(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175145
(43)【公開日】2024-12-17
(54)【発明の名称】アミノピリミジン化合物の調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 239/42 20060101AFI20241210BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241210BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241210BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241210BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241210BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20241210BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C07D239/42 Z
A61P25/16
A61P11/00
A61P11/06
A61P27/06
A61P35/00
A61K31/506
C07D401/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024168701
(22)【出願日】2024-09-27
(62)【分割の表示】P 2021568910の分割
【原出願日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】62/858,050
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518242226
【氏名又は名称】アーカス バイオサイエンシズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マンモハン レディ レレティ
(72)【発明者】
【氏名】ディロン ハーディング マイルズ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン リード ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】イーサン ウル シャリフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ パトリック パワーズ
(57)【要約】
【課題】アミノピリミジン化合物を調製するための方法を提供すること。
【解決手段】本明細書において、式(I)のアミノピリミジン化合物を調製するための、改善された方法が、提供される。本開示の方法は、式(A)のβ-ジケトエステル中間体を介して、有利に進行し、ピリミジン部位、およびフェニル部位の直接結合を回避する。本開示の方法は、目的とする化合物についての収率を大幅に上げ、合成経路を単純化する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下、2019年6月6日に出願された米国仮特許出願第62/858,050号に基づく優先権を主張する。この出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当なし
【0003】
シーケンスリスト等の参照
該当なし
【背景技術】
【0004】
アデノシンは、アデニンとリボース糖分子(リボフラノース)との複合体を含むプリンヌクレオシド化合物である。アデノシンは哺乳類の中に天然に存在し、エネルギー伝達(アデノシン三リン酸及びアデノシン一リン酸として)及びシグナル伝達(環状アデノシン一リン酸として)を含む複数の生化学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。アデノシンは、心臓の血管拡張を含む血管拡張に関連するプロセスにおいても機能し、また神経修飾物質として機能する(例えば睡眠促進に関与すると考えられている)。これらの
生化学的プロセスにおける関与に加えて、アデノシンは、例えば上室性頻脈を治療するた
めの治療用抗不整脈薬として使用される。本明細書で詳しく説明されるように、腫瘍は、
免疫機能を阻害し、耐性を促進することによって宿主応答を回避し、アデノシンは、免疫
系の腫瘍回避を媒介することにおいて重要な役割を果たすことが示されている。様々な免
疫細胞サブセット及び内皮細胞で発現するA2ARS及びA2BRSを介したアデノシンシグ
ナル伝達は、炎症反応中に組織を保護する上で重要な役割を有していることが証明されて
いる。そのため、特定の条件下では、アデノシンは免疫による破壊から腫瘍を保護する(
例えばFishman,P,et al.(2009) Handb Exp Phar
macol 193:399-441を参照)。
【0005】
アデノシン受容体は、内因性リガンドとしてアデノシンを有するプリン作動性Gタンパ
ク質共役型受容体の分類のものである。ヒトの4種類のアデノシン受容体は、A1、A2A
、A2B、及びA3と呼ばれている。A1の調節は、例えば、神経障害、喘息、ならびに心不
全及び腎不全の管理及び治療のために提案されてきた。A2A拮抗薬は、例えばパーキンソ
ン病の管理及び治療のために提案されてきた。A2Bの調節は、例えば喘息を含む慢性肺疾
患の管理及び治療のために提案されてきた。A3の調節は、例えば喘息及び慢性閉塞性肺
疾患、緑内障、がん、及び脳卒中の管理及び治療のために提案されてきた。
【0006】
歴史的に、アデノシン受容体の調節因子は非選択的であった。しかしながら、最近の研
究では、アデノシンA2A受容体(A2AR)またはアデノシンA2B受容体(A2BR)を特異
的に標的にすることが可能な有用なアデノシン調節因子が特定された。このような研究に
は、WO2018/136700に記載されているアミノピリミジン部位を含む化合物が
含まれる。
【0007】
これらの進歩にもかかわらず、WO2018/136700の化合物を調製するために
記載されている合成プロセスは、大スケールでの製造の妨げとなり、かつ化合物の商業的
入手可能性の障害となる、より低い収率での化学変換を含む。
【0008】
そのため、当該技術分野では、アミノピリミジン化合物を調製するための改善された方
法を提供することが求められている。本開示はこの要求に対処し、関連する利点も提供す
る。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様では、本明細書において、式(I)で表される化合物:
【化1】
(式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3、及びXは、本明細書に記載の通りである)
の調製方法であって、
a)式(A)の化合物
【化2】
(式中、R
4は、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
8シクロアルキルからなる群から選択され
、これらそれぞれは、F及びClからなる群から独立して選択される1~6個の要素で任
意選択的に置換されていてもよい)
