(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175144
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】治療用途の腫瘍浸潤性リンパ球を培養するための改善プロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20241210BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20241210BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/0783
C07K16/28
A61P35/00
A61K39/395 T
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024168495
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2022538307の分割
【原出願日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】19217356.5
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522245167
【氏名又は名称】セービーオ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ウルレク コーデス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ フリーセ
(72)【発明者】
【氏名】ニゴライ キアゲテアプ-ムラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ヒーゲ
(57)【要約】
【課題】本発明は、消耗した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を生体外で再活性化することを目的とする。
【解決手段】再活性化は、腫瘍断片を含む切除されたTILをチェックポイント阻害剤とともに共培養すること、T細胞の消耗を回復させることが分かっている他のインターロイキンでこのTILを刺激すること、かつ/あるいは(IL-10などの)制御性T細胞分泌因子の効果を阻害して、それによって消耗したT細胞が現状で構築されているTIL増殖手順よりも速くかつより多くの数まで増殖できる好ましい腫瘍微小環境(TME)を形成することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を患う対象の治療における使用のための、増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む医薬組成物であって、前記治療は、
哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
IL-2および1種又は複数のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での前記第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程、ここで、前記1種又は複数のTME刺激剤はイピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の少なくとも1種又は複数を含む;
前記第2のTIL集団の前記細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および
非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、前記T細胞の治療用集団を前記哺乳動物に投与する工程を含み、それにより前記哺乳動物での癌の退縮が促進される、医薬組成物。
【請求項2】
癌を患う対象内で癌の退縮の促進における使用のための、増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む医薬組成物であって、前記退縮は、
哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
IL-2および1種又は複数のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での前記第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程、ここで、前記1種又は複数のTME刺激剤はイピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の少なくとも1種又は複数を含む;
前記第2のTIL集団の前記細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および
非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、前記T細胞の治療用集団を前記哺乳動物に投与する工程を含み、それにより哺乳動物での癌の退縮が促進される、医薬組成物。
【請求項3】
腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖させる方法であって、
(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
(b)IL-2および1種又は複数のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での前記第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程、ここで、前記1種又は複数のTME刺激剤はイピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の少なくとも1種又は複数を含む;および
(c)前記第2のTIL集団の前記細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む、方法。
【請求項4】
前記1種又は複数のTME刺激剤は少なくとも、
ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群から選択される群Aの物質の1種又は複数、並びに
イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の1種又は複数
を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ウレルマブおよびウトミルマブからなる群から選択される群Jの物質の1種又は複数を更に含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
群Jは、抗CD3物質と組み合わせて使用される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗CD3物質はOKT3である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記群Aの物質は、ペンブロリズマブである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記群Bの物質は、イピリムマブである、請求項1、2、及び4~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記群Jの物質は、ウレルマブである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記物質の濃度は、0.1 μg/mL~300 μg/mLである、請求項1、2、及び4~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記工程(a)~(b)は、約7日~約28日の期間内に実施される、請求項1、2、及び4~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記工程(c)は、約7日~約21日の期間内に実施される、請求項1、2、及び4~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記T細胞の治療用集団を使用して、乳がん、腎細胞がん、膀胱がん、黒色腫、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、ホジキンリンパ腫、膵がん、肝がん、および肉腫からなる群から選択される癌種を治療する、請求項1、2、及び4~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記工程(c)は、1×107~1×1012個の細胞を生成する、請求項1、2、及び4~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗CD3抗体はOKT3である、請求項1、2、及び4~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記複数のTME刺激剤は、一緒に添加される、あるいは時間の経過とともに、すなわち1日間隔で、または2、3、4、5、6、または7日間間隔で添加される、請求項1、2、及び4~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗原提示細胞(APC)は、同種異系フィーダー細胞、PBMCs、及び人工抗原提示フィーダー細胞からなる群から選択される、請求項1、2、及び4~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記自己T細胞を培養する工程はさらに、切除された腫瘍を複数の腫瘍断片に処理することを含む、請求項1、2、及び4~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記断片のサイズは、約1~10mm3である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項3に記載の方法によって取得される腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団であって、1×108~5×1011個の細胞である前記集団。
【請求項22】
IL-2および1種又は複数のTME刺激剤を含むTILの集団を含む、医薬組成物であって、
前記1種又は複数のTME刺激剤は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の少なくとも1種又は複数を含み、
前記集団は1×108~5×1011個の細胞である、医薬組成物。
【請求項23】
IL-2および1種又は複数のTME刺激剤を含むTILの集団を含む、医薬組成物であって、
前記1種又は複数のTME刺激剤は、少なくとも、
ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群から選択される群Aの物質の1種又は複数、並びに
イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群から選択される群Bの物質の1種又は複数
を含み、
前記集団は1×108~5×1011個の細胞である、医薬組成物。
【請求項24】
ウレルマブおよびウトミルマブからなる群から選択される群Jの物質の少なくとも1種又は複数を更に含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を生体外で再活性化することを目的とし、この再活性化は、腫瘍断片を含む切除されたTILを免疫チェックポイント阻害剤(ICI)などの腫瘍微小環境(TME)刺激剤とともに共培養すること、T細胞の消耗を回復させることが分かっている他のインターロイキンによってこのTILを刺激すること、かつ/あるいは制御性T細胞分泌因子の効果を阻害して(例えばIL-10を阻害して)、それによって消耗したT細胞が、現状で構築されているTIL増殖手順よりも速くかつより多くの数まで増殖できる好ましい腫瘍微小環境を形成することを含む。
【背景技術】
【0002】
腫瘍浸潤リンパ球は、CTLA-4およびPD-1/PD-L1に対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の使用などの免疫療法を受けている癌患者での予後および進行を抑えた生存率の改善に関連している。
【0003】
しかしながら、その他の多くの因子が免疫応答性の発現低下において腫瘍微小環境に関与しているように思われるので、一部の患者のみがそのような治療に対して永続的な長期応答性をまだ保有するに過ぎない。重要な因子のうちの1種は、抗原特異的T細胞の物理的な排除および/または機能不全をもたらすT細胞の消耗であるように思われる。この消耗現象に関与する因子として、腫瘍細胞、リンパ球、および単核細胞に発現される表面マーカー、および腫瘍微小環境(TME)中の制御性T細胞およびNK細胞から分泌される可溶性分子が挙げられる。但しTME中でインターフェロンγやIL-2などの刺激因子が欠如しているのもまた明白である。
【0004】
T細胞の消耗の反転は、単剤療法としてあるいは既に構築された療法との組合せのいずれかとして、新規部類のICI開発での重要な標的となる。但しこれらの標的は自己免疫応答性を回避する免疫耐性の誘発を担う場合が多いので、阻害剤の全身投与は深刻な副作用を引き起こす可能性がある。さらにIL-2などのT細胞刺激分子を投与すると、深刻で時には致命的な副作用を引き起こす可能性があるために、熟練した臨床医が管理する必要がある。薬剤候補を腫瘍内に局所的に投与して、それによって全身性の副作用を回避する可能性のあるいくつかの手法が取られてきた。しかし、多くの転移性患者では癌細胞が全身に亘って分布しているので、このような状況下でこの手法が成功する可能性は疑問視されることがある。
【0005】
腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)療法の使用は、転移性黒色腫、頭頸部がん、および子宮頸がんなどの種々の悪性腫瘍患者に最大55%の客観的応答率、かつ最大20%の患者には完全な応答性を伴う顕著な臨床的利益を示している。要するにこの種の治療法は、切除された腫瘍からの断片をIL-2、抗CD3抗体、およびフィーダー細胞でまず刺激して、それによってリンパ球枯渇療法を受けている患者にT細胞を再投与する前に、これらの細胞を数十億個まで成長させることによって、自己Tリンパ球の生体外での増殖を活用して、その後に腫瘍の退縮が促進される。
【0006】
TIL療法は費用が高くかつ時間を必要とする。従って現状の方法を最適化し、TILの増殖期間を短縮し、増殖率を高め、かつより好ましい表現型を達成する方法を特定することは有益であると思われる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖して哺乳動物内の癌の退縮を促進する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物内の癌の退縮が促進される。
【0008】
本発明のさらなる側面は、増殖させた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の投与を含む、癌を患う対象を治療する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物内の癌の退縮が促進される。
【0009】
本発明の別の側面は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0010】
1つ以上の実施態様では、1種以上のTME刺激剤は、T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質;T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現する受容体を刺激かつ/あるいは促進できる物質;T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質;および制御性T細胞を下方制御かつ/あるいは消耗させて、それによって生体外でのT細胞増殖を促進できる物質からなる群から選択される。
【0011】
1つ以上の実施態様では、1種以上のTME刺激剤は、1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤、例えば抗PD1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗LAG3、抗A2AR、抗B7-H3、抗B7-H4、抗BTLA、抗IDO、抗HVEM、抗IDO、抗TDO、抗KIR、抗NOX2、抗TIM3、抗ガレクチン9、抗VISTA、抗SIGLEC7/9であり、必要に応じて1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤はまた第2の増殖に添加される。
【0012】
1つ以上の実施態様では、T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、A:T細胞表面のPD-1受容体を介して作用する物質、B:T細胞表面のCTLA-4受容体を介して作用する物質、C:T細胞表面のLAG-3受容体を介して作用する物質、D:T細胞表面のTIGIT/CD226受容体を介して作用する物質、E:T細胞表面のKIR受容体を介して作用する物質、F:T細胞表面のTIM-3受容体を介して作用する物質、G:T細胞表面のBTLA受容体を介して作用する物質、およびH:T細胞表面のA2aR受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。
【0013】
1つ以上の実施態様では、A群の物質は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群からの1種以上から選択される。
【0014】
1つ以上の実施態様では、B群の物質は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、C群の物質は、レラトリマブ、エフチラギモα、およびsym022からなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、D群の物質はチラゴルマブである。1つ以上の実施態様では、E群の物質はリリルマブである。1つ以上の実施態様では、F群の物質はsym023である。1つ以上の実施態様では、G群の物質は40E4およびPJ196である。
【0015】
1つ以上の実施態様では、T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現される受容体を刺激および/または促進できる物質は、I:T細胞表面のOX40/CD134受容体を介して作用する物質、J:T細胞表面の4-1BB/CD137受容体を介して作用する物質、K:T細胞表面のCD28受容体を介して作用する物質、L:T細胞表面のICOS受容体を介して作用する物質、M:T細胞表面のGITR受容体を介して作用する物質、N:T細胞表面のCD40L受容体を介して作用する物質、およびO:T細胞表面のCD27受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。
【0016】
1つ以上の実施態様では、J群の物質は、ウレルマブおよびウトミルマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、K群の物質はテラルジマブである。1つ以上の実施態様では、O群の物質はバリルマブである。
【0017】
1つ以上の実施態様では、T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、P:T細胞表面のIDO1/2受容体を介して作用する物質、Q:T細胞表面のTGFβ受容体を介して作用する物質、R:T細胞表面のIL-10受容体を介して作用する物質、およびS: T細胞表面のIL-35受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。
【0018】
1つ以上の実施態様では、P群の物質はエパセドスタットである。1つ以上の実施態様では、Q群の物質はリンロドスタットである。1つ以上の実施態様では、R群の物質はガルニセルチブである。
【0019】
1つ以上の実施態様では、制御性T細胞を下方制御かつ/あるいは枯渇させて、それによって生体外でのT細胞増殖を促進できる物質は、T:シクロホスファミド、U:TKI、V:αCD25を介して作用する物質、およびX:IL2/ジフテリア毒素融合からなる群から選択される。
【0020】
1つ以上の実施態様では、U群の物質はスニチニブである。1つ以上の実施態様では、V群の物質は、ソラフェニブ、イマチニブ、およびダクリズマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、X群の物質は、デニロイキンジフチトックスである。
【0021】
