IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岸原工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図1
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図2
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図3
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図4
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図5
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図6
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図7
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図8
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図9
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図10
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図11
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図12
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図13
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図14
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図15
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図16
  • 特開-靴用踵芯およびこれを備えた靴 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175141
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】靴用踵芯およびこれを備えた靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 11/00 20060101AFI20241210BHJP
   A43B 23/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A43B11/00
A43B23/02 101B
A43B23/02 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024167987
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2023075620の分割
【原出願日】2023-05-01
(71)【出願人】
【識別番号】500239627
【氏名又は名称】岸原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岸原 章浩
(57)【要約】
【課題】滑り台の機能で履きやすくした靴の使用感や外観を良好にする。
【解決手段】靴11の踵に内蔵する靴用踵芯31について、人体の踵を包む形状に湾曲した下部支持部32と、下部支持部32より上で人体の踵を受ける上部受け部33とを備えるとともに、剛性をもたせる。上部受け部33の上部における左右両縁に、前方斜め下に向けて傾く傾斜案内部35を形成し、外周の縁部の少なくとも上部受け部33に、縁部より内側の中央部よりも肉厚の薄い薄肉部36を形成して、厚み方向の端に角が出ないようにする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の踵を包む形状に湾曲した下部支持部と、前記下部支持部より上で人体の踵を受ける上部受け部とを備えるとともに、剛性を有し、
前記上部受け部の上部における左右両縁に、前方斜め下に向けて傾く傾斜案内部が形成され、
外周の縁部の少なくとも前記上部受け部の肉厚が、前記縁部より内側の中央部よりも薄い
靴用踵芯。
【請求項2】
肉厚が薄い前記縁部が、端に向けて徐々に肉厚を薄くする肉厚低減面により形成された
請求項1に記載の靴用踵芯。
【請求項3】
