(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175025
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】組織の灌流の増加における使用のためのイノシトールリン酸化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/6615 20060101AFI20241210BHJP
C07F 9/177 20060101ALI20241210BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241210BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K31/6615
C07F9/177
A61P9/00
A61P9/10
A61P13/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158993
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2021532911の分割
【原出願日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】19382061.0
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/913,259
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521248486
【氏名又は名称】サニフィット・セラピューティクス・ソシエダッド・アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】バッシッシ,モハンマド・フィラス
(72)【発明者】
【氏名】サルセド ロカ,カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペレロ ベスタルド,フアン
(72)【発明者】
【氏名】フェレール レイネス,ミゲル・ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ペレス フェレール,マリア・デル・マール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組織の灌流および/または酸素供給の増加を必要とする対象における、それらの増加における、特に、末梢動脈疾患における使用のための化合物、および前記化合物を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】組織の灌流および/または酸素供給の増加を必要とする対象における、それらの増加における使用のための、一般式Iの化合物を提供する。
[式中、R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11は、独立に、OH、-O-P(O)(OH)
2、-O-S(O)(OH)
2、-O-P(S)(OH)
2の基および異種構造の部分から選択される。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の灌流および/または酸素供給を必要とする対象における、それらの増加における使用のための、一般式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩
【化1】
[式中、R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11は、独立に、OH、式II、III、IVの基:
【化2】
および異種構造の部分から選択され、但し、
(i)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち少なくとも1個が、式II、IIIおよびIVの基から選択され、
(ii)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち0、1、2または3個が、異種構造の部分であることを条件とする]。
【請求項2】
虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態の治療または予防を必要とする対象における、それらの治療または予防における使用のための、一般式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩
【化3】
[式中、R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11は、独立に、OH、式II、III、IVの基:
【化4】
および異種構造の部分から選択され、但し、
(i)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち少なくとも1個が、式II、IIIおよびIVの基から選択され、
(ii)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち0、1、2または3個が、異種構造の部分であることを条件とする]。
【請求項3】
異種構造の部分が、式Vの基、式VIの基および式VIIの基:
【化5】
[式中、nは、2~200の範囲の整数であり、
R
13は、H、メチルおよびエチルから選択される]から選択される、請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
末梢動脈疾患の治療または予防のためである、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
重症虚血肢の治療または予防のためである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
ナトリウム塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
式Iの化合物が、イノシトールヘキサホスフェートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
イノシトールヘキサホスフェートが、ミオイノシトールヘキサホスフェートである、請求項7に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
六ナトリウム塩である、請求項7または8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうちの1個または2個が、式V、VIおよびVIIの基から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
R1、R5、R9およびR11が、式IIの基であり、R3およびR7が、式Vの基である、請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
式Vの基は、nが、2~200の範囲内であり、R13が、Hである、請求項11に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項で定義された化合物を、薬学的に許容される賦形剤および担体と共に含む、請求項1、3~5のいずれか一項で定義された使用のための医薬組成物。
【請求項14】
腎不全を伴う対象に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物または請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
透析中の対象に投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物または請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
血液透析中の対象に投与される、請求項15に記載の使用のための化合物または医薬組成物。
【請求項17】
対象から抽出された、ろ過されていない血液に投与される、請求項16に記載の使用のための化合物または医薬組成物。
【請求項18】
非経口経路により投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための化合物または請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
非経口投与が、静脈内、皮下もしくは筋肉内である、請求項18に記載の使用のための化合物または医薬組成物。
【請求項20】
歩行能力の向上を必要とする対象のその向上における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の、一般式Iの化合物、もしくは薬学的に許容されるその塩、または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項21】
最大歩行距離(MWD)、最大歩行時間(MWT)またはその両方を増加させることを必要とする対象における、それらの増加における使用のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の、一般式Iの化合物、もしくは薬学的に許容されるその塩、または請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための化合物または医薬組成物であって、前記化合物が、約0.001mg/kg~約60mg/kgである有効用量において対象に投与される、前記化合物又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年1月30日出願のEP19382061.0、および2019年10月10日出願のUS62/913,259の優先権の利益を主張する。
[0002]本発明は、組織の灌流および/または酸素供給を増加させるための、イノシトールリン酸(IP)、それらの類似体および誘導体の使用に関する。本発明はまた、前記IP、それらの類似体および誘導体を含む医薬組成物ならびに動物およびヒトの健康におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]末梢動脈疾患(PAD)は、筋肉の灌流および酸素供給の減少をもたらす、下肢動脈の狭窄および/または閉塞を特徴とする一般的な障害である。PADは、大きな公衆衛生問題となり、長期の苦痛の高いリスクを有する。PADは、組織死(壊疽)、切断および早死のリスクを高める。
【0003】
[0004]PADは、下肢における虚血の結果である。その主な原因は、アテローム性動脈硬化症である。その軽度の形態において、PADは、間欠性跛行および下肢における疼痛に限定されることがある。下肢PADは、高齢の男性および女性における能力障害および機動力の喪失の主原因であり、生活の質に決定的な影響を与える。
【0004】
[0005]PADの有病率は、成人人口においておよそ12%である。本有病率は、70歳を超える集団群において20%以上まで増加している。PADは、現在、米国だけで800万人を超える男性および女性が発症している。世界中で2億人以上の個体が、PADに罹患していると推定される。PADの有病率は、一般集団が高齢になり、肥満関連の2型糖尿病の発生率が増えると共に、近い将来増加する可能性がある。紙巻きタバコ喫煙も、別の有意な危険因子である。PAD患者は、一般集団と比較して、心血管(CV)の罹患率および死亡率を増加させ、機能低下の速度を速め、機動力の喪失の率を高める。
【0005】
[0006]PAD患者の治療のためのプロトコールの目的には、CVイベント率の低下、機能的活動の改善、ならびに機能低下および機動力の喪失の予防が含まれる。四肢への血液灌流を回復するまたは改善することは、これらの目標を達成するために役立ち得る。
【0006】
[0007]血管内および下肢血行再建術処置が、PAD患者において、歩行能力を有意に向上させる一方、合併性の疾患の存在によりまたは下肢における動脈硬化性疾患の部位およびタイプが血行再建術に適さないため、血行再建術処置は、その多くの患者について、治療オプションでない。血行再建術は、侵襲性であり、コストがかかり、特に、高齢患者の場合、リスクを伴う。こうした理由で、有効であり、到達可能であり、耐容性がある、PAD患者において下肢機能を改善する医学療法に対する臨床医からの需要がある。
【0007】
[0008]現在のところ、2つの医薬品のみが、PADを伴う人々において歩行能力を向上させるために、連邦医薬品局(FDA)により承認されている、すなわち、ペントキシフィリン(1984年)およびシロスタゾール(1999年)である。間欠性跛行を治療するための新薬は、それ以降承認されていない。さらに、PAD患者における最近の研究では、ペントキシフィリンは、間欠性跛行症状または最大歩行距離を、プラセボ以上に有意に改善しない。最近発表された診療ガイドラインは、治療効果の欠如により、間欠性跛行症状についてのペントキシフィリンの処方を行わないことを推奨している。
【0008】
[0009]シロスタゾールは、症候性PADを伴う人々において、トレッドミル歩行能力を
およそ25%~40%まで改善するホスホジエステラーゼ阻害剤である。シロスタゾールは、環状アデノシン一リン酸の細胞内濃度を増加させることにより作用するホスホジエステラーゼタイプ3阻害剤であり、このプロセスにおいて、この薬物は、血小板凝集を抑制し、血液灌流を改善する、直接の動脈性血管拡張薬として作用する。しかしながら、シロスタゾールが、PAD患者において歩行能力を向上させる機序は、依然として不明である。
【0009】
[0010]シロスタゾールの副作用には、頭痛、下痢、動悸、およびもうろう状態が含まれる。心血管疾患の病歴がある対象にシロスタゾールを処方することに対する黒枠警告がある。シロスタゾールは、心不全をも有するPAD患者に投与するべきでない。シロスタゾールは、腎機能低下または心血管疾患を伴う患者に定期的に処方される薬物、例えば、シナカルセト、クロピドグレルおよびイバンドロン酸などと相互作用し、したがって、他の薬物とのシロスタゾールの併用から生じるこれらの患者への有害反応のリスクを高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0011]結論として、症状の緩和のための医学療法は限定され、外科的または血管内インターベンションは、一部の個体に有用であるが、長期的な結果では、しばしば期待外れである。結果として、PADを治療するための、より有効かつ安全な新たな療法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0012]第1の態様では、本発明は、組織の灌流および/または酸素供給の増加を必要とする対象における、それらの増加における使用のための、一般式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩
【0012】
【0013】
[0013][式中、R1、R3、R5、R7、R9およびR11は、独立に、OH、式II、III、IVの基:
【0014】
【0015】
および異種構造の(heterologous)部分から選択され、
[0014] 但し:
[0015]R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1つは、式II、IIIおよびIVの基から選択され、
[0016]R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち0、1、2または3つは、異種構造の部分であることを条件とする]
に関する。
【0016】
[0017]別の態様では、本発明は、虚血の治療または予防を必要とする対象における、その治療または予防における使用のための、上記で定義された一般式Iの化合物に関する。本態様のあるバージョンでは、本発明は、虚血-関連疾患または状態の治療または予防を必要とする対象における、それらの治療または予防における使用のための、上記で記載される一般式Iの化合物に関する。
【0017】
[0018]いくつかの態様では、本発明は、上記で定義された一般式Iの化合物に関し、異種構造の部分は、式Vの基、式VIの基および式VIIの基:
【0018】
【0019】
から選択され、
[0019]nは、2~200の範囲の整数であり、R13は、H、メチルまたはエチルから選択される。
【0020】
[0020]さらなる態様では、本発明はまた、上記で定義された、式Iの化合物の治療有効
量を薬学的に許容される賦形剤または担体と一緒に、組織の灌流および/または酸素供給を増加させることを必要とする対象に投与するステップを含む、それらを増加させるための方法に関する。本態様は、組織の灌流および/または酸素供給を増加させることを必要とする対象において、それらを増加させるための医薬品の製造のための、上記で定義された、式Iの化合物の使用として定式化することもできる。
【0021】
[0021]別の態様では、本発明はまた、上記で定義された、式Iの化合物の治療有効量を薬学的に許容される賦形剤または担体と一緒に、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態を治療するまたは予防することを必要とする対象に投与するステップを含む、それらを治療するまたは予防するための方法に関する。本態様はまた、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態を治療するまたは予防することを必要とする対象において、それらを治療するまたは予防するための医薬品の製造のための、上記で定義された、式Iの化合物の使用として定式化することもできる。
【0022】
[0022]さらなる態様では、本発明は、上記で定義された、式Iの化合物の治療有効量を薬学的に許容される賦形剤または担体と一緒に、末梢動脈疾患を治療するまたは予防することを必要とする対象に投与するステップを含む、末梢動脈疾患を治療するまたは予防するための方法に関する。本態様は、末梢動脈疾患を治療するまたは予防することを必要とする対象における末梢動脈疾患を治療するまたは予防するための、医薬品の製造のための、上記で定義された、式Iの化合物の使用として定式化することもできる。
【0023】
[0023]本発明の化合物は、下肢において組織の灌流および/または酸素供給を増加させるために、特に、末梢動脈疾患(PAD)および密接に関連している状態、例えば、重症虚血肢(Critical Limb Ischemia:CLI)の治療または予防のために特に有用である。これらの化合物はまた、PADの治療のために現在示される参照薬物である、シロスタゾールと比較して、多くの有利な特性(例えば、より高い安全性プロファイル)を示す。
【0024】
[0024]本発明はまた、(i)組織の灌流および/または酸素供給を高める、(ii)虚血および/または虚血-関連疾患を治療するまたは予防する、および/または(iii)PADを治療または予防を必要とする対象において、それを治療するまたは予防するのに用いるために、上記で定義された、式Iの少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物を提供する。本態様はまた、(i)組織の灌流および/または酸素供給を高める、(ii)虚血および/または虚血-関連疾患を治療するまたは予防する、および/または(iii)PADを治療または予防を必要とする対象において、それを治療するまたは予防するための、医薬品の製造のための、上記で定義された、式Iの少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物の使用として定式化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】[0025]6個のXのうちの2個が、OPSO
2
2-であり、残りのXが、OSO
3である、イノシトールリン酸類似体の代表例を示す図である。4,6-ジ-(O-チオホスフェート)-イノシトール-1,2,3,5-テトラ-O-スルフェートの2つの特異的な形態を示す。
【
図2】[0026]本発明の方法を実行するために用いることができるイノシトールリン酸類似体およびイノシトールリン酸誘導体を示す図である。示される分子は、ミオイノシトール-五リン酸-2-PEG400、ミオイノシトールヘキサキススルフェート(hexakissulfate)(ミオイノシトールヘキサスルフェート)、およびシロ-ミオイノシトールヘキサキススルフェート(シロ-イノシトールヘキサスルフェート)である。
【
図3】[0027]本発明の方法を実行するために用いることができるイノシトールリン酸類似体およびイノシトールリン酸誘導体を示す図である。Xは、独立に、リンおよび/または硫黄含有基(例えば、ホスフェート、スルフェート、またはチオホスフェート)を表す。R
1は、異種構造の部分(例えば、PEGまたはPG)を表す。
【
図4】[0028]本発明の方法を実行するために用いることができる模範的なイノシトールリン酸類似体およびイノシトールリン酸誘導体を示す図である。R1は、異種構造の部分(例えば、PEGまたはPG)を表す。nは、2~200であり得る。
【
図5】[0029]本発明の方法を実行するために用いることができる模範的なイノシトールリン酸類似体およびイノシトールリン酸誘導体を示す図である。nは、2~200であり得る。
【
図6-1】[0030]本発明の方法を実行するために用いることができる模範的なイノシトールリン酸類似体およびイノシトールリン酸誘導体を示す図である。nは、2~200であり得る。
【
図7】[0031]ドップラーレーザーイメージングによって測定されたD0におけるラットモデルの後肢における血流を示す図である。血流は、正規化された灌流単位(PU)で示される。正規化は、D0に生データを第1群データと比較することにより得られる。
【
図8】[0032]ドップラーレーザーイメージングによって測定されたD6におけるラットモデルの後肢における血流を示す図である。血流は、正規化された灌流単位(PU)で示される。正規化は、D6に生データを第1群データと比較することにより得られる。
【
図9】[0033]ドップラーレーザーイメージングによって測定されたD12におけるラットモデルの後肢における血流を示す図である。血流は、正規化された灌流単位(PU)で示される。正規化は、D12に生データを第1群データと比較することにより得られる。
【
図10】[0034]D12でのVitDラットモデルにおける大動脈石灰化の抑制百分率を示す図である。屠殺時間におけるカルシウムレベルを、ICP-OESにより測定した。
【
