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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175039
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241210BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024159670
(22)【出願日】2024-09-16
(62)【分割の表示】P 2023549428の分割
【原出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2021153458
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇功
(72)【発明者】
【氏名】平光 真二
(72)【発明者】
【氏名】奥村 知巳
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減できる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置20において、基板50の表面金属体52は、半導体素子40Lの一面に設けられたドレイン電極40Dに電気的に接続されている。他方の基板60の表面金属体62は、半導体素子の裏面に設けられたソース電極40Sに電気的に接続されている。信号端子93は、ボンディングワイヤ110を介して、ソース電極と同じ面に設けられたパッド40Pに電気的に接続されている。半導体素子と信号端子93との並び方向において、表面金属体62の端部64eは、導電スペーサ70の端部70e1と半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置している。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に設けられた第1主電極(40D)と、前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極(40S)と、前記裏面において前記第2主電極とは異なる位置に設けられた信号用のパッド(40P)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
信号端子(93)と、
前記パッドと前記信号端子とを電気的に接続するボンディングワイヤ(110)と、を備え、
前記第2配線部材は、絶縁基材(61)と、前記絶縁基材における前記半導体素子側の面である表面に配置され、前記第2主電極に電気的に接続された表面金属体(62)と、前記絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体(63)と、を有する基板であり、
前記半導体素子と前記信号端子との並び方向において、前記表面金属体の端部(64e、65e)は、前記表面金属体が接合された接合対象の端部(40Se1、40Se2、70e1、70e2)と前記半導体素子の端部(40Le、40He)との間に位置しており、
前記絶縁基材は、前記表面金属体から露出する露出部(61a1、61a2)を有し、
前記ボンディングワイヤの頂点部(110t)は、前記板厚方向において前記露出部に対向しており、
前記ボンディングワイヤは、前記絶縁基材の前記露出部に接触している、半導体装置。
【請求項2】
前記並び方向において、前記表面金属体の端部は、前記パッドにおける前記第2主電極側の端部(40Pe)と前記半導体素子の端部との間に位置している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記表面金属体は、前記裏面金属体よりも厚い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2主電極と前記表面金属体との間に介在する導電スペーサ(70)を備え、
前記接合対象は、前記導電スペーサである、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接合対象は、前記第2主電極である、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体素子(40)の一面に設けられた第1主電極(40D)と第1配線部材(50)とを電気的に接続する第1接続工程と、
ボンディングワイヤ(110)を介して、前記半導体素子において前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた信号用のパッド(40P)と信号端子(93)とを接続するワイヤボンディング工程と、
前記ワイヤボンディング工程後、前記裏面において前記パッドとは異なる位置に設けられた第2主電極(40S)と第2配線部材(60)とを電気的に接続する第2接続工程と、を備え、
前記第2接続工程において、
前記第2配線部材として、絶縁基材(61)と、前記絶縁基材における前記半導体素子側の面である表面に配置され、前記第2主電極に電気的に接続された表面金属体(62)と、前記絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体(63)と、を有し、前記半導体素子と前記信号端子との並び方向において、前記表面金属体が接合される接合対象の端部(40Se1、40Se2、70e1、70e2)と前記半導体素子の端部(40Le、40He)との間に前記表面金属体の端部(64e、65e)が位置するように、前記表面金属体がパターニングされた基板を用い、
前記表面金属体から露出する前記絶縁基材の露出部(61a1、61a2)を前記ボンディングワイヤに接触させつつ前記第2主電極と前記第2配線部材とを電気的に接続する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2021年9月21日に日本に出願された特許出願第2021-153458号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、両面に主電極を有する半導体チップ、第1ヒートシンク、第2ヒートシンク、および信号端子を備える半導体装置を開示している。半導体チップの一面にはドレイン電極が設けられ、裏面にはソース電極および信号用のパッドが設けられている。第1ヒートシンクはドレイン電極に電気的に接続され、第2ヒートシンクはソース電極に電気的に接続されている。信号端子は、ボンディングワイヤを介してパッドに接続されている。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-64907号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に代表される両面放熱構造の半導体装置では、ボンディングワイヤと第2ヒートシンクとの接触を避けるために、つまりボンディングワイヤの高さを確保するために、ソース電極と第2ヒートシンクとの間にターミナル(導電スペーサ)を配置する。ターミナルが厚いほど、第1ヒートシンクと第2ヒートシンクとの対向面を遠ざけ、互いに逆向きに流れる電流による磁束打消しの効果、つまりインダクタンス低減の効果を弱める。また、熱抵抗を増加させる。
【0006】
また、第2ヒートシンクにおいてターミナルよりも信号端子側の部分を切り欠くことで、ボンディングワイヤと第2ヒートシンクとの接触を避け、第1ヒートシンクと第2ヒートシンクとの対向面同士を近づけることが考えられる。しかしながら、切り欠きによって半導体素子から第2ヒートシンクへの熱拡散が阻害される。上記した構成では、デッドスペースを低減するのが困難である。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、半導体装置にはさらなる改良が求められている。
【0007】
開示されるひとつの目的は、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減できる半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
ここに開示された半導体装置は、
一面に設けられた第1主電極と、一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極と、裏面において第2主電極とは異なる位置に設けられた信号用のパッドと、を有する半導体素子と、
第1主電極に電気的に接続された第1配線部材と、
第2主電極に電気的に接続された第2配線部材と、
信号端子と、
パッドと信号端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、
第2配線部材は、絶縁基材と、絶縁基材における半導体素子側の面である表面に配置され、第2主電極に電気的に接続された表面金属体と、絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体と、を有する基板であり、
半導体素子と信号端子との並び方向において、表面金属体の端部は、表面金属体が接合された接合対象の端部と半導体素子の端部との間に位置しており、
絶縁基材は、表面金属体から露出する露出部(61a1、61a2)を有し、
ボンディングワイヤの頂点部(110t)は、板厚方向において露出部に対向しており、
ボンディングワイヤは、絶縁基材の露出部に接触している。
【0009】
開示された半導体装置によれば、第2配線部材として基板を用いる。そして、基板が有する表面金属体のパターニングによって、表面金属体の端部が、並び方向において接合対象の端部と半導体素子の端部との間に位置している。このように表面金属体の端部が半導体素子の端部よりも内側に位置するため、表面金属体とボンディングワイヤとの接触を避け、第2配線部材の表面金属体と第1配線部材の導電部位との対向面同士を近づけることができる。これにより磁束打消しの効果が高まり、インダクタンスを低減することができる。また、半導体素子から第2配線部材の表面金属体までの熱伝達経路が短くなるため、熱抵抗を低減することができる。
【0010】
さらに、表面金属体の端部が接合対象の端部よりも外側に位置するため、表面金属体を通じて、半導体素子の熱を接合対象よりも外側に拡散することができる。これにより、熱抵抗を低減することができる。この結果、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0011】
ここに開示された半導体装置の製造方法は、
半導体素子の一面に設けられた第1主電極と第1配線部材とを電気的に接続する第1接続工程と、
ボンディングワイヤを介して、半導体素子において一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた信号用のパッドと信号端子とを接続するワイヤボンディング工程と、
ワイヤボンディング工程後、裏面においてパッドとは異なる位置に設けられた第2主電極と第2配線部材とを電気的に接続する第2接続工程と、を備え、
第2接続工程において、
第2配線部材として、絶縁基材と、絶縁基材における半導体素子側の面である表面に配置され、第2主電極に電気的に接続された表面金属体と、絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体と、を有し、半導体素子と信号端子との並び方向において、表面金属体が接合される接合対象の端部と半導体素子の端部との間に表面金属体の端部が位置するように、表面金属体がパターニングされた基板を用い、
表面金属体から露出する絶縁基材の露出部をボンディングワイヤに接触させつつ第2主電極と第2配線部材とを電気的に接続する。
【0012】
開示された半導体装置の製造方法によれば、第2配線部材として基板を用いる。そして、表面金属体の端部が並び方向において接合対象の端部と半導体素子の端部との間に位置するように、基板の表面金属体をパターニングする。表面金属体の端部が半導体素子の端部よりも内側に位置するため、表面金属体とボンディングワイヤとの接触を避け、第2配線部材の表面金属体と第1配線部材の導電部位との対向面同士を近づけることができる。これにより磁束打消しの効果が高まり、インダクタンスを低減することができる。また、半導体素子から第2配線部材の表面金属体までの熱伝達経路が短くなるため、熱抵抗を低減することができる。表面金属体から露出する絶縁基材の露出部をボンディングワイヤに接触させつつ第2主電極と第2配線部材とを電気的に接続することで対向面同士がより近づき、インダクタンス低減と熱抵抗低減の効果を高めることができる。
【0013】
さらに、表面金属体の端部が接合対象の端部よりも外側に位置するため、表面金属体を通じて、半導体素子の熱を接合対象の端部よりも外側に拡散することができる。これにより、熱抵抗を低減することができる。この結果、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0014】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】半導体装置が適用される電力変換装置の回路構成及び駆動システムを示す図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置を示す斜視図である。
図3図2のZ1方向から見た平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6図3のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図3のVII-VII線に沿う断面図である。
図8】基板に半導体素子が実装された状態を示す平面図である。
図9】ドレイン電極側の基板の回路パターンを示す平面図である。
図10】ソース電極側の基板の回路パターンを示す平面図である。
図11図6の領域XIを拡大した図である。
図12】変形例を示す断面図である。
図13】変形例を示す断面図である。
図14】変形例を示す平面図である。
図15】変形例を示す平面図である。
図16】第2実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
図17】製造方法を示す断面図である。
