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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175257
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】エレベーターの調速機
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/04 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B66B5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092897
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 泰央
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304CA18
3F304DA23
(57)【要約】
【課題】スイッチレバーの誤操作をより確実に抑制することができるエレベーターの調速機を提供する。
【解決手段】調速機7において、スイッチレバー752は、調速機綱車72の第1側面72a及び第2側面72bのうち、第1側面72aに対向している。スクレーパー9は、第1スクレーパー本体92と、第2スクレーパー本体93とを有している。第1スクレーパー本体92は、第1側面72aに対向する第1対向部923を有している。第2スクレーパー本体93は、第1側面72aに対向する第2対向部933を有している。スイッチレバー752は、調速機綱車72の周方向において第1対向部923と第2対向部933との間に配置されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごの移動に伴って移動する調速機ロープが巻き掛けられる調速機綱車と、
前記調速機綱車の回転速度に応じて前記調速機綱車に対して変位するフライウェイトと、
スイッチレバーを有し、前記調速機綱車の回転速度が設定過大速度に達したときに前記フライウェイトによって前記スイッチレバーが操作されるスイッチと、
前記調速機綱車に対向するスクレーパーと
を備え、
前記スイッチレバーは、前記調速機綱車の第1側面及び第2側面のうち、前記第1側面に対向しており、
前記スクレーパーは、第1スクレーパー本体と、第2スクレーパー本体とを有しており、
前記第1スクレーパー本体は、前記第1側面に対向する第1対向部を有しており、
前記第2スクレーパー本体は、前記第1側面に対向する第2対向部を有しており、
前記スイッチレバーは、前記調速機綱車の周方向において前記第1対向部と前記第2対向部との間に配置されており、
前記第1側面と前記第1対向部との間の隙間は、前記第1側面と前記スイッチレバーとの間の隙間よりも狭く、
前記第1側面と前記第2対向部との間の隙間は、前記第1側面と前記スイッチレバーとの間の隙間よりも狭いエレベーターの調速機。
【請求項2】
前記第1スクレーパー本体は、前記調速機綱車の径方向において前記調速機綱車の外周部に対向している第1外れ止め部を有しており、
前記第1側面及び前記第2側面は、前記調速機綱車の軸線方向において、前記第1外れ止め部の範囲内に位置しており、
前記第1対向部は、前記第1外れ止め部に設けられている請求項1に記載のエレベーターの調速機。
【請求項3】
前記第1対向部は、第1表板面及び第1裏板面が形成された板状部であり、
前記第1対向部は、前記第1裏板面を前記調速機綱車の径方向内側に向けて配置されており、
前記調速機綱車の周方向における前記第1対向部の両端部のうち、前記スイッチレバーから遠い側の端部から前記調速機綱車の軸線までの距離は、前記スイッチレバーに近い側の端部から前記調速機綱車の軸線までの距離よりも大きい請求項1又は請求項2に記載のエレベーターの調速機。
【請求項4】
前記第1対向部には、前記第1側面に対して傾斜する第1傾斜面が形成されており、
前記第1傾斜面と前記第1側面との間の隙間は、前記調速機綱車の径方向内側に向かって広がる請求項1又は請求項2に記載のエレベーターの調速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの調速機に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの調速機では、調速機綱車の側面に付着した油が固化することがある。調速機綱車が回転しているときに固化油が調速機のスイッチの作動片を操作すると、かご2が急停止してしまう。
【0003】
特許文献1には、固化油によるスイッチの作動片の操作を防止するために、固化油を調速機綱車から除去する除去装置を調速機綱車の側面に対向させたエレベーターの調速機が開示されている。除去装置は、スイッチの下方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-160921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
調速機綱車は、かごの移動方向に応じて順方向及び逆方向のいずれにも回転する。特許文献1に開示された従来のエレベーターの調速機では、調速機綱車が順方向へ回転する場合、固化油がスイッチの作動片に到達する前に除去装置によって固化油を除去することができる。しかし、調速機綱車が逆方向へ回転すると、固化油は、スイッチの作動片の位置を通過した後に除去装置の位置に到達する。このため、調速機綱車が逆方向へ回転する場合には、固化油によってスイッチの作動片が操作されやすくなってしまう。従って、従来のエレベーターの調速機では、固化油によるスイッチの作動片の誤操作が生じやすくなってしまう。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、スイッチレバーの誤操作をより確実に抑制することができるエレベーターの調速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るエレベーターの調速機は、かごの移動に伴って移動する調速機ロープが巻き掛けられる調速機綱車と、調速機綱車の回転速度に応じて調速機綱車に対して変位するフライウェイトと、スイッチレバーを有し、調速機綱車の回転速度が設定過大速度に達したときにフライウェイトによってスイッチレバーが操作されるスイッチと、調速機綱車に対向するスクレーパーとを備え、スイッチレバーは、調速機綱車の第1側面及び第2側面のうち、第1側面に対向しており、スクレーパーは、第1スクレーパー本体と、第2スクレーパー本体とを有しており、第1スクレーパー本体は、第1側面に対向する第1対向部を有しており、第2スクレーパー本体は、第1側面に対向する第2対向部を有しており、スイッチレバーは、調速機綱車の周方向において第1対向部と第2対向部との間に配置されており、第1側面と第1対向部との間の隙間は、第1側面とスイッチレバーとの間の隙間よりも狭く、第1側面と第2対向部との間の隙間は、第1側面とスイッチレバーとの間の隙間よりも狭いものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、スイッチレバーの誤操作をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るエレベーターを示す構成図である。
