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特開2024-175255樹脂押出成形物、樹脂押出成形物の製造方法
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  • 特開-樹脂押出成形物、樹脂押出成形物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175255
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】樹脂押出成形物、樹脂押出成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20241211BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEV
C08L27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092890
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 司
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA22
4F070AB26
4F070AC16
4F070AC43
4F070AC72
4F070AE01
4F070AE02
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC05
4J002AB00Z
4J002BD03W
4J002BD03X
4J002BD03Y
4J002DE236
4J002FD027
4J002FD02U
4J002FD048
4J002FD068
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】低コストで容易に製造可能な、塩ビ壁紙を含む樹脂押出成形物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル樹脂、紙、炭酸カルシウムを含有する塩ビ壁紙からなるクロス材と、それぞれにポリ塩化ビニル樹脂を含む第1樹脂材と第2樹脂材とを混合した吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の再生成形材料から形成されてなることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂、紙、炭酸カルシウムを含有する塩ビ壁紙からなるクロス材と、それぞれにポリ塩化ビニル樹脂を含む第1樹脂材と第2樹脂材とを混合した吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の再生成形材料から形成されてなることを特徴とする樹脂押出成形物。
【請求項2】
前記第1樹脂材に含まれるポリ塩化ビニル樹脂は、リサイクル樹脂またはバージン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂押出成形物。
【請求項3】
前記クロス材は、全体を100質量%として、ポリ塩化ビニル樹脂を25~45質量%、紙を15~35質量%、炭酸カルシウムを10~50質量%、可塑剤を10~30質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂押出成形物。
【請求項4】
前記第2樹脂材に含まれるポリ塩化ビニル樹脂は、更に耐衝撃改良剤、加工助剤、光安定剤、熱安定剤のうち、少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂押出成形物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の樹脂押出成形物の製造方法であって、
破砕した前記クロス材と、粒子状の前記第1樹脂材とを混合して再生原料を形成する再生原料形成工程と、
前記再生原料を吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲になるように調整する吸水率調整工程と、
前記再生原料に前記第2樹脂材を混合して再生成形材料を形成する再生成形材料形成工程と、
前記再生成形材料を押出成形によって成形して、前記樹脂押出成形物を得る成形工程と、を含むことを特徴とする樹脂押出成形物の製造方法。
【請求項6】
前記再生成形材料に含まれる前記クロス材と、前記第1樹脂材および前記第2樹脂材の合計との比率は、質量比で5:5~2:8の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の樹脂押出成形物の製造方法。
【請求項7】
前記第1樹脂材は軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含み、前記第2樹脂材は硬質ポリ塩化ビニル樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載の樹脂押出成形物の製造方法。
【請求項8】
前記再生原料は、粒子状に造粒されることを特徴とする請求項5に記載の樹脂押出成形物の製造方法。
【請求項9】
前記第2樹脂材は前記再生成形材料形成工程に用いる前に、予め吸水率が調整されることを特徴とする請求項5に記載の樹脂押出成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルされたクロス材を用いた樹脂押出成形物、および樹脂押出成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の内装材として広く用いられている壁紙は、樹脂材料と、紙(セルロース)と、炭酸カルシウム粉末とを含むものから構成されている。このうち、樹脂材料として塩化ビニル樹脂を用いた壁紙(以下、塩ビ壁紙と称する場合がある)は、紙層と、塩化ビニル層とが固着したシート材であり、変色防止のために炭酸カルシウム粉末を含んでいる。
【0003】
