(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175260
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】回転負荷装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/16 20060101AFI20241211BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B62D1/16
B62D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092901
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆英
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎太朗
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA11
(57)【要約】
【課題】機械部品のみで回転反力を発生することが可能な回転負荷装置を提供する。
【解決手段】回転軸15の外周に軸方向にスライド可能に嵌合するスライド筒16と、スライド筒16を軸方向に付勢する弾性部材17とを有し、スライド筒16には、周方向に沿って軸方向位置が変化するカム溝30が形成され、回転軸15の外周には、回転軸15が回転したときにカム溝30内を摺動するカムピン31が設けられ、弾性部材17からスライド筒16とカムピン31とを介して回転軸15に伝達する弾性力によって回転反力を発生する回転負荷装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(14)と、
前記ハウジング(14)に対して回転可能に支持された回転軸(15)と、
前記ハウジング(14)に対して回り止めされ、前記回転軸(15)の外周に軸方向にスライド可能に嵌合するスライド筒(16)と、
前記スライド筒(16)を軸方向に付勢する弾性部材(17)と、を有し、
前記スライド筒(16)には、周方向に沿って軸方向位置が変化するカム溝(30)が形成され、
前記回転軸(15)の外周には、回転軸(15)が回転したときに前記カム溝(30)内を摺動することで前記スライド筒(16)を軸方向移動させるカムピン(31)が設けられ、
前記弾性部材(17)は、前記回転軸(15)が回転したときに前記スライド筒(16)の軸方向移動により弾性変形するように設けられ、その弾性部材(17)から前記スライド筒(16)と前記カムピン(31)とを介して前記回転軸(15)に伝達する弾性力によって回転反力を発生する回転負荷装置。
【請求項2】
前記ハウジング(14)に対して回り止めされ、軸方向に延びる転走溝(28)を内周にもつ外輪(23)と、
前記スライド筒(16)を径方向に貫通して形成された玉保持穴(29)に保持され、前記転走溝(28)に転がり接触する玉(27)と、を更に有し、
前記玉(27)と前記転走溝(28)の係合により前記スライド筒(16)が前記ハウジング(14)に対して回り止めされている請求項1に記載の回転負荷装置。
【請求項3】
前記転走溝(28)が、前記外輪(23)の内周に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられ、
前記玉(27)および前記玉保持穴(29)も、前記スライド筒(16)に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられている請求項2に記載の回転負荷装置。
【請求項4】
前記玉(27)および前記玉保持穴(29)が、前記スライド筒(16)の同じ周方向位置に軸方向に間隔をおいて2箇所以上設けられている請求項2または3に記載の回転負荷装置。
【請求項5】
前記カム溝(30)は、カム溝(30)の周方向中央から周方向一方と周方向他方のいずれに向かってもカム溝(30)の軸方向位置が軸方向の一方側に変化するV字状に形成され、
前記弾性部材(17)は、前記スライド筒(16)を軸方向の前記一方側に付勢するように設けられている請求項1から3のいずれかに記載の回転負荷装置。
【請求項6】
前記回転軸(15)と前記ハウジング(14)のうちの一方の部材に、360°未満の角度範囲で周方向に延びるストッパ溝(33)が設けられ、他方の部材に、前記ストッパ溝(33)内に位置するストッパ突起(34)が設けられ、
前記回転軸(15)が回転したときに、前記カムピン(31)が前記カム溝(30)の周方向端部に当接するよりも前に、前記ストッパ突起(34)が前記ストッパ溝(33)の周方向端部に当接することで、前記回転軸(15)の回転可能範囲を規制する請求項1から3のいずれかに記載の回転負荷装置。
【請求項7】
前記回転軸(15)の回転角度を検知する回転角センサ(12)が設けられている請求項1から3のいずれかに記載の回転負荷装置。
【請求項8】
外部から入力される回転を減速して前記回転軸(15)に伝達する減速機(51)を更に有し、
前記カム溝(30)が、前記スライド筒(16)に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられ、
前記カムピン(31)も、前記回転軸(15)の外周に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられている請求項1から3のいずれかに記載の回転負荷装置。
【請求項9】
