(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175263
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20241211BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241211BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H02J7/04 Q
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092906
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟津 悠介
(72)【発明者】
【氏名】野末 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】前川 敦
(72)【発明者】
【氏名】吉見 隆
(72)【発明者】
【氏名】脇野 裕司
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CA20
5G503CB11
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA16
5G503FA18
5G503GB03
5G503GD06
5G503HA00
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】低温時において充電動作状態と待機状態とが繰り返されるのを抑制可能な充電システムを提供する。
【解決手段】蓄電池11と、BMS12と、充電部(直流/直流変換部22)と、制御部23とを備える充電システム1であって、BMS12は、蓄電池11の満充電状態を検出する状態検出部と最大充電電流値(MCCV)を制御部23に送信する処理部とを備え、制御部23は、充電電流I1の電流値がMCCVとなるように充電動作を制御する充電電流制御を行い、充電電流制御時に予め設定された充電終了条件を満たした場合は充電電流制御を終了させる充電終了制御を行い、充電終了条件は、0アンペアではないMCCVを受信した後に0アンペアのMCCVを複数回受信するという条件であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池と、
前記蓄電池を管理するバッテリーマネジメントシステムと、
前記蓄電池に充電電流を供給して前記蓄電池に対する充電動作を行う充電部と、
前記充電部の前記充電動作を制御する制御部と、
を備える充電システムであって、
前記バッテリーマネジメントシステムは、
前記蓄電池の電圧を測定する電圧測定部と、
前記蓄電池の温度を測定する温度測定部と、
前記蓄電池の満充電状態を検出する状態検出部と、
前記温度測定部で測定された前記温度および前記電圧測定部で測定された前記電圧に基づいて、前記充電電流の最大値である最大充電電流値を所定の周期で決定し、決定した前記最大充電電流値に関する信号を前記制御部に送信する処理部と、
を備え、
前記制御部は、
前記信号に基づいて前記充電電流の電流値が前記最大充電電流値に近づくように前記充電動作を制御する充電電流制御を行い、
前記充電電流制御時に予め設定された充電終了条件を満たした場合、前記状態検出部が前記満充電状態を検出する前に前記充電電流制御を終了させる充電終了制御を行い、
前記充電終了条件は、前記最大充電電流値が0アンペアではない第1信号を前記制御部が受信した後に、前記最大充電電流値が0アンペアの第2信号を前記制御部が複数回受信するという条件である
ことを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記充電終了条件は、前記制御部が前記第2信号を複数回連続して受信するという条件である
ことを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記充電終了条件は、前記制御部が所定期間に受信した前記第2信号の割合が予め定めた閾値以上になるという条件である
ことを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2信号を受信した後に前記第1信号を受信した時点から、前記信号の数をカウントするカウント処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、充電システムの一例として、蓄電ユニットとパワーコンディショナとを備える蓄電システムが知られている。蓄電システムには、太陽電池による太陽光発電機能を備えたものや、太陽光発電機能に加えてV2H(Vehicle to Home)装置による電気自動車の充放電機能を備えたものが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