図2図1の調速機を示す斜視図である。
図3図2の調速機を示す正面図である。
図4図2の調速機を示す背面図である。
図5図3の矢印Vに沿って見たときの調速機を示す側面図である。
図6図2の取付部材を示す斜視図である。
図7図2の第1スクレーパー本体を示す斜視図である。
図8図2の第2スクレーパー本体を示す斜視図である。
図9図3のIX-IX線に沿った断面図である。
図10図3のX-X線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示の対象は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、又は実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターを示す構成図である。図において、昇降路1内には、かご2及び釣合おもり3が上下方向へ移動可能に設けられている。昇降路1内の下部には、巻上機4が設けられている。巻上機4は、かご2及び釣合おもり3を上下方向へ移動させる駆動力を発生する。
【0012】
巻上機4は、巻上機本体41と、駆動シーブ42とを有している。巻上機本体41は、モータ及びブレーキを有している。駆動シーブ42は、巻上機本体41に回転可能に設けられている。
【0013】
巻上機本体41への給電が行われると、巻上機本体41のモータの駆動力によって駆動シーブ42が巻上機本体41に対して回転する。巻上機本体41への給電が遮断されると、巻上機本体41のブレーキの作動によって巻上機本体41に対する駆動シーブ42の回転が停止する。
【0014】
昇降路1内の上部には、2つのかご側返し車11と、釣合おもり側返し車12とが設けられている。各かご側返し車11及び釣合おもり側返し車12は、昇降路1内に固定された不図示の機械台に支持されている。
【0015】
かご2及び釣合おもり3は、主ロープ5によって昇降路1内に吊り下げられている。主ロープ5は、第1端部及び第2端部を有している。主ロープ5の第1端部は、かご2の上部に接続されている。主ロープ5の第2端部は、釣合おもり3の上部に接続されている。主ロープ5は、第1端部から、2つのかご側返し車11、駆動シーブ42、釣合おもり側返し車12の順に巻き掛けられ、第2端部に達している。これにより、主ロープ5によるかご2及び釣合おもり3の吊り下げ方式は、1:1ローピング方式とされている。かご2及び釣合おもり3は、駆動シーブ42の回転により昇降路1内を上下方向へ移動する。
【0016】
昇降路1内には、一対のかごガイドレール13と、一対の釣合おもりガイドレール14とが設置されている。図1には、かごガイドレール13及び釣合おもりガイドレール14が1つずつ示されている。かご2は、一対のかごガイドレール13に案内されながら、昇降路1内を上下方向へ移動する。釣合おもり3は、一対の釣合おもりガイドレール14に案内されながら、昇降路1内を上下方向へ移動する。
【0017】
かご2の下部には、非常止め装置6が設けられている。非常止め装置6には、操作部61が連結されている。非常止め装置6は、操作部61の操作により、かごガイドレール13を把持する非常動作を行う。かご2の移動は、非常止め装置6の非常動作により停止する。
【0018】
昇降路1内の上部には、調速機7が設けられている。昇降路1内の下部には、張り車8が設けられている。調速機7及び張り車8には、調速機ロープ10が巻き掛けられている。
【0019】
調速機7は、支持部材17に支持されている。支持部材17は、かごガイドレール13にレールクリップ18によって固定されている。張り車8には、張り車おもり81が取り付けられている。張り車8及び張り車おもり81は、調速機ロープ10を介して調速機7に吊り下げられている。これにより、調速機ロープ10には、張力が常に加わっている。
【0020】
調速機ロープ10の両端部は、操作部61に接続されている。従って、調速機ロープ10は、調速機7及び張り車8間にループ状に張られている。調速機ロープ10は、かご2の移動に伴って移動する。
【0021】
図2は、図1の調速機7を示す斜視図である。図3は、図2の調速機7を示す正面図である。図4は、図2の調速機7を示す背面図である。図5は、図3の矢印Vに沿って見たときの調速機7を示す側面図である。調速機7は、フレーム71と、調速機綱車72と、一対のフライウェイト73と、平衡ばね74と、スイッチ75と、スクレーパー9と、不図示の把持機構とを有している。
【0022】
フレーム71は、底板部711と、第1側板部712と、第2側板部713とを有している。底板部711は、水平に配置されている。第1側板部712及び第2側板部713は、底板部711に立った状態で互いに平行に配置されている。
【0023】
第1側板部712は、第1側板本体部712aと、第1側板突出部712bとを有している。第1側板突出部712bは、第1側板本体部712aにおける上端部の一部から上方へ突出している。第1側板本体部712aは、第2側板部713と対向している。
【0024】
底板部711は、第1側板部712及び第2側板部713のそれぞれの下端部間に結合されている。底板部711は、ボルトなどによって支持部材17に固定されている。
【0025】
調速機綱車72は、フレーム71に回転自在に支持されている。調速機綱車72は、調速機綱車72の軸線方向において第1側板部712と第2側板部713との間の範囲に配置されている。調速機綱車72には、調速機綱車72の軸線と同軸に配置された回転軸が設けられている。調速機綱車72の回転軸は、第1側板本体部712a及び第2側板部713に水平に取り付けられている。調速機綱車72の回転軸は、第1側板本体部712a及び第2側板部713のそれぞれに直交している。調速機綱車72は、調速機綱車72の軸線を中心としてフレーム71に対して回転自在となっている。
【0026】
調速機ロープ10は、調速機綱車72に巻き掛けられている。調速機綱車72の外周部には、ロープ溝が調速機綱車72の周方向に沿って形成されている。調速機ロープ10は、ロープ溝に沿って調速機綱車72に巻き掛けられている。これにより、調速機綱車72は、調速機ロープ10及びかご2の移動に応じて回転する。即ち、調速機綱車72は、図3に示すように、かご2の下方への移動により第1方向Aへ回転し、かご2の上方への移動により第2方向Bへ回転する。第1方向Aと第2方向Bとは、互いに逆方向である。調速機綱車72の回転方向は、かご2の移動方向に応じた方向となる。調速機綱車72の回転速度は、かご2の移動速度に応じた速度となる。底板部711は、調速機ロープ10を避けて配置されている。
