(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175259
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】エレベータの上開き式ドア装置
(51)【国際特許分類】
B66B 13/06 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B66B13/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092900
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒谷 佳紀
【テーマコード(参考)】
3F307
【Fターム(参考)】
3F307AA03
3F307BA02
3F307CB27
(57)【要約】
【課題】乗場出入口を部分的に開放することができるエレベータの上開き式ドア装置を得ることを目的とする。
【解決手段】伝達軸31は、通常位置と切り離し位置との間で、伝達軸31の軸方向へ移動可能になっている。そして、伝達軸31が通常位置に位置するとき、可動結合体33が結合溝31aに挿入されていることにより、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が結合状態となる。また、伝達軸31が切り離し位置に移動すると、結合ばね34に抗して、可動結合体33が結合溝31aの外側で伝達軸31に接する状態となり、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が独立回転状態となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達軸と、前記伝達軸とともに回転する第1スプロケットと、前記伝達軸とともに回転する第2スプロケットとを有しているスプロケット組立体、
前記伝達軸を介して前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットを回転させるドアモータ、
前記第1スプロケットに巻かれている第1チェーン、
前記第2スプロケットに巻かれている第2チェーン、
前記第1チェーンにより吊り下げられており、前記第1スプロケットの回転により上下方向へ移動する第1ドア、
前記第2チェーンにより吊り下げられており、かつ乗場出入口が全閉状態のときに前記第1ドアの上側に位置し、前記第2スプロケットの回転により上下方向へ移動する第2ドア、及び
前記スプロケット組立体に対して前記第1ドア及び前記第2ドアとは反対側で、前記第1チェーン及び前記第2チェーンにより吊り下げられているドア用釣合おもり装置
を備え、
前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの少なくともいずれか一方は、切り離し可能スプロケットであり、
前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態は、前記切り離し可能スプロケットが前記伝達軸とともに回転する結合状態と、前記切り離し可能スプロケットが前記伝達軸を中心として前記伝達軸に対して回転可能な独立回転状態との間で切替可能であるエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項2】
前記スプロケット組立体は、
前記切り離し可能スプロケットの径方向へ移動可能に前記切り離し可能スプロケットに設けられている可動結合体と、
前記切り離し可能スプロケットに設けられており、前記可動結合体を前記伝達軸に押し付ける結合ばねと
をさらに有しており、
前記伝達軸は、通常位置と切り離し位置との間で、前記伝達軸の軸方向へ移動可能になっており、
前記伝達軸には、結合溝が設けられており、
前記伝達軸が前記通常位置に位置するとき、前記可動結合体が前記結合溝に挿入されていることにより、前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態が前記結合状態となり、
前記伝達軸が前記切り離し位置に移動すると、前記結合ばねに抗して、前記可動結合体が前記結合溝の外側で前記伝達軸に接する状態となり、前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となる請求項1記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項3】
前記スプロケット組立体は、
前記切り離し可能スプロケットと前記伝達軸との間に設けられており、前記伝達軸とともに回転する内輪
をさらに有しており、
前記可動結合体は、
前記内輪に設けられており、前記結合溝に挿入されるタンブラーピンと、
前記切り離し可能スプロケットに設けられており、かつ前記タンブラーピンに接しているドライバーピンとを有しており、
前記タンブラーピンが前記結合溝に挿入されているとき、前記ドライバーピンは、前記内輪と前記切り離し可能スプロケットとの間に跨っており、
