(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175268
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】浸透処理方法及び頭髪用美容器
(51)【国際特許分類】
A45D 19/02 20060101AFI20241211BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20241211BHJP
A46B 13/02 20060101ALI20241211BHJP
A45D 24/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A45D19/02
A46B15/00 F
A46B13/02
A45D24/00 N
A45D24/00 P
A45D24/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092913
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】峰村 千尋
(72)【発明者】
【氏名】陳 国緯
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA17
3B202AB00
3B202BA15
3B202BE10
3B202GA01
(57)【要約】
【課題】液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させる浸透処理方法、及びかかる浸透処理方法を実施し得る頭髪用美容器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、頭髪に液剤を浸透させる処理方法が提供される。この処理方法は、液剤を保持した状態の頭髪に対して振動を付与しつつ、頭髪を加熱するのに際する。振動の周波数を0.8MHz以上1.5MHz以下、加熱の温度を55℃以上100℃以下に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭髪に液剤を浸透させる処理方法であって、
前記液剤を保持した状態の前記頭髪に対して振動を付与しつつ、前記頭髪を加熱するのに際し、
前記振動の周波数を0.8MHz以上1.5MHz以下、前記加熱の温度を55℃以上100℃以下に設定する、浸透処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の浸透処理方法において、
前記振動は、振動子から振動板を介して前記頭髪に付与される、浸透処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の浸透処理方法において、
前記振動の出力値は、前記振動板の単位面積[cm2]あたり、0.05W以上0.2W以下である、浸透処理方法。
【請求項4】
請求項2に記載の浸透処理方法において、
前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2μm以上6.3μm以下である、浸透処理方法。
【請求項5】
請求項2に記載の浸透処理方法において、
前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面に酸化被膜を有する、浸透処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の浸透処理方法において、
前記酸化被膜は、黒色又は暗色を呈する、浸透処理方法。
【請求項7】
請求項2に記載の浸透処理方法において、
前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面に、前記振動板より前記頭髪に対する摺動性を高める被膜を有する、浸透処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の浸透処理方法において、
前記被膜は、前記振動板より硬度が高い、浸透処理方法。
【請求項9】
請求項1に記載の浸透処理方法において、
前記加熱は、電熱線を内蔵するフィルムヒータにより行われる、浸透処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の浸透処理方法において、
前記フィルムヒータは、その抵抗値が2Ω以上20Ω以下である、浸透処理方法。
【請求項11】
請求項9に記載の浸透処理方法において、
振動板と前記フィルムヒータとの間に前記頭髪を位置させ、前記頭髪に対して振動子から前記振動板を介して前記振動を付与しつつ、前記頭髪を前記フィルムヒータにより加熱する、浸透処理方法。
【請求項12】
請求項11に記載の浸透処理方法を実施し得る頭髪用美容器であって、
前記振動板を支持する第1の筐体と、
前記フィルムヒータを支持する第2の筐体とを備える、頭髪用美容器。
【請求項13】
請求項12に記載の頭髪用美容器において、
前記第1の筐体の前記振動板と反対側の端部と、前記第2の筐体の前記フィルムヒータと反対側の端部とが回動可能に接続されている、頭髪用美容器。
【請求項14】