蓄電ユニットは、蓄電池と、蓄電池を管理するバッテリーマネジメントシステム(BMS:Battery Management System)とを備える。パワーコンディショナは、充電動作を行って蓄電池に充電電流を供給する充電部と、充電部の充電動作を制御する制御部とを備える。充電部は、例えば、AC/DCコンバータおよびDC/DCコンバータで構成される。
【0004】
BMSは、蓄電池を構成する二次電池(リチウムイオン二次電池)のセル温度およびセル電圧に基づいて、蓄電池に供給可能な充電電流の最大値である最大充電電流値(MCCV:Max Charging Current Value)を決定する。MCCVは、セル温度およびセル電圧によって一義的に決定される。例えば、セル温度が同じでもセル電圧が異なれば、MCCVは異なる値となる。
【0005】
また、BMSは、蓄電池の充電率(SOC:State Of Charge)を算出し、蓄電池の満充電状態(例えば、SOC100%)を検出する。パワーコンディショナの制御部は、BMSとの通信を行い、充電電流の電流値をMCCVに一致させる充電電流制御を行う。この充電電流制御は、BMSが蓄電池の満充電状態を検出するまで継続して行われる。
【0006】
しかしながら、リチウムイオン二次電池の特性上、蓄電ユニットが屋外または寒冷地に設置されている場合、低温時に、SOC100%まで蓄電池を充電できないことがある。このため、BMSは、低温時には、蓄電池の満充電状態を検出する前にMCCVを0アンペアに制限する。MCCVが0アンペアに制限された場合、制御部は、充電電流の電流値を0アンペアに制御する。これにより、蓄電池への充電電流の供給は停止し、パワーコンディショナは待機状態となる。
【0007】
充電中におけるリチウムイオン二次電池のセル電圧上昇には、電気エネルギー蓄積による電圧上昇分の他に、充電電流とセルの内部抵抗により生じる電圧上昇分がある。よって充電電流が0アンペアになると、セルの内部抵抗により生じる電圧上昇分がなくなり(0ボルトになり)、結果としてセル電圧が降下する特性を有する。セル電圧が所定の閾値に達するまで降下すると、BMSは、MCCVの0アンペアの制限を解除し、0アンペアではないMCCVを制御部に送信する。0アンペアではないMCCVを受信した制御部は、充電電流の電流値を上昇させて蓄電池への充電電流の供給を再開させるため、パワーコンディショナは充電動作状態となる。しかしながら、セルへの電気エネルギー蓄積およびセルの内部抵抗によってセル電圧が上昇し所定の閾値に達すると、BMSは、再びMCCVを0アンペアに制限するため、パワーコンディショナは再び待機状態となる。
【0008】
このように、従来の蓄電システムでは、低温時において、充電動作状態と待機状態とが繰り返され、動作が安定しないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、低温時において充電動作状態と待機状態とが繰り返されるのを抑制可能な充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電システムは、
蓄電池と、
前記蓄電池を管理するバッテリーマネジメントシステムと、
前記蓄電池に充電電流を供給して前記蓄電池に対する充電動作を行う充電部と、
前記充電部の前記充電動作を制御する制御部と、
を備える充電システムであって、
前記バッテリーマネジメントシステムは、
前記蓄電池の電圧を測定する電圧測定部と、
前記蓄電池の温度を測定する温度測定部と、
前記蓄電池の満充電状態を検出する状態検出部と、
前記温度測定部で測定された前記温度および前記電圧測定部で測定された前記電圧に基づいて、前記充電電流の最大値である最大充電電流値を所定の周期で決定し、決定した前記最大充電電流値に関する信号を前記制御部に送信する処理部と、
を備え、
前記制御部は、
前記信号に基づいて前記充電電流の電流値が前記最大充電電流値に近づくように前記充電動作を制御する充電電流制御を行い、
前記充電電流制御時に予め設定された充電終了条件を満たした場合、前記状態検出部が前記満充電状態を検出する前に前記充電電流制御を終了させる充電終了制御を行い、
前記充電終了条件は、前記最大充電電流値が0アンペアではない第1信号を前記制御部が受信した後に、前記最大充電電流値が0アンペアの第2信号を前記制御部が複数回受信するという条件であることを特徴とする。
【0012】
この構成では、最大充電電流値が0アンペアではない第1信号を制御部が受信した後に、最大充電電流値が0アンペアの第2信号を制御部が複数回受信するという充電終了条件を満たした場合、制御部は、状態検出部が前記満充電状態を検出する前に前記充電電流制御を終了させる。したがって、この構成によれば、低温時において充電動作状態と待機状態とが繰り返されるのを抑制することができる。