図11】[0035]ドップラーレーザーイメージングによって測定されたD12およびD18(治療の中断の6日後)でのラットモデルの後肢における血流を示す図である。血流は、正規化された灌流単位(PU)で示される。正規化は、D12およびD18に生データを第1群データと比較することにより得られる。
【
図12】[0036]トレッドミル試験により測定されたD10でのラットモデルにおける(A)最大歩行距離(MWD)および(B)最大歩行時間(MWT)を示す図である。最大歩行距離を、メートル(m)で示し、最大歩行時間を、分(分)で示す。
【
図13】[0037]トレッドミル試験により測定されたD17(治療の中断の5日後)でのラットモデルにおける最大歩行距離(MWD)を示す図である。最大歩行距離を、歩行時間40分までメートル(m)で示す。
【
図14】[0038]D24(治療の中断の12日後)でのVitDラットモデルにおける大動脈石灰化の抑制百分率を示す図である。屠殺時間におけるカルシウムレベルを、ICP-OESにより測定した。
【
図15】[0039]ドップラーレーザーイメージングによって測定されたD0、D5、およびD13(治療開始から8日後)でのラットモデルの後肢における血流を示す図である。血流は、正規化された灌流単位(PU)で示される。正規化は、D0、D5、およびD13に生データを第1群データと比較することにより得られる。
【
図16】[0040]トレッドミル試験により測定されたD11(治療開始から7日後)でのラットモデルにおける(A)最大歩行距離(MWD)および(B)最大歩行時間(MWT)を示す図である。最大歩行距離を、メートル(m)で示し、最大歩行時間を、分(分)で示す。
【
図17】[0041]D13(治療開始から9日後)でのVitDラットモデルにおける大腿動脈石灰化の抑制百分率を示す図である。屠殺時間におけるカルシウムレベルを、ICP-OESにより測定した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0042]本発明は、組織の灌流および/または酸素供給の増加における使用のための、化合物、医薬組成物、投与の方法および経路を提供する。本発明はまた、虚血ならびに虚血-関連疾患および状態の治療または予防における使用のための、化合物、医薬組成物、投与の方法および経路を提供する。
【0027】
[0043]本発明の化合物は、下肢において組織の灌流および/または酸素供給を増加させるために、特に、末梢動脈疾患(PAD)および関連している状態、例えば、重症虚血肢(CLI)の治療または予防のために、特に有用である。これらの化合物はまた、PADおよびCLIの治療用の他の認可された薬物と比較して、多くの有利な特性を示す。
【0028】
1.一般用語および表現の定義
[0044]本発明は、その群のうち1メンバーだけが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在する、それらに使用される、でなければ、それらに関連する実施形態を含む。本発明はまた、その群メンバーのうちの2メンバー以上またはすべてが、所与の生成物またはプロセスにおいて存在する、それらに使用される、でなければ、それらに関連する実施形態を含む。
【0029】
[0045]別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本説明が関連する当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Pei-Show J、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、第2版.(CRC Press、Boca Raton、FL、USA 2002年);Lackie J、The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第5版.(Academic Press、Cambridge、MA、USA 2013年)およびCammack Rら、Oxford Dictionary of
Biochemistry and Molecular Biology、第2版、(Oxford University Press、Oxford、GB、2006年)は、本説明に用いられる用語の多くを含む一般辞書を、当業者に提供する。
【0030】
[0046]単位、接頭辞、およびシンボルは、それらの国際単位系(SI:Systeme
International de Unites)で認められている形態で示される。数値範囲は、範囲を定義する数を包含する。値の範囲が列挙される場合、その範囲の列挙された上限と下限の間の各介在整数値、およびその各分数はまた、かかる値の間の各部分的な範囲と共に詳細に開示されることが理解されるものである。任意の範囲の上限および下限は、独立に、その範囲に含むこともその範囲から除外することもでき、いずれかの限界が含まれる、いずれの限界も含まれない、両方の限界が含まれるそれぞれの範囲も、本発明の範囲内にやはり包含される。
【0031】
[0047]値が明示的に列挙される場合、列挙した値とほぼ同じ含量または量である値は、やはり本発明の範囲内であるということが理解されるものとする。組合せが開示される場合、その組合せの要素の各サブコンビネーションはまた、詳細に開示され、本発明の範囲内である。逆に、異なる要素または要素の群が個別に開示される場合、それらの組合せもまた開示される。ある発明の任意の要素が、その発明の複数の代替例を有するものとして開示され、各代替が、個々に除外されるまたは他の代替との任意の組合せで、本明細書にやはり開示される場合;ある発明の2つ以上の要素は、かかる除外を有することができ、かかる除外を有する要素のすべての組合せは、本明細書に開示される。
【0032】
[0048]本明細書中で用いる場合、用語「および/または」は、2つの特定された特徴またはその他を含むもしくは含まない構成成分のそれぞれの特定の発明と解釈される。した
がって、本明細書中で「Aおよび/またはB」のような語句の形態で用いられる用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、B、および/またはC」のような語句の形態で用いられる、用語「および/または」は、次の態様、すなわち、A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0033】
[0049]本明細書で使用される場合および目的の1つまたは複数の値に適用される通り、用語「約」は、指定された参照値と類似する値を意味する。いくつかの態様では、用語「約」とは、(かかる数字が、あり得る値の100%を上回る場合を除いて)別段の記載がない、または別段文脈から明らかでない限り、指定された参照値のいずれかの方向に(その値より大きいまたは小さい)10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に属する値の範囲内であることを意味する。
【0034】
[0050]本明細書で使用される場合、用語「重症虚血肢」または「CLI」とは、四肢への血流を著しく減少させる動脈の重度の閉塞および重度の疼痛、さらに皮膚潰瘍、触痛、または壊疽への進行を意味する。重症虚血肢は、末梢動脈疾患の非常に重度の状態である。いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の、それを必要とする対象への投与は、未治療の場合と比較して、より速くおよびより長い距離を歩行するその能力を向上させる。
【0035】
[0051]本明細書で使用される場合、用語「化合物」とは、図示される構造のすべての異性体および同位体を含むことを意味する。本明細書で使用される場合、用語「異性体」とは、化合物の任意の幾何異性体、互変異性体、双性イオン、立体異性体、鏡像異性体、またはジアステレオマーを意味する。化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含むことができ、したがって、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何E/Z異性体)またはジアステレオマー(例えば、鏡像異性体(すなわち、(+)もしくは(-))またはシス/トランス異性体)等として存在することができる。本発明は、ステレオマー的に(stereomerically)純粋な形態(例えば、幾何的に純粋な、鏡像異性的に純粋な、またはジアステレオマー的に純粋な)ならびに鏡像異性のおよび立体異性の混合物、例えば、ラセミ体を含めた、本明細書に記載される化合物の任意のおよびすべての異性体を包含する。化合物の鏡像異性およびステレオマー的(stereomeric)混合物ならびにそれらを、それらの構成成分である鏡像異性体または立体異性体に分離する手段は、周知である。本発明の化合物、塩、または複合体は、溶媒または水分子と組み合わせて調製して、ルーチン的な方法により溶媒和化合物および水和物を形成することができる。
【0036】
[0052]本明細書で使用される場合、用語「シロスタゾール」とは、6-[4-(1-シクロヘキシル-1H -テトラゾル-5イル)ブトキシ]-3,4-ジヒドロ-2(1H)-キノリノン[CAS-73963-72-1]、細胞ホスホジエステラーゼを阻害するキノリノン誘導体を意味する。シロスタゾールの分子式および重量は、それぞれ、C20H27N5O2および369.46g/molである。その構造式は、
【0037】
【0038】
である。
[0053]本明細書で使用される場合、(i)一般式I(例えば、イノシトールリン酸、イノシトールリン酸類似体、イノシトールリン酸誘導体、もしくはその組合せ)の化合物、または(ii)項目(i)の化合物の少なくとも1種を含む医薬組成物に関して用語「有効量」および関連用語「有効投与量」および「有効用量」は、有益なまたは所望の効果をもたらすのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有益なまたは所望の結果は、例えば、臨床結果であり、したがって、「有効量」は、それが適用される文脈に依存する。組織の灌流および/または酸素供給を高める治療薬を投与するという観点から、治療薬の有効量は、例えば、(a)指定された領域で組織の灌流を増強する、(b)指定された領域において虚血を停止する、減少させる、虚血の進行を遅くするもしくは虚血を戻すまたは(c)治療薬の投与前に対象においてまたは治療薬を投与しない対照対象の集団で観察された同じパラメーターと比較すると、対象において機動力または歩行能力(例えば、速度、距離)を向上させるために十分な量である。
【0039】
[0054]本明細書で使用される場合、用語「虚血」とは、細胞代謝を維持するのに要する酸素の不足をもたらす、組織への血液供給の制限を意味する。虚血は、酸素の不十分さだけでなく、栄養分の利用可能性の減少および代謝廃棄物の不適切な除去を含む。虚血は、部分的(灌流の低下)または完全であり得る。
【0040】
[0055]本明細書で使用される場合、用語「最大歩行距離」または「MWD」とは、対象が、疲労困憊または激痛により自力の歩行を継続することができなくなる距離を意味する。MWDの増加を評価するという観点から、前記増大は、治療薬による治療前および治療後に対象のMWD値を比較することにより、または治療薬で治療しなかった対照対象の集団と、治療後の対照のMWD値を比較することにより評価される。
【0041】
[0056]本明細書で使用される場合、用語「最大歩行時間」または「MWT」とは、対象が、疲労困憊または激痛により自力の歩行を継続することができなくなる時間を意味する。MWTの増加を評価するという観点から、前記増大は、治療薬による治療前および治療後に対象のMWT値を比較することにより、または治療薬で治療しなかった対照対象の集団と、治療後の対照のMWT値を比較することにより評価される。
【0042】
[0057]本明細書で使用される場合、用語「非経口投与」および「非経口投与される」とは、通常、注射による、経腸および局所投与以外の投与のモードを意味し、限定せずに、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射ならびに注入(例えば、腎臓透析注入)が含まれる。
【0043】
[0058]本明細書で使用される場合、用語「末梢動脈疾患」または「PAD」とは、脚(最も一般的には)、胃、腕、および頭部への末梢血管の狭小化を意味する。症状には、間欠性跛行(例えば、歩行時に、休息によって回復する下肢痛)、皮膚潰瘍、青みを帯びた皮膚、冷たい皮膚、または、爪および毛髪の成長不良が含まれる。
【0044】
[0059]本明細書で使用される場合、用語「予防する」、「予防している」および「予防」とは、対象における疾患または状態の発端を抑制するまたはその発生を減少させる(例えば、四肢の虚血組織の発生を回避する)ことを意味する。
【0045】
[0060]本明細書で使用される場合、用語「SNF472」とは、静脈内ミオイノシトールヘキサホスフェート六ナトリウム配合物を意味する。SNF472は、ミオイノシトールヘキサホスフェート六ナトリウムを生理食塩水に溶解し、その後、pH調整および無菌ろ過を行うことにより製造される。SNF472は、異なる3つの強度、すなわち、(a)生理食塩水に配合された、5mL頓用バイアル(pH5.8~6.2)中の(i)20mg/mLおよび(ii)90mg/mL、ならびに(b)生理食塩水に配合された、10mL頓用バイアル(pH5.6~6.4)中の30mg/Lで調製される。
【0046】
[0061]本明細書で使用される場合、用語「対象」、「個体」、「動物」または「哺乳類」は、任意の対象、特に、診断、予後、または療法が望ましい哺乳類の対象を意味する。哺乳類の対象には、それだけには限らないが、ヒト、一般家畜、農業用家畜、動物園の動物、スポーツ用動物(sport animal)、愛玩動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ;霊長類、例えば、類人猿、サル、オランウータン、およびチンパンジーなど;イヌ科、例えば、イヌおよびオオカミなど;ネコ科、例えば、ネコ、ライオン、およびトラ;ウマ類、例えば、ウマ、ロバ、およびシマウマ;クマ、食用動物、例えば、雌ウシ、ブタ、およびヒツジ;有蹄動物、例えば、シカおよびキリンなど;げっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット;などが含まれる。いくつかの態様では、対象は、ヒト対象である。いくつかの態様では、対象は、下肢筋肉における組織の灌流および/または酸素供給の減少または前記状態を発症するリスクを伴うヒト患者である。いくつかのさらなる態様では、対象は、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態を伴う、または前記虚血、虚血-関連疾患または状態を発症するリスクがある、ヒト患者である。
【0047】
[0062]本明細書で使用される場合、用語「実質的に」とは、目的の特徴または特性の完全なもしくはほぼ完全な範囲または程度を示す定性条件を意味する。生物学分野の当業者は、生物学的および化学的現象が、完成まで進むおよび/または完全性に向かうまたは絶対的な結果に達するもしくはそれを回避することは、あるとしてもまれであることを理解している。したがって、用語「実質的に」は、多くの生物学的および化学的現象において固有の完全性の潜在的な欠如を捕らえるために、本明細書中で用いられる。
【0048】
[0063]本明細書で使用される場合、用語「組織の灌流」とは、ある特定の組織または臓器の血管を通した、血液の流れまたは他の灌流液を意味する。本明細書で使用される場合、「組織の灌流の増加」または「組織の灌流を増加させている」とは、前記治療薬の投与前の対象において、または前記治療薬を投与しない対照対象の集団において観察された同じパラメーターと比較して、本発明のイノシトールリン酸を投与した後の対象における、ある特定の組織領域における血流の増大に関する。
【0049】
[0064]本明細書で使用される場合、用語「治療する」または「治療」とは、その臨床徴候が出現した後、(i)進行を遅くする、(ii)進行を抑制する、(iii)疾患または状態の進行を停止させる、または(iv)疾患または状態の進行を戻すための、本発明の化合物または医薬組成物の投与を意味する。疾患の進行の制御は、それだけには限らな
いが、症状の軽減、疾患の持続期間の縮小、病理学的状態の安定化(特に、追加の悪化を回避するための)、疾患の進行の遅延、病理学的状態の改善ならびに寛解(部分および完全)を含む、有益なまたは所望の臨床結果を意味することが理解される。疾患の進行の制御はまた、治療が適用されなかった場合、予測された生存時間と比較した、生存時間の延長を含む。本発明の文脈の中で、用語「治療する」または「治療」とは、詳細には、(a)組織の灌流および/または酸素供給を高めるまたは(b)特に、下肢における虚血組織の進行を停止する、軽減する、遅くするまたは下肢における虚血組織の発生を戻す、または(c)本発明の化合物または医薬組成物を用いて投与された対象において、機動力もしくは歩行能力(例えば、速度、距離、耐久性)を改善することを意味する。
【0050】
[0065]本明細書で使用される場合、用語「歩行能力」とは、対象が補助なしで、自律的に移動する能力を意味する。パラメーターMWDおよびMWTは、対象の歩行能力を示す。
【0051】
2.化合物
[0066]本発明における使用のための化合物は、本発明の第1の態様において定義される通り、イノシトールリン酸、ならびにそれらの類似体および誘導体である。本明細書で使用される場合、用語「イノシトールリン酸」とは、イノシトール環および1、2、3、4、5もしくは6個のホスフェート基、またはその組合せを有する化合物を意味する。ミオイノシトールヘキサホスフェート(IP6)は、本発明の模範的なイノシトールリン酸である。いくつかの態様では、イノシトールリン酸は、純粋である(例えば、イノシトールリン酸種の99%超は、同種、例えば、IP6である)または実質的に純粋である(例えば、イノシトールリン酸種の少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%は、同種、例えば、IP6である)。いくつかの態様では、イノシトールリン酸は、例えば、IP1、IP2、IP3、IP4、IP5、およびIP6の可変量を含む、混合物である。いくつかの態様では、イノシトールリン酸は、ラセミ混合物である。
【0052】
[0067]本発明はまた、イノシトールリン酸類似体が考えられる。本明細書で使用される場合、「イノシトールリン酸類似体」とは、イノシトール環(すなわち、5または7個の炭素)に関して異なる数の炭素を持つ環を有し、かつ/または少なくとも1つのスルフェートまたはチオホスフェート基を有する、化合物を意味する。例えば、5、6、または7個の炭素および少なくとも1つのホスフェート、スルフェート、またはチオホスフェート基を有する環を含む、化合物は、イノシトールリン酸類似体であると考えられるはずである。
【0053】
[0068]本明細書で使用される場合、用語「イノシトールリン酸誘導体」とは、イノシトールリン酸またはイノシトールリン酸類似体を意味し、これは、異種構造の部分(すなわち、ホスフェート、スルフェート、またはチオホスフェートでない基)を含有する。例えば、ポリエチレングリコール異種構造の部分を含むイノシトールペンタスルフェート、またはポリグリセリン異種構造の部分を含むミオイノシトールヘキサホスフェートは、イノシトールリン酸誘導体であると考えられるはずである。
【0054】
[0069]本明細書で使用される場合、用語「異種構造の部分」とは、ホスフェート、スルフェート、またはチオホスフェートでなく、かかる化合物に望ましい特性を与える、式Iの化合物中の基を意味する。例えば、異種構造の部分(例えば、ポリグリセリンまたはポリエチレングリコール)は、化合物の溶解性を増加させることができる。いくつかの態様では、異種構造の部分は、複数の望ましい特性を与えることができる(例えば、ポリグリセリンおよびポリエチレングリコールは、化合物の溶解性を増加させ、化合物のクリアランス速度を減少させることができる)。
【0055】
[0070]本明細書で使用される場合、用語「本発明のイノシトールリン酸」および「本発明のイノシトールリン酸」は、「イノシトールリン酸」、「イノシトールリン酸類似体」、「イノシトールリン酸誘導体」およびそれらの組合せを包含する総称である。いくつかの態様では、用語「本発明のイノシトールリン酸」は、「イノシトールリン酸」、「イノシトールリン酸類似体」、および「イノシトールリン酸誘導体」またはその組合せ、および少なくとも1種の追加の治療薬を含む、組成物を包含する。いくつかの態様では、追加の治療薬は、シロスタゾール、ペントキシフィリンまたはその組合せを含む。
【0056】
[0071]5、6、または7個の炭素および少なくとも1つのスルフェート、またはチオホスフェート基を有するが、ホスフェート基を有さない環を含む本発明の化合物は、本発明の文脈において、「イノシトールリン酸類似体」または「イノシトールリン酸類似体」であると考えられるはずである。したがって、用語「本発明のイノシトールリン酸」は、ホスフェート含有化合物だけでなく、5、6、または7個の炭素および少なくとも1つのスルフェート、またはチオホスフェート基を有する環を含むホスフェート基を有さない化合物を包含する。
【0057】
[0072]本発明の代表的なイノシトールリン酸は、
図1~6に示される。
図3は、イノシトールリン酸の多数の例を示し、それらのすべては、ミオ立体構造の形態である。ミオイノシトールの他に、イノシトールの他の自然起源の立体異性体は、シロ-、ムコ-、1D-カイロ-、1L-カイロ-、ネオ-イノシトール、アロ-、エピ-、およびシス-イノシトールである。これらの名称が示す通り、1L-および1D-カイロイノシトールは、イノシトール鏡像異性体の唯一の対であるが、互いに鏡像異性体であり、ミオイノシトールの鏡像異性体ではない。本開示に示される任意の模範的なイノシトールリン酸は、示される代表的な立体構造に限定されないことが理解されるものである。したがって、例えば、
図3に示される例は、シロ-、ムコ-、1D-カイロ-、1L-カイロ-、ネオ-イノシトール、アロ-、エピ-、およびシス-イノシトール立体構造で、対応する等価物をやはり包含するはずである。その大部分の安定性のある立体構造において、ミオイノシトール異性体は、ヒドロキシルの最大数を、エクアトリアルな位置に移動する、いす形配座をとり、これらは、互いに最も遠く離れる。この立体構造では、天然のミオ異性体は、6つのヒドロキシルのうち5つ(第1、第3、第4、第5、および第6)が、エクアトリアルである一方、第2のヒドロキシル基が、軸性である構造を有する。
