(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175238
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241211BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 Q
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092851
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】523214672
【氏名又は名称】SYNOVA JAPAN 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】神月 靖
(72)【発明者】
【氏名】田上 良治
【テーマコード(参考)】
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F063AA06
5F063AA07
5F063AA36
5F063BA11
5F063BA22
5F063BA31
5F063BA43
5F063BA45
5F063BB11
5F063CA04
5F063CA06
5F063DD30
5F063DD59
5F063DD90
5F063DF01
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5F063DG32
5F063EE85
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA52
5F131BA53
5F131CA31
5F131EC32
5F131EC42
5F131EC44
5F131EC52
5F131EC53
5F131EC54
5F131EC55
5F131EC64
5F131EC65
(57)【要約】
【課題】半導体素子の裏面に金属フレームが接合される半導体装置において、製造工程を簡素化し、半導体素子と金属フレームとの接合強度を向上させ、半導体素子の熱伝導率を向上させる。
【解決手段】単一の半導体ウェーハ10を複数の半導体素子に分離する半導体装置の製造方法であって、半導体ウェーハ10の表面に対して、各々の半導体素子に応じた加工を行う表面加工工程と、半導体ウェーハ10の裏面の全面に対して、接合フィルム4を介して、金属フレーム3を接合する金属フレーム接合工程と、金属フレーム3ごと半導体ウェーハ10をダイシングして半導体素子に応じて分離するダイシング工程とを有し、接合フィルム4が、金属フレーム3と共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の半導体ウェーハを複数の半導体素子に分離する半導体装置の製造方法であって、
半導体ウェーハの表面に対して、各々の前記半導体素子に応じた加工を行う表面加工工程と、
前記半導体ウェーハの裏面の少なくとも複数の半導体素子の形成領域を含む範囲に対して、接合層を介して、金属フレームを接合する金属フレーム接合工程と、
前記金属フレームごと前記半導体ウェーハをダイシングして前記半導体素子に応じて分離するダイシング工程と
を有し、
前記接合層は、前記金属フレームと共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属フレーム接合工程では、真空接合によって前記金属フレームを前記半導体ウェーハの前記裏面に接合する
請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
第13族元素あるいは第15族元素の前記ドーパントは、第3周期あるいは第5周期に属し、砒素、アンチモン、ボロン及びアルミニウムのいずれかである
請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウェーハは、シリコン、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれかの半導体基板からなる
請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ダイシング工程では、レーザ光を水ジェット内部で全反射させながら案内する水レーザを用いて前記半導体ウェーハをダイシングする
請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
表面に加工が施された半導体素子と、
前記半導体素子の裏面に接合層を介して接合された金属フレームと
を備え、
