(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175148
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】デジタルツインカンファレンス開催装置及び3Dデータの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20241211BHJP
G09B 23/30 20060101ALI20241211BHJP
H04N 7/14 20060101ALI20241211BHJP
A61C 13/34 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G09B23/30
H04N7/14 170
A61C13/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021165500
(22)【出願日】2021-10-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】520228016
【氏名又は名称】株式会社Dental Prediction
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(72)【発明者】
【氏名】宇野澤 元春
(72)【発明者】
【氏名】笠間 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
5C164
【Fターム(参考)】
2C032CA09
5B050BA09
5B050BA12
5B050BA13
5B050CA07
5B050CA08
5B050DA10
5B050EA07
5B050EA18
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA09
5B050GA08
5C164FA10
5C164MA03S
5C164UB81S
5C164VA07S
5C164VA12P
5C164VA13P
(57)【要約】
【課題】仮想空間内において発表者が表示する発表用サンプルの3Dデータを参加者のアバターが発表者のアバターと共有できるデジタルツインカンファレンス開催装置を提供する。
【解決手段】本発明は、仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催する機能を備えたサーバー111を有し、サーバーは、発表者113が第1のXR機器114を用いて5Gネットワークによってサーバーに接続することで、発表者が3Dデータ115及び発表者のアバター116を仮想空間内に表示させる機能と、第1の参加者117が第2のXR機器118を用いて5Gネットワークによってサーバーに接続することで、第1の参加者が第1の参加者のアバター119を仮想空間内に表示させる機能と、仮想空間内において発表者が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、第1の参加者のアバターが発表者のアバターと共有する機能を実現するプログラムを有するデジタルツインカンファレンス開催装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理空間の環境を再現した仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催する機能を実現するプログラムを備えたサーバーを有し、
前記サーバーは、
発表者が第1のXR機器を用いて5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記発表者が発表用サンプルの3Dデータ及び前記発表者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
第1の参加者が第2のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記第1の参加者が前記第1の参加者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有する機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記サーバーは、
第2の参加者が第3のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記第2の参加者が前記第2の参加者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第2の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有する機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、
前記発表用サンプルの3Dデータは、患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データ、及び歯科治療の術式の流れの3次元的データの少なくとも一つ、又は新しい器具サンプルの3次元的データであることを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の前又は後に、前記患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、前記患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は前記患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、前記第1の参加者が前記第2のXR機器又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記第1の参加者が前記第2のXR機器又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項7】
請求項4において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能と、
前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、前記患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は前記患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、前記見学者が前記第1のコンピューター又は前記第4のXR機器からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項8】
請求項4又は7において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能と、
前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記見学者が前記第1のコンピューター又は前記第4のXR機器からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項9】
請求項4において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記見学者及び参加者以外の者が第3のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項10】