前記減速機(51)は、外部から回転が入力される回転入力部(52)の回転中心と、前記回転入力部(52)の回転を減速して出力する回転出力部(55)の回転中心とが同一直線上に位置するように構成され、
前記回転入力部(52)は、外部から回転入力部(52)に回転が入力されたときに回転入力部(52)の回転中心まわりに回転入力部(52)と一体に回転移動する入力側凸部(60)を有し、前記回転出力部(55)は、外部から前記回転入力部(52)に回転が入力されたときに、前記入力側凸部(60)と同じ軸方向位置を、回転出力部(55)の回転中心まわりに回転出力部(55)と一体に回転移動する出力側凸部(61)を有し、
前記入力側凸部(60)と前記出力側凸部(61)は、外部から前記回転入力部(52)に回転が入力されたときに前記入力側凸部(60)が前記出力側凸部(61)に追いついて当接することで、前記回転入力部(52)の回転可能範囲を規制する請求項8に記載の回転負荷装置。
【請求項10】
前記回転入力部(52)の回転可能範囲が360°以上の大きさの角度範囲に設定されている請求項9に記載の回転負荷装置。
【請求項11】
前記減速機(51)は、前記回転軸(15)の回転中心と同一直線上に回転中心をもつように配置されたサンギヤ(52)と、前記ハウジング(14)の内周に固定して設けられた内歯のリングギヤ(53)と、前記リングギヤ(53)と前記サンギヤ(52)の間に周方向に間隔をおいて配置され、前記リングギヤ(53)と前記サンギヤ(52)に同時に噛み合う複数の遊星ギヤ(54)と、前記複数の遊星ギヤ(54)を各遊星ギヤ(54)の中心まわりに自転可能かつ前記サンギヤ(52)まわりに公転可能に支持する遊星キャリヤ(55)とを有する遊星歯車減速機であり、前記サンギヤ(52)が、外部から回転が入力される回転入力部(52)を構成し、前記遊星キャリヤ(55)が、前記回転入力部(52)の回転を減速して出力する回転出力部(55)を構成する請求項8に記載の回転負荷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転反力を発生する回転負荷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールに操舵反力を付与する用途に使用される回転負荷装置として、特許文献1のものが知られている。特許文献1の回転負荷装置は、ステアリングホイールに接続するステアリングシャフトと一体に回転する円筒状のドラムと、そのドラムの外周に摩擦接触する帯状部材と、その帯状部材の張力を調整するコイルばねとを有し、運転者がステアリングホイールを回転操作すると、ドラムと帯状部材の間の摩擦抵抗によって回転反力を発生するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、ドラムと帯状部材の間の摩擦抵抗によって回転反力を発生するようにしたのでは、常にステアリングホイールの回転方向と逆向きの一定の大きさの回転反力(回転抵抗)が発生するので、ステアリングホイールを中立位置(車両が直進するときのステアリングホイールの位置)から回転させる操作をするときも、その後、ステアリングホイールを中立位置に戻す操作をするときも、ステアリングホイールの回転方向とは逆向きの同じ大きさの回転反力が発生することとなる。
【0005】
しかしながら、ステアリングホイールを中立位置に戻す操作をするときに、ステアリングホイールを中立位置から回転させる操作をするときと同じ大きさの回転反力が発生するのでは、運転者によるステアリングホイールの操舵フィーリングが重たいものとなってしまう。
【0006】
ここで、本願の発明者らは、ステアリングホイールを中立位置に戻す力を回転負荷装置で発生させることができれば、運転者によるステアリングホイールの操舵フィーリングを向上させることが可能となると考えた。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、機械部品のみで回転反力を発生することが可能であり、ステアリングホイールに操舵反力を付与する用途に好適な回転負荷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の回転負荷装置を提供する。
[構成1]
ハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に支持された回転軸と、
前記ハウジングに対して回り止めされ、前記回転軸の外周に軸方向にスライド可能に嵌合するスライド筒と、
前記スライド筒を軸方向に付勢する弾性部材と、を有し、
前記スライド筒には、周方向に沿って軸方向位置が変化するカム溝が形成され、
前記回転軸の外周には、回転軸が回転したときに前記カム溝内を摺動することで前記スライド筒を軸方向移動させるカムピンが設けられ、
前記弾性部材は、前記回転軸が回転したときに前記スライド筒の軸方向移動により弾性変形するように設けられ、その弾性部材から前記スライド筒と前記カムピンとを介して前記回転軸に伝達する弾性力によって回転反力を発生する回転負荷装置。
【0009】
この構成を採用すると、外部から回転軸に回転が入力され、回転軸が回転したときに、回転軸の外周のカムピンが、スライド筒のカム溝内を摺動しながら、回転軸と一体に回転移動する。ここで、スライド筒は、ハウジングに対して回り止めされ、スライド筒のカム溝は、周方向に沿って軸方向位置が変化するように形成されているので、カムピンがカム溝内を摺動しながら回転軸と一体に回転移動すると、そのカムピンの回転移動に応じてスライド筒が軸方向移動する。そして、そのスライド筒の軸方向移動によって弾性部材が弾性変形し、その弾性部材からスライド筒とカムピンとを介して回転軸に伝達する弾性力によって、回転軸の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生する。このように、外部から回転が入力されたときに、機械部品のみで回転反力を発生することが可能である。また、回転軸の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生するので、ステアリングホイールに操舵反力を付与する用途に好適である。