前記接合層は、前記金属フレームと共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電気自動車やハイブリッド自動車の他、様々な電子装置には多くの半導体装置が搭載されている。このような半導体装置の一種であるディスクリート半導体は、トランジスタやダイオード等として機能する。このようなディスクリート半導体は、半導体素子の表裏面に電極等として機能する金属層が形成され、半導体素子の裏面側が、銅等で形成された金属フレームが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスクリート半導体に限らず、半導体素子の裏面側が金属フレームに接合される半導体装置では、通常、はんだを介して半導体素子が金属フレームに接合されている。製造時には、半導体素子の裏面に、チタン、ニッケル、金等からなる電極層が形成され、電極層に重ねて、はんだ層が形成される。はんだ層が裏面に形成された半導体素子は、ダイシングされて半導体ウェーハから分離された後に、リフロー処理等で金属フレームに対して接合される。このような半導体素子の裏面に対しては、多くの真空製膜工程を行う必要がある。しかしながら、半導体素子の裏面への多数の真空成膜工程は、半導体装置の製造工程を複雑なものにしている。また、半導体素子は、はんだ接合により金属フレームに対して液相接合されるため、半導体素子と金属フレームとの接合強度が低い。このため、半導体装置において、半導体素子と金属フレームとのさらなる接合強度の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、半導体素子の裏面側に金属フレームが接合される半導体装置において、製造工程を簡素化すると共に半導体素子と金属フレームとの接合強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、単一の半導体ウェーハを複数の半導体素子に分離する半導体装置の製造方法であって、半導体ウェーハの表面に対して、各々の上記半導体素子に応じた加工を行う表面加工工程と、上記半導体ウェーハの裏面の少なくとも複数の半導体素子の形成領域を含む範囲に対して、接合層を介して、金属フレームを接合する金属フレーム接合工程と、上記金属フレームごと上記半導体ウェーハをダイシングして上記半導体素子に応じて分離するダイシング工程とを有し、上記接合層が、上記金属フレームと共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含むという構成を採用する。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記金属フレーム接合工程では、真空接合によって上記金属フレームを上記半導体ウェーハの上記裏面に接合するという構成を採用する。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、第13族元素あるいは第15族元素の上記ドーパントが、第3周期あるいは第5周期に属し、砒素、アンチモン、ボロン及びアルミニウムのいずれかであるという構成を採用する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第1~第3のいずれか一つの態様において、上記半導体ウェーハが、シリコン、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれかの半導体基板からなるという構成を採用する。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記第1~第4のいずれか一つの態様において、上記ダイシング工程では、レーザ光を水ジェット内部で全反射させながら案内する水レーザを用いて上記半導体ウェーハをダイシングするという構成を採用する。
【0012】
本発明の第6の態様は、半導体装置であって、表面に加工が施された半導体素子と、上記半導体素子の裏面に接合層を介して接合された金属フレームとを備え、上記接合層が、上記金属フレームと共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅及びドーパントを含むという構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合層がドーパントを含んでおり、半導体素子の裏面層にドーパントを添加し、半導体素子の裏面層の抵抗率を低下させることができる。また、本発明によれば、接合層と金属フレームとが共晶反応により接合されている。さらに、本発明によれば、接合層がインジウムを含むことで軟性が向上されており、引け巣やクラックが生じることを抑制しつつ半導体ウェーハの裏面に金属フレームを接合することができる。このような本発明によれば、半導体素子の裏面に何度も真空成膜を行うことなく、半導体素子と金属フレームとを接合することができ、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。さらに、接合層と金属フレームとが共晶反応により接合されているため、半導体素子と金属フレームとの接合強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態における半導体装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の第1実施形態における半導体装置の製造方法で用いられる真空接合を説明するためのグラフである。
【
