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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024175280
(43)【公開日】2024-12-18
(54)【発明の名称】サージ圧吸収装置及び成形機
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20241211BHJP
   B29C 45/57 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B22D17/32 B
B29C45/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092942
(22)【出願日】2023-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】辻 眞
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 大助
(72)【発明者】
【氏名】松澤 周吾
(72)【発明者】
【氏名】野田 三郎
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM32
4F206AR027
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN25
4F206JQ03
4F206JQ90
4F206JT21
4F206JT24
(57)【要約】
【課題】新たな構成のサージ圧吸収装置を提供する。
【解決手段】吸収装置2は、容器61と、気体圧回路71とを有している。容器61は、気体を収容する空間を有している。また、容器61は、金型101内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と固定される液圧式又は気体式のサージシリンダ43の、金型101内の溶湯109の圧力によって進退部材41が後退するときに容積が縮小されるヘッド側室45hの側からの流体を、容器61内の気体の圧縮を伴って受け入れる。気体圧回路71は、気体室61bへの気体の供給及び気体室61bからの気体の排出の少なくとも一方によって気体室61b内の圧力を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を収容する空間を有する容器であって、型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材と固定される液圧式又は気体圧式のシリンダの、前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室の側からの流体を、前記空間内の気体の圧縮を伴って受け入れる容器と、
前記空間への前記気体の供給及び前記空間からの前記気体の排出の少なくとも一方によって前記空間内の圧力を調整する気体圧回路と、
を有しているサージ圧吸収装置。
【請求項2】
前記シリンダは、前記シリンダ室に前記流体としての液体を収容する液圧式シリンダである
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項3】
前記容器は、ピストンを収容しているシリンダ部材であり、
前記シリンダ部材は、前記ピストンによって、前記液体を収容する液室と、前記空間とに区画されている
請求項2に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項4】
前記シリンダは、前記シリンダ室に前記流体としての気体を収容する気体圧式シリンダである
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項5】
前記容器は、前記空間に前記シリンダ室の側からの前記流体としての気体を受け入れる構成を有している
請求項4に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項6】
前記気体圧回路は、電動機の駆動力によって前記空間に前記気体を供給する 請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項7】
前記気体圧回路は、
前記空間に通じている気体圧式の供給シリンダと、
前記供給シリンダを駆動する駆動部と、を有している
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項8】
前記容器への前記液体の供給及び前記容器からの前記液体の排出の少なくとも一方によって前記容器内の前記気体の圧力を調整する液圧回路を有している
請求項2に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項9】
前記流体を送出可能であり、前記シリンダ室と接続されることによって、局部加圧のための圧力を前記シリンダ室に付与する圧力源を更に有している
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項10】
前記液体を吐出可能であり、前記シリンダ室と接続されることによって、局部加圧のための圧力を前記シリンダ室に付与するポンプを更に有している
請求項2に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項11】
圧縮された前記気体を収容しており、前記シリンダ室と接続されることによって、局部加圧のための圧力を前記シリンダ室に付与するタンクを更に有している
請求項4に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項12】
前記シリンダ室の側から前記容器の側への前記流体の流れを許容及び禁止するバルブと、
前記進退部材の後退を検出するセンサと、
前記センサによる前記進退部材の後退の検出に基づくタイミングで前記バルブを制御する制御装置と、
を更に有している請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項13】
前記シリンダ室の側から前記容器の側への前記流体の流れを許容及び禁止するバルブと、
前記バルブを制御する制御装置を更に有しており、
前記制御装置は、前記成形材料の圧力によって前記進退部材が後退を開始した後に、前記バルブを、前記シリンダ室の側から前記容器への流れを許容する状態から当該流れを禁止する状態へ遷移させる
請求項1に記載のサージ圧吸収装置。
【請求項14】
型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材と固定される液圧式のシリンダの、前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室の側からの液体を受け入れる液室と、前記液室とピストンによって区画された気体室と、を有するアキュムレータと、
前記気体室への前記気体の供給及び前記気体室からの前記気体の排出の少なくとも一方によって前記気体室内の圧力を調整する気体圧回路と、
を有しているサージ圧吸収装置。
【請求項15】
請求項1に記載のサージ圧吸収装置と、
前記型を保持する型締装置と、
前記型内に前記成形材料を射出する射出装置と、
を有している成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サージ圧吸収装置、及び当該サージ圧吸収装置を含む成形機に関する。成形機は、例えば、金属を成形するダイカストマシン、又は樹脂を成形する射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
型のキャビティに通じるスリーブ内の成形材料(例えば溶融状態の金属)をプランジャによって押すことによってキャビティに成形材料を射出して成形品を製造する成形機において、いわゆるサージ圧が生じることが知られている(例えば特許文献1~4)。サージ圧は、成形材料がキャビティの概ね全体に行き渡って逃げ場を失ったとき(充填が概ね完了したとき)に生じる、瞬間的かつ比較的大きい圧力である。サージ圧が大きすぎると、例えば、いわゆるバリが生じる。バリは、キャビティの周囲へ成形材料が食み出して形成される部分(形成が意図されていない部分)である。
【0003】
特許文献1~4では、サージ圧を吸収する技術を開示している。具体的には、以下のとおりである。
【0004】
特許文献1及び2では、キャビティに充填された成形材料を局所的に加圧する(いわゆる局部加圧を行う)加圧装置がサージ圧の吸収に利用されている。加圧装置は、型内の成形材料を押圧する加圧部材を駆動する加圧シリンダを有している。成形材料がキャビティに充填される前において、加圧シリンダは、比較的低い駆動力で加圧部材を前進限(キャビティ側の駆動限)に待機させる。そして、キャビティに成形材料が概ね充填されると、成形材料によって押された加圧部材が後退し、サージ圧が吸収される。特許文献1及び2では、加圧シリンダと通じるサージ圧吸収用のアキュムレータを設けることも開示されている。
【0005】
特許文献3及び4では、局部加圧を目的とした部材ではないが、上記の加圧部材と同様に、成形材料によって後退する摺動部材が設けられている。摺動部材は、ゴム又はバネ等の弾性部材によって前方へ押されている。そして、キャビティに成形材料が概ね充填されると、成形材料によって押された加圧部材が後退し、サージ圧が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第7137729号公報
【特許文献2】特許第7080963号公報
【特許文献3】特開昭51-17122号公報
【特許文献4】特開昭59-87964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したサージ圧吸収装置は、それぞれ長所及び短所を有する。従って、サージ圧を吸収する新たな構成が提案され、技術の豊富化が図られることが待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るサージ圧吸収装置は、気体を収容する空間を有する容器であって、型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材と固定される液圧式又は気体圧式のシリンダの、前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室の側からの流体を、前記空間内の気体の圧縮を伴って受け入れる容器と、前記空間への前記気体の供給及び前記空間からの前記気体の排出の少なくとも一方によって前記空間内の圧力を調整する気体圧回路と、を有している。
【0009】
本開示の一態様に係るサージ圧吸収装置は、型内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材と固定される液圧式のシリンダの、前記型内の成形材料の圧力によって前記進退部材が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室の側からの液体を受け入れる液室と、前記液室とピストンによって区画された気体室と、を有するアキュムレータと、前記気体室への前記気体の供給及び前記気体室からの前記気体の排出の少なくとも一方によって前記気体室内の圧力を調整する気体圧回路と、を有している。
【0010】
本開示の一態様に係る成形機は、上記サージ圧吸収装置と、前記型を保持する型締装置と、前記型内に前記成形材料を射出する射出装置と、を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、サージ圧を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(a)は実施形態に係るサージ圧吸収装置の概要を説明するための模式図、図1(b)は図1(a)の領域Ibの拡大図。
図2図2(a)は図1(a)の動作の続きを示す模式図、図2(b)は図2(a)の領域IIbの拡大図。
図3】第1実施形態に係るダイカストマシンの要部の構成を示す側面図。
図4】第1実施形態に係る吸収装置の第1構成例を示す模式図。
図5図4の吸収装置の気体の圧力を調整する調整装置の構成の一例を示す模式図。
図6】射出に係る動作を説明するための図。
図7】第1実施形態に係る吸収装置の第2構成例を示す模式図。
図8】第1実施形態に係る吸収装置の第3構成例を示す模式図。
図9】第2実施形態に係る吸収装置の構成例を示す模式図。
図10】複数位置のサージ圧吸収に係る構成の第1変形例を示す図。
図11】複数位置のサージ圧吸収に係る構成の第2変形例を示す図。
図12】複数位置のサージ圧吸収に係る構成の第3変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示に係る複数の態様について説明する。なお、複数の態様のうち相対的に後に説明される態様については、基本的に、先に説明された態様との相違点についてのみ述べる。特に言及が無い事項については、先に説明された態様と同様とされたり、先に説明された態様から類推されたりしてよい。また、複数の態様において互いに対応する構成については、相違点があっても、便宜上、互いに同一の符号を付すことがある。
【0014】
(実施形態に係るサージ圧吸収装置の概要)
図1(a)~図2(b)は、実施形態に係るサージ圧吸収装置2(以下、単に「吸収装置2」ということがある。)及び射出装置9の動作の概要を示す模式図である。
【0015】
図1(a)及び図2(a)は、吸収装置2及び射出装置9を模式的に示しており、また、成形サイクル中(より詳細には射出サイクル中)の互いに異なる時点の状態を示している。図1(b)は、図1(a)の領域Ibの拡大図である。図2(b)は、図2(a)の領域IIbの拡大図である。
【0016】
図1(a)は、成形材料(例えば溶融状態の金属である溶湯109)を金型101の内部に射出する射出工程が行われている状態を示している。射出工程においては、矢印a1で示すように、プランジャ21(射出プランジャ)が金型101に向かって前進することによって、スリーブ19内の溶湯109を金型101の内部(空洞107)に押し出す。
【0017】
図2(a)は、図1(a)の後の状態を示している。射出工程が進むと、溶湯109が空洞107の概ね全体に行き渡る。図2(a)は、そのような状態を示している。なお、実施形態の説明では、このような状態に至ったことを充填が完了したということがある。充填が完了すると、逃げ場を失った溶湯109をプランジャ21が押すことによって溶湯109の圧力は上昇する。このとき一時的かつ急激な圧力上昇を伴う、いわゆるサージ圧が生じることもある。
【0018】
ここで、本実施形態においては、空洞107への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と、進退部材41に固定されているサージシリンダ43とが設けられている。サージシリンダ43は、液圧式(例えば油圧式)又は気体圧式(例えば空圧式)のシリンダである。
【0019】
図1(a)及び図1(b)に示すように、充填が完了する前(別の観点では溶湯が進退部材41へ到達する前)において、進退部材41は、後退限よりも前方(空洞107側)の初期位置(例えば前進限)にて待機する。そして、溶湯109が進退部材41の位置に到達し、さらに、溶湯109が進退部材41を後方へ押す力が一定の大きさを上回ると、矢印a2(図2(a))及び矢印a3(図2(b))によって示すように、進退部材41は後退する。なお、進退部材41は、後退限に到達してもよいし、到達しなくてもよい。
