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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175053
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】低水分押出方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 40/25 20160101AFI20241210BHJP
   A23K 50/42 20160101ALI20241210BHJP
【FI】
A23K40/25
A23K50/42
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024159978
(22)【出願日】2024-09-17
(62)【分割の表示】P 2022536574の分割
【原出願日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】62/972,501
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ガリビアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン グエン
(72)【発明者】
【氏名】アダム ワトキンス
(72)【発明者】
【氏名】ショーン-ポール コンヤー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より少ない量の乾燥エネルギーを使用するドライフードの製造方法を提供する。
【解決手段】ドライフードの原材料を第1の流量で前処理容器に供給する工程、この前処理容器内で原材料を前処理し、生地を形成する工程、および約4%から約10%の含水率を有する生地を、押出機の入口に通して動かす工程を有してなる製造方法。この方法は、生地に熱エネルギーを印加すること、および生地に機械エネルギーを印加することによって、生地を押出機のダイプレートに通して押し出し、キブルを形成する工程をさらに含み、機械エネルギーに対する熱エネルギーの比は、少なくとも約2.0から約4.0に及び得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライフードを製造する方法であって、
(a)ドライフードの原材料を第1の流量で前処理容器に供給する工程、
(b)前記前処理容器内で前記原材料を前処理して生地を形成する工程、
(c)約4%から約10%の含水率を有する前記生地を、押出機の入口に通す工程、および
(d)(i)前記生地に熱エネルギーを印加し、
(ii)前記生地に機械エネルギーを印加する、
ことによって、前記生地を前記押出機のダイプレートに通して押し出し、キブルを形成する工程、
を有してなり、
前記機械エネルギーに対する前記熱エネルギーの比は、少なくとも約2.0から約4.0に及び得る、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、ここに全て引用される、2020年2月10日に出願された米国仮特許出願第62/972501号に優先権を主張するものである。また、本出願は、2021年2月10日に出願された特願2022-536574号の分割出願である。
【技術分野】
【0002】
本開示は、低水分押出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ドライペットフード製品およびおやつを含む、多くの食品は、押出調理によって調製されている。押出調理では、原材料で組成物を作り、それを前処理装置、押出機、および乾燥機に順次通す工程を含む。押出製品は、パフやキブルなどの小片に切断または分離することができる。
【0004】
従来のシステムでは、ペットフードの原材料は、生地を形成するための前処理工程の最中に、水和され、加熱され、混合される。油、脂質および着色料などの追加の液体も、この前処理工程で添加することができる。前処理装置は、原材料の水和と混合を行いながら、デンプンのゲル化を開始するのに十分なレベルで蒸気と水を利用することができる。
【0005】
このような従来のシステムでは、生地は、前処理装置の吐出口から押出機に入り、押出機を通じて、ダイプレートに押し通される。この工程で追加の水分を加えて、生地をさらに水和させ、最終製品の食感を制御することができる。また、この工程で蒸気を加えて、生地をさらに調理する、および/または密度制御を行うことができる。生地をダイプレートに通して押出物を形成する際に、その押出物は通常、大量の水分を有し、消費に安全であり、安定したキブルを得るために、別の乾燥機によってさらに乾燥させる必要がある。その乾燥工程は、エネルギー集約型の単位操作であり、製造コストと炭素排出量の大半を占める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当該技術分野では、乾燥機の必要性を低減または排除するために、より少ない量の乾燥エネルギーを使用する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示された主題の目的と利点が、ここに述べられており、以下の説明から明白であるだけでなく、開示された主題の実施によって分かるであろう。開示された主題の追加の利点が、明細書およびその特許請求の範囲、並びに添付図面に具体的に指摘された装置によって、実現され、達成されるであろう。
【0008】
これらと他の利点を達成するために、そして、具体化され、広く説明されるように、開示された主題の目的に従って、開示された主題は、ドライフードを製造する方法であって、ドライフードの原材料を第1の流量で前処理容器に供給する工程、その容器内で原材料を前処理して生地を形成する工程、約4%から約10%の含水率を有する生地を、第2の流量で押出機の入口に通す工程、生地に熱エネルギーを印加し、かつ生地に機械エネルギーを印加することによって、生地を押出機のダイプレートに通して押し出し、キブルを形成する工程を有してなり、機械エネルギーに対する熱エネルギーの比は、少なくとも約2.0から約4.0に及び得る。
【0009】
開示された主題の別の態様によれば、ドライフード製品を製造する方法は、押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有するキブルを生成する。
【0010】
特定の実施の形態において、その方法は、キブルを乾燥させる工程を含む。
【0011】
特定の実施の形態において、そのキブルは、約0.63までの水分活性を有するまで乾燥される。
【0012】
特定の実施の形態において、生地がダイを通過した後の水分フラッシュオフは、約4.0%から約7.0%である。
【0013】
特定の実施の形態において、生地に熱エネルギーを印加することは、蒸気を使用することを含む。
【0014】
特定の実施の形態において、その蒸気の流量は、第2の流量の約6.0%から約10.0%である。
【0015】
特定の実施の形態において、押出機中の蒸気圧は、約80psiから約150psi(約552kPaから約1.03MPa)である。
【0016】
特定の実施の形態において、熱エネルギーおよび機械エネルギーは、生地を融点より高く加熱し、それによって、生地の粘度を低下させる。
【0017】
特定の実施の形態において、第1の流量は、毎時約0.8から約12トンである。
【0018】