1つ以上の実施態様では、物質の濃度は、0.1 μg/mL~300 μg/mL、例えば1 μg/mL~100 μg/mL、例えば10 μg/mL~100 μg/mL、例えば1 μg/mL~10 μg/mLである。
【0022】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して、1:固形腫瘍、2:ICIナイーブ腫瘍、3:MSI-H腫瘍、4:血液学的腫瘍、ウイルス誘発性腫瘍、および5:超変異腫瘍(POL-EおよびPOL-D変異腫瘍など)からなる群から選択される癌種を治療する。
【0023】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して、乳がん、腎細胞がん、膀胱がん、黒色腫、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、ホジキンリンパ腫、膵がん、肝がん、および肉腫からなる群から選択される癌種を治療する。
【0024】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して乳がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して腎細胞がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して膀胱がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して黒色腫を治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して子宮頸がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して胃がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して大腸がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して肺がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して頭頸部がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して卵巣がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用してホジキンリンパ腫を治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して膵がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して肝がんを治療するために使用される。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を使用して肉腫を治療する。
【0025】
1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約45日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約25日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約30日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(b)は、約10日~約28日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(b)は、約10日~約20日の期間内に実施される。
【0026】
1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約10日~約28日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約10日~約20日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される。
【0027】
1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×106~1×107個の細胞、例えば2×106~5×106個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、5×106~1×107の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×106~5×107個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×107~5×107個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×1012個の細胞、例えば1×108~5×109個の細胞、例えば1×109~5×109個の細胞、例えば1×108~5×1010個の細胞、例えば1×109~5×1011個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×1010個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×109個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×108個の細胞を生成する。
1つ以上の実施態様では、APCは、人工APC(aAPC)または同種異系フィーダー細胞である。
1つ以上の実施態様では、TILの治療用集団を患者に注入する。
【0028】
1つ以上の実施態様では、細胞を細胞培養物から取り出して、工程(c)を実施する前に貯蔵媒体中に凍結保存する。
【0029】
1つ以上の実施態様では、この方法はさらに、第1のTIL集団を、T細胞シグナル伝達分子の少なくとも1つのエンドドメインと融合した一本鎖可変断片抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む発現ベクターで形質導入する工程を含む。
【0030】
1つ以上の実施態様では、工程(c)はさらに、細胞培養培地から細胞を取り出す工程を含む。
【0031】
1つ以上の実施態様では、工程(a)はさらに、切除された腫瘍を、例えば4~50個の断片、20~30個の断片などの複数の腫瘍断片に処理することを含む。
【0032】
1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約5~50 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約50 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約0.1~10 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約0.1~1 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約0.5~5 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約1~10 mm3である。1つ以上の実施態様では、断片のサイズは、約1~3 mm3である。
1つ以上の実施態様では、哺乳動物はヒトである。
【0033】
1つ以上の実施態様では、細胞培養培地は、G-Rex容器およびXuri培養バッグからなる群から選択される容器内に提供される。
【0034】
一側面は、前述の実施態様のいずれかの方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の集団に関する。
【0035】
さらなる側面は、癌を患う対象の治療における使用のための増殖腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に関し、この治療は、哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物での癌の退縮が促進される。
【0036】
さらなる側面は、1つの方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の集団に関し、この方法は、哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0037】
さらなる側面は、IL-2および1種以上のTME刺激剤を含むTILの治療用集団に関する。
【0038】
さらなる側面は、IL-2、1種以上のTME刺激剤、追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)を含むTILの治療用集団に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、哺乳動物から切除された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含む腫瘍をより小さな断片に切断し、1つ以上のマルチウェル細胞培養皿に入れることを示す。ここでこれらの断片を、第1の増殖中にインターロイキン2(IL-2)および腫瘍微小環境(TME)刺激剤を含む細胞培養培地内で培養して第2のTIL集団を生成する。その後に第2のTIL集団を、フィーダー細胞、抗CD3抗体、およびIL-2を含む細胞培養培地内での第2の増殖(急速増殖と呼ぶことが多い)によってさらに増殖する。第2の増殖はその手順次第であってもよく、細胞培養は、1つ以上の工程で、さらなる部分工程で1つ以上の容器を用いて実施してもよいが、簡潔にするために図中には1つの工程としてのみ示している。最後にTILを採取して第3の治療用TIL集団を生成しかつ再懸濁して最終的なTIL産物とし、これを哺乳動物に戻すように注入して癌の退縮を促進する。
【0040】
【
図2】
図2は、IL-2、デュルバルマブ(Durva)、アベルマブ(Avelu)、レラトリマブ(Relatli)、ティラゴルマブ(Tira)、ペンブロリズマブ(Pembro)、イピリムマブ(Ipi)、セラリズマブ(Thera)、ニボルマブ(Nivo)、またはウレルマブ/OKT3(Ure)を用いる細胞増殖の(50,000個の細胞/断片を超える)成功率を示す。
【0041】
【
図3】
図3は、IL-2、デュルバルマブ(Durva)、アベルマブ(Avelu)、レラトリマブ(Relatli)、ティラゴルマブ(Tira)、ペンブロリズマブ(Pembro)、イピリムマブ(Ipi)、セラリズマブ(Thera)、ニボルマブ(Nivo)、またはウレルマブ/OKT3(Ure)を用いる細胞増殖の(50,000個の細胞/断片を超える)成功率(黒色)および失敗率(白色)を示す。
【0042】
【
図4】
図4は、IL-2+/-TME-Sを用いる細胞増殖の(50,000個の細胞/断片を超える)の成功率を示す。各群の特定の刺激剤については表43を参照のこと。
【0043】
【
図5】
図5は、IL-2+/-TME-Sを用いる細胞増殖の(50,000個の細胞/断片を超える)成功率(黒色)および失敗率(白色)を示す。各群の特定の刺激剤については表43を参照のこと。
【0044】
【
図6】
図6は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での細胞培養物の総細胞数および増殖時間を示す。各群の特定の刺激剤については表43を参照のこと。目視できる増殖表示線は、簡潔にするために手で追加した。
【0045】
【
図7】
図7は、低濃度(1 μg/mL)、中濃度(5 μg/mL)、および高濃度(25 μg/mL)の抗CTLA-4(イピリムマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0046】
【
図8】
図8は、低濃度(1 μg/mL)、中濃度(5 μg/mL)、および高濃度(25 μg/mL)の抗PD1(ペンブロリズマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0047】
【
図9】
図9は、OKT3(30 ng/mL)とともに、低濃度(2 μg/mL)、および中濃度(10 μg/mL)の抗4-1BB(ウレルマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0048】
【
図10】
図10は、低濃度(0.02 μg/mL)、中濃度(0.1 μg/mL)、高濃度(2 μg/mL)、および超高濃度(2 μg/mL)の抗CD28(セラリズマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0049】
【
図11】
図11は、低濃度(2 μg/mL)、中濃度(10 μg/mL)、および高濃度(50 μg/mL)の抗PD-L1(アベルマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0050】
【
図12】
図12は、低濃度(2 μg/mL)、中濃度(10 μg/mL)、および高濃度(50 μg/mL)の抗PD-1(ニボルマブ)を用いる、頭頸部がん(HN)、転移性黒色腫(MM)、および卵巣がん(OC)からの細胞増殖での総細胞数を示す。
【0051】
【
図13】
図13は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0052】
【
図14】
図14は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での子宮頸がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0053】
【
図15】
図15は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での黒色腫からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0054】
【
図16】
図16は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での卵巣がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0055】
【
図17】
図17は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での頭頸部がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0056】
【
図18】
図18は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での肺がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0057】
【
図19】
図19は、IL-2+/-TME-Sを含むG-Rexフラスコ中での大腸がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0058】
【
図20】
図20は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0059】
【
図21】
図21は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での黒色腫からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0060】
【
図22】
図22は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での卵巣がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0061】
【
図23】
図23は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、および枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での肺がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0062】
【
図24】
図24は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での子宮頚がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0063】
【
図25】
図25は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での大腸がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0064】
【
図26】
図26は、IL-2+/-拮抗剤、作用剤、CD28ファミリー、再活性化処理剤、または枯渇処理剤を含むG-Rexフラスコ中での頭頚部がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表44を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0065】
【
図27】
図27は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0066】
【
図28】
図28は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での卵巣がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0067】
【
図29】
図29は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での黒色腫からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0068】
【
図30】
図30は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での肺がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0069】
【
図31】
図31は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での頭頚部がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0070】
【
図32】
図32は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での大腸がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0071】
【
図33】
図33は、IL-2+/-PD-1、PD-L1を含むG-Rexフラスコ中での子宮頚がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0072】
【
図34】
図34は、IL-2+/-群Aであるペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブを含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0073】
【
図35】
図35は、IL-2+/-群Aであるペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブを含むG-Rexフラスコ中での卵巣がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0074】
【
図36】
図36は、IL-2+/-群Aであるペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブを含むG-Rexフラスコ中での黒色腫からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0075】
【
図37】
図37は、IL-2+/-群Aであるペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブを含むG-Rexフラスコ中での頭頚部がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0076】
【
図38】
図38は、IL-2+/-群Aであるペンブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、およびアベルマブを含むG-Rexフラスコ中での子宮頚がんからの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0077】
【
図39】
図39は、IL-2+/-群A、群B、または群A+Bを含むG-Rexフラスコ中での任意の癌腫からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。各群を対照(IL-2)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0078】
【
図40】
