(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175241
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】水電解システム、水電解システムの制御方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20241211BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241211BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20241211BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20241211BHJP
C25B 15/027 20210101ALI20241211BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/02
C25B15/021
C25B15/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092855
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】國富 誠一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 征治
(72)【発明者】
【氏名】北村 伸之
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB31
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】 水電解システムにおいて、水電解装置の温度上昇に要する時間を短縮する技術を提供する。
【解決手段】 水電解システムは、水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置の陽極側から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムであって、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置の陽極側から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
を備える、
水電解システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水電解システムであって、
さらに、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記第1熱交換器に流入する水の流量、および前記第2熱交換器に流入する水の流量を、それぞれ制御可能な流量制御部と、
を備える、
水電解システム。
【請求項3】
請求項2に記載の水電解システムであって、
さらに、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置の温度値を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記流量制御部は、
前記電気関係値を変数とし、前記水電解装置の目標温度を示す目標温度線を有し、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させ、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度より高い場合は、前記第2熱交換器への通水量を増加させる、
水電解システム。
【請求項4】
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムの制御方法であって、
前記水電解システムは、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置から排出される前記流体の温度を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記水電解システムの制御方法は、
前記温度計測部により計測された温度が、前記取得部により取得された電気関係値に対する目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させ、
前記温度計測部により計測された温度が前記目標温度より高い場合は、前記第2熱交換器への通水量を増加させる、
水電解システムの制御方法。
【請求項5】
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムを制御するコンピュータプログラムであって、
前記水電解システムは、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置から排出される流体の温度値を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記水電解システムの制御プログラムは、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させる機能と、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度より高い場合は、第2熱交換器への通水量を増加させる機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水の電気分解によって水素と酸素を生成する水電解装置を有する水電解システムが知られている。水の電気分解の反応効率は温度が高いほど高いため、水電解装置の温度を高温に維持する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。以下、水の電気分解を、「水電解」ともいう。