前記タンブラーピンが前記結合溝の外側で前記伝達軸に接しているとき、前記タンブラーピンと前記ドライバーピンとの境界が、前記内輪と前記切り離し可能スプロケットとの境界に位置している請求項2記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項4】
前記スプロケット組立体は、
前記伝達軸を前記通常位置から切り離し位置に移動させるソレノイドコイル
をさらに有している請求項2又は請求項3に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項5】
前記第2スプロケットは、前記切り離し可能スプロケットである請求項1から請求項3でのいずれか1項に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項6】
前記切り離し可能スプロケットは、前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの両方であり、
前記切り離し位置には、第1切り離し位置と、第2切り離し位置とが含まれており、
前記伝達軸が前記第1切り離し位置に移動すると、前記伝達軸に対する前記第1スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となり、
前記伝達軸が前記第2切り離し位置に移動すると、前記伝達軸に対する前記第2スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となる請求項2又は請求項3に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【請求項7】
前記ドア用釣合おもり装置は、
前記第1チェーンにより吊り下げられている第1おもりと、
前記第2チェーンにより吊り下げられており、前記第1おもりとは独立して上下方向へ移動可能な第2おもりと
を有している請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータの上開き式ドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの上下開閉式乗場ドア装置では、乗場出入口が上下開閉式の乗場ドアによって開閉される。乗場ドアは、上ドアと下ドアとからなっている。上ドア及び下ドアは、複数のチェーンによって吊り下げられている。各チェーンは、対応するスプロケットに巻かれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の上下開閉式乗場ドア装置では、例えば緊急対応時に、かごが着床していない乗場階の乗場出入口を開放して、昇降路内を確認しようとすると、上ドア及び下ドアの両方が全開位置に移動する。このため、乗場出入口を部分的に開放することができなかった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、乗場出入口を部分的に開放することができるエレベータの上開き式ドア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータの上開き式ドア装置は、伝達軸と、伝達軸とともに回転する第1スプロケットと、伝達軸とともに回転する第2スプロケットとを有しているスプロケット組立体、伝達軸を介して第1スプロケット及び第2スプロケットを回転させるドアモータ、第1スプロケットに巻かれている第1チェーン、第2スプロケットに巻かれている第2チェーン、第1チェーンにより吊り下げられており、第1スプロケットの回転により上下方向へ移動する第1ドア、第2チェーンにより吊り下げられており、かつ乗場出入口が全閉状態のときに第1ドアの上側に位置し、第2スプロケットの回転により上下方向へ移動する第2ドア、及びスプロケット組立体に対して第1ドア及び第2ドアとは反対側で、第1チェーン及び第2チェーンにより吊り下げられているドア用釣合おもり装置を備え、第1スプロケット及び第2スプロケットの少なくともいずれか一方は、切り離し可能スプロケットであり、伝達軸に対する切り離し可能スプロケットの取付状態は、切り離し可能スプロケットが伝達軸とともに回転する結合状態と、切り離し可能スプロケットが伝達軸を中心として伝達軸に対して回転可能な独立回転状態との間で切替可能である。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベータの上開き式ドア装置によれば、乗場出入口を部分的に開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1によるエレベータの上開き式ドア装置を模式的に示す構成図である。
【
図2】
図1の乗場出入口の全開状態を示す構成図である。
【
図3】
図1のスプロケット組立体を拡大して示す断面図である。
【
図5】
図3の伝達軸を切り離し位置に移動させた状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の低速側スプロケットを伝達軸に対して回転させた状態を示す断面図である。
【
