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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175224
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】遅延時間測定システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 17/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H04N17/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092806
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】322000030
【氏名又は名称】株式会社光パスコミュニケーションズ
(72)【発明者】
【氏名】松浦 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小川 太郎
(57)【要約】
【課題】映像遅延測定前に、光源消灯時と点灯時の光センサ出力レベルを適切かつ効率良く得る。その上で繰り返し測定周期と被測定システムの動作周期の関係を適切に扱う。
【解決手段】遅延時間測定に先立って、光源がオフオンを繰り返すようにし、オフからオンに遷移するタイミング以前の光センサからの第一の信号値と、前記遷移以降であらかじめ設定したガードタイム経過後の光センサからの第二の信号値とを取得し、時間差の測定においては、前記光源の変化のタイミングと、前記第一と第二の信号値をもとにした閾値を光センサからの信号が横切るタイミングとから遅延時間を算出する遅延時間測定システムを使用する。
遅延時間測定時において、前記光源がオフとオンとを繰り返す際の繰り返し周期を、被測定システムの動作繰り返しの非整数倍とするか、乱数で決定するようにした遅延時間測定システムを使用する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の地点に設置したアクチュエータを駆動電気信号でオン/オフ駆動し、前記アクチュエータの出力を前記第一の地点の被測定システムでセンシングして伝送したのち、第二の地点の被測定システムから出力される物理量を、前記第二の地点に設置したセンサで電気信号に変換し、前記駆動電気信号と前記センサからの前記電気信号の変化に関する時間差を測定する装置において、
前記時間差の測定に先立って、前記アクチュエータがオフ状態とオン状態とを繰り返すように前記駆動電気信号を制御し、
前記アクチュエータのオフ状態とオン状態との変化のタイミング以前の前記センサからの前記電気信号の第一の値と、
前記タイミング以降であらかじめ設定したガードタイム経過後の前記センサからの前記電気信号の第二の値とを取得し、
前記時間差の測定においては、前記アクチュエータの駆動電気信号の変化のタイミングと、前記電気信号の第一の値と前記電気信号の第二の値をもとにした閾値と前記電気信号とが一致するタイミングとの差から遅延時間を算出するようにしたことを特長とする遅延時間測定システム.
【請求項2】
前記物理量は映像であることを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.
【請求項3】
前記物理量は音であることを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.
【請求項4】
前記物理量はハプティクスであることを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.
【請求項5】
前記物理量は映像、音、ハプティクスのうちいずれか少なくとも2つであり、前記被測定システムがセンシングするものと、前記被測定システムが出力するものとが異なることを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.
【請求項6】
前記時間差の測定時において、前記アクチュエータがオフ状態とオン状態とを周期的に繰り返す際の繰り返し周期を、被測定システムの動作繰り返しの非整数倍とするようにしたことを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.
【請求項7】
前記時間差の測定時において、前記アクチュエータがオフ状態とオン状態とを周期的に繰り返す際の繰り返し周期が一定の値にならないよう、乱数で決定するようにしたことを特長とした請求項1に記載の遅延時間測定システム.