【0003】
特許文献1には、純水のイオン(不純物)濃度を増加させる要因となる陰極側に排出される水を廃棄することによって純水のイオン濃度を低下させつつ、廃棄する水の熱を利用して熱交換器により昇温された純粋を陽極側の気液分離器に供給することにより、陽極側の気液分離器から水電解装置に供給される純水の温度を高める技術が提案されている。
【0004】
特許文献2には、水電解装置から生じる排熱により温度が上昇された空気を、希釈用エアとして陽極側の気液分離器の気相に供給することにより、水電解装置に供給する純水の温度を上昇させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-152378号公報
【特許文献2】特開2011-208259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術における水電解装置の陰極側から廃棄する水の量は、水電解装置に供給する水の量に比べると極めて少ないため、熱交換により得られる温度上昇効果は限定的である。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術は、水電解装置で発生する排熱を利用する技術であるが、水電解装置で発生する熱は、陽極側から気液分離器へと戻る水がその大部分を顕熱として持っており、水電解装置の筐体から外部へ放出される熱が小さいため、水電解装置に供給する純水の温度上昇が小さい。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、水電解システムにおいて、水電解装置の温度上昇に要する時間を短縮する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本発明の一形態によれば、水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムが提供される。この水電解システムは、前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置の陽極側から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、を備える。
【0011】
この形態の水電解システムによれば、第1熱交換器において、水電解装置の陽極側から排出される高温の流体と、水タンクから水電解装置に供給される水とが熱交換することにより、水電解装置に供給される水が昇温される。昇温された水が水電解装置に供給されるため、水電解装置を昇温させることができ、水電解の反応効率を向上させることができる。
【0012】
第1熱交換器が、水タンクから水電解装置へと水が流れる水供給流路上に設けられているため、水タンクに貯留されている水全体を温めることなく、水電解装置を昇温することができ、水電解装置を素早く温度上昇させることができる。換言すると、水電解装置の温度上昇に要する時間を短縮することができる。
【0013】
(2)上記形態の水電解システムであって、さらに、前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、前記第1熱交換器に流入する水の流量、および前記第2熱交換器に流入する水の流量を、それぞれ制御可能な流量制御部と、を備えてもよい。
【0014】
水電解装置の温度が高すぎると、電解質膜の溶出、電極の金属汚染等、水電解装置の劣化速度が速くなる。この問題に対し、この形態の水電解システムによれば、水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器を備えるため、水電解装置の温度が高くなりすぎた場合等に、第2熱交換器により冷却された水を水電解装置に供給することにより、水電解装置を冷却することができる。第1熱交換器と並列に設けられた第2熱交換器によって、水電解装置に供給される水を冷却することができるため、水タンクに貯留されている水を冷却する場合と比較して短時間で水電解装置を冷却することができる。
【0015】
(3)上記形態の水電解システムであって、さらに、前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、前記水電解装置の温度値を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、前記流量制御部は、前記電気関係値を変数とし、前記水電解装置の目標温度を示す目標温度線を有し、前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させ、前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度より高い場合は、前記第2熱交換器への通水量を増加させるを行ってもよい。
【0016】
このようにすると、水電解装置への入力電流または出力に応じて、水電解装置に供給される水の温度を、適切な温度になるように制御することができる。すなわち、水電解装置の温度を安定的に適切な温度に維持することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、水電解システムの制御方法、水電解システムの制御をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを配布するためのサーバ装置、そのコンピュータプログラムを記憶した一時的でない記憶媒体等などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】第1比較例の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