【0027】
調速機綱車72には、一対の取付軸721が設けられている。一対の取付軸721のそれぞれは、調速機綱車72の軸線と平行に配置されている。一対のフライウェイト73は、一対の取付軸721を介して調速機綱車72に個別に設けられている。各フライウェイト73は、取付軸721を中心として調速機綱車72に対して回転可能になっている。
【0028】
各フライウェイト73は、調速機綱車72の回転によって生じる遠心力に応じて取付軸721を中心として回転する。これにより、各フライウェイト73は、調速機綱車72の回転速度に応じて調速機綱車72に対して変位する。一対のフライウェイト73は、リンク732を介して互いに連結されている。
【0029】
平衡ばね74は、一方のフライウェイト73と調速機綱車72との間に接続されている。平衡ばね74は、遠心力に抗する弾性体である。調速機綱車72の回転速度が増加すると、各フライウェイト73が平衡ばね74の弾性復元力に逆らって調速機綱車72に対して変位する。
【0030】
一方のフライウェイト73は、突起ボルト731を作動片として有している。突起ボルト731は、一方のフライウェイト73のウェイト本体から調速機綱車72の径方向外側へ突出している。突起ボルト731は、一方のフライウェイト73が平衡ばね74の弾性復元力に逆らって調速機綱車72に対して変位することにより、調速機綱車72の軸線から離れる方向へ移動する。
【0031】
調速機綱車72の外周部には、第1側面72a及び第2側面72bが形成されている。第1側面72a及び第2側面72bのそれぞれは、調速機綱車72の軸線を中心とする環状面である。第1側面72a及び第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において互いに反対側を向く側面である。調速機綱車72は、第1側面72aを第1側板本体部712aに向け、第2側面72bを第2側板部713に向けた状態でフレーム71に支持されている。
【0032】
第1側面72aには、綱車基準線722が表示されている。綱車基準線722は、スクレーパー9の設置位置の基準となる目印である。綱車基準線722は、調速機綱車72の軸線を中心として表示された円である。各フライウェイト73、平衡ばね74、リンク732及び突起ボルト731は、綱車基準線722よりも調速機綱車72の軸線に近い位置に配置されている。
【0033】
スイッチ75は、スイッチ本体751と、スイッチレバー752とを有している。スイッチ本体751は、フレーム71の第1側板突出部712bに複数のボルト753によって取り付けられている。スイッチ本体751は、調速機綱車72の径方向において調速機綱車72の外周部よりも外側に配置されている。
【0034】
スイッチレバー752は、スイッチ本体751から調速機綱車72の軸線に向けて突出している。スイッチレバー752は、調速機綱車72の軸線方向において調速機綱車72よりも第1側板部712に近い位置に配置されている。これにより、スイッチレバー752は、第1側面72aに対向している。
【0035】
スイッチレバー752の先端部は、綱車基準線722よりも調速機綱車72の軸線に近い位置に位置している。スイッチレバー752の先端部は、調速機綱車72の回転速度が設定過大速度に達したときの突起ボルト731の軌道上に配置されている。従って、調速機綱車72の回転速度が設定過大速度に達すると、スイッチレバー752が突起ボルト731により操作される。設定過大速度は、通常運転時における調速機綱車72の回転速度よりも大きい速度である。スイッチ本体751は、スイッチレバー752が操作されることにより、巻上機4への給電を遮断する遮断動作を行う。
【0036】
調速機綱車72の回転速度が設定過大速度よりもさらに増加すると、各フライウェイト73が受ける遠心力が増加する。これにより、各フライウェイト73が調速機綱車72に対してさらに変位する。
【0037】
把持機構は、フレーム71に支持されている。調速機綱車72の回転速度が非常止め過大速度に達すると、調速機綱車72に対する各フライウェイト73の位置が把持動作位置となる。非常止め過大速度は、設定過大速度よりも大きい速度である。把持機構は、各フライウェイト73が調速機綱車72に対して把持動作位置に変位されることにより、調速機ロープ10を把持する把持動作を行う。
【0038】
スクレーパー9は、第2側板部713に取り付けられている。スクレーパー9及びスイッチ75は、図5に示すように、調速機綱車72の軸線方向において第1側板部712と第2側板部713との間の範囲に配置されている。スクレーパー9及びスイッチ75は、第1側板部712及び第2側板部713のうち、互いに異なる側板部に取り付けられている。スクレーパー9は、取付部材91と、第1スクレーパー本体92と、第2スクレーパー本体93とを有している。
【0039】
取付部材91は、アングル部材である。取付部材91の長手方向一端部は固定端部となっており、取付部材91の長手方向他端部は自由端部となっている。第2側板部713には、取付部材91の固定端部が取り付けられている。取付部材91の固定端部が第2側板部713に取り付けられている状態では、取付部材91の自由端部が取付部材91の固定端部よりも上方に位置している。取付部材91は、調速機綱車72の軸線に沿って見たとき、図4に示すように、調速機綱車72の外側に配置されている。
【0040】
図6は、図2の取付部材91を示す斜視図である。取付部材91は、フレーム用取付板部911と、スクレーパー本体用取付板部912とを有している。
【0041】
フレーム用取付板部911及びスクレーパー本体用取付板部912はいずれも、取付部材91の長手方向に沿って配置されている。スクレーパー本体用取付板部912は、フレーム用取付板部911に固定されている。また、スクレーパー本体用取付板部912は、フレーム用取付板部911に対して直交している。従って、取付部材91の長手方向に沿って取付部材91を見たとき、取付部材91の形状は、フレーム用取付板部911及びスクレーパー本体用取付板部912によってL字状となっている。
【0042】
フレーム用取付板部911には、複数のフレーム用通し穴914が設けられている。スクレーパー本体用取付板部912には、複数の第1本体用通し穴915と、複数の第2本体用通し穴916とが設けられている。各フレーム用通し穴914及び各第2本体用通し穴916は、取付部材91の固定端部に位置している。各第1本体用通し穴915は、取付部材91の自由端部に位置している。
【0043】
各フレーム用通し穴914は、丸穴である。各第1本体用通し穴915及び各第2本体用通し穴916は、取付部材91の長手方向に沿った長穴である。本実施の形態では、フレーム用通し穴914、第1本体用通し穴915及び第2本体用通し穴916のそれぞれが取付部材91に2つずつ設けられている。
【0044】
