処理部224とが連携することによって実行される。そのため、信号処理部224と制御回路225との組み合わせを露出決定部と呼んでもよい。
【0074】
図7において、「放射線」は、放射線撮像装置1001に放射線が照射されているか否かを示す。ローの場合(信号がOFFの状態)に放射線は照射されておらず、ハイの場合(信号がONの状態)に放射線が照射されていることを示している。
【0075】
「Vg1」~「Vgn」は、駆動回路221Cから複数の駆動線104に供給される駆動信号を示す。「Vgk」はk行目(k=1,...,駆動線数n)の駆動線104に供給される駆動信号を示す。駆動回路221Cから供給される複数の駆動線のうちの一部は、線量検出画素121または補正画素151を駆動するための駆動信号を供給する駆動線124として機能する。「Vgk/Vdj」はk行目の駆動線、j本目の検出駆動線の駆動線124に対応する(k=1,・・・,駆動線数n、j=1,・・・,検出駆動線の本数)。例えば、「Vg2/Vd1」は2行目の駆動線、1本目の検出駆動線を示す駆動線124に供給される駆動信号を示す。
【0076】
「線量検知画素信号」は、線量検出画素121から読み出された信号の値を示す。「補正画素信号」は、補正画素151から読み出された信号の値を示す。「積算照射量」は、放射線撮像装置1001に照射された放射線の積算値を示す。この積算値の決定方法については後述する。
【0077】
時刻t0~t4までの期間を「リセット動作期間」とする。時刻t0で、制御回路225は、複数の画素のリセット動作を開始する。リセット動作とは、各画素の変換素子に蓄積した電荷を除去する動作のことであり、具体的には、駆動回路221Cから、駆動線104、124に駆動信号を供給することによって各画素のスイッチ素子(第1スイッチ103、第2スイッチ123)を導通状態にすることである。制御回路225は、駆動回路221Cを制御することによって、1行目の駆動線104に接続された各画素をリセットする。続いて、制御回路225は、2行目の駆動線124に接続された各画素をリセットする。制御回路225は、この動作を最後の行の駆動線104まで繰り返す。時刻t1において、制御回路225は、最後の行の駆動線104のリセット動作を終了した後、再び1行目の駆動線104からリセット動作を繰り返す。
【0078】
時刻t3において、制御回路225に対して撮像制御装置1002から照射開始要求信号が送信されることにより「照射開始要求信号」がアクティブ化される。この時点で、撮像制御装置1002からの送信情報により撮像条件設定が確定する。また、放射線の最大照射時間や場合によって、照射エリア情報、直接線線量情報、自動露出制御信号、自動露出時情報(ROI/算出方法)などが撮像制御装置1002から放射線撮像装置1001の制御回路225に送信される。制御回路225は撮像制御装置1002から送信された情報を、AEC動作の補正情報として利用することが可能である。
【0079】
照射開始要求信号の受信に応じて、制御回路225は、最後の行までリセット動作を行い、リセット動作を終了する。尚、制御回路225は、最後の行までリセット動作を行う前にリセット動作を終了し、次の処理に移行してもよい。例えば、制御回路225は、k行目の駆動線104(124)のリセット動作中に照射開始要求信号を受信した場合に、k+1行目以降の駆動線104(124)のリセット動作を行わずに次の処理に移行するように制御することも可能である。この場合には、k+1行目近傍に段差状の画像アーチファクトが発生し得るが、放射線画像を補正する補正用画像を取得する際の駆動を、同様にk+1行目で終了するなどの駆動の調整、および、放射線画像に対する画像処理などによって段差状の画像アーチファクトを軽減することが可能である。
【0080】
時刻t4~t8までを「読出し動作期間」とする。時刻t4で、制御回路225は、放射線撮像装置1001に照射中の放射線の量を測定するための測定動作を開始する。測定動作において、制御回路225は、線量検出画素121及び補正画素151から読み出す読出し動作を繰り返し実行する。複数回の読出し動作のうち、前半の1回以上の読出し動作は補正値を決定するために行われ、後半に繰り返される読出し動作は、各時刻の放射線の量を継続的に測定するために行われる。
【0081】
時刻t5において、制御回路225は「照射及び読出可能信号」をアクティブ化する。「照射及び読出可能信号」のアクティブ期間の読出し動作は、駆動線124(AEC駆動線)に対してのみ実行され、それ以外の駆動線104に対しては実行されない。具体的に、制御回路225は、複数の駆動線104、124のうち、線量検出画素121及び補正画素151の少なくとも一方に接続された駆動線124(AEC駆動線)に対して駆動信号を供給する。制御回路225は、複数の駆動線104、124のうち線量検出画素121及び補正画素151の何れにも接続されていない駆動線104に対しては駆動信号を供給しない。
【0082】
また、制御回路225は、複数の駆動線104、124のうち線量検出画素121及び補正画素151の少なくとも一方に接続された駆動線124に同時に駆動信号を供給するように駆動してもよい。それによって、同じ駆動線に接続されている複数の画素からの信号が同時に読出し回路222Cに読み出される。撮像画素101(線量検出画素121と補正画素151を含む)は列信号線105C(105、125)に接続されているが制御回路225により選択的に読み出されるので、読出し回路222Cは、AEC検知用の信号を画像検出用信号と分離して読み出すことが可能である。
【0083】
制御回路225は、補正値を決定するために、読出し動作を1回以上の所定の回数行う。信号処理部224は、所定の回数の読出し動作によって線量検出画素121から読み出された信号に基づく補正値Odと、この所定の回数の読出し動作によって補正画素151から読み出された信号に基づく補正値Ocとを決定する。