【
図3】水電解装置の温度の経時変化を示す図である。
【
図4】陽極側気液分離部の温度の経時変化を示す図である。
【
図5】第2比較例の水電解システムの概略構成を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態の水電解システムの構成を概念的に示す説明図である。
【
図7】第3実施形態の水電解システムの構成を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の水電解システム100の概略構成を示す説明図である。水電解システム100は、水電解装置10と、陽極側気液分離部20と、陰極側気液分離部24と、第1熱交換器30と、制御部40と、を備える。
【0020】
本実施形態の水電解システム100では、水電解装置10において水を電気分解することにより水素を生成する。図示するように、水電解システム100は、電源から供給される電力により水電解を行う。電源は、系統電力であってもよいし、太陽光、水力、風力、波力、バイオマス、地熱などを利用した再生可能エネルギー由来の電源(以下、「再生可能エネルギー源」とも呼ぶ)であってもよい。再生可能エネルギーから得た電力を用いれば、クリーンな水素を合成することが可能である。電源は、制御部40からの指示に従った電流を、水電解装置10に供給する。
【0021】
水電解装置10は、PEM(Polymer Electrolyte Membrane)型水電解装置であって、膜電極接合体(以下、「MEA」という)を有する。MEAは、水素イオンと水を通すことが可能な電解質膜の両面に、水の電気分解によって生成された酸素イオンから酸素を生成する陽極(アノード)と、水素イオンから水素を生成する陰極(カソード)と、が接合されたものである。陽極には、溝や多孔質部材の細孔などの陽極側流路が形成されており、陰極には、陽極側流路と同様に、溝や多孔質部材の細孔などの陰極側流路が形成されている。
図1では、水電解装置10として複数の水電解セルが直列に積層された水電解スタックを表示しているが、1枚の水電解セルであってもよい。なお、水電解装置は、PEM型水電解装置に限定されず、アルカリ型水電解装置等、他の型の水電解装置を用いることができる。
【0022】
水電解装置10では、以下の反応により水素(H2)と酸素(O2)が生成される。
(陽極)H2O→2H++1/2O2+2e-
(陰極)2H++2e-→H2
【0023】
原料となる水は陽極側から供給され、未反応の水の大部分は陽極で発生した酸素と共に陽極側から排出される。一部の水は陽極と陰極とを隔てる高分子膜を透過して陰極側から水素と共に排出される。また、水電解では発熱を伴うため水電解装置10から排出される水の温度は、水電解装置10に供給される水の温度よりも増加する。
【0024】
陽極側気液分離部20は、水電解装置10の陽極と陽極側排出流路81を介して接続されている。水電解装置10の陽極において生成された酸素と、電気分解されなかった水とを含む流体は、陽極側排出流路81を介して陽極側気液分離部20に流入する。陽極側気液分離部20において分離された酸素は、酸素流路88を介して外部に排出され、水は陽極側気液分離部20に貯留される。本実施形態における陽極側気液分離部20を、「水タンク」とも呼ぶ。
【0025】
陽極側気液分離部20はまた、水供給流路82を介して水電解装置10と接続されている。陽極側気液分離部20には、上述の通り、水電解装置10から陽極側排出流路81を介して流入した流体から気体(主に酸素)が分離された水が貯留されている。また、陽極側気液分離部20には、外部水供給流路89を介して、適時、外部から水が供給される。陽極側気液分離部20に貯留された水は、水供給流路82を介して水電解装置10に供給される。本実施形態の水電解システム100では、水素と酸素を効率的にかつ高純度で生成するため、不純物が少ない純度が高められた純水に対して電気分解が行われるが、電気分解される水の純度は、これに限定されない。
【0026】
水電解では水を消費するため、陽極側気液分離部20の貯水量が低下したら、外部から外部水供給流路89を介して水が供給される。外部から供給される水の温度は低いため、外部から水が供給されると、陽極側気液分離部20内の水の温度が低下する。
【0027】
水供給流路82にはポンプ22が設けられている。ポンプ22は、制御部40からの指示に従って、陽極側気液分離部20から水を水電解装置10へ供給する。
【0028】
第1熱交換器30は、水供給流路82のポンプ22と水電解装置10との間に設けられている。換言すると、第1熱交換器30は、水供給流路82のポンプ22より下流に設けられている。第1熱交換器30は、水電解装置10の陽極側から排出され陽極側排出流路81を流れる流体(酸素と水)を熱媒体として用い、水供給流路82を流れる水と陽極側排出流路81を流れる流体とを熱交換させる。
【0029】
水電解では水素の生成時に発熱を伴う。そのため、水電解装置10の陽極から排出され陽極側排出流路81を流れる流体は、例えば、60℃~70℃である。一方、陽極側気液分離部20から送出され水供給流路82を流れる水は30℃~40℃である。第1熱交換器30によって、水供給流路82を流れる水と陽極側排出流路81を流れる流体とが熱交換するため、水電解装置10に供給される水を昇温させることができる。図示するように、水電解装置10の陽極側出口近傍において、水電解装置10に供給する水と水電解装置10から排出された流体とが熱交換を行う。そのため、水電解装置10において発生した熱を有効に利用することができる。
【0030】
水電解装置10の陽極側から排出された高温の流体は、第1熱交換器30を通って水電解装置10に供給される水と熱交換することにより降温されて、陽極側気液分離部20に流入する。