【0020】
図1(a)及び図1(b)の比較から理解されるように、進退部材41が後退するとき、サージシリンダ43が有しているヘッド側室45h(シリンダ室の一例)の容積が縮小される。これに伴い、図2(b)に矢印a4によって示すように、ヘッド側室45hから流体(液体又は気体)が排出される。
【0021】
吸収装置2は、ヘッド側室45hの側からの流体を受け入れ可能な容器61を有している。容器61は、気体を収容する空間(符号省略)を有している。ヘッド側室45hの側からの流体が容器61に流入すると、当該流体が容器61の容積の一部を占めることなどによって、容器61内に存在した気体が圧縮される。別の観点では、容器61内の気体の圧縮によって進退部材41の後退が許容される。
【0022】
以上のような動作によって、サージ圧が吸収される。なお、後述するように、容器61は、気体の圧縮以外の方法によって、ヘッド側室45hの側からの流体を受け入れてもよい。
【0023】
また、ヘッド側室45hの「側」からの流体が容器61に流入する等と表現しているのは、例えば、ヘッド側室45hと容器61との間の流路の容積が相対的に大きく、ヘッド側室45hから排出される流体の量が相対的に少ない場合においては、ヘッド側室45hの流体が容器61へ到達するとは限らないからである。ただし、本開示においては、便宜上、上記のような場合であっても、ヘッド側室45hの流体が容器61へ流入すると表現することがある。成形機内の他の部分における流体の流れについても同様とする。
【0024】
図4は、吸収装置2の具体的な構成の例(後述する第1実施形態の吸収装置2A)を示す模式図である。
【0025】
吸収装置2Aは、容器61の具体例としての容器61Aに通じる気体圧回路71を有している。気体圧回路71は、容器61Aへの気体の供給及び容器61Aからの気体の排出の少なくとも一方によって容器61A内の気体の圧力を調整する。これにより、例えば、容器61によるサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される。その結果、例えば、金型101の温度変化に起因するサージ圧の変化に応じて吸収度合いを調整し、充填完了時の射出圧力を一定値にすることが容易化される。これにより、例えば、成形品の品質のばらつきが低減される。
【0026】
なお、吸収装置2は、進退部材41を含んで定義されてもよいし、進退部材41を含まずに定義されてもよい。進退部材41は、金型101の交換によって交換され得るものだからである。サージシリンダ43についても同様である。実施形態の説明では、便宜上、吸収装置2が進退部材41及びサージシリンダ43を含まないことを前提とした表現をする。
【0027】
既述のように、サージシリンダ43は、液圧式であってもよいし、気体圧式であってもよい。別の観点では、ヘッド側室45hと容器61との間を流れる流体は、液体であってもよいし、気体であってもよい。前者の態様を第1実施形態と称し、後者の態様を第2実施形態と称するものとする。両者は、上記の相違に伴って、容器61の構成等の具体的な構成が異なってよい。
【0028】
以上が実施形態に係る吸収装置2の概要である。ただし、本願においては、気体圧回路(71等)を有さない実施形態についても開示する。この実施形態の構成要素は、適宜に気体圧回路を有する実施形態に適用されてよい。また、本願からは、気体圧回路を有さない吸収装置に係る技術的思想が抽出されてもよい。従って、以下の説明では、気体圧回路について任意の(必須でない)要件として言及することがある。
【0029】
以下では、概略、下記の順で実施形態について説明する。
1.第1実施形態
1.1.ダイカストマシンの全体構成(図3
1.1.1.型締装置
1.1.2.射出装置
1.1.3.制御装置
1.1.4.ダイカストマシンのその他の構成
1.2.進退部材41
1.3.サージシリンダ43
1.4.第1実施形態に係る吸収装置の第1構成例(図4
1.4.1.ダンパーシリンダ
1.4.2.液圧回路
1.4.3.気体圧回路
1.4.4.センサ
1.4.5.吸収装置のその他の構成
1.5.気体供給装置の構成例(図5
1.6.射出装置の動作(図6
1.7.吸収装置の動作
1.7.1.溶湯が進退部材に到達する前の動作
1.7.2.溶湯が進退部材に到達したときの動作
1.7.3.局部加圧時の動作
1.7.4.局部加圧後の動作
1.8.第1実施形態のバリエーション
1.8.1.第1実施形態に係る吸収装置の第2構成例(図7
1.8.2.第1実施形態に係る吸収装置の第3構成例(図8
1.8.3.他の構成例
1.9.第1実施形態のまとめ
2.第2実施形態(図9
2.1.第2実施形態に係る吸収装置の構成例
2.2.第2実施形態に係る吸収装置の動作
2.2.1.溶湯が進退部材に到達する前の動作
2.2.2.溶湯が進退部材に到達したときの動作
2.2.3.局部加圧時の動作
2.2.4.局部加圧後の動作
2.3.第2実施形態のバリエーション
2.4.第2実施形態のまとめ
3.複数位置におけるサージ圧吸収のための構成のバリエーション(図10図12
【0030】
なお、図1(a)及び図2(a)では、ヘッド側室45hの側から容器61の側への流体の流れを許容及び禁止するサージバルブ63が図示されている。後述する実施形態の説明では、このサージバルブ63の種々の態様も示される。サージバルブ63は、種々の用途に利用されてよい。
【0031】
例えば、サージ圧の吸収後、サージバルブ63は、ヘッド側室45hから容器61への流れ(及びその反対方向の流れ)を禁止してよい。この場合、例えば、その後の溶湯109の圧力に容器61が影響を及ぼす蓋然性が低減される。より詳細には、例えば、その後の射出装置9による増圧(後述)の効果が進退部材41の後退によって減じられる蓋然性が低減される。
【0032】
また、例えば、前段落のようにサージバルブ63によってヘッド側室45hから容器61への流れが禁止された後、容器61の圧力よりも高い圧力を適宜な圧力源からヘッド側室45hへ付与し、進退部材41によって局部加圧を行ってよい。この場合、例えば、サージバルブ63によって容器61への流れが禁止されていることによって、容器61が上記圧力源からの比較的高い圧力から保護される。及び/又は、例えば、上記圧力源からの圧力が容器61へ逃げて局部加圧に制御遅れが生じる蓋然性が低減される。
【0033】
また、例えば、サージバルブ63は、進退部材41が後退限よりも前方(初期位置)で待機している状態であってサージ圧の吸収前に、ヘッド側室45hから容器61への流れを禁止していてよい。そして、図示の例の位置よりもスリーブ19に近い位置に配置された進退部材41に成形材料が到達した後、適宜な時期にヘッド側室45hから容器61への流れを許容することによって、成形材料の圧力を吸収するタイミングを制御してよい。
【0034】
(1.第1実施形態)
第1実施形態は、既述のとおり、サージシリンダ43が液圧式シリンダである態様である。液体は、例えば、油圧機器に利用される作動油であってよい。ただし、液体は、水等の他の種類の液体であってもよい。また、液体は、例えば、ダイカストマシン1のうちのサージシリンダ43以外の液圧機器に利用される作動液と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
容器61は、既述のとおり、サージ圧を吸収するための気体を収容している。気体の種類は任意である。例えば、気体は、空気又は不活性ガス(例えば窒素)とされてよい。実施形態(第2実施形態を含む。)の説明では、主として、気体が空気である態様を例に取る。
【0036】
(1.1.ダイカストマシンの全体構成)
図3は、実施形態に係る型付ダイカストマシンDCの要部の構成を示す側面図(一部に断面図を含む)である。図3を参照して行う説明において、便宜上、図3の左側を前方といい、図3の右側を後方ということがある。
【0037】
型付ダイカストマシンDCは、型(金型101)と、金型101を保持しているダイカストマシン1とを有している。ダイカストマシン1は、金型101の内部(空洞107)に溶融状態の成形材料を射出(充填)することによって、凝固した成形材料からなる製品(成形品、ダイカスト品)を製造する装置として構成されている。
【0038】
成形材料は、例えば、アルミニウム等の金属である。溶融状態の金属は、既述のように、溶湯と呼ばれることがある。なお、溶融状態の成形材料に代えて、固液共存状態(半凝固状態又は半溶融状態)の成形材料が空洞107に射出されてもよい。
【0039】
金型101は、例えば、固定型103と、固定型103と対向する移動型105とを有している。空洞107の主たる部分は、固定型103と移動型105との間に構成される。固定型103は、移動しない型である。移動型105は、固定型103との対向方向(型開閉方向)に移動する型である。型開閉方向は、例えば、水平方向である。図3等では、便宜上、固定型103又は移動型105の断面が1種類のハッチングで示されている。ただし、これらの型は、直彫り式のものであってもよいし、入れ子式のものであってもよい。また、固定型103及び/又は移動型105は、ダイベースを含んでいてよい。
【0040】
ダイカストマシン1は、機械的動作を行うマシン本体3と、マシン本体3の制御を行う制御装置5とを有している。マシン本体3は、例えば、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置7と、空洞107に溶湯を射出する射出装置9と、溶湯が凝固して構成された製品を固定型103又は移動型105から押し出す不図示の押出装置と、を有している。
【0041】
また、ダイカストマシン1(又はマシン本体3)は、吸収装置2(図1(a))を有している。また、型付ダイカストマシンDCは、図1(a)に示したように、進退部材41と、サージシリンダ43と、吸収装置2とを有している。
【0042】
ダイカストマシン1において、吸収装置2以外の構成要素の構成及び動作は、公知のものであってもよいし、新規なものであってもよく、換言すれば、種々の態様とされてよい。なお、公知の構成及び動作とされて構わない構成及び動作については、適宜に説明を省略する。
【0043】
(1.1.1.型締装置)
型締装置7は、例えば、ベース11と、ベース11上に固定されている固定ダイプレート13と、ベース11上において型開閉方向に移動可能な移動ダイプレート15と、これらのダイプレートに挿通されている複数(例えば4本)のタイバー17と、を有している。固定ダイプレート13と移動ダイプレート15とは型開閉方向において互いに対向している。固定ダイプレート13は、移動ダイプレート15に対向する面に固定型103を保持する。移動ダイプレート15は、固定ダイプレート13に対向する面に移動型105を保持する。移動ダイプレート15の型開閉方向における移動によって、金型101の開閉がなされる。また、型閉じがなされた状態でタイバー17が伸長されることによって、その伸長量に応じた型締力が金型101に付与される。
【0044】
(1.1.2.射出装置)
射出装置9は、固定ダイプレート13の背後(移動ダイプレート15とは反対側)に位置している。射出装置9は、空洞107内に通じるスリーブ19と、スリーブ19内の溶湯を空洞107内へ押し出すプランジャ21と、プランジャ21を駆動する駆動部23とを有している。なお、スリーブ19及びプランジャ21は、消耗品として捉えることができるから、駆動部23のみを射出装置として捉えてもよい。
【0045】
スリーブ19は、固定ダイプレート13に挿通されるように設けられている。なお、スリーブ19は、固定型103に挿通されていなくてもよいし(図3の例)、挿通されていてもよい(図1(a)の例)。スリーブ19は、概略、円筒状の部材であり、水平方向(前後方向)に延びるように配置されている。スリーブ19の上面には、溶湯が供給される供給口19aが開口している。
【0046】
プランジャ21は、スリーブ19を摺動するプランジャチップ21aと、プランジャチップ21aに固定されたプランジャロッド21bとを有している。プランジャロッド21bは、前後方向に延びており、その後端は、カップリング25によって駆動部23と連結されている。
【0047】
図3では、射出開始前の状態が示されている。このとき、プランジャチップ21aは、供給口19aよりも後方にてスリーブ19内に(少なくとも一部が)位置している。この状態で、不図示の給湯装置等によって溶湯が供給口19aに注がれる。次に、駆動部23の駆動力によってプランジャチップ21aが空洞107に向かって摺動する(前進する)。これにより、溶湯は空洞107内に射出される。
【0048】
駆動部23は、例えば、液圧式(例えば油圧式)、電動式又はハイブリッド式(液圧式と電動式との組み合わせ)とされてよい。図1(a)では、液圧式の駆動部23が例示されている。すなわち、駆動部23は、プランジャ21に連結される液圧シリンダ(射出シリンダ27)と、射出シリンダ27への作動液(例えば作動油)の供給等を行う液圧装置(不図示)を有している。
【0049】
射出シリンダ27の構成は任意である。例えば、射出シリンダ27は、単胴式(図1(a)の例)又は増圧式(不図示)とされてよい。単胴式の射出シリンダ27(図1(a))は、シリンダ部材31と、シリンダ部材31の内部を摺動可能なピストン33と、ピストン33から前方(プランジャ21側)へ延びるピストンロッド37と、を有している。
【0050】
シリンダ部材31は、不動とされている。シリンダ部材31の内部は、ピストン33によって、ピストンロッド37側のロッド側室31rと、その反対側のヘッド側室31hに区画されている。ピストンロッド37は、シリンダ部材31の外部へ延び出ており、その前端がカップリング25によってプランジャ21の後端と連結されている。
【0051】
ヘッド側室31hへ作動液が供給されることによって、ピストン33は前進する。これにより、ピストンロッド37及びカップリング25を介してピストン33に連結されているプランジャ21が前進する。ひいては、スリーブ19内の溶湯が空洞107に射出される。
【0052】
(1.1.3.制御装置)
制御装置5は、例えば、特に図示しないが、コンピュータを含んで構成されてよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び外部記憶装置を含んで構成されてよい。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、種々の演算(制御を含む)を行う種々の機能部が構築される。また、制御装置5は、一定の動作を実行する論理回路を含んでいてもよいし、電源回路を含んでいてもよいし、ドライバを含んで概念されてもよい。制御装置5は、ハードウェア的に1カ所に纏められていてもよいし、複数個所に分散されていてもよい。
【0053】
なお、制御装置5は、ダイカストマシン1が含む各装置に着目したときは、その装置の制御装置として捉えられてよい。例えば、制御装置5は、吸収装置2の制御装置として捉えられてよい。
【0054】
本実施形態の説明において、ダイカストマシン1(吸収装置2)の動作は、基本的に制御装置5の制御によって実現されてよい。従って、例えば、図1(a)~図2(b)を参照して説明した動作、並びに後述する図6を参照して説明する動作は、特に断りが無い限り、制御装置5の制御によって実現されてよい。実施形態の説明では、便宜上、種々の動作について、制御装置5が制御する点を省略して説明することがある。ただし、制御装置5の制御によって実現される動作の一部又は全部は、オペレータがダイカストマシン1の入力装置(不図示)に対して操作を行うことによって実現されたり、人力で実現されたりしても構わない。