図18】半導体装置の別例を示す断面図である。
図19】インダクタンス低減の効果を示す図である。
図20】変形例を示す図である。
図21】第3実施形態に係る半導体装置の斜視図である。
図22図21をZ2方向から見た平面図である。
図23図22のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。
図24図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0017】
本実施形態の半導体装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体の電力変換装置に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)などの電動車両、ドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、図1に基づき、車両の駆動システムの概略構成について説明する。
【0019】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0020】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、つまり電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0021】
<電力変換装置>
次に、図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、電力変換回路であるインバータ6を備えている。
【0022】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電源ラインであるPライン7と低電位側の電源ラインであるNライン8とに接続されている。Pライン7は直流電源2の正極に接続され、Nライン8は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン7に接続されている。平滑コンデンサ5の負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン8に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。Pライン7およびNライン8を、電源ライン7、8と示すことがある。
【0023】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0024】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、上アーム9Hと、下アーム9Lをそれぞれ有している。上アーム9Hおよび下アーム9Lは、上アーム9HをPライン7側として、Pライン7とNライン8との間で直列接続されている。上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点は、出力ライン10を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。インバータ6は、6つのアームを有している。各アームは、スイッチング素子を備えて構成されている。Pライン7、Nライン8、および出力ライン10それぞれの少なくとも一部は、たとえばバスバーなどの導電部材により構成される。
【0025】
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET11を採用している。各アームを構成するスイッチング素子の数は特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。
【0026】
一例として、本実施形態では、各アームが2つのMOSFET11を有している。ひとつのアームを構成する2つのMOSFET11は、並列接続されている。上アーム9Hにおいて、並列接続された2つのMOSFET11のドレインが、Pライン7に接続されている。下アーム9Lにおいて、並列接続された2つのMOSFET11のソースが、Nライン8に接続されている。上アーム9Hにおいて並列接続された2つのMOSFET11のソースと、下アーム9Lにおいて並列接続された2つのMOSFET11のドレインが、相互に接続されている。並列接続された2つのMOSFET11は、共通のゲート駆動信号(駆動電圧)により、同じタイミングでオン駆動、オフ駆動する。
【0027】
MOSFET11のそれぞれには、還流用のダイオード12が逆並列に接続されている。ダイオード12は、MOSFET11の寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、寄生ダイオードとは別に設けたものでもよい。ダイオード12のアノードは対応するMOSFET11のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。一相分の上下アーム回路9は、ひとつの半導体装置20により提供される。半導体装置20の詳細については後述する。
【0028】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0029】
電力変換装置4は、インバータ6などを構成するスイッチング素子の駆動回路を備えてもよい。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのMOSFET11のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0030】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0031】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0032】
<半導体装置>
次に、図2図10に基づき、半導体装置について説明する。図2は、半導体装置20の斜視図である。図3は、図2をZ1方向から見た平面図である。図3は、内部構造を示す透過図である。封止体30により覆われた部分を破線で示している。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。図6は、図3のVI-VI線に沿う断面図である。図7は、図3のVII-VII線に沿う断面図である。図8は、基板50に半導体素子40が実装された状態を示す平面図である。図8は、図3から封止体30および基板60を除外した図である。図9は、基板50において表面金属体52の回路パターンを示す平面図である。図10は、基板60において表面金属体62の回路パターンを示す平面図である。
【0033】
以下において、半導体素子40(半導体基板)の板厚方向をZ方向とする。Z方向に直交し、互いに並んで配置される複数の半導体素子40の並び方向をX方向とする。本実施形態では、並列接続される複数の半導体素子40の並び方向をX方向とする。Z方向およびX方向の両方向に直交する方向をY方向とする。特に断わりのない限り、Z方向から平面視した形状、換言すればX方向およびY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。Z方向からの平面視を、単に平面視と示すことがある。
【0034】
図2図10に示すように、半導体装置20は、上記した上下アーム回路9のひとつ、つまり一相分の上下アーム回路9を構成する。半導体装置20は、封止体30と、半導体素子40と、基板50、60と、導電スペーサ70と、アーム接続部80と、外部接続端子90を備えている。半導体装置20は、半導体モジュール、パワーカードなどと称されることがある。
【0035】
封止体30は、半導体装置20を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体30の外に露出している。封止体30は、たとえば樹脂を材料とする。樹脂の一例は、エポキシ系樹脂である。封止体30は、樹脂を材料として、たとえばトランスファモールド法により成形されている。このような封止体30は、封止樹脂体、モールド樹脂、樹脂成形体などと称されることがある。封止体30は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。ゲルは、たとえば一対の基板50、60の対向領域に充填(配置)される。
【0036】
図2図4に示すように、封止体30は平面略矩形状をなしている。封止体30は、外郭をなす表面として、一面30aと、Z方向において一面30aとは反対の面である裏面30bを有している。一面30aおよび裏面30bは、たとえば平坦面である。また、一面30aと裏面30bとをつなぐ面である側面30c、30d、30e、30fを有している。側面30cは、外部接続端子90のうち、電源端子91と信号端子93Hが突出する面である。側面30dは、Y方向において側面30cとは反対の面である。側面30dは、出力端子92および信号端子93Lが突出する面である。側面30e、30fは、外部接続端子90が突出していない面である。側面30eは、X方向において側面30fとは反対の面である。
【0037】
半導体素子40は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子40は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0038】
本実施形態の半導体素子40は、SiCを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のMOSFET11が形成されてなる。MOSFET11は、半導体素子40(半導体基板)の板厚方向、つまりZ方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子40は、自身の板厚方向であるZ方向の両面に、スイッチング素子の主電極を有している。具体的には、主電極として、一面にドレイン電極40Dを有し、一面とはZ方向において反対の面である裏面にソース電極40Sを有している。主電流は、ドレイン電極40Dとソース電極40Sとの間に流れる。
【0039】
ダイオード12が寄生ダイオードの場合、ソース電極40Sがアノード電極を兼ね、ドレイン電極40Dがカソード電極を兼ねる。ダイオード12は、MOSFET11とは別チップに構成されてもよい。ドレイン電極40Dは高電位側の主電極であり、ソース電極40Sは低電位側の主電極である。
【0040】
半導体素子40は、平面略矩形状、たとえば正方形をなしている。図3および図8に示すように、半導体素子40は、裏面に、信号用の電極であるパッド40Pを有している。パッド40Pは、裏面においてソース電極40Sとは異なる位置に形成されている。パッド40Pは、少なくともゲートパッドを含む。本実施形態の半導体素子40は、4つのパッド40Pを有している。パッド40Pは、図8に示すようにゲートパッドGP、ケルビンソースパッドKSP、アノードパッドAP、およびカソードパッドKPを含んでいる。
【0041】
ゲートパッドGPは、MOSFET11のゲート電極に駆動電圧を印加するためのパッド40Pである。つまりゲートパッドGPは、主電極であるドレイン電極40Dとソース電極40Sとの間に流れる主電流を制御するゲート電極用のパッド40Pである。ケルビンソースパッドKSPは、MOSFET11のソース電位、つまりソース電極40Sの電位を検出するためのパッド40Pである。アノードパッドAPは、半導体素子40が備える図示しない感温ダイオードのアノード電位を検出するためのパッド40Pである。カソードパッドKPは、感温ダイオードのカソード電位を検出するためのパッド40Pである。
【0042】
パッド40Pのうち、ゲートパッドGP、アノードパッドAP、およびカソードパッドKPは、ソース電極40Sに対して電気的に分離されている。ケルビンソースパッドKSPは、ソース電極40Sに電気的に接続されている。本実施形態では、X方向においてゲートパッドGP、ケルビンソースパッドKSP、アノードパッドAP、カソードパッドKPの順に並んでいる。
【0043】
ソース電極40Sおよびパッド40Pは、半導体基板の裏面上に形成された図示しない保護膜から露出している。ドレイン電極40Dは、一面のほぼ全面に形成されている。ソース電極40Sは、半導体素子40の裏面の一部分に形成されている。平面視において、ドレイン電極40Dは、ソース電極40Sよりも面積が大きい。ドレイン電極40Dが第1主電極に相当し、ソース電極40Sが第2主電極に相当する。
【0044】
半導体装置20は、上記構成の半導体素子40を複数備えている。複数の半導体素子40は、上アーム9Hを構成する半導体素子40Hと、下アーム9Lを構成する半導体素子40Lを含んでいる。半導体素子40Hは上アーム素子、半導体素子40Lは下アーム素子と称されることがある。本実施形態の半導体素子40は、2つの半導体素子40Hと、2つの半導体素子40Lを含んでいる。
【0045】
半導体素子40Hは、第1素子である半導体素子41Hと、第2素子である半導体素子42Hを含んでいる。2つの半導体素子40H(41H、42H)は、X方向に並んでいる。X方向に並んで配置された2つの半導体素子40Hは、互いに共通の構造を有している。共通構造の2つの半導体素子40Hは、互いに同じ向きでX方向に並んで配置されている。2つの半導体素子40Hは、互いに並列接続されている。
【0046】
半導体素子40Lは、第1素子である半導体素子41Lと、第2素子である半導体素子42Lを含んでいる。2つの半導体素子40L(41L、42L)は、X方向に並んでいる。X方向に並んで配置された2つの半導体素子40Lは、互いに共通の構造を有している。共通構造の2つの半導体素子40Lは、互いに同じ向きでX方向に並んで配置されている。2つの半導体素子40Lは、互いに並列接続されている。
【0047】
本実施形態では、すべての半導体素子40が、互いに共通の構造を有している。半導体素子41H、42Hの配置と、半導体素子41L、42Lの配置とは、Z方向に沿う軸周りに2回対称性を有している。半導体素子40Hと半導体素子40Lは、Y方向に並んでいる。半導体装置20は、半導体素子40Hと半導体素子40LとによるY方向に沿う列を、2列有している。
【0048】