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像などの撮像・伝送・表示を行う被測定対象における一連の動作を行う際の所要時間の測定を正確に行う遅延時間測定システムに関する。映像の明暗の変化を2値でとらえる際のそれらの値を決定する手段を提供し、それらから求めた閾値をもとに遅延時間を測定する。遅延時間の測定対象は映像だけにとどまらず音声やハプティクスも対象とする。
【背景技術】
【0002】
映像遅延時間を測定する方法は多数の例があり、タイムスタンプを挿入する方法、時計を撮像・表示する方法、IP(Internet Protocol)ネットワークのプロトコルの一つであるICMP(Internet Control Message Protocol)を使用した往復時間を測定する方法などがある。
【0003】
タイムスタンプを使用する方法は、映像送出側で正確な時刻を付した情報を映像信号と一緒に送出し、被測定システムを介して伝送した後、受像側でそれを解析するものである。例えば特許文献1にその詳細が述べられている。しかし、この方法では被測定システムに含まれるビデオカメラやディスプレイの内部で生じる遅延時間を測ることができず、システムの一部分の遅延時間しか測定できない。また、本来の映像信号に加え、タイムスタンプを付した信号を映像送出側で挿入し、受像側で抜き出す必要があり、測定システムが複雑になる。
【0004】
時計を撮像・表示する方法は、例えば特許文献2に述べられていて、被測定システムのビデオカメラで時計の映像を撮像し、伝送後に被測定システムのディスプレイに表示された映像についてその時点での時計の映像と比較して遅延時間を算出するものである。このシステムではビデオカメラやディスプレイを含む遅延時間を測定することが可能ではあるが、時計表示の変化を正確に捉えられないため精度が悪い点に課題がある。
【0005】
IPネットワークのプロトコルの一つであるICMPによる測定、すなわち、いわゆるpingコマンドによる遅延時間測定は、文献をあげるまでもなく広く一般的に行われるものである。しかしながらこれは往復遅延時間を対象としていて、測定対象はIPネットワークで伝送する場合に限られる。また、ビデオカメラやディスプレイを含む遅延時間を測定することができない。
【0006】
別の方法として非特許文献1および非特許文献2に示されるような遅延時間測定システムがある。これは測定装置が点滅させる光源を、被測定システムのビデオカメラで撮像・伝送した後、ディスプレイで表示される点滅映像を光センサで電気信号に変え、その応答から遅延時間を測定する方法である。
【0007】
図1に構成図を示す。図1において1は光源であり例えば発光ダイオードLED(Light Emitting Diode)を、2は光センサであり例えばフォトダイオードPD(Photo Diode)を用いる。3は基準信号発生器でコントローラ7の制御の元で所定の矩形波を出力する。4は光源駆動部で、基準信号発生器3の信号から光源1を駆動する信号を発生する。5はトリガ信号発生で基準信号発生器3の信号を入力し、6の波形測定部に印加する信号を発生する。光源駆動部4とトリガ発生5の信号変化のタイミングは同一である。波形測定部6は、光センサ2~の信号とトリガ発生5からの信号の波形を測定する。波形測定部6で取得した波形はコントローラ7に送られ、解析し遅延時間を算出する。コントローラ7は例えばパーソナルコンピュータであり遅延時間算出結果をそのディスプレイ部(図示なし)に表示する。10は被測定システムであり、ビデオカメラ11、映像伝送系12、ディスプレイ13を含む。
【0008】
この動作を図2のタイムチャートに示す。光源駆動信号すなわちトリガ信号がローレベルの時には光源1は消灯し、ハイレベルの時には光源1は点灯する。光源1を撮像した被測定システム10のビデオカメラ11の出力は映像伝送系12を介してディスプレイ13に表示される。この動作の遅延時間は図2に示すように光センサ2から出力される光強度信号の遅れとなり、光源1が消灯から点灯時はT1で示した時間、点灯から消灯の時はT2で示した時間というように、コントローラ7にて解析して遅延時間の測定を行うことができる。
【0009】
図2において、ディスプレイ13上のLED像が点灯している時の光信号強度信号レベルをVon、消灯している時の光信号強度信号レベルをVoffとした。これらの値からスレッショルド電圧Vthを決め、消灯から店頭に変化した際には、トリガ信号の変化のタイミングから光信号強度信号がVthを越えるタイミングまでの時間を計測する。
【0010】
図1の構成は、タイムスタンプを使わないため被測定系の映像信号には手を加えず、またビデオカメラ11からディスプレイ13までのすべての遅延を測定することができる。さらに、光源1のオンオフの2値を用いていてシンプルに遅延時間を算出することができる。ICMPプロトコルと異なり、IPネットワークを使った伝送に限定されることなく任意の映像伝送系での片道遅延時間を評価することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3892844号公報
【特許文献2】特許第5553409号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】小川太郎,松浦裕之,“ゼロ遅延映像光伝送技術とその応用,” 大型ディスプレイ&デジタルサイネージ総覧2020,pp.12-22, 日本・社会システムラボラトリー,2020.