請求項5又は6において、
前記3Dプリンティング模型は、歯科用上顎模型又は歯科用下顎模型であり、
前記歯科用上顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた上顎骨と、
前記上顎骨の上顎洞側に付着させた人工シュナイダー膜と、
前記上顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有し、
前記歯科用下顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた下顎骨と、
前記下顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載のデジタルツインカンファレンス開催装置を利用して仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催する前に、前記発表用サンプルの3Dデータを製造する方法であって、
CTの医用画像をフォーマットした画像データを画像解析ソフトウェアに読み込み、前記画像解析ソフトウェアにおいて歯及び骨の領域を抽出する工程(d)と、
前記領域を抽出したデータから三次元画像の構築上の妨げとなる部位を削除し、粗な部分や空洞を塗りつぶす工程(e)と、
前記工程(e)の後の前記領域を抽出したデータの重ね合わせから、前記歯を備えた上顎骨又は下顎骨の表面構造のみを抽出し、その抽出したデータにより三次元画像データを構築する工程(f)と、
前記三次元画像データを3DCGソフトウェアに読み込み、前記3DCGソフトウェアにおいて前記三次元画像データを汎用の画像データに変換する工程(g)と、
前記汎用の画像データから不要なゴミポリゴンを削除する工程(h)と、
前記CTの医用画像をフォーマットした画像データからの歯列データと口腔内スキャナーのデータを位置合わせして重ね合わせ、不要部分の削除及び足りない部分の修正の少なくとも一方を行うことで、3次元的データを構築する工程(i)と、
を有することを特徴とする3Dデータの製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記工程(d)の前記CTの医用画像をフォーマットした画像データは、DICOMデータであり、
前記工程(g)の前記汎用の画像データは、OBJ形式の画像データであることを特徴とする3Dデータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルツインカンファレンス開催装置及び3Dデータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、カンファレンス・学術学会(会場・オンライン)の発表形式は、講演者によるポスター展示とスライドプレゼンテーションの2つが主流であった。この2つに対して、学会参加者は講演者からのポスター・スライドからの情報(文章)・口頭での説明および写真から内容を理解して学んでいる。これに関連する技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
しかし、実際に学会参加者は、講演者からの少ない情報(2次元データ)からでしか発表内容の情報を得られないので、発表した内容の深い理解・技術習得が困難であった。また1症例に対して、割かれる時間が少ないので、症例の熟知が困難であった。また会場開催の場合は、場所の制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の問題に対して、全く新しいデジタル空間内での学会およびカンファレンスを開催できれば画期的である。
【0006】
本発明の種々の態様は、仮想空間内において発表者が表示する発表用サンプルの3Dデータを参加者のアバターが発表者のアバターと共有できるデジタルツインカンファレンス開催装置及び3Dデータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に本発明の種々の態様について説明する。
[1]物理空間の環境を再現した仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催する機能を実現するプログラムを備えたサーバーを有し、
前記サーバーは、
発表者が第1のXR機器を用いて5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記発表者が発表用サンプルの3Dデータ及び前記発表者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
第1の参加者が第2のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記第1の参加者が前記第1の参加者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有する機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0008】
[2]上記[1]において、
前記サーバーは、
第2の参加者が第3のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記第2の参加者が前記第2の参加者のアバターを前記仮想空間内に表示させる機能と、
前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第2の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有する機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0010】
[4]上記[1]から[3]のいずれか一項において、
前記発表用サンプルの3Dデータは、患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データ、及び歯科治療の術式の流れの3次元的データの少なくとも一つ、又は新しい器具サンプルの3次元的データであることを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0011】
[5]上記[4]において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の前又は後に、前記患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、前記患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は前記患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、前記第1の参加者が前記第2のXR機器又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0012】
[6]上記[4]又は[5]において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記第1の参加者が前記第2のXR機器又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0013】
[7]上記[4]において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能と、