特定の実施の形態において、前処理工程は、第1の流量に基づいて、3%までの蒸気の流量で蒸気を加える工程を含む。
【0019】
特定の実施の形態において、前処理装置への蒸気の流量は、毎時0トンである。
【0020】
特定の実施の形態において、前処理工程は、第1の流量の4%までの流量で水を加える工程をさらに含む。
【0021】
特定の特別な実施の形態において、水の流量は、第1の流量の0%である。
【0022】
特定の実施の形態において、生地を押し出す工程は、押出機内の温度を30~36℃から144~160℃に上昇させ、10~12%の水分を16~18%の水分へと含水率を上昇させる工程を含む。
【0023】
特定の実施の形態において、押出機内の生地の含水率は、約16%から約18%である。
【0024】
特定の実施の形態において、押出機は、単軸押出機または二軸押出機の内の一方である。
【0025】
特定の実施の形態において、生地を押し出す工程の後に、キブルは乾燥機内で乾燥されない。
【0026】
特定の実施の形態において、生地を押し出す工程の後に、キブルは空気乾燥される。
【0027】
特定の実施の形態において、生地は、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む。
【0028】
特定の実施の形態において、そのタンパク質は動物タンパク質を含む。
【0029】
特定の実施の形態において、本開示は、ドライフードを製造する方法において、約4%から約10%の含水率を有する生地を提供する工程、その生地を第1の流量で押出機内に入れる工程、押出機内で生地を加工する工程であって、生地に熱エネルギーを印加する工程と、生地に機械エネルギーを印加する工程とを含み、機械エネルギーに対する熱エネルギーの比が少なくとも約4である工程、および生地を押出機からダイプレートに通して押し出して、キブルを形成する工程を有してなる方法に関する。
【0030】
特定の実施の形態において、キブルは、押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有する。
【0031】
特定の実施の形態において、熱エネルギーおよび機械エネルギーにより、生地を生地の融点より高く加熱し、それによって、生地の粘度を低下させる。
【0032】
特定の実施の形態において、生地を押し出す工程の後に、キブルは、乾燥機内で乾燥されない。
【0033】
特定の実施の形態において、生地を押し出す工程の後に、キブルは空気乾燥される。
【0034】
特定の実施の形態において、生地は、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む。
【0035】
特定の実施の形態において、そのタンパク質は動物タンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本出願の主題は、添付図面と併せて読まれたときに、以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
図1】従来のプロセスに使用される装置システムの概略図
図2】開示された主題による低水分押出プロセスに使用される単軸押出機
図3】従来の押出プロセスにおける水分の循環
図4】開示された主題による低水分押出プロセスにおける水分の循環
図5】開示された主題による低水分押出プロセスにより加工された生地から作られたキブルおよび従来の押出プロセスにより加工された生地から作られたキブルの温度と水分の比較グラフ
図6A】開示された主題による低水分押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図6B】開示された主題による低水分押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図6C】開示された主題による低水分押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図6D】従来の押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図6E】従来の押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図6F】従来の押出プロセスにより作られたキブルの断層画像
図7A】開示された主題による低水分押出プロセスにより作られたキブルの組成の顕微鏡的研究からの画像
図7B】押出プロセスにより作られたキブルの組成の顕微鏡的研究からの画像
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、特に、従来の押出プロセスよりも少ない量の水を使用する低水分押出(LME)プロセスに関する。
【0038】
定義
本明細書に使用される用語は、一般に、本開示の文脈内、および各用語が使用される特定の文脈において、当該技術分野における通常の意味を有する。特定の用語は、本開示の組成物と方法およびそれらの製造方法と使用方法を説明する上で追加のガイダンスを提供するために、以下に、または本明細書の他の場所で説明される。
【0039】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、名詞は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、「化合物」への言及は、化合物の混合物を含む。
【0040】
「約」または「おおよそ」という用語は、当業者によって決定されるような特定値の許容誤差範囲内を意味し、これは、値が測定または決定される方法、すなわち、測定システムの限界にある程度依存するであろう。例えば、「約」は、当該技術分野の慣例にしたがって、3標準偏差以内または3標準偏差超を意味し得る。あるいは、「約」は、与えられた値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、さらに好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特にシステムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。含水率(質量%)の文脈における「約」という用語は、±1質量%を意味する。水分活性(Aw)の文脈における「約」という用語は、±0.05を意味する。最終水分の文脈における「約」という用語は、±3%を意味する。粘度の文脈における「約」という用語は、±3%を意味する。
【0041】
本開示にしたがって使用される「動物」または「ペット」という用語は、以下に限られないが、飼い犬、飼い猫、馬、牛、フェレット、ウサギ、豚、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、ヤギなどを含む家畜を意味する。飼い犬および飼い猫は、ペットの特定の非限定例である。本開示に従って使用されるような「動物」または「ペット」という用語は、さらに、以下に限られないが、バイソン、エルク、鹿、猟獣(venison)、鴨、家禽、魚などを含む野生動物を指すことができる。
【0042】
「動物飼料」、「動物飼料組成物」、「ペットフード」、「ペットフード物品」、または「ペットフード組成物」という用語は、ここでは互換的に用いられ、動物またはペットによる摂取を意図した組成物を指す。ペットフードは、制限なく、キブルなどの毎日の給餌に適した栄養的にバランスの取れた組成物、並びに栄養的にバランスが取れていることがある、サプリメントおよび/またはおやつを含むことができる。栄養的にバランスの取れた完全なペットフード組成物は、一般に、タンパク性材料および/またはデンプン質材料などの材料を含むであろう。代わりの実施の形態では、サプリメントおよび/またはおやつは、栄養的にバランスが取れていない。