取付部材91の固定端部は、図4に示すように、フレーム用通し穴914に通された複数のフレーム取付ボルト90によって第2側板部713に取り付けられている。取付部材91の固定端部では、フレーム用取付板部911が当て板94を介して第2側板部713に重なっている。各フレーム取付ボルト90は、当て板94とともにフレーム用取付板部911を第2側板部713に締結している。
【0045】
フレーム用取付板部911は、調速機綱車72の軸線方向に対して直交して配置されている。スクレーパー本体用取付板部912は、調速機綱車72の軸線方向に沿って配置されている。
【0046】
取付部材91は、図5に示すように、調速機綱車72の軸線方向において、第1側面72aの位置よりも第2側板部713に近い位置に配置されている。第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において、スクレーパー本体用取付板部912の範囲内に位置している。
【0047】
第1スクレーパー本体92及び第2スクレーパー本体93は、図3に示すように、スクレーパー本体用取付板部912にそれぞれ取り付けられている。第1スクレーパー本体92は、第1スクレーパー本体92の幅方向を調速機綱車72の軸線方向と一致させて配置されている。第2スクレーパー本体93は、第2スクレーパー本体93の幅方向を調速機綱車72の軸線方向と一致させて配置されている。
【0048】
図7は、図2の第1スクレーパー本体92を示す斜視図である。第1スクレーパー本体92は、第1取付部921と、第1外れ止め部922と、第1対向部923とを有している。第1取付部921、第1外れ止め部922及び第1対向部923のそれぞれは、板状部である。第1取付部921、第1外れ止め部922及び第1対向部923のそれぞれは、第1スクレーパー本体92の幅方向に沿って配置されている。本実施の形態では、一枚の金属板を曲げることにより第1スクレーパー本体92が形成されている。
【0049】
第1外れ止め部922には、第1取付部921及び第1対向部923が設けられている。第1スクレーパー本体92の幅方向に沿って第1スクレーパー本体92を見たとき、第1外れ止め部922の一端部から第1取付部921が突出しており、第1外れ止め部922の他端部から第1対向部923が突出している。
【0050】
第1取付部921及び第1対向部923は、第1外れ止め部922の厚さ方向において互いに反対側へ第1外れ止め部922から突出している。第1外れ止め部922に対して第1取付部921が突出する側が第1外れ止め部922のスイッチ側とされている。第1外れ止め部922に対して第1対向部923が突出する側が第1外れ止め部922の反スイッチ側とされている。
【0051】
第1取付部921は、第1外れ止め部922に対して直交している。第1取付部921には、複数の第1ねじ穴924が設けられている。本実施の形態では、2つの第1ねじ穴924が第1取付部921に設けられている。
【0052】
第1対向部923は、第1外れ止め部922に対して傾斜している。第1対向部923及び第1外れ止め部922を第1外れ止め部922の厚さ方向に沿って見たとき、第1対向部923は、第1外れ止め部922の領域外に向けて第1外れ止め部922から突出している。
【0053】
第1対向部923には、第1表板面923aと、第1裏板面923bとが形成されている。第1表板面923a及び第1裏板面923bは、第1対向部923の厚さ方向において互いに反対側を向く2つの面である。
【0054】
第1取付部921を下方に向けて第1スクレーパー本体92が配置された状態では、第1表板面923aが上側を向き、第1裏板面923bが下側を向いて第1対向部923が配置されている。
【0055】
第1対向部923は、第1スクレーパー本体92の幅方向において、第1スクレーパー本体92の一端部にのみ設けられている。これにより、第1スクレーパー本体92の幅方向における第1対向部923の寸法は、第1スクレーパー本体92の幅方向における第1外れ止め部922の寸法よりも小さくなっている。複数の第1ねじ穴924は、第1スクレーパー本体92の幅方向において第1対向部923の範囲から外れた位置に設けられている。
【0056】
第1スクレーパー本体92は、図3に示すように、スクレーパー本体用取付板部912の自由端部に複数の第1本体取付ボルト96よって取り付けられている。これにより、第1スクレーパー本体92は、スイッチレバー752の上方に配置されている。
【0057】
第1取付部921は、スクレーパー本体用取付板部912に重なっている。第1本体用通し穴915に通された第1本体取付ボルト96が第1取付部921の第1ねじ穴924にねじ込まれることにより、第1取付部921はスクレーパー本体用取付板部912に取り付けられている。
【0058】
第1本体用通し穴915は、取付部材91の長手方向に沿った長穴である。従って、第1本体用通し穴915内における各第1本体取付ボルト96の位置は、取付部材91の長手方向へ調整可能になっている。取付部材91に対する第1スクレーパー本体92の位置は、各第1本体取付ボルト96を緩めることにより、取付部材91の長手方向へ調整可能になる。
【0059】
第1外れ止め部922は、調速機綱車72の径方向において調速機綱車72の外周部に対向している。調速機綱車72の軸線方向における第1外れ止め部922の寸法は、図2に示すように、調速機綱車72の軸線方向における調速機綱車72の外周部の厚さ寸法よりも大きくなっている。調速機綱車72の外周部の厚さ寸法は、第1側面72aから第2側面72bまでの寸法である。第1側面72a及び第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において、第1外れ止め部922の範囲内に位置している。
【0060】
第1外れ止め部922は、調速機綱車72の軸線方向に沿って見たとき、図3に示すように、取付部材91の自由端部から調速機綱車72の外周部に向けて突出している。調速機ロープ10は、調速機綱車72の外周部と第1外れ止め部922との間を通っている。
【0061】
第1対向部923は、図2に示すように、取付部材91の位置から調速機綱車72の軸線方向へ離れた位置に位置している。また、第1対向部923は、調速機綱車72の軸線方向において調速機綱車72よりも第1側板部712に近い位置に配置されている。従って、第1対向部923は、調速機綱車72に対して第2側板部713側とは反対側に配置されている。
【0062】
第1対向部923は、図3に示すように、第1裏板面923bを調速機綱車72の径方向内側に向け、第1表板面923aを調速機綱車72の径方向外側に向けて配置されている。第1裏板面923bを含む仮想平面は、第1側面72aに対して直交している。第1表板面923aを含む仮想平面も、第1側面72aに対して直交している。第1対向部923は、調速機綱車72の軸線方向に沿って見たとき、綱車基準線722よりも径方向外側に配置されている。
【0063】
第1対向部923は、調速機綱車72の第1側面72aに対向している。第1対向部923と第1側面72aとの間の隙間は、スイッチレバー752と第1側面72aとの間の隙間よりも狭くなっている。