【0013】
前記充電システムにおいて、
前記充電終了条件は、前記制御部が前記第2信号を複数回連続して受信するという条件であってもよい。
【0014】
前記充電システムにおいて、
前記充電終了条件は、前記制御部が所定期間に受信した前記第2信号の割合が予め定めた閾値以上になるという条件であってもよい。
【0015】
前記充電システムにおいて、
前記制御部は、
前記第2信号を受信した後に前記第1信号を受信した時点から、前記信号の数をカウントするカウント処理を行うよう構成できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低温時において充電動作状態と待機状態とが繰り返されるのを抑制可能な充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電システムのブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る蓄電ユニットのブロック図である。
【
図3】(A)BMSに記憶されたセル電圧とSOCとの関係を示すデータである。(B)BMSに記憶されたセル温度およびセル電圧とMCCVとの関係を示すデータである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るパワーコンディショナが行う充電終了制御のフローチャートである。
【
図5】カウント処理時における時刻とMCCVとの関係を示す図である。
【
図6】セル電圧、MCCVおよび充電電流の時間変化を示す図であって、(A)は比較例の図、(B)は本発明の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る充電システムの実施形態として、蓄電システムを例に挙げて説明する。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態に係る蓄電システム1を示す。蓄電システム1は、蓄電ユニット10と、パワーコンディショナ20(直流/交流変換部21、直流/直流変換部22、制御部23および系統保護リレー24)とを備える。
【0020】
蓄電ユニット10は、蓄電池11と、蓄電池11を管理するバッテリーマネジメントシステム(BMS:Battery Management System)12と、端子Ta1、Ta2とを備える。
図2に、蓄電ユニット10のブロック図を示す。
【0021】
蓄電池11は、少なくとも1つの二次電池11’で構成される。本実施形態では、蓄電池11は、直列接続された複数の二次電池11’で構成され、二次電池11’としてはリチウムイオン二次電池が用いられる。蓄電池11は、正極が端子Ta1に接続され、負極が端子Ta2に接続される。なお、
図2では、各二次電池11’を1つの二次電池として図示しているが、1つの二次電池を並列接続された複数の二次電池に変更することも可能である。また、二次電池11’としてはリチウムイオン二次電池以外のものを用いることも可能である。
【0022】
BMS12は、電圧測定部13と、温度測定部14と、電流測定部15と、開閉手段16と、管理部17とを備える。管理部17は、記憶部17aと、状態検出部17bと、処理部17cとを備える。また、BMS12は、各二次電池11’のセル電圧を均等化するための図示しない放電部を備える。
【0023】
電圧測定部13は、蓄電池11を構成する各二次電池11’の正極および負極に接続され、各二次電池11’の正極と負極との間の端子電圧(セル電圧)を測定し、測定結果を管理部17に出力する。
【0024】
温度測定部14は、少なくとも1つの温度センサを備える。1つの温度センサは、1つの二次電池11’の温度(セル温度)を測定する。温度センサは、接触式の温度センサでもよいし、非接触式の温度センサでもよい。温度測定部14は、測定結果を管理部17に出力する。
【0025】
電流測定部15は、端子Ta1と蓄電池11の正極とを接続する電力線を流れる直流の電流(充電電流I1または放電電流)を測定し、測定結果を管理部17に出力する。
【0026】
開閉手段16は、端子Ta1と蓄電池11の正極とを接続する電力線に介装される。開閉手段16は、蓄電池11を過充電、過放電あるいは温度異常、その他電圧測定部13の異常等、BMS12の何らかの異常から保護するために設けられたものであり、管理部17により、開状態と閉状態とが切り換えられる。本実施形態では、開閉手段16としてリレーが用いられる。
【0027】
管理部17は、マイクロコントローラやDSP等を使用したデジタル回路で構成されていてもよいし、当該デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせた回路で構成されていてもよい。管理部17は、パワーコンディショナ20の制御部23と相互に通信可能に構成される。