【0058】
【0059】
2.1.イノシトールリン酸、類似体および誘導体
[0073]いくつかの態様では、一般式Iの化合物のR1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1つは、独立に、H、-X、-OX、-NHX、-NX2、-SX、-OSO3HX、-OSO3X2または式II、式IIIもしくは式IVの化合物を表し、各Xは、独立に、H、C1~30アルキル、C2~30アルキニルまたはCy1を表し、C1~30アルキル、C2~30アルケニルおよびC2~30アルキニルは、独立に、1つまたは複数のR14で場合によっては置換され、Cy1は、1つまたは複数のR15により場合によっては置換され;Cy1は、3-~10-員の炭素環または複素環を表し、これは、飽和、部分的に不飽和または芳香族であり得、前記複素環は、O、SおよびNの間から選択される、1~4個のヘテロ原子を有し、前記環は、任意の利用可能なC原子を介して分子の残りに結合することができ、Cy1は、1~4個の5-または6-員の環に場合によっては縮合され、それぞれ飽和、部分的に不飽和または芳香族、炭素環式または複素環式であり、前記縮合複素環は、O、NおよびSの間から選択される1または2個のヘテロ原子を含有することができ;各R13は、独立に、H、C1~30アルキル、-NH2、-NHC1~30アルキルまたはN(C1~30アルキル)2を表し、各C1~30アルキルは、独立に、1つまたは複数のハロゲン、-OH、-CNおよび-NO2基で場合によっては置換され;各R14およびR15は、独立に、-OH、C1~30アルコキシ、C1~30アルキルチオニル(alkyithionyl)、C1~30アシルオキシ、ホスフェート、ハロゲン、トリハロC1~30アルキル、ニトリルアジドを表す。
【0060】
[0074]いくつかの言外の態様では、各Xは、独立に、H、C1~30アルキルまたはCy1を表し、C1~30アルキルは、1つまたは複数のR14によって場合によっては置換され、Cy1は、1つまたは複数のR15によって場合によっては置換され;各R14およびR15は、独立に、-OH、C1~30アルコキシ、C1~30アルキルチオニル、C1~30アシルオキシ、ホスフェート、ハロゲン、トリハロC1-30アルキル、ニ
トリルまたはアジドを表す。いくつかの態様では、各Xは、H、C1~30アルキルまたはCy1を表す。いくつかの態様では、各Xは、Hを表す。
【0061】
[0075]いくつかの追加の態様では、R1、R3、R5、R7、R9およびR11基のうち少なくとも1つは、独立に、式II、式IIIまたは式IVの化合物を表し、各R13は、独立に、H、C1~30アルキル、-NH2、-NHC1~30アルキルまたは-N(C1~30アルキル)2を表し、各C1~30アルキルは、独立に、1つまたは複数のハロゲン、-OH、-CNおよび-NO2基により場合によっては置換され;R2、R4、R6、R8、R10およびR12は、独立に、Hを表す。
【0062】
[0076]さらなる態様では、R1、R3、R5、R7、R9およびR11は、独立に、式II、式III、または式IVの化合物を表し、各R13は、独立に、HまたはC1~30アルキルを表し、各C1~30アルキルは、独立に、1つまたは複数のハロゲン、-OH、-CNおよび-NO2基により場合によっては置換され;R2、R4、R6、R8、R10およびR12は、独立に、Hを表す。
【0063】
[0077]追加の態様では、R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1つは、式II、式III、または式IVの化合物を表し、各R13は、独立に、HまたはC1~30アルキルを表す。別の態様では、R1、R3、R5、R7、R9 およびR11のうち少なくとも1つは、式II、式IIIまたは式IVの化合物を表し、各R13は、Hを表す。
【0064】
[0078]詳細な態様では、化合物は、イノシトールヘキサホスフェート(IP6)である。他の態様では、本化合物は、イノシトールモノホスフェート(IP1)、イノシトールジホスフェート(IP2)、イノシトールトリホスフェート(IP3)、イノシトールテトラホスフェート(IP4)、またはイノシトールペンタホスフェート(IP5)である。いくつかの態様では、化合物は、IP1、IP2、IP3、IP4、IP6およびIP6の組合せを含む。いくつかの態様では、IP6は、in vivoで脱リン酸化により他のイノシトールリン酸(IP5、IP4、IP3、IP2、IP1)を形成することができる。イノシトールは、分子の任意の異性体の形態、例えば、ミオイノシトールを意味すると考えられる。
【0065】
[0079]いくつかの態様では、本発明における使用のための化合物は、式I[式中、
[0080]R7は、OSO3
-であり、R9、R5、R3、R1およびR11は、OPO3
2-、OPSO2
2-またはOSO3
-から独立に選択され;
[0081]R9、R5およびR1は、OPO3
2-であり、R7、R3およびR11は、OSO3
-であり;
[0082]R9、R5およびR1は、OSO3
-であり、R7、R3およびR11は、OPO3
2-であり;
[0083]R3、R1およびR11は、OSO3
-であり、R9、R7およびR5は、OPO3
2-であり;
[0084]R3、R1およびR11は、OPO3
2-であり、R9、R7およびR5は、OSO3
-であり;
[0085]R7およびR1は、OPO3
2-であり、R9、R5、R3、およびR11は、OPO3
2-であり;
[0086]R7およびR1は、OSO3
-であり、R9、R5、R3、およびR11は、OPO3
2-であり;
[0087]R7およびR5は、OPO3
2-であり、R9、R3、R1、およびR11は、OSO3
-であり;または、
[0088]R7およびR5は、OSO3
-であり、R9、R3、R1、およびR11は、O
PO3
2-である]のものである。
【0066】
[0089]本発明のイノシトールリン酸はまた、生理学的脱リン酸化(またはスルフェートもしくはチオホスフェート基を含む化合物の場合には、脱硫酸化もしくは脱チオ硫酸化(dethiosulfation))中に、代謝物として産生される化合物を包含する。
【0067】
[0090]いくつかの態様では、本明細書中に開示される方法による用量で投与される化合物は、加水分解または他の細胞内もしくは細胞外プロセシングを行った後、本発明のイノシトールリン酸を生成するプロドラッグである。
【0068】
[0091]本発明のイノシトールリン酸は、本明細書中に開示されるイノシトールリン酸、イノシトールリン酸類似体、およびそれらの誘導体の任意の組合せをやはり包含する。
[0092]式Iのすべての化合物は、C-O-PまたはC-O-S結合を有する基を含有し、これは、カルシウム含有結晶への親和性およびin vivoで加水分解される十分に不安定な結合を化合物に付与し、それによって、カルシウム含有結晶、例えば、骨中のヒドロキシアパタイト(HAP)への不可逆的結合を防止する。そのような不可逆的結合が起きてしまったなら、身体により加水分解することができないP-C-P結合を含有するため長期投与される場合のビスホスホネートがそうであるように、骨リモデリングに対して悪影響を与えたはずである。前記C-O-P結合を含有しないリン酸化化合物、例えば、ピロリン酸などである他の極端な場合に、そのP-O-P結合は、それらが、腸管中であまりに容易に加水分解されることを意味し、したがって、非経口投与のみが、実現可能であることを意味する。C-O-P結合、C-O-S結合、およびそれらの組合せを有する、本発明の化合物は、その有効性、および身体が、前記化合物を排出し、したがって、副作用のリスクを低下させるための機序を示す(例えば、P-C-P結合を有する化合物は、in vivoで、それにより、例えば、骨リモデリングに影響を及ぼす、数カ月の半減期を示し得る)という事実による適切な中間点を表す。
【0069】
[0093]本発明の文脈中の用語「アルキル」または「アルキル基」とは、飽和炭化水素部分を意味し、これは、直鎖、分枝鎖、環状または直線状もしくは分枝状側鎖を有する環状であり得る。用語アルキルには、部分的に不飽和炭化水素、例えば、プロペニルなどが含まれる。例としては、メチル、エチル、n-もしくはイソブチル、n-もしくはシクロヘキシルである。用語アルキルは、ヘテロ原子により連結されるまたは架橋されるアルキル基まで拡張することができる。本発明の文脈中のヘテロ原子は、窒素(N)、硫黄(S)および酸素(O)である。
【0070】
[0094]「アミン官能基」または「アミン基」は、NR’R’’官能基であり、R’およびR’’は、水素およびC1~C5アルキルから独立に選択される。いくつかの態様では、R’およびR’’は、水素およびC1~C3アルキルから選択される。「ヒドロキシ官能基」または「ヒドロキシ基」は、OHである。
【0071】
[0095]「チオール官能基」または「チオール基」は、SHである。「カルボン酸官能基」または「カルボン酸基」は、COOHまたはその陰イオン、COO-である。「カルボン酸アミド」は、CONR’R’’であり、R’およびR’’は、独立に、上記で示した意味を有する。「スルホン酸」は、SO3Hである。「スルホン酸アミド」は、SO2NR’R’’であり、R’およびR’’は、独立に、上記で示した意味を有する。
【0072】
[0096]本発明の文脈中の「C1~C3アルキル」とは、1、2、または3個の炭素原子を有する、飽和の直鎖状もしくは分枝状炭化水素を意味し、1つの炭素-炭素結合は、不飽和であり得、1つのCH2部分は、酸素(エーテル架橋)と交換することができる。C1~C3アルキルについての限定されない例は、メチル、エチル、プロピル、プロパ-2
-エニルおよびプロパ-2-イニルである。
【0073】
[0097]本発明の文脈中の「C1~C5アルキル」とは、1、2、3,4または5個の炭素原子を有する、飽和の直鎖状もしくは分枝状炭化水素を意味し、1つまたは2つの炭素-炭素結合は、不飽和であり得、1つのCH2部分は、酸素(エーテル架橋)と交換することができる。C1~C5アルキルについての限定されない例には、上記C1~C3アルキルについて得られた例、さらに、n-ブチル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、3-メチルブタ-2-エニル、2-メチルブタ-3-エニル、3-メチルブタ-3-エニル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ブタ-3-エニル、ブタ-3-イニルおよびペンタ-4-イニルが含まれる。本発明の文脈中の「C3~C10アルキル」とは、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有する、飽和の直鎖状もしくは分枝状炭化水素を意味し、1、2または3つの炭素-炭素結合は、不飽和であり得、1つのCH2部分は、酸素(エーテル架橋)と交換することができる。
【0074】
[0098]基または基の一部としての用語「C1~30アルキル」は、その中でもとりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシルおよびドデシル基を含めた、1~30個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。
【0075】
[0099]用語「C2~30アルケニル」とは、2~30個の炭素原子を含有する直鎖または分枝アルキル鎖を意味し、1つまたは複数の二重結合をやはり含有する。例には、その中でもとりわけ、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニルおよび1,3-ブタジエニルが含まれる。
【0076】
[0100]用語「C2~30アルキニル」とは、2~30個の炭素原子を含有する直鎖または分枝アルキル鎖を意味し、1つまたは複数の三重結合をまた含有する。例には、その中でもとりわけ、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニルおよび1,3-ブタジイニルが含まれる。
【0077】
[0101]「Cy1基」とは、飽和、部分的に不飽和または芳香族であり得、任意の利用可能なC原子によって、分子の残りに結合される、3-~10-員の炭素環または複素環を意味する。複素環である場合、Cy1は、N、O、およびSの間から選択される、1~4個のヘテロ原子を含有する。さらに、Cy1は、4、5-もしくは6員までの炭素環または複素環で、場合によっては縮合することができ、これは、飽和、部分的に不飽和または芳香族であり得る。縮合環が、複素環である場合、前記環は、N、O、およびSの間から選択される1または2個のヘテロ原子を含有する。Cy1の例には、その中でもとりわけ、フェニル、ナフチル、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アゼチジニルおよびアジリジニルが含まれる。
【0078】
[0102]基または基の一部としての「C1~30アルコキシ基」とは、-OC1~30アルキル基を意味し、C1~30アルキル部分は、上記と同じ意味を有する。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシが含まれる。
【0079】
[0103]基または基の一部としての「C1~30アルキルチオニル基」とは、-SOC1~30アルキル基を意味し、C1~30アルキル部分は、上記と同じ意味を有する。例には、メチルチオニル、エチルチオニル、プロピルチオニル、イソプロピルチオニル、ブチルチオニル、イソブチルチオニル、sec-ブチルチオニルおよびtert-ブチルチオニルが含まれる。
【0080】
[0104]基または基の一部としての「C1~30アシルオキシ基」とは、-COC1~30アルキル基を意味し、C1~30アルキル部分は、上記と同じ意味を有する。例には、アセチル、エタノイル、プロパノイルおよび2,2-ジイソプロピルペンタノイルが含まれる。
【0081】
[0105]「ハロゲン基」またはその略語ハロとは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。
[0106]「トリハロC1~30アルキル基」とは、上記で定義される通り3個のハロゲン基による、C1~30アルキル基の3個の水素原子の置換から生じる基を意味する。例には、その中でもとりわけ、トリフルオロメチル、トリブロモメチル、トリクロロメチル、トリヨードメチル、トリフルオロエチル、トリブロモエチル、トリクロロエチル、トリヨードエチル、トリブロモプロピル、トリクロロプロピルおよびトリヨードプロピルが含まれる。
【0082】
[0107]「-NHC1~30アルキル基」とは、上記で定義される通り、C1~30アルキル基による、-NH2基の1個の水素原子の置換から生じる基を意味する。例には、その中でもとりわけ、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンおよびペンチルアミンが含まれる。
【0083】
[0108]「-N(C1~30アルキル基」とは、上記で定義される通り、C1~30アルキル基による、-NH2基の2個の水素原子の置換から生じる基を意味する。例には、その中でもとりわけ、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンおよびジイソブチルアミンが含まれる。
【0084】
[0109]「1つまたは複数により場合によっては置換される」という表現は、基が、1つまたは複数の(例えば、1、2、3または4個の)置換基により置換することができる可能性を表す。いくつかの態様では、基が、十分な、利用可能な置換することができる位置を有するなら、その基は、1、2または3個の置換基、さらに、1または2個の置換基により置換することができる。存在する場合、置換基は、同じであっても異なっていてもよく、任意の利用可能な位置することができる。
【0085】
[0110]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸は、WO2017098033およびWO2017098047、ならびにUS US9358243に開示される化合物を含む。いくつかの態様では、用いられる本発明のイノシトールリン酸は、
図1~6に開示される化合物を含む。
【0086】
[0111]いくつかの態様では、イノシトールリン酸、イノシトールリン酸類似体、およびそれらの誘導体は、式(VIII)、式(IX)、または式(X)
【0087】
【0088】
の化合物を含む。
[0112][式中、各Xは、独立に、OPO3
2-、OPSO2
2-、またはOSO3
-から選択され;Zは、1~3個の炭素および/またはヘテロ原子を含み、場合によっては、X基を含む、アルキル鎖であり、Xはまた、OPO3
2-、OPSO2
2-、またはOSO3
-からやはり選択され;R1は、場合により用いられる異種構造の部分である(以下のセクション2.2.を参照のこと)]。いくつかの態様では、分子は、2つ以上の、異種構造の部分を含み、その場合には、異種構造の部分は、同じでも異なっていてもよい。
【0089】
[0113]いくつかの態様では、Zは、式(VIII)に用いられる通り、CH2、CHX、CHR1、CXR1、CH2-CH2、CH2-CHX、CHX-CHX、CHR1-CHX、CXR1-CHX、CHR1-CH2、CXR1-CH2、CHR1-CHOH、CH2-CH2-CH2、CH2-O-CH2、CHOH-CH2-CH2、CHOH-CHOH-CHR1、CHOH-CHR1-CHOH、CHX-CH2-CH2、CH2-CHX-CH2、CHX-CHX-CH2、CHX-CH2-CHXまたはCHX-CHR1-CHXであり、Xは、独立に、OPO3
2-、OPSO2
2-、およびOSO3
-から選択される。
【0090】
[0114]いくつかの態様では、Zは、式(VIII)に用いられる通り、(CHX)pCHX(CHX)qであり;pおよびqは、それぞれ互いに独立に、0~2までの値を有し、但し、(p+q)は、0、1または2の値を有し;1つまたは2つまたは3つのXは、異種構造の部分(例えば、PEG)であり得、残りのXは、OPO3
2-、OPSO2
2-、およびOSO3
-から独立に選択される。いくつかの態様では、ZのXがすべてOPO3
2-であるとは限らない。いくつかの態様では、ZのXがすべてOSO3
-であるとは限らない。
【0091】
[0115]いくつかの態様では、式(VIII)、式(IX)、または式(X)の化合物中のXの1、2、3個は、異種構造の部分であり得、残りのXは、OPO3
2-、OPSO2
2-、またはOSO3
-から独立に選択することができる。
【0092】
[0116]上記の式(VII)は、5-員、6員、または7-員のアルキル環が記載され、場合により用いられる1つまたは複数の、異種構造の部分は、環を形成する炭素原子のうちの1個に結合される。
【0093】
[0117]いくつかの態様では、例えば、本明細書中に開示される方法および組成物において用いられる、イノシトールリン酸、イノシトールリン酸類似体、およびそれらの誘導体は、式(XI)または式(XII)の化合物を含む。
【0094】
【0095】
[0118][式中、
[0119]X2は、OSO3
-であり、X1、X3、X4、X5およびX6は、OPO3
2-、OPSO2
2-またはOSO3
-から独立に選択され;
[0120]X1、X3およびX5は、OPO3
2-であり、X2、X4およびX6は、OSO3
-であり;
[0121]X1、X3およびX5は、OSO3
-であり、X2、X4およびX6は、OPO3
2-であり;
[0122]X4、X5およびX6は、OSO3
-であり、X1、X2およびX3は、OPO3
2-であり;
[0123]X4、X5およびX6は、OPO3
2-であり、X1、X2およびX3は、OSO3
-であり;
[0124]X2およびX5は、OPO3
2-であり、X1、X3、X4、およびX6は、OPO3
2-であり;
[0125]X2およびX5は、OSO3
-であり、X1、X3、X4、およびX6は、OPO3
2-であり;
[0126]X2およびX3は、OPO3
2-であり、X1、X4、X5、およびX6は、OSO3
-であり;または、
[0127]X2およびX3は、OSO3
-であり、X1、X4、X5、およびX6は、OPO3
2-である]。
【0096】
[0128]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸またはそれらの代謝物は、US9612250に開示された方法を用いて、検出および/または定量化することができる。US8377909、US8778912、およびUS20070066574もまた参照のこと。
【0097】
[0129]本明細書中に開示される化合物は、製薬技術において一般に用いられる任意の形態で存在することができる。詳細な態様には、それだけには限らないが、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、遊離酸、または前述の混合物が含まれる。他の薬学的に許容される塩は、当業者に公知であり、容易に得ることができる。詳細な態様では、本発明の第1の態様において定義される通り用いるための化合物は、ナトリウム塩、例えば、イノシトールヘキサホスフェート六ナトリウムである。
【0098】
[0130]本発明はまた、イノシトール異性体の形態のいずれかにおける、特に、ミオイノシトールにおける、イノシトールモノホスフェート、イノシトールジホスフェート、イノシトールトリホスフェート、イノシトールテトラホスフェートおよびイノシトールペンタホスフェートのナトリウム塩が考えられる。本発明における使用のための化合物の詳細な例は、ミオイノシトールヘキサホスフェート六ナトリウム塩である。ナトリウム塩は、得られたIP6配合物の製造および得られたIP6配合物の不純物のレベルに関して、いくつかの利点を提供する。
【0099】
2.2.異種構造の部分
[0131]いくつかの態様では、本発明は、上記で定義された一般式Iの化合物に関し、異種構造の部分は、式Vの基、式VIの基および式VIIの基:
【0100】
【0101】
から選択され、
[0132]nは、2~200の範囲の整数であり、R13は、H、メチルまたはエチルから選択される。
【0102】
