(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175115
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】CD4欠損CAR T細胞および抗CD4 CAR T細胞を作製するための方法および組成物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241210BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/113 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024163218
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2021556400の分割
【原出願日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】62/820,387
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル ディー/ビー/エイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート
【住所又は居所原語表記】1900 Ninth Ave. Seattle, WA 98101 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ソー
(72)【発明者】
【氏名】サーニ,ジャヤ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法を提供する。
【解決手段】CD4+T細胞などの細胞において少なくとも1つのCD4遺伝子を破壊する方法を提供する。いくつかの実施形態において、この破壊は、CRISPRガイドポリヌクレオチドの使用を含む。また、いくつかの実施形態は、少なくとも1つの破壊されたCD4遺伝子とキメラ抗原受容体(CAR)を有する細胞の作製および使用を含む。さらに、本明細書で提供される方法および組成物の態様のいくつかは、抗CD4 CARや抗CD19 CARなどのCAR、およびHIV、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)などの疾患を治療するための使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法であって、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドにより破壊された少なくとも1つのCD4遺伝子を含む遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月19日に出願された「CD4欠損CAR T細胞および抗CD4 CAR T細胞を作製するための方法および組成物」という名称の米国特許出願第62/820,387号の優先権を主張するものであり、この出願は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0002】
連邦政府の助成による研究開発に関する陳述
NIHの契約番号/助成金番号:RO1 AI118500「最適化された抗HIVキメラ抗原受容体を有するT細胞の作製、およびHIV感染細胞を標的とするための戦略としてのCCR5の破壊」
【0003】
配列表の参照
本願は電子形式の配列表とともに出願されたものである。この配列表は、SCRI206WOSEQLISTのファイル名で2020年3月13日に作成された約4kbのファイルとして提供されたものである。この電子形式の配列表に記載の情報は、引用によりその全体が本明細書に援用される。
【0004】
本明細書で提供される方法および組成物の態様のいくつかは、CD4+T細胞などの細胞において少なくとも1つのCD4遺伝子を破壊することに関する。いくつかの実施形態において、この破壊は、CRISPRガイドポリヌクレオチドの使用を含む。また、いくつかの実施形態は、少なくとも1つの破壊されたCD4遺伝子とキメラ抗原受容体(CAR)を有する細胞の作製および使用を含む。さらに、本明細書で提供される方法および組成物の態様のいくつかは、抗CD4 CARや抗CD19 CARなどのCAR、およびHIV、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)などの疾患を治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0005】
CD4+T細胞は、免疫系の機能において中心的な役割を果たしている。CD4+T細胞は、免疫系において、B細胞の抗体産生を補助し、マクロファージの殺菌活性の増強を誘導し、好中球、好酸球および好塩基球を感染部位や炎症部位に動員することができるとともに、サイトカインおよびケモカインを産生することにより、免疫系の調節などの一連の免疫応答を制御することができる。その他の種類の細胞でもCD4の発現が認められることがある。また、CD4は、一部の病原体が能力を発揮する際に極めて重要な役割を果たしており、例えば、ヒト細胞へのHIVの感染に必須とされる。CD4細胞は、HTLVやEBVなどのその他の病原体の感染を受けることもある。また、CD4+T細胞が原因となる疾患もある。様々なCD4+悪性腫瘍も存在する。さらに、CD4+T細胞は、自己免疫疾患や同種免疫疾患の一部において一定の役割を果たしていると考えられている。したがって、CD4の破壊を含み、かつ/またはCD4 T細胞を標的とする新規な細胞療法の開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、以下の態様を含む。
【0007】
態様1:CD4遺伝子破壊用の単離された核酸であって、CD4遺伝子にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子にハイブリダイズするように構成されているCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドを含む核酸。
【0008】
態様2:前記ガイドポリヌクレオチドが、CD4遺伝子のセンス鎖にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子のセンス鎖にハイブリダイズするように構成されている、態様1に記載の単離された核酸。
【0009】
態様3:前記ガイドポリヌクレオチドが、CD4遺伝子のアンチセンス鎖にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子のアンチセンス鎖にハイブリダイズするように構成されている、態様1に記載の単離された核酸。
【0010】
態様4:前記ガイドポリヌクレオチドが、CD4遺伝子の第1のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の第1のエキソンにハイブリダイズするように構成されている、態様1~3のいずれか1つに記載の単離された核酸。
【0011】
態様5:前記ガイドポリヌクレオチドが、CD4遺伝子の第3のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の第3のエキソンにハイブリダイズするように構成されている、態様1~3のいずれか1つに記載の単離された核酸。
【0012】
態様6:前記ガイドポリヌクレオチドが、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を標的とする、態様1~5のいずれか1つに記載の単離された核酸。
【0013】
態様7:前記PAMが、NGGモチーフを含む、態様6に記載の単離された核酸。
【0014】
態様8:配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、態様1~7のいずれか1つに記載の核酸。
【0015】
態様9:配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、態様1~8のいずれか1つに記載の核酸。
【0016】
態様10:配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む、態様1~9のいずれか1つに記載の核酸。
【0017】
態様11:配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む、態様1~10のいずれか1つに記載の核酸。
【0018】
態様12:前記ガイドポリヌクレオチドがRNAを含む、態様1~11のいずれか1つに記載の核酸。
【0019】
態様13:態様1~12のいずれか1つに記載の核酸を含むリボ核タンパク質(RNP)。
【0020】
態様14:Cas9タンパク質を含む、態様13に記載のRNP。
【0021】
態様15:遺伝子組換え細胞を作製する方法であって、態様13または14に記載のRNPを細胞に導入する工程を含む方法。
【0022】
態様16:Cas9タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、態様15に記載の方法。
【0023】
態様17:前記RNPを前記細胞に導入する工程が、エレクトロポレーションまたはリポフェクションを含む、態様16に記載の方法。
【0024】
態様18:遺伝子組換え細胞を作製する方法であって、
態様1~12のいずれか1つに記載の核酸をコードする第1のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程;および
Cas9タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程
を含む方法。
【0025】
態様19:第1のポリヌクレオチドおよび/または第2のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程が、エレクトロポレーションまたはリポフェクションを含む、態様18に記載の方法。
【0026】
態様20:キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第3のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、態様15~19のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
態様21:前記CARが、CD4タンパク質に特異的に結合する、態様20に記載の方法。
【0028】
態様22:前記CARが、CD19タンパク質に特異的に結合する、態様20に記載の方法。
【0029】
態様23:前記CARが、HIVタンパク質に特異的に結合する、態様20に記載の方法。
【0030】
態様24:前記CARが、HIV中和抗体に由来する抗原結合ドメインを含む、態様20に記載の方法。
【0031】
態様25:前記HIV中和抗体が、PGT128、PG9およびPGT145から選択される、態様24に記載の方法。
【0032】
態様26:前記CARが、誘導型プロモーターから発現される、態様20~25のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
態様27:自殺遺伝子システムをコードする第4のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、態様15~26のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
態様28:前記自殺遺伝子システムが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである、態様27に記載の方法。
【0035】
態様29:前記細胞が哺乳動物細胞である、態様15~28のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
態様30:前記細胞がヒト細胞である、態様15~29のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
態様31:前記細胞がCD4を発現している、態様15~30のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
態様32:前記細胞がリンパ球である、態様15~31のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
態様33:前記細胞がT細胞である、態様15~32のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
態様34:前記細胞が初代細胞である、態様15~33のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
態様35:前記細胞が、末梢血単核細胞から単離された細胞である、態様15~34のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
態様36:前記細胞が、CD3またはCD8を発現している、態様15~35のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
態様37:前記細胞が、CD4+細胞、ナチュラルキラー細胞またはナチュラルキラーT細胞に由来する細胞である、態様15~36のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
態様38:前記細胞がエクスビボの細胞である、態様15~37のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
態様39:態様15~38のいずれか1つに記載の方法により作製された遺伝子組換え細胞。
【0046】
態様40:CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドにより破壊された少なくとも1つのCD4遺伝子を含む遺伝子組換え細胞。
【0047】
態様41:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、第1のエキソンにおいて破壊されている、態様40に記載の遺伝子組換え細胞。
【0048】
態様42:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、第3のエキソンにおいて破壊されている、態様40に記載の遺伝子組換え細胞。
【0049】
態様43:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、態様40~42のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0050】
態様44:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、態様40~43のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0051】
態様45:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、態様40~44のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0052】
態様46:前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、態様40~45のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0053】