【0064】
第1対向部923は、図3に示すように、調速機綱車72の周方向においてスイッチレバー752から遠ざかる方向へ第1外れ止め部922から突出している。第1対向部923の突出方向における第1対向部923の両端部のうち、第1外れ止め部922に近い側の端部が第1対向部923の基端部とされ、第1外れ止め部922から遠い側の端部が第1対向部923の先端部とされている。第1対向部923の先端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、第1対向部923の基端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。即ち、調速機綱車72の周方向における第1対向部923の両端部のうち、スイッチレバー752から遠い側の端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、スイッチレバー752に近い側の端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。
【0065】
図8は、図2の第2スクレーパー本体93を示す斜視図である。第2スクレーパー本体93は、第2取付部931と、第2外れ止め部932と、第2対向部933とを有している。第2取付部931、第2外れ止め部932及び第2対向部933のそれぞれは、板状部である。第2取付部931、第2外れ止め部932及び第2対向部933のそれぞれは、第2スクレーパー本体93の幅方向に沿って配置されている。本実施の形態では、一枚の金属板を曲げることにより第2スクレーパー本体93が形成されている。
【0066】
第2外れ止め部932には、第2取付部931及び第2対向部933が設けられている。第2スクレーパー本体93の幅方向に沿って第2スクレーパー本体93を見たとき、第2外れ止め部932の一端部から第2取付部931が突出しており、第2外れ止め部932の他端部から第2対向部933が突出している。
【0067】
第2取付部931及び第2対向部933は、第2外れ止め部932の厚さ方向において互いに反対側へ第2外れ止め部932から突出している。第2外れ止め部932に対して第2取付部931が突出する側が第2外れ止め部932のスイッチ側とされている。第2外れ止め部932に対して第2対向部933が突出する側が第2外れ止め部932の反スイッチ側とされている。
【0068】
第2取付部931は、第2外れ止め部932に対して直交している。第2取付部931には、複数の第2ねじ穴934が設けられている。本実施の形態では、2つの第2ねじ穴934が第2取付部931に設けられている。
【0069】
第2対向部933は、第2外れ止め部932に対して傾斜している。第2対向部933及び第2外れ止め部932を第2外れ止め部932の厚さ方向に沿って見たとき、第2対向部933は、第2外れ止め部932の領域外に向けて第2外れ止め部932から突出している。
【0070】
第2対向部933には、第2表板面933aと、第2裏板面933bとが形成されている。第2表板面933a及び第2裏板面933bは、第2対向部933の厚さ方向において互いに反対側を向く2つの面である。
【0071】
第2取付部931を上方に向けて第2スクレーパー本体93が配置された状態では、第2表板面933aが下側を向き、第2裏板面933bが上側を向いて第2対向部933が配置されている。
【0072】
第2対向部933は、第2スクレーパー本体93の幅方向において、第2スクレーパー本体93の一端部にのみ設けられている。これにより、第2スクレーパー本体93の幅方向における第2対向部933の寸法は、第2スクレーパー本体93の幅方向における第2外れ止め部932の寸法よりも小さくなっている。複数の第2ねじ穴934は、第2スクレーパー本体93の幅方向において第2対向部933の範囲から外れた位置に設けられている。
【0073】
第2スクレーパー本体93は、図3に示すように、スクレーパー本体用取付板部912の固定端部に複数の第2本体取付ボルト97よって取り付けられている。これにより、第2スクレーパー本体93は、スイッチレバー752の下方に配置されている。
【0074】
第2取付部931は、スクレーパー本体用取付板部912に重なっている。第2本体用通し穴916に通された第2本体取付ボルト97が第2取付部931の第2ねじ穴934にねじ込まれることにより、第2取付部931はスクレーパー本体用取付板部912に取り付けられている。
【0075】
第2本体用通し穴916は、取付部材91の長手方向に沿った長穴である。従って、第2本体用通し穴916内における各第2本体取付ボルト97の位置は、取付部材91の長手方向へ調整可能になっている。取付部材91に対する第2スクレーパー本体93の位置は、各第2本体取付ボルト97を緩めることにより、取付部材91の長手方向へ調整可能になる。
【0076】
第2外れ止め部932は、調速機綱車72の径方向において調速機綱車72の外周部に対向している。調速機綱車72の軸線方向における第2外れ止め部932の寸法は、図5に示すように、調速機綱車72の軸線方向における調速機綱車72の外周部の厚さ寸法よりも大きくなっている。第1側面72a及び第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において、第2外れ止め部932の範囲内に位置している。
【0077】
第2外れ止め部932は、調速機綱車72の軸線方向に沿って見たとき、図3に示すように、取付部材91の固定端部から調速機綱車72の外周部に向けて突出している。調速機ロープ10は、調速機綱車72の外周部と第2外れ止め部932との間を通っている。
【0078】
第2対向部933は、図5に示すように、取付部材91の位置から調速機綱車72の軸線方向へ離れた位置に位置している。また、第2対向部933は、調速機綱車72の軸線方向において調速機綱車72よりも第1側板部712に近い位置に配置されている。従って、第2対向部933は、調速機綱車72に対して第2側板部713側とは反対側に配置されている。
【0079】
第2対向部933は、図3に示すように、第2裏板面933bを調速機綱車72の径方向内側に向け、第2表板面933aを調速機綱車72の径方向外側に向けて配置されている。第2裏板面933bを含む仮想平面は、第1側面72aに対して直交している。第2表板面933aを含む仮想平面も、第1側面72aに対して直交している。第2対向部933は、調速機綱車72の軸線方向に沿って見たとき、綱車基準線722よりも径方向外側に配置されている。
【0080】
第2対向部933は、調速機綱車72の第1側面72aに対向している。第2対向部933と第1側面72aとの間の隙間は、スイッチレバー752と第1側面72aとの間の隙間よりも狭くなっている。
【0081】