【0010】
[構成2]
前記ハウジングに対して回り止めされ、軸方向に延びる転走溝を内周にもつ外輪と、
前記スライド筒を径方向に貫通して形成された玉保持穴に保持され、前記転走溝に転がり接触する玉と、を更に有し、
前記玉と前記転走溝の係合により前記スライド筒が前記ハウジングに対して回り止めされている構成1に記載の回転負荷装置。
【0011】
この構成を採用すると、外輪がハウジングに回り止めされ、その外輪の内周を軸方向に延びる転走溝に、スライド筒の玉保持穴に保持した玉が転がり接触しているので、スライド筒が軸方向移動するときの摩擦抵抗をきわめて小さく抑えながら、スライド筒をハウジングに対して回り止めすることが可能となる。そのため、スライド筒の軸方向移動が円滑となり、安定した大きさの回転反力を発生することができる。
【0012】
[構成3]
前記転走溝が、前記外輪の内周に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられ、
前記玉および前記玉保持穴も、前記スライド筒に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられている構成2に記載の回転負荷装置。
【0013】
この構成を採用すると、スライド筒が周方向に間隔をおいた3箇所以上の位置で軸方向に移動可能に案内されるので、スライド筒の中心位置が安定し、スライド筒の動作を特に安定したものとすることができる。
【0014】
[構成4]
前記玉および前記玉保持穴が、前記スライド筒の同じ周方向位置に軸方向に間隔をおいて2箇所以上設けられている構成2または3に記載の回転負荷装置。
【0015】
この構成を採用すると、スライド筒が軸方向に間隔をおいた2箇所以上の位置で軸方向に移動可能に案内されるので、スライド筒の傾きが防止され、スライド筒の動作を特に安定したものとすることができる。
【0016】
[構成5]
前記カム溝は、カム溝の周方向中央から周方向一方と周方向他方のいずれに向かってもカム溝の軸方向位置が軸方向の一方側に変化するV字状に形成され、
前記弾性部材は、前記スライド筒を軸方向の前記一方側に付勢するように設けられている構成1から4のいずれかに記載の回転負荷装置。
【0017】
この構成を採用すると、回転軸を周方向一方と周方向他方のいずれに回転させても、その回転方向とは逆方向の回転反力を発生することが可能となる。そのため、ステアバイワイヤ方式の操舵装置の用途に特に好適である。
【0018】
[構成6]
前記回転軸と前記ハウジングのうちの一方の部材に、360°未満の角度範囲で周方向に延びるストッパ溝が設けられ、他方の部材に、前記ストッパ溝内に位置するストッパ突起が設けられ、
前記回転軸が回転したときに、前記カムピンが前記カム溝の周方向端部に当接するよりも前に、前記ストッパ突起が前記ストッパ溝の周方向端部に当接することで、前記回転軸の回転可能範囲を規制する構成1から5のいずれかに記載の回転負荷装置。
【0019】
この構成を採用すると、回転軸を回転可能範囲の限界まで回転させたときに、カムピンがカム溝の周方向端部に当接するのを防止することができるので、カムピンおよびカム溝の耐久性を確保することが可能となる。
【0020】
[構成7]
前記回転軸の回転角度を検知する回転角センサが設けられている構成1から6のいずれかに記載の回転負荷装置。
【0021】
この構成を採用すると、回転軸の回転角度を回転角センサで検知するので、ステアバイワイヤ方式の操舵装置の用途に特に好適である。
【0022】
[構成8]
外部から入力される回転を減速して前記回転軸に伝達する減速機を更に有し、
前記カム溝が、前記スライド筒に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられ、
前記カムピンも、前記回転軸の外周に周方向に間隔をおいて3箇所以上設けられている構成1から7のいずれかに記載の回転負荷装置。
【0023】
この構成を採用すると、外部から入力される回転を減速して回転軸に伝達する減速機を有するので、外部から入力される回転角度よりも、回転軸の回転角度の方が小さくなり、カム溝の周方向幅を小さく設定することができる。そのため、周方向に3箇所以上のカム溝を設けることができ、スライド筒の中心位置が安定し、スライド筒の動作を特に安定したものとすることが可能となる。
【0024】
[構成9]
前記減速機は、外部から回転が入力される回転入力部の回転中心と、前記回転入力部の回転を減速して出力する回転出力部の回転中心とが同一直線上に位置するように構成され、
前記回転入力部は、外部から回転入力部に回転が入力されたときに回転入力部の回転中心まわりに回転入力部と一体に回転移動する入力側凸部を有し、前記回転出力部は、外部から前記回転入力部に回転が入力されたときに、前記入力側凸部と同じ軸方向位置を、回転出力部の回転中心まわりに回転出力部と一体に回転移動する出力側凸部を有し、
前記入力側凸部と前記出力側凸部は、外部から前記回転入力部に回転が入力されたときに前記入力側凸部が前記出力側凸部に追いついて当接することで、前記回転入力部の回転可能範囲を規制する構成8に記載の回転負荷装置。