こうした塩ビ壁紙のうち、家屋の改装や解体等で排出されるクロス廃材や、塩ビ壁紙の製造、加工時に発生するクロス端材は、紙層と塩化ビニル層との分離が困難であるために、従来から纏めて埋め立て処分や焼却処分などが行われてきた。しかしながら、環境保全の観点から、回収した塩ビ壁紙をリサイクル原料として用いることが考えられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、塩ビ壁紙と樹脂体との混錬体を用いて、壁紙を含む成形物を製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、塩ビ壁紙と木片と塩化ビニル樹脂とを含む複合合成樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7190684号公報
【特許文献2】特開2001-342315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された壁紙を含む成形物を製造方法では、粉砕した塩ビ壁紙を投入した回転装置を特定の条件で稼働させて綿状粉砕体を形成し、この綿状粉砕体と樹脂体とを混合して成形することで成形物を得るなど、工程が複雑で、処理コストが高いという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示された複合合成樹脂組成物は、原料として塩ビ壁紙と樹脂体の他に、木片が必要であるため、安価な木質廃材などが得られない場合、製造コストが高く、また、木材の種類によっては得られた複合合成樹脂組成物が重くなるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストで容易に製造可能な、塩ビ壁紙を含む樹脂押出成形物、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂押出成形物は、以下の構成を有する。
(1)本発明の第1態様に係る樹脂押出成形物は、ポリ塩化ビニル樹脂、紙、炭酸カルシウムを含有する塩ビ壁紙からなるクロス材と、それぞれにポリ塩化ビニル樹脂を含む第1樹脂材と第2樹脂材とを混合した吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の再生成形材料から形成されてなることを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の第2態様に係る樹脂押出成形物は、第1態様において、前記第1樹脂材に含まれるポリ塩化ビニル樹脂は、リサイクル樹脂またはバージン樹脂であることを特徴とする。
【0011】
(3)本発明の第3態様に係る樹脂押出成形物は、第1または第2態様において、前記クロス材は、全体を100質量%として、ポリ塩化ビニル樹脂を25~45質量%、紙を15~35質量%、炭酸カルシウムを10~50質量%、可塑剤を10~30質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0012】
(4)本発明の第4態様に係る樹脂押出成形物は、第1から第3のいずれか1つの態様において、前記第2樹脂材に含まれるポリ塩化ビニル樹脂は、更に耐衝撃改良剤、加工助剤、安定剤のうち、少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の樹脂押出成形物の製造方法は、以下の構成を有する。
(5)本発明の第5態様に係る樹脂押出成形物の製造方法は、第1から第4態様のいずれか1つの樹脂押出成形物の製造方法であって、破砕した前記クロス材と、粒子状の前記第1樹脂材とを混合して再生原料を形成する再生原料形成工程と、前記再生原料を吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲になるように調整する吸水率調整工程と、前記再生原料に前記第2樹脂材を混合して再生成形材料を形成する再生成形材料形成工程と、前記再生成形材料を押出成形によって成形して、前記樹脂押出成形物を得る成形工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
(6)本発明の第6態様に係る樹脂押出成形物の製造方法は、第5態様において、前記再生成形材料に含まれる前記クロス材と、前記第1樹脂材および前記第2樹脂材の合計との比率は、質量比で5:5~2:8の範囲であることを特徴とする。
【0015】
(7)本発明の第7態様に係る樹脂押出成形物の製造方法は、第5または第6態様において、前記第1樹脂材は軟質ポリ塩化ビニル樹脂を含み、前記第2樹脂材は硬質ポリ塩化ビニル樹脂を含むことを特徴とする。
【0016】
(8)本発明の第8態様に係る樹脂押出成形物の製造方法は、第5ないし第7のいずれか1つの態様において、前記再生原料は、粒子状に造粒されることを特徴とする。
【0017】
(9)本発明の第9態様に係る樹脂押出成形物の製造方法は、第5ないし第8のいずれか1つの態様において、前記第2樹脂材は前記再生成形材料形成工程に用いる前に、予め吸水率が調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストで容易に製造可能な、塩ビ壁紙を含む樹脂押出成形物、およびその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の樹脂押出成形物の製造方法を段階的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の樹脂押出成形物、およびその製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を特定の範囲に限定するものではない。
【0021】
[樹脂押出成形物]
本発明の第1実施形態の樹脂押出成形物は、ポリ塩化ビニル樹脂、紙、炭酸カルシウム、可塑剤を含有する塩ビ壁紙からなるクロス材と、ポリ塩化ビニル樹脂を含む樹脂材(後述する第1樹脂材および第2樹脂材)とを混合した吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の再生成形材料から形成されてなる。
【0022】
ここで用いるクロス材を構成する塩ビ壁紙は、例えば、家屋の改装、解体等で排出されるクロス廃材や、新しい塩ビ壁紙のサイズカットなどによって発生するカット片などのクロス端材などが挙げられる。本実施形態では、これらのリサイクル回収された塩ビ壁紙を用いている。
