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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175087
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】銅微粒子分散体
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20241210BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241210BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20241210BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20241210BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20241210BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20241210BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20241210BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20241210BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F1/00 L
B22F1/05
B22F1/052
B22F7/08 C
C08L71/00 Y
C08K3/08
C08L33/04
C08F220/18
H01L21/52 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024161607
(22)【出願日】2024-09-19
(62)【分割の表示】P 2023539544の分割
【原出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江山 誉昭
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 整
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友秀
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分散安定性及び保存安定性が向上するとともに、低温焼結性及び低温接合性が向上するため、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができる銅微粒子分散体を提供する。
【解決手段】ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー由来の構成単位を含み、ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、銅微粒子分散体、並びに接合体の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、銅微粒子分散体。
【請求項2】
前記銅ナノ粒子Aの含有量が30質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の銅微粒子分散体。
【請求項3】
前記銅ナノ粒子A及び前記ポリマーBの合計含有量に対する前記ポリマーBの含有量の質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]が0.0055以上0.025以下である、請求項1又は2に記載の銅微粒子分散体。
【請求項4】
前記分散媒Cの含有量が4質量%以上60質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
【請求項5】
前記分散媒Cの沸点が180℃以上であり、かつ、前記分散媒Cの分子量が600以下である、請求項1~4のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
【請求項6】
前記銅ナノ粒子Aの平均粒径が105nm以上270nm以下である、請求項1~5のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
【請求項7】
銅マイクロ粒子を更に含有する、請求項1~6のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
【請求項8】
前記銅マイクロ粒子の含有量が5質量%以上65質量%以下である、請求項7に記載の銅微粒子分散体。
【請求項9】
前記銅マイクロ粒子の平均粒径が0.27μm超10μm以下である、請求項7又は8に記載の銅微粒子分散体。
【請求項10】
複数の金属部材の接合に用いる、請求項1~9のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の銅微粒子分散体を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を含む、接合体の製造方法。
【請求項12】
前記加熱する工程における加熱処理の温度が230℃以下である、請求項11に記載の接合体の製造方法。
【請求項13】
前記加熱する工程における雰囲気が不活性ガス雰囲気である、請求項11又は12に記載の接合体の製造方法。
【請求項14】
前記金属部材が金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板、及び電気絶縁性基板の金属部分からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項11~13のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【請求項15】
前記金属部材の接合がチップ部品と回路基板との接合、半導体チップとリードフレーム又は回路基板との接合、及び高発熱の半導体チップと冷却板との接合からなる群から選ばれるいずれかである、請求項11~14のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を用いる接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は導電性及び熱伝導性に優れているため、例えば導体配線材料、熱伝達材料、熱交換材料、放熱材料等として広く用いられている。
銅は熱伝導性に優れているため、被接合物を接合するためのはんだの代替材料としても用いられることがある。
【0003】
近年インバータ等の電力変換・制御装置としてパワーデバイスと呼ばれる半導体デバイスが盛んに用いられるようになってきている。パワーデバイスは、メモリやマイクロプロセッサといった集積回路と異なり、高電流を制御するためのものであり、動作時の発熱量が大きくなる。したがって、パワーデバイスの実装に用いられるはんだには、接合強度に加えて耐熱性も要求される。しかし、昨今広く用いられている鉛フリーはんだは耐熱性が低いという欠点を有する。そこで、はんだに代えて、銅微粒子分散体を用い、これを各種の塗工手段によって対象物に塗布して焼成し、被接合物を接合する技術が種々提案されている。銅は、室温(25℃)で酸化状態が安定であることから酸化状態の銅原子を含む。そのため、銅微粒子分散体により被接合物を接合するためには、酸化状態の銅原子を還元し、焼成して銅の連続体とすることが必要である。
【0004】
特開2020-053404号(特許文献1)には、被接合物との接合強度の高い銅ペーストを提供することを目的として、銅粉と液媒体とを含む銅ペーストであって、前記液媒体はポリエチレングリコールを含み、前記銅粉を構成する銅粒子は、その一次粒子の平均粒径が0.03μm以上1.0μm以下であり、その表面に炭素数6以上18以下である脂肪酸が施されており、且つ(111)面の結晶子サイズが50nm以下であり、前記銅ペースト中の銅粉の質量の割合が50%以上99%以下である銅ペーストが記載されている。
また、特表2013-504692号(特許文献2)には、分散性に優れた金属ナノ粒子水性分散液の製造方法を提供することを目的として、表面に疎水性配位子を含む金属ナノ粒子を疎水性溶媒に分散させる段階と、生成された分散液を界面活性剤、湿潤分散剤及び水性溶媒が含まれた表面改質液に混合する段階と、生成された混合液に配位子除去剤を混合して親水性金属ナノ粒子を生成し、これを分離する段階と、前記親水性金属ナノ粒子を水性溶媒に分散する段階と、を含む金属ナノ粒子水性分散液の製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、銅微粒子分散体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
はんだ代替の接合材料としてこれまでに提案されてきた銅微粒子分散体は、はんだに比べて耐熱性は高いものの、被接合物との接合強度の点では未だ改良の余地を有している。また、従来の銅微粒子分散体は、銅微粒子分散体の保存期間によっては、得られる接合体の接合強度に不良が発生する場合があった。このような保存安定性に劣る銅微粒子分散体は、パワーデバイスの実装に用いることは困難である。