【0031】
陰極側気液分離部24は、陰極側流路91を介して水電解装置10の陰極側と接続されている。水電解装置10の陰極において生成された水素と、電気分解されなかった水とを含む流体は、陰極側流路91を介して陰極側気液分離部24に流入する。陰極側気液分離部24において分離された水素は、水素流路92を介して外部に排出される。例えば、水素流路92に、図示せざる水素タンクが接続され、当該水素タンクに水電解装置10で生成された水素が貯留される。さらに、例えば、水素流路92上に脱水器が配置されてもよい。
【0032】
陰極側気液分離部24において水素が分離された水は陰極側気液分離部24に貯留される。陰極側気液分離部24に貯留された水は、水電解装置10での電気分解のために、陽極側気液分離部20に供給されてもよい。
【0033】
制御部40は、ROM、RAM、および、CPUを含んで構成されるコンピュータであり、水電解システム100全体の制御を行う。制御部40は、要求された水素の生成量(以下、要求水素生成量とも呼ぶ)に対応する水を水電解装置10に供給させるように、ポンプ22を制御し、供給された水を電気分解するのに要する電流を供給させるように、電源を制御する。
【0034】
本実施形態の水電解システム100の効果について、第1熱交換器30を備えない水電解システム100P1(第1比較例)と比較して説明する。
図2は、第1比較例の水電解システム100P1の概略構成を示す説明図である。第1比較例の水電解システム100P1は、上述の通り、第1熱交換器30を備えない点が第1実施形態の水電解システム100と異なる。以下の説明において、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、先行する説明を参照する。
【0035】
図3は、水電解装置10の温度の経時変化を示す図である。
図4は、陽極側気液分離部20の温度の経時変化を示す図である。
図3、4において、第1実施形態の水電解システム100を太線で示し、第1比較例の水電解システム100P1を細線で示している。
図3に示す水電解装置10の温度は、水電解装置10の陽極側出口の温度を用いている。
図4に示す陽極側気液分離部20の温度は、陽極側気液分離部20内に貯留されている水の温度を用いている。水電解装置10の温度としては、陰極側出口の温度を用いてもよい。但し、陰極側はガス(水素)が多く水が少ないため、流れが複雑で、温度の正確な計測が困難である。陽極側は水が多く、温度を正確に測ることができるため、好適である。
【0036】
図3、4の実験条件は下記の通りである。
・水電解装置10に流入する水の流量:12L/min
・水素生成流量:57L/min
・酸素生成流量:28.5L/min
・電解電力:15kW
【0037】
第1実施形態の水電解システム100では、第1熱交換器30を有するため、
図3に示すように、第1比較例の水電解システム100P1と比べて、水電解装置10の昇温が速く、到達温度も高くなった。一方、第1実施形態の水電解システム100では、水電解装置10から陽極側気液分離部20へ流入する流体の熱を用いて水電解装置10に供給する水を昇温させるため、その分、陽極側気液分離部20に流入する流体の温度が低下し、
図4に示すように、第1比較例より第1実施形態の陽極側気液分離部20の温度が低くなった。
【0038】
また、水電解では水を消費するため、陽極側気液分離部20の貯水量が低下したら、外部から水が供給される。
図4において陽極側気液分離部20の温度が急降下する部分は、外部から水が投入されたことに起因するものである。このように陽極側気液分離部20の温度が急降下した場合、
図3に示すように、第1比較例の水電解システム100P1では、水電解装置10の温度も急降下してしまう。これに対して、第1実施形態の水電解システム100の場合は、陽極側気液分離部20から送出される水を第1熱交換器30によって加熱しているため、陽極側気液分離部20の水温の影響を受けにくくなり、温度変化が小さく、安定的な温度維持をしやすくなる。
【0039】
本実施形態の水電解システム100によれば、水電解装置10に供給される水が流れる水供給流路82上に第1熱交換器30が設けられているため、水が水電解装置10に送られる前に昇温させることができる。そのため、陽極側気液分離部20の水温が低い場合でも、陽極側気液分離部20内の貯留水全量を昇温することなく、水電解装置10を昇温させることができる。
【0040】
水電解は発熱を伴うため、水電解装置10から排出される水の温度は、水電解装置10に供給される水の温度よりも高くなる。水電解装置10が高温であるほど反応効率が高い。本実施形態の水電解システム100では、水電解で生じる発熱を利用して、水電解装置10を素早く昇温させることができるため、水電解装置10の反応効率を向上させることができる。
【0041】
次に、本実施形態の水電解システム100の効果について、第1熱交換器30を備えない他の水電解システム100P2(第2比較例)と比較して説明する。
図5は、第2比較例の水電解システム100P2の概略構成を示す説明図である。第2比較例の水電解システム100P2は、上述の通り、第1熱交換器30を備えない。そして、第2比較例の100P2は、水電解装置10に供給される水が貯留された水タンク26を陽極側気液分離部20Pと別個に備える。そのため陽極側気液分離部20Pには、外部から水が供給されない。水電解システム100P2では、水電解装置10から排出され陽極側気液分離部20Pにおいて酸素が分離された水が、水タンク26から送出される水に追加されて水電解装置10に供給される。これにより、水電解装置10に供給される水の温度を上昇させることができる。
【0042】