【0084】
次に、補正値Od、Ocの決定について説明する。補正値を決定するためのパラメータは、実際には複数の画素からの出力で構成されており、どの画素をどのように使用するなどに関しては後述する。
【0085】
読出し動作における所定の回数が1回であれば、線量検出画素121から読み出される信号は画素当たり1つであるので、信号処理部224はその信号の値を補正値Odとする。所定の回数が複数回の場合に、信号処理部224は、読み出された複数個の信号の平均値を補正値Odとする。平均値に代えて他の統計値を用いることも可能であり、補正値(オフセット信号)の値をOdと表す。また、補正画素151から読み出された信号に基づいて、補正値Ocも同様に補正値(オフセット信号)の値としてOcを決定することが可能である。信号処理部224は、このようにして決定した補正値Od、Ocを記憶部172に格納し、後続の処理に使用可能にする。
【0086】
オフセット信号の値はセンサの温度環境等で変化してしまうため、本実施形態のように、放射線検出の直前にオフセット信号を取得することで、オフセット信号取得時と放射線検出時のオフセット成分との差を小さくすることができるため、放射線検出時のオフセット成分を精度良く補正することができる。
【0087】
逆に「読出し動作期間」(時刻t4~t8)の温度変化などによる変動成分よりも、補正値Od、Ocを生成するためのサンプル回数が少ない為にランダムノイズ成分による誤差が大きくなるような場合が生じ得る。このような場合には、例えば、リセット動作期間など時間的に余裕のあるタイミングで、サンプリング回数を十分に確保して熱雑音などのランダムノイズ成分による誤差を抑えられるタイミングで補正値Od、Ocを生成することも可能である。
【0088】
制御回路225に対して撮像制御装置1002から「照射開始要求信号」が送信されてから、制御回路225が、撮像制御装置1002を経由して高電圧発生装置1004へ「照射及び読出可能信号」を送信するまでの時間を「曝射ディレイ」と呼ぶ。この場合はt4~t5の期間(「曝射ディレイ)期間)にデータ取得が不要となるため、曝射ディレイに相当する期間を短縮しうる。
【0089】
1回以上の補正値Od、Ocの読出し動作を終了すると、制御回路225は、時刻t5で、撮像制御装置1002を経由して高電圧発生装置1004へ「照射及び読出可能信号」を送信する。制御回路225は、照射及び読出可能信号をアクティブ送信した後に、上述の読出し動作を繰り返とし実行する。信号処理部224は、読出し動作ごとに放射線の後述する照射量の積算値として「積算DOSE」を測定し、その積算値が予め設定した「AEC閾値」を超えたか否かを判定する。時刻t5において、制御回路225が高電圧発生装置1004へ「照射及び読出可能信号」を送信した後に、時刻t6から放射線の照射が開始される。
【0090】
放射線の照射量DOSEの決定方法について以下に説明する。直近の読出し動作によって線量検出画素121から読み出された信号の値をSdと表す。直近の読出し動作によって補正画素151から読み出された信号の値をScと表す。信号処理部224は、Sd、Sc、Od及びOcを以下の(1)式、(2)式に適用することによって、放射線の照射量DOSEを算出する。「AEC閾値」は単位面積当たりの線量に相当するため、積算照射量DOSEを示す(2)式も同様に単位面積当たりの線量に正規化して比較を行う。 放射線撮像装置1001の制御回路225は、撮像制御装置1002により特定された関心領域(採光野1012)における線量検出画素121から読み出した信号を、可視光が遮光された補正画素151から読み出した信号に基づいて補正し、補正した信号に基づいて放射線の積算線量を算出する。
【0091】
単位サンプル毎のDOSE=(Sd-Od)-(Sc-Oc)・・・(1)
積算DOSE = Σ{(Sd-Od)-(Sc-Oc)} ・・・(2)
図7に示す単位サンプル毎のDOSEは、上記の(1)式の算出結果例を示すものである。実際には各駆動線124(AEC駆動線)に駆動信号を供給して線量検出画素121を動作させて照射放射線を読み出すごとに更新される離散的な値であるが、
図7では連続的に記載している。
図7に示す積載DOSEは、上記の(2)式の積算DOSEの算出結果の例を示すものである。
図7に示すように、読み出し毎に積算DOSEが更新されて増加して行く傾向を示す。
【0092】
信号処理部224は、制御回路225が、照射及び読出可能信号を送信した後に、線量検出画素121から読み出された信号の値Sdと、照射及び読出可能信号を送信する前に線量検出画素121から読み出された信号に基づいて決定された補正値Odとの差分(Sd-Od)を取得する。また、信号処理部224は、補正画素151から読み出された信号の値Scと、照射及び読出可能信号を送信する前に補正画素151から読み出された信号に基づいて決定された補正値Ocとの差分(Sc-Oc)を取得する。そして、信号処理部224は、取得した差分(Sd-Od)と差分(Sc-Oc)とに基づいて、放射線の照射量DOSE(単位サンプル毎のDOSE)及び積算DOSEを算出する。
【0093】
図7に示すように、遮光されていない線量検出画素121から読み出される信号である、「線量検出画素121信号(Sd-Od)」は、リセット動作の終了直後(時刻t4の直後)に大きく変化し、時間の経過とともに、例えば100ms程度で安定する。そのため、線量検出画素121から得られる信号の値Sd及び補正値Odだけを用いて放射線の照射量DOSEを算出しても、オフセット量を十分に除去できない。線量検出画素121から読み出される信号が安定するまで補正値Odを取得するための読出し動作の開始を遅らせると、照射開始要求信号の送信から実際の放射線の照射開始までの時間(時刻t3~t5までの時間、曝射ディレイ)が長くなる。
