(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175155
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/60 20060101AFI20241211BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241211BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20241211BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241211BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241211BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20241211BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20241211BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241211BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20241211BHJP
B29C 39/44 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B29C44/60
B29C64/106
B33Y70/10
B33Y10/00
B33Y80/00
B29C33/38
B29C39/24
B29C44/00 F
B29C44/36
B29C39/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182802
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391064429
【氏名又は名称】シーメット株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 潤
(72)【発明者】
【氏名】青木 進平
(72)【発明者】
【氏名】大長 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】大場 好一
(72)【発明者】
【氏名】天王 俊成
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕司
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F213
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AA44
4F202AB25
4F202AJ03
4F202AP05
4F202AR06
4F202CA30
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4F202CD28
4F202CD30
4F202CM29
4F202CM90
4F202CN01
4F202CN30
4F204AA36
4F204AB02
4F204AJ03
4F204AR06
4F204EA03
4F204EB01
4F204EK13
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4F213AA39
4F213AB02
4F213WA25
4F213WB01
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4F214AR06
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4F214UB01
4F214UD17
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4F214UF27
4F214UW27
(57)【要約】
【課題】熱硬化性樹脂の加熱硬化時における、外型の崩壊を効果的に防止することのできる、立体造形物の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の立体造形物の製造方法は、硬化性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂組成物を硬化させ、外型を形成する工程と、外型に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させる工程と、外型を熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度以上に加熱し、崩壊させ、硬化した熱硬化性樹脂組成物からなる、立体造形物を取り出す工程と、
を含み、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程における加熱温度が、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも30℃以上低いことを特徴とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体造形物の製造方法であって、
硬化性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂組成物を硬化させ、外型を形成する工程と、
前記外型に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させる工程と、
前記外型を前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度以上に加熱し、崩壊させ、硬化した前記熱硬化性樹脂組成物からなる、立体造形物を取り出す工程と、
を含み、
前記熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程における加熱温度が、前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも30℃以上低いことを特徴とする、立体造形物の製造方法。
【請求項2】
前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度が、90~200℃である、請求項1に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化における加熱温度が、60~170℃である、請求項1又は2に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項4】
前記立体造形物の体積が、200~100000mm3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項5】
前記外型の炭化または燃焼を開始する温度が、前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも高いことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程が、前記熱硬化性樹脂組成物を、前記樹脂組成物よりも熱伝導率の高い加熱手段に接することにより行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程が、前記熱硬化性樹脂組成物の加熱と、放冷とを繰り返すことにより行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形物の製造方法に関し、より詳細には造形用樹脂組成物を用いた立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂組成物を立体的に光学造形する方法が、目的とする形状及び寸法を有する立体造形物を精度良く製造し得ることから、広く採用されるようになってきている。