図40は、IL-2+/-ウレルマブ/OKT3、イピリムマブ(ipi)、およびペンブロリズマブ(pembro)を含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。各群を対照(ウレルマブ/OKT3)と比較する両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0079】
【
図41】
図41は、時間遅延の有無に対してIL-2+/-ウレルマブ/OKT3、イピリムマブ(ipi)、およびペンブロリズマブ(pembro)を含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0080】
【
図42】
図42は、IL-2+セラリズマブ、またはIL-2+セラリズマブ+イピリムマブ(ipi)+ペンブロリズマブ(pembro)を含むG-Rexフラスコ中での任意の癌種からの腫瘍組織の培養後の断片あたりの生存細胞数を示す。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0081】
【
図43】
図43は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種での細胞増殖の(50,000個の細胞/断片を超える)成功率を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。
【0082】
【
図44】
図44は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのT細胞(CD3+)の発生頻度を示す。用いた刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做される。
【0083】
【
図45】
図45は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのT細胞(CD3+)の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01に分類される。
【0084】
【
図46】
図46は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種での腫瘍断片あたりの生存T細胞(CD3+)数を示す。用いた刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、***p<0.001に分類される。
【0085】
【
図47】
図47は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種での腫瘍断片あたりの生存T細胞(CD3+)数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、** p <0.01、***p<0.001、****p<0.0001に分類される。
【0086】
【
図48】
図48は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種のCD4+(左側)およびCD8 +(右側)でのエフェクターメモリーT細胞(TEM)の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05に分類される。
【0087】
【
図49】
図49は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのCD8+T細胞の発生頻度を示す。用いた刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、**p<0.01に分類される。
【0088】
【
図50】
図50は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種での腫瘍断片あたりの生存CD8 +T細胞数を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、**p<0.01、*** p <0.001、****p<0.0001に分類される。
【0089】
【
図51】
図51は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのCD4 +T細胞の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、**p<0.01に分類される。
【0090】
【
図52】
図52は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのNK細胞の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05、**p<0.01に分類される。
【0091】
【
図53】
図53は、IL-2+/-低濃度(2 μg/mL)のウレルマブ(Ure)/OKT3(30 ng/mL)、または中濃度(10 μg/mL)のウレルマブ/OKT3(30 ng/mL)、さらにペムブロリズマブ(Pembro)、イピリムマブ(Ipi)を用いる頭頸部がんでのT細胞(CD3 +)およびNK(CD3-CD56+)細胞の発生頻度を示す。
【0092】
【
図54】
図54は、IL-2+/-低濃度(2 μg/mL)のウレルマブ(Ure)/OKT3(30 ng/mL)、または中濃度(10 μg/mL)のウレルマブ/OKT3(30 ng/mL)、さらにペムブロリズマブ(Pembro)、イピリムマブ(Ipi)を用いる頭頸部がんでのCD8+T細胞の発生頻度を示す。
【0093】
【
図55】
図55は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのCD3+細胞、NK細胞、CD8+細胞、およびCD4+細胞の発生頻度を、時間遅延無し(白色棒)および時間遅延有り(黒色棒)で示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做される。
【0094】
【
図56】
図56は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのCD4+表面のLAG-3細胞(白色棒)またはCD8+細胞(黒色棒)の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做され、有意性は、* p <0.05に分類される。
【0095】
【
図57】
図57は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌種でのCD4+表面のLAG-3細胞、またはCD8+細胞の発生頻度を、時間遅延無し(白色棒)および時間遅延有り(黒色棒)で示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做される。
【0096】
【
図58】
図58は、IL-2+/-TME-Sを用いる全ての癌腫でのCD8+表面のCD28細胞の発生頻度を示す。各群の特定の刺激剤については、表43を参照のこと。両側マン・ホイットニーU検定によって実施された統計において、p>0.05は有意ではないと見做される。
【発明を実施するための形態】
【0097】
本発明は、例えばチェックポイント阻害剤とともに腫瘍断片を含む切除されたTILを共培養すること、T細胞の消耗を回復させることが分かっている他のインターロイキンによってTILを刺激すること、かつ/あるいは制御性T細胞分泌因子(IL-10など)の効果を阻害し、それによって現状で構築されているTIL増殖手法よりも速くより多くの数まで消耗したT細胞を増殖できる好ましいTMEを形成することによって、消耗した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を生体外で再活性化することを目的とする。
【0098】
この手法は、生体外での刺激が生体内で許容されるよりも遥かに高い用量水準を用いて実施できるので、全身投与の治療に対し好都合な可能性がある。一例として、このTIL手順では、IL-2を1 mLあたり3~6,000 IUの濃度で活用でき、これは全身的に推奨される用量よりも5~10倍高い濃度である。
【0099】
さらに腫瘍抗原に対してより高い親和性を有するT細胞は消耗する傾向が増大する可能性があるので、標的化した生体外での再活性化により、それらが存在する腫瘍をより積極的に標的化できる親和性の高いT細胞クローンの増殖が助けられる可能性があり、それによって最終的にTIL療法に対するこの新たな手法の臨床的な成果の向上に繋がる。
【0100】
従って本発明は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖して哺乳動物での癌の退縮を促進する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物での癌の退縮が促進される。
【0101】
本明細書での「腫瘍浸潤リンパ球」すなわち「TIL」とは、対象の血流を離れて腫瘍内に移動した、本来は白血球として得られる細胞集団を意味する。TILには、限定はされないが、CD8+細胞毒性T細胞(リンパ球)、Th1およびTh17 CD4+T細胞(CD4+ヘルパー細胞)、天然キラー細胞、樹状細胞、およびM1マクロファージが含まれる。TILには、一次TILおよび二次TILの両方が含まれる。「一次TIL」は、本明細書で概説されるように患者組織試料から得られたものであり(「新たに採取された」と呼ぶこともある)、「二次TIL」は、本明細書で説明されるように拡張または増殖された任意のTIL細胞集団である。TILは一般に、細胞表面マーカーを用いて生化学的に定義してもよく、あるいは腫瘍に浸潤して治療を実行する能力によって機能的に定義してもよい。TILは一般的には、CD4、CD8、TCR ab、CD27、CD28、CD56、CCR7、CD45Ra、CD95、PD-1、およびCD25のうちの1種以上のバイオマーカーの発現によって分類してもよい。さらにかつあるいは、TILは、患者への再導入時に固形腫瘍に浸潤する能力によって機能的に定義してもよい。TILは、効力によってさらに特徴付けてもよく、例えばインターフェロン(IFN)の放出が約50 pg/mLを超えるなら、約100 pg/mLを超えるなら、約150 pg/mLを超えるなら、あるいは約200 pg/mLを超えるなら、TILは効力があると見做してもよい。
【0102】
本発明のさらなる側面は、増殖させた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の投与を含む、癌を患う対象を治療する方法に関し、この方法は、(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取することによって自己T細胞を培養する工程、(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程、(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程、および(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物の癌の退縮が促進される。
【0103】
用語「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」などは、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を獲得することを指す。その効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、かつ/あるいは疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的にまたは完全に治癒するという点で治療的であってもよい。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトでの疾患のあらゆる治療を含み、(a)疾患の素因の可能性はあるがまだ診断されていない対象で疾患が発生するのを予防すること;(b)疾患を阻害すること、すなわちその発症または進行を阻止すること;および(c)病気を軽減すること、すなわち病気の退縮を引き起こすこと、かつ/あるいは1つ以上の病気の症状を軽減することを含む。「治療」はまた、疾患または病状が無い場合でも、薬理学的効果を提供するための薬剤の送達を包含することを意味する。例えば「治療」は、疾患症状が無い場合に、例えばワクチンの場合での免疫応答を誘発する、あるいは免疫を付与できる組成物の送達を包含する。
【0104】
用語「抗CD3抗体」は、成熟T細胞のT細胞抗原受容体中のCD3受容体を対象とするヒト、ヒト化、キメラ、またはマウス抗体を含む抗体またはその変異体、例えばモノクローナル抗体を指す。抗CD3抗体には、ムロモナブとしても知られるOKT3が含まれる。抗CD3抗体には、T3およびCD3eとしても知られるUHCT1クローンも含まれる。他の抗CD3抗体には、例えば、オテリキシズマブ、テプリズマブ、およびビシリズマブが含まれる。一実施態様では、細胞培養培地は、OKT3抗体を含む。実施態様によっては、細胞培養培地は、約30 ng/mLのOKT3抗体を含む。一実施態様では、細胞培養培地は、約0.1 ng/mL、約0.5 ng/mL、約1 ng/mL、約2.5 ng/mL、約5 ng/mL、約7.5 ng/mL、約10 ng/mL 、約15 ng/mL、約20 ng/mL、約25 ng/mL、約30 ng/mL、約35 ng/mL、約40 ng/mL、約50 ng/mL、約60 ng/mL、約70 ng/mL、約80 ng/mL、約90 ng/mL、約100 ng/mL、約200 ng/mL、約500 ng/mL、および約1 pg/mLのOKT3抗体を含む。一実施態様では、細胞培養培地は、0.1 ng/mL~1 ng/mL、1 ng/mL~5 ng/mL、5 ng/mL~10 ng/mL、10 ng/mL~20 ng/mL、20 ng/mL~30 ng/mL、30 ng/mL~40 ng/mL、40 ng/mL~50 ng/mL、および50 ng/mL~100 ng/mLのOKT3抗体を含む。実施態様によっては、細胞培養培地は、OKT3抗体を含まない。
【0105】
用語「IL-2」(本明細書では「IL2」とも呼ぶ)は、インターロイキン-2として知られるT細胞増殖因子を指し、ヒトおよび哺乳動物形態、保存的アミノ酸置換、グリコフォーム、後発生物製剤、およびそれらの変異体を含む全ての形態のIL-2を含む。
【0106】
腫瘍断片の調製後に、得られる細胞(すなわち断片)は、腫瘍および他の細胞よりもTILの成長に有利な条件下でIL-2を含む培地で培養される。実施態様によっては、腫瘍消化物は、6000 IU/mLのIL-2を含む不活化ヒトAB血清を含む培地内で(あるいは場合によっては、本明細書に概説されるようなaAPC細胞集団の存在で)、2mLのウェル中に培養される。この初代細胞集団は、数日間に亘って通常は6~14日間培養されて、大量のTIL集団、すなわち通常は約1×106~1×108個の大量のTIL細胞となる。実施態様によっては、第1の増殖中の成長培地は、IL-2またはその変異体を含む。実施態様によっては、ILは組換えヒトIL-2(rhIL-2)である。実施態様によっては、IL-2保存液は、1 mgのバイアルに対して20~30×106 IU/mgの比活性を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、1 mgのバイアルに対して20×106 IU/mgの比活性を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、1 mgのバイアルに対して25×106 IU/mgの比活性を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、1 mgのバイアルに対して30×106 IU/mgの比活性を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、4~8×106 IU/mgのIL-2の最終濃度を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、5~7×106 IU/mgのIL-2の最終濃度を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、6×106 IU/mgのIL-2の最終濃度を有する。実施態様によっては、IL-2保存液は、実施例に記載のように調製される。実施態様によっては、第1の増殖培養培地は、約10,000 IU/mLのIL-2、約9,000 IU/mLのIL-2、約8,000 IU/mLのIL-2、約7,000 IU/mLのIL-2、約6,000 IU/mLのIL-2、または約5,000 IU/mLのIL-2を含む。実施態様によっては、第1の増殖培養培地は、約9,000 IU/mL~約5,000 IU/mLのIL-2を含む。実施態様によっては、第1の増殖培養培地は、約8,000 IU/mL~約6,000IU/mLのIL-2を含む。実施態様によっては、第1の増殖培養培地は、約7,000 IU/mL~約6,000 IU/mLのIL-2を含む。実施態様によっては、第1の増殖培養培地は、約6,000 IU/mLのIL-2を含む。一実施態様では、細胞培養培地はさらにIL-2を含む。実施態様によっては、細胞培養培地は、約3,000 IU/mLのIL-2を含む。一実施態様では、細胞培養培地はさらにIL-2を含む。好ましい実施態様では、細胞培養培地は、約3,000 IU/mLのIL-2を含む。一実施態様では、細胞培養培地は、約1,000 IU/mL、約1,500 IU/mL、約2,000 IU/mL、約2,500 IU/mL、約3,000 IU/mL、約3,500 IU/mL、約4,000 IU/mL、約4,500 IU/mL、約5,000 IU/mL、約5,500 IU/mL、約6,000 IU/mL、約6,500 IU/mL、約7,000 IU/mL、約7,500 IU/mL、または約8,000 IU/mLのIL-2を含む。一実施態様では、細胞培養培地は、1,000~2,000 IU/mL、2,000~3,000 IU/mL、3,000~4,000 IU/mL、4,000~5,000 IU/mL、5,000~6,000 IU/mL、6,000~7,000 IU/mL、7,000~8,000 IU/mL、または約8,000 IU/mLのIL-2を含む
【0107】
IL-4、IL-7、IL-15および/またはIL-21をまた、本方法の工程(b)および/または(c)に加えてもよい。用語「IL-4」(本明細書では「IL4」とも呼ぶ)は、インターロイキン-4として知られるサイトカインを指し、これは、Th2 T細胞によって、ならびに好酸球、好塩基球、およびマスト細胞によって産生される。IL-4は、ナイーブヘルパーT細胞(ThO細胞)からTh2T細胞への分化を調節する。用語「IL-7」(本明細書では「IL7」とも呼ぶ)は、間質細胞および上皮細胞ならびに樹状細胞から得られてもよいインターロイキン-7として知られるグリコシル化組織由来のサイトカインを指す。用語「IL-15」(本明細書では「IL15」とも呼ぶ)は、インターロイキン-15として知られるT細胞増殖因子を指し、ヒトおよび哺乳動物の形態、保存的アミノ酸置換、グリコフォーム、後発生物製剤、およびそれらの変異体を含む全ての形態のIL-2を含む。用語「IL-21」(本明細書では「IL21」とも呼ぶ)は、インターロイキン-21として知られる多面発現性サイトカインタンパク質を指し、ヒトおよび哺乳動物の形態、保存的アミノ酸置換、グリコフォーム、後発生物製剤、およびそれらの変異体を含む全ての形態のIL-21を含む。
【0108】
本発明の別の側面は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖する方法に関し、この方法は(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取することによって自己T細胞を培養する工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;および(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0109】
実験によって、腫瘍特異的Tリンパ球の養子移入前のリンパ球枯渇は、制御性T細胞および免疫系の競合要素(「サイトカインシンク」)の排除によって治療効力を増強する上で重要な役割を果たすことを見出した。従って本発明のいくつかの実施態様は、本発明のTILを導入する前に、患者へのリンパ球枯渇工程(「免疫抑制調整」とも呼ぶ)を利用する。
【0110】
工程(a)から工程(c)までの本発明の方法は、閉鎖系内で実施してもよい。用語「閉鎖系」は、外部環境に対して閉鎖された系を指す。本発明の方法では、細胞培養法に適する任意の閉鎖系を使用してもよい。閉鎖系には、限定はされないが、例えば閉鎖G容器が含まれる。腫瘍部分が閉鎖系に添加されると、TILを患者に投与する準備ができるまで、この系は外部環境に開放されない。
【0111】