を、グアニジン試薬と、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含有する溶媒系とに接
触させて、式(B)の化合物
【化3】
を得ること;及び
b)式(B)のヒドロキシル基を置換して式(I)の化合物を形成すること;
を含む、調製方法が開示される。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は式(Ia)の化合物
【化4】
である。
【0011】
いくつかの態様では、本明細書において、式(II)の化合物:
【化5】
(式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3は、本明細書に記載の通りである)
の調製方法であって、
a’)本明細書に記載の方法に従って式(I)の化合物を調製すること;
b’)前記式(I)の化合物を式(C)の化合物
【化6】
に変換すること;及び
c’)前記式(C)の化合物を式(D)のアジド化合物
【化7】
と結合させて前記式(II)の化合物を生成すること;
を含む調製方法が開示される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、式(IIa)の化合物
【化8】
の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
該当なし
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.概要
本開示は、式(I)のアミノピリミジン化合物の改善された調製方法を提供する。特に
、本明細書に記載の方法は、グアニジンとβ-ジケトエステルを有する式(A)の化合物
とを使用して、式(B)の化合物を提供する。この変換は、式(B)の化合物の調製につ
いての収率を有利に改善する。式(B)のアルコールのその後の変換を使用して、式(I
)の化合物を調製することができる。
【0015】
本明細書に記載の方法は、3-[2-アミノ-6-(1-{[6-(2-ヒドロキシプ
ロパン-2-イル)ピリジン-2-イル]メチル}-1H-1,2,3-トリアゾール-
4-イル)ピリミジン-4-イル]-2-メチルベンゾニトリルの調製において特に有用
であるが、本明細書に開示の合成方法が、数多くの化合物の効率及び合成収率を改善する
ために使用できることが理解される。
【0016】
II.定義
本明細書において使用される「接触させる」という用語は、反応することができるよう
に少なくとも2つの異なる種を接触させるプロセスを指す。しかしながら、得られる反応
生成物は、添加された試薬間の反応から直接、または反応混合物中で生成し得る1種以上
の添加された試薬由来の中間体から生成し得ることが理解されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、それ自体、または別の置換基の一部
として、別段の記載がない限り、直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルを意味する。アル
キル置換基、及び他の炭化水素置換基は、置換基中の炭素原子の数を示す番号による指示
を含む場合がある(すなわちC1~C8は1~8個の炭素を意味する)が、そのような指示
は省略することができる。別段の明記がない限り、本発明のアルキル基は1~12個の炭
素原子を含む。例えば、アルキル基は、1~2個、1~3個、1~4個、1~5個、1~
6個、1~7個、1~8個、1~9個、1~10個、1~11個、1~12個、2~3個
、2~4個、2~5個、2~6個、3~4個、3~5個、3~6個、4~5個、4~6個
、または5~6個の炭素原子を含み得る。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n
-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n
-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどが挙げられる。
【0018】
「アルコキシ」は、アルキル基を結合点に連結する酸素原子を有するアルキル基:アル
キル-O-を指す。アルキル基に関しては、アルコキシ基は、C1~6などの任意の適切な
数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポ
キシ、iso-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブト
キシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。アルコキシ基は
、中に記載されている様々な置換基で更に置換されていてもよい。アルコキシ基は、置換
されていても無置換であってもよい。
【0019】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を指す。
【0020】
本明細書で使用される「保護基」という用語は、官能基部位を非反応性にするために形
成される部位を指す。保護基は、官能基部位を元の状態に戻すために外すことができる。
窒素保護基を含む様々な保護基及び保護試薬は当業者に周知であり、それらには、Pro
tective Groups in Organic Synthesis,4th
edition,T.W. Greene and P.G.M.Wuts,John
Wiley & Sons,New York,2006に記載されている化合物が含ま
れ、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
本明細書で使用される「塩基性」という用語は、塩基である化学物質を指す形容詞であ
る。塩基性添加剤とは、塩基である添加剤を指す。塩基性反応条件とは、7を超えるpH
値を含む反応条件を指す。
【0022】
III.本開示の実施形態
A.式(I)の化合物の調製
本開示の発明者らは、ハロゲン化アルコールを含む溶媒系において、式(A)の化合物
をグアニジン試薬と結合させると、式(B)の化合物を有利かつ効率的に高収率で得られ
ることを見出した。何らかの特定の理論に拘束されるものではないが、ハロゲン化アルコ
ール溶媒系の中のハロ基の電子吸引性が、代わりに得られる反応生成物よりも縮合反応に
有利であり、式(B)の化合物を生成すると考えている。
【0023】
したがって、一態様では、本明細書において、式(I)で表される化合物:
【化9】
(式中、
R
1a及びR
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択され;
Xは、ハロゲン及びO-スルホン酸エステルからなる群から選択される脱離基である)
の調製方法であって、
a)式(A)の化合物
【化10】
(式中、R
4は、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
8シクロアルキルからなる群から選択され
、これらそれぞれは、F及びClからなる群から独立して選択される1~6個の要素で任
意選択的に置換されていてもよい)
を、グアニジン試薬と、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含有する溶媒系とに接
触させて、式(B)の化合物
【化11】
を得ること;及び