【0003】
立体造形物の製造方法として、熱膨張性カプセルを含む光硬化性樹脂組成物により外型を形成し、該外型内に、熱硬化性樹脂を充填し、硬化させた後、熱膨張性カプセルの発泡温度以上に加熱することにより、熱膨張性カプセルを発泡させ、外型を崩壊させ、熱硬化性樹脂からなる立体造形物を取り出す方法が知られている(特許文献1参照)。
このような光学的立体造形方法によれば、複雑な形状を有する造形物であっても容易に且つ比較的短時間に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2013/151159号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今般、本発明者らは、熱硬化性樹脂からなる立体造形物のサイズや形状によっては、加熱硬化時において、局所的に高温となり、外型に含まれる熱膨張性カプセルの発泡温度以上となる結果、外型が崩壊し、所望の形状の立体造形物を得ることができないおそれがあるという新たな課題を見出した。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、熱硬化性樹脂の加熱硬化時における、外型の崩壊を効果的に防止することのできる、立体造形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の立体造形物の製造方法は、硬化性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂組成物を硬化させ、外型を形成する工程と、
外型に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させる工程と、
外型を熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度以上に加熱し、崩壊させ、硬化した熱硬化性樹脂組成物からなる、立体造形物を取り出す工程と、
を含み、
熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程における加熱温度が、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも30℃以上低いことを特徴とする。
【0008】
一実施形態において、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度は、90~200℃である。
【0009】
一実施形態において、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化における加熱温度は、60~170℃である。
【0010】
一実施形態において、立体造形物の体積は、200~100000mm3である。
【0011】
一実施形態において、外型の炭化または燃焼を開始する温度は、前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも高い。
【0012】
一実施形態において、硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程は、熱硬化性樹脂組成物の加熱と、放冷とを繰り返すことにより行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱硬化性樹脂の加熱硬化時における、外型の崩壊を効果的に防止することのできる、立体造形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較例1における試験片に熱硬化性樹脂組成物を満たした状態の写真。
【
図2】比較例1における光学的立体造形物を加熱した後の状態の写真。
【
図3】比較例2における試験片に熱硬化性樹脂組成物を満たした状態で硬化させたときの写真。
【
図4】比較例2における光学的立体造形物を加熱して膨張した状態の写真。
【
図5】比較例2における光学的立体造形物の膨張後の状態の写真。
【
図6】実施例1における試験片に熱硬化性樹脂組成物を満たした状態で硬化させたときの写真。
【
図7】実施例1における光学的立体造形物を加熱して膨張した状態の写真。
【
図8】実施例1における光学的立体造形物の膨張後の状態の写真。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[立体造形物の製造方法]
本発明の立体造形物の製造方法は、
硬化性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む樹脂組成物を硬化させ、外型を形成する工程と、
外型に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させる工程と、
外型を熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度以上に加熱し、崩壊させ、硬化した熱硬化性樹脂組成物からなる、立体造形物を取り出す工程と、
を含むことを特徴とする。
また、一実施形態において、本発明の立体造形物の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を放冷する工程を含み、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化工程と、放冷工程とを交互に行うことができる。
【0016】
一実施形態において、立体造形物は、形成された外型に熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させることにより製造してもよい。 また、他の実施形態において、立体造形物、特に微細な形状を有する立体造形物を製造する場合には、外型の形成と、熱硬化性樹脂組成物の充填を同時に行うことが好ましい。より具体的には、樹脂組成物を供給した後、活性エネルギー線又は熱光線を選択的に照射し、パターン状に硬化させ、外型用硬化層を形成する。この外型用硬化層の内側に、熱硬化性樹脂組成物を供給し、立体造形用硬化層を形成する。次いで、硬化後の樹脂組成物上に、未硬化の樹脂組成物を供給し、活性エネルギー線又は熱光線を選択的に照射し、第2の外型用硬化層を形成し、この第2の外型用硬化層の内側に、熱硬化性樹脂を供給する。これを繰り返すことにより、外型用硬化層及び立体造形用硬化層を連続させ、外型内部に熱硬化性樹脂組成物が充填された状態で、加熱硬化させることにより、外型及び立体造形物を製造することができる。
【0017】
以下、本発明の方法が含まれる各工程についてより詳細に説明する。
【0018】
[外型形成工程]
本発明の立体造形物の製造方法は、樹脂組成物を用いて外型を形成する工程を含む。
【0019】
外型の形成に使用される樹脂組成物は、硬化性樹脂及び熱膨張性マイクロカプセルを含む。
【0020】
外型の形成は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、樹脂組成物を供給した後、活性エネルギー線又は熱光線を選択的に照射し、パターン状に硬化させ、硬化層を形成する。
