(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175125
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20241210BHJP
【FI】
G02B7/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024165287
(22)【出願日】2024-09-24
(62)【分割の表示】P 2021075917の分割
【原出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 忠典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀
(72)【発明者】
【氏名】長野 敏宗
(57)【要約】
【課題】電気的に駆動するレンズ群と、手動又は外部駆動手段で移動するレンズ群の可動範囲が重複するレンズ装置において、小型化と駆動精度と撮像品位の向上を実現するレンズ装置を提供する。
【解決手段】レンズ装置は、可動の第1及び第2群と、第1及び第2群を保持する第1及び第2保持部材と、第2保持部材を電動駆動する駆動手段と、光軸方向において第2保持部材に対して相対的に移動可能であり、駆動力を第2保持部材に伝達する伝達部材と、第2保持部材を伝達部材に対して第1保持部材側に付勢する付勢部材と、駆動手段を制御する制御手段と、第1及び第2保持部材の位置を検出する第1及び第2検出手段とを備え、第1及び第2保持部材の可動範囲は互いに干渉する干渉領域を有し、制御手段は第1及び第2検出手段の検出結果に基づき、第1及び第2保持部材との干渉領域か非干渉領域かの判定に基づき駆動手段の制御を変更することを特徴とする。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動又は外部駆動手段で光軸方向に移動する第1のレンズ群を保持する第1の保持部材と、
前記光軸方向に移動する第2のレンズ群を保持する第2の保持部材と、
前記第2の保持部材を前記光軸方向に電動で駆動する駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、
前記第1の保持部材の位置を検出する第1の検出手段と、
前記第2の保持部材の前記第1の保持部材に対する相対位置を検出する第2の検出手段とを備え、
前記第1の保持部材の可動範囲と前記第2の保持部材の可動範囲に、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材が互いに干渉する干渉状態を有し、
前記制御手段は、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが接触している接触状態か、接触していない非接触状態かを判定し、該判定の結果に基づき、前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動手段の制御をフィードバック制御で行い、前記判定の結果が前記接触状態である場合には入力される偏差に上限値を設定することを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記駆動手段の制御をフィードバック制御で行い、前記判定の結果が前記接触状態である場合には前記非接触状態である場合に対して低速度となる制御への切り替えを行うことを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記駆動手段の制御をフィードバック制御で行い、前記判定の結果が前記接触状態である場合には前記非接触状態である場合に対して低加速度となる制御への切り替えを行うことを特徴とする請求項2から4までの何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記駆動手段の制御を、前記判定の結果が前記接触状態である場合にはフィードフォワード制御で行い、前記判定の結果が前記非接触状態である場合にはフィードバック制御で行うことを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1の保持部材の位置と前記第2の保持部材の位置とに対して、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが接触している接触状態及び接触していない非接触状態を含む2以上の状態が定義された判定テーブルを有し、前記判定テーブルに基づいて前記制御方法の変更を行うことを特徴とする請求項1から6までの何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記第1の保持部材の位置と前記第2の保持部材の位置が撮像に有効な撮像有効状態か、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材との接触を回避する接触回避状態かを判定し、該判定の結果に基づき、前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とする請求項1から7までの何れか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