b)式(B)のヒドロキシル基を置換して式(I)の化合物を形成すること;
を含む、調製方法が開示される。
【0024】
上記方法のいくつかの態様では、式(I)の化合物は式(Ia)の化合物
【化12】
である。
【0025】
式(Ia)の化合物が調製される複数の実施形態では、ステップa)は、
式(Aa)の化合物
【化13】
を、グアニジン試薬と、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含有する溶媒系とに接
触させて、式(Ba)の化合物
【化14】
(式中、R
4は式Bについて本明細書で定義した通りである)
を得ることを含む。
【0026】
本明細書に開示の式の置換基R1a、R1b、R2a、R2b、及びR3を有するフェニル環は
、上記置換基のいずれかとすることができる。いくつかの実施形態では、置換基R1a、R
1b、R2a、R2b、及びR3を有するフェニル環は、3つ以下の水素ではない部位を含む。
いくつかの実施形態では、R1aはメチルである。いくつかの実施形態では、R2aはCNで
ある。いくつかの実施形態では、R1bとR2bは共にHである。いくつかの実施形態では、
R1aはメチルであり、R2aはCNであり、R1b、R2b、及びR3はそれぞれHである。
【0027】
いくつかの実施形態では、R4は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル
、及び2,2,2-トリフルオロエチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態
では、R4はエチルである。
【0028】
ステップa)に関して、グアニジン試薬は、目的生成物を調製するための中核をなす。
本開示において有用であるグアニジン試薬の多くの市販の供給源が存在する。いくつかの
実施形態では、グアニジン試薬は、グアニジン、グアニジンHCl、グアニジン炭酸塩、
グアニジンHBr、グアニジン硝酸塩、グアニジンHI、グアニジン酢酸塩、グアニジン
硫酸塩、グアニジン硫酸水素塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジンスルファミン酸
塩、グアニジンリン酸塩、及びグアニジン4-ベンゼンスルホン酸塩からなる群から選択
される。いくつかの実施形態では、グアニジンはグアニジン炭酸塩である。いくつかの実
施形態では、グアニジン試薬はグアニジンHClである。
【0029】
上述したように、ステップa)において少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含む
溶媒系は、優先される反応生成物を式(B)の縮合生成物に向かわせる。いくつかの実施
形態では、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含む溶媒系は、2,2,2-トリフ
ルオロエタノール、2-フルオロエタノール、及び2-クロロエタノールから選択される
。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含む溶媒系は、2
,2,2-トリフルオロエタノールのみである。いくつかの実施形態では、少なくとも1
種のハロゲン化アルコールを含む溶媒系は、2,2,2-トリフルオロエタノールと、メ
タノール、エタノール、プロパノール、2-フルオロエタノール、2-クロロエタノール
、2-メトキシエタノール、及び2-(メタンスルホニル)エタン-1-オールからなる
群から選択されるアルコールとの組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施形態では、ステップa)の変換は、塩基を更に含む。適切な塩基として
は、NaH、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2、NaO-C1~8アルキル、及
びKO-C1~8アルキルが挙げられる。
【0031】
ステップa)の変換は、様々な異なる温度で完了させることができる。典型的には、ス
テップa)は、高レベルの望まれる変換を得るために加熱される。いくつかの実施形態で
は、ステップa)は還流で行われる。いくつかの実施形態では、ステップa)は70℃を
超える温度で行われる。いくつかの実施形態では、ステップa)の変換は約75~105
℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、ステップa)の変換は約100℃の温度
で行われる。
【0032】
ステップa)の反応時間は、使用される具体的な試薬ならびに温度などの多くの因子に
依存するであろう。いくつかの実施形態では、ステップa)の反応は、約2、4、6、8
、10、12、14、16、または18時間、またはそれ以上インキュベートされる。い
くつかの実施形態では、ステップa)の反応は約6時間インキュベートされる。いくつか
の実施形態では、ステップa)の反応は約14時間インキュベートされる。
【0033】
ステップa)の変換についての目的生成物の収率は、利用される厳密な反応条件に応じ
て変動するであろう。いくつかの実施形態では、ステップa)の変換における式(B)の
収率は60%超である。いくつかの実施形態では、ステップa)の変換における式(B)
の収率は少なくとも65%である。いくつかの実施形態では、ステップa)の変換におけ
る式(B)の収率は少なくとも70%である。いくつかの実施形態では、ステップa)の
変換における式(B)の収率は少なくとも75%である。いくつかの実施形態では、ステ
ップa)の変換における式(B)の収率は少なくとも80%である。
【0034】
ステップa)に記載の変換は、しばしば少量の副生成物の形成を伴う。形成される少量
の副生成物は、式(A)の化合物の式(i)の化合物
【化15】
への変換である。
【0035】
いくつかの実施形態では、副生成物形態は、式(ia)の化合物
【化16】
である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、有機溶媒を使用する式(i)また
は(ia)の副生成物をトリチュレーションすることを更に含む。望ましくない副生成物
のトリチュレーションに有用な有機溶媒としては、限定するものではないが、エタノール
、メタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、酢酸エチル、及びメチルtert-ブ
チルエーテル(MTBE)が挙げられる。いくつかの実施形態では、使用される有機溶媒
は、MTBEまたはジクロロメタンである。
【0037】
当業者は、形成される副生成物の量が、使用される反応条件に依存することを認識する
であろう。典型的には、形成される副生成物の量は、通常出発物質から変換された式(A
)の合計量の20%を超えない。いくつかの実施形態では、形成される副生成物は、出発
物質から変換された式(A)の合計量の15%を超えない。いくつかの実施形態では、形
成される副生成物は、出発物質から変換された式(A)の合計量の10%を超えない。い
くつかの実施形態では、形成される副生成物は、出発物質から変換された式(A)の合計
量の5%を超えない。
【0038】
ステップb)における式(B)のヒドロキシル基の修飾または置換は、多数の様々な試