【0028】
記憶部17aには、BMS12の各部の動作を制御するための制御プログラムと、蓄電池11(二次電池11’)に関する各種データとが記憶されている。各種データは、例えば、二次電池11’のセル電圧と充電率(SOC:State Of Charge)との関係を示す第1データと、蓄電池11に供給可能な充電電流I1の最大値である最大充電電流値(MCCV:Max Charging Current Value)に関するテーブルデータであって、MCCVとセル温度およびセル電圧との関係を示す第2データとを含む。二次電池11’のSOCは、二次電池11’の満充電状態を100%とし、二次電池11’の完全放電状態を0%とする。
【0029】
図3(A)に、第1データの一部を示す。第1データは、上記のとおり、二次電池11’のセル電圧とSOCとの関係を示すデータである。第1データでは、例えば、二次電池11’のセル電圧が3.9[V]の時に二次電池11’のSOCが80%相当となり、セル電圧が4.0[V]の時にSOCが93%相当となる。
図3(A)では、SOCが75%~100%の範囲のみ図示しているが、第1データは、SOCが0%~100%の範囲のデータを含む。
【0030】
なお、本実施形態では、第1データを二次電池11’のセル電圧とSOCとの関係を示すデータとしているが、第1データは、二次電池11’の開放電圧(OCV)とSOCとの関係を示すデータでもよい。OCVは、例えば、セル電圧、二次電池11’の内部抵抗および充電電流I1の電流値を用いて算出できる。また、各二次電池11’のセル電圧は、図示しない放電部により均等化されるので、二次電池11’のSOCと蓄電池11のSOCは同じ値となる。
【0031】
図3(B)に、第2データの一部を示す。第2データは、上記のとおり、MCCVとセル温度およびセル電圧との関係を示すデータである。第2データでは、二次電池11’のセル温度が-10[℃]未満の場合、二次電池11’のセル電圧が3.8[V]以上の時にMCCVは0[A]となり、セル温度が-10[℃]以上、0[℃]未満の場合、セル電圧が3.9[V]以上の時にMCCVは0[A]となり、セル温度が0[℃]以上、10[℃]未満の場合、セル電圧が4.0[V]以上の時にMCCVは0[A]となる。このように、第2データでは、10[℃]未満の低温時において、SOCが100%(セル電圧が4.06[V])に達する前にMCCVが0[A]に制限される。
【0032】
なお、第2データは、セル温度として20[℃]以上の範囲(例えば、20~45[℃])をさらに含み、セル電圧としてSOCが0%~100%に対応するセル電圧の範囲を含み、上記セル温度およびセル電圧に対応したMCCVを含む。また、本実施形態では、第2データをテーブルデータとしているが、第2データは、MCCVとセル温度およびセル電圧との関係式に関するデータでもよい。
【0033】
状態検出部17bは、所定の周期で蓄電池11の満充電状態を検出するよう構成される。状態検出部17bは、電圧測定部13から二次電池11’のセル電圧が入力されると、記憶部17aの第1データを参照して二次電池11’のSOCを算出する。第1データを参照することで、状態検出部17bは、セル電圧に基づいてSOCを一義的に算出することができる。
【0034】
状態検出部17bは、算出したSOCが100%の場合、蓄電池11の満充電状態を検出したものとして、満充電検出信号をパワーコンディショナ20の制御部23に出力する。例えば、状態検出部17bは、制御部23に出力する電圧信号をローレベルからハイレベルに切り換える。電圧信号は、SOCが100%以外の時にローレベルとなり、SOCが100%の時にハイレベルになる。
【0035】
状態検出部17bは、第1データを参照して算出したSOCの数値[%]に関する信号をパワーコンディショナ20の制御部23に出力してもよい。この場合、SOCの数値が100%の時の信号が満充電検出信号となる。なお、本実施形態では、状態検出部17bは、SOCが100%の場合を蓄電池11の満充電状態としているが、満充電状態の条件はこれに限定されるものではない。
【0036】
処理部17cは、所定の周期でMCCVを決定するよう構成される。処理部17cは、電圧測定部13から二次電池11’のセル電圧が入力され、温度測定部14から二次電池11’のセル温度が入力されると、第2データを参照してMCCVを決定する。第2データを参照することで、処理部17cは、セル電圧およびセル温度に基づいてMCCVを一義的に決定することができる。処理部17cは、決定したMCCVをパワーコンディショナ20の制御部23に出力する。
【0037】
パワーコンディショナ20は、
