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特開2024-175229物流システム、物流システム制御方法、プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175229
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】物流システム、物流システム制御方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20241211BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B65G1/04 509
B65G1/04 555A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092822
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 恭矢
(72)【発明者】
【氏名】土屋 匠
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022AA15
3F022CC03
3F022JJ13
3F022JJ20
3F022KK20
3F022LL07
3F022MM01
(57)【要約】
【課題】
物流システム全体でのエリア利用効率と、システム運用効率とを両立して向上可能にする。
【解決手段】
アイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、倉庫と搬送ロボットを制御する制御機能と、を備え、倉庫は、水平方向に広がる単一フロアを垂直方向に複数階分構成して、少なくとも1階分を、複数保管のための少なくとも1階分の単一保管フロアとし、単一保管フロアとは別の少なくとも1階分を、搬送ロボットが水平方向自在に走行可能な単一搬送フロアとして、少なくとも1階分の単一保管フロアと、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、単一保管フロアと単一搬送フロアとの間で、単一保管フロアから搬出された搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、単一搬送フロアで待機中の搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、
保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、
前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、
を備え、
前記倉庫は、
水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、
前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、
前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、
前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、
を有することを特徴とする物流システム。
【請求項2】
前記単一搬送フロアは、垂直方向において、地上1階の位置、地下1階の位置、または、地上1階から地下1階までの途中の地下中1階の位置にレイアウトされている、
請求項1に記載の物流システム。
【請求項3】
前記単一保管フロアを複数階分有し、
前記制御工程では、前記複数階分の前記単一保管フロアでの保管を統合して制御する、
請求項1に記載の物流システム。
【請求項4】
前記保管形態および前記搬送形態の少なくとも1は、前記アイテムを収容する収容形態である、
請求項1に記載の物流システム。
【請求項5】
前記倉庫は、
前記単一保管フロア内での保管位置と前記リフト機構との間で、前記保管対象の前記アイテムを前記搬送形態で搬送するシャトルを有する、
請求項1に記載の物流システム。
【請求項6】
前記リフト機構は、
前記搬送形態で前記アイテムを搬送する状態のままの前記シャトルを垂直方向に搬送して、前記搬送形態の前記アイテムを前記搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能な構成を有する、
請求項5に記載の物流システム。
【請求項7】
前記リフト機構は、
前記単一保管エリア内での水平断面中央部近傍に位置する、
請求項1に記載の物流システム。
【請求項8】
前記リフト機構は、
前記搬送形態の前記アイテムの前記搬出に加えて、搬入にも利用可能な構成を有する、
請求項1~7のいずれか1に記載の物流システム。
【請求項9】
物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、
保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、
前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、
を備える物流システムにおいて、前記制御機能により制御するステップを有する物流システム制御方法であって、
前記倉庫は、
水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、
前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、
前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、
前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、
を有することを特徴とする、物流システム制御方法。
【請求項10】
物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、