態様47:キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、態様40~46のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0054】
態様48:前記CARが、CD4タンパク質に特異的に結合する、態様47に記載の遺伝子組換え細胞。
【0055】
態様49:前記CARが、CD19タンパク質に特異的に結合する、態様47に記載の遺伝子組換え細胞。
【0056】
態様50:前記CARが、HIVタンパク質に特異的に結合する、態様47に記載の遺伝子組換え細胞。
【0057】
態様51:前記CARが、HIV中和抗体に由来する抗原結合ドメインを含む、態様50に記載の遺伝子組換え細胞。
【0058】
態様52:前記HIV中和抗体が、PGT128、PG9およびPGT145から選択される、態様51に記載の遺伝子組換え細胞。
【0059】
態様53:前記CARが、誘導型プロモーターから発現される、態様40~52のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0060】
態様54:自殺遺伝子システムをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、態様40~53のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0061】
態様55:前記自殺遺伝子システムが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである、態様54に記載の遺伝子組換え細胞。
【0062】
態様56:哺乳動物細胞である、態様40~55のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0063】
態様57:ヒト細胞である、態様40~56のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0064】
態様58:リンパ球である、態様40~57のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0065】
態様59:T細胞である、態様40~58のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0066】
態様60:初代細胞である、態様40~59のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0067】
態様61:末梢血単核細胞から単離された細胞である、態様40~60のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0068】
態様62:CD3またはCD8を発現している、態様40~61のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0069】
態様63:CD4+細胞、ナチュラルキラー細胞またはナチュラルキラーT細胞に由来する細胞である、態様40~62のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞。
【0070】
態様64:態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞と薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
【0071】
態様65:HIV感染症に対する抵抗性が増強された遺伝子組換え細胞集団であって、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞を含み、少なくとも1つのCD4遺伝子が破壊されていない細胞と比べて、HIV感染症に対する抵抗性が増強されている細胞集団。
【0072】
態様66:CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法であって、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法。
【0073】
態様67:前記CD4+細胞集団が、HIVを含む、態様66に記載の方法。
【0074】
態様68:前記CD4+細胞集団が、急性骨髄性白血病(AML)細胞または急性リンパ性白血病(ALL)細胞を含む、態様66に記載の方法。
【0075】
態様69:HIVに感染したCD4+細胞を減少させる方法であって、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法。
【0076】
態様70:前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞が同じ対象に由来する、態様66~69のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
態様71:前記CD4+細胞集団が、エクスビボの細胞集団である、態様66~70のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
態様72:前記CD4+細胞集団が、インビボの細胞集団である、態様66~70のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
態様73:HIV感染症、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)を有する対象を治療、抑制または緩和する方法であって、
HIV感染症、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)の治療、抑制または緩和を必要とする前記対象に、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団を投与する工程を含む方法。
【0080】
態様74:前記遺伝子組換え細胞が、前記対象の自己細胞である、態様72に記載の方法。
【0081】
態様75:前記遺伝子組換え細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、態様73または74に記載の方法。
【0082】
態様76:前記CARが、抗CD4 CARを含む、態様75に記載の方法。
【0083】
態様77:前記CARが、CD19タンパク質に特異的に結合する、態様75に記載の方法。
【0084】
態様78:前記CARが、HIVタンパク質に特異的に結合する、態様75に記載の方法。
【0085】
態様79:前記CARが、HIV中和抗体に由来する抗原結合ドメインを含む、態様75に記載の方法。
【0086】
態様80:前記HIV中和抗体が、PGT128、PG9およびPGT145から選択される、態様79に記載の方法。
【0087】
態様81:前記細胞において前記CARの発現を誘導する工程をさらに含む、態様73~80のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
態様82:前記細胞において前記CARの発現を抑制または低減する工程をさらに含む、態様73~80のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
態様83:前記対象に前記細胞集団を投与した後に、前記CARの発現が抑制されるか、低減する、態様73~82のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
態様84:前記対象に前記細胞集団を投与してから1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後または7日後に、前記CARの発現の抑制または低減が確認される、態様73~82のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
態様85:前記対象に前記細胞集団を投与してから1週間後、2週間後、3週間後または4週間後に、前記CARの発現の抑制または低減が確認される、態様73~83のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
態様86:前記対象が哺乳動物である、態様73~85のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
態様87:前記対象がヒトである、態様73~86のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
態様88:HIV、急性骨髄性白血病(AML)もしくは急性リンパ性白血病(ALL)の治療用医薬品において使用するための、またはHIV、急性骨髄性白血病(AML)もしくは急性リンパ性白血病(ALL)の治療において使用するための、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団。
【0095】
態様89:HIV、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)の治療用の医薬品の調製における、態様40~63のいずれか1つに記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団の使用。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】CD4遺伝子のエキソンおよびイントロンと、CD4遺伝子のエキソン1およびエキソン3における6つのCRISPRガイドポリヌクレオチド(G1、G2、G3、G4、G5、G6、G7およびG8)の位置を示した模式図を示す。
【0097】
【
図2】
図2Aは、CD4を染色したX軸のCD4+細胞株に対して側方散乱領域(SSC-A)をY軸にプロットしたフローサイトメトリーデータを示す。未処理細胞(mock)、Cas9のみで処理した細胞、またはCas9とCRISPRガイドポリヌクレオチド(G1、G2、G3、G4、G5もしくはG6)で処理した細胞を示す。
図2Bは、CD8を染色したX軸のCD4+細胞株に対してCD4をY軸にプロットしたフローサイトメトリーデータを示す(下段)。未処理細胞(mock)、またはCas9とCRISPRガイドポリヌクレオチド(G6、G7もしくはG8)で処理した細胞を示す。
【0098】
【
図3】CD4およびCD8を染色したヒト初代T細胞のフローサイトメトリーデータを示す。未処理細胞(mock)、Cas9のみで処理した細胞、CRISPRガイドポリヌクレオチド6のみで処理した細胞、またはCas9とCRISPRガイドポリヌクレオチド(G3もしくはG6)で処理した細胞を示す。
【0099】
【
図4】
図4Aは、17個の未処理コントロールクローンから得たCD4のゲノム配列と、上図および下図の最下段に示したコンセンサス配列との比較を示す。G6の配列は、下図の配列の下方に示す。
図4Bは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理した20個のクローンから得たCD4のゲノム配列と、図に示したG6挿入配列との比較を示す。
【0100】
【
図5】
図5Aは、コントロールとして、未処理の初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
図5Bは、コントロールとして、抗CD4 CARのみをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで形質導入を行った初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
図5Cは、コントロールとして、G6 CRISPRガイドポリヌクレオチドのみで処理した初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
図5Dは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理した初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
図5Eは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理し、抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスで形質導入を行った初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータを示す。
【0101】
【
図6】
図6Aは、コントロールとしての、未処理の初代CD3+細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
図6Bは、コントロールとしての、青色蛍光タンパク質を発現する抗CD4 CARのみをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入を行った初代CD3+細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
図6Cは、コントロールとしての、G6 CRISPRガイドポリヌクレオチドのみで処理した初代CD3+細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
図6Dは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理した初代CD3+細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
図6Eは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理し、青色蛍光タンパク質を発現する抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入を行った初代CD3+細胞のフローサイトメトリーデータを示す。
図6に示したプロットでは、X軸の青色蛍光タンパク質(BFP)に対してY軸に側方散乱領域(SSC-A)を示している。
【0102】
【
図7】
図7Aは、抗CD4 CARのみをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入を行った初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータをバックゲーティングして(CARから発現された)BFPが陽性の細胞を分析した結果を示す。
図7Bは、Cas9およびG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドで処理し、抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入を行った初代CD3+細胞のCD4およびCD8を染色したフローサイトメトリーデータをバックゲーティングして(CARから発現された)BFPが陽性の細胞を分析した結果を示す。
【0103】
【
図8】T細胞またはCAR T細胞を標的細胞と混合した際のフローサイトメトリーデータで示した機能データを示す。標的細胞として、形質導入していないK562細胞、またはCD19をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したK562細胞を使用した。エフェクター細胞として、形質導入していないT細胞、抗CD19 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したT細胞、または抗CD19 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入し、かつG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドとCas9をトランスフェクトしたT細胞を使用した。