しかしながら、第2比較例の水電解システム100P2では、流量を一定にすることが困難である。陽極側気液分離部20Pは水封されており(水側にガスが入らない)、かつ水が外に漏れださないことが必須であるため、液面センサ等で水の量を管理している。陽極側気液分離部20Pでは、水量が所定の閾値を超えたら排水し、閾値以下になったら排水しないという動作になるため、水電解装置10に供給する水の流量、温度を保つような水電解システム100P2の運用は極めて困難である。
【0043】
これに対し、本実施形態の水電解システム100では、水電解装置10から排出される流体の熱を利用して、陽極側気液分離部20から供給される水を温めているため、水電解装置10に供給される水の流量は、ポンプ22によって送り出される流量のままである。そのため、本実施形態の水電解システム100では、水電解装置10に供給される水の流量、および温度の管理を容易にすることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の水電解システム100によれば、第1熱交換器30において、水電解装置10の陽極側から排出される高温の流体と、水電解装置10に供給される水とが熱交換することにより、水電解装置10に供給される水が昇温される。昇温された水が水電解装置10に供給されるため、水電解装置10を昇温させることができ、水電解の反応効率を向上させることができる。すなわち、水電解で生じる発熱を利用して装置全体を素早く昇温させることができる。
【0045】
第1熱交換器30が、陽極側気液分離部20から水電解装置10へと水が流れる水供給流路82上に設けられているため、陽極側気液分離部20に貯留されている水全体を温めることなく、水電解装置10を昇温することができ、水電解装置10を素早く温度上昇させることができる。換言すると、水電解装置10の温度上昇に要する時間を短縮することができる。
【0046】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の水電解システム100Aの構成を概念的に示す説明図である。第2実施形態の水電解システム100Aは、第1実施形態の水電解システム100の構成に加え、第1熱交換器30と並列に設けられ、陽極側気液分離部20から水電解装置10に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器50を備える。
図6に示す例では、冷媒として冷却水を用いているが、ガス、オイル等種々の冷媒を用いることができる。
【0047】
図示するように、本実施形態の水電解システム100Aでは、水供給流路82が第1流路821と第2流路822とに分岐している。第1熱交換器30が第1流路821に設けられ、第2熱交換器50が第2流路822上に設けられることにより、第1熱交換器30と第2熱交換器50とは並列に設けられている。第1流路821における第1熱交換器30の前段(上流側)には第1流量制御弁32が設けられており、第2流路822における第2熱交換器50の前段(上流側)には第2流量制御弁52が設けられている。第1流量制御弁32、および第2流量制御弁52としては、マスフローコントローラ等を用いることができる。本実施形態における第1流量制御弁32および第2流量制御弁52を、「流量制御部」とも呼ぶ。
【0048】
第1流量制御弁32および第2流量制御弁52は、例えば、経過時間に応じて流量を切り替えるように予めプログラムされていてもよい。例えば、PID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)などで第1流量制御弁32および第2流量制御弁52のバルブ開度を適切に管理することで、水電解装置10に供給される水の加熱(第1熱交換器30)、冷却(第2熱交換器50)を適切に行い、狙いの温度に短期間で移行し、その温度を維持することが可能になる。
【0049】
以上説明した通り、本実施形態の水電解システム100Aによれば、水電解装置10から排出される高温の流体と熱交換させる第1熱交換器30と、冷媒と熱交換させる第2熱交換器50とを備えるため、水電解装置10に供給する水を温めたり、冷やしたりすることができる。そのため、水電解装置10に供給する水を狙いの温度に移行させることができ、その温度を維持することが可能になる。
【0050】
水電解装置10の温度が高いほど水電解の反応効率は良いものの、水電解装置10が過剰に高温になると水電解装置10の劣化に繋がる。上述の通り、本実施形態の水電解システム100Aによれば、水電解装置10に供給する水を狙いの温度に移行させることができ、その温度を維持することが可能になるため、水電解装置10の劣化を抑制しつつ、水電解の反応効率を向上させることができる。
【0051】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の水電解システム100Bの構成を概念的に示す説明図である。
第3実施形態の水電解システム100Bは、第2実施形態の水電解システム100Aの構成に加え、水電解装置10への入力電流の電流値を測定する電流計54と、水電解装置10の陽極側から排出される流体(酸素と水を含む)の温度を計測する温度センサ56と、を備える。電流計54と温度センサ56とは、同一のタイミングで、換言すると、同期して、それぞれ電流値および温度値を取得する。本実施形態における電流計54を「取得部」とも呼び、温度センサ56を「温度計測部」とも呼ぶ。本実施形態では、水電解装置10の温度として、水電解装置10の陽極側から排出される流体の温度を用いている。
【0052】