保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、
前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、
を備える物流システムにおいて、前記制御機能をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記倉庫は、
水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、
前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、
前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、
前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、
を有することを特徴とする、プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記憶した記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば物流システム、物流システム制御方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流センターなどにおいて、物品を目的別に仕分けて個人宅配などの用途に供する物流施設においては、指定の配送先への出荷指示に対して、出荷すべき物品を収納した物品収納体(集品箱、ケース等)を出荷用倉庫から出庫し、それをかご車(台車、カート等)などの物品収納体運搬手段に積み込む作業が広く行われてきている。このような場合に、指定の配送先への物品収納体を効率よく入出庫できるように工夫された自動倉庫も提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
一方、出荷(出庫)に先立ち、カート等に積み込むための配送先への物品(商品、アイテム)を、倉庫から取り出して集品箱等にピッキング(集品)し、それを倉庫等に準備するためのピッキング(集品)作業が必要となる。
【0004】
そして、この種のピッキング作業を行うためのピッキングシステムとして、従来では、搬送ラインを用いたものが主流であったが、近年、搬送ロボットを利用して集品するシステムが提案されて来ている。さらには、両者のメリット、デメリットを踏まえた上で両方式を設けた物流センターが注目されている。
【0005】
従来のコンベヤを用いた搬送ライン方式は、高速で絨毯のような長尺物の搬送も容易なことから使い勝手の良さがある。一方、鉄道輸送と同様に搬送ラインが1本の場合は搬送途中での搬送物の待機や、順番の入れ替えなどが困難であり、例えば、物品をピッキングし、同じ行先の物品同士をまとめて出荷したい場合、出荷手前で同じ行先同士をまとめるための作業(順立作業)を行う必要があるが、これを実現するためには、調整用の長めの搬送ラインと、同じ行き先にまとめるための集約作業者の投入と、従来の構成に対して追加的な順序立てのための特別な機構と、などが必要になり、スペースの確保やコスト高の問題がある。特に、物流センターでフロア面積が狭いところでは他の装置やシステムとの兼ね合いから実現が困難である。
【0006】
一方、搬送ロボットを用いる方式は、トラック輸送と同様に搬送物の待機や、順番の入れ替えは、搬送ロボットの駐車や発進順の入れ替えで容易に可能になる。ピッキング作業を適正なフロアに複数台数を設けた搬送ロボットに担わせると、ピッキングだけでなく、待機、順番入れ替えなどが自在にできることから、ピッキング作業から順立作業まで同一フロア上で完了する。これにより、搬送ラインのようなスペースのかさむ装置が不要であり、時間、投入人員なども大幅に減ることになり、大変効率的で省人化した物流システムが出来上がることになる。
【0007】
なお、ここで、および以下の説明において「搬送ロボット」とは、例えばいわゆる自立(自律)走行搬送ロボット(Autonomous Mobile Robot:AMR)や無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)等を指し、以下、代表して表現する際には、「AMR」とする。なお、これには、自己位置推定による完全自律走行を行う無軌道(Natural Feature Navigation:NFN)方式のものも含まれる。また、走行エリアを十分に確保できる場合には、可搬式の商品棚ごと運ぶタイプの搬送ロボットでも良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6185619号公報
【特許文献2】WO2010/026633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、倉庫と集品エリアとの関係を考慮した場合、搬送ライン方式では、システム構成や運用上の柔軟性に難があり、それを解決するためのスペースやコストが問題となったが、その反面、システム構成や運用が固定されれば、倉庫と集品エリアとは直結で済むので、その相互間にはスペース(レイアウトエリア)の余裕は不要である。
【0010】
これに対して、搬送ロボット方式、すなわち1以上のピッキング(集品)作業を指示するピッキングオーダに基づいて制御される搬送ロボットを複数備えた物流(特にピッキング)システムでは、そのメリットとなる自由走行を自在に活用するための十分な走行エリアが必要になる。
【0011】