肉厚が薄い前記縁部が前記肉厚低減面を内側面に有している
請求項2に記載の靴用踵芯。
【請求項4】
肉厚が薄い前記縁部が全周に形成された
請求項1または請求項2に記載の靴用踵芯。
【請求項5】
前記下部支持部の下端における左右方向中間部に、上方へ切り込む切欠き部が形成された
請求項1または請求項2に記載の靴用踵芯。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の靴用踵芯を備えた
靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば運動靴や短靴などのように踵部を有する靴、特に履きやすくした靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かがんだりせずとも履けるようにする靴が下記特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1は、靴べらを靴の踵の内面に接着などによって取り付けるというものである。この構成では、靴べらが踵に備わっているので、靴に入ろうとする足は、甲部と、足裏前部が靴の内面に接しながら前方に進み、このとき、足の踵部が靴べらの傾斜部に当たって、靴の踵部を後方に押し広げる。これによって、足が靴に滑り込むということである。つまり、靴べらは足を入れるときに靴の踵部の後面を後方に押し下げて、つまり変形させて履き口を広げるとともに、つま先を前方へ差し込むことによって、足を靴の中に滑り込ませる。
【0004】
特許文献2には、靴べら機能付き靴が開示されている。この靴は、踵部の上方に、斜め後ろに延びる踵案内部が連続して設けられている。その踵部および踵案内部は芯材を備えている。この構成では、履き口から足を差し込み、この踵案内部に足の踵が当接すると、靴べらの機能により、足が靴内に簡単に入り込み、靴を履くことができる、とされている。靴べらの機能を有しているので、特許文献2の靴は、特許文献1の内容と同様、靴の踵部を後方へ広げて、または下げて、足の甲から踵を入れやすくする構成である。
【0005】
しかし、これらのように靴の踵部を後方へ広げたり下げたりして靴を履くには、踵部の変形や、変形させたときの反発力があるので、実際には履くのが難しいことが多々ある。すなわち、履き口を後方に広げつつ、つま先を差し入れて足が靴に入りやすくする構成では、履く動作に際しては、靴の踵部の変形と、足を差し込む力が必要であり、足を差し込むには力と方向制御が不可欠である。このような動作は、踵部の変形に伴う反発力が生じるため、健常者には簡単そうに思えても、足に力を入れられない老人等には、なかなか容易なことではない。
【0006】
他方、下記特許文献3には、月型芯(靴用踵芯)の特異な形状と剛性で踵の荷重を支えて滑らせるという靴が開示されている。つまり、単に足を入れたり、靴を足に嵌めたりするだけで、靴の踵部の変形を不要にして履けるというものである。履く本人は靴に対して立った状態で、または座った状態で足を入れればよく、また介助者であれば足に靴を嵌めるように移動させればよく、この動作と同時に踵部を後方へ広げたりする必要性はないので、動作は簡単である。
【0007】
しかし、靴用踵芯に剛性をもたせる構造であり、外周の部の角が立っていた。材料に汎用プラスチックを用いる場合、靴用踵芯にはある程度の厚さが必要であるが、靴用踵芯の上部における外周の縁部まである程度の厚みを有する角が立った形状であると、直接ではないにしても履く時に踵の裏がその角に当たることになる。このため、感触が良くないことがある。そのうえ、踵部が異物を備えたような外観となって、踵部が見劣りすることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-344396号公報
【特許文献2】登録実用新案第3195071号公報
【特許文献3】特開2022-139151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、履きやすい靴の使用感や外観を良好にすることを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、この発明は下記の靴用踵芯を提供する。すなわち、靴用踵芯は、人体の踵を包む形状に湾曲した下部支持部と、下部支持部より上で人体の踵を受ける上部受け部とを備えるとともに、剛性を有している。上部受け部の上部における左右両縁に、前方斜め下に向けて傾く傾斜案内部が形成され、外周の縁部の少なくとも上部受け部の肉厚が、縁部より内側の中央部よりも薄く形成されている。
【0011】