【0043】
ここに使用されるような、「含む」、「含んでいる」、またはその任意の他の変形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない他の要素、もしくはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができるように、非排他的に含めることを対象とすることが意図される。
【0044】
本明細書の詳細な説明において、「実施の形態」、「ある実施の形態」、「1つの実施の形態」、「様々な実施の形態において」などへの言及は、説明される実施の形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、全ての実施の形態が、必ずしも、その特定の特徴、構造、または特性を含むわけではない可能性があることを示す。さらに、このような句は、必ずしも、同じ実施の形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施の形態に関連して説明される場合、明示的に説明されているか否かにかかわらず、他の実施の形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内であると考えられる。この説明を読んだ後、関連する技術分野の当業者には、代わりの実施の形態において本開示をどのように実施するかが明らかになるであろう。
【0045】
組成物または動物飼料に関する「押出」という用語は、例えば、1つ以上の押出機を通して送られることによって加工された組成物または動物飼料を指す。どのタイプの押出機を使用しても差し支えなく、その非限定例としては、以下に限られないが、押出機モデルのWenger X-115、Wenger X-185、およびWenger X-235など、単軸押出機および二軸押出機が挙げられる。
【0046】
ここに使用されるような「非押出」という用語は、フライ、焼き、直火焼き、網焼き、圧力調理、煮沸、オーミック加熱、蒸しなど、押出調理以外の任意の方法によって調製された食品を指す。
【0047】
「ペット用おやつ」という用語は、動物またはペットによって定期的に摂取されることを意図した組成物を指す。ペット用おやつは、栄養的にバランスの取れたものとすることができる。代わりの実施の形態において、ペット用おやつは、栄養的にバランスが取れていない。
【0048】
ここに使用されるように、「キブル」または「ドライキブル」は、食品の質量で、15%以下の水分レベルを有する押出食品を指す。キブルは、栄養的にバランスが取れており、完全であることができる。
【0049】
ここに使用される「セミモイスト」という用語は、食品の質量で、15%と50%の間の水分レベルを有する食品を称する。ここに使用される「ウェット」という用語は、食品の質量で、50%以上の含水率を有する食品を称する。セミモイストまたはウェットフードは、少なくとも一部には、押出調理を用いて調製しても、または完全に他の方法によって調製しても差し支えない。
【0050】
ここに使用されるように、「ミール(meal)」という用語は、乾燥出発材料を称する。出発材料としては、以下に限られないが、タンパク性材料、デンプン質材料、および炭水化物と、アルファルファや大豆などの豆類とを含む、どちらの分類にも必ずしも属さない他の材料が挙げられる。特定の実施の形態において、そのミールは粉砕された材料を含む。特定の実施の形態において、「ミール」および乾燥飼料という用語は、互換的に使用することができる。
【0051】
ここに使用されるように、「タンパク性材料」という用語は、以下に限られないが、大豆、綿実、または落花生かすなどの植物性タンパク質ミール、カゼイン、アルブミン、乾燥ホエーを含むホエーなどの動物性タンパク質、および生肉並びに魚粉、鶏肉粉、肉粉、肉骨粉、酵素処理タンパク質加水分解物などのレンダリング処理肉または乾燥肉「ミール」を含む肉組織が挙げられる。タンパク性材料は、酵母などの微生物タンパク質、および小麦グルテン、トウモロコシグルテン、および羽毛粉などの材料を含む他の種類のタンパク質をさらに含むことができる。
【0052】
ここに使用されるように、「デンプン質材料」という用語は、以下に限られないが、酵素デンプン質材料、トウモロコシ(corn)、トウモロコシ(maize)、小麦、ソルガム、大麦などの穀物、および比較的低タンパク質の他の様々な穀物が挙げられる。
【0053】
ここでは、「生地」という用語は、水和ミールまたは乾燥飼料を称する。
【0054】
ここに用いられているように、「ミール流量」という用語は、ミールが前処理容器に供給される流量を称する。特定の実施の形態において、「ミール流量」という用語は、ミールが押出機に供給される流量を称することができる。
【0055】
ここに用いられているように、比機械エネルギー(SME)は、生地がダイプレートに押し通されるときに生地に印加されるエネルギーを称する。SMEは、工程速度や処理能力を管理するために、気づかずにまたは間接的に調節することができる。特定の実施の形態において、SMEは、スクリュー速度を上昇させることによって、またはスクリューの周期性を増すなどしてスクリュー自体を変更することによって、増加させることができる。単軸押出機において、有用なスクリュー速度は、350rpmまたは375rpmから600rpmに及び得る。SMEを操作することにより、少なくとも2つの方法で食感の改善に寄与することができる。第一に、より高いSMEは、デンプン顆粒を粉砕するのに役立ち、アミロースがデンプンから浸出し、アミロペクチンまたはデンプン顆粒からの他の分子が一層またはより迅速に膨張することを可能にする。第二に、より高いSMEは、生地を十分に混合し、生地がダイプレートに押し通される前の最後の瞬間に、生地を水和させ、デンプンのゲル化を促進し、押出中に生地が膨張する準備をすることができる。
【0056】
ここに用いられているように、比熱エネルギー(STE)は、前処理装置または押出機に入り、ミールまたは生地と接触するすべての流れが、その温度に基づいてミールまたは生地に伝達するエネルギーを称する。前処理装置または押出機に蒸気を注入する場合、この熱エネルギーは蒸気圧(エンタルピー)および流量の関数である。特定の実施の形態において、蒸気流量を増加させることによって、もしくは蒸気圧を増加させることによって、もしくは前処理装置または押出機に入る流れの温度を変化させることによって、STEを増加させることができる。STEを操作することにより、食感の改善に寄与することができる。より高いSTEは、デンプンの調理を増加させるのに役立ち、アミロースがデンプンから浸出し、アミロペクチンまたはデンプン顆粒からの他の分子が一層またはより迅速に膨張し、デンプンのゼラチン化を促進し、押出中に生地が膨張する準備をするのを助けることができる。
【0057】
従来の押出プロセス
ドライペットフード製品およびおやつを含む多くの食品は、前処理工程、押出工程、および乾燥工程を含む押出調理によって調製されている。従来の押出プロセスの流れが図1に示されている。原材料は、前処理装置の入口101を通じて前処理容器103に入れられる。 前処理工程中、その原材料は、前処理容器103内で水および蒸気の少なくとも一方と混合され、生地組成物が形成される。前処理工程が完了した際に、その組成物は前処理装置の出口105を通って押出機107に移動される。例示の押出機が図2に示されている。この押出機は、押出機の入口、7つのバレル、および押出機の出口を有する。押出工程中ずっと、蒸気を添加することができる。押出工程の間、生地組成物は、圧力密閉型押出機を通して押し出され、その中で材料は高温および圧力に曝される。その後、生地組成物は、押出機の出口109からダイ111に通して押し出され、押出物を形成し、キブルに成形され、次いで、乾燥機113に送られる。