請求項12に記載の頭髪用美容器において、
さらに、互いに接近させた状態の前記第1の筐体と前記第2の筐体との隙間に、前記頭髪を誘導する誘導部を備える、頭髪用美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸透方処理法及び頭髪用美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
リンゴ酸を使用することにより、毛髪のダメージを軽減しつつ、薬剤を毛髪に塗布することが可能な毛髪処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、かかる方法では、毛髪のダメージを軽減できるものの、薬剤を毛髪に円滑かつ十分に浸透させることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では上記事情に鑑み、液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させる浸透処理方法、及びかかる浸透処理方法を実施し得る頭髪用美容器を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、頭髪に液剤を浸透させる処理方法が提供される。この処理方法は、液剤を保持した状態の頭髪に対して振動を付与しつつ、頭髪を加熱するのに際する。振動の周波数を0.8MHz以上1.5MHz以下、加熱の温度を55℃以上100℃以下に設定する。
【0006】
かかる態様によれば、液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の頭髪用美容器を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す頭髪用美容器の先端側を離間させた状態の側面図である。
【
図3】
図1に示す頭髪用美容器の分解斜視図である。
【
図7】
図1に示す頭髪用美容器の構成を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の頭髪用美容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュ-タが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサ-バからダウンロ-ド可能に提供されてもよいし、外部のコンピュ-タで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピュ-ティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハ-ドウェア資源と、これらのハ-ドウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィ-ルドプログラマブルゲ-トアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態の頭髪用美容器について説明する。
図1は、第1実施形態の頭髪用美容器を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す頭髪用美容器の先端側を離間させた状態の側面図である。
図3は、
図1に示す頭髪用美容器の分解斜視図である。
図4は、
図1に示す下側本体の平面図である。
図5は、
図1に示す上側本体の底面図である。
図6は、
図1に示す上側本体の縦断面図である。
図7は、
図1に示す頭髪用美容器の構成を示すブロック図である。
なお、以下の説明では、
図1~
図3及び
図6中の左側を「先端側」と、右側を「基端側」とも記載し、
図4及び
図5中の下側を「先端側」と、上側を「基端側」とも記載する。また、
図2及び
図6中の上側を「上側」と、下側を「下側」とも記載し、
図4中の紙面手前側を「上側」と、紙面奥側を「下側」とも記載し、
図5中の紙面奥側を「上側」と、紙面手前側を「下側」とも記載する。
【0013】
図1に示す頭髪用美容器1は、頭髪に液剤を浸透させる処理方法(浸透処理方法)を実施し得る装置である。具体的には、頭髪用美容器1は、振動機構21を有する下側本体2と、加熱機構31を有する上側本体3と、下側本体2と上側本体3とを回動可能に接続するヒンジ部4とを備えている。以下、各構成要素について順次説明する。
かかる頭髪用美容器1(浸透処理方法)では、下側本体2と上側本体3とを接近させ、液剤を保持した状態の頭髪に対して振動機構21を介して振動を付与しつつ、加熱機構31を介して頭髪を加熱する。これにより、液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させることができる。
【0014】
下側本体2は、振動機構21と、この振動機構21を収容及び支持する下側筐体(第1の筐体)22とを有している。また、下側筐体22は、下側ケース221と、下側ケース221の上部開口を塞ぐ下側カバー222とを備えている。
下側筐体22(下側ケース221及び下側カバー222)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂のような硬質の樹脂材料が挙げられる。