記接触回避状態か、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが接触する直前の接触直前状態かを判定し、該判定の結果に基づき、前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とする請求項8に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記第2の保持部材が前記接触直前状態にある場合、前記制御手段は、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記第2の保持部材が前記接触回避状態から前記接触直前状態に変化したか、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材とが接触した接触状態から前記接触直前状態に変化したかにより前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とする請求項9に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記接触回避状態と前記接触直前状態との境界は、前記第1の検出手段の検出結果に基づく前記第1の保持部材の移動速度に基づいて変化することを特徴とする請求項10に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記接触回避状態においては前記撮像有効状態に対して、前記第2の保持部材の加速度又は最高速度を上げるように前記駆動手段の制御を変更することを特徴とする請求項10又は11に記載のレンズ装置。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載のレンズ装置と、前記レンズ装置によって形成された像を撮る撮像素子とを有する撮像装置。
【請求項14】
請求項1から12までの何れか一項に記載のレンズ装置における前記制御手段によるレンズ装置の制御方法。
【請求項15】
プロセッサーによって実行されると、該プロセッサーに請求項14に記載のレンズ装置の制御方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置、撮像装置、レンズ装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズ鏡筒の最短全長を短縮するために、電気的な駆動手段を用いて移動するレンズ群の可動範囲内に、手動あるいは外部駆動手段で移動するレンズ群が入り込む構成を可能にする技術が知られている。特許文献1では手動で光軸方向に移動する第1のレンズ群と、駆動部材の駆動力から伝達部材を介して移動される第2のレンズ群とを備えるレンズ装置が開示されている。第2のレンズ群を保持する第2の保持部材が第1の保持部材に干渉した場合、付勢部材が変位することでレンズ群同士の衝突の衝撃を吸収する鏡筒構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、付勢部材が変位した際にフィードバック制御が不安定な状態となることを防止するために、駆動手段であるステッピングモータの制御を変更する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-197617号公報
【特許文献2】特開2017-227825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように電気的な駆動手段を用いて移動するレンズ群の移動範囲内に、手動あるいは外部駆動手段で移動するレンズ群が入り込む構成においては、特許文献1のように付勢部材による退避構造がとられている。一方、レンズ群が入り込む構成において退避構造がないものに関する開示は特許文献1にも特許文献2にもない。
【0006】
そこで本発明は、電気的に駆動するレンズ群と、手動又は外部駆動手段で移動するレンズ群の可動範囲が重複するレンズ装置において、駆動精度の向上と撮像品位の向上を実現するコンパクトなレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ装置は、手動又は外部駆動手段で光軸方向に移動する第1のレンズ群を保持する第1の保持部材と、前記光軸方向に移動する第2のレンズ群を保持する第2の保持部材と、前記第2の保持部材を前記光軸方向に電動で駆動する駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、前記第1の保持部材の位置を検出する第1の検出手段と、前記第2の保持部材の前記第1の保持部材に対する相対位置を検出する第2の検出手段とを備え、前記第1の保持部材の可動範囲と前記第2の保持部材の可動範囲に、前記第1の保持部材と前記第2の保持部材が互いに干渉する干渉状態を有し、前記制御手段は、前記第1の検出手段及び前記第2の検出手段の検出結果に基づき、前記駆動手段の制御方法の変更を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電気的制御で移動するレンズ群の可動範囲と、手動又は外部駆動手段で移動するレンズ群の可動範囲が重複するレンズ装置において、駆動精度の向上や撮像品位の向上を実現するコンパクトなレンズ装置鏡筒を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明を実施したレンズ鏡筒の広角端における無限合焦状態の断面図である。