薬を用いて達成することができる。いくつかの実施形態では、ヒドロキシルは、Xがヒド
ロキシル基のスルホン酸エステルである式(I)の化合物を与えるスルホン化プロセスに
よって修飾される。いくつかの実施形態では、ステップb)は、式(B)のヒドロキシル
がハロゲンで置換されるハロゲン化プロセスを含む。
【0039】
スルホン化は、当該技術分野で公知のスルホン化剤を使用して達成することができる。
これには、限定するものではないが、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンス
ルホン酸無水物、及び4-トルエンスルホニルクロリドが含まれる。
【0040】
ハロゲン化は、当該技術分野で公知のハロゲン化剤を使用して達成することができる。
これには、限定するものではないが、POCl3、PSCl3、SOCl2、(COCl)2
、PCl5、PBr3、N-クロロスクシンイミド(NCS)、及びN-ブロモスクシンイ
ミド(NBS)が含まれる。いくつかの実施形態では、ハロゲン化剤はPOCl3である
。
【0041】
いくつかの実施形態では、式(B)または式(Ba)の化合物に対するハロゲン化剤ま
たはスルホン化剤のモル比が制御される。いくつかの実施形態では、ハロゲン化剤または
スルホン化剤対式(B)の化合物のモル比は、約1:1~約3:1、または約1.2:1
~約1.8:1である。
【0042】
典型的には、ステップb)で使用される溶媒系は、極性非プロトン性有機溶媒である。
適切な極性非プロトン性有機溶媒としては、限定するものではないが、アセトニトリル、
DMF、DMSO、NMP、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態
では、極性非プロトン性有機溶媒はアセトニトリルである。
【0043】
いくつかの実施形態では、ステップb)の変換は、塩基添加剤を更に含む。適切な塩基
添加剤としては、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアニリン、
ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリ
ドが挙げられる。いくつかの実施形態では、塩基添加剤はベンジルトリエチルアンモニウ
ムクロリドである。
【0044】
ステップb)の変換は、様々な異なる温度で完了させることができる。好ましい温度は
、望まれる化学変換及び使用される試薬に依存するであろう。当業者は、選択された試薬
に基づいて適切な温度を決定することができるであろう。いくつかの実施形態では、ステ
ップb)は高温で行われる。いくつかの実施形態では、ステップb)は約60~90℃の
温度で行われる。いくつかの実施形態では、ステップb)は約67~83℃の温度で行わ
れる。いくつかの実施形態では、ステップb)は約70℃の温度で行われる。いくつかの
実施形態では、ステップb)は約80℃の温度で行われる。
【0045】
B.式(II)の化合物の調製
いくつかの態様では、式(II)の化合物の調製において式(I)の化合物を使用する
ことができる
【化17】
(式中、
R
1a及びR
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)。
【0046】
そのような実施形態では、方法は、
a’)式(A)の化合物
【化18】
(式中、R
4は、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
8シクロアルキルからなる群から選択され
、これらそれぞれは1~6個の要素で任意選択的に置換されていてもよい)
をグアニジン試薬と接触させて式(B)の化合物を得てから、上述した通りに式(B)の
ヒドロキシ基を置換して式(I)の化合物を形成することにより、式(I)の化合物を調
製すること;
b’)前記式(I)の化合物を式(C)の化合物
【化19】
に変換すること;及び
c’)前記式(C)の化合物を式(D)のアジド化合物
【化20】
と結合させて前記式(II)の化合物を生成すること;
を含む。
【0047】
上述した方法の中のいくつかの実施形態では、式(II)の化合物は、式(IIa)の
化合物
【化21】
である。
【0048】
式(IIa)の化合物が調製される実施形態では、式(la)の化合物はステップa’
)で調製され;ステップb’)が式(la)の化合物を式(Ca)の化合物
【化22】
に変換し;ステップc)は、式(Ca)の化合物を式(D)のアジド化合物と結合させて
式(IIa)の化合物を生成することを含む。
【0049】
本明細書に記載の式(I)の化合物が調製された後、式(I)の化合物のX位がアセチ
レン基で置換される(上のステップb’))。これは、WO2018/136700に記
載されているものなど、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して行うことができる。
いくつかの実施形態では、ステップb’)はサブステップである以下のステップを含む:
b’-l)式(I)の化合物を、パラジウム触媒と銅助触媒と共にシリル保護されたアセ
チレンと接触させて、式(C’)の中間体を生成すること:
【化23】
(式中、R
5はシリル保護基である);及び
b’-2)式(C’)の化合物を脱シリル化試薬と接触させて前記式(C)の化合物を生
成すること。
【0050】
この記載されている変換では、様々なパラジウム及び銅触媒を利用することができる。
いくつかの実施形態では、パラジウム触媒はPd(PPh3)2Cl2である。いくつかの
実施形態では、銅助触媒はCuIである。
【0051】
ステップb’-1)における変換は、塩基も含み得る。いくつかの実施形態では、塩基
はアミン塩基である。多数の様々なアミン塩基がこの変換に適しており、これらとしては
、限定するものではないが、トリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミ
ンが挙げられる。
【0052】
ステップb’-1)の変換を実施するために、多数の様々な有機溶媒を使用することが
できる。適切な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタ
ン、酢酸エチル、及びメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)が挙げられる。
【0053】
ステップb’-1)の変換は、様々な異なる温度で行うことができる。いくつかの実施
形態では、ステップb’-1の変換は約20~90℃の温度で行われる。いくつかの実施
形態では、ステップb’-1の変換は約30~75℃の温度で行われる。いくつかの実施
形態では、ステップb’-1の変換は約40~60℃の温度で行われる。いくつかの実施
形態では、ステップb’-1の変換は約50℃の温度で実行される。
【0054】
典型的には、ステップb’-1)の変換は、数時間かけて行われるが、より長い反応時
間も想定される。いくつかの実施形態では、反応は、約1、2、3、4、5、6、7、8
、9、10、11、または12時間、またはそれ以上インキュベートされる。いくつかの
実施形態では、反応は約3時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、反応は
約5時間インキュベートされる。いくつかの実施形態では、反応は約7時間インキュベー