【非特許文献2】松浦裕之,小川太郎,“4K/8K映像の「ゼロ遅延」に向けた伝送技術の開発,” 次世代高速通信に対応する光回路実装、デバイスの開発,pp.614-628, 情報技術協会,2022.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
遅延時間の測定の前に、図2におけるVonおよびVoffを決定する必要がある。これらは、光源1とビデオカメラ11の位置関係や、ディスプレイ13と光センサ2の位置関係、被測定システム10の状況によって変わる。従って、あらかじめ測定の前にVonおよびVoffを知る必要がある。
【0014】
VonおよびVoffを知るための簡易な方法は、図3のように(a)光源1を消灯させて光強度信号を測定しVoffとし、(b)光源1を点灯させて光強度信号を測定しVonとする方法である。光強度信号が消灯と点灯の2値に限られる場合は上記で対応できるが、実際には速い変化とゆっくりした変化が重なっているような中間値を取りうる複雑な特性であることがある。速い変化に対する遅延時間を測定しようとする場合、図3のようなスタティックな方法では速い変化と遅い変化のすべての変化が終わった後の値しか求まらない。
【0015】
また、被測定対象の映像遅延時間に合わせた測定パラメータ、たとえば、光源1を消灯・点灯させる繰り返し時間、測定のためのデータ収録時間などのパラメータを決定する必要がある。さらに、実際の光強度信号には様々な要因によるノイズが重畳しているので、それの除去のためのパラメータを決める必要がある。これらのためには、実際の遅延時間測定の前に、点灯と消灯を繰り返して波形データ取得を事前に行うプリスキャンを実施する。この工程とVonおよびVoffを知るための工程を別々に行うのは手間がかかる。以上が第一の課題である。
【0016】
第二の課題は、VonおよびVoffの値を適切に得たとしても、被測定系に繰り返し動作的要素があると、測定側との同期関係を適切に扱わないと誤差が生じてしまう。具体的には映像の1フレーム程度の誤差が生じる可能性がある。すなわち、測定繰り返し間隔が被測定システムの測定動作繰り返しの整数倍に非常に近い場合には、繰り返しごとの遅延測定結果の変動が少なく、小さめに偏ったり、大きめに偏ったりする可能性がある。その誤差の幅は1フレーム分であり、低遅延の映像伝送システムを評価する場合は無視できない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の地点に設置したアクチュエータを駆動電気信号でオン/オフ駆動し、前記アクチュエータの出力を前記第一の地点の被測定システムでセンシングして伝送したのち、第二の地点の被測定システムから出力される物理量を、前記第二の地点に設置したセンサで電気信号に変換し、前記駆動電気信号と前記センサからの前記電気信号の変化に関する時間差を測定する装置において、
前記時間差の測定に先立って、前記アクチュエータがオフ状態とオン状態とを繰り返すように前記駆動電気信号を制御し、
前記アクチュエータのオフ状態からオン状態への変化のタイミング以前の前記センサからの前記電気信号の第一の値Voffと、
前記タイミング以降であらかじめ設定したガードタイム経過後の前記センサからの前記電気信号の第二の値Vonとを取得し、
前記時間差の測定においては、前記アクチュエータの駆動電気信号の変化のタイミングと、前記電気信号の第一の値Voffと前記電気信号の第二の値Vonをもとにした閾値と前記電気信号とが一致するタイミングとの差から遅延時間を算出するようにしたことを特長とする遅延時間測定システムを使用する。
【0018】
前記時間差の測定時において、前記アクチュエータがオフ状態とオン状態とを周期的に繰り返す際の繰り返し周期を、被測定システムの動作繰り返しの非整数倍とするか、乱数で決定するようにした遅延時間測定システムを使用する。
【発明の効果】
【0019】
遅延時間の測定前に、オフ状態とオン状態を繰り返して実行しつつ、変化前後のセンサからの電気信号を得てVoffおよびVonを取得するので、使用状態における光強度信号値が得られる。すなわち前述の速い信号変化に関わる値が得られる。
【0020】
被測定対象の映像遅延時間に合わせた測定パラメータを決めるプリスキャンと同時に、VoffとVonの決定を行えるので煩雑さが減り測定前の準備作業の効率が良い。
【0021】