図8の上段は、(前方散乱光に対してプロットした側方散乱光により識別した)リンパ球形態に基づいてゲーティングした結果を示す。
図8の下段は、リンパ球形態をゲートした細胞から生細胞をゲーティングした結果を示す。
【0104】
【
図9】T細胞またはCAR T細胞を標的細胞と混合した際のフローサイトメトリーデータで示した機能データを示す。標的細胞として、形質導入していないK562細胞、またはCD19をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したK562細胞を使用した。エフェクター細胞として、形質導入していないT細胞、抗CD19 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したT細胞、または抗CD19 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入し、かつG6 CRISPRガイドポリヌクレオチドとCas9をトランスフェクトしたT細胞を使用した。
図9の最上段は、
図8で同定した生リンパ球におけるCARの発現を、このCARの下流にコードされたBFPの発現により測定した結果を示す。
図9の2段目、3段目および4段目は、1段目のプロットで同定されたCAR発現細胞における細胞内サイトカインの発現をフローサイトメトリーで測定した結果を示す。
図9の2段目は、PEで標識した抗TNF-α抗体で評価した細胞内TNF-αの発現を示す。
図9の3段目は、PE-Cy7で標識した抗IL-2抗体で評価した細胞内IL-2の発現を示す。
図9の4段目は、APCで標識した抗IFN-γ抗体で評価したIFN-γの発現を示す。
【0105】
【
図10】エフェクター細胞と混合した際の、CD19を発現するK562標的細胞のTNF-αの発現に関するフローサイトメトリーデータを示す。エフェクター細胞として、抗CD19 CARを含むT細胞(左図)、または抗CD19 CARを含み、CD4が破壊されたT細胞(右図)を使用した。PE-Aで染色してSSC-Aを測定するか(上図)、またはCD4-PerCPCy5.5-AおよびCD8-Alexa Fluor 700Aで染色した(下図)。CD4を破壊したところ、TNF-αを発現するCAR+(BFP+)生リンパ球において、CD4陰性かつCD8陰性の二重陰性集団が増加したことが同定された。この集団は、右下の図の丸で囲んだ領域に示されている。
【0106】
【
図11】エフェクター細胞と混合した際の、CD19を発現するK562標的細胞のIL-2の発現に関するフローサイトメトリーデータを示す。エフェクター細胞として、抗CD19 CARを含むT細胞(左図)、または抗CD19 CARを含み、CD4が破壊されたT細胞(右図)を使用した。PE-Cy7-Aで染色してSSC-Aを測定するか(上図)、またはCD4-PerCPCy5.5-AおよびCD8-Alexa Fluor 700Aで染色した(下図)。CD4を破壊したところ、IL-2を発現するCAR+(BFP+)生リンパ球において、CD4陰性かつCD8陰性の二重陰性集団が増加したことが同定された。この集団は、右下の図の丸で囲んだ領域に示されている。
【0107】
【
図12】エフェクター細胞と混合した際の、CD19を発現するK562標的細胞のIFN-γの発現に関するフローサイトメトリーデータを示す。エフェクター細胞として、抗CD19 CARを含むT細胞(左図)、または抗CD19 CARを含み、CD4が破壊されたT細胞(右図)を使用した。APC-Aで染色してSSC-Aを測定するか(上図)、またはCD4-PerCPCy5.5-AおよびCD8-Alexa Fluor 700Aで染色した(下図)。CD4を破壊したところ、IFN-γを発現するCAR+(BFP+)生リンパ球において、CD4陰性かつCD8陰性の二重陰性集団が増加したことが同定された。この集団は、右下の図の丸で囲んだ領域に示されている。
【0108】
【
図13】CD19を発現するK562標的細胞を、エフェクター細胞としての、抗CD19 CARを含みCD4が破壊されたT細胞と混合した後、リンパ球と生細胞とCAR+細胞をゲーティングし、染色してTNF-α、IL-2およびIFN-γの発現を検出したフローサイトメトリーデータを示す。左側の図は、CD4+CAR T細胞におけるサイトカインの発現を示す。右側の図は、CD4を発現しないように遺伝子組換えしたCAR T細胞におけるサイトカインの発現を示す。
【0109】
【
図14】標的細胞とエフェクター細胞を様々に組み合わせた場合の細胞形態(X軸の前方散乱光に対してプロットしたY軸の側方散乱光)を示したフローサイトメトリーデータを示す。標的細胞として、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したCD4+細胞株(A3.01細胞)を使用した。エフェクター細胞として、形質導入していないT細胞、抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したT細胞、または抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入し、かつCD4を標的とするG6 CRISPRガイドをコードするポリヌクレオチドとCas9をトランスフェクトしたT細胞を使用した。標的細胞とエフェクター細胞を2:1の比率で混合し、22時間インキュベートした。
【0110】
【
図15】様々な条件下でのGFP発現CD4+標的細胞の運命を示したフローサイトメトリーデータを示す。標的細胞として、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したCD4+細胞株(A3.01細胞)を使用した。エフェクター細胞として、形質導入していないT細胞、抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入したT細胞、または抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターで形質導入し、かつCD4を標的とするG6 CRISPRガイドをコードするポリヌクレオチドとCas9をトランスフェクトしたT細胞を使用した。標的細胞とエフェクター細胞を2:1の比率で混合し、22時間インキュベートした。右下の図は、抗CD4 CAR発現細胞を混合すると、大部分のGFP発現CD4+細胞が除去されたことを示す。
【0111】
【
図16】コントロール細胞(mock)、CD4が破壊された細胞、抗CD4 CARを含む細胞、および抗CD4 CARを含みCD4が破壊された細胞を含む様々なエフェクター細胞の存在下において、ウイルス培養物中のHIV p24カプシドの濃度を5日間にわたりモニターした際の経時変化を示したグラフを示す。抗CD4 CRISPRで処理したエフェクター細胞および抗CD4 CAR発現細胞はいずれもHIVタンパク質を減少させるが、これらの処理を組み合わせた場合、どの方法を単独使用した場合よりも効果的にHIVを減少させることができる。
【0112】
【
図17】標的細胞としてのHIV感染末梢血単核細胞(PBMC)を、コントロール細胞(mock)またはCD4が破壊された細胞と混合した際のフローサイトメトリーデータを示す。CD4を破壊すると、HIV+(p24+)細胞の割合が65%減少することが観察された(右下の2つの図を比較したところ、感染細胞が5.12%から1.78%に減少した)。
【0113】
【
図18】HIV感染PBMCを、GFP+コントロール細胞(mock)またはCD4が破壊されたGFP+細胞と混合した際のフローサイトメトリーデータを示す。CD4を破壊すると、より多くのGFP陽性細胞が生存することを示す。
【0114】
【
図19】コントロールT細胞(mock)、mCherryマーカーを含むAML標的細胞(MOLM13細胞)、および抗CD4 CARを含むT細胞のフローサイトメトリーデータを示す。フローサイトメトリーにより測定を行い、Texas cherry red(X軸)に対して側方散乱光(Y軸)をプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0115】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、CD4+T細胞などの細胞において少なくとも1つのCD4遺伝子を破壊するための方法および組成物に関する。そのような実施形態のいくつかにおいて、この破壊は、CRISPRガイドポリヌクレオチドの使用を含む。いくつかの実施形態は、少なくとも1つの破壊されたCD4遺伝子とキメラ抗原受容体(CAR)を有する細胞の作製、および医薬品におけるその使用を含む。本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、例えば、CAR(抗CD4 CARや抗CD19 CARなど)を有するT細胞などの細胞に関し、さらに、例えば、HIV、急性骨髄性白血病(AML)、CD4+急性リンパ性白血病(ALL)などの障害を治療するための、医薬品におけるCARを有する細胞の使用に関する。いくつかの実施形態において、CD4+T細胞などの細胞において少なくとも1つのCD4遺伝子を破壊することにより、少なくとも1つのCD4遺伝子が破壊されていない細胞と比較してHIV感染症に対する抵抗性が増強された細胞が得られる。いくつかの実施形態は、急性リンパ性白血病(ALL)および/またはHIVなどの障害を治療、抑制または緩和するための、抗CD19 CARの使用を含む。そのような実施形態のいくつかでは、同種T細胞を使用した場合にCD4の発現が問題となることがある。本明細書において、「破壊された」とは、それ以降に遺伝子産物が発現されないように、かつ/または破壊された遺伝子から産生される遺伝子産物が活性を持たないように、遺伝子の機能をノックアウトすることを含む。
【0116】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、特定のCRISPRガイドポリヌクレオチドを使用することにより、T細胞などの細胞においてCD4遺伝子を高効率に破壊することを含む。いくつかの実施形態において、CD4遺伝子が破壊された遺伝子組換えT細胞は、抗CD4 CARをさらに含んでいてもよい。この遺伝子組換え細胞は、CD4を発現する別の細胞に対して指向性を持たせることができる。いくつかの実施形態は、このような遺伝子組換え細胞によるCD4+細胞集団の効率的な除去を含む。いくつかの実施形態は、HIV感染細胞集団においてHIV感染症を減少させること、および/またはHIV感染細胞集団において細胞の生存率を上昇させることを含む。いくつかの実施形態は、AML細胞を標的として、これを殺傷することを含む。いくつかの実施形態は、ALL細胞を標的として、これを殺傷することを含む。
【0117】
CD4+T細胞の機能は、CD4+CAR T細胞などの細胞を使用した治療法の一態様として重要である。一方で、CAR T細胞におけるCD4の発現が問題となる場合があり、例えば、1)HIVがCD4を利用してCAR T細胞に感染しうるHIV感染患者の場合、2)抗CD4 CAR T細胞製剤の製造を試みる際に、この細胞製剤がCD4+抗CD4 CAR T細胞を殺傷することが予想される場合、または3)非自己細胞を使用した治療用細胞製剤の製造を試みる場合などがある。
【0118】
過去の報告では、CD4を発現しないように遺伝子組換えされたCD4+T細胞が、CD4+T細胞と同様の機能を発揮し続けるかどうかは知られていなかった。CD4は、T細胞受容体(TCR)の補助受容体であり、TCRと協働して抗原提示細胞と相互作用する。したがって、CD4を発現しないように遺伝子組換えされたCD4+T細胞は、TCR関連機能が失われていることが予想される。しかし、本明細書で述べるように、CD4遺伝子が破壊されるように遺伝子組換えされたCD4+CAR T細胞は、予想外にも、標的抗原を発現する細胞の存在下においてサイトカインを産生し、かつ標的抗原を発現する細胞を殺傷するといったCD4+の機能を保持していることが判明した。
【0119】
CD4+CAR T細胞は、現在のCAR T細胞療法の有効性にとって重要である。CD4の破壊と抗CD4 CARの使用を組み合わせることによって、CD4+細胞と同様の挙動を示すCD4-/CD8-細胞を含む抗CD4 CAR T細胞製剤の製造が可能となる。抗CD4 CAR T細胞は、様々な状況下で利点があると考えられ、例えば、HIV感染症において、CD4+HIV感染細胞のリザーバーを標的として、これを根絶する方法として有益である。
【0120】
通常、CAR T細胞を用いた有効な治療には、CD4+CAR T細胞の使用が含まれている。一方で、抗CD4 CAR T細胞は、CD4+T細胞を標的として、これを殺傷することが予想される。本明細書で示すように、CD4を発現しないように遺伝子組換えした後でもCD4+T細胞の機能を保持している抗CD4 CAR含有CD4+T細胞は、特定の治療方法において有用であると考えられる。そのような実施形態のいくつかでは、治療を受ける対象が治療後にCD4+T細胞集団を保持することができるように、抗CD4 CARを含むCAR T細胞の効果を制限すると有用であると考えられる。したがって、対象におけるCD4+T細胞の一時的な除去に大きな臨床的関心が寄せられている。例えば、対象においてCD4+T細胞を一時的に除去することによって、この対象におけるHIV感染CD4 T細胞を排除することができることから、HIVの治療、緩和または抑制を促すことができる。また、対象におけるCD4+T細胞の一時的な除去は、広範囲な治療法に適用することが可能であり、自己反応性CD4 T細胞が関与したり支配的になりうる自己免疫疾患の治療、移植患者における交差反応性の抑制、およびCD4+悪性腫瘍の治療、抑制または緩和に適用することができる。本明細書で提供される実施形態は、抗CD4 CAR T細胞を製造する方法を含む。CD4を破壊することによって、CD4が発現されない抗CD4 CAR T細胞を製造することができ、これによって、抗CD4 CAR T細胞による標的化された殺傷から保護することができる。驚くべきことに、T細胞中においてCD4遺伝子を破壊する本発明の方法の実施形態は、効率的であることが分かった。抗CD4 CARを形質導入する直前に、CD4遺伝子を標的とするCRISPRガイドRNAを含むリボ核タンパク質を細胞にトランスフェクトすることによって、CD8+CAR T細胞およびCD8-CAR T細胞を含む実質的に均一なCD4陰性CAR T細胞集団を作製した。さらに、標的細胞とエフェクター細胞を混合したアッセイにおいてサイトカインの発現を測定したところ、CD4が破壊されたCAR T細胞は、CD4+CAR T細胞と同様の機能を有することが見出された。いくつかの実施形態において、対象において治療を行った後、対象の体内のすべてのCD4+細胞が除去されないように、遺伝子組換え細胞における抗CD4 CARの発現を抑制または低減することが望ましい場合がある。そのような実施形態のいくつかは、遺伝子組換え細胞における抗CD4 CARの発現を調節することによって、CD4+細胞を短期間だけ除去することを含んでいてもよく、これには、例えば、誘導型プロモーターからCARを発現させること、もしくは薬理学的に調節可能な方法でCARを発現させること、または長期間にわたりCD4+細胞が除去されることを回避するために遺伝子組換え細胞に自殺システムを組み込むことが含まれていてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、CD4遺伝子が破壊された遺伝子組換えT細胞は、CD4以外のヒトエピトープ(CD19など)または病原体由来エピトープ(HIV Envなど)を標的とするCARを含むこともできる。CD4を発現しないように遺伝子組換えされたCAR T細胞は、様々な臨床用途において魅力的な選択肢である可能性があるが、それにはいくつかの理由がある。より具体的には、CD4を発現しないように遺伝子組換えされたCD4+CAR T細胞は、天然のT細胞受容体が認識する抗原に反応性を示さなくなるが、これはCAR特異的応答の効力を増強させるといった利点があると考えられる。また、同種のCAR T細胞を使用する場合、CD4を破壊することによって、CD4を介したGVHDを最小限に抑えることができると考えられる。さらに、HIVに感染した個体においてCAR T細胞の使用を考慮する場合、CD4を破壊することによって、CAR T細胞をHIV感染から効率的に保護することができる。