【0058】
従来の押出成形プロセスにおける水分のサイクルが図3に示されている。工程1の間に、粉砕された穀物およびミールが、前処理用の容器に入れられる。この組成物は、初めに、約4~10%の水分を有している。前処理過程中に、水が加えられて、約22%の水分を有する組成物が提供される。当技術分野の従来の見識により、所望の美味しさおよび食感特性を有する製品を提供するために、約17%から約35%など、適度な水分レベルが必要であることが示唆される。特定の実施の形態において、図5に示され、ここにさらに議論されるように、この従来の押出プロセスのための前処理過程は、前処理工程中に約15%の水分を加え、約24%の水分を有する組成物をもたらす。この従来の押出プロセスのための特定の実施の形態の過程では、前処理工程の終了時の水分レベルは、約19%から約35%である。
【0059】
図3の工程2の間、組成物は、材料が高温および低い蒸気流量であるが、高い蒸気圧に曝される圧力密閉型押出機に通される。特定の実施の形態において、材料は、ミール流量の4%までの蒸気流量で、約80psi(約552kPa)から約150psi(約1.03MPa)の蒸気圧に曝される。特定の実施の形態において、生地の温度は、押出機内で約54~98℃から約119~139℃に上昇させられる。
【0060】
特定の実施の形態において、従来の押出プロセスの比機械エネルギーは、約17.8から約36.0kWh/メートルトンである。特定の実施の形態において、従来の押出プロセスの比機械エネルギーは、約64.2から約129.5kJ/kgである。
【0061】
特定の実施の形態において、従来の押出プロセス中の押出機における比機械エネルギーに対する比熱エネルギーの割合は、約0.7未満である。特定の実施の形態において、従来の押出プロセス中の押出機における比機械エネルギーに対する比熱エネルギーの割合は、0である。
【0062】
前記押出物は、押出機を通過した後、キブルを形成するために小片に切断される。押出機内では、圧力および温度が周囲圧力および周囲温度よりも高いため、一部の水分がフラッシュオフにより蒸発し、得られるキブルは、約16%から約28%の水分を有する。図3に示されるように、材料はその後、乾燥機内で食品として安全な水分レベルまで乾燥させなければならず(工程3)、この水分レベルは、製品の水分活性に依存する。製品に応じて、最終的なドライペットフード製品は、約15%未満の水分、約12%未満の水分、約10%未満の水分、約8%未満の水分、または約6%未満の水分を含まなければならない。したがって、水の少なくとも約10%~25%を乾燥過程で除去する必要がある。その後、キブルを追加のコーティングで処理することができ、最終製品は、出発材料とほぼ同じ、約4~10%の水分を有する。
【0063】
低水分押出プロセス
開示されたLMEプロセスの水分サイクルが図4に示されている。工程1の間、粉砕された穀物およびミールが、前処理用の容器に入れられる。この組成物は、初めに、約4~10%の水分を有している。前処理過程中に、少量の水が添加され、得られる組成物は、約4%から約15%の水分を有する。工程2の間、その組成物は、高温高圧および高い蒸気流量で押出機に通される。 押出機を通過し、ダイを通過した後、フラッシュオフにより一部の水分が蒸発し、その組成物の水分レベルは約8%から約14%になる。LMEプロセスでは、押出プロセスと比べて、押出機内の温度と圧力が高いため、フラッシュオフ中に失われる水分の割合がより高く、その結果、乾燥をほとんどまたは全く必要としないキブルが得られる。次に、余分な水分は随意的な工程3(乾燥)の最中に除去され、約5~10%の水分レベルを有する乾燥キブルが得られる。その後、キブルは追加のコーティングで処理することができ、最終製品は、約4~10%の水分を有する。この水分レベルは、出発材料に含まれるのとほぼ同じである。
【0064】
LME製のキブルは、従来から製造されているキブルと同様に、生命維持に必要な全ての必須栄養素(水を除く)を供給する、栄養的に完全でバランスのとれた動物飼料であり得る。栄養的に完全でバランスの取れたペットフード製品は、ドッグフードまたはキャットフードのAAFCO規格などのコンセンサス栄養プロファイルを満たすことができ、タンパク性材料、デンプン質材料および他の材料を含む配合を有するそのような栄養プロファイルを達成することができる。いくつかの実施の形態において、現在開示されている押出キブルは、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む生地から製造される。いくつかの実施の形態において、生地は、約5%から約60%の動物性タンパク質を含む。いくつかの実施の形態において、生地、および得られるキブルは、制限なく、ビタミン、ミネラル、着色料、香味料などを含む追加の成分を含むことができる。
【0065】
開示された主題によるLMEプロセスは、従来のシステムにおける先に概説された問題を克服する。開示された主題によるLMEプロセスは、下記により詳しく説明される。
【0066】
前処理
食品材料は、LMEプロセスでペットフード材料を加工する前に、前処理工程で前処理することができる。前処理装置は、押出機に入る前の原材料の調理過程を始める。生地または生地用の材料は、生地を前調理または予熱する、全ての材料を生地に混合する、および/または押出調理中の所望の条件に生地の準備(水和などにより)をさせるために、制御条件下で、前処理装置内において蒸気および/または水と混合することができる。油/脂質および着色料を含む追加の液体をここで加えることができる。前処理装置は、材料を水和し、混合しながら、ゲル化過程を始めるために、高い蒸気流量および高い水流量を利用することができる。しかしながら、前処理装置は、押出機と異なり、圧力密閉されておらず、蒸気と熱(すなわち、エネルギー)を大気中に放出できるので、この過程は、かなりエネルギー非効率的である。
【0067】
この前処理工程での水分レベルは、製造過程中に使用される水の量、並びに押出調理後に必要な乾燥の量を最小にするために、低レベルに設定される。特定の実施の形態において、前処理装置の出口から出てくる組成物は、質量に基づいて、約10%から約14%の水分を有する。従来のプロセスでは、通常、前処理工程中にゲル化が開始されるが、意外なことに、初期ゲル化を押出工程まで遅らせられることが分かった。いくつかの実施の形態において、意外なことに、前処理工程における水分レベルおよびゲル化は、従来のプロセスにより製造されたキブルのものに匹敵する食感特性を有する最終的なキブルを達成しつつ、減少させられることが分かった。開示された主題による特定の実施の形態において、LMEプロセスが使用される場合、ミール流量に基づいて、前処理中に、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の水分が加えられる。開示された主題による特定の実施の形態において、従来のプロセスと異なり、前処理工程中に蒸気は添加されない。しかしながら、開示された主題による特定の実施の形態において、LMEプロセスを使用する場合、前処理工程中に、低い蒸気圧、例えば、約15psi(約103kPa)から約60psi(約414kPa)の蒸気圧が使用される。さらに、図5に示されるような、特定の非限定の実施の形態において、LMEプロセスが使用される場合、前処理工程中に、1%未満の水分が加えられ、蒸気は使用されない。重要なことに、前処理装置は、押出機と異なり、圧力密閉されておらず、蒸気と熱(すなわち、エネルギー)を大気中に放出できるので、このLMEに基づくプロセスは、より効率的な熱伝達および熱エネルギー入力を与える。それに加え、LMEプロセスを使用する場合、この前処理工程中に、少量の水分しか加えられないので、より低い水流量を使用できる。従来の押出プロセスに対する開示されたLMEプロセスにおける前処理工程の操作上の違いが、表1.1に示されている。