図8】
図1の低速ドアを下方へ移動させた状態を示す構成図である。
【
図9】実施の形態2によるスプロケット組立体の要部を示す断面図である。
【
図10】
図9の伝達軸が矢印X方向へ移動した状態を示す断面図である。
【
図11】
図9の伝達軸が矢印XI方向へ移動した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータの上開き式ドア装置を模式的に示す構成図である。
図1において、乗場出入口11の上方には、支持部12が設けられている。支持部12には、ドアモータ13、スプロケット組立体14、及び補助スプロケット15が支持されている。
【0010】
スプロケット組立体14は、第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、低速側スプロケット18、及びプーリ19を有している。
【0011】
第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17は、それぞれ実施の形態1における第1スプロケットである。低速側スプロケット18は、実施の形態1における第2スプロケットである。
【0012】
第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、低速側スプロケット18、及びプーリ19は、
図1では互いにずらして示されているが、同軸上に配置されている。
【0013】
ドアモータ13の駆動力は、ベルト20を介して、プーリ19に伝達される。第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、及び低速側スプロケット18は、プーリ19とともに回転する。
【0014】
第1高速側スプロケット16及び補助スプロケット15には、第1高速側チェーン21が巻かれている。第2高速側スプロケット17には、第2高速側チェーン22が巻かれている。第1高速側チェーン21及び第2高速側チェーン22は、実施の形態1における第1チェーンである。
【0015】
低速側スプロケット18には、低速側チェーン23が巻かれている。低速側チェーン23は、実施の形態1における第2チェーンである。
【0016】
乗場出入口11は、第1ドアとしての高速ドア24と、第2ドアとしての低速ドア25とによって開閉される。低速ドア25は、乗場出入口11が全閉状態のときに、高速ドア24の上側に位置している。また、
図1では低速ドア25が高速ドア24から離れているが、乗場出入口11が全閉状態のとき、低速ドア25の下端部は、高速ドア24の上端部と重なっている。
【0017】
高速ドア24には、第1高速側チェーン21の第1端部と、第2高速側チェーン22の第1端部とが接続されている。即ち、高速ドア24は、第1高速側チェーン21と第2高速側チェーン22とにより吊り下げられている。また、高速ドア24は、第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17の回転により、上下方向へ移動する。
【0018】
低速ドア25は、低速側チェーン23により吊り下げられている。低速側チェーン23の第1端部は、支持部12に接続されている。
【0019】
低速ドア25の上部には、第1吊りスプロケット26と、第2吊りスプロケット27とが設けられている。第1吊りスプロケット26及び第2吊りスプロケット27は、低速ドア25の幅方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0020】
第1吊りスプロケット26及び第2吊りスプロケット27には、低速側チェーン23における第1端部と低速側スプロケット18との間の部分が巻かれている。これにより、第1吊りスプロケット26及び第2吊りスプロケット27は、動滑車として機能する。
【0021】
低速ドア25は、低速側スプロケット18の回転により、上下方向へ移動する。また、低速ドア25は、乗場出入口11の開閉時に、高速ドア24よりも低速で移動する。
【0022】
第1高速側チェーン21の第2端部、第2高速側チェーン22の第2端部、及び低速側チェーン23の第2端部には、ドア用釣合おもり装置28が接続されている。即ち、ドア用釣合おもり装置28は、スプロケット組立体14に対して高速ドア24及び低速ドア25とは反対側で、第1高速側チェーン21、第2高速側チェーン22、及び低速側チェーン23により吊り下げられている。
【0023】
ドア用釣合おもり装置28は、第1おもりとしての高速側おもり29と、第2おもりとしての低速側おもり30とを有している。
【0024】
高速側おもり29は、第1高速側チェーン21の第2端部と、第2高速側チェーン22の第2端部とに接続されている。即ち、高速側おもり29は、第1高速側チェーン21及び第2高速側チェーン22により吊り下げられている。
【0025】
低速側おもり30は、低速側チェーン23の第2端部に接続されている。即ち、低速側おもり30は、低速側チェーン23により吊り下げられている。低速側おもり30は、高速側おもり29とは独立して上下方向へ移動可能である。