【0094】
図6Cに示す回路構成では、補正画素151から読み出された信号の値Sc及び補正値Ocを更に用いて放射線の照射量DOSEを測定する。補正画素151は放射線に対する感度が、線量検出画素121及び撮像画素101における放射線に対する感度に比べて低いため、放射線の照射開始後に補正画素151から読み出された信号の値Scは、線量検出画素121から読み出された信号の値Sdのオフセット成分を表すとみなせる。さらに、本実施形態では、放射線の照射開始前に線量検出画素121及び補正画素151から読み出された信号に基づく補正値Od及びOcを用いて、放射線の照射量DOSEを決定している。それによって、各画素の固有の特性違い(例えば、検出回路のチャネルの差異、各画素寄生抵抗、寄生容量の差異など)を補正することができる。
【0095】
図7の時刻t7では、制御回路225が予め設定したAEC閾値に積算DOSEが到達している。これを受けて、制御回路225は撮像制御装置1002を経由するなどして、高電圧発生装置1004へ「閾値到達信号」を送信し、もしくは「照射及び読出可能信号」を非アクティブするなどして、AEC閾値に到達したことを表す情報を伝達する。撮像制御装置1002は、閾値として設定された線量目標値と放射線画像における線量指標値とが等しくなるように放射線源の照射を制御する。AEC閾値に積算DOSEが到達するタイミングで閾値到達信号を撮像制御装置1002へ送信することに代えて、制御回路225は、積算照射量が閾値に到達する時刻を推定し、この推定時間に閾値到達信号を送信してもよい。AEC閾値へ到達したことを報知する閾値到達信号を撮像制御装置1002を介して受信した高電圧発生装置1004は、時刻t8で放射線の照射を終了させる。
【0096】
尚、精度よく放射線の照射量を積算して、適切な応答時間で放射線の照射を停止させるためには、駆動線124(AEC駆動線)Vgk/Vdjの読出し周期は、実際の照射時間に対して、例えば、最長でも10分の1以下など、十分に短い周期を設定すればよい。通常、非結晶シリコンセンサを用いた場合、一行の信号を読み出すためには10μs~50μsを要する。このため、広いエリアを読み出すためには複数の駆動線124(AEC駆動線)Vgk/Vdjを同時に有効にして出力を読み出すなどして、全体の線量検出画素121の動作が最適時間に収まるように設定する必要がある。同様に実際の照射時間が特に数ms以下であるような場合、放射線の照射積算検知からAEC閾値に到達閾値比較を行ってから「閾値到達信号」を出力するまでの遅延時間は、例えば、1ms以下に設定することが可能である。また、積算線量の傾きに応じて、予め遅延時間を考慮して、AEC閾値を遅延時間分小さく設定して制御を行うことも可能である。
【0097】
また、この時、制御回路225は、撮像制御装置1002へ、実際に採用した「自働露出時情報(ROI/算出方法)」、到達線量情報などを伝達する。
【0098】
時刻t7から放射線が停止するまでの想定遅延時間以上経過した所定時間後の時刻t9からt10まで、駆動回路221Cは複数の駆動線104に対して駆動信号Vg1~Vgnを再び供給し、読出し回路222Cは複数の撮像画素101から信号を読出し、読出し回路222Cにより処理された信号は、信号処理部224を介して通信部227から撮像制御装置1002に送信される。撮像制御装置は、放射線撮像装置1001の通信部227から送信された信号に基づいて放射線画像を生成し、生成した放射線画像に対して画像処理を施す。撮像制御装置1002により生成され、画像処理が施された放射線画像は撮像制御装置1002を経由して表示部1006に送信され表示される。
【0099】
上述の例で、制御回路225は、リセット動作の終了直後に、補正値Od及びOcを決定するための所定の回数の読出し動作を開始した。これに代えて、制御回路225は、リセット動作の終了後、所定の時間(例えば、数ms~数十ms)経過してから所定の回数の読出し動作を開始してもよい。これによって、時間変動が特に大きい期間における信号の読み出しを抑制することができる。
【0100】
一般的な線量指標値EIの算出に関しては、代表例として線量指標値EIの算出領域を、プロトコルや被写体の撮影姿勢や撮像部位等に応じた画像の違いによって変更しない場合と、線量指標値EIの算出領域を変更する場合との二通りがある。線量指標値EIの算出領域を変更しない場合は固定ROIにおいて線量指標値EIを算出する方法であり、予め決めた撮像装置の領域(固定ROI)で固定ROIを算出する。このため、操作者は画像のどのエリアで算出しているかが明確に判別できるメリットがある。一方、固定ROIではプロトコルの違いが被写体の違いにより、ばらつきが大きいため線量目標値EItの設定や偏差DIが管理しづらくなるデメリットがある。
【0101】
これに対して、線量指標値EIの算出領域を変更する場合には、まず、制御回路225は、撮影毎に線量指標値EIを算出するためのEI値算出領域を特定し、特定したEI値算出領域をEI値算出のためのROIとして設定し、設定したROIにおいて代表値を求めることにより線量指標値EIを算出する。
【0102】
操作者は撮影時において、どのエリアで線量指標値EIが算出されるかが分かり難いが、算出アルゴリズムを操作者に事前共有する事や、必要に応じて算出後に使用したROIを表示するなどにより操作者も設定されたROIを確認することが可能である。さらには、照射エリアを特定した上で線量指標値EIを算出するためプロトコルや被写体の画像の違いによるばらつきが固定ROIに比べて小さくなり、医療施設では線量目標値EItの設定および偏差DIを管理して撮影時の線量管理を精度よく実施することが可能である。
【0103】
線量指標値EIの導入目的である適切な照射線量管理の観点からすると被写体の条件(例えば、被写体の撮影姿勢や撮像部位等)によらないで、撮像装置の領域を変化させない固定ROIにおいて線量指標値EIを算出するよりも、実際の画像の有効エリアを意識して領域(ROIの設定)を変化させて線量指標値EIを算出できた方が良い。