【0015】
下側カバー222の先端側には、
図3及び
図4に示すように、開口部222aが形成されている。この開口部222aには振動板ホルダ210を介して振動板211が嵌め込まれている。すなわち、下側カバー222(下側筐体22)は、振動板211を支持している。
振動板211の平面視(上面視)でのサイズは、特に限定されないが、1000mm
2以上2500mm
2以上程度であることが好ましく、1200mm
2以上2300mm
2以上程度であることがより好ましい。かかるサイズの振動板211であれば、浸透処理中において、頭髪との接触面積を十分に確保することができる。
また、振動板ホルダ210と下側カバー222との間には、図示しないパッキン(封止部材)が配置されて、下側筐体22の液密性が確保されている。
【0016】
下側筐体22内には、振動板211に接触する振動子212と、振動子212の基端側に振動制御基板23と、振動子212を冷却するヒートシンク24と、図示しない他のパッキン(封止部材)とが設けられている。本実施形態では、振動機構21は、振動板211と振動子212とで構成される。
したがって、本実施形態では、振動は、振動子212から振動板211を介して頭髪に付与されることになる。かかる構成によれば、頭髪に振動を均一に付与し易い。このため、液剤の頭髪への浸透効率を高めるとともに、浸透にムラが発生するのを好適に防止することができる。
振動制御基板23は、振動子212(振動板211)の振動の条件(例えば、振動の周波数)を設定する。
【0017】
振動板211の構成材料としては、特に限定されないが、金属材料、セラミックス材料が挙げられる。中でも、振動板211の構成材料としては、金属材料が好ましく、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金がより好ましく、ステンレス鋼がさらに好ましい。ステンレス鋼製の振動板211は、耐蝕性に優れるとともに、その上面が滑らかであり、頭髪に対する滑りが良好であることから好ましい。このため、頭髪に対するダメージを低減することができる。
また、振動板ホルダ210の構成材料は、振動板211の構成材料と同様とすることができるが、振動板211の構成材料と同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
振動板211は、その上面(頭髪に接触する側の面)の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2μm以上6.3μm以下程度であることが好ましく1.6μm以上3.2μm以下程度であることがより好ましい。振動板211の上面の表面粗さが十分に小さいと、振動板211の上面に対する頭髪の滑りをより高めることができる。なお、算術平均高さRaは、JIS B0601:2001に規定される値である。
また、振動板211は、その上面(頭髪に接触する側の面)に酸化被膜を有することが好ましい。振動板211の上面に酸化被膜を形成することにより、振動板211の上面の表面粗さを上述した範囲に調整し易い。
【0019】
また、酸化被膜は、黒色又は暗色を呈することが好ましい。これにより、加熱機構31からの熱を吸収することで、頭髪に対する加温効果を高めることができる。また、振動板211の審美性を高めることもできる。
かかる酸化被膜は、例えば、黒色色素又は暗色色素を含む処理液を使用した陽極酸化処理により比較的簡便に形成することができる。
振動板ホルダ210の上面にも、同様の酸化被膜を形成してもよい。なお、振動板ホルダ210の上面には、ブラックシリカを含む被膜を形成することが好ましい。かかる被膜を形成することにより、頭髪へのダメージを低減することができる。
【0020】
振動板211は、その上面(頭髪に接触する側の面)に、上記酸化被膜に代えて、振動板211より頭髪に対する摺動性を高める被膜を有することも好ましい。かかる被膜を形成することにより、振動板211の上面に対する頭髪の滑りをより高めることができる。
この場合、被膜は、振動板211より硬度が高いことが好ましい。この場合、振動板211の上面に対する頭髪の滑りをさらに高めることができる。ステンレス鋼製の振動板211の場合、チタン製の被膜を形成することが好ましい。チタン製の被膜は、振動板211の上面に対して、例えば、蒸着、スパッタリングのような気相成膜法により形成することができる。
以上のように、頭髪の滑りをよくする観点からは、振動板211の上面の表面粗さ(算術平均高さRa)はできる限り小さいことが好ましいが、研磨により加工するとコスト高となり易い。そこで、振動板211をステンレス鋼製又はセラミックス製とするか、フッ素系樹脂(例えば、テトラフルオロエチレン)被膜又は黒色ステンレス鋼被膜を形成することが好ましい。これにより、滑らかな上面を有する振動板211を比較的安価に作製することができる。
【0021】
また、頭髪用美容器1は、下側ケース221の先端側(振動板211に対応する箇所)に、両側に突出して設けられた一対のブラシ部5を備えている。各ブラシ部5は、複数の櫛歯51を備え、櫛歯51同士の間を頭髪を通過させることができる。