【0026】
実施の形態1の上開き式ドア装置は、ドアモータ13、スプロケット組立体14、補助スプロケット15、ベルト20、第1高速側チェーン21、第2高速側チェーン22、低速側チェーン23、高速ドア24、低速ドア25、第1吊りスプロケット26、第2吊りスプロケット27、及びドア用釣合おもり装置28を有している。
【0027】
図1の状態から、ドアモータ13により、プーリ19を
図1の時計方向へ回転させると、第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、及び低速側スプロケット18が、プーリ19とともに同方向へ回転する。
【0028】
これにより、高速ドア24及び低速ドア25が上方向へ移動するとともに、高速側おもり29及び低速側おもり30が下方向へ移動し、
図2に示すように、乗場出入口11が全開状態となる。このとき、高速ドア24及び低速ドア25は、同時に全開位置に達する。また、高速ドア24及び低速ドア25は、全開位置に位置するとき、互いに重なっている。
【0029】
図2の状態から、ドアモータ13により、プーリ19を
図2の反時計方向へ回転させると、第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、及び低速側スプロケット18が、プーリ19とともに同方向へ回転する。
【0030】
これにより、高速ドア24及び低速ドア25が下方向へ移動するとともに、高速側おもり29及び低速側おもり30が上方向へ移動し、
図1に示すように、乗場出入口11が全閉状態となる。このとき、高速ドア24及び低速ドア25は、同時に全閉位置に達する。
【0031】
図3は、
図1のスプロケット組立体14を拡大して示す断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図1では省略したが、スプロケット組立体14は、伝達軸31、円板状の内輪32、可動結合体33、結合ばね34、戻しばね35、及びソレノイドコイル36をさらに有している。
【0032】
伝達軸31の軸心に直角な断面の形状は、矩形である。伝達軸31は、第1高速側スプロケット16の中心、第2高速側スプロケット17の中心、内輪32の中心、及びプーリ19の中心を、スライド可能に貫通している。
【0033】
伝達軸31は、プーリ19が回転することにより、伝達軸31の軸心を中心として回転する。第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、及び内輪32は、伝達軸31とともに回転する。
【0034】
低速側スプロケット18は、内輪32の外周に設けられている。即ち、内輪32は、低速側スプロケット18と伝達軸31との間に設けられている。通常時には、低速側スプロケット18は、内輪32とともに回転する。ドアモータ13は、ベルト20、プーリ19、及び伝達軸31を介して、第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、及び低速側スプロケット18を回転させる。
【0035】
伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態は、結合状態と独立回転状態との間で切替可能である。実施の形態1における切り離し可能スプロケットは、低速側スプロケット18である。
【0036】
結合状態は、低速側スプロケット18が伝達軸31及び内輪32とともに回転する状態である。独立回転状態は、低速側スプロケット18が伝達軸31を中心として伝達軸31及び内輪32に対して回転可能な状態である。
【0037】
伝達軸31の外周面の一部には、結合溝31aが設けられている。伝達軸31の軸方向における結合溝31aの第1端部には、傾斜面31bが設けられている。これにより、結合溝31aは、第1端部において徐々に浅くなっている。
【0038】
伝達軸31は、
図3に示す通常位置と、
図5に示す切り離し位置との間で、第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、低速側スプロケット18、及びプーリ19に対して、伝達軸31の軸方向へ移動可能になっている。伝達軸31の軸方向は、伝達軸31の軸心に平行な方向であり、
図3の左右方向である。
【0039】
支持部12に対する伝達軸31の軸方向への第1高速側スプロケット16、第2高速側スプロケット17、低速側スプロケット18、及びプーリ19の移動は、規制されている。
【0040】
可動結合体33は、低速側スプロケット18及び内輪32の内部に設けられている。また、可動結合体33は、低速側スプロケット18の径方向へ移動可能である。低速側スプロケット18の径方向は、伝達軸31の軸心に直交する方向である。
【0041】
結合ばね34は、低速側スプロケット18の内部に設けられている。また、結合ばね34は、可動結合体33を伝達軸31の外周に押し付けている。
【0042】
可動結合体33は、タンブラーピン37と、ドライバーピン38とを有している。タンブラーピン37は、内輪32内に設けられている。また、伝達軸31が通常位置に位置しているとき、タンブラーピン37は、結合溝31aに挿入されている。