【0122】
急性骨髄性白血病(AML)は、治療が困難な悪性腫瘍であり、死亡率が非常に高い。AMLの治療上の制約として、造血系を大幅に取り除いたり、その他の組織に対するオフターゲット毒性を引き起こしたりすることなく、安全に標的化することが可能なAMLの特異的なエピトープを特定することが難しいことが挙げられる。現在まで、主にCD33やCD123などのエピトープに着目して治療法の開発に努力が重ねられてきたが、これらの治療法が安全または有効であるのかは明らかになっていない。AML細胞のサブセットはCD4を発現する。11q23においてKMT2A(MLL)遺伝子が再編成されるAMLでは、CD4の発現が特に増加している。さらに、CD4の高発現を伴うAMLの生存率は、CD4の発現が正常~低発現であるAMLの生存率よりも極めて低い。
【0123】
本明細書で述べるように、AML細胞に対する抗CD4 CAR T細胞の殺傷能を殺傷アッセイで試験した。PBMCを刺激した後、抗CD4 CARコンストラクトによる形質導入を行い、約3週間にわたり増殖させた。本明細書に開示する実施例では、抗CD4 CAR T細胞は、AML細胞を標的として、これを効果的に殺傷した。
【0124】
本明細書で提供される方法および組成物に関する特定の態様は、米国特許第10273280号および米国特許出願公開第2020/0000937号に記載されており、これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【0125】
用語の定義
本明細書において、「核酸」、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られる断片、化学合成、インビトロ転写、ライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用またはエキソヌクレアーゼ作用により得られる断片などの分子を指す。核酸分子は、天然のヌクレオチドモノマー(DNAやRNAなど)、または天然のヌクレオチドの類似体(例えば、天然のヌクレオチドのエナンチオマー)、またはこれらの組み合わせから構成されていてもよい。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分に修飾を有していてもよい。糖部分の修飾としては、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミンまたはアジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換が挙げられ、糖部分はエーテル化またはエステル化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体構造的に類似の構造や電子的に類似の構造と置換されていてもよく、このような構造として、例えば、アザ糖および/または炭素環式糖類似体が挙げられる。修飾塩基部分としては、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、およびその他の公知の複素環置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこれと似た結合により連結することができる。ホスホジエステル結合と似た結合としては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロセレノエート結合、ホスホロジセレノエート結合、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)結合、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)結合およびホスホロアミデート結合が挙げられる。「核酸分子」は、いわゆる「ペプチド核酸」も包含し、これは、ポリアミド主鎖に付加された天然の核酸塩基または修飾核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。
【0126】
本明細書において、「コード鎖」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、例えば、産生されるRNA転写物と同じ塩基配列を有するDNA鎖(ただし、チミンはウラシルで置換される)が挙げられるが、これに限定されない。コード鎖はコドンを含み、非コード鎖はアンチコドンを含む。
【0127】
本明細書において、「コードする」は、遺伝子、cDNA、mRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列が、所定のアミノ酸配列などの別の巨大分子を合成するための鋳型として機能するという特性を指す。したがって、特定の遺伝子に対応するmRNAが転写および翻訳されて、細胞またはその他の生物系においてタンパク質が産生される場合、その遺伝子はこのタンパク質をコードする。
【0128】
本明細書において、「調節エレメント」という用語は、本明細書に照らせば、一般的な通常の意味を有し、例えば、生物体内において特定の遺伝子の発現を増加または減少させることが可能な核酸分子のセグメントが挙げられ、例えば、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写および/または翻訳に影響を与えることができる核酸分子のセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。プロモーター(例えばMNDプロモーター)、リーダー、イントロン、転写終結領域などの調節エレメントは、遺伝子調節活性を有し、生細胞における遺伝子の全体的な発現において不可欠な役割を果たすDNA分子である。調節エレメントとしては、CAATボックス、CCAATボックス、プリブノーボックス、TATAボックス、SECISエレメント、mRNAポリアデニル化シグナル、Aボックス、Zボックス、Cボックス、Eボックス、Gボックス、インスリン遺伝子調節配列などのホルモン応答エレメント、DNA結合領域、活性化領域および/またはエンハンサー領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/CASシステムを含む。本明細書で述べる「CRISPR/CASシステム」は、ノックアウトまたは発現させようとする遺伝子に相補的な1つまたは2つのガイドRNAの発現がCRISPR/CASシステムの機能の発揮に必要とされる遺伝子編集システムを指す。Cas9は、1つまたは2つのガイドRNAと会合することにより複合体を形成し、この複合体を介して、ガイドRNAの標的部分に相補的な配列を切断することができるRNA誘導型DNAエンドヌクレアーゼ酵素である。いくつかの実施形態において、CRISPR/CASシステムは、基本的な構成要素として、標的遺伝子(例えばCD4など)、ガイドRNA、およびCas9エンドヌクレアーゼまたはその誘導体もしくは断片を含む。いくつかの実施形態において、CRISPR/Cas9を使用して遺伝子編集を行う一態様は、広範な種類の細胞にガイドRNAを効率よく送達できるシステムである。いくつかの実施形態において、この送達には、インビトロで作製された核酸としてのガイドRNA、例えば、インビトロ転写または化学合成により作製されたガイドRNAが含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、ガイドRNAをコードする核酸は、2’O-メチル塩基などの修飾塩基の組み込みによりヌクレアーゼ耐性が付与されている。いくつかの実施形態において、ガイドRNAは、リボ核タンパク質(RNP)複合体に組み込むことができる。
【0130】
本明細書で提供されるいくつかの実施形態は、CRISPR/Cpf1システムを含む。CRISPR/Cpf1システムでは、クラス2 CRISPR Cas9システムの単鎖RNA誘導型エンドヌクレアーゼであるCpf1が使用される。クラス2エフェクターは、単一のエフェクタータンパク質(Cas9など)に依存するが、Cpf1は、Cas9とは異なる機構で強固なDNA干渉に関与する。Cpf1は、2つの構成要素を利用してRNAをプログラム可能なCRISPR関連DNAヌクレアーゼである。本明細書で提供される組成物の実施形態のいくつかにおいて、この組成物は、ウイルスゲノムから得られた2つ以上の配列をさらに含む。いくつかの実施形態において、ウイルスゲノムから得られたこの2つ以上の配列は、プロモーター、タンパク質、外来遺伝子を発現させるための遺伝子カセット、凝固因子、抗体またはその一部(例えば、結合部分またはscFv)、CAS9酵素、Cas9-VP64酵素、ヌクレアーゼ、特定の疾患において機能が欠損するタンパク質、相同組換え修復によりゲノム部位を改変するための組換え鋳型、または細胞表面タンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼはCpf1を含む。本明細書で提供される実施形態において使用されるCRISPRシステムのさらなる例は、米国特許公開第2019/0071717号、米国特許公開第2019/0071657号、および米国特許公開第2019/0062735号に開示されており、これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に援用される。
【0131】
いくつかの実施形態において、化学的に修飾されたCRISPRガイドポリヌクレオチド(例えばRNAなど)の使用が想定されている。化学的に修飾されたガイドRNAは、ヒト初代細胞においてCRISPR-Casゲノム編集を実施する際に使用されている(Hendel, A. et al., Nat Biotechnol. 2015 Sep; 33(9):985-9)。ガイドRNAの化学的修飾には、ヌクレアーゼ耐性を付与する修飾が含まれていてもよい。ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼであってもよく、エキソヌクレアーゼであってもよく、これらの両方であってもよい。化学的修飾のいくつかの例として、2’-フルオロ、2’O-メチル、ホスホロチオエートジチオール3’-3’末端結合、2-アミノ-dA、5-メチル-dC、C-5プロピニル-C、C-5プロピニル-U、モルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はこれらの例示に限定されず、その他の化学修飾、これらの典型的な化学修飾の別法および変法も本発明に含まれる。
【0132】
本明細書において、「キメラ抗原受容体(CAR)」は、例えば、T細胞などのエフェクター免疫細胞に特異性を付与することができる遺伝子組換えされたタンパク質受容体を指す。CAR発現T細胞を使用することによって、インビボにおける増殖および活性化を促進することができるが、CAR発現T細胞の効果はこれに限定されない。また、特定の細胞表面抗原を発現する細胞を標的とする指向性をT細胞に持たせることができるようにCARを設計することも可能であり、このような標的指向性を持つT細胞が標的を認識することによって、リンパ球(T細胞など)の活性化が可能となる。ベクターを使用してCARのコード配列をT細胞に移入することによって、モノクローナル抗体またはその結合断片もしくはscFvの特異性をT細胞に移植することができる。治療が必要な対象を治療するためにCARを使用する場合、養子細胞移入と呼ばれる技術が使用される。この技術では、治療対象からT細胞を採取し、得られたT細胞を遺伝子操作して、抗原に特異的なCARを発現させる。CARの発現により抗原の認識とその標的化が可能になったT細胞を患者に再導入する。いくつかの実施形態において、CARを発現するリンパ球が述べられており、このCAR発現リンパ球は、特定の細胞を標的とすることを目的として対象に送達することができる。いくつかの実施形態において、CAR発現リンパ球は、2種のCARを発現することによって二重特異性を発揮することができる。いくつかの実施形態において、CAR発現リンパ球は、CARと特定のT細胞受容体(TcR)を発現することによって二重特異性を発揮することができる。TcRは、Tリンパ球すなわちT細胞の表面に存在する分子であり、抗原を認識することができる。いくつかの実施形態において、CAR発現リンパ球は、二重特異性CARを発現することによって二重特異性を発揮することができる。CARの構造は、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインに連結されたモノクローナル抗体由来一本鎖可変断片(scFv)の融合タンパク質を含んでいてもよい。CARは、細胞内CD3ζドメインに連結された細胞外scFvを含んでいることが多い(第1世代CAR)。また、scFvに共刺激ドメイン(例えば、CD28および/または4-1BB)をさらに連結することができ、これによって、治療を必要とする対象においてCARの治療有効性を高めることができる(第2世代CAR)。CAR分子を発現したT細胞は、CARが標的とする特定の抗原を発現する標的細胞を認識し、これを殺傷することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明で使用されるプロモーターは、誘導型プロモーターであってもよく、構成的プロモーターであってもよい。誘導型プロモーターとしては、例えば、タモキシフェン誘導型プロモーター、テトラサイクリン誘導型プロモーター、およびドキシサイクリン誘導型プロモーター(例えば、treプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。構成的プロモーターとしては、例えば、SV40、CMV、UBC、EF1α、PGK、およびCAGGを挙げることができる。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、タモキシフェン誘導型プロモーター、テトラサイクリン誘導型プロモーター、またはドキシサイクリン誘導型プロモーター(例えば、treプロモーター)である。本明細書で提供される実施形態のいくつかにおいて、タンパク質の発現は、タモキシフェンおよび/またはその代謝産物によって誘導される。タモキシフェンの代謝産物として、4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)やN-デスメチル-4-ヒドロキシタモキシフェン(エンドキシフェン)などの活性代謝産物が挙げられ、これらは、エストロゲン受容体に対してタモキシフェンの30~100倍の親和性を発揮することができる。いくつかの実施形態において、タモキシフェンの代謝産物は、4-ヒドロキシタモキシフェン(アフィモキシフェン)および/またはN-デスメチル-4-ヒドロキシタモキシフェン(エンドキシフェン)である。いくつかの実施形態において、基底状態での活性が低く、高レベルの発現が誘導され、かつ/または短期間でオンとオフとを切り替えることができるように、誘導型プロモーターを設計および/または改変する。別の実施形態において、前記CARは、プロモーターの機能から独立して、薬理学的薬剤を使用することにより発現を調節することができるように組換えることができ、このようなシステムとして、ラパマイシン、ラパマイシン類似体またはHCV NS3プロテアーゼ阻害薬を使用した本明細書に記載のシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