図1に示すように、端子TL1、TL2、TN1と、端子TL3、TL4、TN2と、端子Tb1、Tb2と、直流/交流変換部21と、直流/直流変換部22と、制御部23と、系統保護リレー24を備える。また、パワーコンディショナ20は、図示しない検出部を備える。検出部は、制御部23の制御に必要な電圧値および電流値を検出するものであり、例えば、少なくとも1つの電圧センサおよび少なくとも1つの電流センサで構成される。
【0038】
端子TL1、TL2、TN1は、単相3線を介して商用の電力系統2に接続される。具体的には、端子TL1は、単相3線の第1電圧線に接続され、端子TL2は、単相3線の第2電圧線に接続され、端子TN1は、単相3線の中性線に接続される。単相3線の各線間には図示しない一般負荷(例えば、家庭内の電化製品)が接続される。直流/交流変換部21と、端子TL1、TL2、TN1は各々、系統保護リレー24を介して接続され、直流/交流変換部21と系統保護リレー24との間から自立負荷3(停電時でも蓄電池11からの電力供給を必要とする重要負荷)が接続される端子TL3、TL4、TN2へ、蓄電池11からの放電電力を供給可能な給電線が分岐している。
【0039】
電力系統2は、単相3線に交流200[V]の系統電力を供給する。すなわち、第1電圧線-中性線間(端子TL1-TN1間)に交流100[V]の系統電力が供給され、中性線-第2電圧線間(端子TN1-TL2間)に交流100[V]の系統電力が供給され、第1電圧線-第2電圧線間(端子TL1-TL2間)に交流200[V]の系統電力が供給される。
【0040】
端子Tb1、Tb2は、蓄電ユニット10に接続される。具体的には、端子Tb1は、蓄電ユニット10の端子Ta1に接続され、蓄電池11の正極に接続される。端子Tb2は、蓄電ユニット10の端子Ta2に接続され、蓄電池11の負極に接続される。
【0041】
パワーコンディショナ20は、蓄電池11の充電および放電を行うよう構成される。充電時のパワーコンディショナ20は、端子TL1-TL2間に供給された交流200[V]の系統電力を直流電力に変換し、当該直流電力を蓄電池11に供給する。放電時のパワーコンディショナ20は、端子Tb1-Tb2間に供給された蓄電池11の放電電力を商用周波数の交流電力に変換し、当該交流電力を単相3線の各線間に接続された負荷に供給する。パワーコンディショナ20は、系統通電時は系統保護リレー24を閉じて系統連系運転を行う一方、系統停電時は系統保護リレー24を開いて自立運転を行う。
【0042】
直流/交流変換部21は、端子TL1、TL2、TN1および端子TL3、TL4、TN2に接続される交流端と、直流/直流変換部22に接続される直流端とを備え、交流端に入力された交流電圧を直流電圧に変換する交流/直流変換動作と、直流端に入力された直流電圧を交流電圧に変換する直流/交流変換動作とを行う。
【0043】
直流/交流変換部21は、交流/直流変換動作および直流/交流変換動作を行うスイッチング回路で構成される。スイッチング回路は、例えば、並列接続された第1レグ、第2レグおよび第3レグを含み、各レグが直列接続された上アームおよび下アームを含み、各アームがスイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)を使用したMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等の、高周波でスイッチングが可能な電力用半導体スイッチング素子を用いることができる。直流/交流変換部21は、スイッチング回路と交流端との間に、LCフィルタ回路を含んでもよい。
【0044】
直流/直流変換部22は、直流/交流変換部21の直流端に接続される第1直流端と、端子Tb1、Tb2に接続される第2直流端とを備え、第1直流端に入力された直流電圧を昇降圧(昇圧または降圧)して第2直流端から出力したり、第2直流端に入力された直流電圧を昇降圧して第1直流端から出力したりする直流/直流変換動作を行う。換言すれば、直流/直流変換部22は、蓄電池11に充電電流I1を供給して蓄電池11を充電する充電動作と、蓄電池11を放電させる放電動作とを行う。直流/直流変換部22は、本発明の「充電部」に相当する。
【0045】
直流/直流変換部22は、直流/直流変換動作を行うスイッチング回路、例えば、双方向DC/DCコンバータ回路で構成される。双方向DC/DCコンバータ回路は、例えば、双方向動作が可能な電流共振型DC/DCコンバータでもよいし、電圧電流型DC/DCコンバータでもよいし、位相シフト方式、DAB(Dual Active Bridge)方式等のDC/DCコンバータでもよい。双方向DC/DCコンバータ回路に含まれるスイッチング素子は、直流/交流変換部21のスイッチング素子と同様のものを用いることができる。
【0046】