【0104】
図8は線量指標値EIを算出する処理の流れを説明するフローチャートである。
図8では、撮影後の画像から線量指標値EIを算出する手順を例示する。まず、ステップS801(照射エリア外除去)では、撮影画像から放射線を照射していない、明らかに診断画像の関心領域外の領域を線量指標値EIの算出エリアから除外する。処理方法としては、コリメータ情報や管球-FPD間距離(FDD)情報などに基づいて算出する方法や事前の各撮影部位情報などを利用して画像から照射や領域を抽出する方法や機械学習によるAI判定などの方法を用いることが可能である。
【0105】
次に、ステップS802(直接線相当領域除去)では、グリッドのみの領域を含む直接線領域を特定して関心領域外の領域を線量指標値EIの算出エリアから除外する。処理方法としては、経験に基づいた固定閾値法、モード法、微分ヒストグラム法、pタイル法、そして、判別分析法などを使用することが可能である。
【0106】
さらに、ステップS803(金属等不要領域除去)では、関心領域内ではあるが通常の診断画像としては関心領域の線量指標として用いるべきではない低線量領域を線量指標値EIの算出エリアから除外する。処理方法としては領域成長法、snake法などを使用することが可能である。ここまでの処理(S801~S803)により、撮影画像における線量指標値EIの算出エリアを抽出エリアとして決定することができる。
【0107】
次に、ステップS804(抽出エリア代表値算出)では、線量指標値EIの算出エリア(抽出エリア:関心領域)における画素値の平均値、中央値などの代表値を算出する。最後に、ステップS805(代表値をEI値へ変換)では、ステップS804で算出した代表値を、例えば、100=1μGyとなるように変換処理を行って、線量指標値EIを算出する。また、算出した線量指標値EIと線量目標値EItとの偏差DIを算出する。算出された偏差DIに基づいて、操作者は、その放射線画像撮影が想定通りの放射線量による撮影が実施されたかを確認することができる。現状、偏差DIを確認はできても、どのように修正して偏差DIを小さくしていくのかは、操作者含む病院施設の試行錯誤により求めていかなくてはならない場合が多い。
【0108】
図9は線量指標値の算出方法の照射前調整を説明する図であり、
図10は線量指標値の算出方法の照射中調整を説明する図である。
図9及び
図10における調整処理と
図8における本実施形態の処理フローの具体的な処理を説明する。なお、本実施形態では線量指標として線量指標値EIを用いているが、線量指標全般に同様の技術が適用可能である。
【0109】
撮像制御装置1002は、放射線撮像前に、放射線源1003と放射線撮像装置1001との位置計測情報に基づいて算出された放射線投影領域と、カメラにより取得された放射線投影領域における被写体の光学画像と、過去に撮像された被写体の放射線画像と、のうち少なくともいずれか一つを用いて、関心領域を特定することが可能である。
【0110】
図9及び
図10では、操作者が被写体の両膝の放射線画像を取得する場合を例として説明する。操作者は、放射線源1003と放射線撮像装置1001の間に配置している図示しないテーブル上に、被写体を整位する。
図9(a)に示す通り表示部1006には、被写体の放射線画像で撮像されるエリア(放射線投影領域)に対応して、可視光もしくは赤外光のリアルタイムビデオカメラ画像として画像5310(光学画像)が表示される。この画像5310には放射線撮像装置1001の二次元的な外形5301、放射線投影領域5302、および、直接線領域5303が表示されている。
【0111】
この表示の最も簡便な実現方法としては、放射線源1003にある図示しないコリメータの一般的な機能である放射線照射エリアを表す表示灯を点灯させた状態でリアルタイム表示するだけでもよい。この場合、外形5301はテーブルトップの放射線撮像装置1001の二次元的な外形形状、あるいはアクリル製などの可視光を透過する材質のテーブル天板の下にある放射線撮像装置1001の二次元的な外形形状を示す。
【0112】
図9(b)では、
図9(a)に加えて、デフォルトの5個所の採光野1012(AEC採光野)をオーバレイ表示している。膝の撮影を行う場合、デフォルトの5個所の採光野1012は撮影したい膝関節にかかっていないため、適切ではない。このため、例えば、操作者によって、
図9(c)に示すように、採光野1012(AEC採光野)の位置が膝関節の位置に合うように変更指示される。更に、操作者が、
図9に向かって左側の膝関節に、金属が挿入されていることを事前に認識している場合、左の膝関節部を撮影時の採光野1012(AEC採光野)から除外する指示を行うことも可能である。
【0113】
あるいは、
図9(d)に示すように、
図9(c)などの画像の上に過去に撮像した過去画像を半透明に重ね合わせたオーバレイ表示を行うなどして、過去に行った処置部の状況を明示しやすいように表示することも可能である。また、
図9(c)において、
図9(d)の金属領域5304のような、膝関節に挿入されている金属などの処置部にハッチングや色付けなどの表示制御により金属などの処置部の位置などの状況を分かりやすく表示することも可能である。操作者は、予め認識していた場合と同様に、必要に応じて、左の膝関節部を撮影時の採光野1012(AEC採光野)から除外する指示を行い、採光野1012の位置が膝関節の位置に合うように変更指示を行う。
【0114】
図9に示した膝関節の撮像は例示的なものであり、「照射エリア外除去」(S801)、「直接線相当領域除去」(S802)、「金属等不要領域除去」(S803)の処理を行った上で、線量検出画素121の動作領域である採光野1012を設定することが可能である。線量指標値EIとして
