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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175279
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/04 20060101AFI20241211BHJP
   B29C 43/20 20060101ALI20241211BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20241211BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241211BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20241211BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20241211BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B27N3/04 A
B27N3/04 C
B29C43/20
B29C43/34
B29C44/00 C
B29C44/36
B32B5/28 A
B32B37/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092941
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 英樹
【テーマコード(参考)】
2B260
4F100
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA07
2B260BA19
2B260CB01
2B260CB04
2B260CD09
2B260DA07
2B260DA18
2B260DC20
2B260DD04
2B260EA05
2B260EB01
2B260EB09
2B260EB12
2B260EB19
4F100AB01
4F100AG00
4F100AJ02
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03
4F100AK41
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA01
4F100CA01B
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG15
4F100DJ01
4F100DJ01B
4F100EJ02
4F100EJ02B
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ17B
4F100EJ17C
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ42B
4F100EJ42C
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JB16C
4F204AA03
4F204AA24
4F204AB02
4F204AC03
4F204AD06
4F204AD08
4F204AD16
4F204AG01
4F204AG03
4F204AG20
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB22
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F214AA03
4F214AA24
4F214AB02
4F214AC03
4F214AD06
4F214AD08
4F214AD16
4F214AG01
4F214AG03
4F214AG20
4F214UA07
4F214UB01
4F214UB22
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】材料を再利用しつつ、軽量且つ高い剛性を有する樹脂成形品を製造することが可能な樹脂成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】天然繊維と熱可塑性樹脂と発泡剤23とを含む端材11を粉砕することで粉砕材30とする粉砕工程と、粉砕工程の後に実行され、粉砕材30を、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層41の上面41Aに散布することで第2層42を形成する第2層形成工程と、第2層形成工程の後に実行され、第1層41と、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層43によって、第2層42を挟んだ状態前記第1層41、第2層42及び第3層43を加熱プレスすることで、第1層41、第2層42及び第3層43が一体化されてなる板状の樹脂成形品20を成形する成形工程と、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む部材を粉砕することで粉砕材とする粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に実行され、前記粉砕材を、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層の一方の面に散布することで第2層を形成する第2層形成工程と、