【0055】
(1.1.4.ダイカストマシンのその他の構成)
型付ダイカストマシンDCは、種々のセンサを有してよい。そして、制御装置5は、種々のセンサの検出値に基づいて、各部を制御してよい。
【0056】
上記のようなセンサの例を挙げる。例えば、特に図示しないが、プランジャ21の位置を検出する位置センサ、及び/又は駆動部23の駆動力を検出するセンサが設けられてよい。位置の微分によって速度が得られるから、位置センサは速度センサと捉えられてもよい。駆動部23の駆動力を検出するセンサとしては、例えば、駆動部23が射出シリンダ27を有する態様においては、ヘッド側室31hの圧力を検出する圧力センサ(及び必要に応じてロッド側室31rの圧力を検出する圧力センサ)が用いられてよい。
【0057】
プランジャ21の位置を検出するセンサは、例えば、射出速度(換言すればプランジャ21の速度)の制御に利用される。駆動部23の駆動力を検出するセンサは、射出圧力(換言すればプランジャ21が成形材料に付与する圧力)の制御に利用される。ただし、後述するように、本実施形態においては、局部加圧に利用される吸収装置2によって成形材料の圧力が所望の圧力にされてもよく、射出圧力の制御は必須ではない。
【0058】
(1.2.進退部材)
型付ダイカストマシンDCは、1以上の任意の数で進退部材41を有してよい。複数の進退部材41が設けられている態様においては、例えば、金型101の種々の位置でサージ圧を吸収し、バリが発生する蓋然性を低減できる。また、吸収装置2が局部加圧に利用される場合においては、金型101内の溶湯に均等に圧力を付与することが容易化される。ただし、以下の説明では、便宜上、特に断り無く、1つの進退部材41に着目した説明を行うことがある。
【0059】
図1(b)に示すように、進退部材41の形状は、概略、進退方向を長手方向とするピン状であってもよいし(図示の例)、ピン状でなくてもよい。後者の例としては、進退部材41の進退方向における長さよりも径が大きいブロック状の形状を挙げることができる。また、進退部材41の横断面(進退方向に直交する断面)の形状は、円形であってもよいし、円形以外の形状であってもよい。進退部材41の寸法も任意である。
【0060】
なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断り無く、進退部材41の横断面の形状が円形であることを前提とした説明をすることがある。従って、例えば、円形における径と面積との関係に基づいて、横断面の径の説明と横断面の面積の説明とは相互に援用されてよい。種々のピストン及びシリンダ部材等についても同様とする。
【0061】
進退部材41は、固定型103に配置されてもよいし(図示の例)、移動型105に配置されてもよい。本実施形態の説明では、便宜上、進退部材41が固定型103に配置される態様を前提として説明を行うことがある。
【0062】
進退部材41は、例えば、その一部又は全部が型(固定型103又は移動型105)に対して進退方向に摺動してよい。進退部材41は、後端側の部分(サージシリンダ43に連結される部分)が型の外部に位置していてもよいし、その全体が型の内部に位置していてもよい。後者の例としては、進退部材41の後端側部分が不図示のダイベースによって構成された空間に位置している態様を挙げることができる。
【0063】
進退部材41の進退方向は、適宜な方向とされてよい。例えば、進退方向は、型開閉方向(図1(b)の左右方向)であってもよいし、型開閉方向に交差(直交又は傾斜)する方向であってもよい。ただし、進退方向が型開閉方向であれば、例えば、進退部材41が配置されている型から成形品を引き剥がす動作に伴って進退部材41を成形品から離すことができる。
【0064】
進退部材41の空洞107に対する配置位置は適宜に設定されてよい。例えば、空洞107は、図1(a)又は図1(b)に示すように、製品形状に対応する形状を有している製品部107aと、スリーブ19から製品部107aへ溶湯を導くランナー107eと、余剰な溶湯が流れ込むオーバーフロー107bとを有している。進退部材41は、これらのいずれの空間の内面に位置していてもよい。
【0065】
図1(a)の例では、進退部材41は、オーバーフロー107bの内面から空洞107内に露出している。また、図1(b)の例では、固定型103は、移動型105側の面に、進退部材41の先端側部分が出し入れされる凹部107cを有している。もちろん、固定型103は、そのような凹部107cを有していなくてもよい。
【0066】
なお、以下の説明では、特に断り無く、進退部材41がオーバーフロー107bに位置している態様を例に取ることがある。この態様では、進退部材41が空洞107の他の部位に位置している態様に比較して、成形材料が進退部材41に到達する時期と、サージ圧が生じる時期とが近い。そして、説明の便宜上、両者の時期を区別しないことがある。
【0067】
進退部材41の前進限及び後退限は、例えば、進退部材41が前進又は後退するときに進退部材41が当接する部材又は部位(ストッパ)が金型101等に設けられることによって規定されてもよいし、サージシリンダ43の駆動限によって規定されてもよい。なお、実施形態の説明では、進退部材41及びサージシリンダ43のいずれによって進退部材41の駆動限が規定されているのか、特に区別しないことがある。また、前進限及び後退限を規定する部材の図示は省略する。
【0068】
(1.3.サージシリンダ)
型付ダイカストマシンDCは、1以上の任意の数でサージシリンダ43を有していてよい。ただし、実施形態の説明では、特に断り無く、1つのサージシリンダ43に着目した説明を行うことがある。
【0069】
1つのサージシリンダ43が駆動する進退部材41の数は、1つであってもよいし(図示の例)、2以上であってもよい。後者の場合、例えば、公知の押出装置から類推できるように、進退部材41の進退方向に面する板状部材をサージシリンダ43に連結し、この板状部材に複数の進退部材41を並列に固定してよい。なお、本実施形態の説明では、基本的に、図示の態様(1つのサージシリンダ43が1つの進退部材41を駆動する態様)を例に取る。
【0070】
図4は、サージ圧の吸収に係る構成を示す模式図である。なお、サージシリンダ43の一例としての液圧式シリンダについては、サージシリンダ43Aと称することがある。
【0071】
サージシリンダ43(43A)は、例えば、シリンダ部材45と、シリンダ部材45の内部を摺動可能なピストン47と、ピストン47からシリンダ部材45の外部へ延びるピストンロッド49と、を有している。さらに、サージシリンダ43は、ピストン47とシリンダ部材45との間等の適宜な位置にパッキン(符号省略)を有していてよい。
【0072】
なお、便宜上、ピストン47とシリンダ部材45との間にパッキンが介在していても、ピストン47がシリンダ部材45に対して摺動する等と表現する。他の部材(例えば射出シリンダ27及び後述するダンパーシリンダ65)も適宜な位置にパッキンを有してよい。ただし、便宜上、図示又は符号は省略されることがあり、また、特に言及しない。パッキンが介在しても、摺動等と表現することも、サージシリンダ43と同様である。
【0073】
シリンダ部材45は、例えば、概略、筒状の部材である。シリンダ部材45の内部の横断面の形状は、例えば、円形である。シリンダ部材45の外形(外側の形状)は、直方体状等の適宜な形状とされてよい。ピストン47は、例えば、概略、円柱状の部材であり、シリンダ部材45の内部を軸方向において摺動可能である。シリンダ部材45の内部の空間は、ピストン47によって、ピストンロッド49側のロッド側室45rと、その反対側のヘッド側室45hに区画されている。ピストンロッド49は、例えば、概略、円柱状の部材である。ピストンロッド49の径は、ピストン47の径よりも小さい。その差は、適宜に設定されてよい。
【0074】
サージシリンダ43は、例えば、図1(a)に示すように、進退部材41の空洞107とは反対側に進退部材41に同軸的に配置され、また、ピストンロッド49側を進退部材41に向けている。シリンダ部材45は、固定型103(進退部材41が配置されている型)に対して不動とされる。ピストンロッド49の先端は進退部材41の後端と固定される。
【0075】
従って、例えば、サージシリンダ43においては、ヘッド側室45hに流体が供給されると、ピストン47がロッド側室45r側へ移動する。ひいては、ピストンロッド49を介してピストン47に連結されている進退部材41が空洞107に向かって前進する。また、例えば、溶湯によって進退部材41が押されると、ピストン47がヘッド側室45h側へ移動するとともに、ヘッド側室45hの流体が排出される。
【0076】
上記の説明とは逆に、シリンダ部材45を進退部材41に固定し、ピストンロッド49を固定型103に対して不動としてもよい。また、サージシリンダ43の向きは、上記の説明とは逆であってもよい。すなわち、シリンダ部材45及びピストンロッド49のいずれを不動とするか、及びピストンロッド49が延び出る方向をいずれの方向に向けるか、の組み合わせに関しては、図示以外に3通り可能である。上記に関連して、進退部材41を空洞107の側へ前進させるときに流体が供給されるシリンダ室(図示の態様ではヘッド側室45h)は、ロッド側室45rであってもよい。なお、実施形態の説明では、便宜上、特に断り無く、図示の態様を前提として説明を行うことがある。
【0077】
ロッド側室45rへの流体の供給によるピストン47の移動(サージシリンダ43の駆動力による進退部材41の後退(空洞107とは反対側への移動))は、行われてもよいし、行われなくてもよい。本実施形態では、前者の態様を例に取る。
【0078】
本実施形態の説明とは異なり、ロッド側室45rへの作動液の供給によるピストン47の移動が行われない態様においては、ロッド側室45rは、作動液が満たされていてもよいし、満たされていなくてもよい。ロッド側室45rに作動液が満たされている場合、ロッド側室45rは、その容積が拡張するときにタンク又は液圧源(例えばポンプ)から作動液の不足分が供給されるだけであってよい。また、ロッド側室45rに作動液が満たされていない場合、ロッド側室45rは、例えば、大気開放されていてよい。この場合、作動液としての油が潤滑等の目的でロッド側室45rに少量配置されていても構わない。
【0079】
また、ロッド側室45rへの流体の供給によるピストン47の移動が行われない態様においては、サージシリンダ43は、ロッド側室45rを有さない構成とされてもよい。例えば、ピストン47がシリンダ部材45からヘッド側室45hとは反対側へ延び出ていてもよい(別の観点ではピストンロッド49の径がピストン47の径と同じであってもよい。)。
【0080】
ピストン47は、シリンダ部材45の内部の前端及び後端(シリンダ部材45内に設けられた不図示のストッパを含む概念であるものとする。)に対する当接によって、物理的な前進限及び後退限(駆動限)が規定される。既述のように、この前進限及び/又は後退限は、進退部材41の前進限及び/又は後退限を規定してもよいし、規定しなくてもよい。
【0081】
進退部材41とピストンロッド49(又はシリンダ部材45)との固定は、適宜な方法によってなされてよい。例えば、進退部材41とピストンロッド49とはカップリングによって固定されてもよいし(図1(a))、ピストンロッド49の先端に設けられた雌めじ部に進退部材41の後端に設けられた雄ねじ部が螺合されてもよい(後述する図12)。また、理論上は、進退部材41とピストンロッド49とを一体的に形成して両者を固定することも可能である。固定型103(進退部材41が配置される型)とシリンダ部材45(又はピストンロッド49)との固定も適宜な方法によってなされてよい。例えば、シリンダ部材45は、固定型103及び/又は固定ダイプレート13に対してボルトなどによって固定されてよい。また、シリンダ部材45は、その一部が固定型103と一体的に形成されて固定型103に固定されていてもよい。
【0082】
(1.4.第1実施形態に係る吸収装置の第1構成例)
図4に示されている図1(a)の吸収装置2の具体例(第1実施形態に係る吸収装置の第1構成例)を吸収装置2Aと称するものとする。実施形態の概要の説明で述べたように、吸収装置2は、例えば、サージシリンダ43のヘッド側室45hの側からの流体(本実施形態では液体)を受け入れる容器61と、上記流体の流れを制御するサージバルブ63とを有していてよい。図4の吸収装置2Aは、容器61の具体例としての容器61Aと、サージバルブ63の具体例としてのサージバルブ63Aを有している。
【0083】
容器61Aは、ピストン形アキュムレータと同様又は類似した構成を有するダンパーシリンダ65の一部として構成されている。ダンパーシリンダ65は、シリンダ状の容器61Aと、容器61A内を摺動するピストン67とを有している。容器61A内は、ピストン67によって、液体を収容する液室61aと、気体を収容する気体室61bとに区画されている。サージシリンダ43のヘッド側室45hの側からの流体は、液室61aに流入する。このとき、ピストン67が気体室61bの側へ移動して、気体室61bの容積が縮小され、気体室61b内の気体が圧縮される。
【0084】
吸収装置2Aは、容器61A(ダンパーシリンダ65)以外の付加的な(換言すれば必須ではない)構成要素を有してよい。図4では、付加的な構成要素として、ヘッド側室45h及び液室61aに接続されている液圧回路69と、気体室61bに接続されている既述の気体圧回路71とが例示されている。液圧回路69は、例えば、サージ圧の吸収に係る圧力(別の観点ではサージ圧の吸収度合い)の調整及び/又はサージ圧吸収後の局部加圧に寄与する。気体圧回路71は、例えば、既述のとおり、サージ圧吸収に係る圧力の調整に寄与する。
【0085】
以下、ダンパーシリンダ65、液圧回路69及び気体圧回路71について順に説明する。サージバルブ63については、液圧回路69の説明において液圧回路69の一部として説明する。
【0086】
(1.4.1.ダンパーシリンダ)
ダンパーシリンダ65は、既述のとおり、ピストン形アキュムレータと同様又は類似した構成を有している。その具体的な形状及び寸法は任意である。例えば、容器61Aの内部空間の形状、及びピストン67の形状は、概略、円柱形状である。
【0087】
図4の例では、ダンパーシリンダ65は、容器61A及びピストン67に加えて、ピストン67に固定されているロッド73を更に有している。ロッド73は、液室61a又は気体室61b(図示の例では後者)を経由して容器61Aの外部へ延び出ている。ロッド73は、例えば、後述するように、容器61Aの外部に位置している位置センサによるピストン67の位置の検出に寄与してよい。及び/又は、例えば、ロッド73は、気体室61b(又は液室61a)の横断面(軸方向に直交する断面)の面積の設定に寄与してよい。ロッド73の具体的な形状及び寸法は任意である。例えば、ロッド73は、例えば、ピストン67に同軸に固定されている円柱状である。ただし、ロッド73は、ピストン67に対して偏心していたり、及び/又は円柱状以外の形状を有していたりしてもよい。なお、ロッド73は設けられなくてもよい。
【0088】