【0025】
この構成を採用すると、減速機の回転入力部と回転出力部の回転速度差を利用して回転入力部の回転可能範囲を規制するので、回転入力部の回転可能範囲を大きく設定(例えば360°以上の大きさの角度範囲に設定)することが可能となる。
【0026】
[構成10]
前記回転入力部の回転可能範囲が360°以上の大きさの角度範囲に設定されている構成9に記載の回転負荷装置。
【0027】
[構成11]
前記減速機は、前記回転軸の回転中心と同一直線上に回転中心をもつように配置されたサンギヤと、前記ハウジングの内周に固定して設けられた内歯のリングギヤと、前記リングギヤと前記サンギヤの間に周方向に間隔をおいて配置され、前記リングギヤと前記サンギヤに同時に噛み合う複数の遊星ギヤと、前記複数の遊星ギヤを各遊星ギヤの中心まわりに自転可能かつ前記サンギヤまわりに公転可能に支持する遊星キャリヤとを有する遊星歯車減速機であり、前記サンギヤが、外部から回転が入力される回転入力部を構成し、前記遊星キャリヤが、前記回転入力部の回転を減速して出力する回転出力部を構成する構成9から11のいずれかに記載の回転負荷装置。
【0028】
この構成を採用すると、減速機を回転軸の回転中心と同一直線上にコンパクトに配置することができ、減速機の構成も簡単で低コストである。
【発明の効果】
【0029】
この発明の回転負荷装置は、外部から回転軸に回転が入力され、回転軸が回転したときに、回転軸の外周のカムピンが、スライド筒のカム溝内を摺動しながら、回転軸と一体に回転移動する。ここで、スライド筒は、ハウジングに対して回り止めされ、スライド筒のカム溝は、周方向に沿って軸方向位置が変化するように形成されているので、カムピンがカム溝内を摺動しながら回転軸と一体に回転移動すると、そのカムピンの回転移動に応じてスライド筒が軸方向移動する。そして、そのスライド筒の軸方向移動によって弾性部材が弾性変形し、その弾性部材からスライド筒とカムピンとを介して回転軸に伝達する弾性力によって、回転軸の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生する。このように、外部から回転が入力されたときに、機械部品のみで回転反力を発生することが可能である。また、回転軸の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生するので、ステアリングホイールに操舵反力を付与する用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の第1実施形態にかかる回転負荷装置を使用したステアバイワイヤ方式の操舵装置を模式的に示す図
【
図6】
図2のハウジング本体を取り外した状態の回転負荷装置を
図2の上方から見た図
【
図7】
図6に示す回転軸を回転させ、スライド筒が軸方向移動した状態を示す図
【
図8】この発明の第2実施形態にかかる回転負荷装置を
図2に対応して示す図
【
図12】
図8のハウジング本体を取り外した状態の回転負荷装置を
図8の上方から見た図
【
図13】
図12に示す入力軸を回転させ、スライド筒が軸方向移動した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に、この発明の第1実施形態にかかる回転負荷装置1を使用した操舵装置を示す。この操舵装置は、運転者によるステアリングホイール2の操作量を電気信号に変換し、その電気信号に基づいて転舵アクチュエータ3を制御することで、左右一対の転舵輪4の向きを変化させるステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置である。
【0032】
この操舵装置は、運転者により回転操作されるステアリングホイール2と、ステアリングホイール2に連結されたステアリングシャフト5と、ステアリングシャフト5を介してステアリングホイール2に機械的に連結して設けられた回転負荷装置1と、ステアリングホイール2から機械的に切り離して設けられた転舵アクチュエータ3と、制御部6とを有する。
【0033】
ステアリングシャフト5は、運転者がステアリングホイール2を回転操作したときに、そのステアリングホイール2の回転がステアリングシャフト5を介して回転負荷装置1に入力されるように、ステアリングシャフト5と回転負荷装置1を連結している。回転負荷装置1は、回転が入力されたときに、その回転に応じた回転反力を発生することで、ステアリングホイール2に操舵反力を付与する。
【0034】
転舵アクチュエータ3は、転舵軸7と、転舵軸ハウジング8と、転舵軸7を車両の左右方向に移動させる転舵モータ9と、転舵軸7の位置を検知する転舵センサ10とを有する。転舵軸7は、車両の左右方向に移動可能に転舵軸ハウジング8で支持されている。転舵軸ハウジング8は、転舵軸7の左右両端が転舵軸ハウジング8から突出した状態となるように転舵軸7の中央部を収容している。
【0035】
転舵モータ9および転舵センサ10は、転舵軸ハウジング8に取り付けられている。転舵モータ9と転舵軸7の間には、転舵モータ9が出力する回転を転舵軸7の直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)が組み込まれている。転舵軸7の左右両端は、タイロッド11を介して左右一対の転舵輪4に連結され、転舵軸7が軸方向に移動するとこれに連動して左右一対の転舵輪4の向きが変化するようになっている。
【0036】
制御部6は、回転負荷装置1に組み込まれた回転角センサ12で検知されるステアリングホイール2の操作量と、外部センサ13で検知される車両の走行状況(車速等)等に応じて転舵モータ9を作動させ、左右一対の転舵輪4の向きを変化させる制御を行なう。