前記第2層形成工程の後に実行され、前記第1層と、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層によって、前記第2層を挟んだ状態で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスすることで、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が一体化されてなる板状の樹脂成形品を成形する成形工程と、を備える、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記第2層形成工程の前に実行され、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含むと共に発泡剤を含まない部材を粉砕することで他の粉砕材とする他の粉砕工程を備え、
前記第2層形成工程においては、前記粉砕材及び前記他の粉砕材を前記第1層の前記一方の面に散布することで第2層を形成する、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む部材を粉砕することで粉砕材とする粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に実行され、前記粉砕材及び発泡剤を天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層の一方の面に散布することで第2層を形成する第2層形成工程と、
前記第2層形成工程の後に実行され、前記第1層と、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層によって、前記第2層を挟んだ状態で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスすることで、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が一体化されてなる板状の樹脂成形品を成形する成形工程と、
前記第2層形成工程の後に実行され、前記第2層を加熱することで、前記発泡剤を発泡させる発泡工程と、を備える、樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程においては、前記発泡剤が発泡しない温度で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスするものとされ、
前記発泡工程は、前記成形工程の後に実行され、前記発泡剤が発泡する温度となるように前記樹脂成形品を加熱しつつ、前記樹脂成形品を成形型によって所定の製品形状に成形する工程である、請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形品の製造方法として、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、天然繊維に熱可塑性樹脂を混入して形成された内装基材と表皮材とを、接着フィルムを介して接触させ、これらをプレス成形型で加熱プレスすることで、内装基材と表皮材とを互いに接合すると共に所定の製品形状(内装材の形状)に成形することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-190982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、循環型社会の実現やカーボンニュートラルへの貢献が求められており、製造時に生じた材料の端材や、使用しなくなった製品を再利用することが求められている。特許文献1のように、天然繊維及び熱可塑性樹脂が含まれる樹脂成形品については、天然繊維に熱可塑性樹脂が結着しているため、天然繊維のみを回収して再利用することが難しい。そこで、樹脂成形品を粉砕し、その粉砕材を加熱プレスすることで製品形状に成形して再利用することが考えられる。しかしながら、樹脂成形品を粉砕すると、樹脂成形品に含まれる天然繊維が切断されることで長さが短くなり、粉砕材を成形した樹脂成形品について剛性が低下する事態が懸念される。このため、剛性を確保するために、樹脂成形品の密度を大きくする必要が生じ、製品の重量が大きくなってしまう。
【0005】
本明細書で開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、材料を再利用しつつ、軽量且つ高い剛性を有する樹脂成形品を製造することが可能な樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される樹脂成形品の製造方法は、天然繊維と熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む部材を粉砕することで粉砕材とする粉砕工程と、前記粉砕工程の後に実行され、前記粉砕材を、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層の一方の面に散布することで第2層を形成する第2層形成工程と、前記第2層形成工程の後に実行され、前記第1層と、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層によって、前記第2層を挟んだ状態で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスすることで、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が一体化されてなる板状の樹脂成形品を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