【0043】
ドライバーピン38は、低速側スプロケット18に設けられている。また、ドライバーピン38は、タンブラーピン37における伝達軸31とは反対側の端部に接している。
【0044】
図3に示すように、伝達軸31が通常位置に位置するとき、タンブラーピン37は結合溝31aに挿入されている。このとき、ドライバーピン38は、
図3及び
図4に示すように、内輪32と低速側スプロケット18との間に跨っている。このため、内輪32の回転は、ドライバーピン38を介して低速側スプロケット18に伝達される。即ち、タンブラーピン37が結合溝31aに挿入されているとき、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が結合状態となる。
【0045】
一方、
図5に示すように、伝達軸31が切り離し位置に移動すると、結合ばね34に抗して、タンブラーピン37が結合溝31aの外側で伝達軸31に接する状態となる。このとき、タンブラーピン37とドライバーピン38との境界が、
図5及び
図6に示すように、内輪32と低速側スプロケット18との境界に位置している。
【0046】
このため、内輪32の回転は、可動結合体33によって低速側スプロケット18に伝達されず、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態は、独立回転状態となる。
【0047】
戻しばね35は、通常位置に戻す力を伝達軸31に付与している。ソレノイドコイル36は、戻しばね35に抗して、伝達軸31を通常位置から切り離し位置に移動させる電磁力を発生する。
【0048】
図7は、
図6の低速側スプロケット18を伝達軸31及び内輪32に対して回転させた状態を示す断面図である。独立回転状態では、可動結合体33がタンブラーピン37とドライバーピン38とに分離され、低速側スプロケット18が伝達軸31及び内輪32に対して独立して回転可能となる。
【0049】
図8は、
図1の低速ドア25を下方へ移動させた状態を示す構成図である。独立回転状態では、低速側スプロケット18が伝達軸31及び内輪32から切り離されているため、低速ドア25は、手動により下方へ移動可能である。
【0050】
このとき、低速側おもり30は、上方へ移動するが、高速ドア24及び高速側おもり29は動かない。従って、乗場出入口11は、高速ドア24よりも上の部分のみが開放されている。
【0051】
このようなエレベータの上開き式ドア装置では、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が、結合状態と独立回転状態との間で切替可能である。また、独立回転状態は、低速側スプロケット18が伝達軸31を中心として伝達軸31に対して回転可能な状態である。このため、乗場出入口11を部分的に開放することができる。
【0052】
また、伝達軸31は、通常位置と切り離し位置との間で、伝達軸31の軸方向へ移動可能になっている。そして、伝達軸31が通常位置に位置するとき、可動結合体33が結合溝31aに挿入されていることにより、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が結合状態となる。また、伝達軸31が切り離し位置に移動すると、結合ばね34に抗して、可動結合体33が結合溝31aの外側で伝達軸31に接する状態となり、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が独立回転状態となる。
【0053】
このため、簡単な構成により、結合状態と独立回転状態との切替をより確実に行うことができる。
【0054】
また、タンブラーピン37が結合溝31aに挿入されているとき、ドライバーピン38は、内輪32と低速側スプロケット18との間に跨っている。また、タンブラーピン37が結合溝31aの外側で伝達軸31に接しているとき、タンブラーピン37とドライバーピン38との境界が、内輪32と低速側スプロケット18との境界に位置している。
【0055】
このため、簡単な構成により、結合状態と独立回転状態との切替をより確実に行うことができる。
【0056】
また、ソレノイドコイル36は、伝達軸31を通常位置から切り離し位置に移動させる電磁力を発生する。このため、結合状態から独立回転状態への切替を、乗場から容易に行うことができる。
【0057】
また、切り離し可能スプロケットは、低速側スプロケット18である。このため、乗場出入口11の上半分のみを開放することができる。従って、例えば緊急対応時に、昇降路内を確認する場合に、高速ドア24を手摺として利用しつつ、昇降路内を容易に確認することができる。
【0058】
また、ドア用釣合おもり装置28は、高速側おもり29と低速側おもり30とに分割されている。そして、低速側おもり30は、高速側おもり29とは独立して上下方向へ移動可能である。
【0059】
このため、簡単な構成により、低速ドア25のみを容易に手動で移動させることができる。
【0060】
実施の形態2.