トされる。
【0055】
ステップb’-1)で使用されるシリル保護されたアセチレンは、当該技術分野で公知
の多数のシリル保護基を含み得る。適切な基としては、限定するものではないが、トリイ
ソプロピルシリル、トリメチルシリル、テキシルジメチルシリル、ベンジルジメチルシリ
ル、ビフェニルジイソプロピルシリル、及びトリス(ビフェニル-4-イル)シリルが挙
げられる。いくつかの実施形態では、シリル保護基はトリイソプロピルシリルである。
【0056】
ステップb’-2)の変換は、脱シリル化試薬を使用してシリル保護基を外すことを含
む。シリル保護基を外すための多くの異なる方法及び条件が当該技術分野で知られており
、本明細書に開示される方法で使用することができる。いくつかの実施形態では、使用さ
れる脱シリル化試薬は、テトラ-N-ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、テト
ラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラクロロ金酸ナトリウム(III)、及び塩化
アセチルからなる群から選択される。一実施形態では、ステップb’-2は、テトラブチ
ルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)(20モル%)とK2HPO4緩衝液とを含む。
一実施形態では、ステップb’-2は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(20モ
ル%)と酢酸緩衝液とを含む。
【0057】
式IIの化合物を製造するプロセスのステップc’)に戻ると、このステップは、クリ
ックケミストリーを使用して、式(D)のアジドと式(C)のアルキニル基とを結合して
テトラゾール部位を形成する。クリックケミストリーはよく説明されており理解されてい
るプロセスであり、当業者は、この反応を実施するための適切な条件を容易に特定するこ
とができる。いくつかの実施形態では、ステップc’)の反応は銅触媒を含む。この変換
では、CuSO4、CuI、CuBr、銅(II)トリフラート、及び酢酸銅(II)な
どの様々な銅触媒を使用することができる。いくつかの実施形態では、銅触媒はCuSO
4である。
【0058】
式(D)のアジド化合物は、例えばWO2018/136700に記載されている通り
に調製することができる。
【0059】
C.式(A)の化合物の調製
いくつかの態様では、式(A)を有する化合物の調製方法も提供される
【化24】
(式中、
R
1a及びR
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンから選択される)。
【0060】
式(A)は、既知の出発物質から調製することができる。例えば、いくつかの実施形態
では、式(A)の化合物は、
i)式(a)の化合物
【化25】
をハロゲン化剤と接触させて式(b)の化合物を調製すること
【化26】
(式中、
Yはハロゲンであり;
R
la及びR
lbは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される);
ii)塩基の存在下で式(b)の化合物を式(c)の化合物
【化27】
と結合させて、式(A)の化合物を形成すること
【化28】
(式中、R
4は、C
1~8アルキル及びC
3~8シクロアルキルからなる群から選択され、これ
らのそれぞれは、F及びClからなる群から独立して選択される1~6個の要素で任意に
置換されていてもよい)。
【0061】
ハロゲン化は、当該技術分野で公知のハロゲン化剤を使用して達成することができる。
これには、限定するものではないが、POCl3、PSCl3、SOCl2、(COCl)2
、PCl5、PBr3、N-クロロスクシンイミド(NCS)、及びN-ブロモスクシンイ
ミド(NBS)が含まれる。いくつかの実施形態では、ハロゲン化剤は(COCl)2で
ある。
【0062】
ステップii)に関し、式(c)の化合物は、カチオンも含む塩の形態で供給すること
もできる。適切なカチオンとしては、限定するものではないが、K+、Na+、及びLi+
が挙げられる。
【0063】
ステップii)では、数多くの塩基を使用することができる。典型的にはアミン塩基が
使用される。数多くの様々なアミン塩基がこの変換に適しており、これらとしては、限定
するものではないが、ピリジン、トリエチルアミン、またはN,N-ジイソプロピルエチ
ルアミンが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ステップii)における変換は金属触媒を含む。いくつかの
実施形態では、金属触媒はMgCl2である。
【0065】
いくつかの実施形態では、ステップii)の変換は、式(b)と式(c)とを結合させ
る前に、反応を20℃未満まで冷却することを含む。いくつかの実施形態では、ステップ
ii)の変換は、式(b)と式(c)とを結合させる前に、反応を15℃未満まで冷却す
ることを含む。いくつかの実施形態では、ステップii)の変換は、式(b)と式(c)
とを結合させる前に、反応を10℃未満まで冷却することを含む。
【0066】
D.式(a’)の化合物の調製
いくつかの態様では、式(a’)を有する化合物の調製方法も本明細書で提供される
【化29】
(式中、
R
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独立して選
択され;
R
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)。
【0067】
式(a’)の化合物は、いくつかの実施形態では、例えば:
i)式(a’y)の化合物
【化30】
をシアン化試薬と接触させて、式(a’x)の化合物
【化31】
(式中、R
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)
を調製すること;及び
ii)式(a’y)の化合物をグリニャール試薬及びCO
2と接触させて、式(a’x)
の化合物を得ること;
によって調製することができる。
【0068】
シアン化は、当該技術分野で公知のシアン化剤を使用して行うことができる。これには
、限定するものではないが、CuCNやK3Fe(CN)6などの銅を媒介とするシアン化
試薬が含まれる。一実施形態では、シアン化は、NaNO2及びHClの存在下でCuC
Nを用いて行われる。
【0069】
ステップii)に関し、グリニャール試薬は、典型的には一般式R-Mg-Xのもので
あり、この式中のXはハロゲンであり、Rは有機炭素基である。グリニャール試薬の例と
しては、限定するものではないが、メチルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウム
ブロミド、及びイソプロピルマグネシウムクロリドが挙げられる。一実施形態では、ステ
ップii)は、LiCl、THF、及びCO2の存在下で、iPrMgClを用いて行わ
れる。
【実施例0070】
実施例1:ヒドロキシピリミジン(及びクロロピリミジン)を得るための、トリフルオロ
エタノールの支援によるβ-ケトエステルの縮合
【化32】
【0071】
ステップ1:室温の12MのHCl(aq)(26mL)と水(26mL)との混合物に、