第2層として粉砕材を用いることで、材料を再利用して、樹脂成形品を製造することができる。さらに、発泡剤を含む第2層は、軽量化を図りつつ、厚さを大きくすることができ、高い剛性を確保することができる。また、粉砕材から構成された第2層の両面を第1層及び第3層で覆うことで、第2層が意匠面として露出する事態を抑制でき、意匠性が低下する事態を抑制できる。
【0008】
また、前記第2層形成工程の前に実行され、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含むと共に発泡剤を含まない部材を粉砕することで他の粉砕材とする他の粉砕工程を備え、前記第2層形成工程においては、前記粉砕材及び前記他の粉砕材を前記第1層の前記一方の面に散布することで第2層を形成するものとすることができる。発泡剤を含まない他の粉砕材を第2層に含めることで、より多くの材料を再利用することができる。
【0009】
また、上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される樹脂成形品の製造方法は、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む部材を粉砕することで粉砕材とする粉砕工程と、前記粉砕工程の後に実行され、前記粉砕材及び発泡剤を天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層の一方の面に散布することで第2層を形成する第2層形成工程と、前記第2層形成工程の後に実行され、前記第1層と、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層によって、前記第2層を挟んだ状態で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスすることで、前記第1層、前記第2層及び前記第3層が一体化されてなる板状の樹脂成形品を成形する成形工程と、前記第2層形成工程の後に実行され、前記第2層を加熱することで、前記発泡剤を発泡させる発泡工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
第2層として粉砕材を用いることで、材料を再利用して、樹脂成形品を製造することができる。さらに、発泡剤を含む第2層は、軽量化を図りつつ、厚さを大きくすることができ、高い剛性を確保することができる。また、第2層においては、発泡した発泡剤が天然繊維間の隙間を埋めることで剛性をより高くすることができる。さらに、粉砕材から構成された第2層の両面を第1層及び第3層で覆うことで、第2層が意匠面として露出する事態を抑制でき、意匠性が低下する事態を抑制できる。
【0011】
また、前記成形工程においては、前記発泡剤が発泡しない温度で、前記第1層、前記第2層及び前記第3層を加熱プレスするものとされ、前記発泡工程は、前記成形工程の後に実行され、前記発泡剤が発泡する温度となるように前記樹脂成形品を加熱しつつ、前記樹脂成形品を成形型によって所定の製品形状に成形する工程であるものとすることができる。
【0012】
発泡剤が発泡した場合、第2層、ひいては樹脂成形品の板厚が大きくなる。上記方法では、成形工程の後に実行される発泡工程において発泡剤を発泡させる。このため、成形工程から発泡工程までの間は、発泡剤を発泡させずに、樹脂成形品の板厚を小さい状態にすることができ、樹脂成形品の運搬や保管を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、材料を再利用しつつ、軽量且つ高い剛性を有する樹脂成形品を製造することが可能な樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1に係る発泡剤供給工程を示す図
図2】供給装置の内部構造を示す断面図
図3】分散工程を示す図
図4】プレボード成形工程において繊維マットがプレス型に配置された状態を示す図
図5】プレボード成形工程においてプレボードが成形された状態を示す図
図6】製品成形工程を示す図
図7】発泡剤が膨張する前の状態のプレボード内部の構成を示す図
図8】発泡剤が膨張した後の状態のプレボード内部の構成を示す図
図9】粉砕工程を示す図
図10】第2層形成工程を示す図
図11】成形工程において第1層、第2層、第3層が積層された状態を示す図
図12】成形工程において第1層、第2層、第3層が一体化された状態を示す図
図13】本発明の実施形態2に係る他の粉砕工程を示す図
図14】本発明の実施形態2に係る第2層形成工程を示す図
図15】本発明の実施形態3に係る粉砕工程を示す図
図16】本発明の実施形態3に係る第2層形成工程を示す図
図17】本発明の実施形態3に係る成形工程を示す図
図18】発泡工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図12によって説明する。本実施形態では、樹脂成形品の製造方法として、車両用の内装材(ドアトリム等)に用いられる樹脂成形品20の製造方法を例示する。本実施形態では、従来の内装材10を製造する際に生じた端材を再利用して樹脂成形品20を製造する。そこで、まず、内装材10の製造方法について説明し、その後、内装材10を製造する際に生じた端材を利用する樹脂成形品20の製造方法について説明する。