各半導体素子40は、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。各半導体素子40のドレイン電極40Dは、基板50に対向している。各半導体素子40のソース電極40Sは、基板60に対向している。
【0049】
基板50、60は、Z方向において、複数の半導体素子40を挟むように配置されている。基板50、60は、Z方向において互いに少なくとも一部が対向するように配置されている。基板50、60は、平面視において複数の半導体素子40(40H、40L)のすべてを内包している。
【0050】
基板50は、半導体素子40に対して、ドレイン電極40D側に配置されている。基板60は、半導体素子40に対して、ソース電極40S側に配置されている。基板50は、後述するようにドレイン電極40Dに電気的に接続され、配線機能を提供する。同様に、基板60は、ソース電極40Sに電気的に接続され、配線機能を提供する。このため、基板50、60は、配線部材、配線基板などと称されることがある。基板50はドレイン基板と称され、基板60はソース基板と称されることがある。基板50、60は、半導体素子40の生じた熱を放熱する放熱機能を提供する。このため、基板50、60は、放熱部材と称されることがある。基板50は、第1配線部材に相当する。基板60は、第2主電極に電気的に接続された第2配線部材である。
【0051】
基板50は、半導体素子40に対向する対向面50aと、対向面50aとは反対の面である裏面50bを有している。基板50は、絶縁基材51と、表面金属体52と、裏面金属体53を備えている。基板60は、半導体素子40に対向する対向面60aと、対向面60aとは反対の面である裏面60bを有している。基板60は、絶縁基材61と、表面金属体62と、裏面金属体63を備えている。以下において、表面金属体52、62、裏面金属体53、63を、単に金属体52、53、62、63と示すことがある。基板50は、絶縁基材51と金属体52、53とが積層された基板である。基板60は、絶縁基材61と金属体62、63とが積層された基板である。
【0052】
絶縁基材51は、表面金属体52と裏面金属体53とを電気的に分離する。同様に、絶縁基材61は、表面金属体62と裏面金属体63とを電気的に分離する。絶縁基材51、61は、絶縁層と称されることがある。絶縁基材51、61の材料は、樹脂、または、無機材料のセラミックである。樹脂としては、たとえばエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いることができる。セラミックとしては、たとえばAl2O3(alumina)、Si3N4(silicon nitride)などを用いることができる。絶縁基材51、61が樹脂の場合、基板50、60は、金属樹脂基板と称されることがある。絶縁基材51、61がセラミックの場合、基板50、60は、金属セラミック基板と称されることがある。
【0053】
樹脂材料を用いた絶縁基材51、61の場合、放熱性、絶縁性などを向上させるために、樹脂内に無機系のフィラー(無機系充填材)を含んでもよい。フィラーの添加により、線膨張係数を調整してもよい。フィラーとしては、たとえばAl2O3、SiO2(silicon dioxide)、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)などを用いることができる。絶縁基材51、61は、フィラーを1種類のみ含んでもよいし、複数種類含んでもよい。
【0054】
放熱性や絶縁性を考慮すると、樹脂系の場合、絶縁基材51、61それぞれの厚み、つまりZ方向の長さは、50μm~300μm程度が好ましい。セラミック系の場合、絶縁基材51、61の厚みは、200μm~500μm程度が好ましい。Z方向において、絶縁基材51、61の表面は内面、つまり半導体素子40側の面であり、Z方向において表面と反対の面である裏面は外面である。絶縁基材51、61は、材料構成を共通(同一)としてもよいし、互いに異ならせてもよい。本実施形態では、樹脂系の絶縁基材51、61を採用しており、材料構成は共通である。絶縁基材51、61の線膨張係数は、樹脂にフィラーを添加することで、封止体30とほぼ同じ値に調整されている。樹脂にフィラーを添加することで、絶縁基材51、61および封止体30の線膨張係数は、金属体52、53、62、63を構成する金属(Cu)に近い値となっている。
【0055】
金属体52、53、62、63は、たとえば、金属板または金属箔として提供される。金属体52、53、62、63は、CuやAlなどの導電性、熱伝導性が良好な金属を材料として形成されている。金属体52、53、62、63それぞれの厚みは、たとえば0.1mm~3mm程度である。表面金属体52は、Z方向において、絶縁基材51の表面に配置されている。裏面金属体53は、絶縁基材51の裏面に配置されている。同様に、表面金属体62は、Z方向において、絶縁基材61の表面に配置されている。裏面金属体63は、絶縁基材61の裏面に配置されている。
【0056】
表面金属体52、62と裏面金属体53、63との厚みの関係は特に限定されない。表面金属体52の厚みを、裏面金属体53より厚くしてもよいし、裏面金属体53とほぼ等しくしてもよい。表面金属体52の厚みを、裏面金属体53より薄くしてもよい。同様に、表面金属体62の厚みを、裏面金属体63より厚くしてもよいし、裏面金属体63とほぼ等しくしてもよい。表面金属体62の厚みを、裏面金属体63より薄くしてもよい。表面金属体52、62の厚みの関係も特に限定されないし、裏面金属体53、63の厚みの関係も特に限定されない。
【0057】
表面金属体52、62は、パターニングされている。表面金属体52、62は、配線、つまり回路を提供する。このため、表面金属体52、62は、回路パターン、配線層、回路導体などと称されることがある。表面金属体52、62は、金属表面に、Ni系やAuなどのめっき膜を備えてもよい。表面金属体52、62のパターンを、回路パターンと示すことがある。表面金属体52の表面と、絶縁基材51の表面における表面金属体52の非配置領域とが、基板50の対向面50aをなしている。同様に、表面金属体62の表面と、絶縁基材61の表面における表面金属体62の非配置領域とが、基板60の対向面60aをなしている。
【0058】
たとえば、プレス加工やエッチングなどにより所定形状にパターニングした表面金属体52、62を準備し、絶縁基材51、61と裏面金属体53、63との二層構造の積層体に密着させて、基板50、60を形成してもよい。表面金属体52、62、絶縁基材51、61、裏面金属体53、63の三層構造の積層体を形成した後、切削やエッチングにより、表面金属体52、62をパターニングしてもよい。
【0059】
表面金属体52は、図8図9などに示すように、P配線54と、中継配線55を有している。P配線54と中継配線55とは、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。このギャップには、封止体30が充填されている。Z方向における半導体素子40側の面として、P配線54は対向面54aを有し、中継配線55は対向面55aを有している。これら対向面54a、55aは、上記した対向面50aをなしている。
【0060】
P配線54は、後述するP端子91Pおよび半導体素子40Hのドレイン電極40Dに接続されている。P配線54は、P端子91Pと半導体素子40Hのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。P配線54は、半導体素子41Hのドレイン電極40Dと半導体素子42Hのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。
【0061】
中継配線55は、半導体素子40Lのドレイン電極40D、アーム接続部80、および出力端子92に接続されている。中継配線55は、アーム接続部80と半導体素子40Lのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。中継配線55は、半導体素子40Hのソース電極40Sおよび半導体素子40Lのドレイン電極40Dと出力端子92とを電気的に接続している。中継配線55は、半導体素子41Lのドレイン電極40Dと半導体素子42Lのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。
【0062】
P配線54と中継配線55は、Y方向に並んで配置されている。Y方向において、P配線54は電源端子91側に配置され、中継配線55は出力端子92側に配置されている。P配線54は封止体30の側面30c側に配置され、中継配線55は側面30d側に配置されている。
【0063】
P配線54は、切り欠き540を有している。切り欠き540は、X方向を長手方向とする平面略矩形状の4辺のひとつに開口している。切り欠き540は、側面30cと対向する辺において、X方向における略中央に設けられている。P配線54は、基部541と、一対の延設部542を有している。基部541および一対の延設部542が、切り欠き540を規定している。P配線54は、平面略U字状(凹字状)をなしている。
【0064】
基部541は、Y方向において、切り欠き540および延設部542よりも中継配線55側の部分であり、平面略矩形状をなしている。基部541は、平面視において半導体素子40Hに重なっている。つまり、2つの半導体素子40H(41H,42H)は、基部541に配置されている。半導体素子40Hそれぞれのドレイン電極40Dは、基部541に接続されている。
【0065】
2つの延設部542は、基部541から、互いに同じ方向、具体的にはY方向であって封止体30の側面30c側に延びている。延設部542のひとつは基部541におけるX方向の一端付近に連なっており、他のひとつは、基部541の他端付近に連なっている。P配線54のU字の両端部、つまり、2つの延設部542における基部541とは反対側の端部は、Y方向において互いにほぼ同じ位置である。一対の延設部542は、X方向において切り欠き540を挟んでいる。Y方向の長さは、基部541のほうが、切り欠き540の深さおよび延設部542よりも長い。
【0066】
中継配線55も、切り欠き550を有している。切り欠き550は、平面略矩形状の4辺のひとつに開口している。切り欠き550は、側面30dと対向する辺において、X方向における略中央に設けられている。つまり、表面金属体52において、Y方向の端部のひとつに切り欠き540が設けられ、端部の他のひとつに切り欠き550が設けられている。
【0067】
中継配線55は、基部551と、一対の延設部552を有している。基部551および一対の延設部552が、切り欠き550を規定している。中継配線55は、平面略U字状(凹字状)をなしている。基部551は、Y方向において、切り欠き550および延設部552よりもP配線54側の部分であり、平面略矩形状をなしている。基部551は、平面視において半導体素子40Lに重なっている。つまり、2つの半導体素子40L(41L、42L)は、基部551に配置されている。半導体素子40Lそれぞれのドレイン電極40Dは、基部551に接続されている。
【0068】
2つの延設部552は、基部551から、互いに同じ方向、具体的にはY方向であって封止体30の側面30d側に延びている。延設部552のひとつは基部551におけるX方向の一端付近に連なっており、他のひとつは、基部551の他端付近に連なっている。中継配線55のU字の両端部、つまり、2つの延設部552における基部551とは反対側の端部は、Y方向において互いにほぼ同じ位置である。一対の延設部552は、X方向において切り欠き550を挟んでいる。Y方向の長さは、基部551のほうが、切り欠き550の深さおよび延設部552よりも長い。
【0069】
表面金属体62は、図3および図10などに示すように、N配線64と、中継配線65を有している。N配線64と中継配線65は、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。このギャップには、封止体30が充填されている。Z方向における半導体素子40側の面として、N配線64は対向面64aを有し、中継配線65は対向面65aを有している。これら対向面64a、65aは、上記した対向面60aをなしている。
【0070】
N配線64は、後述するN端子91Nおよび半導体素子40Lのソース電極40Sに接続されている。N配線64は、N端子91Nと半導体素子40Lのソース電極40Sとを電気的に接続している。N配線64は、半導体素子41Lのソース電極40Sと半導体素子42Lのソース電極40Sとを電気的に接続している。N配線64は、負極配線、低電位電源配線などと称されることがある。
【0071】
中継配線65は、半導体素子40Hのソース電極40Sおよびアーム接続部80に接続されている。中継配線65は、半導体素子40Hのソース電極40Sとアーム接続部80とを電気的に接続している。中継配線65は、半導体素子41Hのソース電極40Sと半導体素子42Hのソース電極40Sとを電気的に接続している。
【0072】
N配線64も、切り欠き640を有している。切り欠き640は、平面略矩形状の4辺のひとつに開口している。切り欠き640は、側面30cと対向する辺において、X方向における略中央に設けられている。N配線64は、基部641と、一対の延設部642を有している。基部641および一対の延設部642が、切り欠き640を規定している。N配線64は、平面略U字状(凹字状)をなしている。
【0073】
基部641は、Y方向において、切り欠き640および延設部642よりも側面30d側の部分である。基部641は、X方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。基部641は、Y方向において中継配線65と並んで配置されている。基部641は、平面視において中継配線55に重なっている。半導体素子40Lそれぞれのソース電極40Sは、基部641に接続されている。
【0074】
2つの延設部642は、基部641から、互いに同じ方向、具体的にはY方向であって封止体30の側面30c側に延びている。延設部642のひとつは基部641におけるX方向の一端付近に連なっており、他のひとつは、基部641の他端付近に連なっている。N配線64のU字の両端部、つまり、2つの延設部642における基部641とは反対側の端部は、Y方向において互いにほぼ同じ位置である。