図9】本発明の第2実施形態における半導体装置の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る半導体装置の製造方法及び半導体装置の一実施形態について説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の半導体装置1の概略構成を示す模式図である。
図1に示す本実施形態の半導体装置1は、半導体素子2と、金属フレーム3と、接合フィルム4(接合層)と、ヒートスプレッダ5と、を備える。なお、本実施形態の半導体装置1は、不図示の配線層等を備えており、基板等に実装されることで、例えばディスクリート半導体として機能する。ただし、半導体装置1は、ディスクリート半導体に限定されるものではない。
【0017】
半導体素子2は、半導体材料によって形成されている。例えば、半導体素子2は、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、砒化ガリウム(GaAs)あるいは窒化ガリウム(GaN)を用いた半導体基板にて形成することができる。例えば、半導体装置1をパワー半導体として用いる場合には、半導体素子2は、シリコン、炭化シリコンあるいは窒化ガリウムのいずれかの半導体基板からなるとよい。
【0018】
半導体素子2は、シート状に形成されており、
図1に示すように表面2aと裏面2bとを有する。例えば、表面2aには、不図示の電極等が設けられている。例えば、半導体装置1が、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である場合には、表面2aには、ゲート電極が設けられている。また、半導体素子2の裏面2bには、接合フィルム4を介して、金属フレーム3が接合されている。
【0019】
金属フレーム3は、半導体素子2に接合され、例えば導電経路及び導熱経路として機能する。金属フレーム3は、例えば、銅(Cu)によって形成されている。この金属フレーム3は、接合フィルム4に対して共晶反応により接合されている。つまり、金属フレーム3と接合フィルム4との境界部には、金属フレーム3と接合フィルム4との共晶合金が形成されている。このような金属フレーム3の厚さ寸法は、例えば、0.01mm~3mmである。例えば、金属フレーム3の厚さ寸法を大きくすることで、金属フレーム3の熱容量が増加し、半導体素子2の熱伝導率を向上させることができる。
【0020】
接合フィルム4は、半導体素子2と、金属フレーム3とを接合する層である。この接合フィルム4は、例えば液相接合あるいは共晶反応による接合によって半導体素子2の裏面2bと接合されている。また、接合フィルム4は、金属フレーム3に対して共晶反応により接合されている。後に説明する真空接合により、このような接合フィルム4を介して、半導体素子2と金属フレーム3とが接合される。
【0021】
接合フィルム4は、インジウム(In)、スズ(Sn)、銀(Ag)、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む。半導体素子2に求められる性能に応じて、ドーパントとしては、第3周期あるいは第5周期に属する砒素(As)、アンチモン(Sb)、ボロン(B)及びアルミニウム(Al)のいずれかを用いることができる。ただし、この他のドーパントを接合フィルム4に含めてもよい。例えば、ドーパントは、接合フィルム4に対して、1重量%~25重量%含めるとよい。
【0022】
接合フィルム4に含まれるドーパントは、接合フィルム4が半導体素子2と接合されることで、半導体素子2の裏面2b近傍に添加される。このようなドーパントが半導体素子2に添加されることで、半導体素子2の抵抗率が低下する。つまり、接合フィルム4を用いることで、半導体素子2の裏面に、低効率が低下された層を形成することができる。
【0023】
なお、接合フィルム4に換えて、メッキ層やプリント材等の接合層を配置してもよい。つまり、本実施形態の半導体装置1は、金属フレーム3と共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅及びドーパントを含む接合層を備えることができる。このような接合層として、接合フィルム4の他、メッキ層やプリント材を用いることができる。
【0024】
インジウムは、接合フィルム4の軟性を向上させる。接合フィルム4にインジウムが含まれることで、接合フィルム4の軟性は、インジウムが含まれていない場合よりも向上する。この結果、接合フィルム4に対して、引き巣やクラックが生じることを抑制できる。
【0025】
半導体素子2は、後述の半導体ウェーハ10をダイシングにより分離することで形成される。上述のようなインジウムを含むことで軟性が向上された接合フィルム4は、ダイシング前に半導体ウェーハ10の裏面の全面に形成しても、ダイシングによりクラックが発生し難い。また、このような接合フィルム4を用いることで、半導体素子2と金属フレーム3との接合部が繰り返される温度変化(温度サイクル)に耐えることが可能となる。接合フィルム4を用いることによる温度サイクルに対する耐性の向上については、温度サイクル試験で確認することができる。例えば、インジウムは、接合フィルム4に対して、1重量%~25重量%含めるとよい。