特許文献1に記載された、疎水性の脂肪酸が施された銅微粒子を親水性のポリエチレングリコールで分散した銅ペーストは、一か月保存後に接合体を作製した場合、得られた接合体の接合強度に不良が見られた。これは、銅ペーストの分散不良が原因であると考えられる。
また、特許文献2に記載された金属ナノ粒子水性分散液は、焼成時に銅微粒子を保護した湿潤分散剤の除去が不十分であるため、得られる接合体の接合強度に不良が見られた。
そのため、銅微粒子分散体の保存安定性及び接合性の更なる改善が求められている。
本発明は、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができる銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を用いる接合体の製造方法に関する。
【0007】
本発明者らは、ポリマーで分散されてなる銅ナノ粒子及び分散媒を含有する銅微粒子分散体であって、該ポリマーが、カルボキシ基を有するモノマー由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー由来の構成単位を含み、該ポリマー中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量及び該ポリマーの酸価がそれぞれ所定の範囲であることにより、銅微粒子分散体の分散安定性、保存安定性及び低温下での焼結性が向上し、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができる銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を用いる接合体の製造方法を提供することができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]に関する。
[1]ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、銅微粒子分散体。
[2]前記[1]に記載の銅微粒子分散体を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を含む、接合体の製造方法。
【0008】
本発明によれば、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができる銅微粒子分散体、及び該銅微粒子分散体を用いる接合体の製造方法を提供することができる。
【0009】
[銅微粒子分散体]
本発明の銅微粒子分散体は、ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
なお、本明細書において、「低温下での焼結性」とは、低温窒素雰囲気下において金属焼結が起こることを意味し、「低温焼結性」ともいう。また、低温窒素雰囲気下での複数の金属部材の接合性を「低温接合性」ともいう。また、例えば銅微粒子分散体を25℃、湿度50%の条件下で一か月保存した後の低温接合性を「保存後の低温接合性」ともいう。
また、本明細書において、「低温」とは、銀ナノ粒子分散体を用いた場合の一般的な焼結温度(250~300℃程度)よりも低い温度であることを意味し、例えば100~230℃程度の温度範囲をいい、より低い温度で焼結性及び接合性が向上することが好ましい。
【0010】
本発明によれば、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明に係る銅微粒子分散体に含まれる銅ナノ粒子Aは、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むとともに酸価及びポリアルキレングリコールセグメントの含有量が所定の範囲にあるポリマーB、並びに(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む分散媒Cで分散されており、これらのポリマーB及び分散媒Cの相乗効果により、銅微粒子分散体の分散安定性及び保存安定性が向上すると考えられる。さらに、ポリマーBのポリアルキレングリコールセグメントの含有量が所定の範囲であることにより、低温窒素雰囲気下においても、銅ナノ粒子AによりポリマーBの分解が起こりやすく、その結果、金属微粒子同士が近接するため、低温焼結性及び低温接合性が向上すると考えらえる。
以上の理由から、本発明の銅微粒子分散体によれば、銅微粒子分散体の分散安定性及び保存安定性が向上するとともに、低温焼結性及び低温接合性が向上するため、一定期間保存した後も接合強度が向上した接合体を得ることができると考えられる。
【0011】
<銅ナノ粒子A>
本発明に係る銅微粒子分散体は、ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A(以下、「銅ナノ粒子A」ともいう)を含有する。
銅ナノ粒子A中の銅の含有量は、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。
ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、不可避的不純物が挙げられる。
【0012】
銅ナノ粒子Aの平均粒径は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは105nm以上、より好ましくは110nm以上、更に好ましくは115nm以上、更に好ましくは120nm以上であり、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは270nm以下、より好ましくは250nm以下、更に好ましくは240nm以下、更に好ましくは230nm以下である。
銅ナノ粒子Aの平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
銅ナノ粒子Aの平均粒径は、還元金属率、ポリマーBの種類や量及び還元温度等の銅ナノ粒子Aの製造条件等によって、調整することができる。
【0013】
本発明に係る銅微粒子分散体中の銅ナノ粒子Aの含有量は、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは91質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
【0014】
<ポリマーB>
本発明に係る銅ナノ粒子Aは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、ポリマーBで分散されてなる。
ポリマーBは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含む。
【0015】
ポリマーBの基本構造としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂等のビニル系ポリマー;ポリエステル、ポリウレタン等の縮合系ポリマー等が挙げられる。中でも、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、ビニル系ポリマーが好ましい。
ポリマーBは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーが好ましい。
前記ビニル系ポリマーは、好ましくはカルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含む共重合体である。前記ビニル系ポリマーが共重合体である場合、該ビニル系ポリマーは、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0016】
〔カルボキシ基を有するモノマー(b-1)〕
モノマー(b-1)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。なお、前記不飽和ジカルボン酸は無水物であってもよい。
モノマー(b-1)は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
モノマー(b-1)は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは(メタ)アクリル酸であり、更に好ましくメタクリル酸である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。以下における「(メタ)アクリル酸」も同義である。
【0017】
〔ポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)〕
モノマー(b-2)としては、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。モノマー(b-2)は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。以下における「(メタ)アクリレート」も同義である。
【0018】
モノマー(b-2)は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートである。該アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートのアルコキシ基の炭素数は、前記と同様の観点から、好ましくは1以上18以下、より好ましくは1以上14以下、更に好ましくは1以上12以下である。
該アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