本明細書において、「自殺遺伝子療法」、「自殺遺伝子」および「自殺遺伝子システム」は、アポトーシスにより細胞を破壊する方法を指してもよく、この方法では、細胞にアポトーシスを起こして自殺させる自殺遺伝子が必要とされる。自殺遺伝子療法を利用することによって、遺伝子組換え免疫細胞の安全性を高め、遺伝子組換え免疫細胞の注入によって起こりうる有害事象を管理することができる。自殺遺伝子療法を実施する方法として、いくつかの方法が知られている。いくつかの実施形態において、遺伝子組換え細胞は、エクスビボにおいて自殺遺伝子を用いてさらに改変することができる。自殺遺伝子は、細胞レベルで非毒性プロドラッグを毒性化合物に変換することができる因子をコードする遺伝子であってもよいが、このような遺伝子に限定されない。このようなプロドラッグを対象に投与することができ、このプロドラッグを使用して、自殺遺伝子で改変した遺伝子組換え細胞を選択的に排除することができる。また、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(Hsv-tk)/ガンシクロビル(GCV)自殺システムを使用した自殺システムが報告されている(Casucci et al. 2011, Journal of Cancer 2011, 2;この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。いくつかの実施形態において、前記自殺遺伝子システムは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである。
【0135】
本明細書において、「対象」または「患者」は、例えば、実験、診断、予防および/または治療を目的として、本明細書に記載の実施形態を使用または投与してもよいあらゆる生物を指す。対象または患者として、例えば、動物が挙げられる。いくつかの実施形態において、対象は、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類およびヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、霊長類またはヒトである。
【0136】
本明細書において、「治療」および「治療する」という用語は、文脈に応じて、治療的処置と予防的処置の両方を指してもよく、これらの処置は、標的とする病的状態を予防もしくは緩和(軽減)すること、病的状態を予防すること、有益な結果を追求したり取得したりすること、または治療が最終的に失敗したとしても個体が病的状態を発症する可能性を低減することを目的とする。処置または治療を必要とする対象は、既に病的状態に罹患している対象、病的状態を発症する傾向がある対象、または病的状態を予防する必要がある対象が含まれる。
【0137】
特定のポリヌクレオチド
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、細胞においてCD4遺伝子を破壊することを含む。例えば、CD4遺伝子は、CD4遺伝子に挿入、欠失または変異を導入することによって破壊することができる。本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかでは、細胞においてCD4遺伝子の一方のアレルまたは両方のアレルを破壊することができる。例えば、本明細書で提供される方法および組成物を使用することによって、細胞の二倍体ゲノムにおいてCD4遺伝子の一方のアレルまたは両方のアレルを破壊することができる。いくつかの実施形態では、CD4遺伝子を破壊することによって、細胞内の機能性CD4タンパク質の発現を抑制することができる。例えば、CD4遺伝子を破壊することによって、CD4タンパク質の発現を阻止することができるか、CD4タンパク質の発現を低下させることができるか、または機能性を持たないCD4タンパク質のバリアントもしくはその断片を発現させることができる。いくつかの実施形態において、機能性を持たないCD4タンパク質のバリアントは、機能性を持つCD4タンパク質に特異的に結合するリガンドまたは受容体に結合しなくてもよく、機能性を持つCD4タンパク質に特異的に結合するリガンドまたは受容体に効率的に結合しなくてもよい。いくつかの実施形態において、機能性を持たないCD4タンパク質のバリアントまたはその断片は、キメラ抗原受容体のリガンド結合ドメインに結合しなくてもよく、キメラ抗原受容体のリガンド結合ドメインに効率的に結合しなくてもよい。いくつかの実施形態において、CD4遺伝子の破壊には、細胞における少なくとも1つのCD4遺伝子を破壊するための、単離された核酸の使用が含まれていてもよい。単離された核酸のいくつかには、CD4遺伝子にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子にハイブリダイズするように構成されているCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、このガイドポリヌクレオチドはRNAを含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子のセンス鎖にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子のセンス鎖にハイブリダイズするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子のアンチセンス鎖にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子のアンチセンス鎖にハイブリダイズするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子の一部にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の一部にハイブリダイズするように構成されており、これによって、CD4遺伝子の発現が破壊され、例えば、プロモーター、エキソン、スプライス部位、イントロンなどの、CD4遺伝子の調節エレメントが破壊される。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子のエキソンにハイブリダイズするように構成されており、このCD4遺伝子のエキソンとして、CD4遺伝子の第1のエキソン、第2のエキソン、第3のエキソン、第4のエキソン、第5のエキソン、第6のエキソン、第7のエキソン、第8のエキソンまたは第9のエキソンなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子の第1のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の第1のエキソンにハイブリダイズするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、CD4遺伝子の第3のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の第3のエキソンにハイブリダイズするように構成されている。
【0139】
いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも特定の同一性(%)を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号1~8いずれかまたはその相補鎖と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性、または前記パーセンテージのいずれか2つを上下限とする範囲内の配位列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも特定の同一性(%)を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号6またはその相補鎖と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性、または前記パーセンテージのいずれか2つを上下限とする範囲内の配位列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでいてもよい。
【0140】
細胞を作製する特定の方法
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、遺伝子組換え細胞を作製する方法を含む。そのような実施形態のいくつかは、細胞においてCD4遺伝子座を特異的に改変する遺伝子標的化システムの使用を含む。いくつかの実施形態は、ガイドポリヌクレオチドを用いるCRISPR/Cas9システムなどの、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)システムの使用を含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、遺伝子組換え細胞は、CRISPRガイドポリヌクレオチドとCas9タンパク質を標的細胞に導入することにより作製することができる。いくつかの実施形態において、CRISPRガイドポリヌクレオチドをコードする1つ以上のベクター、および/またはCas9タンパク質をコードする1つ以上のベクターを標的細胞に導入してもよい。いくつかの実施形態において、CRISPRガイドポリヌクレオチドおよび/またはCas9タンパク質を標的細胞に直接導入してもよい。例えば、CRISPRガイドポリヌクレオチドおよび/またはCas9タンパク質を含むリボ核タンパク質(RNP)を調製して、標的細胞に導入することができる。ベクターまたはRNPを細胞に導入する方法には、リポフェクションまたはエレクトロポレーションが含まれていてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、本明細書で開示されるガイドポリヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも特定の同一性(%)を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖との同一性は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、またはこれらの割合のいずれか2つの間の割合であってもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも特定の同一性(%)を有するヌクレオチド配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖との同一性は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、またはこれらの割合のいずれか2つの間の割合であってもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記ガイドポリヌクレオチドは、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでいてもよい。
【0143】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、CARを含む遺伝子組換え細胞を作製する方法を含む。そのような実施形態のいくつかは、CARをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する工程を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記CARは、CD4タンパク質またはCD19タンパク質に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。抗CD4 CARまたは抗CD19 CARの例は、米国特許公開第9,951,118号、米国特許公開第2018/0371052号、米国特許公開第2017/0107286号、米国特許公開第2019/0062430号に開示されている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0144】
いくつかの実施形態において、CARをコードするポリヌクレオチドは、細胞においてCARの発現を誘導することができるように、または細胞においてCARの発現を薬理学的に調節することができるように、誘導型プロモーターを含む。
【0145】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、遺伝子組換え細胞を作製する方法を含み、自殺遺伝子システムをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、前記自殺遺伝子システムは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである。
【0146】
いくつかの実施形態において、前記細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、CD4遺伝子の破壊前にCD4タンパク質を発現していた細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記細胞はT細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は初代細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、末梢血単核細胞から単離された細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はCD3発現細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はCD8発現細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はインビボの細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はエクスビボの細胞である。
【0147】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で開示された方法により作製された細胞を含む。
【0148】
特定の細胞
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、医薬品において使用することができる遺伝子組換え細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記遺伝子組換え細胞は、少なくとも1つの破壊されたCD4遺伝子を含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、このCD4遺伝子は、本明細書で提供されるCRISPRガイドポリヌクレオチドにより破壊されている。
【0149】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、第1のエキソンにおいて破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、第3のエキソンにおいて破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドによって破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドによって破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている。