前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、前記患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は前記患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、前記見学者が前記第1のコンピューター又は前記第4のXR機器からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0014】
[8]上記[4]又は[7]において、
前記サーバーは、
見学者が第1のコンピューター又は第4のXR機器を用いて前記5Gネットワークによって前記サーバーに接続することで、前記見学者が前記仮想空間内において前記発表者が表示する前記発表用サンプルの3Dデータを、前記第1の参加者のアバターが前記発表者のアバターと共有しているシーンを視聴する機能と、
前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記見学者が前記第1のコンピューター又は前記第4のXR機器からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能と、
を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0015】
[9]上記[4]において、
前記サーバーは、前記デジタルツインカンファレンスの開催の後に、前記仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、前記見学者及び参加者以外の者が第3のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能を実現するプログラムを有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0016】
[10]上記[5]又は[6]において、
前記3Dプリンティング模型は、歯科用上顎模型又は歯科用下顎模型であり、
前記歯科用上顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた上顎骨と、
前記上顎骨の上顎洞側に付着させた人工シュナイダー膜と、
前記上顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有し、
前記歯科用下顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた下顎骨と、
前記下顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有することを特徴とするデジタルツインカンファレンス開催装置。
【0017】
[11]上記[4]から[10]のいずれか一項に記載のデジタルツインカンファレンス開催装置を利用して仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催する前に、前記発表用サンプルの3Dデータを製造する方法であって、
CTの医用画像をフォーマットした画像データを画像解析ソフトウェアに読み込み、前記画像解析ソフトウェアにおいて歯及び骨の領域を抽出する工程(d)と、
前記領域を抽出したデータから三次元画像の構築上の妨げとなる部位を削除し、粗な部分や空洞を塗りつぶす工程(e)と、
前記工程(e)の後の前記領域を抽出したデータの重ね合わせから、前記歯を備えた上顎骨又は下顎骨の表面構造のみを抽出し、その抽出したデータにより三次元画像データを構築する工程(f)と、
前記三次元画像データを3DCGソフトウェアに読み込み、前記3DCGソフトウェアにおいて前記三次元画像データを汎用の画像データに変換する工程(g)と、
前記汎用の画像データから不要なゴミポリゴンを削除する工程(h)と、
前記CTの医用画像をフォーマットした画像データからの歯列データと口腔内スキャナーのデータを位置合わせして重ね合わせ、不要部分の削除及び足りない部分の修正の少なくとも一方を行うことで、3次元的データを構築する工程(i)と、
を有することを特徴とする3Dデータの製造方法。
【0018】
[12]上記[11]において、
前記工程(d)の前記CTの医用画像をフォーマットした画像データは、DICOMデータであり、
前記工程(g)の前記汎用の画像データは、OBJ形式の画像データであることを特徴とする3Dデータの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の種々の態様によれば、仮想空間内において発表者が表示する発表用サンプルの3Dデータを参加者のアバターが発表者のアバターと共有できるデジタルツインカンファレンス開催装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一態様に係るデジタルツインカンファレンス開催装置を説明するための模式図である。
【
図2】本発明の一態様に係るデジタルツインカンファレンス開催装置を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の一態様に係るデジタルツインカンファレンス開催装置を利用してデジタルツインカンファレンスを開催する流れを説明するための図である。
【
図4】
図1に示す発表用サンプルの3Dデータ(3次元的データ)による画像である。
【
図5】人骨に近似した硬さの樹脂により作製した3Dモデルの写真である。
【
図6】上顎骨12a上に付着させる人工骨膜16と人工歯肉13を示す写真である。
【
図7】
図5に示す3Dモデルに
図3に示す人工骨膜と人工歯肉13を付着させた状態を示す写真である。
【
図8】
図7に示す3Dモデルに付着させる人工シュナイダー膜14である。
【
図9】
図7に示す人工歯肉13と人工骨膜を付着させた3Dモデルに、
図8に示すような人工シュナイダー膜14を付着させた状態を示す写真である。
【
図10】
図9に示す3Dモデルに切開線15を明示した状態を示す写真である。
【
図11】DICOMを画像解析ソフトウェアに読み込むことで得られた画像データを示す図である。
【
図12】画像解析ソフトウェアにおいて骨や歯を選択する値を基準に自動抽出することで得られた画像データを示す図である。
【
図13】頚椎や三次元画像の構築上の妨げとなる部位の削除、及び粗な部分や空洞の塗りつぶしを、ペンツールと塗りつぶしツールを用いて行うことで得られた画像データを示す図である。
【
図14】表面形状データの表示した画像データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1及び
図2は、本発明の一態様に係るデジタルツインカンファレンス開催装置を説明するための模式図である。
【0023】
図1に示すように、デジタルツインカンファレンス開催装置は、物理空間の環境を再現した仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催する機能を実現するプログラムを備えたサーバー111を有し、
サーバー111は、
発表者113が第1のXR機器114を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、発表者113が発表用サンプルの3Dデータ115及び発表者のアバター116を仮想空間内112に表示させる機能と、