用語「TME刺激剤」は、腫瘍内に好ましい微小環境を形成する能力を有する物質(または薬剤)に関連し、その環境内では、消耗したT細胞を再活性化して、それらの抗腫瘍機能を何倍にも増殖しかつ回復させることができる。従って1つ以上の実施態様では、1種以上のTME刺激剤は、(x)T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる1種以上の物質;(y)T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現される受容体を刺激かつ/あるいは促進できる1種以上の物質;(z)T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる1種以上の物質;(v)制御性T細胞を下方制御かつ/あるいは消耗させて、それによって生体外エフェクターT細胞の増殖を促進できる1種以上の物質;および(w)(x)、(y)、(z)および/または(v)の群からの1つ以上の物質からなる群から選択される。(w)の群は、(x)、(y)、(z)、および/または(v)からの物質のうちの1種、2種、または3種であってもよい。1つ以上の実施態様では、(w)は、(x)からの物質のうちの1種または2種である。1つ以上の実施態様では、(w)は、(y)からの物質のうちの1種または2種である。1つ以上の実施態様では、(w)は、(z)からの物質のうちの1種または2種である。1つ以上の実施態様では、(w)は、(v)からの物質のうちの1種または2種である。(w)は、表2~41および43~44に列記されている、表1中の物質との任意の組合せであってもよい。
【0112】
それらは、本方法の工程(b)および/または工程(c)で添加してもよく、それらが初期の増殖のみに必要な場合には、2、4、6日後、またはそれ以上の日数後の増殖中に取り除かれてもよい。それらは細胞培養物の洗浄によって取り除かれてもよい。個々のTME刺激剤は、一緒に添加してもよく、あるいは時間の経過とともに、すなわち1日間隔で、または2、3、4、5、6、または7日間間隔で添加してもよい。
【0113】
1つ以上の実施態様では、1種以上のTME刺激剤は、例えば抗PD1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗LAG3、抗A2AR、抗B7-H3、抗B7-H4、抗BTLA、抗IDO、抗HVEM、抗IDO、抗TDO、抗KIR、抗NOX2、抗TIM3、抗ガレクチン9、抗VISTA、抗SIGLEC7/9などの1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤であり、必要に応じて1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤はまた第2の増殖に添加される。
【0114】
1つ以上の実施態様では、T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、A:T細胞表面のPD-1受容体を介して作用する物質、B:T細胞表面のCTLA-4受容体を介して作用する物質、C:T細胞表面のLAG-3受容体を介して作用する物質、 D:T細胞表面のTIGIT/CD226受容体を介して作用する物質、E:T細胞のKIR受容体を介して作用する物質、F:T細胞のTIM-3受容体を介して作用する物質、G:T細胞表面のBTLA受容体を介して作用する物質、およびH:T細胞表面のA2aR受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。当然なことではあるが、所定の受容体を介して作用する物質の定義ではまた、同じ受容体のリガンドを包含してもよい。このことは、例えばPD-1受容体の場合には、PD-L1またはPD-L2を標的とする物質もまた包含してもよいことを意味する。従って群Aは、T細胞表面のPD-1受容体ならびにそのリガンドを介して作用する物質を包含してもよい。
【0115】
1つ以上の実施態様では、群Aの物質は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はペンブロリズマブである。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はニボルマブである。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はセミプリマブである。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はsym021である。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はアテゾリズマブである。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はアベルマブである。1つ以上の実施態様では、群Aの物質はデュルバルマブである。
【0116】
1つ以上の実施態様では、群Bの物質は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、群Bの物質はイピリムマブである。1つ以上の実施態様では、群Bの物質はトレメリムマブである。1つ以上の実施態様では、群Cの物質は、レラトリマブ、エフチラギモα、およびsym022からなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、群Dの物質はチラゴルマブである。1つ以上の実施態様では、群Eの物質はリリルマブである。1つ以上の実施態様では、群Fの物質はsym023である。1つ以上の実施態様では、群Gの物質は40E4およびPJ196である。
【0117】
1つ以上の実施態様では、T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現される受容体を刺激および/または促進できる物質は、I:T細胞表面のOX40/CD137受容体を介して作用する物質、J:T細胞表面の4-1BB/CD137受容体を介して作用する物質、K:T細胞表面のCD28受容体を介して作用する物質、L:T細胞表面のICOS受容体を介して作用する物質、M:T細胞表面のGITR受容体を介して作用する物質、N:T細胞表面のCD40L受容体を介して作用する物質、およびO:T細胞表面のCD27受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。
【0118】
1つ以上の実施態様では、群Jの物質は、ウレルマブおよびウトミルマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、群Jの物質はウレルマブである。1つ以上の実施態様では、群Jの物質はウトミルマブである。群Jの物質は、OKT-3などの抗CD3物質と組み合わせて使用してもよい。従って1つの組合せは、ウレルマブとOKT-3(ウレルマブ/OKT-3)であってもよい。別の組合せは、ウトミルマブとOKT-3(ウトミルマブ/OKT-3)であってもよい。1つ以上の実施態様では、群Kの物質はセラリズマブである。1つ以上の実施態様では、群Oの物質はバリルマブである。
【0119】
1つ以上の実施態様では、群Aの1種以上の物質は、群Bの物質の内の1種以上と組み合わせてもよい。1つ以上の実施態様では、群Aの物質の内の1種以上は、群Bの物質の内の1種以上および群Jの部室の内の1種以上と組み合わせてもよい。これらの組合せは、本開示の実施例では有効であることが示されている。このことは、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブからなる群からの1種以上から選択される群Aの物質の内の1種以上を、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群からの1種以上から選択される群Bの物質の内の1種以上と組み合わせてもよいことを意味している。次いでこれら物質を、ウレルマブおよびウトミルマブからなる群からの1種以上から選択される群Jの物質の内の1種以上の物質と組み合わせてもよい。群Jの物質を、OKT-3などの抗CD3物質との組合わせで用いてもよい。従って1種の組合せは、群Bからのイピリムマブおよび群Jからのウレルマブと組み合わせた、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブからなる群からの1種以上から選択される群Aの1種以上の物質であってもよい。特定の選択としては、OKT-3などの抗CD3物質の有無に拘わらず、群Bからのイピリムマブおよび群Jからのウレルマブと組み合わせたペムブロリズマブであってもよい。
【0120】
1つ以上の実施態様では、T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、P:T細胞表面のIDO1/2受容体を介して作用する物質、Q:T細胞表面のTGFβ受容体を介して作用する物質、R:T細胞表面のIL-10受容体を介して作用する物質、およびS:T細胞表面のIL-35受容体を介して作用する物質からなる群から選択される。
【0121】
1つ以上の実施態様では、群Pの物質は、エパセドスタットである。1つ以上の実施態様では、群Qの物質はリンロドスタットである。1つ以上の実施態様では、群Rの物質はガルニセルチブである。
【0122】
1つ以上の実施態様では、制御性T細胞を下方制御および/または枯渇でき、それによって生体外エフェクターT細胞増殖を促進できる物質は、T:シクロホスファミド、U:TKI、V:αCD25を介して作用する物質、およびX:IL2/ジフテリア毒素融合からなる群から選択される。
【0123】
表1に列記される群A~Xは、表2~44に示すように複数の物質と組み合わせて使用してもよい。従って1つ以上の実施態様では、第1の増殖では、IL2を任意の物質(表1を参照)との任意の組合せで使用し、すなわち本発明の方法の工程(b)では、表2~44に列記される任意の組合せで使用する。
【0124】
1つ以上の実施態様では、群Uの物質はスニチニブである。1つ以上の実施態様では、群Vの物質は、ソラフェニブ、イマチニブ、およびダクリズマブからなる群からの1種以上から選択される。1つ以上の実施態様では、群Xの物質は、デニロイキンジフチトックスである。
【0125】
実施例4は、実施例2に記載のようにTME刺激剤が培養培地に添加された場合に、TIL培養が開始された際に生体外でのTIL増殖の成功率が増大したことを示している。実施例5は、実施例2での実施のようにTME刺激剤が培養培地に添加された場合に、TIL培養が開始された際にTILの培養時間が短縮されたことを示している。実施例2に記載のように実施された実施例6は、TME刺激剤が種々の濃度で培養培地に添加された場合に、種々の腫瘍種からのTIL培養が開始された際にTIL収量が増大したことを示している。
【0126】
図27に示される実施例9は、実施例2での実施のような標準の幼若なTILの製造手順にTME刺激剤を添加することによりTIL増殖が顕著に増強され、それによりT細胞表面に発現した受容体あるいは腫瘍微小環境内の腫瘍細胞および他の細胞表面に発現したそのリガンド(PD-L1)の拮抗によって、腫瘍断片あたりより多数の生存細胞が生成されたことを示している。
図28~33では、標準TILの製造手順に対しPD-1群またはPD-L1群からの初期のTIL培養物にTME刺激剤を添加する効果が、それぞれ、卵巣がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、大腸がん、および子宮頸がんで観察された。全ての条件において顕著ではないが、この効果は、
図27の全ての腫瘍でのPD-1/PD-L1の例として各種の癌で類似の傾向を示していた。この実施例では、受容体PD-1またはそのリガンドPD-L1のいずれを標的にするかには互換性があり、類似の効果を生み出す可能性があることを示していた。
【0127】
図35~38では、種々の製造業者による群Aからの阻害剤を初期のTIL培養物に添加する効果は、それぞれ、卵巣がん、黒色腫、頭頸部がん、および子宮頸がんで観察された。この効果として
図34に、全腫瘍での例として各種の癌で類似の傾向を示していて、種々の製造業者によるTME刺激剤を用いても類似の効果を得られる可能性があることを示した。
【0128】
図39は、群A(PD-1阻害剤またはそのリガンド)、群B(CTLA-4阻害剤またはそのリガンド)からのTME刺激剤を添加した場合に、あるいは群AおよびBの両方を添加した場合に、標準の幼若なTILの製造手順に比較してTILの増殖が顕著に増大したことを示している。群Aと群BのTME刺激剤を併用すると、TILの増殖率がさらに向上する傾向があった。
図40では、4-1BB刺激薬と抗CD3、すなわちウレルマブ/OKT3(群J)は、単独、あるいはCTLA-4阻害剤であるイピリムマブ(群B)との組合せ、あるいはPD-1阻害剤であるペンブロリズマブ(群A)との組合せ、あるいはイピリムマブとペンブロリズマブの両方との3種の組合せの全てにおいて、生存細胞中で種々の癌からの腫瘍断片あたりに非常に強いTIL増殖が見られたことを示している。従って本発明の一実施態様は、本発明の方法のための群Aからの1種以上のTME刺激剤の使用に関する。本発明の一実施態様は、本発明の方法のための群Bからの1種以上のTME刺激剤の使用に関する。本発明の一実施態様は、本発明の方法のための群Jからの1種以上のTME刺激剤の使用に関する。本発明のさらなる実施態様は、群AおよびBからの1種以上の物質がTME刺激剤として一緒に使用される組合せに関する。本発明のさらなる実施態様は、群A、B、およびJからの1種以上の物質がTME刺激剤として一緒に使用される組合せに関する。
【0129】
図41では、幼若なTIL培養物の製造プロセスへのウレルマブ/OKT3の添加における時間遅延の影響を調査した。ここで初期の幼若なTIL培養物に添加されたウレルマブ/OKT3、イピリムマブ、およびペンブロリズマブの3種の組合せの0日目(図の左側)を、イピリムマブとペンブロリズマブを添加し2日間待機してウレルマブ/OKT3を添加した時間遅延条件(図の右側)と比較した。2者の条件の間に有意差は無く、両方の条件で非常に強いTIL増殖が見られた。
図42では、初期の幼若なTIL培養物に、セラリズマブを単独で(図の左側)、あるいはイピリムマブとペンブロリズマブの両方の組合せで添加した場合の効果を調査した。顕著ではないが、3種の組合せでは、セラリズマブの単独と比較して、幼若なTIL中でより速い増殖率を誘発する傾向があった。
【0130】
実施例12は、TME刺激剤を単独でまたは組合せで培養培地に添加した場合に、TIL培養が開始された際に生体外でのTIL増殖の成功率が増大したことを示している。従って本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較して生体外での増殖の増大がもたらされる、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。本発明の方法は、生体外で実施され、生体上または生体内では実施されない。それらは、試験室内での患者細胞の増殖を意味していて、従ってこの生成に医師は必要としない。
【0131】
実施例13は、TME刺激剤を幼若なTILの処理工程に添加することにより、T細胞の発生頻度の増大および生存T細胞の数の増大を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL製造手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してT細胞の発生頻度の上昇および生存T細胞の数の増大を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0132】
実施例14は、TME刺激剤を幼若なTILの製造工程に添加することにより、エフェクター記憶T細胞の同等の発生頻度を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してエフェクター記憶T細胞の同等の発生頻度を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0133】
実施例15は、TME刺激剤を単独でかつ組合せで、幼若なTILの製造工程に添加することにより、CD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。従って本発明の一実施態様は、これにより1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してCD8+T細胞の発生頻度が上昇したTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0134】
実施例16は、TME刺激剤を幼若なTILの製造工程に添加することにより、CD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してCD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0135】
実施例17は、TME刺激剤を幼若なTILの製造工程に添加することにより、NK細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。従って本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してNK細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0136】
実施例18は、TME刺激剤を幼若なTILの処理工程に添加することにより、NK細胞の発生頻度の低下かつCD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。従って本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してNK細胞の発生頻度の低下およびCD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0137】
実施例19は、幼若なTILの処理工程に時間遅延を伴ってTME刺激剤を添加することにより、総数でのT細胞およびCD8+細胞の発生頻度の上昇かつNK細胞およびCD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較して総数でのT細胞およびCD8+細胞の発生頻度の上昇かつNK細胞およびCD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物を生成する、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0138】
実施例20は、TME刺激剤を幼若なTILの製造工程に添加することにより、腫瘍特異的LAG-3+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。LAG-3はT細胞枯渇のマーカーであり、かつ腫瘍抗原に対してより高い親和性を持つT細胞は一般的に枯渇する傾向が増大することが知られているので、CD8+LAG-3+T細胞のクローン増殖は、腫瘍反応性T細胞の比率が高くなり、これによりTIL療法に対するこの新たな手法の臨床的な結果が改善される可能性がある。従って本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較して腫瘍特異的LAG-3+T細胞の発生頻度を上昇させる、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0139】
実施例21は、TME刺激剤を幼若なTILの製造工程に添加することにより、CD28を発現するより幼若な表現型を有するCD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする既存の標準TIL手順に対する新たな改良が提供されたことを示している。本発明の一実施態様は、1種以上のTME刺激剤を使用しない場合に比較してCD28を発現するより幼若な表現型を有するCD8+T細胞の発生頻度を上昇させる、本発明による方法でのTME刺激剤の使用に関する。
【0140】
本明細書に提示の手法を使用することにより、生体内で許容されるよりも遥かに高い用量濃度が可能となる。従ってこの濃度を、生体内で許容される最大許容用量の少なくとも2倍高くしてもよい。この濃度は、生体内で許容される最大許容用量の例えば5~10倍にさらに高くしてもよい。従って1つ以上の実施態様では、物質の濃度は0.1 μg/mL~300 μg/mLである。この濃度をまた1 μg/mL~100 μg/mLにしてもよい。この濃度をまた10 μg/mL~100 μg/mLにしてもよい。この濃度をまた1 μg/mL~10 μg/mLにしてもよい。
【0141】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、1:固形腫瘍、2:ICIナイーブ腫瘍、3:MSI-H腫瘍、4:血液学的腫瘍、5:超変異腫瘍(例えばPOL-EおよびPOL-D変異腫瘍)、および6:ウイルス誘発性腫瘍からなる群から選択される癌種を治療する。