図6で示した線量検出画素121近傍の撮像画素101と設定した採光野1012の領域情報を用いて撮影画像の線量指標値EIを算出することにより、従来よりも精度よく線量管理を実施可能である。
【0115】
また、経過観察用の過去画像の参照に関しては、上述の様に、操作者が採光野1012(AEC採光野)を決めるための参考用画像として単に表示するよりも、より積極的に採光野1012(AEC採光野)を決めるために使用することが可能である。例えば、そもそも参照された過去画像が採光野1012(AEC採光野)を本実施形態に記載と同様の手順で決められていた場合、DICOMヘッダのメーカによる任意領域に記録されている撮影時の情報より対象の過去画像を撮影した際の採光野1012(AEC採光野)を読み出して、今回撮影の採光野1012(AEC採光野)のデフォルトの推奨採光野として表示してもよい。あるいは、過去画像より今回用いる方法と同様にして直接線領域5303や金属領域5304を除く処理を行い、線量指標値EIを算出するなどと併せて、適切な採光野1012を導出することも可能である。この過程で、今回撮影の適切な採光野1012の推奨形状を導出するなどしても良い。また、操作者への推奨採光野を表示する際には、画像5310と外形の認識などを予め行ってから、画像5310に対して適切な位置と思われる採光野1012を表示しても良い。
【0116】
ここで、
図8のフローチャートに即した採光野の別の決定方法に関して説明する。例えば、放射線撮像装置1001がテーブル内に配置されている場合等において、放射線源1003の焦点と放射線撮像装置1001の中心との距離(FDD)、および、位置関係を自動的に計測する。また、放射線源1003の図示しないコリメータの機能により、コリメータの開度を計測する。これらの計測は、例えば、テーブル及び管球保持機構、もしくは、一般撮影が可能な自動ポジショニング機能搭載の放射線源1003である管球および放射線撮像装置1001の保持機構における位置計測情報に基づいて実施することが可能である。撮像制御装置1002は、計測されたこれらの情報を先の高電圧発生装置1004などを経由して取得し、この情報を基にして外形5301、放射線投影領域5302を算出することができる。
【0117】
あるいは、外形5301、放射線投影領域5302に関しては、リアルタイムビデオ画像から画像認識などにより撮像制御装置1002が情報として保持することも可能である。ここで、先のコリメータからの表示灯の投光系、実際の放射線照射系、さらには、リアルアイムのビデオカメラ撮像光学系とは、光学的に略同一に光軸および焦点および結像点が配置されていることにより、正確な外形5301、放射線投影領域5302を求めることが可能となる。
【0118】
なお、
図9で示したような膝関節の撮影などの場合には問題となる可能性は低いが、頭部などの撮影時には可視光を投影し続けることによる被写体の負担が大きくなる可能性がある。このため、近赤外光によるリアルタイム撮像系投光系および受光系および単に熱分布撮像系として赤外光の受光系も可視光光学系に追加して設けておくことが好ましい。
【0119】
撮像制御装置1002は、これらの情報に基づいて、リアルタイムビデオカメラ画像上に、外形5301、放射線投影領域5302をオーバレイ表示するように表示制御することも可能である。これにより、
図8のステップS801における照射エリア外除去の処理を撮像前に実施可能となる。
【0120】
次に、直接線領域5303の導出方法に関して説明する。これはリアルタイムビデオ画像から画像抽出により算出することが可能である。精度を良くするためには、図示しない天板、もしくは、放射線撮像装置1001に、分別しやすい色、特にビデオカメラの感度の高い塗料の使用や、赤外光のリアルタイムビデオカメラを使用することによって、被写体に対して、天板もしくは放射線撮像装置1001の温度差による分別を行うなどしても良い。また、撮影部位情報や過去画像の情報などを使用して予め直接線が判別されているサンプル画像との類似エリアや領域弁別のための固定閾値法、pタイル法の閾値情報を利用して、画像5310(光学画像)に対して直接線領域5303を抽出することも可能である。撮像制御装置1002は、後述する
図10の線量検出画素121領域に関して、その全体および検知ライン単位で直接線の割合情報を算出して、算出した情報を放射線撮像装置1001に放射線撮像直前に送付して、AEC閾値演算と比較を行うための積算値から、精度よく直接線領域5303を除外できるようにすることは有益である。
【0121】
撮像制御装置1002は、放射線画像が撮像される放射線投影領域に対応して、光学画像を表示部1006に表示させる表示制御を行うことが可能であり、また、撮像制御装置1002は、光学画像に過去に撮像された被写体の放射線画像を重ね合わせた画像を表示部1006に表示させる表示制御を更に行うことも可能である。
【0122】
撮像制御装置1002は、これらの情報に基づいて、リアルタイムビデオカメラ画像上に、直接線領域5303をオーバレイ表示するように表示制御を行うことも可能である。これにより、
図8のステップS802における直接線相当領域除去の処理を撮像前に実施可能となる。これにより、照射エリア内、かつ、直接線相当領域外の領域が、残された採光野1012相当として自動的に導出される。さらに、被写体の撮影部位情報に基づいた採光野テンプレートに基づいて関心領域として採光野1012を特定することも可能である。例えば、
図9の場合では、「両膝」であることが確定しているため、膝と認識できる部分を中心に、照射エリア内かつ直接線相当領域外の領域の内側から線量指標値EIの算出エリア(抽出エリア)を自動的に選択することが可能である。
【0123】
ここで、