このため、システム全体としての運用効率を向上させようとすると、走行のための十分なスペース(走行エリア)が必要になり、エリア利用効率とシステム運用効率がトレードオフの関係になり、双方ともに十分な向上が図れないという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、物流システム全体でのレイアウトエリアの利用効率(エリア利用効率)と、システム全体としての運用効率(システム運用効率)と、を両立して向上可能にする、物流システム、物流システム制御方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る物流システムは、物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、を備え、前記倉庫は、水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、を有する。
【0014】
また、上記の技術思想は、上述した態様とは別の、前記制御機能により前記制御工程を行う物流システム制御方法としての態様、上述の物流システムに、上述の物流システム制御方法を実行させるプログラムとしての態様、上述のプログラムを、上述の物流システムにより利用可能に記憶する記録媒体としての態様、としても実現できる。
【0015】
この態様の物流システム若しくは物流システム制御方法では、またはこの態様のプログラム若しくはプログラム記憶媒体によれば、物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御工程を担当する制御機能と、を備え、前記倉庫は、水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分構成して、前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアを、前記複数保管のための少なくとも1階分の単一保管フロアとし、前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアを、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能な少なくとも1階分の単一搬送フロアとして、 前記少なくとも1階分の単一保管フロアと、前記少なくとも1階分の単一搬送フロアと、前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、を有する。
【0016】
これらの場合、水平方向に広がる単一保管フロアと単一搬送フロアとが垂直方向に並ぶことで、水平方向のエリア(面積)の削減ができる。これにより、物流システム全体でのレイアウトエリアの低減ができ、エリア利用効率を向上できる。また、単一搬送フロアの存在により、搬送ロボットが倉庫の外周だけでなく、単一保管フロアと水平方向で重複する単一搬送フロアのエリアを水平方向自在に走行できるので、倉庫からアイテムを搬出するための走行距離を低減できる。これにより、物流システム全体でのシステム運用効率を向上できる。
【0017】
また、第2の態様に係る物流システムとして、上記第1の態様において、前記単一搬送フロアは、垂直方向において、地上1階の位置、地下1階の位置、または、地上1階から地下1階までの途中の地下中1階の位置にレイアウトされているようにしてもよい。
【0018】
この場合、垂直方向において、地上1階の位置、地下1階の位置、または、地上1階から地下1階までの途中の位置にレイアウトされているので、地上1階との出入りに便利であり、倉庫と他の建物等との間の搬送ロボットの地上1階を介しての移動がしやすい。
【0019】
また、第3の態様に係る物流システムとして、上記第1の態様において、前記単一保管フロアを複数階分有し、前記制御工程では、前記複数階分の前記単一保管フロアでの保管を統合して制御するようにしてもよい。
【0020】
この場合、複数階分の単一保管フロアを統合して制御することにより、倉庫内でのアイテムの効率の良い保管や搬送がし易くなる。
【0021】
また、第4の態様に係る物流システムとして、上記第1の態様において、前記保管形態および前記搬送形態の少なくとも1は、前記アイテムを収容する収容形態であるようにしてもよい。
【0022】
この場合、アイテムのみでの保管や搬送も可能であるが、保管形態や搬送形態を、アイテムを収容する収容箱等の収容形態とすることで、その収容形態のまま、保管や搬送ができる。
【0023】
また、第5の態様に係る物流システムとして、上記第1の態様において、前記倉庫は、前記単一保管フロア内での保管位置と前記リフト機構との間で、前記保管対象の前記アイテムを前記搬送形態で搬送するシャトルを有するようにしてもよい。
【0024】
この場合、シャトルの利用により、固定された機構の構成でなく、柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0025】
また、第6の態様に係る物流システムとして、上記第5の態様において、前記リフト機構は、前記搬送形態で前記アイテムを搬送する状態のままの前記シャトルを垂直方向に搬送して、前記搬送形態の前記アイテムを前記搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能な構成を有するようにしてもよい。
【0026】
この場合、搬送形態のアイテムをシャトルで搬送する状態のまま、柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0027】
また、第7の態様に係る物流システムとして、上記第1の態様において、前記リフト機構は、前記単一保管エリア内での水平断面中央部近傍に位置するようにしてもよい。
【0028】
この場合、搬送対象のアイテムの引渡しを倉庫の水平断面中央部近傍で行うことができるので、どの方向に対してもアイテムの搬送距離を平均化でき、クリティカルな時間での搬送を低減でき、さらに柔軟に入出庫可能になり、物流システム全体でのレイアウトエリアの利用効率とシステムとしての運用効率を向上できる。
【0029】
また、第8の態様に係る物流システムとして、上記第1~第7の態様のうちのいずれか一つの態様において、前記リフト機構は、前記搬送形態の前記アイテムの前記搬出に加えて、搬入にも利用可能な構成を有するようにしてもよい。
【0030】