【0142】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、乳がん、腎細胞がん、膀胱がん、黒色腫、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、ホジキンリンパ腫、膵がん、肝がん、および肉腫からなる群から選択される癌種を治療する。
【0143】
1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、乳がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、腎細胞がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、膀胱がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、黒色腫を治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、子宮頸がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、胃がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、大腸がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、肺がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、頭頸部がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、卵巣がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、ホジキンリンパ腫を治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、膵がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、肝がんを治療する。1つ以上の実施態様では、T細胞の治療用集団を用いて、肉腫を治療する。
【0144】
1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約45日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約25日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(c)または(d)は、約30日~約40日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(b)は、約10日~約28日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(a)~(b)は、約10日~約20日の期間内に実施される。
【0145】
実施態様によっては、第1のTIL増殖(工程(a))は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、1日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、2日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、3日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、4日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、5日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、6日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、7日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、8日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、9日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、10日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、11日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、12日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、13日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、1日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、2日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、3日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、4日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、5日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、6日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、7日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、8日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、9日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、10日~11日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、11日間続行させてもよい。
【0146】
1つ以上の実施態様では、工程(b)は、約6日~約18日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、約7日~約14日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、約7日~約10日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、約6日~約12日の期間内に実施される。
【0147】
1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約10日~約28日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約10日~約20日の期間内に実施される。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される。
【0148】
実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から1日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1のTIL増殖は、2日~14日間続行させてもよい。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から3日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から4日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から5日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から6日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から7日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から8日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から9日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から10日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から11日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から12日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から13日~14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から14日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から1日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から2日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から3日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から4日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から5日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から6日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から7日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から8日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から9日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から10日~11日目に起こる。実施態様によっては、第1の増殖から第2の増殖への移行は、断片化が発生した時点から11日目に起こる。
【0149】
より多くのTILがより速く到達可能であることが、重要な知見の1つとなった。このことは、医療に関連付けるための必要な細胞が一定量存在することになるので高い価値がある。より速くより多くの細胞が得られることは生産のコストを削減し、またより速く患者に治療を提供することになる。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×106~1×107個の細胞、例えば2×106~5×106個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、5×106~1×107個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×106~5×107個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(b)は、1×107~5×107個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×1012個の細胞、例えば1×108~5×109個の細胞、例えば1×109~5×109個の細胞、例えば1×108~5×1010個の細胞、例えば1×109~5×1011個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、工程(b)での増殖後の細胞数に比較して、少なくとも104倍の増大、例えば少なくとも103倍の増大、例えば少なくとも102倍の増大、例えば少なくとも10倍の増大をもたらす。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×1010個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×109個の細胞を生成する。1つ以上の実施態様では、工程(c)は、1×107~1×108個の細胞を生成する。
【0150】
図13に示される実施例7は、実施例2に記載のように実施される標準的な幼若なTILの製造手順にTME刺激剤を添加することにより、TIL増殖が顕著に増強され、それによってより多くの腫瘍断片あたりの生存細胞数が生成されたことを示している。
図20に示す実施例8は、T細胞(またはそれらのリガンド)表面で発現する受容体を拮抗する、T細胞(またはそれらのリガンド)表面で発現する受容体を刺激する、消耗したT細胞(またはそれらのリガンド)を再活性化する、制御性T細胞を枯渇させる、かつ/あるいはCD28ファミリー(またはB7ファミリーのタンパク質に由来するそれらのリガンド)に由来するT細胞表面で発現する受容体を幼若なTILの処理工程に対し標的化するTME刺激剤を添加することにより、より高速なTIL療法の製造手順が可能となる既存の標準TIL手順に対する新たな改善がもたらされたことを示している。実施態様によっては、抗原提示フィーダー細胞(APC)はPBMCである。実施態様によっては、抗原提示フィーダー細胞(APC)は、同種異系フィーダー細胞である。実施態様によっては、抗原提示フィーダー細胞は、人工抗原提示フィーダー細胞である。一実施態様では、第2の増殖での抗原提示フィーダー細胞に対するTILの比率は、約1:25、約1:50、約1:100、約1:125、約1:150、約1:175、約1:200、約1:225、約1:250、約1:275、約1:300、約1:325、約1:350、約1:375、約1:400、または約1:500である。一実施態様では、第2の増殖での抗原提示フィーダー細胞に対するTILの比率は、1:50~1:300である。一実施態様では、第2の増殖での抗原提示フィーダー細胞に対するTILの比率は、1:100~1:200である。1つ以上の実施態様では、APCは人工APC(aAPC)である。
【0151】
一実施態様では、本開示のAPCを用いて増殖されたTILは、医薬組成物として患者に投与される。一実施態様では、医薬組成物は、滅菌緩衝液中のTILの懸濁液である。本開示のPBMCを用いて増殖されたTILは、当技術分野では既知の任意の適切な経路によって投与してもよい。実施態様によっては、T細胞は、好ましくは約30~60分間継続させる単一の動脈内または静脈内注入として投与される。他の適切な投与経路には、腹腔内、髄腔内、およびリンパ管内が含まれる。1つ以上の実施態様では、TILの治療用集団を患者に注入する。
【0152】
1つ以上の実施態様では、細胞は細胞培養物から取り出され、工程(c)を実施する前に貯蔵媒体中で凍結保存される。
【0153】
1つ以上の実施態様では、この方法はさらに、第1のTIL集団を、少なくとも1種のT細胞シグナル伝達分子のエンドドメインと融合した一本鎖可変断片抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む発現ベクターで形質導入する工程を含む。
【0154】
1つ以上の実施態様では、工程(c)はさらに、細胞培養培地から細胞を取り出す工程を含む。
【0155】
1つ以上の実施態様では、工程(a)はさらに、切除された腫瘍を複数の腫瘍断片に、例えば4~50個の断片、例えば20~30個の断片に処理することを含む。1つ以上の実施態様では、断片は約1~50 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約5~50 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約0.1~10 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約0.1~1 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約0.5~5 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約1~10 mm3のサイズを有する。1つ以上の実施態様では、断片は約1~3 mm3のサイズを有する。腫瘍を破壊するプロセスを説明するために本明細書で使用される用語「断片化(fragmenting)」、「断片(fragment)」、および「断片化された(fragmented)」は、腫瘍組織の粉砕、切断、分割、細切などの機械的な断片化方法、ならびに腫瘍組織の物理的構造を破壊するための任意の他の方法を含む。
【0156】
1つ以上の実施態様では、哺乳動物はヒトである。実施態様によっては、TILは腫瘍断片から得られる。実施態様によっては、腫瘍断片は、鋭利な切開によって得られる。実施態様によっては、腫瘍断片は約0.1 mm3~10 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約1 mm3~10 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約1 mm3~8 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約1 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約2 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約3 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約4 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約5 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約6 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約7 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約8 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約9 mm3である。実施態様によっては、腫瘍断片は約10 mm3である。実施態様によっては、腫瘍は1~4 mm×1~4 mm×1~4 mmである。実施態様によっては、腫瘍は1 mm×1 mm×1 mmである。実施態様によっては、腫瘍は2 mm×2 mm×2 mmである。実施態様によっては、腫瘍は3 mm×3 mm×3 mmである。実施態様によっては、腫瘍は4 mm×4 mm×4 mmである。現状では、かなり大きな断片サイズを必要とする(5 mm3以上)。本発明では、細胞がより最適化された方法で増殖しより速く治療に必要な細胞数に到達するので、より小さな断片の使用が可能となる。より小さな断片の使用は、例えば腫瘍が小さ過ぎるために、あるいは小さな腫瘍試料しか採取できなかったためにこれまで治療が可能でなかった患者が、今では治療可能となることを意味する。従って本発明の方法で使用される断片のサイズは重要なことである。
【0157】
実施態様によっては、腫瘍の内部構造を維持するために、腫瘍の断片化を実施する。実施態様によっては、腫瘍の断片化は、外科用メスで鋸引き運動を実行せずに実施される。実施態様によっては、TILは腫瘍消化物から得られる。実施態様によっては、腫瘍消化物は、限定はされないが、RPMI 1640、2 mMのGlutaMAX、10 mg/mLのゲンタマイシン、30 U/mLのDNA分解酵素、および1.0 mg/mLのコラーゲン分解酵素などの酵素培地中での培養、それに続く機械的分離(GentleMACS, Miltenyi Biotec, Auburn, CA)によって生成された。腫瘍を酵素培地中に入れた後に、腫瘍を約1分間機械的に分離してもよい。次いでこの溶液を5%のCO2中で37℃で30分間培養し、その後に再度約1分間機械的に破砕する。5%のCO2中で37℃で30分間再度培養した後に、腫瘍を再々度約1分間機械的に破砕してもよい。実施態様によっては、大きな組織片が存在する場合の3回目の機械的な破砕の後に、1回または2回の追加の機械的分離を、5%のCO2中で37℃での30分間の追加の培養の有無にかかわらず試料に対し実施した。実施態様によっては、細胞懸濁液が多数の赤血球または死滅細胞を含む場合に、最終の培養の終了時に、Ficollを用いる密度勾配分離を実施して、これらの細胞を取り除くことができる。
【0158】
1つ以上の実施態様では、細胞培養培地は、G-Rex容器およびXuri培養バッグからなる群から選択される容器で提供される。
【0159】
一側面は、前述の実施態様のいずれかの方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団に関する。
【0160】