この構成では、少なくとも上部受け部における中央部よりも厚みの薄い縁部が、厚み方向の端に目立った角ができない形状のため、履く時の踵に対する当たりやわらげる。同時にその縁部は、靴の踵部に内蔵された際に、被覆材に隠蔽されて外観上わかるような角が出ることを抑制する。さらに、厚みの薄い縁部は、剛性を有する靴用踵芯のなかでも、わずかながら変形を可能とするので、この点からも踵に対する当たりをやわらげ、また、靴製造における吊り込み作業をおこないやすくする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、少なくとも上部受け部における縁部の厚みを中央部よりも薄くした構成であるので、足裏に対する当たりを緩和して感触を良くし、外観の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】靴の斜視図。
図2】靴用踵芯の斜視図。
図3】靴用踵芯の正面図。
図4】靴用踵芯の平面図。
図5】靴用踵芯の底面図。
図6図3のA-A断面図。
図7図6のB-B断面図。
図8】縁部の薄肉部の形状例を示す模式図。
図9】肉厚の他の例を示す切断端面図。
図10】履く時の動作を示す説明図。
図11】履く時の動作を示す説明図。
図12】作用状態を示す説明図。
図13】他の例に係る靴用踵芯の斜視図。
図14図13に示した靴用踵芯の正面図、正面図中央断面図および底面図。
図15】靴用踵芯の他の形状例を示す外観図と断面図。
図16】靴用踵芯の他の形状例を示す外観図と断面図。
図17】靴用踵芯の他の形状例を示す外観図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
この発明は、履く動作が簡単な靴11に関するものであり、ここでいう靴11は、図1に示したようにソール12とアッパー13で構成されている。アッパー13の後端に踵部14を有したものである。靴11は、図1に示したような短靴のほか、運動靴や、その他の形態の靴であってもよい。
【0016】
図1は、左右一対の靴11のうち右方のみを後方なめ上から見た斜視図である。足を支える土台となるソール12の上に固定されて足を包むアッパー13は、足を差し入れる履き口15を後方に有している。履き口15よりも前側の部分に足のつま先側が収められ、履き口15よりも後ろ側の部分、つまり踵部14が足の踵を包む。
【0017】
前述したように履く動作の簡単化をはかる靴11は、踵部14の上端に上方斜め後方に向けて延びる硬質の突出部16を有している。突出部16はアッパー13の一部であり、踵部14と一体である。
【0018】
突出部16と踵部14は、通常の靴の踵部とは異なり、踏んでも容易に潰れたり折れたりしない剛性を有している。このような剛性は、靴11の踵部14を構成する内装材14aと外装材14bとの間に靴用踵芯31を挟み込むことで得られる。
【0019】
靴用踵芯31は、たとえばポリプロピレンや、ABS、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニルなどの合成樹脂で、三次元立体形状に湾曲したシート状に形成される。材料の硬さと湾曲形状によって剛性を得ている。
【0020】
図2に、靴用踵芯31の前方斜め上から見た斜視図を、図3にその正面図、図4に平面図、図5に底面図、図6に正面図中央縦断面図(図3のA-A断面図)を示す。これらの図に示すように、靴用踵芯31は、人体の踵を包む形状に湾曲した下部支持部32と、下部支持部32より上で人体の踵を受ける上部受け部33とを備えており、前述したような剛性を有している。
【0021】
下部支持部32は、図4に示したように平面視形状が両端をやや開いたU字状である。側面視において後面が後方に突出した丸みを有する下部湾曲部32aと、下部湾曲部32aより上で下部湾曲部32aとは逆に前方に突出した丸みを有する上部湾曲部32bを、下から順に有している。上部湾曲部32bは、下部湾曲部32aよりも湾曲が小さく、下部支持部32は全体として人体の踵に対応するような形状である。
【0022】
下部支持部32の側面視形状は、図6に見られるように、下端ほど前方に突出するおおよそ台形状であり、下端面における左右の両端が靴用踵芯31のなかで最も前方に位置している。下部支持部32の下端には、側面視で一直線をなす接地辺34を有しており、接地辺34を水平または靴11に内蔵したときの水平に準じた姿勢にしたときに、人体の踵を包む姿勢となるように形成されている。下部支持部32の下端部は、全体においてややすぼまっており、接地辺34を面で支持したときに安定する形状である。
【0023】
上部受け部33は、図4に示したように平面視形状が両端をやや開いたU字状であり、下部支持部32の平面視形状を縮小したような形状である。上部受け部33の平面視での大きさは、人体の踵の平面視形状よりも小さい。
【0024】