[0133]いくつかの態様では、本発明において使用のための化合物、例えば、本発明のイノシトールリン酸誘導体は、式V、VIおよびVIIの基から選択される1つまたは複数の基を含むことができる。これらの基は、かかる1つまたは複数の、異種構造の部分が欠けている対応する分子に関して有利な特性を与える異種構造の部分である。異種構造の部分またはその組合せによりイノシトールリン酸またはイノシトールリン酸類似体に与えることができる前記有利な特性の例には、それだけには限らないが、その中でもとりわけ、(a)溶解性の増加、(b)分解または代謝率の低下、(c)血漿半減期の増加、(d)肝臓代謝率の低下(e)クリアランス速度の減少、(f)毒性の減少、(g)易刺激性の低下および(h)副作用の減少が含まれる。これらの有利な特性は、過度の実験なしで、当技術分野で公知の方法を用いて、評価するまたは定量化することができる。
【0103】
[0134]いくつかの態様では、異種構造の部分は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリグリセリン(PG)である。したがって、いくつかの態様では、本発明における使用のための化合物は、異種構造の部分を含む、上記で開示された態様において定義された化合物のうちのいずれかである、すなわち、式Iの基のうちの1つは、式V、VIおよびVIIの基から選択される。いくつかの態様では、異種構造の部分は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。いくつかの態様では、異種構造の部分は、ポリエチレングリコールからなる、すなわち、本発明の第1の態様による式Iの化合物のR1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1つは、式Vの基である。あるいは、異種構造の部分は、ポリグリセリンを含む。いくつかの態様では、異種構造の部分は、ポリグリセリンで構成される、すなわち、本発明の第1の態様による式Iの化合物のR1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1つは、式VIまたはVIIの基から選択される。他の態様では、本発明の第1の態様による式Iの化合物は、式VIま
たはVIIの基、例えば、2種のPEG(式Vの基)、3種のPEG、3種のポリグリセリン(式VIの基)、3種のPG、または任意のそれらの組合せ、例えば、1種のPEGおよび1種のPG、または2種のPEGおよび1種のポリグリセリンから選択される1、2、3つの基を含有する。いくつかの態様では、式Iの残基のすべて(すなわち、V、VIおよびVIIから選択される基ではないもの)は、II、IIIおよびIVから選択される基である。いくつかの態様では、本発明の第1の態様による式Iの化合物は、式VIまたはVIIの基から選択される2つの基、例えば、2種のPEG(式Vの基)または3種のポリグリセリン(式VIの基)または1種のPEGおよび1種のポリグリセリンを含有し、残基は、式IIのすべての基である。いくつかの態様では、式Iの化合物のR3およびR7は、式V、VIおよびVIIの基から選択される。いくつかの態様では、式Iの化合物のR3およびR7は、式Vの基であり、式Iの化合物のR1、R5、R9およびR11は、式IIの基である。
【0104】
[0135]式V、VIおよびVIIの基は、R13=H、メチルまたはエチルを有し、nは、2~200までの整数である。いくつかの態様では、R13=Hである。詳細な態様では、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17,18,19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、189、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200である。
【0105】
[0136]いくつかの態様では、nは、2~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~110、110~120、120~130、130~140、140~150、150~160、160~170、170~180、180~190、または190~200である。
【0106】
[0137]いくつかの特定の態様では、nは、2~200、2~20、10~30、または9~45までの値を有する。
[0138]いくつかの態様では、PEGは、分枝PEGである。分枝PEGは、中心核基から発出する3~10個のPEG鎖を有する。
【0107】
[0139]いくつかの態様では、PEG部分は、単分散ポリエチレングリコールである。本発明の文脈において、単分散ポリエチレングリコール(mdPEG)は、単一の、規定された鎖長および分子量を有するPEGである。mdPEGは、通常、クロマトグラフィーによる重合混合物からの分離により生成される。いくつかの式では、単分散PEG部分は、略語mdPEGが与えられる。いくつかの態様では、PEGは、Star PEGであ
る。Star PEGは、中心核基から発出する10~100個のPEG鎖を有する。
【0108】
[0140]いくつかの態様では、PEGは、Comb PEGである。Comb PEGは、ポリマー主鎖に普通は移植される複数のPEG鎖を有する。
[0141]いくつかの態様では、PEGは、モル質量が、100g/mol~3000g/mol、特に、100g/mol~2500g/mol、さらに詳細には、およそ100g/mol~2000g/molである。いくつかの態様では、PEGは、モル質量が、200 g/mol~3000g/mol、特に、300 g/mol~2500g/mol、さらに詳細には、およそ400 g/mol~2000g/molである。
【0109】
[0142]いくつかの態様では、PEGは、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG2600、PEG2700、PEG2800、PEG2900、またはPEG3000である。詳細な一態様では、PEGは、PEG400である。別の詳細な態様では、PEGは、PEG2000である。
【0110】
[0143]他の詳細な態様では、式Iの化合物のR3および/またはR7は、式Vの基であり、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数である。他の詳細な態様では、式Iの化合物のR3およびR7は、式Vの基であり、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基である。他の詳細な態様では、式Iの化合物は、R3およびR7=式Vの基[式中、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基である]を有するナトリウム塩である。
【0111】
[0144]他のいくつかの態様では、異種構造の部分は、式((R3-O-(CH2-CHOH-CH2O)n-)[式中、R3は、水素、メチルまたはエチルであり、nは、3~200までの値を有する]により記載されるポリグリセリン(PG)である。いくつかの態様では、nは、値が3~20までである。いくつかの態様では、nは、値が10~30までである。これらの態様のいくつかの代替では、nは、値が9~45までである。いくつかの態様では、異種構造の部分は、式(R3-O-(CH2-CHOR5-CH2-O)n-)[式中、R5は、水素である]により記載される分枝ポリグリセリンまたは式(R3-O-(CH2-CHOH-CH2-O)n-)[式中、R3は、水素、メチルまたはエチルである]により記載される直鎖グリセロールである。いくつかの態様では、異種構造の部分は、式(R3-O-(CH2-CHOR5-CH2-O)n-)[式中、R5は、水素である]により記載される超分枝ポリグリセリンまたは式(R3-O-(CH2-CHOR6-CH2-O)n-)[式中、R6は、水素である]により記載されるグリセロール鎖または式(R3-O-(CH2-CHOR7-CH2-O)n-)[式中、R7は、水素である]により記載されるグリセロール鎖または式(R3-O-(CH2-CHOH-CH2-O)n-)[式中、R3は、水素、メチルまたはエチルである]により記載される直鎖グリセロールである。超分枝グリセロールおよびその合成のための方法は、当技術分野で公知である。Oudshorn Mら、Biomaterials 2006年;27巻:5471~5479、Wilms Dら、Acc Chem Res 2010年;43巻:129~141およびその中で引用される参照文献を参照のこと。
【0112】
[0145]いくつかの態様では、PGは、モル質量が、100g/mol~3000g/m
ol、特に、100g/mol~2500g/mol、さらに詳細には、およそ100g/mol~2000g/molである。いくつかの態様では、PGは、モル質量が、200g/mol~3000g/mol、特に、300g/mol~2500g/mol、さらに詳細には、およそ400g/mol~2000g/molである。
【0113】
[0146]いくつかの態様では、PGは、PG100、PG200、PG300、PG400、PG500、PG600、PG700、PG800、PG900、PG1000、PG1100、PG1200、PG1300、PG1400、PG1500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG1600、PG1700、PG1800、PG1900、PG2000、PG2100、PG2200、PG2300、PG2400、PG2500、PG2600、PG2700、PG2800、PG2900、またはPG3000である。詳細な一態様では、PGは、PG400である。別の詳細な態様では、PGは、PG2000である。
【0114】
[0147]他の詳細な態様では、式Iの化合物のR3および/またはR7は、式VIの基であり、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数である。他の詳細な態様では、式Iの化合物のR3およびR7は、式VIの基であり、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基である。他の詳細な態様では、式Iの化合物は、R3およびR7=式VIの基[式中、R13は、Hであり、nは、9~45までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基である]を有するナトリウム塩である。
【0115】
3.医薬組成物
[0148]別の態様では、本発明はまた、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物を含む医薬組成物を意味する。いくつかの態様では、医薬組成物は、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤または担体と共に、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物を含む。これらの医薬組成物は、組織の灌流および/または酸素供給の増加を必要とする対象における、それらの増加における使用のためである。いくつかの態様では、これらの医薬組成物は、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態の治療または予防における使用のためである。いくつかの態様では、本発明の医薬組成物は、PADもしくはCLIの治療または予防のために用いられる。
【0116】
[0149]本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」とは、医薬組成物の要素の吸収を助ける、前記要素を安定化させる、組成物を活性化させるまたは組成物の調製を助ける物質を意味する。したがって、非経口配合物において用いられる賦形剤の例には、それだけには限らないが、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、メタクレゾール、チメロサール)、共-溶媒(例えば、エタノール)、緩衝液およびpH調整因子(例えば、炭酸、クエン酸、リン酸溶液)が含まれる。
【0117】
[0150]賦形剤の場合のように、「薬学的に許容されるビヒクル」は、そこに含まれる構成成分のうちのいずれかを、決定された体積または重量まで希釈するために、組成物中で用いられる物質である。薬学的に許容されるビヒクルは、不活性物質または本発明の医薬組成物を含む要素のうちのいずれかに類似の作用を有する物質である。前記ビヒクルの役割は、他の要素の取込みを可能にすること、より良い投薬および投与を可能にすることまたは組成物にコンシステンシーおよび形状をもたらすことである。
【0118】
[0151]医薬組成物は、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物のおよそ1%~およそ95%を占めることができる。いくつかの態様では、本発明の医薬組成物は、例えば、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物のおよそ20
%~およそ90%、または20%~80%、または20%~70%、または20%~60%、または20%~50%、または30%~90%、または40%~90%、または50%~90%、または60%~90%、または30%~70%を占めることができる。
【0119】
[0152]いくつかの態様では、医薬組成物の各用量中の本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェートまたはその類似体もしくは誘導体、またはその組合せ)の濃度は、約12.5mM~約135mMである。本態様のいくつかのバージョンでは、医薬組成物の各用量中の本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェートまたはその類似体もしくは誘導体、またはその組合せ)の濃度は、約25mM、約39mMまたは約114mMである。
【0120】
[0153]非経口投与に適した医薬組成物の配合物は、(例えば、滅菌水または減菌等張食塩水のような)薬学的に許容される担体と混合した、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物を含む。かかる配合物は、急速投与もしくは継続投与に適した形態で調製する、包装するまたは販売することができる。注射用配合物は、単位剤形で、例えば、アンプルの形態でもしくは保存剤を含有する多回投与容器の形態で、調製する、包装するまたは販売することができる。非経口投与用の配合物には、それだけには限らないが、懸濁液、溶液、油性もしくは水性のビヒクル中の乳剤、パスタ剤、および植込み型徐放または生分解性配合物が含まれる。かかる配合物は、それだけには限らないが、懸濁化剤、安定化剤、または分散化剤を含めた、1種または複数の追加の成分をさらに含むことができる。
【0121】
[0154]いくつかの態様では、非経口投与用の配合物中で、有効な薬剤(例えば、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物)は、再溶解された組成物の非経口投与前に、適当なビヒクル(例えば、無菌の発熱物質なしの水)で再構成するための、乾燥(すなわち、粉末または顆粒)形態で提供される。
【0122】
[0155]医薬組成物は、無菌の注射可能な水性もしくは油性の懸濁液または溶液の形態で調製する、包装するまたは販売することができる。この懸濁液または溶液は、公知の技術分野に従って配合することができ、有効な薬剤(例えば、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物)の他に、追加の成分、例えば、本明細書中に記載される分散化剤、湿潤剤、または懸濁化剤を含むことができる。かかる無菌の注射用配合物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、水または1,3-ブタンジオール等を用いて、調製することができる。他の許容される希釈剤および溶媒には、それだけには限らないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および固定油、例えば、合成モノ-またはジ-グリセリドが含まれる。
【0123】
[0156]有用である、他の非経口(parentally)投与可能な配合物には、微結晶性の形態で、リポソーム製剤で、または生分解性ポリマー系の構成成分として、有効な薬剤(例えば、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物)を含むものが含まれる。
【0124】
[0157]徐放または移植用の組成物は、薬学的に許容されるポリマーまたは疎水性物質、例えば、乳剤、イオン交換樹脂、やや溶けにくいポリマー、またはやや溶けにくい塩等を含むことができる。
【0125】
[0158]本発明の医薬組成物の制御放出または徐放配合物は、従来技術を用いて作製することができる。いくつかの場合では、用いようとする剤形は、様々な割合で、所望の放出プロファイルを提供するために、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過性メンブレン、浸透圧系、多層コーティング、微小粒子、リ
ポソーム、もしくはミクロスフェアまたはその組合せを用いて、その中の1種もしくは複数の有効な薬剤の緩徐放出または制御-放出として提供することができる。本明細書中に記載されるものを含めて、当技術分野で公知の適当な制御-放出配合物は、本発明の医薬組成物を用いた使用のために、容易に選択することができる。したがって、制御-放出のために適応させる、非経口もしくは局所投与、例えば、注射可能な溶液、ゲル、クリーム、および軟膏などに適した、単一の単位剤形は、本発明により包含される。
【0126】
[0159]大部分の制御-放出医薬製品は、それらの非制御の相当物により達成されるものと比較して、療法を改善する共通のゴールを有する。理想的には、医学的処置における至適に設計された制御-放出製剤の使用は、最小限の期間で状態を治癒させるまたは管理するために使用する最小限の治療薬を特徴とする。制御-放出配合物の有利な点には、治療薬の活性の延長、投薬の回数の減少、および患者のコンプライアンスの向上が含まれる。さらに、制御-放出配合物は、作用の開始時間または他の特徴、例えば、治療薬の血液レベルに影響を与えるために用いることができ、したがって、副作用の発生に影響を与え得る。
【0127】
[0160]大部分の制御-放出配合物は、最初に治療薬のある量を放出させ、所望の治療効果を迅速にもたらし、治療薬の他方の量を徐々におよび連続的に放出して、延長期間にわたって、治療効果のこのレベルを維持するよう設計される。身体における治療薬のこの定常レベルを維持するために、治療薬は、身体から代謝されるまたは排出される治療薬の量を置き換える速度で、剤形から放出されなければならない。
【0128】
[0161]有効な薬剤の制御-放出は、様々な誘導因子、例えば、pH、温度、酵素、水、または他の生理学的条件または化合物により、刺激することができる。本発明の文脈中の用語「制御-放出構成成分」は、それだけには限らないが、ポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性メンブレン、リポソーム、もしくはミクロスフェアまたは有効な薬剤の制御-放出を容易にする、その組合せを含めた、1種または複数の化合物として、本明細書中で定義される。
【0129】
[0162]いくつかの態様では、本発明の配合物は、それだけには限らないが、短期の、迅速な消失、ならびに制御放出、例えば、徐放、遅延放出および拍動性放出配合物であり得る。
【0130】
[0163]用語徐放は、延長期間に対する治療に有効な薬剤の段階的な放出のために提供される、および必ずというわけではないが、延長期間にわたって治療薬の実質的に定常的な血液レベルをもたらし得る、治療薬配合物(例えば、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物))を意味する、その従来の意味で用いられる。その期間は、1カ月またはそれ以上もの間であり得、薬剤の同じ量が、急速投与の形態で投与される、より長い放出であるべきである。
【0131】
[0164]徐放の場合、本化合物は、化合物に徐放特性を提供する、適当なポリマーまたは疎水性物質と共に配合することができる。したがって、本発明の方法を用いるための化合物は、微小粒子の形態で、例えば、注射によるまたは移植によるウェーハもしくはディスクの形態で、投与することができる。いくつかの態様では、本発明の化合物は、単独でまたは徐放配合物を用いて、別の医薬品と組み合わせて、患者に投与される。
【0132】
[0165]用語遅延放出は、治療薬投与後いくつかの遅延の後、治療薬の初期の放出のために提供する治療薬配合物を意味するために、その従来の意味で、本明細書中で用いられる。遅延は、約10分~約12時間までであり得る。用語拍動性放出は、投与後に治療薬のパルスプラズマプロファイルをもたらすような方法で、治療薬を放出させる治療薬配合物
を意味するために、その従来の意味で、本明細書中で用いられる。用語即時放出は、投与直後に治療薬の放出のために提供する治療薬配合物を意味するために、その従来の意味で用いられる。
【0133】
[0166]本発明の組成物の追加の配合物および剤形には、US6340475、US6488962、US6451808、US5972389、US5582837、およびUS5007790;US20030147952、20030104062、20030104053、20030044466、20030039688、および20020051820;WO2003035041、WO2003035040、WO2003035029、WO200335177、WO2003035039、WO2002096404、WO2002032416、WO2001097783、WO2001056544、WO2001032217、WO1998055107、WO1998011879、WO1997047285、WO1993018755、およびWO1990011757に記載される剤形が含まれる。
【0134】
[0167]本発明による医薬品は、当技術分野で公知の方法により、特に、従来の混合、コーティング、造粒、溶解または凍結乾燥により製造される。
[0168]本発明はまた、所与の最も広い定義で、または医薬品として用いるために上記で示される態様のうちのいずれかで指定される通り、化合物、化合物の組合せ、または本発明の上記の態様のいずれかにおいて定義される医薬配合物を提供する。
【0135】
4.投与の方法および経路
[0169]いくつかの態様では、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、別の治療薬を用いて、一緒に、同時にまたは順次投与される。本態様のいくつかのバージョンでは、追加の治療薬は、シロスタゾール、ペントキシフィリンまたはその組合せを含む。