【0016】
内装材10の製造方法は、不織布状をなす繊維マット21に発泡剤を供給する発泡剤供給工程と、繊維マット21内部に発泡剤を分散させる分散工程と、繊維マット21をプレス装置を用いて加熱プレスすることで、その厚さを小さくして繊維マットよりも剛性の高い板状のプレボード22とするプレボード成形工程と、プレボード22を製品形状に成形する製品成形工程と、を備える。
【0017】
繊維マット21は、天然繊維と熱可塑性樹脂繊維とが混合された混合繊維を積層させることで繊維ウェブを形成した後、繊維ウェブを構成する繊維同士を交絡装置により交絡させることで得ることができる。
【0018】
本実施形態で用いられる天然繊維としては、例えば、植物性繊維、樹脂繊維、ガラス繊維、金属繊維等を例示することができる。また、上記天然繊維のうち2種類以上を組み合わせたものを用いてもよい。また、上記植物性繊維としては、ケナフ、亜麻、ヘンプ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、針葉樹(杉、檜等)、広葉樹及び綿花等の植物が有する繊維等を例示することができる。また、上記植物性繊維のうち2種類以上を組み合わせたものを用いてもよい。本実施形態で用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル系樹脂(ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂)等を例示することができる。また、上記熱可塑性樹脂のうち2種類以上を組み合わせたものを用いてもよい。
【0019】
(発泡剤供給工程)
繊維マット21には、図1に示すように、発泡剤23が供給される。より詳しくは、繊維マット21をコンベヤ50上に載置し、供給装置51から繊維マット21の上面に発泡剤23を供給する。発泡剤23としては、熱膨張性カプセルを例示することができる。熱膨張性カプセルは、熱可塑性樹脂からなる殻壁と、殻壁内に収容された膨張成分とを有する。熱膨張性カプセルは、加熱されると膨張成分が所定の温度で膨張し始め、更に、殻壁が軟化されることにより、熱膨張性カプセル全体の体積が増加する構成となっている。
【0020】
なお、熱膨張性カプセルを構成する殻壁としては、内装材10を構成する熱可塑性樹脂と同じ材質であってもよく、異なる材質の熱可塑性樹脂であってもよい。熱膨張性カプセルに含まれる膨張成分としては、炭化水素類を例示することができる。具体的には、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等のハロゲン化炭化水素などを例示することができる。なお、熱膨張性カプセルに含まれる膨張成分は、上述したものに限定されず適宜変更可能である。
【0021】
なお、図2に示すように、供給装置51内部において、供給口51A付近には、複数の凹部59Aを有するローラ59が設けられている。凹部59Aは、球状をなす発泡剤23が嵌合可能な大きさを有している。上方からローラ59に供給された発泡剤23は、凹部59Aに嵌合し、ローラ59の回転に伴って、凹部59Aの開口が下方を向くことで、凹部59Aから繊維マット21上に落下する。これにより、コンベヤ50によって繊維マット21を所定の方向(図1の右方向)に搬送すると共にローラ59を回転させることで、凹部59Aの個数に応じた所定個数の発泡剤23を繊維マット21の全面に均一に供給することができる。
【0022】
(分散工程)
次に、実行される分散工程では、図3に示すように、発泡剤23が上面に供給された状態の繊維マット21を図示しないコンベヤにて搬送しつつ、繊維マット21の上面をローラなどの押圧手段53によって押圧する。これにより、繊維マット21上面の発泡剤23が、繊維マット21内部に分散される。また、押圧手段53による押圧と同時に、加振手段54によって繊維マット21を下面から加振してもよい。この場合、加振手段54としては、例えば、電磁フィーダ等を用いることができる。
【0023】
(プレボード成形工程)
次に、図4及び図5に示すように、プレス型55,56を用いて、繊維マット21を加熱プレスすることで、繊維マット21に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させるとともに、繊維マット21をボード状に成形する。繊維マット21に含まれる熱可塑性樹脂が溶融された後、冷却に伴って固化することで、繊維マット21に含まれる繊維同士が結着された状態となる。なお、ボード状に成形された繊維マット21は、プレボード22と呼ばれることがある。繊維マット21をプレボード22とすることで搬送や保管を容易に行うことができる。なお、プレボード22中の発泡剤23の割合は、例えば、5重量%程度とされるが、これに限定されず適宜変更可能である。
【0024】
(製品成形工程)
次に、プレボード22を、図示しない加熱装置(例えば赤外線ヒーターや熱風を用いた加熱炉等)によって加熱する。この時、プレボード22内部の発泡剤23が膨張する温度までプレボード22を加熱する。これにより、加熱されたプレボード22は軟化状態になると共に、膨張することで板厚が大きくなる。そして、図6に示すように、軟化状態のプレボード22を一対の成形型57,58によってプレスする。これにより、プレボード22が成形型57,58の型面の形状に倣う製品形状に成形され、内装材10が完成する。また、プレボード22の外周部分は、成形型57,58のせん断によって切断され、端材11となる。