図9に示すような膝関節に対する放射線撮像を実施する前の金属等不要領域除去の処理は、被写体情報に基づいた情報を放射線撮像装置1001に伝達後の処理が主となる。ただし、同一被写体の過去画像を元に金属等不要領域除去を実施することは可能である。撮像制御装置1002は、先の画像5310(光学画像)に過去画像を重ね合わせて、画像5310(光学画像)から抽出した採光野1012相当の領域から金属領域を除外した領域を、線量指標値EIの算出エリア(抽出エリア)における採光野1012として、放射線撮像装置1001へ通知することが可能である。
【0124】
図9を用いた説明した手順に関して、撮影部位の変更や撮影に関する相対位置に関する変更は操作スイッチ46が操作される前の時刻t3までに完了する。操作スイッチ46が操作されて操作者による放射線照射が指示された以降では、撮像制御装置1002および高電圧発生装置1004は撮影部位の変更や撮影に関する相対位置に関する変更を受け付けない。時刻t3以降に、線量指標値EIの算出エリア(抽出エリア)における採光野1012が確定され、撮像制御装置1002は確定した採光野1012を放射線撮像装置1001へ通知する。
【0125】
なお、これまでの説明では、採光野1012(AEC採光野)を照射エリア内、かつ被写体エリア内の限られた領域に設定する実施形態を示したが、
図6や
図4を用いて説明した通り、照射エリア内、かつ被写体エリア内の全域を採光野1012(AEC採光野)として設定することも可能である。なお、この場合、採光野1012(AEC採光野)内の読み出す線量検出画素121の行数が増えることによりAEC閾値に到達した判断を行う周期が長くなる。このため数ms以内の照射時間を想定している場合などには不向きである。
【0126】
次に、
図10を用いて
図7中の主に時刻t3~t7の期間の動作について説明する。時刻t3以降に放射線撮像装置1001へ通知された採光野1012(AEC採光野)の情報などに基づいて、制御回路225は、撮像領域100内に分布した線量検出画素121の内、AEC線量算出に今回用いる線量検出画素121を決定する。
【0127】
図10(a)に示すように、決定された採光野1012に対応する5行の駆動線1241~1245が選択されている。
図10(b)に示すように、これから撮像される放射線画像に採光野1012(AEC採光野)および採光野1012内で選択された5行の駆動線1241~1245が重ねて表示される。今回選択されなかったその他の線量検出画素121は、AEC応答時間を短くするため、および、画像として通常画素として使用する為、放射線の照射期間中は一切駆動されない。
【0128】
時刻t5までに対応する5本の線量検出画素121の補正のための駆動を完了し、制御回路225は照射及び読出可能信号を時刻t5で出力すると同時にAEC線量の測定のための駆動を開始する。この際、5行の駆動線124(AEC駆動線)に駆動信号を順次出力して5行として駆動してもよいし、5行の駆動線を同時に選択して1行として駆動してもよい。5行として駆動する場合には読み出しに要する時間は、1行として駆動する場合の読み出しに要する時間に比べて5倍の読出し時間を要するが、空間分解能が上がるため、後述するラインエリア毎の判断を細かく行うことができる。一方で1行として駆動する場合は時間が1/5と高速であり、信号成分が5倍確保できるため短時間応答に優れるが、空間分解能としては、5行として駆動する場合に比べて劣るため、細かいラインエリア処理を入れながら積算する場合には精度が落ちる場合がある。制御回路225は、放射線の照射開始時には5行の駆動線をまとめて駆動し、所定時間経過後には、数本ずつまとめて駆動するように、撮影中に駆動する本数を変化させるように駆動を制御することが可能である。
【0129】
時刻t6から放射線照射が開始されると駆動線124(AEC駆動線)それぞれに応じた出力が読出し回路222C(AEC読み出し用回路)から出力される。
【0130】
図10(c)、(e)は、駆動線1243(AEC駆動線)に相当する部分の後処理前の線量に線形な最終画像のライングラフ、およびヒストグラムを示す図である。また、
図10(d)、(f)は、駆動線1243(AEC駆動線)の一回のアンプリングの出力波形、およびヒストブラムを示す図である。ここで、
図10(c)、(e)において、符号5411は画素値の最大値を示し、符号5412は積算DOSEを算出する際に使用するピクセル値PVの最大値を示し、符号5413は最小値に対応する画素値に相当するレベルを示す。そして、
図10(d)、(f)において、符号5420は一ライン中の線量検出画素121の画素値の最大値を示し、符号5421は最終画像で最大値となる符号5411に相当する画素値を示し、符号5422は積算DOSEを算出する際に使用するピクセル値PVの最大値を示し、符号5423は最小値に対応する画素値レベルを示す。
【0131】
本実施形態で積算DOSEを算出する際の対象画素の決定方法には、いくつか手法がある。最も簡便には、先の
図9で説明した内容により決定されたとおり、撮像制御装置1002で決定したエリア内で線量検出画素121に相当する画素の出力の全てを積算する方法である。例えば、
図10(a)の符号5401~5402の間、および、符号5403~5404の間の内における補正後の線量検出画素121に相当する画素の出力の全てを積算する方法である。なお、先の
図9の説明の通り、符号5401~5402間の領域には金属が埋め込んであるため、積算対象から除外するようにしても良い。
【0132】
更には、