この場合、リフト機構を、搬出だけでなく、搬入にも利用できるので、さらに柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0031】
さらに、上記課題を解決するために、本願の第9の態様に係る物流システム制御方法は、物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、を備える物流システムにおいて、前記制御機能により制御するステップを有する物流システム制御方法であって、前記倉庫は、 水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、を有することを特徴とする。
【0032】
さらにまた、上記課題を解決するために、本願の第10の態様に係るプログラムは、物流に供するアイテムを所定の保管形態で複数保管する倉庫と、保管対象の前記アイテムを所定の搬送形態で搬送する搬送ロボットと、前記倉庫および前記搬送ロボットを制御する制御機能と、を備える物流システムにおいて、前記制御機能をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記倉庫は、水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分有し、前記複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分の単一フロアであって、前記複数保管のためのものとして規定される、少なくとも1階分の単一保管フロアと、前記少なくとも1階分の単一保管フロアとは別の少なくとも1階分の単一フロアであって、前記搬送ロボットが水平方向自在に走行可能なものとして規定される、少なくとも1階分の単一搬送フロアと、前記単一保管フロアと前記単一搬送フロアとの間で、前記単一保管フロアから搬出された前記搬送形態の前記アイテムを垂直方向に搬送して、前記単一搬送フロアで待機中の前記搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構と、を有することを特徴とする。
【0033】
また、上記課題を解決するために、本願の第11の態様に係る記録媒体は、上記第10の態様に係るプログラムを記憶したものとすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の各態様によれば、物流システム全体でのエリア利用効率と、システム運用効率と、を両立して向上可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態による物流システムの構成図である。
図2】ピッキングエリアの構成を簡易化して示すピッキングエリアの模式図である。
図3】タンデムタイプ構成と搬送ロボット方式の構成の組合せによる自動倉庫の構成例を示す模式図である。
図4図3に続く、自動倉庫の構成例を示す模式図である。
図5】多機能シャトル式の自動倉庫の構成と、他部(倉庫以外)とのレイアウト関係を示す模式図である。
図6】自動倉庫の水平断面内でのリフタの位置の例を示す説明図である。
図7】入出庫にコンベアを用いた搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した各種タイプの多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
図8】シングルラック構成で搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
図9】シングルラック且つシングルサイクル構成で搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
図10】シングルラック且つダブルサイクル構成で搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
図11】タンデムラック構成で搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
図12図11に続く、タンデムラック構成の多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の概念は、本発明の概念の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、以下でより完全に説明される。しかしながら、この発明の概念は、多くの異なる形態で具体化でき、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供される。同様の番号は、説明全体で同様の要素を指す。
【0037】
以下、[1.システム構成例]、[2.本発明の課題ポイントの例示]、[3.課題解決ポイントの例示]、[4.まとめ]について、順に説明する。
【0038】
[1.システム構成例]
<機能ブロック図>
図1は、実施形態の物流システム1の概略制御フローを簡略化して含む機能ブロック図である。同図において、太幅2重線構成の点線矢印は、物(アイテム等)の流れ方向を示し、単線の点線矢印は、制御の流れ方向を示す。
【0039】
同図に示すように、物流システム1は、集品の対象となる入荷品を複数種類入荷する入荷部10と、集品を行うための集品部20と、配送のために出荷対象となる出荷品を出荷する出荷部30と、入荷部10、集品部20および出荷部30を制御する制御部Cと、を備えている。
【0040】
制御部Cは、上記の入荷部10、集品部20および出荷部30に対応して、入荷部10を制御する入荷制御(入荷制御工程)10C、集品部20を制御する集品制御(集品制御工程)20C、および、出荷部30を制御する出荷制御(出荷制御工程)30Cを行う。
【0041】