【0075】
一対の延設部642は、X方向において表面金属体62の両端をなしている。一対の延設部642は、基板60の端部付近に配置されている。平面視において、一対の延設部642のそれぞれの一部が、P配線54に重なっている。Y方向において、延設部642の長さは、基部641よりも長い。
【0076】
中継配線65は、上記したように、N配線64、具体的には基部641とY方向に並んで配置されている。Y方向において、中継配線65は、封止体30の側面30cに対して近い位置に配置され、基部641は側面30dに対して近い位置に配置されている。中継配線65は、X方向において一対の延設部642の間に配置されている。中継配線65は、一対の延設部642により挟まれている。中継配線65は、切り欠き640内に配置されている。中継配線65は、N配線64との間に所定の間隔(ギャップ)を有して配置されている。平面視において、中継配線65の一部はP配線54に重なり、他の一部は中継配線55に重なっている。半導体素子40Hそれぞれのソース電極40Sは、中継配線65に接続されている。表面金属体62(N配線64および中継配線65)の配置の詳細については後述する。
【0077】
裏面金属体53、63は、絶縁基材51、61により、半導体素子40および表面金属体52、62を含む回路とは電気的に分離されている。裏面金属体53、63は、金属ベース基板と称されることがある。半導体素子40の生じた熱は、表面金属体52、62および絶縁基材51、61を介して、裏面金属体53、63に伝わる。裏面金属体53、63は、放熱機能を提供する。
【0078】
本実施形態の裏面金属体53、63は、平面略矩形状をなしている。裏面金属体53、63は、絶縁基材51、61の裏面のほぼ全域に配置された、いわゆるベタ導体である。上記したように、フィラーの添加により絶縁基材51、61の線膨張係数を調整しているため、表裏でパターンを変えても反りを抑制することができる。もちろん、裏面金属体53、63を、平面視において表面金属体52、62と一致するように、パターニングしてもよい。
【0079】
本実施形態の裏面金属体53、63は、対応する絶縁基材51、61の裏面のほぼ全域に配置されている。放熱効果をさらに高めるために、裏面金属体53、63の少なくともひとつは、封止体30から露出してもよい。本実施形態では、裏面金属体53が封止体30の一面30aから露出し、裏面金属体63が裏面30bから露出している。裏面金属体53の露出面は、一面30aと略面一である。裏面金属体63の露出面は、裏面30bと略面一である。裏面金属体53、63が、基板50、60の裏面50b、60bをなしている。
【0080】
導電スペーサ70は、半導体素子40と基板60との間に、所定の間隔を確保するスペーサ機能を提供する。導電スペーサ70は、半導体素子40のパッド40Pに、対応する信号端子93を電気的に接続するためのワイヤ高さを確保する。導電スペーサ70は、半導体素子40のソース電極40Sと基板60との電気伝導、熱伝導経路の途中に位置し、配線機能および放熱機能を提供する。導電スペーサ70は、Cuなどの導電性、熱伝導性が良好な金属材料を含んでいる。導電スペーサ70は、表面にめっき膜を備えてもよい。
【0081】
導電スペーサ70は、ターミナル、ターミナルブロック、金属ブロック体などと称されることがある。半導体装置20は、半導体素子40と同数の導電スペーサ70を備えている。具体的には、4つの導電スペーサ70を備えている。導電スペーサ70は、半導体素子40に個別に接続されている。導電スペーサ70は、平面視においてソース電極40Sとほぼ同じ若しくは若干小さい大きさを有する柱状体である。
【0082】
アーム接続部80は、中継配線55、65を電気的に接続する。つまり、アーム接続部80は、上アーム9Hと下アーム9Lとを電気的に接続する。アーム接続部80は、Y方向において、半導体素子40Hと半導体素子40Lの間に設けられている。アーム接続部80は、平面視において中継配線55と中継配線65との重なり領域に設けられている。本実施形態のアーム接続部80は、継手部81と、後述する接合材103を備えて構成される。
【0083】
継手部81は、表面金属体52、62とは別に設けられた金属柱状体である。このような継手部81は、継手ターミナルと称されることがある。Z方向において、継手部81の端部のひとつと中継配線55との間に接合材103が介在し、端部の他のひとつと中継配線65との間に接合材103が介在している。
【0084】
これに代えて、継手部81は、表面金属体52、62の少なくともひとつに一体的に連なるものでもよい。つまり、継手部81は、基板50、60の一部として表面金属体52、62と一体的に設けたものでもよい。たとえば継手部81は、表面金属体62(中継配線65)の凸部である。アーム接続部80は、継手部81を備えない構成としてもよい。つまり、アーム接続部80が、接合材103のみを備える構成としてもよい。
【0085】
外部接続端子90は、半導体装置20を外部機器に電気的に接続するための端子である。外部接続端子90は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成されている。外部接続端子90は、たとえば板材である。外部接続端子90は、リードと称されることがある。外部接続端子90は、電源端子91と、出力端子92と、信号端子93を備えている。電源端子91は、P端子91Pと、N端子91Nを備えている。P端子91P、N端子91N、および出力端子92は、半導体素子40の主電極に電気的に接続される主端子である。信号端子93は、上アーム9H側の信号端子93Hと、下アーム9L側の信号端子93Lを備えている。
【0086】
電源端子91は、上記した電源ライン7、8に電気的に接続される外部接続端子90である。P端子91Pは、平滑コンデンサ5の正極端子に電気的に接続される。P端子91Pは、正極端子、高電位電源端子などと称されることがある。P端子91Pは、表面金属体52のP配線54に接続されている。つまり、P端子91Pは、上アーム9Hを構成する半導体素子40Hのドレイン電極40Dに接続されている。
【0087】
P端子91Pは、P配線54におけるY方向の一端付近に接続されている。P端子91Pは、P配線54との接続部(接合部)からY方向に延び、側面30cにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。本実施形態の半導体装置20は、2本のP端子91Pを備えている。図8に示すように、P端子91Pのひとつは一対の延設部542のひとつに接続され、他のひとつは一対の延設部542の他のひとつに接続されている。P端子91Pは、平面視においてN端子91Nと隣り合うように、延設部542のそれぞれにおいて切り欠き540に近い位置、つまり内寄りに配置されている。2つのP端子91Pは、X方向に並んで配置されている。2つのP端子91Pは、Z方向においてほぼ同じ位置に配置されている。
【0088】
N端子91Nは、平滑コンデンサ5の負極端子に電気的に接続される。N端子91Nは負極端子、低電位電源端子などと称されることがある。N端子91Nは、表面金属体62のN配線64に接続されている。つまり、N端子91Nは、下アーム9Lを構成する半導体素子40Lのソース電極40Sに接続されている。
【0089】
N端子91Nは、N配線64におけるY方向の一端付近に接続されている。N端子91Nは、N配線64との接合部からY方向に延び、側面30cにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。半導体装置20は、2本のN端子91Nを備えている。N端子91Nのひとつは一対の延設部642のひとつに接続され、他のひとつは一対の延設部642の他のひとつに接続されている。2つのN端子91Nは、X方向に並んで配置されている。2つのN端子91Nは、Z方向においてほぼ同じ位置に配置されている。
【0090】
2つのN端子91Nは、X方向において2つのP端子91Pの外側に配置されている。平面視において、N端子91NのひとつはP端子91Pのひとつの近傍に配置され、N端子91Nの他のひとつはP端子91Pの他のひとつの近傍に配置されている。X方向において隣り合うN端子91NとP端子91Pは、封止体30から突出した部分を含む一部分において、互いに側面が対向している。
【0091】
出力端子92は、モータジェネレータ3の対応する相の巻線3a(固定子コイル)に電気的に接続される。出力端子92は、O端子、交流端子などと称されることがある。図3および図8に示すように、出力端子92は、基板50における表面金属体52の中継配線55に接続されている。つまり、出力端子92は、上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点に接続されている。
【0092】
出力端子92は、中継配線55におけるY方向の一端付近に接続されている。出力端子92は、中継配線55との接合部からY方向に延び、側面30dにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。半導体装置20は、2本の出力端子92を備えている。出力端子92のひとつは一対の延設部552のひとつに接続され、他のひとつは一対の延設部552の他のひとつに接続されている。2つの出力端子92は、X方向に並んで配置されている。2つの出力端子92は、Z方向においてほぼ同じ位置に配置されている。
【0093】
信号端子93は、駆動回路を含む図示しない回路基板に電気的に接続される。信号端子93Hは、ボンディングワイヤ110を介して、半導体素子40Hのパッド40Pに電気的に接続されている。信号端子93Hの本数は特に限定されるものではない。信号端子93Hは、少なくとも半導体素子40Hのゲート電極に駆動電圧を印加するための端子を少なくとも含む。本実施形態の半導体装置20は、2本の信号端子93Hを備えている。信号端子93Hは、平面視においてP配線54の切り欠き540に重なる位置に配置されている。信号端子93Hにおいて、ボンディングワイヤ110との接合部は、表面金属体52ではなく、絶縁基材51と対向している。2本の信号端子93Hは、X方向に横並びで配置されている。
【0094】
信号端子93Hは、ボンディングワイヤ110との接合部からY方向に延び、側面30cにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。信号端子93Hの突出部の少なくとも一部は、電源端子91と同方向に延びている。信号端子93Hは、X方向において、2つのP端子91Pの間に配置されている。つまり、側面30cから突出する外部接続端子90は、X方向において、N端子91N、P端子91P、2本の信号端子93H、P端子91P、N端子91Nの順に配置されている。
【0095】
信号端子93Hは、ゲート端子93Gと、ケルビンソース端子93KSを含んでいる。2本の信号端子93Hは、半導体素子42Hから半導体素子41Hに向かう方向において、ゲート端子93G、ケルビンソース端子93KSの順に並んでいる。ゲート端子93Gは、ボンディングワイヤ110を介して各半導体素子40HのゲートパッドGPに接続されている。ケルビンソース端子93KSは、ボンディングワイヤ110を介して各半導体素子40HのケルビンソースパッドKSPに接続されている。
【0096】
信号端子93Lは、ボンディングワイヤ110を介して、半導体素子40Lのパッド40Pに電気的に接続されている。信号端子93Lは、半導体素子40Lのゲート電極に駆動電圧を印加するための端子を少なくとも含む。本実施形態の半導体装置20は、4本の信号端子93Lを備えている。信号端子93Lは、平面視において中継配線55の切り欠き550と重なる位置に配置されている。信号端子93Lにおいて、ボンディングワイヤ110との接合部は、表面金属体52ではなく、絶縁基材51と対向している。4本の信号端子93Lは、X方向に横並びで配置されている。
【0097】
信号端子93Lは、ボンディングワイヤ110との接合部からY方向に延び、側面30dにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。信号端子93Lの突出部の少なくとも一部は、出力端子92と同方向に延びている。信号端子93Lは、X方向において、2つの出力端子92の間に配置されている。つまり、側面30dから突出する外部接続端子90は、X方向において、出力端子92、4本の信号端子93L、出力端子92の順に配置されている。4本の信号端子93Lは、出力端子92の間のスペースに配置されている。
【0098】
信号端子93Lは、ゲート端子93G、ケルビンソース端子93KS、アノード端子93A、およびカソード端子93Kを含んでいる。4本の信号端子93Lは、半導体素子42Lから半導体素子41Lに向かう方向において、ゲート端子93G、ケルビンソース端子93KS、アノード端子93A、カソード端子93Kの順に並んでいる。4本の信号端子93Lの配置は、半導体素子41Lのパッド40Pの配置に対応している。
【0099】
ゲート端子93Gは、ボンディングワイヤ110を介して各半導体素子40LのゲートパッドGPに接続されている。ケルビンソース端子93KSは、ボンディングワイヤ110を介して各半導体素子40LのケルビンソースパッドKSPに接続されている。アノード端子93Aは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子41LのアノードパッドAPに接続されている。カソード端子93Kは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子41LのカソードパッドKPに接続されている。
【0100】
このように、半導体装置20は、信号端子93として2本の信号端子93Hと4本の信号端子93Lを備えている。信号端子93Hは、Y方向において、信号端子93Lとの間に半導体素子40を挟むように配置されている。2本の信号端子93Hは、4本の電源端子91(91P、91N)とともにX方向に並んで配置されている。4本の信号端子93Lは、2本の出力端子92とともにX方向に並んで配置されている。X方向において体格の増大を抑制するために、信号端子93Hを2本とし、信号端子93Lを4本としている。これにより、外部接続端子90の本数を、側面30c側と側面30d側のそれぞれにおいて6本としている。