【
図2】
図1のレンズ鏡筒の広角端における至近合焦状態の断面図である。
【
図3】
図1のレンズ鏡筒の望遠端における無限遠合焦状態の断面図である。
【
図4】
図1のレンズ鏡筒の望遠端における至近合焦状態を表す断面図である。
【
図5】ズーミングによる各レンズの移動軌跡を示した線図である。
【
図6】4群鏡筒のラック保持部の構造を示す分解斜視図である。
【
図7】4群鏡筒にラックを組んだ状態を示す斜視図である。
【
図8】3群ベース鏡筒基準での4群鏡筒と5群鏡筒の移動軌跡を示した線図である。
【
図9】4群鏡筒と5群鏡筒の通常状態を示す断面図である。
【
図10】4群鏡筒と5群鏡筒の干渉状態を示す断面図である。
【
図11】通常状態における4群鏡筒とラックを示す斜視図である。
【
図12】干渉状態における4群鏡筒とラックを示す斜視図である。
【
図13】
図8の線図において制御を切り替える領域を示した図である。
【
図14】本発明のレンズ装置を有する撮像装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。説明図においては、わかりやすさのため、実際の縮尺とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の実施例によるレンズ鏡筒について説明する。
図1は本発明を実施したレンズ鏡筒のワイド無限遠合焦状態を表す断面図である。
図2は
図1のレンズ鏡筒のワイド至近合焦状態を表す断面図である。
図3は
図1のレンズ鏡筒のテレ無限遠合焦状態を表す断面図である。
図4は
図1のレンズ鏡筒のテレ至近合焦状態を表す断面図である。図中X-Xで示す線は光軸を表す。
【0012】
図1においてマウント101は不図示のカメラ本体に固定される部品である。案内筒102は、固定筒103と共にマウント101と一体的に固定されている。案内筒102の外周にはカム環104が光軸周りに回転可能に保持されている。カム環104は固定筒103の外周に回転可能に保持されたズームリング105と不図示のキー部材で連結されており、外部からズームリング105を操作することによって一体的に回転する構成となっている。
【0013】
第1の検出手段としてのズームセンサ106は、固定筒103に取り付けられており、ズームリング105の回転角を電気的に検出できるセンサである。ズームセンサ106は、マウント101の近傍に配置した制御基板107に電気的に接続され、ズーミングの際の焦点距離情報を制御回路に伝達している。制御基板107には、接点ブロック108が電気接続されており、制御基板107は不図示のカメラ本体との通信及び電力の供給を受ける。
【0014】
レンズ装置100としてのレンズ鏡筒は、物体側から像側へ順に配置された第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4及び第5レンズ群L5を有する。第1レンズ群L1は1群鏡筒111に固定されている。1群鏡筒111は直進筒112に固定されている。
【0015】
第2レンズ群L2は2群鏡筒113に保持されている。2群鏡筒113はシフトユニット114に光軸に対して直交する平面内で移動可能に保持されている。シフトユニット114には2群鏡筒113を駆動するためのアクチュエータ、駆動量を検出するセンサ等が含まれ、シフトユニット114は案内筒102に固定されている。シフトユニット114は制御基板107に電気的に接続されている。制御基板107は固定筒103に取り付けたブレセンサ116によって検出されたブレ信号を元にブレを補正するよう2群鏡筒113を駆動制御している。
【0016】
第3レンズ群L3は、3A群鏡筒117、3B群鏡筒118に保持され、共に3群ベース鏡筒120に固定されている。3群ベース鏡筒120には電磁絞りユニット121が保持されており、制御基板107に電気的に接続されている。
【0017】
第2のレンズ群としての第4レンズ群L4は4群鏡筒122(第2の保持部材)に保持され、4群鏡筒122はガイドバー123a及び123b(
図7)によって3群ベース鏡筒120に光軸方向に移動可能に保持されている。第4レンズ群L4はフォーカス調整用のレンズであり、3群ベース鏡筒120に保持されたリニア超音波モータ124によって光軸方向に駆動される。
【0018】
リニア超音波モータ124は固定部125と可動部126とから成り、圧電素子を超音波振動させ可動部126を光軸方向に駆動するものであり周知の技術によるものである。圧電素子は不図示のフレキシブルプリント基板によって制御基板107に電気的に接続されている。
【0019】
第1のレンズ群としての第5レンズ群L5は、第1の保持部材としての5群鏡筒127に保持されている。
第1レンズ群L1、第3レンズ群L3、第5レンズ群L5はそれぞれズーミングで移動するレンズであり、直進筒112、3群ベース鏡筒120、5群鏡筒127には図示しないカムフォロアが固定されている。各カムフォロアは案内筒102に設けた直進溝及び、カム環104に設けたカム溝に係合しており、カム環104を回転することによって夫々光軸方向に直進移動できる構成になっている。