【0068】
【表1-1】
【0069】
特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、前処理中のミール流量に基づいて、高い水流量、例えば、約10%から約22%の流量が使用される。特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、前処理中のミール流量に基づいて、高い蒸気流量、例えば、約5%から約13%の流量が使用される。特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、低い蒸気圧、例えば、約15psi(約103kPa)から約60psi(約414kPa)の蒸気圧が使用される。
【0070】
特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、前処理中のミール流量に基づいて、低い水流量、例えば、4%までの水流量が用いられる。特定の実施の形態において、前処理中に水は添加されない。特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、前処理中のミール流量に基づいて、低い蒸気流量、例えば、3%まで、または4%までの蒸気流量が用いられる。特定の実施の形態において、前処理中に蒸気は添加されない。特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、低い蒸気圧、例えば、約15psi(約103kPa)から約60psi(約414kPa)の蒸気圧が使用される。
【0071】
前処理工程からの生地は、前処理装置から吐出され、押出機に入る。ここで、生地は、ダイに向けて押出機から押し出されて、押出物を形成し、ダイによって、キブルにさらに成形される。この段階で、染料、油、水、および蒸気を押出機に添加することができる。以下に限られないが、単軸押出機または二軸押出機などの押出機は、高温、高圧、および高剪断を印加して、デンプン分子のゲル化を誘発する。LMEプロセスに使用できる例示の押出機が、図2に与えられている。
【0072】
図7Aおよび7Bに示されるように、デンプン分子の初期ゲル化が、押出プロセスまで遅らせられ、この押出プロセスが、従来のプロセスと比べて、減少した水分レベルを有する生地に行われる場合、最終的なキブル製品中の未調理デンプンの量は、従来のプロセスにより製造されたキブルに関するものとほぼ同じであることが分かった。それに加え、前処理工程中に、水分を加え、デンプンゲル化の過程を開始することにより、押出機に必要な比機械エネルギー(SME)が低下すると一般に考えられているが、いくつかの実施の形態において、押出機のSMEは、従来のプロセスのSMEと実質的に同じままであることが分かった。理論や機構により束縛されることはないが、LME押出機の温度は、押出機内の生地の融点を超え、それによって、生地材料の粘度が低下し得るので、SMEは、LMEプロセスと従来のプロセスにおいて実質的に同じであった。
【0073】
従来のプロセスとLMEプロセスとの間のデンプンゲル化範囲を比較するために、追加の研究を行った。その研究により、その差は、統計的に有意ではないことが示された。例えば、両方のプロセスで、NIR法を使用して、77~100%の範囲の最終製品のゲル比が生じ、湿式化学法を使用して、81~100%の間のゲル比が生じる。それゆえ、ここに開示されたプロセスのSMEは、従来のプロセスにまだ匹敵するか、またはそれよりもさらに低くあり得る。開示された実施の形態による特定の実施の形態は、従来のシステムと同じキブルを生成するために、より高い馬力のモータを持つ押出機を使用する必要がない。特定の実施の形態において、押出機は、約300から約500馬力の出力を有する。
【0074】
スクリューの速度を変えることによって、押出プロセス中に比機械エネルギーを変えることができる。特定の実施の形態において、押出プロセスのスクリュー速度は、約283rpmから約450rpm、約320rpmから約420rpm、または約240rpmから約263rpmであり得る。
【0075】
表1.2は、従来の押出プロセスおよびLMEプロセスにより作製された製品のさらなる比較を示す。特定の実施の形態において、LME加工について、生地は、少なくとも約56.3kJ/kgのSMEで押し出される。このSMEは、約50kJ/kgから約100kJ/kgに及び得、これは、一般に、下記の表1.2に示されるように、従来の押出プロセスにおいて押し出される生地のSMEよりも低い。
【0076】
【表1-2】
【0077】
フラッシュオフ後の水分百分率変化は、下記のように計算される:
【0078】
【数1】
【0079】
熱エネルギーは、例えば、加工中の直接蒸気注入によって、押出プロセス中に与えられ、比熱エネルギー(STE)により定量化できる。押出プロセス中に加えられる蒸気により、生地に水分が加えられる。特定の実施の形態において、その組成物は、ダイを進む前に、約16%から約18%の水分を有する。図5に示されるような、特定の実施の形態において、押出物は、押出プロセスにより製造された場合の約25%と比べて、LMEプロセスにより製造された場合、ダイに入る前に、約18%の水分を有する。
【0080】
LMEプロセス(前処理工程を除く)中のSTEとSMEの比は、表1.2に与えられたように、約2.0から約4.0に及び得る。これは、従来の押出プロセス中のSTEとSMEの比と正反対であり、この従来の押出プロセスでは、その比は、表1.2に示されるように、約0から約0.7に及び得る。
【0081】
調理済み生地は、押出物として成形ダイに押し通され、切断される。この工程中、押出物は、押出機と中間の外部環境との間の温度差および圧力差のために、膨張する。重要なことには、ダイに入る前の押出物の温度は、その溶融温度Tmよりもずっと高い。これにより、ここで図5に関してさらに説明されるように、フラッシュオフ、すなわち、外部環境の周囲温度と押出機内の温度との間の差により生じる蒸気の形態の水分損失がより推進される。表1.2の例に示されるように、従来のプロセスとLMEプロセスの例について、水分のフラッシュオフが示されている。この水分のフラッシュオフの百分率は、フラッシュオフ後の水分よりも少ない押出機中の水分を表す。従来の押出プロセスでは、水分のフラッシュオフは、4.0%までに及び得る。対照的に、LMEプロセスでは、水分のフラッシュオフは、約4.0%から約7.0%に及び得、これは、従来のプロセスよりもずっと高いフラッシュオフである。したがって、従来の押出プロセスに関するフラッシュオフ後の対応する水分百分率変化である、フラッシュオフ百分率は、約10.3%から約19.7%に及び得る。対照的に、LMEプロセスのフラッシュオフ後の水分百分率変化は、約25.2%から31.2%に及び得、これは、従来の押出プロセスのフラッシュオフ百分率よりもずっと大きい。