モノマー(b-2)のポリアルキレングリコールセグメントは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド由来の単位を含む。前記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられ、好ましくはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドから選ばれる1種以上であり、より好ましくはエチレンオキシドである。
前記ポリアルキレングリコールセグメント中のアルキレンオキシド由来の単位数は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下、更に好ましくは35以下である。
前記ポリアルキレングリコールセグメントは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、エチレンオキシド由来の単位とプロピレンオキシド由来の単位を含む共重合体であってもよい。
エチレンオキシド由来の単位とプロピレンオキシド由来の単位を含む共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
【0020】
商業的に入手しうるモノマー(b-2)の具体例としては、新中村化学工業株式会社製のNKエステルAM-90G、同AM-130G、同AMP-20GY、NKエステルM-20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社製のブレンマーPE-90、同200、同350等、ブレンマーPME-100、同200、同400、同1000、同4000等、ブレンマーPP-500、同500D、同800、同1000、同2000D等、ブレンマーAP-150、同400、同550等、ブレンマー50PEP-300、同50POEP-800B、同43PAPE-600B、同PLE-1300等が挙げられる。
【0021】
〔疎水性モノマー(b-3)〕
ポリマーBは、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、疎水性モノマー(b-3)由来の構成単位を含有してもよい。
本明細書において「疎水性モノマー」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。モノマー(b-3)の前記溶解量は、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
モノマー(b-3)としては、好ましくは芳香族基含有モノマー及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
芳香族基含有モノマーは、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくは、スチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。芳香族基含有モノマーの分子量は、500未満が好ましい。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-ビニルトルエン(4-メチルスチレン)、ジビニルベンゼン等が挙げられるが、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0023】
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートは、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するもの、より好ましくは炭素数1以上12以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するもの、更に好ましくは炭素数1以上8以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するもの、更に好ましくは炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するものであり、例えば、直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(b-3)は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0024】
モノマー(b-3)は、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは芳香族基含有モノマー及び直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはスチレン系モノマー及び炭素数1以上4以下の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはスチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-ビニルトルエン(4-メチルスチレン)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはスチレン、α-メチルスチレン及びメチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはスチレン及びメチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
【0025】
ポリマーBは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、モノマー(b-1)として(メタ)アクリル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種由来の構成単位、及びモノマー(b-2)としてアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むビニル系ポリマーがより好ましい。
【0026】
ポリマーB中のモノマー(b-1)由来の構成単位とモノマー(b-2)由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーの含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、ポリマーB中に含まれる上記ビニルポリマー以外のポリマーBが挙げられる。
【0027】
ポリマーBがモノマー(b-1)由来の構成単位とモノマー(b-2)由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーである場合、ポリマーB製造時における、原料モノマー中におけるモノマー(b-1)及びモノマー(b-2)の合計の含有量又はポリマーB中におけるモノマー(b-1)由来の構成単位及びモノマー(b-2)由来の構成単位の合計の含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは72質量%以上、より好ましくは88質量%以上、更に好ましくは91質量%以上、更に好ましくは97質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、原料であるモノマー(b-1)及びモノマー(b-2)に含まれるモノマー(b-1)及びモノマー(b-2)以外のモノマーが挙げられる。
【0028】
ポリマーBがモノマー(b-1)由来の構成単位とモノマー(b-2)由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーである場合、ポリマーB製造時における、原料モノマー中におけるモノマー(b-1)の含有量又はポリマーB中におけるモノマー(b-1)由来の構成単位の含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは18質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0029】
ポリマーBがモノマー(b-1)由来の構成単位とモノマー(b-2)由来の構成単位とを含むビニル系ポリマーである場合、ポリマーB製造時における、原料モノマー中におけるモノマー(b-2)の含有量又はポリマーB中におけるモノマー(b-2)由来の構成単位の含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは84質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0030】
ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量は、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、55質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは84質量%以上であり、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、97質量%以下、好ましくは94質量%以下、より好ましくは92質量%以下である。
【0031】