【0101】
複数の半導体素子40が互いに熱的に接続された構成では、一部の半導体素子40の感温ダイオードのみを使用して複数の半導体素子40の過熱状態を保証することも可能である。よって、複数の半導体素子40のうちの一部のみをアノード端子93Aおよびカソード端子93Kに接続してもよい。この場合、信号端子93の本数を低減することができる。しかしながら、アノード端子93Aおよびカソード端子93Kに接続されない感温ダイオードを電位的に浮いた所謂フローティング状態にしておくと、半導体素子40に不具合が生じる虞がある。
【0102】
本実施形態では、感温ダイオードが電位的にフローティング状態となるのを抑制するために、信号端子93Hであるケルビンソース端子93KSは、ボンディングワイヤ110を介して各半導体素子40HのアノードパッドAPに接続されている。これに代えて、ケルビンソース端子93KSが、各半導体素子40HのカソードパッドKPに接続されてもよい。同様に、信号端子93Lであるケルビンソース端子93KSは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子42LのアノードパッドAPに接続されている。これに代えて、ケルビンソース端子93KSが、半導体素子42LのカソードパッドKPに接続されてもよい。
【0103】
半導体素子40のドレイン電極40Dは、接合材100を介して表面金属体52に接合されている。半導体素子40のソース電極40Sは、接合材101を介して導電スペーサ70に接合されている。導電スペーサ70は、接合材102を介して表面金属体62に接合されている。継手部81は、接合材103を介して表面金属体52、62に接合されている。外部接続端子90のうち、主端子であるP端子91P、N端子91N、および出力端子92は、接合材104を介して表面金属体52、62に接合されている。
【0104】
接合材100~104は、導電性を有する接合材である。たとえば、接合材100~104として、はんだを採用することができる。はんだの一例は、Snの他に、Cu、Niなどを含む多元系の鉛フリーはんだである。はんだに代えて、焼結銀などのシンター系の接合材を用いてもよい。
【0105】
P端子91P、N端子91N、および出力端子92は、接合材104を介さずに、対応する表面金属体52、62に直接的に接合されてもよい。P端子91P、N端子91N、および出力端子92は、たとえば超音波接合、摩擦撹拌接合、レーザ溶接などにより、表面金属体52、62に直接接合されてもよい。継手部81が基板50、60とは別に設けられる場合、継手部81は、表面金属体52、62に直接接合されてもよい。
【0106】
上記したように、半導体装置20では、封止体30によって一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40が封止されている。封止体30は、複数の半導体素子40、基板50の一部、基板60の一部、複数の導電スペーサ70、アーム接続部80、および外部接続端子90それぞれの一部を、一体的に封止(被覆)している。封止体30は、基板50、60において、絶縁基材51、61および表面金属体52、62を封止している。
【0107】
半導体素子40は、Z方向において、基板50、60の間に配置されている。半導体素子40は、対向配置された基板50、60によって挟まれている。これにより、半導体素子40の熱を、Z方向において両側に放熱することができる。半導体装置20は、両面放熱構造をなしている。基板50の裏面50bは、封止体30の一面30aと略面一となっている。基板60の裏面60bは、封止体30の裏面30bと略面一となっている。裏面50b、60bが露出面であるため、放熱性を高めることができる。
【0108】
X方向に並んで配置された2つの半導体素子40H(41H、42H)は、表面金属体52、62、導電スペーサ70、および接合材100~102により、互いに並列接続されている。X方向に並んで配置された2つの半導体素子40L(41L、42L)は、表面金属体52、62、導電スペーサ70、および接合材100~102により、互いに並列接続されている。
【0109】
<表面金属体の配置>
次に、図3図6図10、および図11に基づき、表面金属体62の配置(パターン)について説明する。図11は、図6の領域XIを拡大した図である。本実施形態の表面金属体62は、半導体装置20を構成する他の要素の一部との間で所定の位置関係をなすようにパターニングされている。
【0110】
表面金属体62のうち、まずN配線64について説明する。図3図6、および図11に示すように、ボンディングワイヤ110を介して電気的に接続された半導体素子40Lと信号端子93Lとは、Y方向に並んでいる。Y方向において、N配線64の端部64eは、N配線64の接合対象である導電スペーサ70の端部70e1と、半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置している。上記した端部40Le、64e、70e1のそれぞれは、Y方向において信号端子93L側の端部である。導電スペーサ70を備える構成において、N配線64の接合対象は、接合材102を介して接合される導電スペーサ70である。接合対象は、接続対象と称されることがある。
【0111】
N配線64の端部64eは、半導体素子41Lに接続された導電スペーサ70の端部70e1と、半導体素子41Lの端部40Leとの間に位置している。同様に、N配線64の端部64eは、半導体素子42Lに接続された導電スペーサ70の端部70e1と、半導体素子42Lの端部40Leとの間に位置している。
【0112】
N配線64の端部64eは、Y方向において絶縁基材61の端部61e1よりも導電スペーサ70の端部70e1に近い位置でもよいし、端部61e1の位置とほぼ一致してもよい。端部61e1は、Y方向において信号端子93L側の端部である。本実施形態の端部64eは、端部61e1よりも端部70e1に近い。つまり、N配線64は、切り欠かれている。図6図10、および図11に示すように、絶縁基材61は、表面金属体62から露出する露出部61a1を有している。そして、信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110の頂点部110tは、Z方向において露出部61a1に対向している。頂点部110tは、Z方向においてN配線64の対向面64aよりも絶縁基材61に近い。頂点部110tは、Y方向において端部40Le、61e1の間に位置している。
【0113】
図11では、Y方向においてN配線64の端部64eの位置をP1、半導体素子40Lの端部40Leの位置をP2、導電スペーサ70の端部70e1の位置をP3と示している。端部64eの位置P1は、端部40Leの位置P2と端部70e1の位置P3の間にある。
【0114】
中継配線65も、N配線64と同様の構成を有している。図3および図6に示すように、ボンディングワイヤ110を介して電気的に接続された半導体素子40Hと信号端子93Hとは、Y方向に並んでいる。そして、Y方向において、中継配線65の端部65eは、中継配線65の接合対象である導電スペーサ70の端部70e2と、半導体素子40Hの端部40Heとの間に位置している。上記した端部40He、65e、70e2のそれぞれは、Y方向において信号端子93H側の端部である。導電スペーサ70を備える構成において、中継配線65の接合対象は、接合材102を介して接合される導電スペーサ70である。
【0115】
中継配線65の端部65eは、半導体素子41Hに接続された導電スペーサ70の端部70e2と、半導体素子41Hの端部40Heとの間に位置している。同様に、中継配線65の端部65eは、半導体素子42Hに接続された導電スペーサ70の端部70e2と、半導体素子42Hの端部40Heとの間に位置している。
【0116】
中継配線65の端部65eは、Y方向において絶縁基材61の端部61e2よりも導電スペーサ70の端部70e2に近い位置でもよいし、端部61e2の位置とほぼ一致してもよい。端部61e2は、Y方向において信号端子93H側の端部である。本実施形態の端部65eは、端部61e2よりも端部70e2に近い。つまり、中継配線65は、切り欠かれている。図6および図10に示すように、絶縁基材61は、表面金属体62から露出する露出部61a2を有している。そして、信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110の頂点部110tは、Z方向において露出部61a2に対向している。頂点部110tは、Z方向において中継配線65の対向面65aよりも絶縁基材61に近い。頂点部110tは、Y方向において端部40He、61e2の間に位置している。
【0117】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態では、第2主電極であるソース電極40Sに電気的に接続される第2配線部材として基板60を用いる。そして、基板60が有する表面金属体62のパターニングにより、N配線64の端部64eが、N配線64の接合対象である導電スペーサ70の端部70e1と半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置している。中継配線65の端部65eが、中継配線65の接合対象である導電スペーサ70の端部70e2と半導体素子40Hの端部40Heとの間に位置している。
【0118】
このように、表面金属体62の端部64e、65eが対応する半導体素子40の端部40Le、40Heよりも内側に位置する。これにより、表面金属体62とボンディングワイヤ110との接触を避け、基板60の表面金属体62と基板50の表面金属体52との対向面同士を近づけることができる。たとえば図11に示すように、中継配線55の対向面55aとN配線64の対向面64aとを近づけることができる。つまり、Z方向における対向面55a、64aの間の距離である対向面間距離D1を短くすることができる。
【0119】
図11に示す破線矢印は、電流の流れを示している。上記したように対向面55a、64aが近づくことで互いに逆向きに流れる電流による磁束打消しの効果を高め、これによりインダクタンスを低減することができる。また、半導体素子40から表面金属体62までの熱伝達経路が短くなるため、熱抵抗を低減することができる。
【0120】
対向面55a、64a以外にも、P配線54の対向面54aとN配線64の対向面64aとを近づけることができる。P配線54の対向面54aと中継配線65の対向面65aとを近づけることができる。中継配線55の対向面55aと中継配線65の対向面65aとを近づけることができる。よって、インダクタンスを低減することができる。また、熱抵抗を低減することができる。
【0121】
熱は、伝熱部材が存在することで理想的に45度の角度で拡がる。本実施形態では、表面金属体62の端部64e、65eが、表面金属体62の接合対象である導電スペーサ70の端部70e1、70e2よりも外側に位置する。表面金属体62を通じて、半導体素子40の熱を平面視で導電スペーサ70(接合対象)の外側に拡散することができる。つまり、本実施形態では、図11に一点鎖線の矢印で示すように半導体素子40の熱が理想的または理想に近い状態で拡散する。よって、熱抵抗を低減することができる。以上より、本実施形態の半導体装置20によれば、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0122】
本実施形態では、導電スペーサ70を備える構成において、上記した表面金属体62の配置を採用している。これにより、表面金属体52、62の対向面同士を近づける、すなわち導電スペーサ70の厚みT1を薄くすることができる。導電スペーサ70が薄いため、熱抵抗を低減することができる。
【0123】
本実施形態では、信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110の頂点部110tが、Z方向において絶縁基材61の露出部61a1に対向している。信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110の頂点部110tが、Z方向において絶縁基材61の露出部61a2に対向している。換言すれば、表面金属体62の端部64e、65eよりも外側まで絶縁基材61(および裏面金属体63)が配置されている。これにより、表面金属体62から絶縁基材61、裏面金属体63へ熱が伝わる際に平面視で表面金属体62の外側にも拡散する。よって、熱抵抗をさらに低減することができる。
【0124】
<変形例>
図12に示すように、表面金属体62であるN配線64の端部64eが、半導体素子40Lのパッド40Pにおけるソース電極40S側の端部40Peと半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置してもよい。図12は、図11に対応している。図12では、端部40Peの位置をP4と示している。端部64eの位置P1は、端部40Leの位置P2と端部40Peの位置P4の間にある。これによれば、平面視において導電スペーサ70(接合対象)よりも外側へ熱が拡散しやすくなり、熱抵抗をより低減することができる。
【0125】
なお、中継配線65の端部65eについても同様である。図示しないが、中継配線65の端部65eが、半導体素子40Hのパッド40Pにおけるソース電極40S側の端部と半導体素子40Hの端部40Heとの間に位置してもよい。
【0126】
半導体装置20が導電スペーサ70を備える例を示したが、これに限定されない。半導体素子40と表面金属体62との間に導電スペーサ70が介在せず、表面金属体62が接合材を介してソース電極40Sに接合された構成としてもよい。この場合、表面金属体62の接合対象の金属体は、ソース電極40Sとなる。
【0127】
図13に示すように、表面金属体62が、裏面金属体63よりも厚い構成としてもよい。図13は、図11に対応している。表面金属体62が厚いほど、対向面間距離D2を短くすることができる。これにより磁束打消しの効果が高まり、インダクタンスをさらに低減することができる。また、表面金属体62を厚くすると、図13に示すように導電スペーサ70を排除した構成としやすい。図13では、表面金属体62が、接合材102Aを介してソース電極40Sに接合されている。もちろん、導電スペーサ70を備える構成において、表面金属体62を裏面金属体63より厚くしてもよい。