ダンパーシリンダ65の圧力は、実施形態で述べる作用が奏されるように、種々の条件を考慮して適宜に設定されてよく、特に制限はない。ダンパーシリンダ65の圧力については、後述する吸収装置2Aの動作の説明で詳述する。
【0089】
(1.4.2.液圧回路)
液圧回路69は、サージシリンダ43のヘッド側室45hとダンパーシリンダ65の液室61aとを接続している流路75aと、流路75aに位置しているサージバルブ63Aとを有していてよい。これにより、既述のとおり、ヘッド側室45hの側からの流体を液室61aへ流入させてサージ圧を吸収することなどができる。
【0090】
また、液圧回路69は、流路75a及びサージバルブ63A以外の付加的な構成要素を有してよい。これにより、液圧回路69は、例えば、既述のように、サージ圧の吸収に係る圧力の調整及び/又はサージ圧吸収後の局部加圧に寄与してよい。そのような作用を可能とする液圧回路69の構成は種々可能であり、図4に示されている構成は一例に過ぎない。図4の例では、液圧回路69は、作動液を送出するポンプ77と、作動液を貯留するタンク79と、作動液の流れを制御するシリンダ用バルブ81、パイロット用バルブ83及び逆止弁85とを有している。
【0091】
以下、液圧回路69が有している上記の構成要素について順に説明する。
【0092】
サージバルブ63Aの構成は、ヘッド側室45hから液室61aへの流れを禁止することが可能である限り、種々の構成とされてよい。図示の例では、サージバルブ63Aは、流路75bから導入される圧力(パイロット圧力)によって制御されるロジック弁によって構成されている。
【0093】
具体的には、図示の例のサージバルブ63Aにおいては、ばね(符号省略)が弁体(符号省略)に閉位置(サージバルブ63Aを閉じる位置)へ向けて復元力を付与している。ACC流路75a(別の観点ではヘッド側室45h)の圧力及び液室61aの圧力のいずれも、弁体を開位置へ向ける力として作用する。従って、パイロット圧力が導入されていないときは、流路75aの圧力及び液室61aの圧力が弁体に開位置へ向けて付与する力の合計(一方の圧力による力が0のときは他方の圧力による力)が上記復元力を超えることによってサージバルブ63Aが開かれる。また、パイロット圧力が導入されているときは、当該パイロット圧力が弁体に閉位置へ向けて付与する力及び上記復元力の合計が、弁体に開位置へ向けて付与されている力を超えることによってサージバルブ63Aが閉じられる。
【0094】
なお、サージバルブ63Aは、上記の説明とは異なり、パイロット式の逆止弁とされてもよい。この場合、サージバルブ63Aは、パイロット圧力が導入されていないときは、ヘッド側室45hから液室61aへの作動液の流れ許容し、その逆側の流れを禁止し、パイロット圧力が導入されているときは、双方の流れを禁止する。サージバルブ63Aの更に別の構成としては、例えば、切換弁、流量制御弁又は圧力制御弁が挙げられる。
【0095】
ポンプ77及び/又はタンク79は、ダイカストマシン1が有する、吸収装置2A以外の液圧装置(例えば射出装置9の液圧装置)に共用されてもよいし、共用されなくてもよい。なお、ポンプ77及びタンク79は、複数のダイカストマシン1等に共用されているものであってもよい。また、ポンプ77及びタンク79は、ダイカストマシン1の構成要素と捉えることが困難な態様のものであってもよい。
【0096】
ポンプ77及びタンク79の構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。ポンプ77は、必要に応じて駆動されてもよいし、常時駆動されていてもよい。図4の例(第1構成例)においては、ポンプ77は、サーボモータ(不図示)によって駆動され、供給する圧力を任意に調整可能なものである。タンク79は、例えば、大気開放型のものとされている。従って、タンク79に接続されている流路等の圧力は、基本的には概ね大気圧である。
【0097】
シリンダ用バルブ81は、4ポート3位置の切換弁として構成されている。シリンダ用バルブ81は、図の左側の矩形の状態(位置)では、ポンプ77とヘッド側室45hとを接続するとともに、タンク79とロッド側室45rとを接続する。これにより、例えば、ピストン47を前進させることができる。また、シリンダ用バルブ81は、図の右側の矩形の状態(位置)では、ポンプ77とロッド側室45rとを接続するとともに、タンク79とヘッド側室45hとを接続する。これにより、例えば、ピストン47を後退させることができる。また、シリンダ用バルブ81は、図の中央の状態(位置)では、タンク79とヘッド側室45hとを接続するととともに、ロッド側室45rをポンプ77及びタンク79の双方から遮断する。シリンダ用バルブ81の駆動方式は任意であり、図4では、シリンダ用バルブ81を図の中央の矩形の位置に移動させるばねと、シリンダ用バルブ81を図の右側及び左側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。
【0098】
ヘッド側室45hとシリンダ用バルブ81とを接続するための流路75cと、ヘッド側室45hと液室61aとを接続するための流路75aとは、ヘッド側室45h側の一部を互いに共有している。換言すれば、流路75c及び75aは互いにつながっている。従って、例えば、シリンダ用バルブ81が図の左側の矩形の状態とされているとき、ポンプ77は、流路75aに圧力を付与することに寄与し、ひいては、サージバルブ63Aを開いたり、液室61aへ作動液を供給したりすることに寄与し得る。
【0099】
パイロット用バルブ83は、サージバルブ63Aへのパイロット圧力の導入及びその停止を行う。その構成は、種々可能であり、図4では、4ポート2位置の切換弁が例示されている。ただし、4ポートのうち1つは塞がれて未使用状態とされている。パイロット用バルブ83は、図の左側の矩形の状態(位置)では、サージバルブ63Aのパイロットポートにつながる流路75bとタンク79とを接続する。これにより、サージバルブ63Aへのパイロット圧力の導入が停止される。また、パイロット用バルブ83は、図の右側の矩形の状態(位置)では、流路75bとポンプ77とを接続する。これにより、サージバルブ63Aへパイロット圧力が導入される。パイロット用バルブ83の駆動方式は任意であり、図4では、パイロット用バルブ83を図の左側の矩形の位置に移動させるばねと、パイロット用バルブ83を図の右側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。
【0100】
逆止弁85は、ポンプ77からの流れを許容し、その反対方向の流れを禁止する。ポンプ77とシリンダ用バルブ81とを接続する流路(符号省略)と、ポンプ77とパイロット用バルブ83とを接続する流路(符号省略)とは、ポンプ77の側の一部において互いに共通化されている。逆止弁85は、その共通化された部分に位置している。
【0101】
液圧回路69が有している種々の流路は、適宜な構成とされてよい。例えば、各流路は、剛体からなる管、可撓性のホース、流路が形成されたブロック、及び/又はこれらの組み合わせによって構成されてよい。他の液体用又は気体用の流路も同様である。
【0102】
吸収装置2Aは、上記以外の他の付加的な構成要素を有していてもよい。特に図示しないが、以下に例を示す。例えば、吸収装置2Aは、サージシリンダ43のロッド側室45rからタンク79に至る流路(例えばロッド側室45rとシリンダ用バルブ81との間)に接続されている背圧除去シリンダを有していてもよい。背圧除去シリンダは、例えば、比較的低圧のアキュムレータによって構成されてよい。ロッド側室45rからタンク79へ作動液が流れるとき、その一部は背圧除去シリンダに流れ込む。これにより、例えば、ピストン47(進退部材41)が前進するときのロッド側室45rの圧力(背圧)の上昇が低減される。ひいては、進退部材41の前進速度を上昇させやすい。
【0103】
(1.4.3.気体圧回路)
気体圧回路71は、例えば、サージ圧吸収に係る圧力の調整に寄与する。より詳細には、気体圧回路71は、容器61A(より詳細には気体室61b)への気体の供給、及び容器61Aからの気体の排出の少なくとも一方(図4の例では双方)によって容器61A内の気体の圧力を調整する。このような調整を行う気体圧回路71の構成は種々可能であり、図4に示されている構成は一例に過ぎない。図4に例示されている気体圧回路71は、容器61Aに気体を供給する気体供給装置87と、容器61Aから気体を排出するための排出バルブ89とを有している。
【0104】
気体供給装置87は、気体を送出可能である限り、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。例えば、気体供給装置87は、一般的及び/又は市販のコンプレッサーとされてよい。コンプレッサーは、例えば、羽根車若しくはロータの回転運動又はピストンの往復運動によって気体を圧送する。また、例えば、気体供給装置87は、容器61Aの圧力よりも高い圧力で気体を収容しているタンクと、当該タンクから容器61Aへの流れを制御する制御弁とを有する構成であってもよい。なお、後述の図5では、気体供給装置87の上記以外の構成の一例について説明する。
【0105】
排出バルブ89は、容器61Aからの気体の排出を許容及び禁止する。このように動作するバルブの具体的な構成は種々可能である。図4の例では、排出バルブ89は、2ポート2位置の切換弁によって構成されている。排出バルブ89は、図の左側の矩形の状態(位置)では、容器61Aと外部(例えば大気雰囲気)とを遮断する。また、排出バルブ89は、図の右側の矩形の状態(位置)では、容器61Aと外部とを接続する。これにより、容器61Aの気体は、その圧力が外部の圧力(例えば大気圧)よりも高い限り、外部へ放出される。排出バルブ89の駆動方式は任意であり、図4では、排出バルブ89を図の左側の矩形の位置に移動させるばねと、排出バルブ89を図の右側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。排出バルブ89の他の構成としては、例えば、パイロット式の逆止弁、圧力調整弁、流量制御弁及び/又はサーボバルブが挙げられる。
【0106】
排出バルブ89の位置は、容器61Aの気体を排出可能な限り任意である。図4の例では、容器61Aと気体供給装置87とを接続する流路から分岐した流路に設けられている。他の位置としては、例えば、図9の圧力調整弁289の位置(後述)と同様の位置が挙げられる。なお、容器61Aに収容される気体が空気でない場合においては、図示の例とは異なり、排出バルブ89は、容器61Aと不図示のタンクとの間に介在してもよい。
【0107】
(1.4.4.センサ)
吸収装置2Aは、付加的な構成要素として、種々のセンサを有してよい。センサの検出値は、例えば、制御装置5へ入力されて、吸収装置2A(又はダイカストマシン1の他の装置)の制御に利用される。図4の例では、吸収装置2Aは、ヘッド側室45hの圧力を検出する液圧センサ91(圧力センサ)と、容器61Aの圧力を検出する気体圧センサ93(圧力センサ)と、ダンパーシリンダ65のピストン67の位置を検出する位置センサ95とを有している。種々のセンサの具体的な構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の構成とされて構わない。
【0108】
液圧センサ91は、例えば、ヘッド側室45hの圧力を所望の圧力にするように液圧回路69(より詳細には例えばポンプ77及び/又はシリンダ用バルブ81)を制御することに利用される。液圧センサ91は、実質的にヘッド側室45hの圧力を検出できる限り、任意の位置で圧力を検出してよい。図4の例では、液圧センサ91は、ヘッド側室45hとサージバルブ63Aとを接続する流路75aの圧力を検出するように設けられている。この他、液圧センサ91は、ヘッド側室45hの圧力を直接的に検出するように設けられたり、ヘッド側室45hとシリンダ用バルブ81とを接続する流路75cの圧力を検出するように設けられたりしてもよい。
【0109】
気体圧センサ93は、例えば、容器61A(より詳細には気体室61b)の圧力を所望の圧力にするように気体圧回路71(より詳細には例えば気体供給装置87及び/又は排出バルブ89)を制御することに利用される。なお、気体圧センサ93に代えて、又は加えて、液室61aの圧力を検出するセンサを設けてもよい。気体圧センサ93の位置は、容器61Aの圧力を検出できる限り任意である。図示の例では、気体圧センサ93は、容器61Aと、気体供給装置87(及び排出バルブ89)とを接続する流路(符号省略)の圧力を検出するように設けられている。他の位置としては、図9の低圧圧力センサ293の位置(後述)と同様の位置が挙げられる。
【0110】
位置センサ95は、例えば、ダンパーシリンダ65のピストン67を所望の位置に位置させるように液圧回路69及び/又は気体圧回路71を制御することに利用されてよい。及び/又は、位置センサ95は、ピストン67と作動液を介して連動している状態の進退部材41の位置及び/又は移動を検出することに寄与してよい。位置センサ95の構成は適宜なものとされてよい。図示の例では、位置センサ95は、磁気式又は光学式のリニアエンコーダによって構成されている。この場合、ロッド73は、軸方向に延びている不図示のスケール部を有している。そして、位置センサ95は、スケール部との軸方向における相対移動に応じてパルス信号を出力する。
【0111】
特に図示しないが、上記のセンサに加えて設けられる、又は代えて設けられる、他のセンサの例を挙げる。
【0112】
吸収装置2Aは、進退部材41又はピストンロッド49の位置を直接的に検出する位置センサを有していてもよい。また、吸収装置2Aは、ロッド側室45rから排出される作動液の流量を検出する流量センサを有していてもよい。このような位置センサ又は流量センサは、例えば、進退部材41の位置及び/又は移動の検出に寄与する。
【0113】
吸収装置2Aは、ロッド側室45rの圧力を検出する圧力センサを有していてもよい。この圧力センサは、例えば、ヘッド側室45hの圧力を検出する液圧センサ91と共に、進退部材41が溶湯に付与する圧力の算出に寄与する。
【0114】
(1.4.5.吸収装置のその他の構成)
吸収装置2Aは、ダイカストマシン1に対して後付け(別の観点では分離)が可能若しくは容易な構成であってもよいし、そのような構成でなくてもよい。また、吸収装置2Aが、後付けが可能若しくは容易な構成である場合において(あるいはそうでない場合においても)、図3に示すように、制御装置5は、ダイカストマシン1の吸収装置2A以外の構成要素(例えば型締装置7及び射出装置9)を制御するための第1制御部5aと、吸収装置2Aを制御するための第2制御部5bとを有していてよい。第2制御部5bは、例えば、第1制御部5aとの間で信号を入力及び/又は出力することによって、ダイカストマシン1の吸収装置2A以外の構成要素と同期して、吸収装置2Aの各部(サージバルブ63A等)を制御する。第2制御部5bは、吸収装置2Aの一部である。
【0115】
(1.5.気体供給装置の構成例)
図5は、気体供給装置87の具体例としての気体供給装置87Eを示す断面図である。気体供給装置87Eは、気体圧式の供給シリンダ151と、供給シリンダ151を駆動する駆動部153と、逆止弁155及び157とを有している。
【0116】
供給シリンダ151は、シリンダ部材151aと、シリンダ部材151a内を摺動可能なピストン151bとを有している。ピストン151bは、シリンダ部材151aの一端側から挿入されている。シリンダ部材151aは、ピストン151bの先端面によって区画されたシリンダ室151cを有している。