【0026】
スズ、銀及び銅は、接合フィルム4に含まれるロウ材材料である。スズ、銀及び銅は、周知のように鉛フリーはんだの形成材料である。つまり、本実施形態においては、接合フィルム4に対しては、鉛フリーはんだがロウ材として含まれている。なお、接合フィルム4に対しては、他のロウ材材料が含まれてもよい。このようなロウ材材料は、上述のドーパント、インジウムを除いた接合フィルム4の残部を形成する。
【0027】
ヒートスプレッダ5は、半導体素子2の表面2a側に位置し、半導体素子2に対して熱的に接続されている。ヒートスプレッダ5は、例えば、銅によって形成されている。このようなヒートスプレッダ5は、例えば不図示のヒートシンクと接続されており、半導体素子2の熱をヒートシンクに伝える。
【0028】
なお、本実施形態では、半導体素子2の表面2a側にはヒートスプレッダ5が配置され、半導体素子2の裏面2b側には金属フレーム3が配置されている。このため、半導体素子2は、表面2a側と裏面2b側との両面から放熱が可能である。ただし、ヒートスプレッダ5を設けず、主として、半導体素子2の裏面2b側から放熱するようにしてもよい。
【0029】
図1に示すように、本実施形態においては、半導体素子2の厚さ方向と沿った方向から見て、金属フレーム3及び接合フィルム4は、半導体素子2と同じ大きさに形成されている。また、半導体素子2の厚さ方向と沿った方向から見て、ヒートスプレッダ5は、半導体素子2よりも小さく形成されている。ヒートスプレッダ5が半導体素子2よりも小さいことで、半導体素子2の表面2aに形成された電極等との接続スペースを確保することできる。
【0030】
このような本実施形態の半導体装置1は、例えば半導体素子2等を覆う不図示のモールドを備える。また、半導体装置1は、モールドから露出した配線を介して、基板に実装される。
【0031】
続いて、
図2~
図8を参照して、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明する。
【0032】
図2~
図7は、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明するための模式図であり、(a)が斜視図であり、(b)が模式的な断面図である。本実施形態の半導体装置1は、単一の半導体ウェーハ10を複数の半導体素子2に分離することで製造される。まず、半導体ウェーハ10の表層10a(
図2参照)に対して、各々の半導体素子2に応じた加工を行う(表面加工工程)。ここでは、例えば、各々の半導体素子2に応じたドーピング処理が行われる。また、各々の半導体素子2に応じた配線層や電極の形成が行われる。また、ここでは、ヒートスプレッダ5を半導体ウェーハ10の表層10aに配置してもよい。このような場合には、例えば、個片化された複数のヒートスプレッダ5が各々の半導体素子2の形成領域に応じて、互いに隙間を空けて配置される。なお、ヒートスプレッダ5の配置は、後述する金属フレーム接合工程の前後に行うようにしてもよい。
【0033】
このように半導体ウェーハ10の表層10aに対する加工が行われた後、
図2に示すように、半導体ウェーハ10の表層10aに保護テープ20を貼付する。なお、
図2においては、半導体ウェーハ10の表層10aを下側にして図示している。続いて、
図3に示すように、半導体ウェーハ10の裏面10bに対して、グラインドラップ処理を行う。グラインドラップ処理は、研削加工とラップ加工とを同時に行う加工である。ただし、研削加工とラップ加工とを分けて行ってもよい。
【0034】
続いて、
図4に示すように、半導体ウェーハ10と金属フレーム3との間に、接合フィルム4を配置する。ここでは、金属フレーム3は、半導体ウェーハ10の裏面10bの全面を覆うことができる大きさに形成されている。本実施形態では、金属フレーム3は、半導体ウェーハ10と同径の円板状に形成されている。また、接合フィルム4も、裏面10bの全面を覆うことができる大きさに形成されている。本実施形態では、接合フィルム4も、半導体ウェーハ10と同径の円板状に形成されている。これらの半導体ウェーハ10と、接合フィルム4と、金属フレーム3とが、
図4に示すように積層される。なお、半導体ウェーハ10と金属フレーム3との間に、接合フィルム4を配置する場合には、保護テープ20を剥がしてよい。また、接合フィルム4は、裏面10bの全面を覆わなくてもよい。接合フィルム4は、裏面10bの少なくとも複数の半導体素子2の形成領域を含む範囲を覆うように設けられる。
【0035】
続いて、
図5に示すように、金属フレーム3を半導体ウェーハ10の裏面10bに接合する(金属フレーム接合工程)。真空接合により、金属フレーム3を半導体ウェーハ10の裏面10bに接合する。ここでは、例えば、酸素濃度が3ppm以下の不活性ガス雰囲気中で半導体ウェーハ10、接合フィルム4及び金属フレーム3を加熱することで、金属フレーム3を半導体ウェーハ10の裏面10bに接合する。このような真空接合では、例えば金属フレーム3が銅である場合には、360℃前後に加熱することで共晶反応を起こして接合フィルム4と金属フレーム3とを接合できる。