図10(c)などのように過去画像を参照するなどしてピクセル値PVの最大値5412、最小値5413を予め決めて、先の指示された領域内の積算対象から除外して積算処理を行っても良い。この場合、最大値5412は、被写体と放射線撮像装置1001との位置のずれなどによって、撮像制御装置1002の指示とは異なり、意図せず直接線領域5303の直接線が混入した場合に、関心領域における放射線の照射量が過少線量でAEC閾値に到達することを防ぐことができる。また、最小値5413は、同様に照射エリア外、もしくは金属領域の影響を抑制し、関心領域における放射線の照射量が過大線量でAEC閾値に到達することを抑制することができる。なお、除外された線量検出画素121分は元から対象外であったとして扱い、積算に使用した線量検出画素121のみで正規化して、適切に単位面積当たりの線量に相当するように積算DOSEを算出する。
【0133】
実際には、
図10(c)から毎回のサンプリングを行い、
図10(d)のピクセル値を定めることは難しい。これは、一回当たりのサンプリング時にどの程度線量が照射されるかが決まっていないためである。よって、直接線領域との比で最大値5412や最小値5413とを定める。更には、
図10(c)と
図10(d)とでは当然到達している放射線量が異なるため、一回のアンプリングの出力波形における直接線量域のピクセル値5420(画素値の最大値:
図10(d))と最終画像の直接線領域のピクセル値5411(画素値の最大値:
図10(c))とが異なる。このため、放射線照射前に一回のアンプリングの出力波形におけるピクセル値PVの最大値5422と最小値に対応する画素値レベル5423とを決めるには、直接線領域のピクセル値5420を照射開始直前の放射線発生装置の設定情報などから撮像制御装置1002が算出して放射線撮像装置1001へ通知する必要がある。
【0134】
ピクセル値PVの最大値5422と最小値に対応する画素値レベル5423を求める別の手法として、
図10(d)に示すライングラフ画素毎に積算結果を保持するメモリを用意して、各サンプリング後に更新された加算もしくは加算平均されたライングラフに基づいて積算演算を行う方法がある。この場合、ライングラフのヒストグラム(
図10(f))を算出しながら実施する。演算処理が間に合うならばサンプリング周期毎に算出結果を求めても良いし、ライングラフ状の積算結果を保持しているので数ライン周期ごとにヒストグラムを算出してもよい。
【0135】
予め撮像制御装置1002はカメラ画像などから算出した直接線領域の割合が分かるため、pタイル法の閾値情報として、直接線領域情報を用いて、
図10(f)のヒストグラムから最大値5422を算出することが可能である。また、同様に撮像制御装置1002は、非照射エリアおよび、過去画像などを参照して金属部分の割合を求めることにより、
図10(f)のヒストグラムから最小値5423を算出することが可能である。これらより、照射中にAEC閾値と比較するために換算すべき線量検出画素121のピクセル値の範囲を決めることが可能となる。なおヒストグラムを用いる場合のメリットとして、直接線部のピクセル値の絶対値を把握する必要はなく、直接線部が飽和しても、直接線エリアとそれ以外の比率が分かっていれば、先の最大値5422を導出することが可能である。
【0136】
次に、撮影照射前の被検体の位置情報、つまり、事前に定めた採光野1012と実際に照射される放射線のエリアがずれていた場合の処理に関して
図11を参照して説明する。
図11(a)および
図11(b)の状態を想定していたはずだが、実際には
図11(c)および
図11(d)のように向かって右足が右方向にずれていた場合を考える。位置ずれが生じてしまう原因としては、被写体が動いてしまった場合や、カメラの光軸と放射線の光軸とのずれなどが考えられる。
【0137】
図11(d)の状態のままで単純に採光野1012全域を積算してしまうと、採光野1012エリア内に直接線領域5303が含まれるため、関心領域部の線量が不足したままAEC閾値に到達してしまう。過少照射による撮影となり、粒状性画質の低下を招き、場合により再撮影などの可能性がある。
【0138】
図10で説明した手法を用いることで、過少照射のままAEC閾値に到達することを抑制できている。つまり、ビデオカメラ画像などにより直接線の領域を予め求めることにより、最大値5422を求めることができれば、想定外に直接線が採光野1012領域に入ってきても積算対象の領域から除外することが可能となり、精度をほとんど落とすことなくAEC閾値との比較が可能である。同様に、ビデオカメラ画像、もしくは、コリメータ情報により照射エリア外の領域との比を予め求めることにより、最小値5423相当を求めることができる。これより、予め採光野1012を定めなくても照射エリア外の情報がAEC閾値と積算値との比較演算に影響を及ぼさないようにすることが可能となる。つまり、最大値5422~最小値5423の間にある線量検出画素121の結果のみで積算値を求めて、AEC閾値との比較を行えばよい。この方法は特に被写体が照射エリアに対して小さい場合など、被写体の位置が多少動いても、直接線と被写体との比率が大きく変わらない撮像条件に対して有効である。
【0139】
以上の様に説明した内容にて閾値到達信号を放射線撮像装置1001から出力して、放射線照射を適切なタイミングで停止させる。その後、放射線画像を撮像制御装置1002に転送すると共に、実際のAEC閾値と比較した積算DOSE値相当を撮像制御装置1002へ転送する。撮像制御装置1002は線量指標値EIの算出アルゴリズムで線量指標値EI取得した放射線画像から再計算して、AEC閾値として設定した線量目標値EItと、画像から算出した線量指標値EI、そして、AEC閾値を超えた際の積算DOSE値とを比較し、それぞれの差分、特に、線量目標値EItと線量指標値EIとその偏差DIを算出する。また、それらの偏差を機械学習するなどして線量目標値EItと線量指標値EIとの偏差DIが最小値になるように線量目標値EItからAEC閾値を設定する際の変換係数などを導出し、AEC閾値の設定にフィードバックすることも可能である。
【0140】