下側本体2(第1の筐体)と上側本体3(第2の筐体)とを互いに接近させた状態として、頭髪を挟んでスライドさせることにより、下側本体2と上側本体3との間に、頭髪を束ねた状態で誘導して通過させることができる。すなわち、ブラシ部5は、互いに接近させた状態の下側本体2と上側本体3との隙間に、頭髪を誘導する誘導部を構成する。
【0022】
また、下側ケース221の基端側には、
図3及び
図4に示すように、凹部223と、凹部223の開口を囲むように筒部224とが設けられている。この凹部223の内側には、円筒状のシール部材25と、コイルバネ26とが配置されている。
シール部材25は、下側本体2及び上側本体3に対して液密性を確保しつつ、接続されている。シール部材25には、下側本体2内の電気部品と上側本体3内の電気部品とを電気的に接続する配線等が挿通される。
コイルバネ26は、下側本体2及び上側本体3の双方に接触して設けられている。下側本体2と上側本体3とを接近させると、コイルバネ26は圧縮状態となって、下側本体2と上側本体3とを離間させる方向に付勢する。
【0023】
下側本体2の基端部において、上側本体3が下側本体2に対して回動可能に接続されている。
上側本体3は、加熱機構31と、この加熱機構31を収容及び支持する上側筐体(第2の筐体)32とを有している。また、上側筐体32は、上側ケース321と、上側ケース321の下部開口を塞ぐ上側カバー322とを備えている。
上側筐体32(上側ケース321及び上側カバー322)の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂のような硬質の樹脂材料が挙げられる。
【0024】
上側カバー322の先端側には、
図5に示すように、開口部322aが形成されている。この開口部322aには発光部310が設けられ、発光部310の内側に加熱板311が嵌め込まれている。加熱板311の上側には、電熱線を内蔵するフィルムヒータ(熱源)312が配置されている。すなわち、上側カバー322(上側筐体32)は、フィルムヒータ312を支持している。また、本実施形態では、加熱機構31は、加熱板311とフィルムヒータ312とで構成される。
また、振動板ホルダ210と下側カバー222との間には、
図6に示すように、パッキン(封止部材)323が配置されて、上側筐体32の液密性が確保されている。
【0025】
発光部310は、透明(無色透明、着色透明又は半透明)の支持板と、この支持板の上面に固定(支持)された光源(例えば、LED)とで構成することができる。光源は、1色のみを単独で使用しても、複数色を組み合わせて使用してもよい。
加熱板311の構成材料としては、振動板211と同様の構成材料が挙げられるが、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼製の加熱板311は、高い熱伝導率を有することから好ましい。この場合、上述したのと同様の理由から、加熱板311の下面には、酸化被膜(特に、黒色又は暗色を呈する酸化被膜)を形成することが好ましい。
【0026】
フィルムヒータ312は、具体的には、電熱線が埋設されたポリアミドをフィルム状に形成することにより得られる。フィルムヒータ312を使用することにより、目的とする加熱の温度までの立ち上がりを早めることができる。その結果、浸透処理に要する時間の短縮を図ることができる。
フィルムヒータ312は、その抵抗値が2Ω以上20Ω以下程度であることが好ましく、4Ω以上17Ω以下程度であることがより好ましく、6Ω以上14Ω以下程度であることがさらに好ましい。このような抵抗値を有するフィルムヒータ312であれば、上記効果をより向上させることができる。
また、熱源には、フィルムヒータ312に代えて、セラミックスヒータ、加熱用光源(例えば、加熱用ハロゲンランプ)等を使用することもできる。
【0027】
上側筐体32内には、フィルムヒータ312の上方に、発光制御基板33及び電源34が設けられている。熱源としてフィルムヒータ312を使用することにより、上側筐体32内の空間を十分に確保することができ、この空間内に発光制御基板33及び電源34を配置することができる。その結果、頭髪用美容器1の小型化を図ることができる。
発光制御基板33は、光源の発光の条件(例えば、発光させる光源の選択、発光のパターン)を設定する。
電源は、例えば、乾電池、太陽電池、燃料電池のような一次電池、リチウムイオン電池のような二次電池等で構成することができる。また、比較的質量の大きい電源を上側筐体32内の先端側に配置することにより、上側本体3を下側本体2に接近させる操作を行い易くなる。
【0028】
上側筐体32内の基端側には、主制御基板30と、コネクタ部39と、図示しない他のパッキン(封止部材)とが設けられている。
コネクタ部39は、上側本体3の基端で外部に開放している。電源が二次電池である場合、コネクタ部39に充電装置のコネクタ部が接続されて充電される。
また、上側ケース321の基端側には、
図5に示すように、凹部323と、凹部323の開口を囲むように筒部324とが設けられている。この凹部323の内側には、シール部材25が嵌合する嵌合部35と、コイルバネ26のバネ座36とが設けられている。