また上部受け部33は、側面視において、後面が、下部支持部32の上部湾曲部32bから連続して上方斜め後方に湾曲する基部湾曲部33aと、基部湾曲部33aから上方斜め後方に向けておおよそ直線状に延びる延長部33bを有している。延長部33bの傾斜角度αは、垂直に対して15°程度であるとよい。10°~20°、または25°くらいであってもよい。
【0025】
図7は、図6におけるB-B断面図であり、下部支持部32の上部湾曲部32bから上部受け部33の基部湾曲部33aに連なる部分における、最も前方に位置する部分の横断面図である。この断面図で示す部分は、人体の踵より上の踝に近い高さに対応する部分であり、踵をそれより下に収める。
【0026】
上部受け部33の側面視形状は、図6に見られるように、傾斜角度αの傾斜が付いているぶん後方に傾いたおおよそ扇形形状である。上部受け部33の上方への長さは、傾斜角度αによっても異なるが、十分な剛性を有し、踵で踏まれても靴用踵芯31の安定性が損なわれない長さ、また外観も考慮して徒に長すぎないように設定される。このとき、上部受け部33における後部上端Pの前後方向の位置も考慮するとよい。図6に示したように、上部受け部33における後部上端Pの前後方向の位置は、下部支持部32における下部湾曲部32aの最も後方に位置する部位Qと対応するほうが、大きく相違している場合よりも、安定性と履きやすさの両立をはかれる。
【0027】
上部受け部33の正面視形状と背面視形状は、図3に見られるように、下方ほど左右に広がる形状である。
【0028】
このような下部支持部32と上部受け部33は、段差なしに滑らかに連続している。
【0029】
そして、上部受け部33の上部における左右両縁、すなわち上部受け部33の上部に、前方斜め下に向けて傾く傾斜案内部35が形成されている。傾斜案内部35は、前述のように平面視U字状であるとともに、側面視扇形形状であるので、うねるような形状であり、下部支持部32の左右両縁に連続している。
【0030】
全体がこのような形状の靴用踵芯31は、所望の剛性が得られるような厚み形成されるが、外周の縁部の少なくとも上部受け部33の肉厚が、縁部より内側の中央部よりも薄く形成されている。図2図7の靴用踵芯31は、下端部を含む全周の縁部の厚みを薄くした例である。すなわち、図2に示した靴用踵芯31の外周を形作る輪郭線における内側の適宜範囲の部分が薄肉部36である。
【0031】
厚みを薄くする態様、つまり薄肉部36を形成する態様には、段差をつけて薄くすること、段差をつけずに薄くすることがある。応力集中を回避する点では、段差をつけないほうがよい。
【0032】
このため、図示例では、肉厚が薄い縁部(薄肉部36)を、端に向けて徐々に肉厚を薄くする肉厚低減面36aによって形成している。
【0033】
この肉厚低減面36aの形成にも複数の態様があり、模式図である図8に示したように大きく3種類ある。その一つは、(a),(b)に示したように、肉厚低減面36aを片面に形成する構造である。図面左側を内側面、右側を外側面とすると、(a)は肉厚低減面36aを内側面に形成した例となる。(a)のように肉厚低減面36aが内側面にあると、上部受け部33が上部後方へ反るような形状であるため、角度を緩く、かつ面を広くできるので、踵の当たりをよりやさしくできる。
【0034】
ほかに、(c)に示したように、肉厚低減面36aを内側面と外側面の両面に形成する例がある。
【0035】
また、肉厚低減面36aの態様について、(a)~(c)に示したように、平面とすることも、(d)のように膨らむ湾曲形状とすることも、(e)のように凹む湾曲形状とすることもできる。
【0036】
なお、縁部の面が肉厚低減面36aであるか否かは、湾曲面で構成される靴用踵芯31の特性上、面の継承との関係において相対的なものである。このため、必ずしも明確に区別できるものではない。
【0037】
図示は省略するが、稜線部分は面取りをするとよい。
【0038】
また、B-B切断部端面図に相当する断面形状の他の例を示す図9に見られるように、縁部以外の中央部においても、厚みに差をつけてもよい。図9の例では、左右方向中央側部分ほど厚みを厚くしている。
【0039】
なお、図2図7の例では、薄肉部36の端が線で描けるものを示したが、薄肉部36の端は適宜の厚みを有するものであってもよい。
【0040】
以上のような構成の靴用踵芯31を備えた靴11は、内装材14aと外装材14bを靴用踵芯31に沿って取り付けることで、踵部14の上部の突出部16が、靴用踵芯31の上部受け部33に均等に肉をつけたような形状となる。
【0041】
このような靴11は、図10図11に示したようにして履くことができる。
【0042】