【0020】
また、フォーカス調整用の第4レンズ群L4は、3群ベース鏡筒120に保持されているため、ズーミングで3群ベース鏡筒120と共に移動しながら、リニア超音波モータ124によって光軸方向に駆動される。
【0021】
図5は、ズーミングによる各レンズ群の移動軌跡を示した線図である。
図5は、マウント101基準でみたワイドからテレまでの移動軌跡を示しており、L1、L3、L5はズーミングで移動し、L2はズームでは移動しないことを示している。L4無限は無限遠に合焦した状態での第4レンズ群L4の移動軌跡を示しており、L4至近は、所定の至近距離に合焦した状態での移動軌跡を示している。
【0022】
広角端から望遠端までの各焦点距離における、無限遠から至近距離までの各物体距離に合焦する第4レンズ群L4の位置情報が、データ(テーブル)として制御手段としての制御基板107に記憶されている。各物体距離に合焦する第4レンズ群L4の位置情報とズームセンサ106で検出される焦点距離情報に基づいて、
図5に示す線上を辿るようリニア超音波モータ124によって4群鏡筒122を駆動制御する。
【0023】
次に4群鏡筒122の保持構造について説明する。
図6は4群鏡筒122のラック保持部の構造を示す分解斜視図である。
図7は4群鏡筒122にラック131を組んだ状態を示す斜視図である。
【0024】
図6及び
図7においてラック131(伝達部材)は軸部131aをラックバネ132(付勢部材)に通し、4群鏡筒122のラック軸穴122a、122bの間に挿入する。そこに、ラックガイド軸133をラック軸穴122a、122b及び、ラック131の摺動穴131bを貫通させるように組み込む。ラックガイド軸133は端部をラック軸穴122aに圧入させることによって、4群鏡筒122にガタつきなく固定されている。以上のことから、ラック131はラックガイド軸133(4群鏡筒122)に対して、所定の範囲で相対的に光軸方向に移動可能であり、さらにラックガイド軸133の軸回りの回転可能に保持されている。
【0025】
その際、ラック131は、ラックバネ132の付勢力によって光軸と平行な
図7に示すZ方向に常に付勢され、ラック131の端部131cが4群鏡筒122のラック軸穴122b側に常に当接するようにしている。言い換えると、ラックバネ132の付勢力によって、4群鏡筒122は、ラック131に対して5群鏡筒127側(第1の保持部材側)に付勢される。
【0026】
また、ラックバネ132のフック部132aをラック131に掛け、反対側の延長部132bを4群鏡筒122に設けたバネかけ穴122cに挿入している。そうすることによって、ラック131を、ラックガイド軸133を回転中心として、
図7に記載したY方向に常に付勢している。そして、ラック131は、先端のV溝部131dがリニア超音波モータ124の可動部126に設けた図示しない突起部と常に係合している。それによって、部品精度のばらつきがあっても、付勢力によってガタつきなく、リニア超音波モータ124の駆動力を4群鏡筒122に伝達することを可能としている。
【0027】
図6に示すスケール134は第2の検出手段の一部であり、光軸方向に連続したパターンが形成された部品で4群鏡筒122の溝に接着固定されている。このパターンを3群ベース鏡筒120側に取り付けた第2の検出手段の一部である不図示の位置センサで読み込み、4群鏡筒122の3群ベース鏡筒120に対する光軸方向の相対位置を検出できるものである。これらを合わせて本実施例では第2の検出手段と呼称する。4群鏡筒122の3群ベース鏡筒120に対する光軸方向の相対位置、または、4群鏡筒122の5群鏡筒127に対する光軸方向の相対位置の検出は、直接的に検出してもよい。または、ズームリングの回転を検出して、検出結果から4群鏡筒122(第2の保持部)の位置を計算することにより間接的に検出してもよい。
【0028】
図7に示すガイドバー123a、ガイドバー123bは、夫々両端が3群ベース鏡筒120に固定されるものである。ガイドバー123aは4群鏡筒122に設けたスリーブ穴122d、及びスリーブ穴122eに挿通され、4群鏡筒122を光軸方向へ移動自在に保持している。ガイドバー123bは、4群鏡筒122のU字溝122fに係合しており、4群鏡筒122がガイドバー123a回りに回転することを防止している。
【0029】
次に本発明に関するフォーカスレンズの駆動方法について説明する。
図8は、3群ベース鏡筒120を基準として4群鏡筒122及び5群鏡筒127の移動軌跡をワイドからテレまでのズーム位置において記した線図である。各線の一点鎖線Xで示す光軸方向の間隔は各群間のクリアランスを示している。従って線が交差する場合は鏡筒同士が干渉することを示している。
【0030】
フォーカスレンズである4群鏡筒122はズーミングによって、無限遠に合焦している場合には
図8のL4無限と示した実線を辿る様にリニア超音波モータ124によって駆動制御される。最至近に合焦している状態では
図8のL4至近と示した破線を辿るように駆動制御される。無限から至近の中間位置に関しても図示はしないがL4無限からL4至近の間を辿る軌跡がデータとして記憶されており、前述したズームセンサ106による焦点距離情報に基づき、記憶されたデータに従って駆動制御される。
【0031】