頭髪用美容器1の組立状態において、筒部324は、凹部223及び筒部224内に挿入されている。
【0029】
上側ケース321の上面には、
図1及び
図6に示すように、2つの操作ボタン37、38が設けられている。例えば、操作ボタン37は、電源のオン/オフを行うためのボタンであり、操作ボタン38は、頭髪用美容器1の動作モードを選択及び決定するためのボタンである。なお、操作ボタン37、38は、それぞれその他の機能を有していてもよい。
また、振動の周波数を設定するための操作ボタン、加熱の温度を設定するための操作ボタン等を設けるようにしてもよい。
【0030】
下側本体2の下側筐体(第1の筐体)22と上側本体3の上側筐体(第2の筐体)32とは、ヒンジ部4を介して回動可能に接続されている。すなわち、下側筐体22の基端部(振動板211と反対側の端部)と、上側筐体32の基端部(フィルムヒータ312と反対側の端部)とが回動可能に接続されている。
具体的には、
図3~
図5に示すように、下側カバー222の基端部には、短手方向に対向する一対の円環状部41が設けられれている。一方、上側カバー322の基端部には、短手方向に対向する一対の円環状部42が設けられれている。一対の円環状部41と一対の円環状部42とを位置合わせし、軸部材43aを円環状部41、42の貫通孔に挿通し、その端部に固定部材43bを取り付ける。これにより、ヒンジ部4が形成され、下側本体2と上側本体3とを回動可能に接続することができる。
【0031】
次に、頭髪用美容器1の電気的構成について説明する。
図7に示すように、主制御基板30には、振動制御基板23、フィルムヒータ312、発光制御基板33、電源34、及びコネクタ部39が電気的に接続されている。
また、振動制御基板23には、振動子212が接続され、発光制御基板33には、発光部310が接続されている。
主制御基板30は、演算素子301と記憶素子302とを内蔵している。なお、振動制御基板23及び発光制御基板33も、それぞれ演算素子と記憶素子とを内蔵してもよい。
【0032】
演算素子301は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等で構成される。演算素子301は、記憶素子302に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、頭髪用美容器1に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶素子302に記憶されているソフトウェアによる情報処理が演算素子301によって具体的に実現される。
なお、演算素子301は、単一であることに限定されず、機能ごとに複数の演算素子301を設けるようにしてもよい。また、それらの組合せであってもよい。特に、振動子212の振動制御に関する演算素子301と別異に、フィルムヒータ312の加熱制御のための演算素子301が備えられるとよい。
【0033】
記憶素子302は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、演算素子301によって実行される頭髪用美容器1に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施することができる。
また、記憶素子302は、演算素子301によって実行される頭髪用美容器1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0034】
かかる頭髪用美容器1を使用する際(浸透処理方法を実施する際)には、振動板211と加熱板311(フィルムヒータ312)との間に液剤を保持した状態の頭髪を位置させ、頭髪に対して振動子212から振動板211を介して振動を付与しつつ、頭髪を加熱板311を介してフィルムヒータ312により加熱する。このようにすることにより、液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させることができる。
このとき、振動の周波数を0.8MHz以上1.5MHz以下程度、好ましくは0.9MHz以上1.4MHz以下程度、より好ましくは1MHz以上1.3MHz以下程度に設定する。振動の周波数を上記範囲に設定することにより、液剤の頭髪への浸透効率をより高めることができる。
【0035】
振動の出力値は、振動板211の単位面積[cm2]あたり、0.05W以上0.2W以下程度であることが好ましく、0.07W以上0.17W以下程度であることがより好ましく、0.09W以上0.14W以下程度であることがさらに好ましい。この場合、振動板211の全体での振動の均一性を高めることができる。このため、液剤の頭髪への浸透にムラが生じ難い。
また、加熱の温度を55℃以上100℃以下程度、好ましくは60℃以上95℃以下程度、より好ましくは65℃以上90℃以下程度に設定する。加熱の温度を上記範囲に設定することにより、液剤の頭髪への浸透効率をより高めることができる。
以上の条件は、液剤を頭髪に浸透させる浸透モードを実行する場合に適している。なお、浸透モードの後に、又は浸透モードとは別に、頭髪を高温でプレスするアイロンモードでは、上記条件での振動板211の振動に加えて、加熱板311の加熱の温度を好ましくは80℃以上200℃以下に設定することができる。