VonおよびVoffを適切に得たあとの遅延時間測定作業において、被測定系に繰り返し動作的要素があっても、測定繰り返し間隔を被測定システムの動作繰り返しの非整数倍とするか、乱数で決定するようにしたので、測定結果が短めに偏ったり長めに偏ったりすることなく、繰り返して測定した遅延時間の値の平均値を使用することにより、適切な数値が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本明細書で対象とする遅延時間測定システムを説明する一般的な図面である。
図2図1の動作を示すタイミングチャートである。
図3】従来のキャリブレーションデータ取得を説明する図面である。
図4】本発明の第一の実施例を示す図面である。
図5】第一の実施例の効果を示す説明図である。
図6】第一の実施例のフローチャートを示す図である。
図7】複数の物理量の遅延時間を測定する場合の一般的な図面である。
図8図7の動作を示すタイミングチャートである。
図9】本発明の第二の実施例を示す図である。
図10】遅延測定動作の説明のための第一の説明図である。
図11】遅延測定動作の説明のための第二の説明図である。
図12】遅延測定動作の説明のための第三の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0023】
第一の実施例のタイミングを図4に示す。これは遅延時間測定の前に光源1の消灯(オフ状態)と点灯(オン状態)とを順次行い繰り返すようにしたものである。光源1を駆動するトリガ信号の値は、光源1が消灯するのがVlow、光源1が点灯するのがVhighとする。VlowからVhighに遷移するタイミングの前は、光源1は消灯しておりその時の被測定システムのディスプレイ13の表示も消灯の状態であるとする。上記遷移タイミングの前に取得した光センサ2からの光強度信号のレベルを取得し消灯状態の値であるVoffとする。
【0024】
光源1を駆動するトリガ信号の値がVlowからVhighに遷移したのち、すぐにはディスプレイ13の表示が点灯の状態にはならない。あらかじめ設定したガードタイムTguardが経過したのちに、光センサ2からの光強度信号のレベルを取得し点灯状態の値であるVonとする。
【0025】
このVoffとVonから、閾値Vthを決定する。例えば点灯と消灯の中間値(50%)である(Voff+Von)/2を閾値Vthとする。後述するようにVoffとVonの間で重み付けして決めても良いし、消灯⇒点灯時と、点灯⇒消灯時を異なる値としても良い。遅延時間の測定においては、光源1の変化のタイミングと、光強度信号がこの閾値を横切るタイミングとから遅延時間を算出する。
【0026】
図5は第一の実施例の効果のひとつを説明する図である。実際の被測定システムでは光強度信号の変化が、速い変化にゆっくりとした変化が重畳しているようなことがある。これは例えばセンサデバイスや表示デバイスの温度変化による特性変化が緩やかに乗るような状態である。人間の視覚で感じる変化はこの内の速い変化であるので、図の場合Tguard経過後の早い変化終了後の光強度信号Vonの値を採用するのが望ましい。図3のような定常状態になってからのVon値より、図5の方が望ましい。図示はしていないがVoffについても同様である。
【0027】
図6に実施例を使って遅延時間測定する際のフローチャートを示す。まずパラメータの初期設定を行う。ここで言うパラメータとは光源1の点滅を繰り返す際の周期や波形取得する際の収録時間である。つぎに光源1の点滅をはじめ、少なくとも1周期経ってから、消灯時の光センサ2の出力を取得しVoffとする。光源1を点灯してからTguardの時間が経った後に、点灯時の光センサ2の出力を取得しVonとする。実際にはこれらVoffとVonは、光センサ2の出力を時系列で連続して波形として測定し、そこからコントローラ7にて処理して算出すればよい。
【0028】
得られたVon、Voffおよび波形を適切な方法で表示して人間がその是非を判断する。もしくは、同等のアルゴリズムを作成し自動で判断することも可能である。想定したような変化になっていれば良いし、想定外の状況であれば前記パラメータや、被測定システムの設定、測定系の光源1や光センサ2の位置などを修正して再度繰り返す。問題なければ、図2のようにして遅延時間測定を実行して適宜表示を行う。表示する際には、後述の遅延時間の数値だけでなく、測定時の波形も併せて表示すると良い。さらに波形は生データの波形とそれからノイズを除去するために時間軸で移動平均した波形を同時に示すとシステムの動作状況がよくわかる。
【0029】