第1の参加者117が第2のXR機器118を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、第1の参加者117が第1の参加者のアバター119を仮想空間内112に表示させる機能と、
仮想空間内112において発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、第1の参加者のアバター119が発表者のアバター116と共有する機能と、
を実現するプログラムを有する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、デジタルツインカンファレンス開催装置はサーバー111を有し、このサーバー111は物理空間の環境を再現した仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催する機能を実現するプログラムを備えている。
【0025】
ここで、デジタルツインとは、物理空間にある情報を集め、送信されたデータを元に仮想空間でリアル空間を再現する技術であり、XRの技術を用いて仮想空間に物理空間の環境を再現することである。
また仮想空間とは、コンピューターで人工的に作り出したバーチャル空間のことである。
またXRとは、「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「MR(複合現実)」といった技術の総称であり、現実世界と仮想世界を融合することで、現実にはないものを知覚でき、新たな体験をつくり出す技術である。
カンファレンスとは、学術的な会議や研究会や学会(例えば医療学会、歯科医療学会等)を含む意味である。
またデジタルツインカンファレンスには、一般的な学会、学術的な会議や研究会等を含む意味である。
【0026】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下の(1)~(3)の機能を実現するプログラムを有する。
(1)各国の発表者113が第1のXR機器114を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、発表者113が発表用サンプルの3Dデータ115及び発表者のアバター116を仮想空間内112に表示させる機能。
(2)各国の参加者1(第1の参加者)117が第2のXR機器118を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、第1の参加者117が第1の参加者のアバター(参加者1のアバター)119を仮想空間内112に表示させる機能。
(3)仮想空間内112において各国の発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、参加者2のアバター119が発表者のアバター116と共有する機能。
【0027】
図1に示す各国の発表者113とは、サーバー111が例えば日本に存在し、デジタルツインカンファレンスを開催する開催者が日本にいる場合に、発表者113は例えば
図2に示すB国の地域の大学、クリニック、病院、学生又は職員であり、B国は日本以外の国でもよいし、日本でよいことを意味する。
【0028】
ここで、XR機器とは、物理空間の環境を再現した仮想空間を実現し、その仮想空間内にXR機器の使用者に模したキャラクターや3Dデータを表示させ、自由に動かすことができる機器である。
5Gネットワークとは、5Gを実現するネットワークシステムである。
5Gとは、第5世代移動通信システムであり、第5世代移動通信システムとは、1G・2G・3G・4Gに続く国際電気通信連合が定める規定「IMT-2020」を満足する無線通信システムである。
本実施形態では、5Gネットワークシステムを用いているが、5G以降の世代(6G等)が利用可能となれば、5G以降のネットワークシステムを用いることも可能である。
アバターとは、仮想空間内に表示される、ユーザー(発表者、参加者、見学者)に模したキャラクターである。
【0029】
図1に示す各国の参加者1(第1の参加者)117とは、サーバー111が例えば日本に存在し、デジタルツインカンファレンスを開催する開催者が日本にいる場合に、第1の参加者117は例えば
図2に示すA国の地域の大学、クリニック、病院、学生又は職員であり、B国は日本以外の国でもよいし、日本でよいことを意味する。A国は、B国と異なる国でもよいし、B国と同一の国でもよい。
【0030】
図1及び
図2に示すサーバー111は、さらに以下の(4)~(5)の機能を実現するプログラムを有する。
(4)各国の参加者2(第2の参加者)120が第3のXR機器121を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、第2の参加者120が第2の参加者のアバター(参加者2のアバター)122を仮想空間内112に表示させる機能。
(5)仮想空間内112において各国の発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、参加者2のアバター122が発表者のアバター116と共有する機能。
【0031】
図1に示す各国の参加者2(第2の参加者)120とは、サーバー111が例えば日本に存在し、デジタルツインカンファレンスを開催する開催者が日本にいる場合に、第2の参加者120は例えば
図2に示すF国の地域の大学、クリニック、病院、学生又は職員であり、F国は日本以外の国でもよいし、日本でよいことを意味する。F国は、A国又はB国と異なる国でもよいし、A国又はB国と同一の国でもよい。
【0032】
図1及び
図2に示すサーバー111は、さらに以下の(6)~(7)の機能を実現するプログラムを有する。
(6)各国の参加者3(第3の参加者)123が第3のXR機器124を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、第3の参加者123が第3の参加者のアバター(参加者3のアバター)125を仮想空間内112に表示させる機能。
(7)仮想空間内112において各国の発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、参加者3のアバター125が発表者のアバター116と共有する機能。
【0033】
図1に示す各国の参加者3(第3の参加者)123とは、サーバー111が例えば日本に存在し、デジタルツインカンファレンスを開催する開催者が日本にいる場合に、第3の参加者123は例えば
図2に示すD国の地域の大学、クリニック、病院、学生又は職員であり、D国は日本以外の国でもよいし、日本でよいことを意味する。D国は、A国、B国又はF国と異なる国でもよいし、A国、B国又はF国と同一の国でもよい。
【0034】
図1及び
図2に示すサーバー111は、さらに以下(8)の機能を実現するプログラムを有する。
(8)開催されているデジタルツインカンファレンスの外部からの見学者126が第1のコンピューター(PC)又は第4のXR機器127を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、見学者126が仮想空間内112において発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、第1の参加者のアバター(参加者1のアバター)119が発表者のアバター116と共有しているシーンを視聴する機能。
【0035】
図1に示す各国の見学者126とは、サーバー111が例えば日本に存在し、デジタルツインカンファレンスを開催する開催者が日本にいる場合に、見学者126は例えば