【0082】
図5は、開示された主題によるLMEプロセスにより加工された生地から作られたキブル(実線で示されている)および従来の押出プロセスにより加工された生地からキブル(破線で示されている)の温度と水分を比較するグラフを与えている。LMEプロセスについて、図5から明白なように、原材料が前処理容器に入るときの温度は約20℃であり、生地が前処理容器から出るときの温度は約30~36℃である。LMEプロセスについて図5に示され、ここに述べられるように、押出機内で高圧蒸気および機械エネルギーが生地に加えられ、生地の温度は、約30~35℃から、生地が押出機から出る直前に、約150℃に上昇する。特定の実施の形態において、生地が押出機から出る直前の生地の温度は、約144℃から約160℃である。図5に関して、LMEプロセスに関する生地の上昇する温度により、生地は、タンパク質変性の開始(約55℃)で始まり、デンプンゲル化の開始(約60℃)、およびサルモネラ菌などの特定の細菌の死滅(約70から80℃)に至る、押出機内の様々な段階に到達する。さらに、LMEプロセスの生地の上昇する温度は、LMEプロセス中(図5の従来の例で示されるような、前処理容器内ではない)に、押出機内でガラス転移温度(線Tgで示される)および融点(線Tmで示されるに到達する。興味深いことに、LMEプロセスについて、この例では、押出機に入る際の生地の含水率は、約10から11%であり、出る前の生地の含水率は、約18%である。この含水率は、押出機から出た後に、フラッシュオフを経て、約12%に低下する。
【0083】
さらに図5から分かるように、この例では、開示された主題によるLMEプロセスでは、乾燥前の従来のプロセスと比べて、10%だけ、キブルの水分が減少した。得られたキブルは、従来のプロセスからのキブルよりも低い含水率を有するので、得られたキブルには、より少ない乾燥しか必要なく、したがって、全過程のエネルギー要件が著しく減少する。特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、従来のプロセスよりも少なくとも約30%少ないエネルギーしか使用されない。特定の実施の形態において、キブルは、乾燥後に約0.63までの水分活性を有するまで乾燥させることができる。いくつかの実施の形態において、LMEプロセスにより製造されたキブルは、フラッシュオフ後に、能動的な乾燥工程(例えば、キブルを乾燥機に通すこと)の必要なく、約0.63以下の水分活性を達成するのに十分に低い水分レベルを有する。
【0084】
対照的に、図5における従来のプロセスの例(破線で示されている)では、タンパク質変性、デンプンゲル化、および細菌の死滅に、前処理容器において水および低圧蒸気を利用している。これは、押出機においてこれらの閾値を達成するLMEプロセスと異なる。従来のプロセスにおける生地はさらに、図5に示されるように、前処理容器内でガラス転移温度に到達する。従来のプロセスについて、前処理容器の出口で、押出機に入る際の生地は、約24%の含水率を有し、約80℃に到達している。従来のプロセスの押出機内の生地は、先に示したように、高圧蒸気および高機械エネルギーに曝され、押出機から出る前の生地は、約25%の含水率および約125℃の温度を有する。押出機から出た後の生地のフラッシュオフにより、生地は、約22%の含水率に減少する。図5に示されるように、LMEプロセスは、従来のプロセスと比べて、エネルギーの節約を提示する。
【0085】
従来の押出プロセスに対する開示されたLMEプロセスにおける押出工程の操作上の違いが、下記の表2に示されている。
【0086】
【表2】
【0087】
特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、低い水流量、例えば、ミール流量に基づいて、約2%までの水流量が使用される。特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、低い蒸気流量、例えば、ミール流量に基づいて、約4%までの蒸気流量が使用される。特定の実施の形態において、従来の押出プロセスでは、高い蒸気圧、例えば、約80psiから約150psi(約552kPaから約1,03MPa)の蒸気圧が使用される。
【0088】
特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、低い水流量、例えば、ミール流量に基づいて、約2%までの水流量が使用される。特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、高い蒸気流量、例えば、ミール流量に基づいて、約6%から約10%の蒸気流量が使用される。特定の実施の形態において、LMEプロセスでは、高い蒸気圧、例えば、約80psiから約150psi(約552kPaから約1,03MPa)の蒸気圧が使用される。
【実施例0089】
以下の実施例は、現在開示されている主題の説明に過ぎず、それらの実施例は、その主題の範囲をいかようにも限定するものと考えるべきではない。
【0090】
実施例1: LMEプロセス
実施例1は、LMEプロセスによりペットフードキブルを調製するプロセスを提供する。
【0091】
そのキブルの原材料の粉末/ミールは、前処理容器内で混合される。その組成物の初期含水率は約10%である。約30psi(約207kPa)の圧力で、ミール流量の約3%から約14%など、低流量の蒸気が加えられる。ミール流量の約1%から約14%など、低い水流量が混合物に適用される。この前処理工程により、出発材料に約3%の水分が加えられ、ミール流量に基づいて、生地が形成される。前処理工程の工程パラメータが、表3に示されている。
【0092】
【表3】
【0093】
生地は、前処理装置の吐出口から押出機に入る。代わりの実施の形態において、前処理装置が押出機から離れて配置されている場合、生地は、中間ホッパーなどによって、押出機に入れられると考えられる。この実施例では、押出機は、図2に示されるような、バレル1が入口バレルである、7ヘッド装置である。単軸押出機は、高温、高圧および高剪断を印加して、デンプン分子のゲル化を引き起こす。蒸気は、ミール流量に基づいて、混合物に約6.5%の水分を加える。この過程により、すりつぶされた生地がその融点より高く加熱され、転じて、材料の粘度が低下する。この材料は、成形ダイに押し通され、キブルに切断され、押出機と環境との間の温度と圧力の差のために、膨張する。前処理工程の工程パラメータが、表4に示されている。
【0094】
【表4】
【0095】
次に、キブルは乾燥されて、キブルの表面と芯から水分が飛ばされる。この工程は、周囲条件における貯蔵安定性とカビに予防にとって有益であり得る。この乾燥工程の工程パラメータが、表5に示されている。
【0096】
【表5】
【0097】
実施例2: 比較例
実施例2は、従来の押出プロセスによりペットフードキブルを調製するプロセスを提供する。
【0098】
そのキブルの原材料の粉末/ミールは、前処理容器内で混合される。その組成物の初期水分は約10%である。約30psi(約207kPa)の圧力で、高流量の蒸気、例えば、ミール流量の約13%までが、加えられる。高い水流量、例えば、ミール流量に基づいて22%までが、混合物に適用される。この前処理工程により、出発材料に、ミール流量に基づいて、水により約10%の水分が、蒸気により追加の約10%の水分が、加わり、生地が形成される。
【0099】