図8において、フォーカスレンズである4群鏡筒122はズーミングに応じて電気的に駆動制御されるが、ズーミングは手動操作あるいは外部の駆動手段で行われる。従って、高速でズーミングした場合にはフォーカスレンズの駆動速度には限界があるため、ズーミングによって変化する適切なフォーカス位置への移動が間に合わない場合がある。なお、従来から存在する内蔵モータによってズーミングする場合においては、内蔵モータの速度を適切に制御することで上記の問題は発生しない。
【0032】
本レンズにおいては、望遠端の至近合焦状態にある時、高速で広角端状態にズーミングすると、4群鏡筒122の駆動が間に合わず、4群鏡筒122と5群鏡筒127とが干渉(接触)する干渉状態(接触状態)となる可能性がある。
図8は干渉する可能性がある範囲を干渉領域として示している。干渉する最大量は、5群鏡筒127(L5で示した線)の広角端の位置と、L4至近の望遠端での位置の光軸方向で重なる量であり、
図8にAで示した量になる。
【0033】
この干渉量は通常撮影状態では、ズーミングの速度と、フォーカスレンズのアクチュエータの速度に依存する。交換レンズに適用した場合には、望遠端の至近合焦状態でレンズをカメラから外して電源が遮断された場合には、フォーカスレンズは駆動できないため、そのまま広角端の状態にすると、
図8のAの量だけ干渉してしまうことになる。
【0034】
次に、フォーカスレンズである4群鏡筒122が、5群鏡筒127に干渉した場合の動きについて説明する。
図9及び
図10は、4群鏡筒122と5群鏡筒127の干渉状態を示す断面図であり、
図9は通常状態、
図10は干渉状態を示している。
図11、
図12は通常状態と干渉状態でのラック131の位置を示した斜視図である。
【0035】
図10に示すように、望遠端から高速でズーミングしたり、望遠端至近の状態で電源が遮断された状態で広角端側へズーミングすると、4群鏡筒122の当接部122gと5群鏡筒127に設けた当接部127aが当接する。その結果、5群鏡筒127によって、4群鏡筒122が光軸方向(
図9、10中の左側)に押されることになる。そうすると、ラック131はリニア超音波モータ124の可動部126に保持されていて移動できないため、ラックバネ132が圧縮されて、ラック131(可動部126)に対してラックガイド軸133が摺動し、4群鏡筒122は、5群鏡筒127と共に光軸方向に移動する。以降、このようにラックバネ132が圧縮されることを退避、及びその状態を退避状態とも呼称する。そのため、干渉が発生しても、鏡筒やラック131、あるいはリニア超音波モータ124の破損を防止することができる。フォーカスレンズの追従が完了するか、電源の再投入により干渉状態が解除されれば、4群鏡筒122とラック131との位置の関係はラックバネ132の付勢力によって元の通常状態に復帰する。なお、ラック131と4群鏡筒122との光軸方向における相対的に移動可能な所定の範囲は、後述する干渉領域AR4の光軸方向の最大長さAより大きくなるように構成されている。このように、4群鏡筒122(第2の保持部材)は、ラック131(伝達部材)に対して5群鏡筒127(第1の保持部材)とは光軸反対方向に、少なくとも最大干渉量A以上の移動量を弾性的に退避可能な構成となっている。
【0036】
本実施例では、ラック131を移動可能に保持したラックガイド軸133と、4群鏡筒122を光軸方向に案内するガイドバー123aとを別部品で構成している。それによって、共通の軸部材を用いた従来技術に比べて、4群鏡筒122のガイドバー123aを保持するスリーブ穴122dとスリーブ穴122eの間隔をより大きくとることができる。その結果、4群鏡筒122の倒れを抑制し、光学性能をより向上させることができる。また、二つの穴とガイドバーの嵌合部において、軸と直角方向に働く力を小さくできるため、摩擦力によるこじりが発生しにくく、スムーズな駆動が可能となる。
【0037】
さらに、本実施例では、ラックガイド軸133をラック131とは別体として4群鏡筒122に保持している。それによって、ラック部材の軸を光軸方向の前後に伸ばした従来技術に比べて、ラック部材の移動に伴って軸がレンズ保持部材の前後に飛び出すことが無い。その結果、ラック部材の保持部前後に不要なスペースを設ける必要が無く、レンズ鏡筒全体の小型化が可能になる。従来技術では、
図8における最大干渉量Aのスペースがラック保持部の前後に必要であった。そのため退避量が大きくなる量に比例して本発明を実施する効果が大きくなる。
【0038】
従来のレンズ鏡筒では、電動で駆動されるフォーカスレンズの駆動範囲には、他のレンズが配置されないように光学設計が行われていた。言い換えれば、望遠端でフォーカスレンズの移動範囲に干渉しないように配置した他の群とのクリアランスを、広角端でも同じ分のクリアランスを開けていたということである。広角端でのフォーカスレンズの移動量は望遠端に比べて小さくなる場合が多いため、不必要なクリアランスが開いている場合が多く、その分のレンズ全長が大きくなっていた。
【0039】
本レンズにおいては、高速でズーミングした場合には、フォーカスレンズの干渉を許容する構成としたことで、不要なレンズ群間のクリアランスを最小にして、レンズ鏡筒全体のコンパクト化を実現している。従来の設計であれば、