また、第3実施形態の水電解システム100Bにおける制御部40Bは、機能的に流量制御部42を備える。流量制御部42は、水電解装置10への入力電流を変数とする上記流体の目標温度を示す目標温度線44を有する。流量制御部42は、電流計54および温度センサ56から入力された電流値および温度値と、目標温度線44とに基づいて、第1流量制御弁32および第2流量制御弁52を制御する。流量制御部42が行う制御は後述する。本実実施形態の流量制御部42と第1流量制御弁32Bと第2流量制御弁52Bとを合わせて「流量制御部」とも呼ぶ。
【0053】
図8は、目標温度線44を示す図である。目標温度線44は、水電解装置10から排出される流体の目標温度を、水電解装置10に入力される電流に対応させて示したものである。予め、水電解装置10の耐久性評価を行い、長期運転を実現できる許容ラインを目標温度線44として定めることができる。
【0054】
図9は、流量制御部42における流量制御のフローチャートである。
流量制御部42は、電流計54から電流値を取得し、温度センサ56から温度値を取得する(ステップS10)。流量制御部42は、目標温度線44を参照して、取得した温度値が、取得した電流値における目標温度より高いか否かを判断する(ステップS20)。
【0055】
流量制御部42は、取得した温度値が目標温度線44における目標温度より高いと判断した場合は(ステップS20においてYES)、第1流量制御弁32と第2流量制御弁52を制御して、第2熱交換器50を流れる水の流量(すなわち、冷却側流量)を増加させる(ステップS30)。これにより、水電解装置10に供給する水の温度を低下させることができる。上述の通り、水電解装置10に供給される水の流量は、要求水素生成量に応じて決定されており、制御部40Bがポンプ22を制御することにより要求に応じた流量の水をポンプ22により送出しているため、流量制御部42は、第2熱交換器50を流れる水の流量を増加させると共に、第1熱交換器30を流れる水の流量が低下するように制御する。すなわち、ステップS30では、流量制御部42は加熱側流量を低下させるとも言える。
【0056】
流量制御部42は、取得した温度値が目標温度線44における目標温度以下と判断した場合は(ステップS20においてNO)、第1流量制御弁32と第2流量制御弁52を制御して、第1熱交換器30を流れる水の流量(加熱側流量)を増加させる(ステップS40)。これにより、水電解装置10に供給する水の温度を上昇させることができる。制御部40Bは、第1熱交換器30を流れる水の流量が増加させる共に、ステップS30と同様に、第2熱交換器50を流れる水の流量が低下するように制御する。すなわち、ステップS40では、流量制御部42は冷却側流量を低下させるとも言える。
【0057】
流量制御部42は、終了条件を満たすまで、上記ステップS10~S40を繰り返す。ここで、終了条件とは、例えば、水電解装置10の運転終了の指示が入力されたこと等である。
【0058】
本実施形態で説明した処理を実現するプログラムは、プログラム提供者側から通信ネットワーク及び通信I/F部を介して制御部40Bに格納されている。また、上記実施形態で説明した処理を実現するプログラムは、市販され、流通している可搬型記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、この可搬型記憶媒体は外付け又は内蔵の読取装置にセットされて、制御部40Bによってそのプログラムが読み出されて、実行されてもよい。可搬型記憶媒体としてはCD-ROM、DVD-ROM、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、USBメモリ装置など様々な形式の記憶媒体を使用することができる。このような記憶媒体に格納されたプログラムが読取装置によって読み取られる。
【0059】
図8に示すように、本実施形態の水電解システム100Bでは、温度センサ56によって計測された温度値が、電流計54によって計測された電流値における目標温度より高い場合は冷却側(第2熱交換器50)への流量が増加される。一方、温度センサ56によって計測された温度値が、電流計54によって計測された電流値における目標温度以下の場合は加熱側(第1熱交換器30)への流量が増加される。このとき計測された温度値が目標温度に漸近するようにPID制御等を行ってもよい。
【0060】
本実施形態の水電解システム100Bによれば、水電解装置10から排出される流体の温度(水電解装置10の温度に対応する)に基づいて、水電解装置10に流入する電流に対して適した水電解装置10の温度(目標温度)になるように、流量制御部42によって、冷却側(第2熱交換器50)への流量および加熱側(第1熱交換器30)への流量が制御される。そのため、本実施形態の水電解システム100Bによれば、第2実施形態の水電解システム100Aよりさらに、水電解装置10の温度を適切に制御することができる。その結果、水電解装置10の劣化をさらに抑制しつつ、水電解の反応効率をさらに向上させることができる。
【0061】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0062】
・第3実施形態では、取得部として電流計54を例示したが、電力計であってもよい。また、電流計54に加え、電圧計を備え、制御部40Bに入力された電流値と電圧値とを用いて制御部40Bが出力値を算出してもよい。また、外部から制御部40Bに入力される司令値(水電解装置10に入力する電流値、出力値)を、電気関係値として用いてもよい。司令値を用いる場合、制御部40Bが取得部として機能する。ただし、現実において指令と実測は必ずしも一致はしないため、実測値を用いた方が好ましい。
【0063】
・第3実施形態では、電気関係値として電流値を用い、目標温度線44が電流値に対する目標温度を表す例を示したが、電気関係値として出力を用い、目標温度線が出力値に対する目標温度を表すものにしてもよい。このようにしても同様の効果を得ることができる。