【0037】
図2に示すように、回転負荷装置1は、ハウジング14と、ステアリングホイール2(
図1参照)の回転が入力される回転軸15と、回転軸15の外周に軸方向にスライド可能に嵌合するスライド筒16と、スライド筒16を軸方向に付勢する弾性部材17とを有する。
【0038】
ハウジング14は、ハウジング本体14Aとハウジング蓋体14Bとを有する。ハウジング本体14Aは、回転軸15の径方向外側を取り囲むように配置される筒部18と、回転軸15の軸端に対向するように筒部18の一端(図では左端)に形成された端板部19とを有する有底筒状の部材である。ハウジング蓋体14Bは、筒部18の他端(図では右端)にボルト20で着脱可能に取り付けられている。
【0039】
ハウジング蓋体14Bは、回転軸15が貫通する円環板状に形成され、その内周に、回転軸15を回転可能に支持する転がり軸受21が組み込まれている。ハウジング本体14Aにも、回転軸15を回転可能に支持する転がり軸受22が組み込まれている。回転軸15は、転がり軸受21,22によって、ハウジング14に対する軸方向移動が規制された状態で、ハウジング14に対して回転可能に支持されている。回転軸15のハウジング14からの突出端は、ステアリングシャフト5(
図1)に接続されている。
【0040】
ハウジング本体14Aの筒部18の内周には、外輪23が嵌合して取り付けられている。外輪23は、両端が開放した筒状の部材であり、鋼材で形成されている。ハウジング本体14Aは、軽金属(アルミ合金等)で形成されている。外輪23は、ハウジング本体14Aの内周に形成された段部24とハウジング蓋体14Bとの間で軸方向に挟み込むことで、ハウジング14に対する軸方向移動が規制されている。また、外輪23のハウジング蓋体14Bの側の軸方向端面に切り欠き25(
図4参照)が形成され、その切り欠き25にハウジング蓋体14Bに形成された軸方向突起26が係合することで、外輪23がハウジング14に対して回り止めされている。
【0041】
ここでは、外輪23をハウジング14に対して回り止めする構成として、外輪23の切り欠き25とハウジング蓋体14Bの軸方向突起26とを係合させる構成を採用したが、これに代えて、外輪23の外周に設けたキー溝とハウジング本体14Aの内周に設けたキー溝とに共通のキー部材を嵌め込む構成を採用してもよく、また、外輪23の外周とハウジング本体14Aの内周とをスプライン嵌合させる構成を採用してもよく、また、外輪23の外周に平面部を設け、その平面部に係合する突起部をハウジング本体14Aの内周に設ける構成を採用してもよい。
【0042】
図4に示すように、外輪23の内周には、玉27が転がり接触する転走溝28が周方向に等間隔に3箇所設けられている。各転走溝28は、外輪23の内周を軸方向にまっすぐ直線状に延びて形成されている。また、スライド筒16にも、玉27を保持する玉保持穴29が周方向に等間隔に3箇所設けられている。玉保持穴29は、スライド筒16を径方向に貫通して形成され、その玉保持穴29に保持された玉27が、外輪23の内周の転走溝28の内面と、回転軸15の外周の円筒面とに転がり接触している。玉27と転走溝28の係合により、スライド筒16は、ハウジング14に対して軸方向に移動可能な状態で、ハウジング14に対して回り止めされている。
【0043】
玉27は、回転軸15の外周の円筒面に玉27が接触した状態で、玉27の一部が玉保持穴29から径方向外側にはみ出すように、スライド筒16の径方向厚さよりも大きい直径を有する。玉27は、鋼球が使用されている。玉保持穴29は、玉27の外周に沿った円形の穴である。スライド筒16は、鋼材で形成してもよく、含油焼結合金または合成樹脂で形成してもよい。含油焼結合金または合成樹脂でスライド筒16を形成すると、スライド筒16の軸方向の摺動抵抗を効果的に低減することが可能となる。
【0044】
図2に示すように、玉27および玉保持穴29は、スライド筒16の同じ周方向位置に、軸方向に間隔をおいて2箇所設けられている。2箇所の玉27は、共通の転走溝28に係合している。
【0045】
図6に示すように、スライド筒16には、周方向に沿って軸方向位置が変化するカム溝30が形成されている。カム溝30は、スライド筒16を径方向に貫通せずにスライド筒16の内周を延びるように形成することも可能であるが、ここでは、スライド筒16を径方向に貫通するスリット状に形成している。
【0046】
図3に示すように、回転軸15の外周には、カムピン31が設けられている。カムピン31は、回転軸15の外周に形成したピン穴32に一端が圧入され、他端がピン穴32から突出した状態に組み込まれている。カムピン31のピン穴32からの突出部分は、スライド筒16のカム溝30に挿入されている。
【0047】
図6、
図7に示すように、カムピン31は、ピン穴32(
図3参照)からの突出部分が円柱形状とされ、回転軸15が回転したときに、回転軸15と一体にカム溝30内を摺動し、カム溝30の内面を軸方向に押圧することで、スライド筒16を軸方向移動させるようになっている。カム溝30とカムピン31は、回転軸15の回転をスライド筒16の軸方向移動に変換する運動変換機構を構成している。
【0048】
カム溝30は、カム溝30の周方向中央(V字の底に相当する位置)から周方向一方と周方向他方のいずれに向かってもカム溝30の軸方向位置が軸方向の一方側(図では右側)に変化するV字状に形成されている。弾性部材17は、スライド筒16の軸方向の他方側(図では左側)の端面を押圧することで、スライド筒16を軸方向の一方側(図では右側)に付勢するように組み込まれている。つまり、弾性部材17は、回転軸15が回転したときにスライド筒16に押圧されて圧縮するように設けられている。