【0036】
図8は、真空接合における温度、真空度及び酸素濃度の時間変化の一例を示すグラフである。この図に示すように、真空接合では、酸素濃度を3ppm以下に低下させると共に、温度を360℃程度に昇温する。このような状態を10分程度継続する。これによって、接合フィルム4と金属フレーム3との境界部で共晶反応が起こり、接合フィルム4と金属フレーム3とを接合できる。
【0037】
続いて、
図6に示すように、金属フレーム3が接合された半導体ウェーハ10にフラットリング30を貼り付ける。続いて、
図7に示すように、金属フレーム3が接合された半導体ウェーハ10をダイシングして半導体素子2ごとに分離する(ダイシング工程)。このとき、金属フレーム3及び接合フィルム4も、半導体ウェーハ10と同様に分離する。つまり、金属フレーム3及び接合フィルム4は、半導体素子2に応じて分離されることで個片化される。
【0038】
ダイシング工程では、ダイシングブレードを用いて半導体ウェーハ10を分離してもよい。また、ダイシング工程では、水レーザを用いて半導体ウェーハ10を分離してもよい。この水レーザは、レーザ光を水ジェット内部で全反射させながら案内し、半導体ウェーハ10に照射する装置である。このような水レーザは、レーザ光が円筒状に水ジェットの内部で案内されるため、半導体ウェーハ10の熱影響を抑えつつ深い加工が可能である。このため、金属フレーム3の厚み寸法が大きい場合であっても、水レーザを用いてダイシング加工を行うことが可能である。なお、例えばダイシング工程の後にモールドを形成する。ただし、ダイシング工程の前にモールドを形成し、ダイシング工程でモールドを切断するようにしてもよい。
【0039】
以上のような本実施形態の半導体装置1の製造方法は、単一の半導体ウェーハ10を複数の半導体素子2に分離する製造方法である。この本実施形態の半導体装置1の製造方法は、表面加工工程と、金属フレーム接合工程と、ダイシング工程とを有する。表面加工工程は、半導体ウェーハ10の表面に対して、各々の半導体素子2に応じた加工を行う工程である。また、金属フレーム接合工程は、半導体ウェーハ10の裏面10bの全面に対して、接合フィルム4を介して、金属フレーム3を接合する工程である。ダイシング工程は、金属フレーム3ごと半導体ウェーハ10をダイシングして半導体素子2に応じて分離する工程である。また、本実施形態の半導体装置1の製造方法では、接合フィルム4は、金属フレーム3と共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む。
【0040】
このような本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、接合フィルム4がドーパントを含んでおり、半導体素子2の裏面層にドーパントを添加し、半導体素子2の裏面層の抵抗率を低下させることができる。また、本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、接合フィルム4と金属フレーム3とが共晶反応により接合されている。さらに、本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、接合フィルム4がインジウムを含むことで軟性が向上されており、引け巣やクラックが生じることを抑制しつつ半導体ウェーハ10の裏面10bの全面に金属フレーム3を接合することができる。このような本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、半導体素子2の裏面に何度も真空成膜を行うことなく、半導体素子2と金属フレーム3とを接合することができ、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。さらに、接合フィルム4と金属フレーム3とが共晶反応により接合されているため、半導体素子2と金属フレーム3との接合強度を向上させることができる。
【0041】
なお、上述のような共晶反応を用いた接合とは異なる常温での接合技術は、常温のため合金化及び活性化されず、本実施形態と同様の半導体装置1を製造することはできない。例えば、常温での接合技術としては、真空圧接技術が挙げられる。この真空圧接技術は、常温の場合は、合金化及び活性化されない。真空圧接技術は、高温の場合には合金化されるが共晶を目的としていないために活性化されない。ただし、予め半導体ウェーハ10を活性化しておくことで、真空圧接技術を用いることも可能である。本発明は、このように、予め活性化した半導体ウェーハ10を用いることも可能である。