【0150】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、医薬品において使用することができる、CARを含む遺伝子組換え細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記CARは、CD4タンパク質に特異的に結合する抗原結合ドメインを含む。抗CD4 CARの例は、米国特許公開第2018/0371052号に開示されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。いくつかの実施形態において、CARをコードするポリヌクレオチドは、細胞においてCARの発現を誘導することができるように、または細胞においてCARの発現を薬理学的に調節することができるように、誘導型プロモーターを含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、前記CARは抗CD19 CARを含む。いくつかの実施形態において、前記CARは抗HIV CARを含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、抗HIV CARは、抗HIV中和抗体に由来するscFvを含んでいてもよい。そのような抗体の例として、PGT128、PG9およびPGT145が挙げられる。本明細書で提供される実施形態に含まれていてもよい方法および組成物の例は、米国特許公開第2017/0044240号に開示されている(この文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。本明細書で提供される実施形態に含まれていてもよいCARの別の例は、米国特許公開第2018/0009891号、米国特許公開第2017/0015746号、米国特許公開第9,951,118号、米国特許公開第2018/0371052号、米国特許公開第2017/0107286号、米国特許公開第2019/0062430号、およびWO2017/027291に開示されている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0152】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、自殺遺伝子システムを含む遺伝子組換え細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記自殺遺伝子システムは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである。
【0153】
いくつかの実施形態において、前記細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、CD4遺伝子の破壊前にCD4タンパク質を発現していた細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はリンパ球である。いくつかの実施形態において、前記細胞はT細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は初代細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、末梢血単核細胞から単離された細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はCD3発現細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はCD8発現細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞は、CD4+細胞、ナチュラルキラー細胞またはナチュラルキラーT細胞に由来する細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はインビボの細胞である。いくつかの実施形態において、前記細胞はエクスビボの細胞である。
【0154】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、本明細書で開示される遺伝子組換え細胞と薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を含む。
【0155】
細胞を殺傷または抑制する特定の方法
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法であって、本明細書で開示された遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法を含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、前記CD4+細胞集団はウイルスを含む。いくつかの実施形態において、前記ウイルスはHIVである。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は同じ対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は異なる対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、エクスビボの細胞集団である。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、インビボの細胞集団である。
【0156】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、HIVに感染したCD4+細胞集団におけるHIVの複製を減少させるか、抑制するか、緩和する方法を含む。そのような実施形態のいくつかは、本明細書で開示された遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は同じ対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は異なる対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、エクスビボの細胞集団である。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、インビボの細胞集団である。いくつかの実施形態において、遺伝子組換え細胞を接触させたHIV感染CD4+細胞集団におけるHIVの複製量は、この遺伝子組換え細胞を接触させていないHIV感染CD4+細胞集団におけるHIVの複製量と比較して、少なくとも1%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%、90%、99%、100%、またはこれらの割合のいずれか2つを上下限とする範囲内の割合だけ減少する。
【0157】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、HIVに感染したCD4+細胞集団の生存率を向上させる方法を含む。そのような実施形態のいくつかは、本明細書で開示された遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は同じ対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞は異なる対象に由来する。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、エクスビボの細胞集団である。いくつかの実施形態において、前記CD4+細胞および/または前記遺伝子組換え細胞からなる集団は、インビボの細胞集団である。いくつかの実施形態において、遺伝子組換え細胞を接触させたHIV感染CD4+細胞集団の生存率は、この遺伝子組換え細胞を接触させていないHIV感染CD4+細胞集団の生存率と比較して、少なくとも1%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%、75%、90%、99%、100%、またはこれらの割合のいずれか2つの間の割合だけ向上する。
【0158】
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、HIV感染症を有する対象において、HIV感染症を治療、抑制または緩和する方法を含む。そのような実施形態のいくつかは、HIV感染症の治療、抑制または緩和を必要とする対象に、本明細書で開示された遺伝子組換え細胞を含む細胞集団を投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、前記遺伝子組換え細胞は、対象から得られた自己細胞である。いくつかの実施形態において、前記遺伝子組換え細胞は、対象から得られた自己細胞ではない。いくつかの実施形態において、前記対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、前記対象はヒトである。いくつかの実施形態において、前記対象は、HIV感染症の治療法を受けるべきであるとして選択された対象である。いくつかの実施形態において、前記対象の選択は、臨床的評価および/または診断的評価により行われる。そのような診断的評価または臨床評価は、前記対象におけるHIVウイルス、HIVタンパク質またはHIV核酸の有無の分析などの、前記対象におけるHIV感染症の有無および/またはその量を評価することによって行ってもよい。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記遺伝子組換え細胞はCARを含む。いくつかの実施形態において、前記CARは、抗CD4 CARおよび/または抗CD19 CARを含む。
【0160】
いくつかの実施形態は、前記細胞においてCARの発現を誘導することをさらに含む。例えば、CARをコードするポリヌクレオチドは、誘導型プロモーターを含んでいてもよく、薬理学的薬剤で誘導型プロモーターの調節が可能となるように組換えてもよい。そのような実施形態のいくつかにおいて、誘導物質を対象に投与することによって、前記CARをコードするポリヌクレオチドを含む細胞において該CARの発現を誘導または抑制することができる。
【0161】
いくつかの実施形態は、細胞において前記CARの発現を抑制または低減することをさらに含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、前記CARをコードするポリヌクレオチドを含む細胞において該CARの発現を誘導するための誘導物質の投与は、停止することができるか、その投与量を減らすことができる。いくつかの実施形態において、細胞におけるCARの発現を低減するための阻害剤を対象に投与する工程ができる。いくつかの実施形態において、前記対象に前記細胞集団を投与した後に、前記CARの発現が抑制または低減される。いくつかの実施形態において、前記CARの発現は、前記対象に前記細胞集団を投与した後、少なくとも1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間もしくは7日間、またはこれらの期間のいずれか2つの間の期間にわたって抑制または低減される。いくつかの実施形態において、前記CARの発現は、前記対象に前記細胞集団を投与した後、少なくとも1週間、2週間、3週間もしくは4週間、またはこれらの期間のいずれか2つの間の期間にわたって抑制または低減される。
【0162】
いくつかの実施形態は、付加療法を併用した治療方法をさらに含む。例えば、HIVの管理には、HIV感染症の制御を目的とした、抗レトロウイルス薬の使用が含まれていてもよい。HIVの処置、治療または管理に使用される薬物の種類としては、例えば、侵入阻害薬または融合阻害薬(例えば、マラビロクまたはエンフビルチド)、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(例えば、ジドブジン、アバカビル、ラミブジン、エムトリシタビンまたはテノホビル)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(例えば、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリンまたはリルピビリン)、インテグラーゼ阻害薬(例えば、エルビテグラビルまたはドルテグラビル)および/またはプロテアーゼ阻害薬(例えば、ロピナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、リトナビル、ダルナビルまたはアタザナビル)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの種類の薬物のいずれかと、本明細書に記載のCAR含有T細胞の1つ以上とを併用した併用療法も、HIVの治療および管理に使用することができる。
【0163】
特定のキット
本明細書で提供される方法および組成物の実施形態のいくつかは、遺伝子組換え細胞を作製するためのキットを含む。そのようなキットのいくつかは、細胞におけるCD4遺伝子の破壊用の単離されたポリヌクレオチドを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つのCD4遺伝子は、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている。いくつかの実施形態は、Cas9タンパク質をコードするポリヌクレオチドをさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態は、Cas9タンパク質をさらに含んでいてもよい。
【実施例0164】
実施例1-CRISPR-Cas9を使用したT細胞におけるCD4の破壊
本実施例は、Cas9とCRISPRガイドポリヌクレオチドを使用して細胞のCD4遺伝子を破壊することに関する。CD4遺伝子を標的とする6つのCRISPRガイドを設計した。
図1は、各CRISPRガイドが標的とする位置を示し、表1は、各CRISPRガイドの配列を示す。
【表1】
【0165】
各ガイドを使用して、CD4を高発現するA3.01細胞(ヒトT細胞株)のCD4遺伝子を破壊した。各ガイドは、リボ核タンパク質(RNP)として、エレクトロポレーションにより細胞に導入した。各ガイドの相対的な有効性は、細胞表面上のCD4の発現を減少させる能力をフローサイトメトリーで測定することにより評価した。Cas9とガイドをトランスフェクトしてから7日目にデータを取得した。コントロールとして、CD4を染色していない非組換え細胞(CRISPR/Cas9による処理なし)、CD4を染色した非組換え細胞(CRISPR/Cas9による処理なし)、またはガイドを使用せずにCas9のみで処理し、CD4を染色した細胞を使用した(
図2A、上段)。CRISPR/Cas9の非存在下では、細胞の約96%がCD4+であった。CD4を標的とする様々なCRISPR/Cas9ガイドの存在下では、様々なガイドで処理した細胞においてCD4の発現が約94~64%に減少した(
図2A、中段および下段)。理論に基づくと、どのガイドの性能が最も優れているのかは不明であった。驚くべきことに、CD4の発現を破壊すると予測されたガイドの一部は、CD4の発現を効率的に破壊できなかった。実際に、ガイド3とガイド6はいずれも、他のガイドよりもCD4遺伝子を破壊する活性が顕著に高かった。ガイド6の性能が最も優れており、CD4の発現を64%に低下させた。
【0166】
初代リンパ球のCD4を破壊する能力についてガイド3およびガイド6を試験した。この2種のガイドの相対的な有効性は、細胞表面上のCD4の発現を減少させる能力をフローサイトメトリーで測定することにより評価した。
【0167】
さらに、別の2種のガイドについても試験を行った。