以上の説明では光源1が消灯から点灯に変化する場合のVoff、Vonの求め方について述べた。まったく同様にして、点灯から消灯に変化する場合において、点灯しているときの光強度レベルVon’、消灯しているときの光強度レベルVoff’を求めることも可能である。但しVoff’=Voff、Von’=Vonというように簡単化することも十分可能である。
【実施例0030】
実施例1では、測定対象を映像遅延時間として説明をした。映像以外の測定対象として音やハプティクスが考えられる。複数の物理量を同時に測ることができる構成を図7に示す。
【0031】
音声を対象とするなら、映像の場合の光源1の代わりに音源41を音源駆動部44で駆動する。入力のトリガ信号に従って例えば周波数1000Hzの音波を発生するかしないかの制御を行う。被測定システム10はマイクロフォン45でセンシングし音声伝送系46を介してスピーカ47を駆動する。スピーカ47からの音声は測定系のマイクロフォン42でセンシングされその強度を求めるために、例えば全波整流をして低周波フィルタを通すなどの検波処理を処理回路43で行って音声強度信号として波形測定部6に接続する。
【0032】
ハプティクスは具体的に対象とする物理量が振動である場合や変位である場合がある。ハプティクスが振動である場合は上記音声と同様であり、ここでは対象とする物理量を変位として例示する。映像の場合の光源1の代わりに、変位の場合は変位源51を変位源駆動部54で駆動する。被測定システム10は変位センサ55でセンシングし変位伝送系56を介して変位源57を駆動する。変位源57からの変位は測定系の変位センサ52でセンシングされ変位強度信号として波形測定部6に接続する。
【0033】
遅延時間測定のタイムチャートは図8のようになる。映像については消灯⇒点灯の遅延時間がTv1、点灯⇒消灯の遅延時間がTv2と表した。同様に音声についても、音声なし⇒音声ありの遅延時間がTs1、音声あり⇒音声なしの遅延時間をTs2と表した。さらにハプティクスについても、変位なし⇒変位ありの遅延時間がTh1、変位あり⇒変位なしの遅延時間をTh2と表した。
【0034】
以上は一般的な説明図であるが、これを前提に本発明の第二の実施例のタイムチャートを図9に示す。映像については、第一の実施例ですでに説明したとおりである。音声についてもトリガ信号がVlowからVhighに変化する前後のデータを波形として取得して音なしの状態での値であるVoff’と音ありの状態での値であるVon’を取得する。この際のガードタイムは音声用のTguard’とする。ハプティクスについても同様であり、トリガ信号がVlowからVhighに変化する前後のデータを波形として取得して変位無しの状態での値であるVoff”と変位ありの状態での値であるVon”を取得する。この際のガードタイムは変位用のTguard”とする。
【0035】
変形としては、被測定システム10に依存するが、被測定システムの伝送系59に関して入力と出力が同じものとは限らない場合がある。例えば変位を入力して光で出力する、すなわちスイッチを押してランプが光るというような被測定システムである。また映像を入力して音で警告を出すシステムも考えられる。この場合も本発明を適用し、各々のVoffおよび各々のVonを求める。このように被測定システムがセンシングするものと、被測定システムが出力するものとが異なる場合でも、本発明は適用可能である。
【0036】
VoffおよびVonを用いて遅延時間を測定する詳細について述べる。遅延時間測定の際には同じパラメータで繰り返し測定を行い、得たデータを統計処理して遅延時間を数値化する。特に被測定対象に周期的動作する要素がある場合、測定結果の取り扱いには注意が必要である。具体例としては、映像伝送システムではビデオカメラ11は1秒間に一定のフレーム数のデータを取得し伝送するのが通常である。例えば60フレーム毎秒の撮像をするが、それを一度に取得するのでなく対象とする画面を順次走査する方式が一般的である。図10に模式図を示す。いわゆるラスタースキャンであり、走査は図10の左上から始まるものとする。ライン1を横方向にスキャンし、右端に来たらライン2の左端から横方向にスキャンする。この走査を繰り返し、右下まで来たら再度右上に行って1秒間に60回繰り返す。
【0037】
この時光源1が光るタイミングとそこをスキャンするタイミングには差があり、早いときはすぐに光ったことがサンプリングされるが、最悪は約1フレーム後にサンプリングされる。被測定システムとここで述べている遅延時間測定系は非同期で動作しているので、上記1フレームの誤差はほぼ一定値として出現するか、繰り返しごとにずれていく形で出現するか定かではない。そこで、繰り返し周期がフレームレートの整数倍にならないよう、わざと繰り返し周期をずらす。コントローラ7の制御のもとで基準信号発生器3の周期を制御する。