【0136】
[0170]いくつかの態様では、上記の態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物または組合せ製剤の有効量の投与が提供される。前記化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、非経口投与することができ、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、皮内、くも膜下腔内、硬膜外または脊髄または皮下投与することができる。非経口投与は、ボーラス投与によってでも静脈内注入よってでもよい。
【0137】
[0171]本発明の詳細な態様では、ミオイノシトールヘキサホスフェート(またはミオイノシトールヘキサホスフェート、例えば、SNF472等を含む配合物)は、静脈内注入によって投与される。別の本発明の詳細な態様では、ミオイノシトールヘキサホスフェートは、皮下投与される。別の態様では、イノシトールの誘導体またはミオイノシトールヘキサホスフェート誘導体、例えば、R3およびR7=式Vの基[式中、R13は、Hであり、nは、2~200までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基(またはそのナトリウム塩)である]を有する式Iの化合物は、静脈内注入によって投与される。別の態様では、イノシトールの誘導体またはミオイノシトールヘキサホスフェート誘導体、例えば、R3およびR7=式Vの基[式中、R13は、Hであり、nは、2~200までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基(またはそのナトリウム塩)である]を有する式Iの化合物は、皮下投与される。
【0138】
[0172]あるいは、化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、血液透析、血液ろ過、もしくは腹膜透析溶液または系の構成成分として投与することができる。
[0173]透析により治療された患者のある特定の場合において、投与の非常に適切な方法は、本発明のイノシトールリン酸を、患者に静脈内に直接注射する代わりに、透析装置によって(ろ過前またはろ過後)、本発明のイノシトールリン酸を投与(例えば、非ボーラ
ス型投与)することからなる。したがって、患者を透析する状態のまま、透析回路によって循環させるとき、および本発明のイノシトールリン酸を含有する血液が、身体に戻される場合、血液は、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)によって治療することができる。
【0139】
[0174]したがって、いくつかの態様では、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、血液透析中、患者に投与される。いくつかの態様では、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、血液透析中、好ましくは、それがろ過される前に、患者から抽出された血液に投与される(すなわち、治療薬は、透析回路中の患者のろ過されていない血液に投与される)。いくつかの態様では、本化合物は、イノシトールヘキサホスフェート、特に、ミオイノシトールヘキサホスフェートナトリウム塩またはそれらの誘導体、すなわち、R3およびR7=式Vの基[式中、R13は、Hであり、nは、2~200までの整数であり、R1、R5、R9およびR11は、式IIのすべての基(またはそのナトリウム塩)である]を有する式Iの化合物である。
【0140】
[0175]透析患者の場合では、透析装置による本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の投与によって、身体に戻す前に透析液で血液を平衡化させ;したがって、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)が、イオン化カルシウムを捕捉することができるが、この事実は、血液が、透析フィルターを通り、それにより、前記副作用を取り除き、有意に、安全性プロファイルを改善する場合に補償される。さらに、血液透析に併用して、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)を投与することによって、特に、血液透析中、患者から抽出されたろ過されていない血液に投与される場合、毒性の低下に関して、結果として有利に、化合物の用量を減少させ、有害な副作用を最小限にすることが可能になる。
【0141】
[0176]いくつかの態様では、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物または組合せ製剤は、透析治療前にまたは透析治療後に血液透析で治療されている患者に投与される。
【0142】
[0177]一般に、本明細書中に開示される方法に従って投与される、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の有効投与量は、例えば、関係する化合物の相対的有効性、治療される障害の重症度、ならびに対象の種および重量に依存する。いくつかの態様では、いくつかの種(例えば、ヒト)の対象のための本発明のイノシトールリン酸の有効投与量は、異なるまたは参照の種(例えば、ラット)に利用可能な実験データに基づいて算出することができる。
【0143】
[0178]したがって、例えば、用量20mg/kgのラット対象への投与を含むレジメンの一部として投与されるイノシトールミオ-ヘキサホスフェートの用量は、用量4.2mg/kgでの同じ有効な薬剤のヒト対象への投与と等価(すなわち、イノシトールミオ-ヘキサホスフェートの体重およそ70kgのヒト対象への全投与量300mg)であるはずである。同様に、ラット対象への用量40mg/kgは、用量8.4mg/kgでイノシトールミオ-ヘキサホスフェートを、前に定義したヒト対象への投与と等価であるはずである。用量は、対象の年齢、種、体重、体表面、腎クリアランス、性別、病理学的状態、投与の経路、1種または複数の他の薬物の併用投与、ならびに当技術分野で公知の方法を用いた、様々な生理的なおよび心理学的な因子に基づいて、調整することができる(Pan S.ら、Patient Prefer Adherence 2016年;10巻:549~560;Pai M、Pharmacotherapy 2012年;32巻:856~868;Hacker M.ら編、「Pharmacology:Prin
ciples and Practice」(Academic Press;Burlington、MA、USA、2009年)。本明細書で使用される場合、用語「mg/kg」とは、対象のボディマス(体重)キログラム当たりの本発明のイノシトールリン酸mgを意味する。
【0144】
[0179]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、イノシトールリン酸、イノシトールリン酸類似体、イノシトールリン酸誘導体、または本発明によるその組合せ約0.001mg/kg~約60mg/kgを含む。いくつかのさらなる態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.001mg/kg~約20.0mg/kg、または約20.0mg/kg~約40.0mg/kg、または約40.0mg/kg~約60.0mg/kgである。
【0145】
[0180]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.001mg/kg~約1.0mg/kgの間、約1.0mg/kg~約10.0mg/kgの間、約10.0mg/kg~約20.0mg/kgの間、約20.0mg/kg~約30.0mg/kg、約30.0mg/kg~約40.0mg/kg、約40.0mg/kg~約50.0mg/kg、または約50.0mg/kg~約60.0mg/kgである。
【0146】
[0181]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.001mg/kg~約0.5mg/kg、約0.5mg/kg~約1.0mg/kg、約1.0mg/kg~約5.0mg/kg、約5.0mg/kg~約10.0mg/kg、約10.0mg/kg~約15.0mg/kg、約15.0mg/kg~約20.0mg/kg、約20.0mg/kg~約25.0mg/kg、約25.0mg/kg~約30.0mg/kg、約30.0mg/kg~約35.0mg/kg、約35.0mg/kg~約40.0mg/kg、約40.0mg/kg~約45.0mg/kg、または約45.0mg/kg~約50.0mg/kgである。
【0147】
[0182]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.001mg/kg~約0.25mg/kg、約0.25mg/kg~約0.5mg/kg、約0.5mg/kg~約0.75mg/kg、約0.75mg/kg~約1.0mg/kg、約1.0mg/kg~約2.50mg/kg、約2.50mg/kg~約5.0mg/kg、約5.0mg/kg~約7.5mg/kg、約7.5mg/kg~約10.0mg/kg、約10.0mg/kg~約12.5mg/kg、約12.5mg/kg~約15.0mg/kg、約15.0mg/kg~約17.5mg/kg、約17.5mg/kg~約20.0mg/kg、約20.0mg/kg~約22.5mg/kg、約22.5mg/kg~約25.0mg/kg、約25.0mg/kg~約27.5mg/kg、約27.5mg/kg~約30.0mg/kg、約30.0mg/kg~約32.5mg/kg、約32.5mg/kg~約35.0mg/kg、約35.0mg/kg~約37.5mg/kg、約37.5mg/kg~約40.0mg/kg、約40.0mg/kg~約42.5mg/kg、約42.5mg/kg~約45.0mg/kg、約45.0mg/kg~約47.5mg/kg、約47.5mg/kg~約50.0mg/kg、約50.0mg/kg~約52.5mg/kg、約52.5mg/kg~約55.0mg/kg、約55.0mg/kg~約57.5mg/kg、または約57.5mg/kg~約60.0mg/kgである。
【0148】
[0183]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.25mg/kg~約60.0mg/kg、約0.5mg/kg~約60.0mg/kg、約0.75mg/kg~約60.0mg/kg、
約1.0mg/kg~約60.0mg/kg、約2.50mg/kg~約60.0mg/kg、約5.0mg/kg~約60.0mg/kg、約7.5mg/kg~約60.0mg/kg、約10.0mg/kg~約60.0mg/kg、約12.5mg/kg~約60.0mg/kg、約15.0mg/kg~約60.0mg/kg、約17.5mg/kg~約60.0mg/kg、約20.0mg/kg~約60.0mg/kg、約22.5mg/kg~約60.0mg/kg、約25.0mg/kg~約60.0mg/kg、約27.5mg/kg~約60.0mg/kg、約30.0mg/kg~約60.0mg/kg、約32.5mg/kg~約60.0mg/kg、約35.0mg/kg~約60.0mg/kg、約37.5mg/kg~約60.0mg/kg、約40.0mg/kg~約60.0mg/kg、約42.5mg/kg~約60.0mg/kg、約45.0mg/kg~約60.0mg/kg、約47.5mg/kg~約60.0mg/kg、約50.0mg/kg~約60.0mg/kg、約52.5mg/kg~約60.0mg/kg、約55.0mg/kg~約60.0mg/kg、または約57.5mg/kg~約60.0mg/kgである。
【0149】
[0184]いくつかの態様では、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)の用量は、約0.001mg/kg~約57.5mg/kg、約0.001mg/kg~約55.0mg/kg、約0.001mg/kg~約52.5mg/kg、約0.001mg/kg~約50.0mg/kg、約0.001mg/kg~約47.5mg/kg、約0.001mg/kg~約45.0mg/kg、約0.001mg/kg~約42.5mg/kg、約0.001mg/kg~約40.0mg/kg、約0.001mg/kg~約37.5mg/kg、約0.001mg/kg~約35.0mg/kg、約0.001mg/kg~約32.5mg/kg、約0.001mg/kg~約30.0mg/kg、約0.001mg/kg~約27.5mg/kg、約0.001mg/kg~約25.0mg/kg、約0.001mg/kg~約22.5mg/kg、約0.001mg/kg~約20.0mg/kg、約0.001mg/kg~約27.5mg/kg、約0.001mg/kg~約25.0mg/kg、約0.001mg/kg~約22.5mg/kg、約0.001mg/kg~約20.0mg/kg、約0.001mg/kg~約17.5mg/kg、約0.001mg/kg~約15.0mg/kg、約0.001mg/kg~約12.5mg/kg、約0.001mg/kg~約10.0mg/kg、約0.001mg/kg~約7.5mg/kg、約0.001mg/kg~約5.0mg/kg、または約0.001mg/kg~約2.5mg/kgである。
【0150】
5.指示
[0185]上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、組織の灌流および/または酸素供給を必要とする対象において、それらを増加させるために用いることができる。
【0151】
[0186]本明細書で使用される場合、用語「虚血-関連疾患または状態」とは、虚血イベントもしくは損傷に関連したまたはそれから生じる、任意の疾患または状態を意味する。虚血-関連疾患または状態の例には、それだけには限らないが、脳血管(例えば、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、くも膜下出血、血管性認知症)、心血管(例えば、心筋梗塞、狭心症)、胃腸(例えば、大腸炎)、末梢(例えば、急性肢虚血)および皮膚(例えば、チアノーゼ、壊疽)疾患または状態が含まれる。
【0152】
[0187]いくつかの態様では、本発明の化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態の治療または予防を必要とする対象において、それらの治療または予防のために用いることができる。
【0153】
[0188]本明細書で使用される場合、用語「腎不全」とは、糸球体ろ過率(GFR)また
はインデックスの同時の減少で、腎機能の進行性の喪失を引き起こす疾患であることを意味する。腎不全はまた、腎機能低下または腎疾患としても知られる。腎疾患は、(i)乏尿ならびに体液および電解質異常を、一般に引き起こす、腎機能の進行性の喪失である、急性腎障害(AKI)ならびに(ii)数カ月間または数年間にわたって、腎機能のずっとゆるやかな損失である、慢性腎疾患(CKD)として分類することができる。腎機能の程度に応じて、CKDの5段階は、GFRに基づいて、次の通り定義される、すなわち、(a)ステージ1、正常または高GFR(>90ml/分)、(b)ステージ2:軽度CKD、GFR=60~89ml/分、(c)ステージ3、中等度CKD、GFR=30~59m/分、(d)ステージ4、重度CKD、GFR=15~29ml/分および(e)ステージ5、末期CKD、GFR<15ml/分。ステージ5では、透析または腎移植は、健康状態を維持するために必要である。AKIおよびCKDは、同時に生じることがあり、これは、慢性腎不全の急性増悪として知られる。
【0154】
[0189]いくつかの態様では、本発明の化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、腎疾患を伴う対象において組織の灌流を増加させるために用いることができる。対象における腎疾患は、急性、慢性または両方であり得る。いくつかの態様では、対象は、透析(例えば、腹膜透析、血液透析)を行っている。本態様のさらなる形態では、対象は、血液透析を行っている。他のいくつかの態様では、対象は、透析されない(例えば、ステージ1~4におけるCKDを伴う対象)。本態様の一バージョンでは、対象は、約0.001mg/kg~約60mg/kgの有効用量において、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)を投与される。
【0155】
[0190]いくつかの態様では、本発明の化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、腎疾患を伴う対象において、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態を治療するまたは予防するために用いることができる。対象における腎疾患は、急性、慢性または両方であり得る。本態様の一バージョンでは、対象は、透析(例えば、腹膜透析、血液透析)を行っている。本バージョンのさらなる形態では、対象は、血液透析を行っている。本態様の別のバージョンでは、対象は、透析されない(例えば、ステージ1~4におけるCKDを伴う対象)。本態様の一バージョンでは、対象は、約0.001mg/kg~約60mg/kgの有効用量において、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)を投与される。
【0156】
[0191]いくつかの態様では、本発明の化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、歩行能力を向上させることを必要とする対象のそれを向上させるために用いることができる。いくつかの態様では、本発明の化合物、医薬組成物、投与の方法および経路は、最大歩行距離(MWD)、最大歩行時間(MWT)またはその両方を増加させることを必要とする対象において、それらを増加させるために用いることができる。いくつかの態様では、対象は、腎疾患に罹患している。対象における腎疾患は、急性、慢性または両方であり得る。本態様の一バージョンでは、対象は、透析(例えば、腹膜透析、血液透析)を行っている。本バージョンのさらなる形態では、対象は、血液透析を行っている。本態様の別のバージョンでは、対象は、透析されない(例えば、ステージ1~4におけるCKDを伴う対象)。本態様の一バージョンでは、対象は、約0.001mg/kg~約60mg/kgの有効用量において、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)を投与される。
【0157】
[0192]本発明の化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および経路は、下肢において組織の灌流および/または酸素供給を増加させるために、特に、末梢動脈疾患の治療および予防のために、特に有用である。本発明のイノシトールリン酸の使用から恩恵を被ることができるさらなる状態は、重症虚血肢である。詳細な態様では、上記で開示された態様のいずれかにおいて定義された化合物、医薬組成物、組合せ製剤、投与の方法および
経路は、特に、下肢において、組織の灌流および/または酸素供給の増加における使用のため、特に、PADおよび/またはCLIの治療および予防のためである。いくつかの態様では、対象は、透析(例えば、腹膜透析、血液透析)を行っている。いくつかのさらなる態様では、対象は、血液透析を行っている。他のいくつかの態様では、対象は、透析されない(例えば、ステージ1~4におけるCKDを伴う対象)。本態様の一バージョンでは、対象は、約0.001mg/kg~約60mg/kgの有効用量において、本発明のイノシトールリン酸(例えば、ミオイノシトールヘキサホスフェート)を投与される。
【0158】
[0193]次の実施形態は、発明の範囲をさらに例証する。
[0194]実施形態1.組織の灌流および/または酸素供給の増加を必要とする対象における、それらの増加における使用のための、一般式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩
【0159】
【0160】
[0195][式中、R1、R3、R5、R7、R9およびR11は、OH、式II、III、IV、V、VIおよびVII:
【0161】
【0162】
[0196](式中、nは、2~200の範囲の整数であり、R13は、H、メチル、エチルおよびC3~C10アルキルから選択される)の基から独立に選択され、
[0197]但し:
[0198]R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも1個は、式II、IIIおよびIVの基から選択され、
[0199]R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち0、1、2または3個は、式V、VIおよびVIIの基から選択されることを条件とする]。
【0163】
[0200]実施形態2.末梢動脈疾患の治療または予防のためである、実施形態1による使用のための化合物。
[0201]実施形態3.重症虚血肢の治療または予防のためである、実施形態1または2による使用のための化合物。
【0164】
[0202]実施形態4.透析、好ましくは、血液透析にかけられている対象を治療するためである、実施形態1~3のうちのいずれかによる使用のための化合物。
[0203]実施形態5.ナトリウム塩である、実施形態1~4のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0165】
[0204]実施形態6:R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも6個が、式V、VIおよびVIIの基から選択される、実施形態1~5のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0166】
[0205]実施形態7.R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち少なくとも2個
、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも6個が、式Vの基である、実施形態6による使用のための化合物。
【0167】
[0206]実施形態8.式Iの化合物が、イノシトールヘキサホスフェートである、実施形態7による使用のための化合物。
[0207]実施形態9.六ナトリウム塩である、実施形態8による使用のための化合物。
【0168】
[0208]実施形態10.