次いで、硬化後の樹脂組成物上に、未硬化の樹脂組成物を供給し、活性エネルギー線又は熱光線を選択的に照射し、硬化層を形成し、これを繰り返すことにより、連続した硬化層を形成することにより、外型を製造することができる。
【0021】
本明細書において、「活性エネルギー線」とは、紫外線、電子線、X線、放射線又は高周波等のような光硬化性樹脂組成物を硬化させ得るエネルギー線を意味する。
【0022】
上記した活性エネルギー線のなかでも、経済的な観点からは、300~400nmの波長を有する紫外線または400~450nmの波長を有する紫色光を使用することが好ましい。この場合、光源としては、例えば、紫外線レーザー(例えば、半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He-Cdレーザー等)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)及び紫外線蛍光灯等が挙げられる。
【0023】
活性エネルギー線の照射ピッチ、照射範囲、光硬化性樹脂組成物への照射深度、スポット径、波長、照射速度、照射時間及び照射のタイミング等は、特に限定されるものではなく、使用する光硬化性樹脂組成物の組成等に応じて適宜変更することが好ましい。
活性エネルギー線の照射を複数の光源を用いて行った場合、活性エネルギー線の種類、波長、エネルギー強度、スポット径、照射ピッチ、光硬化性樹脂組成物への照射深度、移動形態、移動範囲、照射速度、及び照射のタイミング等をそれぞれ個別に調節することができ、また場合によっては両者を連動させて調節することができるので、望ましい。
【0024】
活性エネルギー線は、X方向及びY方向(平面方向)又はX方向、Y方向及びZ方向(平面方向と深さ及び/又は高さ方向)に移動可能なものを使用することができる。活性エネルギー線の移動方式は特に制限されず、例えば、光スキャナーを構成する反射鏡の角度の調節、反射鏡の位置移動及び反射鏡の高さの調節等により行うことができる。
【0025】
外型の製造においては、活性エネルギー線の照射位置センサーを配置し、計測された値に基づいて、活性エネルギー線の位置補正を行うことが好ましい。これにより、寸法精度に優れると共に、目的通りの形状、構造、物性及び色調を有する光学的立体造形物を円滑に製造することができる。
照射位置センサーの配置数及び配置位置は、目的とする外型の形状、構造及びサイズ、ならびに活性エネルギー線のビーム数、移動方式、移動方向、移動範囲及び照射速度等に応じて決めるのが望ましい。但し、照射位置センサーは、光造形の邪魔にならない位置に配置する必要があり、そのため照射位置センサーは、活性エネルギー線の最大移動範囲(最大移動面)を包囲する外周部分に間隔を設けて配置するのが好ましい。
活性エネルギー線の照射位置センサーの種類は特に制限されず、活性エネルギー線の照射位置を正確に検知できるセンサーであればいずれも使用でき、例えば、CCDセンサー及びPSDセンサー等が挙げられる。
【0026】
熱光線の光源は、特に限定されるものではなく、ヒーター等を使用することができる。
【0027】
[硬化性樹脂]
硬化性樹脂としては、光重合性化合物又は熱重合性化合物を使用することができる。外型形成時における熱膨張性マイクロカプセルの発泡防止という観点からは、光重合性化合物を使用することが好ましい。以下、好ましい硬化性樹脂である、光重合性化合物について詳細に説明する。
【0028】
光重合性化合物としては、カチオン重合性有機化合物やラジカル重合性樹脂組成物等を使用することができる。樹脂組成物は、カチオン重合性有機化合物及びラジカル重合性有機化合物を共に含んでいてもよい。
【0029】
カチオン重合性有機化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、スピロオルソエステル化合物及びビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
これらのカチオン重合性有機化合物は単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、カチオン重合性有機化合物としてエポキシ化合物及びオキセタン化合物が好ましく用いられる。
【0030】
樹脂組成物におけるカチオン重合性有機化合物の含有量は、30~95質量%であることが好ましく、40~80質量%であることがより好ましい。カチオン重合性有機化合物の含有量を上記数値範囲内とすることにより、該造樹脂組成物を用いて作製される外型の靱性、耐衝撃性、耐久性、耐熱性、寸法安定性及び力学的特性を向上することができる。
また、樹脂組成物が、エポキシ化合物及びオキセタン化合物を共に含む場合、それぞれの含有量は、50~90質量%及び3~50質量%であることが好ましく、55~95質量%及び5~45質量%であることがより好ましい。エポキシ化合物及びオキセタン化合物の含有量を上記数値範囲内とすることにより、該樹脂組成物を用いて作製される外型の力学的特性を向上することができる。
【0031】
エポキシ化合物としては、脂環族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物等のエポキシ化合物を挙げることができる。脂環族エポキシ化合物としては、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーデル、或いはシクロヘキセン環含有化合物又はシクロペンテン環含有化合物を過酸化水素、過酸等の酸化剤によりエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド構造含有化合物及びシクロペンテンオキサイド構造含有化合物等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、下記一般式:
【0032】
【化1】
(式中、R
1は、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、水素添加ビスフェノールAD残基、シクロヘキサンジメタノール残基、又はトリシクロデカンジメタノール残基を示す。)
で表される脂環式ジグリシジルエーテル化合物が挙げられ、さらに具体的には、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールADジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールZジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル及びトリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテル)等を挙げることができる。
【0033】
また、シクロヘキセンオキサイド構造含有化合物又はシクロペンテンオキサイド構造含有化合物としては、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキサンカルポキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルポキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルポキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-αチルシクロヘキシルカルポキシレート、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルポキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル及びエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル等を挙げることができる。