図2に示すC国の地域の大学、クリニック、病院、学生又は職員であり、C国は日本以外の国でもよいし、日本でよいことを意味する。C国は、A国、B国、D国又はF国と異なる国でもよいし、A国、B国、D国又はF国と同一の国でもよい。
【0036】
デジタルツインカンファレンスを仮想空間内112で開催することで、そのデジタルツインカンファレンスに直接参加していない者でも外部から見学することが可能となる。つまり、従来の学会等ではできなかったことが可能となる。
【0037】
図1に示す発表用サンプルの3Dデータ115は、患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データ、及び歯科治療の術式の流れの3次元的データの少なくとも一つ、又は新しい器具サンプルの3次元的データであるとよい。患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ等は後述するが、新しい器具サンプルは、例えば歯科処置・手術の際の根管治療時の歯髄を除去するために使用するガイド、歯科処置・手術の際のインプラントの埋入の際に使用するガイド等であってもよい。
【0038】
本実施形態によれば、デジタルツインカンファレンスを仮想空間内112で開催することで、従来の学会等ではできなかった、発表者及び参加者が一つの場所に集まる必要がなく、手間を少なくして発表や参加が可能となり、利便性を高くすることができる。
【0039】
本実施形態によるデジタルツインカンファレンスが例えば歯科のようなデンタルデジタルツインカンファレンスでは、患者のデータおよび新しい器具サンプル・術式の流れの3Dデータ115を作成して、仮想空間内112で参加者117,120,123と発表者(講演者)113が3Dデータ115を共に共有できる全く新しい体験型カンファレンス・学会を実現することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の一態様に係るデジタルツインカンファレンス開催装置を利用してデジタルツインカンファレンスを開催する流れを説明するための図である。なお、第1の実施形態で説明した内容は省略する。
【0041】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下(9)の機能を実現するプログラムを有する。
(9)デジタルツインカンファレンスの開催の前又は後に、前述した患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、各国の参加者1(第1の参加者)117が第2のXR機器118又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能。
【0042】
以下に詳細に説明する。
図3に示すように、発表者、参加者及び見学者等の全ての関係者に、デジタルツインカンファレンスを開催する案内やパンフレットを開催者がネットワークを介して周知させる(S1)。この案内やパンフレットにより上記関係者はデジタルツインカンファレンス開催前に上記の3Dプリンティング模型を開催者に注文できるようになっている。つまり、デジタルツインカンファレンス開催装置は、上記の関係者がコンピューター等からネットワークを介して購入するための手続きを行うことができる機能を有する。なお、3Dプリンティング模型については後述する。
【0043】
次に、第1の実施形態で説明したようにデジタルツインカンファレンス開催装置を利用してデジタルツインカンファレンスを開催する(S2)。これにより、日本のみならず、世界各国からの参加・体験・見学が可能となる。
【0044】
次に、デジタルツインカンファレンスを開催した後に、発表者、参加者及び見学者等の全ての関係者は上記の3Dプリンティング模型を開催者に注文できるようになっている(S3)。つまり、デジタルツインカンファレンス開催装置は、上記の関係者がコンピューター等からネットワークを介して購入するための手続きを行うことができる機能を有する。
【0045】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下(10)の機能を実現するプログラムを有する。
(10)デジタルツインカンファレンスの開催の後に、仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、第1の参加者が第2のXR機器又は第2のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能。
【0046】
図1及び
図2に示すデジタルツインカンファレンス開催装置は、仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を記録する機能を有している。
【0047】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下(8)、(11)の機能を実現するプログラムを有する。
(8)見学者126が第1のコンピューター又は第4のXR機器127を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、見学者126が仮想空間内112において発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、第1の参加者のアバター(参加者1のアバター)119が発表者のアバター116と共有しているシーンを視聴する機能。
(11)デジタルツインカンファレンスの開催の後に、患者の歯を備えた上顎骨の3次元的データ、患者の歯を備えた下顎骨の3次元的データ、又は患者の歯を備えた上下顎骨の3次元的データを基に3Dプリンターを用いて作製された3Dプリンティング模型を、見学者126が第1のコンピューター又は第4のXR機器127からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能。
【0048】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下(8)、(12)の機能を実現するプログラムを有する。
(8)見学者126が第1のコンピューター又は第4のXR機器127を用いて5Gネットワークによってサーバー111に接続することで、見学者113が仮想空間内112において発表者113が表示する発表用サンプルの3Dデータ115を、第1の参加者のアバター(参加者1のアバター)119が発表者のアバター116と共有しているシーンを視聴する機能。
(12)デジタルツインカンファレンスの開催の後に、仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、見学者126が第1のコンピューター又は前記第4のXR機器127からネットワークを介して購入するための手続きを行う機能。
【0049】
図1及び
図2に示すサーバー111は、以下(13)の機能を実現するプログラムを有する。
(13)サーバー111は、デジタルツインカンファレンスの開催の後に、仮想空間内112でデジタルツインカンファレンスを開催している動画を、見学者126及び参加者117,120,123以外の者(図示せず)が第3のコンピューターからネットワークを介して購入するための手続きを行う機能。
【0050】