制御部23は、BMS12の管理部17と通信を行いつつ、直流/交流変換部21、直流/直流変換部22および系統保護リレー24を制御する。制御部23は、マイクロコントローラやDSP等を使用したデジタル回路で構成されていてもよいし、アナログ回路で構成されていてもよいし、デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせた回路で構成されていてもよい。本実施形態では、直流/交流変換部21、直流/直流変換部22および系統保護リレー24を1つの制御部23で制御しているが、制御部23を、直流/交流変換部21を制御する第1制御部と、直流/直流変換部22を制御する第2制御部と、系統保護リレー24を制御する第3制御部とに分けて、少なくとも第1制御部と第2制御部とが相互に通信を行う構成としてもよい。
【0047】
制御部23は、直流/交流変換部21のスイッチング素子を制御して、直流/交流変換部21の出力値(出力電流値、出力電圧値または出力電力値)を所定の目標値(目標電流値、目標電圧値または目標電力値)に一致させる制御を行う。例えば、直流/交流変換部21に交流/直流変換動作を行わせる場合、制御部23は、スイッチング素子のPWM制御を行うとともに、出力電圧値を所定の目標電圧値に一致させる電圧制御を行う。出力値を目標値に一致させる制御は、フィードバック制御でもよいし、フィードフォワード制御でもよいし、その両方でもよい。また、目標値は、例えば、制御部23で予め設定した値としてもよいし、直流/交流変換部21の入出力条件から決まる値としてもよいし、外部の装置から入力される値としてもよい。目標値は、時々刻々と変化してもよい。
【0048】
制御部23は、直流/直流変換部22のスイッチング素子を制御して、直流/直流変換部22の出力値(出力電流値、出力電圧値または出力電力値)を所定の目標値(目標電流値、目標電圧値または目標電力値)に一致させる制御を行う。例えば、直流/直流変換部22に充電動作を行わせる場合、制御部23は、出力電流値を所定の目標電流値に一致させるための電流制御を行う。本実施形態では、制御部23は、電流制御の1つとして、充電電流I1の電流値をMCCVに一致させる充電電流制御を行う。
【0049】
出力値を目標値に一致させる制御には、公知の制御、例えば、フィードバック制御および/またはフィードフォワード制御を用いることができる。また、充電電流制御時の直流/直流変換部22のスイッチング素子の制御には、直流/直流変換部22の回路構成に応じて任意の方法を用いることができ、例えば、PWM制御でもよいし、周波数変調制御でもよいし、位相シフト制御でもよい。
【0050】
制御部23は、充電電流制御時に、
図4に示す充電終了制御を行うことを特徴とする。充電電流制御時に充電終了制御を開始した制御部23は、蓄電池11が満充電状態か否かの判定を行う(S101)。
【0051】
制御部23は、BMS12の状態検出部17bが満充電状態を検出した場合、すなわち状態検出部17bから満充電検出信号が入力された場合(例えば、電圧信号がローレベルからハイレベルに切り換わった場合)、あるいは管理部17との通信にてSOCが100%であることを検知した場合、蓄電池11が満充電状態であると判定する(S101でYES)。蓄電池11が満充電状態であると判定した制御部23は、充電電流制御を終了させて、充電終了制御を終了させる。
【0052】
制御部23は、BMS12の状態検出部17bが満充電状態を検出していない場合、すなわち状態検出部17bから満充電検出信号が入力されていない場合(例えば、電圧信号がローレベルの場合)、あるいは管理部17との通信にてSOCが100%未満あることを検知した場合、蓄電池11が満充電状態ではないと判定する(S101でNO)。
【0053】
ところで、蓄電ユニット10が屋外または寒冷地に設置されていると、蓄電池11が低温(例えば、10[℃]未満)になる場合がある。また、リチウムイオン二次電池の特性上、低温時に蓄電池11に充電電流を供給可能か否かにかかわりなく、MCCVを著しく制限する傾向にあり、例えば、蓄電池11の実力値によりMCCVを制限する場合もある。状態検出部17bが満充電状態を検出する前にBMS12がMCCVを0[A]に制限した場合、制御部23は、充電電流I1の電流値を0[A]に制御する。これにより、パワーコンディショナ20は待機状態となる。充電電流I1の電流値が0[A]に制御され、二次電池11’のセル電圧が降下すると、BMS12はMCCVを0[A]の制限を解除する。すなわち、制御部23に入力されるMCCVが、0[A]から0[A]以外の値に変わる。
【0054】
例えば、
図3(B)に示すように、二次電池11’のセル温度が0[℃]以上、10[℃]未満の場合、二次電池11’のセル電圧が4.0[V](SOCが93%相当)になるまで蓄電池11が充電されると、制御部23に入力されるMCCVは0[A]となる。その後、二次電池11’のセル温度が0[℃]以上、10[℃]未満のまま、二次電池11’のセル電圧が3.9[V]まで降下すると、制御部23に入力されるMCCVは0[A]から2[A]に変わる。これにより、制御部23は、充電電流I1の電流値を2[A]に制御するので、充電電流I1の供給が再開される。