【0034】
上記したシクロヘキセンオキサイド構造含有化合物又はシクロペンテンオキサイド構造含有化合物は市販のものを使用してもよく、例えばダイセル化学工業から販売されている、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルポキシレート及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。
【0035】
さらに、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エタン、アルファピネンオキサイド、カンファレンアルデヒド、リモネンモノオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンモノオキサイド及び4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド等も挙げることができる。
【0036】
上記した脂肪族エポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリダリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリダリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はダリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート及び/又はダリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等を使用してもよい。
【0037】
上記した脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、プチルグリシジルエーデル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、高級アルコールのグリシジルエーテル、アルキレンジオールのジグリシジルエーテル(例えば、l,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル及びネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル等)、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーデル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーデル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのダリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0038】
さらに、プロピレン、トリメチロールプロパン及びグリセリン等の脂肪族多価アルコールに、1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル又は脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル等を使用してもよい。
【0039】
また、脂肪族高級アルコールのモノダリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、又はこれらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のダリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシ化ポリブタジエン、グリシジル化ポリブタジエン等を使用してもよい。
【0040】
また、エポキシアルカンとしては、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシセタン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシイコサン等を使用してもよい。
【0041】
他の脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリダリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートのビニル重合により合成したホモポリマー、グリシジルアクリレート及び/又はダリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのビニル重合により合成したコポリマー等を挙げることができる。これらの代表的な化合物としては、例えば、プチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、高級アルコールのダリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0042】
オキセタン化合物としては、1分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物及び1分子中にオキセンタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物のうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0043】
1分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物としては、特に1分子中にオキセタン基を1個有し、且つアルコール性水酸基を1固有するモノオキセタンモノアルコール化合物が好ましく用いられる。そのような、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、下記一般式(I)及び(II)で表されるモノオキセタンモノアルコール化合物のうちの少なくとも1種が、入手の容易性、高反応性、粘度が低い等の点から、好ましく用いられる。
【0044】
【化2】
(式中、R
2は炭素数1~5のアルキル基を表し、R
3はエーテル結合を有していてもよい炭素数2~10のアルキレン基を示す。)
【0045】
上記式(I)及び(II)中のR2の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。
【0046】
上記した一般式(I)のモノオキセタンモノアルコール化合物の具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロビルオキセタン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性等の点から、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタンが好ましく用いられる。
【0047】
また、上記式(II)のR3の例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3-オキシペンチレン基等を挙げることができる。それらのなかでも、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基又はヘプタメチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体である取り扱い易い等の点から好ましい。