【0036】
なお、アイロンモードでは、A:縮毛矯正、B:トリートメント、C:通常のヘアアイロン等の用途で使用することができる。
A:縮毛矯正
この場合、まず、頭髪に1剤を塗布することにより、うねっている頭髪中の成分の化学結合を切断する。次いで、1剤を頭髪から洗い流した後、頭髪を乾燥させる。その後、アイロンモードに設定した頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3とで頭髪を挟持し、高温でプレスする。最後に、頭髪に2剤を塗布して放置することにより、真っ直ぐに伸ばした状態で頭髪中の成分の化学結合を再結合する。なお、最後の放置の際には、浸透モードに設定した頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3とで頭髪を挟持して行ってもよい。
使用薬剤としては、例えば、クオライン(アリミノ社製)、ネオリシオ(ミルボン社製)等が挙げられる。
【0037】
B:トリートメント
この場合、まず、頭髪に1剤を塗布する。その後、浸透モードに設定した頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3とで頭髪を挟持することにより、1剤を頭髪に浸透させる。次いで、1剤を頭髪から洗い流す。次に、頭髪に2剤を塗布する。その後、浸透モードに設定した頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3とで頭髪を挟持することにより、2剤を頭髪に浸透させる。次いで、頭髪を乾燥させる。最後に、アイロンモードに設定した頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3とで頭髪を挟持し、高温でプレスする。これにより、頭髪に浸透させた薬剤の結合を強くすることができる。
使用薬剤としては、例えば、バランサー(アリミノスリム社製)、サイエンスアクア(S-AQUA社製)等が挙げられる。なお、薬剤は、1剤及び2剤の区別がなく、単一の薬剤を使用するケースもある。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の頭髪用美容器について説明する。
以下、第2実施形態の頭髪用美容器1について、上記第1実施形態の頭髪用美容器1との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8は、第2実施形態の頭髪用美容器を示す斜視図である。
図9は、
図8に示す下側本体の平面図である。
図10は、
図8に示す上側本体の底面図である。
なお、以下の説明では、
図8中の左側を「先端側」と、右側を「基端側」とも記載し、
図9及び
図10中の下側を「先端側」と、上側を「基端側」とも記載する。また、
図9中の紙面手前側を「上側」と、紙面奥側を「下側」とも記載し、
図10中の紙面奥側を「上側」と、紙面手前側を「下側」とも記載する。
【0039】
第2実施形態の頭髪用美容器1は、主に、下側本体2及び上側本体3の先端側の構成が異なり、それ以外は、第1実施形態の頭髪用美容器1と同様である。
図8及び
図9に示すように、下側本体2からブラシ部5が省略され、振動板211が下側カバー222の短手方向の全体及び下側ケース221の両上端部にわたる形状を有している。かかる構成によれば、互いに接近させた状態の下側本体2と上側本体3との隙間に頭髪を通過させる際に、振動板211と頭髪との接触時間を延長することができる。このため、液剤の頭髪への浸透効率をさらに高めることができる。
【0040】
また、
図8及び
図10に示すように、発光部310が上側本体3の両側に露出している。かかる構成によれば、浸透処理が進行していることを視覚的に認識し易くなる。また、加熱板311のサイズを大きくすることができるので、互いに接近させた状態の下側本体2と上側本体3との隙間に頭髪を通過させる際に、加熱板311と頭髪との接触時間を延長することができる。かかる観点からも、液剤の頭髪への浸透効率をさらに高めることができる。
また、第2実施形態では、コネクタ部39が上側本体3の基端部に代えて、下側本体2の基端部に設けられている。
【0041】
以上のような頭髪用美容器1及び浸透処理方法によれば、液剤を頭髪に円滑かつ十分に浸透させることができる。
ここで、頭髪に使用し得る液剤としては、例えば、トリートメント剤、染色剤等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0042】
(1)頭髪に液剤を浸透させる処理方法であって、前記液剤を保持した状態の前記頭髪に対して振動を付与しつつ、前記頭髪を加熱するのに際し、前記振動の周波数を0.8MHz以上1.5MHz以下、前記加熱の温度を55℃以上100℃以下に設定する、浸透処理方法。
【0043】
(2)上記(1)に記載の浸透処理方法において、前記振動は、振動子から振動板を介して前記頭髪に付与される、浸透処理方法。
【0044】