ここで、および以下の説明において、「~部を制御する」とは、「~部をデータベース管理下とする」と言うことを指し、「~部において作業・処理対象となるアイテムのそれぞれについて、そのアイテムのID(以下「アイテムID」)に関連付けて、そのアイテムの各時点での状況を把握して更新し(データベースに記憶して状況に合わせて更新し)、後工程のための参照データとすること」を最小要件とする。ここでの「状況」には、各アイテムがどの工程まで作業・処理対象となったか等の情報が含まれる。この場合、この最小要件を満足すれば、少なくとも「参照データを得る」と言う点において、「自然法則の利用」に該当することになる。
【0042】
すなわち、後工程における制御のための参照データを得ることが最小要件なので、実際の作業・処理対象となるアイテムのそれぞれについて、その作業・処理を例えばプログラム制御により全自動で実施する場合はもちろんのこと、その作業・処理の一部または全部を作業員等の人手で実施したとしても、(自然法則に基づいて)参照データを得てシステム全体が作動するので、システム全体として、「自然法則の利用」に該当することになる。
【0043】
なお、上記のアイテムIDは、例えば入荷時点でデータベースに登録され、あるいは事前に登録済みの情報を示すものであり、例えば入荷品に付される所定の番号の他に、品種名を含む種類、数量、産地、消費期限、賞味期限等の特性を示す。このデータベースへの登録は、例えば入荷品に付されたバーコードの読み取り、入荷品の箱に内蔵されたIC内の情報の読み取り、その他、各種タグ、各種貼付、付帯品からの情報取得によって行われる。
【0044】
図1の説明に戻り、同図に示すように、入荷部10は、入荷品を入荷する作業を行う入荷作業部11と、入荷した入荷品をそれぞれ1種類以上含むアイテムを複数種類保管するアイテム保管部12と、集品部20での集品に必要になる複数種類のアイテムを、集品部20に補充するアイテム補充部13と、を有する。
【0045】
これに対して、制御部Cでは、入荷部10を制御する入荷制御(入荷制御工程)10Cとして、入荷作業部11を制御する入荷作業制御(入荷作業制御工程)11Cと、アイテム保管部12を制御するアイテム保管制御(アイテム保管制御工程)12Cと、アイテム補充部13を制御するアイテム補充制御(アイテム補充制御工程)13Cと、を行う。
【0046】
集品部20は、アイテム補充部13から補充されたアイテムを集品のために一時保管する集品準備部21と、集品準備部21のアイテムを収容箱に集品する集品作業を行って、出荷品となるアイテムを集品した収容箱の準備を進める集品作業部22と、集品作業に供する収容箱を搬送するために、出荷部30まで搬送ロボットRが自由軌道(平面走行自在)で走行する搬送走行部23と、を有する。
【0047】
これに対して、制御部Cでは、集品部20を制御する集品制御(集品制御工程)20Cとして、集品準備部21を制御する集品準備制御(集品準備制御工程)21Cと、集品作業部22を制御する集品作業制御(集品作業制御工程)22Cと、搬送走行部23を制御する搬送走行制御(搬送走行制御工程)23Cと、を行う。
【0048】
また、この搬送走行制御(搬送走行制御工程)23Cでは、集品のための搬送走行部23の制御以外に、搬送ロボットRの駆動(Driving)や走行(Running)やルート(Route)を含む走行制御(Driving Control)のための走行制御信号Dを各部に発信して、各部における搬送ロボットRの挙動を制御する。
【0049】
出荷部30は、集品部20で集品された収容箱を受領して、配送対象となる出荷品となる出荷態様に纏める出荷準備部31と、出荷態様の出荷品に含まれるアイテムの種類別特性に合わせて保管する出荷品保管部32と、配送等のために出荷品を揃える作業を行う出荷作業部33と、を有する。
【0050】
これに対して、制御部Cでは、出荷部30を制御する出荷制御(出荷制御工程)30Cとして、出荷準備部31を制御する出荷準備制御(出荷準備制御工程)31Cと、出荷品保管部32を制御する出荷品保管制御(出荷品保管制御工程)32Cと、出荷作業部33を制御する出荷作業制御(出荷作業制御工程)33Cと、を行う。
【0051】
なお、上記および以下の説明における「搬送ロボットRによるアイテムの搬送」の「アイテムの搬送」は、任意または設定に従う自由軌道によるものなので、例えば集品箱、出荷箱、パレット、ケース、段ボール箱、折り畳みコンテナ(オリコン)、などの搬送時の収容物の種類やその中に含まれるアイテムの種類や種類数等の搬送形態に関わらず、単に「アイテムの搬送」と称し、「アイテム」には全ての収容形態での「アイテム」を含むものとする。
【0052】
<集品部:搬送ロボット(AMR)集品のピッキングエリア>
図2は、集品部10の主構成として、搬送ロボット集品のためのピッキングエリアの構成を、理解の容易化のため模式的に簡易化して示すピッキングエリアの模式図である。
【0053】
図示のように、ピッキングエリアは、複数の作業台(作業テーブル)Tと、その手前側で搬送ロボットRが自由軌道(平面走行自在)で走行するための搬送ロボット走行エリア(搬送走行部23)と、を備えている。
【0054】
環境温度-5℃のピッキング作業エリア210内の近傍に後述の倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10から搬送された集品対象の各種アイテムを、集品を担当する複数のアクチュエータアーム(以下単に「ハンド」)Hが、それぞれが担当する作業台(作業テーブル)Tにおいて、それぞれが担当するオーダー箱(収容箱)にピッキング(集品)を行う。
【0055】
ここで、ケース単位を作業処理の対象単位として、各アイテムはアイテム単位(すなわちケース単位)で供給(補充)される。
【0056】
[2.本発明の課題ポイントの例示]
<入荷部:多機能シャトル式自動倉庫のシステム>
まず、本実施形態の物流システム1では、基本的に、入荷から出荷までの間で、アイテムを自動で複数保管して個別に抽出するための自動入出庫処理を行うので、物流システムとして、人手を介さず、作業員のスキルを要しない構成となり、システムの汎用性を確保しつつ、自動化を推進でき、運用の自動化を含めた更なる効率化が可能になる。
【0057】