【0048】
1分子中にオキセンタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物としては、オキセタン基を2個有する化合物、オキセタン基を3個以上有する化合物、オキセタン基を4個以上有する化合物のいずれもが使用できるが、オキセタン基を2個有するジオキセタン化合物が好ましく用いられ、そのなかでも下記一般式(III)で表されるジオキセタン化合物が、入手性、反応性、低吸湿性、硬化物の力学的特性等の点から好ましく用いられる。
【0049】
【化3】
(式中、2個のR
2は互いに同じか又は異なる炭素数1~5のアルキル基を表し、R
4は芳香環を有しているが又は有していない2価の有機基を表し、sは0又は1を表す。)
【0050】
上記式(III)中のR2の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R4の例としては、炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基(例えばエチレン基、プロピレン基、プチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基等)、式:-CH2-Ph-CH2-又はCH2-Ph-Ph-CH2-で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基、テレフタル酸残基、インフタル酸残基、o-フタル酸残基等を挙げることができる。
【0051】
上記した1分子中にオキセタン基を2個以上有するポリオキセタン化合物の具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテル等を挙げることができる。そのなかでも、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル及び/又はビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが、入手の容易性、低吸湿性、硬化物の力学的特性等の点から好ましく用いられ、特に、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが好ましく用いられる。
【0052】
[ラジカル重合性有機化合物]
ラジカル重合性有機化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート基を有する(メタ)アクリル系化合物、不飽和ポリエステル化合物、アリルウレタン系化合物、ポリチオール化合物等を挙げることができる。
これらのなかでも、(メタ)アクリル系化合物が好ましく用いられる。
【0053】
樹脂組成物におけるラジカル重合性有機化合物の含有量は、10~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。ラジカル重合性有機化合物の含有量を上記数値範囲内とすることにより、該樹脂組成物を用いて作製される外型の靱性、耐衝撃性、耐久性、耐熱性、寸法安定性及び力学的特性を向上することができる。
【0054】
(メタ)アクリル系化合物としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び/又は脂肪族エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレート系反応生成物を挙げることができ、具体例としては、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はベンゼン環がアルコキシ基等によって置換されているビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物、あるいは上記したビスフェノール化合物又は置換ビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物とエビクロルヒドリン等のエポキシ化剤との反応によって得られるグリシジルエーテルを(メタ)アクリル酸と反応させて得られる(メタ)アクリレート、エポキシノボラック樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる(メタ)アクリレート系反応生成物等を挙げることができる。
【0056】
アルコール類の(メタ)アクリル酸エステルとしては、分子中に少なくとも1個の水酸基を有する芳香族アルコール、脂肪族アルコール、脂環族アルコール及び/又はそれらのアルキレンオキサイド付加体と(メタ)アクリル酸との反応により得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。具体的には、例えば、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物又はベンゼン環がアルコキシ基等によって置換されたビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物のジ(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、インオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、インポルニル(メタ)アクリレート、ペンジル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3個以上の水酸基を有する多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオール等の多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート等を挙げることができる。そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、2価アルコールを(メタ)アクリル酸と反応させることにより得られる1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとインシアネート化合物を反応させて得られる(メタ)アクリレートを挙げることができる。前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、脂肪族2価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、前記インシアネート化合物としては、トリレンジインシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、インホロンジイソシアネート等のような1分子中に2個以上のインシアネート基を有するポリインシアネート化合物が好ましい。
【0058】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸との反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0059】
ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
【0060】
[熱膨張性マイクロカプセル]
熱膨張性マイクロカプセルは、外殻に揮発性物質が内包されたものであり、加熱により、外殻が軟化すると同時に内包される揮発性物質の蒸気圧が上昇し、その体積が増加するものである。
【0061】
熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度は、90~200℃であることが好ましく、100~180℃であることがより好ましく、130℃~160℃が特に好ましい。熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度を上記数値範囲とすることにより、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化時における外型の崩壊をより効果的に防止することができる。
また、外型を加熱崩壊させる際に、過度の熱を加える必要がなく、立体造形物表面にダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0062】
熱膨張性マイクロカプセルの外殻を構成する材料としては、例えば、エチレン等のポリオレフィン、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル及び塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。
【0063】
また、内包される揮発性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、プロパン、ブテン、イソブタン、イソペンテン、ネオペンテン、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチル及びテトラメチルシラン等が挙げられる。
【0064】
熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径は、1~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましい。
熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径を上記数値範囲内とすることにより、外型の成型容易性を向上することができる。
マイクロカプセルの平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定する。
【0065】
樹脂組成物における熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、15~80質量%であることが好ましく、20~75質量%であることがより好ましい。 樹脂組成物における熱膨張性マイクロカプセルの含有量を上記数値範囲内とすることにより、外型の加熱崩壊性を向上することができる。
【0066】
[光重合開始剤]
一実施形態において、樹脂組成物は、光重合開始剤を含み、例えば、カチオン重合開始剤やラジカル重合開始剤等を挙げることができる。
【0067】
カチオン重合開始剤としては、例えば、活性エネルギー線を照射したときにルイス酸を放出するオニウム塩が好ましく用いられる。そのようなオニウム塩の例としては、第VIIa族元素の芳香族スルホニウム塩、VIa族元素の芳香族オニウム塩、第Va族元素の芳香族オニウム塩等を挙げることができる。
【0068】
代表例としては、一般式:[(R11)(R12)(R13)S+](式中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して硫黄(S)に結合した1価の有機基)で表されるスルホニウムイオン又は一般式:[(R14)(R15)I+](式中、R14及びR15はそれぞれ独立してヨウ素(I)に結合した1価の有機基)で表されるヨードニウムイオンが、一般式:[(Rf)mPF6-m
-](式中、Rfはフルオロアルキル基、mは0~6の整数)で表される陰イオン(ホスフェートイオン)、一般式:[(Rf)nSbF6-n
-](式中、Rfはフルオロアルキル基、nは0~6の整数)で表される陰イオン(アンチモネートイオン)、式:[BF4
-]で表される陰イオン、式:[AsF6
-]で表される陰イオン等と結合したカチオン重合開始剤等を挙げることができる。
【0069】
具体的には、リン系スルホニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムトリス(パーフルオロエチル)トリフルオロホスフェートや、市販されている化合物(サンアプロ株式会社製「CPI-500K」、同「CPI-500P」、同「CPI-200K」、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、株式会社ADEKA製「SP-152」)等を挙げることができる。
【0070】
アンチモン系スルホニウム化合物としては、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジ-4’-ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(サンアプロ株式会社製「CPI-101A」)又は「CPI-110S」)、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート)(株式会社ADEKA製「SP-172」)等を挙げることができる。
【0071】
上記したようなカチオン重合開始剤のうちの1種又は2種以上を用いることができる。そのうちでも、本発明では芳香族スルホニウム塩がより好ましく用いられる。
【0072】
また、本発明においては、反応速度を向上させる目的で、カチオン重合開始剤と共に必要に応じて光増感剤、例えばベンゾフェノン、アルコキシアントラセン、ジアルコキシアントラセン、チオキサントン等を用いてもよい。
【0073】
カチオン重合開始剤は、光重合性化合物の総量に対して質量基準で、0.1~10質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは1~8質量%の範囲、特に1~5質量%範囲であることが好ましい。
【0074】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンジル又はそのジアルキルアセタール系化合物、フェニルケトン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン又はそのアルキルエーテル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等を挙げることができる。
【0075】
ベンジル又はそのジアルキルアセタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等を挙げることができる。
【0076】
フェニルケトン系化合物としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0077】
また、アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシメチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-アジドベンザルアセトフェノン等を挙げることができる。
【0078】
ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
【0079】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0080】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。
【0081】