次に、
図9は、実施の形態2によるスプロケット組立体14の要部を示す断面図である。
図10は、
図9の伝達軸31が矢印X方向へ移動した状態を示す断面図である。
図11は、
図9の伝達軸31が矢印XI方向へ移動した状態を示す断面図である。
【0061】
実施の形態2における切り離し可能スプロケットは、第1スプロケット及び第2スプロケットの両方である。即ち、切り離し可能スプロケットは、第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17と、低速側スプロケット18との全てである。
【0062】
実施の形態2では、第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17と伝達軸31との間にも、それぞれ内輪32が設けられている。また、第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17にも、それぞれ可動結合体33及び結合ばね34が設けられている。
【0063】
伝達軸31は、
図9に示す通常位置と、
図10に示す第1切り離し位置と、
図11に示す第2切り離し位置との間で、伝達軸31の軸方向へ移動可能になっている。即ち、実施の形態2における切り離し位置には、第1切り離し位置と、第2切り離し位置とが含まれている。伝達軸31は、例えば、図示しないアクチュエータによって、移動させることができる。
【0064】
伝達軸31の軸方向における結合溝31aの第2端部には、傾斜面31cが設けられている。
【0065】
図9に示すように、伝達軸31が通常位置に位置するとき、全てのタンブラーピン37が結合溝31aに挿入されている。
【0066】
このとき、第1高速側スプロケット16と内輪32との間、第2高速側スプロケット17と内輪32との間、及び低速側スプロケット18と内輪32との間には、それぞれドライバーピン38が存在している。このため、伝達軸31の回転は、第1高速側スプロケット16と、第2高速側スプロケット17と、低速側スプロケット18とに伝達される。
【0067】
伝達軸31が第1切り離し位置に移動すると、
図10に示すように、伝達軸31に対する第1高速側スプロケット16及び第2高速側スプロケット17の取付状態が独立回転状態となる。この状態では、高速ドア24を手動で上方向へ移動させることができる。
【0068】
伝達軸31が第2切り離し位置に移動すると、
図11に示すように、伝達軸31に対する低速側スプロケット18の取付状態が独立回転状態となる。この状態では、実施の形態1と同様に、低速ドア25を手動で下方向へ移動させることができる。
【0069】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0070】
このような構成では、伝達軸31を第1切り離し位置に移動させることにより、乗場出入口11の下半分のみを開放することができる。また、伝達軸31を第2切り離し位置に移動させることにより、乗場出入口11の上半分のみを開放することができる。従って、必要に応じて乗場出入口11の下半分又は上半分を選択的に開放することができる。
【0071】
なお、切り離し可能スプロケットは、第1スプロケットのみであってもよい。
【0072】
また、第1スプロケット及び第2スプロケットのいずれか一方のみが切り離し可能スプロケットである場合、切り離し可能スプロケットを停止させたまま、他方のスプロケットをドアモータ13により回転させてもよい。これにより、他方のスプロケットに対応するドアのみを電動で動かすことができる。
【0073】
また、実施の形態1、2において、伝達軸31は、乗場からの手動操作により移動可能となっていてもよい。例えば、伝達軸31にワイヤが接続されており、乗場でワイヤを手動操作することにより、伝達軸31が移動し、伝達軸31に対する切り離し可能スプロケットの取付状態が切り替えられてもよい。これにより、電源が無い状態でも、伝達軸31に対する切り離し可能スプロケットの取付状態を切り替えることができる。
【0074】
また、実施の形態1、2において、ドアの枚数は、3枚以上であってもよい。
【0075】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0076】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0077】
(付記1)
伝達軸と、前記伝達軸とともに回転する第1スプロケットと、前記伝達軸とともに回転する第2スプロケットとを有しているスプロケット組立体、
前記伝達軸を介して前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットを回転させるドアモータ、
前記第1スプロケットに巻かれている第1チェーン、
前記第2スプロケットに巻かれている第2チェーン、
前記第1チェーンにより吊り下げられており、前記第1スプロケットの回転により上下方向へ移動する第1ドア、