【0023】
クロス材を構成する塩ビ壁紙は、例えば、基材となる紙層と、これを被覆した塩化ビニル層から成り、紙層の比率は一般的に、塩ビ壁紙全体に対しては20~30質量%である。塩化ビニル層の組成は、塩化ビニル樹脂と、その充填剤である炭酸カルシウムや可塑剤などから構成されている。
【0024】
より具体的には、クロス材を構成する塩ビ壁紙は、全体を100質量%として、ポリ塩化ビニル樹脂を25~45質量%、紙を15~35質量%、炭酸カルシウムを10~50質量%、可塑剤を10~30質量%の範囲で含んでいればよい。
【0025】
第1樹脂材を構成するポリ塩化ビニル樹脂は、廃棄されたポリ塩化ビニル樹脂を回収したリサイクル樹脂、または新規に製造されたバージン樹脂のいずれであっても良い。リサイクル樹脂としては、例えば、クロス材を分離して得られるポリ塩化ビニル樹脂を使用することができる。
【0026】
第1樹脂材を構成するポリ塩化ビニル樹脂は、少なくとも軟質ポリ塩化ビニル樹脂(S-PVC)を含み、更に、硬質ポリ塩化ビニル樹脂(R-PVC)が混合されたものであっても良い。
【0027】
第2樹脂材を構成するポリ塩化ビニル樹脂は、少なくとも硬質ポリ塩化ビニル樹脂(R-PVC)を含み、更に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(S-PVC)が混合されたものであっても良い。
【0028】
本実施形態の樹脂押出成形物は、上述したクロス材と第1樹脂材と第2樹脂材とを混合した吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の再生成形材料を押出成形によって成形することで得られる。吸水率は0.5質量%以下が好ましく、更に0.4質量%以下であることが好ましい。こうした樹脂押出成形物の具体的な形状例としては、ハウジング(容器)、パイプ、排水溝のカバー部材、建築材料などが挙げられる。
【0029】
[樹脂押出成形物の製造方法]
図1は、本発明の一実施形態の樹脂押出成形物の製造方法を段階的に示したフローチャートである。
【0030】
上述した実施形態の樹脂押出成形物を製造する際には、まず、リサイクル回収した塩ビ壁紙(クロス材)を、混合するポリ塩化ビニル樹脂(樹脂材)に対して均一に混合可能な程度のサイズに破砕する(破砕工程S1)。破砕後のクロス材のサイズは、例えば、2~20mm程度、好ましくは3~8mm程度であればよい。クロス材の破砕は、シート材料を破砕可能な一般的な破砕機(粉砕機、裁断機)を用いることができる。
【0031】
クロス材を構成する塩ビ壁紙は、全体を100質量%として、ポリ塩化ビニル樹脂を25~45質量%、紙を15~35質量%、炭酸カルシウムを10~50質量%、可塑剤を10~30質量%の範囲で含んでいればよい。
【0032】
次に、この破砕した塩ビ壁紙(クロス材)に、ポリ塩化ビニル樹脂を含む粒子状の第1樹脂材を混合して再生原料を形成する(再生原料形成工程S2)。塩ビ壁紙(クロス材)に混合する第1樹脂材としてのポリ塩化ビニル樹脂は、例えば、粒子径が例えば1~20mm程度の粒子状のものを用いればよい。また、混合するポリ塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)は、リサイクル樹脂またはバージン樹脂のいずれであってもよい。リサイクル樹脂を用いる場合には、後工程で着色可能な範囲を広くするために、できるだけ無色に近いものを選択することが好ましい。
【0033】
また、第1樹脂材として用いるポリ塩化ビニル樹脂は、少なくとも軟質ポリ塩化ビニル樹脂(S-PVC)を含み、更に、硬質ポリ塩化ビニル樹脂(R-PVC)が混合されたものであっても良い。
【0034】
再生原料形成工程S2における、再生原料を構成するクロス材と第1樹脂材との混合比率は、例えば、質量比で3:7~9:1の範囲であればよい。5:5~7:3の範囲が好ましい。
【0035】
次に、塩ビ壁紙(クロス材)とポリ塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)とを混合してなる再生原料を、溶融式造粒機などを用いて、再生原料の溶融温度以上に加熱して、ペレット化する(造粒工程S3)。なお、この造粒工程S3は、再生原料形成工程S2で得られた再生原料の形状によっては、特に行わなくても良い。
【0036】
次に、造粒工程S3で形成されたペレット状の再生原料の吸水率が0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲になるように調整する(吸水率調整工程S4)。吸水率は0.5質量%以下が好ましく、更に0.4質量%以下であることがより好ましい。再生原料の吸水率の調整は、水分が上述した範囲よりも大きい場合に、加熱によって水分を減少させればよい。こうした吸水率調整工程S4は、例えば、赤外線加熱装置や熱風式加熱装置を用いて行えばよい。
【0037】
次に、吸水率調整工程S4で吸水率が調整されたペレット状の再生原料にポリ塩化ビニル樹脂を含む第2樹脂材を混合して再生成形材料を形成する(再生成形材料形成工程S5)。再生原料に混合する第2樹脂材としてのポリ塩化ビニル樹脂は、例えば、粒子径が例えば1~20mm程度の粒子状のものを用いればよい。また、混合するポリ塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)は、リサイクル樹脂またはバージン樹脂のいずれであってもよい。リサイクル樹脂を用いる場合には、後工程で着色可能な範囲を広くするために、できるだけ無色に近いものを選択することが好ましい。
【0038】
また、第2樹脂材として用いるポリ塩化ビニル樹脂は、少なくとも硬質ポリ塩化ビニル樹脂(R-PVC)を含み、更に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(S-PVC)が混合されたものであっても良い。
【0039】
また、第2樹脂材として用いるポリ塩化ビニル樹脂は、再生成形材料形成工程S5において再生原料に混合する前に、予め吸水率を調整しておくことも好ましい。例えば、第2樹脂材として用いるポリ塩化ビニル樹脂の吸水率を0.1%程度にしておけばよい。こうした第2樹脂材の吸水率の調整は、例えば、赤外線加熱装置や熱風式加熱装置を用いて行えばよい。