さらなる側面は、癌を患う対象の治療における使用のための増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)に関し、この治療は、哺乳動物から切除された腫瘍からの第1のTIL集団の採取によって自己T細胞を培養する工程;IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物の癌の退縮が促進される。
【0161】
一実施態様では、本発明は、TILの集団で癌を治療する方法、あるいは癌を治療するためのTILの使用を含み、患者は、本開示によるTILの注入の前に非骨髄破壊的な化学療法で予め治療されている。一実施態様では、非骨髄破壊的な化学療法は、2日間(TIL注入前の7日目および2日目)に亘る60 mg/kg/日のシクロホスファミドの投与、および5日間(TIL注入前の5~1日目)に亘る25 mg/m2/日のフルダラビンの投与である。一実施態様では、非骨髄破壊的な化学療法および本開示によるTIL注入(0日目)の後に、患者は、生理学的な許容量まで、8時間毎に720,000 IU/kgでIL-2の静脈内注入を受ける。
【0162】
実施態様によっては、本開示は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の集団を用いて癌を治療する方法を提供し、この方法は、(a)患者から切除された腫瘍から第1のTIL集団を得る工程;(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む第1の細胞培養培地内で第1のTIL集団の第1の増殖を実施して、数が第1のTIL集団よりも少なくとも5倍多い第2のTIL集団を得る工程;(c)IL-2および抗CD3を含む第2の細胞培養培地内で骨髄性の人工抗原提示細胞(骨髄性aAPC)の集団を用いて第2のTIL集団の急速な増殖を実施して、急速な増殖の開始から7日後の数が第2のTIL集団よりも少なくとも50倍多い第3のTIL集団を得る工程;および(d)第3のTIL集団の治療有効分量を癌を患う患者に投与する工程を含む。実施態様によっては、本開示は、癌の治療に用いる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団を提供し、このTIL集団は、(b)患者から切除された腫瘍から得られた第1のTIL集団の第1の増殖を、IL-2を含む第1の細胞培養培地内で実施して、数が第1のTIL集団よりも少なくとも5倍多い第2のTIL集団を得る工程、(c)IL-2および抗CD3を含む第2の細胞培養培地内で骨髄性の人工抗原提示細胞(骨髄性aAPC)の集団を用いて第2のTIL集団の急速な増殖を実施して、急速な増殖の開始から7日後の数が第2のTIL集団よりも少なくとも50倍多い第3のTIL集団を得る工程;および(d)第3のTIL集団の治療有効分量を癌を患う患者に投与する工程を含む方法によって得られる。実施態様によっては、この方法は、患者から切除された腫瘍から第1のTIL集団を得る第1の工程(a)を含む。実施態様によっては、第2の細胞培養培地中に、IL-2は約3,000 IU/mLの初期濃度で存在し、抗CD3抗体は約30 ng/mLの初期濃度で存在する。実施態様によっては、第1の増殖は14日以内の期間に亘って実施される。実施態様によっては、第1の増殖は、ガス透過性容器を用いて実施される。実施態様によっては、第2の増殖はガス透過性容器を用いて実施される。実施態様によっては、急速な増殖でのaAPC集団に対する第2のTIL集団の比率は、1:80~1:400である。実施態様によっては、急速な増殖でのaAPC集団に対する第2のTIL集団の比率は、約1:300である。
【0163】
さらなる側面は、一方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団に関し、この方法は、哺乳動物から切除された腫瘍からの第1のTIL集団の採取によって自己T細胞を培養する工程;IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;および第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0164】
さらなる側面は、IL-2および1種以上のTME刺激剤を含むTILの治療用集団に関する。
【0165】
さらなる側面は、IL-2、1種以上のTME刺激剤、IL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)を含むTILの治療用集団に関する。
【0166】
以下の図表および実施例は、本発明を説明するために提供される。それらは例示を意図するものであり、決して限定的に解釈されるべきではない。
表
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
表45
【実施例0167】
実施例1:1種以上の免疫調節剤は、消耗したT細胞を生体外で再活性化する
【0168】
工程1.1:単一の免疫調節剤の効果
a)種々の患者からの切除されたTIL含有腫瘍組織を、1 cm3の組織あたり30~50個の腫瘍断片に切断して、24ウェルの細胞培養皿に移す。2 mLの細胞培養培地には、6,000 IU/mLのIL-2を含み、かつ表1に列記される各免疫調節剤を含まない(基準)、あるいは低濃度、中濃度、高濃度のいずれかの免疫調節剤を含む。
b)細胞培養皿を37℃かつ5%のCO2中で培養し、細胞培養培地は頻繁に交換する。細胞培養は、ウェルあたり1.5×106個の細胞まで増大させるべきではなく、新たなウェルに分割する必要がある。
c)数日後に細胞を採取して、細胞を計数してその量を決定し、かつ流動細胞計測法を用いて生存率および表現型によって解析する。
【0169】
工程1.2:PD1の共遮断および/または遮断/刺激の効果
a)PD1の遮断は、消耗したT細胞を再活性化する重要な経路として明確に特定されているので、IL-2、最適濃度の表1に列記のPD1およびその他の免疫調節剤、および表2~21に列記のIL-2との特定の組合せを含む新たな試験を設定して、かつ上述のように実施する。
【0170】
工程1.3:CTLA4の共遮断および/または遮断/刺激の効果
a)CTLA4の遮断は、消耗したT細胞を再活性化する重要な経路として明確に特定されているので、IL-2、最適濃度の表1に列記のPD1およびその他の免疫調節剤、および表22~41に列記のIL-2との特定の組合せを含む新たな試験を設定して、かつ上述のように実施する。
【0171】
工程2:免疫調節剤の濃度のできる限りのさらなる微調整
【0172】
工程3:組合せ効果の解明
a)新たな試験を、組合せ手法での第1の実験から最適濃度で最高に機能する免疫調節剤を用いて同様に設定して、上述と同一の読取り値を用いて同時にいくつかの免疫調節剤を添加して可能性のある相乗効果を測定する。
b)上述の試験を数回反復して実施し、最終的には、時間の短縮、増殖率の向上、および/または表現型の改善をもたらす組合せを明確にする。
【0173】
工程4:標準的なTIL製造手順に対する患者での最適な組合せの検証
a)第1のTIL培養増殖を、TIL療法に適格な多数の患者に対し並行して実施し、実際の患者環境での影響を検証する。
実施例2:TME刺激剤を用いる「幼若な」腫瘍浸潤リンパ球(TIL)
【0174】
本実施例は、TME刺激剤を用いて「幼若な」腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を生成する製造プロセスを示す。
【0175】
種々の組織学の腫瘍材料を、市販の供給源から入手した。別個の患者から14種の腫瘍または腫瘍消化物を得た(3種の卵巣がん、3種の転移性黒色腫、3種の頭頸部がん、2種の肺がん、2種の大腸がん、1種の子宮頸がん;表42)。滅菌凍結培地あるいは輸送培地中の凍結保存されたまたは新鮮な腫瘍材料をCbio A/S社に送付した。腫瘍材料は、層状のフローフード内で取り扱って無菌状態を維持した。
【0176】
TILを、標準的なTIL製造手順で過去の詳細な説明のように調製した(Friese, C. et al., CTLA-4 blockade boosts the expansion of tumor-reactive CD8+ tumor-infiltrating lymphocytes in ovarian cancer.「CTLA-4の遮断は、卵巣がんでの腫瘍反応性CD8+腫瘍浸潤リンパ球の増殖を促進する」Sci Rep 10, 3914 (2020);およびJin, J. et al., Simplified Method of the Growth of Human Tumor Infiltrating Lymphocytes in Gas-permeable Flasks to Numbers Needed for Patient Treatment,「患者の治療に必要な数までガス透過性フラスコ中でヒト腫瘍浸潤リンパ球を増殖する簡素な方法」Journal of Immunotherapy, 35 - Issue 3 (2012))。簡潔に言えば、TIL培養物を腫瘍断片または腫瘍消化物を用いて構築した。腫瘍を1~3 mm3の断片に分割して、その腫瘍を、6,000 IU/mLのIL-2(6,000 IU/mL、Clinigen社)単独(基準)を含む、あるいは低濃度、中濃度、高濃度、または超高濃度の表43に列記のPD-1/PD-L1拮抗剤(群A)、CTLA-4拮抗剤(群B)、LAG-3拮抗剤(群C)、TIGIT拮抗剤(群D)、4-1BB作用剤/抗CD3(群J)、およびCD28作用剤(群K)のそれぞれのTME刺激剤との組合せで10 mLの完全培地(CM)を備えるG-Rex 6ウェルプレート(WilsonWolf社;ウェルあたり5個の断片)中に、5%のCO2を含む37℃の湿潤培養器内で配置した。4~5日毎に、総量が40 mLに到達するまでCMを添加した。続いて4~5日毎に、培地の半分を取り出してCMおよびIL-2で置換した。腫瘍消化物からのTIL培養を、250 μLのCMおよびIL-2(6000 IU/mL、Clinigen社)の平底の96ウェルプレートで一晩酵素消化して得られた単細胞懸濁液(5×105個/mL)を5%のCO2を含む37℃の湿潤培養器中での培養によって開始した。2~3日毎に、その培地の半分を取り出してCMで置換した。
【0177】
CMは、GlutaMAX、25 mMのpH 7.2のHEPES(Gibco社)、10%の熱不活化ヒトAB血清(Sigma-Aldrich社)、100 U/mLのペニシリン、100 μg/mLのストレプトマイシン(Gibco社)、および1.25 μg/mLのファンギゾン(Bristol-Myers Squibb社)を含むRPMI1640から構成されていた。
【0178】
本実施例は、TME刺激剤を用いる10~28日齢の「幼若な」腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の生成を示している。
実施例3:TME刺激剤を用いる「幼若な」TIL培養物の表現型解析
【0179】
本実施例は、実施例2の記載のように行われたTME刺激剤を用いた「幼若な」TIL培養物の表現型解析を示す。
【0180】
幼若なTIL世代として指定された培養物が採取された際に、それらの表現型を流動細胞計測法によって評価した。
【0181】
TIL表現型を、生存率の評価、およびCD3+の分画、CD3+CD8+の分画、CD3+CD4+分画、およびNK分画での発生頻度および細胞の絶対数の両方の評価によって決定した。さらに、分化状態、活性化状態、枯渇マーカーの発現、およびTILの老化を評価した。流動細胞計測法を、以下のマーカーを用いて実施した:
TIL検討1:CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD56、CCR7、FVS780、BTLA、LAG-3、PD-1、TIM-3
TIL検討2:CD3、CD4、CD8、CD45RA、CD56、CCR7、FVS780、CD27、CD28、CD57、CD69
【0182】
簡潔に言えば、検討毎に約0.5×106個の幼若なTILを洗浄して、次いで用量設定された抗体(BD Biosciences社、表45)およびBrilliant Stain Buffer(BD Biosciences社)とともに4℃で30分間培養した。細胞をPBSで2回洗浄して、流動細胞計測法(CytoFLEX、Beckman Coulter社)によって直接的に解析した。
【0183】
本実施例は、TME刺激剤を用いた「幼若な」TIL培養物の表現型解析を示す。
実施例4:TME刺激剤は、生体外でのTIL増殖の成功率を高めた
【0184】
本実施例は、実施例2の記載のようにTIL培養が開始された場合に、TME刺激剤を培養培地に添加した際の生体外でのTIL増殖の成功率が高くなったことを示す。
【0185】
TIL増殖の成功率を、TIL培養物を採取した際の腫瘍断片あたりの細胞数を測定することにより調査した。5×104個のTIL/断片を、TIL培養の成功を判断する閾値として設定した。
【0186】
TIL増殖の成功率の決定では、
図2および
図3に示すように、TME刺激剤が「幼若な」TIL培養物に添加された場合に、基準培養物の61.5%に比較してTIL培養物の成功率が高くなったことを示している(アベルマブ:68%、レラトリマブ:70%、チラゴルマブ:76.5%、ペンブロリズマブ:82.1%、イピリムマブ:88.5%、セラリズマブ:90.9%、ニボルマブ:92.3%、およびウレルマブ/OKT3:100%)。
【0187】
TME刺激剤をそれらの標的に従って群とすると、本実施例はまた、
図4および5に示すように、基準培養物の61.5%に比較して各群ではそれぞれ、群C(70%、LAG-3阻害剤)、群A(76.3%、PD1およびそのリガンドPD-L1の阻害剤など)、群D(76.5%、TIGIT阻害剤)、群B(88.5%、CTLA-4およびそのリガンドの阻害剤)、群K(90.9%、CD28作用剤)、および群J(96.3%、抗CD3を伴う4-1BB作用剤)と、TIL培養の成功率が高くなったことを示している。
【0188】
本実施例は、標準のTIL製造手順に比較して、TIL培養が開始された場合に、TME刺激剤を培養培地に添加した際の生体外でのTIL増殖の成功率が高くなったことを実証する。
実施例5:チェックポイントの遮断または共刺激は、TILの収量を上昇させかつTILの培養時間を短縮した
【0189】
本実施例は、実施例2の記載のように、TIL培養が開始かつ行われた場合に、TME刺激剤を培養培地に添加した際にTIL収量が上昇しかつTILの培養時間が短縮したことを示す。
【0190】
TIL培養物を採取する際のTIL収量およびTILの培養時間を調査した。この解析は、IL-2単独で培養されたTILに比較して、TIL培養が開始された場合に、TME刺激剤が培養培地に添加された際にTIL収量が上昇しかつ培養時間が短縮されたことを示している(
図6)。ここでは、群Kおよび群JのTME刺激剤だけが幼若なTIL培養時間を短縮したのではなく、群A、群B、および群Cの刺激剤も標準の幼若なTIL手順に比較して同様により高い成長速度を誘導したことが示されている。特に群Jの刺激剤を群Aおよび/または群Bの刺激剤のいずれかと2重または3重に組み合わせると、さらに成長速度が加速した。
【0191】
本実施例は、標準のTIL製造手順に比較して、TIL培養が開始された場合に、TME刺激剤が培養培地に添加された際にTIL収量が上昇しかつTILの培養時間が短縮したことを実証する。
実施例6:種々の濃度のTME刺激剤は、生体外でのTIL増殖を誘発した
【0192】
実施例2の記載のように行われた本実施例は、種々の腫瘍種からのTIL培養が開始された場合に、TME刺激剤を種々の濃度で培養培地に添加した際にTIL収量が上昇したことを示す。
【0193】
TIL培養物を採取する際のTIL増殖の収量を調査した。
図7の第1の分析には、TIL培養が開始された場合に、低濃度、中濃度、および高濃度のCTLA-4拮抗剤であるイピリムマブ(群B)を培養培地に添加した際に、IL-2の単独に比較して、TIL増殖がそれぞれ1.15倍、1.85倍、および1.53倍増強したことを示す。本実施例は、TIL培養が用量依存的に開始された場合に、CTLA-4拮抗剤(群B)が培養培地に添加されるとTIL収量が上昇したことを示す。用いたCTLA-4拮抗剤(イピリムマブ)はまた、抗体依存性の細胞毒性(ADCC)によってCTLA-4を発現するT細胞を枯渇させることが知られているが、この新たな知見は、どのようにT細胞の特定の部分集合を枯渇させることにより他のT細胞の増殖速度を加速して、それによって全体的なTIL収量を上昇できるかを提示している。
【0194】
図8には、TIL培養が開始された場合に、低濃度、中濃度、または高濃度のPD-1拮抗剤であるペンブロリズマブ(群A)を培養培地に添加した際に、TIL収量が標準的な幼若なTIL手順に比較して用量依存的に上昇する傾向を示した。
【0195】
図9~12には、標準的な幼若なTIL手順に比較して、類似のTIL収量の用量依存的効果を、それぞれ4-1BB作用剤である抗CD3(OKT3)を伴うウレルマブ(群J)、CD28作用剤であるセラリズマブ(群K)、PD-L1阻害剤であるアベルマブ(群A:PD-1のリガンド)、および別のPD-1阻害剤であるニボルマブ(群A)について示す。
【0196】
本実施例6は、どのように種々の濃度のTME刺激剤が、TIL増殖に対し用量依存的に影響を及ぼしたかを実証している。
実施例7:全体としてかつ個々の群からのTME刺激剤は、TIL増殖を促進する
【0197】
図13に示す実施例7は、実施例2での記載のように行われた標準的な幼若なTIL手順へのTME刺激剤の添加が、TIL増殖を顕著に増強して腫瘍断片あたりより多くの生存細胞を生成したことを示す。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0198】
TME刺激剤を基本となる部分群に分けると、本実施例はまた、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)、および群K(CD28作用剤)の阻害剤の添加がまたTILの増殖を顕著に増大させたことを示している。本実施例では顕著ではないが、群C(LAG-3阻害剤)および群D(TIGIT阻害剤)からのTME刺激剤の添加もまた、TILの増殖を改善する傾向があった。
【0199】
図14~19では、上述と同一の群からの初期のTIL培養物へのTME刺激剤の添加の効果が、それぞれ頸部がん、黒色腫、卵巣がん、頭頸部がん、肺がん、および大腸がんで例証されている。全ての条件で顕著ではないが、この効果は
図13の全ての腫瘍例としての癌の間で類似のパターンを示すものの、種々の癌で個々の刺激因子の効果およびその程度は変動していた。
【0200】
本実施例を纏めると、TME刺激剤の幼若なTIL処理工程への添加は、より迅速なTIL療法の製造手順を可能とする、既存の標準TIL手順に対する新たな改善を提供した。
実施例8:TIL刺激作用剤、拮抗剤、T細胞枯渇剤、T細胞再活性化剤、およびCD28ファミリー起源の刺激剤は、TIL成長速度を顕著に向上させた
【0201】
図20に示す実施例8は、実施例2での記載のように行われた標準の幼若なTIL手順へのTME刺激剤の添加が、TIL増殖を顕著に増強して腫瘍断片あたりより多くの生存細胞を生成したことを示す。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0202】
TME刺激剤をそれらの機能に従って部分群に分けると、本実施例はまた、T細胞の拮抗剤、作用剤、再活性化剤、枯渇剤、およびCD28ファミリーの受容体メンバーの全てが、TIL増殖に顕著な影響を及ぼしたことを示す。2種の異なるPD-1阻害剤(ペンブロリズマブおよびニボルマブ)、2種の異なるPD-L1阻害剤(アベルマブおよびデュルバルマブ)、CTLA-4阻害剤(イピリムマブ)、TIGIT阻害剤(ティラゴルマブ)を含む、ここに例示の代表的な量の種々のTME拮抗剤は、標準的な幼若なTIL工程に対して3~5倍の増大を示したが、4-1BB(抗CD3(OKT3)を伴うウレルマブ)およびCD28(セラリズマブ)を標的化する刺激剤によってここで例示されるTME作用剤は、遥かに高速で増殖を促進するように見受けられた。
【0203】
さらにTME拮抗剤を、それらがイピリムマブおよびチラゴルマブなどの抗体依存性細胞毒性(ADCC)による制御性T細胞の枯渇を可能にするか否か、あるいはチェックポイント阻害によるT細胞の再活性化のみを可能にするか否かに分類してみても、
図20に示すように、標準的な幼若なTIL手順条件に対して、両方ともTIL増殖速度に顕著な改善があることが実証された。
【0204】
PD-1、CTLA-4、およびCD28の阻害剤によってここに例示されるタンパク質のCD28ファミリーに由来するTME刺激剤、あるいはPD-L1の2種の異なる阻害剤によってここに例示されるタンパク質のB7ファミリーに由来するそれらのリガンドについて具体的に見ると、それらはまた標準の幼若なTIL手順に比較して、TIL増殖を顕著に向上させることが実証された。ここには示されていないが、BTLAやICOSなどのCD28タンパク質ファミリーに由来するT細胞表面に発現されるその他の受容体が、幼若なTIL培養に対して類似の増殖刺激効果をもたらす可能性がある。
【0205】