撮像制御装置1002が、放射線画像の採光野1012内の線量目標値EItが対応する部分と線量検出画素121との対応付けを行うことで偏差DIを小さくすることが可能である。また、撮像制御装置1002は、関心領域内に、閾値として設定された線量目標値に対応する場所を識別可能に表示部1006に表示させる表示制御を行うことも可能である。そして、撮像制御装置1002が、採光野1012内の線量目標値EItに対応する部分と線量検出画素121の場所を識別可能とするハッチングや色付けなどを行う表示制御を行い、表示部1006に表示することで操作者の使い勝手も向上する。
【0141】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0142】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0143】
1001:放射線撮像装置、1002:撮像制御装置、1021:通信制御部、1022:制御部、1003:放射線源、1103:放射線、1004:高電圧発生装置、1042:放射線発生制御部、1043:信号選択部、100:撮像領域、101:撮像画素、102:第1変換素子、103:第1チスイッチ、104:駆動線、105:信号線(列信号線)、121:線量検出画素、122:第2変換素子、123:第2スイッチ、124:駆動線、125:検知信号線、132:検知部、142:検知部、151:補正画素、221、221C:駆動回路、222,222C:読出し回路、224:信号処理部、225:制御回路、226:電源回路、227:通信部、241:駆動回:242:読出し回路、401:デジタル処理部、402:アナログ処理部、1012:採光野
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御装置は、
前記放射線撮像装置の撮像領域における第1の領域から、線量指標値の算出に使用されない第2の領域を除去した第3の領域に関する情報を、前記放射線撮像装置に送信し、
前記放射線撮像装置は、
前記第3の領域に含まれる前記線量検出画素を用いて、前記放射線の照射の停止に関する信号を出力することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項2】
前記第2の領域は、線量指標値の算出に使用されない低線量領域と高線量領域とを含む請求項1に記載の放射線撮像システム。
【請求項3】
前記高線量領域は、前記放射線撮像装置で撮像された放射線画像における、グリッドのみの領域を含む直接線領域を含む請求項2に記載の放射線撮像システム。
【請求項4】
前記低線量領域は、前記放射線撮像装置で撮像された放射線画像における、金属を含む金属領域を含む請求項2又は3に記載の放射線撮像システム。
【請求項5】
前記低線量領域は、前記放射線撮像装置で撮像された放射線画像における、前記放射線が照射されない非照射領域を含む請求項2乃至4のいずれか1項に記載の放射線撮像システム。
【請求項6】
前記直接線領域は、光学カメラにより撮影された光学画像を用いて特定される請求項3に記載の放射線撮像システム。
【請求項7】
前記金属領域は、過去に撮影された放射線画像を用いて特定される請求項4に記載の放射線撮像システム。
【請求項8】
前記非照射領域は、前記放射線源と前記放射線撮像装置との距離を用いて特定される請求項5に記載の放射線撮像システム。
【請求項9】
放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置を制御する撮像制御装置であって、
前記放射線撮像装置の撮像領域における第1の領域から、線量指標値の算出に使用されない第2の領域を除去した第3の領域に関する情報を、前記放射線撮像装置に送信する撮像制御装置。
【請求項10】
放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する放射線撮像システムの制御方法であって、
前記放射線撮像装置の撮像領域における第1の領域から、線量指標値の算出に使用されない第2の領域を除去した第3の領域に関する情報を、前記放射線撮像装置に送信するように前記撮像制御装置を制御し、
前記第3の領域に含まれる前記線量検出画素を用いて、前記放射線の照射の停止に関する信号を出力するように前記放射線撮像装置を制御することを特徴とする放射線撮像システムの制御方法。
【請求項11】
放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置を制御する撮像制御装置の制御方法であって、
前記放射線撮像装置の撮像領域における第1の領域から、線量指標値の算出に使用されない第2の領域を除去した第3の領域に関する情報を、前記放射線撮像装置に送信する工程を有する撮像制御装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項10に記載の放射線撮像システムの制御方法又は請求項11に記載の撮像制御装置の制御方法を実行させるプログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の一態様による放射線撮像システムは、放射線源から照射された放射線の線量を検出する線量検出画素を含む放射線撮像装置と、前記放射線撮像装置を制御する撮像制御装置と、を有する放射線撮像システムであって、
前記撮像制御装置は、
前記放射線撮像装置の撮像領域における第1の領域から、線量指標値の算出に使用されない第2の領域を除去した第3の領域に関する情報を、前記放射線撮像装置に送信し、
前記放射線撮像装置は、
前記第3の領域に含まれる前記線量検出画素を用いて、前記放射線の照射の停止に関する信号を出力することを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、放射線撮像システム、撮像制御装置、放射線撮像システムの制御方法、撮像制御装置の制御方法及びプログラムに関するものである。