本実施形態によれば、デジタルツインカンファレンスの参加者は、カンファレンス前・後に希望により、3Dデータ115より3Dプリンティング模型を購入でき、実際に参加者が症例・新しい器具のサンプル・術式を現実空間でも体験できる。従来のカンファレンス・学会では不可能であった3Dで症例や新しい器具・術式を深く理解できるのみでなく体験できる。1症例に対して講演者(発表者)・参加者・見学者による討論や体験により十分な時間をかけて理解できる。場所の制限に関しては、5Gネットワーク(今後6G等)を用いることにより、日本国内のみならず、海外各国から講演者(発表者)・参加者が仮想空間内にアバターとして集まることができ、その様子を世界各国から見学できる。
【0051】
仮想空間内112での発表は録画しているので、動画購入者は振り返り動画として視聴できる。よって、当日参加や視聴できないかった場合にも対応が可能となる。
【0052】
なお、前述したように、仮想空間内に入る場合にはXR機器を発表者・参加者は装着することになる。また見学者はXR機器またはパーソナルコンピューターで見学できる。
【0053】
別言すれば、従来の学会では、発表者が一方的に文章・写真・口頭で説明を行うのみであり、インプットからアウトプット(input→output)が困難であった。
これ対し、デジタルツインカンファレンスでは、仮想空間内112で発表者113と参加者117,120,123が3Dデータ115を用いて、症例説明・ディスカッション(即ちinput)ができる。仮想空間内112にいない見学者126も説明・ディスカッションの様子を見学(即ちinput)できる。見学者等は希望により事前又は事後に3Dプリンティング模型を購入でき、ご自身の資料として保管できたり・勉強できる(即ちoutput)。
【0054】
(第3の実施形態)
第2の実施形態で記載した3Dプリンティング模型は、歯科用上顎模型又は歯科用下顎模型であり、
前記歯科用上顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた上顎骨と、
前記上顎骨の上顎洞側に付着させた人工シュナイダー膜と、
前記上顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有し、
前記歯科用下顎模型は、
樹脂からなる歯を備えた下顎骨と、
前記下顎骨に付着させた人工骨膜と、
前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉と、を有する。
【0055】
図1及び
図2に示す第1の実施形態で説明したデジタルツインカンファレンス開催装置を利用して仮想空間内でデジタルツインカンファレンスを開催する前に、前記発表用サンプルの3Dデータを製造する方法であって、
CTの医用画像をフォーマットした画像データを画像解析ソフトウェアに読み込み、前記画像解析ソフトウェアにおいて歯及び骨の領域を抽出する工程(d)と、
前記領域を抽出したデータから三次元画像の構築上の妨げとなる部位を削除し、粗な部分や空洞を塗りつぶす工程(e)と、
前記工程(e)の後の前記領域を抽出したデータの重ね合わせから、前記歯を備えた上顎骨又は下顎骨の表面構造のみを抽出し、その抽出したデータにより三次元画像データを構築する工程(f)と、
前記三次元画像データを3DCGソフトウェアに読み込み、前記3DCGソフトウェアにおいて前記三次元画像データを汎用の画像データに変換する工程(g)と、
前記汎用の画像データから不要なゴミポリゴンを削除する工程(h)と、
前記CTの医用画像をフォーマットした画像データからの歯列データと口腔内スキャナーのデータを位置合わせして重ね合わせ、不要部分の削除及び足りない部分の修正の少なくとも一方を行うことで、3次元的データを構築する工程(i)と、
を有する発表用サンプルの3Dデータの製造方法である。
【0056】
また、上記の工程(d)の前記CTの医用画像をフォーマットした画像データは、DICOMデータであり、
上記の工程(g)の前記汎用の画像データは、OBJ形式の画像データであるとよい。
【0057】
以下に詳細に説明する。
<歯科用上顎模型の製造方法>
以下に、歯科用上顎模型の製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0058】
図4は、
図1に示す発表用サンプルの3Dデータ(3次元的データ)による画像である。詳細には、歯科医院で撮影された実際の患者のC Tデータから歯11を備えた上顎骨12を表す3Dデータを歯科用上顎模型作製者が公知のソフトウェアを用いて作製し、その3Dデータによって
図4に示すような画像を表示することができる。この3Dデータの作製方法の詳細については後述する。なお、C Tデータに加えて3Dスキャナーのデータ(口腔内スキャナーのデータ)も用いて3Dデータを作製してもよい。
【0059】
上記のC Tデータや3Dスキャナーのデータの取得方法は、歯科医院で撮影された実際の患者のC Tデータや3Dスキャナーのデータを、歯科医院に設置された端末から送信し、そのデータを歯科用上顎模型の作製者(開催者)の端末が受信することで取得してもよい。
以下に、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)データからの3Dデータ作製の方法(手順)について詳細に説明する。
なお、「DICOM」とは、CTやMRI、CRなどで撮影した医用画像のフォーマットと、それらを扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した標準規格である。
(1)セグメンテーション(領域抽出)
医用画像解析におけるセグメンテーションとは、CT等の医用画像をフォーマットしたDICOMなどの画像データからCT値等を基準に特定の領域を抽出することである。本方法では画像データから硬組織(歯や骨)を抽出する工程を意味する。以下に詳細に説明する。
歯科用上顎模型作製者(又は歯科用下顎模型作製者)が画像解析ソフトウェア(Fiji is just)imageJのインストールを行う。DICOMを画像解析ソフトウェアに読み込む(Fire→import→image sequence→DICOM選択)。これにより、
図11に示すようなデータを得る。
次に、画像解析ソフトウェアにおいて骨や歯を選択する値を基準に自動抽出する(image→adjust→threshold)。これにより、
図12に示すようなデータを得る。
次いで、骨や歯の領域を抽出したデータから頚椎や三次元画像の構築上の妨げとなる部位の削除、及び粗な部分や空洞の塗りつぶしを、ペンツールと塗りつぶしツールを用いて行う。これにより、
図13に示すようなデータを得る。脳頭蓋と下顎骨は一つの画像から分離し、それぞれTIFFファイルフォーマット(TIFF)で保存する(Fire→save as→image sequence)。場合によっては歯の神経である歯髄及び歯、顔面表皮、気道などもそれぞれ単独で必要箇所を表示する。なお、「TIFF」は、ビットマップ画像の符号化形式の一種である。タグと呼ばれる識別子を使うことによって、様々な形式のビットマップ画像を柔軟に表現できる。
(2)3Dモデルデータの構築
3Dモデルデータ、すなわち表面形状データの表示(サーフェスレンダリング)は、セグメンテーション(特定の領域の抽出)が終了した画像データから3Dビューワーで surfacedisplay(表面表示)のThreshold100(しきい値100)、Sampling2(サンプリング2)を選択することで行う(plugins→3Dviewer)。これにより得られたデータはSTLのバイナリー形式で保存する(file→export surfaces→STL(binary))。これにより、