図8におけるAの分だけレンズ群間隔を開けなければいけないところを、本発明の構成をとることで、その分の全長短縮が実現できている。
【0040】
一方、4群鏡筒122が5群鏡筒127に対して近づくような方向に駆動されていた時に、干渉が発生した場合を考える。例えば、中間ズーム位置より望遠端側のズーム位置において、至近距離以外に合焦している状態から至近距離に向けてフォーカシングしているときに、広角端側に向けて高速でズーミングした場合が該当する。4群鏡筒122には5群鏡筒127に近づく方向に推力が発生したまま衝突することになる。従って、衝突時の衝撃が大きく、駆動音などの品位の点、駆動精度の点で課題がある。
【0041】
さらには、リニア超音波モータは可動部となる4群鏡筒の位置を位置センサで検出、駆動指令位置と実際の位置の差をもとに制御が行われるフィードバック制御が用いられることが一般的である。なお、本実施例では位置偏差をもとにフィードバック制御を行うことを説明しているが、速度や加速度、加速度の偏差、微分、積分をもとに制御を行っても良く、その組み合わせであっても良い。
【0042】
このようなフィードバック制御において、4群鏡筒122が特定の位置で静止している場合において5群鏡筒127が衝突した場合には前述の退避状態になる。すなわち、4群鏡筒122と5群鏡筒127とが接触した状態で、リニア超音波モータ124の可動部126の位置は変わらないまま、4群鏡筒122と5群鏡筒127とはラックバネ132の圧縮量を大きくしながら移動する。その場合、退避量(ラックバネ132の圧縮量)に伴ってスケール134と不図示の位置検出センサから得られる4群鏡筒122の位置は変化するが、リニア超音波モータ124の可動部126が4群鏡筒122を移動させるための(スケール134と不図示の位置検出センサから得られるべき位置)指令位置は変化していない。そのため、指令位置と実際の4群鏡筒122の位置との偏差が大きくなるため、制御は大きな推力を発生させて偏差を減らそうとする。しかし、4群鏡筒122は5群鏡筒127と接触している状態であり、5群鏡筒127との間隔をさらに狭める側へは移動できないため、発振が発生して大きな衝突音や駆動音が発生する可能性がある。
これらの課題をどのような制御によって解決し、製品の小型化を実現しながら精度や品位向上を実現するかについて以下に説明する。
【0043】
図13は
図8の線図の各位置において制御手段の制御を変更する領域を示した図である。
図13は3群ベース鏡筒120の位置を基準として4群鏡筒122及び5群鏡筒127の移動軌跡を示しており、干渉領域AR4の位置では4群鏡筒122と5群鏡筒127が当接し、退避することを示している。リニア超音波モータ124の駆動によって4群鏡筒122が移動できる範囲は、
図13におけるBの範囲であり、本実施例においてBは望遠端で光学的に必要な範囲よりも余裕を持った広い範囲としている。5群鏡筒127が移動できる範囲は
図13におけるCの範囲(物体側範囲のみ示す)であり、4群鏡筒122が移動できる範囲Bと範囲Aにおいて重なり、互いに干渉する領域となる。
【0044】
図13中の領域AR1、AR2、AR3、AR4は順に、それぞれ後述する、光学使用領域、干渉回避領域、干渉直前領域、干渉領域を示す。これらの領域は、ズーム位置とフォーカス位置に対して定義される領域として、例えば制御手段内に、判定テーブルとして記憶されている。光学使用領域AR1は、
図13中でL4無限の線とL4至近の線の間で挟まれた領域である。干渉回避領域AR2は、
図13中でL4至近の線と実曲線で挟まれた斜線で示された領域である。干渉領域AR4は、
図13中で着色されて示された領域であり、4群鏡筒122の可動範囲の像側端を像側の端とし、第5レンズ群L5の移動軌跡を物体側の端とする領域である。干渉直前領域AR3は、干渉回避領域AR2と干渉領域AR4とで挟まれた領域である。5群鏡筒127の可動範囲Cと4群鏡筒122の可動範囲Bは互いに干渉する干渉領域(干渉領域AR4の物体側の境界である曲線M)を有する
【0045】
各領域において異なる制御手段による4群鏡筒の駆動の制御方法を説明する。
光学使用領域AR1は光学的に有効な駆動領域であり、ズーム可変範囲において製品で規定された被写体距離(物体距離)に合焦できる領域である。すなわち、光学使用領域AR1は、ズームレンズ群の移動による広角端から望遠端までのズーム位置に対し、フォーカスレンズ群の移動による至近側端から無限遠側端の被写体距離に対して合焦する領域である。すなわち光学使用領域AR1では、ズームレンズ群及びフォーカスレンズ群がそれぞれ撮像に有効な撮像有効状態にある。
【0046】
光学使用領域AR1での制御はフィードバック制御が行われ、ズーミング中の駆動音などの品位や駆動の位置精度が考慮された設定がなされる。高速ズーミング時や電源OFF時に干渉したような場合でない限り、通常はこの光学使用領域内での制御がなされる。この領域での指令値は、現在のズーム位置と直前の物体距離あるいはカメラからの指令値から決定される位置である。
【0047】
次に干渉領域AR4について説明する。
干渉領域は
図8(
図13)において、例えば広角端で、最大干渉量Aと表現していた範囲であり、実際にこの範囲では4群鏡筒122と5群鏡筒127との干渉が発生している。すなわち、4群鏡筒122の像側の移動限界が5群鏡筒127で規制されている状態である。
図8(