この生地は、前処理装置の吐出口から押出機に入る。押出機は、図2に示されるような、バレル1が入口バレルである、7ヘッド装置である。単軸押出機は、高温、高圧および高剪断を印加して、デンプン分子のゲル化を継続する。この材料は、成形ダイに押し通され、キブルに切断され、押出機と環境との間の温度と圧力の差のために、膨張する。
【0100】
次に、キブルは、乾燥機内で乾燥されて、キブルの表面と芯から水分が飛ばされる。
【0101】
実施例3: LMEプロセスおよび従来のプロセスにより製造されたキブルの比較
実施例3は、LMEプロセスと従来のプロセスにより製造されたキブルを比較するために行われた様々な比較試験を提供する。
【0102】
押出質量およびエネルギー収支
実施例1および実施例2に記載されたプロセスに関する押出質量およびエネルギー収支が、表6に示されている。実施例1は、開示された主題にしたがうLMEプロセスによって形成し、実施例2は、従来のプロセスにより形成した。
【0103】
表6は、開示されたLMEプロセスおよび従来の押出プロセスに関する実例となる押出質量およびエネルギー収支の比較を提供する。
【0104】
【表6】
【0105】
表6に示されるように、蒸気システムは、LMEプロセスにおいて、前処理工程から押出工程にシフトされているので、STEは、従来の押出プロセスと開示されたLMEプロセスとの間で似ている。それに加え、SMEは、開示されたような押出プロセスのために、LMEプロセスについて似ている(さらに低い)。このことは、LMEプロセスにおいてより高い温度でより低い粘度を有する組成物によって説明できる。
【0106】
X線断層撮影法
実施例1からのペットフードキブルおよび実施例2からのペットフードキブルは、ここにさらに述べられるように、図6A~Fに示されるように、X線断層撮影法によって検査した。実施例1は、開示された主題によるLMEプロセスによって形成し、実施例2は、従来のプロセスにより形成した。各試料を、NSI ImagiX X-Ray Tomographyシステムを使用して検査した。試料は、発泡スチロール片を使用して、中心をペーパーシンブルに固定することによって、分析の準備をした。次に、試料を収容しているシンブルを50mlのポリプロピレン管に入れた。試料の断層撮影薄切り図を、図6A~Fに示され、ここにさらに述べられるように、X、Y、およびZ面で撮影した。このポリプロピレン管をX線断層撮影ホルダにテープで止めた。空気混入を測定するために、ImageJソフトウェアを使用した。空気混入分析の結果が、表7に纏められている。
【0107】
【表7】
【0108】
表7からの結果は、実施例1からのキブルの空気混入は約32%であるのに対し、実施例2のキブルの空気混入は約40%であったことを示す。
【0109】
図6A~Fは、断層撮影スライス図を示すことによって、2つのキブルの空気混入の差をさらに示す。空気混入は、白色区域により示される。実施例1のキブルに対応する、図6A~Cに示されたスライスは、より少ない白色区域を有し、したがって、図6D~Fに示された比較のキブルよりも少ない空気混入を有することが示された。しかしながら、実施例1のキブル中の気泡は、実施例2のものよりも小さい。それに加え、実施例1のキブルの気泡は、形状が細長いのに対し、実施例2の気泡は球形である。
【0110】
表現され請求された様々な実施の形態に加え、開示された主題は、ここに開示され請求された特徴の他の組合せを有する他の実施の形態にも向けられる。それゆえ、ここに提示された特定の特徴は、開示された主題がここに開示された特徴の任意の適切な組合せを含むように、開示された主題の範囲内で他の様式で互いに組み合わされることができる。開示された主題の特定の実施の形態の先の記載は、例示および説明の目的で提示されたものである。それは、網羅的であること、または開示された主題を開示されたそれらの実施の形態に限定することを意図していない。
【0111】
開示された主題の精神または範囲から逸脱することなく、開示された主題のシステムおよび方法において様々な改変および変更を行えることが、当業者にとって明らかであろう。したがって、開示された主題は、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にある改変および変更を含むことが意図される。
【0112】
様々な特許および特許出願が本明細書に引用され、それらの内容は、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0113】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0114】
実施形態1
ドライフードを製造する方法であって、
(a)ドライフードの原材料を第1の流量で前処理容器に供給する工程、
(b)前記前処理容器内で前記原材料を前処理して生地を形成する工程、
(c)約4%から約10%の含水率を有する前記生地を、押出機の入口に通す工程、および
(d)(i)前記生地に熱エネルギーを印加し、
(ii)前記生地に機械エネルギーを印加する、
ことによって、前記生地を前記押出機のダイプレートに通して押し出し、キブルを形成する工程、
を有してなり、
前記機械エネルギーに対する前記熱エネルギーの比は、少なくとも約2.0から約4.0に及び得る、方法。
【0115】
実施形態2
前記キブルが、前記押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有する、実施形態1に記載の方法。
【0116】
実施形態3
(e)前記キブルを乾燥させる工程、
をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0117】
実施形態4
前記キブルが、約0.63までの水分活性を有するまで乾燥される、実施形態3に記載の方法。
【0118】
実施形態5
前記生地が前記ダイを通過した後の水分フラッシュオフが、約4.0%から約7.0%である、実施形態1に記載の方法。
【0119】
実施形態6
前記生地に熱エネルギーを印加することが、蒸気を使用することを含む、実施形態1に記載の方法。
【0120】
実施形態7
前記蒸気の流量が、前記第1の流量の約6.0%から約10.0%である、実施形態6に記載の方法。
【0121】
実施形態8
前記蒸気の圧力が、約80psiから約150psi(約552kPaから約1,03 MPa)である、実施形態6に記載の方法。
【0122】
実施形態9
前記熱エネルギーおよび前記機械エネルギーが、前記生地を該生地の融点より高く加熱し、それによって、該生地の粘度を低下させる、実施形態1に記載の方法。
【0123】
実施形態10
前記第1の流量が、毎時約0.8から約12トンである、実施形態1に記載の方法。
【0124】
実施形態11
前記前処理工程が、前記第1の流量に基づいて、3%までの蒸気の流量で蒸気を加える工程を含む、実施形態1に記載の方法。
【0125】
実施形態12
前記蒸気の流量が毎時0トンである、実施形態11に記載の方法。
【0126】
実施形態13
前記前処理工程が、前記第1の流量の4%までの流量で水を加える工程をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0127】
実施形態14
前記水の流量が前記第1の流量の0%である、実施形態13に記載の方法。
【0128】
実施形態15
前記生地を押し出す工程が、前記押出機内の温度を30~36℃から144~160℃ に上昇させ、10~12%の水分を16~18%の水分へと含水率を上昇させる工程を含む、実施形態1に記載の方法。
【0129】