【0117】
駆動部153は、ピストン151bをシリンダ部材151aに対して軸方向に往復移動させる。その具体的な構成は種々可能である。図示の例では、駆動部153は、回転式の電動機159と、電動機159の回転を伝えるプーリ・ベルト機構161と、プーリ・ベルト機構161によって伝えられた回転を直線運動(並進運動)に変換してピストン151bに伝えるねじ機構163とを有している。プーリ・ベルト機構161は電動機159の出力軸(符号省略)に固定された入力プーリ161aと、入力プーリ161aに掛けられたベルト161bと、ベルト161bが掛けられた出力プーリ161cとを有している。ねじ機構163は、出力プーリ161cに固定されたねじ軸163aと、ねじ軸163aに螺合されているとともにピストン151bに固定されているナット163bとを有している。
【0118】
逆止弁155は、外部(例えば大気雰囲気)とシリンダ室151cとの間に介在している。逆止弁155は、外部からシリンダ室151cへの流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。なお、容器61Aに収容される気体が空気でない場合においては、図示の例とは異なり、逆止弁155は、気体を収容している不図示のタンクとシリンダ室151cとの間に介在してもよい。
【0119】
逆止弁157は、シリンダ室151cと容器61A(より詳細には気体室61b)との間に介在している。なお、上記から理解されるように、逆止弁157から図5の左側へ延びる流路は、図4において容器61Aから気体供給装置87へ延びる流路である。逆止弁157は、シリンダ室151cから容器61Aへの流れを許容し、その反対側の流れを禁止する。
【0120】
容器61Aへ気体を供給するときは、駆動部153によってピストン151bをシリンダ部材151aに対して往復移動させる。ピストン151bが図の下方へ移動するときは、シリンダ室151cの気体が逆止弁157を介して容器61Aへ送出される。ピストン151bが図の上方へ移動するときは、外部から逆止弁155を介してシリンダ室151cへ気体が吸引される。そして、ピストン151bの往復を任意の回数で繰り返すことによって(図の下方への片道以下の移動量であってもよい)、容器61Aの圧力(別の観点では容器61Aに収容される気体の質量)を任意の値にすることができる。
【0121】
気体供給装置87Eは、端的に言えば、ピストン151bのシリンダ部材151aに対する摺動によって気体を吸引及び送出する装置である。気体供給装置87Eは、ピストン151bに対して一方側(図の下方)に位置するシリンダ室151cのみを気体の吸引及び送出に利用する。ただし、サージシリンダ43等のように、ピストンによってシリンダ部材の内部を一方側のシリンダ室と他方側のシリンダ室とに区画する構成を採用し、2つのシリンダ室が気体の吸引及び送出に利用されてもよい。
【0122】
(1.6.射出装置の動作)
図6は、射出に係る動作を説明するための図である。この図において、横軸は時間tを示しており、右側ほど後の時点となっている。左の縦軸は速度Vを示しており、上側ほど高速である。右の縦軸は圧力Pを示しており、上側ほど高圧である。
【0123】
線LnVは、射出速度(プランジャ21の速度)の経時変化を示している。線LnPは、射出圧力の経時変化を示している。ここでは、射出圧力は、プランジャ21が溶湯に付与する圧力であるものとする。なお、線LnV及びLnPによって示される速度又は圧力は、目標値を示していると捉えられてもよいし、実際の値を示していると捉えられてもよい。また、これらの線で示される波形は一例に過ぎない。
【0124】
ダイカストマシン1は、例えば、低速射出(時点t0~t1)、高速射出(時点t1~t2)、並びに増圧及び保圧(時点t2付近~)を順に行う。すなわち、ダイカストマシン1は、線LnVによって示されているように、射出の初期段階においては、溶湯の空気の巻き込みを防止する等の観点から比較的低速(速度V)でプランジャ21を前進させる低速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LnVで示されているように、溶湯の凝固に遅れずに溶湯を充填するため等の観点から比較的高速(速度V)でプランジャ21を前進させる高速射出を行う。次に、ダイカストマシン1は、線LnPによって示されているように、ひけ巣をなくす等の観点から、プランジャ21によって溶湯に付与する圧力を上昇させる増圧を行う。その後、線LnPによって示されているように、ダイカストマシン1は、増圧によって得られた鋳造圧力Pc(終圧)を維持する保圧を行う。
【0125】
上記の動作について補足すると、射出圧力は、低速射出(時点t0~t1)では、比較的低圧となっている。なお、図6では、便宜上、低速射出中の射出圧力については、極めて小さいものとして図示が省略されている。その後、高速射出が開始されると(時点t1)、射出圧力は上昇する。さらに、溶湯の充填が概ね完了すると(時点t2付近)、溶湯が行き場を失うことから、射出速度は急激に低下し、また、射出圧力は急激に上昇する。なお、射出速度を低下させる減速射出が行われてもよい。ただし、本実施形態では、吸収装置2によってサージ圧が吸収されるから、減速射出の必要性は低い。射出圧力は、溶湯が行き場を失うことによって上昇するだけであってもよい。すなわち、増圧のための特別な動作は行われなくてもよい。保圧においては、射出速度は概ねゼロである。
【0126】
増圧は、種々の態様で行われてよい。例えば、増圧は、速度制御がなされている射出に引き続いて射出シリンダ27のヘッド側室31hへ作動液が供給され、かつ圧力制御が行われるものであってよい。また、増圧は、射出においてヘッド側室31hへ作動液を供給していたアキュムレータとは異なるアキュムレータからヘッド側室31hへ作動液が供給されるものであってもよい。また、増圧は、図1(a)に例示した射出シリンダ27とは異なる増圧式の射出シリンダにおいて、ヘッド側室31hの圧力を上昇させる増圧用のシリンダへ作動液を供給するものであってもよい。図6では、増圧式の射出シリンダが用いられ、ヘッド側室31hへの液圧の付与によって得られる圧力P1(時点t3付近)よりも鋳造圧力Pcが高くなっている態様が例示されている。
【0127】
線Ln1は、バリが生じる最小圧力(バリ吹き限界曲線)を示している。この圧力は、概略、√tに比例している。また、線Ln0は、吸収装置2が設けられていない場合に生じ得る射出圧力の一部を示している。この図に示されているように、吸収装置2が設けられていない場合においては、充填完了時にサージ圧が生じ、ひいては、射出圧力がバリ吹き限界曲線を超え、バリが生じ得る。実施形態では、このようなサージ圧が低減されることから、例えば、充填完了時付近(時点t3付近)の圧力をバリ吹き限界曲線よりも低くしつつ、当該圧力及び/又はその後の圧力をバリ吹き限界曲線に近づけることが容易化される。
【0128】
(1.7.吸収装置の動作)
以下では、図4に示す第1構成例に係る吸収装置2Aによって実現される動作の一例を説明する。なお、第1構成例(及びその構成要素)は、下記の動作の一例の少なくとも一部が実現されるように、適宜に変形されて構わない。
【0129】
(1.7.1.溶湯が進退部材に到達する前の動作)
図4は、溶湯が進退部材41に到達する前(例えば射出開始前)の状態を示している。この状態において、制御装置5は、容器61A(気体室61b)の気体の質量(別の観点ではダンパーシリンダ65の圧力)を一定に保つように気体圧回路71を制御する。具体的には、例えば、制御装置5は、排出バルブ89を図の左側の状態として気体室61bからの気体の排出を禁止するとともに、気体供給装置87Eの電動機159を停止して、気体室61bへの気体の流入を停止する。
【0130】
また、制御装置5は、流路75a(別の観点ではサージシリンダ43Aのヘッド側室45h)から容器61Aへの流れを許容するように液圧回路69(別の観点ではサージバルブ63A)を制御する。具体的には、制御装置5は、パイロット用バルブ83を図の左側の矩形の状態とし、サージバルブ63Aへのパイロット圧力の導入を停止する。
【0131】
また、制御装置5は、進退部材41を初期位置(例えば前進限)に位置させるように液圧回路69を制御する。具体的には、制御装置5は、ポンプ77を駆動するとともに、シリンダ用バルブ81を図の左側の矩形の状態とする。これにより、ポンプ77から流路75c(別の観点ではヘッド側室45h)へ作動液が供給されるとともに、ロッド側室45rがタンク圧とされる。その結果、ピストン47が前進し、ひいては、進退部材41も前進する。そして、進退部材41は、前進限に至る。なお、ここでの説明とは異なり、ロッド側室45rからの作動液の排出を適宜なタイミングで停止することなどによって、前進限よりも手前で進退部材41を停止させることも可能である。
【0132】
前進限に至った進退部材41は、ヘッド側室45hの圧力と、ヘッド側室45hにおける受圧面積との積に相当する力が前方に付与された状態で待機する。このときのヘッド側室45hの圧力は、制御装置5が液圧センサ91の検出値に基づくポンプ77(より厳密にはポンプ77を駆動するサーボモータ)のフィードバック制御を行うことによって所定の目標圧力にされてよい。
【0133】
目標圧力の具体的な値は、所定の大きさのサージ圧が生じたときに溶湯109が進退部材41を押す力によって進退部材41が後退可能な大きさ以下である限り、任意である。例えば、目標圧力は、1MPa未満であってもよいし、1MPa以上であってもよい。サージ圧に係る上記の所定の大きさは、吸収装置2Aの製造者、オペレータ及び制御装置5のいずれによって想定されたものであってもよい。同様に、目標圧力は、吸収装置2Aの製造者、オペレータ及び制御装置5のいずれによって設定されてもよい。
【0134】
ポンプ77から作動液が供給される流路75cは、容器61Aの液室61aに通じている流路75aとつながっている。従って、ポンプ77からの液圧は、サージバルブ63Aを介して液室61aにも付与される。ピストン67は、例えば、液室61aの圧力による力と、気体室61bの圧力による力とが釣り合う位置で停止している。
【0135】
上記のピストン67の停止位置は任意である。ただし、ピストン67が下限(液室61aの側の駆動限)に近いほど、サージ圧を吸収するときにピストン67が移動可能な距離が長くなる。例えば、停止位置は、下限からの距離がピストン67のストローク(液室61a及び気体室61bの圧力がピストン67の移動に影響を及ぼさないと仮定したときのピストン67の移動可能距離)の1/3以下、1/5以下又は1/10以下となる位置とされてよい。
【0136】
上記の説明とは異なり、ピストン67は、下限に位置していてもよい。ただし、この場合であっても、気体室61bの圧力を液室61aの圧力に換算した値は、所定の大きさのサージ圧が生じたときに溶湯109が進退部材41を押す力によって流路75aに生じる圧力未満であり、また、ポンプ77が流路75cに付与する圧力との差は比較的小さくされてよい。いずれにせよ、停止位置は、吸収装置2Aの製造者、オペレータ及び制御装置5のいずれによって設定されてもよい。
【0137】
上記のようなピストン67の位置を実現するための気体室61bの気体の質量の調整は、制御装置5が気体供給装置87及び/又は排出バルブ89を制御することによって行われる。この調整は、例えば、ポンプ77によって目標圧力の液圧が液室61aに付与されている状態で位置センサ95(必要に応じて気体圧センサ93)の検出値に基づいて行われてもよいし、サージバルブ63Aが閉じられた状態で位置センサ95及び気体圧センサ93の検出値に基づいて行われてもよい。
【0138】
ピストン67の位置は、目標位置に位置するように制御されてもよいし、概ね意図されている範囲に位置するように制御されてもよい。後者の場合においては、前段落の説明とは異なり、位置センサ95によらずに、気体圧センサ93(及び必要に応じて液圧センサ91)の圧力に基づいて気体室61bの圧力が目標圧力になるように制御されてもよい。
【0139】
上記のような気体室61bの気体の質量(別の観点では圧力)の調整は、1サイクル毎に行われてもよいし、所定回数のサイクル毎に行われてもよいし、全てのサイクルの開始前に行われてもよい。また、作動液の温度等に応じて調整を行うか否かが決定されてもよい。調整がサイクル中に行われる場合において、調整が行われるサイクル中の時期も任意である。例えば、射出開始前、局部加圧中及び局部加圧後のいずれにおいて調整が行われてもよい。
【0140】
制御装置5は、進退部材41が前進限に到達したことを適宜に判定してよい。例えば、進退部材41が前進限に到達したことは、ポンプ77からヘッド側室45hへの作動液の供給を開始してから所定の時間が経過したか否かに基づいて判定されてもよいし、進退部材41の位置及び/又は移動を検出するセンサの検出結果に基づいて判定されてもよい。
【0141】
(1.7.2.溶湯が進退部材に到達したときの動作)
射出装置9によって溶湯109が金型101の空洞107に射出されると、溶湯109が進退部材41に到達する。さらに、溶湯109が進退部材41を後方(図の右側)へ押す力が、ヘッド側室45hの作動液がピストン47を前方に押す力を上回ると、図2(a)及び図2(b)に示したように、進退部材41及びピストン47が後退する。これにより、サージ圧が吸収される。
【0142】
ピストン47の後退に伴ってヘッド側室45hから排出される作動液は、サージバルブ63Aを介して容器61Aの液室61aへ流入する。このとき、ピストン67が気体室61bの側へ移動して気体室61bの気体は圧縮される。ヘッド側室45hから排出された作動液のポンプ77側への逆流は、逆止弁85によって規制される。ピストン47の後退に伴って容積が増加するロッド側室45rには、タンク79からシリンダ用バルブ81を介して作動液が補給される。
【0143】
ヘッド側室45hの側から液室61aへ作動液が流入することによって、ダンパーシリンダ65の圧力は上昇する。すなわち、ヘッド側室45hの作動液がピストン47を前方へ押す力は増加する。この増加した力と、溶湯が進退部材41を後方へ押す力とが釣り合うと、進退部材41は停止する。又は、進退部材41若しくはピストン47が後退限に到達することによって、進退部材41は停止する。
【0144】
なお、ここでの説明とは異なり、ピストン67が上限(気体室61b側の駆動限)に到達することによって進退部材41が停止してもよい。また、後述する説明(1.7.3.局部加圧時の動作)から理解されるように、進退部材41は、上記のように自然と停止する前に前進(局部加圧)を開始してもよい。
【0145】
(1.7.3.局部加圧時の動作)
制御装置5は、進退部材41が後退を開始した後の適宜な時期に進退部材41を前進させて局部加圧を行うように液圧回路69を制御する。具体的には、制御装置5は、ヘッド側室45hの圧力が上昇するようにポンプ77(より厳密にはポンプ77を駆動する不図示のサーボモータ)を制御する。そして、ヘッド側室45hの作動液がピストン47を前方へ押す力が溶湯がピストン47を後方へ押す力を超えると、進退部材41は前進する。
【0146】
進退部材41を前進させるとき、制御装置5は、流路75aから液室61aへの流れを禁止するようにサージバルブ63Aを制御してよい。具体的には、制御装置5は、パイロット用バルブ83を図の右側の状態とする。これにより、サージバルブ63Aにパイロット圧力が導入され、サージバルブ63Aが閉じられる。