図2Bは、CD8を染色したX軸のCD4+細胞株に対してCD4をY軸にプロットしたフローサイトメトリーデータを示す(下段)。この図では、未処理細胞(mock)、またはCas9とCRISPRガイドポリヌクレオチド(G6、G7もしくはG8)で処理した細胞を示す。G6は、G7やG8よりも優れた性能を示した。CD4+細胞の割合は、G7で処理した細胞やG8で処理した細胞と比較して、G6で処理した細胞において最も少なくなった。また、CD4-CD8-二重陰性細胞の割合は、G7で処理した細胞やG8で処理した細胞と比較して、G6で処理した細胞において高くなった。
【0168】
初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からCD3+細胞を単離した。エレクトロポレーションを使用して、ガイドをRNPとして導入した。Cas9とガイドをトランスフェクトしてから11日目にデータを取得し、細胞のCD4およびCD8を染色した。コントロールとして、トランスフェクションも染色もしていない細胞;CD4およびCD8を染色したmockトランスフェクト細胞;ガイドを使用せずにCas9をトランスフェクトし、CD4およびCD8を染色した細胞;またはCas9を使用せずにガイド6をトランスフェクトし、CD4およびCD8を染色した細胞を使用した(
図3)。試験細胞は、ガイド3またはガイド6とCRISPR/Cas9で処理した(
図3)。CD4+細胞の割合は、mockトランスフェクト細胞において約15.6%であったのに対して、ガイド6をトランスフェクトした細胞では約0.99%となった。したがって、ガイド6を使用することによって、細胞表面のCD4の発現が約94%減少した。また、mockトランスフェクト細胞におけるCD4+細胞の割合が約15.6%であったのに対して、ガイド3をトランスフェクトした細胞では15.0%となった。したがって、ガイド3を使用することによって、細胞表面のCD4の発現が約4%減少した。初代細胞では、ガイド6の方がガイド3よりも優れた性能を示した。
【0169】
さらに、遺伝子レベルでのCD4の破壊を確認するため、mockトランスフェクト初代細胞(
図4A)またはガイド6をトランスフェクトした初代細胞(
図4B)において、CD4のコロニーシーケンシングを行った。17個の未処理コントロールクローンと、G6およびCas9を含むRNPで処理した20個のクローンから、CD4遺伝子領域のシーケンシングを行った。
図4Aおよび
図4Bの上図および下図の最下段にコンセンサス配列を示し、20塩基対からなるガイド6のCRISPR部位の位置をコンセンサス配列の下に示す。G6およびCas9を含むRNPで処理した20個のクローンすべてにおいて、ガイド6のCRISPR部位に挿入、欠失または変異が認められた。
【0170】
実施例2-抗CD4 CAR T細胞の作製およびその活性
本実施例は、CD4+標的細胞集団を除去することを目的とした、破壊されたCD4遺伝子と抗CD4 CARを含む初代CD3+T細胞の活性に関する。初代CD3+T細胞を単離し、抗CD4 CRISPR RNP(ガイド6)をトランスフェクトし、青色蛍光タンパク質(BFP)レポーターを含む抗CD4キメラ抗原受容体(CAR)を形質導入した。この抗CD4 CARは、配列番号9(DIVMTQSPSSLAVSVGEKVTMICKSSQSLLYSTNQKNYLAWYQQKPGQSPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKAEDLAVYYCQQYYSYRTFGGGTKLEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVKLQESGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTSYVIHWVRQKPGQGLDWIGYINPYNDGTDYDEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCAREKDNYATGAWFAYWGQGTTVTVSS)で示されるアミノ酸配列を有するscFvを含んでいた。
【0171】
インビトロにおいて前記細胞を1週間増殖させ、CD4およびCD8の染色ならびにCAR(BFP)の発現をフローサイトメトリーで評価した。
【0172】
図5Bに示すように、抗CD4 CARを形質導入したことによって、CD4陽性細胞を効率的に除去することができた(CD4+細胞の割合が27.1%から0.24%に減少した)。また、
図5Dに示すように、抗CD4 CRISPR/Cas9 RNPをトランスフェクトしたことによって、CD4陽性細胞を除去することができた(CD4+細胞の割合が27.1%から8.17%に減少した)。さらに、
図5Eに示すように、抗CD4 CRISPR/Cas9 RNPのトランスフェクションと抗CD4 CARの形質導入を組み合わせることによって、CD4+細胞を大幅に除去することができ(27.1%から0.01%への減少)、CD4とCD8がいずれも陰性の二重陰性細胞集団が得られた(0.63%から20.7%への増加)。したがって、コントロールと比較して、CD4が破壊されていない抗CD4 CAR T細胞を使用した場合には、ほぼすべてのCD4+細胞を除去することができ、抗CD4 CARを含まずCD4遺伝子が破壊された細胞を使用した場合は、CD4+細胞の数が大幅に減少した。一方、抗CD4 CRISPRによる処理と抗CD4 CARの導入を組み合わせた細胞を使用した場合、CD4+T細胞の顕著な除去が観察され、二重陰性(CD4陰性かつCD8陰性)を示すCAR(BFP)+細胞集団の出現がはっきりと確認できた。
【0173】
抗CD4 CRISPR/Cas9 RNP(ガイド6)で細胞を処理し、青色蛍光タンパク質(BFP)を含む抗CD4 CARを形質導入した。この細胞におけるBFPの発現をフローサイトメトリーで評価した。
図6Bおよび
図6Eに示すように、BFPの発現は、BFPを含むCARを形質導入した細胞のみに実質的に制限された。また、
図7Aおよび
図7Bに示すように、CAR(BFP+)生細胞をゲーティングした後、CD4(Y軸)およびCD8(X軸)で染色した。CARの発現はそれほど高くなかったため(17.8%)、BFP+細胞をバックゲーティングしたところ、特に、抗CD4 CRISPRで処理した抗CD4 CAR T細胞において、CD4+細胞が除去され(0.029%)、CD4とCD8がいずれも陰性の二重陰性細胞集団(27.7%)が出現することがさらに実証された。
【0174】
実施例3-CD4が破壊されたCAR T細胞の機能分析
本実施例は、細胞内サイトカインの発現により測定した、破壊されたCD4遺伝子と抗CD19 CARを含む初代CD3+T細胞の活性に関する。CD4を破壊することにより、CD4+リンパ球の機能が喪失する可能性があると予測される。これを踏まえ、CD4を発現しないように遺伝子組換えされたCAR T細胞の機能を調べた。
【0175】
CAR T細胞の機能を測定するため、標的抗原を発現する細胞に接触させた際のCAR T細胞における適切なサイトカイン(TNF-α、IL-2およびIFN-γ)の発現を評価した。CD4が破壊されていない抗CD19 CAR T細胞およびCD4が破壊された抗CD19 CAR T細胞を作製し、エフェクター細胞と標的細胞の比率が2:1となるように、標的細胞(K562細胞またはCD19を発現するように遺伝子組換えされたK562細胞)と混合した。抗CD19 CARコンストラクトからBFPを発現させた。6時間後、各細胞における細胞内サイトカインの発現をフローサイトメトリーで評価した。
図8は、CD4が破壊されていない抗CD19 CAR T細胞またはCD4が破壊された抗CD19 CAR T細胞と、CD19を発現する標的細胞またはCD19を発現しない標的細胞とを混合した際のフローサイトメトリーデータを示す。各細胞がリンパ球形態を有するかどうかの判定(
図8、上段)と、生死細胞染色(
図8、下段)を評価した。
【0176】
サイトカイン(TNF-α、IL-2、およびIFN-γ)の発現をBFP+CAR T細胞において評価した。抗CD19 CAR T細胞は、CD19を発現する標的細胞の存在下でのみサイトカインを発現した(
図9)。陰性コントロールは、顕著な量のサイトカインを産生しなかった。野生型CAR T細胞およびCD4が破壊されたCAR T細胞は、同程度の量のサイトカインを産生した。したがって、サイトカインを発現する細胞の割合を比較することにより評価したところ、CD4の破壊の有無に関係なくCAR T細胞は同様の機能を有していた。予想外にも、TNF-αおよびIL-2に関して、サイトカインを発現する細胞の割合は、CD4が破壊されたCAR T細胞において高かったことから、CAR T細胞においてCD4を破壊することには特有の利点がある可能性があることが示唆された。これは理論的に予想外であった。
【0177】
サイトカインを産生するCAR T細胞をバックゲーティングしたところ、CD4が破壊されたCAR T細胞の中でも、二重陰性細胞(CD4陰性かつCD8陰性)が、サイトカインを産生していることが判明した。そこで、TNFαを産生するCAR T細胞の表現型を調べた。
図10に示すように、CD4を破壊していない場合、TNFα産生細胞の大部分はCD4+であった。CD4を破壊した後では、TNFα産生細胞の大部分はCD4陰性かつCD8陰性の二重陰性細胞であった。また、IL-2を産生するCAR T細胞の表現型も調べた。
図11に示すように、CD4を破壊していない場合、IL-2産生細胞の大部分はCD4+であったが、CD4を破壊した後では、IL-2産生細胞の大部分はCD4陰性かつCD8陰性の二重陰性細胞であった。さらに、IFN-γを産生するCAR T細胞の表現型も調べた。
図12に示すように、CD4を破壊していない場合、IFN-γ産生細胞の大部分はCD4+であったが、CD4を破壊した後では、IFNγ産生細胞の大部分はCD4陰性かつCD8陰性の二重陰性細胞であった。
【0178】
CD4が破壊された単一細胞試料中のCD4陽性抗CD19 CAR T細胞とCD4陰性抗CD19 CAR T細胞を、サイトカインの産生について比較した。
図13に示すように、100%の効率でCD4を破壊することはできなかったため、CD4+CAR T細胞とCD4-CAR T細胞の混合物が得られた。CD4が破壊されなかったCD4+CAR T細胞は、CD4が破壊されたCAR T細胞と同程度の量のサイトカインを産生した。
【0179】
GFP+CD4+細胞株(A3.01細胞)と混合した際の抗CD4 CAR T細胞の細胞形態を、フローサイトメトリーによる評価により、CD4を破壊した場合とCD4を破壊していない場合とで比較した。mock T細胞、CD4が破壊されたCAR T細胞またはCD4が破壊されていないCAR T細胞とGFP発現A3.01細胞を2:1の比率で混合し、22時間インキュベートした。
図14に示すように、CD4が破壊されたCAR T細胞をCD4+細胞株(A3.01)と混合し、前方散乱光および側方散乱光を測定したところ、同様の細胞形態を有することが示された。
【0180】
CD4が破壊されたCAR T細胞の活性を、標的細胞に対する殺傷能力に関して評価した。
図15に示すように、左下の図と比べて、右下の2つの図においてGFP/FITC+細胞が減少していることから、CD4が破壊された抗CD4 CAR T細胞とCD4が破壊されていない抗CD4 CAR T細胞は、GFP+CD4+細胞株の除去において同程度に効果的であった。したがって、CD4が破壊されたCAR T細胞は機能性を示し、CD4が破壊されていないCD4+CAR T細胞と同程度の効率で標的細胞を殺傷した。
【0181】
実施例4-CD4の破壊による、HIV感染からのT細胞およびCAR T細胞の保護
本実施例は、前述のCas9とG6を用いた処理によりCD4遺伝子が破壊されたT細胞、または抗CD19 CARを含みCD4遺伝子が破壊されたT細胞を、HIV感染細胞と共培養した際の各T細胞の活性に関する。各T細胞とHIVに感染させた同種細胞を2:1の比率で混合した。
【0182】
コントロールT細胞(mock)、CD4が破壊されたT細胞、抗CD4 CARを含むT細胞、および抗CD4 CARを含みCD4が破壊されたT細胞を含む様々なT細胞を作製した。これらの作製したT細胞とHIVに感染させた同種細胞を2:1の比率で混合した。HIVカプシド(p24)ELISAで測定することによって、培養物中におけるHIVタンパク質の産生を5日間にわたりモニターした。
図16に示すように、mockエフェクターT細胞と混合したHIV感染細胞ではHIVが複製された。一方、CARを含まずCD4が破壊されたT細胞の存在下では、HIVタンパク質の産生量が少なかったことから、CD4の破壊によりHIVの複製が減少することが示された。CD4が破壊されていない抗CD4 CAR T細胞では、HIVタンパク質の減少が50%を超えたことから、抗CD4 CAR T細胞療法によってHIVの複製を抑制できることが初めて実証された。CD4が破壊された抗CD4 CAR T細胞では、CARを含まずCD4が破壊されたT細胞やCD4が破壊されていない抗CD4 CAR T細胞よりもウイルスの産生が減少したことから、これらの戦略を組み合わせた際の利点が実証された。
【0183】
GFP発現レンチウイルスベクターを使用して、CD4が破壊された細胞および未処理mock細胞をGFPで標識し、HIVに感染させた同種末梢血単核細胞(PBMC)と2:1の比率で混合した。2~3日後にHIVカプシド(p24)を細胞内染色し、フローサイトメトリーで評価することによって、HIV感染細胞の割合を測定した。CD4を破壊しなかった場合、全細胞のうち約5.1%がHIVに感染した(
図17、下段、中央の図)。これに対して、T細胞を抗CD4 CRISPRに曝露すると、HIV陽性を示した細胞はわずか1.8%となった(
図17、下段、右図)。この結果、HIV感染細胞の割合が65%減少したことから、CD4を破壊することにより、T細胞におけるHIV感染が少なくなることが示された。
【0184】
GFP発現レンチウイルスベクターを使用して、CD4が破壊された細胞および未処理mock細胞をGFPで標識し、HIVに感染させた同種PBMCと2:1の比率で混合した。2日後、各細胞におけるGFPの発現をフローサイトメトリーで評価した。
図18の左図に示すように、CD4を破壊しなかった場合、GFP+細胞のほぼすべてが消失し、恐らくはHIV感染によるものだと考えられた。一方、
図18の右図に示すように、CD4を破壊した場合、より多くのGFP+細胞が生存し、HIV感染からGFP+細胞が保護されたと推定された。より具体的には、HIV感染から生存したGFP細胞の割合は、CD4を破壊すると、0.31%から3.11%へと顕著に上昇し、生存率が10倍に上昇した。したがって、HIV感染において遺伝子組換え細胞の生存率の上昇が認められた。
【0185】
実施例5-AML細胞を標的とする抗CD4 CAR T細胞
MOLM-13細胞はAML細胞株である。mCherryマーカーを形質導入してMOLM-13細胞を標識した。MOLM-13細胞(標的細胞)を、抗CD4 CARを含むT細胞(エフェクター細胞)または抗CD4 CARを含まないコントロールT細胞(mock細胞)と1:1の比率で混合し、21時間インキュベートした。その後、フローサイトメトリーで細胞集団を分析した。
【0186】
図19に示すように、フローサイトメトリーにより測定を行い、Texas cherry red(X軸)に対して側方散乱光(Y軸)をプロットした。mock T細胞のみ(上段左側のプロット)、AML細胞(MOLM-13細胞)のみ(上段中央のプロット)、および抗CD4 CAR T細胞のみ(上段右側のプロット)を示す。AML(MOLM-13)標的細胞にmCherryを形質導入した。標的細胞の98%がmCherry陽性であった(上段中央のプロット)。
図19の下段のプロットは、AML細胞と混合したmock T細胞またはCAR T細胞の結果を示す。標的細胞とエフェクター細胞の集団では、標的細胞とmock細胞の集団と比較してmCherryのシグナルが86%減少したことから、抗CD4 CAR T細胞が効果的にAML細胞を殺傷することが示された。