第2対向部933は、図3に示すように、調速機綱車72の周方向においてスイッチレバー752から遠ざかる方向へ第2外れ止め部932から突出している。第2対向部933の突出方向における第2対向部933の両端部のうち、第2外れ止め部932に近い側の端部が第2対向部933の基端部とされ、第2外れ止め部932から遠い側の端部が第2対向部933の先端部とされている。第2対向部933の先端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、第2対向部933の基端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。即ち、調速機綱車72の周方向における第2対向部933の両端部のうち、スイッチレバー752から遠い側の端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、スイッチレバー752に近い側の端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。
【0082】
スイッチレバー752は、調速機綱車72の周方向において、第1対向部923と第2対向部933との間に配置されている。調速機綱車72の軸線から第1対向部923までの距離は、取付部材91に対する第1スクレーパー本体92の位置の調整により調整される。調速機綱車72の軸線から第2対向部933までの距離は、取付部材91に対する第2スクレーパー本体93の位置の調整により調整される。
【0083】
図9は、図3のIX-IX線に沿った断面図である。第1対向部923における第1側面72aに対向する面には、第1傾斜面925が形成されている。第1スクレーパー本体92の幅方向、即ち調速機綱車72の軸線方向に沿って第1対向部923を見たとき、第1傾斜面925は、第1裏板面923bに沿って形成されている。
【0084】
第1傾斜面925は、第1裏板面923bから第1表板面923aに向かって第1側面72aに近づく方向へ第1側面72aに対して傾斜している。これにより、第1傾斜面925と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。第1傾斜面925と第1側面72aとの間の隙間は、第1傾斜面925のどの位置においても、スイッチレバー752と第1側面72aとの間の隙間よりも小さくなっている。
【0085】
図10は、図3のX-X線に沿った断面図である。第2対向部933における第1側面72aに対向する面には、第2傾斜面935が形成されている。第2スクレーパー本体93の幅方向、即ち調速機綱車72の軸線方向に沿って第2対向部933を見たとき、第2傾斜面935は、第2裏板面933bに沿って形成されている。
【0086】
第2傾斜面935は、第2裏板面933bから第2表板面933aに向かって第1側面72aに近づく方向へ第1側面72aに対して傾斜している。これにより、第2傾斜面935と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。第2傾斜面935と第1側面72aとの間の隙間は、第2傾斜面935のどの位置においても、スイッチレバー752と第1側面72aとの間の隙間よりも小さくなっている。
【0087】
次に、調速機7の動作について説明する。かご2が下方へ移動するときには、調速機綱車72が第1方向Aへ回転する。かご2が上方へ移動するときには、調速機綱車72が第2方向Bへ回転する。各フライウェイト73は、調速機綱車72の回転速度に応じた遠心力を受ける。かご2の移動速度の増加に伴って各フライウェイト73が受ける遠心力の大きさが増加すると、各フライウェイト73が平衡ばね74の弾性復元力に逆らって調速機綱車72に対して変位する。
【0088】
何らかの異常でかご2の移動速度が増加して調速機綱車72の回転速度が設定過大速度に達すると、一方のフライウェイト73の突起ボルト731によってスイッチレバー752が操作される。スイッチレバー752が操作されると、巻上機4への給電が遮断され、巻上機4のブレーキが作動する。
【0089】
巻上機4への給電が遮断された後もかご2の移動速度が増加して調速機綱車72の回転速度がさらに増加した場合、各フライウェイト73が調速機綱車72に対してさらに変位する。この場合、調速機綱車72の回転速度が非常止め過大速度に達すると、各フライウェイト73が調速機綱車72に対して把持動作位置に変位される。これにより、把持機構が把持動作を行う。
【0090】
把持機構の把持動作が行われると、調速機ロープ10の移動が停止される。このとき、かご2の移動は継続するため、操作部61が調速機ロープ10により操作される。これにより、非常止め装置6が非常動作を行い、かご2の移動が停止する。
【0091】
調速機7では、調速機ロープ10から染み出た油、調速機7に注入されているグリスなどが調速機綱車72に付着物として付着して固化することがある。調速機綱車72の第1側面72aにおいて固化した付着物の厚さは、付着物が第1側面72aに堆積することにより増加する。
【0092】
かご2の下方への移動によって調速機綱車72が第1方向Aへ回転すると、第1側面72aに堆積した付着物は、スイッチレバー752の位置を通過する。このとき、付着物の厚さがスイッチレバー752と第1側面72aとの間の隙間よりも大きい場合、スイッチレバー752が付着物によって操作される。これにより、調速機綱車72が第1方向Aへ回転するときにスイッチレバー752が誤操作されるおそれがある。
【0093】
本実施の形態では、調速機綱車72が第1方向Aへ回転すると、第1側面72aに堆積した付着物は、スイッチレバー752の位置を通過する前に、第1対向部923の位置を通過する。このとき、付着物の厚さが第1対向部923と第1側面72aとの間の隙間よりも大きい場合、付着物が第1対向部923によって削られる。これにより、調速機綱車72が第1方向Aへ回転するときにスイッチレバー752が付着物によって操作されることが防止される。
【0094】
調速機綱車72が第1方向Aへ回転するときには、調速機綱車72の周方向において第1対向部923の先端部の位置から第1対向部923の基端部の位置に向かって付着物が移動しながら、付着物が第1対向部923によって削られる。これに伴って、第1対向部923によって削られる付着物の部分の位置が調速機綱車72の径方向内側へ連続的に移行する。これにより、調速機綱車72の径方向における第1対向部923の範囲で付着物が第1対向部923によって削られる。
【0095】
第1側面72aに堆積した付着物は、第1対向部923における第1側面72aに対向する縁部によって削られる。第1対向部923によって削られた付着物の屑は、調速機綱車72の第1方向Aへの回転により第1表板面923aに導かれる。第1表板面923aに導かれた付着物の屑は、第1対向部923の先端部から第1対向部923の基端部にわたって第1表板面923aに溜まる。
【0096】