[0209]R7が、OSO3
-であり、R1、R3、R5、R9およびR11が、OPO3
2-、OPSO2
2-またはOSO3
-から独立に選択され;
[0210]R9、R5およびR1が、OPO3
2-であり、R7、R3およびR11が、OSO3
-であり;
[0211]R9、R5およびR1が、OSO3
-であり、R7、R3およびR11が、OPO3
2-であり;
[0212]R3、R1およびR11が、OSO3
-であり、R9、R7およびR5が、OPO3
2-であり;
[0213]R3、R1およびR11が、OPO3
2-であり、R9、R7およびR5が、OSO3
-であり;
[0214]R7およびR1が、OPO3
2-であり、R9、R5、R3、およびR11が、OPO3
-であり;
[0215]R7およびR1が、OSO3
-であり、R9、R5、R3、およびR11が、OPO3
2-であり;
[0216]R7およびR5が、OPO3
2-であり、R9、R3、R1、およびR11が、OSO3
-であり;または、
[0217]R7およびR5が、OSO3
-であり、R9、R3、R1、およびR11が、OPO3
2-である、実施形態7による使用のための化合物。
【0169】
[0218]実施形態11.式Iの化合物が、ミオイノシトール立体構造を有する、実施形態1~10のうちのいずれかによる使用のための化合物。
[0219]実施形態12.R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち0、1、2または3個が、式V、VIおよびVIIの基から選択される、実施形態1~6のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0170】
[0220]実施形態13.R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち4個が、式IIの基であり、R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち2個が、式V、VIおよびVIIの基から選択される、実施形態12による使用のための化合物。
【0171】
[0221]実施形態14.R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち4個が、式IIの基であり、R1、R3、R5、R7、R9およびR11のうち2個が、式Vの基である、実施形態13による使用のための化合物。
【0172】
[0222]実施形態15.
(i)R1、R5、R9およびR11が、式IIの基であり、R3およびR7が、式V、VIおよびVIIの基から選択され、
(i)R1、R3、R9およびR11が、式IIの基であり、R5およびR7が、式V、VIおよびVIIの基から選択される、実施形態12~14のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0173】
[0223]実施形態16.V、VIおよびVIIから選択される基が、式Vの基である、実施形態15による使用のための化合物。
[0224]実施形態17.式V、VIまたはVIの基は、nが、2~200の範囲内である、実施形態12~16のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0174】
[0225]実施形態18.nが、9~30の範囲内である、実施形態17による使用のための化合物。
[0226]実施形態19.nが、15~30の範囲内である、実施形態18による使用のための化合物。
【0175】
[0227]実施形態20.nが、3~9の範囲内である、実施形態17による使用のための化合物。
[0228]実施形態21.R13が、Hである、実施形態12~20のうちのいずれかによる使用のための化合物。
【0176】
[0229]実施形態22.R1、R5、R9およびR11が、式IIの基であり、R3およびR7が、式Vの基である、実施形態21による使用のための化合物。
[0230]実施形態23.薬学的に許容される賦形剤および担体と共に、実施形態1~22のうちのいずれかにおいて定義される化合物を含む、実施形態1~4のうちのいずれかにおいて定義される使用のための医薬組成物。
【0177】
[0231]実施形態24.化合物が、全組成物の20~90%(w/w)で存在する、実施形態23による医薬組成物。
[0232]実施形態25.化合物が、全組成物の30~80%(w/w)で存在する、実施形態24による医薬組成物。
【0178】
[0233]実施形態26.化合物が、全組成物の40~70%(w/w)で存在する、実施形態25による医薬組成物。
[0234]実施形態27.適当なビヒクルによる再構成のための乾燥の形態である、実施形態23~26のうちのいずれかによる医薬組成物。
【0179】
[0235]実施形態28.溶液、好ましくは、等張食塩水である、実施形態23~26のうちのいずれかによる医薬組成物。
[0236]実施形態29.血液透析、血液ろ過、または腹膜透析溶液の一部を形成する、実施形態23~27のうちのいずれかによる医薬組成物。
【0180】
[0237]実施形態30.制御放出用である、実施形態23~29のうちのいずれかによる医薬組成物。
[0238]実施形態31.透析を受けている患者に投与される、実施形態1~22のうちのいずれか一項による使用のための化合物または実施形態23~30のうちのいずれかによる使用のための医薬組成物。
【0181】
[0239]実施形態32.透析が、血液透析である、実施形態31による使用のための化合物。
[0240]実施形態33.透析前に投与される、実施形態31または32による使用のための化合物または医薬組成物。
【0182】
[0241]実施形態34.透析中に投与される、実施形態31または32による使用のための化合物または医薬組成物。
[0242]実施形態35.透析後に投与される、実施形態31または32による使用のための化合物または医薬組成物。
【0183】
[0243]実施形態36.非経口経路により投与される、実施形態31~35のうちのいずれかによる使用のための化合物または医薬組成物。
[0244]実施形態37.非経口投与が、静脈内、皮下または筋肉内である、実施形態36による使用のための、化合物または医薬組成物。
【0184】
[0245]実施形態38.静脈内投与が、ボーラス投与によるまたは静脈内注入によるものである、実施形態37による使用のための、化合物または医薬組成物。
[0246]実施形態39.患者から抽出されたろ過されていない血液に投与される、実施形態34による使用のための化合物または医薬組成物。
【0185】
[0247]実施形態40.化合物が、治療有効量約0.001mg/kg~約60mg/kgで対象に投与される、実施形態1~39による使用のための化合物または医薬組成物。
[0248]実施形態41.化合物が、治療有効量約15mg/kg~約45mg/kgで対象に投与される、実施形態40による使用のための化合物または医薬組成物。
【0186】
[0249]実施形態42.(i)(a)実施形態1~22のうちのいずれか一項による少なくとも1種の化合物または(b)実施形態23~30のうちのいずれかによる少なくとも1種の医薬組成物、および(ii)ヒトの健康における使用のための少なくとも1種の追加の治療薬を含む組合せ製剤。
【0187】
[0250]実施形態43.追加の治療薬が、シロスタゾール、ペントキシフィリンまたはその組合せである、実施形態42による組合せ製剤。
[0251]実施形態44.実施形態1~41のうちのいずれか一項による化合物もしくは医薬組成物または実施形態42もしくは43による組合せ製剤の治療有効量を、対象に投与するステップを含む、組織の灌流および/または酸素供給を増加させることを必要とする対象において、それらを増加させるための方法。
【0188】
[0252]実施形態45.実施形態1~41のうちのいずれか一項による化合物もしくは医薬組成物または実施形態42もしくは43による組合せ製剤の治療有効量を、対象に投与するステップを含む、虚血および/または虚血-関連疾患もしくは状態を治療するまたは予防することを必要とする対象において、それらを治療するまたは予防するための方法。
【0189】
[0253]実施形態46.実施形態1~41のうちのいずれか一項による化合物もしくは医薬組成物または実施形態42もしくは43による組合せ製剤の治療有効量を、対象に投与するステップを含む、歩行能力を向上させることを必要とする対象において、それを向上させるための方法。
【0190】
[0254]実施形態47.実施形態1~41のうちのいずれか一項による化合物もしくは医薬組成物または実施形態42もしくは43による組合せ製剤の治療有効量を、対象に投与するステップを含む、最大歩行距離(MWD)、最大歩行時間(MWT)またはその両方を増加させることを必要とする対象において、それらを増加させるための方法。
【0191】
[0255]実施形態48.実施形態1~41のうちのいずれか一項による化合物もしくは医薬組成物または実施形態42もしくは43による組合せ製剤の治療有効量を、対象に投与するステップを含む、末梢動脈疾患を治療するまたは予防することを必要とする対象において、それを治療するまたは予防するための方法。
【0192】
[0256]実施形態49.組合せ製剤が、対象に、一緒に、同時にまたは順次投与される、実施形態44~48のうちのいずれか一項による方法。
[0257]本発明は、次の例によりさらに例証され、これは、限定するものとして解釈する
べきではない。本出願を通した、引用されるすべての文献の内容は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0193】
一般的な手順
1.四肢の血液灌流
[0258]位置毎の四肢血液灌流(Position limb blood perfusion)および虚血状態(すなわち、灌流単位、灌流差および灌流比を含めた血液灌流)を、PeriCam PSI NR imager(Perimed AB、Jarfalla、SE)を用いて、レーザードップラー灌流イメージングにより評価する。対象を、測定する前に1L/分の流量で、酸素100%中で送達される3%イソフルランを用いて麻酔する。各群についてのベースラインおよび任意の示された中間測定値または最終測定値を比較することにより、灌流差および灌流比を算出する。血液の流動を、試験される有効な薬剤(すなわち、SNF472による治療の15分後、IP4-BIS-PEG100による治療の20分後、およびシロスタゾールによる治療の3~4時間後)のCmaxあたりで評価する。
【0194】
2.歩行能力試験
[0259]歩行能力(最大歩行時間(MWT)および最大歩行距離(MWD))の定量化を、強制増加トレッドミルランニング試験により測定される。2-レーンげっ歯類トレッドミル(LE8709TS;PanLab/Harvard Apparatus、Holliston、MA、US)を使用する。トレッドミルを、15%傾斜ランニングで、第1の5分間、15m/分(25cm/秒)の速度で、次いで、次の5分間、33cm/秒で、最後に、さらに最大30分間40cm/秒の速度で、維持する。
【0195】
[0260]四肢機能を、試験される有効な薬剤(すなわち、SNF472による治療の15分後、およびシロスタゾールによる治療の3~4時間後)のCmaxあたりで評価する。対象を、順化のためのトレッドミルで、試験前にセットプロトコールに従って、運動させる。プロトコールに従わない対象を、試験から除外する。
【0196】
[0261]対象を、試験の間、40分までまたは疲労困憊するまで走り続けさせる(すなわち、対象は、連続5秒間、ショックグリッドにとどまる)。次いで、MWDおよびMWTを、各動物について算出する。
【0197】
3.組織および血液の採取、石灰化アッセイ
[0262]イソフルラン吸入により、対象に麻酔する。血液を、心穿刺を通した失血により得る。次いで、対象を、屠殺し、対象の組織(例えば、右および左大腿動脈、大動脈)を採取する。血液および組織を処理し、それらのカルシウム含有量を決定するために分析する。
【0198】
[0263]組織サンプル中のカルシウム含有量を、製造業者の指示に従って、Optima
7300 DV ICP-OES System spectrometer(PerkinElmer、Inc.、Waltham、MA、US)を用いて、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)によって、定量化する。血漿中のミオイノシトール-ヘキサホスフェートレベルを、当技術分野で記載されるLC-MS/MSクロマトグラフィー法により定量化する。WO2013050603を参照のこと。
【0199】
実施例1
四肢虚血の予防
血液灌流の影響
[0264]SNF472、IP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩およびシロスタ
ゾールの血液灌流に対する予防効果を、12日の期間、ラットモデルを用いて試験した。対象における四肢虚血を、虚血を誘導しなかった疑似群を除いて、D1から誘導した。次いで、虚血で誘導された対象を、D1~D12までプラセボおよび有効な薬剤配合物で処置して、四肢虚血の予防におけるそれらの影響を評価した。D1~D12までの治療の間のいくつかの点で観察を行った。すべての対象を、治療前に毎日秤量した。
【0200】
1.四肢虚血の誘導
[0265]およそ250~275gの重さである、雄のスプラーグドーリー(SD)ラット(Envigo Corp.、Huntingdon、GB)54匹を用いた。対象に、AO4 diet(Scientific Animal Food & Engineering;Carpe Bio、Amersfoort、NL)を摂餌させた。対象を、次の通り、1群当たりラット8~10匹で5群に分けた。
【0201】
[0266]第1群 - 対照(疑似)
[0267]第2a群 プラセボ - 生理的食塩水
[0268]第2b群 プラセボ - 5%カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩溶液
[0269]第3群 - SNF472(Na6IP6)
[0270]第4群 - IP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩
[0271]第5群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)
[0272]第2a~5群の対象において、D1~D3の間毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のビタミンD3(コレカルシフェロール、デュファフラルD3 1000;Zoetis Inc.、Parsippany、NJ、US)120,000IU/kgの皮下投与により、四肢虚血を誘導した。第1疑似群の対象に、D1~D3の間、ビタミンD3を含まない生理的食塩水(2mL/kg)を毎日皮下投与した。
【0202】
[0273]第1群および第2a群中の対象に、D1~D12の間、毎日、生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。第2b群中の対象に、D1~D12の間、毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)を経口投与した。
【0203】
[0274]第2a群、第2b群および第3~5群中の対象の後肢において虚血を誘導したビタミンD3の投与を、レーザードップラー灌流イメージングにより評価した。
2.虚血レスキューおよび四肢血液灌流に対する効果 - レーザードップラーイメージングアッセイ
[0275]第3群および第4群の対象において、D1~D12の間、毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中の、それぞれ、SNF472(Na6IP6;遊離塩基:600g/mol)20mg/kgおよびIP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩(遊離塩基696.27g/mol)の皮下投与により、四肢血液灌流を誘導した。第5群の対象において、D1~D12の間、毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)で、シロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis、MO、US)20mg/kgの経口投与により、四肢血液灌流を誘導した。
【0204】
[0276]すべてのラットにおいて、D0(ベースライン)、D6およびD12に、レーザードップラー灌流イメージングにより、四肢虚血状態を評価した。灌流差および灌流比を、各群についての、D0ベースラインならびにD6およびD12の測定値のどちらか一方を比較することにより算出した。特に、灌流差および灌流比を、第1群(対照)ならびに(a)第2aおよび第2bプラセボ群(すなわち、生理的食塩水、水溶液中の5%CMCナトリウム塩)、(b)第3群(SNF472)、(c)第4群(IP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩)、および(d)第5群(シロスタゾール)の測定値を比較す
ることにより算出した。
【0205】
[0277]有効な薬剤の使用を伴う血液灌流試験が行われた日(すなわち、D6、D12)に、用量を、次の通り投与した。
[0278]第3群 - SNF472(Na6IP6):測定の15分前
[0279]第4群 - IP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩:測定の20分前
[0280]第5群 - シロスタゾール(C20H27N5O2):測定の3~4時間前
[0281]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血清濃度(Cmax)であるはずである。
【0206】
[0282]第1群の対象は、それらの灌流パラメーターの有意な変化を全く示さなかった。
[0283]SNF472およびIP4-4,6-ビスPEG100ナトリウム塩の投与によって、プラセボおよびシロスタゾールと比較して、第3~5群の(すなわち、ビタミンD3で治療された)対象の四肢における血液灌流の下落が減弱された。これらの結果によって、SNF472およびIP4-4,6-ビスPEG100が、治療された対象の後肢において血液灌流を増加することについて、シロスタゾールより有効であることが示唆される。
図7、8、および9を参照のこと。
【0207】