【0038】
図11にその様子を示す。(1)の光強度信号は光源1が点灯した直後にそのスキャンが行われた状態で早く変化している。(2)(3)(4)…と点灯してからのスキャン開始が遅れていく。(N)の状態は点灯してからスキャンまでの時間が一番遅い状態であり、その次は(1)に戻る。数値例として被測定システムの撮像のフレームレートが60フレーム毎秒、すなわちフレームの繰り返し時間が1/60秒とし、遅延時間測定を1.01秒繰り返しとする。第1回目の遅延時間測定の状態から
第2回目の遅延測定のタイミングは1.01÷(1/60)=60.6→0.6フレーム分のずれ
第3回目の遅延測定のタイミングは2.02÷(1/60)=61.2→0.2フレーム分のずれ
第4回目の遅延測定のタイミングは3.03÷(1/60)=61.8→0.8フレーム分のずれ
第5回目の遅延測定のタイミングは4.04÷(1/60)=62.4→0.4フレーム分のずれ
第6回目の遅延測定のタイミングは5.05÷(1/60)=63.0→0.0フレーム分のずれ
ということを繰り返す。このシステマティックなフレームずれは0から1未満の間を均等に発生していることがわかる。さらに遅延時間測定の繰り返しに端数を設ければ、さらに細かな分布となる。
【0039】
このように繰り返し周期をずらすようにして、意図的に変化タイミングに変動を持たせることにより、フレームレートの影響の偏りをなくすことができる。意図的にずらさない場合は、遅延時間測定結果がたまたま速い側に偏る、遅い側に偏るということが起こってしまう。
【0040】
上記では非整数倍になるようにして、遅延時間測定結果が速い側に偏る、遅い側に偏るようなことを避けたが、繰り返しの周期にディザを入れて、ランダムに次の繰り返し時間が変動するようにしても良い。十分な回数繰り返せば、遅延時間測定結果が速い側に偏る、遅い側に偏ることを避けられる。
【0041】
結果の表示の際には、繰り返し結果に統計的処理を行って、例えば平均値、最小値、最大値を表示する。最小値は図11の(1)に対応し、最大値は図11の(N)に対応する。すなわち時間軸方向(横方向)に関して、消灯⇒点灯時で3つ、点灯⇒消灯時で3つの数字が得られる。
【0042】
さらに振幅方向(縦方向)にも例えば3通りの値が考えられる。Voffを0%、Vonを100%とした時、変化の判断のスレッショルドVthは例えば中央値である50%とするのがひとつの考え方である。しかしながら少しでも変化したら、変化と認識するのであれば、消灯⇒点灯時には例えばVth=20%とし、点灯⇒消灯時にはVth=80%とするのが良い。逆に完全に変化して初めて変化と認識するのであれば、消灯⇒点灯時には例えばVth=80%とし、点灯⇒消灯時にはVth=20%とする。さらにVthが大きな場合や小さな場合も可能ではあるが、様々な要因のノイズが重畳する場合があるので、このような値を例示した。
【0043】
結果の表示の際には、例えばコントローラ7に付属するディスプレイに、図12に示す18点の数値を表示する。丸印の9点が消灯⇒点灯時、三角印の9点が点灯⇒消灯時である。各9点は{Vth=20%、Vth=50%、Vth=80%}の3種×{最小、平均、最大}の3種である。アプリケーションや変化の認識の捉え方によって表示された数字のうちどれを採用するかを測定者が決めればよい。数字の数が多いので、測定者の指示により、各9点のうち、大きく表示する、文字色を変えて表示する、背景色を変えて表示するなど見やすくすることも有効である。
【符号の説明】
【0044】
図1図12における符号は以下のとおりである。
1 --- 光源
2 --- 光センサ
3 --- 基準信号発生器
4 --- 光源駆動部
5 --- トリガ発生
6 --- 波形測定部
7 --- コントローラ
10 --- 被測定システム
11 --- ビデオカメラ
12 --- 映像伝送系
13 --- ディスプレイ

41 --- 音源
42 --- マイクロフォン
43 --- 処理回路
44 --- 音源駆動部
45 --- 被測定システムのマイクロフォン
46 --- 音声伝送系
47 --- 被測定システムのスピーカ
51 --- 変位源
52 --- 変位センサ
54 --- 変位源駆動部
55 --- 被測定システムの変位センサ
56 --- 変位伝送系
57 --- 被測定システムの変位源
59 --- 被測定システムの伝送系

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12