【0025】
なお、図7に示すように、プレボード22内部の発泡剤23が膨張する前の状態では、発泡剤23が天然繊維24間に配されている。発泡剤23が膨張する過程では、発泡剤23を構成する熱可塑性樹脂が溶融した後、固化する。このため、発泡剤23が膨張した後の状態では、図8に示すように、天然繊維24同士が膨張した発泡剤23によって結着された状態となる。これにより、内装材10の剛性をより高くすることができる。
【0026】
次に、内装材10を製造する過程で生じた端材11を再利用した樹脂成形品20の製造方法について説明する。本実施形態の樹脂成形品20の製造方法は、端材11を粉砕する粉砕工程と、粉砕工程の後に実行される第2層形成工程と、第2層形成工程の後に実行され、板状の樹脂成形品20を成形する成形工程と、を備える。
【0027】
(粉砕工程)
粉砕工程では、図9に示すように、内装材10の成形時に生じた端材11(天然繊維と熱可塑性樹脂と発泡剤とを含む部材)を粉砕することで粉砕材30とする。端材11の粉砕は例えば、複数の刃60を有する一対のローラ61,62間に端材11を通過させることで行われる。なお、端材11の粉砕方法は、ローラ61,62を用いたものに限定されず、裁断や引き裂き、叩き割り等の方法を行うことができる。また、端材11の代わりとして、規格外となった内装材や、リサイクルにより回収された内装材等を粉砕し、粉砕材30としてもよい。
【0028】
(第2層形成工程)
第2層形成工程では、図10に示すように、粉砕材30を、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層41の上面41A(一方の面)に散布することで堆積させ、第2層42を形成する。なお、粉砕材30を散布する装置としては、上述した供給装置51と同様の構成(粉砕材30が嵌合可能な複数の凹部を有するローラを備えた構成)の供給装置63を用いることができる。
【0029】
(成形工程)
成形工程では、図11に示すように、第2層42の上面に天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第3層43を積層する。これにより、第1層41と、第3層43によって、第2層42が挟まれた状態となる。そして、第1層41と、第3層43によって、第2層42を挟んだ状態で、図12に示すように、プレス型55,56を用いて第1層41、第2層42及び第3層43を加熱プレスすることで、第1層41、第2層42、第3層43に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させるとともに、第1層41、第2層42及び第3層43をボード状に成形する。
【0030】
第1層41、第2層42、第3層43に含まれる熱可塑性樹脂が溶融された後、冷却に伴って固化することで、第1層41、第2層42及び第3層43が互いの接触面において結着される。これにより、第1層41、第2層42及び第3層43が一体化されてなる板状の樹脂成形品20(プレボード)が成形される。このような樹脂成形品20は、上述した内装材10と同様に、一対の成形型57,58によって加熱プレスされることで、製品形状に成形され、内装材となる。なお、樹脂成形品20中の粉砕材30の割合は20重量%以下であることが好ましいが、これに限定されず適宜変更可能である。
【0031】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、第2層42として粉砕材30を用いることで、材料を再利用して、樹脂成形品20を製造することができる。さらに、発泡剤23を含む第2層42は、軽量化を図りつつ、厚さを大きくすることができ、高い剛性を確保することができる。また、粉砕材30から構成された第2層42の両面を第1層41及び第3層43で覆うことで、第2層42が意匠面として露出する事態を抑制でき、意匠性が低下する事態を抑制できる。
【0032】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図13及び図14によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、他の粉砕工程を備える点及び第2層形成工程の内容が上記実施形態と相違する。
【0033】
(他の粉砕工程)
第2層形成工程の前に実行される他の粉砕工程では、図13に示すように、一対のローラ61,62を用いて、端材111を粉砕することで粉砕材130(他の粉砕材)とする。端材111は、内装材を製造する際に生じたものであり、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含むと共に発泡剤を含まない部材となっている。
【0034】
(第2層形成工程)
第2層形成工程においては、図14に示すように、粉砕材30及び粉砕材130を第1層41の上面41Aに散布することで第2層142を形成する。なお、供給装置63は、供給装置51(図2参照)と同様に、凹部を有するローラ(図示せず)を有している。粉砕材30及び粉砕材130は、予めふるい等で大きさが選別されており、外形が殆ど同じものとなっている。このため、供給装置63の凹部には、粉砕材30及び粉砕材130のうちいずれかが嵌合することができる。このように2種類の粉砕材30,粉砕材130の大きさを揃えることで、1種類の供給装置63を用いて2種類の粉砕材30,粉砕材130を散布することができる。