【0128】
図13に示すように、N配線64の端部64eは、接合対象であるソース電極40Sの端部40Se1と、半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置する。端部40Se1は、Y方向において信号端子93L側の端部である。図13では、端部40Se1の位置をP5と示している。端部64eの位置P1は、端部40Leの位置P2と端部40Se1の位置P5の間にある。中継配線65の端部65eは、接合対象であるソース電極40Sの端部40Se2(図3参照)と、半導体素子40Hの端部40Heとの間に位置する。このような配置により、接合対象をソース電極40Sとする構成においても、接合対象を導電スペーサ70とする構成と同様の効果を奏することができる。
【0129】
表面金属体62の端部64e、65eは、上記した例に限定されない。たとえば図14に示すように、表面金属体62に切り欠き620、621を設け、切り欠き620、621を規定する辺部の少なくとも一部を上記した端部64e、65eとしてもよい。図14では、一例として切り欠き620、621の底辺を端部64e、65eとしている。
【0130】
切り欠き620は、信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110との接触を避けるように、N配線64の信号端子93L側の端部に局所的に設けられている。切り欠き621は、信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110との接触を避けるように、中継配線65の信号端子93H側の端部に局所的に設けられている。このように、表面金属体62を局所的に切り欠いた形状としてもよい。これによれば、端部を一律に切り欠いた形状に較べて、熱抵抗を低減することができる。
【0131】
パッド40Pの配置は、上記した例に限定されない。たとえば図15に示すように、パッド40Pは、平面略矩形状をなす半導体素子40の4つの角部のうちのひとつの周辺に偏って設けられてもよい。互いに共通の構造を有し,X方向に並んで配置された2つの半導体素子40Lにおいて、半導体素子42Lは、半導体素子41Lの配置に対して90度回転して配置されている。互いに共通の構造を有し,X方向に並んで配置された2つの半導体素子40Hにおいて、半導体素子42Hは、半導体素子41Hの配置に対して90度回転して配置されている。また、ソース電極40Sおよび導電スペーサ70のそれぞれは、パッド40Pを避けるように、平面略矩形状の4つの角部のうちのひとつを切り欠いた形状をなしている。
【0132】
図15では、上記したパッド40Pの配置において、表面金属体62に切り欠き622、623を設け、切り欠き622、623を規定する辺部の少なくとも一部を上記した端部64e、65eとしている。切り欠き622は、N配線64と信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110との接触を避けつつ、端部64eが上記した位置関係を満たすように、N配線64の信号端子93L側の端部に局所的に設けられている。切り欠き623は、中継配線65と信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110との接触を避けつつ、端部65eが上記した位置関係を満たすように、中継配線65の信号端子93H側の端部に局所的に設けられている。このように、表面金属体62を局所的に切り欠いた形状とすることで、パッド40Pが偏った配置でも、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0133】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ボンディングワイヤ110を絶縁基材61に接触しないように設けていた。これに代えて、ボンディングワイヤ110を絶縁基材61に接触するように設けてもよい。
【0134】
図16は、本実施形態に係る半導体装置20の一例を示す断面図である。図16は、図11に対応している。図16に示す半導体装置20において、ボンディングワイヤ110は、絶縁基材61に接触している。ボンディングワイヤ110は、絶縁基材61に接触している部分である接触部110cを有している。ボンディングワイヤ110は、絶縁基材61に押し当てられ、変形している。この変形により、接触部110cは、たとえば絶縁基材61の表面に対して略平行に延びている。信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110は、絶縁基材61の露出部61a1に接触している。図示しないが、信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110は、絶縁基材61の露出部61a2に接触している。
【0135】
また、半導体装置20は、導電スペーサ70を備えていない。基板60の表面金属体62は、接合材102Aを介して、接合対象であるソース電極40Sに接合されている。N配線64は、半導体素子40Lのソース電極40Sに接合されている。図示しないが、中継配線65は、半導体素子40Hのソース電極40Sに接合されている。
【0136】
それ以外の構成は、先行実施形態に示した構成と同様である。たとえばN配線64の端部64eは、接合対象であるソース電極40Sの端部40Se1と半導体素子40Lの端部40Leとの間に位置している。図示しないが、中継配線65の端部65eは、接合対象であるソース電極40Sの端部40Se2と半導体素子40Hの端部40Heとの間に位置している。
【0137】
図17は、図16に示す半導体装置20の製造方法の一例を示す断面図である。図17は、図16に対応している。図17は、半導体素子40と基板60とを電気的に接続する工程を示している。
【0138】
まず、半導体装置20を構成する各要素を準備する。本実施形態では、端部64e、65eが上記した位置関係を満たすように表面金属体62がパターニングされた基板60を準備する。
【0139】
次いで、第1接続工程を行う。この工程では、基板50の表面金属体52に対してドレイン電極40Dが向き合うように、表面金属体52上に半導体素子40を配置する。そして、ドレイン電極40Dと表面金属体52とを電気的に接続する。本実施形態では、接合材100により、ドレイン電極40Dと表面金属体52とを接合する。第1接続工程では、接合材103により、継手部81と表面金属体52とを接合する。接合材104により、P端子91Pおよび出力端子92と表面金属体52とを接合する。
【0140】
次いで、ワイヤボンディング工程を行う。この工程では、ボンディングワイヤ110を介して、半導体素子40のパッド40Pと信号端子93とを接続する。具体的には、ボンディングワイヤ110を介して、信号端子93Lと半導体素子40Lの対応するパッド40Pとを接続する。ボンディングワイヤ110を介して、信号端子93Hと半導体素子40Hの対応するパッド40Pとを接続する。
【0141】
次いで、第2接続工程を行う。この工程では、半導体素子40のソース電極40Sと第2配線部材である基板60とを電気的に接続する。本実施形態では、接合材102Aを介してソース電極40Sと表面金属体62とを接合する。このとき、半導体素子40が接続された基板50と基板60とを、表面金属体52、62の対向面が近づく方向に相対的に変位させる。
【0142】
この変位により、表面金属体62から露出する絶縁基材61の露出部61a1、61a2がボンディングワイヤ110の頂点部110tに接触する。図17に示すように、絶縁基材61の露出部61a1が、信号端子93Lに接続されたボンディングワイヤ110に接触する。絶縁基材61の露出部61a2が、信号端子93Hに接続されたボンディングワイヤ110に接触する。
【0143】
そして、接触状態から表面金属体52、62の対向面、たとえば図17に示す対向面55a、64aがさらに近づく方向に変位させる。ボンディングワイヤ110は、絶縁基材61(基板60)により押されて変形し、ボンディングワイヤ110の高さがワイヤボンディング時よりも低くなる。この変形状態で、ソース電極40Sと表面金属体62とを接合する。第2接続工程では、接合材103を介して、継手部81と表面金属体62とを接合する。接合材104を介して、N端子91Nと表面金属体62とを接合する。
【0144】
次いで、封止体30の成形工程を行う。たとえば上記したトランスファモールド法により封止体30を成形する。成形後、たとえば切削を行う。封止体30を基板50、60の裏面金属体53、63の一部ごと切削する。これにより、封止体30から裏面50b、60bを露出させる。裏面50bは封止体30の一面30aと略面一となり、裏面60bは裏面30bと略面一となる。なお、裏面50b、60bを成形金型のキャビティ壁面に押し当て、密着させた状態で、封止体30を成形してもよい。この場合、封止体30を成形した時点で、裏面50b、60bが封止体30から露出する。このため、成形後の切削が不要となる。
【0145】
次いで、リードフレームにおいてタイバーなどの不要部分を除去することで、上記した半導体装置20を得ることができる。
【0146】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態における表面金属体62の端部64e、65eの位置は、先行実施形態と同様である。よって、先行実施形態に記載の構成と同等の効果を奏することができる。つまり、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0147】
本実施形態では、上記したように基板60の絶縁基材61をボンディングワイヤ110に押し当てて、ソース電極40Sと表面金属体62とを接合する。ボンディングワイヤ110は絶縁基材61(基板60)により押されて変形し、ボンディングワイヤ110の高さがワイヤボンディング時よりも低くなる。ボンディングワイヤ110が絶縁基材61の露出部61a1、60a2に接触する構成とすることで、対向面間距離D1をさらに短くすることができる。これにより、インダクタンスをさらに低減することができる。また、熱抵抗をさらに低減することができる。また、導電スペーサ70を排除した構成としやすい。たとえば図13に示したように表面金属体62を厚くしなくても、導電スペーサ70を排除しやすくなる。
【0148】
また、ボンディングワイヤ110が信号端子93、パッド40Pと絶縁基材61との間で保持されるため、封止体30の成形時にワイヤ流れが生じるのを抑制することができる。
【0149】
図18は、電磁界シミュレーションの結果を示している。縦軸はインダクタンスを示しており、任意単位(a.u.)である。RE1、RE2は参考例の結果を示し、PE1、PE2は本実施形態と同等の構成例(本例)の結果を示している。参考例は、本例とは異なり、導電スペーサを備えている。本例は、導電スペーサを備えないため、導電スペーサの厚さ分、表面金属体の対向面間距離が近づいている。RE1、PE1では、絶縁基材51、61の材料を窒化物系のセラミックとした。RE2、PE2では、絶縁基材51、61の材料を樹脂とした。
【0150】
図18に示すように、本例(PE1、PE2)によれば、セラミック、樹脂のいずれを用いた場合でも、参考例(RE1、RE2)に対してインダクタンスを2割程度低減できることが明らかとなった。
【0151】
なお、上記した第2接続工程において、ボンディングワイヤ110が絶縁基材61の露出部61a1、61a2に接触しても、第2接続工程の後工程、たとえば成形工程において、ボンディングワイヤ110が露出部61a1、61a2からわずかに離れることが考えられる。そこで、図19に示すように、半導体装置20は、ボンディングワイヤ110と絶縁基材61の露出部61a1、61a2との間に、距離D2が0.1mm以下のわずかな隙間を有してもよい。対向面間距離D1は、第2接続工程において決定するため、図16に示した構成と同等の効果を奏することができる。
【0152】
<変形例>
上記した製造方法を、導電スペーサ70を備える構成に適用してもよい。つまり、導電スペーサ70を備える構成において、ボンディングワイヤ110を絶縁基材61の露出部61a1、61a2に接触させてもよいし、0.1mm以下のわずかな隙間を有してもよい。導電スペーサ70の厚みを薄くすることができる。
【0153】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態、変形例のいずれの構成とも組み合わせが可能である。
【0154】
表面金属体62の端部64e、65eが、ソース電極40Sの端部40Se1、40Se2と半導体素子40の端部40Le、40Heとの間に位置する例を示したが、これに限定されない。たとえば図20に示すように、N配線64の端部64eの位置P1が、接合対象であるソース電極40Sの端部40Se1の位置P5より内側でもよい。Y方向において、端部40Le、64eの間に端部40Se1が位置している。上記したように、本実施形態によれば、ソース電極40S(第2主電極)と基板60(第2配線部材)とを電気的に接続する際に、基板50の絶縁基材61でボンディングワイヤ110を押さえる。これにより、対向面間距離D1を短くすることができるため、表面金属体62の端部64e、65eが上記した位置関係をとらなくても、インダクタンスおよび熱抵抗のそれぞれを効果的に低減することができる。
【0155】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、半導体装置20が半導体素子40H、40Lをそれぞれ2つ備え、半導体素子40H、40LのそれぞれがX方向に並び、半導体素子40H、40LがY方向に並んでいた。また、Y方向において封止体30の側面のひとつからP端子91P、N端子91N、および信号端子93Hが突出し、反対の側面から出力端子92および信号端子93Lが突出していた。
【0156】