【0049】
図では、V字状のカム溝30として、V字の底に相当する位置とV字の両端に相当する位置との間を、周方向に対する傾斜角が一定の直線で結んだ形状のものを示したが、V字の底に相当する位置とV字の両端に相当する位置との間を、周方向に対する傾斜角が段階的に変化する複数の直線で結んだ形状のものを採用してもよく、V字の底に相当する位置とV字の両端に相当する位置との間を、周方向に対する傾斜角が滑らかに変化する曲線で結んだ形状のものを採用してもよい。
【0050】
図2に示すように、弾性部材17は、外輪23の内周と回転軸15の外周との間に形成される筒状空間に組み込まれている。弾性部材17としては、圧縮コイルばね、ウェーブスプリング、皿ばね等の圧縮ばねを使用することができる。
【0051】
図2、
図5に示すように、回転軸15の外周には、360°未満の角度範囲(図では180°の角度範囲)で周方向に延びるストッパ溝33が設けられ、ハウジング蓋体14Bには、ストッパ溝33内に位置するストッパ突起34が設けられている。ストッパ突起34とストッパ溝33は、ストッパ突起34がストッパ溝33の周方向端部に当接する(ストッパ溝33の周方向端部がストッパ突起34を受け止める)ことで回転軸15の回転可能範囲を規制する回転ストッパを構成している。ここで、ストッパ溝33は、
図3に示す回転軸15が回転したときに、カムピン31がカム溝30の周方向端部に当接するよりも前に、
図5に示すストッパ突起34がストッパ溝33の周方向端部に当接するように、ストッパ溝33の周方向長さが設定されている。
【0052】
図2に示すように、ハウジング本体14Aの端板部19には、回転軸15の回転角度を検知する回転角センサ12が設けられている。回転角センサ12は、回転軸15と一体に回転するように回転軸15に回り止めして設けられた永久磁石40と、永久磁石40に対向して設けられた磁気検出部41とからなるものを採用することができる。磁気検出部41は、端板部19にボルト42で固定されている。ここでは、回転軸15の回転角度を検知する回転角センサ12として、回転軸15の回転中心上に位置する回転型センサを例に挙げたが、スライド筒16の軸方向位置を検出し、その軸方向位置に基づいて回転軸15の回転角度を検知するものを採用してもよく、弾性部材17の弾性力を検出し、その弾性力の大きさに基づいて回転軸15の回転角度を検知するものを採用してもよい。
【0053】
この回転負荷装置1は、
図1に示すステアリングホイール2から
図2に示す回転軸15に回転が入力され、回転軸15が回転したときに、
図6、
図7に示すように、回転軸15の外周のカムピン31が、スライド筒16のカム溝30内を摺動しながら、回転軸15と一体に回転移動する。ここで、スライド筒16は、
図2に示すハウジング14に対して回り止めされ、
図6に示すように、スライド筒16のカム溝30は、周方向に沿って軸方向位置が変化するように形成されているので、カムピン31がカム溝30内を摺動しながら回転軸15と一体に回転移動すると、
図7に示すように、そのカムピン31の回転移動に応じてスライド筒16が軸方向移動する。そして、そのスライド筒16の軸方向移動によって、弾性部材17が軸方向に押圧されて圧縮され、その弾性部材17からスライド筒16とカムピン31とを介して回転軸15に伝達する弾性力によって、回転軸15の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生する。このように、外部から回転が入力されたときに、機械部品のみで回転反力を発生することが可能である。また、回転軸15の回転角度に応じた大きさの回転反力が発生するので、ステアリングホイール2(
図1参照)に操舵反力を付与する用途に好適である。
【0054】
また、この回転負荷装置1は、特許第4853412号公報(特許文献1)のように、ドラムと帯状部材の間の摩擦抵抗によって回転反力を発生するように構成した回転負荷装置と比べて摩耗を生じにくく、長期にわたって安定した動作を確保することが可能である。
【0055】
また、この回転負荷装置1は、
図2に示す外輪23がハウジング14に回り止めされ、その外輪23の内周を軸方向に延びる転走溝28に、スライド筒16の玉保持穴29に保持した玉27が転がり接触しているので、スライド筒16が軸方向移動するときの摩擦抵抗をきわめて小さく抑えながら、スライド筒16をハウジング14に対して回り止めすることが可能となっている。そのため、スライド筒16の軸方向移動が円滑であり、安定した大きさの回転反力を発生することができる。
【0056】
また、この回転負荷装置1は、
図4に示すように、スライド筒16が周方向に間隔をおいた3箇所の位置で軸方向に移動可能に案内されているので、スライド筒16の中心位置が安定し、スライド筒16の動作が特に安定している。
【0057】
また、この回転負荷装置1は、
図2に示すように、スライド筒16が軸方向に間隔をおいた2箇所以上の位置で軸方向に移動可能に案内されているので、スライド筒16の傾きが防止され、スライド筒16の動作が特に安定している。
【0058】
また、この回転負荷装置1は、
図6に示すように、カム溝30が、カム溝30の周方向中央から周方向一方と周方向他方のいずれに向かってもカム溝30の軸方向位置が軸方向の一方側(図では右側)に変化するV字状に形成され、弾性部材17が、スライド筒16を軸方向の一方側(図では右側)に付勢するように設けられているので、回転軸15を周方向一方と周方向他方のいずれに回転させても、その回転方向とは逆方向の回転反力を発生することが可能である。そのため、