第1対向部923では、第1表板面923aと第1傾斜面925とがなす角度が鋭角になっている。これにより、第1側面72aに堆積した付着物が第1対向部923によって削られやすくなる。また、第1傾斜面925と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。これにより、第1対向部923によって削られた付着物の屑は、第1裏板面923bに導かれにくくなる。
【0097】
また、かご2の上方への移動によって調速機綱車72が第2方向Bへ回転するときにも、調速機綱車72が第1方向Aへ回転するときと同様に、スイッチレバー752が付着物によって誤操作されるおそれがある。
【0098】
本実施の形態では、調速機綱車72が第2方向Bへ回転すると、第1側面72aに堆積した付着物は、スイッチレバー752の位置を通過する前に、第2対向部933の位置を通過する。このとき、付着物の厚さが第2対向部933と第1側面72aとの間の隙間よりも大きい場合、付着物が第2対向部933によって削られる。これにより、調速機綱車72が第2方向Bへ回転するときにスイッチレバー752が付着物によって操作されることが防止される。
【0099】
調速機綱車72が第2方向Bへ回転するときには、調速機綱車72の周方向において第2対向部933の先端部の位置から第2対向部933の基端部の位置に向かって付着物が移動しながら、付着物が第2対向部933によって削られる。これに伴って、第2対向部933によって削られる付着物の部分の位置が調速機綱車72の径方向内側へ連続的に移行する。これにより、調速機綱車72の径方向における第2対向部933の範囲で付着物が第2対向部933によって削られる。
【0100】
第1側面72aに堆積した付着物は、第2対向部933における第1側面72aに対向する縁部によって削られる。第2対向部933によって削られた付着物の屑は、調速機綱車72の第2方向Bへの回転により第2表板面933aに導かれる。第2表板面933aに導かれた付着物の屑は、第2対向部933の先端部から第2対向部933の基端部にわたって第2表板面933aに溜まる。
【0101】
第2対向部933では、第2表板面933aと第2傾斜面935とがなす角度が鋭角になっている。これにより、第1側面72aに堆積した付着物が第2対向部933によって削られやすくなる。また、第2傾斜面935と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。これにより、第2対向部933によって削られた付着物の屑は、第2裏板面933bに導かれにくくなる。
【0102】
このようなエレベーターの調速機7では、スイッチレバー752が調速機綱車72の周方向において第1対向部923と第2対向部933との間に配置されている。このため、調速機綱車72が第1方向Aへ回転したときには、調速機綱車72の第1側面72aに付着した付着物がスイッチレバー752の位置を通過する前に、第1対向部923によって第1側面72aから付着物を除去することができる。また、調速機綱車72が第2方向Bへ回転したときには、調速機綱車72の第1側面72aに付着した付着物がスイッチレバー752の位置を通過する前に、第2対向部933によって第1側面72aから付着物を除去することができる。これにより、調速機綱車72が第1方向A及び第2方向Bのいずれの方向へ回転しても、付着物がスイッチレバー752に達する前に、第1側面72aから付着物を除去することができる。従って、スイッチレバー752の誤操作をより確実に抑制することができる。
【0103】
また、第1外れ止め部922は、調速機綱車72の径方向において調速機綱車72の外周部に対向している。さらに、調速機綱車72における第1側面72a及び第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において、第1外れ止め部922の範囲内に位置している。このため、例えば地震が発生した場合、調速機綱車72の外周部に巻き掛けられた調速機ロープ10が調速機綱車72から外れることを第1外れ止め部922によって抑制することができる。これにより、調速機ロープ10が調速機綱車72から外れることを防止する専用の外れ止め装置を調速機7に別途設ける必要がなくなる。従って、調速機7における部品点数の低減化を図ることができる。
【0104】
また、第1対向部923は、第1外れ止め部922に設けられている。このため、第1外れ止め部922及び第1対向部923のそれぞれによって調速機綱車72の外周部を覆うことができる。これにより、調速機ロープ10が調速機綱車72から外れることをさらに確実に抑制することができる。
【0105】
また、第1対向部923は、第1裏板面923bを調速機綱車72の径方向内側に向けて配置されている。さらに、調速機綱車72の周方向における第1対向部923の両端部のうち、スイッチレバー752から遠い側の先端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、スイッチレバー752に近い側の基端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。このため、調速機綱車72の周方向における第1対向部923の先端部から第1対向部923の基端部にわたって付着物の屑を第1対向部923の第1表板面923aに溜めることができる。これにより、付着物の屑を溜めるスペースを拡大することができ、第1側面72aから除去した付着物の屑が第1側面72aに再付着することをより確実に防止することができる。また、付着物を削る第1対向部923の範囲を拡大することができる。これにより、第1対向部923によって付着物を削りやすくすることができる。
【0106】
また、第1対向部923には、第1側面72aに対して傾斜する第1傾斜面925が形成されている。さらに、第1傾斜面925と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。このため、調速機綱車72が第1方向Aへ回転するときに、付着物の屑が第1傾斜面925及び第1裏板面923bに溜まりにくくすることができ、第1表板面923aに付着物の屑を導きやすくすることができる。これにより、第1表板面923aに付着物の屑をより確実に溜めることができる。また、調速機綱車72が第2方向Bへ回転したときに付着物の屑が第1対向部923から第1側面72aに再付着することをより確実に抑制することもできる。
【0107】
また、第2外れ止め部932は、調速機綱車72の径方向において調速機綱車72の外周部に対向している。さらに、調速機綱車72における第1側面72a及び第2側面72bは、調速機綱車72の軸線方向において、第2外れ止め部932の範囲内に位置している。このため、調速機綱車72の外周部に巻き掛けられた調速機ロープ10が調速機綱車72から外れることを第2外れ止め部932によって抑制することができる。これにより、調速機7における部品点数の低減化を図ることができる。
【0108】