実施形態16
前記押出機内の前記生地の含水率が、約16%から約18%である、実施形態1に記載の方法。
【0130】
実施形態17
前記押出機が、単軸押出機または二軸押出機の内の一方である、実施形態1に記載の方法。
【0131】
実施形態18
前記生地を押し出す工程の後に、前記キブルが乾燥機内で乾燥されない、実施形態1に記載の方法。
【0132】
実施形態19
前記生地が、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約 5%から約60%のタンパク質を含む、実施形態1に記載の方法。
【0133】
実施形態20
前記タンパク質が動物タンパク質を含む、実施形態19に記載の方法。
【0134】
実施形態21
ドライフードを製造する方法において、
(a)約4%から約10%の含水率を有する生地を提供する工程、
(b)前記生地を第1の流量で押出機内に入れる工程、
(c)前記押出機内で前記生地を加工する工程であって、
(i)前記生地に熱エネルギーを印加する工程と、
(ii)前記生地に機械エネルギーを印加する工程と、
を含み、
前記機械エネルギーに対する前記熱エネルギーの比が少なくとも約4である工程、および
(d)前記生地を前記押出機からダイプレートに通して押し出して、キブルを形成する工程、
を有してなる方法。
【0135】
実施形態22
前記キブルが、前記押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有する、実施形態21に記載の方法。
【0136】
実施形態23
前記熱エネルギーおよび前記機械エネルギーにより、前記生地を該生地の融点より高く加熱し、それによって、該生地の粘度を低下させる、実施形態21に記載の方法。
【0137】
実施形態24
前記生地を押し出す工程の後に、前記キブルが乾燥機内で乾燥されない、実施形態21に記載の方法。
【0138】
実施形態25
前記生地が、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む、実施形態21に記載の方法。
【0139】
実施形態26
前記タンパク質が動物タンパク質を含む、実施形態25に記載の方法。
【0140】
実施形態27
ドライフードを製造する方法であって、
(a)ドライフードの原材料を第1の流量で前処理容器に供給する工程、
(b)前記前処理容器内で前記原材料を前処理して生地を形成する工程、
(c)約4%から約10%の含水率を有する前記生地を、押出機の入口に通す工程、および
(d)(i)前記生地に熱エネルギーを印加し、
(ii)前記生地に機械エネルギーを印加する、
ことによって、前記生地を前記押出機のダイプレートに通して押し出し、キブルを形成する工程、
を有してなり、
前記機械エネルギーに対する前記熱エネルギーの比は、少なくとも約2.0から約4.0に及び得る、方法。
【0141】
実施形態28
前記キブルが、前記押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有する、実施形態27記載の方法。
【0142】
実施形態29
(e)前記キブルを乾燥させる工程、
をさらに含む、実施形態27記載の方法。
【0143】
実施形態30
前記キブルが、約0.63までの水分活性を有するまで乾燥される、実施形態29記載の方法。
【0144】
実施形態31
前記生地が前記ダイを通過した後の水分フラッシュオフが、約4.0%から約7.0%である、実施形態27記載の方法。
【0145】
実施形態32
前記生地に熱エネルギーを印加することが、蒸気を使用することを含む、実施形態27記載の方法。
【0146】
実施形態33
前記蒸気の流量が、前記第1の流量の約6.0%から約10.0%である、実施形態32記載の方法。
【0147】
実施形態34
前記蒸気の圧力が、約80psiから約150psi(約552kPaから約1,03MPa)である、実施形態32記載の方法。
【0148】
実施形態35
前記熱エネルギーおよび前記機械エネルギーが、前記生地を該生地の融点より高く加熱し、それによって、該生地の粘度を低下させる、実施形態27記載の方法。
【0149】
実施形態36
前記第1の流量が、毎時約0.8から約12トンである、実施形態27記載の方法。
【0150】
実施形態37
前記前処理工程が、前記第1の流量に基づいて、3%までの蒸気の流量で蒸気を加える工程を含む、実施形態27記載の方法。
【0151】
実施形態38
前記蒸気の流量が毎時0トンである、実施形態37記載の方法。
【0152】
実施形態39
前記前処理工程が、前記第1の流量の4%までの流量で水を加える工程をさらに含む、実施形態27記載の方法。
【0153】
実施形態40
前記水の流量が前記第1の流量の0%である、実施形態39記載の方法。
【0154】
実施形態41
前記生地を押し出す工程が、前記押出機内の温度を30~36℃から144~160℃に上昇させ、10~12%の水分を16~18%の水分へと含水率を上昇させる工程を含む、実施形態27記載の方法。
【0155】
実施形態42
前記押出機内の前記生地の含水率が、約16%から約18%である、実施形態27記載の方法。
【0156】
実施形態43
前記押出機が、単軸押出機または二軸押出機の内の一方である、実施形態27記載の方法。
【0157】
実施形態44
前記生地を押し出す工程の後に、前記キブルが空気乾燥される、実施形態27記載の方法。
【0158】
実施形態45
前記生地を押し出す工程の後に、前記キブルが乾燥機内で乾燥されない、実施形態27記載の方法。
【0159】
実施形態46
前記生地が、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む、実施形態27記載の方法。
【0160】
実施形態47
前記タンパク質が動物タンパク質を含む、実施形態46記載の方法。
【0161】
実施形態48
ドライフードを製造する方法において、
(a)約4%から約10%の含水率を有する生地を提供する工程、
(b)前記生地を第1の流量で押出機内に入れる工程、
(c)前記押出機内で前記生地を加工する工程であって、
(i)前記生地に熱エネルギーを印加する工程と、
(ii)前記生地に機械エネルギーを印加する工程と、
を含み、
前記機械エネルギーに対する前記熱エネルギーの比が少なくとも約4である工程、および
(d)前記生地を前記押出機からダイプレートに通して押し出して、キブルを形成する工程、
を有してなる方法。
【0162】
実施形態49
前記キブルが、前記押出機から出た際に、約8%から約13.5%の含水率を有する、実施形態48記載の方法。
【0163】
実施形態50
前記熱エネルギーおよび前記機械エネルギーにより、前記生地を該生地の融点より高く加熱し、それによって、該生地の粘度を低下させる、実施形態48記載の方法。
【0164】
実施形態51
前記生地を押し出す工程の後に、前記キブルが乾燥機内で乾燥されない、実施形態48記載の方法。
【0165】
実施形態52
前記生地が、約10%から約80%の炭水化物、約5%から約35%の脂質、および約5%から約60%のタンパク質を含む、実施形態48記載の方法。
【0166】
実施形態53
前記タンパク質が動物タンパク質を含む、実施形態52記載の方法。
【符号の説明】
【0167】
101 前処理容器の入口
103 前処理容器
105 前処理容器の出口
107 押出機
109 押出機の出口
111 ダイ
113 乾燥機
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B