しかしながら、半導体素子40の数、配置、および外部接続端子90の配置など、上記した例に限定されない。たとえば複数の半導体素子40に代えて、ひとつの半導体素子40により各アームを構成してもよい。半導体素子40を挟むように信号端子93H、93Lを配置する構成に代えて、信号端子93Hと信号端子93Lとを並んで配置してもよい。
【0157】
図21図24は、本実施形態の半導体装置20を示している。図21は、半導体装置20の斜視図である。図22は、図21をZ2方向から見た平面図である。図22は、内部構造を示す透過図である。図23は、図22のXXIII-XXIII線に沿う断面図である。図24は、図22のXXIV-XXIV線に沿う断面図である。
【0158】
本実施形態の半導体装置20は、先行実施形態同様、上下アーム回路9のひとつ、つまり一相分の上下アーム回路9を構成する。半導体装置20は、先行実施形態に記載の構成(図2図11参照)と同様の要素を備えている。半導体装置20は、封止体30と、半導体素子40と、基板50、60と、導電スペーサ70と、アーム接続部80と、外部接続端子90を備えている。以下では、主に、先行実施形態に記載の構成とは異なる部分について説明する。
【0159】
封止体30は、先行実施形態同様、半導体装置20を構成する他の要素の一部を封止している。図21に示すように、封止体30は平面略矩形状をなしている。封止体30は、Z方向において、一面30aと裏面30bを有している。一面30aと裏面30bをつなぐ側面は、外部接続端子90が突出する2つの側面30g、30hを含んでいる。側面30hは、Y方向において側面30gとは反対の面である。
【0160】
半導体素子40は、上アーム9Hを構成するひとつの半導体素子40Hと、下アーム9Lを構成するひとつの半導体素子40Lを含む。半導体装置20は、2つの半導体素子40を備えている。半導体素子40H、40Lの構成は、互いに共通である。図22に示すように、半導体素子40H、40Lは、X方向に並んでいる。各半導体素子40は、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。各半導体素子40のドレイン電極40Dは、基板50に対向している。各半導体素子40のソース電極40Sは、基板60に対向している。
【0161】
基板50、60は、Z方向において、複数の半導体素子40を挟むように配置されている。基板50、60は、Z方向において互いに少なくとも一部が対向するように配置されている。基板50、60は、平面視において複数の半導体素子40(40H、40L)のすべてを内包している。
【0162】
先行実施形態同様、基板50は、絶縁基材51と、表面金属体52と、裏面金属体53を備えている。基板60は、絶縁基材61と、表面金属体62と、裏面金属体63を備えている。表面金属体52は、P配線54と、中継配線55を有している。P配線54と中継配線55は、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。
【0163】
P配線54は、P端子91Pおよび半導体素子40Hのドレイン電極40Dに接続されている。P配線54は、P端子91Pと半導体素子40Hのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。P配線54は、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。中継配線55は、半導体素子40Lのドレイン電極40D、アーム接続部80、および出力端子92に接続されている。中継配線55は、平面略矩形状をなしている。
【0164】
P配線54と中継配線55は、X方向に並んで配置されている。半導体素子40Lは、中継配線55においてX方向の一端側、具体的にはP配線54に遠い側に偏って実装されている。アーム接続部80を構成する継手部81は、中継配線55においてX方向の他端側、具体的にはP配線54に近い側に偏って実装されている。P端子91Pは、P配線54においてY方向の一端付近に接続されている。出力端子92は、中継配線55においてY方向の一端付近に接続されている。P端子91Pおよび出力端子92は、半導体素子40に対してY方向の同じ側に配置されている。
【0165】
表面金属体62は、N配線64と、中継配線65を有している。N配線64と中継配線65は、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。N配線64は、N端子91Nおよび半導体素子40Lのソース電極40Sに接続されている。中継配線65は、半導体素子40Hのソース電極40Sおよびアーム接続部80に接続されている。
【0166】
N配線64は、基部643と、延設部644を有している。N配線64は、平面略L字状をなしている。基部643は、平面略矩形状をなしている。基部643は、平面視において半導体素子40Lの一部を内包している。基部643は、半導体素子40Lのソース電極40Sを内包している。延設部644は、平面略矩形状をなす基部643のひとつの辺に連なっている。延設部644は、基部643における中継配線65との対向辺からX方向において基部653側に延びている。
【0167】
N配線64(基部643)において、信号端子93L側の辺である端部64eは、Y方向において、半導体素子40Lの端部40Leと接合対象である導電スペーサ70の端部70eの間に位置している。
【0168】
中継配線65は、基部653と、延設部654を有している。中継配線65は、平面略L字状をなしている。基部653は、平面略矩形状をなしている。基部653は、平面視において半導体素子40Hの一部を内包している。基部653は、半導体素子40Lのソース電極40Sを内包している。延設部654は、平面略矩形状をなす基部653のひとつの辺に連なっている。延設部654は、基部653におけるN配線64との対向辺から、X方向において基部643側に延びている。延設部654の少なくとも一部は、平面視において中継配線55と重なっている。
【0169】
中継配線65において、信号端子93H側の辺である端部65eは、Y方向において、半導体素子40Hの端部40Heと接合対象である導電スペーサ70の端部70eの間に位置している。
【0170】
N配線64と中継配線65は、X方向に並んで配置されている。基部643、653は、X方向に並んでいる。半導体素子40Lのソース電極40Sは、基部643に電気的に接続されている。半導体素子40Hのソース電極40Sは、基部653に電気的に接続されている。延設部644、654は、Y方向に並んでいる。N端子91Nは、延設部644に接続されている。継手部81は、延設部654に接続されている。
【0171】
導電スペーサ70は、半導体素子40のソース電極40Sと基板60との間に介在する。導電スペーサ70は、半導体素子40のソース電極40Sに個別に接続されている。
【0172】
アーム接続部80は、中継配線55、65を電気的に接続する。アーム接続部80は、X方向において、半導体素子40Hと半導体素子40Lの間に設けられている。アーム接続部80は、平面視において中継配線55と中継配線65(延設部654)との重なり領域に設けられている。本実施形態のアーム接続部80は、先行実施形態同様、継手部81と、接合材103を備えて構成される。継手部81は、金属柱状体である。Z方向において、継手部81の端部のひとつと中継配線55との間に接合材103が介在し、端部の他のひとつと中継配線65との間に接合材103が介在している。これに代えて、継手部81は、表面金属体52、62の少なくともひとつに一体的に連なるものでもよい。アーム接続部80は、継手部81を備えない構成としてもよい。
【0173】
外部接続端子90は、電源端子91と、出力端子92と、信号端子93を備えている。電源端子91は、P端子91Pと、N端子91Nを備えている。以下では、P端子91P、N端子91N、および出力端子92を主端子91P、91N、92と示すことがある。信号端子93は、上アーム9H側の信号端子93Hと、下アーム9L側の信号端子93Lを備えている。
【0174】
P端子91Pは、P配線54におけるY方向の一端付近に接続されている。P端子91Pは、P配線54との接続部からY方向の外側に延びている。P端子91Pの一部分が封止体30により覆われ、残りの部分が封止体30から突出している。P端子91Pは、側面30gにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。
【0175】
N端子91Nは、N配線64におけるY方向の一端付近に接続されている。N端子91Nは、N配線64との接続部からY方向の外側に延びている。N端子91Nの一部分が封止体30により覆われ、残りの部分が封止体30から突出している。N端子91Nは、側面30gにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。
【0176】
出力端子92は、中継配線55におけるY方向の一端付近に接続されている。出力端子92は、中継配線55との接続部からY方向の外側に延びている。出力端子92の一部分が封止体30により覆われ、残りの部分が封止体30から突出している。出力端子92は、側面30gにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。
【0177】
3本の主端子91P、91N、92は、X方向に並んで配置されている。主端子91P、91N、92は、X方向においてP端子91P、N端子91N、出力端子92の順に配置されている。電源端子91であるP端子91PとN端子91Nは、封止体30から突出した部分を含む一部分において、側面が互いに対向している。
【0178】
信号端子93は、ボンディングワイヤ110を介して、対応する半導体素子40のパッド40Pに電気的に接続されている。信号端子93Hは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子40Hのパッド40Pに接続されている。信号端子93Lは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子40Lのパッド40Pに接続されている。信号端子93は、Y方向であって外側に延び、側面30hにおいてZ方向の中央付近から封止体30の外に突出している。信号端子93は、Y方向において主端子91P、91N、92とは反対側に延びている。Y方向において、主端子91P、91N、92と信号端子93との間に、半導体素子40が配置されている。
【0179】
半導体装置20は、2つのガイドフレーム94を備えている。ガイドフレーム94のひとつは、P端子91Pに連なっている。ガイドフレーム94の他のひとつは、出力端子92に連なっている。これらガイドフレーム94は、リードフレームの不要部分を除去する前の状態で、信号端子93を保持する外周フレームと、主端子91P、92とをつなぐ部分である。P端子91Pに連なるガイドフレーム94の一部分は、P配線54に接続されている。出力端子92に連なるガイドフレーム94の一部分は、中継配線55に接続されている。ガイドフレーム94は、主端子91P、91N、92と同様の接続構造(接合構造)が可能である。
【0180】
上記したように、本実施形態の半導体装置20では、封止体30によって一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40が封止されている。封止体30は、複数の半導体素子40、基板50の一部、基板60の一部、複数の導電スペーサ70、アーム接続部80、および外部接続端子90それぞれの一部を、一体的に封止している。封止体30は、基板50、60において、絶縁基材51、61および表面金属体52、62を封止している。
【0181】
半導体素子40は、Z方向において、基板50、60の間に配置されている。半導体素子40は、対向配置された基板50、60によって挟まれている。これにより、半導体素子40の熱を、Z方向において両側に放熱することができる。半導体装置20は、両面放熱構造をなしている。基板50の裏面50bは、封止体30の一面30aと略面一となっている。基板60の裏面60bは、封止体30の裏面30bと略面一となっている。裏面50b、60bが露出面であるため、放熱性を高めることができる。
【0182】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態における表面金属体62の端部64e、65eの位置は、先行実施形態と同様である。よって、先行実施形態に記載の構成と同等の効果を奏することができる。つまり、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減することができる。
【0183】
本実施形態に記載の構成は、第1実施形態、第2実施形態、変形例のいずれの構成とも組み合わせが可能である。たとえば本実施形態において、図14に示したように、表面金属体62に切り欠き620、621を設けてもよい。図15に示したように、パッド40Pを矩形の角部のひとつに偏って設け、表面金属体62に切り欠き622、623を設けてもよい。図16に示したように、ボンディングワイヤ110を表面金属体62の露出部61a1、61a2に接触させてもよい。導電スペーサ70を排除した構成としてもよい。
【0184】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0185】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0186】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0187】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0188】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
【0189】
半導体素子40が、スイッチング素子としてMOSFET11を有する例を示したが、これに限定されない。たとえば、IGBTを採用することもできる。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。
【0190】