(3)上記(2)に記載の浸透処理方法において、前記振動の出力値は、前記振動板の単位面積[cm2]あたり、0.05W以上0.2W以下である、浸透処理方法。
【0045】
(4)上記(2)又は(3)に記載の浸透処理方法において、前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面の表面粗さ(算術平均高さRa)が0.2μm以上6.3μm以下である、浸透処理方法。
【0046】
(5)上記(2)~(4)のいずれか1つに記載の浸透処理方法において、前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面に酸化被膜を有する、浸透処理方法。
【0047】
(6)上記(5)に記載の浸透処理方法において、前記酸化被膜は、黒色又は暗色を呈する、浸透処理方法。
【0048】
(7)上記(2)~(4)のいずれか1つに記載の浸透処理方法において、前記振動板は、その前記頭髪に接触する側の面に、前記振動板より前記頭髪に対する摺動性を高める被膜を有する、浸透処理方法。
【0049】
(8)上記(7)に記載の浸透処理方法において、前記被膜は、前記振動板より硬度が高い、浸透処理方法。
【0050】
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つに記載の浸透処理方法において、前記加熱は、電熱線を内蔵するフィルムヒータにより行われる、浸透処理方法。
【0051】
(10)上記(9)に記載の浸透処理方法において、前記フィルムヒータは、その抵抗値が2Ω以上20Ω以下である、浸透処理方法。
【0052】
(11)上記(9)又は(10)に記載の浸透処理方法において、振動板と前記フィルムヒータとの間に前記頭髪を位置させ、前記頭髪に対して振動子から前記振動板を介して前記振動を付与しつつ、前記頭髪を前記フィルムヒータにより加熱する、浸透処理方法。
【0053】
(12)上記(11)に記載の浸透処理方法を実施し得る頭髪用美容器であって、前記振動板を支持する第1の筐体と、前記フィルムヒータを支持する第2の筐体とを備える、頭髪用美容器。
【0054】
(13)上記(12)に記載の頭髪用美容器において、前記第1の筐体の前記振動板と反対側の端部と、前記第2の筐体の前記フィルムヒータと反対側の端部とが回動可能に接続されている、頭髪用美容器。
【0055】
(14)上記(12)又は(13)に記載の頭髪用美容器において、さらに、互いに接近させた状態の前記第1の筐体と前記第2の筐体との隙間に、前記頭髪を誘導する誘導部を備える、頭髪用美容器。
もちろん、この限りではない。
【0056】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明の内容を更に具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
上述したような振動機構21を有する下側本体2と、加熱機構31を有する上側本体3とを回動可能に接続した頭髪用美容器1を準備した。
【0058】
1.浸透処理A
(実施例A1)
まず、毛束として、長さ:10cm、質量:約1g/本のブリーチ毛(ビューラックス社製、「BR-3-A」)を用意した。
次に、毛束を1時間以上常温の水に浸漬させた後、約0.2gのシャンプーを塗り広げ両手で挟み、上側と下側を10往復ずつ擦った。
次いで、バットにぬるま湯を流し入れ続け、直接流水が毛束に当たらないように注意して、1秒1回のスピードで八の字に動かす操作を1分間行った。
その後、バットから取り出した毛束をコームでとかし、約1.5g±0.1gになるまでキッチンペーパーで水切りした。
【0059】
次に、化粧品(塩基性青99及び塩基性赤76を含有する液剤)を、毛束の表裏に約2gを万遍なく人差し指で塗り広げた。
次いで、電源を入れた頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3との間に、長手方向を合わせて毛束を挟み、下側本体2と上側本体3との開閉を10秒に1回行った。毛束を頭髪用美容器1にセットしてから2.5分間(浸透処理時間の半分)が経過した際に、毛束の表裏をひっくり返した。
なお、振動の周波数を1MHz、加熱の温度を60℃に設定した。
その後、5分間(浸透処理時間)終了から1分経過した後、上記と同様にして毛束から化粧品を洗い流した。
次に、毛束をキッチンペーパーで挟み(加重しない)軽く水を切りした後、毛束を吊るした状態で、毛束と吹出口を10cmの距離をあけドライヤー(ヤーマン社製、「ヴェーダブライト BS for Salon TURBO」)にて温風で4分間手櫛を入れながら乾燥させた。
【0060】
(実施例A2)
浸透処理の時間を10分間に変更した以外は、実施例A1と同様にして、浸透処理を行った。
(実施例A3)
加熱の温度を80℃に変更した以外は、実施例A1と同様にして、浸透処理を行った。
(実施例A4)
加熱の温度を80℃に変更した以外は、実施例A2と同様にして、浸透処理を行った。
(実施例A5)
振動の周波数を0.8MHzに変更した以外は、実施例A4と同様にして、浸透処理を行った。
(実施例A6)
振動の周波数を1.5MHzに変更した以外は、実施例A4と同様にして、浸透処理を行った。