ポリマーBの数平均分子量Mnは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは4,000以上、より好ましくは6,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、銅微粒子分散体の分散安定性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下、更に好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下、更に好ましくは10,000以下である。前記数平均分子量Mnは、実施例に記載の方法により測定される。
【0032】
ポリマーBの酸価は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、20mgKOH/g以上、好ましくは25mgKOH/g以上、より好ましくは30mgKOH/g以上、更に好ましくは35mgKOH/g以上、更に好ましくは40mgKOH/g以上であり、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、250mgKOH/g以下、好ましくは230mgKOH/g以下、より好ましくは220mgKOH/g以下、更に好ましくは215mgKOH/g以下である。
ポリマーBの酸価は、実施例に記載の方法により測定することができるが、構成するモノマーの質量比から算出することもできる。
【0033】
本発明に係る銅微粒子分散体中のポリマーBの含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0034】
本発明に係る銅微粒子分散体中の銅ナノ粒子A及びポリマーBの合計含有量に対するポリマーBの含有量の質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)](以下、「ポリマー質量比」ともいう。)は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは0.0055以上、より好ましくは0.0058以上、更に好ましくは0.0060以上であり、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.022以下、更に好ましくは0.020以下、更に好ましくは0.018以下である。
前記ポリマー質量比は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)を用いて実施例に記載の方法により測定される銅微粒子分散体中の銅ナノ粒子Aの含有量及びポリマーBの含有量から算出される。
【0035】
<分散媒C>
本発明に係る銅微粒子分散体は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン(沸点:290℃、分子量:92)及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む分散媒Cを含有する。
【0036】
(ポリ)アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール(沸点:197℃、分子量:62)、プロピレングリコール(沸点:188℃、分子量:76)、ジエチレングリコール(沸点:244℃、分子量:106)、トリエチレングリコール(沸点:287℃、分子量:150)、テトラエチレングリコール(沸点:327℃、分子量:194)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃、分子量:134)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃、分子量:192)、テトラプロピレングリコール(沸点:300℃以上、分子量:250)、ポリエチレングリコール(数平均分子量が好ましくは100以上1000以下、より好ましくは150以上600以下、更に好ましくは180以上500以下)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量が好ましくは150以上1000以下、より好ましくは180以上600以下、更に好ましくは200以上500以下)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(244℃、分子量:146)等が挙げられる。
【0037】
(ポリ)アルキレングリコール誘導体としては、例えば、前記(ポリ)アルキレングリコールの末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールの両末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃、分子量:134)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:254℃、分子量:218)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃、分子量:178)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:217℃、分子量:176)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点:247℃、分子量:204)等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールの片末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:202℃、分子量:134)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、分子量:162)等が挙げられる。
【0038】
テルペンアルコールとしては、例えば、α-テルピネオール(沸点:219℃、分子量:154)、リナロール(沸点:198℃、分子量:154)、ゲラニオール(229℃分子量:、154)、シトロネロール(沸点:225℃、分子量:156)等のモノテルペンアルコールが挙げられる。
【0039】
グリセリン誘導体としては、例えば、グリセリンに由来する構造を含む溶媒であれば特に制限はなく、例えば、グリセリンのエーテル誘導体、グリセリンのエステル誘導体、ポリグリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物(例えばエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物)等を挙げることができる。ポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリンやトリグリセリン等が挙げられ、商業的に入手しうるポリグリセリンとして、例えば、阪本薬品工業株式会社製のポリグリセリン#310、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750等が挙げられる。グリセリンのエーテル誘導体としては、例えば、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール(沸点:325℃、分子量204)等が挙げられる。グリセリンのエステル誘導体としては、例えば、グリセリルトリブチラート(沸点:305℃、分子量302)等が挙げられる。
【0040】
分散媒Cは、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体及びテルペンアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくはジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量が好ましくは100以上1000以下、より好ましくは150以上600以下、更に好ましくは180以上500以下)、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含み、更に好ましくはジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量180以上500以下)、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0041】
分散媒Cの1気圧での沸点は、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは210℃以上、更に好ましくは215℃以上であり、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは360℃以下、更に好ましくは330℃以下、更に好ましくは300℃以下である。なお、分散媒Cとして2種以上を併用する場合には、該分散媒Cの沸点は、各分散媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0042】
分散媒Cの分子量は、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは60以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは130以上、更に好ましくは150以上であり、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは600以下、より好ましくは450以下、更に好ましくは400以下、更に好ましくは350以下、更に好ましくは300以下である。分散媒Cとして2種以上を併用する場合には、該分散媒Cの分子量は、各分散媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0043】