【0055】
図4のステップS101の判定において、蓄電池11が満充電状態ではないと判定した制御部23は、MCCVが0[A]からX[A](ただし、Xは0以外の値)に変わったか否かを判定する(S102)。ここで、X[A]のMCCVは本発明の「第1信号」に相当し、0[A]のMCCVは本発明の「第2信号」に相当する。
【0056】
MCCVが0[A]の場合、またはMCCVが一度も0[A]になることなくX[A]の場合(パワーコンディショナ20が充電動作を継続中の場合)、制御部23は、MCCVが0[A]からX[A]に変わっていないと判定し(S102でNO)、ステップS101に移行する。
【0057】
一方、MCCVが0[A]からX[A]に変わった場合(S102でYES)、制御部23は、カウント処理を開始する(S103)。カウント処理を開始した制御部23は、所定の時間間隔で(本実施形態では、250[ms]毎に)、X[A]のMCCVの数と0[A]のMCCVの数をカウントし、制御部23において予め設定された充電終了条件を満たすか否かの判定を行う(S104)。制御部23は、充電終了条件を満たすと判定した場合(S104でYES)、充電電流制御を終了させて、充電終了制御を終了させる。
【0058】
本実施形態では、充電終了条件は、カウント処理を開始した後、制御部23が予め定めた判定期間に受信した0[A]のMCCVの割合が予め定めた閾値以上になるという条件である。本実施形態では、判定期間は直近2.5[s]に設定され、閾値は40%に設定される。判定期間および/または閾値は、適宜変更することができる。
【0059】
図5に、カウント処理時の時刻とMCCVとの関係を示す。
図5では、時刻t0よりも前から、充電電流制御が行われており、時刻t0において、はじめてMCCVが0[A]になったものとする。また、
図5では、二次電池11’のセル温度が0[℃]以上、10[℃]未満であるものとする。
【0060】
図5に示すように、制御部23は、MCCVが0[A]から2[A]に変わった時刻t1において、カウント処理を開始する。カウント処理を開始した制御部23は、所定の時間間隔で(
図5では、250[ms]毎に)、X[A]のMCCVの数と0[A]のMCCVの数とをカウントし、充電終了条件を満たすか否かの判定を行う。
【0061】
本実施形態では、充電終了条件の判定期間は直近2.5[s]に設定されているので、制御部23は、2.5[s]経過後のカウント数が10になる時刻t10(t1からt10までの期間)で1回目の充電終了条件を満たすか否かの判定を行う。本実施形態の充電終了条件は、直近2.5[s]において0[A]のMCCVの割合が40%以上になるという条件であるが、1回目の割合は30%だったため、充電電流制御を継続させる。制御部23は、時刻t11において、2回目のカウント処理を開始し、0[A]のMCCVの割合が40%に達する時刻t20(t11からt20までの期間)において、充電終了条件を満たすと判定し、充電電流制御を終了させる。
【0062】
なお、本実施形態では、t1からt10までの期間で1回目のカウント処理(t10で1回目の判定)を行い、t11からt20までの期間で2回目のカウント処理(t20で2回目の判定)を行っているが、これに替えて、t10以降は250[ms]毎(+1カウント毎)に充電終了条件を満たすか否かの判定を行ってもよい。その場合、制御部23は、例えば、t2からt11までの期間のカウント値に基づいてt11で2回目の判定を行うことになり、t7からt16までの期間のカウント値に基づく7回目の判定(0[A]のMCCVの割合が40%に達するt16での判定)において、充電終了条件を満たすと判定し、充電電流制御を終了させる。
【0063】
充電電流制御を終了させた制御部23は、充電電流I1の電流値をMCCVに追随させない。例えば、時刻t20において、BMS12の処理部17cから出力されるMCCVが0[A]から2[A]に変わっても、パワーコンディショナ20から出力される充電電流I1の電流値は上昇しない。なお、制御部23は、充電電流制御を終了させた後(例えば、時刻t20以降)もBMS12と通信を行っているが、充電電流制御を終了させるとともにBMS12との通信(少なくともMCCVに関する通信)を終了させてもよい。
【0064】
図6(A)に比較例におけるセル電圧、MCCVおよび充電電流の時間変化を示し、
図6(B)に本実施形態の
図5の場合におけるセル電圧、MCCVおよび充電電流の時間変化を示す。比較例は、
図4に示す充電終了制御を行わない点を除き、本実施形態と共通する。すなわち、比較例では、BMSの状態検出部が満充電状態を検出するまで、充電電流制御が継続される。
【0065】