図14に示すようなデータを得る。
なお、上記の「サーフェスレンダリング」とは、得られた断層撮影画像データの重ね合わせから、対象とするもの(即ち歯を備えた上顎骨又は歯を備えた下顎骨)の表面構造のみを抽出し、その抽出したデータにより三次元画像データを構築する三次元画像表示のための画像処理法(image processing)の手法である。また、上記の「3Dビューワー」は、一般的な3Dファイルを表示したり、3Dモデルを背景と合成して撮影したりできるアプリである。また、上記の「plugins」は、アプリケーションの機能を拡張するソフトウェアを指す。個別に追加してバージョンアップが可能である。また、上記の「STL」は、3Dプリンターに持っていくデータとして標準的なファイルフォーマットであり、「バイナリー形式」は、データが軽いので、データ容量に制限がある場合に適している。
次に、STLのバイナリー形式で保存したデータをBlender(Blender Foundation)に読み込み、STLデータからOBJ形式に変換し、Zbrush(Pixologic Co)に読み込みが可能な状態にデータ形式を変換する。なお、上記の「Blender」とは、オープンソースの統合型3DCGソフトウェア(3次元コンピュータグラフィックスを制作するためのソフトウェア)の一つであり、3Dモデリング、レンダリング、デジタル合成などの機能を備えている。また、上記の「Blender Foundation」は、フリーかつオープンソースの3DCGソフトウェアであるBlenderの開発を行う非営利団体である。また、「OBJ形式」とは、3Dデータのファイル形式の一つであり、そのファイル形式は、3Dジオメトリのみを表現する単純なデータ形式である。なお、「3Dジオメトリのみ」とは、各頂点の位置、各テクスチャ座標の頂点のUV位置、頂点法線、頂点リストとして定義された各ポリゴンを形作る面、そしてテクスチャ頂点である。また、上記の「Zbrush」は、Pixologic社が開発するWindowsおよびmacOS用の3DCGソフトウェアである。→PC上で彫刻(デジタル彫刻)ができる特徴があり、いわば主観的操作が可能となる。とりわけ、マニュアル操作が多い歯科医療業界においては親和性が高いといえる。
(3)3Dデータの処理手順
OBJフォーマットにした各データをZbrushにインポートし読み込む。
セグメンテーション作業(特定の領域の抽出作業)からからSTL化したデータの問題点は、主要なデータから離れている不要な一般的に呼ばれるゴミポリゴンを多く含有し、ただデータを重たくしていることにある。ゴミポリゴンの存在は3Dプリントでも影響することから取り除く必要がある。
Zbrush上で「polygroups→AutoGroups→subtool→split→Groups split」を行い、データ分離を行い、不要データをDelete機能で削除していく。
また、上記の「polygroups」は複数のポリゴンにユニークなカラーを割り当て、一つのグループにまとめることができる機能である。 ポリグループを利用することで、ポリゴンをまとめてワンクリックで非表示にすることや、マスクの適用ができる。また、上記の「Groups split」は、ポリグループごとにサブツールを分割する機能である。
前述したCTの医用画像をフォーマットした画像データからの歯列データと口腔内スキャナーのデータ(即ち前記の3Dスキャナーのデータ)の重ね合わせ及び位置合わせは、Fusion360(Autodesk Inc.)に基準となるCTデータと口腔内スキャナデータを読み込み、CTデータを基準として口腔内スキャナデータを動かすことで修正及び位置合わせを行う。位置情報が変わった口腔内スキャナデータはSTLでエクスポートし、上述した方法でOBJファイルに変換する。なお、Fusion360は、Autodesk社が提供している高機能クラウド3DCADソフトである。このソフトでは、幾何学的な形やフィギュアのような滑らかな形まで両方の3Dモデルを作ることができる。
必要データをZbrusuに取り込み、不要部分を削除したり、足りない部分は一部同ソフトウェア上で修正して3Dプリント用のデータ(即ち3次元的データ)を構築していく。なお、不要部分の削除と足りない部分の修正はいずれか一方のみを行う場合もあり得る。
仕上げた3DデータはZpluginから3D Print Exporterを選択し、STLデータとしてエクスポートし3Dプリンターへと送る。
なお、上記の「Zplugin」は、プラグインの中の補完用のファイルを自動で探索し、そのファイルを参照するシンボリックリンクを使ってfpath(コロンで区切られたディレクトリのリスト)に追加する機能がある。ディレクトリは、コンピューターのファイルシステムにおいて、ファイルをグループ化するための特殊なファイルで、整理・管理などの目的で活用される。
また、「3D Print Exporter」は、3Dプリンターで一般的に使われているファイルフォーマットであるSTL形式を、Zbrushから直接出力できるようにするプラグインである。
上記のようにしてC Tデータや3Dスキャナーからの3Dデータを作製することができる。その3Dデータによって例えば
図1に示すような画像を表示することができる。
(4)DICOMデータからの3Dデータの作製方法の効果
本方法はフリーウェアと汎用のソフトウェアを使用することからコスト面の問題を大幅に解決できる。また使用するソフトウェアは特別な保守を必要とせず一度入手すれば、定期的に最新版をダウンロードでき常に最新の状態を維持できる。ソフトウェアの操作に伴う煩雑性という点では、汎用ソフトウェアを使用している観点からもインターネットを通じて多くの情報を得ることが可能であり、実際に扱う機能はソフトウェアの極僅かに限られていることからも一度習得すればそれ相応の3Dモデルを容易に制作することが可能となる。ハードウェアもPCについては動画編集が可能なスペックがあれば対応可能である。3Dプリンターによる3Dデータの出力は外部委託が可能な為、特別に購入の必要もない。
つまり本方法は従来の特別な手法、限られた機関だけの技術となりうる障害を解決することができる。
【0060】
図5は、人骨に近似した硬さの樹脂により作製した3Dモデルの写真である。詳細には、
図4に示す画像の3Dデータ(3次元データ)を基に、歯科用上顎模型の作製者が3DPrinterで上記の樹脂からなる歯11aを備えた上顎骨12aの3Dモデルを作製する。
【0061】
図6は、上顎骨12a上に付着させる人工骨膜16と人工歯肉13を示す写真である。詳細には、上顎骨12a上に人工骨膜16が位置し、その人工骨膜16上に人工歯肉13が位置する構造であるため、
図6は、人工骨膜16上に人工歯肉13が付着した状態を示している。なお、人工骨膜を作製するための材料は、酢酸ビニル樹脂を主成分とし、溶剤として水を用い、必要に応じて樹脂、可塑剤、防腐剤、充てん剤、界面活性剤等を混入させることで得られる。
【0062】
図7は、
図5に示す3Dモデルに
図6に示す人工骨膜(図示せず)と人工歯肉13を付着させた状態を示す写真である。詳細には、
図5に示す樹脂からなる歯11aを備えた上顎骨12aの3Dモデルに、厚さ・強度・見た目が実際の患者の骨膜と歯肉に近似した人工骨膜と人工歯肉13を付着させる。
【0063】
人工歯肉13は、粘着力増強剤としてのガントレッツ塩、粘膜付着剤としてのC M C ナトリウム、植物性ゴムであるカラヤゴムやアラビアゴム、軟膏であるワセリン、吸水性ポリマーとしてのポリアクリル酸ナトリウム、親水性ポリマーとしてのポリエチレングリコールを用いて作製される。