分散媒C中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体(以下、「分散媒C1」ともいう)の合計含有量は、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、分散媒C1中に含まれる分散媒C1以外の分散媒Cが挙げられる。
【0044】
分散媒C中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体及びテルペンアルコール(以下、「分散媒C2」ともいう)の合計含有量は、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、分散媒C2中に含まれる分散媒C2以外の分散媒Cが挙げられる。
【0045】
分散媒C中のジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量180以上500以下)、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、「分散媒C3」ともいう)の合計含有量は、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、分散媒C3中に含まれる分散媒C3以外の分散媒Cが挙げられる。
【0046】
本発明に係る銅微粒子分散体中の分散媒Cの含有量は、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0047】
本発明に係る銅微粒子分散体中の水の含有量は、銅の酸化を抑制する観点、並びに銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0048】
<銅マイクロ粒子>
本発明に係る銅微粒子分散体は、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、銅マイクロ粒子を更に含有してもよい。
銅マイクロ粒子中の銅の含有量は、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。
ここで「実質的100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、不可避的不純物が挙げられる。
【0049】
銅マイクロ粒子の平均粒径は、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは0.27μm超、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.6μm以上、更に好ましくは0.7μm以上であり、銅微粒子分散体の分散安定性及び保存安定性、並びに保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは7μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
銅マイクロ粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0050】
本発明に係る銅微粒子分散体中の銅マイクロ粒子の含有量は、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、導電性、銅微粒子分散体の分散安定性、銅微粒子分散体の保存安定性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは65質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
【0051】
本発明に係る銅微粒子分散体中の銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子の合計含有量に対する銅ナノ粒子Aの含有量の質量比[銅ナノ粒子A/(銅ナノ粒子A+銅マイクロ粒子)]は、導電性、銅微粒子分散体の保存安定性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上であり、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.75以下である。
【0052】
(銅微粒子分散体の組成)
本発明に係る銅微粒子分散体において、銅微粒子分散体の分散安定性、銅微粒子分散体の保存安定性、導電性、低温焼結性、低温接合性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、銅ナノ粒子Aの含有量が好ましくは30質量%以上95質量%以下、ポリマーBの含有量が好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、分散媒Cの含有量が好ましくは4質量%以上60質量%以下、銅マイクロ粒子の含有量が好ましくは0質量%以上65質量%以下である。
【0053】
本発明に係る銅微粒子分散体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記成分以外の他の成分として、各種添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子以外の金属粒子、ガラスフリット等の焼結促進剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、緩衝剤、消泡剤、レベリング剤、揮発抑制剤等が挙げられる。銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子以外の金属粒子としては、例えば、亜鉛、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の金属粒子が挙げられる。
本発明に係る銅微粒子分散体中の添加剤の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0054】
(銅微粒子分散体の製造)
本発明に係る銅微粒子分散体は、公知の方法により予め調製した銅ナノ粒子AにポリマーB及び分散媒C、必要に応じて銅マイクロ粒子や各種添加剤等を添加及び混合する方法;銅原料化合物、還元剤、及び分散剤としてポリマーB、必要に応じて銅原料化合物及び還元剤を分散させるための溶媒を混合して、該銅原料化合物を還元して銅ナノ粒子Aの分散体を得た後、分散媒C及び必要に応じて銅マイクロ粒子や各種添加剤等を添加及び混合する方法等により得ることができる。中でも、銅微粒子分散体の分散安定性を向上させて、銅微粒子分散体の保存安定性及び保存後の低温接合性を向上させる観点から、予めポリマーBを含む銅ナノ粒子Aの乾燥粉(以下、「銅ナノ粒子乾燥粉」ともいう)を得た後、分散媒C及び必要に応じて銅マイクロ粒子や各種添加剤等を添加及び混合する方法が好ましい。
銅ナノ粒子乾燥粉は、銅原料化合物、還元剤、及びポリマーBを混合し、該銅原料化合物が還元剤により還元され、ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子Aの分散体を得た後、該銅ナノ粒子Aの分散体を凍結乾燥等により乾燥させて得ることができる。
【0055】
銅原料化合物としては、銅を含む化合物であれば特に制限はない。
銅原料化合物としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅、酸化第二銅、酸化第一銅、ギ酸銅、酢酸銅、シュウ酸銅等が挙げられる。銅原料化合物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
還元剤としては、銅原料化合物を還元できる化合物であれば特に制限はない。
還元剤としては、例えば、ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン及び抱水ヒドラジン等のヒドラジン系化合物;水素化ホウ素ナトリウム等のホウ素化合物;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の無機酸塩等が挙げられる。
還元剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
銅原料化合物及び還元剤を分散させる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0058】
還元反応の温度は、銅ナノ粒子Aの粒径を小さくし、均一にする観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、安定に銅ナノ粒子を生産する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下の範囲で行うことが好ましい。還元反応は、空気雰囲気下であってもよく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下であってもよい。
【0059】
銅微粒子分散体の製造においては、未反応の還元剤、銅ナノ粒子Aの分散に寄与しない余剰のポリマーB等の不純物を除去する観点から、凍結乾燥の前に銅ナノ粒子Aの分散体を精製してもよい。