【0035】
その後、上記実施形態1と同様に、プレス型55,56を用いて第1層41、第2層142及び第3層43を加熱プレスすることで、第1層41、第2層142及び第3層43をボード状に成形することで、樹脂成形品を得ることができる。本実施形態では、発泡剤を含まない粉砕材130を第2層142に含めることで、より多くの材料を再利用することができる。
【0036】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図15及び図18によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、発泡工程を備える点、粉砕工程、第2層形成工程及び成形工程の内容が上記実施形態と相違する。
【0037】
(粉砕工程)
粉砕工程では、図15に示すように、一対のローラ61,62を用いて、端材211を粉砕することで粉砕材230とする。端材211は、内装材を製造する際に生じたものであり、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含むと共に発泡剤を含まない部材となっている。つまり、粉砕工程では、天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む端材211を粉砕することで粉砕材230とする。
【0038】
(第2層形成工程)
粉砕工程の後に実行される第2層形成工程では、図16に示すように、粉砕材230及び発泡剤23を天然繊維と熱可塑性樹脂とを含む第1層41の上面41A(一方の面)に散布することで第2層242を形成する。なお、粉砕材230及び発泡剤23は外形が異なる。このため、粉砕材230及び発泡剤23を散布するための供給装置(図2参照)については、粉砕材230及び発泡剤23の各々に対応した凹部を有する供給装置を用いる必要がある。このため、供給装置63(粉砕材230が嵌合可能な凹部を有するローラを備える供給装置)を用いて粉砕材230を散布した後、供給装置51(発泡剤23が嵌合可能な凹部を有するローラを備える供給装置)を用いて発泡剤23を散布する。
【0039】
(成形工程)
第2層形成工程の後に実行される成形工程では、図17に示すように、第1層41と、第3層43によって、第2層242を挟んだ状態で、第1層41、第2層242,第3層43を加熱プレスすることで、第1層41、第2層242,第3層43が一体化されてなる板状の樹脂成形品220(プレボード)を成形する。但し、この成形工程においては、第1層41、第2層242,第3層43に含まれる熱可塑性樹脂が溶融しつつ、第2層242の発泡剤23が発泡しない温度で、第1層41、第2層242,第3層43を加熱プレスする。
【0040】
(発泡工程)
成形工程の後に実行される発泡工程(製品成形工程)では、図18に示すように、発泡剤23が発泡する温度となるように樹脂成形品220(より詳しくは第2層242)を加熱することで発泡剤23を発泡させると共に、樹脂成形品220を一対の成形型57,58によって所定の製品形状に成形する。これにより、樹脂成形品220が成形型57,58の型面の形状に倣う製品形状に成形され、内装材となる。
【0041】
本実施形態では、第2層242として粉砕材230を用いることで、材料を再利用して、樹脂成形品220を製造することができる。さらに、発泡剤23を含む第2層242は、軽量化を図りつつ、厚さを大きくすることができ、高い剛性を確保することができる。また、第2層242においては、発泡した発泡剤23が天然繊維間の隙間を埋めることで剛性をより高くすることができる。さらに、粉砕材230から構成された第2層242の両面を第1層41及び第3層43で覆うことで、第2層242が意匠面として露出する事態を抑制でき、意匠性が低下する事態を抑制できる。
【0042】
また、発泡剤23が発泡した場合、第2層242、ひいては樹脂成形品220の板厚が大きくなる。本実施形態では、成形工程の後に実行される発泡工程において発泡剤23を発泡させる。このため、成形工程から発泡工程までの間(樹脂成形品220がプレボードの状態にある間)は、発泡剤23を発泡させずに、樹脂成形品220の板厚を小さい状態にすることができ、樹脂成形品220の運搬や保管を容易に行うことができる。
【0043】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、樹脂成形品として車両用の内装材に用いられるものを例示したが、樹脂成形品の用途は、これに限定されない。
(2)上記実施形態では、発泡剤として、熱膨張性カプセルを例示したが、これに限定されない。例えば、熱膨張性カプセル以外の発泡剤が含まれている部材を粉砕して粉砕材としてもよい。
(3)上記実施形態3では、樹脂成形品220を一対の成形型57,58によって所定の製品形状に成形する際に発泡剤23を発泡させる方法を例示したが、これに限定されない。例えば、プレボードを成形する成形工程において、発泡剤23を発泡させてもよい。
【符号の説明】
【0044】
20,220…樹脂成形品、23…発泡剤、24…天然繊維、30,230…粉砕材、41…第1層、41A…第1層の上面(一方の面)、42,142,242…第2層、43…第3層、57,58…成形型、130…他の粉砕材
図1
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