3-ブロモ-2-メチルアニリン(18.6g、100mmol)を滴下して、微細な白
色懸濁液を形成した。混合物を0℃まで冷却し、水(15.1mL)中の亜硝酸ナトリウ
ムの溶液(7.31g、106mmol)を滴下した。混合物を0℃で30分間撹拌した
。得られた0℃の均質な混合物に、過度のガス発生を回避するような速度で重炭酸ナトリ
ウム(17.8g、212mmol)を添加した。得られた褐色の懸濁液の水相は、約7
のpHであることが判明した。この懸濁液を0℃に維持した。
【0072】
別のフラスコ中で、シアン化銅(9.85g、110mmol)、シアン化カリウム(
13.0g、200mmol)、及び水(31mL)を60℃まで加熱し、均一な溶液を
形成した。過剰なガスの発生を回避するために、撹拌しながら60℃でこの溶液に上記懸
濁液を滴下した。添加後、混合物を100℃で30分間撹拌した。混合物を冷却し、MT
BE(200mL)を添加し、混合物を撹拌し、濾過して固形分を除去し、MTBEで洗
浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、濃縮した。得られた粗生成物を真空蒸留により精
製して、目的生成物を淡橙色固体として得た(13.6g、69%)。
【0073】
ステップ2:2リットルの二口フラスコの中に、臭化アリール(101.9g、520
mmol、1.0当量)をN2雰囲気下でTHF(520mL)に溶解し、混合物を氷水
浴の中で冷却した。iPrMgCl・LiCl(400mL、THF中1.3M、520
mmol、1.0当量)をカニューレから添加した。添加が完了した後、氷浴を外した。
4時間後、フラスコを氷水浴で冷却し、過熱または吹きこぼれを防止するためにドライア
イス(約230g、5.2mol、10当量)を少しずつ添加した(注:固体のドライア
イスの代わりに、CO2ガスを溶液に吹き込むことができる)。添加による吹き込みが完
了した後、混合物をMTBE(500mL)及び2MのHCl(250mL)で希釈した
。層を分離し、水層を追加のMTBE(500mL)で洗浄した。有機層を10%のNa
OHで抽出(190mL×2)し、合わせた水層を氷水浴で冷却し、白色の析出物が形成
されるまで濃HClで酸性化した。析出物を濾過により分離し、水で洗浄した後、80℃
の真空オーブン中で一晩乾燥させて、安息香酸を白色固体として得た(64.1g、収率
76%)。
【0074】
ステップ3:安息香酸(50g、311mmol、1.0当量)をCH2Cl2中に懸濁
し、塩化オキサリル(40mL、466mmol、1.5当量)を添加し、続いてDMF
(約30滴)を添加した。直ちにガス放出が観察され、N2の陽圧下で反応フラスコを大
気に開放した。LCMS及び目視検査(出発物質の完全な溶解)によって決定される出発
酸の完全な消費の後、反応混合物を濃縮した。トルエンを用いた共沸蒸留により過剰の塩
化オキサリルを除去し、対応する酸塩化物を茶褐色の固体として得た。
【0075】
オーバーヘッドスターラーを備えた別の二口フラスコの中で、マロン酸エチルカリウム
(66.1g、388mmol、1.25当量)、トリエチルアミン(108mL、77
7mmol、2.5当量)、及びMeCN(777mL)を塩/氷塩浴中で冷却した。固
体のMgCl2(74g、777mmol、2.5当量)を添加し、得られた懸濁液を約
-10℃で激しく撹拌した。1時間後、固体の酸塩化物を、濃厚な懸濁液に確実に溶解す
る速度で添加した。懸濁液は急速に均一になり、飛び散りを避けるために撹拌速度を下げ
た。氷浴を外した。TLC分析によって決定される出発物質の完全な消費の後、反応混合
物を氷水浴中で冷却し、2MのHCl(971mL、1.9mol、6.25当量)を添
加し、氷浴を外した。30分後、層を分離し、水層をMTBEで抽出した。合わせた有機
層を飽和NaHCO3及び食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮する
ことで、ケトエステルを茶褐色固体として得た(67g、収率93%)。
【0076】
ステップ4:丸底フラスコに、42.0g(181.8mmol)のβ-ケトエステル
、32.7g(181.8mmol)の炭酸グアニジン、及び227mLのトリフルオロ
エタノールを入れた。その後、懸濁液をN2下で16時間加熱還流した。
【0077】
後処理:反応を室温まで冷却し、溶媒を減圧下で蒸発させることで、粘稠な赤色のオイ
ルを得た。オイルを250mLのH2Oに再び溶解し、水溶液をジクロロメタン(2×2
50mL)で抽出した。次いで、水相を1.0MのHCl(aq)を使用してpH約2~3ま
で酸性化する。析出した生成物を濾過により回収し、H2Oで十分に洗浄し、70℃の真
空オーブンで乾燥させた。収量30.81g(75%)、純度>99%。
【0078】
ステップ5:丸底フラスコに、ステップ4からの50.0g(221.2mmol)の
ピリミドン及び100.8g(442.2mmol)の塩化ベンジルトリエチルアンモニ
ウムを入れた。混合物を442.2mLの乾燥アセトニトリルの中に懸濁し、31.0m
L(331.8mmol)のPOCl3を添加した。その後、このようにして得られた懸
濁液を、N2下で4時間加熱還流した。
【0079】
後処理:反応物を室温まで冷却し、約200gの砕いた氷を添加した。その後、混合物
を30分間撹拌し、次いで氷冷した15%のNH4OH水溶液を約pH10~11まで滴
下した(注:過剰なPOCI3のクエンチによる急激な発熱を避けるために、低温のNH4
OHをゆっくりと添加することが推奨される)。その後、懸濁液を室温で更に1.5時間
撹拌した。析出した生成物を濾過により回収し、H2Oで十分に洗浄し、70℃の真空オ
ーブンで乾燥させた。収量48.2g(89%)、純度>99%。
【0080】
HPLC条件
HPLC:Agilent 1100
カラム:YMC-HPLCカラム;250×4.6;S-5μm、20nm;AQ20S
05-2546WT;No.0425058945
溶媒:0.1%のHCO
2Hを含むH
2O/MeCN
流量:0.8mL/分
カラム温度:30℃
方法:
【化33】
【0081】
実施例2:比較のピリミジンカップリング
フェニル環及びピリミジン環を連結するためにボロン酸エステルベンゾニトリルを利用
する、3-[2-アミノ-6-(1-{[6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピ
リジン-2-イル]メチル}-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン
-4-イル]-2-メチルベンゾニトリルを調製するための合成経路を以下に示す。これ
はWO2018/136700にも示されている。
【化34】
【0082】
以下のスキームは、式(I)の化合物を形成するために、上記プロセス及びその後のピ
リミジンとの反応で使用されるボロン酸エステルベンゾニトリルを調製するために使用さ
れる合成経路を示す。特に、ピリミジンとフェニルとの間の望まれる結合は、50%未満
の収率を与える。
【化35】
【0083】
以下のスキームは、グアニジンを使用してβ-ジケトエステルをピリミジンへ変換する
ことを利用する、式(I)の化合物を調製するために使用される合成経路を示す。この経
路は75%の収率を与える。
【化36】