銅ナノ粒子Aの分散体を精製する方法は、特に制限はなく、透析、限外濾過等の膜処理;遠心分離処理等の方法が挙げられる。中でも、不純物を効率的に除去する観点から、膜処理が好ましく、透析がより好ましい。透析に用いる透析膜の材質としては、再生セルロースが好ましい。
透析膜の分画分子量は、不純物を効率的に除去する観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下である。
本発明に係る銅微粒子分散体は、更に必要に応じて前述の各種添加剤を添加し、フィルター等による濾過処理を行うことにより得ることができる。
【0060】
本発明に係る銅微粒子分散体は、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性が良好であるため、各種電子電気機器の導電性部材の形成に用いることができる。該導電性部材は、はんだ等の接合剤;RFID(radio frequency identifier)タグ等のアンテナ;MLCC(積層セラミックコンデンサ)等のコンデンサ;電子ペーパー;液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置;有機EL素子;有機トランジスタ;プリント配線板、フレキシブル配線板等の配線板;有機太陽電池;フレキシブルセンサー等のセンサー等に用いることが好ましい。これらの中でも、本発明に係る銅微粒子分散体は、低温焼結性、低温接合性、及び保存後の低温接合性の観点から、複数の金属部材の接合に用いることが好ましい。
【0061】
[接合体の製造方法]
本発明に係る接合体の製造方法は、銅微粒子分散体を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を含む、接合体の製造方法であって、銅微粒子分散体が、前述の本発明の銅微粒子分散体である。
本発明に係る銅微粒子分散体は、複数の金属部材の接合に用いる場合、該銅微粒子分散体を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を含む、接合体の製造方法に用いることが好ましい。
【0062】
前記加熱する工程における加熱処理の温度は、接合強度及び導電性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、低温焼結性及び低温接合性を向上させる観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
前記加熱する工程における加熱処理は、無加圧下及び加圧下のいずれでも行うことができるが、接合強度及び導電性の観点から、加圧下が好ましい。前記加熱する工程における加熱処理の圧力は、低温焼結性及び低温接合性を向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、更に好ましくは10MPa以上、更に好ましくは15MPa以上であり、生産性の観点から、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。
前記加熱する工程における加熱処理の時間は、加熱処理の温度や圧力によって適宜調整することができる。
前記加熱する工程における雰囲気は、空気雰囲気であってもよく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であってもよく、水素ガス等の還元性ガス雰囲気下でもよいが、銅の酸化の抑制と安全性の観点から、窒素ガス雰囲気がより好ましい。
【0063】
本発明において接合する金属部材としては、例えば金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板又は金属製基板;電気絶縁性基板の電極等の金属部分等が挙げられる。本発明で用いる複数の金属部材は、同じ種類の金属部材であっても、異なる種類の金属部材であってもよい。
これらの中でも、金属部材は、好ましくは金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板、及び電気絶縁性基板の金属部分から選ばれる少なくとも1種を含む。
本発明における金属部材の接合は、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;メモリ、ダイオード、トランジスタ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレーム又は回路基板との接合;高発熱の半導体チップと冷却板との接合等に用いることができる。
【0064】
前記銅微粒子分散体の金属部材への付与方法としては、スロットダイコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ドクターブレーディング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング等の各種塗布方法;ステンシル印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、ディスペンサー印刷、インクジェット印刷等の各種パターニング印刷方法が挙げられる。
前記銅微粒子分散体の金属部材への付与量は、接合する金属部材の大きさ、種類に応じて適宜調整することができる。
【0065】
前記接合体の接合強度は、好ましくは20MPa以上である。前記接合強度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0066】
上述の実施形態に関し、本発明は更に以下の実施態様を開示する。
<1>
ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、銅微粒子分散体。
<2>
ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーを含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が60質量%以上94質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が25mgKOH/g以上230mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記溶媒Cの沸点が180℃以上400℃以下である、<1>に記載の銅微粒子分散体。
<3>
ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーを含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が60質量%以上94質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が25mgKOH/g以上230mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記溶媒Cの分子量が60以上600以下である、<1>又は<2>に記載の銅微粒子分散体。
<4>
ポリマーBで分散されてなる銅ナノ粒子A、及び分散媒Cを含有する銅微粒子分散体であって、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーを含み、
前記カルボキシ基を有するモノマー(b-1)が(メタ)アクリル酸及びマレイン酸から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記ポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)がポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びアルコキシ基の炭素数が1以上18以下であるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が60質量%以上94質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が25mgKOH/g以上230mgKOH/g以下であり、
前記分散媒Cが(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体及びテルペンアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記溶媒Cの沸点が180℃以上400℃以下であり、
前記溶媒Cの分子量が60以上600以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<5>
前記銅ナノ粒子Aの含有量が30質量%以上95質量%以下であり、
前記銅ナノ粒子A及び前記ポリマーBの合計含有量に対する前記ポリマーBの含有量の質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]が0.0055以上0.025以下であり、
前記分散媒Cの含有量が4質量%以上60質量%以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<6>
前記銅ナノ粒子Aの含有量が50質量%以上91質量%以下であり、
前記銅ナノ粒子A及び前記ポリマーBの合計含有量に対する前記ポリマーBの含有量の質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]が0.0055以上0.025以下であり、