3.カルシウム含有量および石灰化 - ICP-OES
[0284]SNF472が、プラセボと比較して、20mg/kgを連日皮下投与後に大動脈石灰化(31±16%)を抑制したため、SNF472は、血管石灰化に対して有効であることが示された。シロスタゾールは、同じ投与量で、石灰化に対して活性でなかった。
図10を参照のこと。
【0208】
4.薬物動態
[0285]第1、2、3および第5群からの対象を、失血後に屠殺した。次いで、それらの剖検を行い、それらの大動脈を採取した。組織を、24h凍結乾燥し、秤量した。次いで、凍結乾燥した組織を、ドライバスインキュベーター中で180℃で2~4h、1:1HNO3:HClO4混合物を用いて、温浸した。引き続いて、温浸した組織を、超高純度Milli-Q水(MilliporeSigma社(Merck KGaA)、Burlington、MA、US)を用いて、最終体積10mLに希釈した。大動脈サンプル中のカルシウム含有量を、ICP-OESによって定量化した。
【0209】
[0286]第1、2、3、4および5群からの対象を、麻酔し、それらの血液を、D12に得た。対象当たり全血液およそ8~10mLを採取し、血漿(K3EDTA、血液およそ6mL)および血清(血液およそ2~3mL)検査試験用の採血管に分けた。血漿を、1アリコート600μLで貯蔵し、いくつかの他のアリコート500μLを貯蔵した。血清を、2つのアリコートに分けた。
【0210】
[0287]第3群の対象における血漿中のミオイノシトール-ヘキサホスフェートレベル(すなわち、最終SNF472投薬の15分後のCmax当たりで採取した)を、当技術分野で記載されるLC-MS/MSクロマトグラフィー法により定量化した。WO2013050603を参照のこと。
【0211】
[0288]第3群中のすべての対象を、SNF472生成物に十分に曝露した。D12における最終皮下投与の15分後の血漿レベルは、15587±ng/mL(24±12μM)であった。20mg/kgで連日投与後のラットにおける血漿レベルは、SNF472が4.2mg/kgの投与量で、静脈内経路によって治療した血液透析患者において見出されたレベルに匹敵した。
【0212】
実施例2
四肢虚血の予防
最大歩行(MWT)および距離(MDT)時間に対する影響
[0289]血液灌流、歩行能力および組織石灰化に対するSNF472およびシロスタゾールの予防効果を、24日間の間、ラットモデルを用いて試験した。さらに、血液灌流に対するSNF472およびシロスタゾールの併用治療の効果をやはり試験した。対象における四肢虚血を、虚血を誘導しなかった疑似群を除いて、D1~D3まで誘導した。次いで、虚血で誘導された対象を、D1~D12までプラセボおよび有効な薬剤配合物で処置して、(a)四肢虚血および組織石灰化ならびに(b)歩行能力の悪化の予防におけるそれらの影響を評価した。全対象における治療を、D13~D24まで中止した。D1~D24までの治療中および治療後フェーズのいくつかの点で観察を行った。すべての対象を、治療前に毎日秤量した。
【0213】
1.四肢虚血の誘導
[0290]およそ250~275gの重さである、雄のスプラーグドーリー(SD)ラット(Envigo Corp.、Huntingdon、GB)54匹を用いた。対象に、AO4 diet(Scientific Animal Food & Engineering;Carpe Bio、Amersfoort、NL)を摂餌させた。対象を、次の通り、1群当たり動物8~10匹で、5群に分けた。
【0214】
[0291]第1群 - 対照(疑似)
[0292]第2a群 プラセボ - 生理的食塩水
[0293]第2b群 プラセボ - 5%CMCナトリウム塩溶液
[0294]第3群 - SNF472(Na6IP6)
[0295]第4群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)
[0296]第5群 - シロスタゾール+SNF472
[0297]第2a~5群の対象において、D1~D3の間毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のビタミンD3(コレカルシフェロール、デュファフラルD3 1000;Zoetis Inc.、Parsippany、NJ、US)120,000IU/kgの皮下投与により、四肢虚血を誘導した。第1疑似群の対象に、D1~D3まで毎日、ビタミンD3を含まない生理的食塩水(2mL/kg)を、皮下投与した。
【0215】
[0298]第1群および第2a群中の対象に、D1~D12の間、毎日、生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。第2b群中の対象に、D1~D12の間、毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)を経口投与した。
【0216】
2.虚血レスキューおよび血液灌流に対する効果 - レーザードップラーイメージングアッセイ
[0299]第1群および第2a群中の対象に、D1~D12まで毎日、生理的食塩水2mL/kgを皮下経路によって投与した。第2b群中の対象に、D1~D12まで毎日水溶液中の5%CMCナトリウム塩5mL/kgを経口投与した。さらに、第3群中の対象に、D1~D12まで毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のSNF472(Na6IP6、遊離塩基:600g/mol)ナトリウム塩(遊離塩基696.27g/mol)20mg/kgを、皮下経路によって投与した。第4群中の対象に、D1~D12まで毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)中のシロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis、MO、US)20mg/kgを経口投与した。第5群中の対象に、(i)水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)中のシロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis
、MO、US)20mg/kgを、経口投与し、その後、(ii)生理的食塩水(2mL/kg)中のSNF472(Na6IP6、遊離塩基:600g/mol)20mg/kgを、皮下経路によって投与した。投与を、D1~D12まで毎日行った。
【0217】
[0300]有効な薬剤の使用を伴う血液灌流試験が行われた日(すなわち、D6、D12、およびD18)に、用量を次の通り投与した。
[0301]第3群 - SNF472(Na6IP6):測定の15分前
[0302]第4群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)測定の3~4時間前
[0303]第5群 - シロスタゾール+SNF472:SNF472の場合測定の15分前およびシロスタゾールの場合測定の3~4時間前
[0304]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
【0218】
[0305]四肢虚血状態を、治療中および治療後、すべてのラットにおいて、レーザードップラー灌流イメージングにより評価し、中断した(すなわち、D0、D6、D12、D18)。灌流差および灌流比を、各群についてのベースラインならびにD6、D12、およびD18のいずれかの測定値を比較することにより算出した。特に、灌流差および灌流比を、第1群(対照)ならびに(a)第2aおよび第2bプラセボ群(生理的食塩水、5%CMCナトリウム塩溶液)、(b)第3群(SNF472)、(c)第4群(シロスタゾール)、および(d)第5群(シロスタゾール/SNF472の組合せ)の測定値を比較することにより算出した。
【0219】
[0306]SNF472自体またはシロスタゾールとの組合せで、ラットの四肢虚血を減弱した。シロスタゾール単独による治療は、本モデルで有効でなかった。血液灌流に対するSNF472効果は、治療中断の6日後毎に維持された。
図11を参照のこと。
【0220】
3.歩行能力に対する効果 - トレッドミルランニング試験
[0307]最大歩行時間(MWT)および最大歩行距離(MWD)を、第1~4群において、D0、D5、D10、およびD17に、トレッドミルランニング試験(群当たり動物8~10匹および時点)により評価した。
【0221】
[0308]対象を、試験を行う前に2日間トレッドミルに順応させた。初日に、対象を、漸進的に15m/分~24m/分までの範囲のトレッドミル速度で5~10分間運動させた。2日目に、対象を、最初に、15m/分の速度で5分間運動させた。次いで、対象を、19.8m/分(33cm/秒)でさらに5分間運動させた。最後に、対象を、24m/分(40cm/秒)で、さらに最大30分間運動させた。術前の歩行時間および距離の記録を取得した。プロトコールに従わなかった動物を、試験から除外した。
【0222】
[0309]四肢機能(MWTおよびMWD)を、第1、2、および3群において、対応する毎日投与の15分後、トレッドミルランニング試験を用いて評価した。第4群における四肢機能を、治療の3~4時間後に評価した。
【0223】
[0310]上記スキーム下で、有効な薬剤は、ランニング試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
[0311]対象を、40分間または疲労困憊するまで走り続けさせた(すなわち、対象は、連続5秒間、ショックグリッドにとどまる)。次いで、MWDおよびMWTを、各動物について算出した。
【0224】
[0312]SNF472およびシロスタゾールによって、ビヒクル(+54%MWDおよび+46%MWT)と比較して、ラットにおける歩行能力が向上した。
図13を参照のこと
。さらに、歩行能力の向上に対するSNF472の効果は、治療中断の5日後でも(D17)維持された。これに反して、シロスタゾールは、治療が中止された直後にその有益な効果を失った。
図13を参照のこと。
【0225】
4.カルシウム含有量および石灰化 - ICP-OES
[0313]対象に、麻酔をかけ、それらの血液を、D24に得た。対象を、失血後に屠殺した。次いで、それらの剖検を行い、それらの大動脈を採取した。組織を、24h凍結乾燥し、秤量した。次いで、凍結乾燥した組織を、ドライバスインキュベーター中で180℃で2~4h、1:1HNO3:HClO4混合物を用いて、温浸した。引き続いて、温浸した組織を、超高純度Milli-Q水(MilliporeSigma社(Merck
KGaA)、Burlington、MA、US)を用いて、最終体積10mLに希釈した。組織サンプル中のカルシウム含有量を、ICP-OESによって定量化した。
【0226】
[0314]SNF472が、プラセボと比較して、20mg/kgで連日皮下投与後に大動脈石灰化(41±9%)を抑制したため、SNF472は、血管石灰化に対して、有効であることが示された。シロスタゾールは、同じ投与量で、石灰化に対して活性でなかった。
図14を参照のこと。
【0227】
実施例3
四肢虚血の治療
[0315]四肢虚血の開始後、血液灌流、歩行能力および組織石灰化に対するSNF472およびシロスタゾールの効果を、13日の期間、ラットモデルを用いて試験した。虚血を誘導しなかった疑似群を除いて、D1~D3まで全群に四肢虚血を誘導した。虚血で誘導された対象に、D5以降、プラセボおよび有効な薬剤配合物を投与して、治療開始前に虚血を発生させた。D5~D13まで、対象を、四肢虚血、歩行能力および組織石灰化に対する治療の影響を評価するために治療した。D1~D13までの治療の間、いくつかの点で観察を行った。すべての対象を、治療前に毎日秤量した。
【0228】
1.四肢虚血の誘導
[0316]およそ250~275gの重さである、雄のスプラーグドーリー(SD)ラット(Envigo Corp.、Huntingdon、GB)66匹を用いた。対象に、AO4 diet(Scientific Animal Food & Engineering;Carpe Bio、Amersfoort、NL)を摂餌させた。対象を、次の通り、1群当たり動物8~14匹で、5群に分けた。
【0229】
[0317]第1群 - 対照(疑似)
[0318]第2群 - D5 Caベースライン
[0319]第3a群 プラセボ - 生理的食塩水
[0320]第3b群 プラセボ - 5%CMCナトリウム塩溶液
[0321]第4群 - SNF472(Na6IP6)
[0322]第5群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)
[0323]第2~5群の対象において、D1~D3の間毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のビタミンD3(コレカルシフェロール、デュファフラルD3 1000;Zoetis Inc.、Parsippany、NJ、US)120,000IU/kgの皮下投与により、四肢虚血を誘導した。第1群の対象に、D1~D3まで毎日、ビタミンD3を含まない生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。
【0230】
2.虚血レスキューおよび血液灌流に対する効果 - レーザードップラーイメージングアッセイ
[0324]第1群中の対象に、D1~D13まで毎日生理的食塩水2mL/kgを、皮下経
路によって投与した。第2群中の対象に、D1~D5まで毎日、生理的食塩水2mL/kgを皮下経路によって投与した。D5に、第1群の対象4匹および第2群のすべての対象を、それらのCaベースライン値を決定するために屠殺した。
【0231】
[0325]第3aプラセボ群中の対象に、D5~D13まで毎日、生理的食塩水2mL/kgを皮下経路によって投与した。第3bプラセボ群中の対象に、D5~D13まで毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩5mL/kgを経口投与した。さらに、第4群中の対象に、D5~D13まで毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のSNF472(Na6IP6、遊離塩基:600g/mol)40mg/kgを、皮下経路によって投与した。
【0232】
[0326]第5群中の対象に、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)中のシロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis、MO、US)40mg/kgを、D5~D13まで毎日経口投与した。ラットにおけるシロスタゾールの40mg/kg投与は、PAD患者における治療用量8.4mg/kgに匹敵する。
【0233】
[0327]有効な薬剤の使用を伴う血液灌流試験が行われた日(すなわち、D5、D13)に、用量を、次の通り投与した。
[0328]第4群 - SNF472(Na6IP6):測定の15分前
[0329]第5群 - シロスタゾール(C20H27N5O2):測定の3~4時間前
[0330]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
【0234】
[0331]四肢機能および虚血状態を、D0およびD5に全群において、ならびにD13に第1群、第3a群、第3b群、第4群および第5群において、レーザードップラー灌流イメージングにより評価した。灌流差および灌流比を、各群についてのベースラインならびにD5およびD13のいずれかの測定値を比較することにより算出した。特に、灌流差および灌流比を、第1群(対照)ならびに(a)第3aおよび第3bプラセボ群(生理的食塩水、5%CMCナトリウム塩溶液)、(b)第4群(SNF472)、(c)第5群(シロスタゾール)の測定値を比較することにより算出した。
【0235】
[0332]VitD3投与によって、第3a群、第3b群、第4群、および第5群中の(療法投与直前のD5の測定)後肢における血液灌流の降下を誘導した。D13に、SNF472で治療した動物だけが、治療前にD5と比較して、四肢の血液灌流の有意な改善を示した。D5と比較して、D13に、プラセボまたはシロスタゾールで処置した動物において、改善なしまたは虚血レスキューが報告された。
図16を参照のこと。
【0236】
3.歩行能力に対する効果 - トレッドミルランニング試験
[0333]最大歩行時間(MWT)および最大歩行距離(MWD)を、D0に全群においてならびにD6およびD11に、第1群、第3a群、第3b群、第4群、および第5群においてトレッドミルランニング試験(1群当たり動物8~12匹および時点)により、評価した。対象を、試験を行う前に2日間トレッドミルに順応させた。初日に、対象を、漸進的に15m/分~24m/分までの範囲のトレッドミル速度で5~10分間運動させた。2日目に、対象を、最初に、15m/分の速度で5分間運動させた。次いで、対象を、19.8m/分(33cm/秒)でさらに5分間運動させた。最後に、対象を、24m/分(40cm/秒)で、さらに最大30分間運動させた。術前の歩行時間および距離の記録を取得した。プロトコールに従わなかった動物を、試験から除外した。
【0237】
[0334]四肢機能(MWTおよびMWD)を、対応する毎日投与の15分後、トレッドミ
ルランニング試験を用いて、第1群、第3a群、第3b群、および第4群において評価した。第5群における四肢機能を、治療の3~4時間後に評価した。
【0238】
[0335]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
[0336]対象を、40分間または疲労困憊するまで走り続けさせた(すなわち、対象は、連続5秒間、ショックグリッドにとどまる)。次いで、MWDおよびMWTを、各動物について算出した。
【0239】
[0337]治療が、虚血誘導の5日後に開始されても、SNF472によって、ビヒクル(+49%MWD)と比較して、ラットの歩行能力が改善された一方、シロスタゾールは、同じ条件下でおよび治療用量(40mg/kg/日)で有効でない。
図16を参照のこと。
【0240】
4.カルシウム含有量および石灰化 - ICP-OES
[0338]第1群の対象4匹および第2群のすべての対象を、D5に、それらのCaベースライン値を決定するために屠殺した。第1群の残りの対象ならびに第3a群、第3b群、第4群、第5群、および第6群のすべての対象を、D13に屠殺した。
【0241】