【0147】
液室61aへの流れが禁止されることによって、例えば、既述のように、容器61Aがサージ圧吸収後の溶湯の圧力に及ぼす影響が低減される。別の観点では、容器61Aの設計の自由度が向上する。例えば、局部加圧のための圧力がピストン67の気体室61b側への移動によって吸収される蓋然性が低減されるから、ピストン67のストロークを大きくすることができる。これにより、ダンパーシリンダ65の種々の鋳造条件に対する適用範囲が広くなる。なお、ここでの説明とは異なり、サージバルブ63Aは閉じられなくてもよい。
【0148】
進退部材41を前進させるとき、液圧センサ91に基づくフィードバック制御が行われてよい。ヘッド側室45hの目標圧力は、一定値であってもよいし、所定の圧力曲線(横軸を時間とし、縦軸を圧力としたグラフに描かれる曲線)に沿って上昇するように設定されていてもよい。また、ここでの説明とは異なり、進退部材41は、進退部材41の位置を検出する不図示のセンサに基づいて位置制御がなされてもよい。
【0149】
局部加圧開始後、進退部材41は、例えば、ヘッド側室45hの作動液がピストン47を前方へ押す力と、溶湯がピストン47を後方へ押す力とが釣り合う位置で停止する。これにより、進退部材41は、ヘッド側室45hの圧力によって規定される圧力を溶湯に付与する。ただし、ここでの説明とは異なり、進退部材41は、上記の釣り合いが生じる前に前進限に到達してもよい。
【0150】
進退部材41が最終的に溶湯を付与する圧力は任意である。例えば、この圧力は、プランジャ21が最終的に溶湯に付与する圧力(図6の圧力Pc)に対して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。なお、溶湯の凝固によって、溶湯においてパスカルの原理は厳密には成立しなくなる。従って、例えば、局部加圧の圧力が圧力Pcよりも高くても、その差が大き過ぎない限り、プランジャ21は後退しない。
【0151】
制御装置5が局部加圧を開始するタイミングは、例えば、適宜な条件が満たされた時期、又は上記条件が満たされてから所定時間が経過した時期とされてよい。すなわち、局部加圧を開始するタイミングは、適宜な条件に基づいて決定されてよい。
【0152】
上記条件は、例えば、センサ(例えば位置センサ95)によって進退部材41の後退が検出されたこととされてよい。ここでいう後退の検出は、進退部材41の後退の有無の検出であってもよいし、進退部材41の後退量が所定量に到達したことの検出であってもよいし、進退部材41が所定位置まで後退したことであってもよい。なお、上記の後退量が比較的小さい場合、及び上記の所定位置が前進限に比較的近い場合は、進退部材41の後退の有無が検出されていると捉えられてよい。
【0153】
前段落の所定位置は、進退部材41の後退限であってもよいし、後退限でなくてもよい。また、所定位置は、鋳造条件に無関係に設定されている一定の位置であってもよいし、鋳造条件に応じて設定された位置であってもよい。また、所定位置は、進退部材41が上述した力の釣り合いによって停止する位置であってもよい。進退部材41の停止は、進退部材41の速度が所定の速度以下になったことに基づいて判定されてよい。
【0154】
また、局部加圧を開始する契機となる条件は、進退部材41の後退の検出以外のものであってもよい。例えば、上記条件は、射出装置9による射出開始から所定の時間が経過したことであってもよい。また、例えば、進退部材41の後退の検出以外の方法(例えば通電センサ、温度センサ又は圧力センサ)によって溶湯が所定位置に到達したことが検出されたことであってもよい。
【0155】
進退部材41の後退を検出するためのセンサは、適宜な構成とされてよい。図示の例では、位置センサ95によって進退部材41の後退が検出される。他のセンサとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ピストン67の位置を検出するリミットスイッチ。進退部材41又はピストンロッド49の位置を直接的に検出する位置センサ又はリミットスイッチ。位置センサとしては、例えば、リニアエンコーダが挙げられる。リミットスイッチは、接触式のものであってもよいし、非接触式のものであってもよい。進退部材41が後退すると、ヘッド側室45hの圧力が上昇するから、ヘッド側室45hの圧力を検出する液圧センサ91によって進退部材41の後退を検出することも可能である。
【0156】
(1.7.4.局部加圧後の動作)
制御装置5は、溶湯が凝固すると、進退部材41による局部加圧を終了するように液圧回路69を制御する。具体的には、制御装置5は、シリンダ用バルブ81を図の右側の矩形の状態とする。これにより、ポンプ77の液圧はロッド側室45rに付与され、ヘッド側室45hはタンク圧とされる。その結果、ピストン47が後退し、ひいては、進退部材41が後退する。
【0157】
進退部材41を後退させるときにポンプ77が付与する圧力は、適宜な大きさとされてよい。例えば、当該圧力は、既述の射出開始前に進退部材41を初期位置(例えば前進限)に待機させるときの圧力に対して、低くてもよいし、同等でもよいし、高くてもよい。制御装置5は、溶湯が凝固したか否かを適宜に判断してよい。例えば、適宜な時点(例えば射出開始時点又は局部加圧開始時点)から所定の時間が経過したか否かによって溶湯の凝固を判定してよい。
【0158】
進退部材41を後退させるとき、サージバルブ63Aは、開かれていてもよいし、閉じられていてもよい。前者の場合において、例えば、ピストン67は、液室61aの作動液がタンク79に排出されることによって下限に到達してよい。その後、ポンプ77によってヘッド側室45hへ作動液を供給して進退部材41を初期位置(例えば前進限)に待機させるときに、液室61aに再度液圧が付与されてよい。また、後者の場合において、例えば、ピストン67は、局部加圧の開始前の位置が維持され、その後、ヘッド側室45hへ作動液を供給して進退部材41を初期位置に待機させるときにサージバルブ63Aが開かれ、吸収されたサージ圧がヘッド側室45hへの液圧付与に利用されてよい。
【0159】
(1.8.第1実施形態のバリエーション)
以下、第1実施形態に係る吸収装置2について、他の構成を例示する。
【0160】
(1.8.1.第1実施形態に係る吸収装置の第2構成例)
図7は、第1実施形態に係る吸収装置2の第2構成例(「吸収装置2B」と称するものとする。)の構成を示す、図4に対応する図である。
【0161】
第1構成例では、ポンプ77を駆動するサーボモータ(不図示)の制御によって、ヘッド側室45h等に付与する圧力が制御された。これに対して、第2構成例では、圧力制御弁97によってポンプ77からヘッド側室45hへ付与される圧力が制御される。なお、第2構成例において、ポンプ77が供給する圧力は、例えば、一定である。ただし、第1構成例と同様に、ポンプ77が供給する圧力が制御されてもよい。
【0162】
圧力制御弁97は、ポンプ77(換言すればポンプ77から延びる流路)とタンク79との間に介在しており、ポンプ77からタンク79への流れの許容及び禁止を行う。上記の流れが許容されることによって、ヘッド側室45hへ付与される圧力が低圧側へ調整される。
【0163】
圧力制御弁97の構成は種々のものとされてよい。図示の例では、圧力制御弁97は、パイロット式の安全弁又はリリーフ弁と類似した構成を有している。すなわち、圧力制御弁97は、ポンプ77側(入り口側)の圧力がパイロット圧力として導入されており、ポンプ77側の圧力が低いときは閉じられており、ポンプ77側の圧力が所定の設定値を超えると開かれる(ポンプ77側からタンク79側への流れを許容する。)。また、図示の例では、上記の設定値は、圧力制御弁97(そのソレノイド)へ入力される信号によって制御される。圧力制御弁97の他の構成としては、例えば、任意の圧力を実現するサーボバルブが挙げられる。また、圧力制御弁の語を用いているが、切換弁等が用いられても構わない。
【0164】
圧力制御弁97は、例えば、第1構成例のポンプ77と同様に、液圧センサ91の検出値に基づいてフィードバック制御されてよい。また、上記のように、設定値が可変なリリーフ弁によって圧力制御弁97が構成されている態様では、フィードバック制御が行われずに、設定値がオープン制御されるだけであってもよい。
【0165】
(1.8.2.第1実施形態に係る吸収装置の第3構成例)
図8は、第1実施形態に係る吸収装置2の第3構成例(「吸収装置2C」と称するものとする。)の構成を示す、図4に対応する図である。
【0166】
第3構成例は、第1構成例と以下の点で相違する。ダンパーシリンダ65に代えて、ブラダ式アキュムレータからなるACC65Cが設けられている点。気体圧回路71が省略されている点。
【0167】
ACC65Cの構成は、例えば、公知のブラダ式アキュムレータと同様とされてよい。ACC65Cは、容器61の一例としての容器61Cと、容器61Cに内蔵されているブラダ99とを有している。ブラダ99の内部は、気体を収容する気体室61bとなっている。容器61Cの内部かつブラダ99の外側は、液体を収容する液室61aとなっている。ブラダ99の一部又は全部は弾性及び可撓性を有する材料によって構成されている。
【0168】
気体室61bの気体の質量は、例えば、ダイカストマシン1が成形サイクルを行っていないときに容器61Cに設けられた不図示の供給口を介して気体を供給又は排出することによって調整される。気体の供給は、例えば、圧縮された気体を収容している不図示のタンクによってなされてよい。成形サイクル中のACC65Cの圧力は、第1構成例の説明から理解されるように、ポンプ77からの液圧の供給によって調整される。
【0169】
(1.8.3.他の構成例)
特に図示しないが、第1実施形態は、上記以外に種々のバリエーションが可能である。
【0170】
例えば、第1~第3構成例は適宜に組み合わされてよい。より詳細には、例えば、第1構成例又は第2構成例のようにダンパーシリンダ65を有する構成において第3構成例と同様に気体圧回路71が省略されたり、逆に、第3構成例のようにACC65Cを有する構成において気体圧回路71又は圧力制御弁97が設けられたりしてよい。
【0171】
容器61を有する構成は、ダンパーシリンダ65及びACC65C以外の構成であってもよい。他の構成としては、重量式、ばね式、気体圧式又はダイヤフラム式のアキュムレータが挙げられる。重量式では、重りの重力によって作動液に圧力を付与する。ばね式では、ばねの復元力によって作動液に圧力を付与する。気体圧式では、圧縮された気体が作動液に直接に触れて作動液に圧力を付与する。ダイヤフラム式では、圧縮された気体が弾性及び可撓性を有するダイヤフラムを介して作動液に圧力を付与する。また、ピストン形(シリンダ形)のアキュムレータは、細部がダンパーシリンダ65と異なっていてよい。
【0172】
気体室61bを有するアキュムレータ(ダンパーシリンダ65を含む。)は、気体室61bと連通されているタンク又は気体圧式のアキュムレータを有していてもよい。この場合、気体圧回路71は、気体室61bに直接的に通じていてもよいし、上記タンク又は気体圧式のアキュムレータを介して気体室61bに通じていてもよい。また、気体圧回路71による気体室61bの圧力の調整に加えて、又は代えて、上記気体圧式のアキュムレータへの作動液の供給及び/又は上記気体圧式のアキュムレータからの作動液の排出による気体室61bの圧力の調整が行われてもよい。気体室61bを有するアキュムレータについて述べたが、第1実施形態又は他の実施形態における空間(気体室61b)を有する容器(アキュムレータに相当)についても同様である。
【0173】
局部加圧のための液圧源は、ポンプ77ではなく、アキュムレータとされてもよい。具体的には、例えば、以下のとおりである。溶湯が進退部材41に到達する前(例えば射出開始前)においては、サージバルブ63を開き、容器61を含むアキュムレータ(例えばダンパーシリンダ65)からヘッド側室45hへ液圧を付与して進退部材41を初期位置(例えば前進限)に位置させる。そして、サージ圧の吸収後、サージバルブ63を閉じるとともに、容器61を含むアキュムレータよりも高圧に蓄圧されたアキュムレータからヘッド側室45hへ液圧を付与して局部加圧を行う。
【0174】
前段落の説明から理解されるように、局部加圧のための液圧源(圧力源)は、溶湯が進退部材41に到達する前に進退部材41を初期位置(後退限よりも前方の位置)に移動させたり、初期位置に待機させたりすることに寄与しなくてもよい。
【0175】
(1.9.第1実施形態のまとめ)
以上のとおり、吸収装置2(2A、2B又は2C)は、容器61(61A又は61C)と、気体圧回路71とを有している。容器61は、気体を収容する空間(気体室61b)を有している。また、容器61は、型(金型101)内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と固定される液圧式又は気体式(本実施形態では前者)のシリンダ(サージシリンダ43(43A))の、金型101内の成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室(ヘッド側室45h)の側からの流体を、気体室61b内の気体の圧縮を伴って受け入れる。気体圧回路71は、気体室61bへの気体の供給及び気体室61bからの気体の排出の少なくとも一方によって気体室61b内の圧力を調整する。
【0176】
別の観点では、吸収装置2(2A、2B又は2C)は、アキュムレータ(ダンパーシリンダ65又はACC65C)と、気体圧回路71とを有している。ダンパーシリンダ65は、液室61aと、気体室61bとを有している。液室61aは、型(金型101)内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と固定される液圧式のシリンダ(サージシリンダ43(43A))の、金型101内の成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室(ヘッド側室45h)の側からの液体を受け入れる。気体室61bは、ピストン67によって液室61aと区画されている。気体圧回路71は、気体室61bへの気体の供給及び気体室61bからの気体の排出の少なくとも一方によって気体室61b内の気体の圧力を調整する。
【0177】
従って、実施形態の概要で述べたように、例えば、容器61によるサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される。その結果、例えば、金型101の温度変化に起因するサージ圧の変化に応じて吸収度合いを調整し、充填完了時の射出圧力を一定値にすることが容易化される。これにより、例えば、成形品の品質のばらつきが低減される。
【0178】
シリンダ(サージシリンダ43(43A))は、シリンダ室(ヘッド側室45h)に前記流体としての液体を収容する液圧式シリンダであってよい。
【0179】
この場合、例えば、サージシリンダ43が気体圧式の第2実施形態に比較して、高い圧力を扱うことが容易化される。その結果、例えば、進退部材41の後退に伴ってサージ圧に係るエネルギーを消費したり、その後の局部加圧で溶湯に高い圧力を付与したりすることが容易化される。
【0180】
容器61Aは、ピストン67を収容しているシリンダ部材であってよい。シリンダ部材(容器61A)は、ピストン67によって、液体を収容する液室61aと、気体を収容する上記空間(気体室61b)とに区画されていてよい。
【0181】