【0040】
再生成形材料形成工程S5において、再生原料と第2樹脂材との混合比率は、30~65(質量%):70~35(質量%)の範囲、好ましくは35~50(質量%):50~65(質量%)の範囲であればよい。
【0041】
こうして得られる再生成形材料に含まれるクロス材と、第1樹脂材および第2樹脂材の合計との比率は、質量比で5:5~2:8の範囲であればよく、更に4:6~2:8の範囲が好ましい。クロス材の比率が2:8よりも低いと、再生利用できる塩ビ壁紙の量が低くなり、塩ビ壁紙のリサイクル効率が低下する。また、クロス材の比率が5:5よりも高いと、成形した樹脂押出成形物の実用的な強度が得られない懸念がある。
【0042】
なお、再生成形材料形成工程S5で得られる再生成形材料は、溶融式造粒機などを用いて、再生成形材料を溶融温度以上に加熱して、ペレット化してもよい。
【0043】
次に、再生成形材料形成工程S5で得られた再生成形材料を用いて、任意の形状の樹脂押出成形物を成形する(成形工程S6)。再生成形材料を用いた成形にあたっては、樹脂押出成形物の形状を象った金型を備えた押出成形機を用いる。例えば、ペレット状の再生成形材料を溶融温度以上に加熱されたシリンダに導入し、スクリューによって金型に向けて溶融した再生原料を押し出すことによって、本実施形態の樹脂押出成形物を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0045】
本発明の樹脂押出成形物の具体的な成形例を以下に示す。
クロス材としては、樹脂層:35質量%、炭酸カルシウム:25質量%、可塑剤(フタル酸エステル):15質量%、紙層(セルロース):25質量%の組成の塩ビ壁紙廃材を用いた。
【0046】
(本発明例1)クロス材(塩ビ壁紙)70質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)30質量%を加えて混合して得られた再生原料の吸水率を0.25質量%なるように乾燥させた。この乾燥後の再生原料50質量%と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)50質量%とを加えて混合し、吸水率を0.18質量%になるように乾燥させた再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は35質量%である。
(本発明例2)クロス材(塩ビ壁紙)70質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)30質量%を加えて混合して得られた再生原料の吸水率を0.25質量%なるように乾燥させた。この乾燥後の再生原料65質量%と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)35質量%とを加えて混合し、吸水率を0.20質量%になるように乾燥させた再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は46質量%である。
(本発明例3)クロス材(塩ビ壁紙)70質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)30質量%を加えて混合して得られた再生原料の吸水率を0.30質量%なるように乾燥させた。この乾燥後の再生原料35質量%と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)65質量%とを加えて混合し、吸水率を0.16質量%になるように乾燥させた再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は25質量%である。
(本発明例4)クロス材(塩ビ壁紙)90質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)10質量%を加えて混合して得られた再生原料の吸水率を0.30質量%なるように乾燥させた。この乾燥後の再生原料50質量%と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)50質量%とを加えて混合し、吸水率を0.21質量%になるように乾燥させた再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は35質量%である。
(比較例1)クロス材(塩ビ壁紙)70質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)30質量%を加えて混合して得られた再生原料の吸水率を0.25質量%なるように乾燥させた。この乾燥後の再生原料80質量%と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)20質量%とを加えて混合し、吸水率を0.22質量%になるように乾燥させた再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は56質量%である。
(比較例2)クロス材(塩ビ壁紙)70質量%に軟質塩化ビニル樹脂(第1樹脂材)30質量%を加えて混合して得られた再生原料50質量%(乾燥工程無し)と、塩化ビニル樹脂(第2樹脂材)50質量%とを加えて混合し、吸水率が0.61質量%の再生成形材料を得た。この再生成形材料を用いて、ハウジング形状の樹脂押出成形物を成形した。成形原料全体に含まれる塩ビ壁紙廃材は35質量%である。
【0047】
以上のそれぞれの樹脂押出成形物の表面観察による気泡の状態の観察、および曲げ試験ごの目視観察を行った。
「気泡の状態」○:気泡無し、△:表面に僅かに気泡がある、×:略表面全面に気泡がある。
「曲げ試験結果」○:裂け、ちぎれは見られない △:僅かに裂けが見られる ×:長さ2mm以上の大きな裂け・ちぎれが見られる。
これらの結果を表1に纏めて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1によれば、本発明例1~4の樹脂押出成形物は、比較例1、2の樹脂押出成形物と比較して、気泡の発生が少なく、曲げ試験による耐性も良好であった。よって、本発明の樹脂押出成形物、及びその製造方法の効果が確認できた。
図1