図1に示すステアリングホイール2を中立位置(車両が直進するときのステアリングホイール2の位置)から回転させる操作をするときは、回転負荷装置1が、ステアリングホイール2の回転方向とは逆向きの回転反力を発生し、その後、ステアリングホイール2を中立位置に戻す操作をするときは、回転負荷装置1が、ステアリングホイール2を中立位置に戻す力(ステアリングホイール2の回転操作をアシストする力)を発生することとなり、運転者によるステアリングホイール2の操舵フィーリングを向上させることが可能となる。
【0059】
また、この回転負荷装置1は、
図3に示す回転軸15が回転したときに、カムピン31がカム溝30の周方向端部に当接するよりも前に、
図5に示すストッパ突起34がストッパ溝33の周方向端部に当接することで、回転軸15の回転可能範囲を規制する。すなわち、回転軸15を回転可能範囲の限界まで回転させたときに、
図3に示すカムピン31がカム溝30の周方向端部に当接するのを防止することができる。そのため、カムピン31およびカム溝30の耐久性を確保することが可能である。
【0060】
また、この回転負荷装置1は、
図2に示すように、回転軸15の回転角度を検知する回転角センサ12が設けられているので、
図1に示すようなステアバイワイヤ方式の操舵装置の用途に特に好適である。
【0061】
図8~
図13に、この発明の第2実施形態を示す。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図8に示すように、回転負荷装置1は、ハウジング14と、ステアリングホイール2(
図1参照)の回転が入力される入力軸50と、入力軸50に入力される回転を減速して回転軸15に伝達する減速機51と、回転軸15の外周に軸方向にスライド可能に嵌合するスライド筒16と、スライド筒16を軸方向に付勢する弾性部材17とを有する。入力軸50と回転軸15は、入力軸50の回転中心と回転軸15の回転中心とが同一直線上に位置するように並んで配置されている。
【0063】
ハウジング蓋体14Bは、入力軸50が貫通する円環板状に形成され、その内周に、入力軸50を回転可能に支持する転がり軸受21が組み込まれている。ハウジング本体14Aには、回転軸15を回転可能に支持する転がり軸受22が組み込まれている。回転軸15は、転がり軸受21,22によって、ハウジング14に対する軸方向移動が規制された状態で、ハウジング14に対して回転可能に支持されている。入力軸50のハウジング14からの突出端は、ステアリングシャフト5(
図1)に接続されている。
【0064】
図9に示すように、カム溝30は、スライド筒16に周方向に等間隔に3箇所設けられている。カムピン31も、回転軸15の外周に周方向に等間隔に3箇所設けられている。
【0065】
図8、
図11に示すように、減速機51は、サンギヤ52と、ハウジング14の内周に固定して設けられた内歯のリングギヤ53と、リングギヤ53とサンギヤ52の間に周方向に間隔をおいて配置された複数の遊星ギヤ54と、複数の遊星ギヤ54を各遊星ギヤ54の中心まわりに自転可能かつサンギヤ52まわりに公転可能に支持する遊星キャリヤ55とを有する遊星歯車減速機である。
【0066】
図8に示すように、サンギヤ52は、入力軸50の軸端に一体に設けられている。サンギヤ52は、回転軸15の回転中心と同一直線上に回転中心をもつように配置された外歯歯車である。遊星ギヤ54は、リングギヤ53とサンギヤ52に同時に噛み合っている。遊星キャリヤ55は、各遊星ギヤ54を自転可能に支持する複数のキャリヤピン56と、その複数のキャリヤピン56の周方向間隔を保持するキャリヤ本体57とを有する。キャリヤ本体57は、回転軸15の軸端に一体に形成されている。
【0067】
リングギヤ53および外輪23は、ハウジング本体14Aの内周に形成された段部24とハウジング蓋体14Bとの間で軸方向に挟み込むことで、ハウジング14に対する軸方向移動が規制されている。リングギヤ53は、ハウジング蓋体14Bの側の軸方向端面に切り欠き58(
図11参照)を有し、その切り欠き58にハウジング蓋体14Bに形成された軸方向突起26が係合することで、ハウジング14に対して回り止めされている。外輪23のリングギヤ53の側の軸方向端面に切り欠き25(
図10参照)が形成され、その切り欠き25にリングギヤ53に形成された軸方向突起59が係合することで、外輪23がハウジング14に対して回り止めされている。
【0068】
ここでは、リングギヤ53をハウジング14に対して回り止めする構成として、リングギヤ53の切り欠き58とハウジング蓋体14Bの軸方向突起26とを係合させる構成を採用したが、これに代えて、リングギヤ53の外周に設けたキー溝とハウジング本体14Aの内周に設けたキー溝とに共通のキー部材を嵌め込む構成を採用してもよく、また、リングギヤ53の外周とハウジング本体14Aの内周とをスプライン嵌合させる構成を採用してもよく、また、リングギヤ53の外周に平面部を設け、その平面部に係合する突起部をハウジング本体14Aの内周に設ける構成を採用してもよい。
【0069】
サンギヤ52は、外部(
図1に示すステアリングホイール2)から回転が入力される回転入力部を構成し、遊星キャリヤ55は、回転入力部の回転を減速して出力する回転出力部を構成している。外部から回転が入力される回転入力部(サンギヤ52)の回転中心と、回転入力部の回転を減速して出力する回転出力部(遊星キャリヤ55)の回転中心は、同一直線上に位置している。