すなわち、立った姿勢で履く場合には、図10に示したように、アッパー13の履き口15に足先を差し入れて、踵を落とすだけで容易に履くことができる。座った姿勢で履く場合には、図11に示したように、足先に靴11を差し込み、ソール12を足裏に向けて押し付けるとよい。
【0043】
いずれの場合も、図12に示したように、靴用踵芯31は、下端の接地辺34を接地させた状態であり、靴用踵芯31自体の剛性で上部受け部33にかかる荷重を支持する。そして、人体の踵が内装材14aを介して上部受け部33を押圧しても、靴用踵芯31は潰れるような変形をすることなく、傾斜案内部35によって踵を前方に滑らせて、足が靴内に入るのを促す。踵部14の上の突出部16が滑り台として機能し、踵がソール12の踵部に落ちると、足は靴内に収まる。
【0044】
このような履く動作において、靴用踵芯31の縁部は薄肉部36で構成されており、厚み方向の端に目立った角がないので、踵に対する当たりはやわらかく、良好な感触が得られる。また、その縁部は、靴11の踵部14に内蔵された際に、内装材14aや外装材14bに隠蔽されて外観上わかるような角が出ることがないので、外観が損なわれることを防止できる。
【0045】
このような効果をもたらす薄肉部36は、肉厚低減面36aで構成し、しかも肉厚低減面36aは段差なしで形成されているので、剛性を確保しつつ、上記のような効果を達成することができる。
【0046】
しかも、厚みの薄い縁部(薄肉部36)は、剛性を有する靴用踵芯31のなかでも、わずかながら変形を可能とするので、この点からも踵に対する当たりをやわらげられる。このため、履く時の感触をより一層向上できる。
【0047】
さらには、薄肉部36は下端部を含む全周に形成されているので、剛性を有する靴用踵芯31をアッパー13に内蔵する靴製造において、靴用踵芯31の下端部においても多少の変形が可能となる。この結果、吊り込み作業がおこないやすい。
【0048】
この点については、図13の斜視図に示したように、下部支持部32の下端における左右方向中間部に、上方へ切り込む切欠き部37を形成するとよい。切欠き部37は三角形状であるのが好ましい。図14の(a)はその正面図であり、(b)は正面図中央断面図、(c)は底面図である。このように、切欠き部37を設けると、靴用踵芯31の変形の自由度が増して、吊り込み作業がより一層容易になり、皺のない美麗なアッパー13に仕上げることができる。
【0049】
以上の構成は、この発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0050】
たとえば、靴用踵芯31の下端の接地辺34は一直線ではなく、段差があっても湾曲していてもよい。
【0051】
図15図16図17は、靴用踵芯31の他の形状例を示している。これらの図における(a)~(d)は見る方向を違えた斜視図であり、(e)は平面図、(f)は正面図、(g)は底面図、(h)は右側面図である。これらの外観を締めずに加えて、断面図を描いている。図15の(i)は、(h)のC-C切断部端面図であり、(j)は正面図中央縦断面図、(k)は(e)のD-D断面図である。図16の(i)は、(h)のE-E切断部端面図であり、(j)は正面図中央縦断面図、(k)は(e)のF-F断面図である。図17の(i)は、(h)のG-G切断部端面図であり、(j)は正面図中央縦断面図である。
【0052】
図15図16に示した靴用踵芯31は、前述した図2等に示した靴用踵芯31とは異なり、下部支持部32の前方への突出を抑えている。下部支持部32の下端について、図15の場合は、一直線に形成されているが、図16の場合は、側面視においてわずかに傾斜しており、正面視では、湾曲しているように見える。加えて、(e)や(k)などの図からわかるように、下部支持部32と上部受け部33の間の括れ形状とその周辺の湾曲形状は、図15よりも図16のほうが相対的に大きい。
【0053】
図17の靴用踵芯31は、前述した図2等に示した靴用踵芯31のどうように、下部支持部32の前方への突出が顕著な形状であるが、(e)に見られるように、上部受け部33の後方への突出を下部支持部32の後端よりも前方にとどめている。また、上部受け部33の角度は、図2等に示した例よりもやや緩やかにしてある。
【0054】
なお、図15図17の例は下部支持部32の下端に端面を有しているが、下端の縁部に薄肉部36を形成してもよい。また切欠き部37を有しているが、切欠き部37は省略してもよい。
【符号の説明】
【0055】
11…靴
31…靴用踵芯
32…下部支持部
33…上部受け部
35…傾斜案内部
36…薄肉部
36a…肉厚低減面
37…切欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17