図13)においては領域と示しているが、この範囲の内部に4群鏡筒122が位置する状態にはならず、実際は
図13に示された干渉領域AR4の物体側の境界である曲線M上に位置した状態となり、ラックバネ132が圧縮した退避状態となっている。つまり、干渉領域AR4の領域においては、4群鏡筒122は曲線M上にしか位置することができないが、干渉領域AR4のそれぞれのズーム位置において、ラック131はラックバネ132が圧縮することによって、構造的な像側端位置までの移動が可能である。そのようにラックバネ132が圧縮した状態が、干渉領域AR4の曲線Mより像側の領域に対応する。
【0048】
この状態においては、4群鏡筒122は5群鏡筒127が位置しているため、曲線Mを越えて像側に動くことはできない。従って、指令信号に対する実際の位置の偏差に基づき制御するフィードバック制御では発振するため、フィードフォワード制御器での制御を行う。あるいは、干渉領域AR4内で駆動する場合にはフィードバック制御の偏差入力の上限値を設けても良い。あるいは、干渉領域AR4内で駆動する場合には、フィードバック制御における、4群鏡筒122の駆動の速度や加速度を、干渉領域AR4以外の領域よりも低速度や低加速度となるように、または最高速度が小さくなるように制御してもよい。
【0049】
この範囲にあるのは、高速ズーミングにより干渉した場合や電源OFF時に干渉したような場合などが該当するが、前述の通り光学使用領域AR1側へ移動するように制御され干渉回避領域AR2へと入る。
【0050】
次に干渉回避領域AR2について説明する。干渉回避領域AR2では前述した通り、ズーミングが高速にされた場合には極力干渉領域AR4に入らないように制御する。言い換えると、高速ズーミングがなされた場合でも、4群鏡筒122と5群鏡筒127との衝突(干渉、接触)を避けるように制御する。すなわち干渉回避領域AR2では、4群鏡筒122と5群鏡筒127との接触が回避される接触回避状態にある。フィードバック制御器のフィードバックゲインを光学使用領域AR1よりも上げたり、最高速度、加速度を上げたりする制御がなされる。
【0051】
このときの指令位置は光学使用領域AR1での現在のズーム位置に対応する光学使用領域AR1の境界値となり、高速ズーミングで光学使用領域AR1側から干渉回避領域AR2に入った場合は上記指令値を元に、光学使用領域AR1に戻るよう制御される。電源ON時に干渉回避領域AR2の位置にあった場合や干渉領域AR4側から干渉回避領域AR2に入った場合も同様の指令値である。
【0052】
最後に、干渉直前領域AR3での制御について説明する。干渉直前領域AR3での制御は、干渉回避領域AR2(干渉回避領域側)から干渉直前領域AR3に入るか、干渉領域AR4から干渉直前領域AR3に入るかによって制御方法が異なる。
【0053】
干渉直前領域AR3は、干渉回避領域AR2にて極力干渉が発生しないように制御をしたとしても干渉領域AR4(曲線M)に入り込んでしまう場合の、衝突時の音や、駆動音や撮像画像の品位の低下を緩和するための制御を行う領域である。すなわち干渉直前領域AR3では、4群鏡筒122と5群鏡筒127とが接触する直前の接触直前状態にある。干渉直前領域AR3は干渉領域AR4側から(干渉領域AR4を経由して)入るか、干渉回避領域AR2側から(干渉回避領域AR2を経由して)入るかによって具体的な制御が異なる。
【0054】
まず、干渉回避領域AR2側から干渉直前領域AR3に入る場合には上述の目的となり、具体的な制御としては、フィードバック制御器のフィードバックゲインを光学使用領域AR1よりも小さくする、あるいはフィードバック制御の偏差の上限値を設けても良い。あるいは、フィードフォワード制御器により光学使用領域AR1に移動する駆動力を発生させたり、同制御器により駆動力を0に近づけたりするような制御をしてもよい。
【0055】
一方、干渉領域側AR4から入る場合には、フィードバック制御器により現在のズーム位置に対応する光学領域の境界値もしくはカメラから入力された指令位置に動かす。あるいはフィードフォワード制御器により、光学使用領域側の領域(例えば、光学使用領域AR1、干渉回避領域AR2)に入るような駆動力を発生させても良い。電源ON時にこの位置にあった場合は上記と同じである。
【0056】
以上のような制御を行うことにより、電気的な駆動手段を用いて移動するレンズ群と手動又は外部駆動手段により移動するレンズ群の移動範囲が重なる範囲を有するレンズ装置において、駆動精度の向上と、駆動音品位及び撮像品位の向上を実現するコンパクトなレンズ装置を提供することが可能となる。
【0057】
以上、説明した内容をわかりやすくするために、望遠端状態で高速なズーミングが行われたときの制御の変更についていくつかの例を用いて、下記に説明する。便宜上、望遠端から広角端までを複数の異なる速度でズームリング105が回転された場合について
図13を用いて説明する。
【0058】
まず望遠端の位置Ptにおいて高速なズーミングがなされ、ズーム位置とフォーカス位置が位置P1まで移動したとする。
【0059】
物体距離が変わらない場合には、本来位置P2まで移動すべきであるが、早くズーミングされた場合には可動部126(4群鏡筒122)の駆動速度が追いつかず位置P1まで移動する。
【0060】