前記分散媒Cの含有量が4質量%以上20質量%以下である、<1>~<5>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<7>
前記ポリマーBの含有量が0.1質量%以上10質量%以下である、<5>又は<6>に記載の銅微粒子分散体。
<8>
前記ポリマーB中のカルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーの含有量が80質量%以上であり、
前記溶媒C中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体の合計含有量が50質量%以上である、<2>~<7>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<9>
前記ポリマーB中のカルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含むビニル系ポリマーの含有量が95質量%以上であり、
前記溶媒C中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体の合計含有量が95質量%以上である、<2>~<7>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<10>
前記銅ナノ粒子Aの平均粒径が105nm以上270nm以下である、<1>~<9>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<11>
前記ビニル系ポリマーB中におけるモノマー(b-1)由来の構成単位及びモノマー(b-2)由来の構成単位の合計の含有量が72質量%以上である、<2>~<10>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<12>
前記ビニル系ポリマーB中におけるモノマー(b-1)由来の構成単位の含有量が3質量%以上35質量%以下であり、モノマー(b-2)由来の構成単位の含有量が55質量%以上97質量%以下である、<2>~<11>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<13>
前記溶媒Cがジプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量180以上500以下)、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含み、前記溶媒C中の前記化合物の合計含有量が95質量%以上である、<1>~<12>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<14>
銅マイクロ粒子を更に含有し、前記銅マイクロ粒子の平均粒径が0.27μm超10μm以下である、<1>~<13>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<15>
前記銅マイクロ粒子の含有量が5質量%以上65質量%以下である、<14>に記載の銅微粒子分散体。
<16>
複数の金属部材の接合に用いる、<1>~<15>のいずれかに記載の銅微粒子分散体。
<17>
<1>~<16>のいずれかに記載の銅微粒子分散体を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を含む、接合体の製造方法。
<18>
前記加熱する工程における加熱処理の温度が230℃以下である、<17>に記載の接合体の製造方法。
<19>
前記加熱する工程における雰囲気が不活性ガス雰囲気である、<17>又は<18>に記載の接合体の製造方法。
<20>
前記金属部材が金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板、及び電気絶縁性基板の金属部分からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<17>~<19>のいずれかに記載の接合体の製造方法。
<21>
前記金属部材の接合がチップ部品と回路基板との接合、半導体チップとリードフレーム又は回路基板との接合、及び高発熱の半導体チップと冷却板との接合からなる群から選ばれるいずれかである、<17>~<20>のいずれかに記載の接合体の製造方法。
【実施例0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
また、以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
各種物性は、以下の方法により測定又は算出した。
【0068】
[ポリマーBの数平均分子量Mnの測定]
ゲル浸透クロマトグラフィー法により求めた。測定試料は、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC-13HP PTFE 0.2μm、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過したものを用いた。測定条件を下記に示す。
GPC装置:東ソー株式会社製「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn Super AW-H」
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液
流速:0.5mL/min
標準物質:単分散ポリスチレンキット 東ソー株式会社製「PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)」
【0069】
[ポリマーBの酸価の測定]
ポリマーBの酸価は、JIS K0070-1992(電位差滴定方法)に準じて測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=4:6(容量比))に変更した。
【0070】
[ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量の算出]
ポリマーBのポリアルキレングリコールセグメント含有量は、後述する表1のモノマー質量部と表2のポリアルキレングリコールセグメント比率を乗じて算出した。
【0071】
[銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子の平均粒径]
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、電解放出型走査電子顕微鏡:S-4800)を用い、銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を撮影した。倍率は粒子の粒径に応じて決定し、5000倍から150000倍の範囲で撮影を行った。画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所)を用いてSEM像を解析し、1サンプルあたり100個以上の粒子について粒径を求め、それらの算術平均値を銅ナノ粒子A及び銅マイクロ粒子の平均粒径とした。
【0072】
[ポリマー質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]の算出]
示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA)(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、商品名:STA7200RV)を用いて、試料(ポリマーBを含む銅ナノ粒子Aの乾燥粉)10mgをアルミパンセルに計量し、50mL/分の窒素フロー下で10℃/分の昇温速度で35℃から550℃まで昇温し、質量減少量を測定した。35℃から550℃までの質量減少量をポリマーBの質量、550℃での残質量を銅ナノ粒子Aの質量として、ポリマー質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]を以下の式で算出した。
ポリマー質量比=(35℃から550℃までの質量減少量)/(35℃から550℃までの質量減少量+550℃での残質量)
【0073】
(ポリマーBの製造)
製造例1
温度計、100mL窒素バイパス付き滴下ロート2本、還流装置を具備した1000mL四つ口丸底フラスコに、エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)20.0gを入れ、オイルバスにて該フラスコの内温を80℃まで加温した後、窒素バブリングを10分間行った。次いで、メタクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)15.3g、メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)17.2g、メトキシポリエチレングリコール(EO23モル)メタクリレート(日油株式会社製「PME-1000」)67.5g、3-メルカプトプロピオン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)1.0g、エタノール28.7gをポリビーカー中で溶解し、滴下ロート(1)に入れた。別途、エタノール51.3g及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製「V-65」、重合開始剤)1.3gをポリビーカー中で溶解し、滴下ロート(2)に入れた。次いで、上記フラスコにむけ、滴下ロート(1)及び滴下ロート(2)内の混合物を同時にそれぞれ90分かけて滴下した。その後、該フラスコ内の内温を90℃に昇温した後、更に1時間撹拌を続け、反応を終了させた。その樹脂溶液を、ドライチャンバー(東京理化器械株式会社製、型式:DRC-1000)を付属した凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、型式:FDU-2110)を用いて、乾燥条件(-25℃1時間凍結、-10℃9時間減圧、25℃5時間減圧。減圧度5Pa)で凍結乾燥することにより、絶乾したポリマーB-1(メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メトキシポリエチレングリコール(EO23モル)メタクリレート重合体、酸価:100mgKOH/g、Mn:8,000)を得た。