【0064】
図8は、
図7に示す3Dモデルに付着させる人工シュナイダー膜14である。この人工シュナイダー膜14は、厚さ・強度・見た目が実際の患者のシュナイダー膜と近似しており、厚さは0.3~0.3mmである。なお、シュナイダー膜とは、上顎骨の中の上顎洞(空洞)を覆っている粘膜のことである。また、上顎洞は、上顎の内部に広がる空洞であり、鼻の穴から広がる鼻腔という空洞の両脇に通じている。
【0065】
図9は、
図7に示す人工歯肉13と人工骨膜を付着させた3Dモデルに、
図8に示すような人工シュナイダー膜14を付着させた状態を示す写真である。詳細には、上顎骨の上顎洞側(人工歯肉13と逆側)にシュナイダー膜材料を塗布することで、上顎骨に人工シュナイダー膜14を形成する。これにより、上顎洞の内部を精密に再現することができる。なお、シュナイダー膜材料は、酢酸ビニル樹脂を主成分とし、溶剤として水を用い、必要に応じて樹脂、可塑剤、防腐剤、充てん剤、界面活性剤等を混入させることで作製される。
【0066】
このようにして
図9に示す実際の患者の上顎洞内部を精密に再現した3Dモデルを作製し、実際の患者に歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置等)を行う歯科医院に3Dモデルを送ることで、実際の歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置等)に役立てることができる。
【0067】
また、必要であれば、
図10に示すように、人工歯肉13に切開線15を黒インク等で明示してもよいし、歯肉を切開した後に歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置)に必要な骨造成のために上顎骨に開ける穴(Window)の削除部位領域(図示せず)を上顎骨又は人工骨膜にマーク等をつけて明示してもよい。さらに、歯科医師が手術練習の際に便利なナビケーションシステム(手術手順を説明した動画等)をオプションでつけてもよい。詳細には、歯科用上顎模型の作製を依頼した者に、その歯科用上顎模型を用いて手術手順を説明した動画を格納した記録媒体を付けて歯科用上顎模型を販売するオプションがあってもよい。このような動画を依頼者である歯科医師が見ることで、歯科用上顎模型を用いて効率的に手術の練習をすることができる。
【0068】
上述した製造方法により製造された歯科用上顎模型は、
図10に示すように、樹脂からなる歯11aを備えた上顎骨12aと、その上顎骨12aの上顎洞側に付着させた人工シュナイダー膜と、上顎骨12aに付着させた人工骨膜と、その人工骨膜上に付着させた人工歯肉13を有している。また、歯科用上顎模型は、人工歯肉13に明示された切開線15を有していてもよいし、上顎骨又は前記人工骨膜に明示された削除部位領域(Window)を有していてもよい。この削除部位領域は、人工歯肉13を切開線15に沿って切開し、その切開した人工歯肉13の下に位置している。
【0069】
<歯科用下顎模型の製造方法>
以下に、本発明の一態様に係る歯科用下顎模型の製造方法について説明する。
【0070】
歯科用上顎模型の製造方法と同様に、歯科医院で撮影された実際の患者のC Tデータから歯11を備えた下顎骨を表す3Dデータを歯科用下顎模型作製者(開催者)が公知のソフトウェアを用いて作製し、その3Dデータによって画像を取得する。この3Dデータの作製方法の詳細は前述したとおりである。なお、C Tデータに加えて3Dスキャナーのデータも用いて3Dデータを作製してもよい。
【0071】
なお、上記のC Tデータや3Dスキャナーのデータの取得方法は、歯科用上顎模型の製造方法と同様に、歯科医院で撮影された実際の患者のC Tデータや3Dスキャナーのデータを、歯科医院に設置された端末から送信し、そのデータを歯科用下顎模型の作製者の端末が受信することで取得してもよい。
【0072】
次に、上記の画像の3Dデータ(3次元データ)を基に、歯科用下顎模型の作製者が3DPrinterで歯科用上顎模型の製造方法と同様の樹脂からなる歯を備えた下顎骨の3Dモデルを作製する。
【0073】
次に、歯科用上顎模型の製造方法と同様に、人工骨膜上に人工歯肉が付着した状態のものを作製する。
【0074】
次に、歯科用上顎模型の製造方法と同様に、上記の3Dモデルに人工骨膜と人工歯肉を付着させる。
【0075】
このようにして実際の患者の下顎を精密に再現した3Dモデルを作製し、実際の患者に歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置等)を行う歯科医院に3Dモデルを送ることで、実際の歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置等)に役立てることができる。
【0076】
また、必要であれば、歯科用上顎模型の製造方法と同様に、人工歯肉に切開線を黒インク等で明示してもよいし、歯肉を切開した後に歯科外科処置(歯周外科、インプラント手術、口腔外科処置)に必要な骨造成のために上顎骨に開ける穴(Window)の削除部位領域を下顎骨又は人工骨膜にマーク等をつけて明示してもよい。さらに、歯科医師が手術練習の際に便利なナビケーションシステム(手術手順を説明した動画等)をオプションでつけてもよい。詳細には、歯科用上顎模型の場合と同様に、歯科用下顎模型の作製を依頼した者に、その歯科用下顎模型を用いて手術手順を説明した動画を格納した記録媒体を付けて歯科用下顎模型を販売するオプションがあってもよい。このような動画を依頼者である歯科医師が見ることで、歯科用下顎模型を用いて効率的に手術の練習をすることができる。
【0077】
上述した製造方法により製造された歯科用下顎模型は、樹脂からなる歯を備えた下顎骨と、前記下顎骨に付着させた人工骨膜と、前記人工骨膜上に付着させた人工歯肉を有している。また、歯科用下顎模型は、人工歯肉に明示された切開線を有していてもよいし、下顎骨又は前記人工骨膜に明示された削除部位領域(Window)を有していてもよい。
【0078】
上記実施形態によれば、歯科医師が手術前にS R P Mを用いて、切開線の位置、骨の削除部位、シュナイダー膜の剥離、骨造成、縫合などの術式の確認をすることができる。
【0079】
また、歯科用上顎模型又は歯科用下顎模型を作製しておくことで、患者に行うまたは行なった処置・手術の説明に用いることができ、その結果、患者が処置・手術の内容を容易に理解することができる。
【0080】
なお、上述した第1の実施形態から第3の実施形態を適宜組み合わせて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
11,11a 歯
12,12a 上顎骨
13 人工歯肉
14 人工シュナイダー膜
15 切開線
16 人工骨膜
111 サーバー
112 仮想空間内
113 各国の発表者(発表者)
114 第1のXR機器
115 発表用サンプルの3Dデータ
116 発表者のアバター
117 各国の参加者1(第1の参加者)
118 第2のXR機器
119 第1の参加者のアバター(参加者1のアバター)
120 各国の参加者2(第2の参加者)
121 第3のXR機器
122 第2の参加者のアバター(参加者2のアバター)
123 各国の参加者3(第3の参加者)
124 第3のXR機器
125 第3の参加者のアバター(参加者3のアバター)
126 各国の見学者(見学者)
127 第1のコンピューター(PC)又は第4のXR機器