【0084】
本発明を実施するために本発明者らに知られている最良の実施態様を含めて、本発明の
特定の実施形態が本明細書に記載されている。前述した説明を読むことで、当該技術分野
で働く者に対して開示された実施形態の変形形態を明らかにすることができ、それらの当
業者は、必要に応じてそのような変形形態を採用できると見込まれる。したがって、本発
明は、本明細書に具体的に記載されているもの以外の方法で実施されることが意図されて
おり、また、本発明は、適用される法律によって認められるように、本明細書に添付の特
許請求の範囲に記載された主題の全ての修正形態及び均等物を含むことが意図されている
。更に、その全ての可能な変形形態における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書で
別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明に包含される。
【0085】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、アクセッション番号、及び他の参考文
献は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示
されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式(I)で表される化合物:
【化1】
(式中、
R
1a及びR
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択され;
Xは、ハロゲン及びO-スルホン酸エステルからなる群から選択される脱離基である)
の調製方法であって、
a)式(A)の化合物
【化2】
(式中、R
4は、C
1~C
8アルキル及びC
3~C
8シクロアルキルからなる群から選択され
、これらそれぞれは、F及びClからなる群から独立して選択される1~6個の要素で任
意選択的に置換されていてもよい)
を、グアニジン試薬と、少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含有する溶媒系とに接
触させて、式(B)の化合物
【化3】
を得ること;及び
b)式(B)のヒドロキシル基を置換して式(I)の化合物を形成すること;
を含む、前記調製方法。
(項目2)
ステップb)が、Xがヒドロキシル基のスルホン酸エステルである式(I)の化合物を
与えるスルホン化プロセスである、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記スルホン化プロセスが、メタンスルホニルクロリド、4-トルエンスルホニルクロ
リド、及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物からなる群から選択されるスルホン化剤
を使用する、項目2に記載の方法。
(項目4)
ステップb)が、Xがハロゲンである式(I)の化合物を与えるハロゲン化プロセスで
ある、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記ハロゲン化プロセスが、POCl
3、PSCl
3、SOCl
2、(COCl)
2、PC
l
5、PBr
3、N-クロロスクシンイミド(NCS)、及びN-ブロモスクシンイミド(
NBS)からなる群から選択されるハロゲン化剤を使用する、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記グアニジン試薬が、グアニジン、グアニジンHC1、グアニジン炭酸塩、グアニジ
ンHBr、グアニジン硝酸塩、グアニジンHI、グアニジン酢酸塩、グアニジン硫酸塩、
グアニジン硫酸水素塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジンスルファミン酸塩、グア
ニジンリン酸塩、及びグアニジン4-ベンゼンスルホン酸塩からなる群から選択される、
項目1に記載の方法。
(項目7)
R
4が、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチル、及び2,2,2-トリフ
ルオロエチルからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目8)
R
4がエチルである、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記グアニジン試薬が、グアニジンHCl及びグアニジン炭酸塩からなる群から選択さ
れる、項目1に記載の方法。
(項目10)
少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含む前記溶媒系が、2,2,2-トリフルオ
ロエタノールと、メタノール、エタノール、プロパノール、2-フルオロエタノール、2
-クロロエタノール、2-メトキシエタノール、及び2-(メタンスルホニル)エタン-
1-オールからなる群から選択されるアルコールとの組み合わせである、項目1に記載
の方法。
(項目11)
少なくとも1種のハロゲン化アルコールを含む前記溶媒系が2,2,2-トリフルオロ
エタノールのみである、項目1に記載の方法。
(項目12)
ステップb)が極性非プロトン性有機溶媒中で行われる、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記極性非プロトン性有機溶媒が、アセトニトリル、DMF、DMSO、NMP、及び
これらの組み合わせからなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
ステップb)が、XがClである式(I)の化合物を与えるためにPOCl
3を使用す
るハロゲン化プロセスであり、前記グアニジン試薬がグアニジン炭酸塩であり、前記極性
非プロトン性有機溶媒がアセトニトリルである、項目12に記載の方法。
(項目15)
ステップb)が約67~83℃の温度で行われる、項目1~14のいずれか1項に記
載の方法。
(項目16)
式(A)の前記化合物、前記グアニジン試薬、及び2,2,2-トリフルオロエタノー
ルを含む前記溶媒系が、還流温度まで加熱される、項目1に記載の方法。
(項目17)
ステップb)の前に、式(i)の副生成物
【化4】
を除去するために式(B)の前記化合物が有機溶媒でトリチュレーションされる、項目
1に記載の方法。
(項目18)
前記有機溶媒が、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジクロロメタン、酢酸エ
チル、及びメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される、項目17に記
載の方法。
(項目19)
ステップb)が塩基添加剤を用いて行われる、項目12に記載の方法。
(項目20)
前記塩基添加剤が、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルアニリ
ン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、及びベンジルトリエチルアンモニウムク
ロリドからなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記塩基添加剤がベンジルトリエチルアンモニウムクロリドである、項目19に記載