この場合、例えば、容器61が他の形式のアキュムレータの容器である態様に比較して、比較的高い圧力を扱うことが容易化される。その結果、例えば、進退部材41の後退に伴ってサージ圧に係るエネルギーを消費することが容易化される。
【0182】
気体圧回路71は、電動機159の駆動力によって空間(気体室61b)に気体を供給してよい。
【0183】
この場合、例えば、気体室61bの圧力を任意の値にすることが容易化される。ひいては、容器61によるサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される効果が向上する。これにより、例えば、成形品の品質のばらつきが低減される効果が向上する。なお、電動機の駆動力によって気体を供給する気体圧回路(気体供給装置)は、図5に示した気体供給装置87に限定されず、公知のコンプレッサー等を含む。
【0184】
気体圧回路71は、空間(気体室61b)に通じている気体圧式の供給シリンダ151と、供給シリンダ151を駆動する駆動部153と、を有していてよい。
【0185】
この場合、例えば、供給シリンダ151のピストン151bの往復回数等によって気体室61bの圧力を任意の値にすることができる。その結果、例えば、容器61によるサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される効果が向上する。これにより、例えば、成形品の品質のばらつきが低減される効果が向上する。
【0186】
吸収装置2A(又は2B若しくは2C)は、容器61A(又は61C)への液体の供給及び容器61Aからの液体の排出の少なくとも一方によって容器61A内の気体の圧力を調整する液圧回路69を有していてよい。
【0187】
この場合、例えば、容器61によるサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される。これによる効果は既述のとおりである。また、例えば、液圧回路69によって気体の圧力を調整することができるから、気体圧回路71を省略することができる(図8)。
【0188】
吸収装置2は、流体を送出可能であり、シリンダ室(ヘッド側室45h)と接続されることによって、局部加圧のための圧力をヘッド側室45hに付与する圧力源(ポンプ77)を更に有していてよい。
【0189】
この場合、例えば、サージ圧吸収用のサージシリンダ43を局部加圧に兼用することができる。その結果、型付ダイカストマシンDCの構成が簡素化される。また、種々のバルブの構成等にもよるが、サージ圧の吸収によってヘッド側室45hの圧力が高くなった状態からヘッド側室45hへ圧力を付与することから、ヘッド側室45hがタンク圧である状態(溶湯が進退部材41に到達する前に進退部材41を後退限で待機させる従来の加圧装置)に比較して、速やかに局部加圧を開始することが可能である。
【0190】
吸収装置2A(又は2B若しくは2C)は、液体を吐出可能であり、シリンダ室(ヘッド側室45h)と接続されることによって、局部加圧のための圧力をヘッド側室45hに付与するポンプ77を更に有していてよい。
【0191】
この場合、例えば、アキュムレータによって局部加圧のための圧力をヘッド側室45hに付与する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、ヘッド側室45hへ付与する圧力をサイクル中に変化させることが容易化される。
【0192】
吸収装置2は、サージバルブ63と、センサ(位置センサ95)と、制御装置5と、を更に有していてよい。サージバルブ63は、ヘッド側室45hの側から容器61の側への流体の流れを許容及び禁止する。位置センサ95は、進退部材41の後退を検出する。制御装置5は、位置センサ95による進退部材41の後退の検出に基づくタイミングでバルブ(サージバルブ63(63A))を制御する。
【0193】
この場合、例えば、圧力センサ及び通電センサによって溶湯が所定の位置に到達したことを検出する態様とは異なり、センサ自体が溶湯に接触しなくてよい。また、サージ圧の吸収のための進退部材41が溶湯に接触する部材として兼用されるから、構成が簡素化される。また、温度センサによって溶湯が所定の位置に到達したことを検出する態様に比較して、検出精度が高くなる。その結果、例えば、シリンダ室(ヘッド側室45h)から容器61への流れを禁止するタイミングの精度を向上させることができる。
【0194】
吸収装置2は、サージバルブ63と、バルブ(サージバルブ63)を制御する制御装置5を更に有していてよい。制御装置5は、成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退を開始した後に、サージバルブ63を、シリンダ室(ヘッド側室45h)の側から容器61への流れを許容する状態から当該流れを禁止する状態へ遷移させてよい。
【0195】
これにより、例えば、進退部材41の後退によってサージ圧を多少なりとも吸収し、その後に、サージバルブ63を閉じることによる種々の既述の効果を得ることができる。
【0196】
(2.第2実施形態)
第2実施形態に係る吸収装置2は、既述のとおり、サージシリンダ43が気体圧式シリンダ(以下、「サージシリンダ43X」と称することがある。)である態様である。その構成の一例及び当該一例における動作を順に説明する。
【0197】
(2.1.第2実施形態に係る吸収装置の構成例)
図9は、第2実施形態に係る吸収装置2の構成例(「吸収装置2X」と称するものとする。)の構成を示す、図4に対応する図である。
【0198】
実施形態の概要の説明で述べたように、吸収装置2は、例えば、サージシリンダ43のヘッド側室45hの側からの流体(本実施形態では気体)を受け入れる容器61と、上記流体の流れを制御するサージバルブ63とを有していてよい。図9の吸収装置2Xは、容器61の具体例としての容器61Xと、サージバルブ63の具体例としてのサージバルブ63Xを有している。吸収装置2Xは、例えば、その全体が気体圧回路として構成されており、液圧回路を含んでいない。
【0199】
吸収装置2Xは、容器61Xに加えて、付加的な(換言すれば必須ではない)構成要素として、例えば、局部加圧のためにヘッド側室45hへ圧力を付与する圧力源を有している。図9では、圧力源としてのタンク277が例示されている。
【0200】
また、吸収装置2Xは、付加的な構成要素として、容器61X(さらには図示の例ではタンク277)の圧力を調整するための気体圧回路(符号省略)を有している。当該気体圧回路の構成は種々可能である。図9の例では、気体圧回路は、圧力調整弁289と、低圧側供給弁297と、高圧側供給弁298と、気体供給装置87と、を有している。当該気体圧回路の全部又は一部は、実施形態の概要の説明で述べた気体圧回路の具体例である。
【0201】
さらに、吸収装置2Xは、付加的な構成要素として、種々のセンサを有してよい。図9の例では、低圧圧力センサ293及び高圧圧力センサ291が例示されている。
【0202】
特に図示しないが、吸収装置2Xは、サージシリンダ43Xのロッド側室45rへの気体の供給、及びロッド側室45rからの気体の排出のために、圧力源、流路及びバルブを有していてよい。その具体的な構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知の空圧シリンダを制御するための構成と同様とされてよい。ただし、ロッド側室45rは、単に大気開放されているだけでも構わない。
【0203】
以下、吸収装置2の各構成要素について説明する。
【0204】
既述のとおり、容器61Xは、サージ圧吸収用であり、タンク277は、局部加圧用である。タンク277の圧力は、例えば、容器61Xの圧力よりも高くされてよい。サイクル中において、容器61X及びタンク277の圧力は変動する。従って、より詳細には、例えば、タンク277の圧力は、局部加圧を完了した時点及び/又はサイクル中の最も低い圧力が、容器61Xがサージ圧を吸収した時点及び/又はサイクル中の最も高い圧力よりも高くされてよい。容器61Xは、サージ圧の吸収の他、溶湯が進退部材41に到達する前(例えば射出開始前)に進退部材41を後退限よりも前方(例えば前進限)へ位置させることに寄与してもよい。
【0205】
容器61X及びタンク277の具体的な構成は、種々の構成とされてよく、例えば、公知のエアタンクと同様の構成とされてよい。容器61X及びタンク277は、例えば、各々の用途及び/又はサイクル中の圧力に応じた構成とされ、ひいては、互いに異なる構成であってよい。また、容器61及びタンク277は、互いに同一の構成とされ、各々の用途に応じて互いにサイクル中の圧力が異なるだけであってもよい。
【0206】
サージバルブ63Xは、図9の例では、容器61Xとヘッド側室45hとの間の流れの許容及び禁止だけでなく、タンク277とヘッド側室45hとの間の流れの許容及び禁止にも寄与している。このようなバルブの構成は種々可能である。
【0207】
図9の例では、サージバルブ63Xとして、3ポート2位置の切換弁が例示されている。サージバルブ63Xは、図の下側の矩形の状態(位置)では、容器61Xとヘッド側室45hとを接続するとともに、タンク277とヘッド側室45hとを遮断する。また、サージバルブ63Xは、図の上側の矩形の状態(位置)では、容器61Xとヘッド側室45hとを遮断するとともに、タンク277とヘッド側室45hとを接続する。サージバルブ63Xの駆動方式は任意であり、図9では、サージバルブ63Xを図の下側の矩形の位置に移動させるばねと、サージバルブ63Xを図の上側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。
【0208】
図示の例とは異なり、容器61Xとヘッド側室45hとの間の流れを制御するバルブ(サージバルブ63)と、タンク277(別の観点では局部加圧のための圧力源)との間の流れを制御するバルブとは、第1実施形態と同様に、互いに別個のバルブであっても構わない。この場合の各バルブの構成も種々可能であり、例えば、各バルブは、切換弁、パイロット式の逆止弁、圧力制御弁、流量制御弁及び/又はサーボバルブとされてよい。
【0209】
圧力調整弁289は、容器61Xから外部(例えば大気雰囲気)への気体の排出を許容及び禁止する。これにより、容器61Xの圧力は低圧側へ調整される。なお、圧力調整弁289は、第1実施形態の排出バルブ89と同様の役割を担うものである。従って、排出バルブ89の説明と、圧力調整弁289の説明とは、矛盾等が生じない限り、相互に援用されてよい。
【0210】
圧力調整弁289の構成は任意である。例えば、圧力調整弁289は、電磁弁又はパイロット弁であってよい。また、例えば、圧力調整弁289は、任意の圧力を実現するサーボバルブであってもよいし、圧力が所定の設定値を超えたときに気体を排出するリリーフ弁であってもよい。リリーフ弁の上記設定値は、例えば、手動により、又は制御装置5がソレノイドを制御することにより、変更可能であってよい。また、圧力調整弁289の位置は、容器61Xからの気体の排出を許容可能な限り、任意である。図9の例では、圧力調整弁289は、気体を供給するための流路とは別個に容器61Aと外部との間に介在している。
【0211】
低圧側供給弁297は、気体供給装置87から容器61Xへの流れを許容及び禁止する。これにより、容器61Xの圧力は高圧側へ調整される。同様に、高圧側供給弁298は、気体供給装置87からタンク277への流れを許容及び禁止する。これにより、タンク277の圧力は高圧側へ調整される。
【0212】
上記のような動作を実現するバルブの具体的な構成は種々可能である。図9の例では、低圧側供給弁297及び高圧側供給弁298それぞれとして、2ポート2位置の切換弁が例示されている。低圧側供給弁297は、図の上側の矩形の状態(位置)では、容器61Xと気体供給装置87とを遮断する。また、低圧側供給弁297は、図の下側の矩形の状態(位置)では、容器61Xと気体供給装置87とを接続する。低圧側供給弁297の駆動方式は任意であり、図9では、低圧側供給弁297を図の下側の矩形の位置に移動させるばねと、低圧側供給弁297を図の上側の矩形の位置へ移動させるソレノイドとが組み合わされた方式が例示されている。上記の低圧側供給弁297の説明は、容器61Xをタンク277に置換して、高圧側供給弁298に援用されてよい。低圧側供給弁297及び高圧側供給弁298の他の構成としては、例えば、パイロット式の逆止弁、圧力調整弁、流量制御弁及び/又はサーボバルブが挙げられる。また、低圧側供給弁297及び高圧側供給弁298を統合した4ポート(又は3ポート)3位置の切換弁が挙げられる。
【0213】
気体供給装置87の構成については、第1実施形態の説明で述べたとおりであり、例えば、気体供給装置87は、図5に示した構成、不図示のコンプレッサー、又は不図示のタンクとされてよい。図9の例では、気体供給装置87は、容器61X及びタンク277によって共用されている。図示の例とは異なり、気体供給装置87は、容器61X及びタンク277によって共用されていなくてもよい。この場合において、2つの気体供給装置87は、互いに同一の構成であってもよいし、互いに異なる構成であってもよい。
【0214】
低圧圧力センサ293は、容器61Xの圧力を検出する。低圧圧力センサ293は、第1実施形態の気体圧センサ93と同じ又は類似する役割を担うものである。従って、気体圧センサ93の説明と、低圧圧力センサ293の説明とは、矛盾等が生じない限り、相互に援用されてよい。低圧圧力センサ293の位置は、容器61Xの圧力を検出できる限り任意である。図示の例では、低圧圧力センサ293は、容器61Xの圧力を直接的に検出するように設けられている。他の位置の例としては、容器61Xと他の構成要素とを接続する流路(サージバルブ63X側でも低圧側供給弁297側でもよい。)の圧力を検出する位置が挙げられる。
【0215】
前段落の低圧圧力センサ293の説明は、高圧圧力センサ291に援用されてよい。ただし、容器61Xの語は、タンク277の語に置換し、低圧側供給弁297の語は高圧側供給弁298の語に置換する。
【0216】
(2.2.第2実施形態に係る吸収装置の動作)
(2.2.1.溶湯が進退部材に到達する前の動作)
図9は、溶湯が進退部材41に到達する前(例えば射出開始前)の状態を示している。この状態において、制御装置5は、容器61Xの気体の質量(別の観点では容器61Xの圧力)を一定に保つように吸収装置2Xを制御する。具体的には、例えば、制御装置5は、低圧側供給弁297を図の上側の状態として、及び/又は気体供給装置87E(図5)の電動機159を停止して、容器61Xへの気体の流入を停止する。また、圧力調整弁289は、例えば、制御装置5によって閉じられ、又は容器61Xの圧力が設定値よりも低いことによって自閉しており、容器61Xから気体は排出されていない。
【0217】
同様に、制御装置5は、タンク277の気体の質量(別の観点ではタンク277の圧力)を一定に保つように吸収装置2Xを制御する。具体的には、例えば、制御装置5は、高圧側供給弁298を図の上側の状態として、及び/又は気体供給装置87Eの電動機159を停止して、タンク277への気体の流入を停止する。
【0218】
また、制御装置5は、進退部材41を初期位置(例えば前進限)に位置させるように吸収装置2Xを制御する。具体的には、制御装置5は、サージバルブ63Xを図の上側の位置にする。これにより、容器61Xからヘッド側室45hへ気体が供給され、ピストン47が前進し、ひいては、進退部材41も前進する。そして、進退部材41は、前進限に至る。前進限に至った進退部材41は、ヘッド側室45hの圧力と、ヘッド側室45hにおける受圧面積との積に相当する力が前方に付与された状態で待機する。