<多機能シャトル式自動倉庫>
ここで、本実施形態で採用する自動入出庫手段は、「多機能シャトル式自動倉庫」であり、高速にラックへの入出庫を行うものである。
【0058】
「シャトル式自動倉庫」は一般的な自動倉庫に用いられているスタッカークレーンではなく、シャトルカー(シャトル台車:以下単に「シャトル」)を活用して入出庫を行う自動倉庫システムのことを指し、特に本件自動倉庫については以下の3つの特徴がある。
・高い入出庫能力
・順立て出庫が可能
・省スペースで高密度保管が可能
【0059】
荷物を入出庫させる際には、シャトルの上にケース(またはパレット:収容箱)を載せて水平移動させる。また、水平移動だけではなく、垂直リフタなどを用いて上下搬送が行えるタイプもある。
【0060】
そして、「多機能シャトル式自動倉庫」は、これらの「シャトル式自動倉庫」の中でも、特に高い入出庫能力を誇り、ラック内に保管されている荷物を欲しい順序で取り出す「順立て出庫」が可能となっている。また、自動補充も可能なので、高速入出庫で回転率の良い保管が可能であり、タイムリーな部品供給にも対応できる。
【0061】
『本実施形態で採用する多機能シャトル式自動倉庫』
多機能な高能力・省スペース入出庫システムであり、アイテムの自動保管システム等に採用され、高速でラックへの入出庫を行うシャトルで、ピッキングや仕分けをより早く効率的に、高い入出庫能力と省スペースを実現する。多機能シャトル式自動倉庫は、高速にラックへの入出庫を行うシャトルと、ケース(またはパレット等の収容箱)を高速で上下移動させ入出庫処理を同時に行う高能力リフタと、ラック本体と、で構成されるモジュール構造のシステムであり、自動倉庫を導入せずに棚に商品を保管してピッキング作業者が棚まで商品を取りに行くシステムとは大きく異なる所謂歩行レスのピッキングシステム(ロボット式ピッキング)のGTPである(Goods to Robot)用と、原料の入出庫用と、出荷時の仕分け・順立て出庫用などの、自動保管システム(自動倉庫)等として採用している。
【0062】
図7図12は、外部との接続(入出庫)にコンベアを用いた搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用した各種タイプの多機能シャトル式自動倉庫の説明図である。
【0063】
まず、図7(a)および図8に示すように、シングルラック構成の多機能シャトル式自動倉庫では、一端(図7では図示右側、図8では図示手前側)に、アイテム(の収容箱)Bの入出庫端を有し、内部では、アイテムの入庫・保管・出庫のために、アイテムを載置したシャトルSがアイル(シャトル走行通路)IL上を往復し、階層間では、リフタマストLMに設置されたリフタコンベアLCを介してアイテムを授受し、外部との間では、バッファコンベアBCを介してアイテムを授受する。
【0064】
この場合、図7(a)および図9に示すように、入庫のみに使用されるバッファコンベアBCと、出庫のみに使用されるバッファコンベアBCとを、例えば同じ高さに並行に並べて入出庫するシングルサイクルのシングルラック構成タイプの多機能シャトル式自動倉庫と、図7(b)および図10に示すように、入庫用のバッファコンベアLCと、出庫用のバッファコンベアLCとを、例えば垂直方向に別の高さに並行に並べて入出庫するダブルサイクルのシングルラック構成タイプの多機能シャトル式自動倉庫と、などが採用されている。
【0065】
あるいは、図7(c)、図11および図12に示すように、例えばリフタL(リフタマストLM)を中央部に配して、一方(図7では図示右側)から入荷すると同時に、他方(図7では図示左側)に出庫するタンデムタイプの多機能シャトル式自動倉庫も採用され、物流システム全体としての、入出庫高速化による特段の高能力化が図られている。
【0066】
ただし、これらはあくまでも、多機能シャトル式自動倉庫と外部との接続(入出庫)にコンベアを用いた搬送ライン方式の構成及び運用方法を採用したものである。すなわち、倉庫と集品エリアとの関係を考慮した場合、搬送ライン方式では、システム構成や運用上の柔軟性に難があり、それを解決するためのスペースやコストが問題となる。特に、物流センターでフロア面積が狭いところでは他の装置やシステムとの兼ね合いから実現が困難である。
【0067】
一方、搬送ロボットを用いる方式は、トラック輸送と同様に搬送物の待機や、順番の入れ替えは、搬送ロボットの駐車や発進順の入れ替えで容易に可能になる。ピッキング作業を適正なフロアに複数台数を設けた搬送ロボットに担わせると、ピッキングだけでなく、待機、順番入れ替えなどが自在にできることから、ピッキング作業から順立作業まで同一フロア上で完了する。これにより、搬送ラインのようなスペースのかさむ装置が不要であり、時間、投入人員なども大幅に減ることになり、大変効率的で省人化した物流システムが出来上がることになる。
【0068】
ところが、搬送ロボット方式、すなわち1以上のピッキング(集品)作業を指示するピッキングオーダに基づいて制御される搬送ロボットを複数備えた物流(特にピッキング)システムでは、そのメリットとなる自由走行を自在に活用するための十分な走行エリアが必要になる。また、広くなった走行エリアに適当な台数を増備することで搬送機会が向上して作業効率全体が底上げされる。
【0069】
このため、システム全体としての運用効率を向上させようとすると、走行のための十分なスペース(走行エリア)が必要になり、エリア利用効率とシステム運用効率がトレードオフの関係になり、双方ともに十分な向上が図れないという問題があった。
【0070】
図5は、多機能シャトル式自動倉庫で構成される倉庫(入荷部)10の構成と、その他(倉庫以外)90とのレイアウト関係を示す模式図である。
【0071】
搬送ライン方式では、システム構成や運用上の柔軟性に難がある反面、システム構成や運用が固定されれば、倉庫と集品エリアとは直結で済むので、その相互間にはスペース(レイアウトエリア)の余裕は不要である。すなわち、その場合、同図(a)に示すように直結したレイアウトで良い。