[0339]対象を、失血後に屠殺した。次いで、それらの剖検を行い、それらの右および左大腿動脈を、採取した。組織を、24h凍結乾燥し、秤量した。次いで、凍結乾燥した組織を、ドライバスインキュベーター中で180℃で2~4h、1:1HNO3:HClO4混合物を用いて、温浸した。引き続いて、温浸した組織を、超高純度Milli-Q水(MilliporeSigma社(Merck KGaA)、Burlington、MA、US)を用いて、最終体積10mLに希釈した。組織サンプル中のカルシウム含有量を、ICP-OESによって定量化した。
【0242】
[0340]SNF472は、D13に、血管石灰化に対して有効であることが示された。プラセボと比較して、SNF472は、40mg/kgを連日皮下投与後約(30%)まで、大腿動脈における石灰化を抑制した。
図17を参照のこと。
【0243】
5.薬物動態
[0341]第1群、第3a群、第3b群、第4群および第5群からの対象を、麻酔し、それらの血液を、D13に得た。対象当たり全血液およそ8~10mLを採取し、血漿(K3EDTA、血液およそ6mL)および血清(血液およそ2~3mL)検査試験用の採血管に分けた。血漿を、1アリコート600μL、およびいくつかの他のアリコート500μLとして貯蔵した。血清を、2つのアリコートに分けた。
【0244】
[0342]第4群の対象の血漿中のミオイノシトール-ヘキサホスフェートレベル(すなわち、最終SNF472投薬の15分後のCmax当たりで採取した)を、当技術分野で記載されるLC-MS/MSクロマトグラフィー法により定量化した。WO2013050603を参照のこと。
【0245】
[0343]第4群中のすべての対象を、SNF472生成物に十分に曝露した。D13の最終皮下投与の15分後の血漿レベルは、40078±15024ng/mL(60.7±22.8uM)であった。20mg/kgで連日投与後のラットにおける血漿レベルは、静脈内経路によって8.4mg/kgの投与量で、SNF472で治療した血液透析患者において見出されたレベルに匹敵した。
【0246】
実施例4
SN472薬物相互作用
[0344]腎機能低下を伴う対象に定期的に処方される他の薬物とのSNF472の適合性を分析した。
【0247】
[0345]ウィスターラット(Charles River Labs、Inc.、Wilmington、MA、US)を、次の通り治療した。すなわち、(i)SNF472の皮下投与(s.c.)、(ii)SNF472+セベラマー(経口)、(iii)SNF472(s.c.)+シナカルセト(経口)、(iv)SNF472(s.c.)+Vit D(s.c.)、(v)SNF472(s.c.)+ナトリウムチオスルフェート(s.c.)、およびSNF472(s.c.)+イバンドロン酸(s.c.)。SNF472単独投与またはアッセイされる薬物の他のいずれかと一緒の投与の間で、有意差は観察されなかった。
【0248】
実施例5
四肢虚血の予防
SNF472の用量反応の最大歩行(MWT)および距離(MDT)時間に対する影響
[0346]SNF472のいくつかの異なる投与量およびシロスタゾール最高許容量の血液灌流、歩行能力および組織石灰化に対する予防効果を、ラットモデルを用いて12日間試験した。疑似群を除いて、D1~D3まで、対象において四肢虚血を誘導した。次いで、虚血で誘導された動物を、D1~D12までプラセボおよび有効な薬剤配合物で処置して、(a)四肢虚血および組織石灰化ならびに(b)歩行能力の悪化の予防におけるそれらの影響を評価した。D1~D12までの治療フェーズの間のいくつかの点で観察を行った。すべての対象を、治療前に毎日秤量した。
【0249】
1.四肢虚血の誘導
[0347]およそ250~275gの重さである、雄のスプラーグドーリー(SD)ラット(Envigo Corp.、Huntingdon、GB)102匹を用いた。対象に、AO4 diet(Scientific Animal Food & Engineering;Carpe Bio、Amersfoort、NL)を摂餌させた。対象を、次の通り、1群当たり動物8~12匹で、5群に分けた。
【0250】
[0348]第1群 - 対照(疑似)
[0349]第2a群 プラセボ - 生理的食塩水、皮下
[0350]第2b群 プラセボ - 5%CMCナトリウム塩溶液、経口
[0351]第3群 - SNF472(Na6IP6)1mg/kg、皮下
[0352]第4群 - SNF472(Na6IP6)7.5 mg/kg、皮下
[0353]第5群 - SNF472(Na6IP6)15 mg/kg、皮下
[0354]第6群 - SNF472(Na6IP6)30 mg/kg、皮下
[0355]第7群 - SNF472(Na6IP6)45 mg/kg、皮下
[0356]第8群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)45mg/kg、経口
[0357]第2~8群の対象において、D1~D3の間毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中のビタミンD3(コレカルシフェロール、デュファフラルD3 1000;Zoetis Inc.、Parsippany、NJ、US)120,000IU/kgの皮下投与により、四肢虚血を誘導した。第1疑似群の対象に、D1~D3まで毎日、ビタミンD3を含まない生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。
【0251】
[0358]第1群および第2a群中の対象に、D1~D12の間、毎日、生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。第2b群中の対象に、D1~D12の間、毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)を経口投与した。
【0252】
2.虚血レスキューおよび血液灌流に対する効果 - レーザードップラーイメージングアッセイ
[0359]第1群および第2a群中の対象に、D1~D12まで毎日、生理的食塩水2mL/kgを皮下経路によって投与した。第2b群中の対象に、D1~D12まで毎日、水溶液中の5%CMCナトリウム塩5mL/kgを経口投与した。さらに、第3群、第4群、第5群、第6群および第7群中の対象に、SNF472(Na6IP6、遊離塩基:600g/mol)ナトリウム塩(遊離塩基696.27g/mol)をそれぞれ、1mg/kg、7.5mg/kg、15mg/kg、30mg/kgおよび45mg/kg投与した。SNF472を、D1~D12まで毎日、生理的食塩水(2mL/kg)中で、皮下経路によって投与した。第8群中の対象に、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)中のシロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis、MO、US)45mg/kgを、D1~D12まで毎日経口投与した。
【0253】
[0360]有効な薬剤の使用を伴う血液灌流試験が行われた日(すなわち、D6およびD12)に、用量を、次の通り投与した。
[0361]第3群、第4群、第5群、第6群および第7群 - SNF472(Na6IP6):測定の15分前
[0362]第8群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)測定の3~4時間前
[0363]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
【0254】
[0364]四肢虚血状態を、治療期間中(すなわち、D0、D6およびD12)、すべてのラットにおいて、レーザードップラー灌流イメージングにより評価した。灌流差および灌流比を、各群についてのベースラインならびにD6およびD12のいずれかの測定値を比較することにより算出した。特に、灌流差および灌流比を、第1群(対照)および(a)第2aおよび第2bプラセボ群(生理的食塩水、5%CMCナトリウム塩溶液)、(b)第3群、第4群、第5群、第6群および第7群(SNF472)ならびに(c)第8群(シロスタゾール)の測定値と比較することにより算出した。
【0255】
[0365]SNF472は、用量反応様式でラットの四肢虚血が減弱した。シロスタゾール単独による治療は、本モデルで有効でなかった。
3.歩行能力に対する効果 - トレッドミルランニング試験
[0366]最大歩行時間(MWT)および最大歩行距離(MWD)を、第1~8群において、D0、D5、およびD10に、トレッドミルランニング試験(群当たり動物8~12匹および時点)により評価した。
【0256】
[0367]対象を、試験を行う前に2日間トレッドミルに順応させた。初日に、対象を、漸進的に15m/分~24m/分までの範囲のトレッドミル速度で5~10分間運動させた。2日目に、対象を、最初に、15m/分の速度で5分間運動させた。次いで、対象を、19.8m/分(33cm/秒)でさらに5分間運動させた。最後に、対象を、24m/分(40cm/秒)で、さらに最大30分間運動させた。術前の歩行時間および距離の記録を取得した。プロトコールに従わなかった動物を、試験から除外した。
【0257】
[0368]四肢機能(MWTおよびMWD)を、第1群、第2群、第3群、第4群、第5群、第6群および7群において、対応する毎日投与の15分後、トレッドミルランニング試験を用いて評価した。第8群における四肢機能を、治療の3~4時間後に評価した。
【0258】
[0369]上記スキーム下で、有効な薬剤は、ランニング試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
[0370]対象を、40分間または疲労困憊するまで走り続けさせた(すなわち、対象は、連続5秒間、ショックグリッドにとどまる)。次いで、MWDおよびMWTを、各動物について算出した。
【0259】
[0371]SNF472およびシロスタゾールによって、ビヒクルと比較して、ラットにおける歩行能力が向上した。さらに、歩行能力の向上に対するSNF472の効果は、用量反応依存的であった。
【0260】
4.カルシウム含有量および石灰化 - ICP-OES
[0372]対象に、麻酔をかけ、それらの血液を、D12に得た。対象を、失血後に屠殺した。次いで、それらの剖検を行い、それらの心臓および大動脈動脈(aorta artery)を採取した。組織を、24h凍結乾燥し、秤量した。次いで、凍結乾燥した組織を、ドライバスインキュベーター中で180℃で2~4h、1:1HNO3:HClO4混合物を用いて、温浸した。引き続いて、温浸した組織を、超高純度Milli-Q水(MilliporeSigma社(Merck KGaA)、Burlington、MA、US)を用いて、最終体積10mLに希釈した。組織サンプル中のカルシウム含有量を、ICP-OESによって定量化した。
【0261】
[0373]SNF472は、用量反応様式で、心臓および血管石灰化、例えば、心臓および大動脈動脈の石灰化などに対して有効であることが示された。シロスタゾールは、同じ投与量で、石灰化に対して活性でなかった。
【0262】
実施例6
アデニン-によって誘導される尿毒症ラットモデルにおける四肢虚血の予防
四肢血液灌流に対するSNF472の影響
[0374]血液灌流および組織石灰化に対するSNF472およびシロスタゾール投与量の予防効果を、関連の慢性腎疾患ラットモデルを用いて21日間の間試験した。
【0263】
[0375]動物における尿毒症および四肢虚血を、尿毒症も虚血も誘導されなかった疑似群を除いて、D1~D21まで誘導した。次いで、虚血で誘導された動物を、D1~D21までプラセボおよび有効な薬剤配合物で処置して、(a)四肢虚血および(b)組織石灰化の予防におけるそれらの影響を評価した。D1~D21までの治療フェーズの間、いくつかの点で観察を行った。すべての対象を、治療前に毎日秤量した。
【0264】
1.尿毒症および四肢虚血の誘導
[0376]およそ250~275gの重さである、雄のスプラーグドーリー(SD)ラット(Envigo Corp.、Huntingdon、GB)68匹を用い、ペレット状の高-リン食(SM R、10mm固形飼料、Ca1.06%、P1.03%)(SSNIFF Spezialdiaeten社、Soest、DE)を自由に摂餌させた。対象を、次の通り、1群当たり動物8~12匹で、6群に分けた:
[0377]第1群 - 対照(疑似)
[0378]第2a群 プラセボ - 生理的食塩水 皮下、1日1回
[0379]第2b群 プラセボ - 生理的食塩水、皮下、Alzetポンプ 4週間
[0380]第3群 - SNF472(Na6IP6)30mg/kg、皮下、1日1回
[0381]第4群 - SNF472(Na6IP6)45mg/kg、皮下、1日1回
[0382]第5群 - SNF472(Na6IP6)全投与量400mg/4週間(100mg/週)の入ったAlzetポンプを、アデニン投与前のD1に、4週間皮下に植え込んだ。
【0265】
[0383]第6群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)45mg/kg/日、経
口、1日1回
[0384]尿毒症および四肢虚血を、第2~6群において、最初の10日間、アデニンの日用量(1%カルボキシメチルセルロースに懸濁した、500mg/kg、経口投与された)により、次いで、α-カルシドールの投与量(オリーブ油中の100ng/kg、経口投与された)で、D11~D19まで、1週間当たり3回誘導して、心血管の石灰化および虚血の発生を加速させホモジナイズした。
【0266】
[0385]21日目に、動物を屠殺し、血液および組織サンプルを採取した。血清中のクレアチニン(参照番号OSR6178)および尿素(参照番号OSR6134)レベルを、対応するBeckman Coulterアッセイキット(Beckman Coulter、Inc.、Brea、CA、US)を用いて決定した。
【0267】
[0386]第1疑似群動物に、1%カルボキシメチルセルロース溶液(5mL/kg)を、D1~D10まで毎日経口投与し、次いで、D11~D19まで1週間当たり3回オリーブ油を経口投与した。疑似群において尿毒症も虚血も誘導されなかった。
【0268】
2.虚血レスキューおよび血液灌流に対する効果 - レーザードップラーイメージングアッセイ
[0387]第2a群中の対象に、1日2回21日間生理的食塩水(2mL/kg)を皮下投与した。第2b群中の対象に、Alzetポンプを用いて、4週間、生理的食塩水を皮下によって投与した。
【0269】
[0388]さらに、第3群および第4群中の動物に、SNF472(Na6IP6、遊離塩基:600g/mol)ナトリウム塩(遊離塩基696.27g/mol)をそれぞれ、30mg/kgおよび45mg/kgを1日2回皮下投与した。SNF472を、D1~D21まで1日2回、生理的食塩水(2mL/kg)中で皮下経路によって投与した。第5群中の動物に、生理的食塩水で溶解したのSNF472が4週間当たり400mg/で、Alzetポンプを用いて4週間、皮下によって投与した。
【0270】
[0389]第6群中の動物に、水溶液中の5%CMCナトリウム塩(5mL/kg)中のシロスタゾール(C20H27N5O2、遊離塩基369.46g/mol;ロット番号LRAB9590、Sigma-Aldrich Corp.、St.Louis、MO、US)45mg/kgを、D1~D21まで毎日経口投与した。
【0271】
[0390]有効な薬剤の使用を伴う血液灌流試験が行われた日(すなわち、D10、D17、およびD21)に、用量を次の通り投与した:
[0391]第3群および第4群 - SNF472(Na6IP6):測定の15分前
[0392]第6群 - シロスタゾール(C20H27N5O2)測定の3~4時間前
[0393]上記スキーム下で、有効な薬剤は、試験測定が行われた時点でそれらの最大血漿濃度(Cmax)であるはずである。
【0272】
[0394]四肢虚血状態を、治療中(すなわち、D0、D10およびD17およびD21)、すべてのラットにおいてレーザードップラー灌流イメージングにより評価した。灌流差および灌流比を、各群についてのベースラインならびにD10、D17、およびD21の測定値を比較することにより算出した。特に、灌流差および灌流比を、第1群(対照)ならびに(a)第2aおよび第2bプラセボ群、(b)第3群、第4群および第5群(SNF472)ならびに(c)第6群(シロスタゾール)の測定値を比較することにより算出した。
【0273】
[0395]SNF472は、尿毒症ラットにおけるラットの四肢虚血を、用量反応様式で減
弱した。シロスタゾール単独による治療は、本モデルで有効でなかった。
3.カルシウム含有量および石灰化 - ICP-OES
[0396]対象に、麻酔をかけ、それらの血液を、D21に得た。対象を、失血後に屠殺した。次いで、それらの剖検を行い、それらの心臓および大動脈動脈を採取した。組織を、24h凍結乾燥し、秤量した。次いで、凍結乾燥した組織を、ドライバスインキュベーター中で、1:1HNO3:HClO4混合物を用いて、180℃で2~4h温浸した。引き続いて、温浸した組織を、超高純度Milli-Q水(MilliporeSigma社(Merck KGaA)、Burlington、MA、US)を用いて、最終体積10mLに希釈した。組織サンプル中のカルシウム含有量を、ICP-OESによって定量化した。
【0274】
[0397]SNF472は、プラセボと比較して、連日皮下投与および/またはAlzetポンプによる送達後、用量反応様式で、例えば、心臓および大動脈動脈の石灰化などにおいて、尿毒症ラットにおける心臓および血管石灰化に対して有効であることが示された。シロスタゾールは、同じ投与量で、石灰化に対して活性でなかった。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の灌流および/または酸素供給を必要とする対象における、それらの増加における使用のための、一般式Iの化合物、または薬学的に許容されるその塩
【化1】
[式中、R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11は、独立に、OH、式II、III、IVの基:
【化2】
および異種構造の部分から選択され、但し、
(i)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち少なくとも1個が、式II、IIIおよびIVの基から選択され、
(ii)R
1、R
3、R
5、R
7、R
9およびR
11のうち0、1、2または3個が、異種構造の部分であることを条件とする]。