本発明においては、上記した1種又は2種以上のラジカル重合開始剤を所望の性能に応じて配合して使用することができる。これらのなかでも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが、得られる硬化物の色相が良好(黄色度が小さい等)である点から好ましく用いられる。
【0082】
ラジカル重合開始剤は、光重合性化合物の総量に対して質量基準で、0.1~10質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましくは1~8質量%の範囲、特に1~5質量%範囲であることが好ましい。
【0083】
光重合性化合物は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートなどの置換されたビスフェノール化合物のジメタクリレートを含有し、光重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)としてベンジル(別名:ジフェニルエタンジオン)またはそのジアルキルアセタール系化合物(例えばベンジルジメチルケタールなど)からなる光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。強度および耐熱性に優れ、その一方で熱膨張性マイクロカプセルの膨張開始温度以上の温度に加熱したときに十分に発泡して容易に崩壊する立体造形物を得ることができる。
【0084】
[その他の成分]
本発明の特性を損なわない範囲において、樹脂組成物は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、着色剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤及び充填剤等が挙げられる。
【0085】
[熱硬化性樹脂組成物の充填、加熱硬化工程]
本発明の立体造形物の製造方法は、外型内に、熱硬化性樹脂組成物を充填し、加熱硬化させる工程を含む。また、この加熱硬化工程における加熱温度は、外型を構成する樹脂組成物に含まれる熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも30℃以上低いことを特徴とするものであり、これにより、熱硬化性樹脂組成物の成形工程における外型に含まれる熱膨張性マイクロカプセルの発泡を効果的に防止することができ、所望の形状の立体造形物を得ることができる。
【0086】
加熱温度は、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも50℃以上低いことがより好ましく、70℃以上低いことがさらに好ましい。
本発明において「加熱温度」とは、熱硬化性樹脂組成物を加熱し、硬化させる際において、熱硬化性樹脂の最大となる温度を意味する。
上記加熱温度は、60~170℃であることが好ましく、70~150℃であることがより好ましい。
【0087】
加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物により構成する立体造形物の体積、使用する熱源の温度や下記する放冷工程等により調整することができる。
熱硬化性樹脂組成物の加熱方法は、特に限定されるものではないが、外型の温度上昇を抑えるという観点から、熱硬化性樹脂組成物よりも熱伝導率の高い加熱手段、および熱硬化性樹脂組成物を集中的に加熱する手段により行われることが好ましい。
例えば、電気炉などの一般的な加熱源のほか、高周波加熱、マイクロ波加熱などで集中的に熱硬化性樹脂組成物を加熱することもできる。同様の方法により、外型を集中的に加熱させることにより、熱膨張性マイクロカプセルを短時間で加熱、崩壊させることも可能である。好ましくは30分以下、より好ましくは5分以下で崩壊できるような加熱であることが望ましい。
【0088】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含み、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム等が挙げられ、これらを2種以上含んでいてもよい。
【0089】
熱硬化性樹脂組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において、上記添加剤を含むことができる。
【0090】
熱硬化性樹脂組成物は、強化材を含んでいてもよい。前記強化材としては炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のいずれかまたはそれらの組み合わせよりなる繊維状の強化材があげられ、中でも炭素繊維を含んだ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)であることが好ましい。
【0091】
熱硬化性樹脂組成物により構成される立体造形物のサイズは、特に限定されるものではないが、本発明の方法によれば、例えば、200~100000mm3、好ましくは、50000~100000mm3のような比較的大きなサイズの立体造形物であっても、外型の崩壊を引き起こすことなく、良好に製造することができる。
【0092】
[外型崩壊工程]
本発明の立体造形物の製造方法は、外型を崩壊し、立体造形物を取り出す工程を含む。
外型は、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度以上の温度に外型を加熱し、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、崩壊することができる。
この際、外型に含まれる熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも30℃以上高い温度に、外型を加熱することが好ましく、50℃以上高い温度に、外型を加熱することがより好ましい。
【0093】
[放冷工程]
本発明の立体造形物の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物を放冷する工程を含み、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化と、放冷とを交互に行うことができる。これにより、熱硬化性樹脂組成物の加熱温度が過度に高まってしまうのを防止することができ、熱硬化性樹脂組成物の加熱硬化時において、熱膨張性マイクロカプセルが発泡してしまうのを効果的に防止することができる。
【0094】
放冷の方法は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂組成物の加熱を止め、室温に放置してもよく、冷却機等を使用してもよい。
【実施例0095】
以下の例中、光学的立体造形用樹脂組成物の粘度、光造形して得られた立体造形物の力学的特性(曲げ強度、曲げ弾性率)および熱変形温度の測定、並びに光造形して得られた立体造形物の発泡性の評価は次のようにして行なった。
【0096】
[光学的立体造形用樹脂組成物の粘度]
光学的立体造形用樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光学的立体造形用樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
【0097】
[光学的立体造形用樹脂組成物の発泡性]
以下の実施例などで作製した立体造形物(JIS K-7171に準拠したバー形状の試験片)を、恒温槽に入れて、カタログ値の発泡開始温度前5℃から1℃毎設定温度を上昇させ、各温度で5分間加熱し発泡状態を評価した。