の方法。
(項目22)
前記式(A)の化合物が、
i)式(a)の化合物
【化5】
をハロゲン化剤と接触させて式(b)の化合物を調製すること
【化6】
(式中、
Yはハロゲンであり;
R
la及びR
lbは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される);
ii)塩基の存在下で前記式(b)の化合物を式(c)の化合物
【化7】
と結合させて、式(A)の化合物を形成すること
【化8】
(式中、R
4は、C
1~8アルキル及びC
3~8シクロアルキルからなる群から選択され、これ
らのそれぞれは、F及びClからなる群から独立して選択される1~6個の要素で任意に
置換されていてもよい);
によって調製される、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記式(a)の化合物が式(a’)の化合物である、項目22に記載の方法:
【化9】
(式中、
R
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独立して選
択され;
R
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)。
(項目24)
前記式(a’)の化合物が、
i)式(a’y)の化合物
【化10】
をシアン化試薬と反応させて、式(a’x)の化合物
【化11】
(式中、R
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)
を調製すること;及び
ii)前記式(a’y)の化合物をグリニャール試薬及びCO
2と接触させて、前記式(
a’x)の化合物を得ること;
によって調製される、項目23に記載の方法。
(項目25)
式(II)の化合物:
【化12】
(式中、
R
1a及びR
1bは、H、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、及びハロゲンからなる群から独
立して選択され;
R
2a及びR
2bは、H、CN、及びハロからなる群から独立して選択され;
R
3は、H、C
1~8アルキル、及びハロゲンからなる群から選択される)
の調製方法であって、
a’)項目1~24のいずれか1項に記載の方法に従って式(I)の化合物を調製する
こと;
b’)前記式(I)の化合物を式(C)の化合物
【化13】
に変換すること;及び
c’)前記式(C)の化合物を式(D)のアジド化合物
【化14】
と結合させて前記式(II)の化合物を生成すること;
を含む、前記調製方法。
(項目26)
ステップb’)が、
b’-l)前記式(I)の化合物を、パラジウム触媒及び銅助触媒と共にシリル保護され
たアセチレンと接触させて、式(C’)の中間体を生成すること:
【化15】
(式中、R
5はシリル保護基である);
b’-2)前記式(C’)の化合物を脱シリル化試薬と接触させて、前記式(C)の化合
物を生成すること;
を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記シリル保護基が、トリイソプロピルシリル、トリメチルシリル、テキシルジメチル
シリル、ベンジルジメチルシリル、ビフェニルジイソプロピルシリル、及びトリス(ビフ
ェニル-4-イル)シリルからなる群から選択される、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記パラジウム触媒がPd(PPh
3)
2Cl
2であり、前記銅助触媒がCuIである、
項目25に記載の方法。
(項目29)
ステップb’-1)がアミン塩基との薗頭カップリング条件を使用する、項目25~
28のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
前記アミン塩基がトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである
、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記脱シリル化試薬が、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、テトラブ
チルアンモニウムヒドロキシド、テトラクロロ金酸ナトリウム(III)、及び塩化アセ
チルからなる群から選択される、項目25~30のいずれか1項に記載の方法。
(項目32)
ステップc’)が銅触媒を更に含む、項目25~31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記銅触媒が、CuSO
4、CuI、CuBr、銅(II)トリフラート、及び酢酸銅
(II)からなる群から選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
式(IIa)の化合物
【化16】
の調製方法であって、
a’)項目1~21のいずれか1項に記載の方法に従って式(Ia)の化合物
【化17】
を調製すること;
b’)前記式(Ia)の化合物を式(Ca)の化合物
【化18】
に変換すること;及び
c’)前記式(Ca)の化合物を式(D)のアジド化合物
【化19】
と結合させて前記式(IIa)の化合物を生成すること;
を含む、前記調製方法。
(項目35)
ステップb’)が、
b’-l)薗頭カップリング条件下で前記式(Ia)の化合物をトリイソプロピルシリル
アセチレンと接触させて、式(Ca’)の中間体:
【化20】
を生成すること;及び
b’-2)前記式(Ca’)の化合物を脱シリル化試薬と接触させて前記式(Ca)の化
合物を生成すること;
を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記薗頭カップリング条件が、パラジウム触媒と銅助触媒とを含む、項目35に記載
の方法。
(項目37)
前記パラジウム触媒がPd(PPh
3)
2Cl
2またはPd(OAc)
2であり、前記銅助
触媒がCuIである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記薗頭カップリング条件がアミン塩基を更に含む、項目35~37のいずれか1項
に記載の方法。
(項目39)
前記アミン塩基がトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである
、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記脱シリル化試薬が、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)、テトラブ
チルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラクロロ金酸ナトリウム(III)、
及び塩化アセチルからなる群から選択される、項目35~39のいずれか1項に記載の
方法。
(項目41)
ステップc’)が銅触媒を更に含む、項目31~37のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記銅触媒がCuSO
4、CuI、CuBr、銅(II)トリフラート、及び酢酸銅(
II)からなる群から選択される、項目38に記載の方法。