【0219】
(2.2.2.溶湯が進退部材に到達したときの動作)
射出装置9によって溶湯109が金型101の空洞107に射出されると、溶湯109が進退部材41に到達する。さらに、溶湯109が進退部材41を後方(図の右側)へ押す力が、ヘッド側室45hの気体がピストン47を前方に押す力を上回ると、図2(a)及び図2(b)に示したように、進退部材41及びピストン47が後退する。これにより、例えば、サージ圧が吸収される。
【0220】
ピストン47の後退に伴ってヘッド側室45hから排出される気体は、サージバルブ63Xを介して容器61Xへ流入する。このとき、容器61X内の気体は圧縮され、容器61X(別の観点ではヘッド側室45h)の圧力は上昇する。圧力調整弁289は、容器61Xの圧力が設定値を超えたときに気体を外部へ放出するリリーフ弁として機能してもよいし、機能しなくてもよい。
【0221】
その後、ヘッド側室45hの気体がピストン47を前方へ押す力と、溶湯が進退部材41を後方へ押す力とが釣り合うと、進退部材41は停止する。又は、進退部材41若しくはピストン47が後退限に到達することによって、進退部材41は停止する。
【0222】
(2.2.3.局部加圧時の動作)
制御装置5は、進退部材41が後退を開始した後の適宜な時期に進退部材41を前進させて局部加圧を行うように吸収装置2X(換言すれば気体圧回路)を制御する。具体的には、制御装置5は、サージバルブ63Xを図の上側の矩形の状態とする。これにより、容器61Xの圧力よりも高い圧力がタンク277からヘッド側室45hへ付与され、ひいては、進退部材41は前進する。その後、進退部材41は、ヘッド側室45hの気体がピストン47を前方へ押す力と、溶湯がピストン47を後方へ押す力とが釣り合う位置で、又は前進限で停止する。
【0223】
局部加圧を開始するタイミングは、第1実施形態と同様に適宜に決定されてよく、例えば、進退部材41の後退の検出に基づいて決定されてよい。図9では、第1実施形態と異なり、進退部材41の後退の検出に寄与し得る位置センサ95が示されていないが、進退部材41の後退を検出するセンサが位置センサ95に限定されず、種々の態様とされてよいことは、第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0224】
(2.2.4.局部加圧後の動作)
制御装置5は、溶湯が凝固すると、進退部材41による局部加圧を終了するように吸収装置2Xを制御する。具体的には、制御装置5は、吸収装置2Xの状態を、溶湯が進退部材に到達する前の動作の説明で述べた状態とする。
【0225】
また、制御装置5は、容器61Xの圧力を調整する。具体的には、制御装置5は、低圧圧力センサ293の検出値に基づく気体圧回路(図示の例では、気体供給装置87、低圧側供給弁297及び/又は圧力調整弁289)のフィードバック制御を行うことによって容器61Xの圧力を所定の目標圧力にしてよい。この目標圧力の大きさが任意であることは、第1実施形態の容器61Aの目標圧力と同様である。
【0226】
容器61Xの圧力の調整は、サージバルブ63Xが図の上側の状態(容器61Xからヘッド側室45hへの流れが禁止された状態)であるときに行われてもよいし、サージバルブ63Xが図の下側の状態であるときに行われてもよい。別の観点では、容器61Xの圧力の調整は、進退部材41の初期位置(前進限)への移動前、移動中及び/又は待機中に行われてよい。移動前は、局部加圧後に限られず、局部加圧開始以後から局部加圧完了までの時期であってもよい。
【0227】
また、制御装置5は、タンク277の圧力を調整する。具体的には、制御装置5は、高圧圧力センサ291の検出値に基づく気体圧回路(図示の例では、気体供給装置87及び/又は高圧側供給弁298)のフィードバック制御を行うことによってタンク277の圧力を所定の目標圧力にしてよい。局部加圧のときにヘッド側室45hへ付与する圧力が任意であること(第1実施形態の説明)から明らかなように、タンク277の目標圧力の大きさは任意である。
【0228】
タンク277の圧力の調整は、例えば、タンク277からヘッド側室45hへ圧力が付与されていない任意の時期に行われてよい。すなわち、局部加圧が完了してサージバルブ63Xが図の下側の状態にされた後、次のサイクルの局部加圧のためにサージバルブ63Xが図の上側の状態にされるまでの任意の時期に行われてよい。
【0229】
(2.3.第2実施形態のバリエーション)
特に図示しないが、第2実施形態の構成は、図9に例示した構成例以外に種々可能である。
【0230】
例えば、容器61Xは、エアタンクでなくてもよい。例えば、容器61Xは、第1実施形態の容器と同様に、種々のアキュムレータのような構成の容器(シリンダ部材)とされてよい。そして、アキュムレータにおいて作動液が収容される空間(液室)に気体が収容され、当該空間がヘッド側室45hに接続されてよい。
【0231】
局部加圧を行うための圧力源は、コンプレッサー又は図5に示した構成であってもよい。この場合、圧力源は、第1実施形態のポンプ77のように、サージ圧の吸収前に進退部材41を初期位置(例えば前進限)に位置させることに寄与してもよいし、タンク277と同様に、進退部材41を初期位置に位置させることに寄与しなくてもよい。また、この場合の圧力源は、容器61Xに気体を供給する気体供給装置87に兼用されてもよいし、兼用されなくてもよい。
【0232】
(2.4.第2実施形態のまとめ)
以上のとおり、第2実施形態においても、吸収装置2(2X)は、容器61(61X)と、気体圧回路(気体供給装置87等)とを有している。容器61は、気体を収容する空間(容器61Xの内部)を有している。容器61は、型(金型101)内への前進及びその反対側への後退が可能な進退部材41と固定される気体圧式のシリンダ(サージシリンダ43(43X))の、金型101内の成形材料(溶湯109)の圧力によって進退部材41が後退するときに容積が縮小されるシリンダ室(ヘッド側室45h)の側からの流体を、容器61内の気体の圧縮を伴って受け入れる。気体圧回路は、容器61Xへの気体の供給及び容器61Xからの気体の排出の少なくとも一方によって容器61X内の圧力を調整する。
【0233】
従って、実施形態の概要で述べたように、容器61内の気体の圧縮によってヘッド側室45hからの作動液の排出を許容し、サージ圧を吸収することができる。また、気体圧回路によってサージ圧の吸収度合いを調整することが容易化される。
【0234】
シリンダ(サージシリンダ43X)は、シリンダ室(ヘッド側室45h)に流体としての気体を収容する気体圧式シリンダであってよい。
【0235】
この場合、例えば、ヘッド側室45h自体がその内部の気体の圧縮によってサージ圧を吸収可能であることから、速やかにサージ圧を吸収できる。また、例えば、気体圧回路のみによって吸収装置2Xを構成することができる。これにより、例えば、吸収装置2Xの構成が簡素化される。
【0236】
容器61Xは、流体の受け入れに伴って圧縮される気体を収容する空間と同じ空間にシリンダ室(ヘッド側室45h)の側からの流体としての気体を受け入れる構成を有していてよい。すなわち、容器61Xは、エアタンクと同様の構成を有してよい。
【0237】
この場合、例えば、吸収装置2Xの構成が更に簡素化される。
【0238】
吸収装置2Xは、タンク277を更に有してよい。タンク277は、圧縮された気体を収容しており、シリンダ室(ヘッド側室45h)と接続されることによって、局部加圧のための圧力をヘッド側室45hに付与してよい。
【0239】
この場合、例えば、第1実施形態と同様に、サージ圧の吸収のためのサージシリンダ43Xが局部加圧に兼用されることになり、構成が簡素化される。また、例えば、蓄圧されたタンク277から気体を供給することから、コンプレッサー又は気体供給装置87E(図5)から気体を供給する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、速やかに局部加圧のための圧力をサージシリンダ43Xへ供給できる。
【0240】
(3.複数位置におけるサージ圧吸収のための構成のバリエーション)
既述のように、型付ダイカストマシンDCは、複数のサージシリンダ43を有してよい。この場合において、複数のサージシリンダ43を駆動するための構成は、種々の構成とされてよい。以下にいくつかの例について説明する。ここでは、便宜上、第1実施形態の第1構成例を例に取るが、他の構成例並びに第2実施形態も同様とされてよい。
【0241】
図4に示す例においては、複数(2つを例示。以下、他の例についても同様。)のサージシリンダ43に対して1つの吸収装置2(2A)が接続されている。別の観点では、型付ダイカストマシンDCが有する吸収装置2の数は、サージシリンダ43の数に関わらず、1つである。複数のサージシリンダ43の構成(寸法等を含む)は、例えば、互いに同一である。この場合、例えば、型付ダイカストマシンDCの構成を簡素化及び/又は小型化することが容易である。
【0242】
図10図12は、他の例(第1変形例~第3変形例)を示す図4に対応する図である。ただし、説明の便宜上、これらの図では、吸収装置2(2A)の一部のみを示している。
【0243】
図10に示す例では、複数のサージシリンダ43に対して個別に(1対1で)複数の吸収装置2が接続されている。別の観点では、型付ダイカストマシンDCが有する吸収装置2の数は、サージシリンダ43の数と同じである。複数のサージシリンダ43の構成(寸法等を含む)は、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。複数の吸収装置2の構成(寸法等を含む)は、互いに同一であってもよいし(図示の例)、互いに異なっていてもよい。複数の吸収装置2は、容器61以外の一部の構成(例えば気体供給装置87)を共有していてもよいし、共有していなくてもよい。
【0244】
図10に示す例では、例えば、サージ吸収前の状態(例えば容器61の圧力)を吸収装置2同士で互いに異ならせることによって、進退部材41の位置に応じてサージ圧の吸収度合いを適切なものにすることができる。また、例えば、複数のサージシリンダ43の構成が互いに同一であれば、サージシリンダ43の生産性が向上する。同様に、複数の吸収装置2の構成が互いに同一であれば、吸収装置2の生産性が向上する。
【0245】
特に図示しないが、図4の例と図10の例との中間の構成が採用されてもよい。すなわち、型付ダイカストマシンDCは、それぞれ1つ以上のサージシリンダ43を含む複数のシリンダ群と、複数のシリンダ群に対して個別に(1:1で)接続されている複数の吸収装置2とを有してよい。そして、複数のシリンダ群のうち少なくとも1つは、複数のサージシリンダ43を有してよい。
【0246】
図11に示す例では、図4と同様に、複数のサージシリンダ43に対して1つの吸収装置2が接続されている。ただし、複数のサージシリンダ43(より詳細には、その少なくとも一部である2つ以上のサージシリンダ43)は、互いに構成が異なっている。例えば、2つ以上のサージシリンダ43は、ピストン47の径及び/又はピストンロッド49の径が互いに異なっている。この場合、例えば、1つの吸収装置2を用いつつ、進退部材41の位置に応じてサージ圧の吸収度合いを適切なものにすることができる。
【0247】
既述のように、図4の例と図10の例との中間の構成(不図示)が採用されてもよい。この場合において、複数のサージシリンダ43に接続される吸収装置2の少なくとも1つに、図11に示す例が適用されてもよい。
【0248】
図12に示す例では、図4と同様に、複数のサージシリンダ43に対して1つの吸収装置2が接続されている。また、複数のサージシリンダ43の構成(寸法等を含む)は、互いに同一である。ただし、複数の進退部材41(より詳細には、その少なくとも一部である2つ以上の進退部材41)の構成(例えば径)が互いに異なっている。この場合、例えば、1つの吸収装置2及び互いに同一の構成のサージシリンダ43を用いつつ、進退部材41の位置に応じてサージ圧の吸収度合いを適切なものにすることができる。
【0249】
既述のように、図4の例と図10の例との中間の構成(不図示)が採用されてもよい。この場合において、複数のサージシリンダ43に接続される吸収装置2の少なくとも1つに、図12に示す例が適用されてもよい。また、図11に示した2つ以上のサージシリンダ43の構成を互いに異ならせるという事項と、図12に示した2つ以上の進退部材41の構成を互いに異ならせるという事項とが組み合わされてもよい。
【0250】
以上の種々の態様において、ダイカストマシン1又は型付ダイカストマシンDCは、成形機の一例である。溶湯109は成形材料の一例である。金型101は型の一例である。サージシリンダ43は液圧式又は気体圧式のシリンダの一例である。サージシリンダ43Aは液圧式シリンダの一例である。サージシリンダ43Xは気体圧式シリンダの一例である。ヘッド側室45hはシリンダ室の一例である。サージバルブ63、63A及び63Xのそれぞれはバルブの一例である。容器61A(図4等)はシリンダ部材の一例であり、ピストン67(図4等)は上記シリンダ部材に収容されているピストンの一例である。ポンプ77及びタンク277はそれぞれ圧力源の一例である。位置センサ95は、進退部材の後退を検出するセンサの一例である。ダンパーシリンダ65及びACC65Cはアキュムレータの一例である。
【0251】
本発明は、以上に例示した態様に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0252】
成形機は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、樹脂を成形する射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横型締横射出に限定されず、例えば、縦型締縦射出、縦型締横射出、横型締縦射出であってもよい。ダイカストマシンは、コールドチャンバマシンに限定されず、例えば、ホットチャンバマシンであってもよい。
【0253】
射出は、低速射出及び高速射出を含むものに限定されず、例えば、低速で層流充填を行うものであってもよい。進退部材は、成形材料が凝固して構成された成形品を型から押し出すための押出ピンと兼用されるものであってもよい。
【0254】
サージ圧吸収装置は、局部加圧に利用されなくてもよい。実施形態の説明では、サージ圧吸収装置が局部加圧に利用される場合においては、進退部材41の後退によってヘッド側室45hの圧力が上昇しており、これにより、加圧部材(進退部材41)が後退限で待機する従来の局部加圧装置に比較して、進退部材41を速やかに前進させる効果について述べた。ただし、このような効果は奏されなくても構わない。例えば、局部加圧を開始するための種々のバルブの動作は応答性が低くても構わない。
【符号の説明】
【0255】
DC…型付ダイカストマシン(成形機)、1…ダイカストマシン(成形機)、2(2A、2B、2C、2X)…サージ圧吸収装置(吸収装置)、5…制御装置、7…型締装置、9…射出装置、41…進退部材、43(43A、43X)…サージシリンダ、45h…ヘッド側室(シリンダ室)、61(61A、61C、61X)…容器、63(63A、63X)…サージバルブ(バルブ)、101…金型(型)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12