【0098】
<比較例1>
(1)エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE-200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG-850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「S2640D」(膨張開始温度208℃、平均粒径21μm)78質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。
この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ2,700mPa・s(25℃)であった。
【0099】
(2)上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光造形3Dプリンタ(シーメット株式会社製「ATOMm-4000」)を使用して、半導体レーザー(定格出力300mW;波長355nm;スペクトラフィジックス社製「EXPLOLER-355-300-P」)で、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間1分30秒で光造形を行って、30mm角の立方体形状の試験片の外型となる形状を作製した。
【0100】
(3)上記(2)で得られた造形物の内側に、熱硬化性樹脂組成物(主成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂および硬化剤、粘度約3,000mPa・s、硬化最大温度:180℃)を満たした。この時の状態を、
図1に示す。
これを、90℃で1時間加熱して熱硬化性樹脂組成物を硬化させて試験片を作製した。この時、熱硬化性樹脂組成物は硬化時に、150℃以上に発熱したが、マイクロカプセルの発泡開始温度より30℃以上低い温度であるため、マイクロカプセルは発泡することなく、熱硬化性樹脂組成物は十分に固まった。
【0101】
(4)上記(3)で得られた造形物を、マイクロカプセルの開始温度よりも高い230℃の恒温槽に入れて20分間加熱したところ、光学的立体造形物が膨張するとともに炭化し、熱硬化性樹脂組成物の表面に炭化物が付着した。このとき光学的立体造形物が炭化を開始する温度は220℃であり、マイクロカプセルの発泡する温度よりも低いため、マイクロカプセルが変質および炭化して、熱硬化性樹脂硬化物の表面に付着して立体造形物は汚損されていた(
図2)。
【0102】
<比較例2>
(1)エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE-200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG-850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)39質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。
この光学的立体造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ1,870mPa・s(25℃)であった。
【0103】
(2)上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光造形3Dプリンタ(シーメット株式会社製「ATOMm-4000」)を使用して、半導体レーザー(定格出力300mW;波長355nm;スペクトラフィジックス社製「EXPLOLER-355-300-P」)で、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間1分30秒で光造形を行って、発泡性評価用のJIS K-7171に準拠した立方体形状の試験片の外型となる形状を作製した。
【0104】
(3)上記(2)で得られた造形物の内側に、熱硬化性樹脂組成物(主成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂および硬化剤、粘度約3,000mPa・s、硬化最大温度:180℃)を満たした。これを、90℃で6時間加熱して熱硬化性樹脂組成物を硬化させて試験片を作製した。結果、熱硬化性樹脂組成物が硬化時に、マイクロカプセルの発泡温度よりも高い温度に発熱してしまった結果、熱硬化性樹脂組成物が固まる前にマイクロカプセルが発泡し、熱硬化性樹脂の形状が崩れてしまう状態となった。この時の状態を、
図3に示す。
【0105】
(4)上記(3)で得られた造形物を、マイクロカプセルの膨張開始温度よりも高い150℃の恒温槽に入れて20分間加熱したところ、光学的立体造形物が加熱前の立体堆積物の15倍程度に膨張した(
図4)。光学的立体造形物は膨張後、細片あるいは粉状に崩壊したが、熱硬化性樹脂組成物の表面に残渣が付着し取り除くのは困難であった。また熱硬化性樹脂組成物は所望の形状から崩れてしまっていた。この時の状態を、
図5に示す。
【0106】
<実施例1>
(1)エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「BPE-200」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製「PTG-850SN」)15質量部、ベンジルジメチルケタール(BASF社製「Irgacure 651」)2.5質量部およびクレハマイクロスフェア「H850」(膨張開始温度125℃、平均粒径35μm)39質量部を室温下(25℃)でよく混合して、光学的立体造形用樹脂組成物を製造した。
この光学的立体造形用脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ1,870mPa・s(25℃)であった。樹
【0107】
(2)上記(1)で得られた光学的立体造形用樹脂組成物を用いて、光造形3Dプリンタ(シーメット株式会社製「ATOMm-4000」)を使用して、半導体レーザー(定格出力300mW;波長355nm;スペクトラフィジックス社製「EXPLOLER-355-300-P」)で、スライスピッチ(積層厚み)0.10mm、1層当たりの平均造形時間1分30秒で光造形を行って、発泡性評価用のJIS K-7171に準拠した立方体形状の試験片の外型となる形状を作製した。
【0108】
(3)上記(2)で得られた造形物の内側に、熱硬化性樹脂組成物(主成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂および硬化剤、粘度約3,000mPa・s)を満たした。これを、90℃で6時間加熱して熱硬化性樹脂組成物を硬化させて試験片を作製した。この時、熱硬化性樹脂組成物は硬化時に、高々90℃に発熱したが、マイクロカプセルの発泡開始温度より30℃以上低い温度であるため、マイクロカプセルは発泡することなく、熱硬化性樹脂組成物は十分に固まった。この時の状態を、
図6に示す。
【0109】
(4)上記(3)で得られた造形物を、マイクロカプセルの膨張開始温度よりも高い150℃の恒温槽に入れて20分間加熱したところ、光学的立体造形用樹脂組成物が加熱前の立体堆積物の15倍程度に膨張し、熱硬化性樹脂組成物の表面に部分的に残渣が付着はするものの、ほとんどの組成物は細片あるいは粉状に崩壊した。この時の状態を、
図7に示す。また、熱硬化性樹脂の表面に付着した発泡物を取り除くことにより、試験片の形を再現した熱硬化性樹脂を得ることが出来た。この時の状態を、
図8に示す。