【0042】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法は、金属フレーム接合工程では、真空接合によって金属フレーム3を半導体ウェーハ10の裏面10bに接合する。このような本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、360℃前後の低温にて金属フレーム3と接合フィルム4とを共晶反応により接合することができる。したがって、半導体素子2に接合時の熱の影響が生じることを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法では、ドーパントとして、第13族元素あるいは第15族元素のものを用いる。具体的には、ドーパントとして、第3周期あるいは第5周期に属する砒素、アンチモン、ボロン及びアルミニウムのいずれかを用いることができる。このため、半導体素子2に求められる特性を付与することができる。
【0044】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法では、半導体ウェーハ10を、シリコン、炭化ケイ素及び窒化ガリウムのいずれかの半導体基板から形成することができる。このような本実施形態の半導体装置1の製造方法によれば、半導体装置1を例えばパワー半導体として用いることができる。
【0045】
また、本実施形態の半導体装置1の製造方法では、ダイシング工程は、レーザ光を水ジェット内部で全反射させながら案内する水レーザを用いて半導体ウェーハ10をダイシングすることができる。水レーザを用いることで、半導体ウェーハ10の熱影響を抑えることができる。また、水レーザを用いることで、金属フレーム3の厚さ寸法を大きくできる。
【0046】
また、本実施形態の半導体装置1は、表面に加工が施された半導体素子2と、半導体素子2の裏面に接合フィルム4を介して接合された金属フレーム3とを備える。また、接合フィルム4は、金属フレーム3と共晶反応により接合され、インジウム、スズ、銀、銅、及び、第13族元素あるいは第15族元素のドーパントを含む。
【0047】
このような本実施形態の半導体装置1によれば、接合フィルム4がドーパントを含んでおり、半導体素子2の裏面層にドーパントを添加し、半導体素子2の裏面層の抵抗率を低下させることができる。また、本実施形態の半導体装置1によれば、接合フィルム4と金属フレーム3とが共晶反応により接合されている。さらに、本実施形態の半導体装置1によれば、接合フィルム4がインジウムを含むことで軟性が向上されており、引け巣やクラックが生じることを抑制しつつ半導体ウェーハ10の裏面10bの全面に金属フレーム3を接合することができる。したがって、本実施形態の半導体装置1によれば、半導体素子2の裏面に何度も真空成膜を行うことなく、半導体素子2と金属フレーム3とを接合することができ、半導体装置1の製造工程を簡略化することができる。さらに、接合フィルム4と金属フレーム3とが共晶反応により接合されているため、半導体素子2と金属フレーム3との接合強度を向上させることができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0049】
図9は、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明するための模式図であり、(a)が斜視図であり、(b)が模式的な断面図である。この図に示すように、半導体ウェーハ10と金属フレーム3との間に、接合フィルム4を配置する場合に、本実施形態では、接合フィルム4が金属フレーム3の全面に付着されている。例えば、接合フィルム4は、接着剤によって金属フレーム3の全面に付着されている。このように、接合フィルム4を金属フレーム3に貼付した状態で、半導体ウェーハ10と金属フレーム3との間に、接合フィルム4を配置してもよい。
【0050】
このような本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、接合フィルム4が金属フレーム3に予め付着されている。このため、接合フィルム4を容易に半導体素子2と金属フレーム3との間に配置することができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、真空接合によって金属フレーム3と接合フィルム4とを共晶反応させる構成について説明した。しかしながら、半導体素子2の耐熱温度を超えない温度環境にて金属フレーム3と接合フィルム4とを共晶反応させる方法であれば、真空接合に限られるものではない。
【0053】
また、上記実施形態においては、半導体ウェーハの裏面10bに対して金属膜が設けずに半導体装置1を製造する方法に本発明を適用した例について説明した。しかしながら、本発明は、半導体ウェーハの裏面10bに対して、別途金属膜を設ける半導体装置の製造方法にも適用できる。このような場合には、半導体装置1は、半導体素子2と接合フィルム4との間に介装される金属膜を有する。
【0054】
また、本発明をフラットリングやダイシングフレームを用いた半導体装置の製造方法に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1……半導体装置、2……半導体素子、2a……表面、2b……裏面、3……金属フレーム、4……接合フィルム、5……ヒートスプレッダ、10……半導体ウェーハ、10a……表層、10b……裏面、20……保護テープ、30……フラットリング