図21~26では、本実施例での上述と同一の群からの初期のTIL培養物へのTME刺激剤の添加の効果が、それぞれ、黒色腫、卵巣がん、肺がん、子宮頸がん、大腸がん、および頭頸部がんについて例証された。全ての条件で顕著ではないが、その効果は
図20に全ての腫瘍例としての癌の間で類似のパターンを示すものの、種々の癌での個々の刺激因子の効果およびその程度は変動していた。
【0206】
本実施例を要約すると、T細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗するか、T細胞表面に発現される受容体に作用するか、消耗したT細胞(またはそれらのリガンド)を再活性化するか、制御性T細胞を枯渇させるか、かつ/あるいはCD28ファミリーに由来するT細胞表面に発現される受容体(またはB7ファミリーのタンパク質に由来するそれらのリガンド)を幼若なTIL処理工程に標的化するかのいずれかであるTME刺激剤の添加により、より高速のTIL療法の製造手順が可能となる、既存の標準TIL手順に比較して新たな改善がもたらされた。
実施例9:T細胞またはそのリガンド表面に発現される受容体を標的とするTME刺激剤である拮抗剤は、類似のTIL増殖刺激効果を示した
【0207】
図27に示す実施例9は、実施例2での実施のように標準の幼若なTIL手順へのTME刺激剤の添加によりTILの増殖が大幅に向上し、結果としてT細胞表面に発現される受容体(この場合はPD-1)あるいは腫瘍細胞および腫瘍微小環境内の他の細胞表面に発現されるそのリガンド(PD-L1)のいずれかを刺激することによって腫瘍断片あたりより多くの生存細胞が生成したことを示す。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。これは、T細胞活性を下方制御することが知られているT細胞表面に発現される受容体の阻害が、それらのリガンドの阻害に対してどの程度の類似の効果を持つのか、かつこの両方が、消耗したT細胞を再活性化しかつ幼若なTIL増殖を向上させるTIL増殖に対して類似の効果を生み出す可能性があるのかを示す一例となった。従ってPD1/PD-L1の実施例は、CTLA-4、LAG-3、TIGIT、KIR、TIM-3、BTLA、およびそれらのリガンドなどのT細胞表面に発現される他の受容体での受容体/リガンド阻害に対してより一般的な傾向を例示するものであった。
【0208】
図28~33では、標準的なTIL製造手順、PD-1群、あるいはPD-L1群のいずれかからの初期のTIL培養物へのTME刺激剤の添加の効果が、それぞれ卵巣がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、大腸がん、および子宮頸がんで例証された。全ての条件で顕著ではないが、この効果は、
図27の全ての腫瘍でのPD-1/PD-L1の例としてそれぞれの癌の間で類似のパターンを示した。
実施例10:種々の製造業者からのTME刺激剤は、類似のTIL増殖刺激効果を示した
【0209】
図34に示す実施例10は、種々の製造業者からのTME刺激剤の添加が、実施例2の記載のように行われた標準的な幼若なTIL手順に添加された場合に類似の効果を持ち、製造元に依らずにTIL増殖が著しく増強されて腫瘍断片あたりより多くの生存細胞を生成したことを示す。このことは、卵巣がん、黒色腫、頭頸部がん、および子宮頸がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0210】
2種のPD-1阻害剤(ペンブロリズマブ;Merck Sharp & Dome社、およびニボルマブ;Bristol Myers Squibb社)および2種のPD-L1阻害剤(アベルマブ;Merck KgaA社、およびデュルバルマブ;AstraZeneca社)を本実施例で試験した。全ての種々のTME刺激剤は、TILの増殖を加速する能力について標準的な幼若なTIL手順よりも顕著な改善を示した。4種の種々の抗体は、群Aに比較してならびに個々の阻害剤同士では類似の効果を示す傾向があった。
【0211】
これは、一般的に種々の製造業者からのTME刺激剤ではどの程度の互換性があり、かつその使用により幼若なTIL製造プロセスを如何に最適化できるかを示す一例となった。
【0212】
図35~38では、種々の製造業者からの群Aの阻害剤を初期のTIL培養物に添加する効果が、それぞれ卵巣がん、黒色腫、頭頸部がん、および子宮頸がんについて実証された。全ての条件で顕著ではないが、この効果として、
図34の全ての腫瘍での例としてのそれぞれの癌の間で類似のパターンを示した。
実施例11:TME刺激剤の組合せにより、さらに幼若なTIL増殖が増強した
【0213】
実施例2の記載のように行われた本実施例は、種々の腫瘍種からのTIL培養が開始された場合に、種々の組合せのTME刺激剤が培養培地に添加された際に標準のTIL製造手順に比較してTIL収量が上昇したことを示す。
【0214】
TIL培養物を採取する際にTIL収量を調査した。
図39に示す第1の分析では、群A(PD-1阻害剤またはそのリガンド)または群B(CTLA-4阻害剤)のTME刺激剤を添加した場合に、あるいは群Aおよび群Bの両方を添加した場合に、標準の幼若なTIL手順に比較して、TILの増殖が顕著に増強したことを示す。顕著ではないが、群Aおよび群BのTME刺激剤を同時に添加すると、さらにTILの増殖速度が向上する傾向があった。
【0215】
図40に説明の別の分析では、4-1BB作用剤である抗CD3(OKT3)を伴うウレルマブ(群J)の単独、あるいはCTLA-4阻害剤であるイピリムマブ(群B)との組合せ、あるいはPD-1阻害剤であるペンブロリズマブ(群A)との組合せ、あるいはイピリムマブおよびペンブロリズマブの両方との3成分の組合せのいずれかでは、全て、種々の癌からの腫瘍断片あたりの生存細胞数において非常に強いTIL増殖を示した。
【0216】
図41では、幼若なTIL培養物へのウレルマブ/OKT3の添加における時間遅延の影響を調査した。ここでは、初期の幼若なTIL培養に添加されたウルルマブ/OKT3、イピリムマブ、およびペンブロリズマブの3成分の組合せの0日目(図の左側)を、イピリムマブおよびペンブロリズマブを添加し2日間待機してウレルマブ/OKT3を添加した時間遅延(図の右側)と比較した。2つの条件の間に有意差はなく、両方の条件で非常に強いTIL増殖が示された。
【0217】
図42では、セラリズマブを単独で(図の左側)、あるいはイピリムマブおよびペンブロリズマブの両方との組合せで、初期の幼若なTIL培養物に添加する効果を調査した。顕著ではないが、3成分の組合せは、セラリズマブ単独に比較して幼若なTILにおいてより速い増殖率を誘発する傾向があった。
実施例12:TME刺激剤を単独であるいは組合せで使用すると、生体外でのTIL増殖の成功率が上昇した
【0218】
本実施例は、実施例2の記載のように行われたTIL培養の開始中に、TME刺激剤が培養培地に添加された場合に生体外でのTIL増殖の成功率が上昇したことを示す。
【0219】
TIL増殖の成功率は、TIL培養物を採取する際の腫瘍断片あたりの細胞数を測定して調査した。5×104個のTIL/断片をTIL培養の成功の閾値として設定した。
【0220】
TIL増殖の成功率の測定では、
図43に示すように、種々の群からのTME刺激剤が単独あるいは組合せのいずれかで「幼若な」TIL培養物に添加された場合に、基準の培養物の61.5%に比較してTIL培養物の成功率が上昇したことを示している(群A:76.3%、群B:88.5%、群J:100.0%、群A+B:83.3%、群B+J:100.0%、群A+J:100.0%、および群A+B+Jの3成分の組合せ:96.0%)。
【0221】
本実施例では、標準のTIL製造手順に比較して、TIL培養が開始された場合に、TME刺激剤を単独または組合せで培養培地に添加した際の生体外でのTIL増殖の成功率が上昇したことが実証された。
実施例13:種々の群からのTME刺激剤は、全体としてかつ組合せで、T細胞の発生頻度および数を向上する
【0222】
図44~47に示す実施例13は、実施例2での記載のように行われた標準の幼若なTIL手順へのTME刺激剤の添加、および実施例3での記載のように抗CD3の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、TILの増殖が顕著に向上し、結果としてIL-2の単独に比較してT細胞の発生頻度が上昇したこと(
図44)、かつ腫瘍断片あたりにより多数の生存T細胞が生成されたこと(
図46)を示す。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0223】
TME刺激剤を基本となる部分群に分解すると、本実施例はまた、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)または群B(CTLA-4およびそのリガンドの阻害剤)からの阻害剤の添加がまた、IL-2の単独に比較して、T細胞の再活性化によって顕著にT細胞の発生頻度を上昇させたことを示していた(
図45)。腫瘍抗原に対してより高い親和性を持つT細胞は、消耗する傾向が増大する可能性があるので、このことは、より高い腫瘍反応性のT細胞の増殖に繋がる可能性がある。さらに本実施例では、群BのTME刺激剤の添加はまた、群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)あるいは群J、A、およびBの組合せに比較して、T細胞の発生頻度も大幅に上昇することが示された(
図45)。
【0224】
TME刺激剤を基本となる部分群に分解すると、本実施例はまた、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4およびそのリガンドの阻害剤)、群K(CD28作用剤)、および群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からの阻害剤の添加が、IL-2の単独に比較して腫瘍断片あたりの生存T細胞の数を顕著に増加させたことを示している(
図47)。さらに本実施例はまた、群J、AおよびBからのTME刺激剤の組合せの添加がまた、群A、群B、あるいは群Aと群Bの組合せに比較して、腫瘍断片あたりの生存T細胞の数を顕著に増加させたことを示している(
図47)。さらに群JからのTME刺激剤の単独の添加に比較して、群J、AおよびBからのTME刺激剤の組合せを添加した際に断片あたりの細胞数がより多くなる傾向があった(
図47)。
【0225】
本実施例を要約すると、TME刺激剤の幼若なTIL製造工程への添加は、T細胞の発生頻度の上昇および生存T細胞の数の増大を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL手順に対する新たな改善を提供した。
実施例14:種々の群からのTME刺激剤は、全体としてかつ組合せで、エフェクターメモリーT細胞の発生頻度を維持する
【0226】
図48に示す実施例14は、実施例2の記載のように行われた標準の幼若なTIL製造手順へのTME刺激剤の添加、および実施例3の記載のように抗CD3、抗CD45RA、および抗CCR7の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、IL-2の単独に比較して、CD4+T細胞中でのエフェクターメモリーT細胞の生成頻度が顕著に上昇し、かつCD8+T細胞中でのエフェクターメモリーT細胞の発生頻度が僅かに上昇したことを示している。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0227】
本実施例を要約すると、TME刺激剤の幼若なTIL製造工程への添加は、エフェクターメモリーT細胞の同等の発生頻度を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL手順に対する新たな改善を提供した。
実施例15:TME刺激剤の組合せにより、CD8+T細胞の発生頻度および数が増大する
【0228】
図49~50に示す実施例15は、実施例2の記載のように行われた標準の幼若なTIL製造手順への群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、および群B(CTLA-4およびそのリガンドの阻害剤)からのTME刺激剤の組合せの添加、および実施例3の記載のように抗CD3および抗CD-8の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、CD8+T細胞の増殖が顕著に増強され、結果としてIL-2の単独に比較してCD8+T細胞の発生頻度(
図49)および数(
図50)が大幅に増大した。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0229】
本実施例はまた、標準の幼若なTILへの群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、および群B(CTLA-4の阻害剤)からのTME刺激剤の組合せの添加が、群A、群B、または群JのTME刺激剤の単独での添加に比較して、CD8+T細胞の増殖を増強する傾向を示したことを実証している(
図49)。さらに本実施例は、群J、群A、および群BからのTME刺激剤の組合せの添加により、群Aまたは群Bの単独に比較して生存CD8+T細胞の数が顕著に増大し、かつ群Jの単独に比較して生存CD8+T細胞の数が増大する傾向を示したことを実証している。(
図50)。
【0230】
TIL注入産物中でのCD8+T細胞の発生頻度の上昇は、以前から転移性黒色腫を患う患者でのTIL療法の有益な臨床的成果に関連するとされていた(Radvanyi, L. G. et al., Specific lymphocyte subsets predict response to adoptive cell therapy using expanded autologous tumor-infiltrating lymphocytes in metastatic melanoma patients.「特定のリンパ球の部分集合は、転移性黒色腫の患者での増殖された自己腫瘍浸潤リンパ球を用いる養子細胞療法に対する応答を期待させる」Clin. Cancer Res. 18, 6758-6770 (2012))。従ってCD8+T細胞の発生頻度を上昇させる方法は、標準のTIL手順を用いて製造されたTILに応答しない癌患者での臨床応答性を誘発できる可能性がある。
【0231】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程への単独かつ組合せによるTME刺激剤の添加は、CD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
実施例16:TME刺激剤の組合せにより、CD4+T細胞の発生頻度が低下する
【0232】
図51に示す実施例16は、実施例2の記載のように行われた標準の幼若なTIL手順への群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)、群A(PD1とそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、および群B(CTLA-4の阻害剤を含む)からのTME刺激剤の組合せの添加、および実施例3の記載のように抗CD3および抗CD4の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、CD4+T細胞の増殖が顕著に減少し、結果としてIL-2の単独に比較してCD4+T細胞の発生頻度が顕著に低下した(
図51)。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0233】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程へのTME刺激剤の添加は、CD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
実施例17:種々の群からのTME刺激剤により、NK細胞の発生頻度が低下する
【0234】
図52に示す実施例17は、実施例2の記載のように行われた標準の幼若なTIL手順への群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)または群B(CTLA-4の阻害剤)からのTME刺激剤の添加、および実施例3の記載のように抗CD3および抗CD56の流動細胞計測用抗体を用いるNK細胞の染色により、T細胞が顕著に再活性化され、結果としてIL-2の単独に比較してNK細胞の発生頻度が低下した。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0235】
さらに本実施例は、群BからのTME刺激剤の添加が、群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)および群K(CD28作用剤)に比較して、NK細胞の発生頻度を低下させる傾向を示したことを実証している。
【0236】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程へのTME刺激剤の添加は、NK細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
実施例18:種々の群からのTME刺激剤あるいはそれらの組合せは、NK細胞および総T細胞およびCD8+T細胞の発生頻度に明確に影響を及ぼす
【0237】
図53および
図54に示す実施例18は、実施例2の記載のように行われる標準的な幼若なTIL手順へのウレルマブ/OKT3(群J)の単独あるいはペンブロリズマブ(群A)またはイピリムマブとペンブロリズマブ(群B+群A)との組合せでの添加、および実施例3の記載のように抗CD3、抗CD56、および抗CD8の流動細胞計測用抗体を用いるNK細胞およびT細胞の染色により、NK細胞が再活性化され、結果として1種の頭頸部がん試料でのIL-2の単独に比較して、NK細胞の発生頻度が上昇しかつT細胞の発生頻度が低下したことが示されている(
図53)。このNK細胞の再活性化は、T細胞を再活性化するTIL培養物にウレルマブ/OKT3とともにイピリムマブを添加して阻害され、結果として標準的な幼若なTIL製造手順へのウレルマブ/OKT3(群J)の単独で、あるいはペムブロリズマブ(群A)またはイピリムマブとペンブロリズマブ(群B+群A)との組合せでの添加に比較して、NK細胞の発生頻度が低下しかつT細胞の発生頻度が上昇した。このことは、頭頸部がんの代表的な試料を用いて例証された。
【0238】
さらに本実施例では、ウレルマブ/OKT3(群J)とイピリムマブ(群B)の添加は、ウレルマブ/OKT3単独、ウレルマブ/OKT3とペンブロリズマブ(群A)、ならびにウレルマブ/OKT3とイピリムマブとペンブロリズマブに比較して、CD8+T細胞の発生頻度が低下したことが実証された(
図54)。
【0239】
従って本実施例では、ウレルマブ/OKT3(群J)とイピリムマブ(群B)とペンブロリズマブ(群A)の添加が、ウレルマブ/OKT3とイピリムマブのみに比較して好ましい可能性があることが実証された。
【0240】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程へのTME刺激剤の添加は、NK細胞の生成頻度の低下およびCD8+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
実施例19:時間遅延により添加されたTME刺激剤の組合せにより、CD3+およびCD8+T細胞の発生頻度が上昇し、かつNK細胞およびCD4+T細胞の発生頻度が低下する
【0241】
図55に示す実施例19では、実施例2の記載のように行われる標準的な幼若なTIL手順への0日目の群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)および群B(CTLA-4の阻害剤)からのTME刺激剤と2日目のJ群(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の組合せの添加、および実施例3の記載のように抗CD3、抗CD56、抗CD8、および抗CD4の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、0日目の同一の群(A、B、およびJ)のTME刺激剤の添加に比較して、T細胞およびCD8+T細胞の増殖が増強され、結果として総T細胞の(CD3+)およびCD8+T細胞の発生頻度が上昇し(
図55)かつNK細胞およびCD4+T細胞の発生頻度が低下したことが実証された。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。時間遅延は、群Jの作用剤を添加する前に、制御性CD-4+T細胞を枯渇させかつCD-8+T細胞を再活性化する群Aおよび群Bの拮抗剤の効果をより強くできるように見受けられる。
【0242】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程への時間遅延を伴うTME刺激剤の添加は、総T細胞およびCD8+T細胞の発生頻度の上昇ならびにNK細胞およびCD4+T細胞の発生頻度の低下を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