【0061】
(比較例A1)
加熱の温度を50℃に変更した以外は、実施例A1と同様にして、浸透処理を行った。
(比較例A2)
加熱の温度を50℃に変更した以外は、実施例A2と同様にして、浸透処理を行った。
(比較例A3)
加熱機構31をオフした以外は、実施例A1と同様にして、浸透処理を行った。
(比較例A4)
加熱機構31をオフした以外は、実施例A2と同様にして、浸透処理を行った。
(比較例A5)
振動機構21をオフし、加熱の温度を105℃に変更した以外は、実施例A1と同様にして、浸透処理を行った。
【0062】
2.測定及び評価
2-1.浸透面積率(浸透効率)の測定
乾燥後1日以上静置した毛束について浸透面積率(浸透効率)を、次のようにして測定した。
まず、重ね合わせた白色コピー用紙2枚の上に、毛束を2cmの幅に収まるように配置した。
次に、毛束1束あたり長手方向に沿って約1cm間隔を空けた5か所、表裏で合計10か所について、分光測色計(コニカミノルタ社製、「CM-26d」)を使用して、L*の測定を行った。
そして、測定されたL*の平均値を求めた。
【0063】
次いで、最も平均値に近いL*を有する毛束を検体として選定した。
そして、選定された毛束を凍結包埋剤に浸漬させた後、-100℃の冷却トラップ(EYELA社製、「UT-2000」)に5分間入れてブロックを作製した。
次に、クリオスタット(LEICA社製、「CM3050S」)にて、ブロックを厚さ:14μmの切片にスライスし、スライドガラスに転写した。なお、切片の反りを防止するために、クライオフィルムを使用した。
【0064】
次に、切片の画像をデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製、「VHX-6000」)にて、1000倍に拡大して撮影した。
その後、得られた画像から毛髪1本ずつの断面積を算出し、3500μm2以上9000μm2以下に該当する毛髪の中から、無作為に12本以上14本以下を抽出し、断面積について群間に有意差が出ないことを確認した。
そして、浸透面積率(赤色の面積÷毛髪断面積)の上位及び下位を除外して中央にある毛髪10本を選定し、その平均値を採用した。
【0065】
2-2.ブリーチ毛の表面状態の評価
ブリーチ毛を光学顕微鏡で拡大して観察し、以下の基準にしたがって、表面状態を評価した。
◎:ブリーチ毛の表面にダメージなし
○:ブリーチ毛の表面に若干のダメージあり
△:ブリーチ毛の表面に比較的大きなダメージあり
×:ブリーチ毛の表面に大きなダメージあり
【0066】
3.結果
これらの結果を、以下の表1に示す。
【表1】
【0067】
4.浸透処理B
(実施例B1)
まず、毛束として、長さ:10cm、質量:約1g/本の人毛白髪(ビューラックス社製、「BM-W-A」)を用意した。
次に、毛束を1時間以上常温の水に浸漬させた後、約0.2gのシャンプーを塗り広げ両手で挟み、上側と下側を10往復ずつ擦った。
次いで、バットにぬるま湯を流し入れ続け、直接流水が毛束に当たらないように注意して、1秒1回のスピードで八の字に動かす操作を1分間行った。
その後、バットから取り出した毛束をコームでとかし、約1.4g±0.1gになるまでキッチンペーパーで水切りした。
【0068】
次に、化粧品(HC黄4、HC青2、塩基性青75及び塩基性茶16を含有する液剤)を、毛束の表裏に約2gを万遍なく人差し指で塗り広げた。
次いで、電源を入れた頭髪用美容器1の下側本体2と上側本体3との間に、長手方向を合わせて毛束を挟み、下側本体2と上側本体3との開閉を10秒に1回行った。毛束を頭髪用美容器1にセットしてから5分間(浸透処理時間の半分)が経過した際に、毛束の表裏をひっくり返した。
なお、加熱の温度を60℃、振動の出力値を振動板の単位面積[cm2]あたり、0.074Wとした。
その後、10分間(浸透処理時間)終了から1分経過した後、上記と同様にして毛束から化粧品を洗い流した。
次に、毛束をキッチンペーパーで挟み(加重しない)軽く水を切りした後、毛束を吊るした状態で、毛束と吹出口を10cmの距離をあけドライヤー(ヤーマン社製、「ヴェーダブライト BS for Salon TURBO」)にて温風で4分間手櫛を入れながら乾燥させた。
【0069】
(実施例B2)
加熱の温度を80℃、振動の出力値を振動板の単位面積[cm2]あたり、0.128Wとした以外は、実施例B1と同様にして、浸透処理を行った。
【0070】
5.毛束表面の黒色度合いの測定
乾燥後1日以上静置した毛束について表面の黒色度合いを、次のようにして測定した。
まず、重ね合わせた白色コピー用紙2枚の上に、毛束を2cmの幅に収まるように配置した。
次に、毛束1束あたり長手方向に沿って約1cm間隔を空けた5か所、表裏で合計10か所について、分光測色計(コニカミノルタ社製、「CM-26d」)を使用して、L*の測定を行った。
そして、測定されたL*の平均値を求めた。
【0071】
その結果、実施例B1ではL*が32.8であり、実施例B2ではL*が31.1であった。この値は、小さい方がより黒色度合いが高いことを意味する。この結果から、振動の出力値を高めることで、液剤の頭髪への浸透効率が高まることが理解できる。