【0187】
実施例6-AML細胞を標的とするCD4-抗CD4 CAR T細胞
前述と同様にしてCas9およびG6を使用してCD4-T細胞を作製し、抗CD4 CARをコードするポリヌクレオチドで形質導入を行う。MOLM-13細胞(標的細胞)を、mCherryマーカーの形質導入により標識する。(1)抗CD4 CARを含むCD4+T細胞(エフェクターCD4+細胞)、(2)抗CD4 CARを含むCD4-T細胞(エフェクターCD4-細胞)、(3)抗CD4 CARを含まないCD4+コントロールT細胞(mock CD4+細胞)、または(4)抗CD4 CARを含まないCD4-コントロールT細胞(mock CD4-細胞)と、MOLM-13細胞を1:1の比率で混合し、21時間インキュベートする。インキュベートした細胞集団をフローサイトメトリーで分析する。標的細胞とエフェクターCD4-細胞の混合集団では、標的細胞とエフェクターCD4+細胞の混合集団と比較して、AML細胞の殺傷レベルが上昇する。
【0188】
本明細書で使用されている「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含む(containing)」または「特徴とする(characterized by)」という用語と同義であるとともに、オープンエンドで包括的な意味であり、本明細書には記載されていないさらなる要素や工程を除外するものではない。
【0189】
前述の説明は、本発明のいくつかの方法および材料を開示するものである。本発明の方法および材料は、変更することができ、製造方法および器具も変更することができる。このような変更は、本開示または本明細書に開示された本発明の実施を考慮に入れて、当業者であれば容易に理解することができる。したがって、本発明は、本明細書に開示された特定の実施形態に限定されず、本発明の真の範囲および要旨において可能なあらゆる変更およびその他の態様を包含する。
【0190】
本明細書において引用された公開特許出願、非公開特許出願、特許および学術文献を含む(ただしこれらに限定されない)すべての参考文献は、引用によりその全体が本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。引用により援用された文献、特許または特許出願が本明細書の開示内容と矛盾する場合、このような矛盾事項よりも本明細書の記載が採用および/または優先される。
【0191】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法であって、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドにより破壊された少なくとも1つのCD4遺伝子を含む遺伝子組換え細胞をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法。
[2]前記CD4+細胞集団が、HIVを含む、[1]に記載の方法。
[3]前記CD4+細胞集団が、急性骨髄性白血病(AML)細胞または急性リンパ性白血病(ALL)細胞を含む、[1]に記載の方法。
[4]前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、[1]に記載の方法。
[5]前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、[1]に記載の方法。
[6]前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、[1]に記載の方法。
[7]前記少なくとも1つのCD4遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むCRISPRガイドポリヌクレオチドで破壊されている、[1]に記載の方法。
[8]前記遺伝子組換え細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)を含む、[1]に記載の方法。
[9]前記CARが、CD4タンパク質に特異的に結合する、[8]に記載の方法。
[10]前記CARが、CD19タンパク質に特異的に結合する、[8]に記載の方法。
[11]前記CARが、HIVタンパク質に特異的に結合する、[8]に記載の方法。
[12]前記CARが、HIV中和抗体に由来する抗原結合ドメインを含む、[8]に記載の方法。
[13]前記HIV中和抗体が、PGT128、PG9およびPGT145から選択される、[12]に記載の方法。
[14]前記CARが、誘導型プロモーターから発現される、[8]に記載の方法。
[15]前記遺伝子組換え細胞が、自殺遺伝子システムをコードするポリヌクレオチドを含む、[1]に記載の方法。
[16]前記自殺遺伝子システムが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである、[15]に記載の方法。
[17]前記遺伝子組換え細胞が哺乳動物細胞である、[1]に記載の方法。
[18]前記遺伝子組換え細胞がヒト細胞である、[1]に記載の方法。
[19]前記遺伝子組換え細胞がリンパ球である、[1]に記載の方法。
[20]前記遺伝子組換え細胞がT細胞である、[1]に記載の方法。
[21]前記遺伝子組換え細胞が初代細胞である、[1]に記載の方法。
[22]前記遺伝子組換え細胞が、末梢血単核細胞から単離された細胞である、[1]に記載の方法。
[23]前記遺伝子組換え細胞が、CD3またはCD8を発現している、[1]に記載の方法。
[24]前記遺伝子組換え細胞が、CD4+細胞、ナチュラルキラー細胞またはナチュラルキラーT細胞に由来する細胞を含む、[1]に記載の方法。
[25]CD4遺伝子破壊用の単離された核酸であって、CD4遺伝子にハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子にハイブリダイズするように構成されているCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)ガイドポリヌクレオチドを含む核酸。
[26]前記ガイドポリヌクレオチドが、CD4遺伝子の第1のエキソンもしくは第3のエキソンにハイブリダイズすることができるか、またはCD4遺伝子の第1のエキソンもしくは第3のエキソンにハイブリダイズするように構成されている、[25]に記載の単離された核酸。
[27]前記ガイドポリヌクレオチドが、隣接する同じプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を標的とする、[25]または[26]に記載の単離された核酸。
[28]前記PAMが、NGGモチーフを含む、[27]に記載の単離された核酸。
[29]配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、[25]~[28]のいずれか1項に記載の核酸。
[30]配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、[25]~[28]のいずれか1項に記載の核酸。
[31]配列番号1~8のいずれかで示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む、[25]~[28]のいずれか1項に記載の核酸。
[32]配列番号6で示されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含む、[25]~[28]のいずれか1項に記載の核酸。
[33]前記ガイドポリヌクレオチドがRNAを含む、[25]~[32]のいずれか1項に記載の核酸。
[34][25]~[33]のいずれか1項に記載の核酸を含むリボ核タンパク質(RNP)。
[35]Cas9タンパク質を含む、[34]に記載のRNP。
[36]遺伝子組換え細胞を作製する方法であって、[34]または[35]に記載のリボ核タンパク質(RNP)を細胞に導入する工程を含む方法。
[37]Cas9タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、[36]に記載の方法。
[38]遺伝子組換え細胞を作製する方法であって、[25]~[33]のいずれか1項に記載の核酸をコードする第1のポリヌクレオチドを細胞に導入する工程;およびCas9タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程を含む方法。
[39]キメラ抗原受容体(CAR)をコードする第3のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、[36]~[38]のいずれか1項に記載の方法。
[40]前記CARが、CD4タンパク質に特異的に結合する、[39]に記載の方法。
[41]前記CARが、CD19タンパク質に特異的に結合する、[39]または[40]に記載の方法。
[42]前記CARが、HIVタンパク質に特異的に結合する、[39]~[41]のいずれか1項に記載の方法。
[43]前記CARが、HIV中和抗体に由来する抗原結合ドメインを含む、[42]に記載の方法。
[44]前記HIV中和抗体が、PGT128、PG9およびPGT145から選択される、[43]に記載の方法。
[45]前記CARが、誘導型プロモーターから発現される、[39]~[44]のいずれか1項に記載の方法。
[46]自殺遺伝子システムをコードする第4のポリヌクレオチドを前記細胞に導入する工程をさらに含む、[38]~[45]のいずれか1項に記載の方法。
[47]前記自殺遺伝子システムが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)/ガンシクロビル(GCV)自殺遺伝子システムまたは誘導型カスパーゼ自殺遺伝子システムである、[46]に記載の方法。
[48]前記細胞が哺乳動物細胞である、[38]~[47]のいずれか1項に記載の方法。
[49]前記細胞がヒト細胞である、[38]~[48]のいずれか1項に記載の方法。
[50]前記細胞がCD4を発現している、[38]~[49]のいずれか1項に記載の方法。
[51]前記細胞がリンパ球である、[38]~[50]のいずれか1項に記載の方法。
[52]前記細胞がT細胞である、[38]~[51]のいずれか1項に記載の方法。
[53]前記細胞が初代細胞である、[38]~[52]のいずれか1項に記載の方法。
[54]前記細胞が、末梢血単核細胞から単離された細胞である、[38]~[53]のいずれか1項に記載の方法。
[55]前記細胞が、CD3またはCD8を発現している、[38]~[54]のいずれか1項に記載の方法。
[56]前記細胞が、CD4+細胞、ナチュラルキラー細胞またはナチュラルキラーT細胞に由来する細胞である、[38]~[55]のいずれか1項に記載の方法。
[57]前記細胞が、エクスビボの細胞である、[38]~[56]のいずれか1項に記載の方法。
[58][38]~[57]のいずれか1項に記載の方法により作製された遺伝子組換え細胞。
[59]HIV感染症に対する抵抗性が増強された遺伝子組換え細胞であって、[58]に記載の遺伝子組換え細胞を含み、少なくとも1つのCD4遺伝子が破壊されていない細胞と比べて、HIV感染症に対する抵抗性が増強されている細胞。
[60][58]または[59]に記載の遺伝子組換え細胞と薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
[61]CD4+細胞集団を殺傷または抑制する方法であって、[58]もしくは[59]に記載の遺伝子組換え細胞または[60]に記載の医薬組成物をCD4+細胞集団に接触させる工程を含む方法。
[62]前記CD4+細胞集団が、HIVを含む、[61]に記載の方法。
[63]前記CD4+細胞集団が、急性骨髄性白血病(AML)細胞または急性リンパ性白血病(ALL)細胞を含む、[61]または[62]に記載の方法。
[64]好ましくはヒトなどの対象において、HIVに感染したCD4+細胞集団におけるHIVの複製を減少させるか、抑制する方法であって、インビボまたはインビトロにおいて、好ましくは対象において、HIVに感染したCD4+細胞集団に、[58]または[59]に記載の遺伝子組換え細胞を接触させる工程を含み、前記対象が、HIV感染症の治療を行うために選択された対象であってもよく、例えば、前記対象が、例えば、該対象におけるHIVウイルス、HIVタンパク質またはHIV核酸の有無の分析などの、該対象におけるHIV感染症の有無および/またはその量の評価などによる臨床的評価および/または診断的評価により選択された対象である、方法。
[65]前記CD4+細胞集団と前記遺伝子組換え細胞が同じ対象に由来する、[61]~[64]のいずれか1項に記載の方法。
[66]前記CD4+細胞集団が、エクスビボの細胞集団である、[61]~[65]のいずれか1項に記載の方法。
[67]前記CD4+細胞集団が、インビボの細胞集団である、[61]~[65]のいずれか1項に記載の方法。
[68]HIV感染症を有する対象においてHIV感染症を治療、抑制もしくは緩和する方法、急性骨髄性白血病(AML)を有する対象においてAMLを治療、抑制もしくは緩和する方法、または急性リンパ性白血病(ALL)を有する対象においてALLを治療、抑制もしくは緩和する方法であって、[58]または[59]に記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団を前記対象に投与する工程を含み、前記対象が、HIV感染症、AMLおよび/またはALLの治療を行うために選択された対象であってもよく、例えば、前記対象が、例えば、血液検査または予後シーケンシングにより同定されるHIVウイルス、HIVタンパク質もしくはHIV核酸および/またはAMLマーカーの有無の分析などの、該対象におけるHIV感染症またはAMLの有無および/またはその量の評価などによる臨床的評価および/または診断的評価により選択された対象である、方法。
[69]前記遺伝子組換え細胞が、前記対象の自己細胞である、[68]に記載の方法。
[70]前記遺伝子組換え細胞がCARを含み、前記方法が、該細胞におけるCARの発現を誘導する工程をさらに含む、[61]~[69]のいずれか1項に記載の方法。
[71]前記遺伝子組換え細胞がCARを含み、前記方法が、該細胞におけるCARの発現を抑制するか、低減させる工程をさらに含む、[61]~[70]のいずれか1項に記載の方法。
[72]前記対象に前記細胞集団を投与した後に、前記CARの発現が抑制されるか、低減する、[69]または[70]に記載の方法。
[73]前記対象に前記細胞集団を投与してから1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後または7日後に、前記CARの発現の抑制または低減が確認される、[69]~[72]のいずれか1項に記載の方法。
[74]前記対象に前記細胞集団を投与してから1週間後、2週間後、3週間後または4週間後に、前記CARの発現の抑制または低減が確認される、[69]~[73]のいずれか1項に記載の方法。
[75]前記対象が哺乳動物である、[61]~[74]のいずれか1項に記載の方法。
[76]前記対象がヒトである、[61]~[75]のいずれか1項に記載の方法。
[77]HIV、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)の治療用、抑制用または緩和用などの医薬品における、[58]または[59]に記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団の使用。
[78]HIV、急性骨髄性白血病(AML)または急性リンパ性白血病(ALL)の治療用、抑制用または緩和用の医薬品の調製における、[58]または[59]に記載の遺伝子組換え細胞を含む細胞集団の使用。