実施例20:TME刺激剤の単独または組合せは、LAG3+T細胞の発生頻度を高める
【0243】
図56および
図57に示す実施例20は、実施例2の記載のように行われる標準的な幼若なTIL手順への群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、群K(CD28作用剤)、または群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の単独あるいは組合せでの添加、および実施例3の記載のように抗CD3、抗CD8、抗CD4、および抗LAG-3の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、IL-2の単独と比較して、腫瘍特異的T細胞の再活性化が増強され、結果としてCD4+およびCD8+T細胞の両方でLAG-3+T細胞の発生頻度が上昇したことを実証する(
図56)。特にCD4+LAG-3+T細胞の発生頻度は、群Aおよび群BからのTME刺激剤を添加した場合に顕著により高くなった。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0244】
さらに本実施例は、実施例19に記載の時間遅延による群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、または群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の組合せの添加は、群A、B、およびJからのTME刺激剤の組合せの添加に比較して、腫瘍特異的CD8+T細胞の再活性化が増強され、結果としてCD8+LAG-3+T細胞の発生頻度が上昇する傾向が示された(
図57)。
【0245】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程へのTME刺激剤の添加は、腫瘍特異的LAG-3+T細胞の発生頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。LAG-3はT細胞枯渇マーカーであり、かつ腫瘍抗原に対してより高い親和性を持つT細胞は一般的に枯渇する傾向が強いことが知られているので、CD8+LAG-3+T細胞のクローン増殖では、腫瘍反応性T細胞の比率がより高くなり、TIL療法に対するこの新規の手法の臨床的成果が改善される可能性がある。
実施例21:TME刺激剤により、CD28+であるより幼若な表現型を持つCD8 T細胞の発生頻度が上昇した
【0246】
図58に示す実施例21は、実施例2の記載のように行われる標準的な幼若なTIL手順への群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、群K(CD28作用剤)、または群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の単独あるいは組合せでの添加、および実施例3の記載のように抗CD3、抗CD8、および抗CD28の流動細胞計測用抗体を用いるT細胞の染色により、IL-2の単独に比較して、より幼若な表現型を持つT細胞の増殖が増強され、結果としてCD8+CD28+T細胞の発生頻度が上昇した(
図58)。このことは、卵巣がん、頭頸部がん、大腸がん、黒色腫、子宮頸がん、大腸がん、および肺がんを含む種々の固形癌からの代表的ないくつかの腫瘍断片を用いて例証された。
【0247】
さらに本実施例は、群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、または群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の組合せの添加は、群Aまたは群BからのTME刺激剤の単独での添加に比較して、より幼若な表現型を持つT細胞の増殖を増強させて、結果としてCD8+CD28+T細胞の発生頻度が上昇する傾向を示した(
図58)。
【0248】
さらに本実施例は、実施例19に記載の時間遅延による群A(PD1およびそのリガンドであるPD-L1の阻害剤など)、群B(CTLA-4の阻害剤)、および群J(抗CD3を伴う4-1BB作用剤)からのTME刺激剤の組合せの添加により、群Aまたは群BからのTME刺激剤の単独の添加あるいは時間遅延の無い群A、群B、および群JからのTME刺激剤の組合せの添加に比較して、より幼若な表現型を持つT細胞の増殖が増強して、結果としてCD8+CD28+T細胞の生成頻度が上昇する傾向があったことを示している(
図58)。
【0249】
本実施例を要約すると、幼若なTIL処理工程へのTME刺激剤の添加は、CD28を発現するより幼若な表現型を持つCD8+T細胞の生成頻度の上昇を含むTIL産物の生成を可能にする、既存の標準TIL製造手順に対する新たな改善を提供した。
[項目]
【0250】
項目1:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖して、哺乳動物での癌の退縮を促進する方法であって、この方法は、
(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;
(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および
(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物内の癌の退縮が促進される。
【0251】
項目2:増殖させた腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の投与を含む、癌を患う対象を治療する方法であって、この方法は、
(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;
(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および
(d)非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物内の癌の退縮が促進される。
【0252】
項目3:腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をTILの治療用集団に増殖する方法であって、この方法は、
(a)哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
(b)IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;および
(c)第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0253】
項目4:1種以上のTME刺激剤は、
(x)T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる1種以上の物質;
(y)T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現する受容体を刺激かつ/あるいは促進できる1種以上の物質;
(z)T細胞の下方制御、非活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる1種以上の物質;
(v)制御性T細胞を下方制御かつ/あるいは消耗させて、それによって生体外エフェクターT細胞の増殖を促進できる1種以上の物質;および
(w)表2~41に列記される(x)、(y)、(z)および/または(v)の群からの1種以上の物質の特定の組合せからなる群から選択される、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0254】
項目5:1種以上のTME刺激剤は、例えば抗PD1、抗PD-L1、抗PD-L2、抗CTLA-4、抗LAG3、抗A2AR、抗B7-H3、抗B7-H4、抗BTLA、抗IDO、抗HVEM、抗IDO、抗TDO、抗KIR、抗NOX2、抗TIM3、抗ガレクチン9、抗VISTA、抗SIGLEC7/9などの1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤であり、必要に応じて1種以上のチェックポイント阻害剤またはそれらのリガンドの阻害剤はまた第2の増殖に添加される、項目1~4のいずれかに記載の方法。
【0255】
項目6:T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっているT細胞(またはそれらのリガンド)表面に発現される受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、
A:T細胞表面のPD-1受容体を介して作用する物質;
B:T細胞表面のCTLA-4受容体を介して作用する物質;
C:T細胞表面のLAG-3受容体を介して作用する物質;
D:T細胞表面のTIGIT/CD226受容体を介して作用する物質;
E:T細胞表面のKIR受容体を介して作用する物質;
F:T細胞表面のTIM-3受容体を介して作用する物質;
G:T細胞表面のBTLA受容体を介して作用する物質;および
H:T細胞表面のA2aR受容体を介して作用する物質からなる群から選択される、項目1~5のいずれかに記載の方法。
【0256】
項目7:群Aの物質は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、sym021、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブからなる群からの1種以上から選択される、項目6に記載の方法。
【0257】
項目8:群Bの物質は、イピリムマブおよびトレメリムマブからなる群からの1種以上から選択される、項目6または7に記載の方法。
【0258】
項目9:群Cの物質は、レラトリマブ、エフチラギモα、およびsym022からなる群からの1種以上から選択される、項目6~8のいずれかに記載の方法。
【0259】
項目10:群Dの物質はチラゴルマブである、項目6~9のいずれかに記載の方法。
【0260】
項目11:群Eの物質はリリルマブである、項目6~10のいずれかに記載の方法。
【0261】
項目12:群Fの物質はsym023である、項目6~11のいずれかに記載の方法。
【0262】
項目13:.群Gの物質は40E4およびPJ196である、項目6~12のいずれかに記載の方法。
【0263】
項目14:T細胞の上方制御、活性化、および/または再活性化を引き起こすことが分かっているT細胞表面に発現される受容体を刺激および/または促進できる物質は、
I:T細胞表面のOX40/CD134受容体を介して作用する物質;
J:T細胞表面の4-1BB/CD137受容体を介して作用する物質;
K:T細胞表面のCD28受容体を介して作用する物質;
L:T細胞表面のICOS受容体を介して作用する物質;
M:T細胞表面のGITR受容体を介して作用する物質;
N:T細胞表面のCD40L受容体を介して作用する物質;および
O:T細胞表面のCD27受容体を介して作用する物質からなる群から選択される、項目1~13のいずれかに記載の方法。
【0264】
項目15:群Jの物質は、ウレルマブおよびウトミルマブからなる群からの1種以上から選択される、項目14に記載の方法。
【0265】
項目16:群Kの物質はセラリズマブである、項目14に記載の方法。
【0266】
項目17:群Oの物質はバリルマブである、項目14に記載の方法。
【0267】
項目18:T細胞の下方制御、不活性化、および/または消耗を引き起こすことが分かっている可溶性分子およびサイトカインならびにそれらの受容体を拮抗かつ/あるいは阻害できる物質は、
P:T細胞表面のIDO1/2受容体を介して作用する物質;
Q:T細胞表面のTGFβ受容体を介して作用する物質;
R:T細胞表面のIL-10受容体を介して作用する物質;および
S:T細胞表面のIL-35受容体を介して作用する物質からなる群から選択される、項目1~17のいずれかに記載の方法。
【0268】
項目19:群Pの物質はエパセドスタットである、項目14に記載の方法。
【0269】
項目20:群Qの物質がリンロドスタットである、項目14に記載の方法。
【0270】
項目21:群Rの物質はガルニセルチブである、項目14に記載の方法。
【0271】
項目22:制御性T細胞を下方制御かつ/あるいは枯渇させて、それによって生体外エフェクターT細胞増殖を促進できる物質は、
T:シクロホスファミド;
U:TKI;
V:αCD25を介して作用する物質;および
X:IL2/ジフテリア毒素融合からなる群から選択される、項目1~21のいずれかに記載の方法。
【0272】
項目23:.群Uの物質はスニチニブである、項目20に記載の方法。
【0273】
項目24:群Vの物質はソラフェニブ、イマチニブ、およびダクリズマブからなる群からの1種以上から選択される、項目20に記載の方法。
【0274】
項目25:群Xの物質はデニロイキンジフチトックスである、項目20に記載の方法。
【0275】
項目26:物質の濃度は、0.1 μg/mL~300 μg/mL、例えば1 μg/mL~100 μg/mL、例えば10 μg/mL~100 μg/mL、例えば1 μg/mL~10 μg/mLである、項目1~25のいずれかに記載の方法。
【0276】
項目27:T細胞の治療用集団を使用して、
1:固形腫瘍;
2:ICIナイーブ腫瘍;
3:MSI-H腫瘍;
4:血液学的腫瘍;および
5:超変異腫瘍からなる群から選択される癌種を治療する、項目1~26のいずれかに記載の方法。
【0277】
項目28:T細胞の治療用集団を使用して、乳がん、腎細胞がん、膀胱がん、黒色腫、子宮頸がん、胃がん、大腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、ホジキンリンパ腫、膵がん、肝がん、および肉腫からなる群から選択される癌種を治療する、項目1~27のいずれかに記載の方法。
【0278】
項目29:T細胞の治療用集団を使用して乳がんを治療する、項目1~28のいずれかに記載の方法。
【0279】
項目30:T細胞の治療用集団を使用して腎細胞がんを治療する、項目1~29のいずれかに記載の方法。
【0280】
項目31:T細胞の治療用集団を使用して膀胱がんを治療する、項目1~30のいずれかに記載の方法。
【0281】
項目32:T細胞の治療用集団を使用して黒色腫を治療する、項目1~31のいずれかに記載の方法。
【0282】
項目33:T細胞の治療用集団を使用して子宮頸がんを治療する、項目1~32のいずれかに記載の方法。
【0283】
項目34:T細胞の治療用集団を使用して胃がんを治療する、項目1~33のいずれかに記載の方法。
【0284】
項目35:T細胞の治療用集団を使用して大腸がんを治療する、項目1~34のいずれかに記載の方法。
【0285】
項目36:T細胞の治療用集団を使用して肺がんを治療する、項目1~35のいずれかに記載の方法。
【0286】
項目37:T細胞の治療用集団を使用して頭頸部がんを治療する、項目1~36のいずれかに記載の方法。
【0287】
項目38:T細胞の治療用集団を使用して卵巣がんを治療する、項目1~37のいずれかに記載の方法。
【0288】
項目39:T細胞の治療用集団を使用してホジキンリンパ腫を治療する、項目1~38のいずれかに記載の方法。
【0289】
項目40:T細胞の治療用集団を使用して膵がんを治療する、項目1~39のいずれかに記載の方法。
【0290】
項目41:T細胞の治療用集団を使用して肝がんを治療する、項目1~40のいずれかに記載の方法。
【0291】
項目42:T細胞の治療用集団を使用して肉腫を治療する、項目1~41のいずれかに記載の方法。
【0292】
項目43:工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約45日の期間内に実施される、項目1~42のいずれかに記載の方法。
【0293】
項目44:工程(a)~(c)または(d)は、約20日~約40日の期間内に実施される、項目1~43のいずれかに記載の方法。
【0294】
項目45:工程(a)~(c)または(d)は、約25日~約40日の期間内に実施される、項目1~44のいずれかに記載の方法。
【0295】
項目46:工程(a)~(c)または(d)は、約30日~約40日の期間内に実施される、項目1~45のいずれかに記載の方法。
【0296】
項目47:工程(a)~(b)は、約10日~約28日の期間内に実施される、項目1~46のいずれかに記載の方法。
【0297】
項目48:工程(a)~(b)は、約10日~約20日の期間内に実施される、項目1~47のいずれかに記載の方法。
【0298】
項目49:工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される、項目1~48のいずれかに記載の方法。
【0299】
項目50:工程(c)は、約10日~約28日の期間内に実施される、項目1~49のいずれかに記載の方法。
【0300】
項目51:.工程(c)は、約10日~約20日の期間内に実施される、項目1~50のいずれかに記載の方法。
【0301】
項目52:.工程(c)は、約12日~約18日の期間内に実施される、項目1~51のいずれかに記載の方法。
【0302】
項目53:工程(b)は、1×106~1×107個の細胞、例えば2×106~5×106個の細胞を生成する、項目1~52のいずれかに記載の方法。
【0303】
項目54:工程(c)は、1×107~1×1012個の細胞、例えば1×108~5×109個の細胞、例えば1×109~5×109個の細胞、例えば1×108~5×1010個の細胞、例えば1×109~5×1011個の細胞を生成する、項目1~53のいずれかに記載の方法。
【0304】
項目55:APCは、人工APC(aAPC)または同種異系フィーダー細胞である、項目1~54のいずれかに記載の方法。
【0305】
項目56:TILの治療用集団を患者に注入する、項目1~55のいずれかに記載の方法。
【0306】
項目57:細胞を細胞培養物から取り出して、工程(c)を実施する前に貯蔵媒体中に凍結保存する、項目1~56のいずれかに記載の方法。
【0307】
項目58:第1のTIL集団を、T細胞シグナル伝達分子の少なくとも1つのエンドドメインと融合した一本鎖可変断片抗体を含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む発現ベクターで形質導入する工程をさらに含む、項目1~57のいずれかに記載の方法。
【0308】
項目59:工程(c)はさらに、細胞培養培地から細胞を取り出す工程を含む、項目1~58のいずれかに記載の方法。
【0309】
項目60:工程(a)はさらに、切除された腫瘍を複数の腫瘍断片に、例えば4~50個の断片、例えば20~30個の断片に処理する工程を含む、項目1~59のいずれかに記載の方法。
【0310】
項目61:断片のサイズは、約5~50 mm3、例えば20~50 mm3である、項目60に記載の方法。
【0311】
項目62:哺乳動物はヒトである、項目1~61のいずれかに記載の方法。
【0312】
項目63:細胞培養培地は、G-Rex容器およびXuri細胞バッグからなる群から選択される容器内に提供される、項目1~62のいずれかに記載の方法。
【0313】
項目64:抗CD3抗体はOKT3である、項目1~63のいずれかに記載の方法。
【0314】
項目65:項目1~64のいずれかに記載の方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団。
【0315】
項目66:癌を患う対象の治療における使用のための増殖された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であって、この治療は、
哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;
第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程;および
非骨髄破壊的なリンパ球枯渇化学療法を施術した後に、T細胞の治療用集団を哺乳動物に投与する工程を含み、このT細胞が哺乳動物に投与されると哺乳動物での癌の退縮が促進される。
【0316】
項目67:1つの方法によって得られる腫瘍浸潤リンパ球(TIL)集団であって、この方法は、
哺乳動物から切除された腫瘍から第1のTIL集団を採取して自己T細胞を培養する工程;
IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む細胞培養培地内での第1のTIL集団の培養によって第1の増殖を実施して、第2のTIL集団を生成する工程;および
第2のTIL集団の細胞培養培地への追加のIL-2、抗CD3、および抗原提示細胞(APC)の補充によって第2の増殖を実施して、治療用集団となる第3のTIL集団を生成する工程を含む。
【0317】
項目68:IL-2および1種以上のTME刺激剤を含む治療用TIL集団。
【0318】
項目69:IL-2、1種以上のTME刺激剤、IL-2、抗CD3抗体、および抗原提示細胞(APC)を含む治療用TIL集団。