位置P1にきた段階で干渉回避領域AR2に入るため、フィードバック制御器の制御パラメータが変更されフォーカス速度を上げることで干渉を回避し、位置P3まで移動、光学使用領域AR1に戻り位置Pwに至る。
【0061】
さらに高速なズーミングがなされた場合について次に説明する。
望遠端の位置Ptから高速なズーミングがなされたことで上述の説明の軌跡よりも遅れの大きい軌跡を辿って位置P4まで移動する。ここから干渉回避領域AR2に入るためフォーカス速度を上げることで回避しようとするが、可動部126(4群鏡筒122)の駆動速度が追いつかず位置P5まで移動し、干渉直前領域AR3に入る。干渉直前領域AR3ではフィードバックゲインを小さくするか、偏差の上限を設けるか、あるいはフィードバック制御からフィードフォワード制御に切り替えるなどの制御の変更を行う。これにより、衝突回避を優先する制御から、衝突に起因する発振回避を優先し、衝突音と振動を低減することができる。その状態で、4群鏡筒122と5群鏡筒127が衝突する(位置P6)。4群鏡筒122は5群鏡筒127で押されて位置P7まで移動し、ズーム位置は広角端となる。
【0062】
この状態では干渉状態になっているので干渉直前領域AR3に移動するような駆動力が4群鏡筒122に与えられて位置P8まで移動し、干渉回避領域AR2に入る。さらに位置P9まで移動して光学使用領域AR1に入り、フィードバック制御の制御パラメータが変わるか、フィードフォワード制御に変わることで本来のズーミングで移動しようとした位置Pwの位置となる。
【0063】
このようにズーム位置とフォーカス位置を検出することにより、ズーム位置とフォーカス位置とに基づいて制御手段により領域を判定し、判定結果の領域に基づいて制御を変更する。これにより、4群鏡筒122(フォーカスレンズ群)と5群鏡筒127(ズームレンズ群)の干渉を極力回避し、また回避できない場合には、発振を回避し、衝突時の駆動音(衝突音)や振動を低減し、撮像画像の品位を向上させることが可能となる。
【0064】
本実施例では、ズーム位置とフォーカスレンズの光軸方向の位置から(位置検出手段の検出結果に基づいて)決定される線図を元に制御方法を変更することについて説明したが、これだけに限らない。
【0065】
例えば、位置だけではなくズーム速度(ズームレンズ群の移動速度)に基づいて領域自体を変更してもよく、例えばズーム速度が速い場合には、干渉直前領域AR3をより広くとったり速度に応じて干渉回避領域での制御パラメータを変更したりしても良い。
【0066】
また、本実施例では領域を光学使用領域AR1、干渉回避領域AR2、干渉直前領域AR3、干渉領域AR4に分けて制御を変えることを説明したがこの分け方に限ったものではない。
【0067】
例えば、干渉領域AR4と、それ以外の領域としての非干渉領域のように、領域を二つに分けて、非干渉領域でのフィードバック制御と、干渉領域AR4でのフィードフォワード制御とを切り替えるだけであっても良い。この場合、非干渉領域は、光学使用領域AR1、干渉回避領域AR2、干渉直前領域AR3をまとめて一つの領域として取り扱うことになる。すなわち非干渉領域では、4群鏡筒122と5群鏡筒127とが接触していない非接触状態にある。この場合は、光学使用領域AR1が含まれる側である非干渉領域をフィードバック制御、干渉が発生している側(干渉領域AR4)をフィードフォワード制御とすることにより干渉時に発振による大きな駆動音や衝突音が発生することを防止することができる。
【0068】
さらには、領域を4つよりも多い分割としてもよく、干渉直前領域を2つに分け、制御パラメータを変更することでさらなる品位向上させることも可能である。すなわち、ズーム位置とフォーカス位置との関係に基づいて定義される2以上の領域に基づき制御を変更することでさらなる品位向上させることが可能である。
【0069】
本実施例においては、
図8におけるAの範囲で示したように、電動駆動する4群鏡筒122の光軸方向において撮像面側に干渉領域が存在しているが、電動駆動する4群鏡筒122の物体側に干渉領域が存在するようにしてもよい。また、撮像面側と物体側の両方に干渉領域が存在していてもよい。
【0070】
本実施例においては、フォーカスレンズを駆動するために、超音波モータを採用しているが、ステップモータ等の駆動手段を採用しても同様の効果を奏する。
【0071】
実施例のレンズ装置100と、該レンズ装置100により形成された像を撮る撮像素子201を有するカメラ装置200とを有する撮像装置300(
図14)により、本発明の効果を享受する撮像装置を実現することができる。
【0072】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0073】
106 ・・・・ ズームセンサ(第1の検出手段)
107 ・・・・ 制御基板(制御手段)
122 ・・・・ 4群鏡筒(第2の保持部材)
124 ・・・・ リニア超音波モータ(駆動手段)
125 ・・・・ 固定部(駆動手段)
126 ・・・・ 可動部(駆動手段)
127 ・・・・ 5群鏡筒(第1の保持部材)
131 ・・・・ ラック(伝達部材)
132 ・・・・ ラックバネ(付勢部材)
134 ・・・・ スケール(第2の検出手段)
L4 ・・・・ 第4レンズ群(第2のレンズ群)
L5 ・・・・ 第5レンズ群(第1のレンズ群)