【0070】
減速機51の回転入力部(サンギヤ52)は、回転入力部(サンギヤ52)に回転が入力されたときに回転入力部(サンギヤ52)の回転中心まわりに回転入力部(サンギヤ52)と一体に回転移動する入力側凸部60を有する。また、減速機51の回転出力部(遊星キャリヤ55)は、外部から回転入力部(サンギヤ52)に回転が入力されたときに、回転出力部(遊星キャリヤ55)の回転中心まわりに回転出力部(遊星キャリヤ55)と一体に回転移動する出力側凸部61を有する。出力側凸部61は、入力側凸部60と同じ軸方向位置(径方向から見たときに入力側凸部60と重なり合う部分を有する位置)に設けられている。
【0071】
図10に示すように、出力側凸部61は、回転軸15とは別体のキー部材を回転軸15の軸端の内径に固定した構成のものを採用している。出力側凸部61は、回転軸15の軸端の内径に継ぎ目の無い一体に形成したものを採用することも可能である。
【0072】
図10に示す入力側凸部60と出力側凸部61は、外部から回転入力部(サンギヤ52)に回転が入力されたときに入力側凸部60が出力側凸部61に追いついて当接することで、回転入力部(サンギヤ52)の回転可能範囲を規制する回転ストッパを構成している。ここで、回転入力部(サンギヤ52)の回転可能範囲は、360°以上の大きさの角度範囲に設定されている。また、入力側凸部60と出力側凸部61は、
図9に示す回転軸15が回転したときに、カムピン31がカム溝30の周方向端部に当接するよりも前に、
図10に示す入力側凸部60と出力側凸部61が互いに当接するように構成されている。
【0073】
この実施形態の回転負荷装置1は、
図8に示すように、入力軸50に入力される回転を減速して回転軸15に伝達する減速機51を有するので、入力軸50に入力される回転角度よりも、回転軸15の回転角度の方が小さく、
図12に示すように、カム溝30の周方向幅を小さく設定することができる。そのため、
図9に示すように、周方向に3箇所以上のカム溝30を設けることができ、スライド筒16の中心位置が安定し、スライド筒16の動作を特に安定させることが可能となっている。
【0074】
また、この回転負荷装置1は、入力軸50に入力される回転を減速して回転軸15に伝達する減速機51を有するので、入力軸50に入力される回転角度よりも、回転軸15の回転角度の方が小さい。そのため、
図12に示すように、カム溝30の傾斜角を大きくとることができ、カム溝30内でのカムピン31の摺動を円滑なものとすることが可能である。また、カム溝30の軸方向長さを短縮し、装置の小型化を図ることが可能となっている。
【0075】
また、この回転負荷装置1は、減速機51の回転入力部(サンギヤ52)と回転出力部(遊星キャリヤ55)の回転速度差を利用して回転入力部(サンギヤ52)の回転可能範囲を規制するので、回転入力部(サンギヤ52)の回転可能範囲を大きく設定(360°以上の大きさの角度範囲に設定)することが可能である。
【0076】
また、この回転負荷装置1は、減速機51に設けた入力側凸部60と出力側凸部61とで回転ストッパを構成しているので、装置の小型化を図ることが可能となっている。
【0077】
また、この回転負荷装置1は、減速機51として遊星歯車減速機を採用しているので、減速機51を回転軸15の回転中心と同一直線上にコンパクトに配置することができ、減速機51の構成も簡単で低コストである。その他の作用効果は第1実施形態と同様である。
【0078】
上記実施形態では、外部から回転が入力される回転入力部の回転中心と、回転入力部の回転を減速して出力する回転出力部の回転中心とが同一直線上に位置するように構成された減速機51として遊星歯車減速機を採用したが、遊星歯車減速機に代えて、偏心型の減速機(ローラ減速機、ボール減速機、サイクロイド減速機など)を採用することも可能である。
【0079】
上記各実施形態では、回転軸15が回転したときに、スライド筒16の軸方向移動によって、軸方向に押圧されて圧縮するように組み込んだ弾性部材17を例に挙げて説明したが、回転軸15が回転したときに、スライド筒16の軸方向移動によって、軸方向に引っ張られて伸長するように組み込んだ弾性部材17を採用し、その弾性部材17からスライド筒16とカムピン31とを介して回転軸15に伝達する弾性力によって回転反力が発生するように構成してもよい。
【0080】
上記各実施形態では、
図1に示すように、車両の左右一対の転舵輪4を操舵対象とするステアバイワイヤ方式の車両用操舵装置に回転負荷装置1を使用した例を説明したが、この回転負荷装置1は、例えば、船舶の船尾に設けられる舵(船外機等)を操舵対象とするステアバイワイヤ方式の船舶用操舵装置に使用することも可能であり、建設機械、農業機械、全地形対応車、多用途四輪車などのステアバイワイヤ方式の操舵装置に適用することも可能である。また、操舵装置に限らず、回転負荷を必要とする他の装置に使用することも可能である。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 回転負荷装置
2 ステアリングホイール
3 転舵アクチュエータ
12 回転角センサ
14 ハウジング
14A ハウジング本体
14B ハウジング蓋体
15 回転軸
16 スライド筒
17 弾性部材
18 筒部
19 端板部
23 外輪
27 玉
28 転走溝
29 玉保持穴
30 カム溝
31 カムピン
33 ストッパ溝
34 ストッパ突起
51 減速機
52 サンギヤ(回転入力部)
53 リングギヤ
54 遊星ギヤ
55 遊星キャリヤ(回転出力部)
60 入力側凸部
61 出力側凸部