前記第2チェーンにより吊り下げられており、かつ乗場出入口が全閉状態のときに前記第1ドアの上側に位置し、前記第2スプロケットの回転により上下方向へ移動する第2ドア、及び
前記スプロケット組立体に対して前記第1ドア及び前記第2ドアとは反対側で、前記第1チェーン及び前記第2チェーンにより吊り下げられているドア用釣合おもり装置
を備え、
前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの少なくともいずれか一方は、切り離し可能スプロケットであり、
前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態は、前記切り離し可能スプロケットが前記伝達軸とともに回転する結合状態と、前記切り離し可能スプロケットが前記伝達軸を中心として前記伝達軸に対して回転可能な独立回転状態との間で切替可能であるエレベータの上開き式ドア装置。
(付記2)
前記スプロケット組立体は、
前記切り離し可能スプロケットの径方向へ移動可能に前記切り離し可能スプロケットに設けられている可動結合体と、
前記切り離し可能スプロケットに設けられており、前記可動結合体を前記伝達軸に押し付ける結合ばねと
をさらに有しており、
前記伝達軸は、通常位置と切り離し位置との間で、前記伝達軸の軸方向へ移動可能になっており、
前記伝達軸には、結合溝が設けられており、
前記伝達軸が前記通常位置に位置するとき、前記可動結合体が前記結合溝に挿入されていることにより、前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態が前記結合状態となり、
前記伝達軸が前記切り離し位置に移動すると、前記結合ばねに抗して、前記可動結合体が前記結合溝の外側で前記伝達軸に接する状態となり、前記伝達軸に対する前記切り離し可能スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となる付記1記載のエレベータの上開き式ドア装置。
(付記3)
前記スプロケット組立体は、
前記切り離し可能スプロケットと前記伝達軸との間に設けられており、前記伝達軸とともに回転する内輪
をさらに有しており、
前記可動結合体は、
前記内輪に設けられており、前記結合溝に挿入されるタンブラーピンと、
前記切り離し可能スプロケットに設けられており、かつ前記タンブラーピンに接しているドライバーピンとを有しており、
前記タンブラーピンが前記結合溝に挿入されているとき、前記ドライバーピンは、前記内輪と前記切り離し可能スプロケットとの間に跨っており、
前記タンブラーピンが前記結合溝の外側で前記伝達軸に接しているとき、前記タンブラーピンと前記ドライバーピンとの境界が、前記内輪と前記切り離し可能スプロケットとの境界に位置している付記2記載のエレベータの上開き式ドア装置。
(付記4)
前記スプロケット組立体は、
前記伝達軸を前記通常位置から切り離し位置に移動させるソレノイドコイル
をさらに有している付記2又は付記3に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
(付記5)
前記第2スプロケットは、前記切り離し可能スプロケットである付記1から付記4までのいずれか1項に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
(付記6)
前記切り離し可能スプロケットは、前記第1スプロケット及び前記第2スプロケットの両方であり、
前記切り離し位置には、第1切り離し位置と、第2切り離し位置とが含まれており、
前記伝達軸が前記第1切り離し位置に移動すると、前記伝達軸に対する前記第1スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となり、
前記伝達軸が前記第2切り離し位置に移動すると、前記伝達軸に対する前記第2スプロケットの取付状態が前記独立回転状態となる付記2から付記4までのいずれか1項に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
(付記7)
前記ドア用釣合おもり装置は、
前記第1チェーンにより吊り下げられている第1おもりと、
前記第2チェーンにより吊り下げられており、前記第1おもりとは独立して上下方向へ移動可能な第2おもりと
を有している付記1から付記6までのいずれか1項に記載のエレベータの上開き式ドア装置。
【符号の説明】
【0078】
11 乗場出入口、13 ドアモータ、14 スプロケット組立体、16 第1高速側スプロケット(第1スプロケット)、17 第2高速側スプロケット(第1スプロケット)、18 低速側スプロケット(第2スプロケット)、21 第1高速側チェーン(第1チェーン)、22 第2高速側チェーン(第1チェーン)、23 低速側チェーン(第2チェーン)、24 高速ドア(第1ドア)、25 低速ドア(第2ドア)、28 ドア用釣合おもり装置、29 高速側おもり(第1おもり)、30 低速側おもり(第2おもり)。