図6(A)に示すように、比較例の場合、充電終了制御が行われないため、セル電圧が上昇と下降とを繰り返し、MCCVが0[A]と2[A]との間で頻繁に切り換わり、それに伴い、充電電流が上昇と下降とを繰り返す。すなわち、比較例のパワーコンディショナは、充電動作状態と待機状態とが繰り返され、動作が安定しない。
【0066】
一方、本実施形態の場合、制御部23が充電終了制御を行うため、
図6(B)に示すように、MCCVが0[A]から2[A]に変わった時刻t1においてカウント処理が開始され、充電終了条件を満たす時刻t20に充電電流制御が終了する。その後、充電電流は0[A]に収束し、セル電圧は3.85[V]に収束する。すなわち、本実施形態のパワーコンディショナ20は、充電動作状態と待機状態との繰り返しが抑制され、動作が安定する。
【0067】
上記のとおり、本実施形態に係る蓄電システム1では、低温時において、BMS12の状態検出部17bが満充電状態を検出する前に、パワーコンディショナ20の制御部23が充電終了制御を行って充電電流制御を終了させる。したがって、本実施形態に係る蓄電システム1によれば、低温時における充電動作状態と待機状態との繰り返しを抑制できる。
【0068】
本実施形態に係る蓄電システム1では、パワーコンディショナ20の制御部23が、低温時における蓄電池11が満充電状態を定義する。例えば、パワーコンディショナ20が蓄電池11の状態を表示する表示部(例えば、表示画面を兼ねたタッチパネルを含む室内リモコン)を備える場合、制御部23は、充電終了条件を満たすと判定して充電電流制御を終了させた時に、蓄電池11の状態を満充電状態(例えば、SOC100%)として表示部に表示させてもよい。
【0069】
以上、本発明に係る充電システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0070】
本発明に係る充電システムは、蓄電池と、蓄電池を管理するバッテリーマネジメントシステムと、蓄電池に充電電流を供給して蓄電池に対する充電動作を行う充電部と、充電部の充電動作を制御する制御部と、を備える充電システムであって、バッテリーマネジメントシステムは、蓄電池の電圧を測定する電圧測定部と、蓄電池の温度を測定する温度測定部と、蓄電池の満充電状態を検出する状態検出部と、温度測定部で測定された温度および電圧測定部で測定された電圧に基づいて、充電電流の最大値である最大充電電流値を所定の周期で決定し、決定した最大充電電流値に関する信号を制御部に送信する処理部と、を備え、制御部は、信号に基づいて充電電流の電流値が最大充電電流値に近づくように充電動作を制御する充電電流制御を行い、充電電流制御時に予め設定された充電終了条件を満たした場合、状態検出部が満充電状態を検出する前に充電電流制御を終了させる充電終了制御を行い、充電終了条件は、最大充電電流値が0アンペアではない第1信号を制御部が受信した後に、最大充電電流値が0アンペアの第2信号を制御部が複数回受信するという条件であることを特徴とするのであれば、適宜構成を変更できる。
【0071】
例えば、上記実施形態において、充電終了条件を、制御部23が0[A]のMCCVを複数回(例えば、2回以上)連続して受信するという条件としてもよい。例えば、
図5の場合、複数回を2回に設定すると時刻t9において充電終了条件が満たされ、複数回を3回に設定すると時刻t10において充電終了条件が満たされる。
【0072】
また、上記実施形態の制御部23は、MCCVが0[A]からX[A]に変わった時(
図5の時刻t1)に、カウント処理を開始しているが、カウント処理を開始するタイミングも適宜変更できる。例えば、MCCVが最初に0[A]になった時(例えば、
図5の時刻t0)にカウント処理を開始してもよいし、MCCVが最初に0[A]になってから所定時間(制御部23において予め定められた時間)経過後にカウント処理を開始してもよい。
【0073】
本発明に係る充電システムは、太陽光発電機能を備えた蓄電システムや、太陽光発電機能および電気自動車の充放電機能を備えた蓄電システムにも適用できる。
【0074】
また、本発明に係る充電システムは、蓄電システム以外のもの、例えば、電気自動車の充電システムにも適用できる。電気自動車の充電システムの場合、例えば、蓄電池およびバッテリーマネジメントシステムが電気自動車側に設けられ、充電部および制御部が充電装置(例えば、設置型の急速充電器)側に設けられる。
【符号の説明】
【0075】
1 蓄電システム
2 電力系統
3 自立負荷
10 蓄電ユニット
11 蓄電池
11’ 二次電池
12 バッテリーマネジメントシステム(BMS)
13 電圧測定部
14 温度測定部
15 電流測定部
16 開閉手段
17 管理部
17a 記憶部
17b 状態検出部
17c 処理部
20 パワーコンディショナ
21 交流変換部
22 直流変換部
23 制御部
24 系統保護リレー