また、第2対向部933は、第2外れ止め部932に設けられている。このため、第2外れ止め部932及び第2対向部933のそれぞれによって調速機綱車72の外周部を覆うことができる。これにより、調速機ロープ10が調速機綱車72から外れることをさらに確実に抑制することができる。
【0109】
また、第2対向部933は、第2裏板面933bを調速機綱車72の径方向内側に向けて配置されている。さらに、調速機綱車72の周方向における第2対向部933の両端部のうち、スイッチレバー752から遠い側の先端部から調速機綱車72の軸線までの距離は、スイッチレバー752に近い側の基端部から調速機綱車72の軸線までの距離よりも大きくなっている。このため、調速機綱車72の周方向における第2対向部933の先端部から第2対向部933の基端部にわたって付着物の屑を第2対向部933の第2表板面933aに溜めることができる。これにより、付着物の屑を溜めるスペースを拡大することができ、第1側面72aから除去した付着物の屑が第1側面72aに再付着することをより確実に防止することができる。また、付着物を削る第2対向部933の範囲を拡大することができる。これにより、第2対向部933によって付着物を削りやすくすることができる。
【0110】
また、第2対向部933には、第1側面72aに対して傾斜する第2傾斜面935が形成されている。さらに、第2傾斜面935と第1側面72aとの間の隙間は、調速機綱車72の径方向内側に向かって広がっている。このため、調速機綱車72が第2方向Bへ回転するときに、付着物の屑が第2傾斜面935及び第2裏板面933bに溜まりにくくすることができ、第2表板面933aに付着物の屑を導きやすくすることができる。これにより、第2表板面933aに付着物の屑をより確実に溜めることができる。また、調速機綱車72が第1方向Aへ回転したときに付着物の屑が第2対向部933から第1側面72aに再付着することをより確実に抑制することもできる。
【0111】
なお、上記の実施の形態では、第1対向部923及び第2対向部933が板状部となっている。しかし、これに限定されない。例えば第1側面72aに沿った断面矩形状の棒状部を第1対向部923としてもよい。また、第1側面72aに沿った断面矩形状の棒状部を第2対向部933としてもよい。このようにしても、第1対向部923及び第2対向部933によって付着物を第1側面72aから除去することができる。
【0112】
また、上記の実施の形態では、第1外れ止め部922及び第2外れ止め部932が調速機綱車72の外周部に対向している。しかし、第1外れ止め部922が調速機綱車72の外周部に対向しないようにしてもよい。また、第2外れ止め部932が調速機綱車72の外周部に対向しないようにしてもよい。例えば、第2側板部713ではなく第1側板部712に取付部材91を取り付けることにより、第1外れ止め部922及び第2外れ止め部932が調速機綱車72の外周部に対向しないようにすることができる。このようにしても、スイッチレバー752の誤作動を第1対向部923及び第2対向部933によって抑制することができる。
【0113】
また、上記の実施の形態では、第1対向部923に第1傾斜面925が形成されている。しかし、第1対向部923に第1傾斜面925を形成しなくてもよい。例えば、第1対向部923において、第1側面72aに対向する面を第1側面72aと平行な面としてもよい。このようにしても、第1対向部923によって付着物を第1側面72aから除去することができる。
【0114】
また、上記の実施の形態では、第2対向部933に第2傾斜面935が形成されている。しかし、第2対向部933に第2傾斜面935を形成しなくてもよい。例えば、第2対向部933において、第1側面72aに対向する面を第1側面72aと平行な面としてもよい。このようにしても、第2対向部933によって付着物を第1側面72aから除去することができる。
【0115】
以上、上記の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【0116】
以下に、本開示に含まれ得る態様の例について、付記として明記する。
(付記1)
かごの移動に伴って移動する調速機ロープが巻き掛けられる調速機綱車と、
前記調速機綱車の回転速度に応じて前記調速機綱車に対して変位するフライウェイトと、
スイッチレバーを有し、前記調速機綱車の回転速度が設定過大速度に達したときに前記フライウェイトによって前記スイッチレバーが操作されるスイッチと、
前記調速機綱車に対向するスクレーパーと
を備え、
前記スイッチレバーは、前記調速機綱車の第1側面及び第2側面のうち、前記第1側面に対向しており、
前記スクレーパーは、第1スクレーパー本体と、第2スクレーパー本体とを有しており、
前記第1スクレーパー本体は、前記第1側面に対向する第1対向部を有しており、
前記第2スクレーパー本体は、前記第1側面に対向する第2対向部を有しており、
前記スイッチレバーは、前記調速機綱車の周方向において前記第1対向部と前記第2対向部との間に配置されており、
前記第1側面と前記第1対向部との間の隙間は、前記第1側面と前記スイッチレバーとの間の隙間よりも狭く、
前記第1側面と前記第2対向部との間の隙間は、前記第1側面と前記スイッチレバーとの間の隙間よりも狭いエレベーターの調速機。
(付記2)
前記第1スクレーパー本体は、前記調速機綱車の径方向において前記調速機綱車の外周部に対向している第1外れ止め部を有しており、
前記第1側面及び前記第2側面は、前記調速機綱車の軸線方向において、前記第1外れ止め部の範囲内に位置しており、
前記第1対向部は、前記第1外れ止め部に設けられている付記1に記載のエレベーターの調速機。
(付記3)
前記第1対向部は、第1表板面及び第1裏板面が形成された板状部であり、
前記第1対向部は、前記第1裏板面を前記調速機綱車の径方向内側に向けて配置されており、
前記調速機綱車の周方向における前記第1対向部の両端部のうち、前記スイッチレバーから遠い側の端部から前記調速機綱車の軸線までの距離は、前記スイッチレバーに近い側の端部から前記調速機綱車の軸線までの距離よりも大きい付記1又は付記2に記載のエレベーターの調速機。
(付記4)
前記第1対向部には、前記第1側面に対して傾斜する第1傾斜面が形成されており、
前記第1傾斜面と前記第1側面との間の隙間は、前記調速機綱車の径方向内側に向かって広がる付記1~付記3のいずれか一項に記載のエレベーターの調速機。
【符号の説明】
【0117】
2 かご、7 調速機、9 スクレーパー、72 調速機綱車、72a 第1側面、72b 第2側面、73 フライウェイト、75 スイッチ、92 第1スクレーパー本体、93 第2スクレーパー本体、752 スイッチレバー、922 第1外れ止め部、923 第1対向部、923a 第1表板面、923b 第1裏板面、925 第1傾斜面、932 第2外れ止め部、933 第2対向部、933a 第2表板面、933b 第2裏板面、935 第2傾斜面。
図1
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図10