【0064】
・第3実施形態において、水電解装置10の温度として、水電解装置10の陽極側から排出される流体の温度を用いたが、例えば、水電解装置10の温度として、水電解装置10の陰極側から排出される流体の温度を用いてもよいし、水電解装置10のセルの温度を用いてもよい。但し、陰極側はガス(水素)が多く水が少ないため、流れが複雑で、温度の正確な計測が困難である。陽極側は水が多く、温度を正確に測ることができるため、好適である。
【0065】
・第2実施形態において、第1流量制御弁32と第2流量制御弁52とが、それぞれ、第1熱交換器30を流れる水の流量と、第2熱交換器50を流れる水の流量とを制御する例を示したが、例えば、制御部40により第1流量制御弁32と第2流量制御弁52の開度が制御される構成にしてもよい。
【0066】
・上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0067】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0068】
本開示は、以下の適用例としても実現することが可能である。
[適用例1]
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムであって、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置の陽極側から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
を備える、
水電解システム。
[適用例2]
適用例1に記載の水電解システムであって、
さらに、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記第1熱交換器に流入する水の流量、および前記第2熱交換器に流入する水の流量を、それぞれ制御可能な流量制御部と、
を備える、
水電解システム。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の水電解システムであって、
さらに、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置の温度値を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記流量制御部は、
前記電気関係値を変数とし、前記水電解装置の目標温度を示す目標温度線を有し、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させ、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度より高い場合は、前記第2熱交換器への通水量を増加させる、
水電解システム。
[適用例4]
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムの制御方法であって、
前記水電解システムは、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置から排出される前記流体の温度を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記水電解システムの制御方法は、
前記温度計測部により計測された温度が、前記取得部により取得された電気関係値に対する目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させ、
前記温度計測部により計測された温度が前記目標温度より高い場合は、前記第2熱交換器への通水量を増加させる、
水電解システムの制御方法。
[適用例5]
水を電気分解することで水素を生成する水電解装置を備える水電解システムを制御するコンピュータプログラムであって、
前記水電解システムは、
前記水電解装置に供給される水が貯留された水タンクと、
前記水タンクから前記水電解装置に供給される水が流れる水供給流路上に設けられ、前記水電解装置から排出される酸素と水とを含む流体と、前記水電解装置に供給される水とを熱交換させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器と並列に設けられ、前記水電解装置に供給される水と冷媒とを熱交換させる第2熱交換器と、
前記水電解装置への入力電流の電流値および前記水電解装置の出力値のいずれか一方である電気関係値を取得する取得部と、
前記水電解装置から排出される流体の温度値を、前記取得部と同期して計測する温度計測部と、を備え、
前記水電解システムの制御プログラムは、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度以下の場合は、前記第1熱交換器への通水量を増加させる機能と、
前記温度計測部により計測された前記温度値が、同期して取得された前記電気関係値に対する前記目標温度線における目標温度より高い場合は、第2熱交換器への通水量を増加させる機能と、
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0069】
10…水電解装置
20、20P…陽極側気液分離部
22…ポンプ
24…陰極側気液分離部
26…水タンク
30…第1熱交換器
32、32B…第1流量制御弁
40、40B…制御部
42…流量制御部
44…目標温度線
50…第2熱交換器
52、52B…第2流量制御弁
54…電流計
56…温度センサ
81…陽極側排出流路
82…水供給流路
88…酸素流路
89…外部水供給流路
91…陰極側流路
92…水素流路
100、100A、100B…水電解システム
100P1、100P2…水電解システム
821…第1流路
822…第2流路