【0074】
製造例2~22
表1に示すモノマー組成に代えた以外は、製造例1と同様の製造方法にて製造し、ポリマーB-2~B-22を得た。
用いたモノマーの詳細を表2に示す。
【0075】
【表1-1】
【0076】
【表1-2】
【0077】
【表2】
【0078】
(銅ナノ粒子乾燥粉の合成)
合成例1
2Lのビーカーに、銅原料化合物として硫酸銅5水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)を88.4g、分散剤として製造例1で得られたポリマーB-1を絶乾状態にしたものを0.7g、イオン交換水を1000g投入し、40℃にて、マグネチックスターラーを用いて目視で透明になるまで撹拌し、混合液を得た。
次いで、50mLの滴下ロートに入れたヒドラジン一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)17.8gを、25℃にて、60分かけて前記混合液に滴下した。その後、オイルバスで反応液の温度を40℃に制御しながら5時間撹拌し、次いで空冷して、分散された銅ナノ粒子を含有する赤褐色の分散液を得た。
得られた分散液全量を、透析チューブ(REPLIGEN社製、商品名:スペクトラ/ポア6、透析膜:再生セルロース、分画分子量(MWCO)=50K)に投入し、チューブ上下をクローサーにて密封した。このチューブを、5Lガラスビーカー中の5Lのイオン交換水に浸漬し、水温を20~25℃に保持して1時間撹拌した。その後、イオン交換水を1時間ごとに全量交換する作業を繰り返した。イオン交換水の交換をする前にサンプリングを行い、銅ナノ粒子の分散液の導電率が7mS/m以下となったときに透析を終了し、銅ナノ粒子の分散液を得た。導電率は、イオン交換水で希釈して銅濃度を1%に調整して測定した。
精製した銅ナノ粒子の分散液を、ドライチャンバー(東京理化器械株式会社製、型式:DRC-1000)を付属した凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、型式:FDU-2110)を用いて、凍結乾燥することにより、ポリマーB-1を含む銅ナノ粒子A-1の21.3gを得た。乾燥条件は-25℃で1時間凍結し、-10℃で9時間、5Paにて減圧乾燥し、さらに25℃、5時間5Paで減圧乾燥し、ポリマーB-1を含む銅ナノ粒子A-1の乾燥粉を得た。得られた銅ナノ粒子A-1は平均粒径が160nm、ポリマー質量比が0.011であった。結果を表3に示す。
【0079】
合成例2~22
分散剤を表3に示すポリマーB-2~B-22に変更した以外は合成例1と同様に行い、各銅ナノ粒子乾燥粉を得た。得られた各銅ナノ粒子の平均粒径とポリマー質量比を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例1
(銅微粒子分散体の調製)
ジプロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、一級試薬)0.5g、テトラエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、一級試薬)0.5g、合成例1で得られたポリマーB-1を含む銅ナノ粒子A-1の乾燥粉 9.0gをメノウ乳鉢に加え、乾燥粉が目視で見えなくなるまで混練し、得られた混合液をポリ瓶に移した。密栓をしたポリ瓶を、自転公転型攪拌装置(株式会社シンキー製、Planetary Vacuum Mixer ARV-310)を用いて、2000min-1(2000回転/分)で5分間攪拌し、銅微粒子分散体1を得た。
【0082】
(接合体の製造)
得られた銅微粒子分散体1を用いて、以下の方法に従って接合体を製造した。
まず、30mm×30mmの銅板(総厚:1mm)上に、6mm×6mm正方形の開口を3列有するステンレス製のメタルマスク(厚さ:150μm)を載せ、メタルスキージを用いたステンシル印刷により銅微粒子分散体を銅板上に塗布した。その後、大気下シャマルホットプレート(アズワン株式会社製、HHP-441)上で120℃にて10分乾燥させた。その後、5mm×5mmのシリコンチップ(厚さ:400μm)に対して、チタン、ニッケル、金がこの順番でスパッタ処理されたシリコンチップを用意し、塗布した銅微粒子分散体上に、金が銅微粒子分散体と接するように該シリコンチップを載せた。これにより銅板、銅微粒子分散体及びシリコンチップがこの順で積層されてなる積層体を得た。
得られた積層体を以下の方法で焼成し、接合体を得た。まず、積層体を加圧焼成機(明昌機工株式会社製、HTM-1000)にセットし、炉内に窒素を500mL/分で流して炉内の空気を窒素に置換した。その後、上下の加熱ヘッドにより積層体を20MPaで加圧しながら10分間かけて加熱ヘッドの温度を200℃まで昇温した。昇温後、200℃で150秒保持して焼結処理し接合体を得た。焼結後、加熱ヘッドを-60℃/minで水冷し、100℃以下で接合体を空気中に取り出した。
【0083】
実施例2~23、比較例1~5
銅微粒子分散体の組成を表4に示す組成に変更した以外は実施例1と同様に行い、実施例2~23及び比較例1~5の銅微粒子分散体及び接合体をそれぞれ得た。
【0084】
銅微粒子分散体の製造に用いた原料を以下に示す。
MA-C025(銅マイクロ粒子、三井金属鉱業株式会社製、粒径5.0μm)
1050Y(銅マイクロ粒子、三井金属鉱業株式会社製、粒径0.8μm)
ジプロピレングリコール(DPG、富士フイルム和光純薬株式会社製、一級試薬)
テトラエチレングリコール(TEG、富士フイルム和光純薬株式会社製、一級試薬)
PEG400(富士フイルム和光純薬株式会社製、一級試薬、ポリアルキレングリコール400)
α-テルピネオール(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級試薬)
【0085】
実施例1~23及び比較例1~5で得られた銅微粒子分散体及び接合体を用いて、以下の評価を行った。
【0086】
<評価>
[接合体の接合強度]
以下の手順に従って、接合体の接合強度を測定した。
万能型ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社製、Prospector)を用い、試験速度5mm/分、シェア高さ50μmで接合体のシリコンチップを水平方向に押し、接合体のダイシェア強度を測定した。接合体のそれぞれ3個について行い、3個の接合体を測定して得た値の平均値を接合体の接合強度とした。
【0087】
[銅微粒子分散体の保存安定性]
銅微粒子分散体を25℃、湿度50%の条件下で一か月保存し、その後、前述の方法と同様の方法により接合体の接合強度を測定した。結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
表4から、実施例1~23の銅微粒子分散体は、比較例1~5の銅微粒子分散体に比べて、窒素下200℃の加圧焼成においても、接合強度が向上し、一か月保存しても得られる接合体の接合強度が良好であった。以上から、本発明の銅微粒子分散体は窒素下200℃の焼成条件においても、接合強度が向上し、かつ保存安定性も良好であることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2024-10-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅ナノ粒子AとポリマーBとを含み、
前記ポリマーBが、カルボキシ基を有するモノマー(b-1)由来の構成単位、及びポリアルキレングリコールセグメントを有するモノマー(b-2)由来の構成単位を含み、
前記ポリマーB中のポリアルキレングリコールセグメントの含有量が55質量%以上97質量%以下であり、
前記ポリマーBの酸価が20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であ銅ナノ粒子乾燥粉
【請求項2】
前記銅ナノ粒子Aの含有量が30質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の銅ナノ粒子乾燥粉
【請求項3】
前記銅ナノ粒子A及び前記ポリマーBの合計含有量に対する前記ポリマーBの含有量の質量比[ポリマーB/(銅ナノ粒子A+ポリマーB)]が0.0055以上0.025以下である、請求項1又は2に記載の銅ナノ粒子乾燥粉
【請求項4】
前記銅ナノ粒子Aの平均粒径が105nm以上270nm以下である、請求項1~のいずれかに記載の銅ナノ粒子乾燥粉
【請求項5】
複数の金属部材の接合に用いる、請求項1~のいずれかに記載の銅ナノ粒子乾燥粉