【0072】
一方、搬送ロボット方式では、例えば図2で前述の集品部10のピッキングエリアで活躍中の搬送ロボットRにより、アイテム(の収容箱)Bを搬送して、多機能シャトル式自動倉庫との間でアイテムの入出庫を行うためには、搬送ロボットRが倉庫(入荷部)10の周囲を廻りこんで走行する搬送ロボット走行エリア(以下単に「走行エリア」)23が必要になったり、さらには搬送時間短縮目的で搬送距離を短縮するために、図5(b)に示すように、倉庫と集品エリア(他部)90との間に、さらに図示斜線の自由走行の走行エリアを設けるなどが必要になり、エリア利用効率を悪化させる要因となっている。
【0073】
すなわち、従来の構成では、エリア利用効率とシステム運用効率がトレードオフの関係になり、双方ともに十分な向上が図れないという問題があった。
【0074】
[3.課題解決ポイントの例示]
図3は、タンデムタイプ構成と搬送ロボット方式の構成の組合せによる自動倉庫の構成例を示す模式図である。倉庫(入荷部)10の多機能シャトル式自動倉庫として最も高速化が望める図7(c)、図11および図12で前述のタンデムタイプの多機能シャトル式自動倉庫を採用するケースを例に挙げて、物流システム1全体でのエリア利用効率とシステム運用効率とを両立して向上可能な構成を模式的に説明する。
【0075】
同図に示すように、倉庫(入荷部:多機能シャトル式自動倉庫)10は、水平方向に広がる1階分の単一フロアを垂直方向に複数階分(図示では6階分)構成して、複数階分の単一フロアのうちの少なくとも1階分(図示では5階分)の単一フロアを、複数保管のための少なくとも1階分(図示では5階分)の単一保管フロアとする。
【0076】
また、この単一保管フロアとは別の少なくとも1階分(図示では1階分)の単一フロアを、搬送ロボットRが水平方向自在に走行可能な少なくとも1階分の単一搬送フロアとする。なお、単一搬送フロアも複数階分設けても良い。
【0077】
また、上記の単一保管フロアと上記の単一搬送フロアとの間で、単一保管フロアから搬出された搬送形態のアイテム(の収容箱)Bを垂直方向に搬送して、単一搬送フロアで待機中の搬送ロボットに引渡し可能なリフト機構(リフト)Lを有する。
【0078】
例えばリフタL(リフタマストLM)を中央部に配して、一方(図示右側)から搬送ロボットRにより搬送されてきたアイテム(の収容箱)Bを入荷すると同時に、他方(図示左側)から出庫対象のアイテム(の収容箱)Bを搬出して、搬送ロボットRに引渡しが可能な構成になっている。
【0079】
図4は、図3に続いて、自動倉庫の構成例を示す模式図である。ここでは、地上の地平ラインと上述の単一搬送フロアとの垂直位置関係を示し、地平ラインがAの場合は、単一搬送フロアは地上1階、Cの場合は、地下1階の位置、Bの場合は、地上1階から地下1階までの途中の位置(いわゆる地下中1階)にレイアウトされていることを示す。
【0080】
これらの垂直位置関係では、地上1階との出入りに便利であり、倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10と他の建物等との間の搬送ロボットRの、地上1階を介しての移動がしやすい。なお、例では1階分としているが、単一搬送フロアとしても複数階分(例えば地上1階と地下1階の2階分など)を設けても良い。
【0081】
そして、本実施形態の物流システム1では、上述の図3および図4の例に示すように、倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10の水平方向に広がる単一保管フロアと単一搬送フロアとが垂直方向に並ぶことで、水平方向のエリア(面積)の削減ができる。これにより、物流システム1全体でのレイアウトエリアの低減ができ、エリア利用効率を向上できる。また、単一搬送フロアの存在により、搬送ロボットRが倉庫10の外周だけでなく、単一保管フロアと水平方向で重複する単一搬送フロアのエリアを水平方向自在に走行できるので、倉庫10からアイテム(の収容箱)Bを搬出するための走行距離を低減できる。これにより、物流システム1全体でのシステム運用効率を向上できる。
【0082】
また、上述の例のように、単一保管フロアを複数階分(図示では5階分)有している場合、図1で前述の制御部Cでは、倉庫(入荷部)10を制御する入荷制御(入荷制御工程)10Cとして、複数階分の単一保管フロアでの保管を統合して制御する。これにより、倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10内でのアイテムの効率の良い保管や搬送がし易くなる。
【0083】
また、上述の例のように、アイテムの保管形態または搬送形態の少なくとも1の形態として、アイテムを収容する収容形態がある。すなわち、アイテム(の収容箱)Bにより、保管または搬送ができる、この場合の収容箱Bとしては、前述のように、ケースやパレットを含み、あるいは、パックやオリコン等と称されるものでも良い。すなわち、アイテムのみでの保管や搬送も可能であるが、保管形態や搬送形態を、アイテムを収容する収容箱等の収容形態とすることで、その収容形態のまま、保管や搬送ができる。
【0084】
また、上述の例のように、倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10は、単一保管フロア内での保管位置とリフト(リフト機構)Lとの間で、保管対象のアイテムを搬送形態で搬送するシャトルを有する。この場合、シャトルの利用により、固定された機構の構成でなく、柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0085】
また、上述の場合、リフト(リフト機構)Lとしては、搬送形態でアイテムを搬送する状態のままのシャトルを垂直方向に搬送して、搬送形態のアイテムを搬送フロアで待機中の搬送ロボットに引渡し可能な構成にすることもできる。この場合、搬送形態のアイテムをシャトルで搬送する状態のまま、柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0086】