ドレイン電極40Dに接続される配線部材として基板50の例を示したがこれに限定されない。基板50に限定されない構成においては、基板50に代えて、金属板(リードフレーム)を採用してもよい。金属板の場合、ドレイン電極40D側に、半導体素子40Hのドレイン電極40Dが接続される第1金属板と、半導体素子40Lのドレイン電極40Dが接続される第2金属板が配置される。
【0191】
ひとつの半導体装置20が、一相分の上下アーム回路9(2つのアーム)を構成する例を示したがこれに限定されない。たとえばひとつの半導体装置20が、ひとつのアームを構成する半導体装置にも適用することができる。ひとつの半導体装置20により構成するアームの数は特に限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2024-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に設けられた第1主電極(40D)と、前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極(40S)と、前記裏面において前記第2主電極とは異なる位置に設けられた信号用のパッド(40P)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
信号端子(93)を含む外部接続端子(90)と、
前記パッドと前記信号端子とを電気的に接続するボンディングワイヤ(110)と、
前記半導体素子、前記第1配線部材の少なくとも一部、前記第2配線部材の少なくとも一部、前記外部接続端子の一部、および前記ボンディングワイヤを封止する封止体(30)と、を備え、
前記第2配線部材は、絶縁基材(61)と、前記絶縁基材における前記半導体素子側の面である表面に配置され、前記第2主電極に電気的に接続された表面金属体(62)と、前記絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体(63)と、を有する基板であり、
前記半導体素子と前記信号端子との並び方向において、前記表面金属体の端部(64e、65e)は、前記表面金属体が接合された接合対象の端部(40Se1、40Se2、70e1、70e2)と前記半導体素子の端部(40Le、40He)との間に位置しており、
前記絶縁基材は、前記表面金属体から露出する露出部(61a1、61a2)を有し、
前記ボンディングワイヤの頂点部(110t)は、前記板厚方向において前記露出部に対向しており、
前記ボンディングワイヤは、前記絶縁基材の前記露出部に接触しており、
前記半導体素子は、一相分の上下アーム回路の上アーム(9H)を構成する上アーム素子(40H)と、前記上下アーム回路の下アーム(9L)を構成する下アーム素子(40L)と、を含み、
前記第1配線部材は、前記上アーム素子の前記第1主電極に接続されたP配線(54)と、前記下アーム素子の前記第1主電極に接続された中継配線(55)と、を含み、
前記表面金属体は、前記下アーム素子の前記第2主電極に接続されたN配線(64)を含み、
前記外部接続端子は、前記P配線に接続されたP端子(91P)と、前記N配線に接続されたN端子(91N)と、前記中継配線に接続された出力端子(92)と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記P端子および前記N端子のそれぞれを複数備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記P端子および前記N端子は、前記封止体の第1側面(30c)から突出している、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記出力端子は、前記第1側面とは反対の第2側面(30d)から突出している、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記信号端子は、前記上アーム素子に電気的に接続される上アーム信号端子(93H)と、前記下アーム素子に電気的に接続される下アーム信号端子(93L)と、を含み、
前記上アーム信号端子は、前記下アーム信号端子が突出する面とは反対の面から突出している、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記上アーム信号端子は、前記P端子および前記N端子と同じ面から突出している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記下アーム信号端子は、前記出力端子と同じ面から突出している、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記上アーム素子と前記下アーム素子とは、前記第1側面と前記第2側面との対向方向に並んでいる、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記上アーム素子と前記下アーム素子とは、前記上アーム信号端子が突出する面と前記下アーム信号端子が突出する面との対向方向に並んでいる、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記上アーム素子を複数含み、
複数の前記上アーム素子は、ひとつの前記P配線に接続され、
前記下アーム素子を複数含み、
複数の前記下アーム素子は、ひとつの前記N配線に接続されている、請求項1~9いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記P端子、前記N端子、および前記出力端子は、互いに共通する側面(30f)から突出している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記信号端子は、前記上アーム素子に電気的に接続される上アーム信号端子(93H)と、前記下アーム素子に電気的に接続される下アーム信号端子(93L)と、を含み、
前記上アーム信号端子および前記下アーム信号端子は、互いに共通する側面(30g)から突出している、請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記上アーム信号端子および前記下アーム信号端子が突出する側面は、前記P端子、前記N端子、および前記出力端子が突出する側面とは反対の面である、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記外部接続端子を所定位置に保持するための2つのガイドフレーム(94)をさらに備え、
2つの前記ガイドフレームは、前記上アーム信号端子および前記下アーム信号端子が並ぶ第1方向において、間に前記上アーム信号端子および前記下アーム信号端子を挟むように前記上アーム信号端子および前記下アーム信号端子と同じ側面から突出している、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記P端子と前記出力端子との間に前記N端子が位置するように、前記P端子、前記N端子、および前記出力端子は前記第1方向に並んでおり、
前記ガイドフレームのひとつである第1ガイドフレームは前記P端子に連なり、前記ガイドフレームの他のひとつである第2ガイドフレームは前記出力端子に連なっている、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ガイドフレームのひとつである第1ガイドフレームは、前記P配線に接続され、
前記ガイドフレームの他のひとつである第2ガイドフレームは、前記中継配線に接続されている、請求項14に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記表面金属体は、前記裏面金属体よりも厚い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記表面金属体の厚みは、前記裏面金属体の厚み以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
この明細書における開示は、半導体装置に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
開示されるひとつの目的は、インダクタンスを低減しつつ熱抵抗を低減できる半導体装置を提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
ここに開示された半導体装置は、
一面に設けられた第1主電極と、一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極と、裏面において第2主電極とは異なる位置に設けられた信号用のパッドと、を有する半導体素子と、
第1主電極に電気的に接続された第1配線部材と、
第2主電極に電気的に接続された第2配線部材と、
信号端子と、
パッドと信号端子とを電気的に接続するボンディングワイヤと、を備え、
第2配線部材は、絶縁基材と、絶縁基材における半導体素子側の面である表面に配置され、第2主電極に電気的に接続された表面金属体と、絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体と、を有する基板であり、
半導体素子と信号端子との並び方向において、表面金属体の端部は、表面金属体が接合された接合対象の端部と半導体素子の端部との間に位置しており、
絶縁基材は、表面金属体から露出する露出部(61a1、61a2)を有し、
ボンディングワイヤの頂点部(110t)は、板厚方向において露出部に対向しており、
ボンディングワイヤは、絶縁基材の露出部に接触しており、
半導体素子は、一相分の上下アーム回路の上アーム(9H)を構成する上アーム素子(40H)と、上下アーム回路の下アーム(9L)を構成する下アーム素子(40L)と、を含み、
第1配線部材は、上アーム素子の第1主電極に接続されたP配線(54)と、下アーム素子の第1主電極に接続された中継配線(55)と、を含み、
表面金属体は、下アーム素子の第2主電極に接続されたN配線(64)を含み、
外部接続端子は、P配線に接続されたP端子(91P)と、N配線に接続されたN端子(91N)と、中継配線に接続された出力端子(92)と、を含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0191
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0191】
ひとつの半導体装置20が、一相分の上下アーム回路9(2つのアーム)を構成する例を示したがこれに限定されない。たとえばひとつの半導体装置20が、ひとつのアームを構成する半導体装置にも適用することができる。ひとつの半導体装置20により構成するアームの数は特に限定されない。
ここまで説明した実施形態及び変形例から把握される技術的思想を、付記として以下に記載する。
<付記1>
一面に設けられた第1主電極(40D)と、前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極(40S)と、前記裏面において前記第2主電極とは異なる位置に設けられた信号用のパッド(40P)と、を有する半導体素子(40)と、
前記第1主電極に電気的に接続された第1配線部材(50)と、
前記第2主電極に電気的に接続された第2配線部材(60)と、
信号端子(93)と、
前記パッドと前記信号端子とを電気的に接続するボンディングワイヤ(110)と、を備え、
前記第2配線部材は、絶縁基材(61)と、前記絶縁基材における前記半導体素子側の面である表面に配置され、前記第2主電極に電気的に接続された表面金属体(62)と、前記絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体(63)と、を有する基板であり、
前記半導体素子と前記信号端子との並び方向において、前記表面金属体の端部(64e、65e)は、前記表面金属体が接合された接合対象の端部(40Se1、40Se2、70e1、70e2)と前記半導体素子の端部(40Le、40He)との間に位置しており、
前記絶縁基材は、前記表面金属体から露出する露出部(61a1、61a2)を有し、
前記ボンディングワイヤの頂点部(110t)は、前記板厚方向において前記露出部に対向しており、
前記ボンディングワイヤは、前記絶縁基材の前記露出部に接触している、半導体装置。
<付記2>
前記並び方向において、前記表面金属体の端部は、前記パッドにおける前記第2主電極側の端部(40Pe)と前記半導体素子の端部との間に位置している、付記1に記載の半導体装置。
<付記3>
前記表面金属体は、前記裏面金属体よりも厚い、付記1に記載の半導体装置。
<付記4>
前記第2主電極と前記表面金属体との間に介在する導電スペーサ(70)を備え、
前記接合対象は、前記導電スペーサである、付記1~3いずれかひとつに記載の半導体装置。
<付記5>
前記接合対象は、前記第2主電極である、付記1~3いずれかひとつに記載の半導体装置。
<付記6>
半導体素子(40)の一面に設けられた第1主電極(40D)と第1配線部材(50)とを電気的に接続する第1接続工程と、
ボンディングワイヤ(110)を介して、前記半導体素子において前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた信号用のパッド(40P)と信号端子(93)とを接続するワイヤボンディング工程と、
前記ワイヤボンディング工程後、前記裏面において前記パッドとは異なる位置に設けられた第2主電極(40S)と第2配線部材(60)とを電気的に接続する第2接続工程と、を備え、
前記第2接続工程において、
前記第2配線部材として、絶縁基材(61)と、前記絶縁基材における前記半導体素子側の面である表面に配置され、前記第2主電極に電気的に接続された表面金属体(62)と、前記絶縁基材の裏面に配置された裏面金属体(63)と、を有し、前記半導体素子と前記信号端子との並び方向において、前記表面金属体が接合される接合対象の端部(40Se1、40Se2、70e1、70e2)と前記半導体素子の端部(40Le、40He)との間に前記表面金属体の端部(64e、65e)が位置するように、前記表面金属体がパターニングされた基板を用い、
前記表面金属体から露出する前記絶縁基材の露出部(61a1、61a2)を前記ボンディングワイヤに接触させつつ前記第2主電極と前記第2配線部材とを電気的に接続する、半導体装置の製造方法。