また、上述の例の場合、言うまでもないことだが、リフト(リフト機構)Lとしては、搬送形態のアイテムの搬出に加えて、搬入にも利用可能な構成となっている。これにより、リフト機構を、搬出だけでなく、搬入にも利用できるので、さらに柔軟に入出庫可能な構成にできる。
【0087】
[4.まとめ]
<倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)内の保管フロアと搬送フロアの垂直方向階層構造>
図3および図4で上述のように、本実施形態の物流システム1では、倉庫(多機能シャトル式自動倉庫)10内の水平エリアである保管フロアと搬送フロアとが、垂直方向に重なるように並ぶことで、水平方向のエリア(面積)の削減ができる。これにより、物流システム1全体でのレイアウトエリアの低減ができ、エリア利用効率を向上できる。
【0088】
また、搬送フロアの存在により、搬送ロボットRが倉庫10の外周だけでなく、搬送エリアを水平方向自在に走行できるので、倉庫10からアイテム(の収容箱)Bを搬出するための走行距離を低減できる。これにより、物流システム1全体でのシステム運用効率を向上できる。
【0089】
この場合、図5で前述した倉庫(入荷部)10と他部(倉庫以外)90とのレイアウト関係において、同図(b)に示した図示斜線の自由走行の走行エリアを設けるなどが不要になって、エリア利用効率の悪化を防止でき、さらには、同図(a)に示すように、倉庫(入荷部)10と他部(倉庫以外)90とを直結して、エリア利用効率を向上しても、搬送ロボットRが搬送エリアを水平方向自在に走行できることで、システム運用効率も両立して向上できる。
【0090】
すなわち、従来の構成では、エリア利用効率とシステム運用効率がトレードオフの関係になり、双方ともに十分な向上が図れないという問題(課題)があったのに対して。本件実施形態の物流システム1では、その課題を解決して、物流システム1全体でのエリア利用効率とシステム運用効率とを両立して向上できる。
【0091】
<基本例、変形例、応用例>
図6は、倉庫(入荷部:多機能シャトル式自動倉庫)10の水平断面内でのリフタLの位置の例を示す説明図である。基本例では、同図(a)に示すように、リフタLは、倉庫10の水平エリア全体の中央部に位置する。
【0092】
この場合、搬送対象のアイテムの引渡しを倉庫10の水平断面中央部近傍で行うことができるので、どの方向に対してもアイテムの搬送距離を平均化でき、クリティカルな時間での搬送を低減でき、さらに柔軟に入出庫可能になり、物流システム1全体でのエリア利用効率とシステム運用効率を向上できる。
【0093】
図6(b)~図6(f)の各図は、倉庫10の水平断面内におけるリフタLの配置(レイアウト)位置に関する変形例・応用例を示し、それぞれ基本の同図(a)よりリフタLの配置箇所を追加することにより、中央での搬送ロボットRの混雑や、中央部のリフタLの負担を減少して、システム全体のスピード向上(運用効率向上)を図ったものとなっている。
【0094】
同図(b)は、中央の1か所(1エリア)以外に四隅に1エリアずつ配置して、リフタLの負荷分散によりシステム運用効率向上を図った構成、同図(c)は、倉庫10のエリア全体を4分割したときの各中央に、リフタLを1エリアずつ配置した構成を示す。
【0095】
さらに、同図(d)は、同図(b)での中央部の1つのリフタ負担の減少を図り、4エリア分に増設した構成、同図(e)は、さらに外周部に負荷分散のリフタLを追加した構成、同図(f)は、さらに同図(c)の構成を追加して負荷分散をした構成、となっている。
【0096】
ただし、これらの場合、リフタLの配置(レイアウト)エリア分だけ、アイテム(の収容箱)Bの保管エリアが減少するので、ここでも、エリア利用効率とシステム運用効率とのバランスを考慮する必要がある、この点についても、垂直方向の階層数(すなわち階数)の検討により、現状に適した適切な構成が考え得る。
【0097】
本発明の概念は、主に、いくつかの実施形態を参照して説明してきた。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上述のもの以外の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の各態様に係る物流システムおよび各種制御は、入荷・集品・出荷・搬送の対象となるアイテムをデータベース管理するシステムについてのものであり、その意味で自然法則を利用しており、プログラム制御でハードウェアを作動させる点で工業的価値を有し、また、搬送の行為(役務)やアイテム自体は商取引の対象である点で経済的価値を有しており、これらの技術分野において、幅広い産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0099】
1 物流システム
10 入荷部、倉庫、多機能シャトル式自動倉庫
10C 入荷制御(工程)
11 入荷作業部
11C 入荷作業制御(工程)
12 アイテム保管部
12C アイテム保管制御(工程)
13 アイテム補充部
13C アイテム補充制御(工程)
20 集品部
20C 集品制御(工程)
21 集品準備部
21C 集品準備制御(工程)
22 集品作業部
22C 集品作業制御(工程)
23 搬送走行部、搬送ロボット走行エリア
23C 搬送走行制御(工程)
30 出荷部
30C 出荷制御(工程)
31 出荷準備部
31C 出荷準備制御(工程)
32 出荷品保管部
32C 出荷品保管制御(工程)
33 出荷作業部
33C 出荷作業制御(工程)
200 ピッキング(フロー)ラック
210 ピッキング作業エリア
B 集品箱
C 制御部
H アクチュエータアーム(ハンド)
L リフタ
R 搬送ロボット(AMR)
S シャトル
T 作業台(作業テーブル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12